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新潟県社会福祉計画にいがた福祉オアシスを目指して

№1

平成3年5月

項目 内容
立案時期 平成3年5月
計画期間 平成3年度~平成7年度(5年間)

基本計画

にいがた福祉オアシスを目指して 時代が20世紀から21世紀に変わろうとしている中、私たちを取り巻く環境も大きく変わろうとしています。
画一化から個性化へ、また、高齢化、国際化といった大きな流れを見据えながら、豊かな未来を切り開いていく必要があります。
21世紀の新潟県は、活力にあふれ、健やかで心豊かな人間をはぐくむふるさとでなければと考えております。
この社会福祉計画は、お年寄りや心身に障害をもつ方々が地域の中で住民と心を通わせながらいきいきと生活できるような条件づくりや、次代を担う子どもたちが心豊かに育つような地域づくりを推進するため、理念や施策の目標を示し、明るく活力のある福祉社会の実現を目指すものです。
この計画の達成のためには、県はもとより、市町村、福祉関係団体、企業等が県民とともに密接な連携をとり、共に考え、共に力を出し合っていくことが必要であります。
「新潟県を日本のオアシスに」を目標として、本県が福祉分野においても真にオアシスとなるよう、今後とも、一層のお力添えをお願いいたします。

平成3年5月

新潟県知事  金子清

新潟県社会福祉計画目次

はじめに

基本計画

第1章 社会福祉を取り巻く環境と課題

第2章 計画の基本的考え方

第3章 施策の基本方向

1 部門別施策

2 総合的な基盤の整備

はじめに

計画策定の趣旨

新潟県の21世紀について展望すると、かつて衝撃的に受けとめられた国際化、高齢化、高度情報化などの社会情勢の変化が現実のものとして定着しつつあります。また、人生80年時代の到来で、県民の生活様式は多様なひろがりと深化をみせつつあります。
このような変化の中で、県民が健やかで充実した人生を送ることができるような福祉社会の実現、特に、高齢者や障害者が、やすらぎの中に充実した生涯が過ごせるような社会システムの構築を目指していく必要があります。
これまでの福祉施策は、主として福祉の手だてを必要とする低所得者などを対象に、当面する課題に対してその都度必要な対策を展開するという傾向がありました。しかし、多様で複雑な福祉ニーズヘの対応は、従来の手法と発想では困難な状況となっています。
このため、人間の尊厳を原点にして思いやりを大切に、幸せを分かちあい、また、ハンディキャップの程度や種別を越えて、同じ社会の一員として「共に生きる」、「共に創る」という理念に基づいて福祉施策の総合化、体系化を図り、福祉社会の実現を推進するため、社会福祉計画を策定することとしました。
この計画は、21世紀を展望した社会福祉の理念や目標を皆で共有し、県民、行政、民間団体、企業等が多様かつ主体的な活動を創造的に展開することによって、全ての県民が生きがいをもち健やかに暮らせる福祉社会を構築しようとするものです。

計画の位置付け

この計画は、本県の社会福祉の現状と課題を明らかにするとともに、21世紀の福祉社会の形成に向けて、高齢者や障害者、児童、青少年に視点をおきながら、福祉分野のみならず、関連性の深い保健・医療をはじめ教育、住宅等の分野も含め、各種施策の総合的な推進を図るための目標を明らかにするものです。
したがって、県の施策の目標を明らかにするとともに、市町村に対しては、この計画の趣旨を踏まえた施策の展開を求め、国に対しては、計画の実施に伴う関連する制度の改善等を要望していきます。また、県民に対しては、広く福祉への理解と協力、積極的な参加を求め、様々な活動を行ううえでの支えとなることを目指し、県民あげて福祉社会を構築していきます。

計画の構成

この計画は、「基本計画」と「実施計画」の二部により構成しています。
 「基本計画」は、社会福祉を取り巻く環境の現状分析により、本県の社会福祉の総合的な課題を明らかにし、併せて県民の福祉意識を踏まえながら、21世紀の福祉社会の構築に向けての基本的考え方を示し、計画実現のために平成3年度を初年度とする今後10年間に取り組むべき施策の目標を設定しています。
 また、「実施計画」は、基本計画に基づき平成3年度から平成7年度までの5年間に実施する主要な施策の目標を設定しています。
なお、この計画は施策の進捗状況にあわせて、見直すこととしています。

計画の構成

基本計画

第1章
社会福祉を取り巻く環境と課題

近年、人口構造の急速な高齢化、女性の社会進出、都市化と過疎化などの進行に伴い、生活の基盤である家庭や地域の機能は大きく変化しています。
また、生活水準の向上や高学歴化、労働時間の短縮による自由時間の増加、男女の役割分担意識の変化等に伴い県民の価値観は多様化し、生活重視の視点から、「精神的、文化的豊かさ」や「ゆとり、生きがい」といったいわゆる生活の質の向上を求める新しいニーズが生まれてきています。
これからの社会福祉施策を進めるに当たっては、社会福祉を取り巻く環境の変化、県民の福祉ニーズを踏まえ、社会福祉の課題を的確にとらえる必要があります。

第1節 社会福祉を取り巻く環境の変化

第1 高齢者福祉を取り巻く環境の変化

1 急速に進む人口構造の高齢化

  • 1.
     本県の高齢化は、急速に進行しており、人口に占める65歳以上の割合(以下「高齢人口割合」という。)でみると、昭和45年8.1パーセント、昭和55年11.2パーセント、平成2年15.0パーセントとなっています。10年後の平成12年には19.9パーセントと5人に1人が65歳以上になることが予想されます。

表1-1 新潟県の人口と高齢者人口の現状と将来予測

区分 平成2年 平成7年 平成12年
人口(A) 2,469,477人 2,472,215人 2,467,454人
高齢者(B)
(65歳以上)
371,322人 437,534人 491,802人
割合B/A 15.0% 17.7% 19.9%

資料:平成2年 新潟県統計課「推計人口」(4月1日現在)
平成7年~厚生省人口問題研究所
「都道府県別将来推計人口(昭和62年1月推計)」

平成2年の高齢人口割合15.0パーセントは、全国の数値11.9パーセントに比較し3.1ポイント高く、平成9年における全国推計値15.0パーセントとほぼ一致しています。
本県のこのような急速な高齢化は、出生率の低下や平均寿命の伸長のほかに、若年者の県外流出が要因となっています。

  • 2.高齢化の状況を地域別にみると、平成2年において高齢人口割合が既に20パーセントを超える市町村は32を数えており、概して郡部・山村部で高く、中核都市及びその近郊では低くなっています。
    また、高齢人口割合は市町村間で格差があるため、地域状況に応じた対策が重要です。
  • 3.高齢化の進行とともに、寝たきり老人や痴呆性老人など介護を要する人が今後も増加すると予想されます。このような人をケアする社会的仕組みを早急にそれぞれの地域で確立するとともに、「寝たきり」や「痴呆性」老人にならないような体制整備が重要です。

表1-2 新潟県の寝たきり老人の内訳
(単位:人)

年次\区分 65歳以上人口 寝たきり老人数 内訳
老人保健
施設
在宅 特別擁護
老人ホーム
長期入院
患者
昭和60年 317,159 8,785 5,566 1,830 1,389
平成2年 371,322 12,196 565 6,775 2,987 1,869
平成12年 491,802 24,600 7,400 8,600 6,200 2,400

資料:平成12年 厚生省人口問題研究所
「都道府県別将来推計人口(昭和62年1月推計)」

痴呆性老人の数は次のように推計されますが、このうち約6パーセントは常時介護者を必要とする重症者といわれています。この重症者について、在宅介護に対する支援や施設整備等の対応がとくに重要となります。

表1-3 新潟県の痴呆性老人数の推移
(単位:人)

区分 平成2年 平成7年 平成12年
痴呆性老人数 18,600 22,400 25,800
うち 重症者 1,116 1,344 1,548
  • 4.人口構造の高齢化に伴い、就労している高齢者も増加し、労働力人口そのものの高齢化が進行しています。全就業者に占める65歳以上の就業者の割合は、全国平均を上回って推移してきました。
    一方、65歳以上の人口に占める就業者の割合は、全国と同じく低下傾向が続いています。これは、公的年金の充実や生活様式の多様化等が背景にあると考えられます。
    今後、75歳以上の後期高齢者の増加が見込まれること等の要因も加わり、就労を希望する高齢者の就労の場や多様なニーズに応じた柔軟な就業形態の確保のほか、就労を望まない高齢者に対しても社会参加への意欲を高めるための対応策が重要となります。

表1-4 高齢者の就労状況

年次 新潟県の
65歳以上
人口(A)
65歳以上就業者 割合
65歳以上就業者
/65歳以上人口
割合
65歳以上就業者
/全就業者
県(B) 全国 県(B/A) 全国 全国
50
228,759

61,782

2,624,773

27.0

29.6

5.0

4.9
55 273,499 72,253 2,959,232 26.4 27.8 5.7 5.3
60 317,159 74,683 3,124,980 23.5 25.1 5.9 5.4

資料:総務庁統計局「国勢調査」

  • 5.本県のこれからの10年間は最も急速に高齢化が進み、高齢者問題の社会に与える影響も大きなものとなります。
    このため、この貴重な10年間において、高齢社会の基盤整備に必要な課題を探り、計画的、効率的に解決していくことが重要となります。

2 老人福祉施設等の現状

  • 1.老人福祉施設
    本県の入所型の老人福祉施設の整備は、全国水準に比べやや低い水準にあります。
    今後、入所型の老人福祉施設の整備率を高めていくことと同時に、要援護老人が、家庭や地域で安心して暮らせるようなショートステイ専用居室、デイサービスセンター、在宅介護支援センター等、新しい在宅型の施設の整備が急務となっています。
    また、従来の入所型施設とこの新しい在宅型の施設を相互に関連させ、それぞれの機能を生かせるような調整が重要となります。

表1-5 新潟県の老人福祉施設の現状(平成2年度末)

区分 施設種別 施設数 定員 対65歳以上人口比
新潟県(H2末) 全国(H元末)
入所施設 特別養護老人ホーム 39
3,587

0.97

1.14
養護老人ホーム 16 1,435 0.39 0.48
軽費老人ホーム 4 200 0.05 0.12
ショートステイ専用居室 35 357 0.10 0.03
利用施設 老人福祉センター 38 - 0.01 0.01
老人憩の家 89 - 0.02 0.03
デイサービスセンター 35 - 0.01 0.01
在宅介護支援センター 3 - 0.00 0.00
参考 ホームヘルパー - (現員)
862
0.23 0.22

注 対65歳以上人口比の算出に当たって、定員のないものについてはか所数を65歳以上人口で除し、%で表示した。

  • 2.老人保健施設 主に寝たきり老人や痴呆性老人を対象としている老人保健施設の本県の整備率は、全国平均の2倍と高く、施設数も北海道、群馬県に次いで全国3番目となっています。
    この施設は、病院、特別養護老人ホームに比べて制度そのものがあまり熟知されていないことなどから、本来の機能が必ずしも十分発揮されている状況にはありません。
    今後は、広報活動を充実しつつ、デイ・ケアや退所者に対する訪問指導に努める等地域との連携を図りながら病院と在宅の通過型施設としての機能が十分果たされるような対応が必要となります。

表1-6 新潟県の老人保健施設の現況 (平成元年度末)

区分 施設数 入所定員A 通所定員B 計(A+B) 対65歳以上
人口比
16
1,413

118

1,531

0.43
全国 346 27,457 3,977 31,434 0.22

第2 障害者福祉を取り巻く環境の変化

1 障害者の現況

  • 1.精神薄弱児・者の現況
    • ア 精神薄弱児・者の推移
      本県の精神薄弱児・者の出現率は、人口1,000人中4.0人でほぼ全国平均と同じです。
      平成2年現在、施設福祉サービスを利用している精神薄弱児・者は、入所施設2,739人、通所施設1,109人で全体の38.9パーセントにのぼっています。
      今後、精神薄弱児・者数は次のように推移すると見込まれますが重度者、高齢者の割合が増加するものと予測されます。

表1-7 新潟県の精神薄弱児・者数の推移(平成2年~平成12年)

区分 平成2年 平成7年 平成12年
人数 構成比 人数 構成比 人数 構成比
総数

(うち重度者)

9,882
(4,729)

100.0
(47.9)

10,737
(5,210)

100.0
(48.5)

11,500
(5,670)

100.0
(49.3)
年齢区分 0~14歳 1,544 15.6 1,389 13.0 1,300 11.3
15~59歳 7,760 78.5 8,560 79.7 9,200 80.0
60歳以上 578 5.9 788 7.3 1,000 8.7
  • イ 精神薄弱者の就労状況
    平成2年現在、就労している精神薄弱者は、全体の13.4パーセント(1,328人)ですが未就労者のなかには就労希望者も多くおり、今後は雇用の促進や地域社会での支援体制を強化することにより、この割合を高めていくことが必要です。
  • ウ 精神薄弱児の後期中等教育の状況
    精神薄弱養護学校中学部卒業者の高等部進学率は全国に比較しても低い状況です。今後、精神薄弱児の後期中等教育を充実していく必要があります。

表1-8 精神薄弱養護学校中学部卒業者の進学状況(平成2年3月現在)

区分 卒業者数 高等部進学者 進学者の割合
110人 22人 20.0%
全国 5,717人 3,612人 63.2%

(参考) 平成3年3月-卒業者115人、進学予定者42人、割合にして36.5パーセントの見通し
資料:全国 文部省初等中等教育局資料

  • 2.身体障害児・者の現況
    • ア 身体障害児・者の推移
      身体障害児・者の出現率は、全国に比較するとやや低率ですが、人口1,000人中、昭和45年14.5人から平成12年には29.3人とほぼ倍増すると予想されています。
      身体障害児・者数は次のように推移すると見込まれますが、平成2年現在約60パーセントを占める高齢者の割合や約35パーセントを占める重度者の割合が今後とも増加するものと予測されます。

表1-9a 身体障害児・者の出現率の推移

区分 昭和45年 昭和55年 昭和62年 平成12年
14.5 21.8 24.7 29.3
全国 17.9 23.8 26.7

資料 全国 厚生省社会局「日本の身体障害者」(平成3年2月)

表1-9b 新潟県の身体障害児・者数の推移(平成2年~平成12年)

区分 平成2年 平成7年 平成12年
人数 構成比 人数 構成比 人数 構成比
総数

(うち重度者)

65,370
(23,237)

100,0
(35.5)

69,605
(28,033)

100.0
(40.3)

72,400
(32,560)

100.0
(45.0)
年齢区分 0~14歳 1,049 1.6 1,037 1.5 1,100 1.5
15~59歳 23,861 36.5 21,316 30.6 18,700 25.8
60歳以上 40,460 61.9 47,252 67.9 52,600 72.7
  • イ 身体障害者の雇用状況
    身体障害者の雇用率は、民間企業、地方公共団体のいずれも全国平均を上回っています。しかし、民間企業では企業規模が大きくなるほど身体障害者雇用率が低い傾向になっていますので、今後はこの対応が重要です。

表1-10 身体障害者の雇用率(平成2年6月現在)

区分 民間企業 地方公共団体
1.50% 2.07%
全国 1.32% 1.97%

身体障害者雇用率=身体障害者数/法定常用労働者数X100

  • 3.精神障害者の現況
    本県における精神障害者の現況は次のとおりです。

表1-11 新潟県の精神障害者数(平成元年度末)

総数 24,949人
内訳 入院患者 7,754人
通院患者 17,195人

2 障害者福祉施設の現況

  • 1.精神薄弱者福祉施設
    精神薄弱者福祉施設の整備率は、精神薄弱者1,000人当たり239.7人で、全国平均の240.2人とほぼ同一水準にあります。しかし、施設形態別にその内訳を見ますと入所施設は全国水準を上回っているものの通所施設の整備は立ち遅れています。
    今後、在宅福祉サービスを推進していくために、入所施設の整備と併せて社会参加型通所施設を重点的に整備して行く必要があります。

表1-12 新潟県の精神薄弱者福祉施設の現況(平成2年4月現在)

施設種別\区分 施設数 定員 在所者数 精神薄弱者(療育手帳所持者)
1,000人当たりの定員
全国
精神薄弱者更生施設
(入所)
23
1,200

1,199
入所 199.2 184.5
精神薄弱者授産施設
(入所)
1 300 249
精神薄弱者更生施設
(通所)
3 85 85 通所 40.5 55.7
精神薄弱者授産施設
(通所)
8 220 219
通勤寮 1 30 29 239.7 240.2
精神薄弱者福祉ホーム 4 40 34
40 1,875 1,815
  • 2.身体障害者福祉施設
    身体障害者福祉施設の整備率は、身体障害者1,000人当たり4.1人と全国平均の9.7人を大きく下回っています。特に重度身体障害者更生援護施設、重度身体障害者授産施設等の重度障害者のための施設が少なく、県外施設に頼っている状態であり、これへの対応が重要です。また、肢体不自由者更生施設については在所者数が少なく、施設機能の検討が必要です。

表1-13 新潟県の身体障害者福祉施設の現況(平成2年4月現在)

施設種別\区分 施設数 定員 在所者数 身体障害者1,000人当たりの定員
全国
肢体不自由者更生施設

(通所事業)
1
50
5

21
5
入所 3.2 9.0
身体障害者療護施設 3 150 150
身体障害者通所授産施設 3 60 60 通所 0.9 0.7
身体障害者通所ホーム 2 20 15 4.1 9.7
身体障害者福祉ホーム 1 10 7
進行性筋ジス委託国立療養所 (1) (40) (18)
(1)
10
(40)
295
(18)
258

( )内は国立施設入所者で外書き
表1-14 身体障害者更生援護施設入所者(平成2年4月現在)

県内 県外
入所者 258(18)人 161(1)人

( )内は国立施設入所者で外書き

3 障害者の自立と社会参加

  • 1. 昭和56年の国際障害者年を契機に、地域社会の障害者に対する理解が深まるとともに障害者自身の社会参加の意欲も高まってきています。一方、近年の障害の重度化、障害者の高齢化、ノーマライゼーションの理念の浸透等の要因の変化に伴い、障害者のニーズも多様化してきており、障害者の「完全参加と平等」の実現に向けて障害者の自立と社会参加を一層推進していく必要があります。
  • 2. 障害者の福祉ニーズは、これまで「親や家族」の希望に基づく施設への入所を中心にとらえられがちでしたが、今後は、ノーマライゼーションの理念に沿って障害者自身の立場に立ち、多様なニーズヘの幅広い対応が重要となります。
  • 3. 現在の施設入所待機者の早期解消を図るとともに、障害者の社会参加を支える次のような支援体制の確立が急務となってきています。
    • ア 障害の予防と早期療育体制の強化
    • イ 心身障害児の義務教育終了後の進路の確保と適正処遇の推進
    • ウ 家庭と施設を結ぶ在宅支援施設など地域生活支援対策の充実強化
    • エ 施設利用サービスの基盤作りと施設機能の強化及び機能分担
    • オ 相談判定機能及び施設入過所に関する連絡調整の強化

第3 児童・青少年福祉を取り巻く環境の変化

1 出生率の低下と児童・青少年の健全育成

  • 1. 本県の出生数は、昭和22年の86,000人をピークに減り続け、平成元年は25,264人とピーク時の約30パーセントとなっています。
    全国的にもこの傾向は変わりませんが、全国で出生率が大きく増加した昭和40年代後半の第2次ベビーブームの際も、本県は若者の県外流出が背景にあるため、ほぼ横ばい状態で推移したのが特徴です。
    出生率の低下や少子化は、様々な論議の対象になっていますが、経済面からみると、総体的な需要減、労働力不足、労働力の高齢化、高齢者扶養負担の増大などの好ましくない結果が予想されます。
    また、少子化による子ども同士の付き合いや遊びの機会の減少が社会性の獲得の機会をも減少させるなど、社会全体に大きく影響を及ぼすことが予測されます。
    さらに、本県では若者の県外流出などの社会移動減に対する対応も重要となります。

表1-15 新潟県の児童数の推移

年齢 平成2年 平成7年 平成12年
0~14歳
468,066

441,095

441,469

資料 平成2年 県統計課「推計人口」(4月1日現在)
平成7年~厚生省人口問題研究所
「都道府県別将来推計人口(昭和62年1月推計)」

  • 2. 本県では、女性の社会進出が全国平均を上回って進んでおり、これを支える保育体制等の整備が順調に進んできました。

表1-16 認可保育所の現況(平成2年4月現在)

区分 保育所数 定員 入所児童数
本県 777 64,530 55,043
全国 総数 22,705 1,979,124 1,637,069
平均 483 42,109 34,831
本県の全国順位 7位 8位 6位

資料:厚生省報告例

しかしながら、本県は3歳未満児の入所割合が低く、今後の女性の社会進出等や家庭機能の低下を考えると、ニーズに応じた多様な保育体制を整備する必要があります。
また、入所児童の減少に伴い、保育所を地域における老人や障害者と地域の人々との交流の場など地域福祉幸推進する牟めの施設とレて有効活用する対応も必要です。

  • 3. 産業構造の高度化、都市化、高学歴化、女性の社会進出等の社会経済状況の変化が、世帯人員の減少など家族の変化をもたらし、また、昔からの地域での隣同士の付き合いや、子どもの遊び場や自然の減少といった地域における生活に変化を及ぼしています。
    これらの変化は、子ども、親、両者の関係、家族の在り方そのものにも大きな影響を与えてきています。
    このような変化を図で表すと次のようになります。

図1-1 児童・家庭に関する諸状況の整理

児童・家庭に関する諸状況の整理

厚生省児童家庭局 作成

  • 4. 青少年の意識や行動に悪影響を及ぼす情報の氾濫等、環境が変化してきています。
    本県の小、中学校の「学校ぎらい」を理由とする長期欠席者(登校拒否児童生徒)数は、昭和50年度は155人であったのが、平成元年度は1,015人と大幅に増加しています。
    また、非行少年の補導数は、昭和58年をピークに減少傾向が続いていますが、少年人口1,000人当たり、平成元年度本県は10.5人と全国平均7.9人に対し高くなっています。特に、万引きが少年非行の中心となっており、とりわけ女子非行の割合が高く憂慮される状況です。
    このため、今後、登校拒否児童生徒の増加、青少年非行のうち特に万引き非行増大への対応が重要となっています。

2 児童福祉施設の現況
保育所を除く児童福祉施設のうち精神薄弱児施設以外は、全国平均より低い整備率となっており、より多様な機能の展開を図る必要があります。

表1-17 新潟県の児童福祉施設の現況(平成2年4月現在)

施設種別\区分 施設数 定員 在所者数 人口1万人当たり定員
乳児院 1 30人 22人 0.12 0.32
養護施設 5 200 154 0.08 2.81
精神薄弱児施設 9 420 380 1.85 1.66
精神薄弱児通園施設 3 100 43 0.40 0.63
肢体不自由児施設
(通所部門)
1 90
45
54
44
0.52 0.70
教護院 1 80 17 0.32 0.37
重症心身障害児施設 1 100 100 0.40 0.53
重度児委託国立療養所 (3) (280) (257)
進行性筋ジス委託国立療養所 (1) (80) (50)
心身障害児通園事業所 3 90 58
(4)
24
(360)
1,155
(307)
872
(63.10.1現在)

( )内は国立施設で数は外書き

第4 家庭と地域社会の変化

1 世帯形態の多様化と家庭機能

  • 1. 近年の晩婚化の傾向や婚姻形態の変化などにより、世帯形態が多様化し、旧来の家庭機能が変化しつつあります。また、核家族化や少子化、女性の社会進出などにより、これまで家庭が有していた扶養や介護の機能が低下しつつあります。
  • 2. 本県では、昭和60年現在、三世代以上同居の割合は28.1パーセントと全国平均の14.4パーセントの約2倍と高く(全国5位)一方、単独世帯が全世帯に占める割合は12.1パーセントと全国平均の17.5パーセントの約3分の2と低い現状です。

表1-18 世帯構造の推移
(単位:世帯、%)

区分\年次 昭和50年 昭和55年 昭和60年 構成比
昭和50年 昭和55年 昭和60年
本県 全国 本県 全国 本県 全国
総数
((1)十(2)十(3))
594,462 635,247 661,780 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
親族世帯(1) 546,273 568,889 581,066 91.9 86.2 89.6 84.0 87.8 82.3
核家族世帯 319,835 336,830 345,114 53.8 63.9 53.0 63.3 52.1 62.5
その他の親族世帯 226,438 232,059 235,952 38.1 22.3 36.6 20.7 35.7 19.8
うち 三世代世帯 177,949 185,888 186,053 29.9 15.9 29.3 15.3 28.1 14.4
非親族世代(2) 617 636 570 0.1 0.2 0.1 0.2 0.1 0.2
単独世帯(3) 47,572 65,722 80,144 8.0 13.6 10.3 15.8 12.1 17.5
うち 65歳以上世帯 7,075 10,221 14,937 1.2 1.0 1.6 2.4 2.3 3.1

資料:総務庁統計局「国勢調査」

  • 3. 本県の65歳以上の高齢者のいる一般世帯数は、昭和60年現在23万5千世帯で、一般世帯総数の34.7パーセントに当たり、全国平均の24.4パーセントを大きく上回っています。
    昭和45年から昭和60年の間の世帯数の伸び率をみると、一般世帯総数では16.5パーセントであるのに対し、高齢者のいる世帯は、53.7パーセント(8万2千世帯の増)となっており、高齢者のいる世帯がいかに増加しているかがわかります。

表1-19 新潟県における高齢者のいる世帯の状況
(単位:世帯、%)

区分\年次 昭和45年 昭和55年 昭和60年 全国平均
の割合
(60年)
世帯数 割合 世帯数 割合 世帯数 割合
核家族世帯
(うち夫婦のみの世帯)
17,142
(7,041)
11.2
(4.6)
35,431
(18,459)
17.0
(8.9)
47,983
(25,707)
20.4
(10.9)
31.3
(17.8)
その他の親族世帯 130,848 85.4 162,026 77.7 171,925 73.0 55.9
非親族世帯 153 0.1 144 0.1 129 0.1 0.1
単独世帯 5,086 303 10,859 5.2 15,428 6.5 12.7
合計 153,229 100.0 208,460 100.0 235,465 100.0 100.0
対一般世帯総数比率 26.3 31.8 34.7 24.4

資料:総務庁統計局「国勢調査」

  • 4.本県の母子・父子世帯数は17,373世帯(昭和63年8月)で、全世帯数の2.5パーセントを占めています。これは全国と同水準であり、今後も全世帯数に対する割合については大きな変化はないものと考えられます。
    また、全国的に母子世帯の所得水準は、一般世帯の半分以下となっており、総合的な支援が必要となります。

表1-20 新潟県の母子・父子世帯数の推移
(単位:世帯、%)

区分 昭和52年 昭和58年 昭和63年 平成12年
世帯数 12,527 17,153 17,373 19,476
全世帯に対する割合 1.98% 2.56% 2.50% 2.81%
  • 5.本県の生活保護受給世帯数は年々減少しており、全国に比して約半分の保護率です。しかし、今後も真に援助を必要とする人に適切に対応する必要があります。

表1-21 新潟県の生活保護受給世帯の状況

年度\区分 被保護世帯 被保護人員 保護率(単位:パーミリオン)
実数 指数 実数 指数 全国
50 9,451 100.0 18,185 100.0 7.60 12.1
55 8,468 89.6 15,892 87.4 6.48 12.2
60 8,573 90.7 15,587 85.7 6.29 11.8
H2 6,673 70.6 10,981 60.4 4.45 8.5

注1 保護率=千人当たりの被保護人員の割合
注2 各年度平均値。ただし、平成2年度は4月現在の値

2 地域社会の変化
都市化の進展や産業・就業構造等の変化により、人々の地域における結びつきや帰属意識が薄れつつあります。また、過疎化の進行は、従来からの地域社会を根本から崩しかねない状況になっています。
一方、本県は、持ち家率が高く(全国6位)、持ち家面積も広く(全国5位)、更に、通勤・通学時間が首都圏やその周辺の県の約半分といったゆとりある家庭環境を有しています。
今後は、本県の特徴を生かしながら、家庭や地域社会が有する扶養、介護、教育等の機能を考え、多様な年代の人々が共に生きる社会の実現に対応する施策展開を図る必要があります。

第2節 社会福祉の総合的課題と県民意識

第1 福祉社会実現のための総合的課題

21世紀を展望した、本県福祉の総合的課題として指摘される主なものは次のとおりです。

1 地域福祉の展開
「だれもが、いつでも、どこでも、安心して、必要とするサービスを利用できる」ことを基本に、地域に生活する住民の視点から地域社会を基盤に、総合的な福祉の推進を図ることが必要です。
このため、日常生活の行動範囲ごとに圏域を設定し、県、市町村、関係団体、住民等が各々の役割を担い、圏域ごとのニーズに見合った適切な福祉サービスを効果的、効率的に提供する必要があります。
また、社会福祉施設は、これまで入所処遇という考え方を中心に設置がなされてきており、施設の機能を地域住民のために活用するという考え方が欠けていました。したがって、今後は施設整備、機能の充実と併せ、各々の施設機能を有効に発揮するため、対象者の把握、利用の方法などをシステム化するとともに、地域住民へ開かれた施設とすることが重要な課題となります。

2 保健・医療・福祉の連携
高齢者や障害者などの福祉サービスの利用者は、同時に保健、医療のサービスを必要とする場合が多く、さらに、寝たきり老人や痴呆性老人、難病に苦しむ人々などの増加に伴い、福祉と保健・医療分野の連携した取組が強く求められています。
また、療育分野においても「乳幼児検診→発達障害児の早期発見→早期治療→早期訓練及び療育」に見られるように保健・医療・福祉サービスの継続した取組が必要です。
このため、福祉に関する全領域において福祉と保健・医療が連携し、協力して対応できるシステムづくりを行う必要があります。

3 リハビリテーション体系の確立
障害者の自立のためには、リハビリテーションが大きな役割を果たしています。 本県では、リハビリテーションの取組が個々の分野で行われているものの、様々な障害に対応した医学的、教育的、職業的、社会的リハビリテーションの総合的展開の体制が必ずしも十分整備されていません。
このため、総合的なリハビリテーション体系の確立を図るとともに、中核となる機関の在り方を検討し、調査、研究、指導を進めることが重要です。特に、小児療育の分野、身体障害者の機能回復・職業の分野、精神薄弱者・精神障害者の社会復帰分野のリハビリテーションについては、早期に体系の確立、位置付けを行う必要があります。

4 福祉を支える人材の養成確保
福祉分野の人材の養成確保は、保健・医療分野等と連携しながら総合的な対策 を検討する必要があります。

  • 1.福祉サービスの特質は、主として人と人との関係で提供されるものです。
    したがって、福祉サービス提供体制を確立するためには、介護や相談業務に携わる福祉マンパワーの量の確保が重要な課題です。

表1-22 施設、在宅福祉サービス推進に伴う必要人員
(単位:人)

種別 平成2年 平成12年必要量 新規必要量
ホームヘルパー 862 2,800 1,930
生活指導員等 991 1,690 700
寮母、介護職員 1,742 4,340 2,600
看護職 323 980 660
栄養土 102 150 50
その他
(調理員、事務職員等)
1,110 2,500 1,390
合計 5,130 12,460 7,330

注1 平成2年現員は、保育所及び老人福祉センター等の利用施設を除いた主要な入通所施設等の職員数
2 施設新設等に伴う新規の必要量。ただし、保育所を除く
3 老人保健施設については、介護職員のみを計上
4 必要量は、10人単位で整理した

また、ボランティアなどの地域において福祉を支える人材を充実することが、ゆとりある福祉社会を実現するために必要となっています。

表1-23 ボランティア活動の現況(平成元年8月現在)

区分 グループ数 ボランティア数
社会福祉施設・病院グループ 336 30,285
地域グループ1(在宅福祉以外) 296 49,858
地域グループ2(在宅福祉) 216 15,455
手話サークル 40 1,004
点訳・朗読グループ 75 1,195
学校関係 141 29,148
合計 1,104 126,945

資料:県社会福祉協議会資料

今後、高齢者の増加など福祉サービスを必要とする人々の増大や、福祉ニーズの多様化などの要因により、福祉サービスを担う人材の需要は、大幅に増大するものと見込まれます。

  • 2.本県では、福祉関係施設職員は比較的容易に確保されてきましたが、今後は近年の労働力不足を反映し、確保困難も予想されます。とりわけ専門的資格を必要とする看護職員や介護にあたるホームヘルパー等の確保については、相当困難な状況にあります。
    このため、労働条件の改善を図るなど魅力ある職場づくりを進めることが重要であり、同時に広報、啓発活動を通じ県民に対し、福祉職場に対するイメージアップを図ることが必要です。
    また、必ずしも専門資格を要しない分野については、育児を終えた家庭の主婦や元気な高齢者などの潜在的なマンパワーの活用を図るとともに、雇用形態の弾力化を進めることも課題です。
  • 3. 加えて、資質向上もまた大きな課題です。このため、総合的な研修機関の整備を含めた研修体制の充実、強化を図る必要があります。特に、非常勤やパートのホームヘルパーや小規模施設で働く人々に対し、県、市町村、社会福祉協議会等が共同して研修機会の充実を図りその専門性を高めることが重要です。
    また、看護職員や社会福祉士、介護福祉士等の福祉専門職、手話通訳士等の特殊技能者及び理学療法士、作業療法士等の専門技術者については、Uターン対策とともに長期的な需要予測に基づき、養成機関の整備等の対策を検討する必要があります。

5 計画推進の体制確立
今後の社会福祉の展開においては、福祉分野に限らず保健・医療はもとより教育、都市整備、住宅、雇用あるいは地域の活性化などの各分野の施策を生活者の視点、「まちづくり」という観点から総合的かつ計画的に推進する必要があります。
このため、県、市町村、社会福祉協議会など関係団体の一体的な取組をはじめ、 役割分担、組織の在り方について検討を行う必要があります。
更に、地域別計画の策定・推進のため、圏域ごとに関係者で構成する組織を早期に設置する必要があります。
また、県設置の福祉事務所や県立相談所は、保健所と一体となって圏域内の市町村への支援を行うとともに、圏域別計画の進行管理については、主体的に調整機能を発揮する必要があります。

第2 社会福祉に関する県民の意識

 福祉施策を有効に展開していくためには、県民の福祉意識を的確に把握しておく必要があります。このため、本県では「社会福祉に関する県民意識調査」(平成2年7月)を行いました。この調査から判明した点は、以下のとおりです。

1 ボランティア活動の推進
県民のボランティア活動の参加意識は高く、特に過疎地域において高く示されています。つまり、住民のボランティア活動への自主的・自発的な参加の可能性は多いにあります。このため、県民がボランティア活動を行いやすくなるような条件整備を進めることが大切です。

ボランティア活動への参加意向
(単位:%)

参加意向あり 61
参加意向なし 35
不明 4

今後、ボランティア活動に参加したいと考えている人は61%、逆に参加意向のない人は35%となっており、ボランティア活動への参加意向は極めて高くなっています。

参加したい内容(複数回答)

地域環境を良くする活動 38%
福祉施設の慰問など奉仕 17%
幼児、児童等の育成活動 16%
老人の援助活動 16%
障害者の援助活動 10%
その他 2%

2 ホームヘルブサービスの拡充

  • 1. 要援護高齢者の増加に伴い、ホームヘルプサービス(家庭奉仕員派遣事業などの介護や家事援助サービス)のニーズが高まっています。しかし、必ずしも直接的な利用意向として顕在化していません。

体が不自由になった場合、世話を頼みたい相手(3つまで選択)

配偶者 69%
病院などの医療施設 42%
36%
特養などの公的施設 31%
25%
息子 23%
家庭奉仕員 11%
民間の老人ホーム 8%
親族の人 4%
家政婦などの民間サービス 3%
近所の人 1%
その他 1%
不明 1%

「配偶者」が69%と7割近くを占め、圧倒的に高くなっています。
次いで「病院などの医療施設」42%、「娘」36%、 「特別養護老人ホームなどの公的施設」31%などとなっています。
「家庭奉仕員」は11%で1割強でした。

  • 2. ホームヘルプサービスの利用については、他人が家に来ることへの気兼ね、手続きが煩雑などの理由により、利用を避けようとする意識が強くあります。 *家庭奉仕員について、『利用するのにためらいを感じる』と回答した34%の方への設問

家庭奉仕員の利用にためらいを感じる理由(複数回答)

他人がくると気兼ねする 60%
家の事が他人に知られる 28%
手続きが面倒 26%
世間体が悪い 17%
家の中を見られたくない 16%
行政の世話はうけない 13%
その他 6%

「他人に家に来てもらうとかえって気兼ねがいる」が60%、 「家庭内のことが他人に知られるようで不安である」が30%弱と、 家庭に入られることを拒絶する意識が高いという結果がでています。

  • 3.このような状況を解消するためには、介護を「家庭」に閉ざすのではなく、社会に開いていく条件をつくって行くことが重要となります。その第一歩として、福祉に関する情報を届けたり、手続きを簡素化することなどが大切であると思われます。

3 情報、移動手段の整備

  • 1. 社会福祉の情報を提供してほしいという要望が数多くあります。孤立しがちな高齢者や障害者に対して、近隣のネットワークとともに、必要な情報を必要な人に的確に伝える仕組をつくらなければなりません。

社会福祉協議会への要望(3つまで選択)

在宅老人へのサービス 39%
情報の提供や広報活動 35%
社会福祉の相談事業 30%
福祉の教育・啓発 28%
ボランテイアヘの援助 26%
福祉祭り等の交流場作り 19%
講習会や学習会の開催 19%
計画づくり 19%
低利貸付事業 13%
その他 1%
とくにない 8%
不明 3%

上位2、3位に社会福祉に関する「情報の提供」や「相談事業」があげられており、社会福祉についての正確な情報を求めていることを表しています。

  • 2.また、障害者や要援護高齢者の福祉施設や医療機関への通所・通院を可能にし、社会参加を促進していくために、移動手段の確保が必要となっています。>

高齢者・障害者の暮らしにくい点(複数回答)

交通の便が悪い 病院などの医療機関
が少ない
老人ホームや障害者
の施設が少ない
全体 35% 34% 54%
市部 27% 26% 51%
町村部 36% 33% 56%
過疎市町村部 51% 52% 58%

「老人ホームや障害者の施設が少ない」は、どの地域でも50%以上と高くなっています。過疎地域においては「交通の便が悪い」「病院などの医療機関が少ない」も50%を超えています。

  • 3.特に、圏域が広く、県民が分散して生活している本県の特性を考えますと、福祉相談情報活動や移動手段を充実・強化していくことが課題となります。

4 福祉のまちづくりの推進

  • 1.持ち家率が高いのが本県の特徴ですが、高齢者や障害者が安心して住める住宅を確保すべきだという意見が強く示されました。

充実すべき福祉・保健対策(3つまで選択)

高齢化対策 66%
保健・医療対策 54%
住宅対策 36%
所得対策 26%
福祉のまちづくり対策 26%
心身障害者対策 21%
保育や児童対策 18%
その他 1%
充実させる必要はない 2%
不明 3%

「高齢化対策」と「保健・医療対策」が50%以上となっています。
3位に「高齢者や障害者が安心して住めるような住宅対策」があげられており、地域の中で安心して生活できるような環境の整備の充実が求められています。

  • 2.高齢者や障害者は、福祉的な配慮のゆきとどいた住宅を必要としています。
    また、高齢者や障害者が地域の生活に積極的に参加することを支援するためには、住宅とともに、福祉の視点にたった生活環境を整備し、総合的に福祉のまちづくりを推進していく必要があります。

5 マンパワーの確保・福祉教育の推進

  • 1.マンパワーの確保に関しての県民の意見は、元気な高齢者や主婦などが福祉活動に積極的に参加することと、行政の役割として福祉従事者の待遇条件の向上や増員をあげています。

人材不足への対応(3つまで選択)

住民の理解を深める努力 50%
高齢者や主婦を活用する 45%
待遇を良くする 43%
増員を図る対策を進める 42%
研修を充実し質の向上 37%
ボランティアの育成 25%
その他 1%
特に対応する必要はない 1%
不明 3%

1位が「住民の理解を深める努力」、2位が「元気な高齢者や主婦の活用」と住民の理解と参加があげられています。
3位は「待遇を良くする」、4位「増員を図る対策を進める」、5位に「研修を充実し質の向上」と行政側の努力の必要をあげています。

  • 2.また、県民はあらゆる場面で福祉教育をすすめていくことが重要だとしています。

福祉教育をすすめる場

主として家庭ですすめる 11%
主として学校ですすめる 6%
主として地域ですすめる 19%
主として職場ですすめる 1%
家庭、学校、地域、職場のすべてで総合的にすすめる 58%
その他 1%
とくに進める必要はない 2%
不明 3%

「家庭、学校、地域、職場のすべてで総合的にすすめる」が60%近くを占めています。

  • 3.マンパワーの確保には、住民の理解や参加とともに行政の果たす役割が高く、また、社会福祉に対する正しい理解を進める福祉教育を、生活のあらゆる場面で推進する施策が必要となっています。

6 公私の協働

  • 1.県・市町村の福祉行政を推進するに当たって、県民と行政の協働が重要であると県民は考えています。

行政と住民との関係

行政にまかせればよい 6%
住民も協力すべき 26%
行政と住民が協力しあう 53%
住民が基本、行政は援助 11%
行政は手を出さない 1%
不明 4%

「行政も住民も協力しあい、福祉問題の解決のめたに、ともに取組必要がある」が50%以上で、次いで「行政の手の届かない場合には住民も協力すべきである」があげられており、“公・私は協働すべき”という意見が極めて高くなっています。

  • 2.社会福祉の推進に当たっては、行政の役割は大きいことはいうまでもありませんが、それとともに、県民が社会福祉に対して主体的に考え、行動することが不可欠となっています。また、行政と協力して県民の地域での福祉活動を支援する立場にある、県・市町村社会福祉協議会の役割も大きくなっています。

第2章
計画の基本的考え方
-にいがた福祉オアシス構想-

第1節 福祉理念の転換

21世紀の高齢化社会に対応する社会福祉の総合的展開は、単なる施策の拡充によるのではなく、何よりも福祉を支える発想を大胆に転換する新たな理念の構築が求められます。
その基本理念としては、少なくとも次の3つがあげられます。

1 幸せを分かち合う 福祉の原点は「人」に対する思いやりであり、福祉の歴史的出発点となった慈善も、人に対する人の思いやりに基づく、幸せの分かちあいという視点から理解することができます。ただし、従来の社会福祉は、ややもすると社会的弱者に対する上からの対応という発想が根強く、福祉ニーズをもつ人々を共に生きる仲間、あるいは、福祉サービスの担い手となるとは考えず、福祉サービスの受け手としてのみ考えがちでした。
この計画では、人間の尊厳と思いやりを大切に、幸せを分かちあうという福祉の原点に立ち返り、人々の主体的な諸活動を尊重し合い、人々が調和し、人間性が開花する福祉社会の実現を目指します。

2 共に生き、共に創る ノーマライゼーションの理念は、当初デンマークで主張された歴史をもち、時代とともにその内容を豊富にしてきました。とくに現在は、さまざまなハンディキャップをもつ人々(障害者や高齢者など)が、地域社会で普通に生活を送り続けることができるようにするという意味で、いいかえれば共に生きる社会という文脈で使われています。この計画では、ハンディキャップの程度や種別を超えて同じ社会の一員として必要な援助を受け、かつ社会の諸活動に寄与し、共に生きる社会を実現することを目指します。
また、共に生きる社会は、行政まかせでできるものではありません。
行政とともに県民の総力で、共に創りあげなければならないでしょう。
これまで我が国は「競争」が過度に重視され、「共創」(共に創ること)が軽視されるむきがあったからです。
21世紀には、県民生活や価値観は大きく変わり、いわゆる「生活の質」に対応して、福祉ニーズヘの対応も多様で豊かなものにならなくてはなりません。福祉ニーズが一層高度化、多様化するなかで、県民、民間団体、企業、市町村の諸活動も、おのおのの役割分担を意識してより創造的に展開され、21世紀の福祉社会を共に創る必要があります。
このように県民一人ひとりが責任をもつ分野と、行政など公的責任をもつ分野が融合して、共に生き、共に創る福祉社会が実現されるのです。

3 活力ある社会システムづくり 従来の社会福祉は、保健医療とはもちろん、教育、住宅、労働などの関連領域との連携が必ずしも十分ではありませんでした。今後は、それぞれの連携を福祉から再構築し、福祉のネットワークなどをつくる必要があります。また、保健福祉機器やバリアフリー設計(高齢者や障害者向けの住宅設計)の生涯住宅などに代表されるように、高齢者、障害者などの自立を促進し、その潜在的エネルギーを十分に発揮させることが求められます。そのためにも、技術革新や情報科学などの最新成果を組み込み、活力あるシステム的対応が図られなければなりません。そうした積極的な努力によって、活力あるふるさとができるのです。
とかく暗いイメージになりがちな高齢化社会像を払拭し、それを明るく楽しいものに変えていくには、社会進歩の最新成果を豊富に盛り込み、ヒト、モノ、カネ、情報を高度に組み合わせた、活力あるやすらぎのふるさと像を提示していく必要があります。

第2節 にいがた福祉オアシス構想 -21世紀新潟県福祉のイメージ-

ここでは、以上の福祉理念に基づいて、21世紀における新潟県の社会福祉のイメージを提示し、行政と県民、民間団体、企業等が自主的な活動を展開しながら、わたしたちの手で創造する新潟県型の福祉社会-にいがた福祉オアシス-を展望します。
オアシスは砂漠のオアシスのように周囲の荒廃した環境にあって、緑とうるおいのある憩いの場所であることを意味します。すなわち、オ…お互いが、ア…明るく、シ…親切に、ス…住みあう社会の「オアシス」であり、オ…お年寄りが、ア…安心して、シ…幸せに、ス…過ごせる社会の「オアシス」でもあります。
にいがた福祉オアシスは次の3つの柱から成り立ちます。

1 個人の能力が自由に発揮され、多様な自立的ニーズにこたえる社会
次のように、生活目標の多様化に対応し、個人の能力が自由に発揮でき、多様なニーズにこたえる柔軟性の高い福祉社会がイメージされます。

  • ア 生活の豊かさを背景に価値観の多様化が進み、年齢、性別、障害の有無を問わず、自立的精神の豊かな県民が創造されます。
  • イ 労働時間の短縮や平均寿命の伸長などにより自由時間が増大し、余暇、 文化活動、ボランティア活動が活発化します。
  • ウ 人口構造の高齢化に伴って高齢労働人口が増加し、女性の労働力が重視され、多様な就業機会が生まれます。
  • エ 長男長女型社会のもとで、特に高齢単独世帯や高齢夫婦世帯が増加し、 在宅福祉サービスを支えに新しい親子関係が成長します。
  • オ 自然とのふれあいから人間性の回復を求める傾向が強まり、健康に配慮した生活環境、スポーツ、食事などが定着します。
  • カ 豊かな生活を保障する所得が確保され、介護保険や福祉機器など新しいサービスや商品の開発が進みます。
  • キ ハンディキャップをもつ人々の能力開発、就業機会や活躍の場が拡大していきます。

2 共感あふれる共創社会
個性豊かな人が多くなり、さまざまな活動が展開されるなかで、多様な共感が創造され、包容力ある福祉社会がイメージされます。

  • ア ノーマライゼーションの理念が浸透し、高齢者や障害者などが地域で生活することを前提とした、住宅、公共施設、交通機関となります。
  • イ 自由時間の増大によって、職域から地域への志向が強まり、さまざまな地域活動への取組が行われ、地域の連帯意識が強まります。
  • ウ 年齢や障害の有無を問わず、福祉はだれもがかかわる活動であるとの意識が定着し、目標や心情を同じくする人々が小集団をつくって活動を行い、ボランティア活動に参加することが日常化します。
  • エ 次代を担う子供たちが、地域で暖かく見守られ、心豊かに育つようになり、子供を育てることへの積極的な評価がなされます。

3 身近で利用しやすい福祉サービスネットワーク
福祉サービスを利用する際のためらいがなくなり、だれもがニーズに即したサービスを、気軽に身近で選択できる福祉社会がイメージされます。

  • ア ホームヘルパー等在宅サービスが充実され、老人介護の負担が軽くなり、また、家族形態の多様化に対応したデイケア等の充実により、家庭の機能が支援されます。
  • イ 日常生活の場で、拠点施設を中心とした保健・医療・福祉の総合的なサービスが実現します。
  • ウ 健全な民間シルバーサービス、第三セクター、民間団体等によるサービスにより、多様で選択できる保健福祉サービスが提供されます。
  • エ 福祉情報ネットワークが構築され、県民だれもが気軽に相談でき、いつでもどこでも必要な情報が入手できるようになります。
  • オ 緊急な福祉ニーズに速やかに対応できるサービス体制が整備され、また、 サービスを受ける手続きが簡単になるなど利用しやすくなります。

第3節 にいがた福祉オアシスを実現する有利な条件

にいがた福祉オアシスを実現していくには、新潟県が持つ有利な条件を活かして施策展開を図っていく必要があります。
少なくとも、以下の有利な条件について確認しておきましょう。

1 福祉推進のソフト的条件

  • 1.新潟県民は、地域に対する帰属意識が強いことが特徴です。このことは、福祉のまちづくりを共に進めていく上で有利な条件となります。
  • 2.新潟県民は、県及び市町村行政に対する信頼感が強いことも大きな特徴です。これは福祉行政を展開する上で有利な条件となります。
  • 3. 新潟県は、市町村の保健婦の数が他県と比べて多いことが特徴です。このことは、市町村レベルで保健と福祉の連携を進めるうえで有利な条件となります。
  • 4.新潟県は自然条件に恵まれ、しかも温泉地なども多いことが特徴です。これらの天然資源を活用した開発的福祉施策を展開する上で有利な条件となります。

2 福祉推進のハード的条件

  • 1.新潟県は、県立病院や保育所の多いことが特徴です。このことは、県立病院が県民の医療を保障していく上で、また、保育所が在宅福祉サービスを展開していく上で潜在的な社会資源として、活用できることも有利な条件です。
  • 2.新潟県は、他県に先駆けて開設したミニコロニーをもっています。このミニコロニーを、積極的に在宅福祉サービスの拠点として活用できることも 有利な条件となります。
  • 3.新潟県は、全国的にみても県民の持ち家比率が高く、在宅福祉サービスの最も基本的な「宅」の部分が保障されており、福祉施策を推進する上で有利な条件となります。

第4節 にいがた福祉オアシス実現への具体的考え方

ここでは、新たな理念に基づき、にいがた福祉オアシス実現への福祉施策の基本的考え方を提示します。

第1 にいがた福祉オアシス実現ヘの五つの原則

1 住民参加型の福祉
多様化、複雑化する福祉ニーズに対しては、基礎的、必需的な行政サービスでは充分な対応が困難となってきています。
このため、県民の主体的福祉活動への参加により地域の創意と工夫を活かした福祉サービスの振興、発展を図ることが必要となっています。

2 地域密着型の福祉
地域で発生する福祉ニーズは、まず地域で充足されることが必要です。 そのため、住民にもっとも身近な市町村が福祉施策展開の主体となり、社会福祉協議会、ボランティア、民間企業等による多元的福祉サービスの調整をしながら、地域特性に配慮した、地域による福祉を実現していかなければなりません。

3 ニーズ即応型の福祉
多様化、複雑化する福祉ニーズに対し、ためらいなく気軽に利用できる多元的な福祉サービス提供主体が必要です。利用者が主体的に選択し、活用できる福祉サービスが求められ、簡易迅速にニーズを満足できる要請が強くなり、ニーズ即応型のサービス提供が不可避になります。

4 資源活用型の福祉
多様化、複雑化する福祉ニーズに的確に対応するには、人的・物的資源の量的・質的拡大を図るとともに、現実に限られた資源を有効に配分し、社会全体としてより少ない費用で、より大きな効果をもたらす必要があります。
このため、社会福祉に関する高度なニーズに対応する知識や技術をもつ人材を育成するとともに、地域に効果的に配置し、地域福祉のイニシアティブを発揮してもらうことが必要です。
また、適正な費用負担を考慮しつつ、施策の拡充を図るとともに、医療機関や社会福祉施設などの地域に開かれた既存の社会資源を有効に活用して、更に、立ち遅れた分野では新たな社会資源を開発して、それらを地域福祉の拠点としていきます。

5 施策連携型の福祉
高齢者や障害者などは福祉ニーズと保健・医療ニーズとを併せもつことが多く、これからの高齢化社会の進行に伴って、保健・医療と福祉の連携はますます重要となっています。あわせて福祉教育など教育と福祉の連携、あるいは地域振興・就業対策との関係で、労働・産業と福祉の連携が、更にまちづくりとの関係で住宅などと福祉の連携が求められるなど、従来のタテわり行政の弊害をなくして、関連施策との連携を強化していきます。

第2 公私の役割関係

  • 1.かつての社会福祉は、経済的な貧困者や緊急に援護・育成を要する人を対象に公平性、一律性を原則とする行政施策を中心に進められてきました。しかし、最近は次のような情勢変化が起きています。
    • ア 社会福祉の対象が著しく増大し、対応すべきニーズもより多様化、個別化し、一律的なサービスでは補いきれなくなってきたこと。
    • イ 住民の高度の要求に対応して、商業べースの福祉サービスの提供が増大してきたこと。
    • ウ ボランティア活動など、住民の社会福祉活動への参加が活発となり、個別的で柔軟性のあるサービス提供が進展してきたこと。

このため、今後は行政と民間が各々の特徴を生かし役割を分担し合い、協働(共に考え、共に力を出し合って活動すること)して地域福祉の推進を担っていく必要があります。

  • 2.社会福祉における公私の関係は、地域ごとの社会資源や福祉ニーズの状況、社会経済環境の変化等の要因により異なります。また、具体的なサービスになると種類ごとに役割の分担が異なり、一律に決めることは困難です。
    そこで、今日行われている社会福祉活動の公私の役割をごく大まかな分野に区分し、サービスの特徴と代表例を明らかにすると次のとおりです。
    • ア 公的責任で行う分野
      行政が、県民生活の基本的な一定水準を確保すべき分野で、特徴としては、公平かつ一律に提供される基礎的なサービスであり、市場性をもちえないサービスです。
    • イ 公私が競合又は協働する分野
      公私双方が競合して、県民の基本的な一定水準を超える福祉水準の維持、確保を図る分野です。特徴としては、家族内で充足されてきた日常生活上の介助、保護等を代替するサービスであり、代表例は在宅福祉サービス等です。
    • ウ 必ずしも公的に行うことがなじまない分野
      より快適な福祉水準の維持確保を図る分野で、多種多様なニーズに対するサービスが考えられます。特徴としては、行政が行うのが適当でない市場原理に基づく福祉サービスであり、代表例は、有料老人ホームや各種のシルバーサービス等です。
    • エ 公的介入が望ましくない分野
      この分野は、主として県民の自主性、自発性に依拠すべきものであり、代表例としては、ボランティア活動です。
  • 3.以上が原則的な考え方ですが、現実的には、公私を含めた関係者において具体的な役割の在り方を整理し、実践を通じて協力、協働関係を築きあげていくことが必要です。

第5節 福祉圏域の設定について

全ての県民に適切な福祉サービスを提供するには、現実の住民の生活実態と福祉サービスの質を考慮し、効率的でかつ合理的な多段階の福祉活動の単位域を設定することが必要です。
なお、圏域の設定はあくまでも行政的配慮に基づくものであって、福祉サービス供給側の自由な活動や県民の活動を制約するものではありません。

1 福祉圏域の設定の考え方

  • 1.1次福祉圏域
    市町村単位とします。(112圏域)
    この圏域は、住民に身近なところで基本的なサービスが具体的なニーズに即して実施される最も基礎的な圏域であり、各種サービスとの調整が図られる単位域でもあります。
    なお、1次福祉圏域の中で、保育所、日常的な高齢者利用施設などの施設整備やデイサービスの実施などを考慮した、より地域に密着した圏域(例えば中学校区)の設定が必要です。
  • 2.2次福祉圏域
    複数市町村単位とします。(13圏域)
    通勤、通学、買物、受療のように日常反復される県民の1日の行動範囲を単位域として、より高度で専門的なサービスが実施される圏域を設定する必要があります。このことは、財政基盤、資源の有効活用の点から極めて適切な方法であり、また、総合的な福祉サービスが効率よく提供されることにもなります。
    設定にあたっては、地理的条件、人口分布、交通体系、福祉施設入所動向、保健・医療・福祉資源の状況等を考慮し、さらに次の諸点を勘案します。
    • ア 日常生活圏、福祉事務所・保健所等の行政区域などと整合性のある地域であること。
    • イ 圏域内に、福祉施設、医療施設などを有する母都市が存在すること。
    • ウ 福祉サービスを受ける人が最も密接な関係を有する福祉施設や医療機関に、 おおむね1~2時間程度で到達が可能であること。
  • 2.3次福祉圏域
    県単位とします。(1圏域)
    高度で特殊な技術・設備・情報などを必要とする福祉サービスを提供する圏域を設定する必要があります。このサービスは、非日常的ですが、県民にとっては重要かつ不可欠なサービスです。
    なお、この圏域単位に設置される機関、施設等は全国的なネットワークとしての位置付けも必要です。

2 圏域別の階層的機能
各種サービスは、住民に身近な市町村で完結することが望まれます。
しかし、身体障害者更生相談所やコロニーにいがた白岩の里のように全県単位で設置されているものもあります。
このため、サービス提供の仕組みを、市町村等の身近な地域を基本に、必要に応じ2次福祉圏域や、全県単位で考えていく必要があります。
1次福祉圏域で提供されるものは、在宅福祉サービスや小規模施設の利用などとし、2次福祉圏域ではやや高度で専門的な福祉ニーズヘの対応を含めたサービスを提供し、この圏域でサービスが完結することを原則とします。
3次福祉圏域では、高度で特殊な技術・設備・情報などを必要とする福祉サービスを提供し、1次福祉圏域、2次福祉圏域の機能を支援します。

表2-1 圏域別の階層的機能

圏域 基礎概念 サービスの内容
1次
福祉圏域
○幼児・高齢者の徒歩圏単位 ◎日常的なサービス
○保育所、児童遊園
○託老所、老人集会所
○民生委員(同協力員)による相談窓口
○地域福祉区単位
 (中学校区)
◎日常的なサービス
○児童館、児童公園
○デイサービスセンター
○在宅介護支援センター
○市町村の単位 ◎日常的なサービス
○ホームヘルパー
○ショートステイ
○就労、自立通所作業所
(高齢者、精神薄弱者、身体障害者)
○高齢者集合住宅
○市町村社協によるサービス
○市町村による相談窓口とサービス
2次
福祉圏域
○広域的市町村の単位
 (2次保健医療圏)
◎専門的、総合的なサービス
○老人保健施設
○特別養護老人ホーム
○長期生活型施設
○就労、自立支援施設
(精神薄弱者、身体障害者)
○保健所による各種相談窓口
○県福祉事務所による相談窓口
3次
福祉圏域
○上、中、下越の単位 ◎高度で特殊な技術、整備惰報などを必要とするサービス
○児童相談所による相談窓口と処遇
○養護学校高等部
○福祉工場
○県の単位 ◎高度で特殊な技術、整備惰報などを必要とするサービス
○福祉人材情報センター
○長寿社会振興財団
○小児療育センター
○重度心身障害者施設
○更生相談所、指導所
○こども自然王国
○中央児童相談所
○精神保健センター

3 2次福祉圏域
2次福祉圏域を次のように定めます。
なお、福祉・保健医療の連携を考慮し、2次保健医療圏と同一の範囲とします。

表2-2 2次福祉圏域

圏域別 構成
市町村数
圏域面積
(59,10,1)
人口 高齢者数
(65歳以上)
精神薄弱者数 身体障害者数 構成市町村名
村上圏 7
(1市2町4村)
1,483.13 85,309 15,643 377 2,294 村上市、関川村、荒川町、神林村、
朝日村、山北町、粟島浦村
新発田圏 12
(2市6町4村)
1,105.82 246,007 35,659 1,176 5,889 新発田市、豊栄市、安田町、京ケ瀬村、
水原町、笹神村、豊浦町、聖籠町、
加治川村、紫雲寺町、中条町、黒川村
新津圏 11
(3市5町3村)
1,517.64 228,045 34,924 827 5,927 新津市、五泉市、白根市、小須戸町、
村松町、横越村、亀田町、津川町、
鹿瀬町、上川村、三川村
新潟圏 1
(1市)
208.79 483,162 54,761 1,391 10,292 新潟市
巻・三条圏 19
(4市8町7村)
1,091.15 400,162 55,645 1,770 11,287 三条市、加茂市、見附市、燕市、
岩室村、弥彦村、分水町、吉田町、
巻町、西川町、黒埼町、味方村、
潟東村、月潟村、中之口村、田上町、
下田村、栄町、中之島町
長岡圏 9
(2市5町2村)
756.07 268,915 39,982 1,172 7,207 長岡市、栃尾市、越路町、三島町、
与板町、和島村、出雲崎町、寺泊町、
山古志村
小出圏 8
(1市3町4村)
1,143.87 97,179 16,975 408 2,680 小千谷市、川口町、堀之内町、小出町、
湯之谷村、広神村、守門村、入広瀬村
六日町圏 4
(4町)
940.18 74,651 12,250 284 1,962 湯沢町、塩沢町、六日町、大和町
十日町圏 4
(1市2町1村)
585.22 74,844 13,508 347 2,000 十日町市、川西町、津南町、中里村
柏崎圏 5
(1市3町1村)
546.97 112,827 19,387 486 2,895 柏崎市、高柳町、小国町、刈羽村、
西山町
上越圏 18
(2市8町8村)
1,528.97 258,594 42,397 1,022 7,272 上越市、新井市、安塚町、浦川原村、
松代町、松之山町、大島村、牧村、
柿崎町、大潟町、頸城村、吉川町、
妙高高原町、中郷村、妙高村、板倉町、
清里村、三和村
糸魚川圏 4
(1市3町)
813.41 61,691 11,512 304 1,980 糸魚川市、名立町、能生町、青海町
佐渡圏 10
(1市7町2村)
857.22 78,091 18,679 318 3,685 両津市、相川町、佐和田町、金井町、
新穂村、畑野町、真野町、小木町、
羽茂町、赤泊村
合計 112
(20市56町36村)
平方キロメートル
12,578.44

2,469,477

371,322

9,882

65,370

(注)人口、精神薄弱者数、身体障害者数、高齢者数(65歳以上)は、平成2年4月1日現在

図2-2 2次福祉圏域

2次福祉圏域

4 地域福祉計画の策定
平成5年度から老人保健福祉計画の策定が義務づけられますが、本県では、老人保健福祉計画だけでなく障害者や児童の分野も含めた地域福祉計画を平成5年度をめどに圏域ごとに策定します。
この計画は、圏域の特性に基づきながら住民のニーズを把握し、必要な在宅福祉サービスや施設の確保、保健、医療、住宅などの関連サービスとの連携方策などを含めた総合的なものとします。
1次福祉圏域では市町村が策定することとし、2次福祉圏域では、県の福祉事務所や保健所が中心となり策定します。
策定にあたっては、県と市町村が相互に密接な関連のもとに、地域の保健・医療関係者も含め、一体となって策定します。
また、市町村に対しては、策定のための手順などを明らかにしたマニュアルを作成するなど必要な支援をします。
一方行政の計画策定だけでは魅力ある地域福祉社会の形成は望めません。このため、住民の参加と協働による地域福祉の推進を具体化するため、地域福祉行動計画の策定が望まれます。
地域福祉行動計画は、県社会福祉協議会、市町村社会福祉協議会、福祉関係団体、ボランティアグループ、地域住民などが、自らの活動の目的や内容、目標などを設定し、実践するために策定するものです。
県計画、市町村計画、関係者による行動計画が一体となって推進されることにより、真の福祉社会の実現が期待されるものです。


主題:

新潟県社会福祉計画-にいがた福祉オアシスを目指して-№1
1頁~52頁

発行者:
新潟県民生部社会福祉課

発行年月:
1991年5月

文献に関する問い合わせ先:
新潟県民生部社会福祉課
〒950 新潟市新光町4番地1 電話 025-285-5511(代表)