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CBRガイドライン概要版&CBRマトリックス使用の手引き

【社会】

序文

社会生活への参加は個々人の人間的成長にとって重要である。社会活動への参加機会は、その人のアイデンティティや自尊心、生活の質、そして社会的ステータスに大きな影響を与える。しかし、障害のある人は社会の中で様々な障壁に直面しており、社会参加の機会自体が少ない。

このコンポーネントでは、障害のある人の生活における社会的課題の重要性と、CBRプログラムでこれらに取り組むことの必要性に特に焦点を当てる。

目標

障害のある人が家庭や社会で役割と責任を担い、社会の対等な構成員として扱われる。

CBRの役割

全ての関係者が協働して、家庭や地域といった社会生活への障害のある人の完全参加を保証することである。CBRプログラムを通して、障害のある人の社会的機会へのアクセスを可能とする支援を提供でき、スティグマや差別に立ち向かうことができる。

望ましい成果

  • 障害のある人がその家族の一員として尊重され、多様な社会的役割や責任を担う。
  • 障害のある人やその家族が地域の発展に貢献できるよう奨励し支援される。
  • 障害のある人は地域の構成員で、地域に貢献する力を持つと地域の人々が認識する。
  • 障害のある人やその家族の社会的役割や活動への参加に対する障壁の解消を強化する。
  • 地方政府当局者が障害のある人やその家族のニーズに対し社会的支援やサービスを提供する。

主要概念

社会的役割

社会的役割とは何か?

社会的役割とは、社会の中で人々が占めている立場のことであり、ある特定の責任や活動と関連している。社会的役割は、その人の年齢、性別、文化や障害によって影響を受ける。また、人々の社会的役割は一生を通じて変化し、役割の移り変わりは地域の儀式・風習で祝われる。

なぜ社会的役割は重要なのか?

社会的役割はアイデンティティや人生に意義を与える要素として重要である。障害のある人が地域で社会的役割を果たすとき、障害に対する社会の態度は変化しうる。

障害のある人が価値ある社会的役割を手に入れられるよう支援すること

障害のある人の社会的役割の獲得を支援するには数多く方法がある。障害のある人の技術や能力の向上の支援、障害者の肯定的イメージの推進、否定的態度を変える働きかけなどは有用である。

社会参加への障壁

広範囲に及ぶ障壁が障害のある人の社会参加を制限している。例えば、障害のある人自身の自尊心の低下、家族の意識、地域住民の不合理な考えや信念、社会参加への物理的障壁などである。

ジェンダーの平等

障害のある女性の多くが特定の社会的役割への参加を制限されている。ジェンダー平等は開発の重要な一面であるが、障害のある少女と女性はしばしば開発のメインストリームから排除される。

障害のある子ども

安全で愛のある環境は、障害児も含め、すべての子どもたちにとって不可欠である。CBRプログラムは障害のある子どもの権利を推進するにあたって重要な役割を果たすことができる。

本コンポーネントの要素の紹介

  • パーソナル・アシスタント
  • 交友関係、結婚、家族
  • 文化・芸術
  • レクリエーション・余暇・スポーツ
  • 司法

パーソナル・アシスタント

はじめに

障害のある人の中には、家庭や地域での完全なインクルージョンと参加のためにパーソナル・アシスタントの必要な人がいる。パーソナル・アシスタントは環境因子によって必要になることもあるし、障害のある人の損傷や機能不全のために必要となることもある。CBRプログラムを通して、障害のある人のパーソナル・アシスタントへのアクセスを支援する機会の拡大が期待されている。

目標

障害のある人がパーソナル・アシスタントにアクセスし、自身のニーズを満たし、積極的で充実した生活を送ることができること。

CBRの役割

障害のある人が自己決定と尊厳のある生活を送るために必要なパーソナル・アシスタントを利用し、能動的に管理できるように支援することである。

望ましい成果

  • CBRプログラムと障害当事者団体が協働し、地域で適切なパーソナル・アシスタント・サービスを利用可能とする。
  • 障害のある人が適切な個別支援計画を持っている。
  • 障害のある人がパーソナル・アシスタントの必要性を自己管理するための訓練にアクセスできる。
  • 公式、非公式どちらのパーソナル・アシスタントも利用できる訓練がある。
  • 非公式なやり方でパーソナル・アシスタントを提供する家族への支援がある。
  • 危機的状況に対応し、障害のある人の施設入所を防ぐメカニズムが家庭や地域の中にある。
  • 地域が障害のある人のための地域に根ざしたパーソナル・アシスタントという選択肢を提供する。

主要概念

施設ケアと自立生活

自立生活とは障害のある人が自己選択をし自己管理された生活を送ることを意味する。パーソナル・アシスタントは障害のある人が施設ケアから自立生活に移る際の鍵の一つである。

パーソナル・アシスタントの課題

パーソナル・アシスタントは様々な環境で多様な課題のある人たちの支援に関与する。つまり、家庭、学校、職場、地域、緊急/レスパイト・サービスなどの場面である。障害のある人による家庭や地域での生活への完全参加を支援できる、質と量のパーソナル・アシスタントが重要である。

パーソナル・アシスタントの個別性を理解すること

パーソナル・アシスタントのうちの「パーソナル」という言葉は、人間一人一人が独自のニーズを持つことを反映している。パーソナル・アシスタントはその個人にふさわしい解決を見つける。

管理の重要性

パーソナル・アシスタントではしばしば、障害のある人は受動的な受け手とみなされる。このような考え方は今では受け入れがたく、障害のある人は自身のパーソナル・アシスタントの必要性を決定する主体であるべき、と理解されている。

支援の選択肢

非公式なパーソナル・アシスタント

世界中で、障害のある人への支援のほとんどは非公式なパーソナル・アシスタントの形を取っている。家族、友人、隣人、ボランティアが非公式なパーソナル・アシスタントを提供している。

公式なパーソナル・アシスタント

パーソナル・アシスタントは公式な手段を通して提供されることもある。これらのサービスは政府機関、NGOそして民間企業によって提供される。

問題点

低所得国における限定された選択肢

低所得国において障害のある人がパーソナル・アシスタントの選択肢にアクセスできることを保証しようと試みるとき、CBRプログラムは次のような問題に直面することがある。

  • 障害のある人やその家族、障害当事者団体に、パーソナル・アシスタントへの意識や要求がない。
  • パーソナル・アシスタントへの訓練や支援を提供するプログラムの乏しさ。
  • パーソナル・アシスタントを支援する適切な社会的保護政策やプログラムの不在。
  • 国家的に合意されたパーソナル・アシスタントに関する定義や基準、モニタリング手続きの不在。

危機的状況

支援システムが崩壊した時、障害のある人は危機的状況に直面することになる。場合によっては、障害のある人が、その意思に反して入所施設に送られることを意味する。

脆弱性と虐待の危険性

支援サービスを必要とする人たちは通常、支援サービスが必要でない人に比べて脆弱である。虐待者が介助者である場合、被虐待者にとって虐待を誰かに知らせ状況を変えることは特に難しい。

推奨される活動

障害者団体との協働

  • 広く合意されたパーソナル・アシスタントの基準の推進・開発。
  • パーソナル・アシスタントの選択肢に関する情報が障害のある人に入手可能であることの保証。
  • 地域内にサービスが存在しない場合のパーソナル・アシスタントの創出。
  • 障害のある人のための適切なパーソナル・アシスタント・サービスの開発とモニタリングの支援。
  • 障害のある人が障害当事者団体や自助グループとつながりを持てることの保証。

障害者の個別支援計画作成を支援する

  • 仮定による決め付けをしないよう配慮しながら、どの活動に支援が必要かを認識する。
  • その地域で利用可能なさまざまなパーソナル・アシスタントの選択肢を吟味する。
  • パーソナル・アシスタントに、どの活動に支援が必要か、その活動はいつ完了される必要があるか、どのように遂行される必要があるかを聴取する。
  • パーソナル・アシスタントが被雇用者かボランティアかに関わらず、同意書を取る。
  • 定期的に必要性を見直し、健康状態や日常活動や環境に変化があれば計画を修正する。

訓練機会の支援

障害者がパーソナル・アシスタントを管理する技術と自信を身に付けるため訓練を必要とする場合がある。また、パーソナル・アシスタントの技術向上を支援する訓練を必要となる場合もある。

障害者に向けて

  • コミュニケーションと自己表現の技術を習得するための適切な訓練への参加。
  • パーソナル・アシスタントに関する情報の入手。
  • パーソナル・アシスタントに関する要求事項を認識・調整・管理する最善の方法の学習。
  • 家庭、地域、学校、職場などでパーソナル・アシスタントの必要性について交渉する方法の学習。

パーソナル・アシスタントに向けて

  • 役割の重要性を理解する。
  • 仕事の領域の認識を養う。
  • パーソナル・アシスタントを利用している人のニーズを効果的に聴取し対応する。
  • 依頼された仕事を実行するにあたって必要な技術を習得する。
  • 時間と仕事の管理。

パーソナル・アシスタントの役割を担う家族が支援される保証

  • 危機的状況でのバックアップやレスパイト・サービスの選択肢の確認。
  • 同じような状況にある家族同士のつながりを作る。
  • 困りごとを話し合い、家族がパーソナル・アシスタントの役割を果たすための対応策を見出す。
  • 訓練の機会に家族を参加させ、実践的な手立てを学べるようにすること。
  • パーソナル・アシスタントの役割を担う年少の家族メンバーの通学や気分転換を保証する。

危機的状況へ向けた準備とその管理

支援体制が崩壊するときも障害者のニーズの充足は継続されなければならない。危機が起こる前に検討すべき選択肢は以下のとおりである:

  • 招集できる対応チームは存在するか?
  • 一時的に利用可能な施設が地域の中に存在するか?
  • 性的虐待やドメスティック・バイオレンスを経験した女性・少女のための施設が地域にあるか?
  • 危機的状況にある家族を支援するソーシャルワーカーは障害に関する訓練を受けているか?受けていない場合、障害当事者団体やCBRプログラムがこの訓練を支援できるか?
  • 長期的解決策が見つかるまで親族の誰かが短期間の支援を提供することは可能か?
  • 危機的状況にある家族に対して支援・保護を提供する意思のある他の家族を見つけられるか?
  • 障害者とその家族が利用できる自助グループは存在するか?

入所ケアに頼らないパーソナル・アシスタントの促進

CBRプログラムと障害当事者団体が入所施設や関係政府機関と協働し、障害者にとって最善の将来の選択肢を探ることは重要である。

交友関係・結婚・家族

はじめに

交友関係・結婚・家族は全ての地域社会の核である。家族は支援と安全の重要な源と認識されている。

障害のある人たちも自分の家庭を築く権利がある。国連障害者権利条約第23条に関連する。

障害のある人が望む場合、交友関係を構築し、結婚し、親になることへの支援は重要である。

目標

障害のある人たちが、家族や地域社会の中で自分の立場、役割に十分に気づくこと。

CBRの役割

障害のある人たちが家族や地域住民と充実した関係を持てるように支援すること。

望ましい成果

  • 地域住民が、障害のある人も交友関係を持ち、結婚し、子どもを持てると認識し受け入れる。
  • 障害のある親や障害のある人たちの親が適切な子育てのサービスやプログラムを利用できる。
  • 障害のある家族メンバーが家族以外の人と交友関係を発展させるよう家族が奨励し支援する。
  • 障害のある人たちが虐待から守られ、全ての関係者がその問題解決のために協働する。
  • 障害のある人たちで限られた社会ネットワークしか持たない人には地域社会が特に支援する。

主要概念

交友関係

交友関係の充実はすべての人々にとって重要であり、個人の成長と発達に欠くことができない。

家族

家族に属すること

家族には様々な形と規模があるが、すべてに共通して帰属意識をもたらすことが挙げられる。家族は学びや発達の環境を与え、障害者を含む、子どもや脆弱なメンバーに安全と保障を与える。

障害に対する家族の反応

それぞれの家族が障害に対して異なった反応をする。家族は障害のある人たちのインクルージョンの有効な提唱者や変化をもたらす強力な媒体になり得る。

性の問題

性は健康で幸福な生活を構成する重要な一要素である。性的欲求は他の誰もがそうであるように障害のある人たちにも存在する。しかし、その欲求が無視または拒否されているのが現実である。

婚姻と親であること

国連障害者権利条約第23条に関連している。

暴力

暴力はすべての社会で起こりうる問題である。障害のある人たちは特に暴力を受けやすく、身体的、性的、精神的・心理的虐待、ネグレクト、金銭搾取の犠牲者となる危険性が高い。

推奨される活動

スティグマ、偏見、差別に立ち向かう

  • メディアと協働し、障害のある人たちのイメージと役割モデルをポジティブなものに変える。
  • 性や生殖に関する保健サービスを確保するため、保健専門家に障害に関する啓発訓練を行う。
  • 地域のリーダーと活動する。

親達のための支援提供

  • 子育て支援のための地域サービスを見つける。
  • 障害のある親や障害のある子どもの親を通常のサービスやプログラムに含むよう働きかける。
  • 障害のある人々のサービスやプログラムの利用のために照会システムを支援し発展させる。
  • CBRネットワークを介し、リプロダクティブ・ヘルス情報のアクセスしやすい形での普及をサービス提供者と協働する。

自立を促進するための家族への働きかけ

  • 家族の地域における立場や地位を守り、障害のある家族メンバーに関する心配を解決する情報提供や支援を行う。
  • 過保護にしたために引き起こされる悪い結果を家族に認識させる。
  • 地域社会における否定的な態度の変革に働きかけるよう、家族メンバーを勇気づける。
  • 障害のある人たちが、自分自身のニーズや欲求を効果的に自己主張できるように支援する。

暴力防止の促進

  • CBRワーカーが暴力を察知する能力の構築をはかり、障害のある人たちが適切な法的助言と支援を受けられる場所を必ず知っておくようにする。
  • 暴力と障害、そして障害のある人たちを保護できる活動について、地域の意識を高める。
  • 当該関係者(家族、障害当事者団体、保健・教育関係者、警察官、地域の指導者、地元の有力者)との結び付きを確立し、障害のある人たちを暴力から保護する役割を話し合う。
  • 障害のある人々が暴力を受けたことを内密に報告できる仕組みを関係者が協力して構築する。
  • 障害のある人々への暴力に関する情報を提供し、障害のある人たちが暴力を受けた際に内密に報告する方法を周知する。
  • 障害のある人々が自尊心と自信を高めるため、地域生活へ参加する機会を確保し、彼らを暴力から守る手助けをする社会的ネットワークを発展させる。
  • 暴力の被害を受けた障害のある人の保健サービスへのアクセスと問題解決を支援する。
  • CBRワーカーとボランティアに暴力犯罪歴が無いことをチェックする機能がプログラム及び組織の方針に備わっていることを保証する。

限られた社会ネットワークにいる人たちへの支援

障害のある人たちの一部は、入所施設、ホテル、宗教団体の施設などに住むか、あるいはホームレスになっている。この状況にCBRプログラムでは以下のことを提供できる。

  • 障害のある人たちを、地域社会の適切な支援ネットワークと結び付ける。
  • 入所施設と協働し、障害のある人々の地域へのインクルージョンが可能であることを保証する。
  • 障害のある人たちが望むよりよい生活環境を入手できるように支援をする。
  • ホームレスの障害者に、適切な宿泊場所をなるべく地域内で見つけられるよう支援する。
  • 障害のある人たちの生活の中で、暴力の兆候がないかに注意を払う。

文化・芸術

はじめに

「文化」という言葉をここではある集団の暮らし方という意味で使うことにする。従って、文化には、着るもの、食べ物、言語、価値観や信念、宗教、儀式や慣習など多くのことが含まれる。

文化的な生活への参加は人としての権利であり、個人にとっても、家族、地域や社会全体にとっても有益である。

目標

障害のある人が家族や地域の文化的、芸術的な生活に貢献し、参加するようになること。

CBRの役割

関係者と共に、障害のある人たちが文化的、芸術的活動に参加し楽しめるようにすることである。

望ましい結果

  • 文化や芸術を通して、障害に対するスティグマや差別が指摘され、解決のための努力がなされる。
  • 障害のある人やその家族が幅広い文化的、芸術的な催しや活動に参加する。
  • 主流の団体やグループが文化的、芸術的プログラムや活動に障害のある人を含むことを支援する。
  • 障害のある人が主流の文化的、芸術的な媒体や場所にアクセスできる。
  • 精神的・宗教的指導者やグループが、その活動に障害のある人の参加を受容する。

主要概念

参加の仕方

障害のある人がその家族や地域の文化的、芸術的な生活に受け入れられるには多くの方法がある。作品の制作や監督に携わったり書いたり演じたりする積極的な参加者にも、ドラマや映画を観たり伝統的な衣服を着たりして楽しむ控え目な参加者にもなれる。

参加の効用

文化的、芸術的活動への参加は、それを楽しむ一人一人に自分が何者かを教えてくれる。参加の過程は参加する個人をエンパワーするものである。障害のある人の中には文化や芸術に根ざした活動によってのみ、自己を解放し他と対等に自身を表現できる人がいる。

文化・芸術活動によって地域内また地域間の関係が強まり、地域の開発や再生を推進する。文化的、芸術的活動に障害のある人が含まれることは地域住民の障害に対する肯定的態度の指標になる。

社会変革を推進する手段としての文化と芸術

芸術は、抑圧的で差別的な行為に立ち向かう、非暴力の手段であると伝統的に見られてきた。障害のある人はたびたび芸術を通して障害の問題を正面から取り上げてきた。芸術は障害のある人にとって世界をインクルーシブに描く手段になり得る。

障害芸術

多くの国において障害のある人は、自尊心を高め、バリアを無くす意識を高め、地域の中で連帯していく手段として芸術を活用している。

役割モデル

障害のある芸術家の多くが多くの人の心を揺さぶる役割モデルになっている。多くの芸術家がその才能とエネルギーをインクルーシブな地域開発に注いでいる。

推奨される活動

社会変革に向けた文化と芸術を推進する

  • アーティストと共にイベントを催し、地域に存在するスティグマや差別に立ち向かう。
  • タブーに関しては、コメディや漫画、大衆芸術など深刻に迫らない方法で取り上げる。
  • 障害のある人や障害の肯定的な面をドラマや映画、演劇などを通して伝える支援をする。

家族の参加への支援

  • 家族の声を聴き、彼らが恐れを表し、恐れを自覚して立ち向かうように勇気付ける。
  • 同じような経験をして同じような思いでいる家族同士が出会えるようにする。
  • 家族を地域の障害当事者団体とつなぎ、誤った思いを正し、自信や期待や願望を大きくする。

障害のある人の参加を奨励する

  • 障害のある人が障害者団体やグループで同じ関心を持つ人々と共に様々な文化・芸術活動に参加できるようにする。
  • 既に評価を得ている障害のある芸術家に活動の展開・実施に参加、協力してもらう。
  • 様々な関係者と共に特定の障害アート・プロジェクトを立ち上げる。
  • 障害のある人で芸術に卓越した人を支援し奨励する。
  • ダンスやドラマ、音楽を、障害のある人の補助的な療法として推進、支援する。

主流の団体やグループと協働する

  • 様々な関係者と共に障害のある人が受け入れられるよう合理的配慮を整える。
  • 女性組織と連携し、障害のある女性が主流の文化的プログラムにより受け入れられるようにする。
  • インクルーシブな芸術教育によって、障害のある子どもが早期から文化・芸術的な活動に参加できるようにする。
  • 障害のある人や障害当事者団体が、障害やインクルージョンについての意識を高めるため研修を文化・芸術プログラムのスタッフと開発・運営できるよう支援する。
  • 文化・芸術プログラムに見習い制度や雇用の機会を設け、障害のある人がプログラムの運営・管理に参加できるようにする。

精神的、宗教的指導者やグループとの協働

  • 指導者の障害への意識を高め、宗教的・精神的活動に障害のある人を受け入れる大切さを伝える。
  • 指導者が地域の障害のある人やその家族への差別的で有害な行為に立ち向かうように奨励する。
  • 障害のある人が宗教的・精神的活動やプログラムへの参加にパーソナル・アシスタントを利用できるようにする。
  • 障害のある人が情報にアクセスできるように指導者たちに助言や支援をする。
  • 礼拝堂がアクセス可能となり、宗教的慣行に障害への配慮がなされるよう、指導者と取り組む。

レクリエーション・余暇・スポーツ

はじめに

レクリエーションや余暇やスポーツは地域の中で大切な役割を果たしている。そこには、健康と幸福の増進、エンパワメントへの貢献、インクルーシブな地域開発の促進など多くの利点がある。

レクリエーションや余暇およびスポーツへの参加は、障害のある人が近親者以外の社会と繋がりを持つことができる数少ない機会の一つといえる。

目標

障害のある人が、参加者として、また観戦者として、他の人と平等にレクリエーションや余暇やスポーツ活動に参加する。

CBRの役割

障害のある人のレクリエーション・余暇・スポーツへの参加を促進し、主流の団体・プログラムに援助を提供し、適切でアクセスしやすいレクリエーション・余暇・スポーツを提供し、障害のある人の能力を強化すること。

望ましい成果

  • 障害のある人が地域にあるレクリエーションや余暇やスポーツ活動に参加する。
  • 官庁や団体がレクリエーション・余暇・スポーツに障害のある人の参加を薦める。
  • 障害のある人がレクリエーション・余暇・スポーツに参加する権利と能力を家族、教師、地域の人々が認識し促進する。
  • 障害のある人もない人も、レクリエーション・余暇・スポーツ活動に一緒に参加する。
  • 障害のある人がレクリエーション・余暇・スポーツの開催地へ行くことが可能になる。
  • レクリエーション・余暇・スポーツの機器を障害のある人たちのニーズに合わせ改良する。
  • レクリエーション・余暇・スポーツのプログラムや活動を必要に応じて開発する。

主要概念

定義

この項では:

レクリエーションとは、人々が心身をリフレッシュし、余暇を楽しいものにするよう選んだ全ての活動をさす。

余暇とは、人々が毎日の仕事や家事などの責任から離れ、休憩し、リラックスし、生活を楽しむフリータイムのことをさす。

スポーツとは全てのタイプの組織化された身体的活動をさす。

地域社会におけるレクリエーション・余暇・スポーツ

低所得国の多くでは余暇の意味は良く理解されているわけではないし優先事項でもない。実際、高所得国でレクリエーションとされる釣りや手工芸は、低所得国では生活手段と考えられている。

参加の利点

  • 健康増進と病気予防
  • 技能の向上
  • 意識の向上、スティグマの低減、社会的インクルージョン
  • 国際平和と発展
  • エンパワメント

他の機会と補完関係にあるレクリエーションとスポーツ

レクリエーションやスポーツがアクセスの限られている教育や生計といった他の機会の代わりに用いられるべきではない。

レクリエーション・余暇・スポーツをアクセス可能に

廉価な宿泊施設はレクリエーションとスポーツに参加する障害者にとって必要である。またわずかな費用で、または全く費用をかけずに、活動内容と使用機器類を修正・改良することができる。

推奨される活動

地域のレクリエーション・余暇・スポーツ活動の機会の把握

地域やその周辺にどんなレクリエーションや余暇やスポーツが存在するのかを把握する。

障害のある人たちの参加を促進する

  • 障害のある人たちに彼らの地域で参加可能なレクリエーションとスポーツの情報を提供する。
  • 障害のある人たちと主流のレクリエーションやスポーツクラブや団体とを繋げる。
  • 学校でのレクリエーションやスポーツに障害のある子どもたちが参加できるようにする。
  • 障害のある人たちの参加を可能にするため、パーソナル・アシスタントの選択の幅を広げる。
  • 障害者のレクリエーションやスポーツに前向きなメディア報道を促進する。

インクルージョンについての意識向上のためのレクリエーションとスポーツの使用

国際障害者デーのような大きなイベントは、全国レベルから地方レベルまで、インクルーシブなレクリエーションとスポーツ活動の必要性についての意識を向上させる機会を提供できる。

主流のプログラムをインクルーシブなものにするよう奨励すること

  • 都会や地方に住む、全ての年齢、能力、性別にわたる障害のある人たちが参加可能なプログラムとなるよう国内外の団体と相談する。
  • 多くの活動がわずかな費用で、または全く費用をかけずに改変可能であることを強調しつつ、活動内容、使用機器や会場に変更を加える考えや提案を提供する。
  • 障害のある人たちへの対応技術と自信を付けるため主流プログラムのスタッフの訓練を促進する。
  • レクリエーションとスポーツに障害のある人が参加できるよう障害当事者団体と共に提唱する。

障害に特化したプログラムの開発と支援

  • レクリエーションやスポーツプログラムを開発する過程で障害のある人々が重要な役割を担うことを保証する。
  • 障害のある人がレクリエーションやスポーツのグループを設立するため、訓練と資源を提供する。
  • 地域の障害者向けレクリエーションやスポーツのグループやクラブを国際的な団体と繋げる。

司法

はじめに

公正へのアクセスは、人々が、制度、手続、情報、司法行政を行う場所へアクセスすることができる能力を言う。

障害のある人を含め不利な状況にある人のグループは公正へのアクセスに際し障壁に直面する。公正へアクセスできなければ、権利を行使することも、差別に挑むことも、意思決定者の責任を問うこともできず、結果としてより脆弱な存在となる。

目標

障害のある人が、他の人との平等を基礎として、人権を完全に享受し、尊重するために、公正へアクセスすることができる。

CBRの役割

障害のある人々の権利意識を高め、差別や排除に直面した時に公正へのアクセスを支援すること。

望ましい成果

  • CBRプログラムは必要に応じて障害のある人の公正へのアクセスを支援することができる。
  • 障害のある人が、自分たちの権利、選択肢、公正にアクセスする手続きを認識する。
  • 司法セクターに属する関係者は障害のある人の必要性を敏感に察知し差別的慣行に関与しない。
  • 障害のある人は権利が侵害された時に、非公式な公正の仕組みにアクセスすることができる。
  • 障害のある人は権利が侵害された時に、公式な公正の仕組みにアクセスすることができる。

主要概念

権利を保持する人と義務を負う人

権利を保持する人と義務を負う人の関係の理解は、障害のある人の権利を検討し、公正へのアクセスを実現するうえで重要である。

権利を保持する人

障害のある人は権利を保持する人であり、与えられた権利と責任の両方を有している。

義務を負う人

義務を負う人は、国(政府)、全国的なまたは地方レベルの非政府関係者(非政府組織、宗教指導者、両親等)を含む。

公正の壁

  • 障害のある人を守るための適切な法律や政策の欠如。
  • 物理的な壁。
  • コミュニケーションの壁。
  • アクセスできる情報の欠如。
  • 経済的な障壁。

法的能力

国連障害者権利条約第12条に関連する。

障害のある人の中には法的能力を行使することを許されない人が数多くいる。これは多くの人々が障害のある人には適切に行動する能力がないと考えているからである。また、重度の障害のある人も法的能力を行使可能ということを他の人々に気付かせることもできるであろう。

公正へのアクセスの促進

法による保護

障害のある人の権利は、国の憲法、法律、政策において定められなければならない。彼らの権利が法的に認められれば、司法機関、行政、裁判所、時には人権団体も、障害のある人の権利が侵害された場合の解決策を提示できる。

非公式な仕組み

不公平かつ不正な慣行は地域のレベルで効果的に解決できる。法的保護の非公式な仕組みには、宗教団体、開発組織、部族長、村長、労働組合・協同組合、教育と保健医療専門家、ソーシャルワーカー、家長などを通しアクセスできる。

公式な仕組み

非公式な手段を用いて権利を保護する方策にアクセスできない場合、裁判所で法的措置を取るという公式な法的保護のプロセスを使わなければならない。これは高額かつ時間を要し、法律家の助言を必要とするため通常は最後の手段である。

法意識

法意識は不正と戦う基盤となる。障害のある人とその家族が、自らの権利を意識することにより、自分たちの権利を守ることができ、他の人の権利が侵害された際にも声をあげることができる。

法的扶助

法的扶助により、障害のある人を含む、不利な状況に置かれている人々が司法手続きを始められるよう支援できる。法的扶助は、法的問題に助言したり、権利と法律の理解を支援したり、裁判所で代理人を務めたりするなど、資金と支援を提供するものである。

コミュニティ法律センター

資金的余裕がなく、法的扶助の適用条件を満たさない人に、法律サービスを提供する一つの方策がコミュニティ法律センター(CLC)や法科大学院付属相談所の活用である。CLCは通常小さなNPOであり、様々な法律サービスを提供している。その重要な特徴はサービス提供にボランティアを活用している点である。

推奨される活動

地域の状況の理解を深める

  • 法律の意識を高める。障害当事者団体と法的扶助サービスはCBRに携わる人が法律を理解する手助けとなる。
  • 法律がどのように施行されるのかに関する理解を深める。
  • 地域において、障害のある人が正義を求めるうえで活用できる、入手可能な資源を明らかにする。

関係者とネットワークや同盟を構築する

CBRプログラムでは、障害のある人に起こりうる不正や非合法的な行為に備えるため、影響力のある地域のメンバーやグループと良い関係を構築し、障害当事者団体や自助グループと共に活動しなければならない。

権利についての意識を高める

  • 障害当事者団体と共に活動し、障害のある人とその家族が権利に関する知識を持つようにする。
  • 障害に関する権利とその権利にどうアクセスするかという情報を利用しやすい様式で普及する。
  • 障害当事者団体、人権団体、自助グループとともに、意識を高めるための活動に参加する。
  • 障害当事者団体と人権団体が障害に関する研修を、地域や地区レベルで、主なセクターや意思決定者と共に実施することを支援する。

必要に応じ非公式な仕組みへのアクセスを促進する

  • 地元の学校と協働し、障害のある子どもを学校へ通わせるように奨励する。
  • 地域の人々と宗教指導者に対し、家庭内の争い解決のための助けを求める。
  • 農業協同組合と共に、障害のある農民が地域の共有資源を活用できることを確認する。
  • 銀行と共に活動し、障害のある顧客が自らの口座を管理し融資を活用できるようにする。
  • 地域の医師に手話通訳者を手配し、聴覚障害のある人が保健医療施設を活用できるようにする。
  • 部族・宗教の指導者や家長と共に活動し、障害のある人々が相続権を要求できるよう支援する。

必要に応じ法的行為への支援を行う

  • 信頼がおける法曹界のメンバーと強いつながりと連携を構築する。
  • 異なる種類の差別に対応するためにはどの法律が適切なのか法的助言を得る。
  • 障害のある人の法的行為を行う決定を尊重する。
  • 法的行為を行うことに伴うリスクを考慮する。
  • 障害のある人とその家族の法的手続きへの関与、それに伴うリスクの認識を確認する。
  • 地域の貧しい住民のために法的な問題に取り組んでいる組織の意識を高め、共に活動する。