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CBRガイドライン概要版&CBRマトリックス使用の手引き

【教育】

序文

教育に関する普遍的権利は世界的に承認された国際文書に制定されている(世界人権宣言第26条、子どもの権利条約第28条)。障害者権利条約はこの権利を再確認するものであり、特にインクルーシブ教育の権利を述べた最初の法的拘束力のある文書である。

貧困、排除、差別は、インクルーシブ教育の主要な障壁である。低所得国では、障害のある子どもの90%以上は学校に通っていない。

MDGsの二番目の目標(小学校教育の完全普及の達成)は、障害のある子どもたちにも等しく適用される。従って、CBRはこの目標達成に貢献する必要がある。

目標

障害のある人が、教育や生涯学習を受けることにより、自らの可能性を最大限発揮し、尊厳や自尊心を獲得し、社会に実際に参加する。

CBRの役割

あらゆるレベルで教育がインクルーシブになるように教育部門と協働することであり、障害のある人が教育や生涯学習を受けられるように推進することである。

望ましい成果

  • 障害のある全ての人がそのニーズを満たし、権利を尊重する教育と資源を利用する。
  • 障害のある子どもを含む全ての子どもを受け入れ、それによって、障害のある子どもが仲間と一緒に学び、遊ぶことができる地域の学校を実現する。
  • 地域の学校は通学可能で、あらゆる子どもの受け入れを歓迎している。柔軟性のあるカリキュラム、教員は訓練を受けており支援体制がある。家族と地域の連携がよく取れている。そして、充分な量の水と衛生設備がある学校を実現する。
  • 障害のある人がロールモデルとなり、意思決定者として、また貢献者として教育に関与している。
  • 教育を奨励し支援する家庭環境を実現する。
  • 地域社会が、障害のある人は学ぶことができることを知り、障害のある人を支援し応援する。
  • 保健、教育、社会や他部門との間に良好な協力がある。
  • あらゆるレベルで、国家政策がインクルーシブ教育を幅広く推進するような組織的な提言がある。

主要概念

教育

フォーマル教育、インフォーマル教育、ノンフォーマル教育、家庭教育、地域主導、政府主導を含む。

人権

誰もが教育を受ける権利を持っている。しかし、障害のある人は例外だと誤解されることがある。

貧困と教育

障害のある子どもにとって、教育の欠如に起因する貧困リスクは、障害のない子どもより高くなる可能性がある。教育から排除された障害のある子どもが生涯を通じて貧しいということは明白である。

インクルーシブ教育

学習、文化、地域への参加を増加させ、教育の中における排除や教育からの排除を減少させることを通して全ての学習者のニーズの多様性に取り組み応じるための過程である。

統合教育

障害のある子どもを普通学校に入学させる過程で、学校制度よりも障害のある個々の子どもを中心に捉えている。

特別支援教育

特別な支援の提供、適応したプログラム、学習環境や特殊な器具、教材または手段(例えば、点字、オーディオ機器、補助具、手話など)を指す。

ジェンダーと教育

CBRワーカーは、教育に関するジェンダーの問題に配慮する必要がある。

本コンポーネントの要素の紹介

  • 幼児教育
  • 小学校教育
  • 中等教育と高等教育
  • ノンフォーマル教育
  • 生涯教育

幼児教育

はじめに

幼児期とは出生時から8歳までをいう。

幼児教育の広がりは「万人のための教育」宣言の6つのうちの1つである。幼児教育は、インクルーシブ社会に種をまく。なぜなら、障害のある子どもと障害のない子どもが、一緒に学び、遊び、成長することができる場所だからである。幼児教育は、一般的に、義務教育ではない。

目標

障害のある全ての子どもが人生の最初の段階で最良のスタートを切り、インクルーシブな学習環境において発達時期を通じて支援が受けられる。

CBRの役割

障害のある子どものいる家庭を把握し、彼らと密に相互交流し協働し、子どもの生活における全ての活動のための土台を築くことを支援することである。

望ましい成果

  • 全ての子どもは生存と健康を推進する機会をもつ。
  • 全ての子どもの身体的、精神的、言語的、認知的技能が最大能力まで発展する。
  • すべての子供にフォーマルとノンフォーマルの幼児教育が奨励され、インクルーシブである。
  • 障害のある子どもと彼らを支援する人々は家族や地域の一員であり、適切な支援を受ける。
  • 子どもたちは一緒に遊びを学び、互いの違いを受け入れ、互いに助け合う。
  • 機能障害の影響が減少し代償される。
  • 障害のある子どもが、他の仲間と一緒に小学校教育への移行を円滑に行う。

主要概念

幼児期

幼児期は人生の基礎である。CBRワーカーは幼児期に関しての様々な見解を認識しなければならない。

子どもの発育

発達の遅れは子どもが年齢相当の段階に達しない時に使われる用語だが、以下の留意が必要である。

  • 発達の遅れの概念は、普通が何かということが基準になる。従って、レッテルや烙印に通じる。
  • 障害のある子どもは発達の「正常な」パターンに従う必要はない。
  • 発達の重要な段階は一般的な原則で、現実は多くのバリエーションがある。

遊びや活動を取り入れた学習と刺激

  • 遊びと活動を取り入れた学習、または遊びか活動を取り入れた学習は、特に障害のある子どもにとって重要である。それは、日常生活の技能を発達させる助けとなり、機能障害の影響を軽減する。
  • 多くの人は、障害のある子どもが遊びを始めることができないなら、彼らは遊べないと信じ込んでいる。特に両親は遊びから得られるものを理解しない恐れがある。
  • 遊びは、子どもによって、または大人の支援によって始まる可能性がある。
  • 重度の障害か重複障害のある子どもにとって、遊びと刺激のある活動は特に重要である。
  • 両親が子どもに与える刺激の多い遊びは、子どもの社会的・情緒的発達に有害であるかもしれない。

年齢相応の活動

一般に、子供の実年齢を尊重し、ピアグループ環境で年齢相応の学習を提供する方法を見つけることは賢明である。しかし、時には妥協が必要となる。原則は、子どもの利益が最も満たされることである。

選択と柔軟性

CBRプログラムは、家族が支援と環境について自由意志による選択ができるよう、そして、弾力的にそれに答えることができるよう手助けする。

推奨される活動

幼児期のニーズを把握する

CBRプログラムは、以下の方法で制度と子どもの両方に焦点を当てることができる。

  • 障害のある子どもが適切なケアを受けられることを保証するために保健ワーカーと連携し協働する。
  • 早期発見プログラムが障害のある子どもとその家族を支援することを保証する。
  • 先天的に機能障害のある子どもや幼児期に機能障害のある子どもになった場合、出来るだけ早く把握し、家族と緊密に協働する。
  • 機能障害があるということがわかった時点で速やかに対応するために両親を支援する。
  • 障害のある子どもに建設的アプローチができるよう、学習能力と可能性に焦点を当てる。
  • 障害のある子どもが利用しやすくインクルーシブな教育設備のために地方当局の政策に働きかける。

家庭での早期学習を支援する

家族とのかかわり

  • 子どもに関する知識を教員や保健ワーカーと分かち合うことで家族を支援する。家族はCBRワーカーが学ぶべき情報を提供できる。
  • 家族が障害のある子どもをケアし建設的に学ぶ機会を提供できるよう支援、教育、訓練を提供する。
  • 必要があれば、家族が手話訓練などの特殊な訓練を受ける手助けをする。また、作業療法、理学療法、言語聴覚療法などの特殊なサービスを支援する。
  • 家族の個人的かつ詳細な知見とCBRワーカーの持つ子どもの発達と評価の知見を活用し、家族と協力して、障害のある子どもの個別学習計画を開発する。
  • 障害のある子どもと親の自助グループを形成する。または、既存のグループへの参加を奨励する。
  • 家族、地域、地域のリソースパーソンとの支援ネットワークやつながりを作る。
  • 家族の中にあるかもしれないジェンダーの問題に対応する。

家庭に根差した活動を推奨する

  • 創造的で活発な手段による活動主体の学習に子どもが関われるよう親を説得する。
  • 日常的に家庭や地域にあるものがどのように遊びに使われるか、どのように遊び道具が家庭で作られるかを示す。重度障害のある子どもでさえ、必ずしも「専門家の作った」遊び道具は必要でない。
  • 支援機器について、地域にある素材を使用して家族でどのように作るかを示す。
  • 子どもの機能障害や身体的なニーズばかりに焦点を当てないように気をつける。

地域における支援学習

  • 家族が子どもを地域社会へ連れ出すことを奨励する。
  • 子どもが家の外で遊ぶことを家族が認めるように勧める。
  • 障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に遊ぶ共同学習を奨励する。
  • 利用しやすく、喜んで受け入れてくれるような環境を作るように地域に関与する。

インクルーシブな保育園の開発を支援する

  • 構造化された遊びとインフォーマルな遊びの両方で遊びを通して学習する。
  • 小グループでの活動。
  • 地域の材料で遊び道具と学習用具を作る。
  • 全ての人が利用しやすい環境を作る。
  • 家族やボランティアを教室の支援として活用する。
  • どのように子どもが参加し学ぶか観察し、子どもの長所を活かした目標が設定されるよう議論する。

専門的なサービスの入手、利用を保証する

時には、普通学校に障害のある子供をインクルージョンするために専門家が必要になる。CBRワーカーは、障害のある子どもが専門家のサービスを利用することを保証する。そして、専門家と普通学校の教育現場が一丸となって協力体制を作ることを保証する。

障害のある大人と子どもに関わる

幼児教育や教育活動に障害のある人々が直接関与することは重要である。「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」の原則は幼児期にも採用される。

訓練と啓発を実行する

訓練と啓発は多くのグループのために必要である。形式と内容に柔軟性がありこと、開発と実施において障害のある人々と障害当事者団体が関与することが必要である。

貧困問題に取り組む

  • 障害のある子どもがセルフケアと基本的技能を早期に学習する必要性を家族が理解するよう促す。
  • 日々の家族の仕事に合った活動を通した子どもの学びを示し、家族の生活の不可欠な一部とする。
  • 女性と、障害のある子どもの親のための自助グループと、障害当事者団体の発展を促進する。
  • 政府の補助金やNGO、寄付団体、地域企業、その他の団体からの支援を利用する手助けをする。
  • 幼児教育のプログラムは柔軟性があり、重度障害や重複障害のある子どもの家庭を含む貧困家庭の様々な状況に確実に対応する手助けをする。

インクルージョンに関するロビー活動と政策提言

CBRプログラムは、分離された施設を作るよりも、既存の施設がインクルーシブになるために、可能な限りロビー活動をすべきである。

緊急事態、紛争、難民状態に備える

CBRプログラムは、子どもにとって利用しやすい遊び場所と遊ぶ機会を作るよう手助けできる。

小学校教育

はじめに

普遍的小学校教育を達成することはミレニアム開発目標の第二番目の目標である。

ユネスコは、最近、低所得国において障害のある子どもの90%以上は学校に通っていないと推定した。

小学校教育は、基本的な権利であり、障害者権利条約第24条に関連する。

目標

友好的でインクルーシブな小学校教育制度が、教育活動の中心である地域の学校とともに、地域の中に存在する。

CBRの役割

インクルーシブな地域社会の学校をつくるために、小学校教育制度と協力体制を構築し、地域の小学校教育が利用できるように障害のある子どもとその家族を支援し、そして、家庭、地域、学校間の連携を発展させ持続することである。

望ましい成果

  • 地域全体がインクルーシブな小学校教育を開発するために参加する。
  • 家族は積極的、協力的であり、インクルーシブな小学校教育に関与している。
  • 障害のある子どもがみんな、質の高い小学校教育を修了する。
  • 支援機器、治療、その他必要な支援が利用・入手しやすく、インクルージョンが支援される。
  • 学校環境の中で利用に関する問題が把握・対処されている。
  • 教員は、支援されていると実感し、障害のある子どもへの教育に自信をもっている。
  • カリキュラム、試験、評価、教育のアプローチと課外活動が子ども中心でインクルーシブである。
  • 教育のための地域および専門家の資源は、完全かつ適切に活用されている。
  • 貧困家庭出身の障害のある子どもが小学校に通う。
  • 国策によるインクルーシブ小学校教育推進をすべてのレベルで主張するために、適切な関係者と支援体制や協力関係を構築する。

主要概念

地域全体のアプローチ

インクルージョンを推進し支援するのは地域全体の責任であり、地域の小学校では、これを実証するための重要な機会と環境を提供する。

学校全体のアプローチ

学校全体のアプローチは学校と関係がある全ての人々が、地域の学校における障害のある子どものインクルージョンを推進するために障壁の把握と除去を保証することである。

社会的インクルージョン

他の人と一緒に暮らすために学ぶこと、自分とは違う人と関わるために学ぶこと、人に対して心を開き、親切にし、敬うことを学ぶことは、従来の技能の学習と同様に重要である。

多様性への対応

子どもたちはみな異なっており、多様な方法で学ぶ。学校はこれに対応する必要がある。柔軟性のあるシステムは、特定のグループにだけではなく、全員にとって柔軟性があることを要求する。

アクセシブルな環境

利用のしやすさはインクルージョン全体のコストを減少する。教育環境は、全ての子どもが物理的にアクセシブルである必要がある。

学習者中心のアプローチ

学習者中心、つまり子ども中心のアプローチとは、それぞれの子どもの学習と参加の支援が学校の中心となっていることを意味している。

柔軟性のある小学校教育

インクルーシブ教育は学校の建物に障害のある全ての子どもを入れることを意味しないが、それは学校が変わらないでいる理由にはならない。学校はインクルーシブな方向に努力することが重要である。

資源と専門家のサポート

  • 地域資源の活用:子どもの学びを手助けするのに必要な資源と支援の多くは「特別」ではない。
  • 専門家支援:一部の障害のある子どもには、インクルージョンを推進するために専門家が必要になる。

推奨される活動

地域住民を結集する

  • メディアやイベントを活用し、インクルージョンの重要性と教育を受ける権利について啓発する。
  • 障害のある子どもを学校から遠ざける障壁に関する議論に、障害当事者団体や親の会が関わる。
  • 子ども間の啓発のため学校において「子どもから子どもへ」の活動を活用する。
  • インクルーシブ小学校教育への努力を支援することができる現存する政策と資源を見つけ出す。

家族を支援し、巻き込む

  • 家族の話を聞き、家族と話す。家族に必要な支援を見つける。
  • 家庭と学校をつなぐ。教員と家族が相互に話し合えるように支援する。
  • 家にいる障害のある子どもを観察する。学校で学んでいて、家でも継続でき役に立つ方法を探る。
  • 決定の全てが子どもにとって最善の利益になり、権利の擁護と実現を保証する手助けをする。
  • 両親への支援を行い、インクルージョンを推進する。
  • 障害のない子どもの親と協働し、インクルージョンに関する彼らの支援を奨励する。

障害のある子どもを支援する

健康と物理的アクセス改善のため、CBRワーカーは、医療、リハビリテーション、支援機器などのサービスを子どもが利用できるよう保証する必要がある。

学校が快く受け入れアクセシブルにするための手助け

  • アクセシブルで快く受け入れる環境とはどんなものか。運動障害のある子どもに利用可能か。視覚障害のある子どもが自由に動き回れるか。
  • 親や訪問者は歓迎されているか。
  • 建物や設備の状態はどうか。学校は衛生的で整備されているか。修理が必要ではないか。
  • 衛生設備はどうか。トイレはあらゆるニーズに対応して、個室で、衛生的で利用しやすいか。
  • 手を洗ったり、飲んだりする衛生的な水はあるか。
  • 教室は照明が適切であるか。学校の周囲には、掲示板があり、わかりやすい表示があるか。

学習環境を作る手助けをする

学校から始める

  • 障害のある子どもに対する、校長、担任の教員、他の子どもたちの態度はどうか。
  • 障害のある子どもがすでに学校にいるか。
  • 学校における女子児童の割合はどんなか。
  • 退学率、留年率、修了率はどうか。
  • 教え方と学び方の質はどうか。
  • 障害のある教員はいるか。

質に焦点を当てる

CBRプログラムは、教員が創造的で、問題を共に解決し、既存の資源を弾力的に使用し、起こっている事柄を観察し、子どもの意見に耳を傾け、子どもの長所を確立するよう励ますことができる。

教員に対する訓練と支援を提供する

  • 様々な機能障害と学習することとの関連性
  • コミュニケーションのための様々な方法、手段、形態
  • 日常生活技能、適応と移動のための技能
  • 支援機器、教材と機器
  • 子どもの活発な関わりのあるインクルーシブな小学校教育のモニタリングと評価

カリキュラムや教授法の変化を促す

  • 子どもたちが小さなグループで活動するようにする。
  • お互いを支援できるようなペアの関係を作る。
  • チームで教える―学習障害のある子どもを支援するために教室にもう一人、大人を投入する。
  • 地域の資源で学習教材をつくる。
  • 生徒、特に障害のある子供、女児、関わりの薄いと思われる生徒の積極的な参加を求める。
  • 生徒の長所を確立し、小さなことでも成功をほめて褒美を与える。
  • カリキュラム研究に家族、生徒や地域のリーダーが関わり、子どもの生活への関連を検討する。
  • 学習を強化するために、歌、ドラマ、ゲームや写真を使う。
  • わかりやすい言葉と母国語の使用を奨励する。
  • 話す時は、教員の顔が輝いていること、黒板ではなく、教室の子どもの方向に向いている。

柔軟性のある試験と評価を奨励する

  • 「代筆者」、テープや他のオーディオ設備を使用する。
  • 時間を多く与える。
  • 長所を評価する。
  • 情報通信技術(ICT)を活用する。
  • 手話通訳、点字や大きな活字を活用する。

協働と支援を推進する

  • ボランティアの募集を促す。
  • インクルージョンの経験を共有し、支援するため、校長先生や教員組合を応援する。
  • 障害への意識を高めるため、ピアサポート開発活動を提供する課外活動やクラブの発展を推奨する。
  • 児童生徒と協働する障害当事者団体からロールモデルを見つける。

利用可能な資源を使用して支援を開発する

地域の資源と支援を描く

  • 子ども、教員、障害のある人、家族、地域の構成員の知識、技術、経験を洗い出し、活用する。
  • 上に提案した地域の資源から指導・学習教材を作り出すことを奨励する。
  • 巡回指導のできる教員の採用を奨励する。
  • 地域の芸術家、ミュージシャン、語り部が子どもの環境をより興味深いものにするよう提案する。

専門家の支援の利用を容易にする

  • 教室活動において機能的な姿勢を維持するために座席を改良する。
  • 視力が弱ければ、拡大文字、拡大鏡、柔軟な座席の配置、照明を明るくする。
  • 意思疎通の補助器具となるもの、例えば絵、シンボル、ボード
  • 移動機器、例えば、車椅子、下肢装具、義肢、白杖
  • 療法、例えば理学療法、言語療法。

小学級の最適な使用を奨励する

小学級(リソースルーム)は、メインストリームの小学校に付属する、障害のある子どもの統合の推進を目的に作られた場所である。残念なことに、通常クラスから障害のある子どもを分離することがあるが、小学級は正しい方法で使われるなら貴重な資源となる。

インクルージョンの方向へ特別支援学校をガイドする手助け

特別支援学校が存在する場合、CBRプログラムはインクルージョンの資源としてそれらを活用できる。

貧困に取り組む

  • 家族は子どもの養育支援を受けられる。または、学校や地域は学童に一日一食の食事を提供する。
  • 食品、制服、学習教材の寄付の奨励のため、地方当局、慈善団体、企業、非政府組織と接触を図る。
  • 実際の懸念を見出すために家族と協力体制を構築する。そして、地域住民からの支援を要請する。
  • 子供が生計を立てるために家族を助けるのではなく、自由に教育を受けられるように手助けする。
  • 資源が制限されている場合でも、インクルージョンの重要性を強調する。
  • 障害のある子どもの通学のために、移動の解決策を作り出すことを手助けする。

ネットワーク、支持者、情報共有

インクルージョンは、政策、予算、構造および管理者の支持がなければ、持続可能ではない。

中等教育と高等教育

はじめに

障害のある児童生徒が中等教育や高等教育を受ける権利は障害者権利条約第24条で強調されている。

障害があればあるほど、仕事を見つけるために、かつ社会に完全にインクルージョンされるために、基礎教育以上の教育を受ける必要がある。障害のある児童生徒にとっては、中等教育や高等教育への進学は、豊かで実り多い人生を手に入れる最も有力な入口となる。

目標

障害のある生徒が、生計の機会、エンパワメント、インクルージョンを促進しながら、他の生徒と一緒に学習し、資格や技能を取得し、経験を積む機会を持つ。

CBRの役割

障害のある生徒の参加や達成が増加しながらインクルージョンが促進され、アクセシブルな環境と柔軟性のあるカリキュラムを学校関係者と作ることである。

望ましい成果

  • 中等教育と高等教育における障害のある生徒の就学率と修了率を増やす。
  • 障害のある生徒が政府助成金、奨学金、その他の基金を利用できる。そして両親や地域はこれらの利用法について知識や能力を持っている。
  • 教育を等しく受けるためのロビー活動団体やキャンペーンを地域が支援する。
  • 家族や地域が障害のある子どもを含む全ての子どもに中等教育と高等教育への進学を奨励する。
  • 中等教育と高等教育のプログラムが、環境、教授法、カリキュラム、課外活動、評価制度と試験制度の点で利用しやすくインクルーシブである。
  • 中等教育は、障害のある人々の経験から多様性とインクルージョンを学び、インクルーシブな社会で求められている技能を身に付ける。
  • 専門家の支援が障害のある生徒のインクルージョンを高めるために適切に利用される。
  • 中等教育と高等教育から成人への移行期の支援が受けられ、進路指導が利用しやすくインクルーシブである。

主要概念

制度を変える

どの教育段階にも共通していえるが、学生に合うようにシステムを変えるという概念が重要である。

期待度が低いという障壁

障害のある児童生徒にとっての進学の最大の壁は周囲の期待度が低いということである。

達成と評価

評価の価値は、生徒の長所を明らかにし、進歩の助けとなることにある。創造的で柔軟性のある評価は、生徒が最大の可能性に到達し、才能と技能の発展を刺激する助けとなる。

異年齢で学び合うこと

障害をもつロールモデルとなる人々や仲間と生徒が連絡を取り合う必要がある。

推奨される活動

地域を巻き込む

  • 地域および学校当局に交通機関を整備することを奨励する。
  • 教育支援の財源を増やすために、障害のある生徒を地域資源として認識することを奨励する。
  • 助成金と政府貸付、資金援助機関からの資金を獲得する。
  • 障害のある生徒の権利を推進するため、地域の障害当事者団体と共にロビー活動と市民運動団体の形成を推進する。

家族を支える

CBRワーカーは、家族が障害のある生徒を支援できるように、家族を教育し支援することができる。

インクルーシブな学習環境を作る手助けをする

環境と場所

  • 校長と交渉し、教室の位置を変更する。
  • アクセシビリティの問題に関して、障害のある生徒が解決方法を見つけられるように支援する。
  • 少女や若い女性が専用の衛生的な水や衛生設備を利用できるように保証する。

カリキュラムと教授法

  • 適切で利用可能なカリキュラムの改良と開発を助ける
  • 座席、照明、座席配置を含む教室運営に助言し、グループワークやチームティーチングを推奨する
  • アクセシブルな形式と意思伝達システム作りを手助けする。
  • 柔軟性のあるスケジュールを推奨する。
  • 障害のある生徒が彼らの学習、支援が必要な物、進歩に関する議論に関われることを保証する。

支援と評価

試験制度と評価制度は弾力的で、全ての児童生徒のニーズに合致していなければならない。

情報通信技術

CBRプログラムは、障害のある生徒にインターネットがつながったコンピュータを提供するため、助成金や資金を調達する可能性を探ることができる。

ピアサポートと役割モデル

  • 生徒が敏感になるよう学校に促す。できるならば、障害のある大人のリーダーシップを発揮する。
  • 教員やクラスメートによる差別、弱い者いじめ、悪ふざけを防ぐ政策や方法を促す。
  • ピアサポートを推奨する。
  • 障害のあるスタッフや先生を学校や大学で募集することを推奨する。

専門家の支援を最大限に活用するよう奨励する

  • 個人的な支援者、例えばガイド、読む人、書く人、通訳する人
  • 学校への助言やサポートのための定期的な巡回指導の教員
  • 普通学校外部からの追加支援。

移行期を支援する

教育における移行期とは、小学校教育から中等教育へ、中等教育から高等教育へ、高等教育から持続可能な生計への過程を指す。

ノンフォーマル教育

はじめに

ノンフォーマル教育とは、正規の学校教育の枠外で行われる教育のことをいい、地域教育・成人教育・生涯教育・二度目の教育機会などとも呼ばれる。在宅学習から行政機関提供のものや地域による取り組みまで、地域における教育活動の広い範囲を指す。

ここでは、子どもと若者のためのノンフォーマル教育に焦点を当てる。しかしノンフォーマル教育は疎外を強める場合があり、障害のある子どもの唯一の選択肢として提供すべきではない。全ての子どもの権利として、普通学校でのインクルージョンが優先されるべきである。

ノンフォーマル教育は正規教育の次に良い選択肢とされる一方で、学校教育よりも質の高い教育が提供されうることを特筆すべきである。

目標

障害のある人が知識や技能を習得し、生活の質を向上する。

CBRの役割

障害のある人もインクルーシブな環境の中でそれぞれの興味やニーズに応じた教育機会が得られるよう保証するため、ノンフォーマル教育プログラムと共同で取り組むことである。

望ましい成果

  • 障害のある人がノンフォーマル教育プログラムに参加し、読み書きや計算、その他の技能を学ぶ。
  • ノンフォーマル教育プログラムは障害のある人も含め、ニーズを考慮したプログラム内容にする。
  • 障害のある人とその家族、障害当事者団体、親の会がノンフォーマル教育プログラムの意思決定や実施に携わる。
  • 在宅学習は、正規の学校教育を補完するものとして、または準備のためやそれに代わるものとなる。
  • 障害のある生徒と障害のない生徒が交流し友情を築くことによって、社会的つながりが強まる。

主要概念

学習者の生活や社会のニーズと関連がある。

学習者の発達レベルに合わる

内容や手法が柔軟

参加型

子ども達を危険から守り、彼らの生きる権利や発達する権利を守る

インクルーシブである

高い質

推奨される活動

ノンフォーマル教育プログラムをインクルーシブに

政府のプログラム

ノンフォーマル教育プログラムの多くは政府の監督下にある。CBRプログラムは、既存のノンフォーマル教育の理念、責任者、重点課題、障害のある人たちの有無、奨学金などの情報を得る必要がある。

地域に根ざしたノンフォーマル教育の取り組み

NGO、宗教系の学校、孤児院やデイケアセンター、女子教育を促進する学校や障害のある青年のための学校、正規教育中退者や児童労働者の学校が含まれる。CBRプログラムは、アクセシブルな地域に根づいたノンフォーマル教育を把握し、子どもを含めた障害のある人のインクルージョンを促進できる。

実用的で適切なカリキュラムにする

  • 基本的な読み書きや計算を優先する。
  • より実用的な技能や生活技能、個人の発達を目指している。
  • 意思決定技能を教えるのに効果的である。
  • 職業訓練や所得創出活動、仕事創出に焦点を当てる。
  • プログラムやプロジェクトに対する主体性や自信をつけさせながら生徒に力を与える。
  • 手話や点字、はっきりと話すことによって、障害のある生徒とその家族、仲間、地域とのコミュニケーションを促進する。

在宅学習へのサポート

CBRワーカーは、在宅学習を効果的なものにするために、家族や教師、生徒と連絡をとり、定期的に家庭訪問を行い、家族全体の協力を得る必要がある。

特殊な学習グループへの支援

生徒が自分たちのグループで勉強するため、手話や点字などの特殊な技術の習得が必要な場合がある。

地域のデイセンターを適切なものにする

CBRプログラムは、センターが子どもの年齢に合った遊びや活動中心の学習を提供し、その子どもの興味を最優先させるための手助けをすることができる。

正規教育とのつながりを促す

正規教育とノンフォーマル教育のつながりがなければ、ノンフォーマル教育は障害のある人の分離の一因になる。

生涯教育

はじめに

生涯学習の権利は障害者権利条約第24条に記述されている。生涯学習は、知識・技能・能力の向上を目的として人生を通して継続的に行われる学習活動の全てを指す。生涯学習は、正規でもノンフォーマルでも、様々な環境で行うことができる。

本ガイドラインでは障害のある若者と成人向けの正規学校システム外の生涯学習機会に焦点を当てる。

目的

障害のある青年や成人が、質の高い生涯学習と様々な学習経験への機会を得る。

CBRの役割

障害のある人たちの社会的排除や疎外、失業を防ぐために、継続した学習機会を提供することである。

望ましい成果

  • 正規教育を受けている障害のある青年が、職業ガイダンス、ピアカウンセリングなどの機会を通して、就労や技能訓練の機会へ移行できる支援が受けられる。
  • 障害のある成人が、生涯を通じてオープンスクールでの識字教育や遠隔学習による高等教育などの適切で柔軟性のある効果的な学習機会を得る。
  • 重度重複障害のある青年や大人とその介護者、家族といった特別なニーズがある個人やグループが実施中の学習の機会を得る。
  • 障害のある青年や成人が、生殖に関する健康や性行為、HIV/AIDSの情報を含めた生活技能や生存に必要なニーズについての実施中の教育の機会を得る。
  • 地域における公立・私立、および他の教育機関の教育者は、積極的に生涯学習の機会を提供することにより、障害を持つ青年や成人の社会的インクルージョンを促進する。

主要概念

成人学習

生涯学習の中で重要な要素であり、雇用に適した能力のため、インクルージョンのため、社会参加のためそして個人の成長のために不可欠である。

生涯学習の種類

  • 成人教育―仕事のための技能や正式な資格の習得を含む。
  • 継続教育―正規の教育機関提供による単位取得ができるコースまたは無単位コースを含む。
  • 専門性の開発―多くの場合、雇用主から提供されるOJTを通して作業能力を学ぶことを含む。
  • 自主的な学習―個人的な学習環境は、図書館やインターネットを含んだ様々な学習手段からなる。

オープン学習

多くが「オープンスクール」にて学習者が求める場所・時・方法で行われ、正規教育未経験または修了していない年長の学習者に適したカリキュラムを提供している。

生活および生存のための技能

すべての人が家庭、地域、より広い社会で効果的に機能し参加するために必要な知識や技能のこと。

推奨される活動

移行ための支援を促す

CBRワーカーは、障害のある生徒とその家族、雇用主、指導者、権利擁護グループの間を取り持つ存在であることが理想的である。

成人への識字教育および教育の機会を把握する

CBRプログラムは、オープンスクールを通してより広い地域での識字教育と成人教育の機会を把握し生み出すことができる。

教育を継続するための機会を把握する

CBRワーカーは、遠隔教育の発展を把握し、障害のある人たちがそこからメリットを得るために手助けをする準備をしておく必要がある。

特定のニーズがある個人やグループの学習を促進する

CBRプログラムは、特定のニーズがある個人やグループに適切な教育機会が与えられ、彼らが必要とする技能獲得のための手助けをすることができる。

生活および生存のための技能の学習機会を保証する

CBRプログラムは、障害のある青年および成人が日常生活と社会参加のために必要な技能を発達させるために組織や地域グループ間を繋げることができる。

社会のインクルーションを促進するために地域の教育者と連携する

CBRプログラムは、障害当事者団体や親の会と一緒に活動し、障害啓発を行い、利用可能な生涯学習機会におけるインクルージョンの促進のための経験と知識を共有できる。