府中市障害者福祉基本計画
-障害者にやさしいまちづくり-
1995(平成7)年3月
広島県府中市
総論
1 計画策定の趣旨
国際連合は、1981年を「国際障害者年」と定め、1983年から10年間を「国連・障害者の十年」と宣言し、加盟各国に障害者対策の推進を呼び掛けた。
それは「完全参加と平等」を基本理念に、全世界に展開された長期行動計画であり、ノーマライゼーションの真理を追求した10年間であったといえる。
この間、アメリカ合衆国では、「障害を持つアメリカ国民に関する法律(ADA法)」(1990年)が成立。かつては障害者をDisabled Person(無能力者)と表現していたものが、ADA法の成立後は、Person With Disablity(障害を持った人)というように変更されるなど、アメリカ国民の、障害者に対する意識が大きく変化してきた。
「国連・障害者の十年」終了後の1993年には国連アジア太平洋経済社会委員会による「アジア太平洋地域障害者の十年」が始まり、1993年には国連総会における「障害者の機会均等基準」の採択など、障害を持つ人たちに対する人権擁護の思想が国際的に飛躍的な進化をしてきた。
国内的には、1982(昭和57)年に「障害者対策に関する長期計画」が策定されると同時に障害者対策推進本部を設置し、1988(昭和63)年には厚生省が「福祉ビジョン」を発表した。
1993(平成5)年12月「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改められ、身体障害、知的障害に加え精神障害も法の対象となり、その基本理念として「障害者は社会を構成する一員として社会、経済、文化、その他あらゆる分野の活動に参加する機会をあたえられるものとする」ことが加えられた。
また、1994(平成6)年「身体障害者が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)がスタート。
そして障害者基本法の施行に先立ち、国は「障害者対策に関する新長期基本計画」━━全員参加の社会づくりをめざして━━を策定した。
広島県も1994(平成6)年10月、「障害者に関する第二次広島県長期行動計画」を策定し、ノーマライゼーションの推進、障害者の人権尊重と自立の援助、障害の重度化・重複化及び高齢化への対応、関連施策の連携、の4項目を基本的な考え方として10年間の計画期間中で推進・強化するとうたっている。
府中市においても、これまでの長期計画で障害者や福祉団体、行政を含む全市民が積み上げてきた努力と成果を基礎とし、また改善へのエネルギーとして今後の障害者施策を強力に推進し、障害者の基本的人権尊重とノーマライゼーション理念のもと「完全参加と平等」をめざして「府中市障害者福祉基本計画」━━━障害者にやさしいまちづくり━━━を策定することとした。
2 計画の基本理念
障害者が、障害の種別や程度に関わりなく、主体性を持って自立をめざす一人の人間として、何ら不利益を受けないという基本的人権の確立と、障害者や高齢者など、ハンデイキャップを負う人たちが地域社会には一定の割合で存在し、地域社会の一員として障害を持たない人々とともに充実した生活をし、活動することがあたりまえの姿であり、そういうやさしい社会をみんなで構築しようというノーマライゼーションの理念が障害者福祉の基本理念である。
この障害者福祉基本計画は、1984(昭和59)年に「完全参加と平等」の社会実現を目的として策定した「府中市障害者福祉長期計画」の理念と目標を引き継ぎ、その実績と問題点を踏まえたうえで、今後の施策の推進方向と具体的方策を示すものである。
なお、障害者福祉行政は、各種法律に基づく多くの制度、関係省庁・県による各種施策等、きわめて広範囲に及ぶものであり、今後、国・県の動向や関係行政機関、民間の企業や団体、公共的な福祉団体、施設等との有機的な連携を図りながら推進していくものとする。
3 計画の期間
この計画の期間は、1995(平成7)年度から2004(平成16)年度までの10年間とする。
ただし、社会経済情勢の変化や、国・県の行政施策の動向等により、必要に応じて見直しを行う。
4 施策の体系
本計画の基本理念と前計画の継承、さらには国・県の方針を勘案して次のように施策目標を定めた。
- 理解と交流の促進
- 啓発・広報の推進
- 障害者問題教育の推進
- 交流機会の促進
- 保健・医療の充実
- 発生の予防と早期発見体制の充実
- 教育体制の確立
- 医療体制の充実
- マンパワーの確保
- 保育・教育の充実
- 障害児保育の充実
- 障害児教育の充実
- 社会教育の推進
- 社会参加の促進
- 雇用・就業の促進
- 生活環境の整備
- 社会活動の促進
- 生活支援の充実
- 経済的支援の充実
- 在宅福祉サービスの充実
- 福祉施設の整備
- 推進体制の充実
5 基本となる施策
ノーマライゼーション理念の早期実現と「完全参加と平等」の一層の推進のためには、施策の体系で挙げた6つの施策目標を障害者のライフサイクルに沿って、それぞれの課題をクリアしながら推進しなくてはならない。
とりわけ、同和地区における障害者の現状は、部落差別の歴史性、社会性をふまえ積極的な施策の推進を図ることが必要であり、全体的な観点から次の4点を基本として進めることが重要である。
1.全市民参加のノーマライゼーションを推進する
ノーマライゼーションの理念を実現するため、行政が中心となって取り組んでいくことは当然であるが、広報・啓発・ボランティア活動への積極的な参加等を推進して住民、各種団体、企業など全市民が障害者を取り巻く諸問題を理解し、実践する中から主体的に取り組んでいく必要がある。
2.障害者の主体性と自立の確立を援助する
障害者自身が社会の構成員として主体性、自立性を確立し、積極的に社会参加していくことが必要である。
そのためには、全人間的復権としてのリハビリテーション思想を実現するとともに、行政が特に就業促進を主眼に置いて社会的自立が図れるよう多様な就労形態を進める中で、障害に応じた能力が十分発揮できる施策を推進していくことが必要である。
3.障害の重度化、重複化と高齢化に対応する
重度の障害や重複した障害があるため、常時何らかの援助を要する障害者は増加の傾向にある。
また、長寿化の進展に伴って障害者の高齢化が進んできており、これらの障害者が基本的人権を保障された一人の人間として生活できるよう在宅福祉サービスや相談事業など、一体的に推進し生活の質の向上に努める。
4.生活支援体制の充実と生活環境の改善を進める
障害者が自分の住み慣れた地域で可能なかぎり自立した生活を営むことができるよう、また、介護する人たちの精神的、肉体的な負担が少しでも軽減できるよう生活支援体制の充実を図るとともに、公共施設や店舖など多数の人が利用する施設への環境基準適合化(ハートビル法適合)に努め、障害者にやさしいまちづくりを推進する。
主題:
府中市障害者福祉基本計画
発行者:
府中市
発行年月:
1995(平成7)年3月
文献に関する問い合わせ先:
広島県府中市府川町315
府中市市民生活部 福祉事務所
TEL (0847)43-7148