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田辺市障害者に係る新長期計画

 各論

1 啓発

 障害者を含む全ての人々が安心して暮らせるまちづくりを進めていくためには、行政機関が障害者施策を実施していくだけでなく、社会を構成するすへての人々が障害及び障害者福祉に対して理解と認識を深めるとともに、共に助け合い、支え合う社会を実現できるように努める必要があります。
 このために、行政はもとより、関係機関、団体等、更には、すべての市民の理解と認識のもとに次の点に留意してより効果的な啓発活動を積極的に展開します。

1 障害者は他の人々と同じ社会の構成員であること。
2 障害者は一人の人間として基本的人権を有しており、障害による差別や偏見を受ける理由がないこと。
3 障害者も他の人々と同じように大きな可能性を有していること。
4 障害及び障害者福祉については、すべての人々自身の問題であること。

(1)啓発広報活動の推進

・現状と課題

 障害者が地域で安心して暮らしていくためには、道路、建物、交通機関が障害者に利用しやすいように整備されるとともに、障害者福祉について市民が理解と認識を深めることが必要です。
 このため、ラジオ、新聞等のマスメディアと「広報たなべ」によるさまざまな啓発及び情報提供に取り組んでいます。
今後とも、様々な行事活動を通じて、積極的な啓発活動に取り組み、障害者福祉について市民の理解と認識を深める必要があります。
 また、障害者自身も自立性と主体性をもって、社会活動に積極的に参加することが大切です。

・施策の方向と取り組み
1.障害及び障害者福祉に対する正しい認識と理解の促進
1)マスメディアを通じた啓発広報活動は効果が大きいことから、マスメディアヘの積極的な情報提供を行うとともに、各社の協力を得ながら、ラジオ、新聞等の広報媒体を通じ、啓発広報に努めます。
2)市の「広報たなべ」の活用をより一層推進します。
3)「障害者の日」(12月9日)や「障害者週間」(12月3日~12月9日)等の趣旨の理解を深めるために、関係団体、市民、ボランティア団体等の積極的な参加を求めながら、街頭啓発活動等に努めます。
4)市民、ボランティア団体等の積極的な参加を求めるとともに、障害者団体等と連携を図りながら、各分野における啓発広報活動を推進します。
5)障害者問題は、行政の全ての分野にわたる問題として総合的に進めて行く必要があります。

 従って、すべての公務員が認識を深め、実践力を高めるため研修の充実に努めます。

(2)福祉教育と交流の促進

・現状と課題

 心豊かな福祉社会を実現するため、市においては、福祉読本「ともに生きる」を小学校5年生を対象に無料配付し、思いやりの心を育む教材のひとつとして、その活用を図っています。
 また、市教育委員会では、市社会福祉協議会からの委託を受げて、市内の小中学校を福祉協力校として指定し、子供達が直接福祉活動を体験することを目的に福祉施設の訪問、地域の高齢者の方々との交流活動等、福祉教育の推進に取り組んでいます。
 社会教育では、交流学習モデル事業「めばえ学級」において、障害のある人とない人との交流を深めています。
 市内17の公民館活動及び婦人会活動の中でも、障害者福祉についての理解と認識を深めるよう、諸学級、研修会の実施、施設訪問やボランティア活動が積極的に行われています。
 今後とも、学校や地域での福祉教育を一層充実して、障害者福祉について理解と認識を深めることが必要です。

・施策の方向と取り組み

1.学校教育における福祉教育と交流の推進
 障害者福祉に対する市民の理解と認識を推進するには、幼少時からの啓発広報活動が重要であることから、就学前の児童、小・中学校等での福祉教育の更なる充実に努めます。
  また、学校教育等における障害児と障害のない児童・生徒が共に育つ活動を推進します。
2.社会教育における福祉教育と交流の推進
 社会教育の場において、市民一人ひとりが、ノーマライゼイションの理念に基づいた障害者福祉についての理解と認識を持つことを目標に、学習資料や教材の作成、諸学級、各種研修会の学習課題に障害者福祉を積極的に取り入れるとともに、ボランティア活動や体験学習の場を提供していきます。また、様々な行事やイベントの中で、障害のある人とない人が相互に交流を図れるよう、多くの参加を呼びかけます。

 保健・医療・リハビリテーション

 障害のある人々にとって医療の果たす役割は大さく、障害の予防、早期発見、早期治療、根本的治療、そして、自立のためのリハビリテーション医療に至る一質した体制づくりを図る必要があります。
 障害者に対するリハビリテーションについては、単に運動機能の回復のニーズに対応するだけでなく、障害者の自立を支援し、全人間的復権をめざす医学的、心理学的及び社会的な総合的対応として、全ライフステージにおいて、それぞれの時期における異なるニーズに対応する必要があります。
 このため、地域に密着したリハビリテーションの実施体制を一層充実させるとともに、障害の初期の段階で、本人及び家族に対して障害の軽減に係る各種サービスの紹介、相談体制の充実に努めます。
 特に近年、合併症を有する障害者や内部障害等定期的な医学的管理を要する障害が増加する傾向にあることから、こうした状況に適切に対応していく必要があります。
 また、精神保健対策としては、精神障害者の人権に配慮した医療を確保するとともに、社会復帰対策や地域精神保健対策を推進していくことが重要であります。
 以上のような施策推進には、保健・医療・福祉の各分野との有機的な連携を図る必要があり、その連携強化に努めます。

(1)障害の予防の充実

・現状と課題

 平成6年度に実施した障害者アンケート調査の結果によると身体障害の原因は、「疾病」によるものが59.0%を占めており、また、知的障害者では全体の91.7%が6歳までに障害が判明しています。
 そのため、特に妊婦に対しては健康教育を推進し、また、母子保健事業の充実に努める必要があります。
 市では、母子手帳の交付時に保健指導を行うとともに、必要に応じて訪問や電話相談を行っています。また、健全な出産・育児のための母親教室を開催しており、未熟児や障害児の発生予防に努めています。
 また、高齢化が進む中で、脳卒中等の予防対策としての健康診査や成人病検診に基づく生活習慣改善指導を実施しています。
 障害の発生原因である労働災害や交通事故防止対策についても、一層の充実を図ることが課題であります。

・施策の方向と取り組み
1.健康づくりの推進及び事故防止
1)田辺市保健センターを健康教育等の保健サービスの拠点とし、総合的な健康づくりを推進します。
2)事故防止対策や各種の疾病予防対策、交通安全、労働災害防止等の安全対策を一層推進し、またスポーツに係る安全対策を推進します。
2.母子保健事業の充実
1)先天的要因による障害や母子感染等の予防のため、妊産婦占健康と保健対策の充実を図ります。
2)出生時の母子の救命及び障害の予防を図るために、周産期医療体制の充実を図ります。
3)健全な出産や育児のための母親教室で障害の予防についての知識の普及に努めます。

 また、保健所と共に実施している妊産婦・新生児訪問指導の一層の推進を図るとともに、地域における母子保健推進員活動の協力を得て、更に充実を図ります。

3.成人及び老人保健事業の充実
1)成人病検診の受診率の向上に努めるとともに、検診結果に基づく生活習慣改善指導の充実に努めます。
2)骨粗しょう症及び歯周疾患をテーマとした重点健康教育・栄養指導等の一層の充実を図ります。また、骨粗しょう症においては、測定装置の導入等を検討します。

4.二次障害の予防
 後天的な障害の予防のため、成人病予防対策等を充実するとともに、事故や公害、労働災害等の安全対策の充実を一層推進します。

(2)障害の早期発見・早期療育体制の充実

・現状と課題

 障害の早期発見・早期療育は、障害の治癒、軽減に効果があり、早期に適切な療育指導が行われると、障害者の可能性を最大限に伸ばすことがでさます。
 現在は、新生児・乳児に対して「*先天性代謝異常等検査」や「*神経芽細胞腫検査」を実施しておりますが、今後も受診率の向上に努め、妊産婦から乳幼児まで一貫した健康管理ができる体制づくりが大切です。
 また、医療機関や保健所等と連携を図り、関連施設の整備が課題となっています。
 早期療育を図るため、みどり保育所において電話相談事業を実施しています。
 また、障害児の保育所への入所及び重度障害児と母親が適所する母子適所保育の取り組みを実施しています。

・施策の方向と取り組み
1.健康診査の充実
1)引き続き「先天性代謝異常等検査」や「神経芽細胞腫検査」の実施により、障害の早期発見・早期治療に努めます。
2)異常の早期発見のため、妊婦や乳幼児の受診率の向上を図ります。
3)妊産婦から乳幼児まで一環した健康管理ができる体制づくりを推進します。
4)医師会、歯科医師会及び保健所の協力を得ながら各種乳幼児検診の充実を推進します。

2.療育指導の体制及び施設の充実
 医療機関や保健所等と連携して療育指導の充実を図り、関連施設の整備等を図ります。

3.障害児保育・母子適所事業の充実
 障害児の保育所への入所及び重度障害児と母親が適所する母子適所保育の取り組みを縦続し、充実に努めます。

(3)医療・リハビリテーションの充実

・現状と課題

 医療は、患者の症状にあわせて早期にかつ適切に提供される必要があります。そうすることにより、治癒又は障害を軽減することができます。
 また、近年の在宅医療技術の発達により、在宅においても必要なサービスが受けられるような体制づくりが求められています。
 高齢化社会への対応として、平成5年度より高齢者、在宅療養者への保健サービス部門を独立させ、機能訓練、訪問指導、及び訪問リハビリの充実を図っています。
 また一方、家庭介護の知識・技術・リハビリテーションの方法を習得する介護講座(リハビリ講座)を実施しており、修了生により、ボランティア組織が結成されており、組織強化、活性化を促進することが課題であります。

・施策の方向と取り組み
1.障害者医療の充実
1)障害を残さないためにも救急医療知識の普及に努めるとともに、救急医療の整備に努力します。
2)角膜、腎臓、骨髄等の移植に対する社会的要請が増大していることから、県及び関係医療機関と連携し、その啓発、普及に努め臓器提供と登録の促進を図ります。
3)県が実施している難病患者相談事業を通し、保健・医療・福祉サービスの推進に努めます。
2.リハビリテーションの充実
1)医療機関におけるリハビリテーション医療をより充実させていくために、関係機関への働きかけを強めます。
2)地域におけるリハビリテーションを推進するため、田辺市在宅サービスセンター等の施設の充実と訪問リハビリテーション事業の推進を図ります。
3)県の脳卒中情報システムにより、脳卒中等の患者の早期把握に努め、適切な在宅療養への援助に努めます。
3.在宅障害者に対する保健・医療の充実
1)近年、*CAPD(連続携行式自己腹膜透析療法)等、在宅医療技術の開発・普及が進んでおり、在宅においても必要なサービスが受けられるような体制づくりを図るために、訪問看護ステーションの設立を医師会・歯科医師会等の関係団体及び医療機関と連携をもちながら検討いたします。
2)障害者の歯科保健・治療について、口腔機能の正常な発達、基本的な生活習慣を確立するため早期指導を行うなど、保健と医療が一体となった体制づくりを促進します。

 また、寝たきり高齢者の歯科保健・医療については、施設との連携や在宅訪問治療も含めた総合的な対策について歯科医師会等と連携をもち検討します。

4.医療費助成制度の充実
 障害者及び家族に対する医療負担の軽減と自立更生を図る目的で更生医療と、重度障害者等医療費助成等の公費負担制度の充実を図ります。
 また、精神障害者の医療費の自己負担金の軽減を図ります。

(4)精神保健対策の充実

・現状と課題

 精神障害者施策は、適切な治療を受けることと、自立した生活を送るための支援サービスを提供する等、地域社会の中で生活できる地域づくりが必要です。
 市では、心の健康づくりとして健康講座を実施しており、また、精神障害者小規模通所授産施設に対して、運営費を補助し、また、通所に要する交通費を補助しています。
 精神障害者に対する理解と認識を広げる広報活動を推進するとともに、社会復帰、社会参加を積極的に促進する必要があります。
 また、精神障害者が地域で安心して暮らせるためには、医療費の助成により本人及び家族の負担を軽減し、保健・医療・福祉等と地域住民の自主的な活動組織の育成・支援が必要となってきます。このために、医療機関におけるチーム医療の推進や*精神科デイケア等のリハビリテーションの医療の充実や医療機関と保健所等と連携を図りながらの相談体制の充実が課題であります。

・施策の方向と取り組み

1.地域精神保健医療の充実
 精神障害者の地域ケアと住民の精神保健の向上を図るために、ノーマライゼイションの理念に立って相互に関連を保ちながら、保健・医療・福祉が一体となった地域精神保健医療の充実を図ります。

2.心の健康づくりの推進
 ライフステージに応じた心の健康づくりを推進するために、保健・医療・福祉等と地域件民の自主的な活動組織の育成・支援により、組織的、継続的な精神保健活動に取り組めるシステムの開発に努力します。

3.精神障害者の社会復帰対策の推進
1)精神障害者の社会復帰を促進するため、共同作業所に対して運営費を補助するとともに社会復帰施設の整備を図ります。
2)医療機関と保健所、地域の民生児童委員等と連携を図りながら相談援助体制め充実を図ります。
3)精神障害者に対して適切な医療の機会が提供できるように、救急医療体制の整備や一般の医療機関を含めた相互協力体制の整備を図り、精神科デイケア等のリハビリテーション医療を推進します。
4.老人精神保健対策の推進
1)人口の高齢化等を踏まえて、各自ライフステージに応じたきめ細かい精神保健対策の充実に努めます。
2)平成6年4月に紀南綜合病院新庄別館内に設立された老人痴呆疾患センターにおける専門医療相談や緊急医療体制を更に地域で充実させるために、保健所・福祉事務所等の関係専門機関や*在宅介護支援センター、老人福祉施設更には地域の民生児童委員と連携を深め充実を図ります。

(5)保健・医療・福祉の連携

・現状と課題

 障害者福祉は、様々な各分野が連携、協力しながら進めることにより、効果が発揮させます。
 特に、保健・医療・福祉が連携を密にし、いつでも、どこでも、だれでもが安心してサービスが受けられるような体制を整備していくことが必要となってきます。
(現在市では、*高齢者サービス調整チームによる医療・福祉・保健の連携を図っており、毎月2回関係者による事例の提供、処遇の検討、サービスの検討を行っています。)

・施策の方向と取り組み
1.保健・医療・福祉の効果的な提供 
市民の総合的なニーズに対応した保健・医療・福祉の連携のとれたサービスができる体制づくりに努力します。
2.情報交換等の充実 
保健・医療・福祉の各分野に従事する職員の研修等への派遣に努力します。
3.サービス調整会議の設置 
障害によって異なる介護サービスのあり方や、保健・医療・福祉の各分野において係わる関係者の意見交換をする場を設置できるよう検討し、また、現在行っている高齢者サービス調整チームのより一層の効果的な活用を推進します。

3 共に育ち合う保育・教育

 保育・教育の施策推進に当たっては、ノーマライゼイションの理念に基づき、一人ひとりの可能性を最大限に伸ばすことを最重点にしなければなりません。
 そのため、障害のある人もない人も「地域で共に生活する社会」を築き上げるため、幼少時から共に学び共に育つ教育に努めています。
 また、障害者一人ひとりが社会の一員として、生きがいのある生活を送れるよう、乳幼児期から障害に応じた適切な保育・教育の充実を図り、生涯にわたり多種多様な学習の機会を提供する必要があります。

(1)保育・学校教育の充実

・現状と課題

 障害のある乳幼児・児童・生徒については、一人ひとりの障害の状態や発達段階・特性等に応じた適切な保育・教育が必要です。
 そのため、保育所・学校では、保護者や医療機関、児童相談所、関係機関等との緊密な連携をもって保育・教育にあたる事が重要です。
 保育所では、障害のある乳幼児を障害のない児童と共に保育することにより、お互いの子どもの発達が促進されることが実技を通して確かめられるようになり、障害児保育を実施していますが、その他に重度障害のある児童のために、母子共に保育所に通い月1回の理学療法士の指導と助言を受ける「障害児母子適所保育」を実施しています。
 卒園後のスムーズな就学に向けて、今後とも保護者、学校等との連携を密にしていかなければなりません。
 また、重度の障害児にあっては、養護学校高等部卒業後の受入れ施設等を含めた社会体制が不十分なため、義務教育終了後の進路の選択が難しいのが現状です。
 特殊教育にあっては、子どもたちが将来に向かって自立できるカを育てることを基本姿勢として、更には、個々の子どもの障害の状況及び発達段階や特性に応じた指導内容や方法、教材の工夫改善等に努める必要があります。
 更に、教員の特殊教育への正しい認識と理解を深める研修として、管理職を対象とした研修会や市特殊教育研修会での研修を設定したり、また、各学校の職員会議等では教職員の意識向上、資質向上に向けた研修に努めております。
 また、保護者に対してもPTAの研修会や学級懇談会での啓発を進め障害児への理解を深めていくことが重要です。
 一方、第6次教職員配置改善計画により、軽度の情緒障害児や言語障害児を対象にした通級による指導が設定されているが、通級による指導の教育活動の在り方について研究を深め、指導の充実を図るほか、必要に応じて通級による指導教室を拡充するよう、県教育委員会にも強く働きかけていくことが大切です。(なお、平成7年度においては、田辺第一小学校に言語障害児を対象に、田辺第三小学校には軽度の情緒障害児を対象にした通級教室が各1クラス開設されております。)

・施策の方向と取り組み
1.地域で共に育ち合う保育
1)重度の障害のある児童とその保護者とが共に適所し、理学療法士の指導と助言を得ながら障害児の保育を進める「障害児母子適所保育」をより一層推進します。
2)平成4年度から実施している「学校週5日制と特殊教育諸学校児童生徒への対応事業」についても、関係機関と連携を保ちながら、更に推進します。

2.早期教育の充実
 障害児に対する早期対応においては、家庭の果たす役割は誠に重要であり、保護者が早期から教育相談や指導を受けることのできる相談体制の整備が必要なため、教育・医療・福祉の分野における関係機関の連携に努めます。
3.適正就学の推進
 障害児の教育を効果的に行うためには、適正な就学が大切であることから、市教育委員会では、保健福祉部や関係機関、保護者等との充分な連携と就学指導委員会との連携のもとに適正な就学指導に努めており、また、市内の各小中学校での校内就学指導の充実に向けた取り組みの一層の充実を図ります。
4.教職員の役割
 教職員の役割の重要性から、現職教育をはじめ、各種研修会の一層の充実を図ります。

5.教材・教育施設等の条件整備
1)障害のあるすべての児童を受入れられる施設整備を促進するために、校舎増改築整備に併せて、障害児用トイレ、階段への手すり及びスロープの設置等の教育環境の整備を推進し、既存の校舎についても、障害児の就学上、必要が生じた場合には適切な対応に努めます。
2)今日、子どもの障害が重度化、重複化の傾向にあって、個々の子どもの障害に応じた指導内容や方法、教材の工夫改善に努めます。

(2)進路の確立

・現状と課題

 近年、障害者の雇用の促進に関する法律の改正や障害者授産施設の整備が図られていますが、卒業生の進路は、極めて厳しい状況です。
 こうした状況の中で、進路指導の充実を図るため、公共職業安定所や福祉関係緒機関と連携を緊密にし、卒業生の進路の開拓や社会の変化に対応できる人材の育成に努める必要があります。

・施策の方向と取り組み
1.進路指導の充実
1)進路指導を行う上においては、保護者は勿論、その児童生徒一人ひとりの希望を尊重しながらも、作業所、事業所等への現場実習に努めます。
2)進路開拓のための事業所見学を推進し、就職後も安定就業を図るための職場訪問を実施します。

2.後期中等教育の充実
 教育課程や現場実習の充実等、就労に結びつく特色ある教育内容の充実を県教育委員会に働きかけます。
3.関係機関との連携強化
 生徒一人ひとりの円滑な社会参加を促すために、関係諸機関との連携・調整を図ります。

(3)生涯学習の推進

・現状と課題

 今日、学校教育終了後も、なお、学習を続けたいというニーズが高くなっています。人々が、「いつでも、どこでも、だれでも、気軽に」学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が社会において適切に評価されるような生涯学習社会の実現が必要です。
 そのため、市では、庁内に生涯学習推進委員会を設置し、生涯学習関連事業の連携を図るとともに、学習活動助成事業として地域・福祉・教育活動を行う団体等に助成を行うほか、生涯学習センターでは、学習機材機器の貸出や学習情報の提供、学習相談に応じています。
 また、福祉と人権のまちづくりをテーマに行われている「明日を語る市民の集い」において、障害児者コーナーを設け、障害についての理解や認識を深めるための話し合いを重ねています。
 更に公民館では、生涯学習(人権)推進員を設置し、人権学習を核とした学習活動を進めています。
 今後、市民の声を行政に反映させ、市民自らも実践する組織として生涯学習推進市民会議や行政と市民が一体となった生涯学習推進本部を設置するとともに、「人を大切にする教育」の基本方針に基づき、生涯学習を推進する中で一人ひとりの人格や価値観が尊重され、豊かで充実した人生が送れるよう、生涯学習体系の整備に努める必要があります。

・施策の方向と取り組み

1.生涯学習推進体制の充実
 「人を大切にする教育」の基本方針に基づき、基本的人権の認識を深める学習機会の提供や学習資料を作成するとともに、生涯学習推進体制として、生涯学習推進本部、生涯学習推進市民会議の設置、生涯学習推進委員会の充実を図ります。
2.学習への支援等
 生涯学習センターを市民のまちづくり活動の拠点としてその内容を充実するとともに、学習活動助成事業において、障害者団体や家族の会への支援を行うとともに、点字、手話等の団体サークルにも助成を行っていきます。

 雇用・就労の促進

 就労は、自立と社会参加の促進、生きがい等において、誠に重要な問題であります。
 そのためには、全ての障害者に、その適性、能力に応じた就労の機会が提供されなければなりません。
 特に、*法定雇用率の達成、障害者の一般事業所への雇用の促進を図るとともに、更には、*職業リハビリテーションの充実や福祉的就労の場が必要となってきます。
 また、重度障害者の雇用対策に重点を置く必要があります。

(1)雇用の促進と安定

・現状と課題

 障害者の雇用状態については、相当改善してきているものの、視覚障害者、脳性麻痺者、知的障害者及び精神障害者については、その雇用は必ずしも十分には改善されていない状況こあり、重複障害者を含めた障害種別の特性に応じたきめ細かな対策を講じる必要があります。
 この課題を解消するために、雇用促進キャンペーンの実施、障害者の法定雇用率の達成や障害者の一般事業所への雇用を促進するための指導を強化し、更には田辺公共職業安定所こおける職業指導・相談や、市が実施している「田辺市雇用促進奨励金制度」を充実させる必要があります。
 また、職業リハビリテーションを総合的かつ効果的に展開して行くことが重要です。

・施策の方向と取り組み
1.雇用促進を図るための啓発の推進
1)「障害者雇用促進月間」(毎年9月)における街頭啓発運動を関係機関と連携を図りながら推進します。
2)障害者の雇用に理解のある事業所に対しては、優良雇用事業所として市長表彰を贈り、用推進に努めます。
3)市内における事業所とともに、障害者の雇用促進と働きやすい職場環境の研究に取り組みます。
3)市内において実施している「田辺市雇用促進奨励金制度」の充実を図ります。

2.障害者雇用率の達成指導の強化
 田辺公共職業安定所と連携を図りながら、法定雇用率未達成事業所に対して、雇用助成制度の周知徹底や雇用指導を行います。
 さらに、雇用の進まない事業所に対しては、指導等を行い法定雇用率達成に努めます。
3.職業指導・職業紹介相談の充実
 田辺公共職業安定所と連携を図り、求人・求職の実態を常時把握し、広くその情報を提供することにより、就職の促進を図ります。
 また、月1回に田辺市福祉センターにおいて行っている障害者出張職業相談所の充実を図ります。
4.自営業への支援施策の充実
 自営業を営む障害者や自営業を希望する障害者には、特に営業のための資金の貸付等の支援対策について検討します。

5.地方公共団体における障害者雇用促進
1)地方公共団体は、障害者雇用に努める立場であり、公務部門における障害者の職域拡大について研究しながら、雇用の促進に努めます。
2)障害者の体験学習の場づくりとして、市役所及び市関連機関における実習の受入れについて検討します。

6.職業リハビリテーションの充実
 地域での職業リハビリテーションの実施体制の充実を図るとともに、関係機関のネットワークづくりを行う等きめ細かな職業リハビリテーションが実施可能な体制づくりを県等と協議のうえ進めます。

(2)障害種別施策及び重度障害者施策の推進

・現状と課題

 障害者の施策については、障害の特性に応じたきめ細かな障害種別施策を総合的に行うことを基本として、その雇用・款業の場の確保に向けて取組みを展開する必要があります。その中でも、重度障害者雇用を最重点課題として取り組むことが必要です。

・施策の方向と取り組み
1.身体障害者施策の推進
1)重度身体障害者に対する雇用については、関係機関と連携を図りながら、雇用確保及び雇用拡大のための諸施策を一層推進します。
2)視覚障害者については、はり師・灸師・あんまマッサージ指圧師の業務従事者が多いが、その職業の場が狭まっている事情から、他業種への雇用・就業対策について検討します。
3)コミュニケーションを図る上で、困難を有する視覚障害者及び聴覚障害者等に対しては、コミュニケーションを円滑にできるための支援に努めます。

2.知的障害者施策の推進
 知的障害者の雇用の円滑化のためには、就職する以前に、学校教育や社会福祉施設での指導・訓練において職業人としての基礎知識・技能等を身につけるための現場実習が重要であるため、今後もその推進を図ります。

3.精神障害者施策の推進
1)精神障害者の雇用の促進を図るために、勤務形態等の諸条件や医療・福祉機関及び事業所との連携のあり方について検討を行い、必要な施策の充実に努めます。
2)精神障害者は、他の障害者の雇用に比べて、社会一般の理解が遅れていることからその啓死活動を推進するとともに、社会復帰対策の充実、公共職業安定所における職業相談、職業指導体制の整備、生活面からの支援体制の充実を関係機関と検討を行い整備に努めます。
4.重度障害者施策の推進
1)重度障害者に対する雇用率制度及び納付金制度における特例の取扱等について事業主に対し周知を図ります。
 さらに、重度障害者については、勤務形態において配慮を図る必要があることから、勤務時間の短縮や在宅勤務、フレックスタイム制度の導入等の多様な勤務形態の活用を図り、その雇用の促進及び就業の安定に努力します。
2)重度障害者の就労の場の確保については、授産施設と一般雇用の場との間の流動性を持たせるよう、また、両者間での連携による能力開発の措置の充実を図ります。

充実を図る必要があります。

(3)福祉的就労の場の拡大

・現状と課題

 民間企業での雇用が困難な障害者にとって、授産施設、小規模作業所等は、自立や社会参加を促進する等大きな役割を担っています。
 市では、社会福祉施設等の施設整備に対し助成金を交付し、福祉施設の整備、充実に努めています。
 また、授産施設2施設、小規模作業所5施設に対して運営費を補助しています。
 今後も障害の種類や程度に応じた就労の場の確保として、施設整備、更には運営支援の充実を図る必要があります。

・施策の方法と取り組み
1.福祉的就労の場の拡大
1)小規模作業所については、運営費を助成するとともに、運営強化を進めます。
2)身体障害者、知的障害者及び精神障害者の授産施設については、障害種別を越えた相互利用ができるように検討するとともに、整備については「田辺市社会福祉施設等の整備に関する助成要綱』に基づき、支援していきます。
3)福祉施設等の自主製品の開発・販売について、その推進に努めます。
4)市関連施設内での障害者の働く場の提供に努めます。

主題(副題):田辺市障害者に係る新長期計画

発行者:田辺市

発行年月:1996(平成8)年3月

文献に関する問い合わせ先:
〒646-8545 和歌山県田辺市新屋敷町1
電話 (0739)22-5300