堺市 第2次障害者長期計画
ひとりひとりが”生き活き”と輝いている暮らしをめざして
平成8年3月
堺市
第1部 総論
第1章 長期計画の基本的考え方
(1) 計画の趣旨
本市では「国際障害者年・堺市における長期計画」を昭和62年3月に策定し、「障害をもつ人ともたない人が共に生きる社会」をめざして施策を進めて来ました。
この間、こどもリハビリテーションセンターの開設など、障害児の早期療育システムの充実、精神薄弱者通所授産所をはじめ各種施設の整備、ホームヘルパー体制の充実、「福祉のまちづくり」の推進、障害者問題についての正しい理解のための啓発普及に努めるなど、障害者が住み慣れた地域で暮らすための条件整備に全庁的に取り組んで来ました。
これらの取組みにより、障害者について理解と関心をもつ市民が増えるとともに、各種のボランティア活動や相互交流も活発になりつつあります。
さらに、自立や社会参加に向けた障害者自身の意欲が高まるにつれて、これまで外出する機会や外出可能な場所の少なかった障害者の姿を、街中で見かけることが多くなってきています。こうしたことは、この間の特徴的な変化のひとつでありく計画の一定の成果であると言えます。
しかしながら、この計画において各ライフサイクル、ライフステージに応じて重点的課題として取り上げてきた諸目標の中には、先に述べたように一定の進展があったものもありますが、いまだ十分な成果を達成できなかった分野も残されております。そのうえ、障害者自身やその介護者の高齢化、障害の重度・重複化、障害者施策の市町村行政へのシフト、中核市、政令指定都市移行への対応など、社会情勢や環境の変化に伴った新たな行政課題も次々に生れ、かつ障害者の福祉二一ズも多様化してきています。
したがって、今後こうした諸課題について、長期的な見通しのもとで、障害者施策の展開を図っていく必要があると考えています。
このため、先の計画における「完全参加と平等」の実現という基本理念を継承しながら、「自立生活の確立」、「機会均等な社会づくり」、「共に暮らす地域社会の実現」の基本目標を定め、障害者施策を総合的、計画的に推進するため、第2次障害者長期計画を策定しました。
(2) 計画の基本理念
完全参加と平等の実現
障害をもつ人(身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者など身体・精神上の障害があるため、長期にわたり生活上の支障がある人をいう。障害者と同義)が主体的に社会に参加できるためには、それを阻む道路の段差や建物の階段、利用できない交通手段等の物理的障壁、不合理な資格制限等の制度的障壁、コミュニケーション手段等が整えられていないことによる文化情報面での障壁、障害者等に対する差別意識や偏見といった心理的な障壁など社会に存在するあらゆる壁や溝を除去あるいは埋めていく。こと(バリアフリー)が必要です。
これまでの社会が造ってきたバリアーを解消し、障害をもつ人が社会、経済、文化・スポーツなどあらゆる活動に参加できるよう平等な機会の保障された社会づくりを目指していかなければなりません。
障害をもつ人も社会を構成する一員であり、障害をもたない人と同じ権利と義務を持った市民として尊重されるとともに、地域においていきいきと輝いている暮らしが送れるよう、「共に暮らす社会」を目指す「ノーマライゼーション」の理念と、人権尊重を基底に据えた全人間的復権を目指す「リハビリテーション」の理念の下に、「完全参加と平等」の実現に向けて障害者施策の推進を図って行きます。
(3) 基本目標
1.障害者の自立生活の確立
障害者は、基本的人権を有する一人の人間として尊重されるとともに、自らも主体的に社会経済活動に参加し、自立した生活を送ることが期待されています。
障害者自身の選択に基づく多様な生活スタイルが司能と一なるよう各種サービスめ充実や生活の場の整備等に努め、障害者が主体性を確保し、地域で自立した生活を営むことができるよう支援します。
2.機会均等な社会づくり
障害者を取り巻く社会環境の中に存在する障壁をできるかぎり取り除き、障害をもつ人も障害をもたない人も同等に社会、経済、文化・スポーツなどあらゆる活動に参加できる機会が与えられるよう努めます。
3.共に暮らす地域社会の実現
障害をもつ人がその種別や程度に関係なく、地域に暮らす同じ市民としてその人権が尊重されるとともに、すべてのライフステージにおいて同じ年代の人々と同等の生活スタイルが確保されるよう施策の充実に努めます。
この考え方のもとに、障害および障害者に対する正しい理解と認識を市民全体に深めるとともに、ひとりひとりの個性と人格を大切にする人権意識の向上を図ることにより、あらゆる偏見や差別を無くし、障害をもつ人も、もたない人も共に地域の中で当たり前 に暮らすことができるよう、市民全員の参加の下に、互いの心がかよいあえる人間尊重都市「堺」の実現を目指します。
(4) 施策展開の視点
1.障害者のライフステージに応じた総合的な施策展開
障害の種別ごとにライフステージに応じた施策の一貫性を確保するとともに、各ステージごとの広範な二一ズに対して適切かっ柔軟に応えられるよう、可能な限り障害の種別や、程度、年齢の違いによる制度間の壁を取り除くことにより総合的かつ横断的な施策の推進を図ります。
2.関係部局間の施策の連携
障害者施策は、福祉、保健、医療、教育、雇用、生活環境等広範な分野に亘っており、これらの施策が効果的に実施されるためには、供給サイドからの視点だけでなく、サービスの受け手である障害者(生活の主体者として)の視点に立って、施策間の相互連携を図っていく必要があります。障害児の早期発見・早期療育における保健・医療・福祉との連携、就学に際しての福祉・保育・教育の連携、就労に関しての教育・福祉・労働の連携、福祉のまちづくりを推進するうえでの福祉・建設部門等との連携など各分野において多様な形態での連携を図っていきます。
また、障害者施策と高齢者施策とは、共通した部分も多く、特に在宅福祉サービスなど、一体的な提供体制の整備を図ります。
3.障害者対策から一般施策へ
障害者の日々の暮らしを支えていくということでは、障害者のための特別な施策も必要ですが、施策の基本は全市民を対象とすべきものです。その市民の中には、当然のこととして、障害者、高齢者、病弱者等も含まれています。
一般施策の立案に当たっても、常にこうした人々への配慮を意識しながら、あらゆる活動への参加機会の平等を確保し、社会的弱者を排除することのない施策の実施に努めます。
4.重度障害者への取組
障害が重くても、地域において生きがいのある生活が送れるよう、重度障害者のQOL(生活の質)の向上に重点を置いた施策の展開を図ります。
5.中核市、政令指定都市に向けた施策展開
中核市、政令指定都市への移行を念頭に置きながら、障害者福祉の向上の視点に立って施策の拡充を図っていきます。
第2章 長期計画の性格、期間及び構成
(1) 計画の性格
本計画は、障害者基本法に基づく障害者基本計画であり、本市障害者施策を推進するにあたっての基本理念及び基本目標を示すことにより、その方向性を明らかにするとともに、今後の障害福祉に関わる行政運営の指針とするものです。
また、「第3次堺市総合計画」との整合性を図りながら、「堺市高齢者保健福祉計画」等関連計画にも配慮しつつ、具体的方策を明らかにし、できる限り数値目標についてのガイドラインを示しています。
(2) 計画期間
計画期間は、平成8年度(1996年)から平成17年度(2005年)間での10年間とし、中間年において見直しを行います。
また、平成8年度~10年度を前期、平成11年度~14年度を中期、平成15年度~17年度を後期としています。
(3) 計画の分野別構成
これからの障害者施策を進めるにあたって、次の6つの分野に体系化し、それぞれの分野ごとの課題と試作の展開方向を示し、具体的方策の個別的項目に対し、基本的方針を示しながら具体的な取り組みを明らかにしています。
保健医療 | 育成教育 | 雇用就労 |
健康な暮らし | 健やかな成長発達と豊かな人間性をめざして | いかに障害が重くても働く喜びを味わえるように |
地域生活 | まちづくり | 社会参加 |
障害者自身の主体性が発揮できる暮らし | すべての人が自由に外出し活動できるまち | ひとりひとりがいきいきと輝いている暮らし |
主題: 第2次障害者長期計画
発行者: 堺市民生総務部
発行年月: 平成8年3月
この文献に関する問い合わせ先: 〒590 堺市南瓦町3-1
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