音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

宮城県障害福祉長期計画

No.1

「ぜんたい幸福」を求めて

宮城県

項目 内容
立案時期 平成5年3月
計画期間 平成5年度~平成14年度(10年間)

平成5年3月

はじめに

 障害をもつ人々に対する施策の推進については、 昭和57年からの
「国連・障害者の十年」の取り組みにより それぞれの分野で成果が
上げられてきたところですが、 その最終目標である「完全参加と平等」には
まだまだ不十分であると言わざるを得ません。

 しかし、この十年の流れの中で、 障害をもつ人々の意識の向上や
社会参加の促進が図られるとともに、 ノーマライゼーションの
理念の浸透や自立への支援策が講じられてきており、
今後とも一層各種施策の計画的推進を図っていくことが必要です。

 本県では、昨年が「国連・障害者の十年」の最終年にあたり、
宮城県としての障害福祉の基本理念を定め、障害をもつ人々の
さまざまな問題解決に県民みんなで取り組んでいくため
「宮城県障害福祉憲章」を制定したところであり、この憲章の理念の
具体の実現に向け、 今般、新たな十年に向けた
「宮城県障害福祉長期計画」を策定したものです。

 本計画を推進していくためには、県はもとより、市町村・民間及び
県民一人ひとりの 正しい理解と協力が不可欠であります。
特に、市町村においては、福祉八法の改正により 在宅福祉のサービスの
提供が行われることとなったことから、障害をもつ人々に対する
各種の施策の実施やその二ーズにきめ細かく対応していくことが求められており、
本計画に沿った施策展開を連携しながら進めていくことが大切です。

 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」
という宮沢賢治のことばがあります。
障害をもつ人々の人権を保障し、 同じ社会の一員としての理解のもとに、
「完全参加と平等」の実現に向けて 一歩ずつ着実に実践していくことが、
すべての人々にとっての 住みよい社会づくりにつながっていくに違いありません。

 今後は、この計画を本県における障害福祉の基本指針として、
「ぜんたい幸福」に向けて、 県民の皆様と一緒に取り組んでまいりたいと
考えておりますのでご理解とご協力をお願い申し上げます。

目次

宮城県障害福祉長期計画施策体系

  • 障害・障害者に対する正しい理解の促進
  • 1啓発広報活動の推進
    • 1「宮城県障害福祉憲章」の普及推進
    • 2定期的啓発広報活動の充実
    • 3各自治体における啓発広報活動の充実
    • 4各種イベントの開催
    • 5実態把握と公聴活動の推進
  • 2福祉教育と交流の推進
    • 1学校教育における福祉教育の推進
    • 2交流教育の推進
    • 3地域における福祉教育の推進
    • 4交流の促進
  • 保健・医療の充実
  • 1障害の発生予防の充実
    • 1健全母性育成事業
    • 2健康の自己管理
    • 3遺伝相談体制の整備
    • 4妊産婦の健康診査・保健指導
    • 5成人保健対策の推進
  • 2障害の早期発見・療育の椎進
    • 1各種検査の充実
    • 2健康診査、事後指導
    • 3療育相談指導体制の確立
    • 4在宅療育指導の推進
    • 5施設の療育機能の充実
    • 6関係者・保護者の研修等の充実
    • 7早期発見、早期指導、早期教育体制のシステム化
  • 3医療体制の充実
    • 1保健医療体制の充実
    • 2臓器等の移植の推進
    • 3難病対策
    • 4在宅心身障害児者への保健・医療の確保
    • 5障害児者の歯科医療の確保
    • 6リハビリテーションシステムの確立
    • 7精神科医療対策
  • 4精神保健対策の充実
    • 1妊婦・周産期、乳幼児対策
    • 2学童期、思春期、青年期対策
    • 3成年期対策
    • 4老年期対策
    • 5精神障害者社会復帰対策
    • 6精神保健センターの拡充
    • 7精神保健相談、指導の充実
    • 8家族会等の育成充実
    • 9薬物乱用対策
  • 教育・育成の充実
  • 1教育内容の充実
    • 1就学相談・指導体制の充実
    • 2施設設備の整備充実
    • 3教育方法・内容の充実
    • 4特殊教育センターの機能充実
    • 5早期教育の充実
  • 2進路体制の確立
    • 1後期中等教育体制の充実
    • 2職業教育の充実
    • 3進路の拡大
  • 雇用・就労の促進
  • 1雇用の促進
    • 1雇用率達成指導の推進
    • 2職業紹介業務の充実
    • 3障害者雇用促進啓発活動の展開
    • 4重度障害者等の雇用対策の推進
    • 5精神薄弱者・精神障害回複者の雇用対策の推進
  • 2就労の場の拡大
    • 1福祉的就労の場の整備拡大
    • 2就労体制の充実
    • 3運営の安定化
  • 3職業リハビリテーション体制の確立
    • 1障害者職業能力開発校等の充実
    • 2職場適応訓練制度の活用促進
    • 3障害者職業センターとの連携強化
    • 4関係機関の連携強化
  • 福祉サービスの充実
  • 1生活安定のための施策の充実
    • 1年金・手当等の充実
    • 2各種制度等の周知
    • 3関連制度の充実
    • 4心身障害者扶養共済制度の充実
    • 5各種助成制度の充実
    • 6福祉用具の普及促進
  • 2在宅福祉サービスの充実
    • 1在宅福祉サービスの充実
    • 2地域施設の有効利用
    • 3制度についての周知
    • 4ホームヘルパーの制度充実
    • 5ショートステイの充実
    • 6デイサービスの充実
    • 7単身障害者への支援
    • 8ボランティアの育成
    • 9レスパイト・サービスの推進
  • 3情報提供と相談体制の充実
    • 1情報提供のためのボランティアの養成
    • 2障害種別に対応する情報の確保
    • 3地域での情報確保の体制づくり
    • 4情報センターの拡充・整備
    • 5情報ガイドブックの作成
    • 6相談体制の充実
  • 生活環境の整備
  • 1やざしいまちづくりの推進
    • 1やさしいまちづくりの推進体制の整備
    • 2まちづくりの推進
    • 3公営住宅の整備等の促進
    • 4グループホーム等の拡充・確保
  • 2移動手段の確保
    • 1道路等交通施設の整備
    • 2公共建築物等の改善整備
    • 3移動手段の確保
    • 4移動支援の充実
    • 5各公共交通機関の整備促進
    • 6ガイドマップの作成
  • 3防災・緊急時の対応
    • 1防災設備の充実と緊急時の対応
    • 2緊急時の通報体制の充実
    • 3救援体制の充実
  • 生きがいの創造
  • 1文化活動やレクリエーションの参加促進
    • 1各種活動への参加促進
    • 2文化活動の紹介と発表の場の確保
    • 3レクリエーション施設の充実
    • 4社会教育の充実
  • 2スポーツの振興
    • 1各種スポーツ大会の開催
    • 2各種スポーツ大会への派遣
    • 3平成13年全国身体障害者スポーツ大会へ向けた取り組み
    • 4精神薄弱者スポーツの振興
    • 5レクリエーションスポーツの振興
    • 6スポーツ施設の整備
  • 施設の充実と連携強化
  • 1施設の整備充実
  • 1精神薄弱児施設
  • 2精神薄弱児通園施設
  • 3肢体不自由児施設
  • 4肢体不自由者更生施設
  • 5身体障害者療護施設
  • 6身体障害者授産施設
  • 7精神薄弱者更生施設
  • 8精神薄弱者授産施設
  • 9小規模作業所
  • 10精神障害者社会復帰施設
  • 2施設機能の強化と開放
  • 1地域交流の促進
  • 2施設機能の開放
  • 3老人在宅福祉事業との連携
  • 4職員研修体制の充実

第1章 総論

第1節 計画の基本的事項

1計画策定の趣旨

  障害者に対する本格的な行政的対応は、1949年(昭和24年)の
身体障害者福祉法の制定により始められ、その後、精神薄弱者福祉法
(昭和35年)や心身障害者対策基本法(昭和45年)等関係法令の整備を基本として
推進されてきましたが、どちらかといえば施設福祉の充実による展開が 図られてきたと言えます。

 こうした中で国際連合は、1981年(昭和56年)を国際障害者年と定め、
翌年には「障害者に関する世界行動計画」を採択するとともに、
1983年(昭和58年)から1991年(平成4年)までの期間を
「国連・障害者の十年」と宣言し、障害者の「完全参加と平等」を目標に、
同計画をガイドラインとして取り組みを実施するよう、
加盟各国に要請しました。この「完全参加と平等」
の実現のための基本的理念がノーマライゼーションであり、
この具体化に向けての各国の対応が求められることとなったわけです。

 これを受けて我が国においては、昭和57年に
「障害者の対策に関する長期計画」を策定するとともに、
総理府に障害者対策推進本部を設置して関係行政機関相互間の
連携を図りながら施策の展開が推進されてきました。

 また、昭和62年には「国連・障害者の十年」の中間年に当たることから、
それまでの成果を踏まえつつ障害者対策のなお一層の推進を図るため
「障害者対策に関する長期計画・後期重点施策」を決定し実施されてきたところです。

 こうした経過を踏まえ、本県においても昭和56年に国際障害者年宮城県推進会議を設置して、
1啓発活動の推進、2障害者施策の充実強化、3市町村及び関係団体との連携の強化を重点におき
各種事業を進めるとともに、昭和57年には「宮城県障害者福祉長期計画」を策定し、
障害者の「完全参加と平等」の実現に向けた障害者福祉の総合的かつ効果的な推進を図ってきました。

 また、平成4年は「国連・障害者の十年」の最終年に当たることから、
この10年の間に盛り上がった気運を持続させながら、障害を持つ人々に対する理解と
ノーマライゼーションの理念を県民の間に一層定着させるため、
3月「宮城県障害福祉憲章」を全国に先駆けて制定したところです。

 「国連・障害者の十年」の成果については現在取りまとめが行われており、
全般的には各部門において着実な進展がみられたものと評価できますが、
最終的目標である「完全参加と平等」の達成にはまだまだとの認識も多くあることから、 今後の長期的な取り組みについては、第二の障害者の十年として、1993年から2002年を 「アジア太平洋障害者の十年」としてESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)総会で 決議されたことも踏まえ、今後、更に一層の推進を図らなければならないことは言うまでもありません。

 本県における取り組みを考えると、高齢化や障害の多様化・重度化を始めとする、 障害及び障害者を取り巻く状況の大きな変化により、必ずしも計画的な障害対策の推進が図られているとは言えず、 今後の本格的な高齢化社会の到来を始めとする社会システムの変化は障害者のニーズの多様化と相まって 適切な施策展開をより困難にさせるものと考えられます。

 こうした状況を踏まえ、「国連・障害者の十年」の最終年に当たり、 更なる十年に向けた障害福祉の一層の充実とノーマライゼーション理念の具体化へ向けた、 本県における障害対策の基本指針となる「宮城県障害福祉長期計画」を策定するものです。

2計画の性格・期間

 本計画は、基本的に「国連・障害者の十年」の流れを引き継ぎ、 障害者の「完全参加と平等」を実現するための、本県における今後10年程度の 障害福祉の基本的方向を示すものですが、障害者をめぐる諸問題は、 教育・育成、雇用・就労、所得保障及び福祉サービス、生活環境、保健医療といった 広範囲かつ多岐にわたることから、県においては全庁的な取り組みによる 施策展開の責務を負うとともに、その実現に向けては市町村を始めとする 関係機関・団体及び県民一人ひとりの理解と協力により推進されてこそ達成されるものと言えます。

 そして、本計画の実践にあたっては、常に障害者のクオリティ・オブ・ライフ (Quality of Life)に視点を当てた対応をしていくことが必要であり、 それは単に「生活の質」だけでなく、「生命(いのち)」、「人格」、「人生」の 質まで配慮しその向上を図っていくことが大切です。

  また、計画の期間は、平成5年度(1993年)を初年度とする平成14年度(2002年)までの おおむね10年間としますが、前期5ケ年の終了段階において、社会情勢の変化を踏まえて 計画の評価及び検討を行い、必要があると認めるときは変更を加えるものとします。

第2節 宮城県障害福祉憲章の理念

 平成4年3月に制定された「宮城県障害福祉憲章」は、本計画の基本理念となるものであり、 また、この憲章の心が県民の間に定着してこそ、計画の推進が図られるものと考えられます。

1憲章制定の趣旨

 本県においても、これまで「国際障害者年」や「国連・障害者の十年」に 対応した障害福祉施策の推進を図り、さまざまな成果を上げてきましたが、 平成4年が「国連・障害者の十年」の最終年に当たることから、ノーマライゼーションの理念が広く 県民みんなの心に定着し、障害を持つ方々の「完全参加と平等」という目標を、 県民一人ひとりの理解と協力によって実現することを願い制定したものです。

2憲章制定の経過

 憲章は、県民共通の基本理念となることから、県民各界の代表者で構成する 「宮城県心身障害者対策協議会」の中に起草委員会を設置し、障害を持つ人は勿論のこと、 多くの方々からのご意見をいただき検討を重ね、平成4年3月4日の心身障害者対策協議会において 了承され、宮城県が同年3月10日付けで制定したものです。 また、4月17日には、制定記念式典を開催し、県民すべてが全体幸福のために 手を携え取り組んでいくことにしました。

宮城県障害福祉憲章

ひとりひとりにやさしく豊がな地域づくりをめざして

 わたくしたち県民は、みんなが明るく豊かに生活できるように願っています。 障害をもつ人々も、その障害を乗り越えて、だれもがもっている権利や恩恵を 十分に受けられるよう懸命に努力しています。

 わたくしたち県民は、障害をもつ人も、もたない人も、力を合わせて共に参加できる やさしく豊かな地域社会をつくるため、ここに、宮城県障害福祉憲章を制定します。

わたくしたち県民は

1、すべての人を人として尊び互いにその立場を尊童します

1、ふれあいを通して障害の理解を深め互いに助け合います

1、自立と社会参加に向けて互いの能力・特性を生かす共通の機会と場をひろげます

1、みんなの健康・医療・教育・労働・福祉の向上に努めます

1、みんなの力でやさしく個性豊かな地域文化の創造に励みます

1、みんなが安心して暮らせる潤いのある地域社会をつくります

(平成4年3月10日制定)

尊ぶ すべての人を人として尊び互いにその立場を尊重します

障害をもつ人ももたない人も、わたしたちは一人では決して生きられません。 お互いの立場を理解し、尊重しながら助け合って共に歩むことこそ、人生の大きな喜びではないでしょうか。

助け合う ふれあいを通して障害の理解を深め互いに助け合います

障害をもちながらも社会的に素晴らしい活動をしている人は大勢います。 人間としてのふれあいを通して障害に対する正しい理解を深め、共に生きる努力をしていきましょう。

広げる 自立と社会参加に向けて互いの能力・特性生かす共通の機会と場をひろげます

障害をもつ人もその能力と特性を最大限に生かして自立し、 社会参加をしていきたいと強く希望しています。みんなが活躍できる機会と場を一層広げていきましょう。

高める みんなの健康・医療・教育・労働・福祉の向上に努めます

障害は特定の人の問題ではなく、みんながかかわる問題です。 わたしたちは、健康・医療・教育・労働・福祉の分野で英知を集め、 障害の発生の予防・克服に努めていきましょう。

創る みんなのカでやさしく個性豊かな地域文化の創造に励みます

障害をもつ人の生活の「質の向上」はとても大切なことです。 障害をもつ人がいつでもどこでも参加し、楽しめる地域文化を県民みんなで積極的に創り育てていきましょう。

潤す みんなが安心して暮らせる潤いのある地域社会をつくります

それぞれに異なる障害をもつ人に対しての適切な配慮を 具体的に積み重ねていくことが潤いのある地域社会を築く基本になります。 できることから早速、実行していきましょう。

第3節 障害者の現状と課題

1障害対策の現状

 我が国における障害者対策は、行政制度としては包括的に 心身障害者対策基本法が制定され、身体障害者については身体障害者福祉法が、 精神や知的障害者については精神保健法や精神薄弱者福祉法が対応していますが、 福祉サービスの面では、身体障害と精神薄弱が重視されてきた傾向にあり、 障害者といった場合この二つの障害イメージが強いと思われます。

 身体障害者については身体障害者手帳が、精神薄弱者については療育手帳を交付する制度がありますが、 必ずしも実際数となっていないことや精神障害者については、前記二つの障害者に比べ、 障害者としての把握の困難さもあり、これらの対策は遅れています。 また、難病やてんかん等については、障害者の範囲に入っていないことから 障害者数やその実態を把握するまでには至っておりません。

 障害者数を欧米各国と比較した場合、日本の障害者の率がかなり低くなっていますが、 これは、「障害者」の範囲や定義が国によって大きく違っており、共通の基準がないことと、 我が国における障害者の捉え方が狭いことがその一要因と考えられます。

 障害という概念は、WHOが示した1機能障害2能力低下3社会的不利の 三つの次元でとらえることが一般的になっていますが、我が国での障害の範囲とその狭さは、 特に社会的な不利についての認識が十分なされていないためと考えられます。

 このことから、社会的不利についての認識を高めるとともに、同時にこれを取り除く 生活環境の改善と条件整備がこれからの大きな課題となっています。

身体障害者手帳交付状況

障害別
年度
視覚障害 聴覚・平衡機能 音声・言語機能 肢体不自由 内部障害
人員 人員 人員 人員 人員 人員
62 7,339 8,388 604 35,134 6,279 57,744
63 7,465 8,557 628 36,523 7,115 60,288
7,561 8,661 663 37,664 8,169 62,718
2 7,204 8,207 676 37,122 8,677 61,886
3 7,265 8,324 711 38,176 9,568 64,044

(注)1.数字は各年度末現在 2.仙台市分を含む(資料:県障害福祉課)

療育手帳交付状況

区分
年度
新規

累計

合計 A件 B件
62 342件 5,660件 3,610件 2,050件
63 484件 6,094件 3,789件 2,308件
503件 6,543件 3,941件 2,602件
2 411件 6,840件 4,033件 2,807件
3 411件 7,203件 4,110件 3,093件

(注)仙台市文を含む (資料:県障害福祉課)

2障害者対策をめぐる諸情勢の変化

 人口の高齢化や疾病構造の変化等によって、障害者の高齢化や障害の複雑・重度化が進行しています。近年、身体障害者の年令構成は、その半数以上が60歳以上の人で占められており(平成3年厚生省身体障害者実態調査)、今後の急速な高齢化の進行を考えると、脳卒中や交通事故等による障害者の増加とともに、絶対数においても、その割合は増加していくものと予想されます。このことから、障害者問題というのは、単に一部の人たちの問題ではなく、全ての人に関わる問題として位置づけられ、今、現在の障害者対策を適切に行うことが、全ての人達の住みよい社会を築くことにつながっていくものと考えられます。

 また、社会状況等の変化とともに、障害者意識に変化がもたらされることは当然ですし、そのニーズは多様化しています。このことから、今後の対応では、高齢化社会に対応した制度、施策の整備を進めるとともに、障害者にとってよりベターな選択が可能なように施策面での多様化を進める必要があります。

一方、障害者対策はかっての施設への収容保護からノーマライゼーションの理念に基づいた在宅福祉の考えとなっており、障害者はできる限り住み馴れた地城で一般の人々と生活できるための在宅面での施策の充実が一層求められています。

 この施策展開においては総合的かつ一貫性を確保することが大切であり、それには障害者のライフ・サイクルの各段階において、障害の状態と程度に応じた各種の施策が体系的に用意され、障害者の全生涯にわたる多様なニーズヘの適切な対応が図られる必要があります。

心身障書児(者)対策

心身障書児(者)対策

年齢階級別身体障害者の状況

18~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~64 65~69 70~ 不詳 総数
人数(人) 71,000 136,000 266,000 467,000 377,000 412,000 918,000 58,000 16,000 2,722,000
2.6 5.0 9.8 17.2 13.9 15.1 33.7 2.1 0.6 100

(資料:厚生省「身体障害者実態調査(平成3年11月)」)

3障害者をとりまく課題

 「国連・障害者の十年」における重点的な障害対策の取り組みにより、制度の改正や各種施策の充実が図られ、かなりの成果が上げられてきました。

 しかし、「完全参加と平等」の実現には、残された課題も多く、また高齢化の進展等に伴って新たな課題も生じてきており、特に次のことについては今後一層重点的な対応が必要と考えられます。

(1)一般的に狭い「障害者」の範囲を拡大し、精神障害者及び難病患者等を含めること

(2)特に進まない精神薄弱者や精神障害者及び重度身体障害者の雇用を始めとする社会復帰対策の整備・拡充

(3)生活安定のための所得保障の充実

(4)細分化された施設体系の見直しと費用徴収等の在り方

(5)遅れている障害者・高齢者の利用に配慮した生活環境の改善

(6)増加している小規模作業所への公的助成の拡大と法内施設への転換

(7)障害者の人権の確立と発言の確保

(8)児童・生徒の障害の種類・程度に応じた教育

(9)障害者が高齢に達する前に高齢化したと同じような状態になる「過齢現象」への対応

 こうした課題に対しては、法や制度の改正等がなされなければ解決が困難なものや企業や県民の理解なしでは進まないものもあることから、社会全体で解決へ向けた対応を進めていくことが大切です。

 なお、福祉関係八法の改正により、障害者や高齢者施策における市町村の役割が重要になってくることから、その一体的推進を図りながら、こうした課題を含め、地域の中でそのニーズにきめ細かく対応していくことが望まれます。

第4節 総合リハビリテーション体制の確立

 障害者に対する社会一般の理解や態度は、従来ともすれば「弱者」として、「非生産的」なものとしてとらえられがちであり、障害者対策も救貧的、弱者保護的な側面が強かったという指摘がなされています。しかし、このような障害者観は、「すべての障害者は一人の人間としてその人格の尊厳性を回復する可能性をもつ存在であり、その自立は社会全体の発展に寄与するものである」というリハビリテーションの理念とは相いれないものといえます。

 リハビリテーションとは、障害者が一人の人間としてその障害にもかかわらず人間らしく生きることができるようにするための技術及び社会的、政策的対応の総合的体系であり、単に運動機能障害の治療・回復という医療面のサービスのみをいうのではなく、障害をもつ人に残された能力を最大限に開発・発揮させるとともに社会システムの改善を通じて社会参加をしていく過程のすべてを含むものです。

 このような考え方は、障害者が社会生活及び地域社会の発展に参加し、社会経済の発展の結果である生活向上の平等の配分を受け、他の市民と同等の生活を享受する権利を実現すべきであるという「完全参加と平等」の理念であり、また、リハビリテーションの進展がノーマライゼーション理念の実現への重要な要素となってくるといえます。

 そして、リハビリテーションの対象である「障害」のとらえ方については、WHOの定義によると1障害の一次的レベルで、外傷や疾患から直接生じる生物学的なレベルでとらえた障害で、手足や臓器が失われたり機能しないというような状態の「機能障害(impairment)」、2障害の二次的レベルで、機能障害から生じてくる人間個体レベルでとらえた障害で、日常生活における動作の遂行能力が制限されることにより、歩けないとか話せないとかいうような状態の「能力低下(disability)」、3障害の三次的レベルで、機能あるいは能力低下のために、障害者が社会の一員として参加することを妨げる物理的及び社全的障壁が存在することで、バスに乗れないとか能力があるのに就労ができないとかの状態の「社会的不利(handicap)」の三つに分類され、これを重層的なものとしてとらえることとされており、障害者とは、これらのいずれか又は複数を併せ持った状態を指すもので、これら全てがリハビリテーションの対象となります。

 また、リハビリテーションの内容については通常、1障害の原因となる疾患・外傷の早期発見から、治療、療法その他による機能の回復、維持、開発さらには能力低下の発生予防などの医学的リハビリテーション、2個々人の心身の障害の状態や発達段階及び特性に応じて一人ひとりの可能性を最大限に伸ばし、社会的自立を可能にするための教育的リハビリテーション、3障害をもつ人の適切な就労とその定着を図り、職業自立の実現を目的とした職業的リハビリテーション、4障害をもつ人の社会参加を妨げる社会システムの改善等による社会的自立を目指す社会的リハビリテーションの4つの分野に分けられ、これらを貫くものは、障害者の主体性、自立性、自由といった人間本来の生き方の尊重であり、必ずしも就労や経済的自立にとどまるものではありません。

 これまでの「国連・障害者の十年」の間において、このリハビリテーションの分野の施策が展開されてきましたが、まだ「完全参加と平等」に繋がる全人間的復権には到達していないのが現状です。今後、各分野のリハビリテーションサービスが、ライフステージの各段階を通じて総合的に、また有機的に提供されることが重要ですが、それぞれに対応する医療・教育・労働・福祉等各分野の連携や調整は必ずしも十分なものとはいえません。

 本計画の内容も、各分野にわたるものであり、それぞれの施策の達成のためには、各関係分野の連携の一層の強化や各種サービスが一体となったシステムとして、総合的・継続的に提供される体制の確立が望まれ、それは「総合リハビリテーションサービス」として構築していく必要があります。

  現在、本県においては、保健・医療・福祉の総合化、一体化の推進へ向けた事業の展開が進められ、この中で、「総合リハビリテーションサービス」の中核的施設として、「総合リハビリテーションセンター」の設置が検討されていることから、今後、このセンターの機能の活用と関係機関等との連携によるシステムの構築に向けて積極的に対応していくことが必要です。

宮城県保健医療福祉基本構想(平成4年3月)

〔プロジェクト編より抜粋〕

保健・医療・福祉総合化プロジェクト4

タイトル
福祉ゾーン整備事業

〔目的〕
高齢化の進行には、心身ともにに疾病の増大と機能の低下(障害の発生)が随伴する。このことから高齢化社会の到来は、地域社会におけるリハビリテーション需要を必然的に高めてゆくことになろう。しかし県内の状況は、肢体不自由者更生施設、老人保健施設、整形外科専門医療機関等が地域的に偏在しており、適性サービスが一様に享受できるシステムにはなっていない。

  中核施設として、総合リハビリセンターを設置し、地域単位の中間サブセンターを設け、そこから市町村単位の介護支援設備・関係医療機関等を結び、効率的かつ一貫したリハビリテーション等の支援,指導調整を行う。

〔内容〕
総合リハビリテーションセンター(中核施設)

  1. 総合的相談窓口、保健・医療・福祉のサービス等が一元的かつ効果的に提供できる拠点施設であって備えるべき機能は次のとおり
    1. 総合相談機能
    2. 診察・判定機能
    3. 訓練評価機能
    4. 地域サービス機能
    5. 開発研究機能
    6. 企画調整機能
    7. 施設援護機能
  2. 中枢機関として設置が必須と考えられるもの
    1. 障害者更生相談所
    2. 附属診療所(無床)
    3. 肢体不自由者更生施設
    4. 重度身体障害者更生援護施設
    5. 老人保健施設
    6. 福祉機器センター
    7. 言語障害センター

※モデル施設として併設が望ましいもの

1、身体障害者療護施設

2、特別養護老人ホーム

3、デイサービスセンター

有期間・有目的の治療更生援護サービスを行う中枢施設とし、かつ地域のサテライトステーションを経ながら全県関連施設の指導調整を行う機能を持つもの。

総合リハビリセンター及び地域サテライトステーション概念図

総合リハビリセンター及び地域サテライトステーション概念図

保健・医療・福祉総合化プロジエクト9

タイトル

トータルリハビリテーション体制整備事業

〔目的〕
高齢化社会を明るく活力あるものにしていくためには、在宅での対応と、施設利用とを車の両輪とし市町村が中核となった施策の展開が必要である。しかし各市町村の体制はそれぞれ異なることから、県としてはサービスの平準化と一貫性を確保していく必要があり、総合リハビリセンターの他に県内10地域単位程に、中間調整指導を行う地域リハビリセンター~サテライトステーション~を設置し、指導、調整、援護に当たる。

〔内容〕
サテライト・ステーションの構想と組織

1)施設 7~10の地区毎にその地域に一番適した既存・新設のセンター等を拠点施設とする。

  1. 障害福祉B型センター・リハビリサブセンター
  2. 在宅障害者デイサービス施設・リハビリサブセンター
  3. 医師会等の保健センター
  4. 地域リハ中枢医療機関
  5. 保健所・福祉事務所・リハビリサブセンター
  6. 障害者更生・療護施設

2)組織 委員会制とし次の組織の代表者で構成し運営する。

  1. 社会福祉協議会(地方支部)
  2. 福祉事務所
  3. 保健所
  4. 市町村
  5. 医師会
  6. 地域リハ中枢病院
  7. 障害者更生施設

スタッフ等

  1. 医師
  2. OT、PT、ST
  3. 保健婦
  4. 看護婦
  5. 社会福祉士
  6. 介護福祉士

3)機能

  1. 直接来所者の相談指導、機能訓練、総合支援
  2. 総合リハセンと市町村単位の介護支援センターの中間にあって情報伝達、指導援護、技術援助の支援にあたる。
  3. 巡回相談又は在宅訪問による技術指導、直接援護
  4. 場合によっては入所調整
  5. 健康管理も含む一般研修
  6. マンパワーの確保と従事者研修

リハビリテーションサテライトステーション概念図

リハビリテーションサテライトステーション概念図 (留意点)

なお、サテライトステーションについては、現在保健所で実施している在宅ケア委員会の活動と類似もしくは同一のものとなることから、地域によっては既存機能を生かし、施設及び設備のみの付設ということも考えられる。

第2章 障害・障害者に対する正しい理解の促進

第1節 啓発広報活動の推進

現状と課題

 障害者の「完全参加と平等」を実現するには、制度の改善や施策の拡充によるだけでは達成することは困難です。何より、一般の人々が、障害者が他の人々と同等の諸権利を有することの認識と障害に対する正しい理解をもってこそ、その実現が促進されます。 国際障害者年や国連,障害者の十年の取り組みにより、正しい認識や理解が徐々に持たれてきてはいますが、未だに無理解や偏見により障害者の社会参加をはばんでいる状況もあることから、今後一層、県民一人ひとりが障害や障害者に対する正しい理解と認識を深めるための啓発広報活動を積極的に推進していくことが大切です。

 正しい理解の促進を図るための啓発広報活動については、毎年4月の身体障害者福祉月間、9月の精神薄弱者福祉月間や心身障害者雇用促進月間、11月の手足の不自由な子供を育てる運動月間などにより定期的に行われており、また、12月9日は障害者の日として、この日を中心に各市町村や民間関連団体等により展開されています。

 正しい理解のためには、障害そのものだけをとらえることなく、障害者が「その社会の他の者とは異なったニーズを持つ特別の人と考えるべきでなく、通常の人間的ニーズを満たすのに特別の困難をもつ普通の市民」との認識をもつことが必要であり、そのための啓発広報について、「宮城県障害福祉憲章」の普及をはじめとして、広く県民に対して行っていくことが大事です。

 今後は、市町村や関係団体の広報活動について、積極的な取り組みを働きかけることは勿論ですが、大きな力を発揮するマスメディアを活用することについても検討していくことが必要です。

今後の方向

1「宮城県障害福祉憲章」の普及推進

●ひとりひとりにやさしく豊かな地域づくりをめざして制定した、「宮城県障害福祉憲章」の普及を図り、ノーマライゼーション理念の定着化を推進します。

2定期的啓発広報活動の充実

●「障害者雇用促進月間」・「身体障害者福祉週間」・「精神保健普及運動」・「精神薄弱者福祉月間」の啓発広報や、障害者の日(12月9日)を中心として開催される、「障害者の日のつどい」、「障害者製品展示即売会及び福祉展上」、「ふれあい体験作文・ポスターコンクール」などの、より一層の充実を図っていきます。

3各自治体における啓発広報活動の充実

●県や市町村の広報紙等において、障害者にかかわる問題や実情等についての理解が促進するよう、定期的な啓発広報を行うよう促進します。

4各種イベントの開催

●企画段階から障害を持つ人々の参加や意見の反映に努めて、障害を持つ人々が自ら参加し、意見を発表できる場を多く設定するとともに、幅広い人々が参加するシンポジューム・講演会・研修会等を開催して、正しい理解の促進を図っていきます。

5実態把握と公聴活動の推進

●障害を持つ人々の実態やニーズを把握するための実態調査を行うとともに、障害を持つ人々や関係団体などから日ごろ幅広い意見を聴き、それに基づいた施策の展開を図っていきます。

第2節 福祉教育と交流の推進

現状と課題

 障害や障害者に対する正しい理解を促進するためには、お互いのふれあいの中で、偏見や誤解を取り除き、互いに理解を深めていくことが大切です。そして、正しい理解のもとに互いに支え合い、助け合っていくことが必要ですが、一般の人々の理解はまだ十分なものとなっておらず、障害者がどういう場合に困っているのか、どのように手助けしたらいいのか等、それを実行に移すための必要な理解や知識に欠けている状況が見受けられます。

 障害や障害者に対する認識は、一人ひとりで大きく異なっており、それは個々に関わりを持った障害者や障害のイノージによって多く影響を受けているからで、このことは、地域社会において、たくさんの障害者と日常的に出会う機会が少ないことも理由の一つとして上げられています。こうしたことを改善していくためには、幼児期などのできるだけ早期からの家庭や学校での適切な福祉教育や自然な人と人とのふれあいを促進していくことが大切であり、小さい時から障害を持つということはどういうことかを、お互いに理解できるような交流や教育が必要です。

 学校における福祉教育はこうした現状を踏まえ、福祉教育副読本を作成配付したり、キャップハンディー体験学習や交流学習、ボランティア推進などを行っていますが、今後もより一層充実に努めていく必要があります。また、児童生徒だけでなく、一般の地域住民においても、社会教育事業や家庭教育の中で、障害者問題についての学習や啓発活動を行うことも望まれます。

 また、障害をもつ人々との交流については、これまでも行政だけでなく、民間においてもふれあいコンサートを開催するなど様々な展開がされて来ましたが、どちらかというと、福祉と直接関わり合う分野での取り組みが主で、〔障害をもつ人々のための〕という意味合いが強かったことから、今後は、もう一歩進めて、〔障害をもつ人々と共に〕といった活動の展開が求められています。したがって、福祉サイドに限らず、人々のあらゆる交流の場に、障害をもつ人々の参加を呼びかけ、今以上に広範な交流を促進していくことが正しい理解につながっていくものと思われます。

今後の方向

1学校教育における福祉教育の推進

●小・中・高校を対象とした、「児童・生徒のボランティア活動推進普及事業協力校」の指定を継続して実施し、在宅の老人や障害を持つ人々とのふれあいや体験学習をはじめ、福祉施設への訪問活動などを積極的に取り入れ福祉の理解を促進するよう努めます。

 また、幼少時から障害に対する理解と認識を持つよう、小・中学校等における障害や障害者についての教育を積極的に推進します。

2交流教育の推進

●特殊教育諸学校の生徒と地域の学校の生徒との互いの理解と経験のため、「心身障害児交流活動地域推進研究校」での継続的な交流教育を推進するとともに、その方法・内容の充実を図ります。

3地域における福祉教育の推進

●市町村における「ふれあいのまちづくり事業」、「福祉ボランティアの町づくり事業」、「福祉学習普及公民館指定」事業などをより充実するよう支援していきます。

 また、福祉事務所や児童相談所等関係機関と連携しながら、地域住民に対する障害福祉に関する意識の定着のための福祉講座などの社会教育を充実させていきます。

4交流の促進

●地域の中で行われる様々な催しに障害をもつ人々の積極的な参加を求め、また参加しやすい配慮を行うことによるふれあう機会の促進に努めます。

第3章 保健・医療の充実

第1節 障害の発生予防の充実

現状と課題

 障害者対策における最も基本的な事は、障害発生を未然に予防することといえます。障害の発生は、遺伝や周産期等の異常によって生ずる場合や、ライフステージの中の脳卒中や交通事故等の原因によって生ずる場合があります。

 遺伝や周産期等における障害の発生予防については、障害の実態と原因の把握を行うとともに、母子保健対策の中で、妊産婦に対する健康診査や保健指導など母性保護対策の充実と、周産期における医療体制の整備による防止が図られてきました。特に、近年の医学・医術の進歩は、障害の発生予防にますます重要な役割を担うものとなっており、また、出生率の低下による社会の少子化が問題となっている現在においては、一層、乳幼児期の障害発生予防への取り組みを強化することが必要と考えられます。

 我が国における、母子保健の水準は高く、乳児死亡率は世界最低(平成3年4.4)となっており、本県においては全国平均を下回る4.0の死亡率となっています。なお、出産時と乳幼児期の疾病は、死に至らなくとも、心身に障害を残すケースが多いことから、今後とも母子保健対策の充実を図っていくことが極めて重要です。

 ライフステージの中での障害の発生は、その原因が多岐に亘っています。戦傷病者の援護対策を始めとして、高度成長期の公害による障害発生など社会的原因によるものもあり、現代の疾病構造の変化や人口の高齢化あるいは社会環境の変化等により多様化していくものと予測されます。

 国の身体障害者実態調査結果(平成3年)によると、身体障害者(18歳以上)の数は、調査毎に増加しており、特に、肢体不自由と内部障害の増加割合が高くなっています。このことは、脳血管疾患等の成人病によるものと、高齢者人口の増加や加齢に伴う疾病に起因しているものなどの要因が考えられます。

 今後、県民一人ひとりの健康管理対策の充実を期すには、成年期からの成人病健康診査体制の確立や高齢化社会に対応した健康管埋の強化が必要であり特に、寝たきりになる可能性の高い脳卒中患者の支援や老年期痴呆疾患等への対応が喫緊の謀題になっています。

 その他、成人の障害発生の予防においては、原因が労働災害や交通事故等によるものも多く占めることから、これらの安全対策を更に徹底していくことが望まれます。また、事故発生の傷害等においては、迅速・適切な治療を施す必要があります。この対応の遅れから、機能障害を残す場合も多いことから、救急医療を含めた地域医療体制の早急な確立も大きな課題となっております。

身体障害の原因別状況

-

総数

事故

疾病

不明 不祥
交通事故 労働災害 その他の事故 戦傷病 戦災 小計 感染病 中毒症疾患 その他の疾患 出生時の損傷 その他 小計

3年11月

千人
2,722
(100%)
115
(4.2)
186
(6.8)
154
(5.7)
69
(2.5)
525
(19.3)
85
(3.1)
9
(0.3)
1,172
(43.1)
97
(3.6)
226
(8.3)
1,588
(58.3)
205
(7.5)
404
(14.8)

62年2月

千人
2,413
(100%)
121
(5.0)
223
(9.2)
157
(6.5)
92
(3.8)
592
(24.5)
114
(4.7)
9
(0.4)
1,192
(49.4)
93
(3.9)
220
(9.1)
1,627
(67.4)
194
(8.0)
-
(-)

増加率

112.8% 95.0 83.4 98.1 75.0 88.7 74.6 100.0 98.3 104.3 102.7 97.6 105.7 皆増

3年の内訳

視覚障害 353
(100%)
4
(1.1)
10
(2.8)
19
(5.4)
8
(2.3)
40
(11.3)
8
(2.3)
-
(-)
171
(48.4)
16
(4.5)
34
(9.6)
228
(64.6)
34
(9.6)
51
(14.4)
聴言障害 358
(100%)
5
(1.4)
9
(2.5)
9
(2.5)
15
(4.2)
38
(10.6)
4
(1.1)
3
(0.8)
114
(31.8)
21
(5.9)
49
(13.7)
192
(53.6)
65
(18.2)
64
(17.9)
肢体不自由 1,553
(100%)
104
(6.7)
160
(10.3)
125
(8.0)
45
(2.9)
434
(27.9)
56
(3.6)
5
(0.3)
608
(39.2)
55
(3.5)
105
(6.8)
829
(53.4)
66
(4.3)
223
(14.4)
内部障害 458
(100%)
2
(0.4)
7
(1.5)
1
(0.2)
1
(0.2)
12
(2.6)
17
(3.7)
0
(0.1)
279
(60.9)
4
(0.6)
38
(8.3)
339
(74.0)
40
(8.7)
67
(14.6)
重複障害(再掲) 121
(100%)
3
(2.5)
5
(4.1)
4
(3.3)
2
(1.7)
15
(12.4)
4
(3.3)
-
(-)
57
(47.1)
4
(3.3)
11
(9.1)
76
(62.8)
7
(5.8)
23
(19.0)

( )内は構成比(%)  (資料:厚生省「身体障害者実態調査」) 

乳児・新生児死亡年次別推移 (単位:人)

区分

 

年次

出生数

実数

率(出生千対)

乳児死亡率

新生児死亡率(再掲)

早期新生児死亡率(再掲)

乳児死亡率

新生児死亡率

早期新生児死亡率

62

全国 1,346,658 3,734 2,977 6,711 - - 3,933 - - 3,065 5.0 2.9 2.3
宮城 26,226 70 61 131 49 33 82 35 25 60 5.0 3.1 2.3

63

全国 1,314,006 3,434 2,831 6,265 - - 3,593 - - 2,749 4.8 2.7 2.1
宮城 24,999 75 40 115 43 22 65 36 16 52 4.6 2.6 2.1

全国 1,246,802 3,118 2,606 5,724 1,737 1,477 3,214 1,303 1,083 2,386 4.6 2.6 1.9
宮城 24,118 57 52 109 33 31 64 24 24 48 4.5 2.7 2.0

2

全国 1,221,688 3,122 2,492 5,614 1,767 1,410 3,177 1,323 1,012 2,335 4.6 2.6 1.9
宮城 23,323 68 39 107 41 22 63 34 14 48 4.6 2.7 2.1

3

全国 1,223,186 2,914 2,502 5,416 1,591 1,386 2,977 1,157 1,010 2,167 4.4 2.4 1.8
宮城 23,208 50 43 93 27 25 52 22 20 42 4.0 2.2 1.8

(資料:「人口動態統計」による)

障害の種類別・身体障害者の推移

(単位:千人,()内:人口対千人)

- 合計 肢体 聴言 視覚 内部
S26年12月 512(6.1) 291 100 121 -
S30年10月 785(14.5) 476 130 179 -
S35年7月 829(13.9) 486 141 202 -
S40年8月 1,048(16.0) 610 204 234 -
S45年10月 1,314(17.9) 763 235 250 66
S55年2月 1,977(23.8) 1,127 317 336 197
S62年2月 2,413(26.7) 1,460 354 307 292
H3年11月 2,722(28.3) 1,553 358 353 458

(資料:厚生省「身体障害者実態調査」)

今後の方向

1健会母性育成事業

●保健・医療・福祉・教育等との連携をもって、母性知識の普及啓発や、電話・面接等による思春期の保健相談を充実し健全母性育成事業を推進します。

2健康の自己管理

●妊娠届、母子健康手帳、副読本、妊婦健康診査票などの配付時に、保健婦等専門職員による面接相談を行い、妊娠・出産,育児を通じて一貫した自己の健康管理ができるよう保健指導を徹底します。

3遺伝相談体制の整備

●遺伝相談の潜在的ニーズが増えてきていることから専門相談機関による遺伝の知識の普及を促進する必要があり、医療機関、保健所などにおいての相談体制を整備するとともに、遺伝相談のネットワークのシステム整備を図ります。

4妊産婦の健康診査・保健指導

●市町村、保健所、医療機関との緊密な連携体制のもとで、妊産婦の健康診査の充実を図り、疾病などの早期発見、早期治療に努めるとともに、母子感染の予防など保健指導の強化を図ります。

5成人保健対策の推進

●健やかな老後には、成・壮年期からの健康管理が重要であり、老人保健法による脳血管障害等成人病予防のための健康診査の受診率の向上を図るとともに、健康教育、健康相談等を重点的に推進します。

●がん、脳卒中、心臓病など成人病検診の効果的な実施と精度の向上を図るため、その罹患率、受療状況、生存率等の解析を行うことにより疾病に応じた予防対策を促進します。

第2節 障害の早期発見・療育の推進

現状と課題

 障害の発生予防対策を徹底しても、先天性の障害等の発生を防止することは困難です。しかし、乳幼児期での障害疾病を初期に発見し、早期治療を行うこととその後の適切な指導訓練等の療育を行うことは、障害の除去や軽減に極めて有効であり、併せて、社会適応能力を高めることにもなります。

 障害の早期発見については母子保健対策の中で、妊娠・出産・育児期の保健教育と妊産婦・乳幼児の健康診査、1歳6か月児健康診査、3歳児健康診査及び保健指導があり、3歳児健康診査で精神発達に問題があり、将来精神的障害を残す恐れのある幼児については、児童相談所を中心としての3歳児精神発達精密検査が実施されています。また、これまで障害の発見が難しかったものも医学・医術の進歩によって可能になってきており、特に、先天性異常等については大きな進歩が見られます。

 障害児が発見された場合は、児童相談所、保健所、市町村、施設、医療機関及び学校等による相互連携のもとで、障害児に必要な医療提供や療育相談や指導訓練の実施等、障害の発見段階からその後のフォローを一連の流れで進める必要があり、これら関係機関の緊密な連携が不可欠なものとなっています。

 特に、養護学校をはじめ障害児施設は、地域の療育拠点として重要な役割を担っていることから、学校と施設のより一層の連携が必要ですし、併せてそれぞれの機能向上も望まれます。また、現在、地域の保育所や幼椎園において、障害児の受入れが行われていますが、そこでの療育・教育機能の充実も図っていく必要があります。

 なお、療育過程においては、保護者の果たす役割が大きいことから、障害児を含めての保護者に対する相談、指導体制を更に充実する必要があります。

今後の方向

1各種検査の充実

●新生児、乳児の先天性代謝異常等検査事業、B型肝炎母子感染防止事業、神経芽細胞腫検査事業及び発達検診など各種検査の充実を図るとともに、専門機関における調査研究と検査精度の向上、治療方法の確立に努めます。

2健康診査、事後指導

●在宅助産婦、母子保健推進員などの民間協力を得ながら、各ライフステージに応じた健康診査・相談指導・家庭訪問事業などを推進します。また、一連の健康診査を充実し、精密健康診査、事後指導、継続管理の強化に努めるとともに、研修、評価体制を整備します。

3療育相談指導体制の確立

●乳幼児健康診査等で発見された障害児に適切な治療、療育を行うため、保健所、児童相談所、市町村、施設及び教育機関との緊密な連携による乳幼児期からの一貫した療育相談指導体制の確立を図ります。

4在宅療育指導の推進

●各種の療育訓練事業を、障害児の発達段階に応じて効果的に進めるため、各相談機関による訪問診査や巡回療育指導及び施設による地域療育事業等の連携を図り総合的な在宅療育指導を推進します。

5施設の療育機能の充実

●施設の有する専門的機能を地域社会の心身障害児が利用できるように、心身障害児施設地域療育事業の拡充を図るとともに、ショートステイの充実など障害児施設の機能が幅広く地域の障害児に役立つよう配慮します。

6関係者・保護者の研修等の充実

●医師、歯科医師、保健婦、助産婦、栄養士、保母など母子保健関係者の研修機会を充実し、母子保健事業の向上を図ります。

●保護者の療育に関する知識を深め、療育効果を高めるため、関係療育指導機関等の連携により、療育指導の充実を期します。

7早期発見、早期指導、早期教育体制のシステム化

●子どもの障害の早期発見に努め、その状態に応じた指導、教育ができるような保健・医療・福祉・教育の関係機関担当者等による体制づくりを推進します。

第3節 医療体制の充実

現状と課題

 障害者への医療は、そのライフステージに対応して、早期かつ適切に提供される必要があり、また、障害をもたない人にとっても、ライフステージの過程においての何らかの障害原因に対して、その防止や除去あるいは軽減への適切な医療の提供がなされるか否かにより、その後の予後が大きく分かれるところから、このことに的確に対応できる医療体制の確立が必要となっています。

 近年、高齢化が進展し、また、疾病構造の変化により、医療に対するニーズが多様化するとともに、医学・医術自体も高度・専門化しています。こうした中で、障害をもつ人ももたない人にとっても、単に治療を受けるだけにとどまらず、健康の保持・増進から疾病予防と診断・治療及びリハビリテーションまでを含む一貫したケア体制を確立することが、極めて重要なこととなっています。

 現在の障害者に対する医療施策をみると、身体障害に対する医療措置では、児童に対しての育成医療が、また障害者に対しては更生医療があり、それぞれ成果を上げています。しかし、その細部をみると指定医療機関の医療技術の向上や指定配置のバランスが必要と考えられますし、また県内の更生医療件数の84%を占める人工透析への根元的な対処としての腎移植を始め、角膜その他の移植についても、社会や提供者の理解や協力を得て積極的に推進されることが時代の趨勢になっています。
重度心身障害者は、健常者にくらべて受療を多く必要とし、医療費負担も多額になることから、これについては県単独の助成を行っていますが、これからの問題としては対象範囲の拡大も検討する必要があります。それから、疾病原因が不明で治療方法の確立されていない、いわゆる難病患者について障害者としての位置付けやその対策を適切に講ずる必要がありますし、また、障害者における歯科保健対策もこれまで以上に充実強化していくことが重要です。

 障害をもたない人においては、後天的な障害を予防することが大切であり、また、仮に障害の原因が生じた場合は初期の段階で、より迅速適切な医療の提供が必要であり、成人病による疾患から交通事故や労働災害等に起因するものまで広範に亘るこれらの原因に対し、いわゆる一次から三次医療までの一貫した地域医療の体制整備が図られてこそ、このような対応が可能となることから救急医療を始めとしての医療体制の整備拡充が謀題となっており、この体制整備に向け努力しているところです。

 また、発生した障害においては、二次障害の発生予防の処置を始めとして、障害等に係る、相談・判定・治療・訓練・指導等の継続的なリハビリテーションサービスが提供される必要があり、併せて補装具展示や研究・研修機能等総合機能を有するリハビリテーション体制の整備が喫緊の謀題となっています。

育成医療給付の状況 (単位:人)

年度

区分

62

63

2

3

肢体不自由 172 191 150 135 117
視覚障害 142 116 66 54 55
聴覚平衡機能障害 42 69 31 15 13
音声言語機能障害 140 161 141 104 106
心臓障害 125 143 111 68 84
腎臓障害 27 20 15 9 53
その他の内臓障害 101 123 69 53 10
749 823 583 438 438

 (注)元年度から仙台市分は含まない  (資料:県公衆衛生課)

更生医療給付の状況 (単位:千円)

年度

区分

種別

件数

金額

件数

金額

件数

金額

一般 234 13,288 236 4,486 224 2,440
心臓 460 22,377 770 17,482 833 15,263
じん臓 6,241 28,094 5,564 42,195 5,634 44,204
6,935 63,759 6,570 64,163 6,691 61,907

(資料:県障害福祉課)

難病患者の推移 (単位:人)

48 49 50 55 60 3 年平均伸び率
特定疾患 166 335 554 1,331 2,343 4,496 19%
小児慢性 - 32 474 720 1,180 1,665 25%
遷延性 63 65 84 90 107 148 5%
229 432 1,112 2,141 3,630 6,309 19%

(注)小児慢性特定疾患資料研究事業は、平成元年度に仙台市に移管
されたが、H3年の人数は、仙台市分を含む。(資料:県公衆衛生課)

今後の方向

1保健医療体制の充実

●救急患者を、その症状・程度に応じ、適切な診療機能を有する医療施設に受け入れできるよう、一次から三次にわたる救急医療体制の整備、運営を促進するとともに、救急医療情報システムの整備高度化により各救急医療施設の相互連携の強化を図ります。

●医療資源の効率的な活用を図って、地域偏在のない適切な医療を確保するため、地域保健医療計画を推進し、地域特性に応じた望ましい保健医療体制の実現を図ります。

●先進的かつ専門・細分化している小児医療を総合的に推進するため、小児医療体制の整備充実を図ります。

2臓器等の移植の推進

●医療技術の進歩により、角膜、腎臓はもとより骨髄等の多臓器の移植が可能となり、また移植の社会的要請も増大していることから、社会的な啓発・普及を図るとともに、臓器提供と登録が促進され、併せて、的確な施術が効果的に推進されるよう総合的なシステムを構築します。

3難病対策

●難病については、難病治療の医療機関の充実を図るとともに、保健所機能を拡充し、医療と患者家族の連携確保や保健予防等を徹底します。また、患者・家族会の組織化を推進するとともに、難病患者・家族の生活の質的向上を図っていきます。

難病対策の今後の基本方向

  • 医療機関の充実
    • 圏域内の医師研修
    • l、2、3次医療機関との連携(ホームドクターによる治療看護の提供)
  • 保健所機能の拡充
    • 医療と患者家族の連携確保(コーデイネイト)
    • 医療等相談会
    • 各医療間の連帯強化援助
    • 患者家族への保健予防
    • 患者会の育成
  • 患者家族のQOL向上
    • 患者
    • 家族会の組織化
    • 正しい病気の理解
    • 生活の質の向上への挑戦

4在宅心身障害児者への保健・医療の確保

●障害特性のため受診が困難な在宅の重度心身障害者に対する訪問指導の実施や訪問診査等を促進し併せて、地域医療機関のネットワーク化により障害者への適切な医療の確保を図ります。

5障害児者の歯科医療の確保

●地域の歯科診療所、病院と市町村、保健所、福祉事務所などの連携体制を整備し、歯科衛生の教育から治療、その他までの総合的な歯科保健医療の確保とサービスの充実に努めます。

6リハビリテーションシステムの確立

●障害の予防から診断・治療及びリハビリテーションまでを含む一貫した体制の確立に向けて、その中核施設となる「リハビリテーションセンター」を整備するとともに、地域にサテライトステーションを設置し、センターの支援のもとに、医療機関や施設等の連携による地域リハビリ体制の確立を図ります。

7精神科医療対策

●精神病院、精神科診療所の協力の下に、施設医療、在宅医療の一層の充実に努めるとともに、地域での精神障害者の精神症状の緊急増悪に対応するため、応急入院体制と救急精神科医療体制の確立に努めます。

第4節 精神保健対策の充実

現状と課題

 これまでの障害者対策は、精神薄弱者や身体障害者に対するものは制度面を含めて各種の取り組みがなされてきましたが、この中で精神障害者対策は、保健・医療面での対応が重視され、雇用や福祉等を含めた総合的な対策が十分行われてこなかったと指摘されています。昭和63年、精神衛生法が精神保健法に改正され、社会復帰対策が新たに制度化されましたが、社会復帰やリハビリテーションの体制が進まず、入院中心の生活がいまだ主流を占めている傾向にあることから、今後は、すべての障害者に対するノーマライゼーションの理念実現に向けて、精神障害者に対しての総合的な取り組みを強力に推進していくことが必要です。

 精神障害者は、「疾患と障害の共存」という他の障害には見られない特殊性を有していることから、治療と同時にリハビリテーションを進める必要があり、精神医療の一層の充実を図るとともに、「入院中心の治療からケア体制ヘ」という時代の流れの中で、個人としての尊厳を重んじながら、地域社会において生活できるための受け皿と支援システムをさらに整備し、社会復帰と社会参加を積極的に促進する必要があります。そのためには、県民のライフステージに応じた対策が重要であり、また、幼児、児童期においては、発達障害や自閉症、学習障害、不登校といった問題に保健・医療・福祉に併せ、教育、労働の分野からもそれぞれ、保健医療、指導教育、生活訓練等が実施されていますが、必ずしも充分機能したものとなっておらず、更に一体的な相互連携を強めた展開が必要となっています。

 また、思春期をめぐる問題では性に関する事柄や各種神経症などの相談も増加し、その内容も複雑多岐に亘っている傾向から、関係機関での迅速、適切な対応が求められています。また、これからの精神保健対策においては、急増する老人人口の伸びにおける老人保健対策が喫緊の重要課題となっていることから、高齢者の精神的な健康の保持増進や精神障害の予防、痴呆性老人の早期発見、早期治療などに積極的に取り組む必要があり、その対応は保健・医療・福祉その他を含めた幅広い総合的な対策が極めて重要です。

精神病院類別入院患者の推移(各年度末現在)(単位:人)

年度 精神分裂病 そううつ病 てんかん性精神病 梅毒制精神病 中毒性精神病 退行期精神障害 精神神経症 精神病質 精神薄弱 その他(頭部外傷後遺症)
62 2,815 338 155 32 219 417 137 21 173 293(23) 4,600
年度 精神分裂病 そううつ病 てんかん その他の精神病 中毒性精神病 脳器質性精神病 精神神経症 精神病質 精神薄弱 その他
63 2,857 356 138 118 209 541 126 49 161 54 4,609
2,883 367 143 143 206 504 115 12 167 43 4,583
2 2,898 352 143 155 214 569 125 11 176 44 4,687
3 2,939 403 139 158 217 620 103 17 171 47 4,814

(資料:県公衆衛生課)

精神保健対策の概要(平成4年皮)

精神保健対策の概要(平成4年皮)

今後の方向

1妊婦・周産期、乳幼児対策

●精神障害児の発生予防のため、妊産婦に対する健康診査、
指導・教育の徹底を期すとともに、出生後の健康診査の充実を図って
精神障害の発生原因となる各種代謝異常の発見に努めます。
また、1歳6ケ月児、3歳児健康診査をはじめ、
市町村で実施している乳幼児健康診査の充実と、児童相談所などの
関係機関と連携を密にし、脳性麻痺、染色体異常、代謝異常等の早期の発見・治療
及びその後の療育指導を実施し、精神遅滞、肢体不自由等の発現予防に努めます。

2学童期・思春期、青年期対策

●不登校、非行等の問題発生を初期の段階で把握し、
学校、家庭等とで一体的に問題解決を図るとともに、治療機関、
相談機関との連携をもって問題発生の未然防止に努めます。また、
学校保健でも特に精神保健対策を充実させ、精神科医、臨床心理士等の専門化による
カウンセリング体制を従来以上に活用できるようこれの整備を図ります。
なお、本県では児童精神科医が少ないことから、療育機関での
養成を依頼するとともに公立の医療機関、相談機関においても専門職員の養成に努めます。

3成年期対策

●職場や県民に対する精神保健の啓発・普及に向けて、精神保健協会、
精神科医、関係機関等と連携をとるとともに、
職場環境の改善・指導や精神科カウンセリング等での
産業医の配置や産業精神医学の推進を図ります。

4老年期対策

●老人性痴呆疾患対策を充実するため、保健・医療・福祉等の関係機関
との連携強化を図った上で、老年期精神障害の診断、治療、相談・指導体制を確立するため、
老人性痴呆疾患センターの設置と老人性痴呆疾患専門病棟の整備を促進します。

5精神障害者社会復帰対策

●社会復帰を促進するために、通所のデイケアセンター、
共同作業所の整備充実を図るとともに、社会適応、職場適応のための
通院患者リハビリテーション事業やワークトレーニング社の活用がしやすいように
職業リハビリテーションを更に充実させます。

●県内各所への授産施設の整備促進を図るとともに、長期在院者の退院にむけて、
その受け皿としての共同住居等の設置を促進します。

●退院した精神障害者の再入院を防止するため「精神保健指導医」を中心に、
保健所や市町村保健婦による精神保健相談や家庭訪問を一層充実します。

●市町村に設置されている地域患者クラブ、家族会、共同作業所などを活用しながら
、集団活動への取り組みを推進します。

●就労援助に関しては、登録職親制度をより効率的に活用するとともに、
職業リハビリテーションとしての職場適応訓練制度や
ワークトレーニング社等の積極的な活用を推進します。

6精神保健センターの拡充

●精神保健に関する啓発普及活動、精神保健対策などに関する調査研究、
関係機関に対する教育研修、保健所に対する技術支援と助言指導等における
精神保健センター機能の充実を図ります。

 また、精神保健相談、精神科デイケアの充実とともに
障害者の生活支援としての精神障害者援護察、福祉ホーム等の併設についても検討を進めます。

7精神保健相談、指導の充実

●地域の精神科医師・保健婦等が連携して精神保健相談に応じるとともに、
在宅精神障害者に対する訪問指導を強化します。

●精神保健・医療に関するニーズの増加と多様化に対応するため、
保健所をこれらの情報を総括する拠点として位置づけ、地域の医療機関、
社会復帰施設、市町村、その他関係機関との相互連携を図るための
連絡調整並びに指導援助機能の一層の強化を図ります。

8家族会等の育成充実

●精神障害者の家族会や患者クラブ等の地域精神保健活動を主体的に行っている各種団体は、
活動しやすい市町村単位に展開されており、社会復帰活動においても、
これら団体の担う役割は今後ますます重要であることから、
さらに組織の育成・強化を図り集団活動への取り組みを充実します。

9薬物乱用対策

●我が国の薬物乱用は表面的には減少傾向にあるものの依然高い数値を示しており、
世界各国では大きな社会問題にまで発展しています。
ボーダーレスの国際社会の中で、我が国においてもその動向が憂慮される状況にあり、
今後とも、国、司法当局等関係機関との連携を図り防止対策の推進に努めます。


主題:
宮城県障害福祉長期計画 No.1 1頁~47頁

発行者:
宮城県保健福祉部障害福祉課

発行年月:
平成5年3月

文献に関する問い合わせ先:
仙台市青葉区本町3丁目8番1号
宮城県保健福祉部障害福祉課
TEL 022-211-2539