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CBRガイドライン・社会コンポーネント

司法

はじめに

司法へのアクセスは、幅広い概念であり、人々が、司法行政の制度、手続、情報、そして場所へアクセスすることができる能力のことを言う。すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等であり(14)、それゆえに、人はみなその尊厳と権利が脅かされた際には、司法へ公平にアクセスできなければならない。

人々は、一般に、何らかの不当な扱いを受けたり、虐待されたりしたときに、自らの国の司法制度に頼る。例えば、犯罪の被害にあったときなどである。司法へのアクセスは、人の権利であるが、その他のあらゆる権利を享受する上においても非常に重要である。例えば、障害のある人が、働く権利を拒否された場合、救済(解決)を求めて司法に頼ることもある(13)

不利な状況にある人のグループは、障害のある人を含め、司法へのアクセスに際し、障壁に直面する(15)。司法へアクセスできなければ、その声が届くことはなく、その権利を行使することも、差別に挑むことも、意思決定者の責任を問うこともできず(16)、その結果として、より脆弱で、周縁化された存在となる(15)

ここでは、障害のある人々の司法へのアクセスに関するいくつかの概念について情報を提供するとともに、障害のある人々が司法へアクセスしようとする際に直面すると考えられる障壁を乗り越えるためにCBRプログラムができ得る支援についての提言を示す。障害のある人々が、証人、裁判官、弁護士などとして司法行政に参加することも重要であるが、ここでは、それについては触れていない。

BOX26

障害者権利条約第13条:公正手続の利用の機会(2)

  1. 締約国は、障害者が全ての法的手続(捜査段階その他予備的な段階を含む。)において直接及び間接の参加者(証人を含む。)として効果的な役割を果たすことを容易にするため、手続上の配慮及び年齢に適した配慮が提供されること等により、障害者が他の者との平等を基礎として司法手続を利用する効果的な機会を有することを確保する。
  2. 締約国は、障害者が司法手続を利用する効果的な機会を有することを確保することに役立てるため、司法に係る分野に携わる者(警察官及び刑務官を含む。)に対する適当な研修を促進する。

BOX27

地域住民の否定的な態度によるネツァネストの苦難

ネツァネストは14歳の少女である。小さいころに視覚障害となったが、どうして、いつ頃そうなったのかは、正確に覚えていない。村の中で、視覚障害のある少女として成長したことにより、ネツァネストは自分のことを役立たずだと思い込まされており、しばしば「awer」(目の見えない人に対する呼び名で愚か者という意味でもある)と呼ばれていた。人々が彼女の家に来ると、彼女は見えないところに隠れて、家族に恥をかかせないようにした。村で祭りがあるときにも、決して行かせてはもらえなかった。

ある日、彼女の叔母が家を訪ねてきて、近くの村にある視覚障害児のための学校の話を家族にした。両親の許しを得て、ネツァネストも学校に通い始めた。ネツァネストは、学校に行くことが大好きで、すぐに、読み書き、料理や村のまわりを1人で歩くことを覚えた。また、新しい友達何人かと家を借りて暮らし始めるようにまでなった。

ある日の夜、村の男がネツァネストのところにやってきて、彼女の教育費支援の代償として、彼と寝るように求めた。ネツァネストは、まだ結婚する気がなく、教育を終えたいと言い、断った。数日後、友人が外出しているときに、男は戻ってきて、彼と関係をもてば生活を楽にしてやる、そして、そのことは秘密にしておくと言った。彼女は再び拒否した。しかし、今度は、男は彼女を強姦した。彼女は叫び声をあげたが、誰も助けに来てくれなかった。

翌日、学校の教師が彼女の話を聞き、彼女を警察へ連れて行った。彼女を助けるどころか、警官は、事件について彼女を非難し始めた。村では、他にも数人の視覚障害のある少女が強姦の被害にあっていたが、地域住民の障害に対する否定的な態度と思い込みにより、障害者自身の過ちだと考えられていた。事件のことはすぐに村中に知れ渡り、強姦犯の母親がネツァネストのところにやってきて、怒鳴りつけ、「おまえは、自分が何をしているのかわかっているのか。おまえは、私の息子を誘惑し、彼に罪深いことをさせておいて、今度は彼の名前を汚している」と非難した。

事件のことを聞いたネツァネストの両親は、どうしていいかわからなかった。ネツァネストの身の安全を心配するとともに、この事件が家族の恥になるかもしれないと考え、事を起こすことを恐れた。その一方で、ネツァネストのためには正義を望んだ。

目標

障害のある人が、他の人との平等を基礎として、人権を完全に享受し、またその人の人権が尊重されるべく、司法へアクセスすることができる。

CBRの役割

CBRの役割は、障害のある人々の権利の意識を高め、障害のある人々とその家族が、差別や排除に直面した時に司法にアクセスするための支援を提供することである。

望ましい成果

  • CBRプログラムは、必要なときに、障害のある人が司法へアクセスすることを支援することができる。
  • 障害のある人が、自分たちの権利、選択肢、司法にアクセスするための手続きを認識する。
  • 司法セクターに属する関係者は、障害のある人のニーズを敏感に察知し、差別的な慣行に関与しない。
  • 障害のある人は、その権利が侵害されたときには、非公式な司法の仕組みにアクセスすることができる。
  • 障害のある人は、その権利が侵害されたときに、公式な仕組みにアクセスすることができる。

主要概念

権利を保持する人と義務を負う人

権利を保持する人と義務を負う人の関係を理解することは、障害のある人の権利を検討し、彼らの司法へのアクセスを実現する上で重要である。

権利を保持する人:障害のある人は権利を保持する人であり、権利と責任の両方を有している。権利を保持する人としては、例えば、保健、教育、生計の機会、土地、住宅、政治参加に関する権利が与えられている。これらは、他の権利とともに、障害者権利条約で述べられている(2)

義務を負う人:権利を保持する人がいる場合、その権利を尊重し、守り、履行させる義務を負う人もいる。義務を負う人は、国(政府)、全国的な、また地方レベルの、非政府関係者(非政府組織、宗教指導者、親など)を含む。国家の義務は、障害者権利条約においても記されている(2)

司法へのアクセスを阻む壁

司法へのアクセスは、裕福な、政治的なコネのある、都市部の人に限定されていることが多い。障害のある人、特に、低所得国や中所得国に住む人は、司法へのアクセスにおいてさまざまな壁に直面する。それらの障壁には以下の点が含まれる。

  • 障害のある人を守るための適切な法律や政策の欠如:多くの国では、彼らの権利を守ることを目的とした法律は存在しない(15)
  • 物理的な壁:障害のある人には、警察署、法廷、その他の公共の建物を利用することが難しいことがある(13)
  • コミュニケーションの壁:障害のある人は、合理的な配慮(例えば、聴覚障害者のための手話通訳者など)がない場合、司法分野の人々と十分なコミュニケーションをとることができないことがある。
  • アクセスできる情報の欠如:障害のある人にアクセスできる情報がなければ、司法制度がどのように機能し、彼らの権利と責任が何であるのかを把握することは難しい(13)
  • 経済的な障壁:障害のある人にとっては弁護士報酬、法廷費用などが高額過ぎることがある。
  • ニーズに対する意識の欠如:警察官などの役人は、障害のある人が司法や情報へアクセスする場合の特定のニーズや、合理的な配慮をどのように提供するのかといった情報について理解していない(13)

法的能力

障害者権利条約は、その第12条において、

「締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。」と明示している(2)。障害のある人の中には、例えば、法的な手続きに参加したり、法廷で証言したりすることを妨害されるなど、その法的能力を行使することを許されない人が数多くいる。これは、多くの人々が、障害のある人には適切に行動する能力がないと考えているからである。条約はまた、障害のある人の中には法的能力を行使するにあたり、支援を必要とする場合があるとも述べている。そのような、支援を得てなされた意思決定はさまざまな形態で見られる。例えば、障害のある人を支援している人が障害者の意図を他の人に伝えたり、今ある選択肢を理解する手助けをしたりすることだ。また、重度の障害のある人も人生において、生きてきた過程や興味や目標をもっているひとりの人であり、その法的能力を行使する能力があるということを他の人々に気付かせることもできるであろう(17)

司法へのアクセスの促進

法による保護

障害のある人の権利は、国の憲法、法律、政策において定められなければならない。彼らの権利が一度法的に認められれば、法廷、行政、裁判所、時には人権団体も、障害のある人の権利が侵害された場合に、解決策を提示することができる。その救済のタイプは、正す必要のある不正行為による。例えば、学校に学生の就学を要求する、政府の建物をアクセスできるようなものにする、雇用に際し差別を行う雇用主に罰金を課する、保健・医療機関に健康保険証を発行させる、暴力や虐待に関し処罰することなどである。

非公式な仕組み:不公平かつ不正な慣行は、地域のレベルにおいてしばしば効果的に解決することができる。法的保護をめぐる非公式な仕組みには、例えば、宗教団体、開発組織、部族長、村長、労働組合・協同組合、教育と保健医療の専門家、ソーシャルワーカー、家長などを通してアクセスすることができる。

BOX28 インド

非公式な裁判が道を切り開いた

インドのオリッサで行われていた地域に根ざしたハンセン病プログラムは、ハンセン病により、自分の家と村から追い出された男性について、解決策を見つけるべく長老と宗教指導者とともに取り組んだ。宗教的な改名と生まれ変わりの儀式を行えば、男性は新しい名前の下で、家族の元に帰ることができ、再び地域の行事に参加することができるということが同意された。

公式な仕組み:非公式な手段を用いて自らの権利を保護する方策にアクセスできない場合は、裁判所で法的措置をとるというような、公式な法的保護のプロセスを使わなければならない。これは高額であり、時間を要し、法の専門家の助言が必要であることから、通常は最後の手段である。低所得国に住む障害のある人にとっては、無料の法的支援センター、人権団体、障害のある人の組織、開発組織の支援を得てはじめて可能となる。法的手段に訴えるためのあらゆる決定は、それに関与する個人やグループが下すことが重要である。

BOX29 フィリピン

無償の法律支援により正義を見出す

マニラに本店のある大銀行が、紙幣計算機を導入したことにより、それまで紙幣計算のために雇用されていた複数の聴覚障害のある従業員の契約を打ち切った。従業員は、フィリピン全国障害者連合(KAMPI:Philippine National Federation of Organizations of Persons with Disabilities)の支援を得て、無償で法的な支援を提供してくれる弁護士集団に連絡をとった。数年後、フィリピン最高裁判所は、障害者差別禁止法に基づき、契約打ち切りは非合法で差別に該当すると裁定した。そして、銀行に対し、従業員が契約打ち切りによって無職となった期間相当分の賃金の支払いと、さらに、彼らを元の部署に復職させるよう命じた。従業員は、前職に戻る代わりに、補償金を活用して小規模な事業を始めた。

法意識

法意識は、不正と戦う基盤となる。障害のある人は、法の下における自らの権利と資格が何であるのかを知らない限り、不正解決のための手段を求めることができない(18)。障害のある人とその家族が、自らの権利を意識することにより、自分たちの権利を守ることができ、また、他の人の権利が侵害されたのを目撃した際にも声をあげることができる。

法的扶助

公式な法的手続きに関する費用は高額であるため、人々が正義を求めることを思いとどまることがある。法的扶助により、障害のある人を含む、不利な状況に置かれているグループに属する人々が、法的手続きを始められるよう支援することができる(18)。法的扶助計画は、法的問題に関して助言したり、権利と法律を理解できるよう支援したり、裁判所において代理人を務めたりするなど、資金と支援を提供するものである。通常、政府が法的扶助を提供する責任を負う。しかしながら、政府がその責任を遂行する能力が限られているところでは、非政府組織が支援のための重要な源となる(18)

コミュニティの法律センター

資金的な余裕がなく、法的扶助制度の適用条件を満たさない人に、法律サービスを提供するための1つの方策が、コミュニティ法律センター(CLC:community legal center)や、法科大学院付属のリーガルクリニックを活用することである。CLCは、通常小さなNPOであり、さまざまな分野の法律サービスを提供している。彼らは重要なリソースであり、その仕事には、助言、支援、紹介、必要に応じて裁判所における代理、法的事項の情報提供などが含まれる。彼らは、意識啓発、地域における法律教育、ロビー活動や政策開発(例えば、公正な法制度の開発の提唱など)、法的手続きと司法行政の改革へ向けた活動などにおいても重要な役割を果たす。CLCの重要な特徴は、サービス提供に際してボランティアを活用している点である。したがって「コミュニティ」とは、現役の弁護士、学生、弁護士補助員などによる無償の時間と技能を指す。センターは、民間の弁護士の無償のサービスについて交渉したり、大学の法科大学院との協力関係を築いたりするなど、民間の法律の専門家との関係を構築することが可能である。

BOX30 エクアドル

子どもが学校に戻れるよう支援する

エクアドルのキトに住む少女は、両親に物乞いを命じられ、学校で勉強することを禁じられた。少女の祖母はそのことを非常に心配した。家族内での問題解決が難しかったことから、祖母はCBRプログラムに、孫娘の親権を得るための支援を求めた。CBRプログラムは、法律支援協会に連絡し、祖母に対する助言と支援を依頼した。法律支援協会はこの件を引き受け、今では、祖母が孫娘の親権をもち、孫娘は学校に戻ることができ、喜んでいる。

推奨される活動

CBRプログラムは、障害当事者団体やその他の市民団体の関係者とともに、障害のある人が司法へアクセスできるように、さまざまな活動を実施することができる。

地域の状況の理解を深める

障害のある人の司法へのアクセスを効果的に支援するために、CBRプログラムは、活動している地域の状況を理解する必要がある。プログラムは以下を行うことが望ましい。

  • 法律についての意識を高める(一般の法律と障害者に特化した法律の両方)。障害当事者団体や法的扶助サービスは、CBRに携わる人が法律を理解する上で手助けができるだろう。
  • 法律がどのように施行されるのかに関する理解を深める。地域の法執行官、例えば警察官は、CBRスタッフに犯罪の通報方法や犯罪被害者・目撃者を保護する制度を理解させる上で利用できるリソースとなりうる。
  • 地域において、障害のある人が司法にアクセスする上で活用できる、利用可能なリソース(公式・非公式の両方)を明らかにする。例えば、地域のリーダー(地方政府、部族、村、宗教の指導者)、教師、障害当事者団体、医療専門家、労働組合や協同組合、法執行官と裁判員、法的扶助サービス、地域法律センターなど。

関係者とネットワークや同盟を構築する

CBRプログラムでは、障害のある人に起こりうる不正や非合法な行為に対し、備え、挑むために、影響力のある地域のメンバーやグループと良い関係を構築できるよう、障害当事者団体や自助グループとともに活動しなければならない。

権利についての意識を高める

法律に対する意識を高めるための戦略は、CBRプログラムが実施することができる。実施できることは以下のとおり。

  • 障害当事者団体とともに活動し、障害のある人とその家族が、自分たちの権利についての知識をもつようにさせる。
  • 障害に関する権利、およびその権利にどのようにアクセスするかという情報を、利用しやすい様式で普及させる。
  • 障害当事者団体、人権団体、そして自助グループとともに、意識を高めるための活動に参加する。
  • 障害当事者団体と人権団体が、障害に関する研修を、地域や地区レベルで、主要なセクターや意志決定者(法執行官や裁判所職員、法律や保健医療の専門家、教師、宗教や実業界のリーダー)とともに実施することを支援する。

BOX31 エチオピア

法的権利とエンパワメントの促進

エチオピアのアディスアベバのイェカ副都市では、障害のある人の法的権利とエンパワメントを促進するための3年間のパイロットプロジェクトがハンディキャップ・インターナショナル(Handicap International)とエチオピア全国知的障害協会(ENAID:Ethiopian National Association on Intellectual Disability)、エチオピア弁護士会の連携により実施された。プロジェクトでは、障害のある人の法律に基づく権利を促進することにより、性的暴力とHIV/エイズに対する脆弱性を軽減することに取り組んだ。

障害のある人に対する性的暴力に関する基礎調査では、回答者のうち46パーセントが、性的暴力を受けたことがあり、83.5パーセントがジェンダー意識啓発教育を受けておらず、88.3パーセントが性教育、性と生殖に関する保健教育、自己主張のトレーニングを受ける機会がなかったり、受けることを拒否されたりしていた。個人への聞き取り調査とフォーカスグループの議論により、調査の結果を裏付ける更なる証拠を得ることができ、実態がより明らかになり、虐待の根本原因に対してどのような介入が適切かが明確になった。

この結果を受け、プロジェクトはエチオピアの既存の法律の再考と分析、法執行官、市民団体、地域の人々に対する研修の実施、実用的な照会システムの開発、使い手にやさしい照会手引きの策定、無料の心理社会的カウンセリングや法律相談の提供、裁判所での代理出廷などを行った。

必要に応じ非公式な仕組みへのアクセスを促進する

公式な法的手続きが、適切なものだとは限らない。非公式な仕組みの方が、しばしばより効果的であり、通常より迅速であり、廉価であり、地域のメンバーが利用しやすいものである。CBRプログラムがサポートできる、司法の非公式な手段を利用するための方策は以下のものを含む。

  • 地元の学校と協働し、障害のある子どもを学校へ通わせるように奨励する。
  • 地域社会の人々と宗教指導者に対し、家庭内の争い解決のための助けを求める。例えば、一組の男女の1人あるいは両者が障害をもっていたとしても、2人が結婚をする権利を有するという点についての論争など。
  • 農業協同組合とともに仕事を行い、障害のある農民が、みなが共同で使うリソースを確実に活用できるようにする。
  • 銀行とともに活動を行い、障害のある顧客が自らの口座を管理し、融資を利用できるようにする。
  • 地域の医師に対し手話通訳者の手配し、コミュニティに住む聴覚障害のある人が、保健医療施設を利用できるようにする。
  • 部族・宗教の指導者そして家長らとともに活動を行い、障害のある人々が彼らの相続権を要求することができるように支援する。

BOX32 ガーナ

地域社会のネットワークを通して司法にアクセスする

ガーナ出身の男性が、視覚障害をもつ一人娘と生活していた。男性が病気になると、娘はその男性が亡くなるまで何年も男性を支えた。男性の親族が、男性が亡くなったことを聞き、彼の所有物をすべて持ち去り、娘を家から追い出すと脅した。娘は地元の地域支援ネットワークに法的なアドバイスを求め、その結果、父親の年金の支払い請求をし、本来彼女のものである父親のすべての不動産を含む所有物を取り戻すことができた。

必要に応じ法的行為への支援を行う

CBRプログラムにおいては、以下の点が重要である。

  • 信頼がおける法曹界のメンバーと強いつながりと連携を構築する。
  • 異なる種類の差別に対応するためには、どの法律が適切なのか法的助言を得る。例えば、地域の取り決め、国家の法、国際条約や協定。
  • 障害のある人の法的行為を行う決断を尊重する。
  • 法的行為を行うことに伴うリスクを考慮する(例:時間、費用、安全性への配慮、特に効力を有する法律や保護システムがないところにおいて)。
  • 障害のある人とその家族が確実に法的手続きに関わっていること、また、それに伴うリスクを認識していることを確認する。
  • コミュニティの貧しい住民のために法的な問題に取り組んでいる組織についての認識を高め、ともに活動する(例:コミュニティセンターや法的扶助センター、弁護士団体、国際的な人権団体や開発団体)。

BOX33 ネパール

正義のための闘いに勝利する

あるネパールの障害当事者団体がネパール政府を相手取り最高裁判所で争った。その訴えは「子どもの権利条約」によると、公立学校の試験において、点字を使っている子どもたちが目の見える子どもたちと同じ時間内に試験を終わらせなければならないというのは差別にあたる、というものだった。裁判の結果は団体側の勝訴となり、すべての試験において、点字を使用する子どもには30分余分に時間が与えられるとの公約を勝ち取った。


<参考文献>

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2. Convention on the Rights of Persons with Disabilities. United Nations, 2006 (www.un.org/disabilities/convention/conventionfull.shtml, accessed 16 June 2010).

3. World report on disability. Geneva, World Health Organization, 2010 (in press).

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8. Singer-songwriter Stevie Wonder designated UN Messenger of Peace. UN News centre, 2009 (news.un.org/en/story/2009/12/323032-singer-songwriter-stevie-wonder-designated-un-messenger-peace, accessed 12 April 2018).

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10. Kidd, B. A new social movement: Sport for development and peace. Sport in Society, 2008, 11:370–380.

11. Fun inclusive: sports and games as means of rehabilitation, interaction and integration for children and young people with disabilities. Handicap International, Gesellschaft fur Technische Zusammenarbeit GmbH (gtz), Medico International, 2008 (www.sportanddev.org/learnmore/?uNewsID=12, accessed 16 June 2010).

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13. Lord JE, Guernsey KN, Balfe JM, Karr VL, Flowers N (eds). Human rights. Yes! Action and advocacy on the human rights of persons with disabilities. University of Minnesota Human Rights Resource Center, 2007 (www1.umn.edu/humanrts/edumat/hreduseries/TB6/pdfs/Manuals/final_pdf_default_withcover.pdf).

14. Universal Declaration of Human Rights,1948 (www.ohchr.org/en/udhr/pages/introduction.aspx, accessed 8 August 2010).

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16. Access to Justice and Rule of Law. United Nations Development Programme (www.undp.org/governance/focus_justice_law.shtml, accessed 8 August 2010).

17. Chapter six: from provisions to practice: implementing the Convention: legal capacity and supported decision-making. In: Handbook for parliamentarians on the Convention on the Rights of Persons with Disabilities. UN Enable (www.un.org/disabilities/default.asp?id=212), accessed 1 July 2010).

18. Access to justice: practice note. United Nations Development Programme, 2004, (www.undp.org/governance/docs/Justice_PN_English.pdf, accessed 16 June 2010).

<推奨される文献>

Griffo G, Ortali F, eds. Training manual on the human rights of persons with disabilities. Bologna, AIFO, 2007 (www.aifo.it/english/resources/online/books/cbr/manual_human_rights-disability-eng07.pdf, accessed 16 June 2010).

International Committee of Sports for the Deaf: www.deaflympics.com (accessed 16 June 2010).

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