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障害者福祉に関する新長期行動計画

とちぎ障害者福祉プラン

No.2

希望と生きがいに満ちたこころかよう福祉社会をめざして

平成5年2月

栃木県

第2部 基本計画

第1章 福祉のこころづくり

 障害者福祉のめざすところは、障害のある人もない人も、地域社会のなかでともに生活を営むことが正常であるという「ノーマライゼーション」の理念を踏まえ、障害者の「完全参加と平等」を実現することにあります。
 「完全参加と平等」をめざす社会づくりは、障害者のためだけのものではなく、県民全体のためのものであり、豊かな福祉社会を築くことは、すべての県民の願いです。
 そのためには、県民の一人ひとりが障害者問題を身近なものとして正しく理解し、障害者に対する偏見や差別の意識などの「こころの壁」を取り除くことが大切です。
 障害者福祉について、幅広く県民の理解と協力を求めていくとともに、交流・ふれあいを深めるため、第1章では次の事項を行動目標とします。

行動目標

第1 啓発活動の推進

第2 福祉教育の充実

第3 交流・ふれあいの促進

第1 啓発活動の推進

現状と課題

○ 障害者福祉の理念は、だれもが人間らしく暮らせるよう「人間としての権利が守られ、かつ人間としての尊厳がいささかも損なわれることのない社会」を実現することです。

○ 障害者の「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念が真に社会に定着するためには、障害者に対する偏見や差別の意識などの「こころの壁」を取り除く必要があります。

○ 障害者福祉に関する基礎調査(平成4年度)の結果にも見られるように、障害者に対する社会の理解がまだ十分であるとはいえません。

○ 県政世論調査(平成4年度)の結果でも、障害者福祉を充実するため今後力を入れる必要のあるものとして、障害者問題の啓発・広報活動の充実が、27.6%を占めています。

○ これらの問題について、広く県民の意識の啓発を図るための広報活動を推進し、障害者も高齢者も、みんなが安心して生活できる地域社会づくりを進めていく必要があります。

○ また、障害者自身の自立意識の向上も重要な課題です。
  障害者が障害を克服し、積極的に社会に参加する意欲をもつとともに、「問題解決の主役は自分自身である」という認識とその努力に期待し、県民全体で支援していくことが必要です。

障害者の日・身体障害者福祉週間

 1981(昭和56)年の国際障害者年を記念して、国民障害者問題についての理解と認識を深め、福祉の増進を図ることを目的として、毎年12月9日(国際連合で「障害者の権利宣言」を採択した日)を「障害者の日」としています。
 「障害者の日」及びこの日から始まる1週間の「身体障害者福祉週間」には、全国各地で、各種の啓発広報のための行事が行われています。

行動のテーマ

  1. 正しい障害者観の確立
     「福祉」の意識を高めるための運動を展開し、正しい障害者観の確立を図ります。
  2. 自立意識の向上
     各種大会を開催し、積極的に参加することにより、障害者自身の自立意識を高めます。
  3. 広報・広聴活動
     障害及び障害者についての正しい理解と認識を深めるため、啓発活動などを積極的に展開します。
差別や嫌な経験の有無
- ある ない 無回答・不明
身体障害者(%) 28.9 54.3 16.8

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

差別や嫌な経験の有無
- ある ない 無回答・不明
精神薄弱者(%) 48.9 29.6 21.5

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)) 精神薄弱福祉月間  毎年9月1日から30日までの1か月間は「精神薄弱福祉月間」です。精神薄弱者についての理解と協力をより広めるため、全国各地で各種の活動や行事が展開されています。

第2 福祉教育の充実

現状と課題

  •  障害者福祉をより充実していくためには、県民一人ひとりが「福祉」を自らの問題としてとらえ、福祉活動へ積極的に参加・協力していくことが必要です。
  •  障害及び障害者に対する正しい理解と認識をはぐくむためには、啓発活動と相まって、体系的・長期的な福祉教育が大きな役割を担います。
  •  障害者福祉に関する基礎調査(平成4年度)の結果では、身体障害者の39.4%、精神薄弱者の57.3%が、まわりの人びとの障害者に対する正しい理解を求めています。
  •  県政世論調査(平成4年度)の結果では、33.9%の県民が、障害者への理解を深めるための学校教育の必要性をあげています。
  •  だれもが安心していきいきと暮らせるような「こころの基盤」を築くため、小・中・高等学校の児童・生徒に対する福祉教育を充実する必要があります。
  •  また、すべての県民が正しい障害者観をもてるよう、家庭・学校・職場・地域社会などのあらゆる場において、福祉教育を推進していくことが重要な課題です。

行動のテーマ

  1. 学校における福祉教育の充実
     障害者や高齢者への正しい認識をはぐくむとともに、お互いの立場や心情を思いやり、相互に協力しあう精神や態度を養うため、小・中・高等学校などにおける福祉教育の充実を図ります。
  2. 社会教育関係機関における福祉教育の充実
     地域社会の人びとの、障害及び障害者に対する正しい理解と認識を深めるため、社会教育関係機関における福祉教育の充実を図ります。
  3. 社会福祉関係機関における福祉教育の充実
     家庭・学校・職場・地域社会のあらゆる場面での福祉教育を推進するため、社会福祉関係機関における福祉教育講座などの充実を図ります。
  4. 福祉教材の充実
     各種資料や情報を提供するための福祉教材を充実し、利用を促進します。
  5. 関係機関の連携強化
     福祉教育を推進するため、福祉教育関係機関の連携の強化を図ります。
一般社会の障害者理解の深まり
- 思う 少し思う そう思わない

無回答・不明

身体障害者(%) 20.1 36.2 19.9 23.8

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

一般社会の障害者理解の深まり
- 思う 少し思う そう思わない

無回答・不明

精神薄弱者(%) 11.6 33.5 29.6 25.3

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

第3 交流・ふれあいの促進

現状と課題

○ 障害者に対する偏見や差別意識の多くは、いわゆる「障害」を知らないことにも起因しています。特に内部障害、精神薄弱、精神障害などは、一般に理解されにくい要素をもっています。

○ 障害及び障害者を正しく理解し、認識するためには、単に知識を増やしていくだけでは十分とはいえません。

○ 日常生活の中で、実際に障害者との交流・ふれあいを深めることにより、はじめて正しい理解が得られ、「ともに生きる」関係を確認しあうことになります。

○ 学校における交流教育、地域交流キャンプなど、地域社会において、障害のある人とない人がともに理解しあうための、交流・ふれあいの機会や場が少しずつ広がってきています。

○ また、地域の人びとが施設の行事に参加したり、施設入所者が地域の行事に参加する機会も増えています。

○ これらの活動をさらに充実し、さまざまな個性をもつ人びとが、お互いの個性を認めあい、人間として尊重しあいながら、こころをかよわせることができるような社会づくりを進める必要があります。

行動のテーマ

  1. 交流・ふれあいの促進
     障害のある人とない人が、ともに理解しあいながら生活することができるよう、相互交流を促進します。
  2. 交流・ふれあいの場の充実
     障害者への理解を深め、積極的な社会参加を進めるため、交流・ふれあいの場を広げさらに充実します。
好意を感じ、うれしく思った経験の有無
- ある ない

無回答・不明

身体障害者(%) 43.1 33.2 23.7

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

好意を感じ、うれしく思った経験の有無
- ある ない

無回答・不明

精神薄弱者(%) 47.0 28.4 24.6

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

手話の解説

第2章 保健・医療の充実

 障害のある人にとって、健康を保持し増進するための保健・医療の充実は、障害者福祉を進めるうえでとりわけ重要な課題であり、障害の種類・程度や障害者の年齢など、一人ひとりの状態に応じたきめ細かな対策が必要です。
 この対策の基本は、心身障害の発生予防と早期発見・早期療育にあります。障害の発生原因を的確に把握し、適切な対策を講じていかなければなりません。
 そして、ライフステージに応じた適切な保健・医療を提供するため、医療機関をはじめ関係機関が連携を保ちながら、障害の発生予防から自立のためのリハビリテーションに至る一貫した体制の確立に努めることが大切です。
 これらを踏まえ、障害者保健・医療の充実を図るため、第2章では次の事項を行動目標とします。

行動目標

第1 障害の発生予防

第2 早期発見・早期療育

第3 医療及び医学的リハビリテーションの充実

第4 ひとづくりの推進

第5 保健・医療・福祉の連携

第1 障害の発生予防

現状と課題

○ 障害の発生予防は、先天的障害と後天的障害の両面から取り組まなければなりません。

○ 先天的障害の発生を予防するため、母子保健の知識の普及・啓発、訪問指導などの母子保健対策を推進し、健やかなこどもを産み育てるための施策をさらに充実する必要があります。

○ 後天的障害の発生を予防するため、成人病をはじめとする後天性疾患の予防と、疾病や交通事故などによる後遺症としての障害の発生予防に努めなければなりません。

○ 成人病は、長い間の不適切な食生活、運動不足、ストレスの増大などに起因することが多く、その予防にあたっては、日常の生活習慣全体を健全なものにすることが大切です。

○ そのため、県民総ぐるみによる健康づくりを積極的に推進し、「脳卒中ワースト1を返上し、ヘルシーとちぎの建設」をめざして、県民一人ひとりが健康的な生活スタイルを確立することが重要です。

○ また、寝たきりにならない、寝たきりは防止できる、寝かせきりにしないという意識を高齢者はもとより、若い人にまで広めるため、正しい理解と知識の普及を図る必要があります。

○ 精神保健対策も重要な課題です。「心の健康づくり」などの精神保健対策、麻薬・覚せい剤など薬物乱用による精神保健対策や老人精神保健対策をさらに充実していく必要があります。

行動のテーマ
  1.  母子保健対策
     先天的障害や出産前後における障害の発生を予防するため、母子保健対策の充実を図ります。
  2.  成人・老人保健対策
     県民総ぐるみによる健康づくりをはじめとして、成人・老人保健対策の充実を図ります。
  3.  寝たきり防止対策
     寝たきりを防止するための普及啓発活動を推進します。
  4.  精神保健対策
     精神障害の発生予防など、精神保健対策の充実を図ります。
市町村における母子保健訓練(個別相談指導)の実態状況
相談指導の内容 件数(平成3年度)
思春期の保健に関すること 126件
妊娠、分娩、産褥に関すること 4,271件
健康、栄養に関すること 48,865件
育児に関すること 29,171件
その他 10,578件

資料:健康対策課

老人保健法に基づく健康診査(基本健康診査)受診率の推移

老人保健法に基づく健康診査(基本健康診査)受診率の推移グラフ
資料:健康対策課

第2早期発見・早期療育

現状と課題

○ 障害の早期発見・早期療育は、発生予防とならんで障害者の保健・医療対策の基本です。

○ 障害者福祉に関する基礎調査(平成4年度)の結果では、身体障害者の59.0%、精神薄弱者の32.2%が、障害の早期発見・早期療育及び障害者医療の充実を求めています。

○ 早期発見対策については、新生児期から幼児期まで、各発達段階における継続的な健康診査を充実するとともに、検査項目などの内容を充実し、受診率の向上を図る必要があります。

○ 早期療育対策については、栃木県身体障害医療福祉センター、保健所、児童相談所、心身障害児施設などで積極的に取り組んでいますが、さらに関係機関の連携や療育の一貫性の確保が必要です。

○ そのためには、心身障害の早期発見・早期療育システムを、全県下に普及定着させていかなければなりません。

○ また、理学療法士・作業療法士・言語療法士など専門スタッフを確保し、療育機能の充実を図るとともに、関係機関の有機的連携を強化することも必要です。

行動のテーマ
  1. 早期発見対策
     健康診査体制の充実など母子保健対策の総合的な推進に努め、心身障害の早期発見対策の充実を図ります。
  2. 早期療育対策
     各種の療育対策事業を積極的に推進するとともに、心身障害児の早期発見・早期療育システムの普及定着を促進します。
乳幼児検診の二次検診における判定状況

乳幼児検診の二次検診における判定状況グラフ
資料:健康対策課

心身障害児の保育所への入所状況

心身障害児の保育所への入所状況グラフ
資料:健康対策課

母子通園ホーム通園児童数の推移(各年度4月1日現在)

母子通園ホーム通園児童数の推移(各年度4月1日現在)グラフ
資料:健康対策課

第3 医療及び医学的リハビリテーションの充実現状と課題

現状と課題

○ 障害者福祉を進めるうえで、医療とのかかわりは欠かすことができません。

○ 「栃木県保健医療計画」に基づき各種施策が進められていますが、特に、医学的リハビリテーションに関する診断・治療・相談及び指導を行う施設の整備と、医療及び医学的リハビリテーション体制の体系的な整備が望まれます。

○ 精神障害者の医療対策については、入院中心の医療から、社会生活を送りながらの通院中心の医療へという方向で、さまざまな取り組みがなされています。今後も、緊急時の対応や社会復帰対策などについて、引き続き充実する必要があります。

○ 歯科治療を受けにくい重度心身障害児者や寝たきり老人などが、適切な治療を受けられるよう、関係団体、医療機関の協力のもとに、歯科医療対策をさらに充実する必要があります。

○ 障害を軽減し、自立を促進していくために、医学的リハビリテーションの果たす役割はとても重要です。
 障害者が、相談から判定・治療・訓練・指導に至るまでの一貫したサービスが受けられるよう、教育・職業及び社会のリハビリテーション各分野との有機的な連携のもとに、医学的リハビリテーションを総合的に推進しなければなりません。

○ 障害者の一日も早い社会復帰や寝たきり老人などの機能の維持・回復のため、老人保健施設、デイサービスセンターなどの整備を進め、医学的リハビリテーションの実施体制を充実する必要があります。

○ また、理学療法士、作業療法士、言語療法士などの専門職員を確保するとともに、在宅ケアの体制を整備することも必要です。

行動のテーマ
  1.  医療対策の充実
     精神障害者医療対策をはじめ、障害者歯科医療対策、痴呆性老人対策などを充実します。
  2.  医学的リハビリテーションの推進
     リハビリテーションの普及及びリハビリテーション施設の整備を促進するとともに、専門職員体制を充実するなど、医学的リハビリテーションの総合的な推進に努めます。
  3.  在宅ケアの充実
     リハビリテーション施設を通所によっても利用できない障害者のために、訪問による在宅ケアの充実を図ります。
リハビリテーション施設数の推移 (各年度4月1日現在)

リハビリテーション施設数の推移グラフ(各年度4月1日現在)
資料:高齢対策課・健康対策課

障害者歯科医療診療実績(実人員)

障害者歯科医療診療実績グラフ(実人員)
資料:障害福祉課

第4 ひとづくりの推進現状と課題

現状と課題

○ ますます増大し、多様化するニーズに対応するため、保健・医療従事者を確保することは、重要な課題です。

○ 医師、歯科医師、看護職員、理学療法士、作業療法士などの数を、人口10万対で全国平均と比較しても、まだ十分であるとはいえません。

○ 保健・医療従事者について、県内の需要に対応できるよう、養成・確保するとともに、資質の向上に努めることが必要です。

○ 人材を確保するため、ナースセンターを指定し、未就業看護職員に対して職業紹介や看護力再開発講習会などを実施しています。

○ これらの事業をさらに充実し、未就業有資格者の掘り起こしなど、潜在している人材の活用を効果的に進める必要があります。

○ 人材の養成についても積極的な取り組みが必要です。
  看護婦などの資質の向上を図るため、各種講習会などを実施していますが、これらの事業をさらに充実する必要があります。

○ 人材の養成・確保を進めるうえで、看護や福祉に対する理解と業務に対する認識を深めることも重要です。
  また、職場環境の整備や労働条件の改善に取り組み、魅力のある働きやすい職場づくりに努める必要があります。

行動のテーマ
  1.  専門スタッフの養成・確保
     看護職員などの養成力の拡充整備、定着対策、再就業の促進、資質の向上、イメージアップ対策を推進します。
     また、理学療法士・作業療法士について、需要の動向に応じ、その養成・確保を図ります。
看護婦(士)数及び准看護婦(士)数の推移(人口10万対)(各年12月31日現在)

看護婦(士)数及び准看護婦(士)数の推移グラフ(人口10万対)(各年12月31日現在)
資料:医務課

理学療法士数及び作業療法士数の推移(人口10万対)(各年10月1日現在)

理学療法士数及び作業療法士数の推移グラフ(人口10万対)(各年10月1日現在)
資料:医務課

第5 保健・医療・福祉の連携現状と課題

現状と課題

○ 障害者福祉を推進するためには、さまざまな分野の連携と協力が必要です。とりわけ、保健・医療・福祉の連携は欠かすことができません。

○ 「地域保健医療計画」や現在策定作業が進められている「栃木県保健医療計画」及び策定が予定されている「栃木県老人保健福祉計画」、「市町村老人保健福祉計画」では、保健・医療・福祉の連携を図ることが重要な課題とされています。

○ 保健・医療・福祉の連携を図り、「いつでも、どこでも、だれでも」的確なサービスが受けられるようにしていく必要があります。

○ そのためには、市町村に設置されている「高齢者サービス調整チーム」や保健所に設置されている「保健所保健・福祉サービス調整推進会議」の機能を充実し、連携を強化することが必要です。

○ また、在宅の要介護老人の家族からの相談に応じ、必要な保健・福祉サービスの調整を行う在宅介護支援センターや、高齢者に対する訪問看護、訪問リハビリテーション、在宅医療機盤の管理などを行う訪問看護ステーションの整備を進める必要があります。

○ 障害者が、相談から判定・治療・訓練・指導に至るまでの一貫したサービスが受けられるよう、保健・医療・福祉の連携のもとに、効果的なサービスの提供に努めることが必要です。

行動のテーマ
  1. 保健・医療・福祉の連携のとれた計画の推進
     保健・医療・福祉にかかわる計画をより効果的に推進するため、各分野相互の連携強化に努めます。
  2. 保健・医療・福祉サービスの効果的な提供
     保健・医療・福祉の連携を基本としたサービスの内容の充実と、その効果的な提供に努めます。

第3章 教育の充実

 障害者一人ひとりが、いきいきと個性を発揮し、その可能性を最大限に伸ばしていくためには、それぞれの障害や特性に最も適した教育の場・学習の機会を整備し、個性に応じた教育を進めていくことが大切です。
 また、生涯学習の観点から、社会教育の場においても障害者の学習の機会を整備し、充実していくことが必要です。
 障害者一人ひとりの、生涯にわたる教育・学習活動を充実するため、第3章では次の事項を行動目標とします。

行動目標

第1 就学相談・指導の充実

第2 学校教育の充実

第3 社会教育の充実と生涯学習の推進

第1 就学相談・指導の充実現状と課題

現状と課題

○ 障害児に対する治療や教育は、可能なかぎり早期に対応することが大切です。
  早期発見・早期治療とあわせて、早期教育を充実する必要があります。

○ 心身障害児教育相談、電話や巡回による家庭教育相談など、各種の相談指導事業を実施していますが、これらの事業をさらに充実する必要があります。

○ 就学指導では、障害児の現在及び将来のあるべき方向を見通した、適切できめ細かな教育相談を進めることが大切です。

○ 現在、適正就学を図るために、県や市町村に心身障害児就学指導委員会が設置され、教育や就学の相談が行われています。

○ 障害児についてのさまざまな観察・調査・診断に基づく適正な判断の中心機関となる心身障害児就学指導委員会を、さらに充実する必要があります。

○ 保健・医療・福祉などの関係機関との連携を密にするとともに、総合教育センターの相談指導機能を十分に活用することが必要です。

行動のテーマ
  1. 各種相談事業の充実
     適切で総合的な就学相談が行えるよう、各種相談事業の充実を図ります。
  2. 適正就学指導の推進
     心身障害児の適正で円滑な就学を進めるため、適正就学指導を推進します。
心身障害児教育相談件数の推移(来所相談)

心身障害児教育相談件数の推移グラフ(来所相談)
資料:教育委員会総務課

家庭教育相談件数

家庭教育相談件数グラフ
資料:社会教育課

第2 学校教育の充実

現状と課題

○ 心身に障害のある幼児の教育は、医療及び福祉の分野との密接な連携のもとに、できるかぎり早期から行うことが大切です。
 幼稚園や盲・ろう・養護学校において、心身障害幼児に対する教育機会を広げるとともに、指導内容を一層充実していかなければなりません。

○ 特殊学級や盲・ろう・養護学校の児童・生徒が能力を最大限に伸ばし、充実した学校生活が送れるよう、指導内容や相談体制などをさらに充実する必要があります。

○ 後期中等教育は、生徒一人ひとりの自立と社会参加を促進するうえで特に重要です。
 このため、養護学校高等部の適正配置や障害の重度化・重複化に配慮した受け入れ体制の整備が必要です。

○ 障害を克服し、社会の一員として可能なかぎり自立できるようにするため、労働及び福祉の分野と連携しながら、時代に即応した適切な進路指導を推進する必要があります。

○ すべての児童・生徒に豊かな福祉のこころと福祉を実践する力を育てるとともに、障害児の社会性を養うため、福祉教育や交流教育を進めてきましたが、今後も一層推進する必要があります。

○ 障害児一人ひとりの個性と、多様な障害の状態に即した教育を一層充実するため、教職員の資質の向上に努めていかなければなりません。

行動のテーマ
  1. 就学前教育の充実
     幼稚園や盲・ろう・養護学校などにおける就学前教育を充実します。
  2. 義務教育の充実
     特殊学級や盲・ろう・養護学校などにおける義務教育を充実します。
  3. 後期中等教育の充実
     盲・ろう・養護学校高等部及び高等学校などにおける後期中等教育を充実します。
  4. 適切な進路指導
     障害児の社会的自立を促進するため、後期中等教育などにおける適切な進路指導を推進します。
  5. 福祉教育・交流教育の推進
     障害児と幼稚園・小・中・高等学校の幼児・児童・生徒との相互理解を深めるため、福祉教育・交流教育を推進します。
  6. 教職員の資質の向上
     障害児教育を一層充実するため、教職員研修を充実します。
特殊学級に通う児童・生徒数(平成4年5月1日現在)

特殊学級に通う児童・生徒数グラフ(平成4年5月1日現在)
資料:義務教育課

特殊教育諸学校に通う児童・生徒数(平成4年5月1日現在)

特殊教育諸学校に通う児童・生徒数グラフ(平成4年5月1日現在)
資料:高校教育課

第3 社会教育の充実と生涯学習の推進

現状と課題

○ 障害及び障害者に対する正しい理解と認識を深めるため、公民館活動や学校開放講座などの社会教育活動を通して、地域社会の人びとへの啓発を行っています。

○ これらの活動をさらに充実し、障害者相互並びにボランティアや地域住民との交流と理解を促進することが必要です。

○ 障害者の社会教育活動の場としての社会教育施設の有効な利用を促進するため、施設や設備を整備し、各種サービスの拡充を図る必要があります。

○ 障害者にとっても、変化する社会とのつながりをもちながら、自分のもつ多くの可能性を追求し、自ら生活の充実に向けて努力することは大切なことです。

○ 家庭教育、就学前教育、学校教育、社会教育及び福祉施設などあらゆる場において、障害者が生涯にわたる学習の機会や場を確保することができるよう、多面的に推進していく必要があります。

行動のテーマ
  1. 社会教育の充実
     地域社会の人びとが、障害及び障害者に対する正しい理解と認識を深めるとともに、障害者自身も積極的に社会参加するよう、社会教育活動の充実強化に努めます。
  2. 生涯学習の推進
     障害者が、人生のそれぞれの時期に、必要に応じて学習することができるよう、生涯学習を総合的に推進します。
学級・講座などの開設状況

学級・講座などの開設状況グラフ
資科:社会教育課

福祉・ボランティア講座の実施状況(平成2年度実績)
講座 実施回数

住民福祉講座

(不特定多数対象)

147回

住民福祉講座

(特定対象)

54回

ボランティア

活動導入講座

295回


資料:県社会福祉協議会

第4章 雇用・就業の促進

 人は、就労を通じて社会に参加することが多く、就労は、人にとって単に生活の糧を得る手段であるだけではなく、社会への参加・貢献、そして生きるよろこびを与えてくれるものです。
 障害者のだれもが、その適性と能力に応じた適切な就労の場において、働く権利が、等しく生涯にわたって保障されなくてはなりません。
 一般雇用はもちろん、福祉的就労も含め、障害者一人ひとりの働く意欲を尊重し、働く場を確保するための条件整備が必要です。
 障害者の職業的リハビリテーションをさらに充実するため、第4章では次の事項を行動目標とします。

行動目標

第1 雇用の促進と安定

第2 職業訓練の充実

第3 福祉的就労の場における就労の促進

第1 雇用の促進と安定

現状と課題

○ 障害者が働く場を得て、障害のない人とともに社会経済活動に参加し、そこに安定した生活の確立と生きがいを見いだせるようにすることが、障害者福祉の基本です。

○ 一人でも多くの障害者が職場に定着し、仲間とともに楽しく働けるようにするため、「障害者の雇用の促進等に関する法律」などに基づき、さまざまな施策が展開されています。

○ 近年、県民とりわけ事業主の理解と認識が深まり、平成4年6月1日現在、一般の民間企業における雇用率は1.58%となっています。
 しかし、法定雇用率未達成企業の割合は42.4%とまだ多く、業種別・規模別にも格差がみられます。

○ 障害者の雇用・就業を促進するためには、障害者自身が自立への自覚と意欲を高めることが大切ですが、一方において、事業主やともに働く人びとの理解も欠かせない問題です。

○ 就職が可能な職種の開発を進めるとともに、公共職業安定所や障害者職業センターが中心となって、企業と関係機関の緊密な連携を図ることが必要です。

○ 今後は、特に重度障害者の雇用の促進に重点を置き、障害者の雇用を阻害している要因を把握しながら、可能なかぎり一般雇用の場を提供することを基本として、一人ひとりの障害者の特性に応じた対策を講じる必要があります。

行動のテーマ
  1. 職業相談・職業指導の充実
     障害の種別、程度及び一人ひとりのニーズに応じた職業相談・指導の充実に努めます。
  2. 就労援助制度の充実
     障害者が一人ひとりの適性に応じた就職ができるようにするため、各種就労援助制度を充実し、利用を促進します。
  3. 職域拡大・環境改善の強化
     労働環境の改善、職場開発の援助、就職可能な職種の開発など、障害者の働く場の拡大や環境の改善に努めます。
障害者の求職登録数及び就職者数(各年度3月31現在)

障害者の求職登録数及び就職者数グラフ(各年度3月31現在)
資料:職業安定課

民間企業の障害者雇用状況(各年度6月1日現在)

民間企業の障害者雇用状況グラフ(各年度6月1日現在)
資料:職業安定課

第2 職業訓練の充実

現状と課題

○ ともすれば、社会の変化に対応することが困難になりがちな障害者にとって、職業訓練は、就労の安定のためにきわめて重要な課題です。

○ 幅広い職業訓練の機会を確保するとともに、障害の種別や程度に応じてきめ細かな配慮をしながら、体系的・効果的に訓練を行うことが大切です。

○ 障害者の職業訓練の機会としては、就職の前に事業所で行われる訓練や、福祉的就労の場で行われる作業訓練などのほかに、専門的な能力開発の場として、高等産業技術学校があげられます。

○ 高等産業技術学校での訓練が可能な障害者については、入校を促進し、効果的な職業訓練を実施していく必要があります。

○ 障害者の入校を促進するにあたっては、障害者の利用を配慮した施設設備の整備や、訓練科目への配慮など、多様なニーズに応じた受け入れ体制の整備が必要です。

○ 全国身体障害者技能競技大会に参加選手を派遣することにより、技能者として社会に参加する自信と誇りと意欲を高め、職業能力の開発を促進することも大切です。

行動のテーマ
  1. 高等産業技術学校の充実
     障害者に効果的な職業訓練を実施するため、高等産業技術学校の充実に努めます。
  2. 技能競技大会への参加
     全国身体障害者技能競技大会への参加を促進します。
就労の状況
- 仕事についている 仕事についていない

無回答・不明

身体障害者(%) 30.7 46.7 22.6


「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)
(「仕事についている」の中には作業所、授産施設などの福祉的就労形態も含む)

就労の状況
- 仕事についている 仕事についていない

無回答・不明

精神薄弱者(%) 53.2 37.5 9.3

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)
(「仕事についている」の中には作業所、授産施設などの福祉的就労形態も含む)

第3 福祉的就労の場における就労の促進

現状と課題

○ 民間企業での雇用が困難な障害者も、さまざまなかたちで、仕事を通じて社会とのかかわりをもつことを望んでいます。

○ このため、身体障害者や精神薄弱者のだめの授産施設、福祉工場、福祉作業所や精神障害者のための授産施設、共同作業所など、一般雇用の場に代わる福祉的就労の場が設けられています。

○ 今後、民間企業での雇用が困難な養護学校卒業生や脳卒中後遺症者、退院してもすぐには雇用に結びつかない回復途中の精神障害者などが増加することが予想されます。

○ このような人びとのための福祉的就労の場を、需要の実態に応じて計画的に整備し、一人ひとりの障害者に、その時に最も適切な就労の場を確保する必要があります。

○ その際、地域的配置の面で適切な配慮をしたり、送迎体制を確保するなど、重度障害者のニーズに即した対応が望まれます。

○ 福祉的就労の場で仕事をしている障害者の生活の安定を図り、就労意欲を高めるため、授産製品の開発、受注及び販路拡大の施策の充実も必要です。

行動のテーマ
  1. 身体障害者授産施設などにおける就労促進
     身体障害者授産施設及び身体障害者福祉工場の整備を促進し、就労と社会参加への意欲を高めます。
  2. 精神薄弱者授産施設などにおける就労促進
     精神薄弱者授産施設及び障害者福祉作業所の整備を促進し、社会性を高める訓練とあわせて作業能力の開発を進めます。
  3. 精神障害者授産施設などにおける就労促進
     精神障害者授産施設及び小規模共同作業所の整備を促進し、作業能力の向上と一日も早い社会復帰を促進します。
障害者福祉作業所数の推移(各年度4月1日現在)

障害者福祉作業所数の推移グラフ(各年度4月1日現在)
資料:障害福祉課

第5章 福祉サービスの充実

 障害者福祉は、障害者の基本的人権を守り、自立と社会参加を進めていくものでなくてはなりません。
 障害者にとって自立とは、障害の種別や程度あるいは環境などにそれぞれ違いはあっても、人間としての誇りと尊厳、そして自立へのこころざしをもって生きていくことにほかなりません。
 障害者に対する福祉サービスは、このような目標を実現していくための諸条件を整備し、充実していくことです。
 そのための基盤として、生活の安定を図るとともに、在宅福祉サービスと施設福祉サービスをきめ細かく一元的かつ計画的に提供する地域福祉の体制づくりを推進することが必要です。
 福祉関係八法の改正を踏まえ、市町村との連携を図りながら福祉サービスを充実していくため、第5章では次の事項を行動目標とします。

行動目標

第1 生活安定のための援助の充実

第2 在宅生活支援サービスの充実

第3 施設福祉サービスの充実

第4 ひとづくりの推進

第1 生活安定のための援助の充実

現状と課題

○ 障害者一人ひとりが、地域社会の中で自立した生活を営んでいくためには、いくつかの条件整備が必要です。
  その一つに、生活を支えるための所得保障の充実があります。

○ 障害者福祉に関する基礎調査(平成4年度)の結果では、身体障害者の28.6%、精神薄弱者の25.2%が、障害者やその家族に対する年金や各種手当などの経済的援助の充実を求めています。

○ 所得保障の基本となるのは、国の所得保障制度です。年金制度や各種手当制度の充実について、引き続き国に要望していく必要があります。

○ このほかにも、重度障害者などの医療費の自己負担分の助成、税の減免、運賃・料金の割引、資金の貸付などの経済的支援が行われており、これらの制度の充実も必要です。

○ また、「親なき後」の障害者の生活の安定と福祉の向上を図るための相互扶助制度である心身障害者扶養共済も大切な制度です。加入を促進し、生活基盤の安定を図る必要があります。

○ これらの年金や手当及び関連制度の周知を徹底し、制度を有効に利用できるようにすることが大切です。

行動のテーマ
  1. 年金・手当の充実と制度の周知
     年金制度や手当制度の充実について、国に要望するとともに、心身障害者扶養共済制度への加入を促進します。
     また、各種制度の周知徹底に努めます。
  2. 経済的負担の軽減
     重度障害者などの医療費の自己負担分の助成、運賃・料金の割引制度などの充実により、経済的負担の軽減に努めます。 
  3. 生活の安定と向上
     生活の安定と向上を図るため、必要な資金の貸付を行います。
障害基礎年金(国民年金)の受給権者数

障害基礎年金(国民年金)の受給権者数グラフ
資料: 国民年金課

障害基礎年金(厚生年金)の受給権者数

障害基礎年金(厚生年金)の受給権者数グラフ
資料:保険課

第2 在宅生活支援サービスの充実

現状と課題

○ 障害者や高齢者が地域社会において快適な生活を送れるようにするため、さまざまな在宅生活支援サービスが行われています。

○ 巡回相談・訪問指導などの相談制度もその一つです。障害者や高齢者が日常生活を営む上で抱えている問題について、いつでも、気軽に相談できるような体制が求められています。在宅介護支援センターにおいて、24時間体制の相談・指導制度が始まりましたが、より一層きめ細かな相談活動を充実し、活性化していく必要があります。

○ 障害を軽減し、日常生活能力を向上させるとともに、介助者の負担軽減のためなくてはならないのが、福祉機器の存在です。
  障害者の社会参加を進めていくためにも、補装具・日常生活用具をはじめとする福祉機器についての理解を深め、十分に活用する必要があります。

○ 重度の障害者や寝たきりの高齢者てあっても、自分の生活を手助けしてくれる介助者がいれば、地域の中で主体的な生活を送ることができます。このため、ホームヘルパーの増員と資質の向上は欠かせません。
 また、手話・点訳など各種奉仕員の養成を図り、派遣の要請にいつでも応じられる体制をつくることが大切です。

○ 在宅福祉を推進するために、施設の機能を活用することも重要な課題です。
 入浴などのサービスを提供するデイサービス事業、一時的に家庭での介護が困難な場合に利用する短期入所事業などをさらに充実する必要があります。
 その際、身体障害者と高齢者に分けて実施されている事業について、地域の実情に応じて、相互に利用できるようにするといった柔軟な対応が求められています。デイサービス事業については、それぞれの施設を相互に利用できるようになりましたので、今後の効果的な利用が望まれます。

○ 社会参加の促進も、在宅福祉の向上を図るための重要な課題です。
 社会参加促進センターを充実し、地域における障害者の自立生活と社会参加をさらに進めていく必要があります。

○ 地域社会での自立と社会参加をめざすうえで、支援体制の整った生活の場を確保することも必要です。
 精神薄弱者福祉ホーム、精神薄弱者グループホーム、精神障害者福祉ホーム、精神障害者援護寮などの制度の普及・充実とあわせ、障害者や地域の実情に応じたさまざまな取り組みが必要です。

福祉サービス制度の利用状況
- よく利用する たまに利用する 利用していない 無回答・不明
身体障害者(%) 6.9 22.1 57.1 13.9

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

福祉サービス制度の利用状況
- よく利用する たまに利用する 利用していない 無回答・不明
精神薄弱者(%) 4.3 14.9 61.4 19.4

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

現状と課題

○ そして、何よりも今必要なことは、重度障害者の社会参加と自立への取り組みです。
 重度障害者のなかには、一般雇用や福祉的就労にもなじめず、家庭にこもりがちになっている人がたくさんいます。

○ 重い障害があっても、家庭から外に出てさまざまな人とふれあうことにより、生きがいやよろこびが生まれてきます。
 地域社会の中で、重度障害者が安心して「社会参加と自立への第一歩」をふみだせるようなあたたかい交流の場を設け、心のよりどころとして育てていくことが必要です。
 これは、行政はもとより、県民全体が真剣に考え、取り組んでいかなければならない大きな課題です。

○ このような在宅生活支援サービスを総合的に推進するため、それぞれの地域の福祉基盤を整備し、充実しなければなりません。
 そのためには、地域における福祉活動を活性化し、行政はもちろん、地域社会全体で福祉に対する取り組みを強化する必要があります。
 特に、地域福祉を推進する組織の育成強化、地域福祉のネットワークづくり、障害者関係団体の育成などへの積極的な取り組みが必要です。
 また、地域福祉活動の拠点となる施設の整備を図る必要があります。

相談員・奉仕員などの設置数(平成4年4月1日現在)

相談員・奉仕員などの設置数グラフ(平成4年4月1日現在)
資料:障害者福祉課

行動のテーマ
  1. 相談・指導の充実強化
     各種相談員や公的機関などによる相談・指導の充実強化に努めます。
  2. 福祉サービスの充実
     各種奉仕員の養成・派遣、補装具・日常生活用具など福祉機器サービスの充実、在宅介護の支援など、福祉サービスを充実します。
  3. 施設機能の活用
     身体障害者関係施設、精神薄弱児者関係施設及び老人関係施設の機能の活用を促進します。
  4. 訓練の充実と社会参加の促進
     障害者が住み慣れた地域社会の中で自立し、社会に参加できるようにするため、必要な援護を行い、障害者の社会参加を促進します。特に、重度の障害者の社会参加への取り組みを進めます。
  5. 地域福祉活動の推進
     地域福祉を推進する組織の育成強化、地域福祉のネットワークづくり、障害者関係団体の育成など地域福祉活動を推進するとともに、地域福祉活動の拠点となる施設の整備を図ります。
     また、地域福祉基金及び地域福祉振興基金(栃の実基金)の積極的な活用と効果的な運用に努めます。
身体障害(児)者補装具交付状況(各年度3月31日現在)

身体障害(児)者補装具交付状況グラフ(各年度3月31日現在)
資料:障害福祉課

第3 施設福祉サービスの充実

現状と課題

○ 近年、在宅福祉が叫ばれ、可能なかぎり地域社会での生活を指向する傾向が強まってきていますが、障害の軽減、生活・機能訓練、授産など、障害者の社会復帰をめざす各種福祉施設のもつ役割もきわめて大きいといえます。

○ 県政世論調査(平成4年度)の結果では、28.8%の県民が障害者関係施設の充実の必要性をあげています。

○ 現在、施設の多くは、基本的には社会復婦を目標に運営されていますが、障害の重度化、障害者の高齢化の傾向などにより、入所が長期化し、社会復帰が難しい障害者も増えています。

○ 計画的に施設整備を進めてきていますが、障害の状態や年齢に対応し、地域の状況を配慮した整備をさらに促進する必要があります。特に、重度障害者のための配慮が必要です。

○ 高齢化社会を迎えて、障害のある高齢者を援護する施設の整備も重要な課題です。
 地域的配置に配慮しながら、特別養護老人ホームなどの整備を進めていく必要があります。

○ 施設入所者にとっては、施設が生活の場となっています。生活の質の向上を図るため、適切な処遇の確保と処遇内容の一層の充実に努める必要があります。

○ 施設は地域における重要な社会資源の一つです。施設機能を強化するとともに、施設機能の地域開放を積極的に進めていく必要があります。

行動のテーマ
  1. 施設の整備及び充実
     必要なときに必要な施設を利用できるよう、障害者や高齢者のニーズに応じて、障害者関係施設や寝たきり老人関係施設などを地域的配置に考慮しながら計画的に整備し、充実に努めます。
  2. 施設におけるリハビリテーション機能の充実
     施設入所者や在宅者の機能回復などを促進するため、施設におけるリハビリテーション機能を充実します。
  3. 施設における処遇内容の充実
     障害の状態や年齢などに応じた適切な処遇を確保し、処遇内容の一層の充実に努めるとともに、社会復帰を促進します。
  4. 施設機能の強化
     施設機能の強化を図るとともに、施設機能の地域開放を促進します。
特別養護老人ホーム数及び入所定員(各年度3月31日現在)

特別養護老人ホーム数及び入所定員(各年度3月31日現在)
資料:高齢対策課

第4 ひとづくりの推進

現状と課題

○ 福祉サービスの将来を担う人材の養成と確保は、保健医療従事者の養成・確保とならんで、21世紀に向けての重要な課題です。

○ 県政世論調査(平成4年度)の結果でも、今後力を入れる必要のあるものとして、奉仕員などによる福祉サービスの充実が22.9%を占めています。また、ボランティア活動の育成・支援については、17.2%の県民がその必要性をあげています。

○ 障害者や高齢者の多様なニーズにきめ細かく対応するためには、専門職員の養成・確保はもちろんのこと、ボランティアなどサービス供給のかなめとなるひとづくりを総合的に推進する必要があります。

○ 人材を養成するため、介護福祉士養成施設の整備を促進するとともに、各種研修会を実施することにより、福祉マンパワーの資質の向上を図ることが必要です。

○ 人材を確保するため、福祉人材センターを設置運営し、社会福祉施設及び在宅福祉サービスの従事者、ホームヘルパーなど福祉マンパワーを確保するとともに、一層の増員を図る必要があります。

○ 人材の養成・確保を進めるうえで、介護や福祉についての理解や業務に対する理解を深めることも重要です。
 また、労働条件の改善、福利厚生の充実に取り組み、魅力と活力のある働きやすい職場づくりに努める必要があります。

○ ボランティアの育成とその活動の充実も重要な課題の一つです。
 地域福祉を支える人材としてのボランティアを育成し、生涯を通じての継続的な活動に発展させていくことが必要です。

行動のテーマ
  1. 福祉マンパワーの養成・確保
     ますます増大し、多様化するニーズに対応するため、福祉マンパワーの養成・確保に努めます。
  2. 社会福祉のイメージアップ
     社会福祉施設やホームヘルパーなどのイメージアップを促進します。
  3. 福祉マンパワーの処遇向上
     労働条件の改善、福利厚生の充実など、福祉マンパワーの処遇向上を促進します。
  4. ボランティア活動の促進
     ボランティアの育成及びボランティア活動を積極的に促進します。
ホームヘルパー数及び利用者数(各年度3月31日現在)

ホームヘルパー数及び利用者数グラフ(各年度3月31日現在)
資料:高齢対策課

ボランティアの人数
区分 区分 団体数・人数
グループ 登録グループ数 498団体
その他のグループ数 98団体
登録グループの人数 23,452人
その他のグループに人数 3,430人
個人 登録ボランティアの人数 3,815人
その他ボランティアの人数 74人

資料:県社会福祉協議会

第6章 福祉のまちづくり

 障害者が地域社会の一員として、障害のない人と同じように社会生活を営んでいくためには、自立した家庭生活、社会活動に伴う円滑・安全な移動の確保、さらには社会生活にかかわりの深い公共的施設の利便の確保など、障害者にとって住みよい生活環境が整えられなければなりません。
 これらの生活環境の整備は、ただ障害者だけのものとしてではなく、すべての県民が安全で快適な生活ができるよう「人にやさしいまちづくり」として、長期的かつ積極的に取り組むべき課題です。
 そのためには、行政機関のみならず県民全体での取り組みが必要です。
 障害者はもとより、すべての県民が生活しやすい地域社会づくり、まちづくりの実現をめざし、第6章では次の事項を行動目標とします。

行動目標

第1 住宅・生活環境の整備

第2 道路環境の整備

第3 行動圏の拡大

第1 住宅・生活環境の整備

現状と課題

○ 障害者や高齢者が地域社会で安心して生活するためには、住宅や生活環境の改善・整備が必要です。

○ 県政世論調査(平成4年度)の結果では、今後力を入れる必要のあるものとして、障害者用住宅の提供や道路、交通機関、公共施設などの生活環境の改善・整備が34.4%を占めています。

○ 住宅は、日常生活の基盤を形成するものですが、障害者を取り巻く住宅事情はまだ十分とはいえません。
 特に、家庭内での行動が自由に行えるよう、住宅の規模、設備などについて、居住条件にあわせたきめ細かな配慮が必要です。

○ 障害者が地域社会の構成員として、積極的に社会生活に参加していくためには、障害者を取り巻く生活環境をさらに整備していく必要があります。

○ 公共的施設については、障害者の利用に配慮した改善・整備が行われてきていますが、まだ十分とはいえません。今後も積極的に整備を進める必要があります。
 民間施設についても、障害者も利用しやすい施設となるよう指導し、協力を求めていかなければなりません。

○ 障害者や高齢者が生活しやすいまちづくりを進めるため、施設整備の指針を策定するなど、積極的な取り組みが必要です。

行動のテーマ
  1. 住宅環境の整備
     障害者や高齢者が、地域社会の中で健康で安全・快適な生活が送れるよう、住宅環境の整備を促進します。
  2. 住みよい環境づくり
     障害者や高齢者の社会参加の場を拡大するため、住みよい環境づくりを促進します。
住宅改造の必要な場所

住宅改造の必要な場所グラフ
「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

国際シンボルマーク

障害者が容易に利用できる建築物・施設であることを明確に示すシンボルマーク

 このマークは、国際リハビリテーション協会によって、「障害者が容易に利用できる建築物・施設である」ことを明確に示すシボルマークとして、決定されたものです。

第2 道路環境の整備

現状と課題

○ 道路の利用は、障害者の社会参加の第一歩ともいえるものです。安心して自由に道路を移動できることは、障害者や高齢者にとってとても大切です。

○ これまで、歩道の段差解消や視覚障害者用信号機、誘導ブロックの設置などを進めてきましたが、まだ十分とはいえません。

○ また、置看板、商品、自転車など、道路上における障害物の放置が後を断たない状況です。そのため、障害者や高齢者の活動が妨げられています。

○ 障害者の社会参加が円滑に行えるよう、道路交通施設の整備や管理にあたっては、安心してしかも快適に利用できる、きめ細かな配慮をした道路環境をつくる必要があります。

○ 平成3年度から進められている、障害者の安全を配慮したゾーンの設置についても、対象地域を拡大し、順次整備を進めていく予定です。

○ また、県民の交通安全に対する意識を高め、交通事故の防止を図るための、交通安全教育を推進する必要があります。

行動のテーマ
  1. 道路交通安全の確保
     障害者が、安全な歩行や自由な通行ができるよう、道路交通施設の改善整備など道路交通安全の確保に努めます。
  2. 道路障害物の排除
     障害者の通行の安全を確保するため、道路障害物の排除に努めます。
  3. 福祉ゾーンの設置
     福祉施設の周辺に、障害者の安全を配慮したゾーンを設置し、障害者が安心して利用できる道路交通環境を確保します。
  4. 交通安全教育施設の整備
     交通安全に対する意識の高揚と交通安全教育を推進するため、交通安全教育センターの整備を進めます。
外出の状況(だれかといっしょに)
- よく出かける ときどき出かける ほとんど出かけない 無回答・不明
身体障害者(%) 13.7 27.7 19.0 39.6

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

外出の状況(だれかといっしょに)
- よく出かける ときどき出かける ほとんど出かけない 無回答・不明
精神薄弱者(%) 23.4 38.6 18.9 19.1

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

第3 行動圏の拡大

現状と課題

○ 人は、行きたいときに、行きたいところへ行く行動の自由をもっています。
 しかし、障害があるために、日常生活における行動の範囲がせばめられている人は少なくありません。

○ 一人ひとりに適した移動手段を確保し、設備の整った交通機関などを利用すれば、障害者の行動範囲はさらに広がり、社会参加の機会も増えていきます。

○ そのためには、障害の種類や一人ひとりの特性に応じて、福祉タクシー、盲導犬などの移動手段を確保できるよう、制度を充実し普及させる必要があります。

○ 移動の手段としての交通機関なども、障害者の利用に対する配慮が十分ゆきとどいているとはいえません。
 今後も、乗合バスの低床化など、設備の改善を進めるよう関係機関に要望し、理解と協力を求めていく必要があります。

○ また、在宅の重度身体障害者や寝たきり老人などの移動を支援するため、リフト付乗用車の配備を進めることが必要です。

行動のテーマ
  1. 移動手段の確保
     障害者の行動範囲を拡大し、社会参加を促進するため、移動手段を確保するための施策を積極的に推進します。
  2. 移動支援の充実
     障害者が自立した生活を営み、安全で自由な移動ができるようにするため、交通機関などに対し、設備の改善を図るよう要望します。
福祉タクシー制度実施市町村数の推移(各年度4月1日現在)

福祉タクシー制度実施市町村数の推移(各年度4月1日現在)
資料:障害福祉課

乗合バス全体に占める低床車の割合(各年度3月31日現在)

乗合バス全体に占める低床車の割合(各年度3月31日現在)
資料:交通対策課

第7章 文化・スポーツ・国際交流の促進

 日常生活の中で、「ゆとり」が求められ、生活の質が問われています。とりわけ、障害者にとって生活の質の向上は大きな課題です。
 これからの障害者福祉は、文化的欲求の充足、スポーツやレクリエーションの一層の推進、さらには国際交流に至るまで、いわば「この世に生を受けてよかった」と思えるような、より質の高い生活の保障についても配慮していく必要があります。
 障害者の生活の質の向上と「ゆとり」や「いきがい」のある生活を実現するため、第7章では次の事項を行動目標とします。

行動目標

第1 文化活動の促進

第2 スポーツの振興

第3 国際交流の促進

第1 文化活動の促進

現状と課題

○ 障害者の生活の質を高め、「ゆとり」や「いきがい」のある生活を実現していくうえで、文化活動の促進は重要な課題です。

○ 芸術を鑑賞したり、自分にあった趣味活動や創作活動を楽しむなど、生活の質を高め、だれもがいきいきとした毎日を過ごせるようにしなければなりません。
 そのためには、障害者の文化活動への参加を促進し、支援していくことが必要です。

○ 文化活動への参加には、文化的な行事への参加と、障害者自身が行う文化活動の両面があります。

○ 点字広報、声の広報、各種奉仕員の派遣などにより文化情報を周知し、障害者の文化的な行事への参加を促進する必要があります。

○ 障害者自身や障害者団体による文化活動も活発になっています。
 施設での創作的活動も盛んに行われ、その成果を発表する施設文化祭や入所者と地域の人びとによる文化交流も実施されています。

○ また、作品展や文化祭の開催を通じて、障害者の文化活動を積極的に支援していく必要があります。

行動のテーマ
  1. 文化活動への参加促進
     文化的な諸行事に参加する機会を広げたり、文化情報を周知するなど、文化活動への参加を促進します。
  2. 文化活動への支援
     創作的活動や文化活動への取り組みを積極的に支援し、充実を図ります。
地域の行事・文化活動・スポーツなどへの参加状況
- よく参加する ときどき参加する ほとんど参加しない 参加したことがない 無回答・不明
身体障害者(%) 5.8 20.2 15.7 47.6 10.7


「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

地域の行事・文化活動・スポーツなどへの参加状況
- よく参加する ときどき参加する ほとんど参加しない 参加したことがない 無回答・不明
精神薄弱者(%) 2.6 26.5 16.3 45.1 9.5

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

第2 スポーツの振興

現状と課題

○ 障害者の機能訓練、体力の維持増進、自主意欲の助長及び社会参加の促進に、スポーツの果たす役割は大きいものがあります。

○ これまで、身体障害者スポーツ大会やタンデムサイクリング大会など各種スポーツ大会の開催をはじめ、地域でのスポーツ大会や全国大会への選手の派遣などを行っています。

○ また、スポーツ教室の開催、スポーツ指導員の養成、スポーツ団体の育成など、地域スポーツの振興を図るための各種施策にも取り組んでいます。

○ 今後とも、障害者のスポーツ人口をさらに広げる必要があります。
 そのためには、障害者スポーツ団体の充実を図るとともに、障害者にとって体育施設の利用が容易になるよう配慮する必要があります。

○ 障害者はもちろん県民全体のスポーツに対する関心を高め、障害者スポーツの振興に積極的に取り組んで行くことが必要です。

行動のテーマ
  1. スポーツ大会の開催と参加
     各種スポーツ大会を開催するとともに、障害者の積極的な参加を促進します。
  2. 地域スポーツの振興
     地域スポーツの振興を図るための各種施策を積極的に推進します。
  3. 障害者スポーツの振興
     障害者スポーツ団体の育成・充実や体育施設の利用を促進し、障害者のスポーツの振興に努めます。
栃木県身体障害者スポーツ大会参加者数の推移

栃木県身体障害者スポーツ大会参加者数の推移グラフ
資料:障害福祉課

障害者スポーツ教室開催の回数
及び参加者数の推移

障害者スポーツ教室開催の回数グラフ

第3 国際交流の促進

現状と課題

○ 豊かな地域社会は、人や文化などの国際的な交流を通じてはぐくまれるものです。

○ 障害者を含む県民一人ひとりが国際社会に対する正しい認識をもち、異文化を理解して、国際社会の一員として行動できるようになることが重要です。

○ 栃木県では、中華人民共和国浙江省やフランス共和国ヴォークリューズ県などとの友好交流を進めています。
 市町村では、平成4年4月現在、8市6町が世界の23の都市等と姉妹都市などにより交流しているほか、多くの市町村で交流活動が活発になってきています。

○ 国際的な視野をもって障害者問題をとらえられるよう、障害者を海外に派遣し、地域活動の推進役となるリーダーの養成を積極的に進める必要があります。

○ また、国際協力のための啓発活動を進め、国際協力活動への障害者の積極的な参加を促進することも必要です。

行動のテーマ
  1. 国際交流活動への参加促進
     文化やスポーツなど、国際交流活動への障害者の積極的な参加を促進します。
  2. 国際協力活動への参加促進
     国際協力への理解を深め、国際協力活動への障害者の参加を促進します。
友好姉妹都市など(平成4年4月1日現在)
宇都宮市 マヌカウ市(ニュージーランド)
宇都宮市 斉斉蛤爾市(中国)
宇都宮市 オルレアン市(フランス)
宇都宮市 タルサ市(アメリカ)
足利市 済寧市(中国)
足利市 スプリングフィールド市(アメリカ)
栃木市 金華市(中国)
鹿沼市 鉄嶺市(中国)
日光市 パームスプリング市(アメリカ)
小山市 本渓市(中国)
真岡市 グレンドーラ市(アメリカ)
真岡市 斗六市(台湾)
大田原市 セントアンドリュース市(イギリス)
上三川市 三義郷(台湾)
石橋町 ディーツヘルツタール(ドイツ)
大平町 エルトビレ(ドイツ)
氏家町 深川市(中国)
氏家町 嘉興市(中国)
氏家町 上海市(中国)
氏家町 無錫市(中国)
南那須町 青海省(中国)
南那須町 メノモニー市(アメリカ)
馬頭町 ホースへッズ村(アメリカ)

第8章 リハビリテーションの総合的推進

 リハビリテーションとは、単に身体の機能回復訓練のみをいうのではなく、障害者が人間としての尊厳を回復し、生きがいをもって社会参加ができるようにすることを目的とする理念と援助の体系をいいます。
 有効なリハビリテーションであるためには、相談・判定・治療・訓練・指導の一連の流れが、適時・適切に、しかも総合的・体系的に提供されることが大切です。
 障害者にかかわる各関係機関の有機的連携を図り、総合的なリハビリテーションを提供するため、第8章では次の事項を行動目標にします。

行動目標

第1 総合リハビリテーションの推進

第2 医学的リハビリテーションの総合的推進

第3 連携のとれた教育・学習の推進

第4 雇用・就業面における総合的条件整備

第5 日常生活や社会参加のための総合サービス

第1 総合リハビリテーションの推進

現状と課題

○ リハビリテーションには、医学的・教育的・職業的・社会的リハビリテーションの4つの分野があります。

○ 医学的リハビリテーションとは、治療をはじめ、理学療法・作業療法・言語療法なとによる機能の回復・維持のための訓練、さらに障害の発生予防をいいます。

○ 教育的リハビリテーションとは、養護学校や小・中・高等学校及び大学などの学校教育の場、さらには、社会教育の場で障害者の可能性を最大限に伸ばし、社会的自立を促すことをいいます。

○ 職業的リハビリテーションとは、障害者が障害の特性にあった適切な職業につき定着できるようにするための、職業相談・指導・能力評価・職域の開発・訓練・職業紹介・就職後のフォローまでの一連の活動をいいます。
 近年、障害が重度化・重複化してきており、一般就労のみならず、授産施設や福祉作業所における福祉的就労をも含めて考える必要があります。

○ 社会的リハビリテーションとは、3分野以外のすべてのサービスをいいます。
 具体的には、障害者が生活しやすくするための各種福祉サービスの充実、生活環境の改善、障害者理解のための啓発活動、文化・レクリェーション活動の普及などがあります。

○ 障害者にとって有効なリハビリテーションであるためには、まず、各分野のリハビリテーションが質の高い充実したものであることが必要です。

○ さらに、各分野のリハビリテーションが、個々の分野を越えて有機的に連携され、相談から判定・治療・訓練・指導が一連の流れとなって、一人ひとりの障害者に提供されることが大切です。

総合リハビリテーションの推進イメージ

現状と課題

○ 障害者が地域社会で安心して暮らし、身近なところで、乳幼児期から高齢期までに対応したサービスを受けられるような地域に根ざした援助体制が必要です。

○ しかし、地域での限られた社会資源とマンパワーでは、多様なニーズに対応していくのは困難です。
 このため、まずそれぞれの地域で多様なサービスを受けられるよう各種の条件整備やネットワーク化を図り、対応が困難なサービスについては、広域でフォローする体制の整備が必要です。

○ 障害者のニーズとサービスがかみあっていなければ、せっかくの援助もむだになってしまいます。常に調査・研究・開発を進める姿勢をもって取り組む必要があります。

○ 障害者やその家族が時期を逸することなく各種サービスを利用できるよう、相談や案内の受け入れ体制を整備する必要があります。

○ 相談にあたっては、たらい回しではなく、総合的に相談のできる機能をもった窓口が開設されていて、なんでも気軽に相談でき、各種情報を幅広く得られることが必要です。

○ 障害者は、福祉サービスの情報をはじめ幅広い情報を求めています。障害者福祉全般に関する最新情報を収集・蓄積し提供する体制の整備が必要です。

行動のテーマ
  1. 総合的推進のしくみづくり
     医療・教育・職業・社会の4分野のリハビリテーションを総合的・体系的に障害者に提供するため、障害者福祉にかかわる関係機関がそれぞれの取り組みについて情報交換を行い、連携・協力し、県下一円を網羅した積極的な活動を展開するしくみづくりを推進します。
  2. 総合リハビリテーションシステムの中核機関の整備
     4分野のリハビリテーションの県下全域にわたる総合調整、情報の収集・提供、調査研究、地域支援などの機能をあわせもつ中核機関を整備します。
  3. 障害者による積極的利用
     障害者やその家族による、各種サービスや制度の積極的な利用を促進します。

第2 医学的リハビリテーションの総合的推進

現状と課題

○ 脳血管障害や交通事故の後遺症などによる障害の除去や軽減のためには、医学的リハビリテーションが重要です。できるだけ早期に、適切なリハビリテーションを受ける必要があります。

○ 「専門的なリハビリテーションを行う総合病院などの医療機関」、「全県域をカバーし特殊で専門的なリハビリテーションを比較的長期間、集中的に行う大学病院などの医療機関」、「一定のリハビリテーションを受けたあと、身近な生活圏で機能維持のためのリハビリテーションを行う一般病院や診療所などの医療機関」、老人保健施設、市町村保健センター、老人デイサービスセンターをネットワーク化し、障害者に円滑に効率的に医学的リハビリテーションを提供できる体制が必要です。
 また、退院後の施設や家庭でのリハビリテーションが、医療機関の指導のもとに継続して受けられることが大切です。

○ 障害者は、退院後の職業復帰や家庭での生活に不安をもっています。これにこたえるためには、医療機関と労働関係機関・福祉関係機関が連携することが必要です。

○ 在宅医療機器や在宅医療技術の発達の成果を有効に活用するため、訪問看護ステーションの設置を促進する必要があります。

○ 心身障害児に対する早期発見・早期療育は、障害の重度化を防ぎ、社会適応性を高めるのに大変重要です。保護者、医療機関、市町村保健センター、心身障害児施設が協力して、障害児の早期発見・早期療育にあたることが大切です。

○ 医学的リハビリテーションを充実するためには、医療機関を整備したり、理学療法士・作業療法士・言語療法上などのマンパワーを養成し、確保する必要があります。

○ 乳幼児から高齢者までを対象とする医学的リハビリテーションの中核となる施設を整備する必要があります。

行動のテーマ
  1. 医学的リハビリテーションのネットワークづくり
     医学的リハビリテーションの流れを円滑にするため、医療機関相互の連携を強化するとともに、医療機関とリハビリテーション施設、市町村、保健所のネットワークづくりを推進します。
  2. 医学的リハビリテーションの充実
     障害者のスムーズな社会復帰や家庭復帰のため、医療機関と障害者を取り巻く関係機関の連携のとれた医学的リハビリテーションを提供します。
     また、乳幼児から高齢者までを対象とする医学的リハビリテーションの中核となる施設を整備します。
  3. 早期発見・早期療育体制の充実
     保護者・市町村・保健所・医療機関・心身障害児施設が連携・協力し、障害児の早期発見と適切な療育に努めます。
障害を受けた時期
-

0~5歳

6~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50歳以上 無回答・不明
身体障害者 15.6 7.3 9.9 7.7 12.9 35.8 10.8


「障害福祉に関する基礎調査」10. 診断・判定の時期

診断・判定の時期

「障害福祉に関する基礎調査」

第3 連携のとれた教育・学習の推進

現状と課題

○ 障害児に対する教育の開始時期は、障害の軽減や成長の促進に大きく関係します。そのため、できるだけ早い時期に教育相談を行う必要があります。

○ 障害児に対する就学指導は、対象児とその保護者にとって、将来の方向を左右する重要なものです。障害児にかかわってきた関係者・関係機関が連携しながら、保護者の意見も踏まえ、本人の適性にあった就学指導に努める必要があります。

○ 近年、障害が重度化・重複化の傾向にあります。医療機関や福祉関係機関と連携し、障害児がその障害の状況に応じ、安心して教育を受けられるような体制の整備が必要です。

○ 障害児の学校卒業後の進路は、一般就労から福祉的就労、施設入所、在宅などさまざまです。
 一人ひとりの能力や適性を十分に把握し、関係者・関係機関の連携を密にして、適切な進路指導に努めなければなりません。

○ 生涯学習の大切さが広く認識され、学習の機会が多くなっています。
 障害者の参加を促進するため、関係機関が連携し、情報を提供したり、障害者向けの生涯学習のメニューや場の設定が必要です。
 特に、重度の障害者も参加できるような配慮が望まれます。

特殊教育学校在籍者の通学形態
無回答・不明- 出産直後 小学校に入る前 小学校の時 中学・高校の時 その他無回答・不明
精神薄弱者 10.2 42.5 11.6 8.7 27.0
- 自宅 寄宿舎 障害児施設 病院(入院) 病院(通院)
在籍者数(%)
1,419
(4.5.1現在)
70.8 13.2 4.5 8.5 3.0

資料:高校教育課

行動のテーマ
  1. 教育相談・指導の充実
     教育関係機関が、医療関係機関や福祉関係機関と緊密な連絡をとり、適切な教育相談や就学指導に努めます。
     また、学校と医療機関・福祉施設が一体となって、障害児の療育や生活指導にあたります。
  2. 適切な進路指導  学校が、労働関係機関や福祉関係機関などと緊密な連絡をとり、早期からの適切な進路指導に努めます。
  3. 生涯学習の場の提供  関係機関の連携のもとに、障害者の参加を配慮した生涯学習の場を提供します。
特殊教育諸学校卒業生の進路(平成3年度卒業生)

特殊教育諸学校卒業生の進路グラフ(平成3年度卒業生)
資料:高校教育課

中学校特殊学級卒業生の進路(平成3年度卒業生)

中学校特殊学級卒業生の進路(平成3年度卒業生)
資料:教育委員会総務課

第4 雇用・就業面における総合的条件整備

現状と課題

○ 事業主をはじめ県民の障害者に対する理解と協力が高まり、その雇用状況は着実によくなっていますが、まだ多くの障害者が働く場や機会を望んでいます。

○ 障害者が就職するには、障害者本人の努力はもとより、障害者を取り巻く保護者・学校・医療機関・福祉関係機関などさまざまな人びとの協力が必要です。

○ 就職しても、職場になじめず早期に離職してしまう人もいます。就職後のフォローまで含めたきめ細かな援助が大切です。

○ 障害が重度化・重複化しているため、一般就労が難しい障害者もたくさんいます。そのため、福祉的就労の場である授産施設や福祉作業所、福祉工場の計画的整備が必要です。
 また、働く意欲はありながら、通所の手段がないために通えない障害者のために、送迎体制を確保するなどの配慮も望まれます。

○ 地域の中に福祉的就労の場が整備されていくのに伴い、共同受注や製作品の共同販売、作業指導についての技術開発や技術援肋を行うことが必要になってきます。

○ 福祉的就労の場で働き、一般企業への就職が可能となった障害者については、関係機関の情報交換や連絡を密にすることにより、一般就労への移行を促進することが望まれます。
 また、障害者の自立・自活を援助し、一般企業への就職を促進するために、通勤寮やグループホームの整備が必要です。

行動のテーマ

  1. 一般就労の促進
     障害者が働きやすい職場づくりを進め、職場定着を促進します。
  2. 福祉的就労の充実
     一般雇用の難しい障害者に対し、福祉的就労を充実するとともに、一般企業への就職を促進します。
  3. 職業相談から就職後のフォローまでの一貫したサービスの提供
     相談・判定・訓練・就職先の紹介・就職後のフォローまでの一貫したサービスを提供します。
栃木障害者職業センターにおける取扱内容別件数(平成3年度)

栃木障害者職業センターにおける取扱内容別件数グラフ(平成3年度)
資料:栃木障害者職業センター

第5 日常生活や社会参加のための総合サービス

現状と課題

○ 障害者の「完全参加と平等」を実現し、豊かな福祉社会を築くために、県民一人ひとりの心の中から、障害及び障害者に対する偏見をなくし、正しい障害者観を育てることが基本です。

○ どこで、だれに相談したらいいのかがわからなかったために、障害が重度化したり、各種サービスや制度を利用できないでいる障害者がいます。気軽になんでも相談できる体制づくりが必要です。

○ 障害者や高齢者の地域での生活を支えるため、入浴介護やホームヘルパーによる人的サービスや、福祉機器の活用、住宅改造、道路・公共的施設の整備といった物的サービスを充実する必要があります。

○ 近年、在宅福祉が叫ばれていますが、家庭での介護が困難な障害者や社会復帰のための訓練が必要な障害者にとって、施設の役割は大きなものがあります。
 また、施設は在宅福祉サービスの拠点としての役割も求められています。施設の機能を積極的に活用しながら、多様化するニーズに対応していくことが必要です。

福祉サービス制度の情報源

福祉サービス制度の情報源
「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

行動のテーマ
  1. 在宅生活を支えるサービスの充実
     障害者や高齢者が住み慣れた地域社会で安心して生活できるよう、関係機関の連携のもとに、総合的なサービスの提供を図ります。
  2. 施設機能の充実
     関係機関の協力のもと、障害者が効率的な訓練を受けられるよう、施設におけるリハビリテーション機能を充実するとともに、施設機能の有効利用を促進します。
  3. 生活環境の整備
     関係機関の連携を図り、道路・建物・交通環境の総合的な整備を促進します。
福祉サービス制度の周知状況
- よく知っている 少し知っている ほとんど知らない 全く知らない 無回答・不明
身体障害者(%) 14.8 43.8 22.0 9.7 9.7

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)

福祉サービス制度の周知状況
- よく知っている 少し知っている ほとんど知らない 全く知らない 無回答・不明
精神薄弱者(%) 9.2 32.1 23.2 20.6 14.9

「障害者福祉に関する基礎調査」(平成4年度)


主題:
とちぎ障害者福祉プラン No.2 25頁~101頁

発行者:
栃木県

発行年月:
平成5年3月

文献に関する問い合わせ先:
栃木県宇都宮市塙田1-1-20
県民生活部障害福祉課
TEL 0286-23-3490 3491