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CBRガイドライン概要版&CBRマトリックス使用の手引き

【エンパワメント】

序文

エンパワメントは、マトリックスの他の4つの分野を横断的につらぬくテーマでもある。解釈は場面や状況によって異なる。CBRプログラムの多くは、医療モデルに焦点を当ててきたがそれは依存モデルを助長してきた。エンパワメントは、個人や集団が自分たちの状況は自分たちで変えられるということを認識し、行動するところから始まる。

障害のある人、その家族や地域社会はCBRの中心である。ガイドラインは従来のCBRモデルから解放し、地域社会に根差したインクルーシブな開発モデルへの変化と促進を勇気づけ、地域社会のエンパワメントを手助けすることから始められるべきである。

目標

障害のある人々とその家族が自ら意思決定をし、自分たちの生活の変革と地域の改善に責任を持つ。

CBRの役割

障害のある人々とその家族が、自分たちの生活に影響を及ぼす問題に対して積極的にかかわっていくことを奨励、支援、助力することを通して、エンパワメントの過程に寄与することである。

望ましい成果

  • 障害のある人々が、説明を受け納得した上で選択および決定ができるようになる。
  • 障害のある人々が家族やコミュニティの中で積極的に参加し貢献する人になる。
  • コミュニティにある障壁が取り除かれ、障害のある人が能力を持った人々として受け入れられる。
  • 障害のある人々とその家族が自分達のコミュニティで開発の恩恵とサービスを享受できる。
  • 障害のある人々とその家族のメンバーが共に自分達自身のグループ・団体を組織し、共通の諸問題を解決すべく取り組む。

主要概念

ディスエンパワメント(無力化)

障害のある人々の多くが、家族や地域の中で、否定的な態度や低い期待から、力をはく奪されること(ディスエンパワメント)を経験している。この無力感を感じる経験こそがエンパワメントの原点である。

エンパワメントと動機付け

エンパワメントは複雑なプロセスで、すぐには達成されない。障害のある人自身の意識が変わるところから始める。エンパワメントはこのガイドライン全体で言及されている。

意識

個々人が、自身が住んでいる状況や社会に対する理解である。

情報

情報は力である。CBRプログラムでは情報の発信がひとつの重要な活動である。人々は貧しいほど、権利や権原という基本的な情報へのアクセスが少なくなる。情報提供により、サービスにアクセスし、権利を行使し、効果的に交渉し、義務を担う人々にその責任を問うことの保証につながる。

能力構築

障害のある人々が、家族や地域社会に対して意味のある貢献をするために幅広い知識と技術が必要でそれらにより、エンパワメントの過程で重要な自信と自尊心を高めることにもつながる。

ピアサポート

多くの障害のある人々は、同じ問題を抱えた人々といることで孤立感を最小限に留め、相互扶助の拡大にも役立つ。(「自助グループ」及び「障害当事者団体」の項参照)。

参加

何かに貢献をする人は社会的に認知される。それはエンパワメントの重要なプロセスである。障害のある人々の多くが様々なレベルで貢献をすることができる。

連携とパートナーシップ

障害のある人々はその数が限られているが故に、他の集団と連携やパートナー関係を結んで行動する。それにより、コミュニティへの参画が広がり、インクルージョンはうまくいく。

本コンポーネントの要素の紹介

  • アドボカシーとコミュニケーション
  • コミュニティを動かすこと
  • 政治参加
  • 自助グループ
  • 障害当事者団体

アドボカシーとコミュニケーション

はじめに

アドボカシーは、CBRガイドライン全体を通して推奨される活動である。方法は多様だが、この項では自身のために声を上げるセルフ・アドボカシーに焦点を当てる。セルフ・アドボカシーと効果的なコミュニケーションは、障害をもつ人々のエンパワメントの実現に重要である。

目標

障害のある人々が自分で意見を述べられるようになる。

CBRの役割

障害のある人々がアドボカシーやコミュニケーションの技能を身に付け、彼らのいる所でふさわしい機会が与えられるよう保証し、彼らが意思決定をし、ニーズや要求を表明できるように支援をすることである。

望ましい成果

  • 障害のある人々とその家族にとって、情報やコミュニケーション資源へのアクセスが向上する。
  • 障害のある人々にとってのコミュニケーションの障壁が削減または取り除かれる。
  • 障害のある人々とその家族がそれぞれの所属する地域において自分の立場や意見を表明する。
  • CBRスタッフが効果的なコミュニケーターとしてコミュニケーションに困難を覚える人を含むすべての関係当事者と情報を共有する。

主要概念

セルフ・アドボカシー

セルフ・アドボカシーとは何か?

セルフ・アドボカシーとは、自らの権利と責任を知り、その権利をはっきりと主張し、そして自分の人生について選択と決定をできるようになることを意味する。

なぜ重要なのか?

セルフ・アドボカシーは、エンパワメントの重要な要素である。セルフ・アドボカシーの技術を学習することによって、自らの生活を管理し、最善の意思決定をすることを学ぶことができる。

どのような支援が求められるか?

障害のある人々はスティグマと差別を経験し、自分の意見、要望やニーズを表明することが非常に困難なことがある。障害のある人々の多くがセルフ・アドボカシーの技能(「推奨される活動」参照)習得のための支援を必要としている。状況によっては代弁者の支援を求めることもある。

コミュニケーション

コミュニケーションとは何か?

コミュニケーションとは情報やメッセージが、人から人へ伝達される方法であり、かつ個人と地域の社会関係が構築され、維持される手段でもある。効果的なコミュニケーションのためには手段、理由、および機会の三つの鍵があるとされる。

コミュニケーションのための声がなくとも

障害のある人々の中には会話やコミュニケーションが容易にできない人々もいる。もし音声でうまく話せないとしても、すべての人が何らかのコミュニケーション能力を有していることを認識することは重要である。

コミュニケーションの障壁

障壁は大きく4つに分類される。現存する障壁を認識し、それらを克服していくことが重要である。

4つとは、「物理的な障壁」、「意味の障壁(複雑な言葉や専門的用語)」、「態度の障壁」、および「情報のあり方の障壁」である。

推奨される活動

基本的なコミュニケーションアセスメントの実施

コミュニケーションの質を評価するときの基本的事項は以下の通りである。

  • どのようなコミュニケーションの手段、方法が現在、用いられているか。
  • その手段、方法がどの程度うまく用いられているか(障害のある人、ない人の両者の技能を検証する)。
  • コミュニケーションの仕組みをすべての人が理解しているか。
  • 障害のある人々のニーズを障害を持たない人々が本当に理解しているか。
  • 障害のある人は通常誰とコミュニケーションをしているか。
  • 障害のある人々が何のためにコミュニケーションしているのか。
  • その人がどういうコミュニケーションの機会を持っているか。
  • 良いコミュニケーションを阻む障壁が他にあるか。
  • 身分、力、役割がコミュニケーションに影響を与えているか。

コミュニケーション技術を発達させるために提供されるべき支援

コミュニケーション障害のある人を見つけた際、CBRワーカーに期待されることは以下の通りである。

  • 利用可能なところでは、言語療法などの専門サービスへ照会する。
  • 人によっては手話や文字盤といった他の形態のコミュニケーション手段に関する情報を提供する。
  • 必要なコミュニケーション支援ツールへのアクセスを確保する。必要に応じ、家族に製作方法を示す。
  • 補聴器の必要な人に入手方法、フィッティング、手入れ方法、利用方法に関する情報提供を保証する。
  • 手話を教えるか、あるいはどこに行けば手話が教えられているかを教える。
  • コミュニケーション障害のある人の日常生活でのインクルージョンを進め、地域の簡単な単語、言い回し、ジェスチャーを教える。
  • 社会的な交流の機会を提供するグループ、クラブなどを紹介する。

コミュニケーションの障壁への対処

  • 障害のある子どもや大人のコミュニケーション機会の最大化のため、家庭での肯定的態度を奨励する。
  • 障害のある人がコミュニケーションでき、障害のある人の話に興味を持つキーパーソンを見出す。
  • 本人たちの好むコミュニケーション手段に関する情報を共有する。
  • 障害のある人々との間で有効なコミュニケーション戦略を家族や地域の人々に教える。
  • 聴覚に障害のある人のための環境を整備し、コミュニケーションの最適化を図ることを提案する。
  • 障害当事者団体と協力し、訓練された手話通訳者の人材プールを作ることを支援する。
  • コミュニケーションに困難のある人々が直面する課題について地域住民の啓発を行う。
  • アクセス可能な情報とコミュニケーション形式の必要性や活用を障害当事者団体と共に啓発する。

セルフ・アドボカシーへの支援の提供

  • 障害のある人々が何を求めているかを尋ねる。
  • 障害のある人に対してその人の障害についての情報を伝える。
  • 人々に対して障害の社会モデルを教える。
  • 障害のある人々に対して障害者の権利と責任についての情報を提供する。
  • CBR プログラムで意思決定をする際には、障害のある人々も決定過程に含める。
  • コミュニティ内のサービスについての情報を人々に提供する。
  • 障害のある人々をコミュニティ内の自助グループや障害当事者団体に紹介する。

CBRワーカーが効果的な伝達者になるよう保証する。

CBRワーカーには、異なる背景をもち、様々な人生を歩んでいる人々と交流をすること、そして特に話題が難しいあるいはデリケートな場合に、識字力に差があるような時には、情報を明確に伝えることが重要である。そのためCBRワーカーには以下のことが求められる。

  • コミュニケーションの環境整備と自己表現に困難がある障害のある人々への支援
  • 地域の人々と同じ言語、方言を話す。
  • 地域の手話および代替コミュニケーションの方法を知っている。
  • 地域の文化的、階層・階層的違いを理解し、尊重し、障害のある人々や女性、他に周縁化された人々と敬意をもってコミュニケーションすることで良いロールモデルになる。
  • 保健、教育、経済、社会セクターといった他の関係当事者と定期的にコミュニケーションする。
  • 一般の人々とコミュニケーションをするためのメディアの使い方を知っている。

コミュニティを動かすこと

はじめに

コミュニティを動かすというのは、できるだけ多くの関係当事者を集める過程のことである。人々の意識が高まり、社会支援やサービス提供を支援し、コミュニティの住民の参加を促進・強化し、それにより自己依存と持続可能なプログラムが可能になる。

コミュニティの支援が確立し、社会の異なる分野の人々が変革過程に積極的に参加するようになるまでは障害の主流化はほとんど進展しない。

目標

地域社会の住民がエンパワーされ、障害のある人々とその家族のためにコミュニティにある障壁を取り除き、障害のある人々とその家族の地域社会の活動への参加促進のために積極的な役割を果たす。

CBRの役割

障害のある人々とその家族に対する否定的な態度や行動を変え、CBRプログラムをコミュニティの住民が支持するようになり、開発のすべての分野での障害の主流化が推進されるようコミュニティの住民を巻き込むことである。

望ましい成果

  • コミュニティの住民が、障害のある人々とその家族のニーズを認識し、その生活の質を改善することに意欲をもつ。
  • 障害のある人々とその家族にとってのコミュニティ内の障壁が減らされ、または取り除かれる。
  • コミュニティ内にCBRについての知識、また、CBRプログラムを発展、維持するために必要な資源の活用に関する知識が蓄積される。
  • コミュニティの住民がCBRプログラムの計画と実施、運営に参画する。

主要概念

「コミュニティ」の定義

CBRでは、コミュニティの住民が重要な役割を果たす。「コミュニティ」とは、ある種の社会組織、結合体として共に暮らす人々と説明される。ただし、一般的に地域社会のメンバーは同質ではなく、しばしば多様性があり、民族グループ、言語、宗教や信条、文化的な慣行の違いがある。

コミュニティの関係当事者

地域社会は様々な個人、グループおよび組織によって構成される。その多くは、CBRプログラムにとって、重要な関係当事者である。

コミュニティの問題としての障害

保健、教育、水、衛生、住宅、交通、環境等全ての地域開発の課題は、障害の発現に関係している。故に障害は地域の中での重要な問題であるがほとんど無視されているのが実情である。

多くのコミュニティで、障害のある人々とその家族の生活の質に影響を与える障壁がある。その障壁には、物理的・環境的なもの、態度、文化、サービス、システム、政策に関するものが含まれる。CBRプログラムによってそれらは認識され、理解されることが重要である。

コミュニティを動かすこと

開発セクターでは、コミュニティを、開発のための活動において先導的な役割を果たすものとして重視している。CBRは地域に根差したインクル-シブな開発のための戦略である。故にコミュニティの課題に人々が耳を傾け、政策決定や生活に影響をあたえる活動にコミュニティが直接関与することの重要性が認知されている。

コミュニティを動かすことは、障害が障害のある人々に限られた課題ではなく、すべての人に共通する課題として認識させうる。

推奨される活動

コミュニティに気づく

CBRプログラムはコミュニティの状況について理解を深めなければならない。コミュニティ内の権力構造を知ることはコミュニティを動かすための重要な活動のひとつである。また、障害のある人々とその家族に対し、コミュニティがどのような態度や行動をとっているか調べることも重要である。

地域社会内で信頼と信用を獲得する

  • コミュニティと共に活動する許可を地元の指導者に求める。
  • コミュニティにおいて、目に見える形で行動することで他の関係当事者の活動をサポートする。
  • コミュニティ内の関係当事者と連絡を取り、問題を理解し、共に働くための最善の方法を見出す。
  • 定期的に重要な情報を交換し、CBRプログラムの最新の状況を伝える。
  • 正直さと透明性を保ち、果たせない約束をコミュニティに対してしない。

コミュニティ内での啓発

障害についての意識を啓発するときに忘れてならないことを以下に挙げる。
  • メッセージはできるだけ簡潔にする。
  • 地元の文化に適した方法を用いる。
  • 障害のある人々自身が啓発活動の実施に関与することでコミュニティに大きな影響を与える。
  • 障害のある人に対する姿勢と態度の変革は時間を要す継続的なプロセスである。

コミュニティを動機付けてCBRに参加させる

CBRが障害のある人々だけでなく、コミュニティ全体の利益につながるものであることを関係当事者に納得させる必要がある。そのため、CBRプログラムがどのようにコミュニティを支援できるか、地域の人々に知ってもらうことは重要な活動である。

コミュニティの住民参加の機会を設ける

コミュニティを動かすにあたって、関係当事者すべてに同時に働きかける必要はなく、コミュニティの区域・部門毎に異なるタイミングで、CBRの様々な分野に参加してもらうことで結集すればいい。

関係当事者を一堂に集める

必要な議論と交渉を開始する際、関係当事者を一堂に集めることはCBRプログラムに不可欠である。会議では社会的弱者が除外されることなく、自信をもって参加出来るよう力のバランスを考慮する。

コミュニティ内での能力構築

コミュニティのメンバーの知識や技術を伸ばすためにどのような研修の必要があるかをリサーチする。

成果を祝う

成果を祝うことは、コミュニティを再活性化させ、コミュニティ内外から関心を引き付け、さらにCBRプログラムとインクルーシブな開発への支援を取り付ける機会となる。

政治参加

はじめに

狭義の「政治」という言葉には、政府、政治家、政党活動を指す。広義の「政治」には人間関係、対人関係のあらゆるレベルにおける力の作用という意味合いも含まれている。

障害者権利条約関連条項は29条「政治的及び公的活動への参加」

目標

障害のある人がそれ以外の人たちと対等の条件で、政治的な生活や一般の生活に参加する。

CBRの役割

以下の2点を保証することである。

  • 障害のある人とその家族の政治参加、参加の機会へのアクセスのため必要な情報、技術、知識を手にすること。
  • 障害のある人に関する問題が政治的政策決定に組み込まれ、政策やプログラムの中心に据えられるよう、問題が顕在化していること。

望ましい成果

  • CBRワーカーが政治制度についてより高い意識を持つ。
  • 障害のある人とその家族がより高い政治的意識を持つ。
  • 政府と市民団体が障害問題について、また障害のある人とその家族が政治の過程に参画する権利についてより高い意識を持つ。
  • 障害のある人とその家族の政治プロセスへの参画をさまたげる障壁を軽減、または撤廃される。

主要概念

権力と意思決定

権力とは、きちんとした情報に基づく選択をする能力と、行動を起こす自由のことである。決定は権力を持つ人々によってなされる。誰が政策決定をする権力を持ち、なぜ彼らがその権力握っているかを理解することは、政治参加への最初の重要なステップである。

政治参加への障壁

政治参加への障壁は、CBRガイドラインの他の項目で言及されている障壁と似ている。具体的には、貧困、教育、社会的孤立、個人的要因、スティグマと差別、障害のある人に優しいプロセスの欠如、ロールモデルの不在、法的障壁等である。

政治的課題としての障害

障害のある人とその家族が直面している不利な状況の多くは、政府や政策立案者が障害の問題に取り組まないために生じている。関連する政策の優先順位の問題や資源が限られた場所ではなおさらである。

政府

政治の仕組みとそのプロセス、その中での権力がどう働いているかを知っていること、政治に影響を与える方法を理解していることはネットワーク作りや変化を生み出すためのアドボカシー活動に役立つ。

政治的割当

政治的な影響力の確保のため、多くの国では周縁化されたグループ(女性、少数民族、障害のある人など)のために一定の割合の議席や公的雇用を確保している。

推奨される活動

CBR関係当事者の政治制度に対する意識を確実に向上させる

  • CBRプログラムの実施には、政府がどのように取り組むかを実際的な観点から理解する必要がある。
  • 障害と開発分野での主要な法律や政策を特定する。
  • 各省庁の責任、決定権を持つ人を調べる。
  • 地方レベルでの政治的構造を明らかにする。
  • 定期的に政治家と意見交換を行い、CBRプログラムは中立的立場を保って実施されるようにする。

政治的意識の涵養を促進する

障害のある人を含む多くの人のうち、貧しい人々の政治的意識のレベルは低いかもしれず、権利条約等国際条約に関する国内法の存在を知らないこともある。CBRプログラムは次のことを可能にする。

  • 障害のある成人に対し、識字プログラムへの参加の奨励。
  • 障害のある人の権利に関する研修へのアクセス促進等。

政治制度における障害に関する意識を高める

  • 地域の政治家や官僚に対し、障害に関する法律が存在することを教える。
  • 地方議会で、障害に関する意識向上研修を実施する。
  • 政治的リーダーや政治家をCBRプログラムや障害のある人が実施する活動に巻き込む。

政治過程へのアクセスを促進する

  • 選挙が予定されている場合、地元の当局者に対し障害のある人にとって利用しやすい投票所や手続き方法を用意するための助言を与える。
  • 国家選挙委員会と権利擁護団体が、障害のある有権者に対し、彼らにも投票権があること。また、彼らが投票に参加するためのサポート体制について情報を与えるよう働きかける。
  • 政治的指導者や政党が障害のある人にも理解可能な広報材料を開発し、かつその中に障害のある有権者を描き込むよう勧める。
  • 障害のある人たちが投票所まで来られるよう、交通手段のオプションについて検討する。
  • 疎外されたグループのために割当てられた議席や公職枠を活用するよう障害のある人を促す。

自助グループ

はじめに

自助グループは、自分たちの共通の問題について取り組むために集まった非公式なグループである。その重要な特徴は、相互支援の考えである。目的は様々で貧困削減や社会的エンパワメントのために効果的な戦略として使われている。CBRプログラムでは、自助グループを作ることも奨励されている。

目標

障害のある人とその家族が、共通の問題の解決、個人の力の向上、生活の質の改善のためにグループに参加する。

CBRの役割

障害のある人とその家族に支援・援助を提供し、新しい自助グループを形成するか、または既存のグループを存続させることである。女性グループやマイクロクレジットのグループ等の主流グループがすでにある場合、そのようなグループに障害のある人とその家族が含まれるよう奨励することである。

望ましい成果

  • 障害のある人たちとその家族のため、コミュニティに自助グループが存在する。
  • 自助グループのメンバーが家族やコミュニティに貢献する人材となるよう、知識や技術を向上させる。
  • 障害のある人たちやその家族がコミュニティの人たち向けの主流の自助グループにアクセスできる。
  • 自助グループがCBRを奨励し、メンバーがCBRプログラムの立案や実施に参加するようになる。
  • 自助グループが結束し連合体を作り自立できる。

主要概念

自助グループ

自発的であり、定期的な会合をもち、新しいメンバーに対してオープンである。また特定の問題のために対応するのが一般的である。他にもいくつかのべられている。

会員

メンバーに報酬はないが、相互支援をとおして自分の状況をかえるために組織的に活動している。

促進と指導力

CBRワーカーは、新しい自助グループが作られる時に、ファシリテーターの役割を担うことが要求されることがある。障害のあるファシリテーターはロールモデルになり得る。

自助グループを設立する上での問題点

自助グループ(地方と都市)

CBRの経験から、地方の方が自助グループを形成しやすい。都市部は人の出入りが頻繁で、グループメンバー間の信頼の構築が困難なため、グループ作りは難しい。

女性と男性

一般的に女性グループのほうが、男性グループより設立は容易である。女性は他の人と結束する意識が強く、人と協力して仕事をする。男女がいるグループでは、女性メンバーの代表者がいて、皆が、女性の発言に耳を傾け、彼女らの問題が討議されることが重要である。

教育のレベル

メンバーの教育レベルは様々である。障害のある人は教育レベルが低い傾向にある。そのためメンバー内で不平等が起きないようにするためグループ形成の初期段階は大切である。

単一障害グループ

似たような障害の人たちで形成されるグループは多い。単一障害のほうが目的は明確であるが、小さいコミュニティでは障害種別を超えたグループの方がより実際的である。

依存

障害は依存関係と関連づけられる。支援を受けることに慣れてしまった障害のある人は自助グループに参加する意欲や自信を無くすことがある。

推奨される活動

新しい自助グループを形成するための支援の提供

立ち上げる

  • 障害のある人たちとその家族に自助グループについての情報を提供し、グループ形成を奨励する。
  • グループのメンバーであることのメリットや取り組み可能な問題についても話し合う。
  • 障害のある人やその家族がグループ参加に興味のありそうな人に話をすることを奨励する。
  • もし興味とやる気が十分にあるならば、アクセスしやすい場所で正式な企画会議を計画する。

計画

  • 共通の関心事について議論し、グループが活動の中心をまず何にするかを決める。
  • グループの利益のためにどんなリソースを提供する用意があるかを尋ねる。
  • グループのリーダーやコーディネーターを決める。複数いる方がよいかもしれない。
  • なるべく早く仕事を割り当てることで、自分の仕事であるという認識や責任感を育てる。
  • グループに名前を付けることによってグループのアイデンティティを確立する。
  • グループに参加できる人を決める。
  • 会議の頻度、最初の開催日時を設定する。アクセス可能でメンバーが住所から遠くない所で開催する。
  • 必要であれば、初回の会議への参加を呼びかけるためにグループをどのように宣伝するかを決める。

会議の運営

  • 会議に到着した人たちを迎える。
  • 会議を開始し、自己紹介をするようにメンバーを促す。
  • 会議中に議論された事、起こった事が外部に知られないようにするため、守秘義務のルールを定める。
  • 会議の主な活動を実行する。
  • 議事録を取り、出席者や主な議題と決定事項を記録する。
  • 事務的事項を扱う。
  • 閉会

手助け

  • 要請があった時に、グループリーダーのために支援・援助を提供する。
  • 会議の内容を全員が理解し、全員が参加できるように、会議が運営されているようにする。
  • グループ内での役割と責任を回り持ちにするよう促す。
  • 相互支援をどのようにすればよいかが分かるようにグループを支援する。
  • グループ活動の利益分配が公平でガラス張りの方法でされているかをチェックする。
  • いったんグループが設立された場合、グループのルールや規則の草稿作りを支援する。
  • 財政的援助を提供する。

能力構築

グループが効果的に独力で機能を果たすまでには、しばしば多くの支援と能力構築を必要とする。新しい自助グループは既存の自助グループからメンバーを招待することで経験を学ぶことができる。

既存の自助グループとのパートナーシップを展開

CBRプログラムでは、地域の既存のグループを探し出し、連絡を取り、知識や資源を共有するための連携強化に向けて活動し、より多くの障害のある人やその家族との接触を保証することが重要である。

主流の自助グループが障害のある人たちを含むことを奨励する

  • 主流の自助グループが障害のある人たちを他の人たちと平等の権利を持つ正会員とするよう奨励する。
  • 障害のある人たちもない人たちも直面する共通の問題に焦点を当てる。
  • 障害のある人や家族に障害者のいる人で主流の自助グループに既に所属している人を見つける。彼らが直面する問題について話すことを促し、自助グループの会議・討論の議題に「障害」を組み込む。
  • 障害のある人やその家族が主流の自助グループとつながりを持つ前に、必ず必要な技術や知識を持っていることを確認する。

自助グループのメンバーがCBRプログラムに参加するように奨励する

自助グループは、障害やインクルーシブな開発の促進について意識を喚起する重要な役割を果たすことができる。

自助グループの合同を奨励する

CBRプログラムは自助グループ連盟の形成を促すことができる。

障害当事者団体

はじめに

世界的に障害のある人々は、政府や社会のあらゆる分野に於ける政策決定者に影響を与えるべく、自分たちの権利擁護者として組織に参加してきた。こういう団体が障害当事者団体である。

障害当事者団体は、障害のある人たちの平等な参加を阻む社会のバリアに対抗し、他者に管理されることに対する反発から結成されてきた。障害のある人々こそが最高の代弁者であり代表者である。

障害当事者団体は通常、県や国レベル、主要都市に存在する。単一障害の団体もあれば種別を超えた障害当事者団体もある。障害当事者団体のネットワークが存在する国もある。国際レベルでの障害当事者団体もあり、国際障害同盟(IDA)を形成している。

障害当事者団体とCBRプログラムでは、起源や戦略は異なるが、機会均等と社会参加のように目標は共通している。障害当事者団体とCBRプログラムが互いに尊重し合い、共通の目的を達成し、障害者権利条約を実現させるための良いパートナーシップ構築に向けて協働することが重要である。

目標

CBRプログラムと障害当事者団体が協働し、権利条約の実施とコミュニティに根ざしたインクルーシブな開発を実現させる。

CBRの役割

障害当事者団体のある地域ではその団体と協働し、無い地域では団体結成に向けた支援を行う。

望ましい成果

  • CBRプログラムと障害当事者団体が協働し、新規または既存のCBRプログラムを企画・実施・モニタリングする。
  • 障害当事者団体はCBRプログラムがもっと障害のある人たちを代弁しインクルーシブなものになるよう支援する。
  • 障害当事者団体がCBRプログラムの無い地域でCBRプログラムを企画立案・実施する意欲を持つ。

主要概念

性格

障害当事者団体は県や国、国際レベルで活動するアドボカシー組織で、政策を変え、障害のある人の権利と機会の平等を達成するために活動している。正式に登録され、他の団体や期間と同様の構成や機能を持っている。

会員

障害当事者団体は、「私たちのことを私たち抜きで決めないで」というスローガンを掲げており、理事会、会員ともに過半数が障害のある人である。単一障害の団体もあれば、障害種別を超えた団体もある。

自助グループと障害当事者団体

国により様々で区別が難しい。障害当事者団体はより正式な組織である。

障害当事者団体とCBRプログラムのパートナーシップ

このガイドラインでは、障害のある人が平等にサービスや機会へのアクセスが得られるよう、CBRがコミュニティに根ざしたインクルーシブな開発を重視している点に着目する。CBRでは障害のある人の参加がCBRの成功に極めて重要である。また障害当事者団体はこれまでは障害を権利の問題として着目してきたが、開発の問題でもあることに気づいている。両者のパートナーシップは長期的にみて持続可能なものになる。

推奨される活動

障害当事者団体と協働する。

  • CBRの計画・実施・モニタリングに障害当事者団体が関与する。
  • 政府の役人や地元の指導者、支援団体への研修や企画に、障害当事者団体の代表や会員をリソースとして活用する。
  • 障害当事者団体がCBRワーカーや自助グループに、政策、障害のある人の権利、アドボカシーの必要性やメリットなどの研修を提供する。
  • 障害のある人や家族向け研修教材や地域のリソースの要覧等の資料を協働で製作する。
  • 権利条約実施に向けたアドボカシーの活動を通じ、障害のある人のエンパワメントを目指す。

障害当事者団体会員のCBRプログラムヘのアクセスを保証する。

CBRプログラムは、ニーズに応じあらゆるCBRの活動を利用可能にすることで、障害当事者団体の会員を支援することが出来る。

障害当事者団地がCBRを戦略として支援するよう促す。

  • 開発のメインストリーミングと、権利条約とミレニアム開発目標の恩恵が1人でも多くの障害のある人に届くよう、CBRを国レベル・国際レベルで推進する。
  • CBRの戦略を政府の政策やプログラムに含め、必要な予算措置を講じるようロビー活動を行う。
  • 障害とCBRの重要性に関する啓発を行い、CBRプログラムへの参加を促し、コミュニティを動かす。
  • 都市部のスラムや農村部での障害のある人のための自助グループ結成を促し、グループの能力開発を支援する。
  • CBRマトリックスを利用したCBRプログラムを直接実施する。

コミュニティに根ざした障害当事者団体を支援する。

  • 障害当事者団体の結成に関心のある障害のある人を見つけ、女性、子ども、様々な障害のある人、様々な社会経済学的集団からの代表が含まれるようにする。
  • 障害当事者団体を作るメリットを知らせる。
  • 国、州・県レベルで障害当事者団体と協働し、研修ワークショップを開催する。
  • 障害当事者団体の組織作り、ミッション・目的・アクションプラン作り、地元当局への登録、銀行口座の開設、その他必要な法的手続きについて支援する。
  • 障害当事者団体が結成された後も支援を続ける。