音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

由岐町障害者福祉計画

No.1

共に生きる社会を目指して

平成10年3月

由岐町

項目 内容
立案時期 平成10年3月
計画期間 平成10年度~平成14年度(5年間)

もくじ

第1章 基本的事項

第2章 障害者の動向

第3章 計画の各論

第1章 基本的事項

1.計画策定の趣旨

 今、障害者をめぐる社会情勢は世界的に大きく変わろうとしている。
 過去において専ら画一的であった建築物等のハード面における整備も、障害者の個性に応じたものへと方向性が修正されつつあり、また、ハード面に比べ、その遅れが指摘されていた障害者の精神的・文化的自立を支援する事業についても積極的に推進されるようになってきている。これは、日本を始めとする先進各国において、高齢化・少子化問題に対する重要な施策として、障害者福祉も含めた「すべての人にやさしいまちづくり」の基本理念が大きくクローズアップされたこと、また障害者自身の意識改革がより一層進んだことによる。
 障害者福祉に関する動きを世界的に見ると、昭和56年の国際障害者年を契機に、翌昭和57年の国連総会で「障害者に関する世界行動計画」が採択されるとともに、その履行を推進するための「国連・障害者の十年(1983~1992年)」が宣言された。この世界行動計画では、目標達成のため加盟国各国に国家レベルでの長期計画を作成することを強く要望している。
 こうした動向の中、国は、昭和57年に我が国で最初の障害者施策についての計画となる「障害者対策に関する長期計画」を決定し、都道府県、政令指定都市においても国の長期計画に準じた計画が策定された。その後、「国連・障害者の十年」の最終年に当たる平成4年には、今後の障害者施策の在り方について検討を重ね、平成5年3月に新たな長期的視点に立った「障害者対策に関する新長期計画」を策定している。また、平成5年12月には「障害者基本法」が公布され、この法律により、障害者の定義・年次報告の国会提出等障害者施策に関する規定がされている。そして、同法の第7条の2で「障害者基本計画」の策定が、都道府県、市町村に努力義務として課せられた。この規定が置かれた背景には、高齢者に対する保健福祉サービスの計画的推進のため、「老人福祉法」で、国・地方公共団体における「老人保健福祉計画」の策定を定めたこと、障害者に対する保健福祉サービスの分野でも、住民に最も身近な行政主体である市町村の役割が重視されたことがある。
 徳島県においても、昭和57年3月に「徳島県心身障害者対策基本構想」を策定し、「完全参加と平等」の実現に向けて障害者施策を総合的に推進してきた。また、その理念と成果を継承・発展させた「徳島県障害者施策長期計画」を平成7年3月に策定しているが、それ以後、「精神保健法」の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」への改正や、国の障害者プランの策定など、障害者をめぐる社会環境の大きな変革にともない、平成10年3月に徳島県において新たに「徳島県障害者プラン」が策定されたところである。
 このような情勢の中、本町においても住民に最も身近な行政主体として、地域の実情や障害者の具体的なニーズに応じた障害者施策を推進するため、国及び県の計画を踏まえ、ここに由岐町障害者福祉計画を策定し、障害者が地域の中で共に暮らす社会の実現を目指すものである。

2.計画の目的

  1. この計画は、障害者基本法第7条の2第3項に基づき、本町における障害者の状況等を踏まえ、徳島県障害者施策長期計画を基本として策定する。
  2. 「障害者アンケート調査(平成9年7月実施)」の結果に基づき、ニーズに応じた事業の計画および目標水準を設定する。

3.障害者施策の基本理念

 障害者施策の充実は、障害を持つ人も持たない人も含めた社会全体の問題である。本計画は「完全参加と平等」のテーマのもと、「ノーマライゼーション」の理念に基づき、安心して暮らせる町を目指すものである。そこで、次のような基本理念を掲げるものとする。

  1. 「すべての人にやさしいまちづくり」の推進
  2. 障害者の自立と社会参加の促進

4.計画の期間

 徳島県障害者施策長期計画との整合性を図るため、平成14年度を目標年次とし、社会や経済の情勢、また平成12年度から開始される介護保険制度施行後の状況を見通しながら必要な見直しを行うものとする。

第2章 障害者の動向

1.身体障害者(児)の状況

 本町において身体障害者手帳を所持する者は、平成9年4月1日現在183人となっている。年齢別に見ると、65歳以上が124人と全体の67.8%を占めており、18歳~64歳は59人、18歳末満が0人と高齢化対策の必要性が考えられる。特に、65歳以上では1級が21人、2級27人と重度の身体障害者が全体の38.7%を占めている。
 最近の障害者の動向を見ると、若年層の重度障害者の増加、障害者の高齢化、高齢者の障害者化の傾向が窺える。

表1 身体障害者手帳所持者数の推移
(単位:人  4月1日現在)
- 平成3年度 平成5年度 平成7年度 平成9年度
18歳未満 0 0 0 0
18歳~64歳 76 73 68 59
65歳以上 118 103 111 124
194 176 179 183
表2 身体障害者手帳所持者における高齢化比率の推移
(単位:% 4月1日現在)
- 平成3年度 平成5年度 平成7年度 平成9年度
高齢化率 60.8% 58.5% 62.0% 67.8%

 また、障害別に見ると、肢体不自由が最も多く94人、次いで聴覚障害が41人、内部障害28人となっている。

表3 身体障害者手帳所持者数の推移
(単位:人 4月1日現在)
- 平成3年度 平成5年度 平成7年度 平成9年度
視覚障害 29 21 22 19
聴覚障害 51 43 46 41
言語障害 1 1 1 1
肢体不自由 93 90 88 94
内部障害 20 21 22 28
194 176 179 183

2.知的障害者(児)の状況

 療育手帳所持者の状況を見ると、平成9年4月1日現在で26人であり、A1(最重度)4人、A2(重度)13人、B1(中度)7人、B2(軽度)2人となっている。

表4 療育手帳所持者数の推移
(単位:人 4月1日現在)
- 平成3年度 平成5年度 平成7年度 平成9年度
18歳未満 A1 0 0 0 0
A2 0 0 1 0
B1 0 0 0 1
B2 0 0 1 1
18歳以上 A1 4 4 4 4
A2 12 12 13 13
B1 6 6 6 6
B2 1 1 1 1
23 23 26 26
表5 精神薄弱者援護施設入所者数
(単位:人 平成9年4月1日現在)
種別 更生施設 授産施設 通勤療 グループホーム
入所者数 5 2 0 2 9

3.精神障害者(児)の状況

 平成9年4月1日現在、精神病患者のうち、措置入院者は1人、医療保護入院者は10人、通院医療費公費負担患者は15人となっている。また、制度自体が新しい精神障害者保健福祉手帳の所持者数は1級が1人、2級が2人である。
 精神障害者については、任意で病院にかかっている場合もあり、すべてを把握することは難しいが、一般的には住民の約1%の人が何らかの精神障害を持っていると言われている。

4.特定疾患(難病)患者の状況

 原因が不明であって治療方法が確立していない、いわゆる難病に対する医療の確立、普及を図るとともに、患者の医療費の軽減を目的として、昭和48年度から特定疾患治療研究事業が実施されている。平成9年4月1日現在までに対象となる疾患は38疾患に拡大されており、難病認定患者は、海部郡全体で133人、由岐町では17人となっている。17人中の高齢化率は35.3%であり、また、身体障害者手帳の交付を受けているのは1人である。
 海部郡における難病認定患者の受給医療機関は、国立や公的医療機関が86.5%を占めおり、2ヵ所以上の医療機関に受診している人も少なくない。

5.障害者の生活状況など

(1)住んでいる場所

 障害者アンケート調査の結果から住んでいる場所を見ると、身体障害者では「自分の家」がほとんどであり85.4%、「福祉施設、福祉ホーム」1.3%となっている。一方、知的障害者では、「自分の家」が38.1%、「福祉施設、福祉ホーム」が52.4%となっている。また、精神障害者については、入院の割合が高くなっている。難病認定患者については在宅で生活している割合が高く、95.7%の人が自宅で療養している。

表6 心身障害者の住んでいる場所
(単位:%)
- 身体障害者 知的障害者
自分の家 85.4 38.1
借家 2.7 0
県営、町営住宅 5.3 0
社宅、官公舎 0 0
福祉施設、福祉ホーム 1.3 52.4
その他 0 9.5
無回答 5.3 0

(2)行政に対する要望

 行政に対する要望を障害者アンケート調査結果から見ると、身体障害者では「社会が障害者に理解と関心を持つ」が38.7%、「公的年金、手当の増額など」36.0%、「道路、乗り物を利用しやすい整備」17.3%、「ヘルパーなど在宅福祉サービスの充実」16.0%となっている。
 一方、知的障害者では、「年金や手当の充実」が33.3%、「入所施設の建設や施設運営の改善」「ホームヘルパーなどの在宅福祉サービスの充実」「障害者が住みやすい住宅の確保や整備の推進」がそれぞれ23.8%となっている。
 精神障害者については、海部郡全体で行ったアンケート調査の結果を見ると、生活訓練施設やグループホーム、小規模作業所、地域生活支援センターを利用したいとする声が多く、地域で生活をするための施策の充実が望まれている。
 難病認定患者については、身体障害者法にも老人福祉法にも該当しない人が58.8%を占めており、充分な福祉サービスを受けられない状況にある。そのため、管轄の保健所との連携を密にし、難病認定患者のニーズを的確に把握することが望まれる。

表7 行政に対する要望(単位:%)
- 1位 2位 3位 4位
身体障害者 社会が、障害者に理解と関心を持つ 公的年金、手当の増額など 道路、乗り物を利用しやすく整備 ヘルパーなど在宅福祉サービスの充実
38.7% 36.0% 17.3% 16.0%
知的障害者 年金や手当の充実 入所施設の建設や施設運営の改善 ヘルパーなどの在宅福祉サ一ビスの充実 障害者が住みやすい住宅の確保や整備
33.3% 23.8% 23.8% 23.8%

第3章 計画の各論

1.啓発広報活動

 障害者が一般社会の中で普通の生活を送るという「ノーマライゼーション」の理念や、それをより具体化した、障害者の行動や社会参加の障壁を取り除こうとする「バリアフリー」という理念を実現するためには、まず「心の壁」を取り除き、「共に生きる社会」を形成することが必要不可欠である。
 このことから、啓発広報活動は、障害者福祉にとって非常に重要な施策であり、「国連・障害者の十年」(1983年~1992年)の取り組みや、徳島県での「全国身体障害者スポーツ大会」の開催を契機に、どのような障害を持っていても、障害を持たない人と同じように地域の中で生活するのが人間としてごく当たり前の権利であるという理念が浸透しつつある現在、その必要性が再び見直されているところである。また、障害者自身が障害者問題についての知識を深めることは勿論、すべての町民が自らの課題として受け止め、障害者や障害者施策に対する理解と積極的な参加を促進して行くことも重要であり、現在の障害者福祉に強く求められていることである。
 町民を対象としたアンケート調査では、「障害者福祉について関心をもっていますか」との問いに対して、「非常に関心をもっている」「ある程度関心をもっている」を合わせると約8割を超える方が障害者福祉に関心をもっていると答えている。一方、「日ごろ、福祉関係の情報を何から得ていますか」との問いに対して、「テレビ、ラジオ」が83.8%、「新聞」が68.3%、「町、社協の広報誌」が50.3%となっており、あらゆる広報手段により情報を得ていることがわかる。
 本町でも障害者問題について広く周知するため、広報誌・パンフレットなどあらゆる広報手段を通じて、町民に対する啓発を努める必要がある。また、障害を持つ方に対しても、障害者の求めている情報をよく把握して、点字や声による広報などの発行により、行政情報を提供していく必要がある。

問 日ごろ、福祉関係の情報を何から得ていますか。(複数回答可)

- 全回収数中の回答割合
テレビ・ラジオ 83.8%
新聞 68.3%
雑誌・本 20.4%
町・社協の広報紙 50.3%
パンフレット・チラシ 24.6%
友人・知人からの話 12.6%
障害者団体などからの話 3.0%
家族からの話 10.8%
その他 3.0%

問 障害者の福祉について関心をもっていますか。

- 人数
非常に関心を持っている 16 9.5%
ある程度関心を持っている 116 69.1%
あまり関心がない 35 20.8%
まったく関心がない 1 0.6%
表8 啓発広報活動に関する施策
施策 施策の課題と目標
「障害者の日(12/9)」の周知 障害者基本法で、12月9日は「障害者の日」と定められており、由岐町でも広く町民に障害者福祉に関しての理解と認識を高めてもらうため、広報などの活動を実施するとともに、県が開催する「障害者の集い県民大会」や、平成6年度から海部郡内で開催している「障害者のつどい」への参加を図る。
広報手段の確保 視覚障害者や聴覚障害者が求めている情報を的確に伝えるための手段として、必要に応じ点字などにより広報を実施するようにする。
障害者福祉に関する教育の推進 障害者にとって暮らしやすい「まち」をつくっていくために、継続的な交流教育の推進を図るとともに、町民の理解を深めるための講演会や福祉講座の開催を充実する。
啓発の推進 役場窓口に、障害者問題の理解を深めるためのパンフレットを備える。

2.保健・医療の充実

(1)保健・医療サービスの充実

 障害の発生には、先天的な障害と、疾病や交通事故、労働災害などの後遺症による後天的な障害がある。
 先天的な障害の発生を防ぐためには、障害の原因となる疾病の予防や早期発見が重要となる。また、障害の進んでいく可能性が大きい乳幼児期に適切な治療と指導訓練を実施することは、障害の軽減と基本的な生活能力の向上を図り、将来の社会参加につなげていく上で効果が大きいと見込まれる。そのため、保健所や各種医療機関と有機的連携を取りながら、妊産婦に対する家庭訪問や健康診査、乳児健康診査、1歳6ヵ月児健康診査、2歳児健康診査、3歳児健康診査などを実施することにより、障害をできるだけ早期に発見し、治療や療育の適切な時期を失することのないように努める。
 また、その後の成長過程においても、各々の障害に応じたよりきめ細かな健康指導や医療相談を行うことにより、障害児が自分の持つ能力を生涯にわたって十分発揮でき、地域社会において充実した生活が送れるようにしていくことも重要である。
 後天的障害の発生は、脳卒中、あるいは骨折などに起因することが多く、その原因となるのは、高血圧症・高脂血症・循環器系疾病・糖尿病などの生活習慣病(成人病)である。そのため、それらの疾病を予防するための健康指導、健康相談、健康診査を定期的に実施しているが、生活習慣病はその名の通り日常的な食生活などに深く関係しており、今後より一層の健康指導・相談の充実を図る必要がある。また、難病認定患者についても後天的な障害が残る場合が多く、障害の見極めと適切な健康指導を実施する必要がある。
 障害者にとっての医療サービスの充実は、病気の治癒だけでなく、障害の軽減を図り、社会的自立を促進するためには不可欠であり、定期的な医学管理を必要とする障害者の増加や、障害に伴う二次障害の発生予防に対応するためにも障害者の健康管理や医療の充実を図る施策を展開する必要がある。そのため、更生医療の給付、訪問審査、更生相談、補装具の交付・修理、日常生活用具の給付などの充実を図り、高齢者施策と一体になった福祉用具の展示、相談会の開催を行う。

(2)情報・相談体制の整備

 障害者やその家族にとって、地域での身近な相談窓口が重要な役割を果たす。障害の種別や年齢を問わず、本人や家族に対する一時的窓口機能、保健・医療・福祉に関するサービスのコーディネート、専門的な機関への紹介などの機能を備えた総合相談体制の充実を図る。
 また、点訳・朗読・手話に必要な技術の取得などの指導を行い、各種奉仕員の養成・派遣、手話通訳者の設置を重点的に実施する。そして、視覚障害者や聴覚障害者に対する的確な情報提供のための手段の確保を行う。
 さらに、情報化社会の進展に伴い、コミュニケーションの手段としてパソコンなどを利用する障害者や福祉関係者も増えていることが予想されるため、情報提供の場としてこれらの機器を積極的に活用することも検討する必要がある。

表9 保健・医療に関する施策
施策 施策の課題と目標
母子保健事業 妊産婦に対する健診、乳児・1歳6ヵ月・2歳・3歳児健康診査により、障害の予防・早期発見を図る。
成人・高齢者保健事業 健康診査・相談・指導の一層の充実を行う。
医療事業 更生医療の給付、補装具・日常生活用具の交付などの充実を図る。

3.福祉サービスの充実

 ノーマライゼーションの理念に照らし、障害者が可能な限り地域の中で普通の暮らしができること、更に、社会的に自立し、積極的に社会参加するなど生きがいのある生活を営むために、障害者福祉に関しての体制づくりを推進することが重要である。特に、在宅福祉サービス・施設福祉サービスの充実については、障害者のニーズも増大しており、きめ細かなサービスを実施する必要がある。また、ボランティア活動をはじめとした民間福祉活動の活性化を図り、地域に密着したサービスの推進体制を整備することも望まれている。

(1)在宅福祉サービス

 住み慣れた家庭や地域で生活する障害者の支援という観点から、在宅福祉サービスの重点的な充実を図る必要がある。障害者の高齢化により、老人福祉法によって以下のサービスを受けている障害者も多いが、ニーズがあってもその対象とならないためにサービスを受けられない若年の障害者も存在する。そのため、そうした障害者も同じようにサービスを受けられる在宅福祉の整備を推進して行く。

1.デイ・サービス事業
 現在、高齢の障害者については、「老人デイ・サービス運営事業」により必要なサービスを受けているが、今後は、老人福祉の対象とならない若年の身体障害者についても、「老人デイ・サービス運営事業」の対象者としてサービスを開始する。また、身体障害者以外の障害者についても、早急なサービスの提供を実現させるための整備を推進する。
2.ホームヘルプサービス事業
 老人福祉との連携によるサービス提供の検討、精神障害者や難病認定患者も含めた障害者専任ヘルパーの確保を図る。
3.ショート・ステイ事業
 障害者を日常的に介護している親・配偶者など、介護者の高齢化により、今後一層必要となって行くことが見込まれるため、制度の充実を急ぐ。
4.リハビリテーション事業
 現在、老人保健事業の一環として、特別養護老人ホーム「ねんりん」に委託し、若年の障害者も含めたリハビリテーション事業を行っているが、ニーズ調査を見ると「送迎をしてもらいたい」「自宅近くで受けたい」との要望もあり、今後は関係機関と連携し、身近な場所での実施を検討する。

(2)施設福祉サービス

 施設福祉サービスの種類としては、(1)障害者の社会的自立を目標として、在宅で生活することが困難な重度の障害者に介護を提供し、安心して生活してもらう生活施設、(2)リハビリテーションや職業訓練を行う更生施設、(3)雇用が困難な障害者に入所や通所により就業の機会を提供する作業施設に分類できる。
 知的障害者に対するアンケート調査結果を見ると、今後「行政にもっとしてほしい」こととして、「入所(通所)施設の建設の促進や施設運営の改善」に対する要望が高く23.8%を占めており、県の広域的な計画を踏まえ、海部郡全体の広域事業として、こうした施設の充実・整備に努めていく必要がある。
 現在、由岐町内にはこれらの施設が1ヵ所もなく、海部郡内についても、精神薄弱児施設1ヵ所、精神薄弱者更生施設1ヵ所、精神障害者小規模作業所1ヵ所、養護学校1ヵ所だけである。
 今後、各関係機関との連携により、南部第2サブ障害保健福祉圏域(海部郡)内に、精神薄弱者グループホームを2ヵ所、精神障害者社会復帰施設1ヵ所を設置し、障害者の方のニーズに応じて行く。

表10 施設の状況(平成9年4月1日現在・海部郡)
施設種別 箇所 定員(人) 備考
精神薄弱児施設 1 40 ひわさ学園
精神薄弱者更生施設 1 40 ひわさ育成苑
精神障害者小規模共同作業所 1 16 うみがめ作業所・牟岐町
養護学校分校 1 - 阿南養護学校日和佐分校

(3)ボランティア活動

 災害時などにおけるボランティア意識の高揚が、一部の人だけのものから、幅広い層に広がってきている。それにともない、豊かで潤いのある地域社会の形成に重要な役割を持つ活動としてのボランティアが見直されつつある。町民を対象としたアンケート調査でも、ボランティア活動への参加の可否については、「ぜひ参加したい」「機会があれば参加したい」を合わせると約7割近い方の回答があった。
 障害者施策の分野で、点訳奉仕、手話通訳、障害者移送サービスなどのボランティア活動は重要な役割を占めており、そのマンパワーの養成と確保が必要となっている。そのため、町民や障害者自身がボランティア活動に気軽に参加できるよう、活動支援策を社会福祉協議会と連携して推進する。

問 今後、障害をもつ人に対するボランティア活動に参加したいと思いますか。

ぜひ参加したい 2.4%
機会があれば参加したい 63.6%
参加したくない 6.1%
わからない 27.9%


表11 福祉サービスに関する施策
施策 施策の課題と目標
生活基盤の充実 各種障害者手当(特別障害者手当、生活福祉資金など)の周知徹底および利用の促進を図り、国に対して制度の充実を働きかける。
在宅福祉サービスの充実 ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイの3本柱を中心に、リハビリテーションの充実も含め、障害者のニーズに合わせたサービスの提供と質の向上を図る。
施設福祉サービスの充実 県の計画に伴い、海部郡内広域で協力し、施設の充実を図る。
ボランティア活動の充実 ボランティアに関する情報を提供し、マンパワーの養成および登録制度の充実を図る。

4.雇用・就労の促進

 地域社会において生きがいのある生活を送るために、障害者がその適性と能力に応じた職業に就き、職業を通じて社会経済活動に参加することは大変有益なことである。そのため、就労意志のある障害者が可能な限り雇用の場に就くことができるようにすることが重要である。
 障害者に対するアンケート調査では、「あなたは仕事をしていますか」との問いに対して、「仕事をしている」との回答は、身体障害者で18.8%、知的障害者で25.0%となっている。また、「以前仕事をしていた」方まで含めると、身体障害者が79.7%、知的障害者が62.5%と答えている。アンケート調査では身体障害者のうち、65歳以上の人が約6割を占めているため就労に関する要望は低くなっている。

問 あなたは、仕事をしたり学校に通っていますか。
- 身体障害者 知的障害者
小学校就学前 - 6.2%
仕事をしている 18.8% 25.0%
以前仕事をしていたが、今はしていない 60.9% 37.5%
仕事をしたことがない 20.3% 31.3%

(1)雇用の促進

 近年、雇用される障害者の数は着実に増加しており、平成6年6月1日現在、県下の民間企業における実雇用率は1.77%で、法定雇用率1.60%を上回っている。しかし、一般企業等に雇用される障害者は、軽度の身体障害者がほとんどであり、重度の身体障害者や知的障害者の雇用についてはまだまだ少ないのが現状である。
 こうしたことから、町職員の採用については、法定雇用率の達成・特別枠の障害者の採用・雇用率の目標設定などにより雇用機会の拡大を図る。また、民間企業についても、その活力とノウハウを活かし、重度障害者や知的障害者の雇用機会の拡大を図る必要がある。そのため、関係機関の連携を強化し、各種制度についての周知と積極的な活用をはたらきかける。

(2)就労の促進

 就労意識を有しながら一般雇用されることの困難な障害者に対して、授産施設および小規模作業所は重要な役割を果たしている。しかし、こうした施設は由岐町単独での設置が難しいことから、海部郡全体の広域事業として促進を図る必要がある。
 現在、南部第2サブ障害保健福祉圏域(海部郡)内での就労施設は、精神障害者用の小規模作業所が1ヵ所だけであるが、今後、心身障害者用小規模作業所を1ヵ所、精神障害者用小規模作業所をもう1ヵ所設置出来るよう、関係機関と連携し、その実現に向け努力して行く。

表12 雇用・就労の促進に関する施策
施策 施策の課題と目標
雇用機会の拡大と就労の場の確保 雇用の意志を持つ障害者の雇用機会の拡大を図る。また、作業施設の充実により一般雇用の困難な障害者に就労の場を提供する。

5.教育

(1)学齢期前教育

 障害を持つ児童と持たない児童が、発達段階に合わせた集団の中で一緒に保育を受けることは、障害児に家庭生活では得られない経験を与え、社会性を育む機会となる。従って、保育所・幼稚園においては、障害児の成長・発達に応じた適切な保育が出来るよう、知識・経験を有する保育士・教諭を必要に合わせて配置し、その専門性を高めるための研修なども行う。また、障害を持つ児童の個性に応じて施設を整備するなど、受け入れ体制の充実を図っていく。

(2)学齢期教育

 障害児が、将来的にその個性に応じた自立をするためには、学齢期における学校生活や地域社会とのかかわりが重要となってくる。そのため、障害児の実態を的確に把握するとともに、保護者や本人の考えを尊重した適正な就学指導を行う体制づくりをすることが必要である。また、具体的な情報の提供により、保護者の疑問や不安を取り除くことに努め、障害児教育に対し理解と協力を得るための教育相談を充実させなければならない。そのため、就学指導関係者は各種の研修会へ参加するなど専門的知識を身に付け、その経験を活かした指導を行うとともに、学校内における連携を図るため学校内就学指導体制を整備する。

(3)啓発・交流活動の推進

 障害のある児童が充実した地域生活を送るためには、障害児やその家族だけではなく、障害を持たない児童やその保護者も障害児に対する正しい理解や認識を持つことが重要である。そのため、より一層の啓発広報活動を行い、障害児が、一般の児童や生徒、地域社会の人々と活動を共にする機会を設けるなど交流教育を積極的に推進していくこととする。

表13 教育に関する施策
施策 施策の課題と目標
教育相談・就学指導体制の整備 学齢期前、学齢期を通して、障害児やその家族の支援となる教育相談を実施し、適正な就学指導を行う体制づくりを推進する。
交流教育の充実 交流教育を積極的に実施し、障害児に対する正しい理解や認識の啓発を推進する。

6.生活環境の整備

(1)障害者にやさしいまちづくり

 高齢社会の到来や少子化が社会問題として大きく取り上げられている現在、「すべての人にやさしいまちづくり」の実現は、障害者福祉にとってだけではなく、あらゆる場面において強く望まれている。そのため、最も身近な市町村が、障害者の自立と社会参加の促進を図る「住みよい福祉のまちづくり」を推進することについては関心も高く、徳島県においても平成8年に「徳島県ひとにやさしいまちづくり条例」を制定している。
 バリアフリーの理念を推進するため、公共施設や不特定多数の人が利用する民間建築物について、「ひとにやさしいまちづくり」の広報に努め、歩道や出入口の段差を解消する、身体障害者用トイレや洋式トイレを設置するなど、障害者に配慮した措置を講ずると共に、エレベーターの設置についても整備を推進する。
 また、住宅整備については、将来において公営住宅を新設する場合、障害者や高齢者に配慮した設計とし、また、障害者用住宅を確保するなど、障害者が地域社会で生活できる環境の充実を図る。
 一方、個人住宅の改造については、徳島県が実施している「リフォームヘルパー派遣事業」や、由岐町が実施している「由岐町重度障害者住宅改造費助成金交付事業」の周知に努め、住宅の整備を促進する。そのほか、知的障害者、精神障害者については、近年ニーズの高まっているグループホームなど、利用できる小規模な居住空間の確保に努めていく。
 住宅の中で新設したり特別に改善したところについて、身体障害者に対するアンケート調査の結果から見ると、トイレが30.7%と最も多く、次いで風呂が20.0%、階段や台所が5.3%となっている。今後、特別に改善を必要とするところは、風呂が14.7%、トイレと階段が6.7%とまだまだ改善するところが多いように考えられる。

問 住宅の中で、あなたや介助者のために新設したり、特別に改善したところがありますか。
- 人数
玄関 3
風呂 15
トイレ 23
居室 4
台所 4
階段 4
エレベーター 0
ろうか 3
ろうかと居室の境などの段差 2
玄関から道路までの通路 1
その他 3
特になし 20
問 今後、住宅の中で、あなたや介助者のために新設したり、特別に改善を必要とするところがありますか。
- 人数
玄関 1
風呂 11
トイレ 5
居室 3
台所 3
階段 5
エレベーター 2
ろうか 3
ろうかと居室の境などの段差 4
玄関から道路までの通路 4
その他 1
特になし 19

(2)福祉機器リサイクル事業

 障害者を取り巻く社会情勢の変化などに伴って、障害者福祉に対するニーズは多様化しており、福祉機器に対する期待も膨らんできている。また、高齢化の見られる介護者の労力を軽減する上でも福祉機器の利用は重要なものであり、その普及に対する要望も年々高まっている。
 その中で本町では、以前から不要になった福祉機器について、これを必要とする他の者などに斡旋する事業を社会福祉協議会で実施しており、年間約20件程の利用がある。リサイクル可能な福祉機器のうち、車いすの利用が最も多く、また松葉杖や介護ベッドなどの需要もある。
 福祉機器がリサイクルで活用されるには、需要と供給の的確な把握が必要であり、広報などにより周知を図る。また、機器の使用方法について、斡旋時に十分な指導を行うことも重要である。

表14 生活環境に関する施策
施策 施策の課題と目標
障害者や高齢者にやさしいまちづくり 公共施設・道路の整備、改善の推進や、障害者が住宅を改造する場合の補助制度の周知と充実を図る。
障害者に配慮した公営住宅の整備 公営住宅の建て替えや新設に当たっては、障害者対策を図るとともに安全性を確保する。
福祉機器リサイクル 不要になった福祉機器について、広報などにより広く周知し、これを必要とする者に斡旋する。

7.社会参加・スポーツ活動の促進

(1)移動・交通手段の整備

 障害者が必要な医療を受けるため、また積極的に社会参加をするために、安全かつ身体的・経済的負担の少ない方法で移動できるよう整備する必要がある。道路交通環境については、障害者が快適に通行するための歩道の整備や段差の解消、スロープやエレベーターの設置などを早急に整備し、障害者に配慮した道路交通環境の実現を積極的に推進していく必要がある。

(2)スポーツ活動の推進

 障害者のスポーツに対する理解と関心は年々深まっており、現在では全国的に各種スポーツ大会が開催されている。徳島県でも、平成5年度に「全国身体障害者スポーツ大会」が開催されたのを契機とし、県民の障害者スポーツに対する理解が高まっている。海部郡内でも「身体障害者スポーツフェスティバル」を毎年開催しているが、障害者がスポーツ活動に参加することは、自立と社会参加を促進するだけでなく、スポーツを通じて障害者同士の連帯感を養う上で重要である。また、大会に参加する障害のない人々が、障害者に対しての理解を深めることにもなり、一般の人々に対する積極的な参加の呼びかけも必要となる。
 そのため、本町でも身体障害者スポーツの振興と身体障害者のスポーツヘの積極的な参加を図るため、身体障害者スポーツ大会・教室の開催について啓発・普及を実施しているが、今後は、より一層の推進と身体障害者スポーツ指導員の養成も充実させるよう取り組む。
 また、知的障害者についても、スポーツヘの取り組みに対する支援を行い、スポーツ大会を身体障害者と共同で開催するなど、スポーツ活動への参加を積極的に呼びかけていく。

表15 生活環境に関する施策
施策 施策の課題と目標
移動・交通手段の整備 障害者の自立や社会参加の妨げになっている道路交通環境を改善する。
また、一般の人々に対する啓発広報を行い、理解と協力を得る。
障害者スポーツの振興 障害者が、安全に楽しくスポーツ活動に参加できるよう配慮し、健康の維持・増進・機能回復の向上を図る。
障害のない人が、各種障害者スポーツ大会に障害者と共に参加することにより、相互理解を深めることができるよう積極的な参加を呼びかける。

▲戻る


主題:
由岐町障害者福祉計画 No.1
1頁~26頁

発行者:
由岐町

発行年月:
平成10年3月

文献に関する問い合わせ先:
由岐町