CBRガイドライン概要版&CBRマトリックス使用の手引き
【保健】
序文
差別のない健康に関する権利はWHO憲章などの様々な国際文書に見ることができる。国連障害者権利条約第25条、第26条に関連する。
障害のある人はしばしば一般の人よりも貧しい健康状態を経験し、健康に関する権利を享受するために様々な困難に直面している。健康に関する権利には、保健サービスの利用だけではなく、安全な水や公衆衛生、住宅など健康の根本的な決定要因の入手が含まれる。また、予防、治療、疾患をコントロールする権利、不可欠な医薬品を利用する権利、健康に関する意思決定に参加する権利も含まれる。
目標
障害のある人が到達しうる最高水準の健康を獲得する。
CBRの役割
健康増進や原因の予防、医療、リハビリテーション、支援機器の分野において障害のある人やその家族の要望に対処するため、保健部門と密接に活動することである。またCBRは、当事者やその家族の保健サービスの利用促進のために彼らと共に活動し、健康に関するすべての側面が対処されるよう他部門と共に活動する必要がある。
望ましい成果
- 障害のある人や家族は、彼らの健康に関する知識が向上し、健康を達成する活動的な参加者である。
- 保健部門は、次のことを認識している。障害のある人が良好な健康状態を達成することが可能であり、障害やその他の原因、例えば性差を理由に差別を受けない。
- 障害のある人や家族がヘルスケアやリハビリテーションサービスを利用可能であり、かつそれらが彼らの地域かその近隣にあり、適正な価格である。
- 保健とリハビリテーションの介入により、障害のある人が家族や地域で活動的な参加者となる。
- 障害のある人の健康のために、教育や生計、社会部門を含む全ての開発部門の協力体制が改善する。
主要概念
健康
健康とはなにか?
“健康とは、身体的、精神的、社会的に完全に良い状態であり、単に病気や虚弱がないことではない”健康は人を個人的、社会的そして経済的に生産力のある生活に導く。そして、家庭生活や地域生活の中で積極的に仕事や学習、参加を行う自由を提供する。
健康の決定要因
健康は、個人的、経済的、社会的、環境的要素の影響を受ける。遺伝、個人的行動やライフスタイル、収入や社会的地位、雇用や労働環境、教育、社会支援ネットワーク、文化、ジェンダー、物理的環境、保健サービスなどである。うち、遺伝のような要因は管理できないが、管理可能な要因も複数存在する。
障害と健康
全ての人々にとっての健康という目標はいまだ達成されていない。障害のある人を含めた多くの人々が依然、他の人々よりも健康に関して貧しい立場にある。障害のある人は、その他の人と同じように、一般的なヘルスケアサービスを必要としている。同時に障害のある人の多くが、例えばリハビリテーションのような、特別なヘルスケアサービスを必要としている。
ヘルスケア
ヘルスケアの提供
それぞれの国のヘルスケアは保健システムを通じて提供されている。保健システムの最終責任は政府にあるが、多くのヘルスケアは公的、私的、伝統的、インフォーマル部門の組み合わせで提供される。プライマリーヘルスケアは個人や家族が負担可能な費用で利用できるヘルスケアである。個人、家族、地域にとって国の保健システムへの最初の接点であり、人々の場所のすぐ近くで提供される。
障害のある人のヘルスケアサービスへの障壁
障害のある人が経験する不健康は必ずしも障害があることの直接的結果ではない。それはむしろサービスやプログラムの利用困難と関係がある。障害のある人の中には、他の障害のある人より差別や排除に脆弱な人がいる。例えば障害のタイプ、年齢、性別、社会的地位を理由に、何重もの不利益を経験し、ヘルスケアサービスの利用がさらに困難になっている人がいる。
インクルーシブな健康(インクルーシブ・ヘルス)
インクルーシブ・ヘルスは、障害、性別、年齢、皮膚の色、民族、宗教、社会経済的地位に関わらず全ての個人がヘルスケアを利用可能であることを意味する。このためには、障害のある人や障害当事者団体がヘルスケアやリハビリテーションサービスの計画や強化の積極的参加者となることが必要である。
CBRと保健部門
CBRは障害のある人のためのヘルスケアの利用を促進することができる。地域社会のプライマリーヘルスケアと共に活動し、障害のある人とヘルスケアシステムの必要な結び付きを提供することができる。
本コンポーネントの要素の紹介
- 健康増進
- 原因の予防
- 医療
- リハビリテーション
- 支援機器
健康増進
はじめに
健康増進に関するオタワ憲章は、健康増進について、人々が自分の健康に関する管理を向上させ、改善することを可能とする過程と述べている。
障害のある人の健康の潜在能力はしばしば見逃され、結果として彼らは健康増進活動から排除される。健康増進は幅広い決定要因を変えることに焦点を当てるため、保健部門を含む多くの部門が関与する。
目標
障害のある人や家族の健康に関する可能性が認識され、現在の健康レベルを向上または維持するために能力が強化される。
CBRの役割
地域や地方そして国家レベルで行われる健康増進活動を把握し、その関係者と共に障害のある人や彼らの家族のアクセスやインクルージョンを保証すること。また、障害のある人や家族が健康維持の重要性を知り、積極的に健康増進活動に参加するよう奨励することである。
望ましい成果
- 障害のある人や家族が一般の地域住民と同じ健康増進に関するメッセージで心を動かされる。
- 健康増進の資料やプログラムが障害のある人や家族のニーズを満たすようデザインされ適合される。
- 障害のある人や家族が良好な健康状態を獲得することを後押しする知識、技能、支援を持っている。
- 医療従事者が障害のある人の一般的または特別な健康ニーズを正しく認識し、適切な健康増進活動を通じて対応する。
- 地域は、障害のある人が自らの健康を作り出す活動に参加するための支援的環境を提供する。
- CBRプログラムは健康を尊重し、職員ために職場で健康増進活動に取りかかる。
主要概念
障害のある人の健康増進
障害のある人は一般の人と同じ健康ニーズや健康悪化リスクを持っている。障害のある人は一般の人より健康悪化の影響を受けやすいので、更なる健康問題を持っているかもしれない。
健康増進に対する障壁
障害のある人はしばしば一般の人よりも不健康を経験する。健康を向上しようとすると多くの障壁に直面するからである。これらの障壁に対処すれば、障害のある人の健康増進活動への参加が容易になる。
家族の健康増進
障害のある人の多くは家族の支援を必要としている。家族の健康を維持することは大切である。
健康増進活動
オタワ憲章は健康増進戦略の5つの領域として、「健全な公共政策の構築」「健康のための支援的環境の創設」「地域社会の強化」「個人的技能の発展」「保健サービスの再構築」を挙げた。個人は自身の健康に影響を与える大きな潜在能力を持っており、健康増進における参加型アプローチは重要である。
推奨される活動
健康増進キャンペーンの支援
- 地域や地方や全国の健康増進キャンペーンを把握し、障害のある人が対象となることを保証する。
- 積極的に健康増進キャンペーンや関連のイベントに参加し、障害の特徴や認識を高める。
- 障害のある人の肯定的な印象を見せるよう健康増進キャンペーンに働きかける。
- 既存の健康増進キャンペーンを、障害のある人のための適切な形式で活用する。
- 地域の既存資源を把握し、障害に関連した健康問題の報道を増加してもらう。
- 既存のキャンペーンで扱われない障害に関する事柄を扱うため、キャンペーンの開発を支援する。
個人的知識や技能の強化
- 障害のある人や家族を自宅訪問し、健康な生活の維持について話し、実用的な提案を行う。
- 健康増進に関する資料を集め、障害のある人や家族に配布する。
- 障害のある人が利用可能なように、資料を編集したり発展させたりする。
- 障害のある人や家族に地域の健康増進プログラムやサービスについて情報を提供する。
- 一般的な教育活動では満たされないニーズがある障害のある人向けに特別な教育活動を開発する。
- 学習や理解を高めるために、幅広い教育手法や資料が教育活動の中で使用されことを保証する。
- 障害のある人や家族がヘルスケア提供者に健康に関する質問や意思決定をできるよう支援する。
- 保健部門と協力して、障害のある人に訓練を提供し、彼らが健康増進の教育者になれるようにする。
人々を自助グループに結びつける
- 障害のある人や家族の健康ニーズを満たすため、彼らと地域の既存の自助グループを結びつける。
- 似たような障害経験を持つ人達が、新しい自助グル―プを形成するために協力するよう促す。
- 自助グループが彼らの地域の中で健康増進活動に積極的に参加し、他者と協力するよう働きかける。
ヘルスケア供給者を教育する
- 保健ワーカーの関心を障害へ向かわせ、彼らに障害のある人や家族が直面している問題を教える。
- 保健ワーカーが差別のない態度で障害のある人と意志疎通する重要性を理解するよう実践を示す。
- 医療従事者の健康に関するメッセージが理解されるよう、資料を簡単に書き直す方法を示す。
- 医療従事者が多様なメディアや技術を使って障害のある人向けの健康情報発信を行うようを促す。
協力的な環境を作り出す
- 健康増進プログラムやサービスが障害のある人にとって物理的に利用可能であることを保証する。
- 都市、社会、保健計画者と障害のある人が連携し、物理的、構造的な利用しやすさを改善する。
- 障害のある人が娯楽活動に参加できる機会を作り出す
- 障害のある人が利用可能で安全な公共交通機関を整備する。
- 教育や訓練を通じて、障害のある人や家族への誤解や否定的振る舞いや偏見に対処する。
- 地域の健康に関する難問に対処するための文化的行事を計画する。
健康増進組織になる
- スタッフの健康を向上維持するために、すべてのスタッフに訓練と教育を提供する。
- 安全で健康的な環境を提供する。
- 健康を増進させる組織内の方針や実践を発展させる。
- スタッフに地域の模範となるよう促し、健康的な行動を身につけることで、他の人に見本を示す。
原因の予防
はじめに
予防の主な焦点は発病の抑止である(初期予防)が、進行予防のための早期発見と治療(二次予防)、現在の健康状態の低下防止(三次予防)も含む。本項目では主に初期予防に焦点を当てる。
障害のある人は他の健康悪化リスクや初期の健康状態に起因する二次的悪化リスクにさらされている。
予防ではプライマリーヘルスケアが重要な役割を持つ。CBRはプライマリーヘルスケアと緊密に関わるため、障害のある人の健康増進や予防のサポートに大切な役割を果たす。
目標
障害のある人が機能、健康および幸福すべてに影響を与える健康状態の悪化を起こしにくく、家族や他の地域メンバーもまた障害に伴う健康悪化や機能障害を起こしにくい状態となること。
CBRの役割
地域と開発部門が、障害のある人・ない人両者の予防活動に焦点を当てるよう保証することである。CBRプログラムは障害のある人と家族が、健康を増進し、健康悪化または二次的障害を予防するサービスが利用できるよう支援する。
望ましい成果
- 障害のある人と家族が健康に関する情報や予防を目的としたサービスを利用できる。
- 障害のある人と家族が健康的な行動やライフスタイルを獲得することで健康悪化リスクを軽減する。
- 障害のある人が初期予防活動に参加できる。
- 地域のすべての人々が初期予防活動に参加できる。
- CBRプログラムが保健部門や他の部門と協働する。
主要概念
健康に対するリスク
危険因子は人々の健康に影響を及ぼし怪我や病気の可能性を決定する。人は人生を通じて多くの健康リスクにさらされる。予防活動は個人と地域の健康リスクを減少させる。家族歴などいくつかの危険因子は変更できないが、ライフスタイルや身体・社会環境は健康の維持や改善のために変更できる。
予防の三段階
予防的介入には、「初期予防:発病による健康悪化の防止」「二次予防:早期発見と早期治療」「三次予防:既存の機能障害や健康状態悪化の影響の抑制」の三段階がある
障害のある人にとっての予防の意味とは?
障害のある人も予防接種のような定期的で予防的なヘルスケアが必要である。障害のある人は地域内の健康リスクに脆弱であるため、特別な介入が時に必要となる。また障害のある人には二次障害のリスクもある。二次障害は早期介入により対処可能で多くは予防可能である。
障害のない人にとっての予防の意味とは?
予防は障害のない人にも重要である。機能障害と能力障害に伴う多くの健康悪化は予防できる。健康悪化や機能障害に焦点を置いた取り組みの推進には繊細さが求められる。障害コミュニティがこれらを障害のある人の存在を阻む試みと捉える可能性があるからである。
推奨される活動
既存の予防プログラムの利用促進
- 障害のある人と家族が、彼らの地域で入手可能な予防活動の種類について認識を高める。
- 保健ワーカーが障害のある人のニーズに対しての認識を高めることができる
- 予防活動の情報が適切な伝達形式で、人々の住む場所に近い様々な場所で入手できるよう保証する。
- 予防活動の場所の物理的アクセスを検討し、アクセス可能となるよう解決方法を提供する。
- 利用困難な場合には代わりの場所にて予防サービスの提供が可能か否か決定する。
健康的な行動とライフスタイルの促進
予防接種の奨励
- 障害のある人を含むすべての地域の人々に対して予防接種を促進する奨励キャンペーンに関わる。
- 障害のある人、特に障害のある子どもにとっての予防接種の重要性を保健ワーカーに教える。
- 障害のある人と家族が地域の予防接種を利用できるようプライマリーヘルスケアと協働する。
- CBRプログラムから支援を受けている人々が奨励される予防接種を受けられることを保証する。
- 奨励される予防接種を受けていない人々に情報提供や節酒サービス利用の支援を行う。
- 予防接種を利用できない人々にプライマリーヘルスケアと協働し代替方法を準備する。
適切な栄養の確保
- CBRワーカーは栄養失調の兆候のある人々を把握し、評価や管理のために保健ワーカーへ照会する。
- 地域で入手可能な食物を使用し低価格で高栄養なレシピを紹介し、栄養豊富な食事を奨励する。
- 障害のある子どもたちが十分で適切な食べ物を得られることを保証する。
- 摂食機能障害のある人を把握し、言語療法士へ照会する。
- 障害のある人の家族に対し、ポジショニングや安全で簡単な食事などの介助方法を提案する。
- 地域内で栄養に関する取り組みを見つけ、障害のある人がこれらを利用できることを保証する。
- 母乳栄養の促進と妊娠女性に対し鉄分と葉酸補給のための妊婦管理に参加するよう推奨する。
母子保健への参加促進
- 地域内で入手可能な妊婦の保健サービスを把握する。
- すべての女性に対し妊婦の保健サービスについての情報提供をし、そのサービスの利用を奨励する。
- 障害のある女性が妊婦の保健サービス利用が困難である場合には、追加の支援を提供する。
- 女性とその家族に妊娠に関連して特別な質問や懸念がある際は遺伝相談へ照会する。
- 障害のある妊婦が保健サービスの利用で問題がある際へのアドバイスを行う。
- 伝統的産婆に対する訓練プログラムに障害に関する情報が含まれているか確認する。
- 障害のある子どもを持つ親に対し地方当局へ出生届を提出することを奨励する。
清潔な水と衛生設備の促進
- 障害のある人と家族に、水の使用や衛生設備の利用の際し直面する障壁について話を聞く。
- 障害のある人と連携し、地方当局や水・衛生設備設置者に障壁除去に関するアイディアを提供する。
- 地方当局にロビー活動を行い、または地方当局と協働して、既存設備を改良し新設備を建設する。
- 地域の人々に対し障害のある人の必要に応じて、援助やサポートを行うよう働きかける。
傷害予防の助力
- 地域および家庭内での主な傷害の原因を把握し最も危険にさらされているグループを把握する。
- 地域内における傷害の主な原因とそれらをどう防ぐかについての認識を高める。
- 地方当局、地域団体と協働し、家庭や地域内での傷害発生を減少させるために行動する。
- 家庭内での傷害予防について家族に対して示唆を提供する。
- 従業員や労働者に対し職場内における傷病予防について教育する。
- 学校児童に対し道路の安全について教育する。
二次障害予防の助力
- 障害のある人と家族に二次障害について知識と啓発を行う。
- 障害のある人と家族が二次障害発症予防のための戦略を見つけられるよう支援する。
- 障害のある人々に提供された自助具が二次障害のリスクを冒さないよう確認する。
医療
はじめに
医療は、健康状態及び/または機能障害の診断、評価、治療と定義できる。医療ケアは、何らかの治療を提供し、影響を軽減し、予防可能な機能障害の発生を防ぐことができる。質の高い医療ケアを必要な時に必要なだけ利用することは、健康を損ないがちな障害のある人が良い健康状態や生活機能を維持するためには不可欠である。国連障害者権利条約25条に関連する。
目標
障害のある人がそれぞれのニーズに基づいた全般的かつ専門的医療サービスを利用する。
CBRの役割
障害のある人、その家族、医療サービスと協働し、障害のある人が健康状態や機能障害を診断、予防、最小化、そして/または直すためのサービス利用を保証することである。
望ましい成果
- CBRワーカーが障害のある人や家族をニーズに合った全般的または専門的医療ケアに照会できる。
- 障害のある人と家族が、健康状態や機能障害の早期発見活動を利用する。
- 医療ケアを提供する施設がインクルーシブで、障害のある人が利用しやすいよう改善されている。
- 障害のある人が外科手術を受けることができる。
- 障害のある人や家族が自己管理技能を育成することができる。
- 医療ケアワーカーが障害のある人の権利や尊厳を尊重し、質の高いサービスを提供する。
主要概念
医療ケアの種類
多くの保健システムには1次(プライマリー)、2次、3次の3つのレベルのヘルスケアがある。
プライマリーレベルのケアは地域の基本的ヘルスケアである。保健所やクリニックで提供され、人々が受ける最初のケアになる。CBRはプライマリーヘルスケアサービスと密接に働く。2次レベルのケアは大きなクリニックや地区レベルの病院で提供される専門的医療サービスである。3次レベルのケアは高度に専門化された医療ケアであり、国や県レベルの大都市にある大病院が提供する。
障害のある人のための医療ケア
障害のある人は生涯にわたり健康を維持するための医療ケア、特にプライマリーヘルスケアを必要とする。ヘルスケアワーカーは早期発見で重要な役割を果たす。すべての健康状態は早期に発見され治療されることが重要である。早期介入は外科的ストレスが少なく経済的で、よりよい結果につながる。
外科手術
外科手術は機能障害や合併症を予防・軽減することができる。手術実施前に家族はその利点や結果を知っている必要がある。手術の結果は術後の包括的なフォローアップによって決まるため、医療とリハビリテーションの専門家の協働が不可欠である。
自己管理
自己管理は医学的介入なしに自分の健康を管理するという意味ではない。自己管理には、説明を受けた上で医療ケアに関する選択や決定に責任を持ち、健康の改善や維持のために積極的役割を果たすことが含まれる。よりよい健康のためには当事者とヘルスケアワーカーの良好な関係が必要である。
推奨される活動
医療サービスに関する情報を集める
- 市町村、県、国レベルで、政府、民間、非政府のサービス提供者や伝統医療提供者の把握する。
- サービス提供者から情報を集める。
- 全ての情報がCBRワーカー、当事者や地域の人に利用可能であることを保証する。
早期発見を支援する
- プライマリーヘルスケアワーカーと協働し早期発見のための制度を構築する。
- 感染症や非感染症の早期発見を目的としたスクリーニング活動を確認する。
- 障害のある人と家族にスクリーニング活動に関する情報を提供し、その利用を保証する。
- 遺伝的疾患の病歴をもつ家族が評価やカウンセリングのため医療施設に照会されることを保証する。
- 障害のある人と仕事をする際に、二次的障害について注意を払う。
- 外科手術により恩恵を得るかもしれない障害のある人を把握する。
早期治療を保証する
- スクリーニングを受けた障害のある人がフォローアップを受けているかヘルスワーカーと確認する。
- 障害のある人が必要に応じて2次・3次医療に照会されたことをヘルスワーカーと確認する。
- 障害のある人を代弁し、提供された情報の理解を保証する。適切な治療が受けられるよう支援する。
- メディカルケアの利用を阻む障壁について啓発し、障壁の軽減と除去のために他者と協働する。
- 障害のある人へのサービス供給格差を把握し、当事者を含む関係者と共に格差を減らす方法を探す。
外科的ケアへのアクセスを促す
- 障害のある人にどのような外科手術が可能か、特に基金が利用できるかどうか調べる。
- 手術前に、障害のある人と家族がリスク、利点、コストについて情報を得ていることを確認にする。
- 外科手術の効果を最大限にするため、適切なフォローアップを受けていることを確認する。
慢性疾患の自己管理を推進する
- 障害のある人が自らの健康に責任を持ち医学的アドバイスを理解し守ることができるよう共に働く。
- 医療情報に関する既存の教材や出版物を障害のある人やその家族に理解しやすい形に作りかえる。
- 障害のある人と自助グループを結びつけ、知識や技能、自己管理についての学び合いを保証する。
メディカルケア提供者との関係をつくる
- 障害のある人や家族の健康に関するニーズについて、医療従事者の意識を高める。
- 障害当事者やそのグループ、家族、医療従事者の間で、障害に関する相互勉強会を作る。
- 障害のある人や家族が医学的治療やケアプラン作成に関わることを医療従事者に促す。
- 医療サービスにCBRワーカーへの教育と訓練を要求する。
- 地域保健プログラムと活動し、障害のある人がこれらのプログラムの恩恵を受けられるようにする。
リハビリテーション
はじめに
リハビリテーションは障害のある人が最良の健康レベルに到達するために重要である。国連障害者権利条約第26条に関連する。
リハビリテーションは、限られた期間における、限られた回数の介入という形で行われる。介入方法は地域のリハビリテーションワーカーや家族による基本的なものからセラピストによる専門的なものまで様々である。
目標
障害のある人が、総合的な健康、インクルージョン、参加に寄与するリハビリテーションサービスを利用することである。
CBRの役割
地域レベルでのリハビリテーション活動を促進、支援、実施すること、そして、より専門的なリハビリテーションサービスへの照会を促すことである。
望ましい成果
- 障害のある人が個別に評価を受け、彼らが受けるリハビリテーション計画の策定に関わる。
- 障害のある人と家族がリハビリテーションの役割と目的を理解し、保健部門で利用可能なサービスに関する正確な情報を受け取る。
- 障害のある人が専門的なリハビリテーションサービスの照会、提供、フォローアップを受ける。
- 基本的なリハビリテーションサービスが地域レベルで利用可能である。
- 地域のリハビリテーションサービスを支援する資源が、CBRワーカー、障害のある人と家族に利用可能である。
- CBRワーカーがリハビリテーション活動を実施するための適切な訓練、教育、支援を受ける。
主要概念
リハビリテーション
リハビリテーションは、病気やけがの結果として機能を失い、機能を最大限まで再獲得するために日常活動の実施を再学習する必要がある個人を支援することを目的とし、ハビリテーションは、先天的または発達の早い段階で障害をもち、その障害なしに機能を使う機会をもたなかった個人を支援することを目的とする。本ガイドラインでは、これら両方を指す言葉として「リハビリテーション」を用いる。
リハビリテーション介入
保健部門においては様々なリハビリテーション介入が実施される。
リハビリテーションサービス
政府、民間、非政府部門により運営される。専門職を含む様々な関係者によって、病院、診療所、専門センター、施設や家庭など様々な場所で提供される。低所得国、特に農村では、利用可能なサービスに限りがある。それゆえ、CBRはリハビリテーションサービスを提供するために不可欠である。
地域に根ざしたサービス
地域レベルにおいてリハビリテーションサービスを提供することは、CBRにとって今も必要な活動である。地域に根ざしたサービスは、専門リハビリテーションサービスと密接な関係を維持する必要がある。リハビリテーションの成功は、障害のある人、専門家、地域関係者の協力にかかっている。
リハビリテーションプラン
リハビリテーションプランは利用者中心で、目標指向的かつ現実的である必要がある。個人の好み、年齢、性別、社会経済状況、家庭環境を考慮する必要があり、短期目標と長期ビジョンが要求される。リハビリテーションニーズは、就学、就労、地域生活の開始など人生の移行期に変化し得る。これらの移行期にはプランの調整が必要となる。
推奨される活動
ニーズを把握する
- どのような活動をできるか、できないか?
- 何をできるようになりたいのか?
- どのような困難を経験しているか?どのように、いつ、それらの困難が生じたか?
- どの領域が影響を受けているか?例、身体、感覚、精神、コミュニケーション、行動
- どのような二次的問題が発生しているか?
- 家庭や地域はどのような状況か?
- 自身の障害をどのような方法で適応させてきたか?
照会の促進とフォローアップの提供
- 保健システムの全てのレベルにおいて、利用可能なリハビリテーション照会サービスを把握する。
- 障害のある人と家族へ照会サービスに関する情報(場所、利点、費用など)を提供する。
- 障害のある人や家族が照会サービスに関する心配事を話し、質問ができるように支援する。
- 障害のある人や家族が、照会される前にきちんと説明を受け同意していることを保証する。
- 照会後、きちんと約束され治療が行われるように、サービスと当事者との定期的接触を維持する。
- サービスへの利用を促すために必要な支援(経済的支援、移動、代弁)と提供方法を確認する。
- 継続的支援が必要かどうかを見極めるため、約束後のフォローアップを提供する。
リハビリテーション活動の促進
小児発達のための早期介入活動の提供
機能的自立を促す
- 障害のある人と家族に、活動を遂行するための様々なやり方を訓練すること。
- 障害のある人が最大限の自立を獲得するために、一番良い支援に関する教育を家族へ行う。
- 活動をより易しくするための歩行器や移動に関する機器などの支援機器の使用に関する訓練を行う。
- 個人の能力に影響を及ぼす機能障害に対処するための専門的技術の教育と紹介を行う。
環境改造を促す
自助グループへのリンク
資源教材の開発と配布
- 既存の資源教材のある場所を確認する。
- 教材を、文化の相違に特別な配慮をした、その地域の要求に合わせたものに適応させる。
- 既存の教材をその国またはその地域の言語に翻訳する。
- 既存資源が利用可能でない場合、地域のニーズに合わせた教材を分かりやすい言語で作成する。
- 全てのCBRワーカーに資源教材を配布し、障害のある人を訪問する際に持参できるようにする。
- 障害のある人、家族、地域の人々のための教材が入手できる資源センターを作る。
CBRワーカーへの訓練提供
支援機器
はじめに
支援機器とは身体外部の器具で、特定の目的のために人間を補助するようデザイン、製造、調整されている。障害のある人の多くは日常生活と地域生活への参加を補装具に依存している。国連障害者権利条約第4条、20条、26条に関連する。
支援機器は障害のある人の多くにとって不可欠である。支援機器がなければ、障害のある人は教育や就労が困難となることがあり、貧困サイクルが継続する。支援機器の効果は高齢者の健康増進と疾病予防の方法としても評価される。
目標
障害のある人が良質で適切な支援機器を入手する権利をもち、家庭、職場、地域生活への参加が可能になる。
CBRの役割
障害のある人や家族と共に支援機器に関するニーズを判断し、利用を促進し、必要に応じて補修や交換を行うことである。
望ましい成果
- CBRワーカーが支援機器に精通する。
- 障害のある人と家族が支援機器に精通し、情報に基づいて支援機器の入手と使用の決定をする。
- 障害のある人と家族が支援機器の適切な使用と管理をできる。
- 障害のある人と家族を含む地域住民が基本的な支援機器を作成でき、簡単な修理と管理ができる。
- 不適切な情報、財政的制約、都市部のみでのサービス提供など支援機器入手を妨げる障壁が減る。
- 支援機器が必要とされるどのような場所でも、人がそれを使えるように環境要因が対処される。
主要概念
一般的な支援機器のタイプ
- 移動補助具
- 姿勢保持装置
- 義肢装具及び整形靴
- 日常生活用具
- 視覚補助具
- 聴覚補助具
- コミュニケーション補助具
- 認知補助具
補助具の選択
- 適正技術
地域と個人に影響を及ぼす環境的、文化的、社会的、経済的要素を考慮してデザインされた技術。 - 評価
支援機器には、家庭、学校、職場、地域の環境での包括的評価が不可欠である。これには、病歴、ゴール、既存の支援機器の評価、身体機能の評価が含まれる。評価には、障害のある当事者、その家族、療法士、技術者、教師、CBRワーカーなど幅広い分野の人が参加する。
支援機器の使用
- バリアフリー環境
利用者が最大限の機能と自立を達成するために全ての環境がバリアフリーであることが大切である。
環境修正にはユニバーサルデザインが役に立つ。ユニバーサルデザインは、障害の有無にかかわらず、あらゆる人が利用できるようデザインされた製品、環境、プログラム、サービスである。
推奨される活動
CBRワーカーを訓練する
- 一般的な支援機器。
- 支援機器の目的と機能。
- どの基本的な機器が地元で手に入るか。
- どこで特別な機器が入手可能か。
- 特別な機器を入手するための照会制度。
- 支援機器を購入することができない人のための助成金制度。
個人と家族の能力形成
- 障害のある人と家族が様々な種類の支援機器を知り、それらの有用性を理解している。
- 障害のある人と家族が支援機器の選択とデザインの決定に参加する。
- 障害のある人と家族が自分の支援機器を適切かつ安全に使用し修理とメンテナンスができる。
- 障害のある人と家族が照会機関へのフィードバックや支援機器の調整や交換をできる。
地元職人の養成
支援機器入手の促進
- 地元、地域、国レベルで基本的な支援機器から特注品まで幅広い支援機器の製造者と供給者を知る。
- 各サービス提供者について、照会システム、費用と手続などの詳細な情報をまとめておく。
- この情報が適切な形式で利用でき、障害のある人とその家族に確実に知らされる。
- 支援機器の費用を負担できない人のために補助金や寄付を利用できる。
- 登録手続の支援によって障害者の証明書が得られ、無料で支援機器が入手できる。
- 農村部や遠隔地へのサービス提供のため照会センター、地域行政当局、その他の団体と提携する。
- 農村や遠隔地の小グループが照会センターまで行く移動手段を提供する。
- 農村や遠隔地に住む人のために、家庭または地域での修理サービスを提供する。
小規模作業所の設立
ネットワークと協力
環境の障壁への対処