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新潟県社会福祉計画にいがた福祉オアシスを目指して

№3

平成3年5月

基本計画

2 総合的な基盤の整備

第1節 地域福祉システム

○基本的視点

 本節では、多様化し、複雑化する県民の福祉ニーズに対応し、地域において行政や民間活動によって適切なサービスが提供できる仕組みづくりを明らかにします。
 この「地域福祉システム」の目的は、県民にとって、サービスをより利用しやすいように、また供給側からすれば効率的効果的なサービス提供が行えるようにすることです。
 このために、ニーズの把握から相談、サービスの提供までの一連の活動が連続し、そのための推進体制が確立されていることが必要です。
 ここでは、

  1. 福祉サービス提供システム
  2. 福祉圏域別の推進体制
  3. リハビリテーション
  4. 保健・医療・福祉の連携

について、更に、第2節では福祉のまちづくりについて検討しています。

図3-7 地域福祉システムイメージ図

地域福祉システムイメージ図

第1 福祉サービス提供システム

 介護や援助を必要とする人が、適切なサービスを遅滞なく効果的に利用できるようにすることが必要です。このため、地域における福祉ニーズを的確に把握し、利用しやすい相談体制の整備を図るとともに、利用者にとって必要な保健・医療・福祉の各サービスを効果的に提供するシステムづくりを目指します。

1 福祉ニーズの把握と福祉広報の充実
 介護や援助などを必要とする家庭が、適切なサービスを利用できるようにするため、福祉ニーズの積極的な把握に努めるとともに広報活動の充実により、福祉サービスの利用促進を図ります。

  1. 福祉ニーズの把握
     相談を待つばかりではなく、民生委員・児童委員活動、保健婦などによる訪問活動や医療機関との連絡体制の強化により、福祉ニーズの積極的な把握を行い、ニーズの発生からスムーズなサービスの提供ができる体制づくりを目指します。
  2. 福祉サービスの広報活動の充実
     福祉サービスを必要とする人々に、福祉サービスのメニューの紹介や相談窓口の周知を図るため、市町村の広報紙やマスメディアの活用などによる広報活動の充実に努めます。

2 連携のとれた相談体制の整備

 地域住民にとって利用しやすく、そこで必要な福祉サービスの紹介や援助ができる相談体制の整備を目指し、個々の相談機関の機能の強化充実と、相談機関のネットワーク化を図ります。

  1. 利用しやすい相談体制の整備
     市町村広報紙の活用などにより相談窓口の周知を図るとともに、相談窓口の一元化や電話による相談の導入などにより、地域住民にとって利用しやすい相談体制の整備を図ります。
  2. 相談機関の機能強化
     相談員を対象として面接技術や専門知識などの研修の充実による資質の向上などにより、相談機関の機能強化に努めます。
  3. 相談機関のネットワーク化
     一つの家庭において複数の問題を抱えている場合など、総合的な援助相談の必要性に対応するため、相談機関相互のネットワーク化を図ります。
     また、施設や医療機関などの関連機関との有機的な連携を図ることにより、相談機関の総合的な問題解決能力の向上に努めます。

3 適切なサービスの提供
 分野ごとの部門別施策は既に示したとおりであり、この着実な推進を図ります。
 更に、地域における福祉ニーズに対応した多様な福祉サービスの供給体制の整備を図るとともに、保健・医療・福祉の各サービスを総合的に調整し効果的に提供するシステムづくりを目指します。

  • 1.多様な福祉サービスの提供
    • ア 住民参加型福祉サービスの提供
       地域における福祉の展開こは、サービスの受け手であると同時にサービスの担い手である県民が自主的、自発的に地域福祉活動に参加することが期待されます。
       このため、社会福祉協議会の組織強化や住民参加型非営利有料福祉サービス提供団体などの育成を指導します。
    • イ 民間シルバーサービスの振興
       更に、多様化する福祉ニーズに対応し、利用者の選択の幅を広げるため、柔軟性のある民間シルバーサービスの振興、福祉サービス公社(仮称)の設置促進に努めます。

図3-8 相談システム

相談システム

    • ウ 地域福祉基金の設置
       地域における民間による保健福祉活動を支援するため、県及び市町村に地域福祉基金を設置し、高齢者、障害者の在宅福祉サービスの充実など多様なサービスの提供を図ります。
       県は、全県的、広域的視野から地域福祉推進のため、基金を活用します。
       市町村は、地域のきめ細かい事業の支援のため、基金を活用することが期待されます。
       また、県と市町村が共同して支援することで事業効果が著しいものについては、積極的に連携を図ります。
  • 総合的なサービスの提供
     保健・医療・福祉の各サービスを総合的に調整し、利用しやすいサービスを提供する体制づくりを目指します。
     そのため、総合調整機能としての市町村高齢者サービス調整チームの機能の拡充や市町村におけるコーディネーターの配置検討を指導するとともに、サービス供給機関の連携体制の強化充実を図ります。

第2 福祉圏域別の推進体制

 県民の様々なニーズに的確に対応し、適切なサービスを提供するには、福祉圏ごとに、保健・医療・福祉の連携のとれた公私協働による推進体制を確立することが必要です。

1 1次福祉圏域
 地域福祉の推進は、住民が日常生活を営んでいる地域を基盤にその実情に応じて展開される必要があります。
 このため、市町村の区域(1次福祉圏域)を基礎として市町村が主体となって福祉を推進することが基本となります。

  1. 地域福祉区
     地域福祉区では、きめ細かくニーズが把握され、日常的なサービスの提供が求められます。
     このため、民生委員・児童委員等の相談活動の充実を図るとともに、身近な地域(地域福祉区)でデイサービスなどの最も日常的なサービスが提供される推進体制の整備を図ります。
    • ア 民生委員・児童委員
       要援護者のニーズを把握するため、地域福祉、在宅福祉の推進役として、民生委員・児童委員の増員を図り、また、活動しやすい体制づくりを行います。
      • (ア)民生委員・児童委員の増員
         定数4,031人 → 平成12年までに、現行の基準定数を目途に増員を要望していきます。(平成元年基準定数 4,394人)
      • (イ)民生委員・児童委員の活動体制の強化
         ニーズの発見、情報の提供と相談活動を充実するため、民生委員協力員の設置や町内会長(平成2年4月現在県内の住民自治組織の数8,213)等 との連携について検討します。
  2. 市町村
     基礎的・日常的なサービスはできる限り地域で充足されることが望ましく、市町村を基本に2次福祉圏域でサービスが完結することを目指す必要があります。
     このため、市町村が主体となり、定期的な訪問活動や窓口における相談体制の整備を図るとともに、市町村社会福祉協議会などの民間団体やボランティアなどの参加を得て、基礎的・日常的な福祉サービスの供給体制の整備を図ることが必要です。
    • ア 市町村
       市町村は、入所決定権の町村への移譲や在宅福祉サービスの法定化等、今後の新しい福祉制度のなかで、相談やサービスの提供の第一線機関としての役割が期待されています。このため、相談やサービス提供の推進体制を整備していく必要があります。
      • (ア)総合相談窓口の設置
         住民の総合相談窓口として、福祉、保健を総括するセクションの設置について検討する必要があります。
      • (イ)コーディネーターの設置
         総合的な相談やサービス提供のため、当該セクションに調整機能をもたせ、サービスを調整できるコーディネーターの育成、設置を検討する必要があります。
      • (ウ)高齢者サービス調整チームの充実
         要介護老人の処遇について、相談からサービスの提供まで検討・調整するための高齢者サービス調整チームが、市町村に設置されています。
         今後は、責任者レベルと実務者レベルのニ種類の「チーム」を設置し、運営の強化を図ります。
    • イ 市町村社会福祉協議会
       市町村社会福祉協議会は、地域における住民の相談窓口や在宅福祉サービスの 担い手として期待されています。
       しかし、財政基盤と組織が脆弱です。このため、組織の強化と活動基盤の充実を図っていく必要があります。
      • (ア)組織強化
         全市町村社会福祉協議会の社会福祉法人化(平成2年3月現在106社協が社会福祉法人)と福祉活動専門員(平成2年3月現在92社協92名)の設置を図ります。また、福祉活動専門員への助成強化を国へ要望していきます。
      • (イ)調整機能の強化
         地域福祉活動の調整は、市町村社会福祉協議会の重要な役割です。
        このためには、地域福祉活動の情報を収集する必要があります。
         地域福祉システムのなかで、主に民間部門の地域福祉活動について、1次福祉圏域や2次福祉圏域の福祉情報ネットワークの構築が必要です。
      • (ウ)サービス供給機能
         圏域別福祉計画や市町村福祉計画の中で、市町村社会福祉協議会を地域特性に応じてサービス供給主体として位置づけ、地域住民の同意を得ながら、サービス供給機能を充実していきます。

2 2次福祉圏域
 2次福祉圏域においては、県と市町村、社会福祉施設や医療機関などの専門機関、民間福祉団体等が協力して、1次福祉圏域における福祉機能の調整や支援を行うとともに、入所施設などの広域的、専門的、総合的なサービスの供給体制の整備を図ることが必要です。

  1. 福祉事務所機能の充実
     県設置の福祉事務所について、高齢者、身体障害者の入所決定権の町村への移譲に伴い、市町村への指導・支援機能及び市町村間の調整機能の充実を図っていきます。
  2. 福祉施設による在宅福祉支援の強化
     障害児・者など2次福祉圏域内に設置される入所施設は、その専門的機能を地域に還元し在宅福祉の推進に役立てる必要があります。
     このため、施設オープン化対策等の実施やショートステイ専用居室の整備などにより、入所施設を地域福祉推進の拠点として、その機能強化を図ります。
  3. 郡社会福祉協議会の役割強化
     県設置の福祉事務所ごとに任意的団体として郡社会福祉協議会が設置されています。
     今後は、構成員など同協議会の在り方を見直し、2次福祉圏域における連絡調整機関としての役割を検討します。

3 3次福祉圏域
 3次福祉圏域においては、1次、2次福祉圏域では解決することが困難な専門性の高い相談やサービスを決定するうえで必要となる判定機能の充実に努める必要があります。
 また、福祉サービスの総合的な調整支援機能や高度で特殊な技術や施設、情報などを必要とするサービスの供給機能の整備を図ることが必要です。
 更に、県全域で共通する研究活動に必要な人材の養成や研修、福祉と保健、医療との県全域における調整などを図ることが必要です。

表3-30 新潟県設置の保健福祉関係機関(平成3年3月現在)

保健福祉機関の種類 箇所 設置場所
精神薄弱者更生相談所 1 新潟市
婦人相談所 1 新潟市
身体障害者更生相談所 1 新潟市
児童相談所 3 新潟市、長岡市、上越市
精神保健センター 1 新潟市
はまぐみ小児療育センター 1 新潟市
コロニーにいがた白岩の星 1 寺泊町
点字図書館 1 新潟市

4 圏域相互間の連携

  1. 圏域相互の連携
     1次福祉圏域から3次福祉圏域までのそれぞれの圏域が、分断されていては地域福祉システムは機能しません。
     福祉ニーズの質に応じ、1次福祉圏域での解決ができない場合は2次福祉圏域や、3次福祉圏域への橋渡しをするなど各圏域相互の連携が必要です。特に福祉サービスは原則として2次福祉圏域で完結することが望ましく、県設置の福祉事務所や保健所は連携のためのキーステーションとしての役割が求められます。
  2. 有機的な連携
     相談機関の有機的な連携を図っていく際に、大きな課題となるのは、保健・医療・福祉の連携です。
     住民がどの窓口、機関に相談に行っても、適切な保健・医療・福祉サービスが受けられることが求められています。
     このためには、様々なニーズに的確に対応にするために相談窓口、機関が必要に応じ情報を提供し合い、また連絡を取り合うことが必要であり、連携のとれた相談システムをつくりあげていくことが必要です。
     この場合、地域特性に通じた市町村を基本に検討をしていくことが適当と思われます。
     これに加え、市町村を中心とする各種相談窓口を支援するため、福祉事務所と保健所の連携を促進する等、1次、2次、3次福祉圏域相互の連携も必要となります。

第3 リハビリテーション

 地域福祉システムの機能として、福祉サービスの供給体制等を構築するとともに、ライフステージのそれぞれの段階において、障害の発生予防や早期発見を行い、また、機能回復を図り、ハンディキャップを軽減し、社会復帰を目指すリハビリテーション機能を充実することが必要です。
 しかし、本県では総合的なリハビリテーションの体系が確立されていません。
障害者のみならず、高齢者や精神障害者が、地域において可能な限り生活をしていけるよう、今後、関係施設の整備やマンパワーの確保を推進する必要があります。
 また、1次、2次、3次の各圏域ごとに整備すべき機能についても明らかにしていく必要があります。

1 リハビリテーションのシステム化

 障害者や高齢者が可能な限り地域において生活していけるよう、リハビリテーションの視点からも、施策の総合化、体系化を進める必要があります。

  • 1.リハビリテーションの区分
     リハビリテーションは一般に次表のように区分されます。

表3-25 リハビリテーションの区分

区分 目的
医学的リハビリテーション 機能障害の改善、除去
教育的リハビリテーション 発達の可能性の最大限の発揮
職業的リハビリテーション 福祉的就労を含む雇用、就労
社会的リハビリテーション 機能低下の防止や生きがい対策を含めた社会生活や家庭生活への適合
心理学的リハビリテーション 情緒不安定や劣等感などの解消
    • ア 医学的リハビリテーション
       医学的リハビリテーションは、機能障害の改善、除去を目的にすることから、リハビリテーションの中核ともいえるものです。
       このため、リハビリテーションのシステム化に当たっては、高度専門性をもった機関の在り方について検討する必要があります。
       また、ライフステージにそった障害の発生予防や早期発見も重要であり、特に身近な1次福祉圏域での充実強化が望まれます。
    • イ 教育的リハビリテーション
       あらゆる場面でハンディキャップをもった児童の可能性を最大限に引き出すことが必要です。
    • ウ 職業的リハビリテーション
       ハンディキャップをもった人々の日常生活範囲は狭い傾向があります。このため、福祉的就労を含む雇用、就労の場はできるだけ身近な圏域での確保が望まれます。
       また、雇用、就労のための職業訓練の場として授産施設などの整備拡充を図りつつ、雇用、就労の場との連携を促進することが重要です。
    • エ 社会的リハビリテーション
       機能低下の防止や生きがい対策を含めた社会生活や家庭生活への適合を目標とし、経済的、物理的、社会的環境の整備や、それらの法的裏付け、社会の意識変革など広範囲な対応が必要です。
       この際、福祉・保健医療施設の支援機能や施設と在宅の中間的施設の在り方にも留意する必要があります。
    • オ 心理学的リハビリテーション
       他のリハビリテーションのすべてに関連するものとして、心理学的リハビリテーションがあります。
       著しく感情・情緒が不安定な者や自立意欲の欠如した者は、他のリハビリテーションが完全に施されても社会参加は困難です。
       リハビリテーションの成否は障害者や高齢者本人の心理にあるといっても過言ではなく、今後重要な課題として一層の充実を図る必要があります。
  • 圏域ごとに必要な機能
     リハビリテーションの機能としては、医療機能、相談機能、教育機能、職業能力開発機能などがありますが、一般に、1次福祉圏域では適所や相談が中心となり、2次福祉圏域では更に入所機能が、3次福祉圏域では、高度専門性をもったこれらのネットワークの中核機能が求められています。

2 障害者のリハビリテーション
 リハビリテーションは、心身障害者の「自立と社会参加」を促進するため、極めて重要であり、特に緊急性を要する小児療育の分野、身体障害者の機能回復・職業の分野、精神薄弱者・精神障害者の社会復帰分野については、早期に体系を確立し、関連施設の整備を進める必要があります。
 また、核となる機関の在り方についても検討が必要です。

  1. 医学的リハビリテーション
     病院におけるリハビリテーションの強化、理学療法士、作業療法士の配置の促進を検討する必要があります。
     また、はまぐみ小児療育センターの在り方を含め、核となる機関について、発達障害児に対する総合的医療・療育機能や地域における療育の指導機能などの面からも検討が必要です。
  2. その他のリハビリテーション
     本県における職業的リハビリテーションは、身体障害者更生指導所、同相談所、身体障害者更生援護施設、障害者職業センター、公共職業安定所などにおいて行われています。
     今後は、小規模作業所や授産施設も含めた職業的リハビリテーションの体系の構築や社会的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、心理学的リハビリテーションの体系を構築し、それに沿って施設の整備を促進していく必要があります。
     また、精神薄弱者、痴呆性老人の生活指導の在り方や支援機関としての権利擁護機関の在り方について検討していく必要があります。
  3. 総合的リハビリテーションセンターの検討
     国立職業リハビリテーションセンターなどの誘致について検討し、身体障害者更生指導所、身体障害者更生相談所、精神薄弱者更生相談所及びはまぐみ小児療育センターの在り方を検討しつつ、高齢者のリハビリテーションも含め総合的なリハビリテーションセンターの在り方について検討します。

3 高齢者のリハビリテーション
 高齢者のリハビリテーションは、高齢者の心身機能の特徴や高齢者を取り巻く環境を踏まえ、効果的に展開されることが必要です。

  1. 医学的リハビリテーション
     高齢者リハビリテーションは、若年期に比べその期間が長期化する場合が多く、その防止のため早期のリハビリテーションが重要となります。
     このため、疾病、障害等による機能低下に対応するための医学的リハビリテーションが重要となり、地域の中での医学的リハビリテーションが効率的、効果的に行われる体制づくりが必要となります。
    • ア 病院におけるリハビリテーション機能の強化、理学療法士、作業療法士の配置を検討する必要があります。
    • イ 病院への入退院の情報を把握するための通報システムが必要です。
  2. その他のリハビリテーション
     高齢者の心身機能は、特別な疾病、事故等の有無にかかわらず低下することが一般的です。しかし、日常生活に必要な心身の機能は、使用することによりかなりの高齢期まで維持されます。
     このため、使用しないことによる心身の機能低下の防止の必要性を周知する必要があり、日常生活を通じたリハビリテーション(生活リハビリテーション)が重要です。
     また、健康、体力、知力、友人、家族等の喪失とともに、社会性の喪失(社会からの疎外)が進行します。
     このため、社会性の喪失からのリハビリテーション、いわば、生きがい対策(生きることへの意欲の喚起)が必要となり、社会的、職業的、教育的リハビリテーションが必要となります。
    • ア 継続的なリハビリテーション支援のため
      • (ア)リハビリテーションの記録管理(例えば老人リハビリ手帳)
      • (イ)リハビリテーション器具の貸与
      • (ウ)日常生活用具の給付等
      • (工)住宅やまちづくりの工夫
      • (オ)情報提供相談体制、広報啓発、福祉教育、 リハビリテーション手法の調査研究、普及等が必要とされます。
    • イ 老人保健施設、デイサービスセンター、在宅介護支援センター等の位置付けを明らかにする必要があります。

4 精神障害者のリハビリテーション
 精神障害者に対しては、その人権が十分に保障され、地域社会での生活を続けながら必要な援助を得ることができるような種々の施策が実施されています。
 現在の精神障害者の社会復帰、社会参加のための施策の概要は別図のとおりとなっていますが、今後は更に関係機関と充分連携のうえ、施策の推進を図っていきます。

  • 1.精神障害者社会復帰施設の整備等
     市町村、社会福祉法人等が行う精神障害者の社会復帰施設の整備に対し積極的に支援します。

表3-32 新潟県の精神障害者社会復帰施設の整備目標

内容 平成2年度 平成5年度
施設数 9か所 22か所
  • 2.職親制度による協力事業所を平成2年度延べ30事業所を平成7年度に延べ150事業所に増加させることを目標とします。

図3-9 新潟県の椚神障害者社会復帰・社会参加施策の概要(平成2年度)

新潟県の椚神障害者社会復帰・社会参加施策の概要(平成2年度)

第4 保健・医療・福祉の連携

 地域福祉システムの構築に当たっては、相談やサービスの提供等それぞれの場面で保健・医療・福祉の連携が求められています。この背景として、次のようなことが考えられます。

  1. 人それぞれのライフステージを通じて、福祉だけ、保健だけでは解決できない複雑、多用なニーズが生じてきたこと。
  2. 高齢者や障害者であっても、可能な限り地域で生活することが適切だという考え方が広まり、多様な在宅サービスの供給が求められるようになったこと。
     このようなことから、現在、様々な保健・医療・福祉の連携が行われていますが、保健・医療・福祉を総合した視点で、地域の課題と推進方策を検討し、より連携と協働を進めていくことが必要です。

1 心身障害児早期発見・早期療育体系における連携
 保健、医療、福祉、教育の連携のもとに総合的(地域的)な事業展開を図ることにより、障害の発見から治療、療育にいたる連続性と一貫性のとれたシステムを確立する必要があります。
 そのために、以下の諸点を検討します。

  1. 早期発見から早期療育に至るまでの関係機関の連携の強化
    • ア 保健部門、病院部門との連携のもと、心身障害の発生予防の啓蒙に努めます。
    • イ 医療・療育情報の提供システムを検討します。
  2. 2次福祉圏域単位で、保健所保健・福祉サービス調整推進会議等を活用し、児童相談所を中核とした早期発見、早期療育体制の推進を図ります。

2 難病事業における連携
 現在、保健所には特定疾患医療受給者証交付窓口が置かれていることなどもあり、難病患者の療養状況が把握しやすく、各種の患者支援事業における連携に当たって、中心的役割を果たしています。

  • 現状
     医療機関と保健所との連携については、保健婦の家庭訪間時の連絡や、難病患者・家族の集い、あるいは健康相談会等の事業を通して徐々に整いつつあります。
     一方、福祉事務所と保健所についても、患者・家族の集いや、個々の処遇を通して連携が円滑になってきています。
     また、関係者が一堂に集まり、検討する場として「保健所保健・福祉サービス調整推進会議」があり、活用されています。
  • 対策
     難病については、近年、医療の確保だけでなく難病患者・家族の生活の質を確保する必要があると言われています。このためには、単に保健・医療面での連携にとどまらず、福祉サービスの面を含めた総合的な連携を図る必要があります。
     このため、現行の難病患者に対する事業の充実を図るとともに、関係機関相互の連携のとれた難病患者ケアシステムを構築し、事業の展開を図るよう努めます。
     また、小児については、早期療育体系の中での対応も検討していく必要があります。

3 高齢者ケアにおける連携
 高齢者ケアに係る連携については、病院、市町村間の連携に十分配慮する必要があります。
 特に、病院入退院時に、病院から市町村へ連絡する方法を確立することが必要です。
 このため、脳卒中情報システムを整備し、市町村が脳卒中発症者を医療機関から早期に把握し、適切な在宅福祉サービスを提供する等、保健・医療・福祉の連携のとれたサービス提供システムづくりに努めます。
 更に、市町村から保健所や県設置の福祉事務所に連絡するシステムの在り方を検討する必要があります。

図3-10 高齢者ケアにおける連携

高齢者ケアにおける連携

4 福祉保健情報
 近年、わが国は、情報化社会を迎え、福祉ニーズの把握からサービスの提供に至る過程を通じ、福祉保健情報のシステム化が必要となります。
 このため、各種情報システムの開発、普及が望まれ、住民の抱える多様な諸問題に即応して問題解決を図るための援助・サービスや、福祉人材や福祉施策に関する福祉情報等の収集・整理・提供を幅広くかつ迅速に行う関係機関・団体間のネットワークづくりを進めることが課題となっています。

  • ア 市町村社会福祉協議会を地域における相談・情報活動の一つの拠点とし、地域の社会福祉資源を最大限活用した福祉情報システムの構築に取り込んで いくことを検討します、
  • イ 福祉人材バンクを核とし、保健人材情報も管理する福祉・保健人材情報センターの設立を検討します。
  • ウ 更に、福祉・保健人材情報センターを核とし、福祉人材、制度・施策、福祉推進団体、福祉施設、ボランティア、福祉機器、関係図書など広範囲の福祉情報を提供する福祉(保健)情報センターへの展開を検討します。
  • エ 1次、2次、3次福祉圏域の各種機関、市町村、福祉事務所、保健所、福祉施設、市町村社会福祉協議会、各種相談窓口などを結ぶ情報ネットワークの構築について検討します。
  • オ 福祉サービス利用者のプライバシー保護など情報管理の在り方について検討します。

5 具体的な連携を目指して
 保健・医療・福祉の連携とは、「在宅の高齢者、障害者が、長期にわたって生活できること等を目指し、異なる部門が一緒に仕事をすること」ともいえます。保健・医療・福祉の連携により、各部門のつながりが確保され、各種サービスが有効に活用されるよう調整することが必要です。
 今後、圏域別福祉計画を策定する中で保健・医療関係者とともに、具体的な連携の在り方を検討していく必要があります。

第2節 福祉のまちづくり

-オアシスタウン構想の推進-

○基本的視点

 にいがた福祉オアシス構想の一環として、福祉の視点からのまちづくりとして「オアシスタウン構想」を推進します。
 オアシスタウン構想とは、ノーマライゼーションの理念の実現を目指して、福祉の視点から高齢化社会へ対応した「まち」の機能の整備を図ろうとするものです。そのため地域福祉システムの構築に加えて、保健福祉機能を有した施設の計画的な整備、配置を行うとともに、豊かな福祉社会の形成へ向けて新たなコミュニティづくりを行うことにより、県民すべてが暮らしやすい活力ある福祉オアシスの主としてハード面の整備を図ることを目指すものです。
 オアシスタウン構想は、基礎的な生活環境の整備、活力あふれるまちづくりの展開、心豊かなふれあいの促進の3つの基本目標を柱として、それぞれの地域において、文化、伝統を活かし、自然との融合を図るなど地域特性に応じた創造的なまちづくりを実現します。

第1 基礎的な生活環境の整備

 ハンディキャップをもつ人も含めて県民すべてが、安全で快適な日常生活を営むことができるように、基礎的な生活環境を福祉の視点から見直し、住宅、交通体系などの都市機能の整備を図ります。また、災害などの緊急時における安全を確保するため、防災体制の充実を図ります。
 更に、社会生活を営む上で、ハンディキャップをもつために社会生活を充分に営めない高齢者や障害者に対しては、生活情報の提供の促進を図るとともに、相談援助体制の充実を図ります。

1 安全で快適な生活空間づくり

  • 1.「新潟県における福祉のまちづくり整備指針」の具現化
     障害者や高齢者などの体にハンディキャップを有する人にとって、安全で快適な生活空間の拡大を図るため、「福祉のまちづくり」における技術的なガイドラインとして策定した「新潟県における福祉のまちづくり整備指針」の具現化を推進します。
     公共的建築物、公共交通機関、道路、公園及びこれらに付帯する施設について、県、市町村、民間、県民の協力により、指針において定めた技術的標準に適合した整備を促進し、「福祉のまちづくり」を推進します。
  • 2.安心して生活できる住宅の整備
    • ア 高齢者住宅の計画的な整備推進
       総合的な計画に基づいて、高齢者対応型住宅の設計指針の作成、高齢者対応型の県営住宅の整備及び民間住宅の普及等を行い、住宅及び住環境の整備を行います。
       また、地域における高齢化社会に対応した公私の住宅整備を計画的に推進するために、市町村における公営住宅の整備及び民間住宅の適正化等についての計画づくりを支援します。
    • イ 高齢者住宅の普及
      • (ア)高齢者対応型住宅の建築についての技術的な相談の窓口を行政機関に設置することを推進します。
      • (イ)高齢者や障害者に配慮した住宅のモデルプランの開発普及を図ります。
      • (ウ)高齢者住宅の建築の支援を行うため、生活福祉資金貸付事業、市町村高齢者住宅資金貸付事業等の融資制度の助成に努めます。
    • ウ 県営住宅の環境整備
       既設の県営住宅について、階段手すりを設置し、高齢者に配慮のある構造にするよう整備を図ります。

表3-33 県営住宅の環境整備目標

内容 平成3~12年度
階段手すりの設置 161棟
    • エ 多様な高齢者住宅の開発・普及
       介護する家族がいなくても安心して生活を送るための施設としてケアハウスを整備するとともに、入居高齢者への生活援助、緊急時対応を行う生活援助員を配置した「シルバーハウジングプロジェクト」など高齢者が安定した生活を営めるような住宅の開発・普及を促進します。
       また、地域の交流、高齢者の介護の支援及び冬期間の高齢者の住居確保のための施設として、地域の実情に応じて高齢者生活福祉センターを整備します。
  • 3.安心して利用できる交通体系の整備
    • ア 利用しやすい公共交通機関の整備
       駅舎、バス停などの環境整備を促進し、交通施設の快適性の向上を図るとともに、低床バス、リフト付き路線バスの運行、交通の不便な地域における市町村内のコミュニティバスの運行、要援護者向けの福祉タクシーの普及促進など、既存の交通機関の利用が困難な高齢者や障害者の移動手段の確保対策を検討し、整備を促進します。
    • イ 安心して運行できる道路の整備
       視覚障害者誘導ブロックの敷設整備及び視覚障害者信号機の設置促進、また、見やすい道路標示や歩行者用ベンチの設置などにより道路環境の改善を図ります。
       また、面的な整備として、社会福祉施設等周辺道路の環境整備を行います。

表3-34 道路の環境整備目標

内容 平成3~7年度
社会福祉施設等周辺道路の環境整備 165か所
    • ウ 高齢者の交通事故の防止
       高齢者の交通事故を防止するため、交通安全教育を進めるとともに、高齢者に配慮した交通安全施設の整備を図ります。
       また、交通事故多発地帯にモデル地区を指定し、信号機の設置、道路の段差切下げなど、安全で快適な道路環境の整備を推進します。
  • 4.利用しやすい公共的施設の整備
    • ア 公共的建築物の環境改善
       「新潟県における福祉のまちづくり整備指針」の具現化により、官公庁舎、文化施設をはじめ、金融機関、店舗など広く県民が日常的に利用する施設の環境改善を推進します。
    • イ いこいとふれあいの場としての公園の整備
       既設の公園については、段差の解消、車椅子の進入路確保など環境改善を推進します。
       また、新たに整備する公園については、「新潟県における福祉のまちづくり整備指針」の技術的標準に添った設計による整備を促進し、だれもが共にいこい、ふれあえる空間の創造を推進します。

2 防災体制の整備

  1. 緊急時における支援体制の整備
     一人暮らしの老人などの緊急時における安全を確保するため、緊急通報装置の普及により、世帯における異常の早期発見に努めるとともに、地域における緊急連絡システム等相互支援体制の組織化を図ります。
  2. 災害時における安全の確保
     災害時における高齢者や障害者の安全を確保するため、社会福祉施設におけるスプリンクラーの設置促進、避難訓練の充実により、防災体制の整備を促進します。
     また、一人で暮らす老人などの火災事故を予防するため、啓発活動を強化するとともに、火災・ガス警報器、自動消火器、電磁調理器等の安全器具の普及に努めます。

3 生活情報の充実と権利擁護

  1. 生活情報の充実
     視聴覚障害者に対する日常生活上必要な情報の提供を促進するため、視聴覚障害者情報提供施設の整備を検討するとともに、民間活動における視聴覚障害者に配慮したテレビ番組の放送、点字情報の充実、キャプテンシステムの活用などによる多様な情報提供システムの開発普及を支援します。
     また、悪質な訪問販売等による高齢者などの消費者被害を防止するため、広報啓発の充実により注意を喚起するとともに、監視体制の強化に努めます。
  2. 相談機関における支援体制の整備
     障害者や高齢者などの日常生活上の問題の解決を支援するため、関係機関との連携強化により相談機関における支援体制の整備充実を図ります。
  3. 権利擁護機関の設置検討
     障害者や高齢者の基本的人権を保障し、権利侵害の防止及び正当な権利行使を支援するため、権利の代弁機関としての権利擁護機関の在り方について検討します。

第2 活力あふれるまちづくりの展開

 21世紀の福祉社会を活力あふれる社会とするためには、だれもが心とからだの健康保持増進に努め、それぞれの可能性を最大限に発揮し社会において活動することが必要です。

1 健康の保持増進

  1. 健康づくり運動の展開
     地域の生活習慣や世代に対応した健康づくりを推進するため、地域単位、世代単位等の多様な健康づくり運動を展開します。
     また、高齢化社会に対応し、日常生活を自立して営め、社会参加のできるいきいき老人になるよう、県民の生活スタイルの改善を目指します。
  2. 健康診断・検診体制の充実
     学校、地域、職域における健康診断、検診の充実を図るとともに、だれでも気軽に健康状態をチェックできるような体制づくりを推進します。

2 多様な生きがいの創造

  1. 学習機会の確保
     高齢者や障害者などの学習意欲の高まりに対応して、高齢者大学や公民館等を中心とした生涯学習推進のため学習機会の提供等の内容拡充を図ります。
  2. スポーツ、レクリエーションの場づくり
     障害者に配慮したスポーツ施設の環境整備の促進を図るとともに、障害者や高齢者のスポーツの振興を図ります。
     また、地域において、だれもがともに楽しむことができるスポーツ・レクリエーションの機会の拡大を図ります。

3 社会参加の促進

  1. 多様な就労機会の確保
     働く意思のある高齢者や障害者が、その能力と意欲に応じて就労し、所得の確保や生きがいづくりができるよう、個々のニーズに対応した職業訓練職種の開発や訓練期間の弾力化を図ります。また、高齢者や障害者に対する職業能力の開発を推進するとともに、民間企業等に対し勤務時間の弾力化や定年退職後の再就職の促進を求めるなど、多様な就労機会の確保を図ります。
  2. 地域活動への参加促進
     ハンディキャップの程度や種別を超えて同じ社会の一員として社会の諸活動に寄与し、共に生きる社会を実現するため、高齢者や障害者などがその潜在的エネルギーを十分に発揮させることができるよう、財団法人新潟県長寿社会振興財団や社団法人新潟県身体障害者団体連合会等の事業と連携を図りながら、高齢者や障害者の地域活動への参加を促進します。

第3 心豊かなふれあいの促進

 基礎的な生活環境の整備や各種サービスを充実するとともに、共に生きる思想に基づいた心豊かなふれあいのあるまちづくりが必要です。
 高齢者や障害者のハンディキャップについての正しい理解を深め、それぞれの個性を尊重し、多様な価値観を認め合いながら、同じ人間として対等な立場でふれあいを保ち、助け合う心を醸成することにより、まちづくりを推進します。

1 思いやりの心

  1. 福祉教育の充実
    • ア 学校教育における取組
       人間形成の重要な時期にある児童生徒の福祉意識の向上を図るため、学校教育における道徳教育や福祉教育を充実し、思いやりのある豊かな心をはぐくむことが必要です。
       このため、豊かな心をはぐくむ教育活動を充実するとともに、教育関係者と福祉関係者等からなる福祉教育推進協議会(仮称)を設置し、子どもの発達段階に応じた適切な教育の在り方や、具体的な施策を研究し、その実践化を進めます。
    • イ 学校、家庭、地域の連携
       学校、家庭、地域における福祉教育を推進し、人への思いやりの心を自然な形で身に付けることができるよう学習機会の提供に努めるとともに、地域において様々な分野で実施される生涯学習にかかわる活動との連携を強化し、福祉の視点を取り込んだ活動が展開されるよう努めます。
  2. 広報啓発活動の充実
     福祉について県民の意識の啓発を図るため、地域において様々な福祉に関するイベント等を実施するなど、高齢者や障害者に対する正しい理解と認識を深め、一人でも多くの県民が自分自身の問題として行動するように支援する広報啓発活動の充実に努めます。

2 ふれあいの場づくり

  1. 日常的なふれあいの場づくり
     児童遊園などの公園、公民館などの公共的施設の環境整備や小、中学校の開放により、だれにとっても利用しやすい日常的をふれあいの場づくりを促進するとともに、児童館等の児童厚生施設において世代間交流事業を実施します。
  2. 交流機会の拡大
    • ア 身近な地域における交流機会の拡大
       子どもたちが老いるということを正しく理解し、高齢者に対するやさしい心を養うことができるよう、保育所に老人ケアサービス等の機能を付設します。
      また、小・中学校においても施設訪問や祖父母に学ぶ学習などを充実し、身近な地域での世代間の日常的な交流機会の拡大を進めます。
    • イ 障害児・者との交流機会の拡大
       障害児・者に対する偏見と差別意識を除去し、正しい理解を深めるため、心身障害児理解推進指定校を拡大し、全特殊教育学校との交流を深めるなど、小・中学校の児童生徒が障害児・者と交流する機会の拡大を図ります。

3 きずなの強い地域づくり

  1. 地域連帯感の醸成
     地域に密着し、多様な活動の拠点となっている公民館の活動や婦人会、青年会活動の活性化を図り、地域の人々の交流を促進することや、文化活動の振興、社会参加活動の促進により、多様な人間関係の形成を支援し、連帯の意識の高揚に努めます。
  2. 近隣の助け合いの促進
     日ごろの近所づきあい、友達づきあいを基本としながら、近隣でなければできない一人暮らし老人の見守りなど近隣における助け合い活動の促進に努めます。

第4 まちづくりの総合的な推進

 福祉のまちづくりを、効果的、効率的に推進するため、総合的な計画に基づきハード面の整備を図るとともに、福祉機能と関連するソフト的機能との有機的な連携を図った地域特性に応じたまちづくりの展開を図ります。

1 福祉のまちづくりの計画的な推進

 日常的な生活圏域である1次福祉圏域において、市町村による総合的な計画に基づくまちづくりの推進を支援し、既存のまちの再開発、新規の市街地の形成及び福祉施設の整備などハード面の整備やふれあいづくり、生きがいづくりの事業などの総合的な展開を図ります。

2 保健福祉施設の複合的な整備

  • 1.総合福祉センター(総合福祉・女性センター)の建設
     広く県民を対象とした相談機能、情報機能、研修機能、交流機能などや各圏域における福祉サービスの支援機能を備えた総合的な施設として、総合福祉センターの建設を目指します。
  • 2.地域福祉センター、地域ふれあいセンターの整備
     デイサービス運営事業などの福祉サービス機能を中心として、広く住民を対象とした研修、交流などの機能を備えた多目的総合施設として地域福祉センターを整備します。
     また、過疎・特豪、過疎・離島地域を対象として、地域ふれあいセンターを整備します。

表3-35 地域センターの整備目標

区分 平成3~12年度
地域福祉センター 10か所
地域ふれあいセンター 10か所
  • 3.高齢者の福祉施設の総合的整備
     地域の高齢者福祉の推進を図るため総合的な機能をもった施設として、老人福祉センター及び高齢者生活福祉センターの整備を図ります。
  • 4.高齢者総合福祉エリアの構想
     本格的な高齢化社会に向けて、県民が生涯を通じ健康で生きがいをもって暮らせる地域社会の形成を促進する必要があります。
     このため、高齢者が他の世代とふれあいながら、健康でいきいきと過ごすことができる模範的なまちづくりとして、保健、福祉、居住、交流機能等を備えた各種施設を一体的に配置する「高齢者総合福祉エリア」の構想について検討します。

表3-36 高齢者総合福祉エリアにおける関連施設(例)

保健・医療施設 診療・リハビリ施設、 健康増進センター等
福祉施設 在宅介護支援センター等
入所・居住施設 特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、ケアハウス等
交流施設 コミュニティセンター、テニスコート、プール等
その他 宿泊施設、売店、レストラン等
  • 4.障害者ふれあい交流センターの構想
     障害者の社会参加と自立促進に必要な相談機能、訓練機能、教養教育機能、スポーツレクリエーション機能などを備えた施設の整備や各施設のもつ機能の有機的な連携を図った総合拠点センターとして「障害者ふれあい交流センター」の構想について検討します。

3 オアシスタウン構想の今後の展開
 オアシスタウン構想の実現のためには、それぞれの地域において、その特性に応じた特色あるまちづくりを展開する必要があります。
 また、オアシスタウン構想を推進し、豊かなまちづくりを展開していくための中核機能として、関連分野との有機的な連携を図った総合的な機関の整備について検討します。

  1. 地域特性に応じたまちづくりの展開
     福祉のまちづくりは、地域の文化や自然環境、都市化の状況など地域の実情に応じ、様々なかたちで展開されなければなりません。
    そこで、次のような視点から、特色ある福祉のまちづくりを推進します。
    • ア だれもが安心して活動できる都市空間の創造
       商業地域、繁華街など都市空間においては、だれもが活動する場であることを前提として、わかりやすい表示、点字ブロック、樹木等により日よけや雨よけのあるベンチの設置など道路環境の整備や、建築物の構造改善などを面的に整備することが重要です。
    • イ 快適でふれあいに満ちた居住空間の創造
      • (ア)都市地域における展開
         都市地域においては、一人暮らしの老人や障害者が暮らしやすい住宅の整備及び周辺の生活環境の整備を行うとともに、地域住民の日常的なふれあいや社会参加活動の拡大による新たなコミュニティづくりを行うことが重要です。
      • (イ)農山村地域における展開
         集落が点在し、商店や病院などの生活利便施設と離れている農山村地域においては、歩行による移動が困難です。
         このため、市町村のコミュニテイバスの運行などによる移動手段の確保や、訪問による各種サービスの提供を図るとともに、緊急時の支援体制の整備を図ることが重要です。
    • ウ 自然環境に対応したまちづくりの展開
       本県の豊かな自然環境を生かし、海辺や川辺、恵まれた森林資源などを取り込んだ公園の建設などふれあいや生きがいの場づくりを展開する一方、積雪地域における冬期間の除雪対策や安全な道路環境の確保及び移動手段に配慮したまちづくりが重要です。
    • エ 文化、伝統と融合したまちづくりの展開
       地域における伝統の継承などを通じて、老人と子どもたちとの世代間の交流を図るなど、地域の文化や伝統を生かしたまちづくりが重要です。
       また、福祉施設の整備にあたっても、町並みの景観に対する配慮や文化的な要素を付加することなどにより、まちと融合した温かみのある施設として整備することが必要です。
    • オ リゾート地域等における環境整備
       障害者や高齢者の生活範囲の拡大や余暇時間の増大などから、障害者や高齢者が利用することを配慮した観光地やリゾート地域の環境整備を行うことが求められます。
  2. オアシスタウン構想の効果的な推進
     オアシスタウン構想の効果的な推進にあたっては、それぞれの地域における都市整備や地域振興、地域活動などの様々な場面で、福祉の視点からの取組を行うことにより、福祉オアシスの実現を図っていくことが重要です。
     また、一定の区域において特色あるまちづくりを先駆的に実現し、その波及効果を周辺地域へと拡大していくことにより、地域における福祉のまちづくりを効果的に推進するため、福祉のまちづくりのモデル事業の実施について検討します。
  3. オアシスタウン構想推進のための中核機能の整備
     オアシスタウン構想を推進し、より豊かなまちづくりとして展開していくためには、保健・医療をはじめとする関連分野との有機的な連携による調査研究、情報の集積及び技術の開発を行い、それらに基づく効果的な施策の展開を図ることが必要です。
     オアシスタウン構想推進のための中核となる機能を有する機関として、介護技術などに関する研究機関、福祉に関連する情報の集積・発信機関、福祉を支える人材の育成のための教育及び研修機関などの総合的な整備について検討します。

第3節 福祉を支える人材の育成

○基本的視点

 福祉サービスの充実に伴い、それを支える人材(マンパワー)の確保が必要です。福祉施設の増設を始めとした施設サービスの拡大や多様な在宅サービスが円滑に推進され、安心してサービスが利用できるよう人的基盤の整ったサービス供給体制の確立を目指します。
 そのためには、今後の福祉サービスの主要な担い手となるホームヘルパーや福祉施設等の介護系職員の確保を図るとともに、看護婦等の専門分野の職員の計画的な養成と確保に努めます。
 また、良質な福祉サービスの供給に努めるため、福祉マンパワーに対する研修体系を整備・拡充するとともに、介護福祉士等の専門的な資格取得を促進し、福祉マンパワーの資質の向上を図ります。
 更に、福祉関係の職場に従事する人だけではなくボランティア活動を始めとする地域住民の自主的な助け合い活動を振興することにより、社会の連帯感の高まりを図りながら、今後のゆとりある福祉社会の基盤づくりを進めます。

第1 マンパワーの養成確保

 今後のマンパワー需要は、施設の増加等に伴い大幅に増加し、その確保が大きな課題となります。このため、ホームヘルパーや福祉施設等の介護系職員を中心とした福祉マンパワーについて、需要に応じた供給体制を整備します。
 また、近年、特に確保が困難な看護職員等の計画的な養成と確保に努めます。

1 養成機関の充実

  • 1.介護福祉士(ケアワーカー)
     増加する介護需要に対応し、大幅な増員が必要となるホームヘルパー、福祉施設等の介護系職員の中核として活躍が期待される介護福祉士について民間の専門学校等による養成を促進します。

表3-37 新潟県の介護福祉士養成施設の定員

内容 平成2年度 平成12年度
介護福祉士(入学定員) 30人 110人
  • 2.県立テクノスクール(職業訓練校)での人材育成
     潜在労働力である家庭内の子育て後の主婦を含めた中高年女子求職者を対象として、老人介護、障害者福祉サービスなどの福祉サービス全般にわたっての体系的な訓練の在り方を検討し、社会福祉関係サービス実施機関への就労を促進します。
  • 3.看護職員
     医療分野を含めて需要が増大している看護職員については、県立看護短期大学を設置するとともに養成施設の設置及び定員枠の拡大を図ります。
  • 4.理学療法士・作業療法士
     理学療法士・作業療法士については今後一層の需要が予想されるので、その確保等について検討を進めます。

2 養成施設修了者の県内就労の促進

  1. Uターン対策
     県内出身者の県外養成施設修了者については、家庭等を通じUターンを呼び掛けるとともに、新潟県東京事務所に設置されている「にいがたUターン情報センター」と連携して、Uターンの促進を図ります。
    また、養成施設への情報の提供、就職説明会等を開催します。
  2. 専門職員の就労対策
     県内養成施設修了者の県内就職率は理学療法士、作業療法士が特に低く、看護職員等においても60パーセント前後となっていることから雇用環境の改善に努め県内就職を促進します。

3 雇用形態の弾力化

 家庭の主婦や高齢者などの人材の活用を促進するためパート就労体制の整備など雇用形態の弾力化を促進するとともに、シルバー人材センターとの連携により就労の促進を図ります。

4 魅力ある職場づくり
 福祉関係の職場における優れた人材の確保のため、また、社会福祉施設の整備に伴う人材の需要増や、ホームヘルパーの増員に対応するために、安定して快適に働ける魅力ある職場づくりを支援します。

  1. 県民の福祉関係の職場に対する理解を深め、イメージアップを図るため、社会福祉施設の地域への開放を促進するとともに福祉関係職員の表彰制度の充実及びマスメディアを利用した広報活動などを充実します。
  2. 民間の社会福祉施設、社会福祉協議会等の職場における福利厚生の向上のため、社会福祉関係職員の互助会の設立を民間とともに検討し、職員の健康の維持増進や保養所等の福利厚生施設の充実を図ります。
  3. 社会福祉施設における勤務体制、賃金等の労働条件の改善を図るため、措置費基準の改善について国へ要望します。

5 福祉人材情報センターの設置と事業の展開
 今後、必要とされるホームヘルパー等の在宅福祉従事者や福祉施設職員の確保対策を推進する中核機関として「福祉人材情報センター」を設置し、マンパワー確保対策を推進します。

表3-38 福祉人材情報センターの設置

内容 設置目標年度 事業主体 運営主体
福祉人材情報センター 平成3年度 県社会福祉協議会
  • 1.福祉人材バンクの運営
     福祉人材情報センターの中心的な機能として福祉人材バンクを設け、全県を対象に施設勤務経験のある主婦等の潜在マンパワーや今後福祉関係の職場を希望する人について登録を行い、社会福祉施設等の社会福祉関係サービス実施機関へ斡旋を行います。
  • 2.福祉人材情報センターのブランチの設置
     福祉人材バンク機能の円滑な推進と各種研修の的確な実施を図るため、2次福祉圏域単位に福祉人材情報センターのブランチとして「福祉マンパワー連絡協議会」(仮称)を設け、圏域を中心としたマンパワー確保対策を推進します。
  • 3.マンパワー確保に関する研修の充実
     潜在マンパワーや福祉に関心のある人を対象に、即戦力として現場に復帰できるための知識、技術の習得や福祉に対する理解を深めるための研修を実施します。
     また、併せて福祉関係の職場に就職を希望するマンパワーの掘り起こしを行い人材バンク機能と連携し体系的な確保対策(マンパワー活用講習会や福祉入門日曜教室等)を推進します。
  • 4.広報啓発活動の促進
     一般県民を対象とした、福祉マンパワーに関する広報啓発活動に努めるとともに、福祉人材情報等について機関紙を発行し市町村や社会福祉関係サービス実施機関等に対する情報提供活動を行い、広くマンパワーの確保対策を推進します。

図3-11 福祉人材情報センター運営事業等のフローチャート

福祉人材情報センター運営事業等のフローチャート

第2 福祉を支える人材の資質の向上

 高度化・複雑化するニーズに総合的かつ専門的に対応するため、保健・医療を含めた総合的な研修の充実を図ります。
 また、介護業務の質を高めるため介護福祉士の資格取得の促進と、相談援助業務の質を高めるため社会福祉士の資格取得の促進を図り、福祉関係職員の資質の向上に努めます。

1 福祉関係者の研修の充実強化

  1. 総合研修センターの設置
     福祉関係職員の増大と多様化・複雑化するニーズヘの対応を図るため、建設が予定されている総合福祉センターに総合研修センターを併設し研修の場と機能を整備します。
     併せて、福祉関係職員が保健・医療を含めた多様なニーズに即応できる幅広い知識や社会的視野を広げることができるよう、時代に合致した研修体系を早期に確立します。
  2. 2次福祉圏域単位の研修の充実
     今後の福祉サービスが市町村を主体として展開されることから、地域の実情に添ったきめ細かな研修が図られるよう、市町村行政職員を始めとした福祉関係職員を対象に2次福祉圏域単位での研修を強化します。
  3. ホームヘルパー研修の充実
     在宅サービスの主要な担い手となるホームヘルパーに対して、介護、処遇技術の向上とリハビリテーション技術の習得を促進するとともに、雇用形態に配慮した段階的な研修を実施します。
  4. 福祉関係職員の交流、研究活動の促進
     社会福祉施設職員及び社会福祉協議会職員の活性化と資質の向上のために他施設等との職員交流(施設留学等)を促進します。
     また、福祉施設・団体間の横断的な自主研究活動を奨励し、処遇技術の向上に努めます。
  5. 民生委員・児童委員研修の強化
     民生委員・児童委員は地域住民の最も身近な福祉関係者として福祉活動を展開していますが、従来どちらかと言えば経済的困窮者を対象とした活動を行ってきました。
     今後、福祉サービスの広がりとともに多様な福祉施策に関する知識を必要としていることや、児童委員としての活動がより重要となっていることから専門的な研修の充実に努めます。
  6. 海外・中央研修の拡充
     福祉施設職員等が福祉先進国を視察することによって国際的視野を広め、今後の施設福祉サービスに資するため海外研修の促進に努めます。
     また、より高度な知識を習得するため中央レベルの研修への参加の機会の拡大に努めます。

2 介護福祉士有資格者の拡大

 「介護福祉士」は専門的知識及び技術をもって、日常生活を営むのに支障がある者に対する入浴、食事等の介護及び介護の指導をする者として昭和63年度に創設された国家資格で、今後の介護系職員の中核として期待される資格です。
 介護福祉士については、新規のマンパワー確保とともに、既にホームヘルパーや福祉施設の寮母等として従事している人たちが介護に関し、より専門的な知識と技術を習得することにより、その資質の向上を図るうえからも資格取得について積極的な支援に努めます。

  • 1.介護福祉士の整備目標
    • ア 介護福祉士対象職員数
       介護福祉士については、いわゆる名称独占の資格制度であり、資格の有無により施設等への採用条件として法的に定められているものではありませんが、介護福祉士の対象と考えられる施設等の職員数は次のとおりです。

表3-39 施設等における介護福祉士対象職員数

内容 平成2年度 平成12年度
介護福祉士対象職員数 約2,500人 約7,000人

注 対象職員は、特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、
老人保健施設等の寮母、介護職員及びホームヘルパー等となります。

  • イ 介護福祉士有資格者の整備目標の設定
     福祉施設等において有資格者の役割が重要となることから、平成12年度までの関係分野における有資格者の目標値を設定し、今後の取組を促進します。

表3-40 介護福祉士整備目標

平成2年度 平成12年度
介護福祉士 200人 1,800人

注 目標値の設定については、いくつかの仮定を置き養成期間終了者と
現任職員が国家試験により資格を取得すると見込まれる者の数を推計したものです。

  • 2.資格取得に対する支援
     現任職員の資格取得については、制度創設まもないことからその趣旨が十分に浸透されていないきらいがあります。
     今後は、施設設置管理者等の理解を深めるとともに、国家試験の受験者の拡大と合格率を高めるため、試験に備えた事前研修を県社会福祉協議会への委託研修として新たに創設し、有資格者の拡大に努めます。
     また、総合研修センターの設置に併せ、通信教育による事前研修を検討します。
  • 3.有資格者の処遇の向上
     介護福祉士については、人材の確保及び資質の向上を図ることを目的として創設された資格であり、資格の有無が直接職員の処遇に結びついていないのが実態と思われます。今後の有資格者の増加とともに、職場の実情等を考慮しながら有資格者の処遇の向上が図られるよう関係者とともに検討していきます。

3 社会福祉士有資格者の拡大
 社会福祉士は専門的知識及び技術をもって身体上又は精神上の障害があること等により、日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導等を行う者として昭和63年度に創設された国家資格です。
 有資格者は現在、県内には極めて少ない状況ですが、今後の総合的な福祉を推進する上で、福祉施設及び社会福祉協議会の中核的職員として、また、市町村における福祉活動のコーディネーターとして、その役割と位置付けを検討しながら有資格者の拡大に努めます。

4 家庭介護者の専門知識の向上
 急速な後期高齢者の増加に伴い、家庭内における介護者の入浴や食事等の介護に関する専門的な知識や技術の習得を図るため家庭介護教室等を開催し、家庭内における介護機能の向上に努めます。

第3 ボランティア活動

 福祉施策は、心豊かで連帯感に満ちた社会を目指すという全県的な広がりの中で推進していくことが重要です。
 ボランティア活動は、県民一人ひとりが福祉を自分自身の問題としてとらえ、福祉の受け手であると同時に担い手として、今後の住民参加型の福祉を推進する上からも重要な役割を担う活動と考えられます。

1 ボランティア活動の振興
 今後ますます多様化、複雑化する福祉ニーズヘの対応を考えた場合、ボランティア活動は日常的な援助の他、悩みごとの相談や話し相手などの心理的、情緒的な支えとして、行政になじみにくいサービスの提供を担う重要な活動となるものと考えられます。
 ボランティア活動の振興については、県民・地域・行政が適切に役割を分担しつつ、協働しながら、次のような視点に立って活動を進めていくことが必要と考えます。

  1.  県民意識調査によれば、ボランティア活動に参加したいと考えている人は6割近くに達しています。この県民の高い参加意欲を具体的な活動につなげていくことが必要であり、余暇時間の社会的活用への促進やボランティア休暇制度の導入など社会全体として積極的な取組が必要です。
  2.  高齢化の進行は、一方では心身ともに健康な高齢者の増加をもたらすものであり、地域において高齢者が気軽にボランティア活動をするなど人的資源の有効な活用が必要です。
  3.  ボランティア活動は、無償性という性格をもっていますが、「無償性」とは、営利目的ではないという意味であり、活動する上で必要となる経費について実費弁償を受けることについては、各々の地域の実情や活動の内容により十分に検討を行い、気軽に参加できる活動としていくことが必要です。
  4.  ボランティア活動は、自発的で無報酬の活動であっても、一般的には「人」を対象とした活動であり、個々の活動についての責任と持続性が必要です。
  5.  受けて側のニーズは、日常生活援助を主な内容とするサービスであり、活動の継続性が必要です。このためには、ボランティアが個々に活動するのではなく組織化を図り、グループとしての対応を強化することにより継続的な活動を展開することが必要です。
  6.  ボランティア活動は多種多様な取組を展開していますが、今後、地域には一人暮らし老人や寝たきり老人などの増加が見込まれており、在宅のお年寄りに対する友愛訪間など在宅サービス活動に携わるボランティアの拡大が求められています。

2 ボランティア活動の条件づくり
 ボランティアの性格は、自発性、奉仕性、無償性に基づくものとして、その活動は民間の主体性が求められる領域であると言われています。
 行政の役割としてはボランティアの主体性を損なうことなく、ボランティア活動を推進するための条件づくりを行うことを基本とします。

  • 1.広報・啓発活動の促進
     ボランティア活動に対する正しい理解を深めるとともに、県民のボランティア活動に対する参加意欲を具体的な活動へとつなげていくため、情報の提供や福祉への理解を促進するための広報・啓発活動を充実します。
  • 2.社会福祉協議会活動の強化
     地域においてボランティア活動推進の中心的役割を担っている社会福祉協議会の 活動を強化することが重要であり、人件費補助を含めた活動体制の強化やボランティア活動振興のための施策を社会福祉協議会を主体として展開していきます。

表3-41 ボランティア関連施策実施目標

事業名 ~平成2年度 ~平成12年度
ボラントピア事業 (累計)
5
(累計)
15
ふれあいのまちづくり事業
(地域福祉総合推進事業)
13
  • 3.活動拠点の整備
     ボランティアが地域で活動するためには、情報収集やニーズに対応するための研修の実施、だれもが気軽に集うことのできる「たまり場」的な拠点が必要であり、今後の施設の整備にあたってはボランティアの研修機能などを有する活動拠点を確保していきます。

表3-42 ボランティア活動の拠点(たまり場)整備の目標(再場)

整備項目 平成2年度 平成12年度
地域福祉センター 2か所 12か所
地域ふれあいセンター 10か所
  • 4.活動財源の確保
     ボランティア活動を推進するうえで、財源の確保は重要な課題となっています。このため、昭和62年に地域で活躍するボランティアのニーズに即応した援助体制を整えるため新潟県社会福祉協議会に「県民たすけあい基金」(ボランティア基金)が設置されましたが、今後も、同基金の果実が地域で活躍しているボランティアに有効に活用されるよう努めていきます。

第4章
計画の推進

第1節 計画推進における役割分担

 この計画推進に当たっては、県は総力をあげて取り組んでまいりますが、市町村、企業、団体等が、県民とともにそれぞれの役割分担について認識を深め、協働して多様な地域活動、福祉活動を展開していくことが望まれます。

1 県
 県は、全ての県民に福祉サービスが行きわたるよう、この「新潟県社会福祉計画」の積極的な推進に努めます。

  1.  県主体の施策については、優先度を勘案し、財源の確保に努め、年次別に計画的に実施します。
  2.  圏域別福祉計画を策定し、圏域ごとに福祉サービスが完結するよう施策を推進します。
  3.  市町村間の連絡調整や、情報提供等の必要な援助を行い、福祉水準の地域格差の是正に努めます。
  4.  広域的な観点から、ニーズの出現率が小さく、専門性の高いサービス領域での施策の展開や施設の整備を図ります。
  5.  施策の推進に当たっては、国の制度の積極的な活用を図り、事業を実施してまいります。
     一方、国は、自治体での福祉が安定的に推進されるよう、年金、医療、雇用などの関連施策の充実と、福祉財源の確保に一層努めることが要請されます。この計画の推進のためには、社会保障、社会福祉の法律・制度改正によらなければ実現しないものもあります。
     これらについては、今後様々な機会を通じて国へ要望してまいります。

2 市町村
 市町村は、国の制度改正により、在宅福祉サービスと施設福祉サービスとを一元的に供給する実施主体として位置付けられ、更に、保健サービス等との連携を実現する上で、今後、市町村に対する期待はますます大きくなるものと思われます。
 この計画策定を契機に、市町村がこの計画と整合性をもった市町村社会福祉計画を策定し、計画的な福祉施策を積極的に推進することが望まれます。

3 企業・団体等
 企業・団体等は、地域社会の一員として、経済活動、奉仕活動などを通じて積極的に地域社会に貢献することが望まれます。とりわけ、医師会、歯科医師会、薬剤師会等の専門技術を有する団体は、従来から活動を通じて福祉社会実現に貢献していますが、今後の保健、医療、福祉の一層の連携からも、福祉分野での活躍が期待されます。
 企業・団体等は、障害者や高齢者などの雇用機会の確保や雇用環境の整備に努めることはもとより、介護休暇の実施や、ボランティア活動への配慮など、企業ぐるみの取組や団体ぐるみの取組が重要です。
 今後は、企業・団体等が有している人材、福利厚生施設等の地域開放などを活用し、地域活動の活性化に協力していくことが期待されます。

4 県民
 県民は、福祉サービスの受け手でもあり、担い手でもあります。
 来たるべき21世紀に向けて、にいがた福祉オアシスを実現していくには、県民一人ひとりが、自分のことはできるだけ自分でやるという自立、自助の精神が必要です。
 そのうえで、自分たちのことは自分たちでやろうとする連帯、互助の精神に基づき、お互いが助けあいの心で福祉の理解を深め、地域福祉の担い手として福祉の活動に主体的に参加することが望まれます。

第2節 推進体制

 計画の円滑な進行を図るため「新潟県社会福祉計画推進会議」を発足し、積極的な推進を図ります。
 また、施策の具体的推進を図るため、推進会議に必要な部会を設け、調査・研究を行います。
 なお、圏域別福祉計画の策定のために、圏域ごとに市町村及び保健・医療・福祉等の関係者からなる、圏域別福祉計画推進組織を設置します。


主題:

新潟県社会福祉計画-にいがた福祉オアシスを目指して-№3
113頁~160頁

発行者:
新潟県民生部社会福祉課

発行年月:
1991年5月

文献に関する問い合わせ先:
新潟県民生部社会福祉課
〒950 新潟市新光町4番地1 電話 025-285-5511(代表)