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新潟県社会福祉計画にいがた福祉オアシスを目指して

№2

平成3年5月

基本計画

第3章
施策の基本方向

基本的位置付け

  1.  この章は、平成12年度を目標に、今後の施策を展開する上での基本的な方向を示しています。
  2.  構成は、福祉分野の「部門別施策」と施策を推進するための「総合的な基盤の整備」からとりまとめています。
  3.  内容は、県が計画する福祉に関する施策を中心に、市町村・団体等の施策や県民の活動の方向性を明らかにしています。
  4.  施策の推進に当たっては、公私協働の視点から県、市町村、社会福祉法人等がそれぞれ役割分担をしながら実施します。特に、在宅福祉と施設福祉とを一元的に推進する市町村の役割が重要になってきます。

1 部門別施策

第1節 高齢者福祉

○基本的視点

これから21世紀までの10年間は、最も急速に社会の高齢化が進みます。 この10年間で、明るく活力のある長寿社会をつくり上げるための社会の基盤づくりを進めます。 そして、県民のだれもが長寿を心から喜び、生活の真の豊さを実感できる社会を目指していきます。
 そのためには、まず第一に健やかな老後を安心して迎えることができるよう福祉サービスの充実を図ります。在宅福祉の飛躍的な拡充と大幅な施設整備を進め、高齢者の心身の状況と希望に応じた適切な福祉サービスを提供することができる体制をつくります。
 次に、高齢者がその能力を生かし、人々とのふれあいの中でいきいきと活動できる社会環境の整備を進めます。 明るい長寿社会に向けての広報啓発活動や長寿社会にふさわしい人づくり・組織づくりを支援し、高齢者の社会活動を振興します。
 更に、このような社会づくりのための県民各層による協力関係を築き上げます。県、市町村、関係団体、企業そして県民一人一人がそれぞれの役割を自覚し、県民総参加による新しい新潟県の長寿社会を建設します。

第1 在宅福祉サービス

高齢化の進行に伴い、今後、介護を要する人の割合が高くなる後期高齢者(75歳以上)人口の比率がますます高くなっていきます。
 一方、核家族化の進行、女性の社会進出、扶養意識の変化等と相まって、福祉ニーズが増大かつ多様化していくものと予測されます。
 このため、高齢者の方々が、可能な限り住み慣れた家庭や地域で暮らすことができるよう、在宅福祉サービスの一層の拡充に努めます。

1 在宅福祉サービスの拡充
 必要とする的確なサービスを、だれもが、いつでも、安心して気軽に利用できるよう、在宅福祉サービスの拡充を図ります。
 在宅福祉サービスの中核であるホームヘルプサービス事業については、早朝、夜間、日曜日等にかかわらずいつでも、派遣できるよう、人材の確保に努め、ホームヘルパーを大幅に増員するとともに、利用者の介護ニーズに即応した適切なサービスが提供できるよう、ホームヘルパーに対する研修を充実し、資質の向上を図ります。
 また、在宅福祉サービス支援する拠点として、デイサービスセンター、ショートステイ専用ベッド及び在宅介護支援センターを大幅に整備拡充します。

表3-1 在宅福祉サービスの整備目標

区分 平成2年度 平成12年
ホームヘルパー 862人 2,800人
デイサービスセンター 35か所 300か所
ショートステイ専用ベッド 357床 1,500床
在宅介護支援センター 3か所 260か所

2 介護者支援対策の充実
 在宅での介護を支援するため、特殊寝台、車いす等の日常生活用具の給付・貸与対象品目の拡充と利用の普及を図ります。
 寝たきり老人等の介護家族の負担を軽減するため、介護方法の指導や介護者交流会の開催等を充実し、介護者に対する支援を強化します。
 また、ホームヘルパーの派遣を効果的に行い、介護ニーズに応えられるよう、市町村の活動基盤の整備を支援します。

3 地域介護システムの構築

  • 1.地域福祉区の設定
     おおむね中学校区単位ごとに福祉区を設定し、各福祉区単位にデイサービスセンター等の介護支援体制を整備し、だれもが身近な地域で気軽に福祉サービスを利用できるようにします。(約260地区)

表3-2 地域福祉区の平均的なイメージ

区分 平成2年度 平成12年
総人口 10,000人 10,000人
高齢者人口
 うち75歳以上人口
 うち85歳以上人口
1,500人
 610人
 100人
2,000人
 820人
 180人
要介護老人
 うち在宅
 うち特養
 うち老健
 うち入院
50人
28人
12人
2人
8人
100人
35人
25人
30人
10人

表3-3 介護支援体制(人口1万人当たり)

区分 平成2年度 平成12年
ホームヘルパー 3.5人 11.3人
デイサービスセンター 1.2か所
ショートステイ専用ベット 1.5床 6.1床
在宅介護支援センター 1か所

表3-4 在宅要介護老人に対するサービスの供給可能量(1人当たり)

区分 平成2年度 平成12年
ホームヘルパー 週2回、1回2時間 毎日2.2時間
デイサービスセンター 毎週2.5回
ショートステイ専用ベット 5か月に1回(7日間) 1か月半に1回(7日間)
在宅介護支援センター 毎日何時でも

(注) ホームヘルパーは在宅の要介護老人の半数が、他のサービスは、 全員が利用するものとして算定

  • 1.地域福祉区の平均的な介護支援体制のイメージ
     平成12年の整備目標を達成すると、地域福祉区での介護支援体制は、ホームヘルパー11人、デイサービスセンター1か所、ショートステイ専用ベッド6床、在宅介護支援センター1か所となります。
     この支援体制は、地域福祉区内の在宅要介護老人に対し、平均してホームヘルパーの派遣は在宅の半数(17.5人)の方が毎日2時間、デイサービスは全員が毎週2.5回、ショートステイは全員が1か月半に1回の割合で利用が可能となるものです。

4 一人暮らし老人対策の充実

  1. 支援体制の充実
     一人暮らしの不安や孤独感の解消を図るため、老人クラブ会員による友愛訪問活動を充実するとともに、住民意識の高揚を図り、地域における「一声運動」を進めるなど近隣地域住民による相互支援の体制づくりに努めます。
  2. 緊急時の即応体制
     一人暮らし老人が安心して生活できるよう、また、火災事故や急病等に対処するため、老人用電話、緊急通報装置、火災警報器等の普及に努めます。
  3. 日常生活の支援
     一人暮らし老人に対して、ホームヘルパーを派遣して家事援助等を行い、快適な暮らしができるよう支援します。
     また、日常生活の便宜を図るため、電磁調理器等の日常生活用具の普及に努めます。
     更に、一人暮らし老人の食生活を支援する等のため、デイサービスセンター等の給食設備を活用し、ボランティアの協力を得ながら給食サービスが地域に普及するよう努めます。

5 在宅福祉制度の普及と利用手続きの簡素化

 福祉ニーズが多様化、高度化していく中で、きめ細かなサービスが提供でき、いつでもどこでも利用できるよう、制度の普及啓発に努めます。
 また・民生委員・児童委員等を在宅介護相談協力員として委嘱の上、身近なところで気軽に相談できるようにします。
 更に、サービスを利用しやすくするため、市町村窓口のほか、デイサービスセンター、在宅介護支援センター等身近なところで手続きができるようにするとともに、利用券方式の普及を促進するなど手続きの簡素化を推進します。

第2 施設福祉サービス

 今後、後期高齢者人口の増加や核家族化の進行等に伴い、特別養護老人ホーム等への施設入所需要が一層増大することが予測されます。
 こうした状況を踏まえ、利用しやすく地域に密着した高齢者福祉施設の一層の整備を図るとともに、在宅福祉サービスの拠点となる施設整備を長期的かつ総合的見地に立って推進します。

1 高齢者福祉施設の整備充実
 施設への入所が必要となったときに、待つことなくいつでも利用できるようにするため、特別養護老人ホーム、老人保健施設の大幅な整備拡充を図ります。
 また、一人暮らし老人等の自立した生活を確保するため、ケアハウスを整備するとともに、過疎地域等の高齢者のための高齢者生活福祉センターの整備を進めます。
 更に、老人福祉センターについても整備拡充を図ります。

表3-5 施設福祉サービスの整備目標

区分 平成2年度 平成12年
特別養護老人ホーム 3,587床 6,200床
老人保健施設 1,599床 7,400床
ケアハウス 2,300人
高齢者生活福祉センター 2か所 46か所
老人福祉センター 38か所 112か所

2 地域福祉と連携した施設整備
 県民が必要とする福祉サービスをだれもが等しく利用できるよう、地域における在宅福祉の拠点となるデイサービスセンター、在宅介護支援センター、高齢者生活福祉センター等の施設整備を進めます。
 施設の整備に当たっては、公有地の活用、保育所や公営住宅等との複合化等の工夫を積極的に進め、特別養護老人ホーム、ケアハウス、デイサービスセンター等を住民に便利な場所に整備していきます。

3 施設の個性化と質の向上
 今後、施設の居住性・快適性がより強く求められてくることから、高齢者福祉施設については、量的拡大と併せて質的向上が必要です。
 このため、特別養護老人ホーム等の入所施設については、高齢者が快適で自立した生活を送る場として、居住スペースの拡大等その快適性の確保に努めるとともに、地域での生活習慣や入所者の趣味活動等を積極的に取り入れた特色ある施設づくりを目指します。
 また、養護老人ホームについては、入所者の居住性の向上と安全かつ快適な生活ができるよう、老朽施設の改築と個室化の整備を進めるとともに、特別養護老人ホームに地域住民とのふれあいの場としての「ふれあい交流スペース」の整備を図るなど、施設の一層の改善に努めます。

第3 保健・医療・福祉の連携

 高齢者の多くは、福祉と保健、医療のニーズを併せもっていることから、必要するサービスを的確に提供するため、福祉と保健、医療の連携により、看護や介護等の一体的なサービスの提供に努めます。

1 サービスの一元化
 保健・医療・福祉の各分野が、多様なニーズを抱える高齢者に対して、いつでも必要なサービスを一元的、継続的に提供できるよう市町村高齢者サービス調整チームの活性化を進め、連携のとれたサービスを展開します。
 このため、市町村高齢者サービス調整チームの中に、責任者レベルと実務者レベルのニ種類の「チーム」を設置し、運営の強化を図ります。

  1. 責任者レベルのチーム運営
     市町村における保健・医療・福祉等各施策の推進方針の協議、地域におけるサービスの量的整備の検討及びサービスの提供に対する評価などを行い、高齢者の多様なニーズに対応したサービスの調整を図り総合的に施策を推進します。
  2. 実務者レベルのチーム運営
     実務者レベルのチームについては、要介護者個々のニーズとその傷病、症状等に最も適した処遇やサービスを提供するため、寝たきり、痴呆性等それぞれのケースに即した処遇方法の検討を一層進めるとともに、市町村の規模等に応じて地区割制の導入を図るなど、その機能を充実します。
  3. 保健所保健・福祉サービス調整推進会議との連携
     痴呆性老人や難病患者等の処遇については、「保健所保健・福祉サービス調整推進会議」と連携を図り、健康相談、訪問指導及び看護等においてより総合 的、専門的なサービスを提供します。

2 寝たきり予防対策の推進

 保健・医療・福祉関係者及び広く県民に対して「寝たきりは予防できる」という意識の普及を図るとともに、自らの健康は自らが守るという認識のもとに「寝たきり老人ゼロ作戦」をはじめ各種施策を展開します。

  1. 寝たきり予防の推進
     寝たきりの予防及び回復を図るため、早期のリハビリテーションの実施、適切な介護による早期離床の促進等、日常生活動作能力の維持・向上に向けて、関係機関が一体となって寝たきり予防に取り組むとともに、健康教育の充実強化を図ります。
     また、寝たきり予防対策を支援するため、脳卒中情報システム等の支援システムの整備を進めるとともに、寝たきりの原因となる脳卒中、骨粗しょう症、骨折等の予防に向けての長寿科学研究の推進を図ります。
  2. 保健・医療・福祉サービスの充実
     寝たきり老人等に対する看護や介護の充実のため、医師、保健婦、ホームヘルパー等の密接な連携のもとに、訪問指導、訪問看護、デイサービス等在宅サービスや施設サービスの充実を図るとともに、特別養護老人ホーム等の施設における在宅支援機能を強化します。
     また、個人レベルでの生活状況や健康状態などを的確に把握し、その態様に応じた適切な生活プログラムを提供するなど、健康増進の実践指導を充実するため、健康増進センター等の設置を検討します。

3 痴呆性老人対策

 痴呆性老人は、特有の精神状態や問題行動があるため、介護に当たる家族の負担は多大であり、家族を支援するための体制づくりが急務となっています。また、原因が未解明の部分も多く、治療方法も確立していないアルツハイマー型痴呆が徐々に増えていることもあり、県民にとって、「痴呆」は健康面における不安の一つになっています。これらのことから、痴呆性老人対策については、調査研究を始め在宅サービス、施設サービス、啓発活動などの各分野において、保健・医療・福祉の関係者が一体となって総合的な取組を図ります。

  • 1.相談・指導体制の充実
     保健婦、精神保健相談員等による訪問活動を拡充するとともに、痴呆性老人やその家族等に対する相談、指導、診断、治療、機能訓練などの各種サービスが身近な地域で受けられるよう、相談・指導体制の整備を図ります。
     また、老人精神保健相談等の相談事業を拡充するとともに、老人性痴呆性疾患についての専門的医療相談、診断、処遇方法の相談等に対応するため、老人性痴呆疾患センターを設置します。
  • 2.施設の整備促進
     老人性痴呆症の治療のための痴呆性老人専門病棟等、治療体制の整備に努めるとともに、家庭での介護が困難な痴呆性老人に対処するため、老人保健施設や特別養護老人ホームに専用居室等の整備を進めます。
     また、施設における在宅支援機能を充実し、在宅の痴呆性老人のための機能訓練や入浴、食事等の介護サービスなどを充実強化します。

表3-6 痴呆性老人対策の整備目標

区分 平成2年度 平成12年
特別養護老人ホーム(専用居室) 226床 620床
老人保健施設(痴呆性老人ベット) 229床 1,000床
痴呆性老人専門病棟 236床 600床
  • 3.地域における支援体制の推進
     痴呆性老人やその介護者を地域ぐるみで支援するため、デイケア事業等に対する地域住民からのボランティア参加を促進するとともに、痴呆に関する公開講座を開催するなど地域ケアヘの啓蒙普及を図り、地域住民の理解と協力に基づいた体制づくりを推進します。

4 相談機能の充実
 高齢者は、生活全般にわたる悩みを抱えていることから、専門的、技術的な相談に応じるため、高齢者総合相談センターにおける専門相談分野の範囲を拡大するとともに、巡回相談を増やすなどその機能を拡充します。
 また、市町村窓口はもとより、在宅介護支援センター、保健所等とのネットワーク化を図ることにより、相談とサービスが直結する体制を構築します。
 更に、地域医師会の協力を得て、その専門性を活かした在宅医療の情報提供、入院や入所相談など医療面での支援体制を強化します。

第4 高齢者の社会参加活動の振興

 高齢化社会は、一面では豊富な経験や知識・技能をもった高齢者の多い豊かな社会といえます。
 こうした高齢者の能力を福祉はもとより、産業、文化、地域づくり等幅広い分野で活かし、高齢者が地域社会の中でいきいきと活動できる環境づくりを進め、明るい活力のある長寿社会を築きます。

1 新潟県長寿社会振興財団の設立と広範な事業の展開
 高齢者の生きがいと健康づくりを県民運動として推進するための中核的組織として、「財団法人新潟県長寿社会振興財団」を設立し、県民各層の参加と協力のもとに、高齢者の社会活動を振興するための広範な事業を展開します。
 また、財団の基本財産及び事業執行体制を充実、強化します。

表3-7 財団の基本財産及ぴ総事業費

区分 平成3年度 平成12年度(予定)
基本財産 220,000千円 600,000千円
総事業費 100,000千円 250,000千円
  • 1.県民に対する広報啓発
     長寿社会に向けての対応や高齢者の社会活動等について、県民の意識を高めるため、各種媒体を活用した積極的な広報啓発活動を展開します。
     また、長寿社会における新しい生き方や社会の在り方を県民が共に考え、高齢者の社会活動を促進するための総合イベントとして、シンポジウム、活動事例発表、福祉介護機器展等を内容とする「にいがたシルバーフェスティバル」(仮称)を毎年1回開催します。
  • 2.長寿社会における健康づくりの促進
     健康づくり啓発テレビ番組の放送や各種講習会等を開催し、人生80年時代にふさわしい心と体の積極的な健康づくりを促進します。
  • 3.新潟県高齢者大学の拡充と人材育成
     「新潟県高齢者大学」を拡充し、より多くの高齢者に学習の機会を提供するとともに、積極的な活動主体としての高齢者の育成に努め、高齢者の社会活動を促進します。

表3-8 高齢者大学の拡充(目標)

区分 平成2年度 平成12年度
講座の種類 地域活動コース
福祉活動コース
地域活動コース
福祉活動コース
健康づ<りコース
専門課程・講座の開催
学習期間 年7日、21時間 年40日、90時間
募集定員 360人 720人
会場 4会場 6会場
修了生 延べ500人 延べ6,000人
  • 4.高齢者の社会参加活動の振興
     高齢者の社会活動やスポーツ活動への参加を促進し、高齢者が地域住民とふれあいながら健康でいきいきと活躍できる社会づくりを進めます。
    • ア 高齢者の生産・創作活動の振興
       「生産・創作」活動は高齢者の生きがいに占める位置が大きいことから、高齢者の生産・創作活動を支援するとともに、高齢者作品の展示、即売、寄贈等の機会を提供し、高齢者の生産・創作活動を振興します。
    • イ 高齢者のスポーツ・文化交流、世代交流活動の促進
       高齢者の交流とスポーツ・文化活動を振興するため、健康・スポーツ、文化交流等の祭典である全国健康福祉祭に新潟県選手団を毎年派遣するとともに、県レベルでの同様なイベントとして「新潟県健康福祉祭」(仮称)を開催します。
       また、高齢者と他世代との交流を促進することにより、心ふれあう地域社会を形成するため、世代間交流活動や青少年高齢福祉体験活動等の機会を充実します。
    • ウ 高齢者人材の登録と活用の促進
       豊かな経験・知識、技能等をもつ高齢者人材を名簿登録し、これを広く紹介、活用することにより、高齢者の社会参加の促進と地域活動の活性化を図ります。

表3-9 高齢者の人材登録

区分 平成2年度 平成12年度
登録人数 1,000人 3,000人
  • 5.高齢者の活動組織の育成
     高齢者のスポーツ組織、ボランティア組織等を育成し、高齢期からの生きがいづくりへのチャレンジを支援します。
  • 6.調査研究と総合相談
     明るい活力のある長寿社会づくりに関して調査研究するとともに、各種の情報を収集し、広く高齢者を始め市町村、関係機関、企業等に対して情報を提供します。
     また、高齢者やその家族が抱える様々な悩みや心配ごとに対する総合相談活動を行います。

2 地域における高齢者社会活動の促進
 財団法人新潟県長寿社会振興財団が実施する事業との連携を図りながら、地域 や市町村等における取組を促進し、高齢者の社会活動を活発化します。

  • 1. 長寿社会を考える県民の集いの開催
     長寿社会に対する県民の意識を深めるため、県内各地域で「県民の集い」を開催します。
  • 2.市町村における高齢者の生きがいと健康づくり事業の促進
     県レベルでの高齢者作品展等の開催や市町村に対する助成等を通じて、市町村における事業展開を促進します。

表3-10 市町村における高齢者の生きがいと健康づくり事業

区分 平成2年度 平成12年度
高齢者の生きがいと
 健康づくり促進モデル事業登録人数
(累計)
4市町村
(累計)
40市町村
高齢者地域ふれあい事業 28市町村 全市町村
高齢者健康交流活動促進事業 全市町村
  • 3.老人クラブの活性化
     地域における高齢者の中心的な社会活動団体としての老人クラブに活動費等を助成し、 その活動を活性化します。

3 高齢者の就業機会の確保

 働く意思のある高齢者が、その能力とニーズに応じて就労し、老後生活における所得の確保や生きがいづくりができるよう、高齢者の就業機会の確保に努めます。

  1. 定年延長と継統雇用の促進
     企業に対する定年延長の指導を強化し、60歳定年制の定着を図るとともに、各種助成金の活用や高齢者に適した職務改善、職場の創出を支援し、65歳までの継続雇用を促進します。
  2. 高齢者の再就職の支援
     高齢者の特性を踏まえた相談・援助や計画的な求人開拓、合同選考会の開催などにより、高齢者の再就職を支援します。
  3. 高齢者の職業能力開発
     高齢者に対応した職業訓練職種の開発や高齢者個々に適した訓練期間を設けるなど、訓練を受けやすくします。  また、民間での向上訓練とのネッワーク化を進め、企業内での教育訓練の活性化を図ります。
  4. 高齢者のニーズに応じた就労機会の確保
     地域におけるシルバー人材センターの充実を図り、広報活動や自治体の援助を強化することによって、会員の就労機会の拡大に努めます。また、特殊技能等を必要とする専門的な受注に対応するため、技能研修を実施し会員の質的な向上を図ります。

第5 多様な供給主体の育成

 福祉サービスの供給主体を多様化することにより利用者の選択の幅を広げるため、民間や住民互助組織などによる多様なサービス供給主体を育成していきます。

1 民間シルバーサービスの振興
 民間シルバーサービスを健全に育成し、安全性、経済性を考慮した良質なサービスの提供を確保するため、財団法人新潟県長寿社会振興財団と連携しながら、関連業界の連絡振興組織「新潟県シルバーサービス振興会」(仮称)の設置と自主的な取組を支援、促進します。
 また、「シルバーマーク制度」を普及するとともに、当該マークの交付を受けた事業者に対して公的サービスを委託するなど、民間シルバーサービスの健全な発展を図ります。

2 福祉サービス公社(仮称)等の設置にかかる指導
 県民の福祉ニーズが多様化する中で、公的福祉の充実に加えて、より柔軟でかつ効果的にサービスを提供できる供給主体が必要になってくるものと予想されるので、きめ細かな在宅福祉サービスを有償等により提供し、公的福祉事業の補完的役割を担う「福祉サービス公社」(仮称)等の設置について、地域、市町村の意向を配慮しながら適切に指導していきます。

3 互助組織等の育成指導
 会員制度によるホームヘルプ活動など、自主的に組織化が図られつつある住民の互助組織等について、その自主性を尊重しながら育成指導していきます。
 また、寝たきり老人等の介護に当たっている家族等を対象に「介護家族会」(仮称)を育成し、介護者の悩みごとや孤独感の解消に努めるとともに、介護知識の学習等自主的な活動を支援します。

第2節 障害者福祉

○基本的視点

 心身に障害をもつ人たちは、その障害ゆえに社会生活の様々な面で多くの制約を受けています。
 こうした障害を除去、軽減し、あるいは社会適応訓練によって障害をもつ人たちの自立と社会参加を促進することは、障害者福祉において常に中心となる課題です。
 一方、心身に障害があっても、可能な限り住み慣れた地域で家族と共に生活することができるような条件の整備が、近年強く求められています。
 このような要請にこたえるため、障害の発生予防、機能回復、日常生活の支援、社会参加、就労の促進など、障害者の多種多様な生活実態を見極めながら「生きがい」と「暮らしやすさ」に視点を置いた施策を進めます。
 施設整備では、「障害をもつ人たちにとって施設はどうあるべきか」という観点から施設のもつ役割を見直し、障害をもつ人たちのライフサイクルにおいて最も必要な時期に最も効果的な施設サービスを連続して提供できるよう、体系的な整備を行います。
 なお、障害者福祉施策は高齢者福祉施策と共通する面が多分にあるため、両施策の整合と連携に十分留意して施策を進めます。
 このような施策を進めることにより、障害をもつ人ももたない人も共に暮らしていける社会の実現を目指します。

第1 障害の予防と早期療育

 障害の発生原因を究明し未然に防止するため、保健・医療の分野における取組を強化し、障害の発生予防に努めます。
 また、障害を早期に発見し、阜期に適正な療育や障害の軽減、社会適応能力の増大を図るための体制づくりに努めます。

1 障害の発生予防と早期発見
 障害要因の多くは、妊娠又は分娩周産期や乳幼児期の疾患です。このため、母子保健対策事業を推進し、障害の発生予防と早期発見に努めます。
 また、保健・医療の分野にとどまらず学校教育、社会教育等の広範な機会をとらえ、予防知識や技術の普及に努めていきます。

  1. 障害の発生予防
     市町村において、保健所、医師会及び医療機関等と十分な連携を図り、県民が参加しやすく、魅力ある母子保健対策を実施します。
    • ア 婚前学級、新婚学級等母子保健指導事業の実施
       結婚前や新婚の女性を対象に、講座などにより健康な子を生み育てるための母子保健についての知識を広めます。
    • イ 妊産婦に対する相談指導の充実
       胎児や出産後の乳児の保健や発達についての相談指導を充実します。
  2. 早期発見
     妊産婦及び心身の発育が不完全な乳幼児に対して、予防措置として、障害及び異常の有無を早期に確認し、必要に応じて、適切な指導を行います。
    • ア 妊産婦、乳幼児健康診査の実施
       定期的に妊産婦、乳幼児健康診査を実施し、異常の有無を早期に把握します。
    • イ 先天性代謝異常等検査事業の実施
       障害の原因となる先天性代謝異常の有無を把握し予防に努めます。
    • ウ 療育相談事業の実施
       障害を招来する恐れのある乳幼児を早期に発見し、必要な指導を行います。

2 早期療育と機能回復対策の充実
 障害を早期に発見し適正な療育を施すことは、障害の軽減のみならず、障害児をかかえた親の不安の解消にとって極めて重要です。
 このため、早期に障害を発見し、療育の必要な乳幼児については専門家による事後指導が実施できる早期療育のための機会や施設を整備し、障害の予防から発見、相談、指導、療育に至るまで連携のとれた体制を整備します。

  • 1.早期療育の推進
     精神及び身体に障害のある乳幼児や将来障害を招く恐れのある乳幼児を早期に発見し、適切な治療指導を行うことに努めます。
    • ア 早期療育事業の実施
       早期療育のための施策として、地域療育事業、重度心身障害児通園事業、障害児保育を実施するとともに、精神薄弱児通園施設の機能を強化していきます。
       特に就学前の乳幼児は、原則として通園施設、通園事業等を活用し、早期療育の機会を確保できる体制整備を行います。
       このため、重度心身障害児小規模通園事業及び通園事業を拡充し、療育事業の 利用促進を図ります。

表3-11 通園事業等整備目標

事業名 平成2年度 平成12年度 整備量
重度心身障害児
小規模通園事業
7か所
70人
13か所
120人
6か所
50人
通園事業 3か所
90人
13か所
290人
10か所
200人
  • イ 地域療育推進体制の整備
     障害児の早期発見、早期療育においては、地域における保健、医療、教育、福祉等の関係機関が連携して取り組むことが必要です。
     このため、関係機関が連携し地域療育推進体制を強化し、既存事業の活性化を図ります。
     また、全ての市町村での療育事業の実施を目指します。
    • (ア) 障害の発見(1歳半、3歳児一般健康診査等)から指導(乳幼児精密健康診査・事後指導)、療育にいたるまで一貫した療育ケアシステムの整備を図るために、2次福祉圏域ごとに保健、医療、教育、福祉機関等で構成する保健所保健・福祉サービス調整推進会議等を活用し、児童相談所を中核にした障害の早期発見、早期療育体制の推進を図ります。
    • (イ) 精神薄弱児通園施設を地域における早期療育の拠点して位置付け、その機能を強化します。
    • (ウ) 2次福祉圏域ごとに地域療育事業に対する技術援助として療育サマーキャンプを実施します。

表3-12 療育サマーキャンプ設置計画

年度 3 4 5 6
設置数 3 3 4 3 13
設置数 中央児相 1 2 1 2 6
中越児相 1 1 2 1 5
上越児相 1 1 2

図3-1 心身障害児の早期発見・早期療育体系

心身障害児の早期発見・早期療育体系

  • 2.専門機関における療育機能の強化
     3次福祉圏域を対象とした療育指導や早期療育機能を強化するため、児童相談所の機能強化及びはまぐみ小児療育センターの役割について検討します。

3 学齢期の処遇
 就学前の療育と学校教育との連携、協力関係を強化し、障害児の可能性を最大限に伸ばすために適正な就学指導の充実を図ります。

  1. 就学指導の充実と適正就学の推進
     学齢期の障害児については、小・中学校特殊学級及び特殊教育諸学校による教育を基本として適正な就学指導に努めます。
     保護者のいない児童や家庭での療育・育成が困難な児童には、適切な児童福祉施設を利用できるように努めます。
  2. 義務教育終了後の処遇
     障害児の社会適応能力を高め、自立を図るため、後期中等教育を担う養護学校の高等部の設置に努めます。また、卒業後の進路指導や継統した援助のため、教育、福祉、労働の関係機関の連携強化を図ります。
    • ア 精神薄弱養護学校高等部の設置計画
    • (ア)中越地区  2学級(平成3年度 月ケ岡養護学校)
    • (イ)下越地区  村上養護学校をはじめ、下越地区に設置を検討
    • 交流教育の推進
       障害児に対する正しい理解と認識を深めるように、体験的福祉教育や交流教育を積極的に行います。

4 歯科保健水準の向上

 障害児者の歯科患者は、治療率が低く、重症化してきており、歯科治療に対する要望が多いので、歯科診療専阿医の養成と全県的な保健医療体制の整備を図ります。
 また、特殊教育諸学校の児童生徒、心身障害者施設入所者、在宅障害児者の歯科保健水準の向上を図るために、歯科医師による検診や保健指導の機会を充実、強化します。

第2 地域生活支援と社会参加

 障害者が、普通に日常生活や社会活動が行えるように福祉サービスを充実するとともに、日常の暮らしや社会参加を支援する諸施策を推進します。
 また、社会環境や地域環境の改善を図ります。

1 障害者に対する正しい理解の促進と支援体制の強化

 障害者に対する正しい理解を深めるため、各種啓発活動の促進や障害者との交流機会の拡大等を図り、だれもが障害者を支援できるような社会の創造に努めます。
 また、多様化、複雑化する福祉ニーズに対し、障害者の地域での生活を支援するため、障害者福祉分野のマンパワーの養成・確保を図るとともに、関係団体の育成強化を図ります。

  1. 普及・啓発活動の促進
    • ア 広報活動の推進
       障害者に対する正しい理解を深め、福祉の心を醸成するため、広報紙、テレビ、新聞等マスメディアの活用による各種広報活動をより一層充実します。
    • イ 交流機会の拡大
       障害者に対する社会一般の正しい理解、認識を得るための交流の機会の拡大に努めます。
    • ウ 福祉教育の推進
       小学校及び中学校の児童生徒に、障害児・者に対する正しい理解と認識を深めさせるための指導に努めます。
    • エ 関係機関との連携の強化
       関係機関との連携を緊密化し、具体的施策の計画・実現に努めます。
  2. 支援体制の強化
    • ア 奉仕員等の養成
       障害者福祉に係るマンパワーについては、手話奉仕員や相談員等の充実を図ります。また、研修等を強化し、資質の高い人材の育成に努め、障害者の地域での生活に対する支援体制を強化します。
    • イ 関係団体の育成強化
       障害者団体の自立と活性化が障害者の理解や社会参加を促す様々な活動に結びついています。このため、団体の育成強化を図り、各種事業の自主的運営等ができる体制の確立に努めます。
       また、手話サークル等のボランティア団体等の活動の援助に努めます。

2 日常生活に対する支援
 障害者の日常の生活行動範囲は、社会参加の意欲の高まりや生活環境条件の整備とともに拡大傾向にあり、これに伴って様々な場面での支援が必要になっています。
 今後は、日常生活用具給付事業等の既存事業の充実、拡大はもとより、より一層、障害種別・程度に着目したきめ細かな施策の検討・実施に努め、障害者が「暮らしやすい社会」の実現に努めます。

  1. 経済援助と医療扶助制度の充実
     障害者に対する経済援助については、障害基礎年金や特別障害者手当制度等の創設により大幅な充実が図られたところであり、この制度の円滑な運用を図ります。
     また、医療扶助制度についても、現行の更生医療給付事業及び重度心身障害者医療費助成事業を引き続き実施します。
  2. 日常生活援助サービスの充実
     障害者の日常生活援助については、ホームヘルパーの派遣、各種生活訓練、補装具・日常生活用具の給付(貸与)、訪問診査等の施策を推進します。
  3. 施設利用型サービスの充実
     入所施設のもつ機能を広く地域社会の障害者が利用できるようにするため、次の事業の拡充とその利用についての啓発活動を強化します。
     また、特別養護老人ホーム等のデイサービスを障害者も利用できるように検討するとともに、在宅福祉サービスの実施主体となる市町村への支援体制の強化を図ります。
    • ア 精神薄弱者生活能力訓練事業
    • イ 在宅重度心身障害者緊急保護事業
    • ウ 心身障害児短期療育事業
    • エ 心身障害児(者)巡回療育相談事業
    • オ 心身障害児(者)施設プール開放事業

3 相談体制の充実強化
 増大し多様化する障害児・者の福祉ニーズに対応していくために、保健・医療にかかわる関係機関との連携を強化し、専門機関の相談機能や市町村における各種の相談窓口を支援し、相談体制の充実強化を図ります。

  1. 地域相談活動の充実
     相談活動は、福祉サービスの出発点であり、障害児・者にとって身近な市町村で一元的に対応していく必要があります。このため身体障害者相談員、精神薄弱者相談員、民生委員・児童委員等の活動を一層充実します。
  2. 相談判定機関の強化
     障害児・者が、それぞれのライフステージにおいて、必要なサービスを適切に受けられるように、関係機関の連絡調整を行うとともに、児童相談所、精神薄弱者更生相談所、身体障害者更生相談所の専門的相談判定機能の充実等その在り方を検討します。
  3. 障害者の人権擁護
     障害児・者は多くの場合、ハンディキャップを有しているために生活の様々な場面において自らの権利を主張し、行使することが困難になりがちです。
     このため、障害者の権利擁護機関の在り方を検討します。

4 自立と社会参加の促進等
 障害者の自立と社会参加の促進を図るため、障害者本人の希望に沿って容易に選択できるような福祉サービスの充実に努めるとともに、生きがい対策の推進を図ります。

  • 1.自立生活への支援
     特殊教育諸学校卒業後の障害児や自立的な生活を希望する障害者が、地域社会で安定した生活を送るためには、就労の場の確保と同時に就労を支える通勤寮やグループホーム等の居住の場の確保が重要です。また、就労が困難な重度障害者であっても、地域における生活自立の援助策を強力に展開していく必要があります。
     これまでの障害者の生活は、家庭か入所施設かの二者択一的になりがちでしたが、これからは障害の状態に応じた自立生活への支援を強化するため、在宅支援施設を整備します。
     在宅支援施設は、次のとおりです。

表3-13 在宅支援施設

区分 施設
自立生活支援型 グループホーム、通勤寮、身体障害者通所ホーム、
精神薄弱者通所更生施設等
就労支援型 心身障害者通所援護事業、福祉工場、通所授産施設等

表3-14 在宅支援施設(自立生活支援型)整備目標

施設名 平成2年度 平成12年度 整備量
グループホーム 就労型 1か所
5人
13か所
70人
12か所
65人
生活訓練型
13か所
52人
13か所
52人
通勤寮 1か所
30人
3か所
90人
2か所
60人
身体障害者通所ホーム 2か所
20人
5か所
50人
3か所
30人
精神薄弱者通所更生施設 4か所
115人
8か所
215人
4か所
100人

(注)在宅支援施設(就労支援型)整備目標は、表3-15を参照

  • 2.社会参加への援助
     障害者のニーズは、障害の種別、程度、年齢等の各種要因により異なるため、障害者やその家族のニーズの把握に努め、より対象の細分化、対応の専門化に留意した施策を推進します。
    • ア 社会参加促進センターの設置
       社会参加促進事業の中核的組織として、身体障害者社会参加促進センターを設置し、社会参加に必要な情報の収集・提供や各種調査・研究を実施します。
    • イ 「障害者の明るいくらし」促進事業の拡充
       身体障害者の社会参加促進の中心的施策として「障害者の明るいくらし」促進事業を推進します。特にコミュニケーションの確保、移動支援及び生活訓練等を重点に事業の拡充に努めます。
    • ウ 青年リーダーの養成とスポーツ振興
       次代を担う身体障害者青年層の視野の拡大と自立意欲の向上を図り、地域における社会参加活動のリーダーを養成するとともに、生きがい対策や機能訓練の面で効果が大きいスポーツの振興に努めます。
  • 3.生きがい対策の推進
     障害者の「生きがい」を大切にした施策を推進します。このため障害者が通所して、創作活動、軽作業、日常生活訓練等ができる在宅障害者デイサービス事業を地域福祉センターの整備と合わせ実施していきます。
  • 4.情報提供施設の整備拡充
     情報を得ることが困難な視覚と聴覚に障害のある人の情報提供施設として、現在の点字図書館の活用を含め、聴覚障害者の情報提供機能もあわせてもつ視聴覚障害者情報提供施設の整備について検討します。

5 就労の場の確保
 障害者の雇用については「障害者の雇用の促進等に関する法律」により、促進を図っています。
 対策の推進に当っては、重度障害者に重点を置き、雇用を阻害する諸要因を把握しながら、障害者の特性に応じたきめ細かな対策を講じ、雇用の拡大と就労の場の確保に努めます。

  • 1.雇用の促進
     障害者の雇用について、事業主を始めとし社会全体に広く理解を求めながら、求職者情報の提供や各種助成措置等の具体策を講じて雇用開発を図り、雇用拡大に努めます。
  • 2.重度障害者雇用企業の育成
     重度障害者雇用のモデル企業として、県と民間企業との共同出資による重度障害者雇用企業の設立に努めます。
     また、当該モデル企業における労働実績を積み重ね、その内容を調査、分析することにより、今後の雇用促進、リハビリテーション等の施策に反映していきます。
  • 3.就労支援施設の整備
     職業的就労が困難な障害者の就労の場として福祉工場や通所授産施設、小規模作業所等の在宅支援施設(就労支援型)を整備します。
  • 4.福祉的就労の促進
     障害者の施設からの就労自立と就職定着を図るため、次の施策を推進します。
    • ア 心身障害者社会参加推進員の活動の強化
       障害者の職場定着と安定就労を図ることを目的として精神薄弱者更生相談所に配置している、心身障害者社会参加推進員の活動の充実強化を図ります。
    • イ 精神薄弱者自活訓練事業の拡充
       施設入所者の就労自立を図るために、6か月間の個別訓練を行います。

表3-15 在宅支援施設(就労支援型)整備目標

施設名 平成2年度 平成12年度 整備量
心身障害者通所援護事業 32か所
510人
51か所
693人
19か所
183人
福祉工場 (精神薄弱者) 0か所
3か所
60人
3か所
60人
(身体障害者) 0か所
6か所
120人
6か所
120人
通所授産施設 (精神薄弱者) 8か所
220人
14か所
400人
6か所
180人
(身体障害者) 3か所
60人
14か所
390人
11か所
330人
合計 43か所
790人
88か所
1,663人
45か所
873人

(注)在宅支援施設(自立生活支援型)整備目標は、表3-14を参照

    • ウ 精神薄弱者自立促進モデル事業の推進
       職場に定着できなかった精神薄弱者を対象に、一時的に施設で受入れ、再就労に必要な訓練を行います。
  • 5.障害者の職場生活の維持
     障害者の安定した職場生活を維持するためには、企業、家庭、援護機関が一体となり、本人の地域社会での生活を支援する必要があります。このため、グループホーム等の多様な居住形態を整備し金銭管理、健康管理、人間関係等の領域での援助の拡大を図ります。

6 福祉のまちづくりと社会参加
 障害者の社会参加を促進するための条件整備として、身体にハンディキャップを有している人びとが自由に行動できる「住みよい福祉のまちづくり」を推進します。
 このため、「住みよい福祉のまちづくり」における技術的なガイドラインとして平成2年度に策定した「新潟県における福祉のまちづくり整備指針」の具現化を促進し、障害者が住みよい地域環境づくりを進めます。
 また、整備のための施策としては、「住みよい福祉のまちづくり事業」を実施すると同時に、「障害者ふれあい交流センター」等を中核施設とした住みよいまちづくりモデル地区の設定等について検討します。

第3 施設利用サービスの基盤づくり 地域生活支援システム構想

1 構想の基本的考え方

  1. ミニコロニー構想の継続、発展
     障害者の利用施設は、地域の中にあって職員、保護者、ボランティアが協力しながら地域社会の生活共同体として運営され、入所者が家庭とのつながりを保ちながら生活できることが基本です。
     ミニコロニー構想では、この考え方に基づき、主に重度の障害者を対象に地域の中核となる入所施設の整備を進めてきました。
     地域生活支援システム構想では、この理念を更に継続し、発展させて、「障害者自身が地域の中でできるだけ普通の生活を送れる」ように、地域に密着した施設福祉サービスの基盤づくりを推進するものです。
     このため、中核となる入所施設に止まらず、家庭や地域で暮らしながら利用できる施設を整備し、在宅福祉サービスとの一元化を図ることにより、障害者の地域における生活を支援し、その自立と社会参加を促進します。
  2. 施設の体系的整備の促進
     地域生活支援システム構想においては、障害の程度や年齢の段階に応じて必要なときに必要なサービスを利用できるよう、入所施設を中核に通所施設、通勤寮等多様な在宅支援施設を、各福祉圏ごとに、計画的、体系的に整備します。
     これらの多様な施設は、相互に連携し、それぞれの機能を分担しながら、地域でのネットワークを構成して、障害者の生活を支えていきます。

2 心身障害者施設整備の基本方針

  1. サービスの連続性の確保と入所待機者の解消
     介護者の高齢化や障害者自身の適齢、重度化等の理由により在宅の生活が困難となった場合には、引き続き必要な施設福祉サービスを中断しないで受けられるように入所施設の整備を行い、併せて入所待機者の解消に努めます。
  2. 在宅支援施設の重点的整備
     福祉圏域ごとにノーマライゼーションの考えに基き施設福祉サービス、在宅福祉サービスを一元的なものとして整備します。
     特に地域福祉を一層推進する観点から通所施設、グループホーム等の就労支援や生活支援のための在宅支援施設を重点的に整備します。
    • ア 通所施設は、原則としてミニコロニー等の入所施設に併設します。
    • イ 分場方式による施設整備
       精神薄弱者の地域社会での施設利用を容易にし、必要な訓練を受けると同時に働く場を確保するために、授産施設に通所による分場施設を整備します。
    • ウ 相互利用の促進
       身体障害者のみ、あるいは精神薄弱者のみでは通所授産施設の設置が困難な地域においては、身体障害者授産施設に精神薄弱者の通所を認める相互利用制度を導入し、働く場を確保します。
  3. 新規入所施設の整備方針
     新規入所施設の整備は、原則として在宅支援施設と一体のものとして複合的、計画的に行います。
     すなわち、地域に密着した法人立入所施設を福祉圏域における中核施設として位置付け、その周辺に通所施設、グループホーム、通勤寮等の在宅支援施設を配置します。
  4. 設置主体
     施設の設置運営主体は保護者の参加、地域の協力、提携が図りやすく、弾力的運営ができる社会福祉法人とします。

3 施設整備計画
 障害者の地域生活を支える施設利用に対する多様なニーズに的確に応えるために、平成12年度までに精神薄弱者施設では68施設(定員1,150人)、身体障害者施設では27施設(定員830人)を整備します。
 なお、計画期間中において、施設整備目標の進捗状況、人口動態及び経済社会の変化等を考慮して見直し、必要な修正を行うこととします。
 また、地域生活支援システム構想の実施については、対象者数、各福祉圏域の地理的状況、既存施設の設置状況等を勘案し、地域住民の要望などを考慮して進めていきます。

表3-16 在宅支援施設整備目標(再掲)

施設名 平成2年度 平成12年度 整備量
心身障害者通所援護事業 32か所
510人
51か所
693人
19か所
183人
福祉工場 (精神薄弱者)
3か所
60人
3か所
60人
(身体障害者)
6か所
120人
6か所
120人
通所授産施設 (精神薄弱者) 8か所
220人
14か所
400人
6か所
180人
(身体障害者) 3か所
60人
14か所
390人
11か所
330人
精神薄弱者通所更生施設 4か所
115人
8か所
215人
4か所
100人
通勤寮 1か所
30人
3か所
90人
2か所
60人
身体障害者通所ホーム 2か所
20人
5か所
50人
3か所
30人
グループホーム 1か所
5人
26か所
122人
25か所
117人

表3-17 入所施設整備目標

施設名 平成2年度 平成12年度 整備量
精神薄弱者更生施設 24か所
1,300人
31か所
1,650人
7か所
350人
精神薄弱者授産施設 1か所
300人
3か所
400人
2か所
100人
身体障害者療護施設 3か所
150人
7か所
350人
4か所
200人
身体障害者授産施設
2か所
100人
2か所
100人
重度身体障害者授産施設
1か所
50人
1か所
50人

表3-2A 精神薄弱者施設整備目標(10年間整備量)

平成12年度
総数68か所(1,150人)
入所施設 9(450) 更生施設 7(350)
授産施設 2(100)
在宅支援施設 59(700) 更生施設 4(100)
授産施設 6(180)
福祉工場 3(60)
通勤寮  2(60)
通所援護事業 19(183)
グループホーム
  • 就労型 12(65)
  • 生活訓練型 13(52)

表3-3A 身体障害者施設整備目標(10年間整備量)

平成12年度
総数27か所(830人)
入所施設 7(350) 療護施設 4(200)
授産施設 2(100)
重度授産 1(50)
在宅支援施設 20(480) 授産施設 11(330)
福祉工場 6(120)
通所ホーム 3(30)

第4 施設機能の強化と機能分担

1 施設機能の強化
 心身障害者施設は、地域生活を支える地域福祉推進の拠点として、ますますその役割が重要になってきています。
 このため、障害の重度化、障害者の高齢化等に対応して次のような施設機能の強化を図ります。

  1. 心身障害児・者施設オープン化対策の推進
     在宅の障害児・者に対する適切な療育を確保するために、施設の備えている専門的な療育機能を地域に積極的に還元し、施設を地域福祉推進の拠点として機能の強化を図ります。
     このため、施設に在宅福祉を推進する体制を整備し、入所者の社会復帰、自立促進を図ります。
  2. ショートステイ専用居室の整備
     緊急時に障害者を一時保護し、介護者の負担の軽減を図るため、2次福祉圏域ごとにショートステイ専用居室の整備を図ります。
  3. 高齢期障害者の処遇の検討
     県内施設における40歳以上の中高年齢者の入所者は、その実数及び割合においても増加してきており、障害の重度化と相まって入所期間の長期化の傾向が 強まってきています。
     このため、高齢障害者の処遇の在り方を検討し、入所者の健康づくりや日課を工夫する等新しい処遇の展開を図ります。
  4. 職員の資質向上
     施設職員の資質の向上を図るために、研修を強化すると同時に横断的、継続的自主研究活動を奨励し施設間の交流を推進します。
  5. 地域・保護者と一体となった施設運営
     入所者が家族との心のきずなを失うことなく、そして施設が地域に開かれているためには、地域、保護者の参加による施設運営が必要です。
     このため、地域・保護者と一体となった施設運営を確保すると同時に地域のボランティア、「兄弟姉妹の会」の育成等も一層強化していきます。

2 施設機能の分担
 更生施設等の入所者の社会的自立等を図るため、通所施設、通勤寮、グループホーム、福祉工場等の在宅支援施設と連携をとり、入所者の社会復帰促進を図る必要があります。
 このため、原則として次のような考え方で法人立施設、県立施設の機能分担を行い、施設利用サービスのネットワーク化を整備します。
 また、施設機能の分担を定着させそれぞれの役割を十分に発揮するために、施設入退所に係る相談、判定、措置事務等の連絡調整を強化します。

  1. 地域中核施設機能
     障害者が地域にあって必要な時に入所あるいは通所による施設福祉サービスを受けることのできる体制づくりが必要です。このための地域の中核施設には、可能な限り普通の生活に近い自然な入所生活を提供していくことが求められます。
     このような考え方に添って、地域密着型長期生活施設である法人立施設、一部事務組合立施設を地域中核施設として位置付け、中核施設周辺に通所施設、生活支援事業等を配置し、地域生活支援システム構想を推進します。
  2. 広域的支援施設機能
     福祉圏相互のネットワーク化と地域中核施設に対する支援を図る施設として県立施設の機能の在り方を検討し、必要な機能変更を行います。
     具体的には、県立施設を2次福祉圏域又は全県域を対象とした地域拠点施設として位置付ける中で、法人立施設等への支援、指導の面からその機能強化の在り方を検討します。

第3節 児童福祉

○基本的視点

すべての児童が心身ともに健やかに生まれかつ育成されることは児童福祉の変わることのない基本的理念です。
 近年は、出生率の低下、年少人口の減少、女性の社会進出、核家族化の進行など、児童の育成にとって、考慮すべき多くの事象がみられる時代となっています。
 このため、今後の施策の推進に当たっては、家庭と家庭のもつ養育機能の重要性に着目し、児童福祉から児童家庭福祉への施策の展開を図り、すべての子どもが心身ともに健全な社会の一員となるよう、児童への養育支援を行うとともに、子どもの成長の基盤である家庭への支援を行います。
 更に、子どもがたくましく、心豊かに育つ環境を確保し、地域社会が一体となった児童の健全育成を進めます。
 このような施策を進めることにより、21世紀の新潟県を担う子どもが健やかに生まれ、育ち、また、安心して子どもが育てられる社会を築きます。

第1 児童の養育支援

児童が、家庭における保護者のもとで養育されることは望ましいことですが、保育に欠ける乳幼児や保護を要する児童の対策が必要です。
 今後は、就労形態の多様化、少子化、過疎化の進行等に対応した保育対策を進めます。
 また、養育基盤の低下等により保護を要する児童に対し、その心身の健全な発達を図るため社会的な支援を行います。

1 保育対策
 保育所は、家庭養育を補完しながら、乳幼児の健全育成に大きな役割を果たしています。
 今後は、保育内容を充実するとともに、乳児保育、延長保育等の特別保育の拡充、保育所機能の活用等を行い、地域の保育需要に応じた保育所の整備を図ります。

  1. 特別保育の拡充
     女性の社会進出、就労形態の多様化に伴う地域の保育需要に応じて、乳児保育、延長保育、障害児保育等の特別保育を推進します。
    • ア 乳児保育
      乳児の安全と心身の順調な発達を保障するため、設備、職員配置等乳児を受け入れやすい環境整備に努め、適切な保育の推進を図ります。
    • イ 3歳未満児保育
      育児休業等の普及に伴い、育児休業明け幼児を中心に3歳未満児の保育の充実に努めます。
    • ウ 障害児保育
      家庭、専門機関等との連携を図りながら、障害の程度、種類に応じた保育の推進を図るとともに、他の子どもや保護者に対して、障害に関する正しい認識の促進に努めます。
    • エ 延長保育
       地域の実情に応じて、午後7時までの延長保育の推進を図ります。 また、夜型延長保育(午後10時までの延長保育)や夜間保育について検討します。
    • オ 一時的保育
       保護者の就労形態の多様化等による非定型的な保育需要や疾病、災害、事故、看護等社会的にやむを得ない保育需要に対応するために、緊急・一時的保育の実施に努めます。
  2. 保育所機能の充実及び活用
     入所児童とお年寄りとのふれあい交流等、地域の需要に応じた幅広い活動の推進により保育効果を高め、地域児童の福祉の向上を図ります。
     更に、地域に開かれた社会資源として、その専門的機能を地域住民のために活用します。
    • ア 地域ふれあい・交流
       保育所において、卒園児童との交流、高齢者等とのふれあい、あるいは郷土文化等との出会いを推進します。
    • イ 施設開放
       地域の児童、住民の身近な施設として、地域の要望に応じて園庭や遊戯室等の開放を推進します。
    • ウ 希望入所
       集団保育を希望又は必要とする乳幼児や障害児等の受入を行い、その健やかな育成や自立、機能回復を図ります。
    • エ 子育て仲間づくり・子育てふれあい
       育児者同士が子育てを助け合えるように、育児講座等を実施し仲間づくりを図ります。
      また、子育てへの関心を高め、母性の醸成をめざして、必要な施策を実施します。
  3. 保育所の整備
     保育所の整備については、量的にはほぼ充足されております。 今後は、都市化と過疎化の進行等に伴い、適正配置の観点から必要な整備を図り、多様化する地域の保育需要に対応できる保育所づくりを進めます。
     このため、保育所の機能・配置等の市町村の長期的計画をもとに老朽施設の改築に対して補助するとともに、遊休部分のある保育所の一部改修にも補助を行い、整備に努めます。
     なお、今後の整備に当たっては、通常の保育機能に加えて、地域の保育需要に応じ、次のような保育所機能の充実に努めてまいります。

表3-18保育所機能の充実

機能 内容
ふれあい・交流  施設の開放等を行い、地域の児童、 高齢者等とのふれあい・交流を行う。
希望保育  児童の社会性獲得に資するため、希望保育を行う。
家庭支援  ミニ児童館の機能を持ち、あわせて、相談事業を行い、 家庭の養育機能を支援する。
特別保育  多様な保育需要に対応するため、 原則としてあらゆる形の特別保育を充実する。
  • 4.へき地保育所の充実
     児童福祉法による保育所の補完的制度として設けられたへき地保育所においては、今後とも地域の児童の福祉を確保するとともに、地域により密着した施設となるよう、地域とのふれあい・交流等に努めます。
  • 5.保母の資質向上・再教育
     児童の処遇向上や多様な保育ニーズに対応するための保母の資質向上や再教育への支援を行います。
    • ア 研修
       保育内容のより一層の向上を目指して、現に勤務する保母に対する研修の充実を図るとともに、保育需要の多様化にともない、乳児保育等の特別保育の研修を行います。
    • イ 再教育
       保護者や地域住民とのかかわりが増大するなかで、相談や指導ができる職員の必要性が高まっています。
       このため、地域の福祉需要に応じて、育児相談員、児童指導員、介護福祉士等の福祉専門職員として勤務できるよう教育的な支援を検討します。

2 要保護児童対策
 適切な家庭環境に恵まれない児童、社会に対する適応性を欠いた児童及び心理的に不安定な児童に対して、援助を行うことにより、児童の豊かな発達を保障して、心身ともに健全な社会の一員に育成します。

  1. 養護対策
     児童を取り巻く社会環境の急激な変動の中で、児童の一時保護、緊急養育、専門的な治療、更に複雑な親子関係に対する家族を含めた指導など、極めて多様な対応が求められています。
     このため、これまでの家庭養育を代替する養護に加え、専門的な援助を行います。
    • ア 養護施設の機能充実
       ケースワーク、カウンセリングに関する知見を有する職員の配置等、養護施設の機能拡充について検討し、様々なケースにこたえる支援体制の確立を図ります。
       また、施設を退所した児童が利用できる自立援助ホームの検討など自立への支援を行います。
    • イ 里親制度の強化
       里親制度は、児童を最も家庭に近い環境の中で養育する制度です。 成長期にあって家庭的養護を必要とする幼児にとっては、その福祉を図る上で極めて適切なものといえるため、広く里親を求め、育成します。
       また、今後は、更に養育型里親の育成に努めます。
  2. 非行防止と児童の教護
     5,000人程度で推移する少年の非行に対して、その防止運動と、非行に陥った少年の教護を図っていきます。
    • ア 非行防止運動の推進
       万引きなどの初発型非行に重点を置いて、その防止運動を推進します。
      • (ア)警察等関係機関、関係業者、関係団体等で全県的な万引き防止対策連絡協議会を組織し、情報の交換及び万引き防止対策について協議します。
      • (イ)子どもを持つ家庭に対して、万引き防止に対する家庭の取組についてリーフレット等で啓発を行うとともに学校での指導を強化します。
    • イ 児童の教護
       教護院において、児童の権利等を踏まえながら、児童が精神的・身体的・社会的に健やかに育っていくよう教育保護を行います。
       また、退院した児童に対しても、関係機関と連携して自立指導を行います。
  3. ひきこもり・登校拒否児等の情緒障害児対策
     増加しているひきこもり・登校拒否児に対しての早期発見や指導治療を推進します。
    • ア 予防対策の推進
       登校拒否の原因や経過は様々であり、原因や経過の相違により対応も異なり、複雑化しています。
       しかし、登校拒否はほとんどの場合に何らかの前兆があるのが普通で、その兆候はケースによって様々ですが、登校拒否の早期発見の手がかりとして重要です。
       このため、家庭に対して登校拒否児の早期兆候の対応について啓発を行うとともに、各種相談窓口の周知を図り、登校拒否児の発生を予防します。
    • イ 指導治療対策
       登校拒否児の社会適応力をたかめるため、指導治療に努めます。
      • (ア)児童相談所、養護施設を中心に、教育機関と連携した生活指導、心理療法、集団適応等の治療的対応を充実します。
      • (イ)メンタルフレンド(心の友)による訪問、合宿による家族療法、情緒障害児サマーキャンプ等の感動体験などの多様な治療、指導を行います。
      • (ウ)登校拒否児に対して、短期入所などによる指導治療部門として、養護施設機能の活用等を検討します。

第2 家庭支援

 子供にとってかけがえのない成長の基盤である家庭に対し、新たなニーズに応える様々な支援を行い、家庭及び児童の福祉の向上を図ります。具体的には、家庭のニーズに応じて、働く女性、ひとり親、子育てへの支援等の多様な家庭支援を行います。

1 働く女性への支援
 近年、有配偶既婚女性の職場進出が進み、職業生活と育児等の家庭生活の両立を支援する必要が生じています。
 このため、特別保育対策及び放課後児童対策の充実を図ります。 更に、育児休業などの雇用環境面での整備を促進していきます。

表3-4A 特別保育の充実

(保育需要) (対応)
保育需要の
多様化
対象児 乳児 乳児保育
3歳未満児(育休明け) 3歳未満児保育
保育時間 通勤の遠隔化等による保育時間の延長 延長保育
(~午後7時)
産業構造・就業構造の変化等による夜間化 夜型延長保育
夜間保育
-
休日の保育需要 休日保育
企業の就労形態による休日・深夜の需要 企業委託型保育
その他 非定型就労による保育需要 一時保育
(非定型)
緊急・一時的保育需要 一時的保育
(緊急型)
  • 1.特別保育対策
     パートタイム、変形労働時間制の導入など就労形態の変化に伴う保育需要の多様化に対応するため、乳児保育、延長保育、長時間保育等を推進するとともに、休日保育等の実施について検討します。
  • 2.放課後児童対策
     昼間保護者のいない小学校低学年児童(放課後児童)について、地域による保護育成を図ります。
    • ア 児童クラブ
       放課後児童対策として、地域住民の協力を得て、児童クラブの育成を促進し、児童への指導を行い、児童の健全育成を図ります。
       なお、児童クラブの活動の拠点として、地域の状況により、児童館、保育所等の社会資源の利用を図ります。

表3-19 児童クラブの育成目標

区分 平成2年度 平成12年度 増加数
児童クラブ 39 90 51
    • イ 民間指導者養成
       放課後児童対策など地域における児童健全育成活動の推進にあたる民間指導者の研修を実施します。
  • 3.雇用環境対策
     女性が男性とともに職業生活と家庭生活との調和を図りながら、その能力と経験を生かして働けるよう雇用環境の整備を促進していきます。
    • ア 雇用環境の整備
       就労する女性の子育ての支援や家族が一緒に過ごすゆとりの確保のため、育児休業制度等の導入や事業所内保育施設の整備、労働時間短縮や労働時間のフレックス化等を事業主などに啓発指導します。
    • イ 雇用環境整備のための広報
       育児休業制度等の普及促進や事業所内保育施設の整備についての助成制度の周知に努めるとともに、更に、多様な雇用環境の制度を利用しやすくする企業風土づくりも必要ですので、先駆的な県内企業を広報紙等で紹介していきます。
    • ウ 事業所内保育施設への支援
       事業所内施設の児童に対して、充実した内容の保育が行われるよう、職員の研修会を開催するとともに、栄養や健康面での援助を検討します。

2 ひとり親家庭への支援
 母子・父子世帯等のひとり親家庭は、精神的、社会的、経済的に不安定な状況に置かれがちであり、児童の健全な育成のために、また、親がその養育責任を遂行できるよう総合的な支援を行います、

  1. 社会的支援対策
    • ア 相談支援
       母子・父子家庭の福祉に関する実情の把握と相談指導などは、母子相談員によって行われています。
      今後は、離別理由の多様化や、問題の質的変化に伴う複雑で困難な相談に対応するため、研修等により母子相談員の資質の向上を図り、相談体制の一層の充実を図ります。
       また、市町村における母子福祉相談窓口を充実し、県母子相談員との連携により、支援を必要とする母子家庭等に継続的な指導を行い、関係機関との密接な連携、協力により早期に適切な対応をし、母等の自立の促進とその児童の健全育成を図ります。
    • イ 生活支援
       ひとり親家庭の生活支援として、介護人派遣事業の周知と派遣体制の強化を図り、離・死別直後のひとり親家庭に対して、生活安定のため、介護人派遣の対象の枠の拡大を図ります。
       なお、父子家庭を対象に児童福祉施設で夜間の児童受入れを検討します。
    • ウ 母子寮の整備
       母子寮は生活基盤が不安定な母子世帯に、住居の提供、自立への生活指導を行う施設です。
       近年、夫の暴力からの緊急避難や母親の子育て機能の脆弱化など広範な処遇への対応が課題となっています。
       このため、既存の母子寮の機能の強化に努めるとともに、全県を対象とした広域的な受入れや専門的な電話相談や緊急一時保護を行える母子寮の整備について検討するとともに、地域との交流による地域に密着した施設整備を促進します。
       また、母子寮への入所措置は、児童が18歳に達することにより打ち切られるため、高等学校等在学中の措置延長について国へ要望していきます。
  2. 経済的支援対策
    • ア 自立支援
       特に、母子家庭の母は、育児等により就労の条件が限定されることなどから、経済的にも自立が困難な場合が多いので、そのための支援などを行います。
       このため、就業に必要な技術を身につけられるよう職業指導等の研修会を開催します。
       また、事業主に常勤職員として雇用するよう求めていきます。
    • イ 福祉資金の貸付
       母子福祉資金の貸付けについては、経済変動等に即応した内容の充実や緊急時の小口貸付けなどを国に要望していきます。
       また、緊急を要する貸付けに対応するため、貸付決定事務の迅速化に努めます。
       更に、父子家庭への貸付けを検討し、必要に応じ国に要望していきます。
    • ウ 修学援助
       児童扶養手当及び遺族基礎年金は、児童が18歳に達することにより打ち切られるため、高等学校等在学中の継続支給について国へ要望していきます。
    • エ 医療費助成
       ひとり親家庭に対し医療費の一部を助成し、ひとり親家庭の保健の向上と福祉の増進を図ります。

3 子育てへの支援
 出生率の低下や女性の職場進出等が進む中、21世紀を担う子どもの健やかな育成を図る必要があります。
 このため、子育てに伴う様々な不安や子ども自身の悩みに対応できる相談体制の整備や、子育てを中心とした家庭を取り巻く環境対策を行います。
 また、子どもを心身ともに健やかに生み育てるために、母性や乳幼児の健康の保持増進を図ります。

  1. 相談対策
     子育てに伴う不安や、子ども自身の悩みにこたえられる相談体制の整備を図ります。
    • ア 保育所
       育児に関する身近な相談窓口として、保育所機能の活用を進めます。
    • イ 家庭児童相談室
       家庭や地域における養育機能が低下しつつある中で、福祉事務所に開設されている家庭児童相談室は、より専門的な対応を求められています。
       このため、2次福祉圏域単位の児童相談機能を強化し、地域で利用しやすく、また、適切な指導が受けられる相談援助機能を充実するため、児童相談所との連携も含め、家庭児童相談室の在り方を検討します。
    • ウ 子ども家庭相談
       地域の遊び場である児童館に、児童の相談窓口機能を付与することを検討します。
    • エ 児童委員の活動の強化
       身近な相談相手として児童委員の活動強化等を図ります。
  2. 社会的環境対策
     子育てを支援するためには、保育所の保育サービスの充実や雇用環境の整備等をはじめとして、企業及び地域社会など社会全体として子育ての環境を整えることが必要です。
    • ア 民間保育産業の健全育成
       女性の社会進出の増加や就労形態の多様化に対応して、民間の保育関連産業が生まれていますが、その質にかなりの格差がみられます。
       このため、児童が健やかに育てられ、質の高い保育が提供されるよう指導し、その内容の改善も指導していきます。
       また、地域保育ママやベビーシッター等に対しての研修会を開催し、保育者としての健全な育成を図ります。
    • イ 生活環境整備
       生活環境の整備に当たっては、子育てに対する配慮が必要です。
       このため、官公庁や駅などの公共施設やデパートなどの人の多く集まる施設について、禁煙・分煙などの環境面への配慮や授乳室などの育児スペースやベビーカーの配置等を要望していきます。
    • ウ 住環境の整備
       住環境が子どもの成長に与える影響については、少なくないものがあり、子どもにとってより良い住環境の整備が望まれています。
       このため、公営住宅の建築・改築においては、住環境が子どもの成長に与える影響を考慮し、整備に努めます。
  3. 子育て経済的支援
     子どもを生み育てることをためらう原因としての経済的負担を軽減するよう育児休業中の資金貸付制度等を国へ要望していきます。
  4. 母子保健
     母子保健は、国民の健康づくりの出発点であり、その基本をなすものです。
     一方母性や乳幼児を取り巻く家庭環境、社会環境は大きく変化しており、今後、活力ある福祉社会を築くためには、子どもたちを心身ともに健やかに生み育てることが重要な課題となっています。
     このため、新たな環境変化に対応した母子保健施策を展開します。
    • ア 母子保健体制
       本県の母子保健は、一貫したサービス提供のため、業務の一部を市町村に委託する方式をとっています。今後、役割分担を明確にし、相互の連携を密接に行える体制を整備します。
       更に、地区組織の活性化及び関係機関との連携を強化します。
    • イ 母子保健施策の充実
       母子保健教育・保健指導の充実、学校保健教育との連携、更に、疾病別対策を推進します。
       今後、「こころ」の保健を重視するとともに、ライフステージに対応した母子保健施策の一層の充実を図り、思春期の児童の精神的な悩みなど新しい問題に対応した施策を展開します。
       例えば、乳幼児の成人病予防、母子栄養健康づくり、思春期における保健福祉体験学習などを実施します。

第3 地域における児童健全育成

出生率の低下に伴う子どもの数の減少、子どもの自由時間の不足、遊び場の不足は、地域で異年齢の子どもなどと幅広く遊べない子どもの増加をもたらしています。
 一方、家庭では、核家族化の進行・共働き家庭の増加により、親と子どものふれあう時間、お年寄りとふれあう機会が減少し、家庭・地域における児童養育機能の低下をもたらしています。
 また、地域社会においては、児童の意識や行動に悪影響を及ぼす情報の氾濫等環境が変化してきています。
 このため、心豊かで積極的・創造的な子どもの育成のための環境を確保するため、空間づくり、仲間づくり、ゆとり(時間)づくり(三間対策)を進めるとともに、「家庭」と「家庭機能」の重要性を明らかにし、地域社会が一体となった児童の健全育成を進めます。

1 空間づくり
 子どもにとってよい社会環境づくりを行います。このため、子どもが自由で、かつ、自主的に遊び、自らの可能性を開花させていくことができるような遊び場の整備を行います。

  • 1.児童厚生施設の整備
     機能と目的に合わせて児童厚生施設の整備を行います。
    • ア 児童館の整備
       児童館は、児童の地域での遊びを中心とする活動の拠点として位置付けます。
       子ども会、母親クラブ等の活動の場、地域におけるふれあい・交流の場、放課後児童の保護育成など健全育成の総合的な機能を有する場として整備します。

表3-20 児童館の整備目標

区分 平成2年度 平成12年度 増加数
児童館 96か所 116か所 20か所
  • イ 児童遊園の整備
     主に、小学校低学年までの児童を対象に、安全で安心して遊べる場として、児童公園の整備と調整を図りながら、児童公園及び児童遊園のない市町村から優先的に整備を行います。

表3-21 児童遊園の整備目標

区分 平成2年度 平成12年度 増加数
児童遊園 237か所 297か所 60か所
    • ウ こども自然王国の整備
       子どもたちが自然と親しみながら研修等の体験学習ができ、また、親子で楽しめる施設として宿泊設備をもつ「こども自然王国(大型児童館)」の整備について検討します。
  • 関係業界における青少年健全育成活動の推進
     青少年問題に関係の深い業界が、自らの社会的責任を自覚し、業界全体で青少年の健全育成、非行防止のための実践活動を展開することを促し、支援していく必要があります。
     このため、「青少年健全育成推進協力店」制度を全市町村に広め、ポスターやステッカー等により広報・啓発を図るとともに、全県的な推進協議会を組織し、業界への指導強化や自主的な取組を支援します。

2 仲間づくり
 子ども同士の仲間づくりだけでなく、親同士の仲間づくり、世代を超えた交流、仲間の中核となるリーダーの養成及びそのリーダーのネットワークづくりを推進します。

  • 1.地域子ども会等の組織拡大と活性化
     活動内容の充実、情報の交換、効果的な安全対策を図るため、地域子ども会未組織市町村ゼロと新潟県子ども会連絡協議会への加入率100パーセントを目標として、組織強化に努めるとともに、各単位地域子ども会相互の交流を推進します。

表3-22 地域子ども会等
(平成元年5月現在)

区分 平成元年度 施策目標
地域子ども会 3,182団体
(138,220人)
未組織市町村8町6村
未組織市町村 0
地域子ども会連絡協議会 加入率70.1%
加入率100%
  • 2.児童厚生施設地域交流の推進
     核家族化などにより家庭においてお年寄りとふれあうことのない児童が増えています。
     このため、児童館等児童厚生施設において、お年寄りと児童のふれあい等、地域との交流を推進します。
  • 3.母親クラブの育成
     地域における児童の育成の担い手として、また、子どもをもつ親同士の相談の場としての母親クラブの育成を推進します。

表3-23 母親クラブ育成目標

区分 平成2年度 平成12年度
母親クラブ 16 1児童館 1クラブ
  • 4.青少年自然生活体験学習の推進
     児童にとっては、広い範囲で仲間をつくり、いろいろな体験を通じて、社会性を身に付けることが必要です。
     このため、自然の中で異年齢構成の集団で合宿生活を送る青少年自然生活体験学習等を推進します。
  • 5.子ども博覧会の開催
     児童の健全育成は、行政はもとより県民あげて推進していくことが必要です。
     このため、県民への啓発活動の一環として、また、児童自らがその将来を考え、その能力と可能性を発揮する場としての子ども博覧会の開催について検討します。
  • 6.リーダーの養成とネットワークづくり
     子どもたちが地域の担い手となり、地域を活性化していくには、その中核となり、広い視野をもち、優れた指導力を発揮できるリーダーが必要です。また、リーダーのネットワーク化や活動の場となる青少年団体の活動の活性化を図る必要があります。
     このため、ジュニアリーダー、青年リーダーの養成を積極的に推進するとともに、青少年団体に対して、活動のための情報提供を行います。
    • ア 青年リーダー養成海外研修の内容を充実します。
    • イ ジュニアリーダー研修を推進します。
    • ウ 青年主導による在県外国青年との交流を推進します。
    • エ 青少年団体の事業に対して助成を行い、各種情報を提供することにより、青少年団体活動の活性化を図ります。
    • オ 青少年団体活動情報誌の作成及びマスコミによる活動紹介を行います。

3 ゆとりづくり
 子どもたちが健やかに育つためには、親も子どもも時間と心にゆとりをもった家庭生活を送ることが必要であり、家庭におけるゆとりづくりを支援します。

  1. 企業の週休2日制の促進
     平成2年度における週休2日制採用事業所の割合は58.5パーセントで、年々増加していますが、業種による格差が目立っています。
     このため、県としても企業に対して週休2日制の促進を指導します。
  2. 「家庭の日」の啓発・普及
     本県では、青少年の健全育成の基盤である家庭がより健全であることをめざし、毎月第3日曜日を「家庭の日」と定め、その周知に努めてきたところですが、今後一層の啓発・普及を行います。
    • ア 「家庭の日」強調月間の設定
       「家庭の日」強調月間を定め、月間内に「家庭の日」フォトコンテスト・絵画展・写真展等を開催します。
    • イ 「家庭の日」親子ふれあいの促進
       青少年育成市町村民会議が主体となり、「家庭の日」に合わせて、親子のふれあいを促進します。
    • ウ 自然に親しむ親子の集い
       自然に親しみながら共同宿泊することによって親と子の交流を図り、理解と共感を深め合う「自然と親しむ親子の集い」を実施します。
  3. 企業内研修における健全育成の啓発
     働く親たちにとって職業生活と家庭生活を両立させることは、児童の健全育成を 図る上で欠かすことのできない要素です。
     このため、職場内で、児童の健全育成のための啓発を行う場合、小冊子の提供や 健全育成啓発用映画フィルム等の貸出、講師の派遣等の支援を行います。
  4. 家庭教育力の回復
     核家族化や少子化の進行とともに子どもを取り巻く日常の生活環境の変化は、家庭がもつ子どもの養育やしつけなどの教育の機能、やすらぎやくつろぎなどの機能をはじめとした様々な機能に影響をもたらしています。  このため、家庭がもつ本来の意義における教育力の回復と強化を図ります。
    • ア 地域ぐるみの「明るい家庭づくり運動」を提唱し、地域が一体となった明るい家庭づくりの活動を進めます。
    • イ 今日の家庭教育の課題に対処し、今後の在り方について検討するとともに、地域における家庭教育の指導者による研究協議会を開催し、その成果を指導資料として配布します。
    • ウ 乳幼児を持つ親に対して、学習資料の配布、テレビ放送による学習教材や子育てセミナー等の学習機会を提供するとともに、電話による相談体制を整備して指導を行います。

第4節 基本的生活を支える福祉施策の充実

○基本的視点

県民一人ひとりが健康で文化的な生活を営むことが基本であり、高齢者や障害者等に対する福祉サービスの充実とともに、生活に困窮する人々などに対するきめ細かな支援が必要です。
 また、全ての県民が経済的に安定し、健康的な生活ができるよう年金などの社会保険の充実や安心できる医療保険制度の充実が必要です。

第1 低所得者福祉の充実

日常生活の上で、景気動向による失業、疾病、怪我などによる収入低下や失職あるいは離婚等、様々な困難に直面することがあります。
 このような状況への対応は、自発的な努力による自力更生等が基本となりますが、自助努力では限界がある場合もあります。
 このため、生活に困窮する人々が健康で文化的な生活を営むための最終的なよりどころである生活保護制度の充実や経済的自立への支援、生活意欲の助長等の促進を図る必要があります。

1 生活保護制度の充実
 生活に困窮する人に対し、必要な保護を行うとともに、生活保護制度の充実を図るためには、生活保護基準の改善や被保護世帯に対する援助の充実などを図る必要があります。

  • 1.生活保護基準の改善
     級地間格差の是正、級地区分の見直しと本県の実情を考慮した冬季加算の制度の充実等について国に要望し、適正な保護の実施に努めます。
  • 2.被保護世帯に対する援助の充実
     被保護世帯に対する日常の援助については、被保護世帯の大部分が、高齢、母子、傷病・障害等のハンディキャップを負った要援護世帯であることから、世帯の生活実態の把握、他法他施策の活用及び関係機関との連携の充実強化を行い、個別の世帯の実情に対応した適切な処遇の推進を図ります。

表3-24 新潟県の世帯類型別被保護世帯数の推移

年度 被保護世帯 構成比(%)
高齢 母子 傷・障 その他 高齢 母子 傷・障 その他
50 2,175 1,121 5,087 1,036 23.1 11.9 54.0 11.0
55 2,075 1,252 4,298 810 24.6 14.8 45.8 10.4
60 2,338 1,401 3,916 888 27.4 16.4 45.8 10.4
2 2,226 887 2,180 534 38.2 15.2 37.4 9.2

注) 各年度内平均値。ただし、平成2年度は9月現在

  • 3.就労の促進
     被保護世帯の就労を支援するため、「職場適応訓練」の実施や「特定求職者雇用促進開発助成金」等他法制度を有効に活用し積極的な雇用促進に努めます。
     また、職場や適職がないため、就労していない人に対して、稼働能力の活用を促進させるため、あらかじめ選定した協力事業所で一定期間職場適応のための訓練を行う「勤労意欲助長事業」を実施して雇用支援を図ります。

  • 4.救護施設の整備
     本県の救護施設の整備状況は、全国水準と比較して高くなっています。
     今後は、入所者の居住環境の改善を図るため、老朽施設の改築と多人数部屋の改善に努めます。

表3-25 新潟県における救護施設の現況(平成元年10月現在)

施設数 定員 在所者数 人口1万人当たりの定員
全国
5 570人 593人 2.3 1.3

2 低所得者の援助
 低所得者世帯の経済的自立と生活意欲の助長促進を図るためには、生活福祉資金等の融資制度を充実する必要があります。
 また、低所得者世帯の生活の向上と安定を図るためには、相談業務を通じ適切な助言、援助を行う必要があります。
 更に、本県の地域特性等から冬期間の対策の充実を図る必要があります。

  1. 生活福祉資金貸付制度の充実
     生活福祉資金貸付制度については、低所得者世帯の需要に応じた制度内容の改善や必要な貸付原資の確保について国に要望するなど制度の充実を図り、経済的自立と生活意欲の助長に努めます。
  2. 相談援助体制の整備
     福祉事務所の相談援助体制の整備を進めるとともに、心配ごと相談所等の相談援助機能の充実や民生委員・児童委員等の拡充を図ります。
  3. 除雪援助事業の充実
     老人、母子、身体障害者等(被保護者世帯を除く。)の要援護世帯のうち、自力で除雪が困難な世帯の冬期間の安全を確保するため除雪援助事業の充実を図ります。

第2 医療保険制度の充実

医療保険は、県民の健康増進に大きな役割を果たしており、来るべき高齢化社会においても県民に安定した医療サービスを保障することのできる芯の強い医療保険制度を確立することが必要です。

1 医療費適正化対策の推進
 医療保険制度間における給付と負担を公平なものとするため、各保険者の経営努力により医療費の適正な水準を維持し、制度の効率的な運営が行われるよう医療費適正化対策の促進を図ります。

2 国民健康保険財政の健全化
 医療保険財政は厳しい状況にあり、なかでも国民健康保険事業は、加入者の高齢化等による医療費の増加と低所得者の加入割合の増加などにより、とりわけ厳しい状況にあり、財政の健全化が重要な課題となっています。

3 保健施設活動の推進
 健康づくり運動などの保健施設活動の取組は、徐々に進んできているものの、全般的には十分とはいえず、その活性化が求められています。

  • 1. 被保険者の疾病予防と健康の保持増進を図るため、保健施設活動を積極的に推進します。特に、へき地においてはその地域特性を考慮し、重点的に実施します。
  • 2.地域医療等の担い手である国民健康保険直営診療施設の整備充実を図ります。

表3-26 国民健康保険加入状況

年度 国民健康保険加入者 県総数 加入割合
被保険者総数A 対前年比 加入世帯数B 対前年比 人口C 世帯数D 被保険者数E 世帯数F
60 928,932人 99.4% 335,688 101.2% 2,478,470人 680,756 37.5% 49.3%
61 923,439人 99.4% 339,977 101.3% 2,476,000人 684,015 37.3% 49.7%
62 910,222人 98.6% 341,425 100.4% 2,478,387人 688,758 36.7% 49.6%
63 880,809人 96.8% 338,058 99.0% 2,479,951人 694,395 35.5% 48.7%
847,736人 96.2% 333,632 98.7% 2,479,435人 700,089 34.2% 47.7%

(注)国民健康保険加入者数は年間平均値
総数は10月1日現在、県統計課調
E=A÷C×100,F=B÷D×100

表3-27 被保険者の状況

年度 被保険者数内訳 構成比
総数 老人 退職 若人 老人 退職 若人
60 928,932人 135,483人 71,576人 721,873人 14.6% 7.7% 77.7%
61 923,439人 140,176人 79,216人 704.047人 15.2% 8.6% 76.2%
62 910,222人 144,655人 85,562人 680,005人 15.9% 9.4% 74.7%
63 880,809人 147,610人 89,638人 643,561人 16.8% 10.2% 73.0%
847,736人 150,500人 92,648人 604,588人 17.8% 10.9% 71.3%

(注) 被保険者数は年間平均値
 「老人」とは、国保の被保険者のうち、老人保健法第25条の規定による 医療給付を受けることができる者(70才以上の者及び65才以上70才未満の者で 寝たきり等の状況について市町村長の認定を受けた者)
 「退職」とは、国民健康保険法第8条の2の規定による退職被保険者 及びその被扶養者
(老人保健の適用を受ける者は除く)
「若人」とは「老人」「退職」以外の被保険者

表3-5A 被保険者一人当たりの保険料(税)と医療費の推移(国民健康保険)

保険料 医療費
60 43,778円 149,925円
61 50,335円 164,027円
62 55,474円 176,714円
63 58,868円 187,464円
61,679円 202,965円

表3-6A 若人・退職者・老人別医療の推移(国民健康保険)

若人 退職 老人
60 98,476円 200,133円 397,544円
61 107,946円 210,231円 419,577円
62 114,759円 223,549円 440,252円
63 120,218円 229,042円 455,400円
128,064円 240,649円 480,663円

第3 年金保険制度の充実

 高齢化社会のピークを迎える21世紀においても年金制度が健全かつ公平に機能 しうる基盤の確立が必要です。
 このため、昭和61年4月、国民年金制度を全ての国民に共通の基礎年金を支給する制度として発展させ、厚生年金や共済年金は「基礎年金への上乗せ制度」に再編するという年金制度の改正を行うなど、公的年金の一元化に向けて年金制度の改革が計画的に進められています。

1 年金受給権の確保
 年金制度は県民の中に広く普及し、県民の老後の所得保障に重要な役割を果たしており、また、年金制度に対する県民の期待と関心も高まってきていることから、県民の年金受給権を保障するとともに、年金制度の充実を促進することが必要です。

表3-28 新潟県における公的年金への加入状況(平成2年3月)

適用事業所数 被保険者数 20歳以上59歳人口に占める割合
厚生年金 32,499 582千人 45.0%
国民年金 532千人 41.1%
その他年金 120千人 9.3%
合計 1,234千人 95.4%

表3-29 新潟県における厚生年金基金加入状況(平成2年3月)

総事業所数 基金加入事業所数 加入率
32,499 1,227 3.8
総被保険者数 基金加入被保険者数 加入率
581,682 81,123 14.0
  • 3. 全県的な移動相談所の開設や年金相談コーナーの利用促進と社会保険委員、国民年金委員などの充実を図ります。
  • 4. 年金制度について積極的な広報を実施し、制度についての正しい知識の普及に努めます。

2 施設の充実
 被保険者である県民の福祉向上のため、大規模年金保養基地など厚生年金、国民年金関係施設や年金積立金還元融資の活用による各種施設の整備が求められています。

  1. 福祉施設の充実
     被保険者、年金受給権者など県民福祉の向上を図るため、大規模年金保養基地や国民年金保養センターなどの整備を促進します。
  2. 年金積立金還元融資の活用促進
     年金積立金還元融資の活用を促進し、厚生施設、医療施設、スポーツ施設などの充実に努めます。

主題:

新潟県社会福祉計画-にいがた福祉オアシスを目指して-№2
53頁~112頁

発行者:
新潟県民生部社会福祉課

発行年月:
1991年5月

文献に関する問い合わせ先:
新潟県民生部社会福祉課
〒950 新潟市新光町4番地1 電話 025-285-5511(代表)