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CBRガイドライン・生計コンポーネント

スキル開発

はじめに

障害のある人が生計活動を行うためにはスキルが必要である。しかし、彼らはスタート地点で多くの不利な条件を抱えている。家族やコミュニティは、障害のある人がそのような活動を行うことは不可能と思い込んでいる。また、基礎教育へのアクセスが不足していて、スキルのトレーニングコースへ進むための資格がないことが多い。これらの不利な条件の結果、スキルが不足し、同様に自信、期待感、達成感が低くなる。

仕事を成功させるために、さまざまな種類のスキルが必要である。その中には、教育や家族生活から学ぶ基礎的なスキル、特定の活動や仕事を可能にする技術的・専門的なスキル、自営を成功させるために必要なビジネススキル、そして心構え、知識、個人の性格が含まれる核となる生活スキルがある。

目標

障害のある人が、仕事に必要な知識、心構え、スキルに関する知識をもつ。

CBRの役割

CBRの役割は、障害のある人が適切な知識、スキル、心構えを習得するための積極的な活動を通して、仕事の機会にアクセスできるようにすることである。

望ましい成果

  • 障害のある若者と成人は、一連のトレーニングの機会を利用でき、市場で役立つスキルやディーセントワーク(賃金雇用、自営)と収入が得られる。
  • 障害のある女子児童と女性は、男子児童や男性と同様のスキル開発の機会を得る。
  • 主流の職業訓練、スキルトレーニングの提供者は、提供しているトレーニングを障害のある人が利用できるよう方針をつくり、実践を行う。
  • 障害のある人は、職業相談、職業紹介、支援機器や改造された器具などの支援サービスを利用できる。
  • 障害のある人は、仕事において進歩するのに必要な高度スキル開発の機会を利用できる。

BOX5 インド

英国ハンセン病協会(The Leprosy Mission)で核となる生活スキルを教える

ハンセン病の若者のために、インドの英国ハンセン病協会が運営している職業訓練センターは、自動車整備工、洋服仕立て、溶接、電子技術、ラジオとテレビの修理、速記、養蚕、オフセット印刷、コンピューターなどの幅広い技術的スキルを教えている。これらのスキルを学んだ卒業生は、政府認定の資格がもらえる。しかし、センターではその他のスキルについても教えることを重視している。特に経営管理スキルと核となる生活スキルである。

核となる生活スキルのカリキュラムは、3つの分野をカバーしている。個人的スキルの開発、対処メカニズムの開発、仕事への適応の開発である。

個人的スキルには、自尊心、人格形成、プラス思考、やる気、目標設定、問題解決、意思決定、時間管理、ストレス管理がある。対処メカニズムは、どのようにセクシュアリティ、内気、孤独、うつ、恐怖心、怒り、HIV/エイズ、アルコール中毒、失敗、批判、争い、変化などへの対処法である。仕事への適応は、リーダーシップ、チームワーク、職業指導や職場環境を扱う。

核となる生活スキルは、 (a)早起き、個人および環境の清潔保持、時間厳守、責任感、リーダーシップ、他人への関心などに重点を置いた時間割や活動を通して、(b)センタースタッフの手本を通して、(c)週単位の授業を通してと3つの方法で教えられている。

これらのセンターでは、卒業生の95パーセント以上が就職している。この成功には3つの大きな理由がある。第1は、雇用主は責任感の強い人を求めていて、これは核となる生活スキルのトレーニングで教え込まれており、地域の雇用主は英国ハンセン病協会の卒業生のレベルが高いことを知っている。第2に、英国ハンセン病協会には大変積極的な職業紹介担当者がおり、彼らは地域の産業界と良好な関係をもっている。第3に、英国ハンセン病協会には強力な同窓会があり、卒業生同士、あるいは各センターと連絡を取り合っていて、新しい卒業生には仕事を見つけること、就職している卒業生にはその仕事を続けられるよう支援をしている。

主要概念

スキルの種類

基礎スキルは、基礎的な教育と家庭生活で習得されるものである。その中には、例えば読み書き計算、学ぶ力、論理的思考、問題解決がある。これらの種類のスキルは、すべての状況や文化の中で、また、フォーマル経済、インフォーマル経済を問わず、どこで働くにも必要なスキルである。

技術的、職業的、専門的スキルは、何かを製造したり修理したり、ある種のサービスを提供する方法など、人が特定の仕事に取り組むことができるようにするものである。例えば、大工仕事、洋服仕立て、機織り、金属加工、旋盤加工、かご作り、ブリキ加工、靴作りなどである。エンジニアリングや医学、理学療法、コンピューター技術のようなさらに高度なスキルは、通常は専門的スキルと呼ばれている。一般的に、技術が高度になればなるほど、高度な教育が必要で、トレーニングがよりフォーマルなものになり、しばしば、専門施設で行われ、正式な技能の認証につながる。

ビジネススキル(起業家スキルとも呼ばれる)は、事業活動を成功させるのに必要なものである。これには計画立案能力と運営スキルとともに、資金管理と人的管理スキルがある。さらに、リスク評価、市場分析、情報収集、事業計画立案、目標設定、問題解決なども含まれる。これらのスキルには通常読み書き計算の基礎が必要である。

大工、ラジオ修理、二輪車整備、機織りなど自営業に結びつきそうな商売を教えるトレーニングコースでは、技術的スキルと並んで、ビジネススキルを教える義務がある。

核となる生活スキルは、世の中で活動するために必要な態度、知識、個性から成り立つ。このようなスキルには、顧客との関わり方、自分自身の表現の仕方、学び方を学ぶこと、効果的な聴き方とコミュニケーション、創造的思考や問題解決、個人の管理と規律、対人スキルと社会的スキル、ネットワークを作る能力やチームで働く能力、職業倫理が含まれる。

核となる生活スキルは、障害の有無に関わらずすべての人が生活と仕事の両方で成功するために必要である。しかし、障害のある人にとっては特に重要である。なぜなら自信をもつこと、自尊心を発達させること、他の人と関わること、自分自身や他の人についての考えを変えることに寄与するからである。

核となる生活スキルは、家族内やコミュニティ内の交流を通して学習・形成され、教育(フォーマルとノンフォーマル)、職業訓練、若者と地域社会の開発プログラムや仕事を通して強化される。

自信は、プラス思考を身につけ、適切な知識の獲得し、生活と仕事にうまく対応するためのスキルを学習することによって身につく。もし、トレーニングプログラムが、技術的スキルにだけ焦点を当て、態度、知識や生活スキル開発を無視すれば、研修生が持続可能な仕事や雇用を見つけられる可能性は低くなる。

個人の選択と機会の平等

CBRプログラムは、スキル開発の機会を特定するときは、それぞれの個人が特有の興味、才能、能力をもっているということを、心にとめておくべきである。少年少女、男性・女性はともに、伝統的な男女の役割や性差別で制限されることなく、平等なトレーニングの機会を与えられるべきである。障害のある女性や少女にトレーニングの機会を与えるためにはさらなる支援が必要な場合がある。彼女たちには多くの選択肢が与えられるべきで、その人は何ができるかという先入観を元にしてはいけない。

スキルを獲得するための方法

障害のある人が、生計を立てるために必要な知識やスキル、態度を学び、発達させる方法はたくさんある。その中には以下のものが含まれる。

  • 自助努力。
  • 家族内で家庭中心のスキルを獲得。
  • 基礎教育。
  • 学校における職業訓練。
  • コミュニティでフォーマルあるいはインフォーマルに行う個人的な徒弟制度を含む地域に根ざしたトレーニング。
  • 主流の職業訓練センターや職業リハビリテーションセンターにおけるトレーニング。
  • OJTや徒弟制度。
  • 専門学校や大学におけるトレーニングコース。
  • 基礎的なビジネススキルトレーニング、ビジネス開発サービス、メンタリングのような小規模企業開発プログラムへの参加。
  • 雇用主によるトレーニング。

スキル開発にもっとも適した方法の選択は、個人の興味、能力、資質、そしてそのコミュニティで利用可能な機会や支援によって決まる。

BOX6 中国

ゾウの強い意志と足

ゾウは、1951年に中国湖北省宜昌市から移住した農民の家庭で生まれた。彼の腕は重度の奇形のため動かず、すべての日常生活スキルは足で行わなければならなかった。ゾウは学校で勉強する機会がなかった。さまざまなスキルを学んだが、収入は、生きていくには十分ではなかった。そこで彼は時計修理を学び始めたが、足の指がまるで手の指のように器用に動かせるようにするために、砂糖でおびき寄せたありをつま先でつまみ上げる練習をした。数年にわたる骨の折れる努力の結果、彼は優れた時計修理工になり、時計修理店を開いた。

ゾウは現在、時計修理で生計を立て、家族を支えている。彼の娘は大学を卒業し看護師になった。ゾウは障害のある人のための公共サービスに熱心で、障害のある人のための心理相談室やカウンセリングを提供するホットラインを私費で開設した。

ゾウは彼の省で多くの障害のある人のロールモデルになっている。彼は「私は貧困や障害を恐れてはいない。私は自分の努力、知性、決断を通じて成功することができた。障害は悲劇ではない。後ろ向きに考えることがもっとも悲劇である。私はいつでも強く、どんな困難にも打ち勝つことができると信じている」と述べている。彼はまた次のようにも言っている。リハビリテーションの過程において、専門家は重要な、ときに決定的な役割を演ずるが、最終的な達成は、障害のある人の考え方やさまざまな束縛を打ち破ろうとする意欲に強く左右される。

推奨される活動

家庭でのトレーニングを促す

多くの若者は、いわゆる伝統的な職業的スキルや生活スキルを家庭での活動を通して学ぶ。ここでは知識、スキル、態度は、親、兄弟姉妹、その他の家族から伝えられる。家庭での「行いながら学ぶこと」は生計を立てるためにさらなるスキルを学ぶ心構えをもたせる上で、基本的なことである。

しかしながら、障害のある子どもや若者、重度重複障害のある人々は、この行いながら学ぶ過程から排除されていることがよくある。なぜなら、その子どもや若者のできることとできないことについて、親や家族が先入観をもっているからである。親が障害のある子を危害から守りたいと思っている場合もあるし、子どもが学ぶことや家庭の役に立つことができないと信じている場合もある。また、単に子どものやる気をそいだり、子どもを無視している場合もあるだろう。その結果、障害のある子は役立つスキルを学べず、家庭や家族の仕事に貢献することを防げられてしまう。このように排除することはその子の自信を徐々に失わせ、家庭やコミュニティでの積極的な参加に影響を与える。

CBRプログラムは、障害のある家族にも生産的な方法で家庭に貢献できるようにスキルを学ぶ潜在能力があるということを、親に理解させる上で重要な役割を担うことができる。

考えられる活動

  • 障害のある人が、生計に関わる、あるいは家庭の中でできる役に立つ仕事に参加できるような方法を見つける。
  • 役に立ち、生産的な家庭の中での活動に貢献・参加できるようなスキルを教え伝え、さらに、生産的な家庭の中での活動に参加させるように家族を促す。
  • 家庭や生計活動における障害のある人の参加のレベルについてフォローアップをする。

BOX7 フィリピン

母親と息子が夢を実現する

フィリピンのビコル地方で、キレネのシモン子どもリハビリテーション開発基金(Simon of Cyrene Children’s Rehabilitation and Development Foundation)のCBRワーカーが、視覚障害のある10代の息子をもつ未亡人に会った。未亡人は2台の機織り機を持っている機織り職人だった。1台は死亡した夫のものである。息子は学校へ行ったことがなく、機織りはできなかった。CBRワーカーは息子に機織りの方法を教えるように母親に勧めた。やがて、母親と息子は所有している2台の機織り機を存分に使って販売用の織物を作ることができるようになった。

基礎教育の機会の利用を可能にする

基礎教育は、あらゆる種類の仕事における成功の鍵である。それは技術的スキルを発達・向上させ、生活スキルを獲得する基礎となる。障害のある人が生計を立てるために効果的に準備し、従事することを支援するため、CBRプログラムは主要な優先項目として、フォーマルあるいはノンフォーマル教育の機会が得られるように促すべきである。(教育コンポーネント参照)。CBRプログラムは、徒弟制度やOJTの機会を準備して、学校から仕事への移行を促すこともできる。

職業訓練への参加を促す

中等教育は、ときに職業評価や職業指導、相談とともに職業教育コースを提供する。障害のある生徒はそのような職業コースに入学し、職業指導サービスの恩恵を受ける機会をもつべきである。また、若者のための学校から仕事への移行プログラムの恩恵を受ける機会をもつべきである。CBRプログラムは、地域の中等学校にそのような可能性があるか調査し、障害のある生徒や若者に参加を促すべきである。(教育:中等教育と高等教育参照)

考えられる活動

  • 障害のある生徒が中等学校の職業訓練や仕事への移行プログラムに参加する妨げとなる障壁を明らかにして取り除く。
  • 障害のある生徒が研修・教育プログラムに参加するのを促すよう支援を行う。
  • さまざまな障害のある研修生に必要な調整や適応について、研修のインストラクターに障害啓発の研修を提供する。

コミュニティでのトレーニングを促す

第1に、コミュニティ内のスキル開発の機会を明らかにすることが大切である。これには2つの可能性がある。現存する主流のトレーニングと、製造やサービス活動に従事していて、障害のある人に実習生としてスキルを教えることができる地域の人々である。

すでに必要なモノやサービスづくりに従事している地域の人によって、トレーニングが実施できるようにするために、CBRプログラムはまず、スキルを学びたがっている障害のある人を見つけ出し、次に以下を行うべきである。

  • 障害のある人やその家族と、彼らの興味や、スキルをもっているか、どんな家族の支援が受けられるかについて話し合う。
  • 仕事や職業訓練の情報を提供する。
  • 地域ですでにそのような職業に従事し、トレーニングを提供している人を見つけ、障害のある人を実習生として引き受けるよう促す。
  • 地域の需要に合うよう生産され、提供されそうなモノやサービスを提案する。
  • 障害のある人が実習生になるための潜在的な障害物を明らかにして解決する。障害物には、費用、アクセス、移動手段、必要な支援(移送、手話通訳、支援機器)が含まれる。
  • 必要に応じて指導者には財政的、物質的な支援を、実習生には必要な支援を提供する。
  • コーチと実習生に対し、学習とトレーニングが確実に実行され、生じるすべての問題が乗り越えられるようフォローアップを行う。
  • トレーニングの終了時には、実習生が自分自身の活動を始められるよう支援する。

BOX8 マラウィ

職業を見つける

マラウィ障害者協議会(MACOHA :Malawi Council for the Handicapped)は、CBRプログラムの中で職業スキルトレーニングシステムを始めた。プログラムは対象になった農村地域で障害のある若者と成人を特定し、彼らの職業に関する興味を調査した。そしてコミュニティのマスタートレーナーに連絡し、1~2年間、1人以上の障害のある実習生を受け入れるよう促した。報酬として、CBRプログラムはそれぞれのマスタートレーナーにトレーニングと製造に使用する材料を提供した。この計画には、パン屋、仕立屋、ブリキ職人、大工、金属加工、自転車修理、絞り染めや編み物に従事している女性など、さまざまなマスタートレーナーが参加した。選ばれたマスタートレーナーは彼ら自身のスキルを向上させるために、MACOHAが運営している職業リハビリテーションセンターが提供するトレーニングコースに招待された。研修生の中には、トレーニング期間の修了とともに自分で活動を始めた人もいれば、トレーナーに雇われた人もいる。

ビジネススキルの開発を支援する

障害のある多くの人にとって、インフォーマル経済の小規模事業での自営は実行可能な所得創出方法である。もし、自営を選ぶなら、適切なビジネススキルのトレーニングを受けることが必須である。

小企業開発のトレーニングプログラムは、多くの国で見られ、しばしば、マイクロファイナンス計画とつながりがある。CBRプログラムは地域でできるトレーニングコースを見つけ、障害のある人が起業家としての潜在能力を発揮できるようにマイクロファイナンスの運営者に啓発を行う必要がある。運営者は、プログラム管理者やトレーナーと一緒に、さまざまな障害のある人が参加できるような方法を開発することができる。CBRプログラムはまた、必に応じて支援(移送、手話通訳、材料)を提供することで、障害のある人の参加の妨げとなる物を取り除くことができる。

主流の施設でのトレーニングを促進する

障害のある人のスキル開発は、インクルーシブな環境で、つまり、障害のない仲間と一緒にトレーニングが行われると、より効果的である。主流の職業訓練機関のトレーニングは、通常、より多くのスキルトレーニング機会の選択肢、より新しい技術や装置の利用、トレーニング終了時の正式な証明書の発行、職業相談と職業紹介支援を提供している。多くの場合、フォーマルな職業訓練センターは、町や都市にあり、都市の企業のスキルニーズに合うようになっている。一方、農村部には、多くの地方行政機関、非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)、コミュニティあるいは民間が運営している職業訓練センターがあり、役に立つ技術的スキルや核となる生活スキルのトレーニングコースを提供している。

CBRプログラムは、障害のある人が主流の職業訓練センターのトレーニング機会を利用できるように促すべきである。彼らは通常、そのような主流のトレーニング機関に参加する際に障壁に直面する。障壁には、高い水準の参加資格、利用しにくい建物や教室、高い授業料とトレーニング費用、適応する補助具や設備の不足、障害のある人を支援する方針の欠如、障害のある実習生を教えるにあたっての主流のトレーナーの認識、自信、経験のなさなどがある。

CBRプログラムは、以下に示す方法で、障害のある人に職業訓練センターのトレーニングに応募することを促すことができる。

  • 地域の学校、障害当事者団体、親の会、NGO、女性組織と青年組織を対象に、障害のある実習生が利用できる場所を宣伝する。
  • 親やコミュニティのグループ、その他の関係者に対して、障害のある人のための職業スキルトレーニングの重要性について啓発する。
  • 障害のある研修生が、トレーニングに応募したり、金銭的援助に応募するのを支援する。

CBRプログラムは、障害のある人の利用が増えるように、職業訓練センターや職業訓練コースに働きかけることができる。以下のリストはこれらのセンターにできることの例である。

  • 毎回の募集時に、入学できる障害のある男女の人数を定めた入学方針を採用する。
  • 柔軟な参加資格を設定する。
  • 基礎教育コースの補習を用意する。
  • 障害やジェンダーに根ざした固定観念を避けながら、障害のある研修生に、さまざまなスキル開発の選択肢について指導を行う。
  • インストラクターに障害啓発研修を行い、さまざまな障害のある研修生の特別なニーズに関する概況報告書を提供する。
  • 個々の研修生の利用のしやすさと適応のニーズを把握する。例えば車いす利用の研修生は、トレーニングコースの場所が1階でトイレがアクセシブルなら、容易に受け入れることができるだろう。
  • トレーニング中に障害のある研修生が順調にこなしていけるように支援し、問題が生じたら解決できるようインストラクターと研修生を支援する。

BOX9 ナイジェリア

稼ぐことと貯蓄を促す

ナイジェリアのイバダン地域に根ざした職業リハビリテーション(CBVR:Community-Based Vocational Rehabilitation(CBVR))プログラムには、さまざまな障害当事者団体の代表者、障害者の親族、コミュニティの長老、開発NGO、金融機関の代表者や連邦および州の政府関係者が関与している。対象となったコミュニティでは、障害のある人のスキルトレーニングへの登録を促す啓発キャンペーンが行われた。スクリーニングでは、彼らの能力、職業への興味、家族から得られる支援の程度について評価した。選ばれた参加者が地域の職業訓練センターに登録した。トレーニング中、研修生はプログラムからトレーニング手当を受け取った。コースは6か月から1年で、大工、靴の製造修理、養鶏業、絞り染めの織物生産、食品仕出し業などが含まれる。

CBVR委員会は、預金口座の開設を支援して、受取者が手当の一部を貯蓄するように勧めている。卒業時には多くの研修生が自分の所得創出活動に必要な物品を購入するためにこの貯蓄を利用している。最初の10年間で、200名以上の研修生が研修を受け、多くの卒業生がプログラムのトレーナーになった。

専門施設でのトレーニングを促す

主流のセンターでのスキルトレーニングが難しいところでは、障害のある人のための専門トレーニングセンターが、実際の生産活動を通した有益な職業体験だけでなく、貴重な職業訓練や生活スキルトレーニング、を提供することができる。

このようなセンターの主な欠点は、インクルージョンよりも分離を促し、障害のある人は主流のトレーニングセンターや経済に統合できないと決めつけてしまうことである。しかし、そうである必要はない。成功している専門のトレーニングセンターでは、彼らと周囲のコミュニティとの間の障壁を崩そうと努力している。障害のある人のトレーニングの経験を積んだ有能な人材がいれば、これらは他のセンターやコミュニティのさまざまな着想やスタッフトレーニングのためのリソースセンターになることができる。

CBRプログラムは専門センターで提供されているトレーニングを、よりコミュニティに合うようにするため、以下の方法で支援することができる。

  • コミュニティで、モノづくりやサービス提供の中の満たされていない需要を特定する。
  • 地域の企業と相談しながら、トレーニングセンターで使用されているカリキュラム、道具、設備を更新する。
  • 提供するコースの数や種類を増やす。
  • 技術的スキルだけでなく経営管理や生活スキルのトレーニングも提供する。
  • トレーニングを終了した研修生が職を見つけるか、自営業を始められるよう支援する。
  • 新しいコースや設備、あるいはセンターの拡充のための資金を集める。

BOX10 ヨルダン

実地訓練を提供する

ヨルダン、サルトの聖地ろうあこどもの里HLID :The Holy Land Institute for the Deaf)は聴覚障害のある人に伝統的な仕事のトレーニングを提供している。少年には大工、金属加工、自動車整備、少女には手工芸、刺しゅう、敷物織りである。しかし、教えている方法や外部の市場との関係は伝統的ではない。作業場は学校ではなく道路に面している。車体修理と自動車整備の店は、他の店のように、人々が車を修理するために持ち込みができるよう作られている。こうして研修生が顧客に直接対応することに良合って、顧客は聴覚障害のある人とやり取りをすることに慣れ、研修生は顧客の扱い方やビジネスの実態を学習する。

HLIDは、スキルトレーニングと製造販売を結びつけることができることを示している。大工作業場では学校やオフィスの家具作りを請け負う。金属加工では、羊を洗羊液に浸けて洗浄したり、体重を量ったり予防接種するための器具を設計製造している。裁縫、刺しゅう、敷物織りなどの製品は、観光客の興味を引く。学校は、観光事業を、商品と卒業生の両方の重要な目標となる分野と考え、主要な観光地である死海のそばにあるヨルダン渓谷で商品を売る販売店を開設した。