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エグゼクティブサマリー

条約第12条は、考え方の根本的な転換を反映している。つまり、支援があれば、知的障害のある人は皆、意思決定ができ、自分の人生を自分で決めることができると、第12条は主張しているのだ。このグローバルレポートは、知的障害のある人々とその家族が、決める権利についてどのように考えているかを示すものである。

過去2年間にわたり、600人を超える当事者、家族、障害のある人々の権利擁護者、専門家が、インクルージョン・インターナショナルによる決める権利に関するグローバルキャンペーンに刺激を受け、さまざまな議論に参加してくれた。さらに、インクルージョン・インターナショナルは、世界40カ国以上の80を超える団体の声にも耳を傾けてきた。

当事者は語った。「私たちの話を聞いてほしい。自分がどう生きるかは、自分で決めたい。」家族は語った。「私たちは、家族の一員である知的障害のある人が決める権利を持てるよう支援するに当たり、助けを必要としている。」

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家族を基盤とする組織は語った。「知的障害のある人々を、本人の『意思と選好』を尊重する形で支援するに当たり、私たちは課題に直面している。」

決める権利を持つということは、生活のあらゆる場面で意思決定ができることを意味する。つまり、健康に関する決定、金銭および財産に関する決定、個人生活および地域社会に関する決定が下せるということだ。決める権利は国連障害者権利条約の心臓部とされている。なぜなら、決める権利を持つことは、他のすべての権利の保障に重要であるからだ。政策決定がなされる場で、知的障害のある人々の意見に耳を傾けてもらうには、まず、彼らの声が日々の生活の中で聞き入れられ、認められなければならない。

知的障害のある人々は通常、以下の2つの理由から、意思決定の機会を否定されていると言われる。第一に、彼らの「能力(キャパシティ)」に関する先入観や通説および偏見と、ときとして彼らの意思疎通を阻む障壁のため、第二に、彼らの生活にかかわりのある対人ネットワークが、近親者やサービス提供者に限られているためである。決める権利の実施について、第12条に関する意識、第12条のわかりやすさ、第12条に対する理解、決定を実施に移す法的能力である行為能力、適切な保護措置、コミュニケーション、困難な状況における支援付き意思決定、地域社会における支援、現在実施されている、知的障害のある人の代わりに別の人物が決定する代替的意思決定から、支援付き意思決定への移行の漸進的実現など、多くの疑問点と課題が明らかにされている。

これまで発行された、貧困撲滅、インクルーシブ教育、地域社会で生活する権利に関するグローバルレポートを踏まえ、この報告書では、知的障害のある人々が家庭や地域社会で自分自身の人生を方向付ける平等な権利を認められ、尊重され、支援されなければ、これらの広く共有されている目標の実現は不可能であることを実証する。

知的障害のある人々がこの基本的な権利を実現するには、態度の変容、政府および地域社会による支援方法の変更、法制度の改革、公共政策の転換、支援付き意思決定のネットワークおよびプロセスの開発と法律による承認が必要となる。意思決定に必要な支援を提供することなく、単にあらゆる形態の代替的意思決定を廃止するだけでは、実質的には、知的障害のある人々から意思決定の力を奪うことになるであろう。

インクルージョン・インターナショナルは、決める権利を推進するために、以下の勧告と結論を表明する。

  • エンパワメント、本人活動(セルフアドボカシー)、集合的な意見の強化に力を注ぐ。
  • 相互依存を認める。
  • 家族には、支援付き意思決定に必要な社会的つながりを構築するために果たすべき重要な役割がある。
  • 家族を基盤とする組織は、地域社会における変革の主体として主導的な役割を果たさなければならない。
  • 決める権利は、地域社会へのインクルージョン抜きには達成できない。
  • 決める権利は、後見制度と代替的意思決定の廃止にとどまらない。
  • 法改正は、地域社会による支援および意思決定のための支援の構築に向けた戦略と、歩調を合わせて進められなければならない。

インクルージョン・インターナショナルは、知的障害のある人々の現実の日常生活における決める権利の推進に、この報告書をもって貢献する。