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付録1
決める権利に関するグローバルレポートへの貢献(世界調査参加国および参加者一覧)

イベント 国/地域 組織 貢献内容
インクルージョン・アフリカ地域会議
(ケニア ナイロビ)
ケニア、ジンバブエ、エチオピア、南アフリカ、ナミビア、ウガンダ、ザンジバル、カナダ、レソト、アメリカ合衆国、ガーナ、モーリシャス、ベニン、マラウィ インクルージョン・アフリカの会員組織 決める権利に関する議論と、司法制度の利用に関する円卓会議
インクルージョン・MENA地域会議
(アラブ首長国連邦 シャルジャ)
バーレーン、ドバイ、エジプト、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モーリタニア、パレスチナ、シャルジャ、チュニジア、イエメン インクルージョン・MENAの会員組織 決める権利と市民の参加に関する議論
インクルージョン・ヨーロッパ当事者会議
(クロアチア ザグレブ)
ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カナダ、クロアチア、チェコ共和国、フィンランド、フランス、ハンガリー、レバノン、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、モルドバ共和国、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、スロベニア、英国、アメリカ合衆国 インクルージョン・ヨーロッパの本人  
決める権利に関するオンラインセミナー アルゼンチン、ボリビア、カナダ、スイス、コロンビア、エクアドル、ニカラグア、メキシコ、ペルー、スペイン インクルージョン・インターアメリカーナ  
本人活動に関するオンラインセミナー アルゼンチン、ボリビア、カナダ、コロンビア、チェコ共和国、エクアドル、ニカラグア、メキシコ、ペルー、ポルトガル、スペイン インクルージョン・インターアメリカーナ 以下の機関がベストプラクティスを紹介:コロンビアのアスダウン(Asdown)、メキシコのCONFE(Confederación Mexicana de Organizaciones en Favor de la Persona con Discapacidad Intelectual, México)、アルゼンチンのアズール協会(Asociación Azul)、エクアドルのFEPAPDEM、およびインクルージョン・ヨーロッパ
イベント 国/地域 組織
グループディスカッション アルゼンチン APAD - Asociación de Promoción y Ayuda al Discapacitado, Argentina
ASDRA - Asociación de Síndrome de Down de la República Argentina,
アズール協会(Asociación Azul)
ボリビア 社会経済開発研究センタ
(CEINDES-Centro de Investigacion para el Desarrollo Socio Economico)
カンボジア Rose
チリ Colegio Educación Especial la Espiga Comuna Puente Alto
コロンビア アスダウン(Asdown)/ボゴタ(Bogota)
ファンダウン・カリブ(Fundown Caribe)/バランキヤ(Barranquilla)
コスタリカ ASCODI - Asesorías y Consultorías en Discapacidad, Costa Rica
CNREE - Consejo Nacional de Reabilitación y Educación Especial de Costa Rica
エルサルバドル Paraíso Down
Centro de Estimulación y Terapias
ホンジュラス 全国障害者親の会
(FENAPAPEDIS- Federacion Nacional de Padres de Personas con Discapacidad de Honduras)
インド パリヴァール
(Parivaar-National Confederation of Parents' Organizations India)
日本 全日本手をつなぐ育成会
レバノン レバノン本人協会
(LASA -Lebanese Association for Self-Advocacy)
マラウィ PODCAM – Parents of Disabled Children Association of Malawi
メキシコ 知的障害者支援連合
(CONFE-Confederacion Mexicana de Organizaciones a favor de la Persona con Discapacidad Intelectual, A.C)
Associación para Autismo y Desarrollo Integral, A.C.
Centro Cultural Xalostoc
Centro de Adiestramiento Personal y Social, A.C
Centro de Atención Múltiple del Estado de México No. 10
Centro de Educación Especial e Integración Social Kandinsky. S.C
Centro de Habilitación e Integración para Invidentes, I.A.P.
Consruyendo Puentes
Fundación Por Una Inocencia Feliz, A.C.
Group Integración, A.C
Integración Down
Kadima
Olimpiadas Especiales
ミャンマー School for Disabled Children, Yangon, Myanmar
ニュージーランド IHC
ニカラグア ASNIC – Asociación Nicaragüense
パラグアイ APDIR – Asociación de Personas con Discapacidad, Padres y Amigos, Paraguay
Asidown – Asociación Síndrome de Down, Paraguay
FEPANE – Federación Paraguaya de Padres de Personas con Necesidades Específicas
英国 ピープル・ファーストUK
(People First UK)
ペルー Asociación Aquí Estamos,
Patronato Peruano de Rehabilitación,
Sociedad Peruana de Síndrome de Down
スペイン スペイン知的障害者団体連盟
(FEAPS-Spanish Confederation of Organizations for Persons with Intellectual Disability)
ANFAS – Asociación Navarra en favor de las Personas con Discapacidad Intelectual, FEAPS Cantabria, Ampros-Alumnos de Programa de Capacitación Profesional Inicial, ÁVASO-Autogestores veteranos, Grupo LÚPAR, Centro de Educación Especial Dr. Fernando Arce, FEAPS Comunidad Autónoma de Ceuta
アメリカ合衆国  
ザンジバル ザンジバル発達障害者協会(ZAPDD)
イベント 国/地域 組織
パーソナルストーリー アルゼンチン アズール協会
(Asociacion Azul)
コロンビア Red de Familias por el Cambio
ブルガリア ブルガリア知的障害者協会
(BAPID– Bulgarian Association for Persons with Intellectual Disabilities)
エクアドル 知的障害者心理教育支援財団
(FASINARM–Fundacion de Asistencia Sicopedagogica para Ninos Adolescentes y Adultos con Retardo mental)
エジプト Help Center
ハンガリー ÉFOÉSZ – The Mental Disability Advocacy and the National Association of Helpers, Hungary (Értelmi Fogyatékossággal Élök és Segítöik Országos Érdekvédelmi Szövetsége)
日本 全日本手をつなぐ育成会
メキシコ 知的障害者支援連合(CONFE)
スペイン バルセロナ Fundación Catalana de Síndrome de Down SOM,
Fundació catalana tutelar Aspanias
ペルー Patronato Peruano de Rehabilitación
イベント 国/地域 組織
支援付き意思決定イニシアティブ バルセロナ Fundación Catalana de Síndrome de Down
ブルガリア ブルガリア知的障害者協会(BAPID)
ハンガリー ÉFOÉSZ
タポルカにおける支援付き意思決定に関する試験的プロジェクトから得られた体験
インド カサルゴルドおよびコチ、ケララ パリヴァール(Parivaar)
スペイン スペイン知的障害者組織連盟(FEAPS)
台湾 知的障害者親の会
(PAPID–Taiwan Parents' Association for Persons with Intellectual Disability)
アメリカ合衆国 ミシガン州 アーク
(The Arc of Michigan)
アメリカ合衆国 テキサス州サンアンジェロ アーク
(The Arc of San Angelo Texas)
イベント 組織
調査 ニュージーランド IHC
ケニア 知的障害者協会(KAIH–Kenya Association for the Intellectually Handicapped)
チョーズン・パワー(ピープル・ファースト香港)(Chosen Power (People First Hong Kong))
台湾 知的障害者親の会(PAPID-Parents' Association for Persons with Intellectual Disability Taiwan)
イスラエル 全国知的障害者・児ハビリテーション協会(AKIM) – Israel Family and Community Services
全日本手をつなぐ育成会
コンゴ CONGO HANDICAP ASBL
スペイン ガリシア4地域に拠点を置く知的障害者協会連盟(FADEMGA FEAPS GALICIA– Federation of Associations in favor of Persons with Intellectual Disabilities located by the four Galician provinces)
フランス 国家社会施設および医療社会施設・サービス評価局(ANESM-National Agency for Evaluation and quality of institutions and social and medico-social France)
エクセレンス・イン・アクション (Excellence in Action)
スペイン 知的障害者組織連盟(FEAPS)
スロバキア共和国 知的障害者支援協会
インド MUSKAAN
知的障害者の地位向上を図る親の会(Parents Association for empowering persons with intellectual disability)
コロンビア 黎明財団(Fundacion Amanecer)
コロンビア ファンダウン・カリブ(Fundown Caribe)
スペイン 知的障害者協会(AFANIAS– Association for Persons with Intellectual Disabilities Spain)
ホンジュラス 全国障害者親の会(FENAPAPEDIS)
ボリビア 社会経済開発研究センター(CEINDES)
エクアドル 知的障害者心理教育支援財団(FASINARM-Centro de Investigacion para el Desarrollo Socioeconomico)
エクアドル 知的障害、自閉症、脳性まひおよびダウン症の人々のための専門ケア連盟(FEPAPDEM)
メキシコ 知的障害者支援連合(CONFE)
イベント 国/地域 組織
インタビュー カナダ コミュニティ・リビング・オンタリオ
カナダ インクルージョン・ブリティッシュコロンビア
カナダ ニューブランズウィック地域生活協会
カナダ アルバータ地域生活協会
ニュージーランド IHC
英国 メンキャップ
ドイツ レーベンスヒルフェ(ドイツ知的障害親の会)
メキシコ 知的障害者支援連合(CONFE)
アメリカ合衆国 アーク
アメリカ合衆国 全米発達障害サービスステートディレクター協会
(NASDDDS: National Association of State Directors of Developmental Disability Services)
イスラエル 全国知的障害者・児ハビリテーション協会(AKIM)

付録2
インクルージョン・インターナショナル
法的能力に関するポジションペーパー

障害者権利条約では、以下を認めている。

  • 障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
  • 障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。
  • 障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置をとる。

背景

知的障害のある人々にとって、自己決定と完全な市民権は、人権享有の可能性を根底から支える基本原則である。自己決定と完全な市民権の行使を可能にするのは、法的能力という前提である。

後見法では、一部の人々が法的拘束力のある決定を下す能力(キャパシティ)がないと見なされ、代替的意思決定の規定が設けられている。

支援付き意思決定とは、意思決定の権利を放棄することなく、意思決定にかかわる支援を受けられることを意味する。支援付き意思決定により、情報を理解し、自分の選好に基づく決定を下すことができるようになるのだ。知的障害のある人は、読むことに助けが必要であったり、意思決定のために注意を集中することにサポートが必要であったりする。言語による意思疎通ができない人は、信頼できる人(々)に、自分の非言語コミュニケーション(肯定または否定を示す身体反応、拡大・代替コミュニケーションの利用など)を通訳してもらうことがある。

見解

インクルージョン・インターナショナルは、知的障害のあるすべての人が、意思決定の権利を認められ、意思決定に必要な支援を受ける権利を持つことを要求する。

法的能力の権利には、権利を有する能力(キャパシティ)と、他者と法的契約を結ぶ能力(キャパシティ)など、それらの権利に基づいて行動する行為能力が含まれる。行為能力は、第12条で保障されている法的能力の一部を構成しているだけではない。それは、意思決定の権利という、最も決定的な部分を構成しているのである。以下に、インクルージョン・インターナショナル(II)の会員組織による、支援付き意思決定モデルの開発を支援する取り組みと、第12条の実施を推進する各国政府との共同の取り組みにおいて、活動の指針となる包括的な原則と重要な要素を示す。

  • 第12条は条約全体の一部分として実施されなければならない。法的能力行使の権利には、条約の他の条文が影響を与える。
  • すべての人が意思を持ち、それは、適切な支援があれば見極められる。
  • 法的能力の行使には、支援を受ける権利が必要である。
  • 支援を受けることは、完全な法的能力を否定するものではない。
  • 他の関係者(医師/弁護士/銀行家/契約者など)には、配慮義務がある。
  • 適切な措置とは、非公式・公式な支援とも、さまざまな形を取りうること、また、これらを個人の状況に合わせて調整しなければならないことを意味する。
  • すべての人は独力で法的能力を行使できるということが前提となる。
  • 自立して行動する能力(キャパシティ)が、法的関係および契約において疑問視される場合、他の者との平等を基礎として適用される検査は、障害に左右されないものでなければならない。いかなる検査においても、支援と配慮がなされてきたか、また、他の関係者の責任が果たされてきたかが問われる。

支援付き意思決定の措置がまだ導入されていない場合、および、個人の完全な法的能力を行使する権利が実現されていない場合、締約国は、個人が自分の人生において意思決定できるように、地域社会の能力構築のための支援を開発し、導入する措置をとらなければならない。

現時点で代替的意思決定が存在する場合、第12条に即した法律、政策および慣行の改正と支援付き意思決定の実施に時間がかかることがある。代替的意思決定を制限するための法改正および新たな規定として、以下を含む緊急の措置がとられなければならない。

  • 個人の権利、意思および選好を尊重する手段を確保した保護措置
  • すべての人が法的能力を有することの確認
  • 支援提供にかかわるすべての手順の明示
  • 個人に対する最小限の制約
  • 特定の事項およびそれに関する決定/その時点にのみ適用される措置
  • 利益相反がないこと
  • 可能な限り最も短い期間での適用
  • 決定の種類(金銭にかかわる決定/個人的な決定)と意思決定のプロセスの区別
  • 無能力の廃止と法的能力の行使における支援提供の手順に関する規定

付録3
法的能力に関する条約アクショングループ

支援付き意思決定制度の策定:対話の手引き

2009年2月

序論

条約第12条では、障害を理由に差別されている人々の完全かつ平等な法的能力を、締約国が認めなければならないと定めている。また、法的能力の行使の際に支援を受ける権利を、締約国が認めなければならないとも定めている。

支援を受ける権利を認めるには、知的障害およびその他の障害のある人々が支援付き意思決定を利用できるようにするための、新しい法律、政策、計画および行政制度の導入が必要となる場合がある。現在2、3の法域で実施されている支援付き意思決定制度のいくつかの要素が例としてあげられ、その多くをたたき台とすることができる。

支援付き意思決定を全面的に実施する、より総合的な制度の策定には、実践上の問題が多数伴う。インクルージョン・インターナショナルは、これらの制度の策定方法について、公開討論を促したいと考えており、実験とデモンストレーションを奨励している。各国独自の法的伝統と、多様な市民社会と政府の状況に対応するには、文化的に適切で、それぞれの状況に即した制度の設計が必要だと、インクルージョン・インターナショナルは考えている。

支援付き意思決定制度の開発に関する公開討論を促進するために、インクルージョン・インターナショナルは、2008年11月の総会において、支援付き意思決定の開発に関する原則と方向性の枠組みを採択した。以下の文書は、支援付き意思決定制度の策定における「対話の手引き」を補完することを意図している。その目的は、支援付き意思決定制度の策定方法に関する公開討論への、インクルージョン・インターナショナルの会員組織、連携関係にある障害者組織、他の市民社会団体および専門団体、各国政府の参加を支援することである。インクルージョン・インターナショナルは、このような制度を通じて、知的障害およびその他の障害のある人々の完全かつ平等な法的能力の促進と尊重を確保するには、開かれた対話が必要であると考えている。

この『手引き』は、政策対話の構築、分析、調査研究および効果的かつ信頼のおける支援付き意思決定制度の設計に利用できる一連の質問を提供するものである。

対話に利用できる質問

1.法的能力の承認および個人的な意思決定の支援を受ける権利の承認の確保に向けて、法律と公共政策において、どのような基準を設けるのか?

第12条では、締約国に対し、障害に基づく差別をせずに完全な法的能力を承認する措置を導入することを義務付けている。また、個人的な意思決定に支援を受ける権利を認める措置も義務付けている。このような承認は、法律および公共政策において、どのように制度化されるのだろうか? これらの権利の原則と承認に関する法的規定、法的能力の基準の改正、および/または具体的な政策綱領によって行われるのか?

2.個人的な支援付き意思決定ネットワークを通じて提供される支援を含む、法的能力行使における支援は、どのようにして承認されるのか?

支援は、特定の個人が法的能力を行使する際に必要な支援として適切なものを提供しなければならない。適切な支援は、通訳、コミュニケーション機器、わかりやすい言葉による情報、あるいは、身の回りの世話や医療、金銭および財産についての意思決定を支援してくれる、信頼のおける人物や複数の人物からなるネットワークなど、多種多様な形態をとりうる。このような人物またはネットワークは、これらの決定を実行するための他者との契約締結(特定の場所に住むという決定を実行するための賃貸契約など)において本人の代理を務め、支援することができる。

他者との契約締結は、すべての関係者に権利と義務を課す法的能力の行使であることから、法的能力の行使を支援するために任命される特定の人物が、おのずと公式かつ法的な承認を確保できるようにすることが重要である。契約にかかわる他の関係者は、他者との法的契約の締結において障害のある人を支援し、および/または、その代理を務める権限を与えられたのは、いかなる対立をも避けるために任命された特定の人物あるいはネットワークであることを知る必要がある。

それゆえ、支援付き意思決定制度の考案においては、支援者または支援ネットワークの承認方法を問うことが重要である。承認は、本人と支援ネットワークとの合意により、非公式に行われるのか? あるいは、より公式なアプローチが採用されるのか? つまり、支援者/支援ネットワークを公式に承認してもらうために、弁護士の所や裁判所に行くのか?

3.本人または支援者は、支援付き意思決定ネットワークの構築に当たり、どこへ行けばアシスタンスを受けられるのか?

意思決定にアシスタンスが必要となる可能性がある障害のある人々は、地域社会で孤立しているか、あるいは、他者との接触がほとんどない施設で暮らしていることが多い。高齢の親や家族と同居している人も多いが、これらの親や家族は、自分たちがまったく援助できなくなった後の、家族の一員である障害のある人の行く末を心配している。意思決定におけるアシスタンスを、法的能力を支援し保持する形で提供し、代理を務めてくれる、信頼できる人々からなるネットワークの構築には、通常、意識的な努力が必要となる。

望ましい代理と支援付き意思決定には、障害のある人に「信頼されている」人物の存在が不可欠である。したがって、人生の大部分を孤立した状態で過ごしてきた人々にとっては、まず他者との信頼関係を築くことが第一歩となるであろう。何らかの方法での、そのような関係のファシリテーションが必要となるが、この実現には時間がかかり、リソースを要する。そのような関係が築かれれば、支援付き意思決定の実施方法、支援付き意思決定ネットワークで発生する可能性のある対立の仲裁方法、そして、意思決定において、代替的意思決定者となることなく本人の代理を務め、彼らを援助する最善の方法についての情報とバックアップも必要となる。

信頼のおける人間関係と支援付き意思決定ネットワークの構築および維持において、このようなファシリテーションとアシスタンスを提供する際の選択肢は何か? 地域社会の既存のリソースは利用できるのだろうか? このような支援の導入を確保するという締約国の義務を果たすために、どのようにして資金を調達し、このリソースを広く利用できる形にするのだろうか? このようなリソースは、政府とは無関係で、アシスタンスの提供に当たり、いかなる利益相反もないことが理想である。

4.支援ネットワークはどのように監視されるのか?

支援付き意思決定ネットワークは、支援とアシスタンスを伴う、継続的で信頼しあえる介助関係を基本とすることが理想である。しかし、システムの設計においては、そのような人間関係は破綻する可能性があると認識しておくことが重要である。障害のある人々は、他の大半の集団に比べて、他者による暴力と虐待を体験する可能性がはるかに高いこと、しかも、ほとんどの場合、これは身近な人によるものであることを示す証拠が多数ある。このため、独立した抑制と均衡のシステムを導入することが重要である。これにより、公認の支援ネットワークにおける自分の立場を利用して、障害のある人を虐待したり、その財産や金融資産を悪用したりするメンバーから、彼らを保護することができる。

支援ネットワークはどのように監視されるのか? 監視者はどのようにして任命され、彼らの権限はどこまで及ぶのか? 抑制と均衡のシステムとは何か?

5.本人が支援ネットワークによる放任または虐待を受けていると懸念される場合、どこに行けばいいのか?

1人または複数の支援付き意思決定ネットワークのメンバーによる虐待を受ける危険が本人にある場合、監視者はどの組織に訴えればいいのか? 公式に任命された監視者以外の人々には、ネットワークによる本人虐待疑惑の報告において、どのような選択肢と責任があるのか? 虐待疑惑の報告は義務なのか、それとも任意なのか? これらの報告に対応するために、どのような機関によって、どのような措置が取られるのか?

6.第三者(医師、銀行など)は、支援付き意思決定プロセスを通じて有効な同意が得られていないという懸念がある場合、どこに行けばいいのか?

支援付き意思決定は、完全な法的能力を可能にする。しかし、この方法による意思決定は、自立して行動していると考えられる本人と契約を結ぶこと、あるいは、このような本人から同意を得ることに慣れてしまっている医師、住宅当局/家主、弁護士、金融その他の専門家にとっては、目新しいだろう。ときには本人の代理を務め、彼らの独自のコミュニケーション形態を通訳しなければならないこともある支援ネットワークが関与している場合、このような意思決定プロセスにおける第三者は、支援付き意思決定ネットワークの代理人を通じて本人と結ぶ契約が、本当に有効なのかを疑う正当な理由を持つと言える。

第三者は、支援付き意思決定ネットワークが代理として伝える本人の希望と意向が、本人との契約締結の根拠として適切であるという確証を得たいとき、どこに行けばよいのか? ネットワークが本人について誤って伝えたという理由で、後に無効として取り消される可能性のある契約を締結し、責任を追及されることから身を守るために、第三者にはこれを行う正当な権利と当然の懸念がある。障害のある人々も、他の関係者が彼らとの契約締結に当たり十分な確信を持てるようにすることで、利益を得られる。

7.支援ネットワークのメンバーが、本人にアドバイスを提供する場合、または、他者との契約の際に本人の代理を務める場合の法的責任は、どのように保護されるのか?

支援ネットワークのメンバー候補者は、自分が本人の代理として結ぶ契約に関して、個人的に責任を負うことになると考えた場合、支援付き意思決定ネットワークのメンバーとして公式に承認されることを躊躇する可能性がある。支援ネットワークのメンバーが、このような責任の追及から身を守ることができる方法は何か?

8.本人が支援ネットワークあるいは、支援ネットワークのメンバーとの代理契約を無効にする(本人の代理としての支援者の役割を停止する)には、どのようにしたらよいのか?

支援ネットワークのメンバーとの関係は、時間の経過とともに変化する可能性がある。活動を継続するメンバーもいれば、個人的な理由でネットワークから去るメンバーもいる。本人が、ネットワークの1人または複数のメンバーとの関係を終わらせたいと望むこともあれば、本人自身がネットワークに参加してほしいと望んでいる人々と、新たな関係を築くこともある。このように、ときには支援付き意思決定ネットワークのメンバーとして承認されている人物を変更しなければならない。本人は、どのようにしてネットワークのメンバーの一部または全員の任務を解き、新たなメンバーを任命するのか? どのような手順が必要なのか?

9.後見制度を利用している者は、どのような方法/プロセスで、支援付き意思決定に移行できるか?

支援付き意思決定は、代替的意思決定とは異なる法的地位(完全な法的能力)を提供する。このため、現在、被後見人という法的地位にある人々は、支援付き意思決定ネットワークの導入により、どうすれば再び完全な法的能力を獲得できるのかを、システム設計時に問うことが重要である。どのような手順で行うのか? ある法的地位から別の法的地位への移行は、どの時点で発生するのか? また、それはどのようにして認定されるのか?

10.障害のある人が、他者のアシスタンスや支援を受けずに法的能力を行使できることを認めてもらいたいと考えた場合、どうなるのか?

障害のある人々の中には、他者に意思決定の援助をしてもらう必要はないと考える者もいれば、公認の支援付き意思決定ネットワークを望まない者もいる。本人が独力で、つまり、他者による公認のアシスタンスを受けることなく、法的能力を行使する権利を尊重することが不可欠である。誰に対しても、支援付き意思決定ネットワークを強制してはならない。それは、法的能力の権利の基礎となる自律の尊重という基本原則に反することになる。

一方、障害のある人が契約締結を望む銀行、あるいは法的な同意を与える可能性のある医師は、本人について、他者の支援なしに法的能力を行使できないと考えることがある。そして、本人の意思決定を支援し、その代理を務める他者が関与していない場合、本人との契約締結や、医療に関する同意を受け入れることを嫌がることがある。法的能力の行使に意思決定のアシスタンスが必要であると、関係者や医師が固く信じている場合、本人と契約を結ぶよう、その関係者に強制することは誰にもできないし、医療に関する同意を受け入れるよう、医師に強制することもできないと認めることが重要である。

これらの不一致を解決できる方法は何か?本人は、他者が契約締結を拒む場合、独力で法的能力を行使できることを認めてもらうために、どこに行けばいいのか? すでに指名されている担当当局が、他者の支援なしに法的能力を行使できるという本人の主張に同意しない場合、どうなるのか? 本人が特定の契約を結ぶために、特定の決定について、単発の支援を利用できるように取り計らうことは可能なのか?

11.支援付き意思決定を国のレベルで管理する行政制度(代理契約登録、司法手続き、当局など)は何か? どの当局が、策定、実施および管理に責任を負うのか? 誰が、どのような経費に関する責任を負うのか?

前述の質問1-10には、状況に応じてさまざまな回答がなされるであろう。しかし、それらは皆、支援付き意思決定にかかわる人間関係と意思決定プロセスの設計、認定、監視、検証および変更に、多様なシステムが必要となることを明示するものとなる。これらの質問から明白なように、支援付き意思決定システムの設計には、相互に作用する多数の要素が関与している。したがって、何らかの広範な運営指針が必要となる。また、さまざまな活動を管理する仕組みとシステム、システム関連の文書の作成と認定作業も求められる。

支援付き意思決定にかかわるさまざまな手順と相互作用のために導入される多様な管理機構とは、どのようなものであろうか? 予算はどの程度必要で、必要なシステムの設計と実施には、誰が責任を負うのか?