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障害者対策に関する青森県長期行動計画

総論編

第1章 計画の概要

I 計画の趣旨

 青森県は、障害者の社会への「完全参加と平等」をテーマに国際連合が提唱した「国際障害者年」(昭和56年)を契機に、昭和57年5月に“障害のある人もない人も共に生きる”ことを可能にする社会環境づくりを目標に「障害者対策に関する青森県長期行動計画」を策定し、障害者施策の推進と充実に努めてきました。
 この行動計画は、平成4年5月で10か年の計画期間が終了しましたが、その間、高齢化の急速な進行、県民意識の多様化、家族形態の変化、所得水準の向上等、障害者を取り巻く社会環境が大きく変化しているうえ、目標実現のためには、まだ残された課題も少なくないことから、今後も引き続き障害者対策を総合的かつ長期的視野に立って推進するため、「障害者対策に関する新青森県長期行動計画」を策定することとしたものです。

Ⅱ 計画の基本的考え方

 新行動計画は、基本的に昭和57年5月に“障害がある人もない人も共に生きる社会環境づくり”すなわちノーマライゼーションの理念の実現を目標に策定した前行動計画の理念を引き継ぐものとなっていますが、10年間の実績を踏まえて、障害を持つ人ができる限り、住み慣れた地域社会の中で自立し、社会参加できるような社会環境づくりを目標とします。

(1) 障害者福祉の理念の定着
 ノーマライゼーションの理念の実現の基礎となるものは、障害者の基本的権利が社会の中で正しく認められることです。障害者の社会への「完全参加と平等」を実現していくためには、「障害者は、人間としての尊厳が認められる生まれながらの権利を持っている」という障害者の権利が地域社会を構成する一員として尊重されることが大切です。
 障害者の「完全参加と平等」は、その実現をめざす過程において障害者の権利が県民一人一人に正しく理解され、地域づくりに自主的かつ積極的に参加していく姿がイメージされます。21世紀に向けてそのような障害者福祉の理念の定着をめざします。
(2) 自立のための社会環境づくりの推進
 ほとんどの障害者は、住み慣れた地域の中で暮らしたいと考えています。障害者の権利が保障されたとしても、障害を持つ人が障害を持たない人と同じように自主的、主体的に暮らしていくためには、ハード面だけではなく、民間福祉活動の担い手とあわせ、自立のための福祉のまちづくりと人づくりをめざします。
(3) 高齢化・重度化に対応した施策の推進
 本県では、全国平均を上回る勢いで、高齢化が進行していますが、それと同時に、障害の重度化も進んでいます。
 このため、各年齢層を通じた施策の推進にあわせて、高齢の障害者、日常生活に支障が生じている高齢者に対する対策の充実に努めます。
 また、障害の重度化対策として、早期発見、早期療育体制の整備とともに、重度障害者に配慮したきめ細かな施策の展開を図ります。
(4) 保健・医療・福祉の包括ケアシステムの構築
 保健・医療・福祉に関する施策は、これまでそれぞれの領域ごとに個別に実施されてきましたが、これからは、サービスを利用する人たちの立場に立って、それぞれの領域が密接に関連し合い、施策の推進が図られることが重要です。
 このようなことから、今後は、援護を必要とする高齢者や障害者をはじめ県民誰もが、いつでも、どこでも、必要なときに、必要な保健、医療、福祉サービスが受けられるよう「利用者本位」の包括ケアシステムを構築していく必要があります。

Ⅲ 計画の性格

 この計画は、21世紀に向けての長期的展望の下に、青森県における障害者対策の推進方向と今後10年間の実現可能な施策の展開を示しています。

Ⅳ 計画の期間

 この計画の期間は、平成5年度から平成14年度までの10年間とします。
 ただし、社会経済情勢の変化等により計画の変更の必要性が生じた場合は、必要に応じて計画の見直しを行います。

V 計画の内容
 この計画は、「保健・医療」、「福祉・人づくり」、「教育・育成」、「雇用、就業」、「生活環境」、「啓発・広報」、「スポーツ・文化・レクリェーション」の七つの分野から構成されています。
 また、この計画では、各分野別に重点目標と課題および課題に対する基本的施策を示しています。

Ⅵ 計画の推進
 この計画の推進にあたっては、以下の考え方に基づき進めていきます。

(1) 障害者対策は、保健、医療、教育、雇用、福祉、生活環境等の幅広い分野にわたっていることから、各関係部局との連携、調整を十分にとりあいながら、計画的にかつ着実に施策を推進します。
(2) 市町村をはじめとする関係機関、団体、企業そして地域住民など県民各界、各層との連携、協力を得ながら、かつそれぞれの役割分担に配慮しつつ、進めていくことが重要です。

Ⅶ 障害保健福祉圏域の設定
 障害者の保健福祉サービス体系については、市町村域・複数市町村を含む広域圏域、県域のそれぞれが機能分担を明確にし、各種サービスを面的、計画的に整備することにより、重層的なネットワークを構築することが必要であり、このために、複数市町村を含む広域圏域を県内に6か所設定し、障害福祉圏域としました。
 なお、設定に当たり、各種事業の展開を考慮するとともに、利便性や関係行政機関の所管区域を勘案し、老人保健福祉圏域及び二次医療圏との整合を図りました。

(圏域人口は、平成7年国勢調査における数値)
圏域名 圏域人口 構成市町村名
青森地域障害保健福祉圏域 327,944人 青森市、平内町、蟹田町、今別町、蓬田村、平舘村、三厩村
津軽地域障害保健福祉圏域 350,366人 弘前市、黒石市、岩木町、相馬村、西目屋村、藤崎町、大鰐町、尾上町、浪岡町、平賀町、常盤村、田舎館村、碇ヶ関村、板柳町
八戸地域障害保健福祉圏域 354,443人 八戸市、百石町、下田町、三戸町、五戸町、田子町、名川町、南部町、階上町、福地村、南郷村、倉石村、新郷村
西北五地域障害保健福祉圏域 164,514人 五所川原市、鯵ヶ沢町、木造町、深浦町、森田村、岩崎村、柏村、稲垣村、車力村、金木町、中里町、鶴田町、市浦村、小泊村
下北地域障害保健福祉圏域 88,805人 むつ市、川内町、大畑町、大間町、東通村、風間浦村、佐井村、脇野沢村
上十三地域障害保健福祉圏域 195,591人 十和田市、三沢市、野辺地町、七戸町、十和田湖町、六戸町、横浜町、上北町、東北町、天間林村、六ヶ所村
障害者保健福祉圏域
障害者保健福祉圏域(図)

第2章 計画の概要

I 総合施策体系図

(基本目標) (重点目標)
1.保健・医療の充実 保健サービスの充実
医療サービスの充実
2.福祉サービスの充実 在宅福祉サービスの充実
施設福祉サービスの充実
福祉の基盤づくりの推進
3.教育の充実 就学前教育の充実
義務教育の充実
後期中等教育の充実
社会教育の充実
特殊教育担当教職員の資質の向上
4.就労の促進 雇用の促進と職場定着
職業訓練施設機能の充実・強化
福祉的就労の推進
5.生活環境の整備 福祉のまちづくりの推進
移動・交通対策の推進
防災・防犯対策の推進
6.啓発・広報の充実 広報活動の推進
障害者の意見の反映
障害者の権利擁護
7.スポーツ・文化活動への参加促進 スポーツ活動への参加促進
文化活動への参加促進
国際交流の推進

Ⅱ 項目別重点目標の推進方向と課題

第1節 保健・医療

《保健・医療の充実》
 障害の発生予防と早期発見、早期治療は、障害者対策の基本の一つです。高齢化の急速な進行、生活習慣病を中心とした疾病構造の変化等地域保健を取り巻く社会環境が大きく変化している状況の下で、障害の早期発見から、治療、訓練、リハビリテーションに至るまでの一貫した保健医療体制の確立が求められています。
 また、障害の早期発見と治療のために必要な医療給付の充実を図っていく必要があります。
〔1〕保健サービスの充実
《推進方向》
 出生率の低下、核家族化や都市化の進展、女性の社会進出の増大など母性や子どもを取り巻く環境が著しく変化しており、次代を担う子どもを健やかに生み育てるための環境づくりが緊急の課題となっています。
 本県の乳児死亡率は、年々改善されつつありますが、早期新生児死亡率が高いこともあり、全国平均と比べ高水準にあることから、妊産婦や乳幼児等を対象とした健康診査、保健指導体制等の整備に努めるほか、周産期医療休制の整備を図ります。
 また、精神障害者の人権擁護と社会復帰の促進を基本とした精神保健対策を一層推進するとともに、児童思春期の精神保健対策や社会状況の急速な変化がもたらしたストレスの間題等「こころの健康づくり」と高齢化社会の急速な進展に伴う老人性痴呆疾患対策を推進します。
 さらには、難病患者の疾病に対する不安解消を図り、患者家族のQOL(生活の質:Qua1ity Of Life)の維持向上のための難病疾患対策を推進します。
課題
・母子保健対策の充実 ・周産期医療休制の整備
・精神保健福祉対策の推進 ・こころの健康づくりの推進
・老人性痴呆疾患対策の推進 ・難病疾患対策の推進
〔2〕医療サービスの充実
《推進方向》
 障害の重度化、重複化により、障害者の保健医療に対するニーズは増加の傾向にあります。
 こうしたニーズに適切に対応するため、早期療育システム及び療育施設の整備を図るとともに、難病疾患対策と医療費給付制度の充実に努めます。
 また、障害者は歯科疾患により患しやすい傾向にあるので、歯科診療施策の推進に努めるとともに、精神障害者の早期回復を図り、社会復帰の促進、自立及び社会経済活動の促進を推進します。
課題
・早期療育システム及び療育施設の整備 ・難病疾患対策の推進
・医療費の公費負担制度の充実 ・障害者歯科診療の推進
・より良い精神医療の確保

第2節 福祉・人づくり

《福祉サービスの充実》
 障害者福祉の目標は、「障害のある人もない人も共に生きる地域社会」の実現にあります。障害者が住み慣れた地域社会の中で自立し、社会参加できるようにするための福祉サービスの供給体制の確立が求められています。このような観点から、障害者の状況に応じたきめ細かな在宅福祉サービスを推進する必要があります。
 また、施設整備とともに、施設の持つ専門的機能を地域社会に開放するなど施設の機能強化が今後ますます重要となってきます。
 さらに、障害者が地域で安心して生活していけるような福祉の基盤づくりが必要です。
〔1〕在宅福祉サービスの充実
《推進方向》
 障害者や高齢者の多くは、できるだけ住み慣れた地域で家族や隣人とともに暮らしていくことを望んでおり、これを支援する在宅福祉サービスの充実が急務となっています。
 そのためには、在宅での日常生活に何らかの援助を必要とする障害者に対し、ニーズに対応したサービスを提供していく必要があることから、介護サービスの充実、相談・情報提供等の促進、社会参加の促進を図るとともに、障害者の生活安定、所得保障のための各種制度の周知徹底に努めます。
 また、生活の質(QOL)の向上のために、障害者のニ一ズに対応した福祉用具の開発、供給体制の整備を推進します。
課題
・介護サービスの充実 ・相談・情報提供等の促進
・社会参加の促進 ・所得の保障
・福祉用具の開発、供給体制の整備
〔2〕施設福祉サービスの充実
《推進方向》
 在宅での介護が困難な障害者や在宅で生活できない高齢者に対し、ニーズに対応した施設整備が必要なことから、在宅福祉サービスとの調和を図りながら、障害保健福祉圏域ごとに緊急性を勘案する等により、適正な施設整備を図ります。
 また、施設が持っている人的・物的機能を在宅福祉サービスと有機的な連携を図ることにより、地域での福祉サービスの拠点となるよう施設機能の充実を図ります。
課題
・施設整備の推進 ・施設機能の充実
〔3〕福祉の基盤づくりの推進 《推進方向》
 障害者や高齢者が家族や地域の人々とともに生活し、思いやりと連帯感に支えられ、必要とする福祉サービスを適切に受けられるような福祉の基盤づくりが求められています。
 そのため、福祉活動を支える人材を養成、確保するとともに、良質でよりきめ細かなサービスの展開を図るため民間福祉活動の強化に努め、併せて、効果的な福祉活動の展開を図るため、推進体制の組織化を進めます。
課題
・福祉マンパワーの確保 ・民間福祉活動の強化
・推進体制の整備

第3節 教育・育成

《教育の充実》
 障害児教育は、よりよい教育環境のもとに児童生徒の個性を尊重し、画一的な教育ではなく、障害の種類・程度に応じた適切な指導により、健全な発達を促し、社会的自立と祉会の成員としての人間形成を目指して行われるものです。
 障害児教育の推進にあたっては、医療、福祉などの分野との密接な連携のもとで行う就学前教育の充実、一人ひとりの児童生徒の特性に応じた教育とともに交流教育を行う義務教育の充実、自立できる人間形成に向けた後期中等教育の充実、地域社会の中で社会参加や交流機会の拡大を図る社会教育の充実、及び特殊教育の内容の充実を図るために、特殊教育担当教職員の資質の向上が求められています。
 これからの特殊教育においては、障害のない人に対して障害についての正しい理解と認識を図り、障害のある人もない人も共に仕会を構成する一員であるという理解のもとに、共に手を携えて豊かな社会をつくりあげるべきであるという認識を育んでいくための教育の充実が重要です。そのためには、特殊教育の一層の推進と障害のない人の障害理解・社会福祉についての教育の充実、及び交流教育の推進が大切です。
〔1〕就学前教育の充実
《推進方向》
 障害児の育成については、障害の早期発見、早期療育により、心身のよりよい発達を促すことが大切であることから、就学前の幼児期の教育は、医療、福祉の分野との密接な連携のもとに、できる限り早期から行うことが重要です。
 幼稚園、保育所における障害児教(保)育の拡充を図るとともに、盲・聾・養護学校における障害の特性に応じた教育の充実に努めるほか、早期教育・適正就学のための条件整備を進めます。
課題
・幼椎園における障害児教育の拡充
・盲・聾・養護学校における早期教育の充実
・早期教育・適正就学に関する啓発活動の促進
〔2〕義務教育の充実
《推進方向》
 義務教育期の特殊教育では、小学佼、中学校に準ずる教育を行うとともに児童生徒が障害に基づく種々の困難を克服するために必要な知識、技能、態度、習慣を養うことを目的としています。
 盲・聾・養護学校及び特殊学級等の児童生徒一人ひとりの特性を十分に生かすとともに、能力を十分に伸ばし、充実した学校生活が送れるよう教育内容の充実を図ります。
 また、これらの児童生徒の社会性の育成と、小・中・高等学校の児童生徒の障害についての正しい理解を図るために、交流教育を推進します。
 さらに、障害児の適正な就学を図るとともに、障害の実態に応じた特殊学級及び通級指導教室の設置等その充実を図ります。
課題
・教育内容の充実 ・交流教育の推進
・特殊学級等の充実
〔3〕後期中等教育の充実
《推進方向》
 後期中等期の教育では、できる限り積極的に社会参加し、自立する人間を育成することを目標に、生徒一人ひとりの障害の状態や能力、適性に応じた教育を行うため、就学機会の拡充を図ります。
 また、時代に即応した職業教育の充実に努めるとともに、卒業後の社会的自立を促進するため、労働、福祉の分野と連携をとりながら、障害に応じた進路指導の充実を図ります。
 さらに、障害についての正しい理解と福祉についての認識を促すとともに、交流教育の推進に努めます。
課題
・就学機会の拡充 ・進路指導の充実
・進路指導の充実 ・職業教育の充実
〔4〕社会教育の充実
《推進方向》
 障害者に対する社会教育としては、障害者が家庭や地域社会から孤立しないで、適切な教育が受けられるようにすることが大切です。
 そうした観点に立って、地域住民の協力を得ながら、障害者自ら参加できる青年学級を開設し、その運営の充実を図ります。
 また、障害者が集団学習を通して、社会性を身につける機会を確保するとともに障害者を持つ親の学習機会の充実を図ります。
 併せて、障害のある人とない人が社会教育活動の中で学習しあうことを通して連帯感を育て、障害者に対する正しい認識を深めるとともに交流機会の拡充に努めます。
課題
・育年学級の充実 ・障害者を持つ親等の学習機会の充実
・交流機会の拡充
〔5〕特殊教育担当教職員の資質の向上
《推進方向》
 特殊教育を充実させるには、特殊教育に携わる教職員が専門的知識と技能を身につけることが不可欠です。
 障害のある児童・生徒についての専門的知識や技能習得を目的とする研修内容の充実を図り、優れた教職員の確保に努めます。
課題
・教職員の研修の充実・強化

第4節 雇用・就業

《就労の促進》
 働くことは、人間にとって生活の糧としての所得と併せて「生きるよろこび」を与えてくれるものであり、障害者にとっても職業に就いたり、適性と能力に応じた就労の場を得ることは、重要な課題です。
 国際障害者年を契機として障害者雇用に対する理解と関心は高まりを見せ、企業による一般雇用の状況は逐次改善され、雇用の場も多様化してきています。
 しかし、まだ、法定雇用率に達していない企業も多く、障害者の雇用の促進を図るためには、企業に対し、障害者の雇用の気運の醸成に努め、法定雇用率の達成のための指導を強化するとともに、職場定着を図る必要があります。
 また、障害者の特性に対応した職業能力開発体制の整備も欠くことのできない課題です。
 さらに、一般企業等への就労が困難な障害者については、福祉的配慮が行き届いた就労の場を確保していく必要があります。
〔1〕雇用の促進と職場定着
《推進方向》
 職業的自立の意欲を持つ障害者にとって、その適性と能力に応じた適切な就労の場が確保され、生きがいを見い出だしていけるような社会の実現を図る必要があります。
 障害者の雇用にっいては、まだ、法定雇用率に達していない企業が多いことから、雇用率制度を適正に運用し、法定雇用率の達成に向けて企業に対する指導を強化するとともに、公共職業安定所を中心に職業に就いた後の職場定着指導を強めるなどきめ細やかな対策を講じます。
 特に、障害の重度化に対応し、重度障害者の雇用促進のための職場環境の整備を図ります。
 また、雇用促進のため、企業に対し各種援護制度や助成金制度の活用を推進します。
課題
・障害者雇用率制度に基づく障害者の雇用の促進
・職業紹介の促進と職場定着指導の強化
・重度障害者の雇用促進
・各種援護制度及び助成金制度の活用
〔2〕職業能力開発体制の強化・充実
《推進方向》
 障害者の就労の場を確保し、職業生活の安定を図るためには、障害者自身の持っている就労に対する適性と能力を最大限に向上させるための職業リハビリテーション体制の整備促進が大切です。
 このため、県立障害者職業訓練校が障害者の多様なニーズに対応した職業能力開発を推進していくための技術革新等の変化に対応した訓練科目の設定と必要な設備の充実を図ります。
 また、健常者とともに訓練を受けることが可能な障害者については、県立の職業能力開発校への入校を促進するなど、障害者の特性に応じた職業能力開発の機会を提供します。
課題
・技術革新等の変化に対応した訓練科目の設定
・公共職業能力開発施設への受入れ促進
〔3〕福祉的就労の促進
《推進方向》
 障害者は、いろいろなかたちで仕事を通じて社会との関わりを持つことを望んでおり、障害者の雇用環境は次第に整備されてきています。
 しかし、一般企業への就労が困難な障害者については、福祉的配慮が行き届いた就労の場を確保する必要があることから、授産施設や小規模作業所等の整備を促進することによって、障害者の生活の安定と就労意欲の高揚を図ります。
課題
・福祉的就労の場の整備促進

第5節 生活環境

《生活環境整備》
 障害者が地域社会の中で、安全で快適な生活を送れるような生活環境の整備改善を図っていくことは、大変重要です。
 障害者のために配慮された公共的建築物、公営住宅の整備、また、歩道、横断歩道、交通信号機等の道路、交通安全施設の整備、さらには、地震、災害時における避難場所、避難体制の整備など、生活環境が体系的に整備されて、初めて住みよいまち、快適でぬくもりのある地域社会と言えるでしょう。
〔1〕福祉のまちづくりの推進
《推進方向》
 障害者が豊かな社会生活を営むうえで、デパート、スーパー、金融機関など利用する機会の多い公共的建築物や公園、公共交通機関、住宅など身近な生活環境の整備は欠くことができません。
 障害者にとって住みよいまちづくりの実現に向けて福祉のまちづくり推進指針を策定し、その指針に基づいて関係機関の協力を得ながら、障害者に配慮した建築物の整備、改善に努めてきたところですが、さらに、福祉のまちづくりを推進していくために、条例を制定するとともに、関係分野が連携をしながら、総合的な福祉のまちづくりを協力に推進します。
 また、公営住宅についても、障害者に配慮した住宅の整備を図るとともに、公的建築物の自動ドア化、段差の解消など順次整備改善します。
課題
・公共的建築物 ・住宅環境等の整備の推進
〔2〕移動・交通対策の推進
《推進方向》
 障害者が気軽に安心して街に出かけられるような“やさしいまちづくり”が求められています。
 障害者が安全で自由な行動ができるようにするために、幅の広い利用しやすい歩道の整備、横断歩道の段差切り下げ、視覚障害者用誘導ブロック、視覚障害者用信号機など障害者のための通行空間の整備を図るとともに、道路を不法占用している物件、達法駐車、放置されたままの自転車などは、障害者にとって特に危険なため、それらを排除する措置を講じます。
 また、身体障害者の移動を容易にするための各種支援策の充実を図るとともに、地域住民に対し、交通安全マナー向上のための啓発活動を行います。
課題
・通行空間の改善整備 ・不法占用物件等の排除措置
・身体障害者の移動の支援 ・交通安全教育の推進
〔3〕防災・防犯対策の推進
《推進方向》
 障害者が安心して生活を送るためには、地震、火災等の災害時に情報の提供や避難誘導が迅速かつ的確に行われることも重要です。
 災害が発生した場合、ねたきり老人や身体障害者等は自ら適切な防災活動をとることが極めて困難であることから、地域住民、事業所、消防機関等が一体となった地域ぐるみの防災体制の確立に努めます。
 また、犯罪から守るために、地域住民との協力により防犯ネットワークを確立するとともに、緊急時の通信体制の充実に努めます。
課題
・防災意識の高揚 ・自主防災組織の育成指導
・防犯ネットワークの確立 ・緊急時の情報提供・通信体制の充実

第6節 啓発・広報

《啓発・広報の充実》
 障害者対策は、極めて広範囲に及んでいます。国際障害者年を契機にいろいろな障害者の福祉向上のための施策が展開されてきました。そして、今後も様々な施策が講じられようとしています。
 しかし、障害者が住み慣れた地域社会の中で真に豊かな生活を送るためには、地域で一緒に暮らす人々の正しい理解と認識が不可欠です。
 地域住民に対する積極的な啓発広報活動と同時に、障害者が自立した社会生活を送るためには、いろいろな行事や事業に対して障害者の意見が反映されることがとても大切です。
〔1〕広報活動の推進

《推進方向》
 障害者の「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念が地域社会に定着するためには、障害者に対する偏見や理解不足を除去していく必要があります。
 このため、テレビ、ラジオ、新聞等のマス・メディアの協力を得ながら広報活動を展開するとともに、公開講座、研修会など地域住民に対する啓発の機会を増やします。

課題
・広報活動の充実 ・啓発活動の充実
〔2〕障害者の意見の反映

《推進方向》
 今までの障害者のための施策は、ともすれば障害のない側からの発想に基づくものがほとんどでした。
 障害がある人々を慈恵的対策の対象として把える傾向があったことは否定できません。
 障害者が地域社会の中で自立した生活を送るためには、障害者福祉施策に自らの意見を反映させることが大切です。障害者が会議や行事に参加する機会を増やすとともに、意識調査を実施し、障害者の声を反映させるように努めます。

課題
・障害者の意識の把握
・障害者の会議等への出席及び参加の促進
〔3〕障害者の権利擁護
《推進方向》
 知的障害者等の事故の意思表示の困難な障害者に係る権利をいかに擁護していくかが喫緊の課題であり、権利が侵害されないよう、県民に啓蒙を図るとともに、相談システムの整備を図ります。
課題
・障害者の権利擁護の方策

第7節 スポーツ・文化・レクリエーション

《スポーツ・文化活動への参加促進》
 近年、社会経済のめざましい発展によって、生活の中に「ゆとり」が生じ、生活の質の向上が求められるようになりました。とりわけ、障害者にとって、生活の質を向上させることは大切であり、生活に潤いと楽しみをもたらし、生きがいをもって充実した生活を送るためには、スポーツ、文化、レクリエーション活動への積極的参加が望まれます。
〔1〕スポーツ活動への参加促進
《推進方向》
 スポーツは、体力の維持・向上と健康増進を図るためにとても大切な活動です。
 ハンディキャップを持つ障害者のスポーツ活動への参加を促進するためには、障害者が楽しんで参加できるようなスポーツ活動の場や機会の提供とそれを支援する体制づくりが大切です。支援策としては、障害者スポーツ指導者の養成・研修・活用とともに、スポーツ活動支援の組織化を進めます。
 また、障害者のスポーツ活動の参加拡大のために、障害者スポーツ大会やレクリエーション大会の開催、あるいは、全国大会への選手の派遣など、スポーツを通じての交流機会の拡大を図ります。
課題
・障害者スポーツ指導員の養成・研修・活用
・障害者のスポーツ活動への参加機会の拡大
〔2〕文化活動への参加促進
《推進方向》
 障害者にとって、ゆとりと潤いのある生活を実現していくうえで、文化活動の重要性はますます高まっています。
 文化活動は、心身機能の向上に役立つと同時に、創造的活動などにより創造性を高め、自己実現を果たし、生きがいの高揚をもたらします。
 障害者が文化活動に積極的に参加できるよう文化活動の情報提供などの支援体制づくりに努めます。
課題
・障害者の文化活動への参加機会の拡大
〔3〕国際交流の推進
《推進方向》
 国際化時代と言われる今日、本県においても「青年の船」、「青年の翼」や、東南アジアからの福祉研修生の受入れなど国際交流が盛んになっています。
 このことは、障害者についてもあてはまります。育森空港から国際チャーター便により、ひとっ飛びで海外に出かけられます。
 また、パラリンピックにも、身体障害者だけではなく知的障害者にも参加の道が開かれました。
 これからは、障害者の国際交流のための事業を実現し、充実を図ります。
課題
・諸外国との交流機会の拡大

主題:
障害者対策に関する青森県長期行動計画

発行者:
青森県(健康福祉部障害福祉課)

頁数:
1頁~13頁

発行年月:
平成10年3月 改訂

文献に関する問い合わせ先:
〒030-8750
 青森市長島1-1-1