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障害者の自立と共生社会の実現をめざして

春日市障害者福祉長期行動計画

1995年~2004年

春日市

2 各論

1 啓発活動の推進

(基本方針)

 障害者が地域の一員として社会にとけ込み生活できる共生社会を実現するためには、市民が障害や障害者のことを正しく理解し、誤った認識や偏見を解消することが大切です。
 これまで行政は、長い歴史のなかで発生した人権問題という大きなテーマの中で、そのひとつとして障害者問題を捉え、「問題」を解決しようという姿勢で施策を展開し、啓発を行ってきました。
 しかしながら、障害を「問題」として捉える姿勢は適当ではなく、ノーマライゼーションの理念でも明らかなように、障害をひとつの個性として認識する発想の転換が求められています。
 「障害者を理解することは、市民が自らの個性を理解し、障害を個性として理解すること」と、行政自らが認識し主体的に啓発を行う必要があります。

(1)啓発・広報の充実

 共生社会を実現するためには、市民が「障害」について正しく理解し、ひとつの個性という認識を深めていくと同時に、障害者自身やその家族が「障害」を受け入れ、「障害」と共存する意思を持つことが大切です。
 そのためには、障害者雇用促進月間(9月)、障害者福祉啓発強調週間(12月9日からの1週間)などの時機を捉えての講演会等のイベントの開催や、チラシ・パンフレット、啓発ビデオなどの作成・配布といった啓発活動を充実させ、障害者を含めたすべての地域住民に「障害」に対する意識を定着させることが必要です。
 また、市報を積極的に活用し、福祉制度の紹介、障害者福祉、人権学習などの個別テーマに沿った特集を定期的に掲載するなど体系的な広報に努めるとともに、意識改革は一朝一夕には実現できないものであることを認識し、反復して、根気強く広報します。

(2)福祉教育の推進

 市が独自に作成した福祉読本「ねがい」、「明日に生きる」を市内全小・中学校に配布し、障害者福祉教育を推進していますが、教材として積極的に活用するために内容を充実させ、「道徳」や「ゆとりの時間」等に福祉教育の導入を働きかけるなど、教育委員会との連携により有効な活用方法を検討します。
 さらに、福祉教育を実践する教職員についても、福祉教育に自主的に取り組む意識を養成するような研修を導入するなど、機会あるごとに県に要望していきます。
 また、社会福祉協議会が主体となって、地域福祉推進地区(2地区)や福祉活動推進協力校(2校)を指定し、ボランティア講座等の福祉教育を実践していますが、市もこの事業に積極的に協力し、指定地区、協力校の増設や事業内容の充実など地域福祉推進事業の拡充を支援することで福祉教育を推進します。

(3)交流・ふれあいによる相互理解

 障害や障害者を理解するうえで、教材や資料による学習を行うことも大切ですが、障害者と実際に交流し、ふれあうことによって得られる「体験」の大切さを認識する必要があります。学習と現実の体験とのギャップを自分なりに消化することで、障害者に対する認識が確立され、問題意識が生まれ、平等意識が育成されます。
 保育所や幼稚園は、団体活動を体験する最初の場であり、障害児とともに時間を過ごすことができる小さな地域社会といえます。ここでの交流・ふれあいが、将来にわたっての人権意識の基礎となり得ることを認識し、障害児の受入れ体制を整備し、交流・ふれあいの充実に努めます。
 日ごろ障害者と出会う機会の少ない人々が、「障害者運動会」や「ときめきフェスタ」などの障害者主体のイベントに気軽に参加できるような体制づくり、雰囲気づくりを行うと同時に、障害者の参加に配慮したイベントを企画するなど、相互が積極的に交流する気運を醸成し、交流・ふれあいの機会を拡充します。
 また、様々な世代ごとに、それぞれが持つ既成概念が存在します。それぞれの時代に生きて、教えられ、学んだ知識によって障害者に対する認識が異なっています。これらの認識の違いを解消することが大切で、その手段としての世代間交流事業を検討する必要があります。
交流・ふれあい  のイラスト

(4)職員研修の充実

 障害者福祉を主体的に推進していく立場にある行政職員が、障害者福祉を正しく認識するためには、職員研修の充実が不可欠です。
 行政サービスの基本は、すべての市民に同一のサービスを提供できる体制を整備することであり、そのひとつの手段として、職員を対象とした手話講習会の開催による手話技術の修得や障害擬似体験を取り入れた研修の企画化など、障害者の立場にたった研修を体系化する必要があります。また、現在行われている人権研修については、「障害者」をテーマとして人権問題を考えるなど効果的な研修を実施します。さらに、障害児保育などの専門研修にも積極的に参加させ、障害児保育の充実に努めます。
 行政は、様々な所管が様々な業務を担当していますが、障害者福祉を担当している所管だけでなく、すべての所管業務に「障害者の視点」を取り入れる発想を導入する必要があります。そのために、行政内部の交流・連携の強化を図り機会あるごとに職員の意識改革を促します。

1 啓発活動の推進 啓発広報の充実 市民啓発の充実 講演会等の開催
チラシ・パンフレット、啓発ビデオの作成・配布
障害者に対する啓発 福祉制度の周知
共生に向けた意識の変革
市報の活用 特集の定期的掲載
福祉教育の推進 教育内容、指導の充実 学校福祉読本の内容充実
福祉教育の推進
教職員の研修充実(要望)
地域福祉推進事業の支援 社会福祉協議会との連携による指定地区・協力校の拡充(支援)
交流・
ふれあい
市民との交流・ふれあい 障害者関係団体イベントへの参加呼びかけ(障害者運動会・「ときめきフェスタ」等)
障害者の参加に配慮したイベントの企画化
交流・ふれあいの機会拡充
保育所・幼稚園の障害児受入れ体制の整備
世代間交流 世代間交流事業の拡充検討
職員研修の充実 研修体制の確立 障害者の立場での障害者福祉研修の体系化
手話講習会・擬似体験研修の導入
現行の人権研修の充実
職場における意識改革 所管業務に「障害者の視点」の導入


2 教育の充実

(基本方針)

 障害者の教育・育成施策で重要なことは、成長のあらゆる段階において、障害の種類やその程度に応じた多様な教育が実施できる体制の整備と、誰もがより人間らしく心豊かな人生を送れるよう、障害の有無にかかわらず芸術・文化・スポーツ等を含むあらゆる学校教育、社会教育の機会を保障することです。
 施策の展開において、障害者のための特別な措置や配慮が必要な場合と、そうでない場合とを判断する必要がありますが、その判断は、行政の独善となることを避け、障害者の立場にたったものであることが大切です。

(1)就学前教育

 福岡県教育センターとの連携により、就学前の障害児の保護者を対象として、日常生活での悩みや心配ごと、入学に関する相談に応じる「心身障害児巡回教育相談」を筑紫地区合同で実施しています。また、就学前児童を対象とした就学時健康診断を法制度により実施しています。会場内に、入学に関しての様々な相談に応じたり、助言、指導を行う場を設定し、指導主事を中心に教育相談を行っています。
 これらの相談体制の継続、充実を図るとともに、幼椎園、保育所、福祉事務所等が連携し、保健所や医療機関の協力を得ながらこれらの組織が一体となって、その専門的知識、技術、経験を活用し、就学前教育の一層の充実を図ります。
 適正就学指導は、義務教育の出発点という学校教育における重要な節目に際し、大切な役割と重大な責任を伴うものです。本市においても、1973年(昭和48年)に適正就学指導委員会が設置され、障害児の障害程度、適性等についての県教育センターの専門的な検査結果や、必要に応じて、保護者の同意を得て保育所等での生活状況、医療機関での治療経過などの資料を検討し、その児童・生徒の能力を最大限に伸ばすことができる教育の場はどこかという視点にたって、入級・入校の判定が行われています。
 この委員会の判定結果や障害児とその家族の状況など、様々な角度から総合的に判断し、普通学級、特殊学級、県立特殊教育諸学校(盲学校・聾学校・養護学校)と、それぞれのニーズに応じた学校への就学指導を行っています。今後も、本人及び保護者の意見を尊重しながら協議や情報提供を積極的に行うなど、円滑かつ適正な就学指導ができるように最大限の努力をします。

(2)学校教育

 障害児の教育を行う上で大切なことは、障害児一人ひとりの状況に合わせた多様な教育形態を整備することと、障害児と障害を持たない児童・生徒との交流を活発に行うことにより、それぞれが相手の立場を理解し、自然に、共生できる環境、意識を育成することです。
 現在、市内の小中学校においては、小学校に3学級、中学校に2学級、特殊学級を設置し専門的な教育を行っています。また、重度の障害を持つ障害児のうち特に専門的な教育が必要な児童・生徒は、県立特殊教育諸学校での教育が実施されており、さらに、養護学校在学者で、その障害のために通学による教育が困難な場合には、障害児の家庭に教員を派遣する訪問教育が行われています。今後も、適正就学指導委員会や県など関係機関との協議を積極的に行い、障害児教育制度の充実を推進します。
 併せて、これらの障害児教育に携わる教職員はもちろん、普通学級担当教職員についても、障害児や障害児教育についての正しい認識と指導技術の向上が不可欠であることから、県教委との連携を強め、様々な研修機会を捉えて職員の資質向上と意識づくりに努めます。21世紀を担う子供たちが、高齢者や障害者との交流のなかで学ぶものは、これから迎える高齢社会や、福祉・人権を大切にする社会の形成に多大な影響を及ぼします。知識偏重教育の反省から、「ゆとりの時間」や、ボランティア活動等の地域貢献のための授業などを導入し、教育理念である他人を思いやる心を教え育む場としての認識を高めています。
 学校教育において、障害の有無にかかわらず児童・生徒間の交流を推進することは、心の教育を図る上での生きた体験の場として大きな意義があります。行政は、教科書では教えることのできない「何か」を子供たちが自然に学ぶことの尊さ、教師と保護者と児童・生徒が一体となって福祉の心を育てる教育の重要性を再認識し、交流機会の拡充と啓発活動の推進に努めます。

(3)社会教育

 地域における住民のために学習活動の機会を提供し、学習活動を通じて住民が交流を深めることによって、人づくり、地域づくりを推進することは社会教育の理念であり、その対象から障害者が疎外されることがあってはなりません。
 障害者の地域社会における現状は、障害者の参加を前提とした講座、教室の開催が少ないといった社会参加の機会の制限や、移動における物理的な整備が保障されていないなどの受入れ体制の不備が存在します。これらのソフト・ハード両面の課題を克服することが行政に求められており、この現状を打開するために、むしろ行政は積極的に障害者に視点を当てた施策を展開する必要があります。そうすることが、人づくり、地域づくり(まちづくり)という社会教育の理念、障害者福祉の理念、さらには春日市が目指す「誰もが住みよいまちづくり」の理念の実現にもなります。
 現在実施している各種講座・学級などの中央公民館事業に、障害者の参加が可能な企画を導入するとともに、人権学習や障害者福祉教育をカリキュラムに取り入れて、社会教育の分野での福祉教育を推進します。
 また、「ふれあい文化センター」を生涯学習の拠点と位置づけ、点字・録音図書の整備、障害者関連資料の収集、情報の提供など、障害者をサポートする体制の充実を図ります。同時に、これらの社会教育関連施設が、障害の有無にかかわらず安心して利用できるように、「春日市公共施設における福祉環境整備指針」に基づいて施設整備に配慮します。

2 教育の充実 就学前教育 就学前教育の相談推進 心身障害児巡回教育相談体制の推進
就学時健康診断時の教育相談体制の充実
幼稚園・保育所・福祉事務所の連携と保健医療機関の協力による就学前教育の充実
適正就学指導委員会の充実
教育相談、指導体制の充実
学枚教育 障害児教育の制度推進 障害児に適応した指導計画(カリキュラム)の作成・推進
特殊学級の充実
県教委・特殊教育諸学校との連携強化
学校環境の整備 「環境整備指針」に基づく施設整備の推進
教職員の障害児研修の充実(要望)
交流教育の推進 学校内での交流機会の拡充
特殊教育諸学校との交流促進
世代間交流の拡充
社会教育 社会教育の推進 障害者の参加を前提とした講座・教室の開催と受入れ体制の整備
各種講座・学級への障害者福祉教育のカリキュラム導入
点字・録音図書、障害者情報の整備・提供
社会教育関連施設の拡充 「ふれあい文化センター」の活用
「環境整備指針」に基づく施設整備の推進

*特殊学級=各学校においては様々な呼び方がされています。

3 雇用の促進

(基本方針)

 障害者にとって職業的自立を図ることは、単に収入を得て経済的に自立するだけでなく、働くことの喜びや生きがいを見出すことによって、人として、社会の一員としての自覚を持つと同時に、平等意識を自他ともに認め合う本来の社会参加の達成を意味します。
 したがって、その雇用形態は、障害内容にかかわらず一般雇用を基本とし、それが困難な障害者については、福祉的就労を推進し、職業リハビリテーションを活用することによって就業能力の向上を目指します。
雇用の促進  のイラスト

(1)一般雇用の促進

 就労意欲を持ちながら就職できない障害者に対して、公共職業安定所(ハローワーク)が主体となって就職活動の支援を積極的に行っています。また、雇用する側の事業主には、県や雇用促進協会が障害者雇用促進月間(9月)を中心として、様々な機会に各種講習会や雇用促進セミナーを開催するなど雇用機会の拡充に努めています。
 これらの実施機関に村して障害者雇用促進事業の一層の充実を要望するとともに、春日市内の企業等についても、商工会との連携を強化し、積極的な雇用促進を要請します。また、賃金格差や職場環境の改善などの労働条件の向上についても、障害者採用企業等への啓発により理解を促します。

(2)福祉的就労の充実

 1984年(昭和59年)に大野城市の身体障害者団体と共同で設立された「(株)つくし更生会」は、春日大野城衛生施設組合との委託契約により、不燃物処理施設「資源回収センター」で資源ごみの選別などの業務を行っています。社員の多くが重度障害者や知的障害者で構成され、障害程度に応じた作業を行っています。都市化に伴う資源ごみの激増や、「リサイクルプラザ」の活用など業務の増大が予想され、「(株)つくし更生会」の果たす役割も大きくなっています。今後は、春日大野城衛生施設組合との連携を図り、職場環境の整備や組織、運営の充実について支援します。
 また、春日市身体障害者福祉協会が事業主体となって、心身障害者共同作業所「白ゆり園」を運営していますが、施設拡充に併せて、授産訓練科目の増設や事業規模の拡大など運営の活性化を積極的に支援します。同時に、筑紫地区精神障害者家族会(五筑会)が運営する作業所や今後設立される小規模作業所についても、その運営状況を把握し、適正な支援を行うための補助基準を設定するなど、運営活動に村する支援のあり方を検討します。

(3)職業訓練の充実

 障害者の職業訓練や職業能力開発などの職業リハビリテーションや就職に関する相談は、県が設置している障害者職業能力開発校、障害者雇用促進協会が設置している福岡障害者職業センター、福岡ワークトレーニング社、福岡障害者雇用情報センターなど様々な施設で行われています。今後も、技術革新の進展と産業構造の変化に対応したものとするために、これらの関係機関や訓練施設との連絡体制を確保し、その充実について要望します。
 また、平成8年に改築される福岡県身体障害者授産指導所をはじめ、近隣の授産施設についても、授産訓練科目の増設、施設やスタッフの整備充実などを機会あるごとに要望します。

(4)市職員への採用

 春日市職員の障害者採用は、現在、法定雇用率である2.0%を達成してはいますが、市内企業の模範となるべき立場を考慮すれば満足な状況にあるとはいえません。
 1993年度(平成5年度)から、障害者について年齢枠を広げるなどの配慮を行っていますが、他の受験生と同等の条件での受験となるため、主な対象者は肢体不自由者や軽度の障害者に限定される傾向にあります。
 このようなことから、障害者別枠採用や重度障害者の採用について検討し、計画的な障害者採用を積極的に推進するとともに、施設や設備の改善、人員配置などの職場環境整備にも取り組みます。

(5)就労支援事業の充実

 県の補助を受け、自動車運転免許取得事業や自動車改造費助成事業を実施し、障害者の就労や社会参加に必要な移動手段の確保を行っています。これらの制度の充実を図り、対象者への周知など広報に努めます。
 また、市庁舎や公共施設における福祉売店や自動販売機の設置についても優先的配慮をするなど積極的な支援を行います。
 就職資金貸付制度(雇用促進事業団)や生活福祉資金貸付(社会福祉協議会)などの就職、技能修得のための資金貸付制度についても広報を行い、その利用を呼びかけます。

3 雇用の促進 一般雇用の促進 就労機会の拡充 公共職業安定所との連携強化
雇用促進協会との連携強化
商工会との連携強化
障害者採用企業等の労働条件の改善(要望)
情報の提供 各種講習会・セミナーヘの参加呼びかけ
福祉的就労の充実 つくし更生会 春日大野城衛生施設組合との連携強化
白ゆり園 施設拡充・運営支援
支援体制整備 補助基準の設定等による支援の適正化
職業訓練の充実 職業リハビリテーション 障害者職業能力開発校等の紹介
訓練項目の充実(要望)
授産施設 授産訓練科目、施設・スタッフの充実(要望)
市職員への採用 別枠採用 障害者別枠採用の検討
重度障害者採用の検討
職場環境整備 施設整備、人員配置等受入れ体制の整備
就労支援事業 支援事業の充実 自動車運転免許取得事業の充実
自動車改造費助成制度の充実
公共施設内の優先出店の推進
情報の提供 就業資金貸付制度の周知
生活福祉資金貸付の周知


4 保健・医療体制の整備

(基本方針)

 障害の発生を予防することは、誰もが人間としてより良い人生を送るために、何の困難もなく自由に生きたいと願う自然な発想であり、「障害は悪であり発生させてはならない」という誤った前提にたったものではありません。同様に、障害の早期発見や早期療育も、不自由の度合をできるだけ小さくするために、その研究が進められています。
 これらのことから、予防、早期発見、早期療育体制を有機的に連携させ、その効果を高める必要があり、その目的を達成するために保健所、医療機関、行政等の関係機関が一体となった組織を確立し、情報の相互利用システムの構築など行政の枠を超えた新しいリハビリテーション体制の整備を目指します。
保健・医療体制の整備  のイラスト

(1)障害の発生予防

 障害の発生原因には、妊娠・出産期における異常などの先天的なものと、成人病、交通事故、労働災害などによる後天的なものがあります。
 先天性障害の予防については、「マタニティクラス」において、妊産婦の健康管理、保健指導を行っています。妊産婦の家族を含めた健康教育の実施を検討するとともに、専門的な知識や医療技術を取り入れた予防体制の整備と情報交換が不可欠であることから、産婦人科等の医療機関や保健所の協力を得て総合的な障害発生予防に取り組みます。
 また、後天性障害については、成人病等の予防を目的として老∧保健法に基づく健康診査事業や人間ドックを実施していますが、受診後のフォロー体制を確立するなど「いきいきプラザ」を拠点として健診事業の充実を図ります。
 交通事故や労働災害による障害の予防については、関係機関で様々な対策が実施されていますが、市においてもこれらの関係機関と連携を取りながら啓発活動を推進します。

(2)障害の早期発見・早期療育

 乳幼児期における健康診査(4か月・10か月・1歳6か月・3歳)は、指定の医療機関や「いきいきプラザ」で実施しており、年間数件の障害が発見されています。今後も、先天性代謝異常等検査などの充実を図るとともに、活発な啓発活動を行うことにより受診率の向上を目指します。
 また、保健婦による家庭訪問や電話による相談を充実させ、療育施設、関係機関の紹介や育児に関する情報の提供など早期療育に直結した受診後のフォローを積極的に行うとともに、医師会、歯科医師会、保健所等の協力を得て、乳幼児の健康管理を推進します。
 さらに、「歯の健康」、「食による健康」を推進するため、歯科衛生士、管理栄養士などの専門知識・技術を取り入れた障害児の健康教育の導入を検討します。
 障害児の早期療育は、市内の保育所や私立保育園での障害児保育を除いて、家庭児童相談室(福祉課)を通じて児童相談所、医療機関、障害児施設等に依存している現状にあり、抜本的な施策が求められています。これらの課題に対処するため、早期療育センターの設置を検討するなど、春日市だけでなく近隣市町や関係機関との連携のもとに協議を行い、一貫した療育体制の確立に向け研究を進めます。

(3)医療体制の整備

 地域において障害者が自立し、社会参加を促進するためには、「リハビリテーション」の充実が望まれます。
 春日市は住宅都市として発展したという特性から、数多くの医療機関が存在し、かなり恵まれた医療環境にありますが、今後は、リハビリテーション医療を充実していく必要があります。
 平成6年10月から、機能訓練事業(リハビリ教室)を導入していますが、より効果的な機能訓練事業が展開できるよう医療機関等との連携を図りながら、なお一層の充実に努めます。
 さらに、保健婦、ホームヘルパーによる家庭訪問時の機能回復指導・援助を充実させ、市の主体事業を推進するとともに、医師会、歯科医師会、医療機関等の協力を得て老人保健施設や訪問看護ステーションを整備し専門的な技術や人材を地域にも活用するなど、リハビリテーション医療体制を確立するための方策を検討します。
 また、障害者世帯の医療費や医療関連費用の負担額が一般世帯に比べて高額となることから、更生医療、育成医療、障害者医療、老人医療などの公費負担医療制度の充実を国・県に要望します。

(4)精神障害者等

 わが国における障害者の範囲は、1993年(平成5年)12月に改正された「障害者基本法」により、精神障害者や難病患者等も含まれることになりました。
 このことで、これまでの医療中心だった精神障害者等への施策が、福祉の視点からも展開される状況に転換されようとしています。
 しかしながら、現行福祉法においては、これらの障害者に関する施策についての改正は行われておらず、市の行政に対しても具体的な業務についての指示はなされていません。
 今後は、関係法令の早期整備と、それまでの期間における現行施策の一層の充実を要望していくとともに、具体的な施策方針が規定された時点で、障害者計画の修正を行うこととします。

4 保健・医療体制の整備 障害の発生予防 先天性障害 「マタニティクラス」の充実
家族の健康教育の実施
関係機関との連携による予防体制の確立
後天性障害 成人病の予防のための健診事業の充実(健康診査・人間ドックなど)
受診後のフォロー体制の充実
交通事故・労働災害による障害予防の啓発
障害の早期発見・早期療育 早期発見 乳幼児健診の充実(4か月・10か月・1歳6か月・3歳)
受診後のフォロー体制の充実
早期療育 障害児保育の充実
関係機関との連携強化
早期療育センターの設置検討
医療体制の整備 リハビリ医療体制の確立 機能訓練事業(リハビリ教室)の充実
保健婦等の訪問指導の充実
拠点施設の整備検討(老人保健施設・訪問看護ステーション等)
医療制度の充実 公費負担医療制度の充実(要望)(更生医療・育成医療・障害者医療など)
精神障害者等 施策の研究 精神障害者・難病患者等に対する関係法令の早期制定と現行施策の充実(要望)

主題(副題):
春日市障害者福祉長期行動計画 1995年~2004年

発行者:
春日市

発行年月:
1995(平成7)年3月

文献に関する問い合わせ先:
〒816-0804 福岡県春日市原町3丁目1番地の5