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第2部
流れを変えるには

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第4章
代替的意思決定から支援付き意思決定へ

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障害者権利条約の交渉中、当事者と家族から成る代表団を派遣したインクルージョン・インターナショナルは、第12条の策定において中心的な役割を果たした。

インクルージョン・インターナショナルによって明らかにされた4つの重要な優先事項の1つである法的能力1は、最も交渉が困難な条文の1つでもあった。インクルージョン・インターナショナルの会員同士、障害のある人々のコミュニティ内、そして、これらのコミュニティと各国政府との間で、見解が大きく異なっていたのだ。インクルージョン・インターナショナルの会員にとって、この問題は明確ではなかった。そこで、インクルージョン・インターナショナルは、法的能力の概念、特に行為能力と絡む、従来の適格性と不適格性の境界線に挑むことに専心した。同時に、多大な支援のニーズがある人々、すなわち、従来の方法での意思疎通を行わない人々や、まったく意思疎通ができないと見なされることがある人々、極めて孤立している人々(施設で暮らしている人々がこれに該当すると言える)、既存の支援ネットワークが利用できない人々、虐待や搾取を受けやすい人々が直面している、極めて現実的な課題を認識した。インクルージョン・インターナショナルの目的は、意思決定能力に関する時代遅れの思い込みに取り組む一方で、第12条でこれらの人々を無視したり放置したりしないようにすることであった。

行為能力とは、特定の取引への参加あるいは別の個人との特定の関係を構築または維持する(例えば、拘束力のある契約の締結、相続、訴訟を起こしたり、起こされたりすること、結婚、養子縁組など)能力(ケイパビリティ)で、一般的には、自分自身の行為により権利を行使するものを言う。2

条約の交渉に参加した各国政府の代表は、法的能力の概念に行為能力が含まれるという考え方に苦労した。つまり、すべての人が権利を持つという考え方は受け入れられたのだが、すべての人がそれらの権利に基づき行動する権利を持つという考え方は、理解しがたかったのである。支援付き意思決定の概念は、法的能力の行使に支援が必要な人々もいるが、このような支援のニーズを理由とする権利の剥奪によって、これらの人々が不当な扱いを受けてはならないという認識から生まれた。また、知的障害のある人々の中には、支援付き意思決定ではない方法での意思決定を望む者もいる。このような人々は、意思決定に何らかの配慮(例えば、時間の延長や、わかりやすい言葉での情報提供など)が必要なだけである場合もあれば、複雑な決定には支援が必要だが、日々の選択には必要ない場合もある。また、最も簡単な決定にさえも、日常的に多大な支援が必要な者もいるであろう。第12条では、意思決定における支援には、意思決定におけるアシスタンス(支援技術、通訳および翻訳などのコミュニケーション支援など)から意思および選択の表明におけるアシスタンス(ピアサポート、権利擁護活動および本人活動など)、さらには、個人のアイデンティティ(希望、期待および人生計画)を他者に伝える際のアシスタンスに至るまで、さまざまな支援が含まれることを認めている。

条約の交渉には、最小限の支援で行為能力が実現でき、明確に意見を述べられる素晴らしい当事者が多数、支援を受けながら参加したが、その一方で、インクルージョン・インターナショナルは、従来の方法では意思疎通ができない人々の現実も、条約に確実に反映させるという義務を負っていた。この集団の行為能力の実現には、家族、友人およびその他の支援者が不可欠であった。他の多くの障害者組織(DPO)は、意思決定で家族が果たす役割について、家族に個人の自律を妨げられ、過小評価された体験から懸念を抱き、これを疑問視していた。スー(Sue)およびチャーリー・スウェンソン(Charlie Swenson)とスーザン(Susan)およびレベッカ・ビーニー(Rebecca Beayni)の参加は、インクルージョン・インターナショナルと、国際障害コーカスおよび国際障害同盟の会員組織との相互尊重の確立と相互理解に極めて重要だった。法的能力に関するあるサイドイベントで、スー・スウェンソンはこう語った。「息子自身に発言させるために、息子を連れて来るべきだとあなたは言いましたよね。こちらがチャーリーです。この会議についてどう思っているか、どうぞ息子に聞いてください。この会議が終わったら、チャーリーを昼食に連れて行って下さい。そして、チャーリーが何を食べたいと思っているのか、あなたが判断してください。」このような難しい課題を示され、また、条約は障害のあるすべての人のために策定されるのだと想起させられたことで、本人の意思を把握する困難に対する理解が深まり、コーカスの会員の間に一種の信頼感が育まれ、知的障害のある人々にとっての支援付き意思決定の意味が、より深く理解されることになった。支援付き意思決定のモデルは、地域社会や国際連合加盟国の支持を得ることに成功した。それは条文の中心となり、交渉者は同意に達することができた。歴史上初めて、法的能力の行使において支援を利用する権利が保障されたのである。3

リカルド・アデア・コロネル・ラモス(Ricardo Adair Coronel Ramos)の訴訟

メキシコは障害者権利条約を批准したが、第12条については留保し(解釈宣言)、国内で議論が開始された。多数の人権団体が、留保撤廃を主張するために障害者団体連合(COAMEX)の結成を支持した。議論の結果、知的障害のある人々の法的能力の権利承認と、自分自身の人生にかかわる意思決定への積極的参加がもたらす影響について、ある程度の認識がもたらされたものの、それは、家族、知的障害のある人々、専門家、サービス提供者、政府官僚および一般社会などの幅広いステークホルダーに広まるほど十分ではなかった。

リカルド・アデア・コロネル・ラモスは、メキシコ知的障害者支援連合(CONFE)の支援を受けた当事者で、メキシコ法廷に対し、条約第12条と矛盾するメキシコの法律の差し止め命令を要求した。この訴訟は、リカルドには自分自身で「ある種の決定を下す」能力(アビリティ)があるという判決が家庭裁判所で下された後に、最高裁判所で審理された。最高裁判所は保護措置の撤廃はせず、障害のあるすべての人々の、アクセシブルな裁判所での審問の権利と、さらに一般的な司法へのアクセスの権利と意思決定における支援の権利の両方を認めた。「決定は、個別化された方法で、つまり、それぞれの事例の特別な分析に基づいて行われなければならない。」

リカルドは現在、メキシコにおけるすべての知的障害のある人々と精神障害のある人々に強制されている代替的意思決定の撤廃に向けて、米州人権裁判所と障害者権利委員会に対し、条約の実施監督を求めるさらなる法的手続きを進めるか否かを思案している。4

支援付き意思決定とは何か

非公式には、誰もが皆人生において、友人、家族、職場の同僚、教師、医師、ロールモデルなどからの情報や支援を受けながら意思決定をしている。知的障害のある人々は、通常、このような方法での意思決定の機会を2つの理由から否定されている。第一に、彼らの「能力(キャパシティ)」に関する先入観や通説および偏見と、ときとして彼らの意思疎通を阻むことがある障壁のため、第二に、彼らの生活にかかわりのある対人ネットワークが、近親者やサービス提供者に限られているためである。

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法的または公式な場では、代理契約協定、司法制度の改正による支援の承認、資金・不動産計画、人中心の計画など、さまざまなメカニズムを通じて、支援付き意思決定が法律で認められている。多くの既存の法的メカニズムと財政メカニズムが、個人の意思と選好の確認に利用できる。これらの手段により、人生における意思決定とその表明を助ける支援の利用を促進し、承認することができる。

支援付き意思決定は、さまざまな形をとりうる。支援者は、該当個人の意向を他者に伝え、その選択を他者が直接理解できるように力を貸す。また、重度の障害のある人にも人生の歴史や関心事、目的があり、法的能力が行使できるのだということを理解してもらうために尽力する。

支援ネットワークの優れたモデルがある一方で、一般に、明確な政策の枠組みはなく、後見制度に関する法律と慣行が、今なお支配的である。また、信頼できる人物が見つけられない場合は特に、支援ネットワークの構築が難しくなる。5

表5:意思決定における配慮と支援の例

「自立」した意思決定
  • 意思決定にかける時間の延長
  • わかりやすい言葉による情報または読みやすい情報
  • 視覚または音声など、複数のフォーマットによる情報
  • 支援技術、通訳または翻訳などのコミュニケーション支援
  • 非公式なアシスタンス
  • 本人の能力構築のための支援
支援付き意思決定
  • ピアサポート
  • 権利擁護活動
  • 個人支援ネットワーク、公式な代理契約協定、意思決定の一部または全部を支援する主要な支援者
  • 支援技術、通訳または翻訳などのコミュニケーション支援
複雑な状況における意思決定 これは多くの人が苦労している分野である。決定が複雑な場合、あるいは、本人が多大な支援を必要としているか、従来のコミュニケーション手段を使用しない場合の支援として、「促進された(ファシリテートされた)意思決定」6を提案する者もいる。

支援付き意思決定モデル

世界には、このようなメカニズムを開発し、導入することに真摯に取り組んできた法域はほとんどない。しかし、支援付き意思決定が実践の場でどのようなものとなるのか、また、このような支援を地域社会でどのように構築していけばよいのかを理解する助けとなる、いくつかの事例と試験的プロジェクトが存在する。

ブリティッシュコロンビア州

ブリティッシュコロンビア州(カナダ)では、代替的意思決定から支援付き意思決定への移行を確実に行うために、一連の法制改革が実施された。改革の重要なポイントは、代理契約協定法の導入であった。代理契約協定とは、自分のことを自分で処理するためにアシスタンスが必要な場合、誰に権限を与えるかを示す法的計画である。代理人は、金銭、法律、パーソナルケアおよび/または医療の問題に対処できる。代理契約協定には、限定協定(簡単な日々の決定に対処)と一般協定(複雑な法律上の問題、パーソナルケアおよび医療の問題に対処)の2種類がある。

代理契約協定法は、以下の能力(キャパシティ)を前提としている。

(1)そうでない旨が実証されるまでは、あらゆる成人は、代理契約を締結し、変更し、あるいは無効にすること、ならびにパーソナルケア、医療および法的事項と、自己の金銭、取引および資産に関する決定を下すことができると推定される。

(2)ある成人が他者と意思疎通を図る方法は、サブセクション(1)で言及されているいかなる内容をも理解することができないと決定する根拠にはならない。

ブリティッシュコロンビア州の事例は、支援付き意思決定を承認し、正式なものとするメカニズムの重要な例を提供するものである。しかし、親と本人は、このようなツールの体験は、支援ネットワークを利用している人々の場合と同様に、支援付き意思決定の原則に忠実に従っているだけにすぎないと語る。このメカニズム(この場合は代理契約協定)は、本人の意思と選好を解釈し、理解する方法に関する難題に回答するものではないし、濫用を免れるものでもない。

ブルガリア、インドおよびチェコ共和国などの他の法域では、地域団体が政府と共同で個人支援ネットワークや、後見制度(あるいは他の代替的意思決定のメカニズム)の下に置かれている人々またはその対象となる危険がある人々の地域社会へのインクルージョンに向けた戦略を開発している。孤立し、隔離されている人々に対して否定されてきた社会的・個人的ネットワークの構築は、支援付き意思決定の中核となる機能であり、かつ、主要な課題でもある。

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代理契約協定は、ブリティッシュコロンビア州の成人が、個人的な計画に利用できる法的文書である。これにより、1人以上のパーソナルサポーターに自分の代理人としての権限を与え、自分のことを処理する際に支援してもらうことができる。また、病気やけがのとき、あるいは障害を負ったときに、必要に応じて、代わりに意思決定をしてもらうことができる。

代理契約協定は、支援者や、医療およびパーソナルケアの問題について、自分の代理として行動してくれる人物を任命できる唯一の方法である。日常的な金銭問題の処理も対象とすることができる。

代理契約協定法は、市民と地域団体によって開始された法改正の成果である。代理契約協定法の目的は、1)現在支援を必要としている成人を対象とした、成年後見制度の法的代替策の提供と、2)将来に向けた計画を可能にすることである。代理契約協定法は、2000年2月に発効した。7

ブルガリアとチェコ共和国では、家族とは疎遠な人々、施設で暮らしている人々あるいはその他の疎外されている人々のための支援ネットワークの開発を目的としたプロジェクトを通じて、これらのネットワークを促進し、構築する方法が模索されている。インドのデモンストレーションプロジェクトでは、多数のコミュニティで、本人による発言を支援し、地域社会によるサポートを開発する取り組みが進められている。支援付き意思決定を進めるパリヴァーのアプローチでは、(地域社会において、また、ときには家庭内でも)疎外されてきた人々が、個人のアイデンティティを育み、社会資本を築けるよう支援する際には、本人と家族および地域社会に焦点を合わせることが重要であることが実証された。インクルージョン・ヨーロッパによる、欧州知的障害のあるピア・サポーター研修(TOPSIDE)プロジェクト(第5章を参照)と同様に、パリヴァー(訳注 インドのインクルージョン・インターナショナル会員)のプロジェクトでは、アイデンティティの構築と、本人による意思決定が可能であることの証明には、ピアサポートが重要な要素となることが実証されたのである。さらに、プロジェクトの取り組みでは、日々の小さな決定から意思決定能力の構築を始めることの重要性も示唆されている。

ブルガリア

ブルガリア知的障害者協会(BAPID)は、支援付き意思決定という代替制度の導入により、ブルガリアにおける知的障害のある人々の法的能力と市民権の問題に取り組んでいる。BAPIDは、ブルガリアでは新しい、支援付き意思決定の原則に基づくアプローチによる、個別計画と個人支援ネットワークの開発を中心とする2件のプロジェクトを実施してきた。支援ネットワークは、成人当事者の同意なしには任命されない。成人当事者と支援ネットワークとの間には信頼関係がある。支援ネットワークは成人当事者の代理として行動するのではない。支援任務を担う者は、成人当事者が決定を下し、伝えるための支援とアシスタンスを提供する。さらに、成人当事者を虐待や搾取から保護するための保護措置も設けられている。BAPIDは、知的障害のある人々が法的能力を行使できるよう支援し、同時に、知的障害のある人々とその家族、支援者および支援団体が、法的能力の権利を促進し、支援付き意思決定に向けて地域に根差した実践的なアプローチを実施するための能力構築の手段を、開発し、検証したいと願っている。プロジェクトでは、政策および計画の状況と、ブルガリアにおける現在の政策、計画およびサービス提供の枠組みを転換するに当たり、重要な課題を明らかにすることも目的としている。

インド

支援付き意思決定に関するプロジェクトを通じて、インクルージョン・インターナショナルの会員であるパリヴァーによって全国的に展開されている活動と、ケララ州で実施されている活動は、ともにピアサポートを重視しており、障害のある人のアイデンティティ確立において、支援付き意思決定が重要な要素であることが証明されつつある。プロジェクトの実施を通じて、個人が人として認められ、敬意をもって扱われるようにならない限り、本人を意思決定者と見なすことは、多くの者にとって飛躍しすぎていて難しいことが明らかになった。

法的能力に関する法改正の取り組みをめぐる対話では、パリヴァーの主導による国レベルと、支援付き意思決定プロジェクトにかかわりのある家族、本人および地域のステークホルダーなどの地域レベルとで、大きな違いが見られる。法改正に関する全国的な議論の参加者は知識が豊富で、権利に基づく文言や支援付き意思決定の概念を用いることができる。しかし、奥深い問題や地域に根差した解決策についての知識や理解はそれほど深くない。一方、ケララ州の支援付き意思決定プロジェクトに参加した家族、本人および地域のステークホルダーは、必ずしも権利に基づく文言を使用するわけではない。しかし、支援付き意思決定の重要性と、それを機能させるために必要な状況について、法改正の取り組みにしかかかわっていない参加者よりも、深い理解を示す。

プロジェクトに参加した当事者は、自分の人生は自分で決めたいという希望を語った。「私は本当の気持ちを伝えたいのです」と若い女性は口にした。「給料をもらったら、自分で管理します。」別の当事者は、「仕事を持っている女の子と結婚したいと思っています」と打ち明けた。ある若い女性は、もっと自立した生活をするという決心を、母親がどのように聞き入れてくれたか、そしてどのように助けてくれているかを説明した。

親と専門家は、認識が変わったことを明らかにした。ある親は、「このプロジェクトの前は、〔知的障害のある人々に〕権利があることを、皆知りませんでした」と語った。

支援付き意思決定に関する政策改革の取り組みには、本人と家族の現状を深く知ることが役に立つ。世界的にも、支援付き意思決定ネットワークの確立に向けた重要な課題は、この支援ネットワークに参加する者を特定することであった。ケララ州で進められている計画では、政府を通じて支援ネットワークの開発を始める方法が模索されている。このアプローチについて、支援ネットワークの過剰な形式化や専門化の危険性に懸念が示されてきた。しかし、それは革新的なアプローチであり、モニタリングとリスク軽減戦略により、これまで指摘されてきた重大な障壁を解決することは可能であろう。

チェコ共和国

インクルージョン・チェコ共和国のブラック・アンド・ホワイト試験的プロジェクトは、障害のある人々の生活と意思決定における長期的な支援メカニズムの創造を目的としている。この活動はおもに、支援の輪がある人々および支援の輪を拡大しつつある人々の、人間関係の強化とコミュニケーションの促進に焦点を合わせている。本人の関心事や趣味に基づき、インクルージョン・チェコ共和国は、これらの関心事がどこで体験・共有できるか、本人が地域社会での生活にどのように参加し、新しい人々と出会い、新しいことを一緒に行い、希望を実現できるか、マッピングをしてきた。支援の輪の創造が変化を求めるニーズと一致するとき、また、本人が満足しておらず、何か違うことを模索しているときに、一番の成功談が生まれる。

参加者の中には、支援の輪を既存の人間関係の上に築く者もいる。支援メカニズムを創造する際のおもな障害は、本人または家族の態度であることが多い。変化や意思決定の準備が常にできているわけではないのだ。意思決定における支援メカニズムの創造は、それが理論にとどまっている限り、意味をなさない。一方、本人の生活における日々の決定のためのメカニズムですら、現時点で存在しないことがある。

インクルージョン・チェコ共和国は、プロジェクトを通じて、ソーシャルワーカーのみで構成されている支援の輪にいくつか遭遇した。たとえ信頼できる相手であり、友人であっても、このような支援の輪はバランスが悪い。また、家族だけで構成されている支援の輪も存在する。どちらも、現実の友人と同世代の仲間が欠けている。家族、友人、同世代の仲間および専門家で構成された、バランスのよい支援の輪は少ない。目標は、バランスのとれた、独立した強力な支援の輪の確立である。

プロジェクトの中で、より多くの人々と協力できるように活動を拡大することが役に立つことがわかり、プロジェクトは他の組織にも開放された。インクルージョン・チェコ共和国は現在、精神障害のある人々の支援団体など、プロジェクトの枠組みに参加している会員組織との活動に関心を持つ11の組織と協力している。このような連携により、方法を検証し、より多くの人を対象とした今後の研修に役立つツールを作成する機会がもたらされた。さまざまな分野からコミュニティ・コネクターが参加したことも、支援の輪の安定性と有効性の確保につながっている。当然、これはプロジェクトで最も困難な部分である。人の「マッチング」は難しく、ライフイベントは予測できないからだ。しかし、それらは人間関係や、人間関係の喪失に影響を与える可能性がある。

条約の中心的な概念としての第12条の採択は、根本的な概念の転換を反映しており、この転換の実現には、複雑な社会変革が必要となる。この転換が、法律における代替的意思決定に関する規定を撤廃または制限する法改正から開始された法域もあれば、文化的・草の根的意識向上運動、地域社会による教育、支援付き意思決定メカニズムの開発を通じて開始された法域もある。意思決定の権利実現に向けた道は、さまざまな形で始まるが、明白なのは、意思決定のための支援の構築が、地域社会レベルでも政策レベルでも優先されなければならないということである。