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CBRガイドライン・導入

運営

はじめに

導入の章で紹介されている、地域に根ざしたリハビリテーション(CBR:Community-Based Rehabilitation)のマトリックスは、5つ(保健、教育、生計、社会およびエンパワメント)の領域と関連要素から構成されている。これは、新たなCBRプログラムの開発に使用できる基本的な枠組みを提供する。現在共通のマトリックスが存在するとはいえ、各CBRプログラムは、物理的、社会経済的、文化的および政治的要因など、さまざまな要因の影響を受けるため、独自の特徴を示し続けるであろう。本章は、地域のニーズ、優先事項およびリソースと関連のある、適切なCBRプログラムの領域と要素の選択方法に関する基本的な理解を、プログラムマネージャーに提示する指針となるであろう。

CBRプログラムはどれも異なるが、その開発の指針として役立てられる共通した一連の段階がある。これらの段階は、通常まとめて運営サイクルと称され、「状況分析(第1段階)」、「企画立案(第2段階)」、「実施とモニタリング(第3段階)」および「評価(第4段階)」から構成される。本章では、プログラムマネージャーが各段階の重要な局面を理解し、すべての主要関係者を含め、最終的には障害のある人々とその家族のニーズを満たす、効果的なプログラムを開発できるよう、さらに詳しく運営サイクルについて解説する。

本章はすべてのCBRプログラムが採用しなければならない決まったアプローチを提供するものではないことに留意してほしい。プログラムは、政府あるいは資金提供機関などとの連携を通じて開発されることが多いため、これらの機関もプログラムの開発方法に関して必要なガイドラインを提供することもあるだろう。さらに本章は、主に新規のCBRプログラムの開発に焦点を絞っているが、既存のプログラムの強化にも役立てられるであろう。

BOX8 インド

インクルーシブな社会体制づくり

モビリティ・インディア(Mobility India)はインドのバンガロールに拠点を置く非政府団体である。1999年以来、障害のある人々が平等な権利と質の高い生活を獲得できるインクルーシブな社会の実現という目標を掲げ、CBRを促進してきた。モビリティ・インディアは、1)バンガロール都市部スラム2)バンガロールから約35km離れた都市辺縁部(アネカルタルク)および3)バンガロールから約210km離れた農村地域(チャムラージナガル地区)の3か所でCBRプログラムを実施している。

これらの各地域におけるCBRプログラムは、自助グループ結成の促進、保健、教育、生計および社会的機会へのアクセスの促進と地域社会の体制作りなど、共通の活動を多数実施しているが、その一方で、活動環境の違いに由来する独自の違いも見られる。

モビリティ・インディアは、評価を通じて、長年にわたり運営に関する貴重な教訓を数多く得てきた。重要とされているのは、以下のとおりである。

  • 運営サイクルの全段階における主要関係者の参加。
  • CBRプログラム開始以前の正確な状況分析の実施。
  • 明確な指標の開発を確保するための、初期計画における確実な投資。
  • 主要関係者との連携および役割と責任の明確な規定-地方自治体との連携は不可欠。
  • ごく一部の障害のある人々だけでなく、地域社会全体の利益となる活動の実施。
  • コミュニティからのCBR人材の採用と、その際の障害のある人々、特に女性の優先。
  • 能力開発を継続的なプロセスとし、障害のある人々とその家族、コミュニティの人々、サービス提供者および地域の指導者あるいは意思決定者など、すべての人の参加を確保。
  • 成功と失敗の体験の共有。

主要概念

CBRプロジェクトとCBRプログラムとの相違点

CBRプロジェクトとCBRプログラムは世界中で実施されている。しかし多くの人々は、この2つの違いをよく理解していない。CBRプロジェクトは通常小規模で、CBRマトリックスの1つの領域(例:保健)における極めて具体的な成果の達成に焦点を絞っている。また期間が短く、開始時期と終了時期が定められている。アルゼンチン、ブータン、コロンビア、スリランカおよびウガンダなど、政府によるCBR支援が限られている所では、地域社会団体や非政府組織によりプロジェクトが開始されることが多い。成功すれば、それをプログラムレベルに拡大することが可能である。例えば、中国、エジプトおよびイランでは、パイロットプロジェクトが全国的なプログラムとなった。一方CBRプログラムは、関連のある複数のプロジェクトを調整しながら運営していくものである。通常長期間にわたり、終了時期を設定せず、プロジェクトに比べ大規模かつ複雑である。プロジェクトとプログラムの特徴は異なるが、本章では「プログラム」という用語を両方に使用する。本章で論じられる運営サイクルと、CBRガイドラインの他の部分で概説されている成果、基本概念および活動案は、プロジェクトとプログラムの両方にすぐに適用できる。

開始

CBRは通常、省庁あるいは非政府組織などの地域社会外の刺激を受けて開始される(1)。関心が地域社会の内部に由来するか外部に由来するかにかかわらず、リソースを利用できるよう確保し、地域社会がすぐにプログラムを開発・実施できるようにすることが重要である(下記参加型運営参照)。CBRプログラムを開始する省庁、部門、地方自治体あるいは組織は、CBRマトリックスのすべての領域を網羅するプログラムを実施することは期待されておらず、またそれは可能ではない。マトリックスの各領域を担当するさまざまな関係者と連携し、総合的なプログラムを開発することが不可欠である。各セクターでは、プログラムとサービスをインクルーシブなものとし、障害のある人々とその家族および地域社会のニーズに応えるため、責任を果たすことが求められる。例えば、保健省は保健セクターで活動している非政府組織が保健領域を担当し、教育省は教育セクターで活動している非政府組織が教育領域を担当する。

地理的対象範囲

CBRプログラムは、地域レベル、地方レベル、あるいは国家レベルで進めることが考えられる。対象地域は、プログラムの実施者、介入分野、利用可能なリソースなどによって異なる。障害のある人々とその家族には、農村地域も含め彼らが所属する地域社会にできる限り近い場所での支援が必要であることを覚えておかなければならない。大部分の低所得国ではリソースが限られているうえ、首都や大都市に集中している。CBR企画者の課題は、地域の状況に即したニーズと既存のリソースの現実を考慮しながら、できる限り自宅に近い場所におけるもっとも質の高いサービスの達成に必要な、最適な解決策を見出すことである(第1段階:状況分析参照)。

CBR運営のしくみ

CBRプログラムはそれぞれ独自のプログラム運営方法を決定するので、本章で1つの全般的なCBR運営のしくみを提示することはできない。しかし、世界各地の既存のプログラムをもとにした運営のしくみの例を、本章の最後にいくつか紹介する(付録参照)。

多くの場合、CBRプログラムの運営を支援する委員会が設立されており、推奨されている。CBR委員会は通常、障害のある人々とその家族、地域社会で関心のある人々、政府当局の代表からなる。委員会は以下の目的に有効である。

  • CBRプログラムの使命と構想の設定。
  • ニーズと利用可能な地域のリソースの確認。
  • CBR人材と関係者の役割および責任の明瞭化。
  • 行動計画の策定。
  • プログラム実施のためのリソースの動員。
  • CBRプログラムマネージャーに対する支援と指針の提供。

参加型運営

すべてのCBRプログラムを貫く重要な流れの1つが、参加である。多くの場合、CBRプログラムマネージャーが最終的な決定を下す責任を負う。しかし、主要関係者全員、特に障害のある人々とその家族が、運営サイクルの全段階に積極的に参加することが重要である。関係者らは、経験や意見および提案の共有により、貴重な情報を提供することができる。運営サイクル全体を通じてこのような人々が参加することで、地域社会のニーズに対応したプログラムが確保できるとともに、地域社会が長期的なプログラムの維持を支援できるようになるだろう(第1段階:関係者に関する分析参照)。

持続的なCBRプログラム

善意はCBRプログラム開始のきっかけとなるが、それを運営し、持続させるには決して十分ではない。一般にこれまでの経験から、政府主導のプログラムや政府が支援するプログラムの方が、市民社会団体によるプログラムよりも、多くのリソースと、多くの人々を対象としたサービスを提供しており、持続性も高い。しかし市民社会団体主導のプログラムの方が、通常、CBRをより適切なものとし、困難な状況の下でも成功させ、広く地域社会の参加と主体性も確保できる。CBRは、政府による支援があり、文化、財政、人材、地方自治体や障害当事者団体などの関係者による支援など、地域の要因に敏感であった場合に、もっとも成功してきた。

CBRプログラムが考慮すべき、持続性に不可欠な材料は、以下のとおりである。

  • 効果的なリーダーシップ-効果的なリーダーシップと運営なくして、CBRプログラムを維持することは非常に難しい。CBRプログラムマネージャーは、関係者がプログラムの目標と成果を達成するための動機付けや刺激、指示および支援に責任を負う。したがって、献身的で優れたコミュニケーターであり、かつ、関係者および広く地域社会から尊敬されている、強力な指導者を選ぶことが重要である。
  • 連携-CBRプログラムが別々に進められる場合、地域社会の中で競合したり、サービスが重複したり、貴重なリソースが無駄になったりする危険性がある。連携を通じて、既存のリソースを最大限活用し、主流化の機会や、より広範な知識と技能、財源に加え、障害のある人々の権利に関する政府の法律や政策に影響を与える意見をさらに得ることができ、CBRプログラムを維持できるようになる。多くの場合、サービス同意書や覚書、契約書などの正式な取り決めにより、連携先の参加を確保し、維持することができる。
  • 地域社会の主体性-成功を収めているCBRプログラムには、地域社会の強力な主体性が感じられる。これは、運営サイクル全段階への主要関係者の参加を確保することで達成できる(エンパワメント:コミュニティを動かすこと参照)。
  • 地域のリソースの利用-外部の人材、財源および物的資源への依存を削減することは、持続性向上の確保に役立つであろう。地域社会は、自らが直面する問題を解決するために、独自のリソースの活用を促進していかなければならない。国のリソースよりも地域のリソースの活用を優先し、他国のリソースよりも自国のリソースを優先するべきである。
  • 文化的要因への配慮-文化は多様であり、ある人々にとって文化的に適切なことが、別の人々には適切ではないことがある。CBRプログラムをさまざまな状況において持続可能にするためには、それが地域の習慣や伝統にどのように影響を与えるのか、プログラムに対し、どのような抵抗が見込まれるか、そしてその抵抗にどう対処するかを検討することが重要である。また、障害のある人々に関する誤った信念と行動を変えることと、地域の実情に合わせてプログラムや活動を変えることとのバランスを見出すことが重要である。
  • 能力開発-CBRプログラムの企画、実施、モニタリングおよび評価にかかわる関係者の能力開発は、持続性の向上に貢献するであろう。CBRプログラムには、関係者の能力開発に役立つ、強力な意識向上とトレーニングの要素を取り入れなければならない。例えば、障害のある人々は能力開発を通じて、主流のイニシアティブへの参加を主張するためのスキルを確実に身に着けることができるだろう。
  • 財政支援-すべてのCBRプログラムで安定した財源を開発することが重要である。政府による資金援助(例:直接融資あるいは補助金)、寄付金(例:プロジェクト案を国内外の資金提供者に提出、現物寄付あるいは資金援助)および自己収入(例:製品の販売、サービス手数料およびサービス料、またはマイクロファイナンス)など、さまざまな資金調達の選択肢がある。
  • 政治的支援-国のCBR政策、国家CBRプログラム、CBRネットワークおよび必要な予算の援助により、障害者権利条約(2)に定められた利益が確保され、すべての障害のある人々とその家族が開発イニシアティブの対象となる。障害問題を政府の法律と政策に取り入れることはまた、保健、教育、生計および社会福祉の各分野におけるサービスと機会へのアクセスという点で、障害のある人々が確実に利益を受け続けられるようにするものである。

CBRプログラムのスケールアップ

CBRプログラムのスケールアップとは、成功したプログラムの効果を広めるということである。これには多数の利点がある。例えば、ニーズが満たされていない障害のある人々にCBRを一層普及し、社会における障害問題に対する意識の向上に貢献し、さらには障害関連の政策やリソースの配分を変えるための支援を増強することもできる。スケールアップには、(i)プログラムの効果の実証、(ii)障害のある人々とその家族による受容、(iii)地域社会による受容、(iv)十分な財源、および(v)明確な法律と政策が必要である。

CBRプログラムのスケールアップには多種多様な方法がある。その1つが、プログラムの地理的対象範囲を広げることである。つまり、プログラムを1つのコミュニティから複数のコミュニティ、あるいは地方、さらには全国レベルへと拡大することだ。しかし一般に、CBRプログラムはサービスを提供しやすい地域で小さな規模から始め、スケールアップの前に成果を示すことが望ましい。多くのCBRプログラムは、特定の機能障害を抱える人々に焦点を絞っているので、スケールアップのもう1つの方法として、別のタイプの機能障害を抱える人々に対象を広げることも挙げられる。

運営サイクル

CBRプログラムの開発や強化を考える際に、運営プロセス全体を1つのサイクルとして視覚化することが役に立つ(図2)。これにより、すべての主要な部分の検討と、それらがお互いにどのように調和し、関連しあうかを明確に示すことができる。本ガイドラインでは、運営サイクルは以下の4段階から構成されるものとする。

  1. 状況分析-この段階では、障害のある人々とその家族のコミュニティにおける現状を考察し、解決すべき問題や課題を明らかにする。
  2. 企画立案-次の段階には、これらの問題や課題の解決のためにCBRプログラムで何を行うべきかを決定し、その方法を立案することが含まれる。
  3. 実施とモニタリング-この段階ではプログラムが実施されるが、正しく進められるように、定期的なモニタリングと見直しがなされる。
  4. 評価-この段階では、プログラムの成果を評価し、それが目標に達しているか否か、またどのように達成されたかを検討するとともに、プログラムの結果、どのような変化が生じたかなど、プログラムの全体的な効果を評価する。

図2 運営サイクル
図2 運営サイクル図2の内容

第1段階:状況分析

はじめに

CBRプログラムを、現実のニーズに対応した、費用効果の高い、実際的なものとするには、各コミュニティに関連のある独自の情報をもとにすることが不可欠である。立案者はCBRプログラムを開始する前に、何が必要か、何をすべきかについて十分な情報があると考えていることが多い。しかし多くの場合、このような情報は不完全であるため、運営サイクルの第1段階として状況分析を行わなければならない。

状況分析は、「我々は今どのような状況にあるのか?」という質問への回答を得ることを目的としている。これにより立案者は、障害のある人々とその家族の生活状況(または背景)を深く理解し、最適な一連の行動を決定することができる。これには情報収集、関係者とその影響の特定、プログラムの主な問題と目的の特定、そして地域社会内で利用可能なリソースの特定が含まれる。これはCBRプログラムの企画立案(第2段階:企画立案参照)に不可欠な情報を提供するので、運営サイクルの中でも重要な段階である。

第1段階の各ステップ

状況分析には以下のステップが含まれる。

  1. 事実および数値の収集
  2. 関係者に関する分析
  3. 問題の分析
  4. 目的の分析
  5. リソースの分析

事実および数値の収集

基本的なデータの収集は、障害のある人々とその生活状況についてすでに知られていることの確認を助ける。また、将来の評価に役立つ、基準となる情報も提供する(第4段階:評価参照)。国レベル、地方レベル、または地域レベルでの、環境、社会、経済、文化および政治の状況に関するデータが収集できる。

例えば、以下に関する情報収集が可能である。

  • 人口 例:障害のある人々の数、年齢、性別、機能障害の種類
  • 生活状況 例:住宅の種類、水と衛生
  • 保健 例:死亡率、死因および疾病の原因、地域の保健サービス
  • 教育 例:就学している障害のある子どもの人数、識字率
  • 経済 例:収入源、平均日給
  • 政府 例:政策と法律、障害に対する関心のレベル、障害者権利条約の批准・実施状況、アクセシビリティ基準および規制
  • 文化 例:文化的集団、言語、慣習、障害に対する態度
  • 宗教 例:宗教的な信念と宗教団体
  • 地理と気候

現地調査には、地方自治体を訪問してのインタビュー、インターネット、政府の出版物、書籍や論文の検索によって得られる文書やデータの検証などが含まれる。

関係者に関する分析

すべての主要な関係者を明らかにし、運営サイクルに最初から参加させることは、参加の確保とコミュニティの当事者意識の確立のために重要である。関係者に関する分析は、CBRプログラムから利益を得られ、プログラムに貢献できる、あるいは影響を与えられる関係者(個人、グループあるいは組織)の特定に有効である。関係者を特定し、その影響力を段階別に記録し、活動のマッピングをするために利用できる手段はさまざまである。SWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)はその1つで、関係者の強みと弱みに加え、彼らが直面する外部の機会と脅威の分析に利用することができる。

主な関係者の役割と責任

関係者に関する分析では、さまざまな関係者の特定が行われる。これらの中には、障害のある人々とその家族、コミュニティの人々(コミュニティの指導者、教師などを含む)、市民社会団体(例:非政府組織、宗教団体および女性団体)、障害当事者団体および政府当局などが含まれる(図3)。CBR人材およびCBRプログラムマネージャーも関係者であることを覚えておかなければならない。各関係者が技能、知識、リソースおよびネットワークを持ち寄り、CBRの開発と実施において特定の役割と責任を果たす。

図3 CBR関係者
図3 CBR関係者図3の内容

障害のある人々とその家族

障害のある人々とその家族は、CBRにおいて極めて重要な役割を果たす。彼らの役割と責任は、CBRガイドライン全体を通じて明らかになるであろう。それらをまとめると以下のようになる。

  • CBRプログラムの運営に関するあらゆる部門において、積極的な役割を果たすこと。
  • 地域のCBR委員会への参加。
  • CBR人材としてボランティア活動をしたり、働いたりすること。
  • 地域社会における障害に関する意識の向上を図ること(例:障壁に注目させ、その撤廃を求めること)。

コミュニティの人々

CBRは、障害のある人々だけでなく、地域社会のすべての人々に利益をもたらすことができる。CBRプログラムを通じて、地域社会の人々が以下の役割と責任を果たすよう促していかなければならない。

  • 障害についてさらに詳しく学ぶ研修に参加すること。
  • 障害のある人々とその家族の機会を制限する可能性がある考えや態度を変えること。
  • 障害のある人々とその家族による地域社会生活への参加を妨げる可能性のある、その他の障壁に対処すること。
  • 模範を示し、障害のある人々とその家族を活動に参加させること。
  • CBRプログラムにリソース(例:時間、資金、設備)を提供すること。
  • 自分たちのコミュニティを守り、障害の原因の解決に取り組むこと。
  • 障害のある人々とその家族に対し、必要に応じて支援を提供すること。

市民社会

市民社会団体の役割と責任は、そのレベル(国際レベル、国レベル、地域レベルあるいはコミュニティレベル)により異なる。また、障害やCBRに関する経験と関与のレベルにも影響される。歴史的には、多くの非政府組織がCBR活動の中心となってきたので、このような組織が新旧のCBRプログラムすべての推進力といえる。一般に、役割と責任には以下が含まれる。

  • 政府の支援が限られている場合のCBRプログラムの開発と実施。
  • CBRプログラムに関する技術的支援、リソースおよびトレーニングの提供。
  • 関係者間の照会ネットワーク開発の支援。
  • 他の関係者の能力開発のためのCBRプログラムの支援。
  • 既存のプログラムとサービスにおける障害の主流化。
  • CBRの評価、研究開発の支援。

障害当事者団体

障害当事者団体は、CBRプログラムを強化するための重要なリソースであり、現在多数の障害当事者団体がCBRプログラムにおいて有意義な役割を果たしている(エンパワメント:障害当事者団体参照)。

障害当事者団体の役割と責任には、以下が含まれる。

  • 障害のある人々の利益を代表すること。
  • 障害のある人々のニーズに関する助言を提供すること。
  • 障害のある人々に対する権利教育を行うこと。
  • 障害者権利条約に則したプログラムの実施など、政府とサービス提供者が障害のある人々の権利に対する責任を確実に果たせるようにするための支援活動およびロビー活動を行うこと。
  • 障害のある人々に対するサービスに関する情報を提供すること。
  • CBRプログラムの運営に直接関与すること。

政府

障害問題は、あらゆるレベルの政府と、保健、教育、雇用および社会福祉など、すべての政府部門に関係がある。政府の役割と責任には、以下が含まれる。

  • 国のCBRプログラムの運営あるいは実施を主導すること。
  • 障害のある人々の権利を支援する適切な法律と政策の枠組みを確実に整備すること。
  • CBRに関する国の政策を開発すること。あるいは、CBRがリハビリテーション政策または開発政策などの関連政策に、戦略として盛り込まれるようにすること。
  • CBRプログラムのための人材、物的資源、財源を提供すること。
  • 障害のある人々とその家族がすべての公的なプログラム、サービスおよび施設を利用できるようにすること。
  • 全国にリハビリテーションサービスを提供する運営方法あるいはサービス提供の仕組みとして、CBRを開発すること。

CBRマネージャー

運営に関する役割と責任は、誰がCBRプログラムの導入と実施に責任を負っているか、また、プログラムが国レベルか、地方レベルか、あるいは地域レベルかなど、地方分権化の程度によって決定される。一般に、CBRプログラムマネージャーの役割と責任には、以下が含まれる。

  • 運営サイクルの各段階の促進。
  • プログラムの運営に関する政策、制度および手続きの策定。
  • 地域社会内外でのネットワークと連携の構築と維持。
  • 運営サイクルの各段階への主要関係者全員の参加の確保と、成果および進展に関する十分な情報提供。
  • 財源、人材および物的資源などのリソースの動員と管理。
  • 地域社会の能力開発および開発部門における障害問題の主流化。
  • 課題と責任の委任による日々の活動の運営。
  • CBR人材に自らの役割と責任を自覚させ、定期的に会合をもち、その実績と進捗状況を見直し、トレーニングプログラムを企画するなど、CBR人材に対する支援と監督。
  • 進捗状況と実績をモニタリングする情報システムの管理。

CBR人材

CBR人材はCBRの中心であり、障害のある人々とその家族、および地域社会の人々にとってのリソースである。CBR人材の役割と責任は、CBRガイドライン全体を通じて明らかになるであろう。それには以下が含まれる。

  • 障害のある人々の特定と、その機能についての基本的な評価の実施、および簡単な治療介入。
  • 障害のある人々を支援するための家族に対する教育とトレーニング。
  • 地域社会内で利用可能なサービスに関する情報提供と、障害のある人々とその家族に対するこのようなサービスの紹介およびフォローアップ。
  • 障害のある人々による自助グループ結成の支援。
  • 保健センター、学校および職場と連絡をとりながら、障害のある人々のアクセシビリティとインクルージョンの改善に向けた支援活動。
  • 障害のある人々の家庭および地域社会生活へのインクルージョンを促進するため、地域社会における障害に関する意識の向上を図る。

表1:ベトナム国家CBRプログラム-主な関係者の役割と責任

レベル 関係者 役割と責任
障害のある人々とその家族 在宅ベースのリハビリテーションの実施、住宅環境の改善、組織の結成、協力者(ボランティア)として活動
CBRボランティア 早期発見、照会とフォローアップ、データ収集と報告、意識向上、動機づけ、障害のある人々・家族・コミュニティとともに進める支援活動、他部門との連携の確立
コミューン(村の集合体) 運営委員会、CBRワーカー 協力者による活動の運営、調整と支援、報告、リソースの動員と配分、在宅ベースのリハビリテーションの実施、障害者団体の促進
地区 運営委員会、CBRマネージャー、CBRセクレタリー、CBRトレーナーおよび専門家 運営と調整、モニタリング、報告、在宅ベースのリハビリテーションの支援、診断、アセスメント、トレーニング、リソースの配分
運営委員会、CBRマネージャー、CBRセクレタリー、トレーナーおよび専門家 政策開発、リソースの配分、施設ベースの介入、全般的な調整と運営、モニタリングと評価、在宅ベースのリハビリテーションの支援、診断、アセスメントとトレーニング
上級指導者の団体、専門家、政策立案者 政策開発、資料の開発、施設ベースの介入、トレーニング、調査研究

問題の分析

CBRプログラムは、コミュニティにすでに存在する障害のある人々とその家族の問題を解決するために設けられる。問題の分析により、主な問題の内容と、その根底にある原因と影響あるいは結果が明らかになる。ここで確認されたもっとも重大な問題が、その後、CBRプログラムの主な目的となる(第2段階:企画立案:プログラム計画の準備参照)。CBRガイドラインの各領域と要素に関する解説では、「CBRの役割」という項目の中で、CBRプログラムの目的として考えられることを特に取り上げている。

問題の分析は、前述の主な関係者と協力して実施しなければならない。課題に関する関係者の意見なくしては、問題の性質、ニーズおよび解決策は明確にされない。関係者とともに行う問題の分析には、ワークショップという方法が有効で、共通の理解と目的・行動の設定に役立つ。しかし、さらに弱い立場にある人々が自由に意見を表明できるようにするには、さまざまな関係者との複数のワークショップを実施しなければならない場合もあることに留意する必要がある。

問題の分析には多種多様な手段が利用できる。もっとも一般的で広く利用されている方法の1つは「問題の木」であろう(3)(4)。「問題の木」は、状況を図で視覚化する方法で、問題の影響を1番上に、原因を1番下に示す。

目的の分析

目的の分析では、どのような解決策が可能であるかを決定するスタート地点を提示する。この分析を完了するのに役立つツールが「目的の木」で、前述の「問題の木」と似ているが、問題ではなく目的を検討する点が異なっている(3)(4)。「問題の木」を使用した場合、それは容易に「目的の木」に変更することができる。「目的の木」を完成させるには、「問題の木」にある原因(マイナス)を目的の記述(プラス)へと変換する。分析中に明らかにされた目的は、プログラム計画の基礎となるため、企画立案段階において重要である。通常、多くの問題と目的がプログラムサイクルのこの段階で特定されるが、プログラムで重視するべき主要な分野を優先させることが重要である(第2段階:企画立案参照)。

リソースの分析

たとえ非常に貧しくても、すべてのコミュニティにはリソースがある。リソースの分析の目的は、CBRプログラムが利用できる、あるいはよりどころにすることができるような、コミュニティで現在利用可能なリソースを明らかにすることである。また、リソースの分析をする際、障害のある人々のニーズに対処するためにこれらのリソースの能力(例:強みと弱み)を確認することも重要である。リソースの分析では、人材、物的資源(例:インフラストラクチャー、建物、輸送機関、設備、財源および既存の社会制度)と、各種団体、グループおよび政治機構などの組織を明らかにしなければならない。これらの所在地を地図に記すことが、しばしば役に立つ。

第2段階:企画立案

はじめに

CBR企画者は、第1段階で、第2段階(企画立案)へ進むための十分な情報を得られたはずである。企画者は、障害のある人々の状況と、CBRプログラムが運営される背後事情にについて明確なイメージをもつことから、この段階を始めなければならない。つまり、障害のある人々の数や、このような人々とその家族のニーズ、考えられる問題解決策、そしてコミュニティのリソースの利用可能性についての情報を得ておかなければならない。

企画を通じて、将来を見据えた、準備することができ、運営サイクルの次の段階(第3段階:実施とモニタリング)への指針を得ることができる。また、優先的なニーズが明らかにされ、望ましい目標の達成に向けた明確な地図(計画)が作成され、モニタリングと評価のシステムが検討され、CBRプログラム計画の達成に必要なリソースが明らかにされるなど、CBRプログラムのすべての局面が検討される。

第2段階の各ステップ

主な関係者との共同企画

関係者によるフォーラムの開催は、第1段階で判明した内容を、優先順位の決定、プログラム計画の立案、予算準備のために再検討し、議論する優れた方法である。障害のある人々とその家族が、企画段階から十分に意見を表明できることが重要である。そのためには、このような人々が有意義な参加を実現できるよう、フォーラムの開催方法を考慮しなければならない。例えば、さまざまな種類の機能障害を抱えている人々にとってアクセシブルなフォーマットで情報を提示しなければならない。第1段階でも述べたように、障害のある人々とその家族など、関係者グループ別にフォーラムを開催し、容易かつ自由に意見を発表することができるようにする必要もあるであろう。

優先順位の決定

第1段階では、CBRプログラムで解決できそうな多種多様なニーズが明らかにされる可能性が高い。しかし残念ながら、リソースは無限ではないため、優先順位を設ける必要がある。優先順位を決定する際には、もっともニーズが高い所、もっとも変革の可能性が高い所、リソースの利用可能性を考慮することが役立つ。優先順位の決定に主な関係者が参加することは、プログラムがニーズに対応した適切なものとなるようにするために重要である。優先順位の決定には技術と現状認識が必要であり、ときには外部のファシリテーターがプログラムの目標からの逸脱を防ぐ手助けをすることができるだろう。

プログラム計画の準備

ロジカルフレームワーク(「ログフレーム」)は、CBRプログラムの計画を準備するために利用できる企画ツールである。ログフレームにより、プログラムの成功に必要なすべての局面が考慮できる。その目的は、以下の質問に回答することである。

  • プログラムで達成したいことは何か?(目標と目的)
  • プログラムでは、これをどのようにして達成するか?(成果と活動)
  • プログラムでこれが達成されたことをどのようにして知るのか?(指標)
  • プログラムでこれが達成されたことをどのようにして確認できるのか?(検証の手段)
  • 途中で経験する可能性のある問題は何か?(リスク)

表2:ロジカルフレームワーク

  要約 指標 検証のための情報源 前提条件
目標        
目的        
成果        
活動   必要なリソース 費用  

以下の各ステップを理解することは、ログフレームを使用してCBRプログラム計画を準備する際に重要である。ログフレームの一般的な構成を示した表2と、完成されたログフレームの例を示した表3を参照してほしい。以下のログフレーム用語の一部は、他の組織や資金援助団体などで使われている用語と異なる場合もあることに注意してほしい。

目標の決定

何をするか、すなわち活動について考える前に、プログラムを通じて長期的に達成したいことは何か、すなわち目標を、十分に理解することが重要である。目標は、CBRプログラムが意図する最終的な影響を述べたものである。それは、問題あるいはニーズがもはや存在しない、あるいは状況が著しく改善された、望ましい最終結果である(第1段階:問題の分析参照)。

目的の提示

プログラムの目的では、目標達成に向けて、プログラムを通じてもたらされることを望む変化を述べる。プログラムの運営を容易にするため、通常、目的は1つだけとする。しかし一部のCBRプログラムは、CBRマトリックスのいくつかの異なる領域・要素(例: 保健と教育)に重点的に取り組みたいという考えから、2つ以上の目的を掲げていることがある。この場合、別のログフレームが必要となるが、これらのログフレームではすべて同じ全般的な目標を共有する(第1段階:問題の分析参照)。

成果の定義

成果とは、CBRプログラムで達成したいと望んでいることである。それは広く活動分野全般に渡る。通常、各ログフレームには3個から6個の成果が挙げられる(第1段階:目的の分析参照)。

活動の決定

活動とは、目的を達成し成果を得るために実施しなければならない作業あるいは介入である。簡単かつ重要な活動だけがログフレームにリストアップされる。さらに詳しい活動は、後に運営サイクルの中で(例:作業計画を開発する際に)検討される(第3段階:実施とモニタリング:詳細な作業計画の作成参照)。

指標の設定

指標とは、CBRプログラムの成果を得ることに向けた進捗状況を示す目標で、モニタリング(第3段階:実施とモニタリング参照)と評価(第4段階:評価参照)の際に重要である。CBRプログラムの指標では、以下を評価する。

  • サービスの質およびサービス提供の迅速性。
  • プログラム活動は対象者にどの程度利用されているか。
  • サービスの受け入れやすさと実際の利用状況。
  • プログラム実施に関わる費用。
  • プログラムの実施状況は実施計画とどの程度一致しているか。
  • プログラム実施の全体的な進捗状況と進展、およびこれに対する障壁。

指標を設定する際には、SMARTにしなければならないと覚えておくことが重要である。

  • Specific(具体的に)-指標を作成する際には、達成したい変化の範囲、すなわち量(例:程度、あるいは個数)と、達成したい変化の種類、すなわち質(例:満足度、意見、意思決定能力、あるいは態度の変化)、そして変化の時間的尺度、すなわち時間(例:日時あるいは回数)を具体的に示す必要がある。
  • Measurable(測定可能に)-指標を測定することは現実的に可能か?
  • Attainable(達成可能に)-妥当な費用による指標の達成は可能か?
  • Relevant(関連づけて)-指標と測定対象との関連性はあるか?
  • Timely(タイミング良く)-必要に応じて指標用の情報を収集することは可能か?

検証のための情報源の決定

指標設定後は、各指標を測定するためにどのような情報が必要か、すなわち検証のための情報源を決定することが重要である。これには、報告書、議事録、出席記録、財務諸表、政府統計、調査、インタビュー、トレーニング記録、通信あるいは会話の記録、事例研究、週刊・月刊・季刊プログラム報告書、プログラム中間評価あるいは最終評価などがある。検証のための情報源を決定する際には、いつ、どこで、そして誰によってデータが収集されるのかを考慮することが重要である。

必要な前提条件についての検討

ログフレームの前提条件の欄を完成させるため、プログラム実施中のリスクと失敗する可能性のある事項を検討する必要がある。どのCBRプログラムにも関連リスクは存在する。しかし、それらを早い段階で明らかにすれば、途中で遭遇する不測の事態をほぼなくすことができる。リスクが特定されたら、すぐにプログラム計画を変更して対処し、リスクを軽減したり、排除したりすることができる。リスクはその後、プラスの記述(前提条件)へと変更され、ログフレームに盛り込まれる。

モニタリングおよび評価計画の準備

すべてのプログラムにはモニタリングと評価のシステムを備えなくてはならない。プログラムが導入されてから、できるだけ早い時期に情報収集する必要があるため、このようなシステムは企画段階から検討することが大切である。プログラム計画において明らかにされた指標と検証のための情報源が、モニタリングと評価のシステムの基礎となる(第3段階:実施とモニタリング第4段階:評価参照)。

必要なリソースの決定

CBRプログラムに必要なリソースは、プログラム開始時にすぐには利用できない可能性があるが、プログラム活動の実施に必要なリソースとその入手方法について考慮することは重要である。既存のリソースを明らかにするために第1段階で実施したリソースの分析に立ち戻り、これを参考にすることを忘れてはならない(第1段階:状況分析:リソースの分析参照)。以下のリソースについて検討しなければならない。

人材

プログラムの実施に必要な職員の種類。 例:プログラムマネージャー、CBR人材、総務アシスタントや運転手

物的資源

プログラムの実施に必要な施設および設備の種類。 例:事務所、家具、コンピューター、携帯電話、車両、視聴覚機器およびリハビリテーション機器

財源

費用は、新規のプログラムを制限する主要因となり得る。このため、必要な資金量を慎重に検討することが重要である。そのための最善の方法が予算の作成で、CBRプログラムが既存の資金を利用しているか、あるいは寄付金を利用しているかにかかわらず、予算を立てることは常に重要である。

予算の作成

予算には、一定期間活動を実施するために、プログラムを通じて調達・消費する予定の資金額を記載する。予算は、透明な財務管理、企画(例:プログラムにかかる費用に関する見積もりがわかる)、資金調達(例:資金提供者に対する、資金の使途についての情報を提供)、プログラムの実施とモニタリング(例:実費と予算との比較)、評価のために重要である。

予算には、上記の「必要なリソースの決定」の項で概説したリソース関連の費用を反映させなければならない。予算の作成は極めて慎重に行うことが重要である。十分な予算がなければプログラム活動の一部を実施できなくなる可能性がある。一方で、一部の事項に関してあまりに高い予算を設定した場合、資金提供者がプログラムへの資金提供を渋る可能性もある。

表3 保健領域のログフレームの例

(別ファイル:表3.保健領域のログフレームの例参照)

第3段階:実施とモニタリング

はじめに

実施とモニタリングという第3段階には、第2段階で策定された計画を実行に移し、すべての必要な活動が予定どおり実施され、必要な成果を上げられるようにすることが含まれる。実施中は、CBRプログラムの進捗状況を継続的にモニタリングすることが重要である。期待される成果を上げ、最終的には目標と目的を確実に達成するために、短期計画の決定と変更ができるよう、モニタリングを通じてCBRマネージャーに情報が提供される。モニタリング制度は第2段階で計画し、指標と検証のための情報源を明らかにしておかなければならない。第3段階では、これらのモニタリング制度が実施され、情報の収集、記録、分析、報告と、CBRプログラム運営への利用が可能となる。

第3段階の各ステップ

以下のステップは、必ずしも実施順ではない。

詳細な作業計画の作成

実施段階の最初の部分は、プログラム計画を利用し、チームと他の関係者の助けを借り、以下の内容を盛り込んださらに詳細な作業計画を作成することである。

  • 各活動案を達成させるために必要な具体的な作業。
  • 各作業の実施時期。開始日時と終了日時。
  • 各作業の完了を支援する担当者。

作業計画の中のすべての情報を表にまとめることは、明確で視覚的な概要または実例を示すために有用である。一般に使用されるフォーマットはガントチャートである(3)

リソースの動員と管理

財源

資金調達:財源を探すことは、プログラムの新規開発や、既存のプログラムの活動継続に不可欠である。CBRプログラムの財政は、多種多様な財源を動員して賄われるが、可能であれば、プログラムの長期持続性に貢献することになる地域社会ベースの資金調達を中心とするべきである。地域社会における資金調達源として考えられるのは、以下のとおりである。

  • 地方自治体からの助成金や補助金。
  • 地域の企業からの寄付金と資金提供。
  • 市民社会団体 例:ロータリークラブ、ライオンズクラブ。
  • 必要な財力を備えている障害のある人々が支払うサービス料や利用料金。
  • 宝くじ、社会福祉関係のイベント、コンクール、その他の特別なイベント。
  • 収入を得られる活動。
  • マイクロファイナンスや地域社会ベースの回転基金。

地域で十分なリソースが調達できない場合、CBRプログラムの開発と実施のための資金調達は、地方レベル、国レベル、あるいは国際レベルで行う必要がある。

財務管理:財務管理のための透明性のある制度を確立することは重要である。これによりプログラムは、資金提供団体、コミュニティの人々、障害のある人々自身などの関係者にとって説明責任をもつことになる。財務管理はプログラムマネージャーの重要な役割であるが、特に大規模なプログラムで多額の資金を伴う場合は、他の人々も関与する場合がある。財務管理には以下が含まれる。

  • 費用が、企画段階で概要を定めた活動、あるいはプログラムマネージャーの合意を得た活動に関連していることを確認する仕組みを備えること。
  • 財務記録を的確に維持すること。
  • すぐに参照できるよう、財務関係の数字を更新すること。
  • チェックアンドバランスの制度を導入すること。
  • プログラムの財務状況に関する情報を、すべての関係者に対し定期的に提供すること。

人材

採用:CBRプログラムマネージャーと人材を採用する際は、可能であればコミュニティから人材を選んだ方が良い。地域の文化と言語に対する十分な知識と、コミュニティの人々との連絡が取りやすい人材が確保できるからである。CBRプログラムではまた、障害のある人々やその家族を採用することも、強力に進めるべきである。これにより、CBRの原則(導入:現在のCBR参照)を守り、このような人々のエンパワメントに貢献できるからである。すべての場合において、候補者の知識、技能および仕事を遂行する能力に基づいた採用を実施しなければならない。また、採用の手続きの前に、職務記述書を準備しなければならない。これは通常、職務と責任、必要な経験について概要を述べたものである。

CBRプログラムによっては、特にリソースが限られている場合、ボランティアの採用も検討する場合がある。ボランティアの場合、その活動に対して賃金は支払われない。その代わりボランティアは通常、何らかの謝礼を受け取る。コミュニティには、障害のある人々とその家族、学生、専門家など、CBRプログラムのためにボランティア活動をしたいという意欲のある人々が大勢いるだろう。ボランティアを採用する長所と短所の両方を検討することが重要である。例えば、ボランティアは通常、地域に関する知識を十分に備えており、費用効果も高いが、活動時間に限りがあり、人の入れ替わりも多い。

トレーニング:CBRプログラムマネージャーと人材には、その役割と責任を果たすことができるよう、幅広い知識と技能が必要である(第1段階:状況分析:関係者に関する分析参照)。最近、CBRマトリックス(導入:現在のCBR参照)とCBRガイドラインが開発されたため、新たなトレーニングが必要となるであろう。既存のトレーニングプログラムの更新と強化、あるいは新たなトレーニング計画の開発がCBRプログラムに必要となる。

世界各地でプログラムマネージャーと人材の両方を対象とした、広範囲にわたるCBRトレーニングプログラムが利用できる。トレーニングプログラムの内容と期間はすべて異なり、さまざまな主催者によって実施される。例えば、第三者機関がCBR人材向けのディプロマコースを提供している国もあれば、公式に認定されたトレーニングプログラムはなく、トレーニング期間もほんの2、3週間か2、3か月間にすぎない国もある。

CBRワーカーを対象としたトレーニングは、障害のある人々とその家族に質の高いサービスを提供する能力の向上を目的としている。トレーニングは広くさまざまな分野を網羅しており、障害のある人々の権利、地域社会開発およびインクルージョン実践、コミュニケーション、基本的なリハビリテーション技術(例:認定、基本的なスクリーニングとアセスメント、基本的な治療活動)、グループ運営(例:自助グループの結成)などが含まれる。

CBR人材を対象としたトレーニングを開発する際には、どのような内容が適切かを慎重に検討することが重要である。非常によく見られるのは、理学療法士や作業療法士などのリハビリテーション専門家を対象としたコース内容に基づくトレーニングである。このようなトレーニングは、地域社会の開発に必要な技能ではなく、高度な医学的・技術的技能の開発を中心としているので、不適切で非現実的であることが多い。

CBRプログラムマネージャーを対象としたトレーニングは、プログラム活動の効果的かつ効率的な運営のための能力開発を目的とする。プログラムマネージャーは、運営サイクルの4つの段階を熟知していることが重要であり、それがプログラムの成功の鍵となる。プログラムマネージャーはまた、障害とCBR戦略を理解していなければならない。

BOX9 ソロモン諸島

より良いケアの提供のための専門教育

2010年、ソロモン諸島高等教育大学(Solomon Islands College of Higher Education)では、CBR戦略に基づき、地域に根ざしたリハビリテーションのディプロマコースを提供する。このコースは、CBR戦略を州レベルで実施するための技能と知識を習得させることを目的としている。2年間のコースは、以下の分野を網羅している。

治療サービス技能-障害の種類と理学療法、作業療法および言語療法の基本的な実践技術について学ぶ。

コミュニティリハビリテーション技能-コミュニティによる障害の理解と、障害のある人々への平等な機会の提供に役立つ、コミュニティとともに活動する技能。

地域社会開発技能-地域社会において障害に関する意識を高める地域社会のプロジェクトとグループを立ち上げる技能。

CBR技能の実践とフィールドワーク-学んだ内容すべてをコミュニティの現実の人々を対象に実践。

コース修了後、修了生はCBRユニット(保健・医療サービス省)で州のフィールドワーカーや、病院所属の治療アシスタントとして活動するための適切な技能と知識を身に着けることになる。保健部門以外では教育機関や非政府組織も活動分野として可能性がある。

スタッフの育成、支援および監督:スタッフの育成(例:継続トレーニング)は、CBRプログラムマネージャーと人材がすでに備えている技能を刷新し、必要に応じて新たな技能を開発するうえで重要である。既存のトレーニング課程や関連分野の他の組織・専門家からのトレーニング資料など、コミュニティで利用可能なリソースが、継続トレーニングに活用できることが多い。

スタッフに対する十分な支援と監督が行えず、失敗に終わってしまうCBRプログラムもある。CBR人材はCBRプログラムの主力となるため、マネージャーは人材の声を聞き、その役割を支援しなければならない。支援と監督には、明確な監督と指示・報告系統を確立し、人材に自らの役割と責任を自覚させ、定期的な業績評価を行うことが含まれる。プログラムマネージャーは、CBR人材が仕事を大量に引き受けすぎたときや、あまりに集中的に、また長期に渡り活動している際に陥ることがある「燃え尽き症候群」に注意することが重要である。

BOX10 パプアニューギニア

CBR人材の信頼性の強化と地位の向上

パプアニューギニアでは、短期間のトレーニングの後、CBR人材は児童の内反足と成人の白内障についてスクリーニングと必要な医学的介入のための紹介を行えるようになる。このような介入は、これらの機能障害を抱える人々とその家族に対して非常に効果的であり、同時に、コミュニティのCBR人材の信頼性を強化し、その地位を向上させる。

活動案の実施

プログラムマネージャーは活動案を熟知し、すべての活動が計画どおりに実施されるよう、必要な準備を整えることが可能でなければならない。CBR活動の詳細な記述は、各領域に関する説明(ブックレット2-6参照)と付録冊子(ブックレット7参照)にあるので、ここでは省くが、ほとんどの活動は以下の主要な分野に該当する。

意識向上

CBRで実践される意識向上活動は、障害に関する情報と知識を主な関係者に提供し、その態度と行動に変化をもたらすことを目的としている。また、CBR戦略とプログラムを支援し、関係者の関与と参加を促すことにも活用される。

調整およびネットワークづくり

CBR関係者との良好な関係と連携の構築には、調整・ネットワーク活動が必要である。これらは知識とリソースを共有し、重複を減らし、コミュニティの力を結集するための重要な活動である。

主流化

主流化活動は、障害のある人々が完全参加できるようにし、保健、教育、生計および社会部門などの各開発部門内で、完全参加のための支援を受けられるようにする。主流化活動には、平等な機会へのアクセスを確保するための合理的配慮など、具体的な措置が伴う。

サービスの提供

CBRプログラムはそれぞれ、取り組み対象として選択したCBRマトリックスの各部門に応じて、さまざまな種類のサービスを提供する。サービス提供にかかわる活動の多くは、CBR人材によって実施される。活動は、障害のある人々の認定と主流・特別サービスの紹介から、基本的なリハビリテーションの提供と簡単な支援機器の提供に至るまで、さまざまである。

アドボカシー

歴史的に見て、CBRプログラムでは支援活動を軽視し、その代わりに障害のある人々へのサービスの提供を中心に行ってきた。保健、教育、生計および社会部門だけでなく、その他の地域社会生活の各局面においても、障害のある人々の平等な機会と権利の達成を確保するために活用できる、多種多様な支援活動がある。

能力開発

主な関係者は、能力開発を通じて、その役割と責任を果たす十分な知識や技能を確保できる(第1段階:状況分析:関係者に関する分析参照)。主な関係者の能力開発をはかる1つの方法としてトレーニングがあるが、これはガイドライン全体を通して、望ましい活動として取り上げられている。すべての関係者が同じ種類または同じレベルのトレーニングを必要としているわけではなく、それぞれの期待される役割と責任、そしてそこから生じるニーズに基づいたトレーニングでなければならない。関係者の中には、短期間のワークショップ、セミナーあるいは説明会だけで障害問題に敏感に反応し、CBR戦略に適応できる者もいれば、正式なトレーニングプログラムを必要とする者もいる。

CBRプログラムでは、コミュニティのリソースを節約し、最大化するために、現在地域で実施されているトレーニングプログラムを明らかにする必要がある。考えられるトレーニング関連のリソースとしては、政府機関、主流の開発機関、および障害問題を専門とする非政府組織が挙げられる。CBRに関する十分な知識を備えた予備要員と、その知識を他の人々に教える技能とが、地域レベルで常に利用できるようにするため、CBRトレーニングの実施方法についてトレーニングを行うことも重要である。

モニタリング

モニタリングとは?

モニタリングでは、プログラム活動の記録を行う。これには、実施段階全体を通じて情報を定期的に収集・分析することが含まれる。これは(CBRプログラムマネージャーと人材によって実施される)プログラムの内部機能であり、どの活動が成功し、どの活動が失敗するかを明らかにする手助けをし、必要に応じて変更できるようにする。優れたモニタリング制度が存在し、それが効果的に機能すれば、プログラムの評価もはるかに容易になる(第4段階:評価参照)。

モニタリングの各ステップ

指標の設定:指標は第2段階:企画立案で設定しておかなければならない。

情報収集の方法の決定:モニタリング情報の収集方法(検証のための情報源)の決定も、第2段階で済ませておかなければならない。

情報の収集と記録:情報を収集し、記録する正式な手順を設けなければならない。この手順はできるだけ単純にし、必要な情報のみを収集することが重要である。すべてのスタッフはこの手順に従い、この利用方法に関する研修を受けなければならない。例えばスタッフは、データ収集フォームの正しい使用方法について研修を受ける必要がある。非公式な手順もまた有用で、例えばCBR人材に、ノートや記録日誌に活動についての詳細なメモを継続して取るよう求めることもできる。また、情報収集の定期的なスケジュールを確立することが重要で、プログラムの報告にかかわるニーズに合わせて、毎日、毎週、毎月あるいは毎四半期に設定することができる。

情報分析:情報の収集と記録は、分析よりもはるかに容易である場合が多い。しかし、CBRプログラムマネージャーが情報を詳細に検討しなければ、プログラム活動の進捗状況を見ることはできず、潜在的な問題を明らかにすることはできないであろう。情報分析の後、実際に何が起こっているのかを調べるための、さらに詳しい調査を実施しなければならない場合もある。

情報の報告と共有:モニタリングの結果を主な関係者に報告し、共有することにより、プログラムの透明性と信頼性が明らかになる。モニタリング報告書には、報告されている活動・作業分野、期間内に計画されていた活動と終了した活動、プログラムの成果に向けての進捗状況、予算と実費の対比、達成事項、制約・問題と講じられた措置あるいは推奨された措置、教訓などに関する情報を盛り込まなければならない。報告の義務は、CBRプログラムの運営機構によって異なる。例えば地域レベルでは、CBR人材はプログラムマネージャーに毎週報告しなければならず、プログラムマネージャーは毎月、さらに上のレベルに報告する必要がある。

情報管理:CBRプログラムを通じて、文書、報告書、通信および会計関係の書類など、多くの情報が生みだされる。情報管理の一手段として、効率的なファイリングシステムが挙げられるが、これにより、モニタリングの際に非常に多くの時間を節約し、誤解を避けることができる。機密情報が収集される場合は、必ず安全な場所に保管することも重要である。

第4段階:評価

はじめに

運営サイクルの最終段階である評価には、現在進行中の、あるいは終了したCBRプログラムの評価が含まれ、プログラム計画(第2段階:企画立案参照)に概要が記されている成果が達成されたか否か、また、最初の状況(第1段階:状況分析参照)がどのように変化したかを判断するのに役立てられる。評価の結果、プログラムの継続、変更、あるいは中止を決定することができ、さらに、障害のある人々の機会均等化、貧困削減および社会的インクルージョンにとって、CBRが優れた戦略である重要な根拠を提示することができる。

CBRプログラムマネージャーの中には、自分の失敗や弱みをさらけ出すことを恐れ、評価の実施に懸念を抱く者もいる。完全に順調に進行するプログラムはないこと、そして非常に成功を収めているプログラムであっても、その途上で問題を抱えていることを理解することは大切である。CBRプログラムを成功させるには、プログラムが直面する問題を熟考し、そこから教訓を得、その学びを将来の計画に利用しなければならない。

マニュアルではさまざまなアプローチや方法について非常に複雑な説明をしていることが多いため、多くの人々が評価は困難であると考えている。その結果、CBRプログラムのスタッフの多くは、評価を実施するには専門家にならなければならないと考えているようだ。しかし、適切な水準の企画と準備があれば、簡単な評価手順により、相当量の有用な情報を生み出すことができる。

評価

評価とは?

評価とは、簡単に言えば価値判断である。プログラムの妥当性、効率性、効果、影響および持続可能性が、評価で検討されなければならない中核要素である。CBRプログラムは、評価を通じて経験から学び、その教訓を現在の活動の改善に生かし、将来の行動に向けての代替案を慎重に選択して、より良い計画を進めていくことができる。

誰が評価するのか?

評価は、CBRプログラムに携わる内部のスタッフが実施する場合(自己評価)と、独立した外部の個人あるいは機関が実施する場合(外部評価)とがある。それぞれのアプローチに長所と短所があるため、評価へのアプローチはプログラムによって異なる。2つのアプローチを組み合わせて評価を行うのが理想的である。

いつ評価するか?

評価は継続的に実施されるものではないため、モニタリングとは異なる。評価は、プロジェクトサイクルの特定の時点でのみ実施される。プログラム実施中に実施される場合もあれば、終了直後、あるいはしばらくたってから(例:2、3年後)実施される場合もある。

評価の各ステップ

CBRプログラムの評価方法は、何を評価するか、誰の依頼か、誰が実施するかによって決まる。一般に、以下の各ステップから構成される。

評価対象を絞る

第1のステップには、評価を実施する理由(目的)や、評価を通じて回答を得たい質問内容の決定など、評価の焦点を決定することが含まれる。

プログラムの全局面を1つの評価で査定することはできない。そこで、評価の目的を慎重に検討することが重要となる。以下の目的が考えられる。

  • CBR人材がその役割と責任を完全に果たせるか否かを判定し、さらなるトレーニングが必要か否かを決定する。
  • どの活動がもっとも成功したかを判定し、プログラムのどの局面を継続すべきか、あるいは中止すべきかを決定する。
  • プログラムが計画どおりの効果を発揮しているかを判定し、他の場所で同じ戦略を実施するか否かを決定する。
  • リソースが十分利用されているか、成果が得られたか、手続きは守られているかを判定し、プログラムの今後を決定するために役立てる。

評価の目的を確認したら、次は、評価を通じて回答を得るための質問を作成することが可能となる。これらの質問は、通常「はい」または「いいえ」で回答できるほど単純なものではない。プログラムの妥当性、効率性、効果、影響および持続可能性にかかわる多種多様な質問が考えられる(表4:評価の構成要素参照)。

表4:評価の構成要素

妥当性 プログラムは障害のある人々とその家族、地域社会のニーズを満たしているか?
効率性 リソース(人材、財源および物的資源)は最善の方法で利用されてきたか?
効果 プログラムは、質、量および時間の点で、成果を上げたか?
影響 より広い目標は達成されたか? プログラムを通じて、障害のある人々と家族の生活はどのように変化したか? プログラムは、障害のある人々に対する態度と行動に関して、地域社会にどのような影響を与えたか?
持続可能性 外部の支援が縮小された場合、あるいは撤回された場合、プログラムの継続は可能か?

情報収集

第2のステップには、以下の課題を考慮し、評価を目的とした質問への最良の回答方法を決定することが含まれる。

  • 誰が情報を提供できるか-関係者は非常に優れた情報源である。情報は、障害のある人々とその家族、他の地域社会プログラム、地方自治体当局(例:国家統計局)などから収集できる。CBR人材とその他の専門家も、プログラムの成果とともに、通常、実施した活動や介入の記録を保持しているので、優れた情報源となり得る。
  • どのようにして情報収集できるか-情報収集にはさまざまな方法があり、それぞれに特有の長所と短所がある。通常、評価のための情報収集には2つ以上の方法が使用される(表5:データ収集方法参照)。
  • 情報はいつ収集するべきか-情報はさまざまな段階で収集することができる。プログラム開始以前の情報収集により、基準となるベースラインデータが得られる(第1段階:状況分析参照)。ベースラインデータは、CBRプログラムの影響を測定する際に重要である。プログラム開始以前の状況が不明の場合、そのプログラムが何らかの影響を与えたか否かを測定することは難しいからだ。情報はまた、プログラム進行中(第3段階:実施とモニタリング:モニタリング参照)、あるいはプログラム終了時にも収集できる。

表5:データ収集方法

方法 全般的な目的
アンケート X X 障害のある人々、親、その他の主要な関係者から、多数の指定された明確な課題に関する情報を得ること
個別評価 X X 福祉、保健、日常活動などの現状を評価し、その結果を最初の事例研究報告書の内容と比較すること
調査   X 調査を通じて、態度の変化と生活の質の変化(ベースラインデータと比較するのが理想)を評価すること
文書の見直し X X プログラムの基礎となる政策とプログラムの運営方法(例:政策・規則・手続き・財政および行政管理の見直し)を理解すること
記録の見直し   X 利用者の数と特徴の全体像、進捗状況、介入状況、投入資本と成果の関係、リハビリテーションワーカーの仕事量を把握すること
インタビュー X   人々の意見、印象や経験を理解すること、あるいはアンケートへの回答についてさらに詳しく知ること
観察 X X プログラムが実際にどのように運営されるのか、特にその手順と相互作用に関する正確な情報を収集すること
フォーカスグループ X   ある経験や提案に対する反応など、1つのトピックについて、グループ討議を通じて深く追求し、問題や課題に対する共通の理解を得ること

情報を分析し、結論を出す

情報収集の後には、その意味を理解する必要がある。情報分析により、パターンや傾向、予測不可能な結果を明らかにし、情報が評価への回答となっているか否か、その場合どの程度かを判断することができる。さまざまな種類の情報が、さまざまな方法で分析される。例えば、アンケートや検証、あるいは記録から得られた量的データは、通常、統計学的手段およびプログラムを使用して分析される。インタビューやフォーカスグループ討議から得られた質的データは、通常、主要なカテゴリーとテーマに沿った構造化および体系化によって分析される。情報分析後は、結論を出し、プログラムに関する勧告を行うことができる。

結果の共有と行動

評価は、その結果と勧告に従った行動をとる者が誰もいない場合、無用である。このため、結果を報告し、共有することが重要である。これには多種多様な方法がある。例えば、正式な評価報告書の作成や、評価結果をコミュニティの人々が集まる会議で発表すること、地域の新聞への投稿記事の作成、他機関に回覧されるニュースレターに掲載する事例研究の作成、雑誌記事の作成、会議での論文発表などが挙げられる。評価後は、成功と失敗、正しい行いと間違った行いとを熟考し、そこから教訓を得ることも重要である。評価結果は、プログラムのさまざまな局面、すなわち、どれを継続すべきか、どれを変更する必要があるか、どれを中止すべきか、成功を収めたどの実践をスケールアップできるか、コミュニティで他のどの分野や優先事項に取り組む必要があるか、などに関する意思決定に影響を与えていかなければならない。


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