堺市 第2次障害者長期計画
ひとりひとりが”生き活き”と輝いている暮らしをめざして
平成8年3月
堺市
第3部 分野別の課題と施策の展開方向
保健医療
- 早期発見・早期医療の充実
- 障害者の健康管理、健康増進策の充実
- 医療サービスの充実
- 地域リハビリテーションの拡充
育成教育
- 就学前障害児に対する育成施策の充実
- 学校教育における障害児施策の充実
- 地域における障害を持つ児童・生徒の健全育成
雇用就労
- 企業等就労の促進
- 自営業等の支援
- 福祉的就労への支援
- 就労支援施策の充実
地域生活
- 相談体制の充実
- 在宅福祉サービスの充実
- 自立生活支援の充実
- 住宅の整備促進
- 経済生活安定のための支援
- 災害や災難から障害者の生命財産を守るための施策の充実
まちづくり
- 物理的バリアフリー
- 心のバリアフリー
- 移動対策の充実
- 通信手段の確保
- 社会参加
-
- <社会参加>
-
1.場の提供の工夫・拡大
- 2.情報の提供
- 3.社会活動へのアクセス支援
- <啓発>
-
4.啓発先の一層の拡充
- 5.啓発内容の多様化
- 6.地域での交流による理解の促進
(1) 保健医療
障害をもって生まれてきた子どもが、将来において自立した生活を送るためには、早期に適切な医療(療育)が受けられ、また、保護者が正しい知識をもつことが大切です。このため、乳幼児健診等を充実し、障害の早期発見・早期医療体制を確立する必要があります。さらに、健診後のフォロー体制についても一層の充実を図る必要があります。特に、乳幼児健診前に障害が発見(判定)された乳幼児をもつ家族に対して、できるだけ早い時期からアプローチすることにより、精神的不安を和らげ、将来に目を向けた肯定的な行動につなげていくための相談・援助システムを整備することが求められています。
身体障害の発生原因の過半数は病気であり、とりわけ40才前後から病気を原因とする発生率が高くなってきております。また、難病も幼児期での発病を含めて、加齢とともに、発病する率が高くなっており、特に30~50代にかけて発病する率が非常に高くなっています。
障害の原因となる病気を未然に防ぎ、軽減するうえで成人病等の早期発見・早期治療を行うことは大変重要なことです。すこやか健康診査、各種がん健康診査等の受診率の向上を図るとともに、健診内容の充実を図ることが必要です。
精神障害者の多くは、進学や就職といった過剰なストレスにさらされる思春期以降20代に発症しています。こうした年齢層を中心に心の問題について意識を高めるとともに、早期から対応できる体制を充実し、精神的健康の維持、回復を図っていく必要があります。
また、入院している精神障害者の療養生活の質の向上や退院可能な人の社会復帰を視点においた精神障害者施策の充実も必要です。
障害者が地域において自立した生活を営み、社会参加を可能にするためには、何よりも健康を保持し、その増進を図ることが大切です。このためには、障害者が健康相談・健康教育・健康診査を受けられる機会を保障し、健康づくりを支援することが必要です。
障害者が医療を受けるうえで、現状ではコミュニケーションやアクセスなど様々な社会的不利(ハンディキャップ)が存在しており、障害者が地域の中で健康な暮らしを送るためには、。ごうした環境の改善を通して障害者の受診しやすい環境を整備する必要があります。また障害者の二一ズに適った医療の提供や、医療施設・設備の整備等により、医療サービスの充実を図っていく必要があります。
障害が生じた後、その軽減を図り、自立を促進し、社会参加を実現するために医学的リハビリテーションを始め地域において様々な二一ズに対応したリハビリテーション体制の拡充を図ることが必要です。
課題 |
早期発見・早期医療の充実 障害者の健康管理、健康増進策の充実 医療サービスの充実 地域リハビリテーションの拡充 |
(2) 育成教育
今日、どんなに重い障害をもっていても、地域の中で普通に暮らし、学校や職場に通い、余暇を楽しみ、友情や恋愛を体験するといった当たり前の生活が保障される社会の実現が大きな目標となっています。
こうした「ノーマライゼーション」の理念を学校教育や地域活動を通して広く市民の間に浸透させていく必要があります。
障害をもつ子どもが将来自立した生活を送るためには、可能なかぎり早い時期からその子に合ったより良い療育を実施することが重要です。
早期療育は、障害をもつ子どもの乳幼児期における十分な成長発達を保障し、障害の軽減を図り、将来の生活において、最大限の能力を発揮することにつながっていきます。
そのためには、乳幼児健診等の早期発見システムと連動した早期相談指導体制を充実するとともに、全市的に一貫した早期療育システムを整備し、障害をもつすべての子どもにその特性に応じた療育の機会を確保する必要があります。
また、学校教育においては、養護教育研修の充実により教員の質を高め、一人一人の二一ズや障害の状況に応じたゆとりと包容性のある教育を推進するとともに、福祉教育や交流教育を通じて、児童・生徒が障害児(者)に対する正しい理解と認識を深めることができるよう適切な教育を行う必要があります。
すべての人が共に地域の中で暮らしていける社会を築くことは、社会を構成するすべてのものに課せられた責務であり、その中で、市民が果たす役割は非常に大きいものです。
公・民が協働して、障害をもつ子どもも、もたない子どもも地域の中で共に学び、共に遊び、共に育つ環境を整えていくとともに、相互に交流する機会の拡充に努め、お互いの豊かな人間性を育てて行くことが大切です。
課題 |
就学前障害児に対する育成施策の充実 学校教育における障害児施策の充実 地域における障害を持つ児童・生徒の健全育成 |
(3) 雇用就労
人々が地域において、経済的に自立した生活を送るうえで、働くということは基本的な条件ですが、障害をもつ人にとっては、なお一層の重要な意義をもっています。
どんなに重い障害をもっていようと、働きたいという意欲のある人に対して、職業リハビリテーションの機会を提供するとともに、その能力と適性に応じた働く場が確保されるよう支援していく必要があります。
障害をもつ人が働くことによって、生きがいのある人生を送り、豊かな人間関係を築いていくことは、障害者の社会への完全参加を実現するうえで非常に重要なことです。
企業や事業主をはじめ広く市民に対して、社会連帯の理念に基づく障害者雇用についての啓発活動等を充実し、民間企業等への就労の促進、雇用機会の平等化を図るとともに、本市も障害者雇用に積極的に取り組んでいく必要があります。
さらに、就職が特に困難な障害者の民間企業等への就労の促進を図るため、就労支援システムを整備充実する必要があります。
また、自営業、在宅就労、内職に就いている障害者については、その就労実態の把握に努め、支援のあり方を検討していく必要があります。
なお、自営や民間企業等で就労することが困難な障害者についても、働く権利を保障し、社会参加の促進を図るという視点に立って、その能力と障害の特性に応じた就労の場の整備を促進し、その支援に努めていかなければなりません。
障害者の企業就労を考えるとき、単に就職の間題だけでなく、その後の就労の継続が重要な課題となっています。障害者の職場定着を図るためには、職場での相談・支援体制を準傭することはもちろんですが、それだけでなく、生活全体に目を向けていくごとが重要であり、そのための支援施策を充実していかなければなりません。
また、事業主等が抱える障害者雇用の問題に対して相談・支援できる体制の整備も必要となっています。
課題 |
企業等就労の促進 自営業等の支援 福祉的就労への支援 就労支援施策の充実 |
(4) 地域生活
ノーマライゼーションの理念に基づいた障害をもつ人々の地域での生活を実現するためには、障害の種別や程度にかかわらず、それぞれの主体性が尊重され、障害者自身の選択に基づく自立した生活が送れるようなシステムを地域の中に整備していくことが必要です。「家庭内における自立」、「家庭からの自立」、「施設内の自立」、「施設からの自立」など障害者自身の選択による自立生活が可能となるよう地域における総合的な自立生活支援システムを確立していく必要があります。障害をもつ人々が地域の中で公・民が連携した様々な支援を受けながら多様な生活スタイルで暮らしている。このような地域社会の実現は障害をもつ人の家族が最も切実に訴えている「親亡き後」に応えるとともに、本人や家族が望めば親や家族から独立して暮らせる」ことにもつながっていきます。そのために、多様な活動の場や生活の場を整備し、併せて地域生活を支える在宅福祉サービス等各種制度の充実を図る必要があります。
障害をもつ人が援助を必要としたとき、身近なところで気軽に相談できる機関や人がいて、その相談窓口を通じて、必要とするサービスが受けれるよう相談機能の充実を図るとともに、相談機関相互及びサービス提供機関との連携を強化し、公・民協力して必要なサービス量を、よりニ一ズに適った良質のサービスとして供給できる体制を整備する必要があります。
また、地域において必要な入所施設等を整備するに当たっては、単に入所(利用)者だけを対象とするのでなく、地域生活支援のための拠点施設として位置付け、その施設機能を地域に向けて積極的に活用し、既存の福祉施設等との連携・役割分担を図りながら、地域の障害者の生活をトータルに支えていくという考え方のもとに整備していく必要があります。
障害をもつ人にとって健康の維持、暮らしやすさということでは、生活の拠点となる住宅の構造が大きな比重を占めます。障害者、高齢者に配慮された公営住宅、民間住宅等の供給を促進するとともに、障害者や高齢者の住み良い住宅づくりに向けて必要な支援をしていく必要があります。
障害をもつ人々の地域での生活を考えるうえで、それを支える経済の問題は、重要な要素であり、経済生活の安定に向け支援していく必要があります。障害をもつ人は、災害や犯罪に対しては概して非常に弱い存在であり、これらの人々が地域で安心して暮らしていくためには、こうした事態に備えて、障害の種別や程度に応じた適切な支援対策を準備する必要があります。
課題 |
相談体制の充実 在宅福祉サービスの充実 自立生活支援の充実 住宅の整備促進 経済生活安定のための支援 災害や災難から障害者の生命財産を守るための施策の充実 |
(5) まちづくり
障害者が、社会のあらゆる分野に参加・活動し、地域での自立した生活を送るためには、今日の社会環境の中に存在する様々な障壁を取り除いていかなければなりません。とりわけその行動を阻害する物理的環境の改善を図っていく必要があります。障害者が自由に外出し、行動することが制限されるとすれば、地域の中で活動し、暮らしていくことは不可能です。
車いす(電動)利用者や視覚障害者等が一人で行動できることを含めて外出できる社会環境を整備することによって、障害者の行動する権利を保障し、あらゆる社会的活動への参加機会の平等を確保していくことは、障害をもつ人も、もたない人も共に平等に暮らしていける社会をめざすというノーマライゼーションの理念を実現する上で非常に大切なことです。
こうした観点から、現在市内にある建築物、道路、公園、交通手段等を見た場合、障害者、高齢者、病弱者等への配慮も徐々にはなされてきておりますが、まだまだ充分とはいえないのが現状です。
「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)」、「大阪府福祉のまちづくり条例」、「堺市福祉まちづくり環境整備要綱」に基づき障害者、高齢者等に配慮したまちづくりを進めるとともに、公共施設はもちろん民間施設も含めて、既存施設についても段階的に改善を図っていく必要があります。
この場合、これらの施設へのアクセスや施設内での移動のパリアフリー(障壁の除去)だけでなく、その施設が本来提供するサービスのユーザビリティ(利用可能性)についても保障されるように考慮されなければなりません。
なお、これらの施策の実施にあたっては、障害者のための特別な措置として捉えるのではなく、すべての人が利用できるようにということを基本に、障害者や高齢者等の利用を前提とした配慮が当然なされていなければならないという考え方を醸成しながら進めていくことが大切です。
障害者や高齢者等に配慮されたまちは、すべての人にとってやさしいまちにつながっていくものであるということを、広く市民に理解してもらうことを通じて、市民全体の参加と協力に基づいた福祉のまちづくりを進めて行く必要があります。
課題 |
物理的バリアフリー 心のバリアフリー 移動対策の充実 通信手段の確保 |
(6) 社会参加
障書をもつ人がいきいきと輝いて暮らしていくためには、「障害」があるという理由だけで、様々な活動から疎外されてしまったり、いろんな夢をあきらめさせてしまう、そうしたことのない社会を実現していく。ことが必要です。
地域に障害をもつ人の施設や介護の体制が用意されるだけでは、障書をもつ人々の暮らしが充実することにならないかもしれません。誰もがそうであるように、障害をもつ人にとっても、何かチャレンジする目標をもつことができれぱ、毎目をいきいきと過ごすことができるのではないでしょうか。
障害のもつ人の社会への「完全参加と平等」が唱えられて久しくなります。しかし、現在においても、障害をもたない人々にとっては当たり前であるスポーツ、レクリエーション、文化活動などに、障害をもつ人が一緒に参加していたり、自身であるいは仲間と共に楽しんでいるといった姿を見かけることはさほど多くありません。
このことは、今も社会のなかに障害をもつ人への誤解や偏見が存在し、障害をもつ人の社会参加を阻んでいるひとつの現れといえます。
例えば、障害をもつ人にとって、「障害をもたない人と同じスタイルや条件でスポーツ等の活動はできない」としても、このことと、「活動そのものができない」ということとは別であるにもかかわらず、障害をもつ人はそうした活動はできないものであると社会が思い込んできたし、障害をもつ人自身もそうした思い込みの壁の中に閉じ込められてきたと言えます。
とすれば、一つの解決方向として、障害をもつ人が未来を切り開いていくために、その人自身の中で、ともすれば埋もれがちになる「チャレンジ」への勇気を掘り起こし続け、不断にその可能性を見い出していくことが必要になってきます。そのためには、障書をもつ人に必要な情報が届き、お互いに情報を提供しあえるような、そうしたネットワークと活動の場が必要であり、また共に行動する仲間と、それを支える人々との出会いの場が数多くなければなりません。
もちろん、障害をもつ人の主体的で積極的な社会への参加が広がるためには、障害をもつ人自身の努力を促すだけでは不十分です。なによりもそれを可能にする社会的な環境を整備し、障害をもつ人に対する差別や思い込みを無くし、人権尊重に立脚した心のやさしさがかようまちを目指すことが大切になってきます。
障害とりわけ精神障害を理由とした各種の資格制限や公共サービスの利用制限等によって障害者の社会参加が阻まれることのないよう不合理な制度的障壁を解消し、平等な参加機会の確保を図っていく必要があります。
障害をもつ人が社会に参加していく過程で、周囲の人々との交流の輪が広がり、社会全体に障害をもつ人への理解が深まっていきます。
障害及び障害をもつ人に対する正しい理解を社会全体に浸透させるとともに、障害をもつ人の問題の解決に向けた取組は、社会にゆとりとやさしさを満たすものであるという共通認識のもとに、市民全員で取り組んでいくことが大切です。
課題 |
<社会参加の促進> 場の提供の工夫・拡大 情報の提供 社会活動へのアクセス支援 <啓発活動の推進> 啓発先の一層の拡大 啓発内容の多様化 地域での交流による理解の促進 |
主題: 第2次障害者長期計画
発行者: 堺市民生総務部
発行年月: 平成8年3月
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