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台東区障害者福祉計画

平成8年3月

台東区

3.高齢障害者への対応と障害者の高齢化対策

(1)障害者の高齢化と高齢期障害者の相関

 近年における身体障害者数の推移を年齢階層別にみると、高齢期に達した障害者が圧倒的に多くなっている。平成3年度、厚生省「身体障害者実態調査」によると、身体障害者総数に占める70歳以上の高齢者の割合は、実に33.7%に及んでいる。さらに、65歳以上が15.1%(合計48.8%)、60歳以上が13.9%(合計62.7%)となり、高齢期障害者の割合の高さを顕著に示している。(表1)
 また、障害の疾患別に身体障害者数(平成3年度、厚生省「身体障害者実態調査」)をみると、肢体不自由が30%、聴覚・言語障害7.7%、視覚障害5.7%、内部障害14.7%、その他・不明・不詳41.7%となっている。この中から、肢体不自由者の内訳をみると、脳性マヒ等の先天性疾患が6.8%に対し、脳血管障害等の後天的な疾患が23.3%を占めるに至っている。これに、比較的高齢期の割合が高いと予測される内部障害14.7%を加えると38%を占め、その他・不明・不詳の中にも多くの高齢者が含まれると思われることから、年齢階層別にみた高齢期障害者の割合の高さを障害疾患別にみた身体障害者数が裏付けていると言えよう。(表2)

 身体障害者に対しての身体障害児の割合では、平成3年度の身体障害者数2,722,000人に対して、身体障害児(18歳以下)は81,000人と、その割合は3%に満たない。また、昭和62年を100%とした平成3年の比率は87.6%と逆に12.4%減少していることが分かる。身体障害者(18歳以上)が同比率112.8%と12.8%増加していることと比べると対照的である。(表3)
 以上の数値でみる限り、身体障害児者については、先天性及び若年期での障害発生は年々減少しているのに対し、18歳以上、特に65歳以上の高齢期で障害が発生している例や40代、50代で受障した人たちの高齢化率が非常に高くなっている事が分かる。

 平成7年度版台東区行政資料集でも、台東区における平成6年度身体障害者総数5,520人に占める18歳以上の割合は5,451人(98.7%)になり、18歳以下の69人(1.3%)を大きく引き離している。ただし、本区については、転出や死亡にともなう身障手帳抹消未届け率が2割程度あると予測されることから、この比率を勘案すれば、約2%となる。これは国の比率3%よりかなり低いが、本区の高齢化率(平成6年度17.8%)からすれば、ほぼ順当な数値であると言えよう。(表4)
 また、平成5年10月に作成した「台東区心身障害者(児)実態調査」によれば、有効回答数2,209人に占める高齢者の割合は、70歳以上が34.1%、60歳代が27.1%(合計61.2%)を占め、厚生省統計62.7%(平成3年度)とほぼ同数になっている。19歳以下は、4.9%となり、厚生省統計約3%(平成3年度)より高いが、厚生省統計が18歳以下で区切っていること、また、本区調査の有効回答数の割合を加えて調整すれば、これについてもほぼ順当な数値と考えることができる。(図1)

 次に、「台東区心身障害者(児)実態調査」から、本区における身体障害者の障害発生時期についてみると以下のとおりである。「50代」が17.3%で最も多く、「60代」が15.3%、「70代」が8.8%となり、この層が全体の52.9%を占めている。60代以上の高齢障害者の占める割合61.2%を支えている人たちの多くが「40代」以降に受障した人たちであることが明らかである。(図2)
 これに対して、受障時期のもうひとつのピークは幼児期になっている。「0歳」が11.5%、「1~5歳」が12.2%で全体の23.7%を占める。この層は、先天性障害、出生時障害、あるいは、幼児期に障害が発見された場合や幼児期に受障した人たちであると考えられ、現在、学齢期「6~18歳」及び「18~40代」の施設利用者層の予備軍を構成していると考えられる。
 以上みてきたように、身体障害者を構成するには大きく分けて2つのタイプがあることが分かる。第1は、「40代以降」に受障し、現在の高齢障害者を支える層、第2は、「幼児期」に受障し、現在学齢期及び施設利用期にさしかかる層である。
 そこで、高齢障害者の中で先天的、あるいは幼児期に受障した人の占める割合を調べてみたが、現在では詳しいデータが存在しない。そこで、「台東区心身障害者(児)実態調査」の中の有効回答数2,209人に占める「脳性マヒ」82人(3.7%)について抽出して、その年齢構成を調べてみると表5のとおりである。「40代」の18人をピークに、「50代」13人、「60代」11人、「70代以上」になると3人に激減していることが解る。脳性マヒ者のわずか3.7%にすぎない。これを有効回答数全体に占める「70代以上」の障害者34.1%と比較すると、ほぼ1/10という結果になる。「脳性マヒ」の抽出のみで全体の結果とする訳にはいかないが、この一例からみても、先天的、あるいは幼児期に受障した人の高齢化率はかなり低いことが予測される。
 また、身体障害児者と比較すると精神薄弱児者は一層明確である。平成2年度、厚生省「精神薄弱児(者)福祉対策基礎調査」によると、60歳以上の高齢者の占める割合は4%(283,800人中11,600人)である。(表6)
 台東区の平成6年度行政資料集で、同じく平成2年度の実態をみると、65歳以上の精神薄弱者は2.6%(536人中14名)となり、5歳の差を勘案するとほぼ同率程度と推測されよう。(表7)また、前出の「台東区心身障害者実態調査」からみると、60歳以上の精神薄弱者の占める割合は、7.6%(回答者267人中20人)となっている。これらは、前項で記した脳性マヒ者の60歳以上の高齢化率17%(70歳以上3.7%)と比べても、精神薄弱者の場合はかなり低いと言わなければならない。
 したがって、今後の障害者福祉を推進するに当たっては、障害者の高齢化に対応した施策展開、すなわち、高齢者福祉との接点をいかにするかという点、及び高齢期をむかえた先天的障害者への対応について積極的に取り組む必要がある。

(2)高齢障害者への対応

高齢者福祉と障害者福祉が年齢を軸とした区分けだけで成立し得ないことは、これまでみてきた通りである。従って、今後は異なった法律体系を前提としながらも、より実態に則したものに改革していく必要がある。平成7年5月11日付内閣総理大臣官房内政審議室長通知「市町村の障害者計画策定に関する指針について」の中でもこの点に関して「在宅福祉サービス等障害者施策と高齢者施策が共通する部分が多い施策分野では、可能な限り一体的な推進により、効率化を図ることが望ましい」と市町村レベルでの実務的、現実的対応の必要性を示唆している。
 こうした観点から本区の実態をみると、法体系の枠組みに準じて同一施策を別々の組織で実施している例や、法律体系の枠組みに生ずる谷間の中で、具体的なサービスの手が届かない人たちが生じていることが明らかである。以下、住民サービスに直結した基礎的自治体としての本区がかかえるいくつかの問題点と課題に関して提案することとする。

ア.法体系による縦割り事務の改善
 現行の行政組織は、65歳という年齢を軸に、65歳以上が高齢者福祉部(老人福祉法)、65歳未満が福祉部・障害者福祉課(身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法)が担当する縦割り組織をとっている。しかし、サービスの具体的内容からみると、利用要件に若干の違いはあっても、全く同じサービスが高齢者・障害者の両分野で実施されている例が多い。とくに、ホームヘルパーの派遣、ショートステイなどに関しては、両組織が別々に実施していることから生ずる不都合がである。また、日常生活用具の給付、貸与に関しては、ほとんど同一の用具が給付、貸与品目として計上されており、その品目も多様である。そこから、年齢を軸とした対応に関しても、制度適用にバラつきが生じ、サービスの提供に関して一貫性を欠く場合が生じている。
 また、これは、事務効率の面からみても、同様の事務を2つの組織で実施することから生じる非効率は避けられず、事務本体はもとより、利用者をめぐる両組織のトラブルや調整などの仕事が追加されている。
 これらの問題点や非効率を改善するには、各福祉法に基づく法体系の違いはあっても、基礎的自治体としての行政組織を一体化することで、ある程度の対応は可能である。具体的には、高齢者福祉部、福祉部障害者福祉課の共通する事務を一本化し、相談(インテーク)の段階で適用すべき法体系を選択していく方法である。この方法の導入には、高齢者福祉部、福祉部の組織改正など、今後の検討を前提とするが、他の自治体でも、基本的には同方向に基づいた改善を進めており、本区についても事務改善の意味からも今後に取り組むべき課題となっている。
イ.法体系から生ずる谷間の改善
-ショートステイ事業を通して-
 ショートステイ事業に関しても65歳という年齢を軸とした縦割りサービスの体制が取られている。本区の現状をみると、65歳以上の利用者は、特別養護老人ホーム(区内3カ所、区外1カ所、計14床)でのショート(ミドル)ステイが確保され、一定の介護、看護体制が保障されている。一方、65歳未満の利用者は、民間の小規模施設(区内3カ所、3床)に委託する方法がとられている。しかし、この場合、施設規模や設備状況、また介護体制の不備(多くがボランティア対応)、看護体制が無いことなど厳しい条件下に置かれている。したがって、特別養護老人ホームでのショートステイと比較すると利用対象者が限られている。医療的配慮を要する場合など、民間施設の対応能力はかなり低い現状にある。特に、50歳~65歳に位置する脳血管障害や内部障害者の利用希望に対応する客観的条件はほとんど備えられていない。65歳という年齢を軸とした場合、この層に所属する者は、現サービス体制を前提とする限り、老人福祉、障害者福祉の対象としてほとんど手の届かない存在になってしまう。
 これに関しては、65歳未満、すなわち障害者福祉分野でショートステイサービスの充実を図るべきだという考え方もあるが、現実には、特別養護老人ホームに準ずる施設機能を備えた障害者施設の絶対量が全国的にみても全く不足している現状(将来的にも新規設置が望めない)では不可能と言ってよい。これに対して、特別養護老人ホームの増設は現在でも積極的に進められている。従って、ショートステイ事業に関しては、ある程度年齢の枠を取り払うことで、65歳以下の障害者がショートステイを利用できるよう配慮していく必要がある。
 この場合、老人福祉法、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法による法体系からくる制度間の壁があることは否めないが、先の内閣総理大臣官房内政審議室長通知に示された「一体的実施の推進」の方針も出されていることから、実務的解決は可能と思われる。
ウ.縦割り事務の改善による効率化-ホームヘルプサービスを通して-
 ホームヘルプサービスに関しては、身体障害者手帳及び愛の手帳の存在が、逆に65歳を軸とした年齢枠を取り払ってしまっている。平成6年度における障害者福祉分野のホームヘルプサービス利用者86名の年齢構成をみると前出(表9・ホームヘルプサービス利用者年齢別構成)のとおりである。
 65歳以上の利用者が45名と全体の52%を占めている。60歳以上を含めれば59人(69%)の利用者が高齢期にさしかかっており、40歳以下の利用者はたったの1名にすぎない。従って、当事業に関しては障害者福祉分野からのホームヘルパー派遣は、その多くが高齢者であり、高齢者福祉との区分けが大変難しくなっている。
 高齢者福祉分野からの派遣についても、制度の性格上、派遣先の高齢者は、何らかの身体的、精神的障害を生じている場合に限られる。多くの場合、利用者本人及び家族の事情から手帳の交付申請を行ったかどうかが、派遣機関を分ける結果になっている。すなわち、派遣対象先がほとんど同じであるにもかかわらず、手帳の保持を軸に高齢者・障害者両組織に分かれて制度対応をしている不合理を生じていると言わなければならない。
 派遣対象者を障害種別でみても、脳血管障害等の後天的な高齢期受障者が圧倒的多数を占めており、この点からも高齢者福祉との境界はほとんど存在しない。また、視覚障害者の利用も多いが、サービス内容は家事援助が多く、サービス内容に関する障害者としての特別な配慮を必要とする例は少ない。こうした現状を前提とすれば、サービス内容に障害種別による特別な配慮を必要とする利用者が多少含まれたとしても、それらは個別の解決を図ることとして、事業全体の効率化を図るため、高齢者・障害者に分かれている事業を一本化することが必要である。
エ.成人・壮年期受障者への施策充実
 脳血管障害者や難病等による中途障害者の中で、40代、50代に受障した人たちに対する福祉施策は、先天性の障害者や高齢期障害者と比較してかなり立ち遅れている。しかし、「台東区心身障害者(児)実態調査」から障害の発生時期(表1-2)をみると、40代11.5%、50代17.3%で、全体の28.8%を占めている。
 脳血管障害による受障者の例をみると、受障後6ヶ月~1年の入院、リハビリ訓練期間を経て在宅となるケースが多い。しかし、職場への復帰は難しく、労働能力が著しく欠損している場合が多いため、再就職の道も閉ざされている。そのため、受障前の生活と比べて、社会的、経済的、家庭的立場が大きく変化している場合がほとんどである。しかし、これらの層を支える地域資源は少なく、本区では、松が谷福祉会館が実施している機能訓練(療法士による週1~3回)のみであり、しかも、自主通所などの厳しい条件下に置かれているため、利用するにもおのずと制限がある。したがって、成人・壮年期受障者は、医療機関でのリハビリを終了し、家庭復帰しても、社会的復帰を果たすための手段が閉ざされているため、家庭に閉じこもりがちな生活を余儀なくされている。
 しかし、これらの層の障害者が、将来の高齢期障害者層の多くを占めることを考えれば、比較的若いこの時期にこそ、必要なリハビリテーションの機会を提供することで、社会的自立を図ることが大切である。この時期におけるリハビリテーションの効果は、高齢期に達した際の福祉サービスの量と質に大きく影響することになる。
 こうした立場を前提とすれば、現在の松が谷福祉会館の機能訓練業務を、地域リハビリテーションの視点から充実・強化すると同時に、これらの障害者に働く機会を提供する作業所の設置など、社会復帰への具体的施策を展開していく必要がある。
(3)障害者の高齢化対策

 中途障害者及び高齢期受障者を除く障害者が、法律や制度で規定された一般的高齢期(65歳)以上に達する例が比較的少数であることは既にふれた(参考資料)。本区の場合、精神薄弱者で2.6%、脳性マヒ者で3.7%程度と、一般的高齢化率18%と比べてもかなり低い。このことに関する客観的調査報告が行われていないため、詳しい原因は不明であるが、概ね、以下の点が予想される。第1は、高齢期に達する前に、何らかの疾病等を併発して死亡することが多いこと、第2は、65歳以前の段階で既に実質的高齢期に入って、自然死を迎えている場合である。第1、第2のケースを含めて、先天性の障害者の実質的高齢化が一般と比較してかなり早いスピードで進行していることは、かねてから障害者施設などから体験的に報告されている。
 本区の現状からも、通所施設利用者や生活施設利用者の中で、実質的高齢化が実年齢よりも早く始まっている具体的事例が生じていることから、これらの層を構成する障害者への早期における対策が必要とされる。
 具体的には、特別養護老人ホームの利用や高齢者を対象とした各種福祉施策を実質的高齢化に合わせて提供することなどである。言うまでもなく、このことの実施には、関連法規に基づいた制度的壁が存在することは明らかであるが、これらの層は統計的にも少数である。関連法規にとらわれぬ区独自の法外的対応をしていかなくてはならない。

(4)資料

(表1)年齢階級別にみた身体障害者数
(単位:千人、%)

総数18~19歳20~29歳30~39歳40~49歳50~59歳60~64歳65~69歳70歳以上不詳
平成32,722
(100%)
16
(0.6)
71
(2.6)
136
(5.0)
266
(9.8)
467
(17.2)
377
(13.9)
412
(15.1)
918
(33.7)
58
(2.1)
昭和622,413
(100%)
8
(0.3)
78
(3.2)
182
(7.5)
269
(11.1
483
(20.0
326
(13.5
312
(12.9
756
(31.3

(-)
増加率112.8%200.091.074.798.996.7115.6132.1121.4皆増
(注)( )内は構成比
資料:厚生省「身体障害者実態調査」

(表2)障害の疾患別にみた身体障害者数
(単位:千人、%)


肢体不自由聴覚・言語障害









脊 脊
髄 髄
損 損
傷 傷
i  ii































平成3年2,722
(100%)
67
(2.5)
43
(1.6)
34 29
(1.2) (1.1)
12
(0.4)
325
(11.9)
214
(7.9)
96
(3.5)
73
(2.7)
89
(3.3)
46
(1.7)
昭和62年2,413
(100%)
65
(2.7)
53
(2.2)
76
(3.2)
13
(0.5)
354
(14.7)
232
(9.6)
93
(3.8)
97
(4.0)
103
(.3)
63
(2.6)
増加率112.8103.181.182.992.391.892.2103.275.386.473.0
視覚障害内部障害







網 視
脈 神
絡 経
膜 疾
・ 患






















平成3年55
(2.0)
105
(3.9)
95
(3.5)
195
(7.2)
68
(2.5)
16
(0.6)
25
(0.9)
1
(0.0)
521
(19.1)
103
(3.8)
512
(18.8)
昭和62年63
(2.6)
112
(4.6)
74
(3.1)
136
(5.6)
65
(2.7)
14
(0.6)
20
(0.8)
1
(0.0)
656
(27.2)
125
(5.2)

(-)
増加率87.393.8128.4143.4104.6114.3125.0100.079.482.4皆増
(注)1 表中の脊髄損傷 iは「対マヒ」を、脊髄損傷 iiは「四肢マヒ」をいう。
2 ( )内は構成比
資料:厚生省「身体障害者実態調査」

(表3)年齢階級別にみた身体障害児数

(単位:千人、%)
総数0~4歳5~9歳10~14歳15~17歳不詳
平成3年81,000
(100.0)
12,100
(14.9)
23,300
(28.8)
24,700
(30.5)
18,900
(23.3)
1,900
(2.3)
昭和62年92,500
(100.0)
12,400
(13.4)
26,800
(29.0)
31,900
(34.5)
21,400
(23.1)
増加率(87.6)(97.6)(86.9)(77.4)(88.3)
(注) ( )内は構成比

資料:厚生省「身体障害児実態調査」

(表4)身体障害者手帳交付台帳登録件数 (各年度末現在)



障害別
年層別
総 計視覚障害聴覚・平衡
機能障害
音声・言語
機能障害
肢体不自由内部障害
18歳未満
18歳以上
43
3,321
29
1,672
72
4,901
3
421
1
271
4
698
9
294
9
183
18
477
0
44
0
15
0
59
24
2,024
17
920
41
2,944
7
446
2
277
9
723
3,2711,7014,9734242787023031924954415592,0489372,985453279732
18歳未満
18歳以上
43
3,321
34
1,723
77
5,044
3
423
1
273
4
696
1
302
213
184
25
486
0
51
0
14
0
65
23
2,051
18
957
41
3,008
5
494
2
295
7
789
3,3641,7575,1214262747003141975115114652,0749753,049499297796
18歳未満
18歳以上
47
3,389
32
1,742
79
5,131
3
435
0
280
3
715
15
295
9
182
24
477
0
54
0
14
0
68
22
2,054
22
960
44
3,014
7
551
1
306
8
857
3,4361,7745,2104382807183101915015414682,0769823,058558307865
18歳未満
18歳以上
50
3,427
33
1,806
83
5,233
4
441
0
289
4
730
15
296
9
185
24
481
0
54
0
18
0
72
24
2,061
23
995
47
3,056
7
575
1
319
8
894
3,4771,8395,3164452897343111945055418722,0851,0183,103582320902
18歳未満
18歳以上
40
3,534
29
1,917
69
5,451
5
445
0
301
5
746
16
307
7
190
23
497
0
54
0
21
0
75
15
2,089
21
1,055
36
3,144
4
639
1
350
5
989
3,5741,9465,5204503017513231975205421752,1041,0763,180643351994
資料:台東区行政資料集平成7年度版

(表1-1)年齢別

年齢別割合
0~5歳0.8
6~14歳1.9
15~19歳2.2
20代3.4
30代4.8
40代10.2
50代15.6
60代27.1
70歳以上34.1

(表5)脳性マヒ年齢構成

人数
0~5歳
6~14歳
15~19歳
20歳代
30歳代1611
40歳代1812
50歳代13
60歳代11
70歳以上
合 計824438
資料:台東区心身障害者(児)実態調査(平成5年

(表6)年齢階級別・性別にみた精神薄弱児・者数

                       (単位:千人、%)

総数不詳
総数

0~4歳
5~9歳
10~14歳
15~19歳
20~29歳
30~39歳
40~49歳
50~59歳
60歳以上
不詳

283,800
(100.0)
10,300
25,300
36,500
44,000
52,000
38,200
30,800
19,400
11,600
15,700
158,100
(55.7)
5,200
16,800
23,100
28,600
28,600
22,900
14,900
10,100
5,000
2,000
111,200
(39.2)
5,200
8,300
13,300
14,400
23,200
14,800
15,700
8,500
6,300
1,700
14,600
(5.1)

200
200
200
200
600
200
700
400
12,000
資料:厚生省「精神薄弱児(者)福祉対策基礎調査」(平成2年)

(表7)精神薄弱者名簿登録件数

                              (各年度末 現在)



障害別
年層別
総計知能指数(IQ)度数
1~19最重度(1度)20~34重度(2度)35~49中度(3度)50以上軽度(4度)
18歳未満
18歳~64歳
65歳以上
74
211
9
46
191
5
120
402
14
1
14
-
3
14
-
4
28
-
22
52
1
14
43
1
36
95
2
35
64
3
23
76
3
58
140
6
16
81
5
6
58
1
22
139
6
294242536151732755813310210220410265167
18歳未満
18歳~64歳
65歳以上
72
220
12
44
190
5
116
410
17
0
15
-
1
14
-
1
29
-
19
56
1
14
43
1
33
99
2
36
66
4
23
76
3
59
142
7
17
83
7
6
57
1
23
140
8
304239543151530765813410610220810764171
18歳未満
18歳~64歳
65歳以上
74
230
12
44
189
7
118
419
19
0
15
-
2
13
-
2
28
-
20
59
1
12
46
1
32
105
2
34
71
3
23
74
5
57
145
8
20
85
8
7
56
1
27
141
9
316240556151530805913910810221011364177
18歳未満
18歳~64歳
65歳以上
69
238
9
48
193
7
117
431
16
1
13
-
2
13
-
3
26
-
18
60
1
14
47
1
32
107
2
31
74
3
24
73
5
55
147
8
19
91
5
8
60
1
27
151
6
316248564141529796214110810221011569184
18歳未満
18歳~64歳
65歳以上
66
255
9
43
196
10
109
451
19
2
12
-
1
14
-
3
26
-
15
66
1
12
48
2
27
114
3
31
79
3
22
73
6
53
152
9
18
98
5
8
61
2
26
159
7
330249579141529826214411310121412171192

  資料:台東区行政資料集平成7年度版  

(表7-2)障害の発生時期

障害の発生時期割合
0歳
(出生前を含む)
11.5
1~5歳12.2
6~14歳4.3
15~19歳2.5
20代6.5
30代8.1
40代11.5
50代17.3
60代15.3
70歳以上8.8
無回答2.0

(表8)身体障害者手帳新規交付者数 -65歳以上- (平成6年度)

障害別
等級
肢体内部言語聴覚視覚合計
1級364386
2級3238
3級191843
4級242559
5級
6級
合計118
(137)
86
(75)

(4)
15
(21)
18
(32)
240
(270)
( )内は64歳以下の数とする

(表9)ホームヘルプサービス利用者年齢別構成

                             (平成6年度 )

年齢構成肢体心臓腎臓呼吸視覚精薄合計
0~29歳
30~39歳
40~49歳11
50~59歳1215
60~65歳1214
65~69歳1012
70歳以上1933
合計611486

4.専門職の有効活用と支援者の育成

(1)専門職の有効活用

 区における保健・福祉・教育の各分野におけるサービス需要は、高度化と多 様化に向かっている。このような需要に応じるためには、専門職によるサービス のあり方を検討することが必要である。現在、行政の各分野には、多くの専門職 が配置されているが、縦割組織によって専門職が本来持っている技能や技術がサ ービス提供の上で生かされにくい現状にある。つまり、分野ごとに配置された専 門職は、その組織内の業務のみを担当しているために、関連分野にわたる専門職 の連携や有効活用が図りにくくなっている。
 今後、障害者のリハビリテーションを推進する上で、キーワードとなるQO L(生活の質)やバリアフリー(障壁の除去)については、保健・福祉・教育の みならず土木・住宅・環境などにかかわる包括的な対応が求められており、高度 化し多様化する行政需要に対応するためにも、関連分野をつなぐ専門職の有効活 用について検討することが必要である。
 以下、専門職の有効活用についての今後検討すべき課題をあげる。


ア.サービスシステムの変更

 区における専門職の分野は多岐にわたっている。しかし、障害者やその家族 が必要とするサービスの現状は、サービス内容によって窓口が異なるなど、「当 事者がサービス提供者にあわせる」サービスシステムになっている。
 しかし、今後、「サービス提供者が当事者にあわせる」というニーズ中心の システムへ転換すれば、専門職が専門性を発揮する機会が広がり、制度運用の工 夫や有効活用を可能にすると同時に、専門職の自己啓発を促進することになる。

イ.福祉分野における専門職の現状

 福祉分野の専門職は、主に、理学療法士、作業療法士、言語治療士、臨床心 理士、保健婦、看護婦、栄養士、歯科衛生士、保母、福祉指導、社会福祉士、介 護福祉士、ホームヘルパー等の職種である。
 これらの職種のうち、特に理学療法士、作業療法士、言語療法士等の専門職 は、サービス提供の中心的担い手として、区の福祉サービス現場で重要な位置を 占め、区民に対して安心できるサービスを提供する役割を持っている。
 したがって、現在、非常勤職員で対応している専門職について、今後そのあ り方も含めて、有効に活用していく方策を検討する必要がある。

ウ.専門職活用の視点

(ア)チームアプローチによる対応

 QOL(生活の質)の向上やバリアフリー(障壁の除去)を実現するために は、障害者福祉分野だけでなく、保健・医療、教育など他領域から集積した情報 の交換と業務上の連携によるチームアプローチが必要である。
 チームアプローチは、問題解決に向けて最も効果的、効率的方法であり、サ ービスの包括的提供を可能とする。

(イ)横断的な職員配置

 サービス提供を包括的に行うためには、区組織内における専門職の横断的な 活用が必要である。これまでのように、施設や機関ごとに必要な人材を配置する だけでなく、必要な時、必要な所にいつでも対応でき、かつ、チームアプローチ を可能にするための職員配置のあり方を検討する。

(ウ)コーディネーター機能の設置

 専門職がチームアプローチによって、障害者のニーズに対応し、地域リハビ リテーションを実施する場合、関連機関や専門職相互の連絡調整を図ることが必 要である。
 したがって、この役割を担当する職務として(仮称)サービスコーディネー ターの設置を検討する。専門職の横断的活用とコーディネーター機能が一体とな って、一層の効果を期待することができる。

エ.専門職活用の具体例

 専門職活用の視点としてあげた「チームアプローチによる対応」、「横断的 な職員配置」、「コーディネーター機能の設置」を具体化するためのひとつの例 としては、現在、各施設、機関ごとに配置されている専門職を1カ所に集中させ て、総合的に管理・運営することが考えられる。
本区における地域リハビリテーションの展開を専門的立場から担う専門職のあり方について、今後、総合的に検討することが必要である。

オ.専門職の研修体制

 専門職は、日進月歩する専門領域の知識と技術を習得し、質の高いサービス を提供していくことが求められる。そのためには、経験主義に陥ることなく、自 己啓発、自己研鑽に努めるための総合的な研修体制を確立する必要がある。
 また、同職種による価値判断の類似化やマンネリ化を防ぎ、常に新鮮な洞察 力を確保するために、異職種とのチームアプローチや、外部から招へいしたスー パーバイザーによるスーパービジョンなどを積極的に取り入れなければならない 。

カ.サービス提供に関する課題

 障害者サービスが適切に提供されるためには専門職の担う役割は重要である 。専門職が配慮すべきことは、別項、総合相談支援システムの構築「 (2)地域支援システム 」のなかで記したが、ここでは以下の点を付するものである。

(ア)説明と同意(インフォームド・コンセント)

 専門職の役割は、障害者に提供されるプログラムの内容を障害者本人に分り 易く説明し、当事者の理解を得ることにある。

 サービス提供に関しては、説明と同意(インフォームド・コンセント)が必 要であり、障害者の持つ個別的状況に配慮したサービスの提供を最適な支援に結 びつけていかなければならない。
 インフォームド・コンセントを実現するためには、当事者や家族の生活や価 値観に配慮するとともに、問題の把握と分析、また評価に関する専門職の客観的 判断が重要な役割を果たす。

(イ)選択と自己決定

 サービスの提供と適用については、障害を持つ当事者の価値観が尊重されな ければならない。特に、日常生活にかかわる介助・介護サービスについては基本 的に自己管理への意識を当事者が持つことが、自立(律)した生活を営む上で大 切である。
しかし、サービスの提供には、財政的制約があることを考慮にいれて、どのよ うに経費を効率的に運用していくかという点に関しても当事者を含めた合意形成 が必要である。

(2)支援者の育成


 障害者の自立(律)を目的に地域リハビリテーション(CBR)を展開する 場合、専門家だけでなく、専門家と当事者の間にあって、身近なところで日常生 活を支援する支援者の育成が重要である。
 地域リハビリテーションは、地域社会の中で地域資源を用いて、地域レベル で行われるリハビリテーション活動であり、障害者とその家族を含む地域社会全 体が参加して行われる方法である。したがって、リハビリテーションに関する情 報は、専門家から支援者に伝えられ、日常生活の場で生かされなければならない 。
 支援者には、「パイロット・ペアレント」、「パーソナル・アシスタント」 、「ジョブコーチ」( 詳細は第7章を参照 )などがあり、無償によるボランティアとは異なって、その社会的役割と責任 が明確でなければならない。

(ア)支援者の養成と研修
 
支援者の養成と研修は、援助技術及び傾聴技能等の基礎的な学習を中心に段階 的に進めることとし、養成・研修機関は、(仮)障害者福祉センターとする。

(イ)支援者登録制度

 養成のためのカリキュラムを終了した者は、支援者として登録し、(仮)障 害者福祉センターの指示に従って活動する。

5.移動・移送手段の整備とシステム化

(1)障害者の移動

ア.障害者の交通バリアフリー

 障害者に対する施策は、かつての施設入所中心から地域福祉施策へと移行し てきた。障害者が地域社会で暮らせるようにするためには、「主体的に、いつで も移動できる」という市民として当然の権利を保障すべきであり、交通機関、建 築物等における物理的な障壁は除去(バリアフリー)されなければならない。
 障害者プラン(前出)では、「各施策分野の推進方向」の中で、「バリアフ リー化を促進するために」として、「障害者の活動の場を広げ、自由な社会参加 が可能となる社会にしていくため、様々な施策手段を組み合わせ、道路・駅・建 築物等生活環境面での物理的な障壁の除去に積極的に取り組む。」と明記してい る。
 しかし、障害者プランで打ち出した「歩行空間の整備」、「公共交通ターミ ナルのバリアフリー化」、「障害者等に配慮した車両の導入及びバス停等の整備 」、「道路交通環境の整備」が完了するまでの間は、障害者が交通弱者であるこ とに変化はない。

イ.公共交通とSTサービス

 不特定多数の人々を大量に移送する交通手段は、障害者のみならず高齢者に とっても障壁が多く、利用しにくいものとなっている。その中で、既存の交通手 段が利用できない障害者や高齢者に対して、特別に設けられた交通システム(ス ペシャル・トランスポート・サービス(以下、「STサービス」という))が生 まれた。
 STサービスは、ドア・ツー・ドア(例えば、直接自宅の玄関口から目的地 の玄関先までの移送を行う形式のもの)、固定ルート、施設送迎等さまざまな形 式のものがある。STサービスの実施により、自力で外出が困難な障害者や高齢 者等に対して、外出の機会を拡大するとともに、外出に伴う家族の負担の軽減を 図ることができる。すなわち、利用しやすい移動手段を確保することにより、各 種福祉サービス、公共施設などの利用を容易にし、心身機能の回復、健康の維持 、生きがいの創出等につながる。また、外出が可能になることによって、社会と の接触が増え、生活に活気をもたらし、精神的な充実感をもたらすことが期待で きる。
 現状では、公共交通のバリアフリー化が進んだとしても、既存の交通網は粗 く、バス停や駅までの移動に障害がある者は、ドア・ツー・ドア等のSTサービ スに頼るところが大きい。
 今後は、公共交通の一層のバリアフリー化とSTサービスの充実の両面から ノーマライゼイションを進展させていく必要がある。

(2)台東区のSTサービスの現状

ア.障害者施設の送迎

(ア)障害者施設

 障害者施設での送迎は、 表1 (障害者施設送迎)のとおり、「松が谷福祉会館成人部門」と「つばさ福祉工 房」が送迎バスを使用している。
 松が谷福祉会館の場合、成人部門の通所者数増及び障害の重度化により、現 在2台の送迎バスを使用している。幼児部門は母子通所であり、リハビリ部門は 自主通所を原則としているため、送迎は行っていない。その他、民間施設では、 送迎を行っておらず、必要な場合は、家族による送迎となる。
 高齢者在宅サービスセンターも同様であるが、機能回復訓練者に対する送迎 を行っておらず、自力通所、家族送迎ができない者は訓練を受けられない状況に ある。60歳以下の機能回復訓練は松が谷福祉会館のみの実施であり、区内全域 から通所している。

表1(障害者施設送迎)

施設名車両送迎時間対象乗車人数車イ添乗送迎以外の使い方・その他
松が谷福祉会館リフト付きバス8:50→ 9:40
15:00→16:00
成人部門18職員成人部門の外出活動 週5回
幼児・リハビリの送迎なし
車両・運転とも委託
リフト付きバス8:50→ 9:40
15:00→16:00
成人部門12職員
つばさ福祉工房リフト付きバス8:30→ 9:50
15:40→17:00
14職員外出活動 月3回
車両・運転とも委託

イ.ドア・ツー・ドア運行

 ドア・ツー・ドアの運行は、リフト付タクシーの運行、運転ボランティアグ ループ「さんりんしゃ」によるハンディキャブの運行がある。また、台東区社会 福祉協議会がハンディキャブの貸し出しをしており、障害者、高齢者等利用者は ガソリン代の負担で利用できるようになっている。

a)リフト付タクシーの運行
 台東区がタクシー会社へ業務委託し、リフト付タクシーの運行を行っている 。利用対象者等は以下のとおりである。

対象者 :福祉タクシーに該当し、車いす又は寝台使用の区民
利用方法:障害者福祉課にあらかじめ登録し、利用日をタクシー会社に予約
利用料 :普通タクシー料金
登録者数:182人(平成8年1月30日現在)

 現在、利用頻度が高く、曜日・時間帯によって予約できない状況にある。行 き先は病院と、リハビリ訓練のための障害者・高齢者施設等が主である。障害者 ・高齢者施設がリハビリ訓練者の送迎をしていないためにリフト付タクシーの利 用が多くなっている。

b)ハンディキャブの運行
 台東区社会福祉協議会はハンディキャブの運行・貸出を行い、「障害者及び 高齢者の社会生活の利便と生活圏の拡大を図り、一人でも多くの方達が社会参加 できるよう協力」している。車両を必要とする障害者・高齢者に対して燃料費等 の負担で利用できる。この場合、原則的には運転手は利用者が探すことになって いるが、見つからない場合は、社会福祉協議会ボランティア銀行を通じてボラン ティアに依頼することになる。
 主な利用内容は、通院・リハビリ送迎及び民間施設等のレクリェーション活 動での使用である。
 社会福祉協議会が組織した運転ボランティアグループ「さんりんしゃ」では 、現在、30名のボランティアが活動している。しかし、会員の多くは、土・日 曜日の活動を希望しているため、通院・リハビリ送迎を運転ボランティアに依頼 しても、ボランティアの活動希望曜日と利用者の希望のずれにより、活動可能な 運転ボランティアを探すことが難しい状況である。

ウ.固定ルート運行
 台東区内では、定路線定時刻運行のSTサービスはない。STサービスとは いえないが、都バスが浅草寿町と池袋駅東口間で「リフト付超低床バス」を運行 させている。

(3)移送の整備とシステム化

ア.送迎バスの有効活用

 松が谷福祉会館に2台、つばさ福祉工房に1台のリフト付送迎バスがあるが 、それらは、各施設がそれぞれ運行管理を行い、各施設の通所者の送迎のみに使 用され、台東区の障害者福祉サービス全体からみると非常に限定されたものとな っている。
 また、送迎の時間帯は、9時から10時と15時から16時であり、送迎を 行っていない10時から15時の時間帯は、施設通所者の外出活動として使用す ることはあるが、車両及び運転手は待機していることがほとんどである。 (図1)
 これらの点を踏まえると、施設の送迎バスを集中管理することにより、送迎 以外の時間帯に巡回型バスの運行を行うことができる (図2) 。すなわち、3台のバスのうち何台かを10時から15時の間、区内の主要施 設を巡る運行を行うことにより、より多くの障害者の移動を確保することができ る。ルートについては今後検討を要するが、例えば、区役所や松が谷福祉会館、 つばさ福祉工房、高齢者在宅サービスセンター等の福祉施設、ターミナル駅、区 内の主な病院等を巡る路線が考えられる。このことにより、通院や機能回復訓練 のための通所にも利用することができる。リフト付タクシーやハンディキャブの 運行での主な使用目的が通院や機能回復訓練のための通所であり、そのため利用 が一定時間帯に集中し、予約が困難な状況にあることから、巡回型バスの運行は 、このことへの有効な解決策のひとつであると思われる。

(図1)送迎バス運行状況

施設名時間・目的
松が谷福祉会館1号車8:40~9:50
成人送迎
15:00~16:00
成人送迎
松が谷福祉会館2号車8:40~9:50
成人送迎
8:40~9:50
1または2号車が屋外活動での運行、週4回
15:00~16:00
成人送迎
つばさ福祉会館1号車8:40~9:50
工房送迎
8:40~9:50
屋外活動での運行、週3回
15:40~16:40
工房送迎

(図2)送迎バスの運行の巡回型導入

施設名時間・目的
松が谷福祉会館1号車8:40~9:50
成人送迎
10:00~14:50
巡回バス運行
15:00~16:00
成人送迎
松が谷福祉会館2号車8:40~9:50
成人送迎
15:00~16:00
成人送迎
つばさ福祉会館1号車8:40~9:50
工房送迎
15:40~16:40
工房送迎

 また、関係部署との協議を要するが、今後、高齢者在宅サービスセンターで 所有する送迎バスも利用した区内の巡回型福祉バスの運行を整備し、高齢者も含 めた台東区内の移動・移送に関するシステムを拡充していく必要がある。

イ.ドア・ツー・ドア運行のシステム化

 台東区社会福祉協議会よるハンディキャブの貸出しに合わせて運転ボランテ ィア「さんりんしゃ」がドア・ツー・ドア運行を行っているが、基本的に介助を 行わない現状である。障害の重度化、介護者の高齢化が進む現状では、移動に伴 う介助は必要である。運転ボランティアが介助技術の修得をしていくほかに、移 送の介助を主に行うボランティアの育成も重要である。
 ハンディキャブに同乗して車内での介助を行う場合もあるが、ドアから乗車 、居室から乗車、ベッドから乗車等乗車に至るまでの介助がないために外出がで きないケースが多く、乗車に至るまでの介助は重要である。また、目的地での介 助を必要とすることがあり、そのことに対しても取り組むべきである。
 今後は、移送介助ボランティアの養成を行うとともに、運転ボランティアと の連携や、ホームヘルパーやガイドヘルパーと移送介助の連携などを調整してい く機能が必要である(図2)。

移送時の各サービスの連携(図2)

                         移送
ベッド  →  居室  →  ドア  →  乗車  →  降車  →  目的地
運転ボランティア
リフト付きタクシー
移送介助ボランティア
ホームペルパー
ガイドヘルパー
連絡・調整機能

ウ.移送の集中管理システム

 送迎バスの集中管理システム導入とドア・ツー・ドア運行のシステム化を行 うとともに、両者のシステムをさらに併せた、移動・移送の一括した集中管理シ ステムが必要である。巡回バス運行とドア・ツー・ドア運行がそれぞれで管理・ 運行されるのではなく、両者に密接な連絡・調整機能が働くことにより両者の連 続性のある利用が可能となる。そのことにより、例えば、巡回型バスを利用して 機能回復訓練をするために施設へ行き、訓練が終わった後に、ハンディキャブを 利用して別の場所へ行く、ということが可能となる。また、移動・移送に関する ニーズを把握することで、より良い移動・移送システムを構築することも可能で ある。

エ.他機関との連携

 台東区内における移送のシステム化は、前項のとおりであるが、障害者がレ クリェーション活動として、または仕事として区外へ、都外へ移動することは当 然のことであり、他区や他の自治体との連絡調整が必要である。
 台東区民が出かけた先でSTサービスを利用することができるよう、また、 他の地区の障害者が台東区に来たときにSTサービスが利用できるような協力関 係を築くことが大切である。

6.通信・情報システムの導入

 障害者の自立と社会参加にとって情報の収集とそのネットワーク化は重要な 課題である。また、福祉情報へのアクセスが容易になることは、障害者だけでな く一般区民にとっても必要なことである。
 情報と情報を結ぶ通信システムは、障害者と区民との障壁を除去する(バリ アフリー)ため大切である。
通信・情報システムの整備は、新たな時代の障害者支援にとって欠くことので きない課題である。
 障害者福祉における情報システムについては、以下の5つの点に考慮するも のとする。

(1)障害者自身の自立と社会参加のための通信・情報システム

ア.通信・情報の社会的基盤の整備

 移動の困難な障害者にとって、パーソナルコンピュータ(以下、パソコン) を使用した通信・情報システムは、情報を的確に知る上で役立つ。障害者が社会 参加するためには、まず仲間同士や援助者とのバリアを少なくする必要がある。
 そのためには、障害の有無を問わずコミュニケーションが可能になる通信・ 情報の基盤整備を欠かすことはできない。現状においても電話やファクシミリは 、一般化しており、今後、パソコン通信における電子メールやインターネツトの 導入などを図る必要がある。

イ.既存情報システムの充実

 現在、視覚障害者、および聴覚障害者に対する情報提供の手段についてみる と、例えば、ワープロ講習、点字情報、対面朗読、音声テレビガイド、文字放送 (テレビ・ラジオ)、ファクシミリサービスなどが行われている。
 今後、すでに開発がなされている振動無線呼び出し、リアルタイム筆談など の機器など、情報関係機器の補助や機器利用のための支援が必要である。
 しかし、このような情報関係機器が実際に役立つには、障害者にとって細か な情報提供のシステムが必要である。また、機器の整備と同時に、これまでの対 面朗読や手話通訳などの人的サービスとの調和をとらなければならない。

ウ.情報ソフトの開発

 通信・情報システムを整備する上では、通信機器のハードウエアと同時に、 プログラムについてのソフト開発が必要である。
 これには、パソコンソフトだけでなく、簡単な標識や案内パンフレットに関 するものまで、あらゆる情報に関するソフトが含まれる。
 特に、知的障害者に対する障害特性(精神発達の段階)を考慮に入れたソフ ト開発は、重要である。また、一般区民に対しても理解しやすく、情報の受け入 れが容易な内容を工夫しなければならない。
 したがって、情報ソフトの開発にあたっては、障害者の意見を取り入れるソ フト開発を行うことが必要である。

(2)障害者福祉サービスへの情報アクセス

 障害者サービスの提供は、「情報が必要になった時に、詳細な内容を得るこ とができる」ことが基本となる。多岐に渡る障害者施策やサービスプログラムの 内容について、必要な情報を即座に、利用者の状況に合わせて分かりやすく提供 するには、コンピュータ機器を通じた情報提供がより正確であり、効率的である 。
 総合相談支援システムを支えるのは、情報提供システムであることから、情 報へのアクセスを整備することが重要である。
 例えば、タツチパネル型のディスプレィを公共機関へ設置し、自由に情報を 検索するシステムの開発が考えられる。さらに、電話による福祉情報の提供、C ATVによる福祉情報番組などを加え、区民が情報へアクセスしやすい環境を整 備しなければならない。即ち、障害者の総合相談が、区民にとって利用しやすく 機能するためには、正しい情報の蓄積が基本である。
 したがって、区民に分かりやすいパンフレットを作成するなど、情報アクセ スについての広報活動も必要といえる。

(3)障害者援助のための情報ネツトワーク

 重度障害者がコミュニケーション活動を行うために、パソコン通信を利用す る場合、パソコン通信についての技術援助が必要である。
そこで、社会福祉協議会のボランティア銀行や地域福祉施設にパソコン機器を 配置し、相互の情報をネットワーク化すると同時に、地域サービスの情報のキー ステーションとして(仮)障害者福祉センターを活用する。
 この障害者援助のための情報ネツトワークが、地震などの災害時において役 立つことが、阪神・淡路大震災において証明されており、区として早急に取り組 む課題である。

(4)情報機器購入の補助

 通信・情報システム整備のために区内公的機関の相談窓口に情報関連機器の 導入を図るとともに、障害者個人との情報ネットワークを整備するために、個人 の情報機器購入に対する補助を検討する。

(5)移送交通システムと通信・情報ネツトワーク

 障害者の移送交通システムの整備は、別項のSTサービス(スペシャル・ト ランスポート・サービス)において検討しているが、このSTサービスを充実す るためにコンピュータシステムを導入し、移送・交通サービスの集中管理を行う ことが必要である。
 地域福祉施設に設けられたパソコン端末機からSTサービスの利用を入力し 、(仮)障害者福祉センターで管理する。利用申請や登録および利用変更、訂正な どの事務は、すべてパソコンの端末機において確認できるようにする。

7.総合相談支援システムの構築

 障害者のノーマリゼーションを進めるためには、地域社会援助システムと総 合相談支援システムが必要である。
地域社会援助システムについては 第iii章-3 を参照とし、ここでは、総合相談支援システムについて述べる。
 区民が、何らかの障害者福祉に関する適切なサービスを得るためには、サー ビス利用者を中心に据えた相談支援システムが必要である。
 ここでの基本的視点は、「利用者をサービスに合わせるのではなく、サービ スを利用者に合わせる」ということである。これは、従来の措置的な相談とは質 的に異なるものである。つまり、相談に際して提供する側と利用する側とが対等 な関係に立つことが前提となる。
 さらに障害者およびその家族への相談サービスは、利用者の希望に添うべく 「柔軟な対応姿勢と幅広い知識が必要である」という視点がシステムの基盤に位 置づけられる。
 ここでいう総合とは、以下の三つの軸で表すことができる。
 一つは乳幼児期から児童期、青年期を経て成人期、壮年期、高齢期までの障 害者のライフサイクルに対応したシステムであること。
 二つは、相談主訴に関連する関係機関のネツトワークを基盤とし、コーディ ネイターの調整によって機能するシステムであること。
 三つは、障害児(者)のライフステージに対して一貫したサービスを提供す るため年齢枠による区別をなくし、「発達支援」と「在宅支援」の二つの側面か らサービスを提供するシステムであること。などである。
 このような相談システムは、 図(1-1) 「総合相談支援機能のあらまし」のような機能を必要とする。

(1)総合相談支援システム

 障害者施策としての総合相談支援システムは、次のような基本的な考え方に 基づいている。
 即ち、このシステムは、障害を持つ当事者の生活を主体とした相談機関の総 合化を目指すものであり、サービス供給体制の新たな連携とその調整についての 提案である。
 ここでいう総合とは、障害者福祉分野に限定した内容であって、したがって 保健・福祉・教育の分野と関連する内容については、障害者福祉から見た捉え方 を包括したものである。

(図(1-1))総合相談支援機能のあらまし

総合相談支援機能のあらまし
相談支援機能

ケアマネージメント

(1)アセスメント

(1)発達支援機能  (2)自立生活支援機能

(家族支援サービス)(在宅支援サービス)

     ↓     ↓

  (3)機能回復訓練機能

  (4)補装具等相談機能

  (5)福祉機器相談機能

  (6)施設措置機能(精薄・身障福祉司)

  (7)ホームヘルプ等の介護派遣機能

  (8)その他公的福祉サービス機能

  (9)個別援助者の育成と支援機能

(10)緊急一時保護等のショートステイ機能

  (11)レスビットサービス機能

(2)ケアプラン作成
(3)サービスの提供
(4)継続的な管理

 このような視点に立って台東区障害者福祉計画を策定するに際し、障害者サ ービスの基本的課題としての総合相談支援システムのあり方をまとめるものであ る。
 今後は、以下のことを踏まえて、設置が予定されている障害者福祉施策推進 協議会ならびに内部検討チームにおいて内容の検討をする必要がある。
 障害者総合相談支援システムは、別項の「障害者施設の体系化」で述べたよ うに、現在の松が谷福祉会館の再編によって、新たな障害者相談に関する総合的 かつ中核的な機能を持った機関のなかに位置づけられる。
 具体的には、発達支援機能と自立生活支援機能を指す。
以下、両機能について述べるが、ここにあげる支援機能とは、障害児(者)の ライフサイクルに関わる相談を担うものであり、障害児から障害者へのライフス テージの上で、とぎれることなく一貫した地域サービスの提供を行うことを目的 とする支援システムである。

ア.発達支援機能

 発達支援機能とは、乳幼児期・学童期・青年期・成人期といった発達成長期 における障害児(者)への療育・リハビリテーション活動(以下、発達支援サー ビスという)を指す。
 発達支援サービスとは、発達障害による能力障害の改善や克服のために行わ れる総合的発達支援活動を意味している。
 この発達支援機能は、通常、障害を持つ本人についての直接的援助の方法や 技術やシステムとして整備されてきているが、今後の地域における発達支援のあ り方は、家族を主体にした社会福祉的サービスの側面にも重点を置いたものとし てサービスを捉える必要がある。
 今後は、発達支援機能が、障害を持つ本人に加え家族支援サービスを含めた 発達支援サービスとして位置づけ専門サービスの整備を図る必要がある。

(ア)機関の性格
 障害児(者)のライフステージにおける発達支援サービスの提供を目的とし た地域センター。
(イ)支援対象
(1)生活年齢が0歳~18歳、及び精神発達年齢がおおよそ0歳~10歳前後 までのすべての発達障害児(者)を対象とする。
(2)上記の対象者を抱える家族を対象とする。
(3)上記の対象者の保育・教育等を行う機関を対象とする。
(ウ)支援機能の内容
(1)発達に関する評価・判定・助言指導・訓練など療育・福祉制度の専門相談 ・調整を行う。
(2)本人の発達支援およびその家族への支援等個別支援を行う。
(3)家族支援のためのコーディネイトを行う。
(4)両親への支援として、パイロットペアレントの育成と派遣を行う。
(5)発達プログラムに関する関係機関への地域支援を行う。
(6)木目細かな地域支援を行うために人的派遣を行う。
(7)地域療育相談ネツトワークの調整を行う。

(8)区民および地域療育関係施設職員、関係者の研修・啓発を行う。

(エ)支援機能の課題

 台東区長期総合計画における「療育の充実」、および台東区地域保健福祉計 画における「早期発見と早期療育を一体とした療育体制の確立」等の施策の方向 を踏まえ、次のことを課題とする。

(1)母子保健と障害児療育の一体化
 保健所における母子保健事業(母親教室、新生児訪問、乳幼児健康診察、お よび経過観察、発達相談、育児相談、1歳半の心理相談、3歳の心理相談等)と 松が谷福祉会館幼児相談・通園部門における障害児療育事業を一体化し、両事業 の統合に向けて緊密な連携システムを確立する。
(2)地域療育・保育システムの確立
 「早期発見=保健所」「早期療育=松が谷福祉会館」「障害児保育=児童保 育課」の三者間の連携と統合保育への巡回訪問による地域支援(幼稚園・保育園 )に関して、「地域療育・保育システム(仮称)」を確立し、地域支援システム を整備する。
(3)地域療育相談システム
 区内には、さまざまな児童施設・教育施設があり、これをつなぐ相談システ ムとして、地域療育相談ネットワークシステムを構築する。
 このネットワークを通じ、情報通信機器を介して相談サービスの情報を提供 する。これによって、区民が療育情報へのアクセスがしやすくなる。

これらは、行政組織内部の調整を必要とする課題であるため、関係組織による 検討チームを通じて具体案を検討する。

イ.自立生活支援機能

自立生活支援機能とは、障害児(者)のライフステージにおける発達支援サ ービス以外の地域における在宅福祉支援活動の総体(以下、在宅支援サービスと いう)を指す。在宅支援サービスとは、情報および移動のアクセス、住宅および 経済の援助、ショートステイおよびレスピット(家族・介護者支援)、就労およ び生活適応ための援助など、さまざまな地域での生活を営む上での支援活動を意 味している。

(ア)機関の性格

 障害児(者)のライフステージにおける在宅支援サービスの提供を目的とし た地域センター。

イ.自立生活支援機能

自立生活支援機能とは、障害児(者)のライフステージにおける発達支援サービス以外の地域における在宅福祉支援活動の総体(以下、在宅支援サービスという)を指す。在宅支援サービスとは、情報および移動のアクセス、住宅および経済の援助、ショートステイおよびレスピット(家族・介護者支援)、就労および生活適応ための援助など、さまざまな地域での生活を営む上での支援活動を意味している。

(イ)支援対象

(1)障害者とする。

(2)上記の対象者を抱える家族を対象とする。

(3)上記の対象者に対応するデイサービス・授産・福祉作業・生活ホーム等の 機関を対象とする。

(4)上記の対象者を支援する個別援助者を対象とする。

(ウ)自立生活支援機能

(1) 福祉制度、補装具、福祉機器、住宅改造、介助・介護などの専門的相談・ 調整を行う。

(2) パーソナルアシスタント(個別援助者)など支援者の養成および調整を行 う。

(3) ジョブコーチなどの援護就労のための支援を行う。

(4) 障害者の社会参加のための事業、およびボランティア育成を行う。

(5) 重度身体障害者の自立生活運動の支援を行う。

(6) 脳卒中による後遺症、難病、脳性マヒ等の障害に対して機能回復訓練を行 う。

(7) 重度知的障害者のコミュニケーション促進のための支援を行う。

(8) 青年期の中途中枢神経障害などへのグループワークを行う。

(9) 区民および地域福祉関係施設職員、関係者の研修・啓発を行う。

(10) 保健・医療・教育・就労などの関連機関との連携を通してサービスの一 体的提供を図る。

(エ)支援機能の課題

 台東区長期総合計画における「就労と生活自立の促進」、および台東区地域 保健福祉計画における「通所訓練体制の整備」「成人期の機能回復訓練体制の充 実」「障害者の在宅での生活と活動の支援」等の施策の方向を踏まえ、次のこと を課題とする。

(1)既存事業の統合
 障害者の自立生活支援のセンター的機能を発揮するために、松が谷福祉会館 の社会参加援助部門と機能回復訓練部門の実施している事業を自立生活支援機能 に統合する。
 同時に、障害者福祉課の措置的業務や介助・介護サービス業務および助成・ 補助・給付事務を統合する。
(2)パーソナルアシスタント制度化と整備
 障害者の在宅生活の支援は、家族の枠を越えて社会システムとして捉えなけ ればならない。
 例えば、職場、学校、児童福祉施設、障害者通所施設、グループホーム、ア パート、自宅などにおける介助・介護サービスや移送サービスにかかわる支援シ ステムとして、パーソナルアシスタント(個別援助者)制度を設ける。区がこれ を養成するとともに将来的には、営利を目的としない団体による運営が可能にな るように環境を整備する。
(3)身体障害の自立生活運動に対する補助
 自立生活運動は、障害のある当事者による組織によって運営される。例えば 、日本におけるヒューマンケア協会のような障害者による営利を目的としない団 体がある。台東区内にこのような団体が組織された場合、区は組織に対する経費 の補助について検討する。
(4)情報提供システムの整備
障害者サービスについての情報を障害者本人やその家族、および区民が必要に応じて得るために情報提供システムを整備する。この情報提供システムを支援機能として捉える。
(5)交通・移動システムの整備
区内の障害者の移動サービスとして、福祉施設間の移送等のサービスをシステム化しコンピューター管理による登録および利用方法を整備する。

(2)地域支援システムの確立

 障害者の地域支援については、利用者のニーズを中心に据えて包括的に行わ れなければならない。それは、これまでの組織ごとに行われてきた縦割りによる 弊害をできる限り除去することを意味している。この障害児(者)の支援サービ スは、当事者のニーズを的確に把握し、効率的であるとともに実効性のある内容 でなければならない。
 障害に関わる支援活動は、三つの観点から捉えられる。即ち、専門家による 支援と専門家と当事者の中間にあって、当事者を日常的に支援する者(以下、「 支援者」という)による支援、および両者による支援ネットワークである。

ア.専門家の役割

 支援活動における専門家の役割は、専門的技術による適切な問題の把握と分 析、および評価と方向づけである。そして障害者の抱える問題に対して、正確な 判断と適切な助言指導が支援活動に求められる。その際の支援は、障害者のライ フステージに沿った総合相談支援システム(発達支援機能と自立生活支援機能) を通じて行われなければならない。(両機能については、前記のとおりとする。 )
 専門家は、障害者のニーズに応えて専門性を発揮することが原則である。即 ち、専門家には、「障害の専門家は当事者である」という認識が必要であり、専 門知識や技法のみを背景として恒久的な障害に対してニーズの過剰な解釈や助言 指導とならないようにしなければならない。したがって、専門家の役割は、障害 者やその家族の心配や不安への対応(当事者のニーズ)への最適支援であり、当 事者のニーズを中心にサービスを提供することである。
 地域における専門家は、障害者のライフステージに沿って生じる新たな問題 に対して相談に応じ、障害児(者)の生活全般に関与することが望まれる。
 障害児(者)への地域リハビリテーションは、これまでも述べているように 、地域全体としの支援であることが望ましく、この意味から専門家の地域におけ る支援者の育成に果たす役割は大きい。

イ.支援者の役割

障害児(者)への地域支援は、裾野を広く支援者を中心に行われる。
ここでいう支援者には、有償と無償の二種類を含んでいる。

(ア)有償の場合

  有償の支援者による地域支援制度として次の三つがある。

(1)パイロットペアレント
 障害児の育児経験を持つ両親が、一定の研修を受けて、初めて障害児を持つ ことになった親の支援にあたるシステムであり、主に、障害児に対して適用する 。

(2)パーソナルアシスタント
 地域の中で障害者の地域生活を日常的に支え、自立的生活のために活動する 個人援助者による介助・介護システムであり、全ての障害児・者に適用する。
(3)ジョブコーチ
 障害者の就労に関して個別支援とともに職場環境の調整を行うコーチングシ ステムであり、障害者に対して適用する。


 これらは、有償による個別援助システムとし、民間の営利を目的としない団 体によって運営されることが望ましい。運営に必要な経費は、東京都社会福祉協 議会が運営する「権利擁護センター」が実施している知的障害者生活アシスタン ト制度を参考として区が助成する。
 上記の支援システムは、障害児(者)やその家族が地域で生活を続けるため に、社会の組織とコンタクトをとるための援助を積極的に行う個別援助システム であり、それが有償であるのは、責任範囲・役割分担・代弁者としての位置づけ を明確にするためである。

(イ)無償の場合

 一方、無償による支援システムは、障害児(者)への区民理解を得る機会で もあり、広く区民に浸透することが望まれている。これには、社会福祉協議会の ボランティア銀行による活動協力が必要である。それとともにすでに松が谷福祉 会館を通じて活動しているさまざまなボランティア団体の参加と社会参加援助事 業による新たなボランティアの育成が考えられる。

ウ.支援ネットワーク

 障害児(者)の地域支援は、当事者を中心に専門家、支援者、ボランティア の相互をつなぐネットワークが存在することによって初めて機能する。障害者の 支援ネットワークをどのように組織化し維持するのか、あるいは社会や障害児者 のライフスタイルの変化に応じた柔軟性をネットワークが持ち続けるには、関係 者の意識とともに、それを支える行政の役割が大きい。地域支援のためのネット ワークシステム化は、行政のサービスシステムとして整備される必要がある。


V.計画の具体的展開

1.台東区障害者福祉施策推進協議会の設置

台東区の障害者福祉計画策定後の計画の実施状況を定期的に調査・把握し、 また、社会・経済の変動を踏まえた計画の見直しを行う機関として台東区障害者 福祉施策推進協議会(以下「推進協議会」という)を設置する。

(1)推進協議会の構成

  ・心身障害者団体等の代表者
  ・社会福祉協議会、民生委員協議会等地域組織の代表者
  ・学識経験者等区長が必要と認める者
  ・区職員

(2)推進協議会の役割

  (1) 台東区の障害者福祉計画の推進に関すること

  (2) 台東区障害者福祉計画の改定に関すること

  (3) その他、区長が必要と認める事項

2.計画推進担当の設置と検討チームの設置

 本計画を具体的に展開し、また重点課題として掲げた事項を推進するため、 障害者福祉課に計画推進担当を設置する。また、計画の展開や推進に必要な事項 を協議する庁内機関として、関係組織による検討チームを発足させ、実状に即し て実施に向けての具体案を検討する。

(1)障害者福祉計画推進検討チーム(以下「検討チーム」という)

 検討チームは、企画課、職員課、予算課、福祉課、松が谷福祉会館、台東区 社会福祉協議会、台東つばさ福祉会、障害者福祉課とし、検討課題に応じて関連 課を加えるものとする。

(2)検討チームの役割

  (1) 障害者福祉計画の具体化検討・立案

  (2) 障害者福祉計画の修正・立案

  (3) 障害者福祉計画の推進状況報告

  (4) その他必要な事項

3.障害者福祉計画推進体制

          進行状況報告 

           情報・意見交換  関係部課長会

           区政への反映   ↓ ↑ 進行状況報告・検討

    台東区障害者福祉 ←   障害者福祉課

    推進協議会    →   (計画推進担当)

                   ↑ ↓  計画の検討・修正・推進等

                 障害者福祉計画

                 推進検討チーム


VI.資料

1.台東区障害者福祉計画検討委員会の構成

検討委員

氏名備考
冨安 芳和慶応義塾大学教授委員長
吉沢 英子大正大学教授学識経験者
太田 貞司帝京平成短期大学助教授学識経験者
若井 康男民生委員障害者福祉部会長民生委員代表
塩田 茂樹台東区身体障害者福祉協会会長障害者団体代表
山本 平八郎台東区手をつなぐ親の会会長
佐藤 友枝台東区身障児者を守る父母の会会長
長島 利夫台東区脳卒中リハビリ協会会長
折山 曜三台東区聴覚障害者福祉協会会長
廣川 實台東区社会福祉協議会常務理事民間法人代表
亀田 融台東つばさ福祉会施設長
隈部 孟企画部長区職員
小林 謙光財政担当部長
苅部 雄孝福祉部長
瀬崎 昌美企画課長
野尻 金治職員課長
椎名 勤治福祉課長
松野 晋障害者福祉課長
矢下 薫松が谷福祉会館長

作業部会

氏名備考
冨安 芳和慶応義塾大学教授委員長
吉沢 英子大正大学教授学識経験者
太田 貞司帝京平成短期大学助教授学識経験者
松野 晋障害者福祉課長座長
星 文夫(社)つばさ福祉会主査事務局
大塚 明台東区社会福祉協議会書記
中沢 陽一企画課主査
石井 守職員課主査
木村 一夫予算課主査
笠松 信孝福祉課主査
舩越 知行松が谷福祉会館主査事務局
染宮 弘美障害者福祉課主査
加藤 彰子障害者福祉課主査
上田 彰障害者福祉課主査
森 正夫障害者福祉課主査事務局
内田 透障害者福祉課主事事務局

民間作業部会

氏名所属団体名備考
古矢 和男台東区身体障害者福祉協会
鈴木 定雄
柳 正八
植田 秀輔
野坂 羊子台東区手をつなぐ親の会
松本 澄子
半沢 増代
山本 光枝
田中 末子
網野 加世子
内藤 由美台東区身障児者を守る父母の会
石井 昭雄
鶴岡 和代
田 中極台東区脳卒中リハビリ協会
神谷 利道
清水 洋一郎
斉藤 吉五郎台東区聴覚障害者協会
松野 晋障害者福祉課長事務局
森 正夫障害者福祉課主査
内田 透障害者福祉課主事
舩越 知行松が谷福祉会館主査
星 文夫台東つばさ福祉会主査

2.台東区障害者福祉計画検討委員会設置要綱

(設 置)
第1条 台東区の障害者福祉の基本的な在り方を総合的に検討し、「台東区障 害者福祉計画」(以下「計画」という。)を策定するための台東区障害者 福祉計画検討委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(検討事項)
第2条 委員会は、次の事項について検討を行い、その結果を区長に報告する 。
  (1)計画の基本的な考え方
  (2)計画の具体的な展開に必要な施策及び施策の方向
  (3)その他必要な事項
(構 成)
第3条 委員会は、次に掲げる者につき、区長が委嘱又は任命する委員で構成 する。
  (1)学識経験者
  (2)障害者関係団体代表
  (3)台東区社会福祉協議会
  (4)台東つばさ福祉会
  (5)区職員
(委員長)
第4条 委員会に委員長を置き、委員の互選によりこれを定める。
  2.委員長は、委員会を統括し、委員会を代表する。
  3.委員長に事故あるときは、あらかじめ委員長の指名する委員がその職 務を代理する。
(任 期)
第5条 委員の任期は、委嘱又は任命された日から、第2条に掲げる事項につ いて報告を終えたときまでとする。
(会 議)
第6条 委員会は、委員長が招集する。
  2.委員長は、必要があると認めたときは、委員以外の者の出席を求める ことができる。
(作業部会)
第7条 委員会に、作業部会を置く。
  2.作業部会は、委員長が定める事項について調査検討し、その結果を委 員会に報告する。
  3.作業部会の委員は、委員会の委員のうち委員長が指名した者及び別表 に掲げる者をもって充てる。
  4.作業部会の座長は障害者福祉課長とする。
  5.作業部会の座長は、部会を招集し、主宰する。
  6.座長は、必要があると認めたときは、作業部会委員以外の出席を求め ることができる。
(事務局)
第8条 委員会及び作業部会の事務局は、障害者福祉課に置く。
(その他)
第9条 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は委員 長が別途定める。

附則
  この要綱は、平成7年6月1日から施行する。

3.検討経過

月日議題
第1回検討委員会6月5日・検討委員会委員紹介
・検討委員会委員長の選出
・吉沢先生講演「地域福祉とトータルケア」
第1回作業部会
(民間)
6月21日・台東区障害者福祉計画の主旨説明
第1回作業部会6月27日・ライフサイクルに対応した一貫性のあるサービス
体系について
第2回作業部会7月18日・障害者福祉計画をまとめるにあたっての基本的な
考え方 -ノーマリゼイション、リハビリテーション
トータルケア-
第2回作業部会
(民間)
7月25日・ライフサイクルに対応した一貫性のあるサービス
体系について
第3回作業部会8月21日・これまでの検討についての冨安先生のコメント
・在宅福祉の推進とケースマネージメントの在り方に
ついて
第3回作業部会
(民間)
9月6日・障害者福祉計画をまとめるにあたっての基本的に
考え方
-ノーマライゼイション、リハビリテーション
トータルケア-
第2回検討委員会9月18日・作業部会における検討経過報告
-計画の基本的位置づけと方向性について-
第4回作業部会
(民間)
10月12日・作業部会における検討経過報告
-計画の基本的位置づけと方向性について-
第4回作業部会10月24日・障害者施設の体系的整備
第5回作業部会11月17日・高齢障害者への対応と障害者の高齢化対策について
第5回作業部会
(民間)
11月21日・障害者施設の体系的整備
第6回作業部会12月19日・障害者サービスとマンパワーの養成について
第6回作業部会
(民間)
12月21日・高齢障害者への対応と障害者の高齢化対策について
第7回作業部会1月30日・移動・移送手段の整備とシステム化について
・台東区障害者福祉計画のまとめ方について
第7回作業部会
(民間)
2月20日・移動・移送手段の整備とシステム化について
第3回検討委員会2月22日・台東区障害者福祉計画概要(案)
第8回作業部会
(民間)
3月8日・台東区障害者福祉計画のまとめ方について
第4回検討委員会3月26日・台東区障害者福祉計画(案)

主題:
台東区障害者福祉計画(平成8年登録33号) 72頁~113頁

> 発行者:
東京都台東区福祉部障害者福祉課

発行年月:
平成8年3月発行

文献に関するお問い合わせ:
東京都台東区福祉部障害者福祉課
東京都台東区区東上野4-5-6
TEL 03-5246-1203 FAX 03-5246-1209