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宮城県障害福祉長期計画

No.2

「ぜんたい幸福」を求めて

宮城県

平成5年3月

第4章 教育・育成の充実

第1節 教育内容の充実

現状と課題

 心身に障害があるために、通常の学校では十分な教育効果が得られない児童に対しては、一人ひとりの能力を可能な限り伸ばし、社会自立の達成を図るため、その障害の状態や特性及び発達段階に応じた適切な教育が受けられるような体制の確立が必要です。

 我が国の障害児の教育については、昭和23年に盲・聾学校の義務制が開始されたのについで、昭和54年には養護学校(精神薄弱,肢体不自由,病弱の三種)の義務制が施行され、制度的には障害児教育の体制が確立されるにいたりました。また、これら特殊教育諸学校の教育対象となっていない軽度の障害児については、多くは戦後間もなくから、小・中学校に設けられた特殊学級で教育が行われてきています。

 なお、障害児の就学先については、各市町村教育委員会において心身障害児就学指導委員会等の協力のもとに、適正な借置がとれるように努めてきていますが、障害児の多様化に伴って、一人ひとりの能力、適性に応じだ就学指導がなされるよう一層の充実が望まれます。

 本県の体制(平成4年現在)をみると、盲学校が1校、ろう学校が2校、養護学校が18校設置され、義務教育段階での整備は一応終了しています。また、小・中学校には併せて444の特殊学級が設けられていますが、養護学校の設立や生徒の滅少等により、精神薄弱特殊学級の在籍人数が1~2人と少ないところが多い現状となっています。

 一口に障害児といっても、その障害の程度の差が大きいことや特性の違いにより、それぞれに即応した適切な教育を行うことは容易ではありません。特に、養護学校の義務制により、障害の種別が多様になり、また、その程度の重度のものや重複障害をもつものが多くなっており、教育内容や方法の改善、教職員の質的向上、施設設備の整備充実など、一層の施策推進が望まれます。特に、重度,重複障害児に対する教育の充実のための教育方法や教材研究などについては、強化がはかられる必要があります。

 また、障害児に対する早期教育の重要性から、特殊教育諸学校の幼稚部の充実について検討するとともに、幼稚園(保育所等)における幼児期の教育を一層推進することが望まれます。

なお、平成3年に本県の障害児教育の中核となる県特殊教育センターが完成したことにより、今後、教育相談や研修及び調査・研究等の事業の推進により、障害児教育の充実が図られることになったので、関係機関等との一層の連携が望まれます。

精神薄弱特殊学級数・児童生徒数・1学級平均児童生徒数の推移〈小・中合計〉

グラフ

精神薄弱養護学校の児童生徒数及び学級数の推移

グラフ

(資料:「宮城県精神薄弱教育史」より)

学校種別児童・生徒数の推移

- 盲学校 聾学校 養護学校
昭和30年 153 358 0
35 174 444 0
40 158 405 126
45 148 377 498
50 143 336 943
55 158 254 1,340
60 112 185 1,338
平成元年 108 189 1,350
91 179 1,487

 (資料:県統計課)

就学免除・猶矛盾の推移(人)

昭和36年 40 45 49 55 平成4年

就学免除者

肢体不自由 85 93 53 34 0 0
秒虚弱 73 49 19 6 2 0
精神薄弱 240 286 130 127 0 0
その他 25 48 8 5 0 0
小計 423 476 210 172 2 0

就学猶矛盾

盲弱視

3

5

5

2

0

0

聾難聴

8

1

1

1

0

0

肢体不自由

38

51

49

31

1

0

病虚弱 66 30 22 16 1 4
精神薄弱 144 188 185 160 7 0
その他 35 61 20 32 1 3
小計 294 336 282 242 10 7
合計 717 812 492 414 12 7

 (資料:県統計課)

(注)就学義務の猶予又は免除
 病弱、発育不全その他やむを得ない事由の為就学が困難と認められるものの保護者に対して、市町村教育委員会が義務の猶予又は免除するもの。

今後の方向

1就学相談・指導体制の充実

●市町村教育委員会における就学相談・指導体制の充実を図るとともに、関係機関や専門家との連携を強化し、きめ細かな就学相談及び指導を推進します。

2施設設傭の整備充実

●障害児の能力、特性を最大限に伸ばすため、実習室、プール、新教育機器など施設設備の整備充実を図ります。

3教育方法・内容の充実

●一人ひとりの障害の程度や特性に応じた適切な教育ができるよう、指導内容や指導方法の改善を図ります。

4特殊教育センターの機能充実

●特殊教育センターと医療、福祉、教育関係機関との連携を図り、教育相談や調査・研究事業及び教職員に対する研修の充実を図ります。

5早期教育の充実

●特殊教育諸学校の幼稚部の充実について検討するとともに、幼稚園(保育所等)での障害児教育の推進を図ります。

特殊教育センターの機能と役割

特殊教育センターの機能と役割図

第2節 進路体制の確立

現状と課題

 障害児の教育については、養護学校の義務制に伴い制度的な整備が進められ、現在では、障害児の義務教育を受ける体制の確立がひととおりなされました。本県における、不就学児の人数も昭和49年の414人から平成4年においては、7人と激滅していることからも類推されます。しかし、義務教育終了後の進路については、進学あるいは就労への道が必ずしも十分な体制となっておらず、後期中等教育を始めとする進学への条件整備や職業教育の充実による就労の場の確保など、障害児の進路体制の確立へ向けた施策の推進が必要です。

 本県における平成4年度の特殊教育諸学校終了後の進路状況をみると、中等部の卒業生についての進学率は盲・聾学校は100%、養護学校は75.0%となっており、主な進学先はそれぞれの高等部となっています。また、進学しなかった養護学校卒業生の90%以上が就職せず無業者となっています。

 こうした状況を踏まえ、中等部においては、特に養護学校卒業生の高等部への進学や就職先の確保等について一層の対策が望まれますし、高等部においては、社会の状況や生徒が進む職業等に対応し、障害の状態や能力等に適した多様な職業教育の充実を図る必要があります。特に、高等部の卒業においては、障害児の最終的な出口と考えられるので、在学中での社会適応力の確保や就職先の拡大のための雇用や福祉部門との連携による一層の推進が必要と考えられます。

 なお、近年の産業構造の変化は、障害児の就職・就労を一層困難にさせていますが、進路がないままの学卒後の日常生活の経過は、学校教育で身につけた能力が徐々に失われることとなり、就職の道をますます困難なものとし、また、日常生活のリズムをも喪失させることになりかねないことから、授産施設等を始めとする福祉的就労の場への進路や職業リハビリテーションによる方法などとの関わりも重要ではありますが、学校教育段階での一連の進路体制の確立が求められます。

高等学校等への進学者数 (単位:人)

区分

高等学校

高等専門学校

盲・聾・養護 学校高等部

本科

全日制

定時制

通信制

本科

別科

昭和62年

71

15

9

-

6

-

56

-

63

83

12

5

1

6

-

71

-

平成元年

106

17

10

1

6

-

89

-

2

106

9

5

-

4

-

97

-

3

104

16

9

3

4

-

88

-

4

111

9

5

1

3

-

102

-

盲学校

10

-

-

-

-

-

10

-

聾学校

8

-

-

-

-

-

8

-

養護学校

93

9

5

1

3

-

84

-

対前年度増減

7

△7

△4

△7

△7

-

14

-

(資料:県統計)

大学・短期大学等への進学者数 (単位:人)

区分 大学(学部) 盲・聾・養護学校 高等部(専攻科)
昭和62年 30 - 30

63

26

-

26

平成元年 33 - 33

2

22

-

22

3

32

-

32

4 33 - 33
盲学校 7 - 7
聾学校 11 - 11
養護学校 15 - 15

対前年度増減

1

-

1

(資料:県統計課)

今後の方向

1後期中等教育体制の充実

●精神薄弱養護学校の高等部については、生徒数の推移や地域の状況等を十分考慮しながら計画的な整備を進めます。また、病弱養護学校の高等部の設置についても検討を進めます。

●高等養護学校については、現在、仙北に1校あるだけなので、全県的なバランス等を踏まえて増設について検討を進めます。

2職業教育の充実

●特殊教育諸学校高等部においては、社会の状況や生徒が進む職業等の条件に合わせ、障害の状態、能力、適正等に応じた多様な職業教育の充実を図ります。

3進路の拡大

●進路指導の充実を図るとともに、公共職業安定所や障害者職業センターを始めとする雇用部門や福祉部門の関係機関との密接な連携に努めて進路の拡大を図ります。

宮城県内精神薄弱養護学校の整備と経過 (平成3年4月現在)

宮城県内精神薄弱養護学校の整備と経過

第5章 雇用・就労の促進

第1節 雇用の促進

現状と課題

 障害者がその能力と適性に応じて仕事に就き、社会経済活動に参加することは、所得保障が図られるとともに、障害者自身にとっての生きがいの場として重要な役割を持っています。

 障害者の雇用対策は、昭和51年の「身体障害者雇用促進法」の改正による雇用率制度の強化と雇用納付金制度の創設等により大きく前進し、その後、昭和62年に同法が「障の雇用の促進等に関する法律」に改正され、対象の範囲が精神薄弱者にも拡大されたことや法定雇用率の引上げもなされ、更に、平成4年には、重度化に対応した雇用対策を中心とした法改正がなされ法制度上の体制が整えられました。

 このような状況の中、障害者の雇用については徐々に改善されてはいますが、まだ法定雇用率を達成していない企業も多く、また就労の形態や労働条件等についても改善が必要と考えられます。特に、両上肢障害者、視覚障害者、脳性マヒ者等の身体障害者や精神薄弱者及び精神障害者の雇用は、就労に適するかどうかの判断が難しいことや適職の開発の進んでいないこと、また、就労後の指導が必要なことなどもあってなかなか進まないことから、障害種類別の特性に応じたきめ細かな対策を進めていくことが今後の大きな課題といえます。

障害者の雇用を推進するためには、事業主の理解と協力が必要不可欠ではありますが、それだけでは解決できない問題が多くあります。特に、近年の産業構造の変化は、より障害者の就労を困難とさせていることから、こうした状況の変化に対応していくことが必要と考えられます。

 本県における障害者の雇用状況(H4.6現在)をみると、県・市町村のうち雇用率2.0%が適用される非現業的機関では、それぞれ2.05、2.10で法定雇用率を上回っていますが、今後とも更に雇用を進める必要があります。また、民間企業では、実雇用率は1.38%と法定雇用率1.6%を下回っており、雇用率未達成企業の割合は53.0%となっている状況です。今後、障害者自身の一層の努力に加え、県民や事業主の理解と協力により、総合的な雇用対策を推進し、障害者がその特性に応じた職業に就き、能力を発揮して社会経済活動に参加することが所得を保障し「完全参加と平等」を具体的に実現することになると思われます。

民間企業における身体障害者雇用状況(宮城県及び全国)

一般民間企業(雇用率1.6%適用)

項目

企業数

法定雇用暫定基礎労働者数

障害者数

雇用率未達成企業の割合 (%)

イ 重度身体障害者数 ロ 重度身体障害者以外 ハ 計

(ィ×2+ロ)

実雇用率 (%)

宮城県

839 188,883 541 1,524 2,606 1.38 53.0
63~99人 250 19,344 47 207 301 1.56 42.8
100~299人 442 67,951 196 524 916 1.35 55.2
300~499人 78 27,703 63 195 321 1.16 64.1
500~999人 41 24,972 85 193 363 1.45 63.4
1,000人以上 28 48,913 150 405 705 1.44 64.3

全国

52,884 16,869,262 48,108 133,411 229,627 1.36 48.1
63~99人 15,501 1,219,310 4,138 16,567 24,843 2.04 40.7
100~299人 26,578 4,013,245 10,663 39,118 60,444 1.51 44.6
300~499人 4,890 1,675,144 4,428 12,705 21,561 1.29 59.3
500~999人 3,401 2,109,111 5,613 14,597 25,823 1.22 69.3
1,000人以上 2,514 7,852,452 23,266 50,424 96,956 1.23 80.8

(注)1イの障害者数のうち重度身体障害者については、一人を二人で計算(ダブルカウント)してある。
2「法定雇用暫定基礎労働者数」は全企業における常用労働者数の合計から本調査に参入されない除外労働者の数を引いた数である

民間企業における身体障害者雇用状況の推移

1区分 2企業 3基礎労働者数

4身体障害者数
うち重度

5実雇用率 (%) 6未達成企業数 7未達成企業の割合(%) 8法定雇用数に不足する身体障害者
58年6月1日 575 137,289 1,727 283 1.26 299 52.0 652
59年6月1日 577 140,489 1,771 292 1.26 304 52.6 649
60年6月1日 580 145,105 1,823 315 1.26 313 54.0 677
61年6月1日 604 148,968 1,820 335 1.22 331 54.8 705
62年6月1日 615 148,689 1,807 333 1.22 339 55.1 729
63年6月1日 665 152,997 (身障者1,861)
(精薄者130) 
1,991
363 (除く精薄1.22)
1.30
352 52.9 805
元年6月1日 673 157,616 (身障者1,939) 

(精薄者145) 

2,084

403 (除く精薄1.23) 

1.32

347 51.6 839
2年6月1日 703 167,080 (身障者2,078) 

(精薄者149) 

2,227

450 (除く精薄1.24) 

1.33

342 48.6 873
3年6月1日 762 177,764 (身障者2,222)

(精薄者182)

2,404

484 (除く精薄1.25) 

  

1.35

374 49.1 901
4年6月1日 839 188,883 (身障者2,405) 
(精薄者201) 

2,606

541 (除く精薄1.27) 
1.38
445 53.0 934

(注)精神薄弱については、昭和63年度から雇用率の算定対象となった。

(資料:県職業安定課)

今後の方向

1雇用達成指導の推進

●県及び公共職業安定所の幹部職員が率先して、企業及び地方公共団体のトップに対する指導を計画的かつ継続的に行うとともに、各種会議等を活用して啓発を図ります。

●雇用改善が進まない企業については、重点対象企業とし、定期的な求職情報の提供及び求人開拓・求人開発、集団選考会の開催等により、早期雇用率達成を目指しての指導援助を実施します。特に、雇用率が低い企業に対しては、身体障害者雇入れ計画作成命令・同計画の適正実施勧告・公表制度の運用基準に従い厳正な運用に努めます。

●地方公共団体については、民間企業に率先して障害者雇用を実践すべき立場にあることから、雇用率未達成機関に対しては、採用計画の作成命令・採用計画に対する適正実施勧告及び公表制度を前提にした強力な指導を実施します。

2職業紹介業務の充実

●障害者重要公共職業安定所を中心とする各公共職業安定所間の連携を一層強めるとともに、求人・求職者の実態を常時把握し、そのニーズに応じた情報の提供等により就職の促進を図ります。

●ケースワーク方式による入念な職業指導、職業紹介を行うことの出来る求職登録制度の有効活用、求職者に合わせたいわゆるオーダーメイド型求人開拓、集団管理選考等、地域・労働市場の状況に応じた方法での積極的マッチングを実施します。

●社団法人宮城県障害者雇用促進協会等関係機関との連携を深め、効果ある職業紹介業務の推進を図ります。

3障害者雇用促進啓発活動の展開

●9月を「障害者雇用促進月間」と定め、「障害者雇用促進大会」等各種イベントを開催するなど障害者の雇用促進と職業の安定のための啓発活動を全県下で展開するほか、各種会議及び報道機関を活用するなど年間を通じて啓発活動を実施します。

4重度障害者等の雇用対策の推進

●就職することが極めて困難な重度障害者の雇用の拡大を図るため、民間企業の活力とノウハウを活かしつつ、いわゆる第3セクター方式による重度障害者多数雇用企業の設立・育成が重要なので、宮城県重度障害者雇用推進研究委員会で策定した「重度障害者雇用企業設立基本計画」(マスタープラン)に基づき積極的に推進します。

●職域の限られている視覚障害者の雇用促進を図るため、雇用が期待される企業と教育等地域の関係機関の協力により雇用の拡大を図ります。

●一定の要件のもとに子会社を設立し、そこに障害者を集中的に雇用し親会社と同一の事業主体を擬制する子会社特例制度は、一度に多数の障害者の雇用機会を確保でき、また、雇用管理上も有効なことから、その制度活用の促進を図ります。

5精神薄弱者・精神障害回復者の雇用対策の推進

●重度精神薄弱者については、雇用率制度・雇用納付金制度においてダブルカウントを適用することから、宮城県障害者職業センターの行う職業準備訓練等の活用により、一層の雇用促進に努めます。

●精神障害回復者等については、特定求職者雇用開発助成金・雇用納付金制度に基づく助成金の対象となったことから、職場適応訓練・職業準備訓練の活用等による雇用の促進を図ります。

(参考)

第3セクター方式による重度障害者雇用企業設立基本計画 宮城県

  1. 設立の趣旨・目的
    障害者の雇用問題については、昭和56年の「国際障害者年」を契機として事業主をはじめとする多くの方々の一層の理解を得られたこと等により、障害者を取り巻く環境は改善されている。
     しかしながら、依然として就職困難な重度障害者が相当数みられ、今後の障害者雇用対策を進めるに当たっては、重度障害者に最大の重点を置き、働く意思と能カのあるすべての障害者が、健常者とともに一般企業において極く自然に働けるような状態を創り出すことが、重要な課題となっている。
     こうしたなかで、本県における昭和61年6月1日現在の民間企業における身体障害者の実雇用率は、1.22%と前年より低下しており、雇用率未達成企業の割合は増加の傾向にあり、また、就職困難な重度障害者も相当数みられている。
     このような状況から、本県では、昭和57年3月に策定した「宮城県障害者福祉長期計画」に基づき諸施策を強カに進めているところである。
     その方策の一つとして、地方公共団体と民間企業との共同出資による重度障害者雇用企業(以下「第3セクター企業」という。)の設置を推し進め、ノーマライゼーションの理念に基づいた重度障害者の雇用の場の創出を図ることとする。
  2. 公的セクターと民間セクターの役割
    第3セクター企業の設置・運営については、民間セクターが中心となって行い、公的セクターは、県及び企業設置の市町村とし、助言・指導的立場をとることを原則として、次の役割を分担する。
    1. 公的セクター
      • イ 企業設立時における出資総額の49%以下の出資(県45%程度、企業設置の市町村4%程度)
      • ロ 役員の派遺
      • 八 企業設立に基づく用地の確保についての協カ及び作業施設・設備の整備についての助言・指導
      • 二 従業員の確保に関し、職業能力判定機関、教育機関.福祉機関及び職業訓練機関等関係機関との連絡調整及び募集についての広報周知
      • ホ 企業の設置・運営についての広報、PR及び地域社会における啓蒙・啓発活動の実施
    2. 民間セクター
      • イ 企業設立時における出資総額の51%以上の出資
      • ロ 役員及び従業員の派遺
      • 八 企業設置用地の確保及び事業所の設計・建設
      • 二 企業経営の安定のために必要を業務発注及び販売生産管理等に関する経営ノウハウの導入等企業の中心的な運営管理
  3. 業種
    第3セクター企業の業種は、障害者がその能力を十分に発揮することができ、良好な経営状態を維持できる業種が望まれる。
     このため、第3セクター企業は、今後の障害者雇用についての波及効果が期待される重度障害者雇用モデル事業所としての性格を有することから、今後の障害者雇用が期待できる業種が望ましい。
     宮城県において、当面考えられる主な業種ほ、次のとおりである。
     電気機械器具製造業、電気・ガス・熱供給・水道業・及び繊雑・衣科
  4. 出資民間企業の要件
    1. 経営者及び現場職員が、障害者雇用について理解と経験を有すること。具体的には、「重度の障害者」をはじめとする障害者の雇用経験がおおむわ3年以上であること。
    2. 経営が安定していること。具体的には、過去3年間の各年度において営業利益がマイナスとなっていないこと。
    3. 地域社会の産業、経済で大きな役割を果たしている企業であって、当該企業が、障害者雇用に積極的に取り組むことによって地域に大きな影響を及ぼすとみられること。
    4. 第3セクター企業の設立後においても、その経営の安定のために必要な措置を継続的に講ずることができる体制にあること。
  5. 設立企業規模
     規模については、選定された業種の事業運営に適する程度とするが、身体障害者多数雇用企業の基準が、「重度障害者」10人以上の雇用を対象としていること、一定数以上の健常労働者を採用する必要があること等から、企業設立時における常用労働者数は、業種により差異はあるが、20~60人程度とし、資本金については、おおむわ5千万円程度とする。
  6. 対象障害者
    第3セクター企業で雇用対象とする障害者は、
    1. 原則として県内に住居する者であること。
    2. 働く意志と能力を有し
    3. 常時雇用されることを希望する「重度障害者」とする。 「重度障害者」については、第3セクター企業が身体障害者雇用率適用上の特例的取扱いを受けること。また、設立に当たって雇用納付金制度に基づく助成金を有効に活用することから、障害等級が重度である障害者を中心とする。
       ただし、第3セクター企業は、現状では直ちに一般雇用に就くことが困難な障害者に対して雇用の場を提供するものであり.単に等級上の重度障害者に限るものでなく、職業能力の観点から重度をとらえ、一般に就職することが難しいとされる視覚、上肢、両上肢、脳性マヒによる肢体不自由者等の障害についても可能な限り対象とする。
  7. 採用人員
     第3セクター企業で雇用する障害者数は、作業場での危険性の配慮、職場における人事管理、健常者との意志の疎通・交流、企業の生産性及び地域社会との連携などを考慮し、障害者の採用人員については、雇用労働者の50%以上となるよう配慮し、雇用する障害者については、極力多くの障害部位から雇用することが望ましい。
  8. 募集・採用方法
     第3セクター企業管轄公共職業安定所を通し県下全般求人内容を周知し、併せて職業訓練機関、教育機関・福祉機関からも希望者を募り、選考の上採用する。
     なお、採用に当たっては、宮城心身障害者職業センターと連携を保ち、適切な選考評価を参考として、公平かつ総合的評価による採用に努める。
  9. 設置市町村
     第3セクターの業種に基づき、企業経営上の立地、通勤の便、医療機関の便等を総合して選定することとする。
     なお、設置市町村は、本事業に対する継続的、積極的協力体制を維持するため企業立地に際し、資本の出資及び役員の参加のほか、必要に応じて用地の確保、土地の造成、住宅の建設、交通の整備並びに設置住民の理解と協力が得られるよう、啓発活動に努める。
  10. 職務内容
     障害者の職務内容については、障害者の特性、職業能力及び健康面を配慮し、職業障害を極力軽減させるため、職務再設計、作業設備、治工具の改良等を勘案して、個々の職務を決定する。また、作業中における安全面の確保、能力発揮及び健常者との交流を促進させる観点から、障害者と健常者が常に協力して就労する態勢を確立し、紹介者のみ単独で就労する職場は極力避けること。
  11. 労働条件
     出資企業の労働条件に準したものとするが、障害者の職業能カに配慮したきめ細かなものとする。
  12. 労務管理体制
     第3セクター企業は、障害者雇用モデル事業所として、障害者の労務管理について適切な措置を講ずることのできる管理職の中から労務管理責任者(身体障害者職業生活相談員の兼任も可。)を選任し、その任に当たらせることとする。
     労務管理責任者は、障害者の職業生活全般についての相談、指導、援助に当たり、次の事項について必要な措置を行う。
    1. 適職の選定、能力の開発向上等職務内容に関すること。
    2. 施設・設備の改善等作業環境の整備に関すること。
    3. 労働条件、職場の人間関係等職場生活に関すること。
    4. 健康管理に関すること。
    5. 余暇活動、その他職場適応の向上に関すること。
  13. 能力開発・教育訓練体制
     能力開発は、企業において適材適所の配置を行った上、労務管理責任者を中心とした所要の組織体制を整備し、個別プログラムに基づき実施することが望ましい。
    教育訓練の実施に当たっては、障害者職業訓練施設、身体障害者更生援護施設等と連携をとり、障害者の能力開発についてのノウハウの導入を図ることも必要である。
  14. 必要とされる施設・設備
     第3セクター企業は、企業経営及び労働福祉の面から安定した経営の下での生きがいある就労の場でなくてはならない。
    従って、第3セクター企業の設立に当たっては、障害者の労働生産性を高め、障害者に適した職場を作ることを目的として、施設・設備等の物理的作業環境の改善、設備について十分配意すること。
    施設・設備の改善(別添「施設・設備改善の指針」参照)
    ・改善は、ノーマライゼ一ションの理念に基づき、その効用に共用性を持たせ、健常者にとっても効果があるように配慮すること。
    ・改善に当たっては、障害者の意見を取り入れるとともに、宮城県心身障害者雇用促進協会、宮城心身障害者職業センター等関係機関の協力を得て、その改善方法が雇用対象である障害者にとって最も望ましいものとなるよう努めること。
  15. 重度障害者雇用に関する啓発活動
     障害者の雇用を促進するためには、事業主をはじめとして広く一般県民の理解と協力を得ることが不可欠である。
    第3セクター企業は、重度障害者雇用モデル事業所として、宮城県及び関係機関の行う障害者雇用促進啓発事業に積極的に協カすることにより啓発活動を展開することとする
  16. 関係機関との連携方法
     第3セクター企業は、地域社会とのかかわりに十分配慮することが必要であり、円滑な企業運営を図るためにも、商工団体、公共職業安定所、教育関係機関、福祉関係機関との密接な連携を図るよう配慮することか望ましい。

第2節 就労の場の拡大

現状と課題

 重度障害者の雇用については、従来から雇用率制度上、優遇借置を講ずるなどして雇用の確保が図られてきましたが、障害の種類や程度等によっては一般雇用が困難な障害者も少なくありません。しかし、これらの障害者に対しても、個々の適正と能力に合った就労の場の提供や確保によって所得保障を図ることは、自立と社会参加への大きな役割を果たすものと考えられます。
 こうしたことから、就労の場として、各種の授産施設や福祉工場が設置されており、本県においては、平成4年4月現在で総定員893名の17施設が運営されており、今後ともこれら施設の適切な運営を推進する必要があります。
 施設の種類別整備状況をみると、身体障害者の授産施設及び精神薄弱者の入所授産施設は概ね充足されていると思われますが、精神薄弱者の通所授産施設については、二十人以上の定員規模が整備基準になっていることから、郡部における設置が進まず不足気味となっています。
 こうした中で、特に市町村を中心として整備が進められてきている、いわゆる小規模通所作業所が、地域における身近な就労の場として重要な役割を果たしております。この施設は、定員枠がないこと、入退所が容易なこと、身体障害者や精神障害者の受入れも可能なことなど、地域の実態に合わせた運営ができることから全国においても急速に増加しており、財政面での苦しさや職員の待遇等を含め、今後解決すべき課題が多いことも指摘されていますが、今後、この整備をさらに促進していくことが必要です。また、精神障害者についても通所授産施設の設置を促進して社会復帰を図ることが必要です。
 なお、こうした福祉的就労施設においては、仕事や作業の確保或いは製作品の販売等に支障を来している施設が多いことから、授産製品の開発や受注及び販路の拡大等を含めた支援が重要になってくると考えられます。

今後の方向

1福祉的就労の場の整備拡大

●一般企業等への雇用が困難な障害者については、地域社会の中で働き生活できるように、授産施設の整備を地域の適正配置を考慮しながら促進します。
 また、対象者が少なく整備が困難な地域においては、分場制度の活用や相互利用の導入についても制度の動向をみながら促進します。
 また、小規模作業所については、地域福祉の中心的役割を果たしていることから、その運営の適正化と内容の充実を図るため助成の拡大を検討していくとともに、適正な配置を促進します。

2就労体制の充実

●就労している障害者が独立した生活を営むため、生活指導をしながら住居を提供する通勤寮、福祉ホーム、グループホームなどの設置を促進します。

3通営の安定化

●授産施設や作業所の運営の安定を図るため、授産種目の開発や受注先や販路の拡大を促進するとともに、常時の販売店設置について検討をすすめます。

職親登録数及び委託状況

区分

年度

職親登録数

委託職親数

委託精神薄弱者数

県分 市分 県分 市分< 県分 市分
62 137人 41人 178人 17人 7人 24人 21人 8人 29人
63 141 41 182 15 7 22 21 7 28
138 41 179 15 7 22 21 7 28
2 138 44 182 15 8 23 21 8 29
3 142 38 180 14 8 22 20 8 28

(資料:県障害福祉課)

第3節 職業リハビリテーション体制の確立

現状と課題

 障害者の就業を促進するためには、雇用側に対する働きかけや就労環境の整備だけでは不十分であり、障害者自身がそのハンディキャップを克服し、それぞれの職業に対応できる能力を持つことが大切です。このことから、障害者の自立と社会参加を促進するうえで、職業能力開発ということが重要な意味をもつものとなっています。

 特に、現代社会においては、技術革新の進展や産業構造の変化を始め、職種の多様化等により、障害者の就労ということは、ますます困難な状況になっていますので、特殊教育学校部門での職業訓練を含め、こうした変化に対応できる能力をどのようにして持たせていくかが今後の大きな課題といえます。

 また、このことは、先天性の障害者の問題にとどまらず、今後ますます増大すると考えられる成人病や糖尿病等の疾病や交通事故による中途障害者にとっても、社会復帰のための重要な役割を果たしていくと思われます。

 本県においては、宮城障害者職業能力開発校や障害者職業センターにおいて障害者への職業能力開発が行われていますが、ニーズに対応した訓練内容の見直しをはじめ、重度障害者や精神薄弱者に対する拡充を促進するなど多様な対応が望まれます。そして、その際に大事なことは、障害の部分にとらわれて何ができないという視点ではなく、可能性に着目した何ができるか、あるいはできそうかという視点に立つことと思われます。

 なお、職業能力開発は、最終的に就労を目標としており、職業相談指導や職種・職域の拡大及び就労後の事後指導体制などを含めた一貫した流れの中でその役割を果たすことから、今後、関係機関との一層の連携のもとに、職業リハビリテーション体制の確立が望まれます。

今後の方向

1障害者職業能カ開発校等の充実

●障害者職業能力開発校においては、個々の障害の態様に配慮した施設・設備の改善を図るとともに訓練方法等の改善及び医療、福祉、職業安定等の関係機関と連携し、効果的な訓練の実施に努めます。

●障害者の職業訓練の分野においては、技術革新、情報化に対応した訓練ニーズも高くなってきていることから訓練内容の見直しを図ります。

●健常者とともに訓練を行うことが可能な障害者については、一般の公共職業能力開発校への入校が望ましいことから、施設整備を図りつつ入校を促進するとともに、精神障害回復者等の職業的自立と社会参加を推進するため、職業訓練を実施できるよう訓練体制の整備を推進します。

●養護学校生徒の職業生活に対する認識を深めさせるため、機能障害等の程度によって各訓練科で受入れる体験入校を充実します。

2職場適応訓練制度の活用促進

●障害者の雇用を促進するため、障害者の能力に適した作業に従事させ、職場環境への適応を図る職場適応訓練制度の充実を図るとともに、その活用を促進します。

3障害者職業センターとの連携強化

●就職が困難な精神薄弱者や精神障害者等を対象に、職業評価、職業指導、職業準備訓練、職業講習等を実施し、職業的自立に必要な生活指導から技術指導までを行う職業センターとの連携強化を図ります。

4関係機関の連携強化

●職業相談指導、職業能力開発から雇用の場の拡大及び雇用の安定を含めた一貫した対応を行うため職業関係機関同士の連携を図るとともに、教育や福祉部門との連携を密にし、総合的な職業リハビリテーション体制の確立を推進します。

第6章 福祉サービスの充実

第1節 生活安定のための施策の充実

現状と課題

 ノーマライゼーションの理念の普及に伴い、重度の障害を持っている人も、地域社会の中で自立したい、自立しようという機運が高まってきています。従来は、ややもすると障害の程度や種別、あるいはその障害を持つ人の周囲の人々の論理を優先して自立を決定してきたような状況もないとはいえません。

 しかし、近年は、そのひと自身の自立しようという意欲をもっと大切にしていこうという考え方になってきています。自立ということは、自分自身の生活の在り方を決定し、自らが望む生活目標や生活様式を選択しながら自分に適した生活全体の内容や質を高めていくことであり、そのためには、それを支える様々な施策を組み合わせた福祉援助を行っていくことが必要とされます。

 特に、生活基盤の安定の基本となる年金や福祉手当等の経済的保障を充実することが自立生活を営むための前提条件となりますが、現在、制度としては、各種社会保険制度としての障害基礎年金や公的扶助としての生活保護や各種手当等、或いは保護者亡き後の障害者の生活安定のための心身障害者扶養共済制度があり、今後ともこうした制度の保障水準を確保していくことが必要です。

 また、経済的負担を軽滅するための、公共料金の割引きや各種助成制度の充実・活用についても推進していくことが望まれますが、こうした制度等についても、県単独ではなかなか実現することが難しいものもあり、国や他の機関等との連携を図りながら進めていく必要があります。なお、こうした各種の制度については、その内容について県民への周知を図っていくことも大切です。

 このほか、障害者や老人の日常生活の自立を促進するとともにその介護を行う家族等の負担の軽滅を図ったり、就労や余暇活動等社会活動への参加を支援する様々な福祉用具の研究開発やその普及の促進についても、国や県・市町村及び事業者等一体となった取り組みが必要となっています。

今後の方向

1年金・手当等の充実

●障害者の生活安定に大きな役割を果たしている各種年金や手当等について、その充実を図るための見直しや改定について、今後も関係機関等との協議を進めていきます。

2各種制度等の周知

●複雑でなかなか理解しにくい各種年金や手当制度等をできるだけわかりやすく周知するため、障害の特性やニーズに対応した広報等に努めます。

3関連制度の充実

●税の控除や各種の割引制度等の充実と周知及び手続き等の簡素化に努めます。

4心身障害者扶養共済制度の充実

●心身障害者扶養共済制度の加入促進を図るとともに、制度の充実を図ります。

5各種助成制度の充実

●日常生活用具給付や医療費助成事業等各種助成制度の拡充に努めます。

6福祉用具の普及促進

●自立と社会参加の促進とともに、介護を行う家族等の負担の軽減を図るための福祉用具の普及促進に努めます。

重度心身障害者医療費助成の状況

区分

年度

対象者 受給者延件数 市町村助成額 県補助額 対前年比
62 16,612人 142,801件 690,956千円 345,440千円 118.6%
63 17,504 164,379 781,188 390,556 113.1
18,354 176,506 841,340 420,633 107.7
2 19,160 194,141 899,642 449,785 106.9
3 19,327 206,405 948,990 474,464 105.5

(資料:県障害福祉課)

第2節 在宅福祉サービスの充実

現状と課題

 福祉対策については、従来どちらかというと、保護を目的とした施設中心の施策が中心になっていましたが、国連・障害者の十年の取り組みやノーマライゼーションの理念の浸透により、障害者が地域社会の中で可能な限り自立した生活が送れるような在宅福祉サービスの強化が一層必要となっています。

 こうした動向を踏まえ、平成2年の福祉関連八法の改正により、身体障害福祉については、障害者の自立と社会経済活動の参加の促進が規定されるとともに、住民に最も身近な市町村でのきめ細かな在宅福祉サービスの提供体制の推進が方向付けられ、在宅福祉の中心的な、ホームヘルプサービス(家庭奉仕 員)、ショートステイ(短期入所)、デイサービスのいわゆる在宅三本柱も居宅生活支援事業としてまとめられ、総合的な市町村事業として新たなスタートを切ったところです。在宅福祉サービスは、これらの三本柱のみならず多くのメニューがありますが、障害の程度や種別あるいは発生の状況等によりそのニーズも多様化していることから適切な対応をすることが大切です。また、福祉サービスの実施にあたっては、老人福祉サービス等との連携による効果的な実施 を進めることも必要となってきます。

 精神薄弱福祉についても、ホームヘルプサービス、ショートステイ及びグループホームが精神薄弱者居宅生活支援事業として法定化され実施されていますが、これ以外のサービスメニューについても検討のうえ、在宅福祉サービスの充実を図っていく必要があります。

 また、福祉サービスが適切に行われるためには、資質の高い人材の確保とその有効な活用が不可欠な条件となっており、専門的な知識技能を有するスタッフの確保とボランティアの養成を老人福祉施策との連携の中で計画的に進めて行かなければなりません。

 今後、県としては、市町村及び関係機関・団体等との連携・協力のもとに福祉サービス提供体制の充実が推進されるよう図っていくことが大切です。なお、在宅福祉サービスにおいては、障害者自身に対するサービスはもとより、その家族に対する援助施策についても十分配慮していくことが必要です。

今後の方向

1在宅福祉サービスの充実

●市町村の在宅福祉サービス事業が進展するよう、身体障害者相談員、精神薄弱者相談員や民生児童委員等との連携を深め、利用対象者のニーズの把握に努めます。

2地域施設の有効利用

●ディサービスセンターなど地域において限られた施設を障害の区別なく利用できるよう制度の拡充を要望するとともに、老人福祉対策事業との連携を図り、より効率的な事業実施に努めます。

3制度についての周知

●様々な在宅福祉サービスについて、利用の拡大を図るため各種広報による事業内容の周知を図っていきます。

4ホームヘルパーの制度充実

●障害者の重度、高齢化に伴い、それを介護する家族の負担を軽滅するため、ホームヘルパーの養成を進めて市町村間の格差を是正するとともに、重度障害者だけにとどまらない範囲の拡大や休養・旅行等についても対応できるように図っていきます。

5ショートステイの充実

●在宅心身障害児者短期入所事業や身体障害者ショートステイ事業の周知を図り、制度の効果的な活用を促進します。

6デイサービスの充実

●入浴や機能訓練等のデイサービスについては、老人福祉施策との連携の中で、地域の実態に応じた家庭訪問や移動サービスなどの実施を図っていきます。

7単身障害者への支援

●地域において単身で生活している精神薄弱者、精神障害者の相談に応じ助言を与えるなど、地域生活に必要な支援を行うため、精神薄弱者等支援センターの設置を図ります。

8ボランティアの育成

●在宅福祉サービス充実の基盤となる県民のボランティア活動の多様な参加を促進するとともに、その育成・研修体制の充実を図ります。

9レスパイト・サービス(息抜き援助)の推進

●在宅心身障害児者を抱える介護者の心身の負担を軽減し、定期的な休養や息抜きの機会を与えるサービス(respite・service)の推進を図ります。

第3節 情報提供と相談体制の充実

現状と課題

 現在の情報化社会にあっては、様々な情報が溢れていますが、障害者が各種の情報を障害の有無にかかわらず確保することは、社会の一員としてのコミュニケーションの場を広げ、社会生活への多様な参加を可能にすることにつながるものでもあります。これまで、情報提供のための施設整備や手話通訳士の制度化が行われるなどの措置が講じられてきましたが、必ずしも正確でしかも迅速に十分な情報が提供されているとは言いがたい状況にあるようです。

 特に、視覚障害者や聴覚障害者の人々にとっては、その障害により、情報の収集やコミュニケーションの確保が特に困難であることから、点字や朗読テープ、手話通訳や要約筆記などの充実に努めてきていますが、今後とも、ボランティアの養成や情報のネットワーク化を促進し、障害者自身が、様々な情報の中から取捨選択して、その多様な可能性に挑戦する機会を十分確保するとともに、より多くの人々とのコミュニケーションが図られるようにすることが大切です。

 また、情報の確保とともに、自立のための更生相談や生活上の諸問題等について、適切な相談・指導が必要です。現在、福祉行政機関や各種相談員等によって行われていますが、障害者のニーズの多様化や社会環境の変化に伴った相談機能の強化を図る必要があり、また、関係機関同士の緊密な連携も適切な対応のためには不可欠なものといえます。

点字録音図書整備の状況

年度

区分

62

63

2

3

(1)
点字図書

増冊

837冊

723冊

653冊

697冊

698冊 

年度末蔵書数冊

21,893冊

22,616冊

23,269冊

23,966冊

24,664冊 

利用者数

延2,776人

延2,494人

延2,346人

延1,948人

延1,923人 

利用冊数

8,513冊

7,264冊

7,646冊

7,135冊

6,717冊 

(2) 録音図書

増巻

1,669巻

1,694巻

1,520巻

1,379巻

1,432巻

年度末増巻数 

18,200巻

19,894巻

21,414巻

22,793巻

24,225巻

利用者数

延4,390人

延3,939人

延3,751人

延3,062人

延3,008人

利用巻数

36,307巻

34,041巻

31,785巻

28,692巻

27,323巻

(資料:県障害福祉課)

今後の方向

1情報提供のためのボランティアの養成

●手話通訳者・手話奉仕員・要約筆記奉仕員・朗読奉仕員・点字奉仕員等の養成を促進します。また、ピアカウンセリングを障害者の活動の場に配置するよう図っていきます。

2障害種別に対応する情報の確保

●聴覚障害者に対する補聴器等の補装具や日常生活用具の充実を図るとともに、FAXの普及やFAXによるサービス及び字幕入りビデオライブラリーの充実に努めます。また、公共機関のテレビでの広報においては、手話や字幕を導入して情報提供の充実に努めます。
●視覚障害者に対する点字図書や録音テープの提供などを行うとともに、情報提供のために開発されている、音声変換システムの導入など様々な福祉機器について、その紹介と普及等を図ります。

3地域での情報確保の体制づくり

●地域での情報を確保するため、市町村や関係団体間との連携を強化し、拠点づくりとネットワーク化を促進します。
4情報センターの拡充・整備
●点字図書館の点字図書や録音図書の一層の整備充実を図るほか、聴覚障害者の情報提供施設の整備を図り、障害を持つ人々とボランティアの拠点づくりを推進します。また、総合的な情報提供や相談機能をもつ施設の整備についての検討を進めます。

5情報ガイドブックの作成

●福祉に係わる情報に限らず、生活全般にわたる情報等を、生活情報ガイドブックや障害福祉制度ガイドブックとして作成し、その提供を図ります。

6相談体制の充実

●適切な相談・指導が行えるよう、関係職員や各種相談員の研修を強化するとともに、専門的相談機能をもつ障害者団体の活性化と関係機関の連携を図り、相談体制の充実を図ります。

第7章 生活環境の整備

第1節 やさしいまちづくりの推進

現状と課題

 障害者が地域社会の一員として、自立した生活を送り社会参加を図っていくには、障害者を取り巻く生活環境を整備していくことが不可欠です。そして、障害者の利用に配慮した生活環境は、誰にとっても利用し易いものとなり、それは高齢化社会に対応することにもつながるものです。

 生活環境の整備については、これまでも障害者や高齢者等にやさしいまちづくりを目的とした「住みよい福祉のまちづくり」事業や「障害者と共に歩む地域づくり」事業を市町村を主体として実施し、その整備が図られています。また、公的機関の設置するものについては、かなり障害者や高齢者に配慮した整備がなされていますが、民間等のものについては、まだまだ理解がなされず必ずしも十分に配慮されていないことから、今後は、行政だけの取り組みだけでなく、企業や地域全体の理解の中で、総合的に進めていく必要があると考えられます。

 生活環境の整備と併せ、その生活の拠点となる住宅の確保も自立生活への基本的条件のひとつです。これまでも、障害者用の住宅の整備を始め、優先入居の取扱いや生活福祉資金貸付制度による住宅の改造費の賃付等の施策を行ってきましたが、障害の種別によりそのニーズが多様なこともあり十分な対応ができていない状況です。

 また、賃貸の住居についても、障害者に対する理解の不十分さ等のため、民間借家の利用を拒まれることも少なくないことから理解を求めていく必要があります。なお、精神薄弱者や精神障害者に対する住居の確保が困難な状況にあることから、グループホームなどの拡充を図ることや自立した生活を望む障害者のための「ケア付住宅」等の整備とそれを支援するためのマンパワーのネットワーク作りなどを進めることも必要です。

今後の方向

1やさしいまちづくりの推進体制の整備

●障害者や高齢者にやさしいまちづくりを推進していくためには、障害を持つ人々も参加する推進協議会の設置やまちづくりモニター制度などを設置するよう努めるとともに、街づくり条例の制定についても検討します。

2まちづくりの推進

●「住みよい福祉のまちづくり事業」や「障害者とともに歩む地域づくり推進事業」を継続的に推進するため、市町村と連携を深めその支援に努めます。

3公営住宅の整備等の促進

●障害者の利用に配慮した公営住宅の整備促進に努めるとともに、公営住宅の優先入居及び公的住宅金融の助成制度の利用促進に努めます。

4グループホーム等の拡充・確保

●地域社会の中にあるアパートや一戸建等の住宅において数人の障害者が共同で生活し、専任の世話人により日常的生活援助が行われる「グループホーム」事業の拡大を図ります。また、「ケア付住宅」等の確保についても、市町村での体制づくりを促進していきます。

第2節 移動手段の確保

現状と課題

 移動におけるハンディキャップの軽減を図るとともに移動交通手段等を確保することも、障害者の就労を始めとする社会活動への参加や行動範囲の拡大のために必要となっています。

 移動手段として、特に車が大きな役割を果たしていることから、身体障害者の自動車取得を促進するための自動車運転免許取得訓練や教習用改造自動車の配置を行っているほか、自動車改造費の助成等によりその確保を図っています。

 また、JRやバス等の公共交通機関においては、車両や駅等の設備の改善が行われており、今後、その利用形態や方法等についても整備改善していくことが必要と思われます。その際に注意しなければならないのは、駅等においての整備が進められても、そこに行くまでの移動体制の整備が図られていなければその実効性がないということであり、そうした意味から、社会全体での整備のあり方についての対応が求められことになります。

 こうした、施設設備面での整備の推進とともに大事なことは、そうした場所への社会参加を目指した障害者の積極的な利用であり、それによって、問題点が指摘され、より利用し易く適切なものになっていくものと思われます。

 また、その利用を支えるマンパワーの確保も大切であり、現在行っている身体障害者の外出時の付添いを専門に行うガイドヘルパーの利用や、その移動が長距離にわたる場合に目的地において必要となるガイドヘルパーを確保するためのネットワークの整備を図ることも必要となってきます。

 今後は、こうした事業の進展を図るとともに、リフト付きバスの運行やリフト付タクシーの配備などきめ細かな施策についても市町村単位で推進していくことが望まれます。

今後の方向

1道路等交通施設の整備

●障害者が安全に通行できるようにするため、歩道の段差解消・視覚障害者用信号機の増設・点字ブロックの敷設を進めるとともに、歩道上にある障害物の除去等による安全施策を推進します。

2公共建築物等の改善整備

●公共建築物等が容易に利用できるよう、新設の際は車いす用スロープ、エレベーター、障害者用トイレなどの施設整備を促進します。また、既存の施設については現状の点検を行い改善整備について要請を行っていきます。

3移動手段の確保

●身体障害者の自家用自動車取得を進めるための自動車運転免許取得訓練、教習用改造自動車の配置や自動車改造費の助成等を充実していきます。また、リフト付タクシーやバスの整備の促進ための支援を行っていきます。

4移動支援の充実

●外出時の付添いを行うガイドヘルパーの利用拡大を促進するとともに、そのネットワークの整備に努めます。

5各公共交通機関の整備促進

●それぞれの公共交通機関において障害者が容易に利用できるよう、乗降設備や表示方法などの障害者に配慮した改善・整備について要請していきます。

6ガイドマップの作成

●社会参加を促進するため、県内の各種施設の障害者用設備の設置状況やその経路等を明示したガイドマップの作成を進めます。

第3節 防災・緊急時の対応

現状と課題

 障害者が、安心して地域社会で生活を送るためには、火災や地震等による災害時における情報の収集伝達や避難誘導等が迅速かつ適切に行われ、その安全が確保される必要があります。

 これまでは、入所者の安全のための施設へのスプリンクラーの設置等の防災設備の充実や、施設とその周辺住民との緊急時の対応対策等に重点が置かれてきました。

 今後は、重度や高齢の入所者の増加が進んでいることから、引き続き施設の防災体制の充実を進めるとともに、障害を持つ人々や高齢者が在宅で生活することが多くなることから防災及び災害時の体制の確立がより重要になってきます。

 本県では、市町村が実施主体となり、昭和63年度よりひとり暮らし老人について、また、平成元年度からは在宅の重度身体障害者に緊急通報装置(ペンダント等)を給付又は貸与することにより、急病や災害時の緊急時の際に協力員を派遣する、「緊急通報システム事業」を行っており、今後ともこのシステムの拡大を進めるとともに、地域住民の協力体制を充実させていくことが効果的な対策です。

 また、障害者に対する防災・防犯知識の普及を図ることや、地域住民による緊急時の障害者への援助体制確立も大切であり、そのためには、地域の障害者の把握とその人々に対する緊急時の伝達方法や避難方法あるいは防災情報の伝達などについて、日頃から取り組んでいくことが必要となってきます。

急通報装置整備

年度

区分

2 3
設置市長村数 11市長 17市長 22市長
設置台数 19台 39台 58台

(資料:県障害福祉課)

今後の方向

1防災設備の充実と緊急時の対応

●施設における防災設備の一層の充実と避難体制の確立のため指導を強化していきます。また、在宅の障害者に対する防災・避難知識の普及に努めるとともに、緊急時における地域住民との協力体制の確保を図っていきます。

2緊急時の通報体制の充実

●緊急通報システムの普及、充実、強化に務め、地域の協力員や関係機関の協力により緊急時の通報、支援体制の強化を図ります。

3救援体制の充実

●地域における防災訓練等に障害を持つ人々の積極的な参加を求め、日頃から具体的な救援体制の整備を促進します。また、地域内に住む障害者の状況を常に把握することに努めます。

緊急通報システム

緊急通報システム図

第8章 生きがいの創造

第1節 文化活動やレクリエーションの参加促進

現状と課題

 障害者が社会参加していく中で、いろいろな文化活動やレクリエーション活動を行うことは、喜びや生きがいの創造へとつながっていくことになります。

 多くの障害者は、これらの活動に参加したいと希望していますが、様々な制約を受け、活動が出来ないことや不十分な場合が少なくないことから、そうした人々の意欲を尊重し、行われている様々な文化活動やレクリエーション活動に参加できるように、情報を提供したり、参加しやすいような配慮を行うとともに、県民みんなが参加し楽しめる機会をつくっていく必要があります。

 これらの活動は、各施設の余暇活動として、また、心身障害者福祉センターでの活動を通じて行われているほか、市町村をはじめ各福祉関係団体の主催でも行われており、今後はよりこれらの連携を深め、活動を支援していくことが求められています。

 また、障害者が趣味や教養を高めるための社会教育の分野においては、社会教育施設の利用に際しての条件整備を図ることや学習機会の拡大や内容の充実についても配慮していくことが必要です。

 なお、こうした活動を進めるに当たっては、健常者側からの一方的な取り組みによることなく、同じ社会の中の一員として、障害者と共に企画立案したり、参加していくことが、大切なことといえます。

今後の方向

1各種活動への参加促進

●障害者の参加を促進するために、その情報や利用方法等に関する広報活動の展開を促進します。

2文化活動の紹介と発表の場の確保

●障害を持ちながら活躍している人々を、積極的に招聘・紹介するとともに、展示会やコンサートなどの発表の場の確保に努めます。

3レクリエーション施設の充実

●レクリエーションや文化活動を行える各種施設の内容充実を図ります。また、レクリエーションを行える保養機能を持った施設の整備を進めます。

4社会教育の充実

●障害者の学習機会の拡大と学習内容の充実のため、生涯学習の立場からの指導援助を図り、社会教育施設や社会教育事業の改善整備を図っていきます。

第2節 スポーツの振興

現状と課題

 障害者のスポーツについては、これまで機能回復訓練としてのリハビリテーションとして捉えられがちで、その普及や内容については十分な体制となっていない状況です。

 スポーツに取り組むことは、体力の向上や健康増進を始め、自己の可能性を追求する生きがいとして、また、共通の競技を通しての仲間作りとしても重要な意味をもつものとなっていることから、より多くの障害者が楽しめ参加できるスポーツ活動のための場の確保や環境づくりを推進していく必要があります。

 また、このことは、スポーツを通して一般の人々との交流や相互理解を深めることにもつながっていくものと思われます。

 これまで障害者のスポーツ振興を図るため、身体障害者のスポーツ教室や体育大会等の開催を始め、スポーツ指導員の養成などを行っていますが、更にこれらの充実を図っていく必要があります。

 特に、本県においては、平成13年の国民体育大会に引き続き、全国身体障害者スポーツ大会が開催されることになっていることから、今後、スポーツ施設の整備を始めとして、指導員やボランティアの養成などの計画的な体制づくりを全県的な取り組みで行っていくことが求められます。

 また、精神薄弱の人達のスポーツについては、これまで特に取り組みがなされて来ませんでしたが、平成4年度において、第一回の全国精神薄弱者スポーツ大会が東京都で開催され、順次、各道府県で開催される予定となっていることから、全国大会への派遣に向けた取り組みを強化していく必要があります。

全国身体障害者スポーツ大会派遣実績

年度

区分

63

2

3

4

回数・開催地

第24回京都市

第25回札幌市

第26回福岡市

第27回金沢市

第28回山形市

参加選手

25人

19人

11人

11人

10人

参加種目

29

 20

 11

21

14

成績

金メダル 4

銀メダル 7

銅メダル 8

金メダル 5

銀メダル 2

銅メダル 6

 金メダル 5 

銀メダル 3

銅メダル 5

金メダル 4

銀メダル 6

銅メダル 5

 金メダル 3 

銀メダル 1

銅メダル 4

(注)元年度から仙台市分除く   (資料:県障害福祉課)

今後の方向

1各種スポーツ大会の開催

●身体障害者体育大会や愛護体育祭などの各種スポーツ大会の継続的な実施を支援し、特に、東北水泳選手権大会の発展に努めます。

2各種スポーツ大会への派遣

●各地で開催されるスポーツ大会等への参加を促進するとともに、全国大会の派遣へ向けた取り組みの強化を図っていきます。

3平成13年全国身体障害者スポーツ大会へ向けた取り組み

●障害者スポーツ指導員や各種ボランティアの養成及び研修を計画的に行って、大会開催に向けた取り組みを図っていきます。また、各スポーツ団体の強化と障害者スポーツ協会の財団化を推進して、大会に向けた体制づくりを行います。

4精神薄弱者スポーツの振興

●全国精神薄弱者スポーツ大会の派遣に向けた取り組みの強化を図っていきます。

5レクリエーションスポーツの振興

●多くの障害者が楽しめ参加できるレクリエーションスポーツの振興を図るため、その普及と指導者の養成を進めます。

6スポーツ施設の整備

●一般のスポーツ施設の整備に当たっては、障害者の利用やアクセスに配慮するよう働きかけていきます。また、障害者スポーツの拠点となるスポーツセンターの設置について検討を進めます。

障害者スポーツ振興の計画概要

障害者スポーツ振興の計画概要図

第9章 施設の充実と連携強化

第1節 施設の整備充実

現状と課題

 施設福祉は、障害者のライフステージに対応して、必要な時期に適切な治療や療育及び訓練等を行うことによって障害の除去や機能の回復・改善を図ったり、また、社会生活に適応するための指導訓練を行うほか、生活施設としての役割を持つものもあり、障害の種別や程度に合わせた対応がなされています。

 施設の整備は、特に昭和40年代から促進され、中でも昭和46年からの「社会福祉施設緊急整備計画」による重点整備により量的な拡大が図られました。その後、財政的な伸び悩みをはじめ、国際障害者年を始めとする「国連・障害者の十年」の基盤となるノーマライゼーションの理念は、施設中心の福祉から在宅福祉の充実への転換を推進するものとなりました。

 また、現実的な問題としては、21世紀に向けての高齢化社会の進展は必然的に中途障害者を多く生み出すことが予想され、老人を含めた障害者対策を拡充しなければならなくなりますが、施設中心による対応では限界があることから、在宅福祉での対応ということが今後ますます必要になってくると考えられます。

 しかし、施設福祉と在宅福祉との関係については、本来どちらか一方にのみ偏ることなく、両方のそれぞれの機能があいまってはじめて総合的な福祉対策が組み立てられるものであり、施設従事者の施設での経験に基づいて得た処遇技術等については、在宅福祉サービスへの活用において非常に有効なことからショートステイやデイサービスなどの在宅福祉サービスと施設福祉サービスの一体化は福祉全体の機能強化の役割をも担うものと考えられます。したがって両者が有機的連携を保ちつつ相互に役割を補完し合っていくことが大切なことと思われます。

 今後、障害者のニーズが多様化する中で、施設整備を進めるにあたっては、現状の施設の実態と障害者の動向を充分把握して、障害者のライフステージや障害の程度に応じた体系的なものにするとともに地域配置を考慮して整備していくことが求められます。

 本県における施設整備は、施設種類ごとに概ね整備されてきましたが、障害者の就労・社会参加ニーズの増大、養護学校卒業生の増加、障害の重度・重複化傾向、入所期間の長期化及び出生率の低下等の状況の中で個々のあり方を検討し、必要とされる施設については今後とも計画的な整備を行う必要があります。

本県の障害福祉状況

児童福祉施設

名称

目的

施設・定員数
肢体不自由児施設 ・上肢、下肢又は体幹の機能に障害のある児童を治療するとともに独立自活に必要な知識・技能を与える。 1か所

165

精神薄弱児施設 ・精神薄弱時を入所させて保護するとともに、独立自活に必要な知識技能を与える。 4か所

400

精神薄弱児通園施設 ・精神薄弱時を保護者のもとから通わせて保護するとともに、独立自活に必要な知識・技能を与える。 5か所

150


身体障害者更生援護施設

名称

目的

施設・定員数
肢体不自由者更生施設 ・肢体不自由者を入所させて、その更生に必要な治療及び訓練を行う。入所期間は原則として一年間。 1か所

30人

内部障害者更生施設 ・内臓の機能に障害のあるものを入所させて、医学的管理の下にその更生に必要な指導及び訓練を行う。入所期間は原則として一年間。 1か所

40人

身体障害者療護施設 ・身体障害者で、常時の介護を必要とするものを入所させて、治療及び養護を行う。 4か所

245人

重度身体障害者授産 ・重度に身体障害者で、雇用される事の困難なもの等を入所させて、必要な訓練を行い、職業を与えて自活させる。 3か所

220人

身体障害者福祉工場 ・重度の身体障害者で、作業能力はあるが職場の設備、構造、通勤時の交通事情等のため一般企業に雇用される事の困難なものに職場を与え、経済的・社会的自立を図る。 1か所

100人

身体障害者通所授産 ・雇用される事の困難な者等で、通所によっても更生効果が得られるものに必要な訓練を行い、職業を与え自立させる。 2か所

60人

身体障害者福祉ホーム ・家庭において日常生活を営むのに支障のある身体障害者に対し定額な料金で居室その他の設備を利用させる。 1か所

20人

身体障害者福祉センター ・身体障害者の各種の相談に応じ、機能訓練・教養の向上、社会との交流の促進及びレクリエーションのための便宣を総合的に提供する。 3か所

-

視聴覚障害者情報提供 ・無料又は低額な料金で、視聴覚障害者が利用するものを制作し、又は利用に供する。 1か所

-


精神薄弱者援護施設

名称

目的

施設・定員数

精神薄弱者更生施設

・18歳以上の精神薄弱者を入所させて保護するとともに、その更生に必要な指導及び訓練を行う。 17か所

1,200人

同上(通所)

・18歳以上の精神薄弱者を通所させて保護するとともに、その更生に必要な指導及び訓練を行う。 3か所

80人

精神薄弱者授産施設

・雇用されることの困難な精神薄弱者を入所させて自活に必要な訓練を行うとともに職業を与えて自活させる。 3か所

200人

同上(通所)

・雇用されることの困難な精神薄弱者を通所させて自活に必要な訓練を行うとともに職業を与えて自活させる。 7か所

311人

精神薄弱者通勤寮

・就労している15歳以上の精神薄弱者に対し、居室その他の設備を利用させ、独立自活に必要な助言及び指導を行う。 1か所

20人


 

名称

目的

施設・定員数

精神障害者社会復帰施設

精神障害者通所授産施設 ・雇用されることの困難な精神障害社が自活することができるように低額名料金で必要な訓練を行い、及び職業を与える。 2か所

56人

(平成4年4月1日現在)

今後の方向

1精神薄弱児施設

●施設の整備は概ね充足されているが、出生率の低下等に伴い入所児童が減少傾向となっているが、18歳以上の適齢児の割合が高く、障害の程度も重度化していることから、質的な面の改善と合わせ、者の施設への一部転換を促進します。なお、平成5年に新たな県立精神薄弱児施設と船形コロニー高齢者棟の完成により、「亀亭園」と「小松島学園」の18歳以上の適齢児入所が解消されることとなるが、この新たな施設については、県内の中核施設としての機能の充実に努めます。

2精神薄弱児通園施設

●養護学校制度の発足を始め、出生率の低下や地域の人口流出等により通園児童の減少が続いていることから、低年齢児の受入れを促進して地域の早期療育の中心的施設としての機能の充実を図るとともに、通所授産施設等の併設などについて検討を進めます。

3肢体不自由児施設

●近年の入所児の障害の重度・重複化に対応した療育機能の充実を図るとともに、通所や外来診療の重視や巡回相談の実施等を含めた、障害児の総合療育センターとしての整備を図ります。

4肢体不自由者更生施設

●高齢化の進展に伴ってその役割が増加すると考えられるので、障害者となった時点から社会復帰までに必要な訓練及びサービスを実施するとともに、相談、判定機能や就労指導を併せもつ、総合リハビリテーションセンターとしての整備を図ります。

5身体町害者療護施設

●障害の重度化や障害者の高齢化により、入所の長期化傾向が一層進むと予想されることから、入所者の健康管理体制の確立を図るとともに、その生活に関しては、ノーマライゼーションの理念に沿った処遇を行います。

6身体障害者授産施設

●障害者の福祉的就労の場として、今後とも地域の適正配置を考慮した整備の促進を図るとともに、利用者の処遇や施設経営等についてのあり方を検討のうえ改善を進めます。

7精神薄弱者更生施設

●入所者の重度化・高齢化により長期入所の傾向が続いていることから、既存の施設については、それに対応した指導・訓練や健康管理の体制の充実を図ります。また、就労の促進とともに就労後のケアの充実を図ります。新たな整備については、待機者の動向を踏まえて促進を図ります。

8精神薄弱者授産施設

●更生施設との関連を踏まえながら、地域福祉を基本にした整備を促進します。

9小規模作業所

●地域のニーズに対応して整備が促進されてきており、内容の充実を図るとともに運営基盤の確立のため助成の拡大と設置の促進を図ります。

10精神障害者社会復帰施設

●精神障害者の社会復帰を促進するための生活訓練施設としての援護寮や福祉ホーム、共同住居など精神障害者の自立促進と障害者・その家族の高齢化からも、整備促進に積極的に取り組むとともに、就労訓練施設としての授産施設、小規模作業所等施設の整備も併せて促進します。

第2節 施設機能の強化と開放

現状と課題

 近年のノーマライゼーションの理念が浸透する中で、施設入所者の重度化や長期化及び高齢化等の状況の変化により、施設の整備のあり方とともにその機能についても問われることとなっています。

 障害者が地域の中で普通の生活を送ることができる社会の実現が目標ですが、施設への入所による対応とならざるを得ない場合もあります。しかし、施設においても、ノーマライゼーションの理念に基づいた出来る限り普通の生活が求められるものであり、そのためには、障害者の人権に配慮し、自由やプライバシーを保障した生活の実現を進めていくことが必要と思われ、施設の機能の充実とともに、処遇のあり方についても検討していくことが大切です。

 また、施設は、単に入所者を対象としてその機能を活用するだけでなく、在宅の障害者が出来るだけ地域の中で生活できるようにするために、施設の持つ専門的な療育・指導機能の活用を図るとともに施設の開放など地域社会の中の福祉活動の拠点施設として機能することが望まれています。これは、施設が地域の中で孤立せず、その存在を理解、活用してもらうことによって、入所者の社会参加が図られることとなりますし、また、在宅障害児・者のためのデイ・サービスやショートステイなどの在宅福祉サービスの推進へとつながっていくものと考えられることから、こうした施設及び施設機能の開放ということも、今後推進される必要があります。

今後の方向

1地域交流の促進

●施設のもつ設備等を積極的に地域社会に開放するとともに、施設と地域が相互にそれぞれの行事への参加や地域住民のボランティアの受け入れなどを行い地域社会・住民との交流の促進を図り、互いの理解を深めます。

2施設機能の開放

●施設の専門的機能を地域の在宅障害者のために開放し、それぞれの施設間の機能の連携を図り、療育相談、短期入所・療育、機能訓練などの事業を推進します。

●施設のもつ専門的知識と技術を活かし、地域の人々を対象とした介護相談、指導等を行う施設機能強化推進事業を全施設で実施できるよう促進するとともに、市町村の実施する居宅生活支援事業に施設のもつ機能の活用を図ります。

3老人在宅福祉事業との連携

●身体障害者デイサービス事業や短期入所事業については、市町村における実施体制の整備を図るとともに、老人デイサービス事業やショートステイ事業との相互利用の促進を図ります。

4職員研修体制の充実

●施設入所者の人権に配慮した処遇の充実と施設の地域への開放を図るため、その中心となる施設職員の研修体制を強化し専門的な処遇技術を身につけた資質の高い職員の養成を図ります。

身体障害者短期入所事業実施状況

年度

区分

実施市町村数 31 市町村 32 市町村

35 市町村

利用市町村数 7 市町 8 市町

14 市町村

利用延日数 234 日 601 日

588 日

(注)仙台市分を除く (資料:県障害福祉課)


主題:
宮城県障害福祉長期計画 No.2 48頁~99頁

発行者:
宮城県保健福祉部障害福祉課

発行年月:
平成5年3月

文献に関する問い合わせ先:
仙台市青葉区本町3丁目8番1号
宮城県保健福祉部障害福祉課
TEL 022-211-2539