音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

神山町障害者計画

No.1

1998(平成10)年3月

項目 内容
立案時期 平成10年3月
計画期間 平成10年度~平成14年度(5年間)

もくじ

第1章 計画の概要

第2章 障害者の動向

第3章 計画の推進

参考資料

第1章 計画の概要

1.計画策定の背景

 国際障害者年の翌年となる昭和57年、国連総会で「障害者に関する世界行動計画」が採択されるとともに、その履行を推進するための「国連・障害者の十年(1983~1992年)」が宣言された。この世界行動計画では、目標達成のため加盟各国に国家レベルでの長期計画を作成することを強く要望している。
 こうした動向の中、我が国で最初の障害者施策についての計画となる「障害者対策に関する長期計画」が昭和57年に決定し、その後、都道府県、政令指定都市においても国の長期計画に準じた計画が策定された。
 このように、「国連・障害者の十年」を通じて盛り上がった障害者施策推進の気運を継続させようという状況の中で、平成5年12月には「障害者基本法」が公布され、この法律には障害者の定義のほか、障害者計画の策定についても都道府県、市町村に努力義務として課せられた。この規定が置かれた背景には、高齢者の保健福祉サービスの計画的推進のため、国及び地方公共団体による「老人保健福祉計画」の策定を老人福祉法で定めており、障害者の保健福祉サービスの分野においても住民に最も身近な行政主体である市町村の役割が重視されたことにある。
 徳島県においても、昭和57年3月に「徳島県心身障害者対策基本構想」を策定し、その理念とその成果を継承・発展させた「徳島県障害者施策長期計画」を平成7年3月に策定し、その実施計画となる徳島県障害者プランについても平成9年度中に作成される予定である。
 このような情勢の中、本町においても地域の実情や障害者のニーズに応じた障害者施策を積極的にすすめるため、神山町障害者計画をここに策定し、障害者が地域の中で共に暮らす社会の実現を目指すものである。

2.計画の性格

 この計画は、障害者基本法第7条の2第3項に基づき、神山町総合計画(後期:平成8年~平成12年)及び徳島県障害者施策長期計画を基本とし、平成9年8月に実施した障害者基礎調査を参考として、本町における障害者施策の基本方針を定めたものである。
 その実践に当たっては、行政はもとより、企業、民間団体等、全ての住民がそれぞれの立場において共有し、推進していく。

3.計画の基本目標

  1. 障害者の主体性、自立性の確立
  2. 全ての人の参加による、全ての人のための平等な社会づくり
  3. 障害の重度化・重複化及び障害者の高齢化の対応
  4. 施策の連携と総合的推進

4.障害者の概念

 この計画における障害者の概念は、障害者基本法の規定に基づき、「身体障害、精神薄弱又は精神障害があるため、長期にわたり日常生活又は社会的に相当な制限をうける者」とし、「てんかん及び自閉症を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって、長期にわたり生活上の支障がある者」も含むこととする。

5.計画の目標期間

 徳島県障害者プランとの整合性を図るため、この計画の期間は平成10年度から平成14年度までの5か年とし、社会経済情勢の変化等に応じて、必要な見直しを行うものとする。

第2章 障害者の動向

1.障害者の概況

(1)身体障害者

 本町において身体障害者手帳を所有する者は、平成9年3月31日現在537人であり、町人口の6.4%を占めている。また、重度の障害者は194人であり、身体障害者の36.1%である。種類別にみると、最も多いのは肢体不自由で320人(重度108人)、次いで内部障害90人(重度42人)、聴覚障害65人(重度14人)、視覚障害60人(重度30人)、言語障害2人(重度0人)となっている。

表1 身体障害者手帳所有者数の推移(単位:人)
平成5年 平成6年 平成7年 平成8年 平成9年
視覚障害 70人 66人 62人 63人 60人
聴覚障害 72人 69人 65人 72人 65人
言語障害 4人 5人 3人 3人 2人
肢体不自由 335人 335人 331人 329人 320人
内部障害 88人 91人 90人 91人 90人
569人
(6.3%)
566人
(5.9%)
551人
(5.8%)
558人
(6.0%)
537人
(6.4%)
  (注)各年3月31日現在、( )内は町人口に対する比率
■障害の種類別にみた身体障害者数(平成9年)
視覚障害 聴覚障害 言語障害 肢体不自由 内部障害
60人 65人 2人 320人 90人

 また、身体障害者の年齢を障害者基礎調査の結果でみると、65歳以上が約7割を占めていて高齢化が著しく、身体障害者対策はまさに高齢者対策であるとも考えられる。
 健康状態については、「通院中」の人が最も多く59.7%を占めている。そのため、仕事をせずに自宅にいる人が多い状況である。

■身体障害者の年齢(障害者基礎調査より)
0~39歳 4.6%
40~49歳 3.9%
50~59歳 9.5%
60~64歳 9.5%
65歳以上 71.8%
無回答 0.7%
■身体障害者の健康状態(障害者基礎調査より)
健康 14.8%
通院中 59.7%
医者にはかかっていないが病弱 3.6%
障害のため自宅で寝たきり 3.9%
高齢のため自宅で寝たきり 1.0%
その他 12.1%
無回答 4.9%
■身体障害者の就学・就業状況(障害者基礎調査より)
在学中 1.3%
就職している 19.0%
施設に通所している 2.3%
仕事をせず自宅にいる 43.3%
その他 16.4%
無回答 17.7%
 (小学校就学前は該当者なし)

(2)知的障害者

 本町において療育手帳を所有する者は、平成9年3月31日現在で61人(内、重度障害者は39人)である。
 知的障害者の年齢を障害者基礎調査の結果でみると、40歳代が最も多く29.1%、次いで20歳未満、30歳代がそれぞれ16.7%、20歳代、50歳代がそれぞれ12.5%となっており、身体障害者と比べて若年層の割合が高くなっている。

■知的障害者の年齢(障害者基礎調査より)
20歳未満 16.7%
20歳代 12.5%
30歳代 16.7%
40歳代 29.1%
50歳代 12.5%
60歳以上 8.3%
無回答 4.2%
■知的障害者の就学・就業状況(障害者基礎調査より)
在学中 8.3%
就職している 8.3%
施設に通所している 29.2%
仕事をせず自宅にいる 12.5%
その他 25.0%
無回答 16.7%
 (小学校就学前は該当者なし)

 また、知的障害者の約3割が身体障害者手帳を所有していることから、重複障害を有していると考えられる。
 日常生活においては、風呂に入ることに約45%の人が介助が必要もしくは一部必要と答えており、外出することでは約65%、料理をすることには約75%の人が介助が必要または一部必要と答えている。

■日常動作への介助の必要性:知的障害者(障害者基礎調査より)
必要 一部必要 一人で可能 無回答
1食事をとる 8.3% 16.7% 50.0% 25.0%
2トイレに行く 8.3% 12.5% 54.2% 25.0%
3風呂に入る 16.7% 29.1% 29.2% 25.0%
4衣類を着替える 12.5% 25.0% 37.5% 25.0%
5屋内を移動する 4.2% 16.7% 54.1% 25.0%
6外出をする 45.9% 20.8% 12.5% 20.8%
7料理をする 70.8% 0.0% 4.2% 25.0%

(3)精神障害者

 徳島保健所で把握している本町の精神障害者は、措置入院3人、医療保護入院17人、通院医療費公費負担患者31人であり、任意入院患者と通院医療費公費負担を受けていない通院患者を推計すると、全体で157人と考えられる。

表2 精神障害者数(単位:人、平成8年度)
入院者数 通院者数 総数
措置 医療保護 任意(自由) 入院計 通院公費利用 否通院公費 通院計 (入院計)+(通院計)
3人 17人 59人 79人 31人 47人 78人 157人
 資料:徳島保健所 「任意(入院)患者」「否通院公費者」は推計人数

 徳島保健所が実施した精神障害者通院患者調査の内、本町在住者(該当者20人)の年齢をみると、40歳代が最も多くて40.0%を占め、その前後の30歳代、50歳代はそれぞれ15.0%を占めており、30~59歳で全体の7割を占めている。

■精神障害者の年齢(徳島保健所による精神障害者通院患者調査より)
10歳代 5.0%
20歳代 15.0%
30歳代 15.0%
40歳代 40.0%
50歳代 15.0%
60歳以上 10.0%

 生活状況については、正社員として勤務している人は15.0%、パート・アルバイトとして勤務している人は10.0%、中心となって家業・家事をしている15.0%、家業・家事を手伝っている25.0%、作業所・デイケアなどに通っている15.0%、特に何もしていない20.0%となっている。

■精神障害者の生活状況(徳島保健所による精神障害者通院患者調査より)
正社員として勤務 15.0%
パート等で勤務 10.0%
家業の中心的役割 15.0%
家業の手伝い 25.0%
作業所等へ通所 15.0%
特になし 20.0%

(4)難病者

 難病とは、原因不明、治療方法未確立であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病(ベーチェット病、重症筋無力症、再生不良性貧血、悪性関節リウマチ等:参考資料56、57ページ参照)、もしくは、経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家庭の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病(例:小児がん、小児性慢性腎炎、ネフローゼ、小児ぜんそく、進行性筋ジストロフィー、腎不全)をいい、本町において医療費の助成対象となる特定疾患認定患者は、平成8年度で29人である。
 徳島保健所が平成9年度特定疾患医療費助成の申請をした495人に対して行った調査では、難病の認定患者の多く(87.8%)は在宅患者であり、また長期療養を要することや疾病に伴う障害により通院が困難となっている人が多いのに対して、保健・福祉サービスを利用している人は24.6%にとどまっている。
 特に65歳未満の人では高齢者福祉サービスが受けられないなど、老人福祉法、障害者福祉法等の対象とならない人も多く、保健所、医療機関等と連携による保健福祉サービスの提供が必要とされている。

2.行政に対する要望

 障害者基礎調査の結果より行政に対する要望をみると、身体障害者では「年金などの所得保障の充実」(44.3%)、「病気にかかりやすいので医療費の軽減」(39.7%)、「障害者が外出しやすいまちづくり」(22.6%)、「専門的な機能回復訓練の実施」(12.5%)に対する回答が多く、知的障害者では「各種入所施設の整備」(29.2%)、「日常生活の中で、かなり介助が必要なので、介助体制の充実」(20.8%)、「年金などの所得保障の充実」(20.8%)、「自立のための生活訓練の充実」(16.7%)に対する回答が多くなっている。

表3 心身障害者の行政に対する要望(障害者基礎調査より)
1位 2位 3位 4位
身体障害者 年金などの所得保障の充実
(44.3%)
病気にかかりやすいので医療費の軽減
(39.7%)
障害者が外出しやすいまちづくり
(22.6%)
専門的な機能回復訓練の実施
(12.5%)
知的障害者 各種入所施設の整備
(29.2%)
かなり介助が必要なので介助体制の充実
(20.8%)
年金などの所得保障の充実
(20.8%)
自立のための生活訓練の充実
(16.7%)

第3章 計画の推進

1.啓発広報活動

 民主主義の発達とともに人権思想が芽生え、障害者に対する差別・偏見も少しずつ克服される状況が生まれてきた。その結果、どのような障害を持っていても、障害を持っていない人と同じように地域で生活するのがごく当たり前の権利であるという“ノーマライゼーション”の理念が浸透し、さらに、障害者の行動や社会参加の障壁を取り除こうとする“バリアフリー”というノーマライゼーションをより具体化する理念も一般化しつつある。
 町民を対象とした意識調査の結果では、「“障害者”と聞いてどのような方を思い浮かべるか」との問いに対して、94.0%が「身体に障害を持たれている方」と答えているのに対して、「知的に障害を持たれている方」との回答は56.8%と低くなり、「精神病者」では21.9%、「難病者」では43.7%と5割を下回っており、障害の種別によって、その捉え方には大きく違いが出ている。今後、精神保健に対する理解を深めるための啓発活動が課題となっている。
 そのため、障害者問題について周知するため、広報紙・パンフレットなどの媒体を通じて広く町民の啓発に努めるとともに、各種団体のリーダーを対象として障害者問題についての研修を行う必要がある。

 ■町民に対するアンケート結果より
問 あなたは、「障害者」ときいてどのような方を思い浮かべますか。
身体に障害を持たれている方 94.0%
知的に障害を持たれている方 56.8%
精神病者 21.9%
難病者(重症筋無力症など) 43.7%
その他 0.0%
無回答 2.2%
問 障害者福祉の中で、特に関心のあるものは何ですか。
身体障害者福祉 60.6%
知的障害者福祉 7.1%
精神障害者福祉 3.3%
難病者に対する福祉 17.5%
特に関心がない 7.1%
無回答 4.4%
表4 啓発広報活動に関する施策の課題と目標
項目 施策の課題と目標
「障害者の日(12月9日)」の周知 障害者基本法では、12月9日を障害者の日と定めており、障害者福祉に対する町民の理解を促進するため、町広報などの広報活動により周知するほか、県が実施する「障害者の集い県民大会」への参加を図る。
障害者問題の理解促進 障害者に対する心の壁を取り除くための啓発広報活動は障害者施策の重要な柱であり、障害者や障害児教育への理解促進、障害者雇用促進大会等の関係機関や福祉関係団体の行うイベントへの参加・協力、啓発用のパンフレットを作成するほか、広報「かみやま」などにより効果的な啓発を行う。
障害者福祉に関する教育の推進 障害者に対する理解を促進するため、小中学校において継続的な交流教育の推進を図るとともに、地域住民等の理解を深めるための福祉講座や講演会の開催等、機会の充実に努める。
その他 ・ボランティア団体等と連携を図り、各種行事の中で啓発に取り組む。
・役場窓口に障害者問題に関する理解を進めるパンフレットを備える

2.保健・医療の充実

(1)障害の早期発見、早期治療

 障害をできるだけ早期に発見し、乳幼児期に必要な治療と指導訓練を行うことによって障害の軽減と基本的な生活能力の向上を図り、障害児の将来の社会参加につなげなければならない。
 そのため、保健所、医療機関と連携し、乳幼児健康診査、1歳半児健康診査、3歳児健康診査等により障害を早期に発見しており、今後は障害児の保護者に対する訪問指導体制を整備する必要がある。
 また、後天的障害の発生は、脳卒中、あるいは骨折等に起因することが多く、その原因となる高血圧症、高脂血症、心疾患等の成人病を予防するための健康教育、健康相談、健康診査などを実施している。成人病は生活習慣病とも言われており、日常の生活習慣改善を図るための生活習慣改善指導並びに健康診査、健康教育等の一層の充実を図らなければならない。

(2)障害の軽減、治療等

 身体障害者の日常生活を容易にし、職業能力を増進するため、その障害を除去または軽減することを目的として必要な医療の給付をおこない、重度心身障害者については医療費自己負担額を助成することで受診を容易にし、障害者の保健の向上と経済的負担の軽減を図っている。今後は、障害の重複化及び高齢化の進展、医療技術の進歩等により治療だけではなく、リハビリテーション、保健指導、看護等に対する需要が増大し、質的にも高度化、多様化していくと考えられている。
 そのため、地域医療機関と保健・福祉の連携による一貫したリハビリテーションの確立が求められており、在宅重度障害者に対する巡回訪問診査、在宅療養者に対する訪問指導を充実させるほか、高度な専門知識を必要とする難病者に対しては保健所および主治医との連携を密にし、効果的な訪問指導を行う。また、障害者の機能回復訓練施設を含む総合医療センターの設置を目指していく。

表5 保健・医療の充実に関する施策の課題と目標
項目 施策の課題と目標
母子保健事業による障害の早期発見 乳児期から幼児期まで継続した健康診査事業の充実を図るともに、障害の疑われる児に対しては保健所等との連携により継続した育児支援を行う。
老人保健事業による障害の早期発見 健康診査、健康相談事業等において障害の早期発見に努め、的確に関係機関と連携をとり、継続した支援を行う。
町民総ぐるみによる健康づくり 障害者とともに生きる社会づくりを目指し、講演会、つどい等の開催により意識の啓発を図り、明るく住みよい町づくりを目指す。
在宅障害者の支援体制の充実 在宅の障害者とその家族に対し、保健婦が訪問して精神的支援と介護、看護方法の指導、援助等を行う。
障害者への情報提供 広報「かみやま」等を活用して障害者関係の行事、事業等を掲載し、障害者に対する的確な情報を提供する。
精神保健対策の充実 回復途上にある精神障害者の社会復帰を図るため、保健所と共に開催しているソーシャルクラブ(*1)事業を充実させ、社会参加を支援する。
(*1)ソーシャルクラブは、市町村を単位として障害者に対して集団的働きかけを行い、「生活の拡大・充実」や「仲間作り・親睦」を目指すものである。

3.雇用、就労の促進

 障害者施策の基本理念であるノーマライゼーションの実現のためには、職業を通じての社会参加が基本となるものであり、障害者がその適正と能力に応じて可能な限り雇用の場に就くことができるようにすることが重要である。
 障害者基礎調査でも、今後行政に特に取り組んで欲しいこととして、「能力に応じた職業訓練の実施」「就労が難しいので働く場の確保」に対して知的障害者では12.5%が回答している。身体障害者では60歳以上の人が約8割を占めているため就労に関する要望は相対的に低くなっている。

(1)障害者雇用機会の拡大

 民間企業の活力とノウハウを活かし、重度障害者や知的障害者の雇用機会の拡大を図るため、障害者雇用に関する各種助成・援護制度についての周知とその積極的な活用に努める。そのため、技能取得に要する経費の助成等の施策を実施する。

(2)障害者の職業的自立の促進

 障害の重度化等に伴い、直ちに就職することが困難な障害者が増加している現在、これらの障害者がその職業生活において自立するためには、障害の種類、程度等障害者一人ひとりの特性に配慮した職業指導、職業訓練、職業紹介等を提供することが必要である。
 そのため、公共職業安定所、福祉機関、障害者団体及び教育機関との連携を密にし、情報を交換するとともに、公共職業安定所が実施する障害者の特別相談、巡回職業相談等を活用して、就職を希望する障害者の就職登録を促進する。

(3)就労の場の整備

 社会的自立が困難な在宅の障害者に対する就労促進の施策として、小規模作業所は重要な役割を担っており、平成6年8月現在で全国で3,600を越えて設置されており、年々増加の傾向にある。周辺市町村についても、徳島市に6カ所、藍住町に1カ所しかない現状から、その整備についても検討していく。

4.福祉サービスの充実

 障害者福祉の目指すところはノーマライゼーションの理念の実現であり、住み慣れた地域社会での生活が保障されるところにある。そのため、障害者の生活の安定を図るとともに、在宅福祉サービスと施設福祉サービスとをきめ細かく提供できる地域福祉の体制づくりを推進することが重要である。
 障害者基礎調査でも、知的障害者では行政に対する要望として「日常生活の中で、かなり介助が必要なので、介助体制の充実」が上位を占めており、在宅福祉の基盤整備が課題となっている。
 また、今後増大する福祉ニーズに対応するためにはマンパワー(人力)の確保が急がれており、ボランティア活動をはじめとした民間福祉活動の活性化を図り、住民自らが助け合い、支え合う住民参加の地域づくりが求められている。

(1)生活基盤の充実

 障害者が地域社会の中で自立した生活を営んでいくためには、生活の基盤となる所得保障の充実が必要である。障害者基礎調査の結果でも行政に対する要望として「年金などの所得保障の充実」が上位を占めており、本町においては、重度の身体障害者で寝たきり状態にある者及び障害の有無に関わらず寝たきり状態にある者を在宅において介護している介護者に対しては月1万円を支給するほか、在宅もしくは入院中の重度身体障害者(1~2級)及び重度知的障害者(療育手帳A、B1)本人には年4千円の福祉手当を支給している。

(2)在宅福祉サービスの充実

 障害者が住み慣れた家庭や地域で生活するには、その介護に当たる家族の介護負担を軽減するとともに、障害者が自立した生活を送れるよう支援することが重要である。
 現在、ホームヘルプサービスについては高齢者に対するサービスと一体的な運営が行われ、神山町老人保健福祉計画に基づき、その充実を図っており、ホームヘルパーは18人(内、登録ヘルパー15人)である。今後、身体障害者福祉法、老人福祉法等の施策の対象とならない障害者に対するサービスの実施も求められており、ホームヘルパーに対する研修会を開催し、まず、障害者福祉に関する制度の周知を図っていく。また、介護者が何らかの理由により居宅において介護が困難となった場合、短期間施設に入所するショートステイについては、平成8年度に身体障害者で2人の利用実績がある。
入浴や給食のサービスを提供するデイサービスについては現在利用実績はないが、障害者の自立と社会参加を促進し、障害者の福祉の増進をはかるため、その利用をすすめていく。
 障害者社会参加促進事業や精神障害者の生活支援事業の実施についても、近隣町村との連携・調整を図り、障害者のニーズに応じた事業に努めていく。

(3)施設サービスの整備

 障害者のための施設は、在宅で生活する事が困難な重度の障害者に介護を提供し、安心して生活してもらう施設、リハビリテーションや職業訓練を行う施設、雇用が困難な障害者に入所または通所により就業の機会を提供する施設等に分類できる。
 知的障害者に対する意識調査でも、今後、行政に特に取り組んで欲しいこととして、「各種入所施設の整備」に対して36.4%の人が要望しており、県の広域的な計画を踏まえ、その整備に努めていかなければならない。

(4)相談体制の整備と情報の収集

 障害者やその家族にとって、地域での身近な相談窓口が重要な役割を果たすことから、障害の種別や年齢を問わず、本人や家族に対する一時的窓口機能、保健・医療・福祉に関するサービスのコーディネートや専門機関への紹介等の機能を備えた総合相談体制の充実が求められている。
 そのため、石井町とともに平成9年10月に障害者生活支援センターを開設し、身体障害者やその家族に対して在宅福祉サービスの利用援助、介護相談や情報の提供、また障害者同士が同じ立場で相談に応じるピアカウンセリングを総合的に行ない、在宅の障害者の自立と社会参加の促進を図っているところである。
 また、点訳・朗読・手話等各種奉仕員の養成、点字広報の発行、字幕入りビデオカセットライブラリーの貸出等のサービスを充実し、視覚障害者、聴覚障害者に対して的確な情報を提供するほか、情報化社会の進展に伴ってパソコン通信を利用する障害者や福祉関係者も増えていることから、その活用を検討する。

(5)ボランティアの育成

 国際的にもNGO(非政府組織)、NPO(非営利組織)の活動が注目され、また阪神淡路大震災を契機にボランティア活動の振興が大きな課題となっている。障害者施策の分野でも、点訳奉仕、手話通訳、障害者移送サービス等ボランティア活動は重要な役割を占めていることから、地域住民、さらには障害者自身もボランティア活動に気軽に参加できるよう、活動支援策を社会福祉協議会と連携して推進しなければならない。
 町民を対象とした意識調査の結果でも、ボランティア活動に参加したことがある人は9.3%であるが、今後参加したい人は30.1%となり、ボランティア活動に対する住民の関心度も高まっている。今後、ボランティアに関する情報の提供やボランティアの登録を斡旋ができるような体制整備に取り組まなければならない。

 ■町民に対するアンケート結果より
問 福祉に関わるボランティア活動に参加したことがありますか。
ある 9.3%
ない 85.8%
ボランティアがあることを知らない 3.3%
無回答 1.6%
問 どのようなボランティア活動に参加しましたか。
1.障害者福祉施設での活動 29.4%
2.高齢者福祉施設での活動 23.5%
3.在宅障害者の支援 5.9%
4.在宅老人の支援 35.3%
5.手話・点字・朗読奉仕 0.0%
6.その他 11.8%
無回答 5.9%
問 今後、福祉に関わるボランティア活動に参加したいですか。
参加したい 30.1%
参加したくない 20.2%
わからない 46.4%
無回答 3.3%
表6 福祉サービスの充実に関する施策の課題と目標
項目 施策の課題と目標
生活基盤の充実 障害者基礎年金等の公的年金制度や特別障害者手当、特別児童扶養手当等の周知徹底に努めるとともに、各種制度の充実を国に働きかけていく。
在宅福祉サービスの充実 ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイを中心に、ニーズに合ったサービスの提供に努める。そのため、ホームヘルパーの研修体制を強化し、障害者に対するサービスの質の向上を図るとともに、デイサービスについては周辺市町村との広域的な整備を検討する。また、高齢者施策と一体になっての福祉用具の展示、相談会の開催等を行っていく。
相談体制の整備と情報の収集 各種諸制度の利用・活用のための資料を収集し、展示コーナーの設置など、情報提供窓口の充実を図る。
また、点字広報の発行を検討するとともに、字幕入りビデオカセットライブラリーの貸出等のサービスを充実させる。
ボランティアの育成 社会福祉協議会との連携により、ボランティアに関する情報の提供やボランティアの登録を斡旋できる体制を整備する。今後、介護ボランティアの必要度はますます高まると予想され、各種の研修会を通じてその養成に努めていく。
その他 入所型の障害者施設としては、有誠園(石井町)、眉山園(徳島市)等が整備されているが、いずれも待機者をかかえている。また、知的障害者の入所施設は本町の周辺には整備されてない状況にあり、入所型施設の整備・充実を県に求めていく。

5.生活環境の整備

(1)障害者にやさしいまちづくり

 障害者や高齢者が交通機関や公共施設をスムーズに利用できることで、社会参加しやすい環境を整備する「福祉のまちづくり」については社会的関心も高く、徳島県においても平成8年に「徳島県ひとにやさしいまちづくり条例」を制定している。本町においても、役場にエレベータの設置、広野支所の建て替え時にスロープを整備するなど、公共施設については障害者に配慮した措置を順次講じており、今後においても、出入口、廊下、トイレなど、障害者にやさしい施設の改善に努めていく。
 また、不特定多数の人が利用する民間建築物についても、障害者等にとって円滑に利用できるものとなるよう、低利融資、税制上の特例措置などを各種広報媒体を利用して建築主、住民に周知し、バリアフリー化を促進しなければならない。

 ■町民に対するアンケート結果より
問 障害者が外出しやすいように、公共施設のトイレの改造やスロープよる段差の解消など、障害者の住みやすいまちづくりが、あなたの住んでいる町村では進んできたと思いますか。
思う 9.8%
思わない 61.8%
わからない 27.9%
その他 0.5%

(2)障害者に配慮した住宅の整備等

 既設住宅の改造に当たっては、生活福祉資金貸付制度や住宅改造助成制度等による援助、家の構造や障害の状況等を判断してアドバイスするリフォームヘルパー制度がある。
 身体障害者に対する基礎調査では、浴室、トイレ、階段に対して不便と感じているが、費用負担が困難、建物の構造上困難などの理由で改造に至っていない状況があり、助成制度やリフォームヘルパー制度の利用をすすめるなどの適切なアドバイスが必要とされている。
 また、平成8年の公営住宅法の改正で高齢者や障害者の入居条件の緩和が図られ、本町においても条例を改正して対応している。

問 障害があるために、住まいで不便な箇所はありますか。(身体障害者)
1.浴室 19.7%
2.台所 6.2%
3.玄関 6.2%
4.トイレ 20.3%
5.居室 7.5%
6.廊下 3.3%
7.階段 19.3%
8.その他 2.6%
9.特にない 54.4%
無回答 7.2%

(3)防災対策

 障害者等の災害弱者は、災害時の迅速な避難行動が困難である。
 障害者が安心して暮らせる環境を確保するため、火災、急病、突発的な事故、災害に迅速に対応できるよう、消防機関、住民自主災害組織等と連携し、地域に密着した防災ネットワークを確立しなければならない。

(4)教育と育成

1.教育相談、就学指導体制の充実

 就学相談においては、子どもの実態を的確に把握するとともに、保護者や本人の考えや意見を聴き、その上で特別な教育的対応の必要性について共通の理解を図ることが大切である。
 就学手続きが円滑に行われるよう、保護者の理解と協力を早期から得るための教育相談体制を充実しなければならない。

2.障害児に対する教育の充実

 障害児の社会経験を豊かにするとともに、これらの子どもに対する正しい理解と認識を得るため、障害児が小中学校の児童生徒や地域社会の人々と活動を共にし、ふれあう機会を積極的に設けるなど交流活動の充実を図る。

(5)スポーツ・レクリエーション・文化活動

 体力や年齢に応じ、いつでもどこでもスポーツに親しめる生涯スポーツ社会の実現は、生きがいのある生活を営む上で極めて重要な課題である。そのため、施設の整備、事業の実施、指導者の養成、団体の育成を通じ、障害者のスポーツ推進のための諸条件の整備に努める。特に、スポーツ指導者を養成する場合は、障害者の特性に応じた指導方法について履修させる必要がある。
 また、障害者の文化活動への参加は、障害者の社会参加という観点からも極めて意義の大きいことであり、障害者の文化活動への参加にも配慮した文化振興施策の充実を図らねばならない。

表7 生活環境の整備に関する施策の課題と目標
項目 施策の課題と目標
障害者にやさしいまちづくり 既存の公共施設等に障害者用トイレや障害者専用駐車場の設置及び建築物の出入口の改良等に努める。
また、民間建築物についても融資制度の周知を図り、その利用を促進する。道路についても段差の解消と歩道の設置等の推進に努める。
障害者に配慮した住宅の整備 新しく建設する町営住宅では建物内の段差をなくして高齢者や障害者に配慮した設計とし、利用しやすい住宅の供給に努める。
防災対策 町地域防災計画にもとづき、災害時には職員、保健婦、民生委員、ホームヘルパー等からなる巡回保健班を編成し、介護やケアなどの保健・福祉サービスを提供する。また、災害時に迅速に対応できるように名西消防署および石井警察署との連絡体制の整備を図る。
教育と健全な育成 専門的な知識と経験が求められている就学指導担当者の資質の向上を図り、教育委員会においても、各種の研修会を開催したり、手引き書を作成・配布することで、保育所、幼稚園での障害児の受け入れに努め、障害児の自立を最大の目標とする。
スポーツ・レクリエーション・文化活動 スポーツ、レクリェーション及び文化活動等に参加することは、自立と社会参加を促進するだけではなく、生きがいと豊かな生活を送るうえで重要なことである。そのため、障害者と障害のない人が一緒に参加できるスポーツ・レクリェーション大会の開催に努めるほか、障害者団体が開催する活動に対して支援する。

▲戻る


主題:
神山町障害者計画 No.1
1頁~27頁

発行者:
徳島県名西郡神山町
神山町健康福祉課

発行年月:
1998(平成10)年3月

文献に関する問い合わせ先:
徳島県名西郡神山町神領字本野間100
神山町健康福祉課