甲賀地域障害者福祉計画
No.1
平成8年6月
滋賀県・石部町・甲西町・水口町
土山町・甲賀町・甲南町・信楽町
項目 | 内容 |
---|---|
立案時期 | 平成8年6月 |
計画期間 | 平成8年~平成12年(5年間) |
目次
第3章 甲賀地域障害者生活支援構想の基本的な考え方と推進方策
第1章 計画の策定にあたって
甲賀郡では、「滋賀県新社会福祉計画」に基づき、県と町が主体となって地域福祉保健推進協議会“ふれあい甲賀をみんなで進める会”を設置し、障害者の生活支援サービスを整備するなど、さまざまな取り組みを進めてきました。
平成5年12月「心身障害者対策基本法」の一部を改正する法律が施行され、県や町は、障害者基本計画の策定に努めることになりました。
このため、“ふれあい甲賀をみんなで進める会”のこれまでの取り組みを基盤に、障害者の生活により身近な地域で、その時々のライフステージに応じた適切なサービスが総合的に提供できるよう、県と町が関係機関や社会福祉施設・関係団体・親の会等関係者の幅広い参加を得ながら、「滋賀県障害者対策新長期構想」に基づき、甲賀地域-甲賀郡域における「甲賀地域障害者福祉計画」(仮称)を策定するものであります。
この計画は、甲賀地域を対象とし、甲賀郡の7町と県の共同の基本計画として、障害者の総合的な生活支援システムの構築と具体的なサービスの整備を目標とするものであります。
この計画は、21世紀を展望しつつ、2000年(平成12年)を目標とするおおむね5カ年間の施策の方向性を提示するものです。
第2章 甲賀地域の状況
甲賀地域は滋賀県の東南部に位置する甲賀郡の7つの町(石部町、甲西町、水口町、土山町、甲賀町、甲南町、信楽町の各町)から構成されています。
面積は約550k㎡で県全体の面積の約1/7を占めています。
地域人口の状況、障害者の状況は表2-1のとおりであります
表2-1 人口・障害者の状況 (平成7年3月31日現在)
町名 | 人 口 | 老人人口 | 身体障害者 | 精神薄弱者 | 精神障害者 | |
石部町 |
11,748 |
1,020 (8.7)% |
217 | 50 | 22 | |
(2.4)% | ||||||
甲西町 |
39,318 |
3,138 (8.0) |
802 | 125 | 76 | |
(2.5) | ||||||
水口町 |
34,957 |
4,806 (13.7) |
882 | 121 | 79 | |
(3.1) | ||||||
土山町 |
9,753 |
1,760 (18.0) |
327 | 53 | 23 | |
(3.7) | ||||||
甲賀町 |
12,076 |
2,496 (20.1) |
375 | 53 | 22 | |
(3.7) | ||||||
甲南町 |
18,873 |
2,464 (13.1) |
505 | 65 | 51 | |
(3.3) | ||||||
信楽町 |
14,865 |
2,631 (17.1) |
608 | 128 | 29 | |
(5.1) |
||||||
合 計 |
141,590 |
18,315 (12.9) |
3716 | 595 | 303 | |
(3.2) |
(注)・ 障害者数は児童の数も含みます。
・ 精神薄弱者数は療育手帳交付者数を記載しています。
・ 精神障害者数は通院医療費公費負担制度の助成を受けている人数のみ記載しています。
身体障害者に対しては、平成5年度から県から町への権限移譲により各町が援護の実施主体となっています。65歳以上で身体障害者手帳を有する人はショートステイサービス・ホームヘルプサービス・デイサービスを利用していますが、65歳以下の身体障害者でこれらのサービスを利用している人は少ない状況にありますが、甲賀地域には県内に2カ所設置されている身体障害者療護施設の一つである「るりこう園」があり、地元の町を中心に身体障害者のショートステイの受け入れを積極的に行っています。
また、補装具の交付や日常生活用具の給付は、身近な町役場で手続きが可能になったため利用状況は増加の傾向にあります。
表2-2 ホームヘルプサービスの利用状況 (平成6年度)
ホームヘルパー数(人) | 利 用 世 帯 数 | ||||||||||
老人ホーム ヘルパー |
身体障害者 等その他の ホームヘル パー |
被保護世帯 | その他の世帯 | ||||||||
老人 世帯 |
その他 の世帯 |
老人 世帯 |
老人の いる世 帯 |
その他 の世帯 |
|||||||
常 人 |
非 人 |
時 人 |
常 人 |
非 人 |
時 人 |
||||||
石部町 | 3 | 3 | 21 | 10 | 5 | ||||||
甲西町 | 5 | 1 | 2 | 1 | 7 | 24 | 24 | ||||
水口町 | 9 | 14 | 2 | 6 | 42 | 14 | |||||
土山町 | 3 | 10 | 5 | 55 | 32 | 2 | |||||
甲賀町 | 6 | 11 | 5 | 62 | 17 | 2 | |||||
甲南町 | 3 | 2 | 1 | 39 | 41 | ||||||
信楽町 | 4 | 8 | 2 | 1 | 13 | 14 | 1 | ||||
計 | 33 | 3 | 43 | 4 | 1 | 29 | 1 | 256 | 152 | 10 |
(注)常は常勤、非は非常勤、時は時間給のホームヘルパーを示します。
在宅の精神薄弱者に対するサービスは、全般的には遅れている状況にありますが、平成7年1月から信楽青年寮にコーディネーターが設置され、障害者の生活相談やサービス利用者の調整等が図られてきています。在宅サービスとしてショートステイサービスの利用状況は表2-3のとおりです。デイサービスについては、未実施の状況にあります。
また、ホームヘルプサービスについては、平成7年度より甲賀郡各町が共同で社会福祉法人しがらき会へ委託し、ホームヘルパー1名を設置しましたが、併せて平成6年8月よりしがらき会が独自で利用者との私的契約により実施している甲賀郡生活支援サービスも進められており、ホームヘルプサービス等の生活支援サービスの利用希望者が増加している状況にあります。
表2-3 ショートステイサービスの利用状況
施設名 | 年度 | 平成3年 | 平成4年 | 平成5年 | 平成6年 | 平成7年 | |
児童相談所決定分 | 近江学園 | 実件数 | 22 | 7 | 1 | 1 | 1 |
延日数 | 35 | 21 | 4 | 10 | 3 | ||
信楽学園 | 実件数 | 4 | |||||
延日数 | 7 | ||||||
落穂寮 | 実件数 | 1 | 1 | ||||
延日数 | 19 | 6 | |||||
湖東寮 | 実件数 | 1 | |||||
延日数 | 4 | ||||||
彦根学園 | 実件数 | 1 | |||||
延日数 | 2 | ||||||
第一びわこ学園 | 実件数 | 2 | 1 | ||||
延日数 | 13 | 2 | |||||
第二びわこ学園 | 実件数 | 3 | 4 | 8 | 3 | ||
延日数 | 29 | 16 | 35 | 15 | |||
紫香楽病院 | 実件数 | 3 | 2 | 3 | 2 | ||
延日数 | 11 | 5 | 7 | 8 | |||
信楽青年寮 | 実件数 | 1 | 6 | ||||
延日数 | 2 | 15 | |||||
福祉事務所決定分 | 近江学園 | 実件数 | 13 | ||||
延日数 | 76 | ||||||
落穂寮 | 実件数 | 1 | |||||
延日数 | 30 | ||||||
しゃくなげ園 | 実件数 | 1 | |||||
延日数 | 26 | ||||||
信楽青年寮 | 実件数 | 2 | 3 | 23 | |||
延日数 | 55 | 37 | 100 | ||||
合 計 | 実件数 | 29 | 12 | 8 | 22 | 50 | |
延日数 | 122 | 84 | 51 | 111 | 225 |
(注)平成7年度は4月~9月までの上半期の状況です。
精神障害者に対して福祉事務所では、入院等に伴う生活困窮や医療費の支払が困難な場合に、生活保護法が適用されてきました。しかし、民生児童委員や町福祉担当課においても、精神障害者の生活上のさまざまな相談が増えてきており、保健所等の関係機関や施設等と連携を図りながら、生活支援サービスの整備や社会参加活動の促進等の積極的な取り組みが必要となってきています。
甲賀地域には表2-4に示すように、児童福祉施設3カ所、精神薄弱者援護施設7カ所、共同作業所7カ所、身体障害者援護施設2カ所の施設が設置されていますが、精神薄弱児(者)の施設は県内の他の地域と比較して多い状況にあります。
在宅障害児(者)の通所施設として障害児保育の実施状況は、表2-5のとおりでありますが、幼児の発達を支援するため各町で親子教室や7町の共同事業として母子通園事業(こじか教室)を実施しています。更に18歳以上の障害者に対しては通所授産施設や各町ごとに設置されている共同作業所があります。
また、障害者の方々が地域で生活する場としては、生活ホーム・グループホームがありますが、郡内では入所施設が多くある石部町と信楽町に偏在しています。
表2-4 社会福祉施設の整備状況 (平成7年11月1日現在)
児童福祉 施設 |
精神薄弱者施設 | 共 同 作業所 |
身体障害者施設 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
入 所 | 通所 授産 |
通勤寮 | 療護 | 通所 授産 |
||||
授産 | 更生 | |||||||
石部町 |
近江学園
(130人) 落穂寮(80) |
もみじ寮
(50人) |
あざみ寮
(30人) 一麦寮(50) |
いしべ | ||||
甲西町 | 甲西さつき | |||||||
水口町 |
サニー サイド (30) |
さわらび
(精神) |
さわらび作業所
(30) |
|||||
土山町 | つちやま |
るりこう園
(50) |
||||||
甲賀町 | 甲賀町福祉 | |||||||
甲南町 | やまなみ |
|||||||
信楽町 |
信楽学園
(60) |
信楽青年寮
(授産部) (55) |
信楽青年寮
(更生部) (30) |
信楽通勤寮
(28) |
信楽くるみ | |||
合計 | 3(270) | 7(273) | 7 | 2(80) |
(注) ( )内の数字は定員数を示します
表2-5 障害児保育の実施状況 (平成8年1月1日現在)
障害児保育を受けている 児童数 (人) |
障害児保育を 行なっている 保育園数 |
町内の 保育園数 |
障害児対象の親子教室に 参加している児童数 (人) |
備 考 | |
---|---|---|---|---|---|
石部町 | 3 | 2 | 2 | 育児教室有 | |
甲西町 | 38 | 7 | 7 | 23 | |
水口町 | 11 | 5 | 7 | 7 | |
土山町 | 8 | 3 | 4 | 巡回による育児教室有 | |
甲賀町 | 1 | 1 | 4 | 育児教室有 | |
甲南町 | 3 | 2 | 5 | 12 | |
信楽町 | 2 | 2 | 5 | 12 | |
合計 | 66 | 22 | 34 | 54 |
表2-6 生活ホーム・グループホームの設置状況
石部町 | 甲西町 | 水口町 | 土山町 | 甲賀町 | 甲南町 | 信楽町 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生活ホーム | 2 | 1 | 10 | 13 | ||||
グループホーム | 2 | 4 | 6 |
(平成7年4月1日現在)
第3章
甲賀地域障害者生活支援構想の基本的な考え方と推進方策
平成6年9月現在甲賀郡に居住し、療育手帳の交付を受けている者(児)(施設へ入所している者を除く)428人を対象に「地域生活状況調査」を実施し、368人(18歳未満93人(25.3%)、18歳以上275人(74.7%))から回答を得ました。
その主な内容は、重度148人・中度98人・軽度122人と重度障害者が全体の40.2%を占めており、介助の必要性は、全面介助を要する者が全体の8.2%、部分介助を必要とする者が24.7%となっており、32.9%が何らかの介助を受けながら毎日の生活を送っている状況にあります。
更に、介助の必要がなくても常に気にかける必要がある者を含めると、全体の62.5%が何らかのサポートが必要であることとなります。
18歳以上の障害者では、87人(31.6%)が作業所や通所授産施設へ通所し、125人(45.5%)が事業所へ勤務していますが、通所や就労できず在宅で生活する障害者も53人(14.4%)という状況になっています。
また、生活の充実度合では、「充実している」、「充実とまでいかないが特に不満もない」が325人(88.3%)と高い数値を示していますが、このことは現在の福祉施策の整備状況を考えると、在宅で生活する障害者の大部分は、さまざまなニーズを持ちながらも介助の部分では家族や親戚による支援、いわゆる自助努力による部分が大きなウエイトを占めているものと考えられます。また、就労や社会参加活動では、信楽町のように地場産業への就労という地域特性もありますが、全体的には通所授産施設や共同作業所への通所に依存する部分が大きく、個々の障害者の障害の程度や日常生活に応じた就労が確保されているとは必ずしもいえない状況にあり、また、社会参加のための活動の場や機会も少ない状況にあります。
「地域生活状況調査」における生活上の相談相手の有無については、「相談する相手がある」328人(89.1%)となっていますが、相談相手は18歳未満では家族67人(72%)、学校の先生53人(57%)、友人28人(30%)となっており、18歳以上では家族151人(54.9%)、作業所・施設の職員82人(29.8%)、親戚64人(23.3%)となっています。障害者の年齢によって差違はありますが、相談相手の大部分は福祉関係者以外で、障害者の日常生活にかかわりのある最も身近な人といえます。
更に、介護についても主な介護者は父母等家族が186人(45.7%)となっており、介護を依頼できる相手も家族や親戚等がほとんどを占めている状況にあります。
このことから、障害者本人や家族は、さまざまな生活上の悩み・課題を持ちながらも家族以外に相談したり、援助を頼める相手がほとんどないことが考えられます。
また、障害者や家族等から個々の相断があっても、生活を支援するさまざまな在宅支援サービスが十分に整備されていないため、入所施設や通所施設、共同作業所への入所や通所サービスが中心となっている状況にあります。
今後は、このような施設サービスと併せて、障害者や家族の生活を支援するホームヘルプサービスやデイサービス・ショートステイサービス・機能訓練など、生活に密着したきめ細かな在宅サービスの充実・整備と、障害者の就学前から就学期・卒業後の成人期を通して一貫した生活支援を行うシステムとその拠点を甲賀地域で整備していく必要があります。
甲賀地域は他の地域と比較して、障害者(児)施設が多く整備されてきました。
特に、入所施設が今日までに果たしてきた役割は大きく、障害者の生活全般にわたる支援を入所という形で対応してきました。
しかしながら、「地域生活状況調査」における暮らし方の回答は、入所施設を希望する者は全体の10.6%であり、その内容は障害者本人が8人(6.3%)、家族が31人(16.9%)となっており、障害者自身にとっては、施設入所よりも地域で家族とともに生活することを希望している者が大部分の状況にあります。
このため、共同作業所等の通所施設については、福祉的就労の場の確保と併せて、デイサービス機能を併設するなど、小地域ごとのデイセンターとしての役割を果たしていくことが望まれます。
また、入所施設についても今後は、障害者の地域での自立支援という視点に立って施設処遇が行われるとともに、行政や企業・関係団体と一体となって、障害者の地域での生活支援体制を整備していくための役割を担っていくことが求められます。
障害者が地域でいきいきと生活をするためには、行政を中心とする生活支援サービス等の充実整備とともに、日々ともに生活する地域住民の福祉への理解と参加が不可欠です。
「地域生活状況調査」における地域で暮らしやすくするために望むことでは、「地域の理解を広める」と回答した者が最も多く121人で全体の32.9%となっています。
現在、各町の社会福祉協議会が中心となって、小学校・中学校・高校の児童・生徒を対象に、福祉推進校の指定や福祉講座等の開催、ボランティア活動の育成などさまざまな取り組みが進められています。また、県では福祉への理解と障害者等の社会参加活動を促進するため、平成6年に「滋賀県住みよい福祉のまちづくり条例」を制定しました。
今後は、これらの取り組みを一層促進するとともに、身近な小地域ごとに日常生活の中で、ごく普通に障害者との交流や友愛訪問・余暇活動支援などの取り組みを通して、福祉への理解と関心を高め、障害者等が安心して生活でき、社会参加活動が促進されるような、ともに生きともに支えるまちづくり運動を展開していくことが重要です。
この計画は、心身に障害があっても、生まれ育った地域社会の中で、家族とともに安心して、生きがいのある生活が送れる社会を築き上げることを目標としています。
従って、これからの障害者施策は、障害の発生予防と早期発見、早期対応を図るとともに、障害者の自立を支援することを目標に、障害者の生活により身近な地域で、施設や関係団体、企業、地域住民、障害者の家族などの積極的な参加・協力のもとに、利用者本位の福祉・保健サービスを計画的に整備・充実していく必要があります。
障害の発生予防を図るとともに、障害を可能な限り早期に発見し、適切な治療・訓練・指導等を通して障害の軽減や二次障害の防止に努め生活能力の向上、社会参加の促進を図ります。
これまでの福祉サービスは、ややもすると施設や家庭で障害者を介護するという保護的な面が中心となっていた傾向がありましたが、今後は障害者がもつ残存機能を活用して、何らかのサポートがあれば社会的な自立生活を送れるよう、個々の障害者の生活の質(QOL)の向上を基本目標にした自立支援サービスの充実・整備を図ります。
障害者は障害の種別・程度もさまざまであり、その生活状況も個々によって異なり、多様なニーズを抱えていることから、障害者自身が個々の生活に最も適切なサービスが選択できるといった自己決定を基本にした利用者本意のサービスの充実・整備を図ります。
障害者の生活に必要な医療・保健・福祉・雇用・教育・住宅・環境等といった生活全般にわたる各分野が連携を密にし、ネットワーク化を図りきめ細かなサービスを整備するとともに、障害者のライフステージの各段階ごとに生活上のあらゆる問題に対し、相談から情報提供・サービス提供まで一環して総合的に提供できるシステムの整備を図ります。
障害者が地域社会の中で安心して生きいきと生活でき、社会参加活動が積極的に促進されるよう、地域住民の福祉に対する理解と関心を高めるとともに、ボランティア活動の促進や生活環境の整備など、ソフト・ハード両面からバリアフリー化を促進し、ともに生きともに支える住みよい福祉のまちづくりの促進を図ります。
―甲賀地域障害者生活支援構想の推進―
障害者の生活上のさまざまな問題に対し、福祉事務所や保健所、町、町社会福祉協議会、身体障害者相談員、精神薄弱者相談員、民生児童委員等が相談活動を実施していますが、障害者が相談窓口を知らなかったり、相談窓口までの移動が困難な場合があり、また、一カ所の相談窓口では十分な対応ができない場合や、日曜・祝日・夜間等の対応ができない場合など、障害者にとっては必ずしも十分な相談機能が確保されていない状況にあるといえます。
このため、各相談機関等のネットワークを整備して相談窓口の一本化を図り、24時間体制の相談機能を整備します。
更に、相談機能と併せて、情報提供やサービス提供のコーディネート、療育指導等の機能をもつ拠点として24時間対応の障害者生活支援センター(仮称)の設置を図ります。
◎生活支援センターの業務
・相談、訪問活動
・療育指導
・ホームヘルプサービス(受託)
・デイサービス(受託)
・ナイトケアサービス(受託)
・生活支援サービス(法人)
・活動拠点の提供
・ボランティア活動の促進
・福祉機器の相談・作成
生活支援センターが実施する相談活動やコーディネート活動・療育指導等の機能が十分に発揮されるよう、保健、医療等との連携のもとに必要な福祉サービスの充実・整備を図ります。
整備に当たっては、県や町の行政が実施するものと併せて、社会福祉法人としての社会福祉施設の機能を活かしたサービスや、社会福祉協議会、福祉関係団体等による住民参加型サービスの積極的な促進を図ることとします。
サービスの調整・関係機関(者)とのネットワークを目的として平成7年4月より設置している甲賀郡心身障害児(者)サービス調整会議について、就学前から就学期・卒業後の成人期を通して、一貫した支援計画のもとに必要なサービスが総合的に提供できるよう、調整会議の機能の充実を図るとともに、必要な福祉サービスの開発・検討や関係者の研修等の事業を推進します。
◎サービス調整会議の機能
・処遇検討と総合的なサービス提供の調整
・個別ケースの支援計画の策定
・福祉・保健サービスの調査、検討、開発
・障害福祉関係者の研修の実施
◎サービス調整会議の構成メンバー
・各町
・生活支援センター
・学校、保護学校
・保育所
・医療機関
・社会福祉施設
・療育機関
・保健所
・福祉事務所
事業の内容によっては、利用する障害者の数が限られている場合や専門的な人材の確保、施設や専門機関との一体的な取り組みの必要性等から、単独に各町ごとが取り組むことは困難な場合があり、財源的にも非効率な場合があります。
このため、各町および県が協議し、共同で広域的に取り組むことが適切である事業については、可能な限り事業の広域化を検討します。
当面、平成7年度に7町が共同で取り組みをはじめたホームヘルプサービスについて事業の拡充を図ることとします。
但し、通所の作業所やまちづくり事業等地域の実情によって、小地域や町単位の取り組みが望ましい事業については、自治会・町内会・小地域や町・学校区等のブロックによる取り組みを推進します。
◎各町共同で広域的に取り組むことが望ましい事業
・ホームヘルプサービス事業
・ショートステイサービス事業
・デイサービス事業
(地域的に通所困難な場合も考えられるため、各町単独か数カ所のブロックを設定)
・機能訓練事業
・重度障害者の通所事業
・精神障害者のグループホーム
・精神障害者の通所授産施設
・入所施設の整備、防災対策
地域住民の福祉への理解と関心を高めるために、各町社会福祉協議会が中心となって、小地域ごとに交流会や友愛訪問・体験学習等、地域の実情に沿った取り組みを関係機関や団体等の参加・協力のもとに、地域住民の日常活動の中で促進するとともに、住みよい福祉のまちづくり条例によるボランティア活動の促進や環境整備の推進を図ります。
各町が共同で実施する広域的な事業については、県と各町での調査・検討を重ね、事業の企画立案・精度管理・評価等を行うための協議会を設置します。
今回の甲賀地域障害者生活支援構想の推進に当たっては、県と甲賀郡7町で構成する甲賀地域心身障害児(者)在宅福祉事業運営協議会(仮称)を設置し、事業の推進を図ります。
また、事業の具体的な実施については、専門的な知識・技術・設備等を有する社会福祉施設の積極的な参加・協力を求め、在宅福祉サービスを充実・整備するなど、施設サービスと在宅福祉サービスの一元的な取り組みを図ります。
更に、公的な福祉サービスの推進と併せて、自助・共助といった分野においても障害者本人によるさまざまな活動の育成・支援を図るとともに、社会福祉協議会を中心とするボランティア活動や住民参加型の福祉サービスの促進、福祉団体や生活協同組合・企業等が実施する福祉サービスの整備など、関係者や地域住民のコンセンサスを得ながら、幅広い参加・協力のもとに積極的な役割分担を求め事業の推進を図ります。
甲賀地域障害者生活支援構想
◎甲賀郡心身障害児(者)在宅福祉事業運営協議会
・事業の企画、管理、評価 ・関係機関との連絡調整 ・事業の経費、その他 ・事業の進捗状況の管理 ・計画の進行管理 ・情報提供 |
○町・福祉事務所・社会福祉法人・福祉団体
(福祉サービスの充実、整備)
・デイアクション デイサービス、機能訓練、サマーホリデーサービス 施設通所、共同作業所、重度障害者の通所 障害児母子通園事業、障害児保育、 障害児通所施設 ・生活支援 レスパイトケアサービス ホームヘルプサービス 短期入所サービス 介護講座 ・就労促進、生活支援 生活支援センター(生活支援ワーカー)の設置 甲賀郡障害者雇用支援事業所協会の設置 ・社会参加活動 活動拠点の確保 ボランティア活動の促進 親の会の育成 ・福祉のまちづくりの推進 小地域ごとのまちづくり事業の推進 まちづくり条例の具体化 |
サービスの委託・参加協力↓
○甲賀郡障害者生活支援センター
相談訪問活動 療育指導 広報・啓発事業 ホームヘルプサービス デイサービス ナイトケアサービス 生活支援サービス 福祉機器の相談・作成 |
活動拠点の提供 障害者・親の会 ボランティア 施設・関係団体 ボランティア活動の促進 |
相談↑
サービスの提供↓
利用者 |
○障害福祉施設
ショートステイサービス 入所・通所サービス |
○甲賀郡心身障害児(者)サービス調整会議
サービス調整、関係機関(者)のネットワーク化 情報の共有、ケアプランの作成 福祉サービスの調整、検討、開発、関係者の研修 <構成メンバー> 各町、生活支援センター、養護学校、保育所、医療機関、 社会福祉施設、療育機関、保健所、福祉事務所 |
第4章 障害者のライフステージごとの対策
障害の発生予防ということは計画の基本的な考え方のひとつに掲げていますが、それは、障害を持って生まれてくることが不幸なことや価値のないことだということではなく、障害の中には事前の対策によって予防しうるものもあり、これらについては充分な予防対策をとる必要があります。もっとも、障害の発生原因の多くが医学的に解明されているわけではなく、今後も一定の割合で障害のある子どもが生まれてくることが予想されます。このことを前提にしながら、可能な限り障害の発生を事前に防止する対策が必要であります。
甲賀地域の出生率は、平成5年には人口千人当たり10.5人と全国平均よりはやや高い状況ですが、年々低下傾向にあります。町別では、生産年齢人口比率の高い甲西町で11.3人、水口町で11.5人と高く、甲賀町と甲南町では8.9人と低くなっています。また、、近年、他府県等からの転入者が増加する傾向が見られ、0~4才児では月平均60人程度の増加となっています。この数字は、平成2年度の40人と比べると、最近急激に増加しているといえます。
障害や発達の遅れがあるとしてフォローしている対象児は、町によりかなり差異がみられます。表4-I-1は各町の保健センターが何らかの発達の遅れがあるとしてフォローしている就学前の児童数です。同年代の出生児童数に対する比率では、甲西町と甲南町がかなり高くなっていますが、これは、軽い言葉の遅れなど健康診査で気になる点もきめ細かくとらえているためではないかと考えられます。
このように、障害児のとらえかたには、町により障害としてとらえる範囲が異なっていますが、医療機関等で診断・フォローされている障害児に対し、両親の積極的な理解と参加を求め、必要な保健・福祉サービスへと結びつけていくシステムが必要です。
甲賀地域全体では、240人の就学前の障害児ないしは発達上に何らかの援助を必要とする乳幼児がいて、障害児の発生率は2.69%となっており、県平均の2.75%とほぼ同じになっています。また、男女比は、2.53:1と男子の比率が高くなっていますが、男子の比率が高いのは全国的な傾向であり、比率も全国平均とほぼ同じ状況にあります。
障害の発生原因については、はっきりした統計的データーがありませんが一般的には障害の発生原因として、遺伝・染色体異常などによるもの、妊娠中の胎児・母体への影響によるもの、分娩時の障害によるもの、出生後の疾病や事故などによるものがいわれています。
近年、若い女性の間に喫煙や飲酒の習慣が広がりつつあり、極端なダイエットも流行していますが、これらのことは健康な子供を生むためにマイナスの要因となることを理解することが大切です。
そして、中学生や高校生の段階から妊産婦になる前の健康な母体づくりや母性の保護について認識を深めていくことが必要です。
このため、保健センターと教育委員会が連携を深め、学校教育の中で保育所児や幼稚園児とふれあえる機会をつくるなどの方法で、生命の尊さや男女協力の大切さを理解させるとともに、親への感謝の気持ちや母性・父性を育てていくような啓発指導を積極的に推進します。
また、障害の発生予防ということには直接つながりませんが、中学生や高校生に障害児とのふれあいをとおして障害児への理解が高まるよう、毎年実施している療育キャンプや各町で実施しているサマーホリディ事業に、ボランティアとして中学生や高校生の積極的な参加を呼びかけていきます。
妊産婦にたいする保健対策として、母親教室や母子健康手帳交付時の面接、アンケート調査に基づく訪問活動、新生児訪問等を実施しています。
しかし、これらは対象者からの訴えに基づく相談指導が中心となっており、妊娠早期においてハイリスク妊婦であると考えられる事例については、当初から医療機関と保健所・町の保健センターの連携による予防活動を行っていく必要があります。
甲賀地域では、平成3年からハイリスク妊産婦・新生児連絡制度がスタートし、年々制度が定着しつつありますが、今後もケース連絡の早期化と病院と診療所の連携の充実を図っていきます。また、甲賀地域は表4-I-2にみられるように周産期死亡率がやや高いので、妊娠中の異常や極小未熟児などに早期医療対応が出来るよう移送手段の確保やNICU(新生児集中治療部)を設置するなど、医療機関の体制整備について検討する必要があります。
表4-I-2 周産期死亡率等の状況(S63~H4 千分率)
全国 | 甲賀圏域 | |
---|---|---|
乳児死亡率 | 4.6 | 6.3 |
周産期死亡率 | 5.8 | 6.5 |
後期死産率 | 3.8 | 3.7 |
早期新生児死亡率 | 1.9 | 2.6 |
低体重児 | 6.4 | 6.1 |
また、保健所が実施している甲賀地域の基幹病院・産婦人科医院・小児科医院等を構成メンバーとした周産期保健医療推進会議の開催をとおして、これらの病院相互間の連携を図り、障害の発生予防を推進します。
遺伝相談は、水口保健所で実施していますが平成6年度の利用実績は0件でした。
県立小児保健医療センターの院内相談として甲賀地域で3件の相談実績がありました。
しかし、これはニーズがないというのではなく、例えば第1子がダウン症であった人が第2子を生むかどうかを考えるときなど潜在的な需要は存在すると考えられます。
今後は、病院の小児科や療育相談の場などにパンフレットを置いて制度の周知徹底を図ったり、直通電話を設置して利用しやすい雰囲気を作っていくなどの方法により知らないがための無用の不安や偏見を取り除いていきます。
障害乳幼児の治療と療育は早く始めれば早いほど、その効果は大きいといわれています。
先天性代謝異常障害などの一部の障害については、薬物による治療も可能になってきているので、より早期の発見と的確な診断のできる医療機関への連携が重要となってきています。また、その他の障害についても、乳幼児期の脳の発達に柔軟性のある早い段階から理学療法や作業療法などの医療的訓練や指導を加えることによって、運動機能はもちろん、精神機能の面でも発達を促すことが可能となっています。
こうしたことから、障害の早期発見のための努力と治療・療育へのスムーズな連携がますます大切になってきています。
もちろん、早期からの療育を開始したからといって障害乳幼児の持つ問題が全て解決するというわけではありませんが、適切な時期を失することなく、子どもの発達課題や過程に応じた療育サービスを提供することによって、子どもの持つ能力を生涯にわたって十分発揮できるようにし、地域の中で様々なサービスの提供を受けながら生活していける能力を身につけていく必要があると考えます。
障害乳幼児の早期発見システムは、3~6カ月、1才6カ月、3才6カ月時点での健診体制が整備されており、町の保健センターによる1次健診から保健所を中心とした2次健診(療育相談)、3次健診(医療機関による精密健診)に至るまでの総合的な健診体制の確立に向けて取り組みをすすめてきました。
各町の乳幼児健診の受診率は、ほぼ90%以上となっており、県全体と比較しても特に格差はない状況にあります。しかし、未受診児の中にも障害児が含まれていると考えられることから、さらに本受診児の状況把握につとめ、受診勧奨を徹底することが必要と考えられます。また、甲賀地域の人口動態の特徴として他府県からの転入者が多いことがあげられますが、これらの人の中にも障害を持つ乳幼児が含まれていると考えられるので、それらを出来る限り早期に把握することも大切です。
障害発見の時期をみると、1才6カ月児健診の時がもっとも多くなっているので、この時点での受診勧奨を徹底することが必要です。また、前述のように障害児やフォローを要する乳幼児としてのとらえ方に町ごとの差が見られることから、地域内で健診の実施方法や事後対応の統一を図っていくことが必要です。
そして、乳幼児に発達上の問題を発見したときには、保護者に対し乳幼児の持つ問題点やフォローの必要性を十分説明し、不必要な不安を与えないよう精神的な援助を行いつつ、2次・3次健診への動機づけを行っていく必要があります。更に、保護者に対し、日常生活の中での乳幼児の発達にあわせた健康面のチェックポイントの指導や、基本的な生活習慣の確立に向けた指導をしていく必要があります。
2次健診としての療育相談や発達相談の受診率は85%前後です。未受診の理由は、月1回の開設であるため対象者の都合がつきにくいので直接医療機関を受診したというものや、受診日までに問題点の改善が見られたり保護者の不安がなくなったりしたというもので占められています。健診によって障害の疑いがもたれた後、確定診断や治療、療育へとスムーズにつながらず、早期療育に適した時期を過ぎてしまうことのないよう、今後も各町の保健センターが保護者の不安を十分に受け止め、納得のいくフォローが受けられるよう援助活動を続けていくことが必要です。
療育相談で精密検査が必要になった乳幼児は、平成5年度までは大部分が小児保健医療センターに受診していましたが、平成6年度からは対象者の希望により3才半精密健康診査の委託医療機関を中心に地域内の医療機関への受診率も高くなってきています。
障害児の地域における療育対応の機関としては、7町の共同事業として甲賀郡行政事務組合に運営を委託している「こじか教室」があります。これは昭和55年頃から水口保健所で実施してきた発達相談事業事後集団指導と、同じく昭和55年より近江学園で実施してきた母子通園事業が、昭和61年より甲賀地域の療育事業に移管されたという経緯をもつもので、開設されて本年で10年が経過しました。
平成2年より国の補助金を受けた甲賀郡心身障害児通園事業として運営しています。
また、発達の遅れが比較的軽度の乳幼児にたいする育児指導や集団遊びの場の提供を目的として4町で「親子教室」を、3町で健常児も対象とした「育児教室」を開設しています。さらに県立総合療育センターへ通所中の障害児も少数あります。
先に示した表4-I-1からこれらの療育事業および障害児加配の対象とされている保育所措置児の合計数をみますとそれぞれ49人、69人で、合計118名となります。
一方、これら療育に携わる職員をみると、保育所のスタッフが保母であることは当然としても、いずれも保母が主体でそれに発達相談員(心理判定員)が加わっているところもあるという状況です。
表4-I-3 スタッフの配置状況(*は月1回) 平成7年4月現在
甲西町 親子教室 |
水口町 親子教室 |
甲南町 親子教室 |
信楽町 親子教室 |
こじか教室 | |
保母 | 4 | 4 | 1 | 2 | 4 |
心理 | 1 | 1 | *1 | 2 | |
指導員 | *1 | 1 | |||
保健婦 | 3 | 1 | 2 | 2 | |
看護婦 | *1 | ||||
その他 | *1 | *1 | *1 | ||
医師 | *1 | 所長1 | 所長1 |
表4-I-4 障害児保育の状況 平成8年1月現在
石部町 | 甲西町 | 水口町 | 土山町 | 甲賀町 | 甲南町 | 信楽町 | |
障害児 | 3 | 38 | 13 | 8 | 1 | 3 | 2 |
保母 | 3 | 20 | 8 | 4 | 1 | 3 | 2 |
しかし、健常児に比べて発達に遅れや特別の配慮を必要とする乳幼児のの対応には、より詳細に障害をとらえて指導にあたる専門的な知識・技術・経験を持つスタッフの参加が必要と考えられます。特に「こじか教室」は心身に障害を持つ、或いは将来障害が出てくることが予想される乳幼児に対する早期対応の場として障害の軽減を図るという役割が求められています。従って、理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護職など、専門的指導が可能なスタッフの参加が必要となります。現在、療育教室に通う子供のうち25人が1~3種類の専門指導を受けるために県立小児保健医療センターまたは総合療育センターに外来通所していますが、地域外へ乳幼児を連れて通う保護者の負担は大きいものがあります。
また、療育では、単に障害のある乳幼児に療育を行うだけではなく、我が子の障害を告知されて悲嘆や混乱の中にある家族に対し、その障害を受容し、我が子を育てていくことに価値を見いだしていけるよう援助し、家族全体が結束して心理的に安定した家庭環境を整えていくことが乳幼児の発達には必要となります。さらに保護者や家族同士の親睦やつながりを通じ、我が子に障害があっても社会参加をめざす励みとなるよう療育指導の中で配慮する必要があります。療育教室には開設以来継続してきた保護者のグループ指導を母体とした親の会が自主的に運営されています。
現在の療育スタッフの配置状況をみると、「こじか教室」職員7名のうち正規職員は2名で、他のスタッフは嘱託職員という形態になっています。療育事業の質の充実という当面の課題に取り組むためには、職員の雇用条件の改善や身分の保障についても検討する必要があります。
障害乳幼児の早期発見、早期療育の取り組みを続けてきた結果、乳幼児療育の開始年齢は次第に低下していく傾向にあります。そして、一定の療育効果のあがった障害児は、社会性をはぐくむために保護者の就労の実態等も勘案し、地域での集団生活の場である保育所や幼稚園に移行させることが必要です。
保育所での障害児の受け入れは、町によって受け入れ体制に差があることや、障害の程度や種類によって受け入れることが困難な場合があることなど、まだ十分でない点も見られますが、徐々に障害児も社会の一員として健常児と一緒に保育を受けることができるようになってきています。
障害児と健常児が生活年齢の集団の中で、あるいは発達段階に合わせた集団の中で一緒に保育を受けることによって、障害児は家族の中だけでは得られない経験をし、社会性をはぐくんでいくことができます。また、健常児は障害児を理解し、思いやりの気持ちを育てていくことができます。ただ、いわゆる「いじめ」的な状況が発生しないよう保育には十分な配慮も必要です。また、障害児を保育していく保育者の立場からは、専門的な知識技術を得るための学習や研修が必要となっています。
障害児保育における保母の加配の問題では、「こじか教室」や「親子教室」などで療育を受けたことのある子どもの保護者は、自分の子どもが保育所・幼稚園に行ったら集団になじめないのではないかと心配し、加配のつくことを希望している人が多いようです。これに対して、療育を受けたことのない子どもの保護者は、保育者が発達に遅れを感じても自分の子に障害があるとは認めたがらない人が多く、保護者の同意が得られない結果、専門機関の意見書がもらえずに加配が付かないということがよくあります。障害児加配の問題については、保健センターともよく連携をとりながら、場合によっては保健婦から障害の受容ができるように話し合いをしてもらう必要がありますし、保育者も保育所や幼稚園生活の中での乳幼児の姿や関わり方をていねいに保護者に伝え、障害の受容と改善の方途をともに見つけだしていく力を付けていくことが必要です。
平成9年度には、母子保健法の改定の趣旨を踏まえ、発達相談事業は市町村で主体的に実施されることとなっています。現在水口保健所で実施されている発達相談事業が各町で実施されれば、事業に必要な発達相談員(心理判定員)を各町で雇用する必要が生じます。このため、7町でほぼ同一レベルの相談や障害の発見が可能になるように相談員を共同雇用したり、医学的所見を要する乳幼児に対しては従来の保健所療育クリニックを活用するなど町相互や町と県の連携の充実を図り、早期発見から早期療育までの対応に地域格差を大きくしないよう検討を行います。
また、こじか教室の心理スタッフが各町や保健所の心理判定員と連絡を密にし、場合によっては合同判定を行うなどの方法により、障害の早期発見・早期対応を期することが求められます。現在「こじか教室」の入園は年に2回ですが、障害の発見から入園までの間に保護者の不安や心配は募る一方で、混乱と不安で疲れ果ててしまうことも少なくありません。こうしたことへの対応として、町ごとに行っている親子教室に参加を勧め、初期対応を開始しておくことも必要です。親子教室は従来の比較的経過の速い、軽度の遅れのある乳幼児の療育だけでなくこうした早期対応の場の提供という役割を分担することも必要です。
障害の状況や家庭環境をふまえ、個々の対象児が適切な時期に適切な療育を受けられ、必要なサービスが提供できるよう調整する必要があります。
甲賀地域では、平成7年度から心身障害(児)者サービス調整会議を設置し、障害のある人たちの個別処遇やサービスの提供について検討を始めたところですが、障害のある乳幼児についてもこの調整会議で各児の処遇の検討や調整(通所機関、開始時期、保育所入所や加配保母の有無など)を行っていきます。
このことによって、障害のある人たちに対して、そのライフステージ全般を通した一貫した援助が
可能になると考えられます。
「こじか教室」に療育指導専門職を配置することが療育の充実という点で不可欠の課題でありますが、現在取り組んでいる「こじか教室」の通園事業では一定の限度があります。このため、児童福祉法による通園施設への移行について検討する必要があります。
通園施設に移行する場合、「こじか教室」の機能を他機関と明確に分担する必要があります。例えば、同じく措置入所である保育所とはこれまでのように併行通所ができなくなりますから、保育所で障害児保育をうけることになりますが、保育以外に専門指導が引き続き必要である子どもには、事後指導(フォローアップ)として個別相談等を行なう必要があります。保育所では健常児に交じって障害児保育をうける、さらに療育の教室では専門的な訓練指導を必要に応じて個別にうける、ということになります。
従って、通園施設化の検討を行うに当たっては、こじか教室の現状や課題、今後の利用見込等を整理し、併せて各町で実施している親子教室や障害児保育等との機能分担や連携のあり方、また、今後障害者生活支援センター(仮称)が行う療育指導(療育支援施設事業)との連携方策等について、県と各町が十分調査・検討を重ね、こじか教室の今後のあり方の一つとして障害児通園施設の検討を行います。
保育所においては、障害児の成長・発達に応じた適切な保育が出来るよう知識・経験等を有する保母を配置し、その専門性を高めるための研修体制を充実することや、園児の状況に応じた加配保母の配置、施設整備の充実などにより、さらに障害児の受け入れ体制の充実等を図っていきます。
また、「こじか教室」などの専門スタッフとの交流の機会を作り、言語・運動・行動に関する保育上のアドバイスを受けたり、個々の障害児の処遇についてアフターケアを受けたりする事も必要です。
小学校の入学に際しては、就学前に行われてきた発達相談や療育相談・指導、障害児保育等の経過と入学後に継続する療育的課題を、就学相談や学校に引き継ぎ、適切な就学の確保を図るとともに、早期対応の成果が有効に教育の場へと引き継がれ一貫した療育が行われるよう連携と相互の協力を図っていきます。
表4-I-1 障害児の状況(平成1年4月2日~平成7年4月1日生まれの人の状況)
男 女 |
出生 児数 |
障害 児数 |
発見時の年齢 | 出産時 の健診 |
新生児 訪問 |
1カ月 健診 |
3~4 月健診 |
9~10 月健診 |
1才6月 健診 |
2才6月 健診 |
3才6月 健診 |
児相 から |
育児 相談 |
転入時 の相談 |
母親の 気づき |
その他 | |||||||
0才 | 1才 | 2才 | 3才 | 4才 | 5才 | 不明 | |||||||||||||||||
石部町 | 男 | 388 | 10 | 2 | 3 | 4 | 1 | 1 | 3 | 4 | 1 | 1 | |||||||||||
女 | 379 | 4 | 3 | 1 | 3 | 1 | |||||||||||||||||
計 | 767 | 14 | 5 | 4 | 4 | 1 | 3 | 1 | 4 | 4 | 1 | 1 | |||||||||||
甲西町 | 男 | 1,399 | 93 | 23 | 40 | 20 | 7 | 1 | 2 | 1 | 4 | 9 | 14 | 28 | 8 | 3 | 2 | 1 | 12 | 1 | 10 | ||
女 | 1,364 | 27 | 8 | 14 | 4 | 1 | 1 | 2 | 7 | 9 | 2 | 5 | 1 | ||||||||||
計 | 2,763 | 120 | 31 | 54 | 24 | 8 | 1 | 2 | 2 | 4 | 11 | 21 | 37 | 10 | 3 | 2 | 1 | 17 | 1 | 11 | |||
水口町 | 男 | 1,118 | 20 | 4 | 3 | 10 | 3 | 1 | 1 | 2 | 3 | 2 | 8 | 2 | 1 | ||||||||
女 | 1,165 | 11 | 5 | 1 | 4 | 1 | 2 | 2 | 1 | 3 | 3 | ||||||||||||
計 | 2,283 | 31 | 9 | 4 | 14 | 4 | 3 | 3 | 2 | 3 | 3 | 11 | 2 | 4 | |||||||||
土山町 | 男 | 330 | 9 | 2 | 3 | 4 | 1 | 1 | 3 | 4 | |||||||||||||
女 | 304 | 3 | 3 | 2 | 1 | ||||||||||||||||||
計 | 634 | 12 | 5 | 3 | 4 | 2 | 1 | 1 | 3 | 4 | 1 | ||||||||||||
甲賀町 | 男 | 334 | 3 | 1 | 2 | 1 | 2 | ||||||||||||||||
女 | 326 | 5 | 2 | 2 | 1 | 2 | 2 | 1 | |||||||||||||||
計 | 660 | 8 | 2 | 3 | 3 | 2 | 3 | 3 | |||||||||||||||
甲南町 | 男 | 521 | 31 | 6 | 7 | 16 | 2 | 1 | 1 | 4 | 7 | 14 | 2 | 2 | |||||||||
女 | 494 | 16 | 8 | 7 | 1 | 1 | 2 | 2 | 7 | 1 | 3 | ||||||||||||
計 | 1,015 | 47 | 14 | 14 | 16 | 3 | 2 | 3 | 6 | 14 | 14 | 3 | 5 | ||||||||||
信楽町 | 男 | 402 | 4 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 1 | ||||||||||||||
女 | 389 | 4 | 2 | 1 | 1 | 2 | 1 | 1 | |||||||||||||||
計 | 791 | 8 | 3 | 3 | 2 | 3 | 3 | 1 | 1 | ||||||||||||||
合計 | 男 | 4,492 | 170 | 38 | 59 | 56 | 14 | 1 | 2 | 4 | 5 | 1 | 10 | 22 | 47 | 32 | 8 | 2 | 11 | 15 | 2 | 11 | |
女 | 4,421 | 70 | 31 | 26 | 9 | 4 | 10 | 2 | 7 | 9 | 20 | 3 | 2 | 7 | 5 | 5 | |||||||
計 | 8,913 | 240 | 69 | 85 | 65 | 18 | 1 | 2 | 14 | 7 | 1 | 17 | 31 | 67 | 35 | 10 | 2 | 18 | 20 | 2 | 16 |
(注) 障害児数の欄は障害児もしくはフォローを要する乳幼児として各町の保健センターが把握している乳幼児数です。
障害の種類
運動発達の遅れ | 全体的な発達の遅れ | 視覚 障害 C |
聴覚 障害 D |
肢体 不自 由 E |
内部 障害 F |
合計 A+B+ C+D+ F= |
A~Fで てんかん のある人 を再掲 |
|||||||||
脳性マヒ | 中枢性 協調障 害 |
その他 | 計 A |
精神発 達の遅 れ |
左欄のう ちダウン 症再掲 |
自閉症 ・対人 関係 |
言語発 達障害 |
その他 | 計(再掲分 は除く) B |
|||||||
男 | 6 | 6 | 12 | 55 | 5 | 14 | 67 | 18 | 154 | 3 | 2 | 171 | 3 | |||
女 | 1 | 1 | 4 | 6 | 21 | 5 | 4 | 19 | 12 | 56 | 4 | 2 | 1 | 69 | 3 | |
計 | 7 | 1 | 10 | 18 | 76 | 10 | 18 | 86 | 30 | 210 | 7 | 4 | 1 | 240 | 6 |
(注) 障害児1人につき、再掲分を除き、1カ所にカウント。重複障害児については主な障害により記入しています。
利用しているサービス等
保健所 の発達 相談 |
町の発 達相談 |
町の親 子教室 |
町の言 葉の教室 |
郡域の 療育事 業 |
療育セ ンター |
障害児保育 (加配あり) |
幼稚園 (加配あり) |
聾唖 学校 |
特別 障害 児手 当 |
障害 児福 祉手 当 |
福祉 医療 |
身障手帳 | 療育手帳 | |||||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | A゜ | A | B゜ | B | |||||||||||||
男 | 94 | 55 | 57 | 16 | 38 | 7 | 50 | 2 | 2 | 14 | 6 | 13 | 6 | 4 | 1 | 1 | 5 | 3 | ||||
女 | 31 | 25 | 21 | 3 | 11 | 4 | 19 | 1 | 4 | 1 | 4 | 1 | 1 | 2 | 1 | 1 | ||||||
計 | 125 | 80 | 78 | 19 | 49 | 11 | 69 | 2 | 3 | 18 | 7 | 17 | 7 | 5 | 2 | 1 | 1 | 5 | 1 | 4 |
(注) 過去にサービスを利用したことのある人数を記入しています。
養護学校義務化によって障害児の教育権は保障され教育も年々充実されてきていますが、生活の質という面については未だ十分とはいえない状況にあります。
現在では概ね各福祉圏ごとに養護学校が整備され、各小中学校に障害児学級も設置されて地域で教育を受ける受け皿は整備されてきましたが、施設・設備等の問題が指摘されています。
また就学期は基本的に在宅生活を送っていますが、その生活を充実するための施策は限られています。
障害児が小学校へ入学する際、また必要に応じて教育の場を変更する際、心身障害児就学指導委員会(以後就学指導委員会と言う)が開かれ、普通学級・障害児学級・養護学校への入学・入級についての検討を行っていますが、各学校の障害児学級の施設・設備等により入学時の選択が左右される場合があります。更に、就学指導委員会も各町によって委員の構成が異なり、決定・指導内容の基準が不明瞭であることや、個々の障害児の状況が十分に反映されていないとの意見もあります。
更に、地域就学を希望する親が増えていますが、地域の障害児学級では、重度の障害や強度の行動障害・情緒障害などに対応できるような整備が必ずしも十分でない状況にあります。このため障害児の状況が十分に反映され、障害児をもつ保護者に対して障害児学級や養護学校の教育課程、施設・設備などについて資料提供を行い、可能な限り本人および親の適切な判断により教育の場が選択できるよう就学相談の充実や就学指導委員会のあり方について検討が必要です。
また選択にあたって、親の判断によって子どもの教育権が阻害されないよう、母子通園や障害児保育の現場で個々の障害児に対する状況把握と日常的なコミュニケーションを確保することが必要です。
障害児学級担任は、個々の児童・生徒の障害に応じた対応が求められることからより高度な専門性が求められます。このため、担任の専門性の向上のための情報交換の場や研修機会の充実が必要です。
また、障害児学級は地域の障害児教育の核としての養護学校と日常的な関わりを持ち、ソフト・ハード両面での交流を促進していく必要があります。そして養護学校にも地域教育センターとしての機能を明確に位置づけ、専門的指導が行える体制の整備が必要です。
障害児学級の児童・生徒が普通学級の児童・生徒と交流したり、養護学校と小中学校との交流学習が定期的に行われています。同一学校内における交流は、行事や実技教科・特別活動の活用が多く、障害児が集団に慣れるようにという目的や普通学級生の障害児への理解を図るという目的を持っています。しかし、場面の設定に終わっていることも多く、障害児が児童生徒集団の中で仲間として位置づけられることが少ないのが現状です。
また通級は、普通学級在籍児童が必要に応じて障害児学級の教育課程を利用する制度で、個別能力や習得段階に応じた学習が保障されるため通級を利用する場合があります。養護・訓練などの領域は障害児学級で取り組まれることは少なく、普通学級からの通級は行われていません。また、障害児学級在籍児童・生徒の養護学校への通級制度がないため障害児のニーズを十分に満たせていない状況にあります。
養護学校は障害児の教育の場として機能するよう概ね各福祉圏ごとに整備されようとしています。これに伴い、福祉圏域での障害児教育の核として養護学校が機能していく体制が整いつつあります。
しかし現状では、養護学校と福祉圏域の障害児学級との連携は十分とは言えず、学校を単位とした交流や教育相談機能の活用を図っていく必要があります。
現在、言語の発達や発音に障害がある児童・生徒を対象に2つの町で「ことばの教室」が設置されていますが、町外に居住する児童・生徒や養護学校の児童・生徒が利用できないといった問題があります。
障害児とその家族が安心して生活を送るためには、緊急時のサポート体制の充実が不可欠です。そのための施策として現在短期入所制度がありますが、甲賀地域で実際に受け入れを行っているのは一部の施設であり、また障害種別も精神薄弱児(者)に限られていること、緊急時の場合の送迎サービスがないことなどすべての障害児が安心して利用できるとはいえない状況にあります。また、就学期の短期入所では、通学の関係があり、甲賀地域の中で障害児の生活場所により身近な所で短期入所が利
用できるよう地域バランスを考慮した整備が必要ですが、その体制は整っていないのが現状です。
近年親の休息など私的理由による利用が認められ、また軽度の障害児も対象となるなど制度の見直しが行われてきましたが、施設での処遇を前提としていること、また手続きが煩雑であったり時間がかかるなど利用しにくい面が多くあります。また、緊急時の一時保護が目的であるため、日常的な家族支援という点ではまだまだ不十分です。一方、精神薄弱者援護施設信楽青年寮が自主的に実施している甲賀郡生活支援サービスは家庭での処遇を前提としており、障害児の地域生活をサポートする意味で親のニーズにかなった制度といえますが、私的契約でしか行われていない現状となっています。心身障害児(者)ホームヘルプサービスも中・軽度の障害児(者)や精神薄弱児の移送サービスが利用できないなどの制約があるため、すべての障害児に有効な施策となっていません。
図4-II-3 在宅支援サービスに
おけるホームヘルプ制度適用状況
(平成7年4月~9月)
対象 | 182件 | 36% |
対象外 | 321件 | 64% |
資料:信楽青年寮
また、甲賀地域の医療的なケアの必要な障害児の大半は、県立小児保健医療センターに通院しており、身近なところでの日常的な医療や緊急時の対応が望まれます。
行動範囲が狭く、学校以外では交友関係も限定されている障害児にとって、放課後の時間や休日、長期休暇の過ごし方は、多くの保護者の悩みの種になっています。
また、学校以外の時間はそのほとんどが家族によって支えられていることが多く負担も大きいのが現状です。
第2・第4土曜の休日の過ごし方のサポートや長期休暇中のサマースクール、療育キャンプ等もそれぞれの地域で取り組みを進めていますが、地域や学校の取り組みの差によって限定されるのではなく、すべての障害児の地域生活の充実を図っていく必要があります。
滋賀県では、義務教育を終えた障害児の進路は養護学校高等部・福祉施設・各種専門学校・県外の職業訓練校が中心となっています。これは、中学卒業時において職業準備訓練を専門に行える高等教育機関が整備されていないため、本来、福祉的援護を目的とした施設に職業訓練を依存していることや、障害によってより綿密な指導を要する障害児が中学校の義務教育終了時点で社会に出てしまう矛盾となって現れていることを示しています。また、進路に関する情報が的確に親・教師に伝わっていないとの指摘もあり、限られた情報と選択肢の中で障害児の進路選択が行われている状況にあるといえます。
平成6年度県内特殊学級卒業生進路
(卒業生137人)
職業訓練校 | 18% | 24人 |
養護学校高等部 | 35% | 49人 |
高等学校 | 6% | 8人 |
専修学校 | 7% | 9人 |
福祉施設 | 28% | 39人 |
就職 | 4% | 5人 |
その他 | 2% | 3人 |
資料:滋賀県教育委員会
養護学校の中学部生徒の進路の現状については表4-II-1にあるように、養護学校高等部への進学が中心です。地域の障害児学級から養護学校の高等部への進学が比較的少なく、甲賀地域ではその傾向がより強く見られます。地域の障害児学級からの入学が少ないことで、三雲養護学校の高等部では障害の軽い生徒の集団保障が十分にできない状況です。
高等部卒業生の進路については、以前は入所施設の受け皿がないため他府県の施設に行かざるを得ないケースもありましたが、各福祉圏ごとに入所施設が整備されてきたことにより一定改善されてきています。しかし、現在も待機者がかなりあり、学校を中退して入所する場合もあります。一方、共同作業所・通所施設についても定員等の理由で新たな通所が困難になって来ており、さらに、障害が重く作業所の作業に合わない人達の進路先がほとんどない現状にあります。
表 4-II-1
養護学校の進路状況(平成6年度)
中学部卒業生 全県67名 |
高等部卒業生 全県120名 |
施設入所 3% 作業所 1% 高等部進学 85% 高校進学 8% 専門学校 3% |
就職 26% 施設入所 20% 作業所 42% 進学 3% 各種学校 4% 療育 3% 在宅 2% |
このため、障害児の中学卒業時の進路については、職業準備訓練を中心とした教育課程を整備していく必要があります。施設における職業準備訓練は施設機能の一部であり、援護を必要とする者と区別・整理するとともに、通所を主体とした職業準備訓練施設等の整備が望まれます。
また障害児に関わる関係機関相互の、進路に関する情報交換が行える場を設ける必要があります。
障害の重度・重複化によって、学校生活において医療的なケアを常時必要とする児童生徒への対応の仕方が課題となっています。これまで病院の隣接学校として国立紫香楽病院における「三雲養護学校紫香楽校舎」が機能してきましたが、地域生活を基盤とする教育環境の整備という観点では十分とは言えない状況です。
重症心身障害児の教育環境の整備については、養護学校と隣接する病院との連携を図り、定期的な指導と検診・診察等を行える協力体制の整備が必要となっています。
障害児学級・養護学校への就学指導において、対象となる障害児の実態が正しく反映され適切な入学・入級指導が行えるよう、就学相談等の充実を図ります。保健センター・保育所・こじか教室または在籍する学校等個々の障害児について、情報を持つ機関から情報が確実に伝わるよう体制を整備するとともに、就学指導委員会に情報が反映できるよう各機関から委員を選出するなど検討が十分行える体制作りを進めます。
障害児学級担任の専門性を高めるため、研修の充実と担任間の相互交流が定期的に行える体制作りが急務です。甲賀地域の障害児学級の約半数が1人担任となっていますが、障害児学級の児童生徒の多様化に対応するため、障害児学級担任のみでなく学校全体としての体制作りが必要です。
甲賀郡障害児教育研究会を核として、三雲養護学校と連携し定期的な研修プログラムの作成や、相互の情報交流、障害児教育に係る研究活動を支援していく場を整備します。
福祉圏に設置される養護学校は、その圏域のセンターとして位置づけられる必要があります。専門教員及び施設設備を持つ機関として、単に養護学校に通学する児童・生徒だけでなく、福祉圏域の障害児すべてについて必要に応じた援助ができるよう体制を整備することが必要です。
更に、教育相談機能の充実として、巡回相談や郡内の障害児学級担任を対象とした研修を実施します。
言語の発達や発音に障害がある児童・生徒が専門的指導を受ける機会を保障するため、「ことばの教室」の充実について検討します。
また、甲賀地域の適切な医療機関に専門職を配置し、専門的指導の拠点として教育現場でも利用できる体制の整備を検討します。
これまで利用対象者の拡大が図られてきた短期入所制度について、甲賀地域の短期入所受け入れ施設の拡大・専用枠の確保が急がれます。そのため近江学園・信楽学園の両県立児童施設に短期入所専用枠を整備する一方、利用する一人ひとりの障害児の生活サイクルに沿った処遇が受けられるよう体制を整備します。
また、時間利用や定期的利用、緊急時の送迎などについても利用できるよう検討していきます。
障害児の放課後の生活を充実させるとともにその保護者を支援するために、すべての障害児が利用できる学童保育所の身近なところでの確保をめざすとともに、養護学校の児童・生徒については、隣接する児童施設等でも受け入れられるように検討をすすめます。
障害児の長期休暇中の生活の充実と保護者を支援するため、ホリデーサービスの拡充を図ります。
また、夏期休暇に限らず、すべての障害児にとって充実した休日が過ごせるため援助スタッフの確保など体制の整備をすすめるとともに、ボランティアの育成を図ります。
エ.在宅生活を保障する総合的なサービス機能の整備とサービスの充実
緊急時や日常的な相談、療育指導を行う障害者生活支援センター機能を整備するとともに、ホームヘルプサービスの拡充やグループケア事業の活用等障害児とその家族の総合的な生活支援を推進します。
障害児を対象とした職業準備訓練の場として、養護学校高等部の職業教育の充実を図るとともに、障害児を対象とした専門の職業訓練校の設置について検討をすすめます。
義務教育終了学年での進路相談を充実させるため、障害児学級担任・養護学校教員・障害児の父母を対象に毎年5月頃「進路選択懇談会」を関係機関合同で開催します。
医療面でのサポートが必要な障害児の生活を支えるために、日常的な健康管理や保健指導を行い緊急時の対応も可能なシステムが必要です。このため、甲賀郡医師会の協力のもとに、県立小児保健医療センター等の県内の専門機関や保健所、町保健センターが連携し、障害の有無にかかわらず地域の医療機関に受診できるよう支援します。
甲賀地域では、滋賀県新社会福祉計画に基づき、障害者のその時々のライフステージに応じた適切なサービスが総合的に提供できる体制を整備するため、障害者就労促進部会を設置し、地域生活支援の取り組みを進めてきました。
しかしながら、障害者の就労や社会参加については、福祉と学校や職業安定所・医療機関・企業・団体等との連携が不可欠であり、また、障害者自身の積極的な社会参加意欲と就労や活動の場の整備が必要です。
平成6年に実施した「地域生活状況調査」によれば、日中の活動の場については、精神薄弱者では事業所勤務の常勤者が116人(31.5%)と最も多く、パートを含めると事業所勤務の人が33.9%を占めています。通所授産施設と共同作業所の通所者は併せて87人(23.7%)となっていますが、また施設への通所や就労等をしていない完全な在宅者も53人(14.2%)となっています。学齢期では、養護学校通学者が42人(11.4%)、中学校の特殊学級通学者が13人(3.5%)となっています。
また、身体障害者と精神薄弱者の就労状況については、水口公共職業安定所が平成7年6月1日に実施した雇用状況調査結果によると、甲賀郡内に本社のある規模63人以上の事業所で、法定雇用率(1.6%)を達成している事業所は41事業所となっており、常用雇用されている障害者数は、重度身体障害者数が21人、重度以外の身体障害者が84人、精神薄弱者が31人という状況であります。
障害者の就労や社会参加活動では、就労初期の段階において仕事への適応が難しく、信楽通勤寮や信楽学園の職業実地指導や公共職業安定所の職場適応訓練制度等における対応が重要です。
さらに、就労後においても、職場の人間関係の難しさや余暇活動の場がないなどの理由により、職場への定着が困難な障害者も多く、アフターケアとしての一定のサポートが必要です。
「地域生活状況調査」によれば、生活の場については、自宅(借家やアパートを含む)が304人(82.6%)と殆どであり、生活ホームが22人(6.0%)、グループホームが20人(5.4%)、社員寮が13人(3.5%)となっています。
現在甲賀地域には、生活ホーム13ヵ所、グループホーム6ヵ所がありますが、石部町・信楽町に集中しています。ホーム入所希望者数に対して、ホームの数がまだ少ない状況にあります。
また、甲賀地域では、就労している障害者を職場に通勤させながら、一定期間自立に必要な指導を行う施設として信楽通勤寮があり、甲賀地域からは6人(平成7年4月現在)の障害者が利用しています。
12才以上の人を対象とした「地域生活状況調査」で、作業所や通所授産施設への通所の希望者は、「学校卒業後の希望」が29人(7.9%)、「今すぐに希望」・「1~2年後に希望」を含めると、通所を希望する人は39人(10.6%)となります。また、養護学校高等部の卒業生の80%以上が一般就労困難とされているように(平成1~5年三雲養護学校卒業生29名中、作業所入所15名・企業就労3名)、作業所実習も重度障害者を対象とした療育活動を中心の編成が必要となってきています。この傾向は現在の養護学校児童・生徒の実態から見て今後一層高まるものと考えられます。
甲賀地域における共同作業所や通所授産施設の利用状況は次の表に示すとおりです。
表4-III-1 共同作業所の利用状況
作業所名 | 利用者数 | 職員数 |
くるみ | 13 | 3 |
さわらび | 8 | 2 |
石部 | 7 | 2 |
やまなみ | 23 | 10 |
つちやま | 9 | 5 |
甲賀町福祉 | 8 | 2 |
さつき | 25 | 6 |
(平成7年7月現在)
表4-III-2 通所授産施設の利用状況
作業所名 | 利用者数 | 職員数 |
サニーサイド | 30 | 9 |
さわらび | 30 | 9 |
(平成7年7月現在)
働く意欲がありながら、一般の企業等への就労が困難な障害者に対し、福祉的就労の場としての共同作業所や通所授産施設は、障害者の生産活動に大きな役割を果たしていますが、作業内容等から賃金が低額であり、また、利用者の高齢化の問題等が生じてきています。
日常生活上の相談では、地域に身体障害者相談員17人と精神薄弱者相談員7人が設置されています。
平成6年度の身体障害者相談員への相談内容は、全体で256件で「福祉制度の相談」が50件(19.5%)と最も多く、「社会参加の相談」は41件(16.0%)、「就職に関する相談」が12件 (4.7%)となっています。
精神薄弱者相談については、平成5年度の甲賀福祉事務所で受け付けた相談件数は全体で230件で、就職関係の相談は18件(7.0%)となっています。
また、甲賀地域では、信楽通勤寮に精神薄弱者生活支援センターが設置され、生活支援ワーカーが就労している障害者の相談・生活支援を行っています。
更に、職業安定所や保健所・各町・学校・施設・団体等さまざまなところで相談活動が実施されていますが、相互に連携を図りながら障害者の就労や社会参加の促進を図っていく必要があります。
通所授産施設や作業所への通所・企業等へ就労している障害者の中で、休日等の余暇の過ごし方が一人では困難な障害者に対し、余暇活動への支援が必要です。
甲賀地域では、平成3年から福祉事務所が中心となって「ふれあいサロン」を実施してきました。
平成6年度は年間10回開催し、約360人の参加がありましたが、参加者は比較的軽度の障害者に限られ、重度の障害者は参加希望があっても、移動手段やスタッフの関係等で参加できない状況にあります。
公共職業安定所など雇用関係機関や団体・学校・企業等と連携を密にしながら、相談活動の活発化を図るとともに、平成8年度に設置する障害者生活支援センター(仮称)においても、24時間体制の総合的な相談活動を行い、就労等に伴うさまざまな問題に対し側面的に支援を行うとともに、特に、就労している障害者については定期的な事業所訪問や家庭訪問を行い、就労の継続・定着化と社会参加活動の促進を図っていきます。
また、相談活動に従事する相談員等に対しても、必要な知識・技術等に対する研修を実施します。
公共職業安定所や雇用促進協会等雇用関係部門と密接に連携しながら、企業等に対して職場適応訓練制度等の周知を図るとともに、障害者の雇用促進に係る啓発活動を積極的に推進していくこととします。
特に、平成7年3月に設立しました甲賀郡障害者支援事業所協会は、現在、障害者を雇用する69カ所の事業所が参加していますが、この事業所協会で発行している広報紙等を通して広報・啓発や情報提供を積極的に推進するとともに、障害者が快適に働けるよう住みよい福祉のまちづくり条例に基づく事業所の整備を促進します。
更に、障害者の社会適応等への調査・検討を実施していきます。
また、通所授産施設や共同作業所における障害者の生産活動については、地域における就労の場として大きな役割を担ってきましたが、障害者が安心して生活できる収益を得ることは困難であり、県が平成8年度に実施する「共同作業所のあり方に関する検討事業」も踏まえて、必要な対策を講じます。
企業や授産施設・共同作業所等で働いている障害者の生活の場が少なく、親亡き後は生活に不安をかかえている状況にあるため、精神薄弱者のグループホームや身体障害者の福祉ホーム等を、おおむね人口一万人に2カ所程度の整備を地域バランスを考慮しながら検討します。
なお、現在設置されている生活ホームについては、障害者の生活の質の向上を図るため、グループホームへの移行について検討します。
また、障害者の社会参加活動を促進するため、従来から甲賀地域において町や広域で実施されている障害者スポーツ大会の振興を図るため、県障害者スポーツ協会の協力を得ながら、障害者スポーツ指導員の養成を図るなど、スポーツの普及・啓発に努めます。
更に、障害者が社会活動しやすい生活環境を整備するため、「滋賀県住みよい福祉のまちづくり条例」の普及・啓発を進め、まちづくりの促進を図ります。
また、心身障害者や精神障害者に対する地域住民の理解を深め、地域でさまざまなボランティア活動が促進されるよう、社会福祉協議会が中心となって、地域交流事業やふれあいの集い等の取り組みを促進します。
福祉事務所や施設が中心となって実施している「ふれあいサロン」について、平成7年3月に設置された甲賀郡障害者支援事業所協会に取り組みの中心を移行し、事業所等の事業主や従業員の参加を求めていきます。
また、支援事業所協会においてふれあいサロンに係わるボランティアの協力を求め、参加対象者の拡大や実施回数の増加などを図っていきます。
近年、ノーマライゼーションの潮流を受けて、障害をもつ人たちの福祉は、わが国がこれまで展開してきた入所施設中心から、地域での生活を中心に、必要に応じて施設を利用するという方向へ移行しつつあります。しかし、地域での生活を中心とした施策はほとんど未整備であり、施設を中心とした福祉が引き続き展開されている状況がみられます。
21世紀はまさに共存の時代であるといわれています。このため、障害をもつ人たちの地域での生活支援という視点を中心に置きながら、さらに安定した生活となるために、「療育」という営みとの関わりを考えながら、福祉施策の整備・充実が必要です。
これまで福祉サービスの相談窓口は、主として福祉事務所や町で実施してきましたが、相談内容が複雑・多様化し、また、緊急性を要するものが大部分であります。しかし、相談後のフォローアップとしてのサービスメニューがきめ細かく整備されていないこともあり、家庭訪問等による積極的・計画的な相談活動は不十分な状況といえます。また、利用者がサービスを申請する場合も、窓口への移動が困難であるなど、障害者やその家族にとっては必ずしも利用しやすいとはいえない面もあります。
甲賀地域には生活支援ワーカーが平成3年度より、心身障害児(者)コーディネーターが平成7年度より、ともに社会福祉法人しがらき会に委託され、甲賀地域を対象に活動しており、福祉事務所や町の相談窓口との連携を行いながら、サービスが利用しやすい相談活動が展開されるようになってきています。
障害をもつ人と暮らす家族の介護負担は、障害が多様であるように、その介護内容もまた多様です。また、その家族がもつ介護力は障害をもつ人を取り巻く家族の有り様が核家族であったり、母子家庭、父子家庭であったりすることでも、その介護の内容や質も異なったものとなっています。そしてその負担が有形無形にどっしりとあるのは誰もが否定できないことです。しかし、それらのことは障害児(者)をもつ家族の宿命として受け止められ、すべてのことに優先して家族が介護に当たっている状況にあります。
家族が快適に暮らすことが、障害をもつ本人が地域で暮らすことができる最初の条件です。いくら家族が障害をもつ人を愛していたとしても、精神的なストレスや、身体的疲労は地域で暮らすことができなくなる要因となってしまいます。
ショートステイは在宅で暮らす人たちの生活を支える有効なサービスの一つです。この制度は緊急一時保護制度として呼ばれていたことから、これまでは緊急を要する社会的理由による利用がほとんどでした。その後、「私的理由」でも利用が可能になるよう制度が改正されましたが、利用者にそのことが十分に知られていなかったり、事務手続き上の問題や意識的な面で、私的な理由では利用者として申し出にくい状況もあります。
利用頻度についても、これまで受け入れ施設が少ないことや、利用者も十分に制度を知らなかったため、消極的な状況にあります。
また、現状では入所施設がショートステイを受け入れることが困難な場合もあります。入所施設は、日々の入所者の処遇に追われているということや、入所している人のケアーだけでも困難なケースが多いために、人的不足や物理的にスショートステイのスペースがないということがその主な理由になっています。
近年、成人の入所施設が建設される場合は、ショートステイサービスの専用ベットを併設・確保されていることが一定の条件になっていますが、甲賀地域においては早い時期に開設された施設が多く、はじめからショートステイ専用のベットが整備されていないということがあります。
そのような条件下、甲賀地域の入所施設はショートステイサービスに対しての整備が不十分であり、積極的にショートステイサービスの受け入れを行っている施設にはその利用が集中する傾向にあります。
信楽青年寮が平成6年度より始めたレスパイトサービスと併せて、平成7年度より甲賀地域の各町が共同でホームヘルプサービスを開始しました。信楽青年寮に各町が委託契約を結び実施をしているところです。現在は利用希望のある5町と委託契約を結び、4月~9月までの利用実績は延べ160件、400時間を越えています。
制度としては、障害の程度が重度の人についてのサービスであるために、中度・軽度の人はその対象になっていません。また、障害の認定が重度の人であっても、児童の場合は外出時の移動の介護は受けられないということがあります。
また、身体障害者のホームヘルプサービスは、平成6年度は2町において5人を設置していますが、派遣世帯数は11世帯となっています。この中には老人のホームヘルパーが障害者の世帯に派遣されているものも含みますが、利用状況は全般に少ない状況にあります。
また、視覚障害者に対してはガイドヘルパーの制度があり、聴覚障害者に対しては手話通訳者の派遣等の制度がありますが、いずれも公的な用件に必要な場合のみに適用される制度であり、視覚障害者や聴覚障害者の日常生活上のニーズを十分に満たしているとはいえない状況です。
信楽青年寮が昨年度レスパイトサービスとして始め、今年度より甲賀郡生活支援サービスに改名されました。制度としては、未整備な部分を担っており、信楽青年寮の自主的な取り組みとしてサービスを展開中で、平成7年度4月~9月の利用は350件、600時間を越えています。
共同作業所はさまざまな障害をもつ人の就労の場と集団生活の場として、唯一ウィークデイの継続したデイアクションの役割を担っています。運営の未整備な状況の原因には、運営面の経費的な困難さに起因する慢性的な指導員の不足などがあげられます。障害をもつ人たちが地域で日中のデイサービスを選択しようとしても選択肢が他にないので、通所する動機が明確でなく、受け止める作業所も個別のニーズに対応できていないことがあります。
また、身体障害者デイサービスについても、甲賀地域では未整備の状況にあり、今後、利用対象者の把握や実施個所数も含め、具体的な実施方法等についての検討が必要です。
甲賀地域においては、信楽町にその数は集中しています。また、利用している人たちのほとんどが入所施設のいわゆるOBたちであり、このことから在宅生活からホームを利用するということは,現状としては難しい状況下にあるといえます。
運営の体制は、キーパーが一人で、それを入所施設がバックアップするというものですが、キーパーにそのすべてが委ねられているようなものです。そういう意味から、地域の生活の場としてさらに安定したものとなっていくためには、例えば,障害が重くてもホームでの生活が実現できたり,在宅生活から入所施設を通過しないでもホームで生活ができるように、キーパーの複数制などの新しいシステムが必要となってきます。
脳性麻痺、進行性筋萎縮症などの障害をもつ人たちが、加齢に伴う身体機能の低下により、家庭での介護を受け完全在宅を余儀なくされている人もいます。また、脳血管障害、交通事故等による後天的な障害者については、医療機関の入院や在宅治療を受けていますが、病状が固定して退院できる状態になった場合や家族の介護が困難な場合等は、身体障害者療護施設への入所などの援護措置、あるいは、特別養護老人ホームや老人保健施設へ入所することが多くみられます。
甲賀地域では、身体機能の維持や強化に取り組む総合的なリハビリテーションを行うところがなかったり、また、重度身体障害者の在宅での生活を可能とし、また在宅生活を継続するために、身体機能の維持や強化を中心とした生活訓練、適度な休息と社会的介護を受ける機会、また生きがい活動等を支援するための「医療・保健・福祉サービスのネットワーク」づくりが不可欠です。また、障害の重度化、症状の重症化と予期せぬ受障について当事者と家族の相談を受け付け、必要なサービスのコーディネートを果たす機能の整備が併せて必要です。
甲賀地域を活動範囲とした身体障害者福祉協会甲賀支部が設置されていますが、会の果たす機能として、今のところは、スポーツ大会の実施や参加が主な活動となっています。スポーツ大会等の社会参加活動を促進するためには、交通手段等の確保のための一定の支援とボランティア活動の育成等が必要です。
また、盲人福祉協会甲賀支部では、自助・互助の基本理念の下、ガイドヘルパーや点字・朗読奉仕者等の拡大に向けて活動を展開しています。
聴覚障害者については、甲西町と水口町に聴覚障害者福祉協会が設置されていますが、社会参加に不可欠な手話通訳者や要約筆記者等コミュニケーション手段の確保が課題になっています。
なお、甲賀地域では、各町の身体障害者相談員が「滋賀県身体障害者相談員甲賀連絡協議会」を設置して、隔月に各町持ち回りで自主的な研修会を開催し、日常の相談員活動の充実を図っています。
福祉機器の活用は、一般的に成人期のうちでも脳卒中後遺症を中心として、地域リハビリテーションに取り組み、本人の自立への援助と介護者の介護負担の軽減という二つの面から効果を得ています。そのための指導体制の整備として、平成6年度から各町からの分担金で甲賀病院に理学療法士を1名確保し、一定の成果を得ていることから、今後、他の障害者のリハビリテーションを考えるうえでこのような取り組みを進める必要があります。
近年、機器に対する考え方は、単に個人の障害・生活に関わるものから、社会環境側に関わる機器をも包括する現状にあります。障害をもつ人が、地域社会の中で自立した社会活動を行うための機器と考えることも必要です。
甲賀地域では障害をもつ人の活動の場は、少ない状況にありますが、たとえその場が確保されていても、実際にその場所がその人に合った状況にあるかどうかは、共同作業所等の課題からも伺えるようになかなか難しい状況にあります。
また、介護度が高い人たちにとっては、昼間の活動の場の確保と同時に、生活支援や医療、機能訓練等との連携が不可欠です。
このため、平成12年度までには一定の活動の場の確保について、甲賀地域のニーズを十分に把握し、デイサービスセンター、通所施設、重度障害児(者)通所療育事業などの検討を行います。
各町での相談業務と障害者生活支援センターとのネットワークを充実し、窓口の一本化を図るとともに、コーディネーター機能の拡充を図っていきます。平成11年までには精神障害者と身体障害者に対してもそれぞれの専門的なコーディネーター機能を整備し、個々の相談・課題についてサービス調整会議を機能させていきます。
また、ショートステイやホームヘルプサービスの利用申請については、今後利用が増加することが予想されますが、将来的には、電話やファックスでの申し込みなどを通して利用申請がスムーズにできるよう、利用しやすい対応方法について検討をしていきます。
現在、24時間体制・365日体制で生活支援が行われていますが、民間の努力による部分が多い状況にあります。このため安心して利用できるよう、障害者生活支援センターの設置やホームヘルパーの増員を行い、障害の種別・程度にかかわらず、すべての障害者が必要なときに利用できるようサービス内容の充実を図ります。
医療ケアとの接点を必要とする重度の障害をもつ人の活動の場としての機能や、すべての障害者に日常の交流や活動・生活面での機能訓練が提供できる機能をもつデイセンターやデイサービスセンターの併設について検討を行います。
また、共同作業所が福祉的就労の場と併せて、地域における多機能をもった障害者の活動の場として、安定した運営が確保できるよう、平成8年に県が実施する「共同作業所のあり方に関する検討事業」も踏まえて、甲賀地域での今後のあり方についての検討を行います。
平成12年までに、障害者が利用しやすいよう地域バランスを考慮しながら整備を図ります。設置形態としては、公立民営など最も適切な方法を検討するとともに、それらを支援するシステム作りも併せて検討します。
現在、入所施設は親亡きあとの安心できる生活の場として利用希望が多くありますが、ホームも親亡きあとの自立生活の場として定着化を図ります。
障害のある人の宿泊を伴う夜間帯のケアは入所施設を利用するショートステイがありますが、突発的な事由により緊急一時的な対応を必要とする場合としてナイトケアの機能を整備します。そこでは、本人の日常生活を大きく変化させないためにも、家庭的雰囲気があるところでサービスを利用することがより望ましい形態であるといえます。また、夜間の一時的な時間帯の利用についても整備を行います。
町や保健センターで対応していますが、より住民にわかりやすく気軽に相談できるように障害者生活支援センター(仮称)での相談活動を充実します。また、専門家によるチーム訪問を行い、住宅改造と福祉機器の導入、導入後の使い方の指導やフォローアップ等を検討し、継続性をもった相談体制とします。
機器の情報提供、福祉機器を実際に使ってみるための展示スペースを設け、必要に応じ住民が来所し、相談できるようにします。
平成8年11月に県立の補助器具センター(仮称)が竣工する予定ですが、福祉機器の情報提供・改良・開発など地域では解決できないことへの技術支援などの役割を担うことが期待されています。適切な機器が提供できるように補助器具センター等の協力を得て、町保健センターや施設等と連携しながら、福祉用具ネットワーク事業としてチーム訪問による評価・検討会議の設置や福祉用具の簡易な製作・小修理を行います。
現状としては、福祉機器の情報量に限度があり、障害をもつ人に情報が十分に伝わっていない状況にあります。このため、住宅改造や適正な福祉機器の普及について啓発を積極的に推進します。
全国の身体障害者(児)、精神薄弱者(児)、精神障害者という種別障害者数と各々の施設数を比較すると、精神障害者の施設が非常に少ない状況にあります。
このことは、従来の精神障害者に対する施策が「疾患」としての枠でしかとらえられず、必要な施策は医療(病院)だけであるという時代が長く続いたことによるものです。
昭和62年の精神衛生法改正により、ようやく社会復帰施設の整備が具体化されたものの、保健医療施策の範囲にとどまっていたため、依然としてその整備は他の障害者施設と比較すると立ち遅れた状況となっています。
更に、甲賀地域の精神障害者数は千人を越えるものと推計され、これらの家庭は親亡きあとの本人の生活に常に不安を抱かざるを得ませんが、精神障害者とその家族の地域生活を支援する施策は不十分な状況にあります。
新たな障害者基本法の成立により障害種別の壁が取り払われた今、甲賀地域においても保健・福祉という新たな視点から、精神障害者が自立生活していける地域づくりを進める必要があります。
一般に、精神障害者は症状が安定している状態よりも悪化時の行動だけが過剰に認識されたり、精神疾患特有の「生活のしづらさ」(他人には怠けているとしか見えないなど)が理解され難いため、他の障害者に比較して偏見や誤解が多く残っています。
このことは、甲賀地域の患者の6割が地域外の病院に通院している事実や、地域の偏見(反発)のために長期入院を余儀なくされている患者(いわゆる社会的入院者)の存在が端的に示しています。
遠くの病院に通院する、退院後も自宅に帰れない、地域からの追い出しを受ける、就労ができない、自宅に引きこもり社会性が失われるなど、精神障害者およびその家族が抱える問題は、福祉的サービスが十分に受けられないことだけでなく、依然として残る偏見や誤解によるものが多くあります。
ノーマライゼーション理念に基づき、どの障害者もその人格を尊重され、自立した生活や社会参加ができる地域社会を築き上げるためには、根強く残る偏見をなくす努力が必要ですが、言葉や文章で正しい理解を訴えるだけで済むものではないと思われます。
そのため、健康教室や講座・健康教育等により正しい理解を地域へ広めていくとともに、障害者本人の社会参加活動や地域活動を通して、地域住民の理解を高めていくような取り組みが必要です。
具体的には、精神障害者の地域活動や交流事業に自らの意思でするボランティア活動を通じて、精神障害者の地域生活を支援する者、各種事業の協力者さらには地域における正しい理解者の1人として、地域に広めていくことが大切です。
ただ、このボランティアの養成にあたっては、単に講座を受講するだけでなく、各種事業への参加により障害者との交流機会を設け、実体験を通したより深い理解や認識が得られるようにしなければならないことに留意する必要があります。
根強く残る地域の偏見や反発を解消し、障害者の地域生活への理解を得ていくためには、行政とともに作業所やボランティア等の地域住民が障害者と互いに関わりあいながら生活を支援している場面や、障害者本人が社会参加活動をしている姿を地域住民に明らかにしていくことが最も重要なことであります。
家族の高齢化や世代交代、更には家庭崩壊を主な要因として、病状は安定しているものの帰るところがないために長期入院を余儀なくされている患者がいることは全国的にも社会問題となっていますが、甲賀地域の精神科病棟でも同様の患者は毎年約十数名がいるといわれています。
この現状は、明らかに医療、保健サービスしか受けらず、家庭や地域で受け入れられなければ入院しかない精神障害者の実状を示すものです。
いうまでもなく、これらの患者はグループホーム等の生活援助の場があれば、地域社会で自らの生活を営むことができるのです。
就労が困難な精神障害者の在宅生活においては、経済的、精神的にも家族は大きな負担や不安を抱え、一方、単身生活者は親類縁者等の支援者がいなければ自立した生活を維持することは困難です。
親が高齢化したり、精神障害者が老齢化した親の世話をしなけらばならないような場合、或いはアルコール依存を含む薬物中毒患者等においては家庭崩壊に向かう場合が多く、介護力のある農村型の大家族から核家族へ進む今後はこの状況はさらに顕著になるものと予測されます。
日常生活の支援や介護を受けられない現状では、在宅が無理なら入院しか選択できず、地域社会での生活を自らが決定し、安心して生活することは困難な状況にあります。
精神疾患はその安定した状態よりも悪化時の症状が目立つため、依然として偏見や誤解が取り除かれていません。
病状が安定し退院できる状態にあるにもかかわらず、社会的理由により入院継続を余儀なくされることも少なくありません。
この地域の反発を解消していくためには、常に関係機関や関係者等が訪問し、関わりを持っていることを地域住民に示し、支援者がいれば問題なく地域生活を営むことのできる姿を明らかにしていくことが必要です。
各障害区分ごとの平成7年度当初での県内施設の設置状況は以下のとおりです。
(県内) | (甲賀地域内) | |
・身体障害者援護施設 | 16施設 | 2施設 |
・精神薄弱者援護施設 | 27施設 | 7施設 |
・精神障害者社会復帰施設 | 3施設 | なし |
・共同作業所 | 74施設 | 6施設 |
・精神障害者共同作業所 | 5施設 | 1施設 |
このように、精神障害者の社会復帰施設の整備は、現在は社会復帰施策の柱とされていますが、その施策の具体化は昭和62年の精神衛生法改正から取り組みが行われ、他の障害者施設からみれば不十分な状況にあります。
このことは法制化や施難が遅れただけでなく、精神障害者のニーズが表面化し難いことによることが大きい面もあると考えます。
作業所等の働く場や精神障害者が集える場に対するニーズは、病状の安定期と急性期を繰り返すことによってその内容も変化すること、本人の理想が現実と合致し難いこと、偏見により家族が隠そうとすることなど、精神疾患特有の事情により潜在化する傾向にあります。
平成7年度現在、甲賀地域7カ所の共同作業所に通う精神障害者は20人ですが、上記のようにニーズが潜在化しがちな現実を考慮すると、はるかに多くの対象者が存在することは明らかと考えられます。
ともすれば社会から隔絶されがちな精神障害者に、偏見を受けることなく地域社会に参加できる場を提供できるよう、その実態およびニーズを把握し、明らかにしていく必要があります。
従来、甲賀地域において精神障害者が通える社会復帰の場は、保健所の社会復帰教室と各町に設置されている混在型共同作業所しかなかった状況から、平成7年度に精神障害者共同作業所が設置されました。
しかしながら、共同作業所はその財政事情等から決して余力のあるものではないため、新たなサービスを作業所に付加していくことは困難です。
また、甲賀地域の精神疾患を有する患者数は年々増加する傾向にあり、それとともにさまざまなニーズが増加していくことを考慮すれば、甲賀地域内に1カ所の共同作業所では不十分であり、精神障害者数やそのニーズにあった次への展開が必要です。
更には、管内の混在型共同作業所が法人化する方向に進めば、そこに通所する精神障害者は施設の通所対象から外れてしまうことも考慮していく必要があります。
精神障害者の就労に向けての相談窓口や制度は、公共職業安定所における就労相談と、保健所における職業リハビリテーション事業の利用があります。
いずれにしても、雇用促進のための諸制度は整備されているものの、事業主側の精神障害に対する認識、理解が得られにくいのが現実となっています。
特に精神障害者は、その対人関係に過敏でストレスに弱いことが一般的であるため、長期就労を維持するためには事業所側の正しい理解が不可欠です。
さらに、受け入れ事業所の確保、拡大のためには精神障害者の認識、理解を雇用主に対して広めていくことが当面の課題と考えます。
就労が困難またはその段階に至っていない精神障害者は、病気の陰性症状により対人関係を苦手とし自宅に引きこもりがちとなり、社会参加・地域参加を閉ざす傾向にあることが一般的です。2週間に1回の通院以外はほとんど外出しないような人が多い状況です。
現状では、通院以外に精神障害者が日常に通うところは共同作業所と保健所の社会復帰教室ですが、共同作業所は作業をすることが前提で、社会復帰教室もプログラムをこなさなければならないなど、双方とも一定以上に病状が回復し、集団適応能力を有する人が対象となります。甲賀地域の推計患者数が千人を超えていることを考えれば、作業所と社会復帰教室の対象が合わせて数十名であれば、現実には作業所や社会復帰教室の対象にも達しない障害者の方がはるかに多くなります。
このような行き場のない在宅患者や入院患者も自由に通い話し合える場、さらには一般の人々とふれあえる場としてサロンがありますが、全国的にもボランティアや家族団体により設立が進められ、県内でも数箇所、保健所内にサロンがボランティアの協力により設けられています。
病状安定期においては出来る限り人とふれあい、社会活動に参加することにより対人関係能力や社会適応能力、規則正しい生活リズムの回復を図り、更には気軽に悩みを話し合うことにより精神面の安定を図ることが大切です。
甲賀地域においても、共同作業所に適応できる者とそうでない者も通える場が選択でき、病状安定期にある精神障害者が偏見を受けることなく自由に通い、悩みを話し合える場のある地域づくりを進める必要があります。
保健所や町で実施する健康教室や健康教育、相談等を通して、精神障害に対する正しい知識の普及・啓発を図るとともに、さまざまな広報媒体を活用して普及・啓発活動を推進します。
更に、施設や作業所、病院等と連携して、精神障害者の社会参加の活動の場を可能な限り整備し、地域住民との交流やふれあいを通して理解の促進を図ります。
社会福祉協議会やボランティアセンター等の協力を得ながら、精神障害者の社会参加活動に係わるボランティアの発掘・育成を行い、活動の輪を広げていくこととします。
また、ボランティアの発掘・育成に当たっては、講座等によるものと併せて、精神障害者やその家族等との交流事業を通し体験研修に配慮します。
断酒会活動については、昭和56年度から甲賀支部が誕生し、水口町を中心に支部活動が取り組まれ、定例化しています。また、支部の育成が進められた平成2年度から、新たに信楽支部が誕生し、本人・家族を含めた参加がみられます。
一方、精神障害者の患者会や家族の会の活動は必ずしも十分ではなく、むしろ活動が停滞している状況にあります。
障害者相互の情報交換やストレスの解消・生活の安定・社会参加活動の促進を図る上からも、家族の会等の活発な活動が望まれ、また、家族の会自身も日常生活のさまざまな問題に対し、積極的に取り組む自助努力が大切です。
このため、施設や作業所・医療機関等と連携しながら家族会の育成をすすめ、活動を促進します。
精神障害者はその精神疾患から生じる能力障害により、退院後や病状の安定期においても生活のしづらさ(ハンディキャップ)を残すことから、単身生活においても援助者を必要とするケースが多くなります。
このため、精神障害者の生活の場を確保するにあたっては、生活援助者を伴うグループホームまたは福祉ホームを医療機術や就労の場(授産施設等)の身近に整備することが必要です。
また、これらの施設は運営的にも単独設置よりも基幹施設のバックアップを受けながら運営することが望ましいと考えられているため、基幹施設を持つ社会福祉法人が行政の支援のもとに設置運営することが適当と考えます。
平成12年度までにグループホームを圏域内3箇所を目標に、基幹施設となりえる通所授産施設等の設立検討の協議において、同時にその整備検討を進めていきます。
現在、在宅の精神障害者を訪問し、相談や病状悪化の防止を行うのは保健所の保健婦が中心ですが、平成9年度の地域保健法施行により精神保健の対人サービスが保健所と市町村の業務となるため、これにあたっては県と町が相互に十分連携を図りながら体制の整備を図ります。
生活障害を有する精神障害者の日常生活を支援するためにはホームヘルプサービスが最も有効かつ具体的な施策の一つであります。
このため、精神障害者に対してもホームヘルパー派遣の制度が適用されるよう求めていきます。
また、ヘルパーの養成課程に精神保健分野を設けるよう働きかけていきます。
家庭を訪問し、相談に応じたり病状悪化を未然に防ぐような保健・福祉サービスは、基幹施設を運営する社会福祉法人への委託が最も適切であると考えられます。
委託等の方法により民間法人を活用するなど、基幹施設の機能付加を図る方法を検討します。
平成7年度に初めて郡内に精神障害者共同作業所の運営が開始されましたが、今後のニーズの増加や甲賀地域内の共同作業所の授産施設化への進行等を考えると、新たな機能を展開できる基幹施設として、通所授産施設の設立を施策の目標に掲げる必要があります。
設置形態としては、町および関係機関が運営協議に参画し、運営主体は社会福祉法人等であることが望ましいと考えます。
設立にあたっては、平成12年度運営開始を目標とし、村保健所、福祉事務所、町および関係機関による協議母体を設け、検討を進めていきます。
小規模作業所はその運営基盤の脆弱さから、新たな機能の展開を図ることは困難ですが、法人が設置運営を行う授産施設等であれば可能であります。
授産施設を単に作業をする場としてでなく、気軽に立ち寄れる憩いの場(ディセンター)、相談窓口、訪問サービスなどのさまざまなサービスを各町が委託という形で施設に機能付加していくことにより、充実した地域福祉サービスを提供できる体制の整備をはかります。
精神障害者の就労に向けては、公共職業安定所および保健所にて一定の雇用促進制度は整備されていますが、事業主側の精神障害者に対する認識、理解が不十分なために受け入れ事業所の開拓が進まないことが直面している課題です。
このため、現在、甲賀福祉事務所に事務局が設置されている甲賀郡障害者支援事業所協会の場を活用し、積極的に正しい理解、認識の普及を図り、併せて精神障害者の雇用にあたっての協力事業所の開拓を促進します。
一般就労や共同作業所への通所も困難で、他に行くところのない精神障害者が定期的に集い、社会参加のできる場としてサロンの設置を検討します。サロンは気軽に参加し、一般住民とのふれあいが大切であるため、行政主体よりも民間団体等を活用することが望ましいと考えます。
方法としては、ボランティア団体による設立と、作業所等の施設の活用(機能付加)が考えられます。
ボランティアによる設立については、現在、県内では各保健所にてボランティア養成が進められ、ボランティアによる自主グループが設立し活動を始めているところであり、これらの団体の自主的活動を行政が支援することによりサロンの設置が可能となります。
甲賀地域内に1カ所を設置し、地域に精神障害者の誰もが自由に集える場所を提供することにより、自宅にこもりがちとなる精神障害者を地域社会に引き出し、潜在化する精神障害者の存在やニーズを明確にしていく必要があります。
主題:
甲賀地域障害者福祉計画 No.1 1頁~63頁
発行者:
発行年月:
1998年6月
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