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スウェーデン国際開発協力庁(Sida)の障害児者のための開発協力に関するガイドライン

4. SIDAの障害分野での協力に関する1987年ガイドライン
障害分野の支援に関するSIDAの最初のガイドラインは1987年に発行された。 それは1982年に結成された準拠集団によるものである。 このグループにはSIDAのスタッフの他に、 障害者運動により指名された顧問達が含まれていた。 ガイドラインは1992年に改定されたが、総合体的なものとそれぞれの領域に関する内容が盛り込まれており、例えば各領域としてガイドラインに採用された保健、教育、 基礎整備(インフラストラクチャー)、農村開発、 行政などである。

ガイドラインは、障害者に関する世界行動計画の原則を基盤とした。当時、 標準規則はまだ準備過程にあり、 採択されたのは1993年である。障害の視点が様々な団体でSIDAとの協力にとりプログラム参加国と様々な段階でプログラム参加国とSIDAとの協力に取り入れることが考慮されたが、すべての努力は、 当該国自体の優先順位、 機構、 経験に基いてなされることとなったのである。 スウェーデンの障害者団体は開発途上国の姉妹組織の支援と強化することに貢献する機会を与えられた。 さらに、 SIDAはスウェーデン国内の障害者団体との協力を拡大、 強化し、 知識と経験の発展を図ることとなる。 SIDAは、 より多くのNGOが障害問題をその協力の範囲に取り入れ、かつ、 障害分野ではNGOが行ってきた成果を広く考慮に入れるよう働きかける。

SIDAは国連専門機関と協力して、 障害に関する世界行動計画を遂行することの重要性を強調する。 さらに、 国連の活動を通じて経験を二国間の協力に活用すること。 SIDAは、 障害分野における多国間組織との協調を奨励し、様々な多国間組織を通して開発計画手法を支援し、 その計画がそれぞれの機関の通常の活動に次々と統合されるように働きかける。 さらに、 SIDAは障害分野において開発途上国に多国間組織と各国国内組織との間での協調を促進する。

SIDAは、 また、 例えばNGO等の関心のある組織が障害分野でより積極的に活動するように働きかける。 SIDAは、 SIDA内外において知識を拡大することを奨励し、 様々な関係機関の協調を促進する。 これらの活動に特に障害者自身が参加すべきであると強調する。

5. 障害者支援におけるこれまでの経験 
障害分野での開発協力にはいくつかの形がある。 開発協力活動は様々な関係団体によって実施されており、 その内容は様々である。 多くの場合、 対象グループは直接的に関与している。 そうでない場合でも、払われた努力は長期的には間接的な効果をもたらすことが期待される。 こうした多様性にもかかわらず、 支援の形の中にはより頻繁に見られるものもある。それはCBRプログラム、特別なニーズを持つ子供のための教育プロジェクト、 障害者の組織の発展のための支援は障害分野での二国間支援の典型的な例である。 重要な開発協力の主要部分はNGOによって実施されている。 他の共通した構成要素は国際的な政策と手法の開発に関わる活動が共通して構成される。

5.1 世界規模での努力

面接した人達は皆、 国際レベルでのスウェーデンの活動の重要さを強調していた。 スウェーデンは様々な場で活躍し、 障害問題を国際的な議題として持ち出してきた。この働きは、 様々な形で、 また、 様々な経路を経てなされたものである。 総体的には、 障害分野において積極的な展開に貢献したし、 その結果、 現在幾つかの国で国内障害政策を開発する過程にある。 それと同時に、 1990年代を通じて国連制度内での障害問題に対する国際的な支援が減少してきたとわかり、そのことは、 今日まで成し遂げられた進展が破壊されかねない脅威となっている。

世界規模の活動例は次のとおりである。

● 1980年代初期以来のWHO(世界保健機関)リハビリテーション部門への支援。 これは、主として、 CBR手法の開発準備と試行に向けられた。 これは、 CBRにおける技術開発のための教材成を含み、とりわけ、 総合的なハンドブックの作成と試用することであった。このハンドブックは「地域社会における障害をもつ人のための訓練」(Training in the Community for People with Disabilities)と題し、 非常に多くの言語に翻訳されている。 さらに、 全国的または地域でのCBRのセミナーが開催されてきたが、 その目的は障害分野への注目を喚起し、自発性を呼び起こし、 プロジェクト、フォローアップ、 体験の話し合いが行われるようにすることであった。 セミナー開催は、 補装具、 参加支援技術、 分野を越えた課題、 戦争終結後のCBRなどについての知識の向上に役立った。 プロジェクトの立案、 実行などについての支援やアドバイスも含まれてきた。

● UNDP(国連開発計画)の障害者のための地域間プログラム。 これ、障害者に関する世界行動計画のフォローアップ、 とりわけ障害関連プロジェクトの立案、 評価のための手法の開発や、 政策開発や立案に関して相手国にアドバイスや支援が含まれてきた。

● 国連統計部門に対する資金提供と若手専門官派遣という形での支援。この目的は障害に関する統計の手法、標準、指針の開発ならびに主として開発途上国からの障害に関する統計のデータベースの開発である。 

● タンザニアのLund大学の医学部と協力して耳鼻咽喉科の診療所を支援。 プライマリーヘルスケアスタッフに対して耳の感染症の新しく簡易な診断と治療方法の訓練を実施。 それは、なかんずく、 聴覚障害の予防を目的としている。

● スリランカのKelaniya大学の障害研究部門で障害担当のプロジェクト・マネジャーおよびスタッフを対象に国際免状コース開発のための支援。

● スウェーデンのUppsala大学の国際小児保健学教室(ICH)で先進国および開発途上国双方からの参加者を対象に「低収入国におけるリハビリテーション」に関する5週間コースの実施を支持。

● ロンドンのAHRTAG(適正な保健に関するリソースと支援グループ、ロンドン)およびウプサラ大学の第3世界におけるCBR及び障害問題に関する経験の情報を含むデータベース開発の支援-the Disability Information Serviceという。 その目的は一般の図書館のデータベースに、より正式な文献を提供することである。

● 特別なニーズを抱えた児童の教育の手法開発、それに関する情報や経験を提供するためのUNESCO(国連教育科学文化機関)に対する支援、 また、 この課題に関するUNESCOのサラマンカでの世界会議の準備作業とフォローアップに対する支援。

● 様々な国際的な場においてのSHIA(注3)とその加盟団体による積極的な権利擁護活動は、世界レベルにおいて有意義な活動である。

● さらに、Sidaからの支援、 またはSidaとの協調により、 スウェーデンの機関、 専門家は国際的ネットワークを構築してきた。 彼らは、 または国際会議や他のフォーラムに参加し、 知識、体験の有益な交流に貢献して来た。

5.2 二国間事業

5.2.1 地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)プロジェクト

CBR支援は、ジンバブエ、ケニア、 ヨルダン川西岸/ガザ地区との二国間保健協力の一部(1997年では1000万クローネ‐脚注参照‐をやや上回る)とスリランカの小さな農村開発協力に含まれている。CBRプロジェクトはスウェーデンのNGOにも支持されており, ガーナなどではSHIAが、またベトナム、 イエメン、 カーボ・ヴェルデ(西アフリカのセネガル西方海上の諸島からなる国)でのスウェーデンのセイブ・ザ・チルドレンが実施している、CBR協力では通常様々な技能訓練とともに農村を訪問するための交通手段を提供することが主要な要素となっている。 若干の機材、 道具、 建設作業が含まれることもある。
CBRは 障害をもつ人の大部分に到達するための戦略である。 経験によればリハビリテーションの必要性のうち60~70%は現地での効果的なCBRを通して充足しえることが分かっている。 この戦略はスウェーデンの協力により同国の医師、 Einar Helanderの指導の元にWHO(世界保健機関)の障害部門により立案された。 WHOはCBRを総合的な、 地域社会に焦点を当てた開発計画(地域社会開発)に統合された部分と定義づけている。 その目的は、 障害をもつ人が地域社会とその活動においてリハビリテートされ統合化されることにある。障害をもつ人、 その家族、教師、 地域の実力者、 地方の政治家がこの過程に参加する。

しかしながら、 CBRの内容については見解が異なり、計画を実行する立場にある政府当局、 NGO、 その他がその理念を如何に解釈するかによって計画は異なってくる。例えば、 CBRが単に農村に住む障害のある人が医学的リハビリテーションに到達するための手段だと見なされていることが少なくない。

    CBRプロジェクトの中には、 極めてよく評価されるのがある一方、 大きな問題に直面してきたのもある。 前向きな意見が主流ではあるが、 いくつかの方面から批判を受けて来たのもある。 例をあげると、 Sidaが資金を提供したヨルダン川西岸/ガザ地区におけるCBRプログラムは1996年に受けた評価では、 世界で最高の一つと判断されている。ジン
(脚注)  1スウェーデンクローネは1995年2月末日で13.62円、1999年2月末日で15.08円。
バブエ、 ケニアでのCBRプログラムは、セイブ・ザ・チルドレンが支援しているイエメン、 ベトナムでの計画同様、 成功したと見なされている。 CBR戦略は今ではベトナム、 ジンバブエ、 ヨルダン川西岸/ガザ地区における国内計画に取り入れられ、 国内に広く適用される標準的な計画を樹立することを目標としている。

CBRプログラムの強みの一つは、 それが少年、 少女にも到達することで、 この点、 障害をもつ人の組織が実施する計画の場合には常に当てはまるということではない。 (Peter Coleridge NU:2:95)

CBRプロジェクトを成功させるためには、 一定の条件が充たされなければならない。WHOのリハビリテーション部門のPupulin博士は、 例えば、 CBRのすべての課程において地方の知識や理解、そして地域が掛かり合いと責任を持つことの重要性に言及している。 CBRの前提条件の一つは障害をもつ人が計画の立案と実施に積極的な役割を果たさなければならないことである。しかしこのことは、 必ずしもうまく行っていないようである。

CBRプロジェクトの弱点としてみられるのは、それがしばしばボランテイアベースで行われ、長期的には持続が難しいということである。 持続性に関する別の課題として、CBR計画が、 しばしば小規模で、 国からの支援なしに地理的に限定された試験的計画で、外部からの援助に頼っていることがある点である。他にも、 弱点として挙げられているのはCBRは保健と保健省に繋がりがあることである。(Owako,1995:77参照) プライマリーヘルスケアにおけるCBRプログラムが成功するには、 多角面を持ち、 各部門を越えた協力が必要である。 こうした環境の下では、 社会福祉省の方が保健省より、CBRの指導の機関としてはより適当ではないかという主張もある。
既に述べられたように、成功に必要な前提条件の一つは部門を越えて行われるという点である。これには、様々な政府当局や施設間の調整が必要である。一般的な経験では、そうした調整は中央レベルでより、地方レベルの方が容易である。しかしながら、ILO(国際労働機関)、 UNESCO(国際教育科学文化機関)およびWHO(国際保健機関)は、 それぞれの役割を明確にするべく共同文書を作成した。 それが各分野を越えて調整を図るのに前向きな一歩をなしている。 実践において、 この事が、 とりわけ、ガーナとベニンにおいてCBR合同プロジェクトを生む結果となり、 そこでは SHIA(5.3.1参照)がノルウエー障害者協会と共に参加している。

また、 大切なことはCBR計画関係者の総てが、 地域社会の外部からの支援組織や諮問団体のネットワークを持っているという点である。 地域の係わりあいと、国レベルでの高い支援とを如何にして均衡させるかは困難な仕事である。 このような情況においては、 幾つかのレベルかつ幾つかの段階での教育が主要課題である。

SidaがICHとの機関的な協調とそこでのリハビリテーションコースの支援を通して開発途上国と北欧諸国の多数の男女がCBRについて貴重な知識を得た。 リハビリテーションと連携を持つ人々が知識を持ち、CBRの理念を開始し実践に移すことが出来たのである。一般的な見解では、 開発協力は受益国や地域内の近隣諸国における技術開発を支援すべき出あるとしている。 しかしながら、 スウェーデンのような国では、 より専門化されたスタッフ教育もまた必要である。 同地域内の国々間での情報交換も改善されてよい。このことはプログラムの持続性を確実化するために必要である。

5.2.2 特別なニーズを抱えた子供のための教育への支援

スウェーデンによる開発協力が重要な影響を与えたもう一つの分野は、 特別なニーズを抱えた少年・少女のための教育である。 その目的は、 障害児が普通校に通えるようにする前提条件を見いだし、 整える事にある。 例外は聴覚障害児で彼らには、別の教育方法が支援されて来た。こうした協力は時により学習が困難な児童の教育支援の創出・改善をも目途として来た。

Sidaは1970年代の半ば以来、 そのような支援をポルトガルでは1976年から1980年、 タンザニアでは1976年から1993年に、 ボツワナとスリランカでは1983年以来、ジンバブエでは1984年以来、 ザンビアでは1980年から1992年、 そしてまた、南アフリカでは1995年以来行ってきた。この支援は一般的には教員の研修(例えば、特殊教育担当教員の教育と一般校教員に特殊教導手法についての継続教育)と補助教具の制作(例えば、 点字テキスト、 拡大文字、 録音図書)と参加支援技術(例えば、 補聴器)と各国の手話の開発を組み合わせたものから成り立っている。 その地域での政策発展や教育課程の開発についても支援を提供して来た。 数年にわたるこうした支援の総額は各年1000万スウェーデン・クローネを超える。 1995年から1996年には、 ボツワナ、 ジンバブエとスリランカに対する支援は約750万スウェーデン・クローネに及ぶ。 南アフリカに対する政策開発と調整作業のための支援は同国向けの教育支援の一部として組み込まれている。

研究に限りがあるため、Sidaの障害児のための教育支援について明確な結論を引き出すのは難しい。 統計は確かではないが全体的な印象では、 教育を受けられる障害児の数が大幅に増加している。コスト面からみると、 ジンバブエとスリランカとの開発協力の方がボツワナと較べてより効果的であった。 他の要因もあるが、 ボツワナの人口は比較的小さいからである。

ボツワナ: ボツワナへの支援は部門別支援プログラムの一部として含まれて来た。 それは教員養成大学(the University College for Teacher Training)、特殊教育学研究所(the Institute for Special Pedagogy)、特殊教育中央情報センター(the Central Resource Centre for Special Education)の間での機関協調により構成されている。この協調の目的は情報センターがその事業を築き上げるのを支援することにあった。同センターは子供のニーズを調査の上、 適切な学校教育の形態を提案したり、 普通校の教師に対する継続教育の手配をしたり、 補助教材や支援技術についてのアドバイスの提供や、 支援のための訪問などを行っている。
1993年にはボツワナの教育政策のなかで、 最大限可能な限り、 特別なニーズを持つ児童も普通校に就学すべきことが述べられた。 中央政府当局と地方行政との間の責任分担が規定された。 さらに、 国の障害政策が決議された。

The Resource Centreが持つ重要な役割が政策文書に確定された。 当初の困難期を乗り越え、 今ではこのセンターはその任務を遂行するのに十分な力を持っていると見られている。 診断の後、 同センターは多数の児童や親達に対して学校教育、 教材、 参加支援技術に関するアドバイスを提供する。 研究所と協調する中で、 点字や拡大文字による小規模の教材制作部門が設置された。 さらに、 スウェーデンのコンサルタントが各国手話の開発に従事し成果を上げている。機関間協調は1996年12月に終了したが、政策作業に間接的に貢献もして来た。 過去数年の間、 スウェーデンからの協力は年間およそ100万クローネに達している。

スリランカ: スリランカに対する支援は分野別の教育支援プログラムの一部として含まれて来た。その内容は主としてスリランカにある教師養成機関とGothenburg大学の特殊教育研究所(the Institute for Special Pedagogy)間の機関協調で、教師養成と継続教育のための教科課程の開発と研究所のスタッフの継続教育への支援を含んでいる。 障害児の就学率はかなり高く、 大部分は普通校であるが、 特殊学級もしくは養護学校に配置することも通常的に行われている。

1996年に実施された評価では、 スウェーデンからの開発協力は上記のプログラムにとって重要であったという結論を出している。 スウェーデンからの援助は年間およそ100万クローネに達している。

ジンバブエ: 学校での特別なニーズをもつ児童への支援は教育部門での援助の一部をなしている。ジンバブエの政策では、 最大限可能な限り、 特別なニーズをもつ児童も普通校に就学すべきとしている。 数多くの学校では、 いわゆるリソース・ルームが設けられており、 そこには特別の教師がいて教育支援を行っている。 ろうまたは聴覚障害をもつ児童はろう学校か普通校内の特殊学級で教えられている。 知的障害をもつ児童は通常特殊学級で授業を受けている。 10万人以上の障害をもつ児童が就学しているが、 この数字は開発途上国としてはとても高い。 ジンバブエの障害分野での各省庁間、 障害者組織、 その他相互間の協調は優れている。

Sidaからの援助は、 教師や他の職員の継続教育や、 移動チームによる支援訪問、リソース・ルームの整備に用いられて来た。 それは参加支援技術の購入(補聴器を含む)、 各国手話の開発、 聴覚技術研究所の創設、 盲または視覚障害をもつ児童のための教材の制作に使われてきた。 1987年から1988年にかけてスウェーデンからの拠出は年間400または500万クローネに達している。
1996年に実施された評価の結論では、 プログラムの目標達成は良好で、 スウェーデンからの援助が効果的に使われたとしている。 この調査によれば、 担当省はプログラムを実施する力を充分備えているものの、 例えば、 点字や拡大文字での教材の制作、 補聴器材の供給、 補聴器の修理などといった面で未解決問題は依然残っている。 興味深いことは、 障害児の一般校への就学人数は、 CBR活動が行われている地域の方がそうでない地域に比して大きいということである。

支援についての一般的な評価は学校制度の中に取り込まれている児童はかなり、 より良い立場を得ているということである。 このことは、様々な構成要素の働きが相互に補強しあうという事実によって大方説明がつく。 政府当局や学校制度のあらゆるレベルでの意志決定者やスタッフの知識の向上は、 特殊教育の地位を上げてきた方策と相俟って重要であった。

結論: 学校に通う児童に対しては大量の資源が供給されて来た一方、 学校制度外の児童、未就学児童、 年長児童、 成人女性・男性は優先されてこなかった。 障害をもつ児童の大多数は就学していないので、 これらの活動は他の方策で補われる必要がある。 特別なニーズを持つ少年少女は発育のための機会を与えられるべきであり、 その親たちや地域社会の知識の増加が必要であり、 また、 価値観や態度は影響を受けなければならない。 リハビリテーションと特殊教育とは相互関連を持つ。 この面からして、 ジンバブエは興味深い例を示している。

2~3の国を除いては、 省庁間の協力は特に一般的でない。 CBRがリンクする役割を果たす事が可能なはずだが、 今までのところそのような働きは見られない。経験によれば、 障害をもつ少女の方が、 障害をもつ少年より差別を受けることが多い。従って、少女の問題により注目が向けられるべきである。

5.2.3 国別プログラム内での障害問題に関するその他の二国間支援

インドのTamil Nadu州で母子保健計画(ICDS)の枠組みで貧困障害児を対象にした作業が始められた。 この活動は、 軽度の障害をもつ児童、 特に少女をこの計画の就学前教育活動に統合しようとするものであった。 このようにしてこの計画は就学前の幼児の教師が障害を見いだし、児童に治療を照会し、 障害者用補助具を供給出来るように訓練したのである。
別のインドのRajasthan州では、 Sidaは二件の革新的な教育プログラムのための援助を提供した。 即ち、 Shiksha Karmi(裸足の教師)とLok Jumbish(みんなの教育のための大衆運動)である。 両方とも軽度の障害をもつ児童を学校に統合させようと努力を重ねているものである。

5.3 NGOを通じての開発協力

二国間、多国間支援を補うのに重要なのはNGOと通したSidaの開発協力である。 NGO支援は障害者に対する二国間協力よりもやや多額であると推計されている。(教育、 保健のための2000万クローネに対して年間3000万クローネを超える)。 スウェーデンの障害者組織からの姉妹団体の開発援助に出ている貢献は戦略上特に重要である。

5.3.1 SHIA (スウェーデン障害者国際援助団体協会)

(Swedish Organisations of Disabled Persons International Aid Association)非政府団体の中で、 1981年に設立されたSHIAは、 16(注:2000年現在は19)のスウェーデン障害者団体を傘下に持つという特別な位置にいる。 

SHIAの全体的な目標は開発途上国、 東欧、 中欧にある障害者団体と協力して障害をもつ人の権利を向上することにより差別と闘うことにある。

SHIAの活動領域は開発協力と人権擁護の二つである。 組織の発展はSHIAの開発協力の主たる目標である。 障害者の組織を結成し、 改善して行くことは障害をもつ人の権利と機会の長期 的な促進のための必須の前提条件と考えられている。 障害をもつ人は世界で最も恵まれず、 社会の主流から取り残された人々である。 従って、 その利害関係を代表し、 社会の発展に積極的に参加するために彼ら自身の組織の向上が極めて重要である。

SHIAの人権擁護活動は、 開発協力に関わっている他の当事者に働きかけ、 障害者が参加者出来るような協力を形づくっていくことを目的としている。 実施されている障害関係活動の改善もまた目標とされ、 主として、 障害者ならびに彼らの組織が積極的に取り込まれることによって達せられるものである。
SHIAの活動費は年間、 2000万クローネ近くとなっている。 1998年にはSHIAの加盟団体は約20ケ国で約70プロジェクトに参加した。 最近、 SHIAは、 開発協力の体験を文献にまとめ、 また、 分析することに大きな努力を払ってきた。 この結果で言及されるべきことは、障害をもつ女性に対する方策の開発がある。 SHIAは、 また、障害児の問題やCBRについても活動している。 もう一つの重要な要素はプロジェクトのフォローアップと評価の手段の創成である。 この関連では、 国連の標準規則は特に重要である。

SHIA活動の基盤をなしているのはスウェーデンの障害をもつ人が、 開発途上国の障害をもつ人と協力することにあり、 障害とともに生きるという共通の体験に基づいた協調である。実際面での前提条件に違いがあるとしても全世界を通じて障害者は社会の中心から取り残され、 彼らの情況を構築されていない社会の中で生きることを経験している。しかし、 スウェーデンと協力相手国の障害をもつ人がお互いの知識と体験を共有することはSHIA活動の中核をなすものである。これを促進するために、SHIAは特別な配分を受け、 それが加盟団体の代表とそのカウンターパート団体の代表との会合を可能にしている。 その割り当てから、 手話通訳、 エスコートや介助者、 様々なメディア利用の費用を賄うのである。

5.3.2 スウェーデンのセイブ・ザ・チルドレン 

障害をもつ児童は、 セイブ・ザ・チルドレンの優先対象グループをなしていて、 如何にこうした児童に到達すべきかということについて方針と戦略を持っている。 その事業は、戦争下に置かれた児童、 難民児童、 ストリートチルドレン、 勤労児童、 他に危険にさらされている児童など、特に困難な状況にあり障害をもつ少年少女に焦点を当てている。
起点は子供の人権条約であり、 健康、 教育、 安全と保護に対する子供の権利が直接参加の権利とともに強調されている。 障害の事実でなく、 児童そのものが強調されているのである。

セイブ・ザ・チルドレンはとりわけ、実践的な支援、 権利擁護、 研究の3つの分野    で活動している。 これらの事業は、 相互に関連している。 全国また国際機関や政府当局との調整も強調されている。 セイブ・ザ・チルドレンは、 CBRやインクルーシブエジュケーションといったいわゆる障害指向のプログラムにおいて活動しているが、 除々に障害児が児童向けのプログラムの全てに含まれる事を目指して働きかけている。いわゆる障害プログラムが創設されるのではなく、 障害問題が除々に諸プロジェクトの主流となりつつある。

ヴェトナム、 カーボ・ヴェルデ、 イエメン、サントーメにおけるCBRプロジェクトが支援を受けている。 後の三国では、 支援は主として児童に向けられている。 ヴェトナムでは、 教師や教育分野の職員の研修も含まれている。 他の幾つかの国ではセイブ・ザ・チルドレンは子供の人権問題に取り組んでいて障害問題の主流化を目的とする国内組織や、 障害を対象として活動していて子供の人権についての視点を取り入れる組織を支援している。 このための起点となるのは地元の参加が態度に影響を与えるという点である。
他の組織やネットワークと協力することは国際レベルでの活動に重要である。 セイブ・ザ・チルドレンはまた国や国連組織に影響を与えようとしている。 一つの例として、 子供の人権条約に従って諸国がそのように報告しているかどうかについて批判的な見方をしている事がある。 そのねらいは、 国連子供の人権委員会が対象国との話し合いにこの情報を利用することにある。

5.3.3 Diakonia(注4)とNGO

SidaがDiakoniaを通してのヨルダン川西岸/ガザ地区におけるCBRへの支援はその領土における二国間協力の一部である。
他の幾つかのNGOは、 様々な形で、 障害をもつ人のリハビリテーションと教育に関わりのある支援を提供している。 例えば、スウェーデン赤十字社の活動には主要な人道支援事業としてリハビリテーションと義肢の制作の両方が含まれている。

5.4 関係諸機関の協力

スウェーデンの大学やSwedish Handicap Instituteは様々な形でスウェーデンの開発協力に参加して来た。 前述のように、 それらの機関は世界規模で重要な役割を果たして来ており、 プロジェクトの企画、 実施、 フォローアップについてSidaに対し専門的アドバイザーとして機能している。 また、 スウェーデンの資源基盤の改善と受け入れ国のスタッフの技能向上を目的とする研修を開催した。
これらの機関はまたSidaから助成金を受け彼ら独自の研究と手法開発プロジェクトを実施した。 例えば、Swedish Handicap Instituteによる参加支援技術に応用される適性術に関する事業である。団体間の協力により、スウェーデンの資源基盤は拡大した。これにより、スウェーデンのもつ関連知識は、開発協力を通じてより一層の貢献をすることが可能となった。

5.5 まとめ

  • 世界レベルでの世界行動計画と国連標準規則の発展についてのスウェーデンの積極的な関わりあいは意義深い。 同様に、 スウェーデンの団体や機関が様々な国際的コンタクトを取ってきたことは、スウェーデンの経験に貢献し、 スウェーデンの見解を伝えて世界レベルで影響を持つに至ったのである。 一つの結論は、 スウェーデンは世界的な規範的な事業において積極的な役割を引き続き果たすべきと言うことである。
  • 様々なプログラム活動を見たところ、 これらの活動は明確な影響をもたらした。 しかしながら、 様々な活動や関係先との調整をよりよくすることによりその戦略的な重要性を増すことが出来る。
  • 支援は主としてプロジェクトに対して行われてきた。 その一方、 様々な開発プログラムにおける障害問題の総合的な統合のための努力が不足している。 さらに、 障害の問題に関し包括的な話し合いがない。
  • 障害支援が戦略的であるためには、 障害をもつ人を取り巻く総合的な社会状況も包含するべきである。 しかしながら、 理念上、 多くの異なる問題に取り組んでいるCBRプロジェクト以外では、 一つかあるいは少数の分野のみに限定した活動しかされていない。 それはしばしば教育である。 数多くの学校プログラムが成功しており、 それは学校における状況を改善している。 しかしながら、 就学出来るようになる障害児は殆どいないので、総合的な効果は限定されている。
  • NGOの中には政策レベルとプログラム活動両方で活動しているのが幾つかある。 さらに、スウェーデンの障害者団体は、 カウンターパート団体の設立と支援に焦点を当てて来た。それは、 長期的に見れば、 障害者の権利と利害の保護と監視にとっては重大な前提条件である。 こうした活動への支援とNGOとSida間でのより密接な協調がスウェーデンの開発協力に恩恵をもたらしている。
  • 標準規則を評価の基準として用いれば、 開発協力は標準規則で認識される領域のうちのまたは少数の分野にのみ焦点が当てられるという結論が引き出され得る。 他の分野の例としては、 総合的な政策と方法の展開、 能力や制度の開発、社会・心理社会的課題、 文化と意識向上などが挙げられる。
  • 子供の人権条約を基盤とすれば、 Sidaを通じての開発協力は主として第23条の要件を充たすための各国支援、 具体的には障害をもつ少年少女が教育を受けられるようにするためと結論付けられる。 しかし、 2~3の国では、より全体的な取り組みの胎芽がある。 それは、 子供の人権条約の条項をきちんと充たすために必要である。