CBRガイドライン概要版&CBRマトリックス使用の手引き
【生計】
序文
仕事とは、個人が貧困から逃れ、生活必需品を獲得する手段であるが、低所得国の障害のある人は、教育や訓練、仕事を見つけ続けるために多くの障壁に直面する。CBRプログラムは障害のある人やその家族が生活必需品を確保し、経済的社会的立場を改善する手助けができる。生計の機会を手に入れることは、貧困撲滅の重要な要因の一つである。生計はCBRの一部である。なぜなら地域社会において、障害のある若者や成人が訓練や仕事の機会にアクセスできることを保証することは重要だからである。
生計部門も他の部門と大変強いつながりがある。CBRにおける生計部門を発展させる努力と、保健、教育サービス、社会の機会へのアクセスを促進する努力はつながっている。
目標
障害のある人が、尊厳のある生活を送り、家族や地域社会に経済的に貢献するために、生計を立て、社会保障政策が利用でき、十分な収入を稼ぐことができる。
CBRの役割
障害のある人やその家族が、技能を獲得し、生計の機会、地域生活への参加を高め、自己実現をする権利を促進することである。
望ましい成果
- 障害のある人は、技能開発や生涯学習の機会を持つ。
- 障害のある子どもの両親は、彼らの子供達のために、教育、技能の獲得、仕事の機会を得られるよう主張する。
- 障害のある人は、安全で搾取的ではない環境で、差別されず適正な仕事の機会を持つ。
- 障害のある人は、小規模金融サービスを利用できる。
- 障害のある女性は、男性と同等の労働と雇用の機会を持つ。
- 障害のある人の家族、特に障害のある子供達や重度障害者の家族は、よりよい生計を立てる機会がある。
- すべての貧困削減戦略や貧困削減プログラムは、障害のある人やその家族も含まれ、彼らの役に立つ。
- 障害のある人の仕事は、雇用主や地域の人々から認識され、価値があると認められる。
- 地域の行政機関は、障害のある人が仕事を見つける機会を改善する政策や方法を採用し、適用する。
- 障害のある人は、権利として社会保障政策を利用できる。
主要概念
仕事
仕事は重要な生活活動である。特に重要なのは、仕事が社会的経済的参加の機会を提供し、自己実現や自尊心を高めることである。
仕事は以下のように多様である。
- 家で働く
- 家族経営で働く
- 個人で行う製造、サービスの提供、商売
- 個人で、またはグループで行う小規模な企業活動
- インフォーマル経済において誰かに雇われる仕事
- 公共または民間団体、あるいはフォーマル経済の会社における賃金雇用
- 適応・保護的職場(adapted and sheltered settings)における賃金が払われる仕事
ディーセントワーク
ディーセントワークと、貧困を永続させる尊厳に欠けた仕事を区別することは大切である。
仕事が不足していると、貧しい人々は適正とはほど遠い労働条件を余儀なくされることがある。
環境的な利用のしやすさ
環境的に利用しにくいことは、すべての低所得国では障害のある人にとって大きな障壁である。
合理的配慮
「合理的配慮」とは障害のある人の雇用を促すための仕事と職場の適応のことである。そこには、機械や設備、仕事内容、労働時間、労働形態、労働環境の適応などが含まれる。
個人の選択と地域の状況
障害のある人にも様々な関心、才能、要求があり、他の人と同様に仕事を選ぶ権利がある。個人の選択は、住んでいる状況や障害の種類・程度に左右され、多様である。
フォーマル経済とインフォーマル経済
フォーマル経済は政府の規制下にあり、公共または民間部門の雇用が含まれる。インフォーマル経済は政府の規制外の経済活動である。低所得国ではフォーマル経済よりもインフォーマル経済で多くの労働人口を雇用しており、障害のある人の雇用機会を多く提供している。
農村と都市
農村と都市では収入機会が大きく異なる。都市ではフォーマル経済とインフォーマル経済の両方で多くの種類の雇用があるが、農村では雇用の選択肢が少ない。
排除の費用
労働から障害のある人を排除すると、社会福祉や社会保障の費用などを含む財政的負担が家族、コミュニティ、その他個人や組織にかかる。
生涯学習
障害のある子どもも大人も生計機会を作り維持し発展させるためには、持続した教育とスキルの向上が重要である。
家族全体とコミュニティに焦点を当てる
障害は単に個人の問題ではなく、家族全体やコミュニティにも影響を与える。生計を支援する活動は家族全体のことを考えなければならない。
やる気とロールモデル
障害のある人の中には低い期待感と低い達成感の悪循環に陥る人がいる。多くのコミュニティに存在する、潜在能力の発揮に成功した障害のある人は他の障害のある人がやる気を高める役割モデルとなる。
本コンポーネントの要素の紹介
- スキル開発
- 所得創出(自営を含む)
- 賃金雇用
- 金融サービス
- 社会保護
スキル開発
はじめに
障害のある人は基礎教育へのアクセスが不足していて、技能訓練コースへ進む資格がない。これらの不利の結果、技能が不足し、同様に自信、期待感、達成感が低くなる。
仕事を成功させる技能として、教育や家族生活から学ぶ基礎スキル、特別な活動や仕事を可能にする技術的・専門的スキル、自営の成功に必要なビジネススキル、それと心構え、知識、個人の性格が含まれる核となる生活スキルがある。
目標
障害のある人は、仕事に必要な知識、心構え、スキルを獲得できる。
CBRの役割
障害のある人が適切な知識、スキル、心構えを獲得する積極的な活動を通して、仕事の機会にアクセスできること。
望ましい成果
- 障害のある若者と成人が訓練機会を利用し、市場で役立つスキルやディーセントワークと収入を得る。
- 障害のある少女と女性が少年や男性と同様の技能開発の機会を得る。
- メインストリームの職業訓練、スキル訓練提供者は、提供した訓練を障害のある人が利用できるような方針を作り実践を行う。
- 障害のある人は職業相談、職業紹介、支援機器や改造された器具などの支援サービスを利用できる。
- 障害のある人は彼らの仕事を進歩させるのに必要な高度なスキル開発の機会を利用できる。
主要概念
技能の種類
- 基礎スキル:基礎的な教育と家庭生活で獲得されるスキル。
- 技術的、職業的、専門的スキル:特別な仕事に取り組むことができるようにするスキル。
- ビジネススキル:起業家スキルとも呼ばれ、商業活動を成功させるのに必要なスキル。
- 核となる生活スキル:世の中で活動するために必要な態度、知識、個性。
個人の選択と機会の平等
CBRプログラムでスキル開発の機会を確認するときは、個々人が特有の興味、才能、能力を持つことに留意する。また、伝統的な性役割や性別によって制限することなく平等な訓練機会を与える。
スキル獲得のための方法
- 自助努力
- 家族内で家庭中心のスキル獲得
- 基礎教育
- 学校における職業訓練
- コミュニティのフォーマルまたはインフォーマルな個人的徒弟制度を含む、地域に根ざした訓練
- メインストリームの職業訓練センターや職業リハビリテーションセンターにおける訓練
- オンザジョブ・トレーニングや徒弟制度
- 専門学校や大学での教育訓練コース
- 小規模企業開発プログラムへの参加
- 雇用主による訓練
推奨される活動
家庭での訓練を促す
多くの若者は伝統的職業的生活スキルを家庭での活動で学ぶ。しかし、障害のある子どもや若者はこの学びの過程から排除されることがよくある。CBRプログラムは、障害のある子どもや若者にはスキルを学ぶ潜在能力があることを親が理解する上で重要な役割を担う。可能性のある活動としては、
- 障害のある人が、生計活動や家庭周辺の支援的な仕事に参加できる方法を見つける。
- 役に立つスキルを教え伝えるよう、さらに生産的な家庭活動に参加できるよう家族を勇気づける。
- 家庭や生計活動における障害のある人の参加のレベルについてフォローアップする。
基礎教育機会の利用を可能にする
基礎教育は技術的スキルや生活スキルの基礎であり、すべて仕事における成功の鍵である。CBRプログラムはフォーマルまたはノンフォーマル教育の機会の獲得を最優先項目として促すべきである。
職業訓練への参加を促す
障害のある生徒は職業指導サービスや学校から仕事への移行プログラムの恩恵を受けるべきである。CBRプログラムで可能性のある活動は以下の通りである。
- 障害のある生徒が職業訓練や仕事への移行プログラムに参加する障壁を明らかにし取り除く。
- 障害のある生徒が訓練・教育プログラムに参加するのを促すよう支援を行う。
- 様々な障害のある訓練生に必要な調整や適応について、訓練指導者に障害啓発訓練を提供する。
コミュニティでの訓練を促す
まず、スキルを学びたがっている障害のある人を見出し、続いて以下の活動が可能である。
- 障害のある人やその家族と、興味、スキル、受けられる家族の支援について話し合う。
- 仕事や職業訓練の情報を提供する。
- 地域でその職業に従事し訓練を提供している人を見つけ、障害のある人を実習生にするよう促す。
- 地域の需要に合うよう生産され、提供されそうなモノやサービスを提案する。
- 障害のある人が実習生になるための潜在的な障害物を明らかにして解決する。
- 指導者に財政的・物質的な支援を、実習生に必要な支援を提供する。
- コーチと実習生に学習と訓練が確実に実行され、生じる全ての問題が乗り越えられるよう支援する。
- 訓練の終了時には、実習生が自分自身の活動を始められるよう支援する。
ビジネススキルの開発を支援する
自営業の場合、適切なビジネススキル訓練が必須である。CBRプログラムは地域の起業訓練コースを見つけ、障害のある人が起業家としての潜在能力を発揮できるようマイクロファイナンス運営者に啓発を行う必要がある。
メインストリームの施設での訓練を促進する
障害のある人のスキル開発は、インクルーシブな環境、つまり障害のない仲間と一緒に行われるとより効果的である。CBRプログラムは、障害のある人がメインストリームの職業訓練センターを利用できるよう促すべきである。その方法には以下が挙げられる。
- 地域の学校、障害者団体、親の会、NGO、女性組織、青年組織を対象に、障害のある実習生が利用できる場所を公表する。
- 親やコミュニティのグループ、その他関係者に障害のある人のための職業スキル訓練の重要性を啓発する。
- 障害のある訓練生が訓練や金銭的援助に応募するのを支援する。
また、CBRプログラムは職業訓練センターや職業訓練コースに以下のような働きかけができる。
- 毎回の募集時に、入学可能な障害のある男女の人数を定めた入学方針を採用する。
- 柔軟な入学資格を設定する。
- 基礎教育コースの補習を用意する。
- 偏見にとらわれず、障害のある訓練生に様々なスキル開発の選択肢を指導する。
- インストラクターに障害啓発研修を行い、様々な障害のある訓練生のニーズに関する情報を提供する。
- 個々の訓練生の利用のしやすさと適応のニーズを確定する。
- 訓練で障害のある訓練生が上手くやれるよう支援し、問題が生じたら解決できるよう準備する。
専門施設での訓練を促す
メインストリームのセンターでのスキル訓練が難しい場合、障害のある人のための専門訓練センターが訓練や職業体験を提供できる。CBRプログラムは専門センターでの訓練を、よりコミュニティに合うようにするため、以下の方法で支援できる。
- コミュニティのモノづくりやサービス提供で満たされていない需要を確認する。
- 地域の企業と相談しながら、訓練センターのカリキュラム、道具、設備を更新する。
- 提供するコースの数や種類を増やす。
- 技術的スキルだけでなくビジネス管理や生活スキルの訓練も提供する。
- 訓練終了生が職を見つけ、自営業になれるよう支援する。
- 新しいコースや設備、あるいはセンター拡充の基金を集める。
所得創出(自営を含む)
はじめに
貧しいコミュニティで、自営業は障害のある人が生計を立てる最も良い選択肢かもしれないが、かなりの難題を提起する。自営業での成功には、高い独創力、決定力、粘り強さが必要であり、高い企業家スキル、顧客と良い関係作り、高いビジネス感覚や品質概念が求められる。これらは適切な訓練を通して学ぶことができる。CBRプログラムには、これらの訓練を促し、必要ならその訓練を用意することが必須である。また、自営業での成功には、障害のある人は家族や地域社会の支援が必要になる。
一般的に障害のある人のための条項がある労働法はフォーマル経済のみに適用され、インフォーマル経済での適用は難しい。
目標
障害のある人が自営を通して生計を立て、生活水準を改善し、家族やコミュニティの幸福に貢献する。
CBRの役割
障害のある人やその家族が個人またはグループでスキル開発や財政的物質的資源を利用できるよう支援し、自営を促進・補助することである。
望ましい成果
- 障害のある人が自分で選択し、個人またはグループで行った経済的活動を通して収入を得る。
- メインストリームの中小企業開発プログラムに障害のある人が参加できるよう変更を加える。
- 障害のある人が起業活動の開始・拡大に必要な支援サービス(基礎ビジネススキル訓練、ビジネス開発サービス、金融サービス)を利用できる。
- 障害のある人は、経済活動を発展させるため、より高度なビジネススキル開発の機会を利用できる。
- 障害のある人は、コミュニティに貢献している成功した起業家であり生産的であると認識される。
- 障害のある人は経済活動の促進とロールモデルとしての影響を通じて、インクルーシブなコミュニティの開発に貢献する。
- 障害のある人、特に女性が自ら稼いだお金を管理する。
- 障害のある成功した起業家は、他の障害のある人の指導者として行動する。
主要概念
自営の範囲
「自営」は、フォーマル経済、インフォーマル経済の両方で、個人やグループに所有・運営・管理された経済活動に用いられる用語である。大きく3つのカテゴリーに分けられる。
所得創出活動
個人やグループにとって唯一の収入源か、別の収入源の補足となる小規模活動であり、通常はインフォーマル経済の一部である。
- 生産活動の例:動物や鶏の飼育、伝統的工芸品、編み物
- サービス提供の例:携帯電話貸し、洗車、バッテリー充電、喫茶店経営
- 販売活動の例:小規模な店舗経営、中古品販売、本の販売
中小企業
所得創出活動よりも大きな規模で運営され、複数の人を雇い、そこで働く人々の主要な収入源になる。しばしばインフォーマル経済に見られるが、フォーマル経済とインフォーマル経済の境界を占めることもある。
- 製造活動の例:金属加工、大工、仕立て、絨毯作り、在宅での衣料品製造、手提げカバンとリュックサック作り、セメントブロック作り、キノコ栽培
- サービス提供の例:自転車修理、テレビ・ラジオ修理、コピーとファックス、調理食品の屋台、製粉所、コンピュータとインターネットサービス
自助グループとグループ企業
障害のある人は障害のない人のグループに参加することもあるし、自分たちのグループを作ることもある。CBRプログラムは両方の可能性に敏感であり、これらを促す必要がある。
推奨される活動
市場の機会を見出す
市場分析には3つの主な要素がある。
- 満たされていないニーズ、あるいは部分的に満たされているニーズを見出す。
- 製造販売に関係する技術を研究する。
- 個人やグループの興味や能力に合ったモノやサービスを選ぶ。
特に農村部において、活動を環境に合わせること
農村と都市のCBRプログラムはそれぞれの環境に合った自営活動を見つける必要がある。特に農村では選択肢がより限られており、障害のある人が町へ移住せずに家族に貢献できることが必要である。
個人の選択を保証する
- 本人の興味を明らかにするための支援をする。
- 家族から得られる支援を明らかにする。
- 所得創出に使うことができる本人のスキルや資質を明らかにするための支援をする。
- もし適切なら、障害のある人や障害のある子の親に、グループによる所得創出活動への参加を勧める。
- 障害のある女性が所得創出活動に従事できるように特別な注意を払って支援する。
- 成功した障害のある事業主が他の障害のある人の指導者になるよう支援する。
ロールモデルを見出す
もし成功した障害のある起業家をCBRプログラムのネットワークに組み入れたら、他の障害のある人を奮い立たせるだけではなく、社会の態度を変えることができる。
障害のある女性を勇気づけ支援する
CBRプログラムは、障害のある女性が家庭やコミュニティで、所得創出活動を開始・拡大し、自助グループやグループ企業に参加できるよう、特別な努力を保証する必要がある。
地域の行政やメインストリームの組織とパートナーシップを構築する
- メインストリームの政府・非政府の小企業開発プログラムが提供するサービスや支援で、障害のある人のインクルージョンが実現される方針を採用し実践することを促す。
- メインストリームの貧困削減プログラムと開発プログラムに障害のある人のインクルージョンを促す。
立ち上げ資金の利用を容易にする
CBRプログラムは、障害のある人の資金調達スキルの開発と立ち上げ資金利用の支援ができる。
賃金雇用
はじめに
障害のある人に‘最も適している’仕事はない。他の求職者と同じように、自分の興味、目標、技能、能力、教育レベルを持つ個人であり、これらの個人的要因、労働市場の需要、そして得られる支援が、障害のある人が適した雇用を見つける際に考慮される鍵となる。賃金雇用へのアクセスは、求職中の障害のある人にとって、彼らの技能から、または彼らが仕事にもたらすものから、雇用を考えるべきで、慈善事業の問題から考えるべきではない。このため、教育と総合的な技能訓練はきわめて重要である。
賃金雇用の機会はフォーマル経済で発生するため、この項目はフォーマル経済が強い国々で、大きな参考になることが期待される。
目標
障害のある人は、賃金雇用を通じて生計を立てる平等な機会を持っている。
CBRの役割
職場における平等な機会と平等な待遇を増やし、賃金雇用につながるサービスを利用できるようにすることで、障害のある人が賃金雇用に就き、続けられるようにすることである。
望ましい成果
- 障害のある人は、フォーマル経済、インフォーマル経済において、賃金雇用を通じて収入を得る。
- 雇用主はインクルーシブで利用しやすい環境を作ることで、障害のある人を雇い、雇用を継続する。
- 同僚と経営者は、障害問題の理解を高め、積極的な態度になる。
- 民間部門と公的部門のメインストリームの職業サービス機関は障害のある人も対象とするようになる。
- 障害のある人は、賃金雇用を通じて、自尊心、個人的保障、家族やコミュニティ内の地位が高まる。
- 障害のある人は賃金雇用を通じて、コミュニティの生活や経済に貢献する。
主要概念
雇用促進策
多くの国では、障害のある人の正規雇用を促進する法律や政策を採用している。
賃金雇用の選択肢
メインストリームの雇用
政府部門、非政府部門、民間部門
援助付き雇用
- 支援付きの個人的職業紹介:
支援ワーカーがオンザジョブ・トレーニングを提供し、障害のある労働者に対し支援を提供する。 - ワーククルー:
障害のある人のグループがメインストリームの環境で、あるいは事務所掃除、庭の手入れ、外回りのメンテナンス、自動車清掃などコミュニティにおける委託サービスを提供する移動式ワーククルーとして一緒に働けるよう支援を受ける。
保護雇用
通常は保護された作業場である。そのような作業場は典型的に、障害のある人だけを雇っている。
推奨される活動
障害のある人の仕事の潜在能力と雇用の権利について啓発する
障害のある労働者の潜在能力に関する啓発は障害のある人の賃金雇用のために重要な活動である。
政策環境を理解する
啓発キャンペーンを始める前に、その地域の障害者雇用と雇用主の義務に関連した法律と政策の理解が大切である。
啓発のために最も効果的な戦略を明らかにする
- 現在の法律の状況についての情報をまとめ、この情報を簡単に理解できるように書式を作りかえる。
- 障害のある人を雇用する積極的な方針をすでに持っている企業を知り、それらを模範として使う。
- 障害者団体、障害活動家と協力し、卓越した障害のある人をロールモデルとして活用する。
ビジネスとしての(障害者雇用の)メリットを示す
障害のある人を雇うと雇用主はどんなメリットがあるか?
- 障害のある人が障害のない同僚と比べ、生産性、安全性、出勤で同等かそれ以上と報告されている。
- 障害のある人は同僚と比べ仕事に留まりやすい。
- 障害のある人は仕事に必要なスキルを持っている。
- 会社の社会的責任は多くの経営者にとって重要性が高まっている。
障害のある人が仕事を見つけられるようにし、かつ支援をする
リファーラル(照会)と支援サービスへのリンクを提供する
CBRプログラムは障害のある求職者と支援サービスを結びつけることができる。また、サービスが存在しない場合、その提供を考える。
労働市場を調査する
地域の労働市場に関する正確な最新情報は、障害のある人が雇用を支援する際に必要である。
雇用を求める障害のある人を評価し支援する
障害のある求職者の興味や目標、スキル、才能、動機、支援の形態を評価することは重要である。
人と仕事の適合を支援する
障害のある人の職探しで重要な点は、障害のある人と仕事の必要条件を良く適合させることである。
潜在的な支援ニーズを評価する
職場で障害がその人にどのような影響を与えるかを理解することは大切である。この情報からその人が労働環境で必要とする支援や適応が明らかになる。
求職スキルを向上させるための訓練を提供する
求職スキルを向上させる助けとなるような訓練を提供できる。
障害のある労働者が雇用を続けるのを支援する
既存の支援ネットワークを使う
家族やその他の社会的ネットワークが賃金雇用の獲得と継続のための支援を提供できる場合がある。
ジョブコーチ、ビジネスの相談相手やパートナーを通じて継続した支援を行う
CBRプログラムは、支援ワーカー、ジョブコーチ、スタッフメンバー、組合ボランティア、助言者が継続的支援を提供できるようにする。職場に必要な調整を行い、問題発生時は雇用主と労働者が解決するのを助け、労働者が仕事を行うための継続的支援を提供する。
雇用分野とパートナーやネットワークを構築すること
障害のある人の求職において彼らと協働する際、CBRプログラムが単独で取り組む必要はない。
雇用主の団体が障害のある人を雇用するのを促す
雇用主の団体は、必要な労働力、仕事の機会、市場のニーズ、訓練ギャップ、その他の雇用情報について情報を提供できる。
労働組合や労働者の団体とパートナーシップを作る
NGOにおける障害のある人の雇用を促す
CBRプログラムは、障害のある人、特に障害のある女性をフィールドワーカーや管理スタッフとして優先的に雇うべきである。
金融サービス
はじめに
金融サービスには、貯蓄、貸付、補助金、保険、送金サービスがある。家族、宗教団体、隣人、友人、自助グループからの地域内のインフォーマル金融支援は、貧しい地域社会の特徴になっていて、生き残りのために依然重要となっている。より正規な小規模金融サービスには、協同組合、村立銀行、預金貸付協会、伝統的な金融業者、商業銀行、小規模金融機関がある。
多くの貧しい人々は、見返り担保や保証人がいないので、金融サービスを利用できないが、一方で多くの障害のある人は財産、つまり住んでいる土地に関する正式な書類すら持っておらず、そのため金融サービスが利用できない。CBRは必要に応じて、金融サービスを受けられるように促し、計画を立てる必要がある。
目標
障害のある人とその家族は、経済活動やその他の活動の発展を支援し、生活水準改善のため、平等に金融サービスを利用できる。
CBRの役割
障害のある人が金融サービスを利用できることを明らかにし、その利用を支援・促進することである。
望ましい成果
- 障害のある人は、貧困基準に基づき、政府や民間機関からの補助金、融資、その他金融支援計画を利用できる。
- 金融サービスを利用することで、障害のある人がニーズを満たし、収入を得るために小さな事業を始め、発展させることができる。
- 障害のある人、特に女性が、自分の金融資産を掌握し、より良く管理することができる。
- 金融サービス提供者は障害のある人を含めるように規則やサービス、環境を適応させる。
主要概念
金融サービスの種類
- 貯蓄
- 貸付
- 補助金
- 保険
- 送金システム
金融サービス提供者の種類
- 専門提供者
- インフォーマル提供者
- 専門でない提供者
推奨される活動
貯蓄の習慣を促す
- 障害のある人同士で貯蓄グループを組織するよう促す。
- 信頼できる機関に個人が銀行口座を開くよう支援する。
- 障害のある人が自助グループや同様の貯蓄グループの会員になるよう支援する。
- 管理や金融マネージメントについて会員の能力を向上させる。
自己排除に立ち向かうのを助ける
自尊心や自信の欠如はマイクロクレジットのようなサービスからの自己排除につながる。自己排除に立ち向かうことは、障害のある人や家族にとって重要な責任である。障害者団体とCBRプログラムは、彼らがこの責任を果たすことの支援という重要な役割を持つ。
ロールモデルを見出す
多くのコミュニティに存在する、成功した障害のある起業家をCBRプログラムのネットワークに加えたら、他の障害のある人を奮い立たせるだけではなく、社会全体の態度を変えることができるだろう。
メインストリームの金融サービスの利用を促す
- 障害のある人がメインストリームの金融サービスを平等に利用できるよう提唱する。
- 金融サービス提供者を見出し、障害をもつ起業家を潜在的な顧客として紹介する。
- 金融サービス提供者が障害に敏感になるよう支援し、障害のある人を含む顧客の拡大を可能にする。
- 資格を持った障害のある人を雇用するという考え方を金融サービス提供者に促す。
- 金融サービス提供者が、障害を持つ顧客のニーズを留意するよう促す。
- 障害のある人に金融サービス提供者の利用方法やサービスや義務について教育する。
- 障害のある女性が金融サービスを利用できるよう支援する。
社会保護
はじめに
社会保護政策は病気や障害、高齢という理由で貧困や所得がない、もしくは所得の低い人たちを保護するための安全網を提供することを目的としている。
低所得国における現状は経済や政府の資本力によって大きく左右されているが、一般的には社会保護を得られる人はほとんどいない。障害のある人も、尊厳ある生活を営むための最も基本的な補助器具や装具を買う余裕はないだろう。それゆえに、障害のある人もそうでない人も低所得国では、その多くの人が家族や地域社会に根ざしたインフォーマルな社会保護システムに頼っている。障害が重度のために十分働けない人にとって、社会保障は唯一の選択肢である。
障害者の権利条約は、締約国に対し、社会保護についての障害者の権利及び障害に基づく差別なしにこの権利を享受することについての障害者の権利を認めることを義務付けている(第28条)。障害のある人がこれら権利を享受するためには、食料、衣服、きれいな水、利用可能なサービス、障害に関連したニーズに対応した装具やその他の援助、社会保護や貧困削減プログラム、十分な訓練、助言、経済的支援、レスパイトケア、公共住宅計画プログラム、退職年金や退職プログラムが必要である。
目標
失業中や働けない障害のある人、あるいは職業活動によって生活していくだけの十分な財源がない障害のある人は、社会保障政策を通して最低限の生活水準を享受する。
CBRの役割
障害のある人がメインストリームの、あるいは特定の社会的給付を利用できるようにし、社会保護政策の実施を促進することである。
望ましい成果
- 障害のある人は高齢や病気、障害による所得の喪失に対して、他の市民と同様に社会保護対策を利用できる。
- 失業中の、またはディーセントな生活をするだけの収入を稼ぐことができない、あるいは就業ができない障害のある人が入手可能な社会保障対策を利用できる。
- 現存する社会サービス提供者は、障害のある人が直面する特定の困難さに敏感に気付き、提供するサービスを適宜適応する。
- 社会保護提供者は、障害のある人の特別なニーズに適応するため、障害のある人々の代表組織やサービス提供者を通じて障害のある人々とパートナーシップを構築する。
主要概念
公的計画
貧困緩和と貧困削減計画
食糧支援や低価格の住宅支援、条件付現金給付計画、労働対価による支援を基礎とした貧しい人々を雇用する公共事業がある。
社会扶助計画
失業手当や障害者手当、年金など。低所得国にはほとんど存在しない。
被用者および労働者への補償計画
フォーマル経済の中で仕事を持っているごく少数の被用者が労働者補償計画を利用できる。
インフォーマル計画
家族支援
低所得国の多くの人々にとって、家族はいまだ生涯にわたる主要な支援の担い手である。CBRプログラムは障害のある人とその家族両方が納得できるように支援する必要がある。
コミュニティ支援グループまたは団体
慈善団体や宗教的、コミュニティ中心の団体は障害のある人を含む立場の弱い人々に支援を提供することがある。CBRプログラムにとって、潜在的な協力者であり有益なリソースとなる。
自助グループ
貯蓄やその他の相互支援を行う自助グループは、貧しいコミュニティで障害のある人が利用できる社会保護の効果的な形態である。CBRプログラムはその設立を助ける役割を果たすことができる。
マイクロ保険組織
公的社会保障計画が存在しない低所得国の多くのコミュニティでは、保障のニーズや社会サービスへのアクセスのニーズに応え、危機管理を提供するため、マイクロ保険組織が作られた。
社会保護提供の課題
誰が障害のある人で、誰が特別な社会支援を受けるべき人として適切か?この文脈において権利と慈善活動の違いは何か?社会保護は自立の理想と両立するか?
CBRプログラムは障害者団体と共に、触媒、情報提供者、擁護者、指導者として活動する必要がある。もしそうでなければ、障害のある人は、極貧と戦うための社会保護計画から取り残される危険がある。
推奨される活動
現在ある対策に障害のある人を含めることを保証する
- 障害のある人が要求する全ての権利など、法律に基づいた対策について十分に情報を得る。
- ともに働く全ての障害のある人がこれらの権利とその入手方法について必ず認識するようにする。
- 全国または地域で入手可能な全ての社会保障と扶助計画の情報データベースを編集し、これらの情報に障害のある人がアクセスできるようにする。
- 障害者団体と親の会によるメインストリームの社会保障サービスや扶助サービス提供者との連携を促し、それらサービス提供者が障害のある人のニーズに対応して実施内容を適応することを保証する。
- 障害活動家や代弁者と共同して、障害のある人の当然の権利のためにロビー活動をする。
障害のある人が食べ物や水、トイレ設備を楽に利用できるようにする
CBRプログラムは、食べ物や水の充分な供給を保障するため、実施中のプログラムやサービスを把握する必要がある。また、地方自治体と共同して水道を伴ったトイレ設備を推進する必要がある。
住宅供給とアクセシビリティを保証する
住宅供給における差別は障害のある人がしばしば直面するものであり、CBRプログラムは、この問題を認識し、関係当局とともに、障害のある人とその家族の機会と待遇の平等を保証する活動をする必要がある。
保健ケアと支援機器の利用を保証する
必要時にパーソナル・アシスタンスを保証する
必要に応じて障害に関連する費用が賄われることを保証する