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岐阜県障害者基本計画

No.1

岐阜県

項目内容
立案時期平成7年3月
計画期間平成7年度~平成16年度(10年間)

 表紙の絵は、精神薄弱者授産施設「吉城 山ゆり園」の園生・原田正則さん(高山市)の作品で、題は「コスモス畑」です。


はじめに

 本県では、昭和57年3月に障害者の完全参加と平等をめ ざした「障害者施策に関する長期計画」を策定し、これを指針として障害者の福祉向上に努めてまいりました。
 この間、県民の皆様のご理解とご協力により障害者の社会 参加も着実に進んでまいりました。しかしながら、障害の重度化、重複化や障害者及び介護者の高齢化など障害者をめぐる状況が大きく変化するとともに、新たな課題も生まれてきました。
 また、国連では、「国連・障害者の十年」に引き続き、平成5年から「アジア・太平洋障害者の十年」が始まっており、国においては、平成5年12月に[心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改められ、障害者の自立と社会参加の促進が一層図られており ます。
 こうした中で、21世紀に向けた新たな視点にたち「岐阜県障害者基本計画」を策定いたしました。
 この計画では、さまざまな分野において障害者に関する施策を推進し、障害者のみならずすべての県民にとって「日本一住みよいふるさと岐阜県」をめざしていくこととしております。
 県民の皆様をはじめ市町村、関係者の一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 おわりに、この計画の策定に当たり、貴重なご意見、ご指導をいただきました岐阜県障害者施策推進協議会の各委員並びに障害者団体の皆様に厚くお礼を申し上げます。

平成7年3月

岐阜県知事 梶原 拓

目次

岐阜県障害者基本計画の施策体系

目標
分野
施策
完全参加と平等
日本一住みよいふるさと岐阜県
啓発広報啓発広報
福祉教育
ボランティア活動の促進
生活環境すみよいまちづくり
福祉住宅の整備
移動・交通安全対策の充実
防災対策、緊急時の対応
情報提供の充実
保健・医療障害の発生予防
早期発見
医療の充実
精神保健対策の推進
教育・育成早期療育
障害児の就学相談・指導の充実
障害児教育の充実
生涯学習の充実
福祉相談機能の充実
生活の安定
在宅福祉の充実
施設福祉の充実
福祉機器等の充実
リハビリテーションリハビリテーション体制の充実
雇用・就業雇用の促進 福祉的就労の場の整備
スポーツ、レクリエーション及び文化スポーツ、レクリエーション活動の推進
文化活動の推進
国際交流国際交流活動の推進

総論

1.計画策定の趣旨

 本県では、昭和57年に「障害者施策に関する長期計画」を策定し、これを指針として障害者の福祉向上に努めてきました。市町村をはじめ関係団体や全県民の理解・協力により施策の着実な進展が図られましたが、障害の重度化・重複化、障害者の高齢化、ニーズの多様化など環境が大きく変化し、それにともない新たな課題も生じてきました。また、平成5年12月には障害者の自立と社会参加を一層促進するため「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改められ、県においても障害者のための施策に関する基本的な計画 の策定に努めなければならない旨の規定が盛り込まれました。
 このような状況を踏まえ、障害者施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、この計画を策定します。

2.目標及び基本理念

「ノーマライゼーション」と「リハビリテーション」の理念のもと「完全参加と平等」を目標にその実現を目指します。
 また、施策の推進にあたっては、「気配りの県政」と「先取りの県政」を両輪とし、「高度情報基地ぎふ」をめざす岐阜県としてマルチメディアの活用を図りながら「日本一住みよいふるさと岐阜県」の実現を目指します。

「ノーマライゼーション」の理念

障害を持つ人も持たない人も、誰もが住み慣れた地域で社会の一 員として生活し、活動できるよう にしていくという考え方です。

「リハビリテーション」の理念

単に手足の動きをよくすることだけでなく、社会的、職業的手段等を組み合わせ、障害者の持つ能力を最大限に発揮させ、全人間的 な復権をめざすという考え方です

完全参加と平等

日本一住みよいふるさと岐阜県

「気配りの県政」

社会的に恵まれない立場にあるひとびとの生活の現場に立った県政の推進

「先取りの県政」

時代の流れに先手を打ち県民生活を豊かにする県政の推進

3.計画の期間

 この計画の期間は、平成7年度から平成16年度(1995年度~2004年度)までの10年間とします。
 ただし、障害者のニーズや社会情勢の変化に対応するため、必要に応じて点検・見直しを行います。

4.計画の性格

 この計画は、岐阜県第五次総合計画やその他の部門別計画を踏まえ、本県の障害者施策の基本的な方向と目標を示した行政計画であるとともに、障害者をはじめ行政機関、関係団体、全県民が障害者の「完全参加と平等」と「日本一住みよいふるさと岐阜県」の実現に向けて取り組む指針の性格を持っています。

5.計画策定のための調査等

(1) 「視・聴覚障害者福祉に関する基礎調査」、「身体障害者(児)実態調査」及び「精神薄弱者意識調査」を実施し各障害者の実態把握に努めました。

(2) 各障害者団体から意見を聴き、これらを反映した計画づくりに努めました。

(3) 学識経験者、関係行政機関の職員、障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者で構成される岐阜県障害者施策推進協議会から意見を聴き、総合的な計画となるよう配慮しました。

6.重点課題

(1)障害者に対する理解の促進

 障害者の「完全参加と平等」を目標に共生社会を実現するためには、障害及び障害者への正しい理解と認識が必要であり、このため、社会全体で障害者の自立の支援、社会参加の促進が図られるよう、あらゆる機会を通じて啓発広報活動に努めます。

(2)すべての人々に住みよい社会づくりの推進

 障害者をはじめ、すべての人にとって住みよい社会づくりに向けて、建築物等の整備、交通・移動対策の推進やボランティア活動を充実し、便利に活動でき、快適な生活が楽しめる社会づくりに努めます。

(3)障害者の主体性、自立性の確立

 障害者自身が責任ある個人として主体的に自身の生活を設計し、社会の発展に能動的に参加することができるよう、主体性、自立性を確立することを期待するとともに、その能力が十分発揮できるような施策の推進に努めます。

(4)障害の重度化・重複化や障害者の高齢化への対応

重度・重複障害者が増加傾向にある中で、生活の質の向上を図るため、在宅福祉サービスや施設整備等の施策の推進に努めます。

 また、障害者及びその介護者の高齢化が進んでおり、これらの人々が安心して暮らせるよう、高齢者施策との連携を図りながら施策の充実に努めます。

(5)情報提供サービスの充実

 視・聴覚障害者は、情報の収集、コミュニケーション確保に大きなハンディキャップがあるため、的確かつ十分な情報収集やコミュニケーションの確保ができ、便利に活動できるよう施策の充実に努めます。

(6)マルチメディアの活用

 岐阜県では、マルチメディアを核としたプロジェクトの推進により「高度情報基地ぎふ」づくりを目指しています。
 マルチメディアとは、テレビ、電話、コンピュータなどさまざまなメディアの機能を融合したシステムで、障害者や遠隔地に住む人々が必要な情報を取得し、または、発信することができ「機会の均等化」、「時間的・経済的制約の克服」を図ることができます。
 マルチメディアは、身体的ハンディキャップのある障害者の情報格差の解消、生活の向上、さらには、重度の障害者がさまざまな分野において、もてる能力を活用して就労に結びつけていくなど大きな可能性を有しています。
 このため、各分野において各種施策の充実を図りながら、マルチメディアを障害者のために有効活用する方策について検討していきます。

7.施策体系

この計画は、障害者に関する施策を次の9分野に区分しています。

  1. 啓発広報
  2. 生活環境
  3. 保健・医療
  4. 教育・育成
  5. 福祉
  6. リハビリテーション
  7. 雇用・就業
  8. スポーツ、レクリエーション及び文化
  9. 国際交流

8.計画の推進

(1)計画の総合的、一体的な推進を図るため、「岐阜県障害者施策推進協議会」から意見を聴きながら施策の推進を図ります。

(2)計画の実施にあたっては、社会福祉に関する施策を総合的に進めるための庁内組織である「岐阜県総合福祉推進本部」を中心に関係部局が連携して全庁的に取り組みます。

(3)計画の推進にあたっては、県民、関係葵体、企業などの理解・協力を得ながら、多面的に取り組みます。

(4)市町村は、身近な地方公共団体として、県と連携を図る中で障害者施策に積極的に取り組むことを期待します。

各論

第1節 啓発広報

第2節 生活環境

第3節 保健・医療

第4節 教育・育成

第5節 福祉

第6節 リハビリテーション

第7節 雇用・就業

第8節 スポーツ、レクリエーション及び文化

第9節 国際交流

第1節 啓発広報

(1)啓発広報

<現状及び課題>

 障害を持つ人も持たない人も共に地域や家庭で生活し、社会参加することを目指すノーマライゼーションの理念のもと、障害及び障害者に対する正しい理解が得られるように「身体障害者福祉週間(12月9日~15日)」、「障害者雇用促進月間(9月)」などの機会をとらえ啓発活動を展開してきました。
 今後、さらに障害者に対する正しい理解を広げていくためには、県民ひとりひとりがノーマライゼーションの理念を心の中に育むことと、障害者自身が自立意識をしっかり持って積極的に社会参加し、すべての人々にその存在を知ってもらうことが大切です。
 障害を持った人を含めたすべたの人々が住みよい平等な社会づくりを進めるためには、

  1. 障害者は特別の存在ではなく、障害を持たない人と同じ社会の構成員であること
  2. 障害者は基本的人権を有する一人の人間として差別や偏見を受ける理由がないこと
  3. 障害者は障害を持たない人と同様に様々な能力を持っていること
などについて啓発普及に努め、障害及び障害者に対して十分な理解を得ることが必要です。
 障害者問題は、県民全体で取り組んでいかなければならない問題であるということについて、県民の意識を確立するためにも、啓発活動について一層の充実を図る必要があります。

<施策の方向>

1 テレビ、ラジオ、新聞などのマスメディアを活用し、障害及び障害者問題に対する理解の促進に努めます。
 特に「障害者の日(12月9日)」を中心に重点的に広報を進めます。

2 県、市町村などが発行する広報紙を有効に活用し、障害及び障害者に対する理解の促進に努めます。

3 「障害者の日(12月9日)」、「身体障害者福祉週間(12月9日~15日)」、「精神薄弱者福祉月間(9月)」、「精神保健週間(10月の最終週)」、「障害者雇用促進月間(9月)」などに関連する各種事業の実施により全県民の障害者に対する理解の促進に努めます。

4 「障害者ふれあい福祉フェア」、「精神保健岐阜県大会」、「障害者雇用促進大会」の開催などを通じ、広く障害者の活動を紹介するとともに、障害及び障害者に対する県民の理解促進に努めます。

5 相談・指導、社会参加事業、学校教育などの機会を通じて障害者自身が自立意識を持つように啓発します。

(2)福祉教育

〈現状及び課題〉

 障害者に対する正しい理解を図るためには、幼児期から障害者とのふれあいの体験を積み重ねることが重要です。
 このため、障害者に対する理解推進、地域社会の人々の障害児教育に対する理解啓発を図るために「心身障害児理解推進校」の指定を行っています。
 また、県、市町村の各社会福祉協議会が指定する「福祉協力校」には、平成6年4月現在で66.2%の学校が指定を受けており、児童生徒を通じて家庭や地域の福祉の心を深めるような教育の実践・研究に努めています。さらには、この事業が終了した後、ボランティアグループを組織し、活動の継続を図る学校に対し助成を行い支援しています。

〈施策の方向〉

1 すべての子供が理解しあい好ましい人間関係を育てることができるように「心身障害児理解推進校」の指定を引き続き行い、交流活動を通じて「思いやりの心」「助け合いの心」「認めあう心」の育成に努めます。

2 福祉副読本を各家庭においても活用することができるように内容を検討します。

3 県・市町村社会福祉協議会における「福祉協力校」の指定を引き続き行い、障害者に対する理解促進に努めます。

県内小・中・高等学校の福祉協力校数の状況 (平成6年4月1日現在)

-

小学校

中学校

高等学校

合計

学校総数

416

212

93

721

協力校数

309

138

30

477

割合

74.3%

65.1%

32.3%

66.2%

※高校は全日制のみ(資料:県社会福祉協議会)

(3)ボランティア活動の促進

〈現状及び課題〉

 近年、高齢化の進展、自由時間の増大、心の豊かさの重視などを背景に、ボランティア活動に対する意識の高まりや企業による社会貢献活動が活発になっています。
 ボランティア活動は、地域福祉を支えていくうえでの大きな力であり、障害者が自立し、社会参加していくうえでボランティアに対する期待はますます大きくなってきています。
 県内のボランティア数は、平成6年4月1日現在、829団体、46,106人となり、ボランティアに対する県民の意識の高まりとともに着実に増加してきています。
 県では、「県民1人1ボランティア活動」の定着を目指し、意識啓発、民間団体の活動強化及びリーダーの養成を柱とした各種の振興策を展開しています。

〈施策の方向〉

1 ボランティアの手引を作成し、新成人、老人クラブ、婦人会等広く県民各層に配布し、県民全体の意識の啓発に努めます。
 県社会福祉協議会において行う広報紙・事例集の発行、ボランティア電話の設置による相談・情報提供を促進し、ボランティア活動の普及・啓発を行います。

2 ボランティア協力校事業による小・中・高校生の社会福祉施設の行事への参加や体験学習・交流活動を通じて社会福祉への関心を深め、将来のボランティア活動の担い手の養成に努めます。

3 障害者に対する専門的なボランティアである点訳奉仕員、手話奉仕員、要約筆記奉仕員、療育アシスタントなどの養成に努めます。

4 市町村のボランティアセンターの充実並びに未設置市町村に対する設置促進を図るとともに、ボランティアコーディネーターの増員を図ります。

5 「生涯学習ボランティア活動総合推進事業」により、点字、手話通訳などの各種のボランティアに関するリーダーの養成、ボランティアに関する情報収集・提供を推進します。

6 野外活動などにおける移動手段の確保のため、バスなどの貸出しが可能な企業の登録制度などを検討します。

第2節 生活環境

(1)すみよいまちづくり

〈現状及び課題〉

 障害者が障害を持たない人と共に円滑に日常生活を営み、かつ、積極的に社会参加するためには、道路、建物、交通機関などの公共的施設について障害者をはじめ、すべての人が安全かつ快適に利用できるようにすることが必要です。
 県では、「ぎふバリアフリーデザイン普及促進要綱」の制定(平成元年4月)ぎふバリアフリーデザイン普及促進事業の実施(平成3年度~)、「高齢者・障害者にやさしい土木施設ビジョン」の策定(平成4年度)などの取り組みにより、すみよいまちづくりについて一定の成果を得ています。
 今後は、普及啓発などのソフト面における取り組みを強化するとともに、公共施設はもとより民間施設への広がりを図る必要があります。

〈施策の方向〉

1 福祉のまちづくりを総合的に推進するため「福祉のまちづくり推進会議」を設置し、障害者をはじめとするすべての県民が快適にくらせるまちづくりをめざした「岐阜県福祉のまちづくり指針」を策定するとともにその普及に努めます。
 また、この指針の普及状況をみながら、条例などの制定についても検討します。

2 建築物などの整備に関する情報の提供や必要な助言、指導、財政的支援などを行い、県、市町村、民間での福祉のまちづくりを進めます。

3 道路、公園、河川などの整備にあたっては、建設省の定める「生活福祉空間づくり大綱」や県土木部の策定した「高齢者・障害者にやさしい土木施設ビジョン」に基づき計画するとともに、「福祉のまちづくり指針」に適合するように配慮します。

4 「ぎふバリアフリーデザイン賞」表彰、講演会の開催などにより、まちづくりに対する県民の意識を喚起します。

5 「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」に基づき、不特定多数の者が利用する公共的性格を有する建築物の建築主に対して、適切な措置を行うよう指導に努めます。

6 建築基準条例の中に障害者・高齢者等が安全かつ快適に利用できる設備などの整備に関する規定を設けることについて国と協議をしたうえで検討を進めます。

(2)福祉住宅の整備

〈現状及び課題〉

 障害者や高齢者が自宅において自立し、安全かつ快適に生活するため並びに介護者の負担を軽減するためには、何よりも住環境の整備が必要です。
 身体障害者の実態調査結果によると持ち家世帯のうち58%が住宅改造の必要性を感じています。しかし、実際に改造したのは13%にすぎず、残りの45%の世帯は既存のまま使用しているのが実情です。
 また、全体の12%の世帯が借家または借間ですが、そのうち半数の人が改造の必要性を感じています。
 県では、住宅の新築改造に対して各種貸付事業などを行い、家庭介護、自立支援という側面から、段差が少ない住宅など障害者・高齢者にとって住みやすいように配慮された住宅(福祉住宅)に対する整備の支援を行っています。
 平成6年度から「障害者・高齢者住宅整備資金貸付事業」の貸付限度額を200万円から300万円に引上げ、近年の住宅改造にかかる費用の実情にあわせるとともに、改造の必要があるにもかかわらず経済的理由からこれを行うことができない人に対する助成策として「障害者・高齢者いきいき住宅改善助成事業」を実施しています。
 福祉住宅の整備は、障害者・高齢者にとってどのような生活環境が必要であるかを的確に把握し対応すること、相談窓口の整備を進めることが大切です。

障害者等住宅整備に対する支援制度 (平成6年4月1日現在)
事業名事業概要貸付・補助限度額貸付利率
岐阜県個人住宅建設
等資金利子補給事業
障害者と同居する親族が住宅を新築購入する 場合に利子(住宅ローン・公庫基準金利最大 1.5%)の一部を当初5年間補助する千円
融資限度額
4,500
利子補給最高総額
324

-

岐阜県福祉対応型住宅建設資金利子補給事業住宅金融公庫の福祉対応工事を行う住宅に対
する利子補給
利子補給対象 住宅金融公庫割増融資分
利子補給率 2.0%(当初5年間補助する)
対象融資限度額
5,500
利子補給最高総額
541.2

-

障害者・高齢者 住宅 整備資金貸付事業障害者・高齢者に適応するような住宅改造に 対し貸付を行う貸付
3,000

年利 3.0

障害者・高齢者いきいき住宅改善助成事業障害者・高齢者に適応するような住宅改造に 対し助成を行う補助
500

-

(資料:住宅課、高齢福祉課、障害福祉課)

〈施策の方向〉

1 ケアサービス付き住宅の整備、福祉対応モデルハウスの建設、住宅専門相談員やリフォームヘルパーの設置などによる情報提供サービス体制の整備などを進めるための「マイホームプランぎふ21」を策定し、住環境整備を推進します。

2 各種貸付・助成制度の周知を図り、住環境の改善促進に努めるとともに、障害者が住みやすい民間の賃貸住宅や公営住宅の整備促進に努めます。

3 リフォームヘルパーの設置を促進します。

4 福祉住宅の擬似体験としてバーチャル・リアリティー(VR)技術の活用を検討します。

☆ リフォームヘルパー

 ソーシャルワーカー、理学療法士、設計士などがチームを 組み、要介護の高齢者や障害者宅に出向いて住宅改良に関して、相談・助言、評価(施工の確認、使用方法の指導)など を行うもの

☆ バーチャル・リアリティ(VR)

 コンピュータなどを利用して、実在しない空間や遠く離れ た空間を視覚、聴覚、触覚など五感によって擬似体験ができる技術

(3)移動・交通安全対策の充実

〈現状及び課題〉

 障害者の社会参加の促進を図るためには、障害者が安心して外出することができるよう、道路・公共交通機関の整備とともに、交通・移動手段の確保が必要です。
 障害者を含めた交通弱者にとって安全で利用しやすい歩行者空間を確保するため積極的に歩道整備を進めてきた結果、県管理道路の歩道設置延長は平成6年4月現在1,060kmとなっています。
 また、視覚障害者用の誘導ブロックの設置や段差の解消とともに、違法駐車や路上放置物の排除にも努めています。
 しかしながら、近年、道路が本来の主役であるべき人にとって使いづらいものとなっているとの指摘があり、車いすのすれ違いなどが可能な、ゆとりある歩道幅員の確保など、人にやさしい道づくりが望まれています。
 障害者が公共交通機関を利用する場合の視覚障害者用の誘導ブロックや車いす使用者のためのスロープの設置などの設備は比較的進んできましたが、エレベーター、エスカレーターの設置などは、駅の改築等にあわせて整備されることが多く、やや遅れている現状にあります。さらには、聴覚障害者に対する配慮として、次の停車駅の電光表示による案内などの目で見る情報提供設備の整備を進める必要があります。
 また、障害者が安心して社会参加をするためには、障害者自身の交通安全教育を推進し事故防止に努めるとともに、障害者に配慮した交通安全施設の整備が必要です。
 県下では、視覚障害者の集まる公共施設付近や繁華街を中心に、音声の出る信号機や身体障害者、高齢者など歩行速度の遅い人が横断する際に時間を延長できる信号機を設置し、交通弱者の安全対策に努めています。
 しかし、音声の出るものに対し、付近住民から苦情の出るケースがあります。障害者の社会参加を促進するために、県民の協力、意識の向上を図りながら増設に努める必要があります。

〈施策の方向〉

1 交通弱者である障害を持つ人たちが安心して日常生活を過ごせるよう、引き続き(1)幅の広い歩道の整備、(2)段差の解消、(3)点字ブロックの設置、(4)透水性舗装やカラー舗装、(5)明るい歩道(歩道照明の設置)などの交通安全施設整備を推進します。
 また、違法駐車対策や路上放置物の排除については、引き続き啓発広報を行うとともに、関係機関と連携を図る中で指導に努めます。

2 障害者の利用を容易にするため、公共交通機関の利用施設については、エレベーター、エスカレーターなど今後も積極的に整備されるように働きかけていきます。

3 平成6年度より実施の「リフト付きバス設置事業」の推進などにより車いす使用者の移動対策の促進を図ります。

4 不特定かつ多数の者が利用する建築物などにおけるスロープ、自動ドア、エスカレーターなどの整備状況を把握し、福祉ガイドマップの作成などにより、障害者が外出しやすいよう情報提供に努めます。

5 引き続き交通安全キャンペーン「交通マナーアップぎふ」を行い交通事故防止に努めるとともに、障害者がより安全で利用しやすい交通環境を作り出すため、各種交通安全施設の計画的な整備を推進します。

(4)防災対策、緊急時の対応

〈現状及び課題〉

 障害者が地域社会で安心して生活していけるようにするためには、日頃から、防火知識の普及を図ることや地震などの災害が起こった場合の情報の収集伝達や避難誘導の体制を整備しておくことが重要です。
 県では、住宅防火対策の推進を行っていますが、引き続き障害者・高齢者に対しても広報活動などを行い防火に対する意識啓発を行う必要があります。
 また、障害者等災害弱者対策については、岐阜県地域防災計画において「ふれ愛ぎふ防災ネットワーク」を定め、これに基づき防災安全対策を進めていますが、阪神大震災の教訓を踏まえこの内容をさらに充実するとともに、視覚障害者や聴覚障害者についての情報の伝達方法など、それぞれの障害の内容に応じたきめ細かな防災対策を確立していく必要があります。

〈施策の方向〉

1 障害者、高齢者等を火災から守るため、住宅防火対策を積極的に推進し、防火対策に関する広報活動、住宅用防災機器の普及を促進します。

2 ひとり暮らしの重度身体障害者などが安心して生活できるように緊急通報装置の設置を促進します。

3 「ふれ愛ぎふ防災ネットワーク」の内容を充実し、障害者が地域の中で安心して生活できるように緊急時の支援体制の確立に努めます。

4 聴覚障害者については、緊急時の情報伝達の円滑化を図るためにもファックスの設置を促進するとともに、ファックス電話帳の作成、防災情報の提供などにより、日頃からの情報伝達システムの整備充実を検討します。

5 視覚障害者については、フリーダイヤルを活用しての防災情報の提供などにより、日頃からの情報伝達システムの整備充実を検討します。

(5)情報提供の充実

〈現状及び課題〉

 現代の社会生活では、「情報」は極めて重要なものとなっており、情報の受入れが困難な視覚障害者や聴覚障害者の社会的ハンディキャップは大きなものとなっています。社会参加を推進するためには、情報を発信する際に障害者が受けやすい形で、できる限り多くの情報を提供することが大切です。県では広報紙「ふれあい くらしと県政」の点字版、録音版の発行やテレビ広報番組での手話導入を行っていますが、障害を持たない人が手にすることができる情報については障害者も同じように入手できるよう配慮する必要があります。
 点字図書館では点字図書、録音テープの作成貸出、聴覚障害者協会では字幕入りビデオカセットの作成などを行っていますが、今後は、それぞれの障害に対応できる情報発信基地をもち、その情報が障害者の生活に役立つようにしていく必要があります。
 また、障害者の社会参加を促進するため、移動困難な重度身体障害者及び言語・聴覚障害のため意思伝達が困難な人たちを中心としたパソコン通信ネットワーク事業を行っています。平成6年度より県内6地区に地域情報の提供や通信による機器操作の指導などを行う地域情報提供員を設置し、地域福祉情報の充実に努めています。
 重度の障害者が増加傾向にある中で、このようなシステムをさらに充実させることにより、障害者の日々の生活が充実したものとなるようにしていくことが大切です。

〈施策の方向〉

1 県が発行する広報紙などについて点字版、録音版の充実に努めます。
 また、手話入りテレビ広報番組の充実に努めるとともに、字幕入りテレビ広報番組について検討します。

2 点訳・音訳奉仕員の養成を推進し内容の充実を図るとともに、視覚障害者の情報提供施設である点字図書館の改築及び機能の充実を支援します。

3 聴覚障害者情報提供施設の整備を推進します。

4 手話奉仕員、要約筆記奉仕員の養成を推進します。

5 障害者のふれあいパソコンネットワーク事業について、地域福祉情報提供員の活用により障害者が新たに必要とする福祉情報の収集に努めるとともに、内容を充実することにより、障害を持たない者の参加を図り、県民の障害者に対する理解促進に努めます。

6 パソコンの操作等について、個々の障害を理解したうえで指導・教育などができる指導者やソフト開発のできる人材の育成について検討します。

☆聴覚障害者情報提供施設

 次の(1)の事業を主とし、(2)及び(3)の事業もあわせて行う施設

(1)試写室、情報機器利用室、制作室等を設置し、聴覚障害者用字幕(手話)入りビデオカセットの作成及び貸出事業

(2)手話通訳者の派遣、情報機器の貸出等コミュニケーション支援事業  及び聴覚障害者に対する相談事業

(3)関係機関及び障害者団体と協力し、聴覚障害者の文化、学習、レクリエーション活動等の援助

第3節 保健・医療

(1)障害の発生予防

〈現状及び課題〉

 心身ともに健やかに充実した人生を過ごすためには、成人病を始めとする疾病の予防並びに後遺症による障害発生の予防対策を推進していく必要があります。特に障害が残りやすい脳卒中などは、壮年期から増加する傾向があるため、その予防に関する知識の普及や健康診査の受診率向上を図る必要があります。
 壮年期からの健康を確保するために、生涯を通じた健康教育、健康相談、健康診査などの事業の充実を図る必要があります。
 老人のねたきり状態を予防する施策をより効果的に展開するため「ねたきり予防推進本部」を設置し、「ねたきりにならない、させない」ための知識の普及、啓発活動や脳卒中や骨粗しょう症などの発生予防対策などを進めています。
 また、脳卒中になった人が退院後に適切な保健、医療、福祉サービスを受けることにより、ねたきりを防止する「脳卒中情報システム事業」など総合的対策を推進しています。

〈施策の方向〉

1 健康教育に関する事業や広報紙などを通じ、成人病の発生予防や早期発見、早期治療 の重要性について啓発活動を行うとともに正しい知識の普及を推進します。
 また、健康診査の結果等で生活習慣の改善が必要と認められる者に対する指導を推進します。

2 「ねたきりゼロへの10か条」を普及させ、ねたきりの原因となる脳卒中、骨折、骨粗しょう症などを予防するとともに、生涯を通じた健康管理、予防対策の充実を図ります。

3 高齢者のねたきり予防のため、いつまでも若さを保ち生きがいを持って暮らせる生きがい・健康づくり対策事業を推進します。

身体障害者手帳原因別交付状況 (平成6年4月1日現在)
区分交通事故産業事故その他の事故先天異常疾病分類不能
人数(人)1,8264,1114,3284,12447,4222,85264,663
比率(%)2.86.46.76.473.34.4100.00
(資料:障害福祉課)

(2)早期発見

〈現状及び課題〉

 障害の発生予防、早期発見・早期治療を行ううえで健康診査は重要であり、妊娠時における妊産婦健康診査、新生児期における先天性代謝異常等検査、乳幼児期における乳児健康診査、1歳6か月児健康診査、三歳児健康診査などの各種の母子健康診査を行っています。
 昭和59年度以降、母子健康診査については各種の新しい検査項目を導入し充実するとともに、健康診査の必要性を周知徹底してきたため、受診率は95%前後に向上しました。  今後も引き続き、母子保健についての普及啓発に努めるとともに、妊娠から出産、育児にわたる総合的施策を推進することが重要です。
 また、1歳6か月児健康診査や三歳児健康診査の結果、さらに精密健診が必要な乳幼児については、医療機関での精密健康診査及び児童相談所における精神発達精密検診などを実施するとともに、健診後も継続して指導を要する児童に対しては事後指導を実施しています。
 事後指導を継続する中で、言語などの問題から精神発達の遅れが発見される場合があり、早期発見・早期治療を進めるうえで大きな役割を果たしています。

各種検査受診率
-年度
検査名57
先天性代謝異常等検査98.2105.8105.3106.3105.8106.9
妊産婦健康診査85.399.995.290.888.297.3
乳児健康診査98.291.794.394.392.895.2
神経芽細胞腫検査-81.083.284.082.685.4
1歳6か月児健康診査93.395.195.495.495.795.2
1歳6か月児精密健康診査-100.0100.0100.0100.0100.0
三歳児健康診査89.992.993.895.194.394.4
三歳児精神発達精密検診98.1100.0100.0100.0100.0100.0
※先天性代謝異常等検査は、2,500g以下の未熟児の再検査を含む (資料:児童家庭課・健康増進課)

〈施策の方向〉

1 母子保健などに関する事業のうち、健康診査など住民に身近なサービスは、地域保健を総合的に推進するために、平成9年度から市町村に移譲されることになっており、その円滑な実施に向けて人材の確保・育成や市町村保健センターの整備を図ります。

2 障害乳幼児の療育について、早期発見・早期治療、個別及び集団訓練さらには保護者に対する指導、援助と一貫した支援体制の整備に努めます。
 また、保育所、児童相談所、保健所などが相互に連携し、事後指導の充実を図ります。

(3)医療の充実

1 医療施設体制の確保

〈現状及び課題〉

 事故や病気が発生した時に、いかに早く適切に対応するかが後遺症を残さないためにも重要です。全県民が安心して暮らせるよう、このような緊急時に速やかに対応できるように救急医療体制の体系的な整備を推進しています。心筋梗塞、脳卒中、頭部損傷などの重篤な救急患者の医療を確保する第三次救急医療体制として、平成6年10月現在救命救急 センターが4か所整備されていますが、県内を5か所に分けた二次医療圏ごとに設置することを目標にし、未整備医療圏の整備を促進していく必要があります。
 高齢化が進む中、リハビリテーションや看護・介護を中心とした医療ケアを行う老人保健施設の整備を進める必要もあります。
 昭和58年には休日歯科診療所に心身障害者歯科診療所を併設し、障害者も歯科治療が受けやすいよう努めていますが、一般の歯科診療所では障害者に対応できる施設が少なく増設を図っていく必要があります。
 また、平成6年10月より訪問看護制度の対象者に難病患者や重度障害者も含まれるようになり、住み慣れた地域で在宅医療を受けることが可能となりました。

☆第三次救急医療体制

 県内を岐阜、西濃、中濃、東濃、飛騨の5地域に分けた二次医 療圏ごとに救命救急センターを整備し、地域の救急医療の拠点づくり及び救急医療の水準の向上を図る体制

〈施策の方向〉

1 救命救急センターの未整備医療圏の整備促進を図るとともに、その機能の充実に努めます。

2 老人保健施設については、地域バランスを考慮しながら整備を促進します。

3 障害者に対応した歯科診療施設の増設及び適正配置に努めます。

4 訪問看護制度の周知を図るとともに、実施機関の拡大に努めます。

5 双方向テレビなどの活用による在宅医療システムを検討します。

2 医療関係者の確保

〈現状及び課題〉

 昭和57年度以降、県内には8か所(定員375人)の看護婦学校養成所が新設され、医療従事者の養成に努めてきましたが、依然不足状態が続いています。
 援護を要する障害者などが増加する中で、保健・医療に対するニーズは多様化しており、今後も在宅ケアの推進により、訪問看護など看護婦の働く場が拡大し、需要は増大していくと予想され、看護職員の養成確保が大きな課題となっています。
 看護職員の定着促進を図るため、職場環境の整備を推進し、働きやすく、やりがいの持てる職場づくりに努める必要があります。
 また、保健婦は、年々増加し、地域保健を担当する市町村保健婦は平成4年度末現在で305人となり、昭和57年当時に比べ115人増えています。
 しかし、最近の需要に対しては十分ではなく、特に地域保健法の制定により保健所及び市町村のそれぞれの役割を重視した新しい地域保健体系のもとで、保健婦は対人保健サービスの担い手として、今後ますますその需要が増大していくことが予測されます。

〈施策の方向〉

1 専門性を発揮できる看護業務の改善により働きやすい職場環境づくりに努め、看護職員の定着を図ります。
 また、ナースセンター事業の充実に努め、潜在看護職員の就業促進を図ります。

2 在宅ケアの推進により複雑・多様化するニーズに応えられる判断力と保健・医療・福祉の連携及び調整のとれる資質を備えた看護職員を養成するため、看護教育の充実に努めます。

3 看護職員の増員に努めるとともに、常に高度発展する保健・医療に対応できる資質を備えることができるように継続した卒後教育の充実を推進します。

医療従事者の推移状況

折れ線グラフ
*保健婦は、市町村保健婦のほかに医療機関従事者を含む (資料:医療課)

☆ナースセンター事業

1未就業看護職員の登録、就業に関する相談などを行うナース バンク事業
2訪問看護に関する研修、実施状況調査、相談などを行う訪問看護支援事業
3看護業務のPR、進路相談などを行う看護の心普及事業を中心とした事業

3 てんかん、難病等の対策

〈現状及び課題〉

 てんかんは、発作などを繰り返す慢性の脳疾患ですが、医療の進歩により相当治癒が可能な疾患となっています。しかし、多くの点で誤解され、社会的偏見が根強く存在してい ます。
 原因不明、治療方法が未確立な疾病、いわゆる難病の患者に対しては、「特定疾患治療研究事業」に基づき、医療費の公費負担を行っています。
 また、本人やその家族の精神的負担を少しでも軽くするために、岐阜県難病団体連絡協議会が年4回の「難病医療・福祉相談会」の開催及び電話による相談事業を行っています。
 小児慢性特定疾患は、治療が長期間におよび、放置すると児童の健全な育成を阻害することになります。そのため、特定の10疾患群について、医療の確立・普及を図るとともに、疾患児家族の医療費の負担を軽減するため医療費の公費負担を行っています。
 自閉症については、大脳の中枢機能の障害による疾患と考えられており、生活訓練や作業訓練などが行われています。自閉症に対する正しい認識が持たれていないことなど解決していかなければならない問題が数多くあります。

〈施策の方向〉

1 てんかんに関する相談事業の充実を図ります。

2 特定疾患・小児慢性特定疾患については、引き続き国の措置に基づいて医療費の公費負担を行うとともに関係団体における難病に関する相談事業の充実、訪問医療相談の実施を促進します。

3 自閉症に関する相談事業の充実を図ります。

特定疾患・小児慢性特定疾患
認定患者数の推移
年度572345
小児慢性8661,3861,7751,8481,9541,870
特定疾患1,1332,0032,2812,5882,7823,539
(資料:医療整備課、健康増進課)

(4)精神保健対策の推進

〈現状及び課題〉

 近年、精神障害者対策は、入院中心の治療体制から地域におけるケア体制へ大きく変わってきています。
 昭和57年当時3,868人であった入院患者が、平成5年には4,230人と362人増えていますが、そのうちの措置入院患者は、834人から235人へと激減しています。一方、通院医療公費負担を受けている人は、1,910人から3,973人と急増しています。
 こうした中、地域におけるケア体制は、保健所及び精神保健センターにおける精神保健相談業務の充実・強化のほか、全保健所での社会復帰相談指導の実施、精神保健センターでの密度の濃い集団指導の実施と社会適応訓練事業の充実も図られており、医療機関の一部では訪問診療が実施されています。
 また、福祉ホーム、グループホーム、小規模作業所などの社会復帰施設の整備を進めてきましたが、引き続き整備を促進するとともに、相談から社会復帰までの一貫したケア体制の確立が必要です。

〈施策の方向〉

1 精神障害者及びその介護者の身近な相談窓口として、精神保健の多様化に応じた専門性を有する機関として保健所及び精神保健センターの機能強化に努めるとともに、福祉事務所等関係機関との連携を強化します。

2 施設、病院及び地域との連携を図り、保健所及び精神保健センターの集団指導の充実・強化に努めるとともに、精神科デイケアの増加を図ります。
 また、精神障害者に対する保健福祉施策を進めるとともに、地域ケア体制づくりのため、各関係機関の連絡体制づくりを推進します。

3 現在実施している社会適応訓練事業の普及を推進し、関係部局が連携して精神障害者の就労促進に努めます。

4 精神障害者の個々の状態に応じた多様な社会復帰関係施設の新設・増設を促進します。

5 精神障害者に対する県民全体の理解を深め、社会復帰を促進するための啓発広報などの施策を推進します。

6 精神障害者の緊急時における医療と保護を確保するため、救急医療体制の整備を推進します。

第4節 教育・育成

(1)早期療育

〈現状及び課題〉

 心身に障害のある子供たちが健やかに成長するためには、障害を早期に発見し、早期に適切な療育を行うことが大切です。保育所などにおいては障害児保育を行っていますが、障害の重度化、重複化が進む中で、障害児の成長の各段階において、的確な対応を図るためには、指導方法についての研修を十分に行うこと、障害児の特性をよく理解すること、障害児の特性に合わせた環境づくりなどが大切です。
 地域に密着した早期療育の場として、市町村における心身障害児通園事業施設の整備を積極的に促進し、平成5年度末現在で県下では39か所となっています。
 今後は、心身障害児通園事業施設の整備をさらに促進するとともに、指導員の資質を高めていくことが必要です。
 また、障害のある児童を治療するとともに、独立自活に必要な知識、技能を習得させる施設である県立希望が丘学園については、入園希望者の減少、障害程度の重度化、重複化が進行しており、施設機能の見直しを求められていること、障害の早期発見に対応した早期療育体制の整備の必要性が高まったことなどから、平成6年度に「療育センター構想研究会」を設置し、当学園の機能の見直し及び療育センターの構想について研究をはじめました。

〈施策の方向〉

1 障害児教育・保育の実施市町村の拡大を図るとともに、障害児担当職員を対象にした 研修の充実に努めます。

2 心身障害児通園事業施設については、施設整備に対する県単独の助成制度の活用により整備を促進します。

3 県立希望が丘学園については「療育センター構想研究会」において機能の見直しを進め、県下の心身障害児通園事業施設と有機的な結合を図るとともに、指導員の資質向上についても研修、指導などを行えるような体制づくりを検討します。

4 精神薄弱児通園施設、肢体不自由児通園施設などについては、地域バランスを考慮しながら整備を促進します。

心身障害児通園事業施設

 児童福祉法に基づく精神薄弱児通園施設又は肢体不自由児通園施設を利用することが困難な地域の心身に障害のある主として未就学の児童に対し通園の方法により療育指導を行う施設

(2)障害児の就学相談・指導の充実

〈現状及び課題〉

 現在、心身障害児の就学指導を適正かつ円滑に推進するために、県下6地区20会場に県心身障害児就学指導相談員を派遣して、障害のある就学前児の保護者を対象に、相談活動を実施しています。
 今後、相談者のニーズに合わせて事業内容を充実するとともに、医療、福祉等関係機関との連携を図り、早期からの治療、教育体制を一層整える必要があります。
 また、各種相談事業を知らないでいるために、早期からの指導、訓練を受けることにより、家庭におけるよりよい教育の可能性を逃してしまっている場合が少なくありません。すべての障害児の教育のために各種事業の周知を図ることが必要です。
 特殊教育に対する保護者の理解が進み、心身障害児の全員就学も達成でき、通級による指導の充実を図るなど、障害の種類や程度に応じた適正な就学指導を一層推進していく必要があります。

☆通級による指導

 小・中学校の通常の学級に在籍している心身に軽度の 障害がある児童生徒に対して、各教科等の指導は通常の学級で行いつつ、心身の障害に応じた特別の指導を特別 の場で行う、という新しい特殊教育の形態

〈施策の方向〉

1 障害児に対し適切な就学指導を行うため、医療関係機関、福祉関係機関との連携を図ります。
 また、広報などの充実により事業の周知に努めます。

2 市町村の適正就学指導委員会については、学識経験者、福祉関係者、医療関係者などの専門調査員の充実に努めます。
 また、巡回就学相談事業についても相談者のニーズに合わせて事業の充実を推進します。

(3)障害児教育の充実

〈現状及び課題〉

 心身に障害がある児童生徒については、その障害に応じて環境を整え適切な教育を行うことが必要です。
 これまで、特殊教育諸学校については学級編制基準の改善、高等部重複障害学級の設置など教育体制の充実を図り、個に応じた指導が一層可能となってきました。教育内容の充実に伴い、中学校特殊学級からの進学率が向上し、盲・聾・養護学校高等部における教育の重要性がますます高くなってきています。
 児童生徒の障害の重度化・重複化、多様化が進む中で、社会参加と自立を促進するためには、特殊教育諸学校において、障害者団体等関係団体との連携及び他県の成功事例などを参考にしながら実施している現場実習受入事業所や障害者授産施設などの見学会を充実するとともに、幅広い知識を持った職員の養成に努めながら、職場体験イキイキ学習推進事業を進めています。
 また、特殊教育諸学校においては、「地域理解推進校の指定」、「ほほえみ交流教育推進事業」の実施により近隣の小・中学校等との交流を行い、障害児の社会性の育成、障害児及び障害児教育に対する理解推進に努めてきました。今後は、児童生徒が卒業し、出身地域に帰ったときに自然に溶け込んでいくことができるように配慮していく必要があります。
 また、特殊教育諸学校の児童生徒がよりよい環境の中で学ぶことができるよう身障者用トイレ、自動ドア、スロープの設置など施設・設備の充実に努めています。
 一般の小・中学校における身障者用トイレなどの設置については、各施設整備指針に基づき、市町村を指導しています。また、高校においても施設整備指針に基づき整備を図っていますが、新築あるいは大規模改造時に限られているため、未整備施設が多数あり、今後一層の推進が必要です。

〈施策の方向〉

1 児童生徒の障害の状態に応じた教育課程の編成を行うとともに、指導方法や指導体制の充実、職員の資質の向上に努めます。

2 生徒の卒業後の生活を見通した職業教育を充実するため、施設・設備整備の一層の推進を図ります。
 また、高等部重複障害学級の整備拡充と指導の充実に努めます。

3 「心身障害児交流活動地域推進」の指定校研究の継続と「ほほえみ交流教育推進事業」により、小・中・高等学校や地域社会との交流推進に努めるとともに、児童生徒の出身地域との交流を積極的に推進し、より広い社会の中で、より多くの人と交流できるよう 努めます。

4 引き続き特殊教育諸学校の整備を進めるとともに、一般の学校における障害者に配慮した整備も検討します。

5 県立岐阜盲学校等の改築について検討します。

(4)生涯学習の充実

〈現状及び課題〉

 障害者が充実した生きがいのある人生を送れるよう、生涯にわたって楽しく学び続けることが求められています。そのためには、障害者に対応した学習機会の拡大、指導者の養成・確保、生涯学習関連施設の整備・充実を図ることが必要です。
 障害者が障害を持たない人と平等な立場で地域活動に参加しふれあいを深めていくことができる地域づくりを促進するため、生涯学習のまちづくり推進事業などを推進し、市町村の公民館などで行う社会教育活動の中での交流を活発化し、障害者問題に関する学習を促進するように指導・助言に努めています。

〈施策の方向〉

1 障害者の多様な学習ニーズに応えられる生涯学習の推進体制の充実や、指導者の養成、確保に努めます。

2 障害者のライフステージに応じた学習機会の充実のため、県民文化講座の開設、ほほえみライフ県民フォーラムの開催など各種事業を引き続き推進します。
 また、高度な学習機会を提供するため、放送大学地域学習センターの充実を図るとともに、引き続き身体障害者の入学料・授業料の助成を行います。

3 障害者の利用可能な施設情報など、各種情報のデータベース化とネットワーク化など生涯学習情報提供システムの整備を行うとともに、生涯学習相談員による学習相談の充実を促進します。

4 岐阜県生涯学習センターの事業内容の充実や新県立図書館における障害者に配慮した整備を推進します。
 また、市町村の公民館、図書館、青年の家などにおける障害者に配慮した整備を促進します。

第5節 福祉

(1)相談機能の充実

〈現状及び課題〉

 障害者やその介護者が気軽に相談することができ適切な助言が受けられように、身体障害者相談員(367人)、精神薄弱者相談員(90人)を県内に設置しています。
 また、身体障害者更生相談所などの巡回訪問相談実施や社会福祉施設への相談窓口を設置していますが、失語症などの言語機能障害者の増加などにより相談内容が幅広くなっているため、適切な対応ができるように体制を充実していく必要があります。
 社会福祉施設の相談窓口については、相談件数が1,000件を越えるようになり、ニーズの高さがうかがえます。このため相談、指導をより密にかつ継続的に行うために、特定の社会福祉施設に専門の職員(コーディネーター)をおき、地域の在宅心身障害児(者)の療育にあたる地域療育拠点事業(平成2年度~)を開始し、効果をあげつつあります。
 障害の程度は、個人個人さまざまであり、また家庭環境により問題も異なっています。 各種相談に細かく対応するためには、相談を受ける職員がその知識を深めることが大切です。
 また、自閉症などの相談については、その相談内容が幅広くかつ複雑であるために十分に対応し切れていない部分もあります。医療機関との連携を密にするなど相談者のニーズに応えられように努める必要があります。

〈施策の方向〉

1 身体障害者相談員、精神薄弱者相談員の各研修会の内容の充実を図り、資質の向上に努めます。

2 地域療育拠点事業については、現在の2か所から将来的には5か所に設置することを目標に事業を推進します。また、制度の周知を図り、在宅精神薄弱者対策としての相談事業の充実に努めます。

3 身体障害者更生相談所及び精神薄弱者更生相談所などにおける相談事業の充実に努めるとともに、障害者団体に対する相談事業の委託などを検討します。

4 自閉症並びに難病により身体又は精神上の障害を有する人について、医療分野にも関連する相談内容に対処していけるように保健医療機関との連携を図りながら、福祉部門においてもより的確な対応ができるよう努めます。

(2)生活の安定

〈現状及び課題〉

 障害者が自立した社会生活を営むうえで重要なものとして所得保障があげられます。
 「視・聴覚障害者福祉に関する基礎調査」、「身体障害者(児)実態調査」及び「精神薄弱者意識調査」から不就労の理由をみると身体障害者、精神薄弱者ともに「重度障害のため」と「病気のため」が上位となっています。障害の程度が重いために就労できない人、介護のために就労を制限される介護者などが多数いる中で、このような人達に対し所得を保障し、経済的自立を支援していくのが各種年金・手当制度です。
 また、障害者の保護者が死亡した場合などの生活の安定を図るための互助制度として心身障害者扶養共済制度があります。
 各種公費負担医療制度も障害者及びその家族にとって負担軽減の大きな役割を果たしています。
 今後の福祉施策に望むことについて身体障害者、精神薄弱者ともに「生活の安定」が1位となっており、各種制度の周知徹底を図るとともに、障害者の要望を踏まえ国に対し働きかけを行っていく必要があります。

〈施策の方向〉

1 障害者を持つ家庭の相互扶助を目的とした心身障害者扶養共済制度について、内容の充実が図られるよう国に対し働きかけを行っていきます。

2 重度心身障害者等に対する県単福祉医療費助成制度を引き続き推進します。

3 障害者に対する税の減免、割引運賃などの経済的負担の軽減措置についての周知を図り、障害者及びその介護者がこれらの各種制度を有効に活用できるように努めます。

(3)在宅福祉の充実

〈現状及び課題〉

 障害者が住み慣れた地域や家庭の中で安心して生活し、積極的に社会参加するためには、在宅福祉サービスを充実させることが重要です。
 ホームヘルパーの派遣については、老人福祉事業との一体的効率的運営の中で行っていますが、派遣件数は年々増加傾向にあり、今後よりきめ細かな対応をするために、ヘルパーの増員、資質の向上を図る必要があります。
 また、視覚障害者や脳性まひなどの全身性障害者が外出する際に援助するガイドヘルパーは、社会参加に対する意識の高まりにより、今後ニーズが高まることが予想されます。
 身体障害者のデイサービス及びショートステイについては、国庫補助制度とあわせて県単独制度の活用並びに各種福祉センターなどの有効活用により実施市町村の拡大に努めていますが、各市町村において均衡の取れた施策の充実を図る必要があります。
 身体障害者用のショートステイ専用居室が非常に少ないので、施設整備にあわせて設置を図る必要があります。
 障害者の過半数が高齢者であることから、老人福祉事業との連携を図りながら事業を推進する必要があります。

〈施策の方向〉

1 ホームヘルパーの派遣については、老人福祉事業との連携を図るとともに、ヘルパーの増員、資質の向上に努めます。

2 身体障害者の外出の付き添いをするガイドヘルパーについては、実施市町村の拡大を図るとともに、ネットワーク事業について検討します。

3 デイサービスについては、市町村におけるデイサービスセンターの整備を促進するとともに、県単独制度の積極的活用、各種福祉センターなど他施設の有効利用により、実施市町村の拡大を図ります。

4 ショートステイについては、入所施設の整備とあわせて専用居室の設置を促進し事業拡大に努めます。

(4)施設福祉の充実

1 身体障害者に関する施設

〈現状及び課題〉

 近年、障害者及びその介護者には在宅志向が強くなっていますが、一方、家庭では十分な介護を得ることができない重度の障害を持つ人もいます。
 県内には、重度障害者のための施設として身体障害者療護施設、重度身体障害者授産施設があわせて4施設ありますが、その他の更生施設、授産施設においても重度又は重複障害者の入所が増えています。
 障害者のニーズに対応し、必要な時に希望する施設を利用することができるように施設を整備していく必要があります。
 また、既存施設における入所者のプライバシーの確保、処遇の向上に努める必要があります。

〈施策の方向〉

1 障害の重度化、障害者のニーズ、地域バランスなどを考慮しながら、西濃地域及び飛騨地域に身体障害者療護施設の整備を検討します。

2 障害者総合リハビリテーションセンター「りはとぴあ(仮称)」の構想の一環として、既存身体障害者更生援護施設の機能の見直しを検討します。

3 既存施設における入所者の処遇向上に努めます。

4 身体障害者療護施設の整備に向けて、内部障害者に配慮した施設のあり方を研究します。

5 視覚障害を持った高齢者に配慮した施設について研究します。

2 精神薄弱者に関する施設

〈現状及び課題〉

 本県における精神薄弱者援護施設に対するニーズは、在宅障害者の重度化・重複化や障害者及びその介護者の高齢化から、非常に高くなっています。このため、新たな施設整備を必要とするとともに、既存施設においては重度及び重複障害者や高齢者の増加に伴う対応とともに、新たに、自閉症・強度行障害などの症状に対応した専門性の高い処遇などが課題となっています。
 一方、施設での更生訓練を経て就労・自活しようとする障害者に対して、精神薄弱者通勤寮及び精神薄弱者福祉ホームなどを利用した自立支援を引き続き実施する必要があります。

〈施策の方向〉

1 精神薄弱者援護施設については地域バランスや高齢障害者及び自閉症者などの専門性を要する障害者に配慮しながら、整備の促進を図ります。

2 自活訓練施設の設置を促進し、自活に向けての取り組みを推進します。

3 心身障害児に関する施設

〈現状及び課題〉

 精神薄弱児施設などの児童福祉施設については養護学校の義務教育化及び保護者が在宅療育を選択する傾向の増加などから施設入所に対するニーズは減少傾向にあります。しかし、精神薄弱児施設では定員の約半数が年齢の特例措置により継続入所している18歳以上の者に占められていることから、本来の児童福祉施設としての機能が発揮し難い、新たな入所希望児が入所できないなどの問題が生じてきています。

〈施策の方向〉

1 精神薄弱者援護施設の整備を促進し、18歳以上の特例措置者の解消を図ります。

2 自閉症児など専門性を要する障害児の対策についても検討します。

(5)福祉機器等の充実

〈現状及び課題〉

 福祉機器は、障害者の日常生活能力を向上させるとともに介護者の負担を軽減する役割を果たしています。
 特に、近年におけるニューメディア及びハイテクノロジーの進展は、福祉・医療機器の開発分野においても著しいものがあり、これらの先端的福祉機器の積極的な活用を図る必要があります。このため、県では従来からの日常生活用具・補装具の給付事業に加えて、平成元年度より「ニュー福祉メディア活用事業」を実施し、先端福祉機器の施設への貸与及び譲渡を行うとともに、「ニュー福祉メディア研究会」を設置し、先端福祉機器の選定、利用効果調査及び新規開発需要調査を行っています。
 また、在宅の身体障害者が、その自立に資する目的で先進的な福祉機器を購入する場合に費用の一部助成を行う「ニュー福祉機器助成事業」を実施し、身体障害者の社会参加と自立の促進を図っています。
 県では、給付のみならず、工芸試験場において県内家具メーカー、大学と共同して福祉機器として使用することができる新しいコンセプトの椅子の研究開発を推進しています。

〈施策の方向〉

1 障害者が先端技術の利便性を享受できるよう福祉機器の給付・貸与制度などの充実を図ります。

2 ニュー福祉機器助成事業の対象品目について、障害者のニーズの把握に努め、より適切な品目の選定に努めるとともに、市町村に制度の周知を図り、利用促進に努めます。

3 福祉機器は、多品種少量生産であることから民間企業での開発は困難な面があるため、公的研究機関において障害者の意見をふまえた開発支援に努めます。

4 車椅子など各種補装具のフィッティング・シミュレーションや車いす操作訓練などのためバーチャル・リアリティー技術の活用を検討します。

第6節 リハビリテーション

(1)リハビリテーション体制の充実

1 医学的リハビリテーション

〈現状及び課題〉

 リハビリテーションは、健康づくり、疾病の予防、治療に継続し社会復帰へとつなげるうえで重要な役割を占めています。従来は交通事故、労働災害などによる肢体の障害者がリハビリテーション医療の中心でしたが、高齢化、生活様式の変化などによる脳卒中の増加等疾病構造の変化により、その需要は増大しており、今後もこの傾向はますます強くなると思われます。
 県内には、平成5年4月現在、理学療法に関する病院47か所、診療所2か所、作業療法に関する病院が11か所あります。
 また、リハビリ専門医師の研修施設として、県立希望が丘学園、県立下呂温泉病院が日本リハビリテーション医学会から認定を受けています。
 医学的リハビリテーションは、体系的に「急性期リハビリテーション」、「回復期リハビリテーション」、「維持期リハビリテーション」に区分されますが、これらの供給体制が十分整備されているといえず、特に急性期のリハビリテーション医療体制の遅れが目立っています。
 今後障害者の疾患別に対象者の把握を十分に行い、量的・質的な整備を地域配置を考慮しつつ体系的に行っていく必要があります。

リハビリテーション医療従事者(病院勤務者) 平成4年10月現在
-理学療法士作業療法士
岐阜70人17人
西濃191
中濃20-
東濃304
飛騨244
16326
(資料:医務課)

〈施策の方向〉

1 急性期リハビリテーションについては、原疾患の発生後、症状に応じて、できるだけ早い時期から集中的に行うことができる医療施設の整備と充実を推進します。

2 回復期リハビリテーションについては、病院におけるリハビリテーション施設・設備などを整備し、理学療法・作業療法の施設基準承認施設の拡充を推進します。施設整備にあたっては、県内を5箇所に分けた二次医療圏単位で計画的に整備を図ります。
 また、県立下呂温泉病院のリハビリテーション機能の充実、強化を図るとともに、高度かつ専門的なリハビリテーション機能や研修、研究機能を有する専門施設の確保を検討します。

3 維持期リハビリテーションについては、医療機関や老人保健施設におけるデイケア施設・設備の拡充並びに市町村保健センターなどにおける機能訓練の拡充を図り、障害を持ちながらの新しい生活への適応などを支援していきます。

4 理学療法士、作業療法士、言語療法士などのリハビリテーション医療従事者の確保のため、専門リハビリテーション医療施設などの研修機能の充実と研修のシステム化を図ります。

2 職業的リハビリテーション

〈現状及び課題〉

 障害者の職業的自立を促進するため、岐阜障害者職業センターにおいて、「職業準備訓練」、「職業講習」、「職域開発援助事業」などの各種事業を行っています。
 しかし、重度身体障害者、精神薄弱者及び精神障害回復者の中には、働くことを希望しながらも就職できない人達が多数いるのが実情です。そのような人達に対処するために、きめ細かな職業リハビリテーションを実施し、通勤・住宅などを含め職業生活に関する環境の整備を図る必要があります。

〈施策の方向〉

1 岐阜障害者職業センターの行う各種事業を支援し、障害者の職域開発と職業的自立に努めます。

○障害者の能力・適性に合わせ就業できるシステムづくりの推進

○就職難度の高い障害者に対し、あらかじめ採用が見込まれる企業において、作業及び環境に慣れるようきめ細かな訓練の実施

○障害者の職業能力、適性などの評価及び必要な職業リハビリテーション計画の策定を行うとともに、医学アドバイザーとの連携を強化し、障害者に対する専門的・総合的な職業評価及び職業指導の実施

2 地域における重度障害者の職業的自立支援体制を整備するため、障害者雇用支援センターの設置を促進します。

☆障害者雇用支援センター

 就職の特に困難な障害者の職業的自立を図るため、雇用部門と福祉部門の連携を図りながら個々の障害者の特性に応じて職業準備訓練から就職後の指導に至るまでの一貫した支援 を行う公益法人

3 総合的なリハビリテーション

〈現状及び課題〉

 障害の重度化等の進展に対応し、障害者の自立と社会復帰に向けた有効な支援として、リハビリテーションは極めて重要です。
 各地の身体障害者福祉センターなどにおいて個々に機能回復訓練等を行っていますが、医療をはじめ社会、職業の各分野が緊密な連携のもとに行われる総合的かつ県域的なリハビリ提供システムを構築することが重要であり、このシステムを円滑に推進する中核機関としての機能をもった「総合センター」と、このセンターと連携しながら身近なところでリハビリを行う「地域ブランチ」を整備する必要があります。

〈施策の方向〉

1 県立下呂温泉病院との一体的連携のもとに、一貫性のあるリハビリ提供体制を確立するため、県域全体の中核施設として、障害者総合リハビリテーションセンター「りはとぴあ(仮称)」の整備を推進します。

○基本コンセプト
 センター全体を本県における障害者福祉のテーマパークに位置付け、障害を持つ者と持たぬ者との交流・連帯を促進し、明日への活力を育み、自立と社会復帰を支援する県域全体の基幹施設とする。

○想定されるセンター機能
 総合相談・判定機能、医学的(維持期)リハビリ機能、社会的リハビリ機能、職業的リハビリ機能、研修・地域指導機能、交流・保養機能

○整備の位置付け
 南飛騨国際健康保養地構想の一環として整備

2 地域ブランチ(相談、機能回復訓練等デイサービス機能を有した施設)として、廃棄物処理施設「地球環境村」におけるリハビリ関連施設の複合的整備や既存のリハビリ関連施設の活用等により県域的な整備を促進します。

3 障害者総合リハビリテーションセンター「りはとぴあ(仮称)」に付設する「情報センター」と地域ブランチ等とのオンラインシステム構築の検討を進め、リハビリ関連情報のネットワーク化を図ります。

第7節 雇用・就業

(1)雇用の促進

〈現状及び課題〉

 障害者がその適性と能力に応じて可能な限り一般企業で就業するためには、求人求職に関する情報提供が重要です。
 民間企業の法定雇用率1.6%に対し、県内雇用率は1.78%と比較的高くなっていますが、障害者雇用率未達成企業がまだ3分の1程度あります。このような企業に対して、個別指導などを行い雇用促進に努めています。
 また、「障害者雇用促進月間(9月)」の期間中、県内各地での街頭キャンペーン、就職者の定着指導の実施、求人開拓の実施など様々な事業を実施しています。
 今後、障害者の雇用促進については、障害者が障害を持たない人とともに働き、生きがいを持って暮らせる社会の実現を図るため、各企業に理解を求める必要があります。
 平成6年4月1日から地方公共団体と民間企業の出資で第3セクター方式による重度障害者多数雇用企業(株)サン・シング東海が全国で22番目に操業開始しました。

〈施策の方向〉

1 「障害者の雇用の促進等に関する法律」に定める法定雇用率の未達成企業に対して、雇用の促進を図るための指導を強化し、障害者の雇用促進に努めます。

2 総合的雇用情報システム等を有効に活用し、労働力の需給構造の変化に対応した情報の収集や提供を行い、職域開発・拡大を図ります。

3 企業の理解・協力を求めながら、重度障害者の在宅勤務、内部障害者のフレックスタイム制度の導入促進に努めます。

4 障害者の就業への努力を援助するため関係機関との連携のもと、就業に必要な知識や就業後の職場適応などに関する相談・指導業務の充実を図ります。

5 新たな重度障害者多数雇用企業設立に向けて、企業の理解協力が得られるよう努めます。

障害者雇用の状況
年度区分
企業数雇用状況

雇用率未達成企業の割合

算定の基礎となる労働者数

障害者数

実雇用率

平成3年度858166,9633,0311.8233.7
平成4年度886171,1123,1071.8233.2
平成5年度887173,2483,1341.8136.2
平成6年度898172,4403,0701.7839.9
(各年度6月1日現在 資料:職業安定課)

(2)福祉的就労の場の整備

〈現状及び課題〉

 一般雇用が困難な障害者も何らかの形で社会とのかかわりを持つことは非常に重要であり、一般雇用に代わる授産施設や小規模授産所などの福祉的就労の場を整備していくことが必要です。
 昭和57年以降福祉的ニーズの高まりから精神薄弱者授産施設(3→8施設)、心身障害者小規模授産施設(18→43施設)が着実に整備されてきました。
 このようにして、施設数は伸びてきましたが、なお、就労していない在宅の心身障害者は相当数にのぼることから、就労の場としての授産施設が不足の状態です。
 精神薄弱者授産施設、心身障害者小規模授産所の入所・通所者の中には作業困難な者も多いため、授産科目の選択も難しく、自活を支える賃金までになりえていない状況であり、授産科目や授産製品の販路などについて課題を残しています。
 また、現在の身体障害者授産施設においては、施設の老朽化などの課題をかかえ、今後整備のあり方を検討する必要があります。
 平成5年度から転作田を活用して「転作田ふれあい福祉農園設置事業」を県下5施設で行っており、また、平成6年度から奥美濃古地鶏のひなを飼養し、出荷する事業を施設において行っています。
 今後も引き続き施設整備の促進を図るとともに、先駆的な事業に取り組み授産科目の拡大、収入の安定を促進していく必要があります。

〈施策の方向〉

1 心身障害者小規模授産所については、県単施設整備費助成制度を活用して整備を促進するとともに、利用者の処遇改善のための県単運営費助成の充実及び作業内容、作業環境などの向上に努めます。

2 授産製品の紹介や販路開拓などに向けて「授産事業振興センター」の設立を図るとともに、授産製品を取り扱う協力店の拡大を図り、授産事業の振興を促進します。

3 身体障害者授産施設の授産科目の内容の充実を図るとともに、施設機能について検討します。

4 「転作田ふれあい福祉農園事業」や「奥美濃古地鶏の飼養」などの先駆的事業の取り組みにより、授産科目の拡大に努めます。

心身障害者小規模授産所の状況
年度57
施設数183235363743
利用者身体障害者65110128129127137
精神薄弱者104278297307272321
169388425436399458
(各年度3月1日現在 57年度のみ2月1日現在 資料:障害福祉課)

第8節 スポーツ、レクリエーション及び文化

(1)スポーツ、レクリエーション活動の推進

〈現状及び課題〉

 障害者にとってのスポーツには、健康増進のみならず、希望を持って明るく生き、社会参加を促進していくという重要な役割があります。
 岐阜県では、「スポーツ王国・ぎふ」づくりを目指して、幼児から大人まで高齢者や障害者も含めた誰もが気軽に生涯を通じて実践できるようにすることを目標とした「県民1スポーツ運動」を実施しています。
 障害者の社会参加の一環として、障害者のためのスポーツ大会、スポーツ教室、日曜教室など各種行事を行っています。さまざまな障害をもった人々が、これらの行事に参加し、互いに交流を深めるとともに、スポーツをする楽しさ、大会に参加する喜び、記録を更新する喜びを分かちあっています。障害者のスポーツ活動の一層の推進を図るには、クラブやサークルの育成などにより継続した活動を行える環境づくりが大切です。
 誰もが手軽にスポーツに親しめる環境をつくるためには、身近な所に施設を整備するとともに、障害者を含め全ての人々が利用しやすいように細かな配慮をしていく必要があります。
 また、それぞれの地域においてだれもが参加できるようなスポーツやレクリエーションの導入を図るとともに、情報の提供が必要です。

〈施策の方向〉

1 だれもが地域でスポーツに親しめる環境を創造するために、各市町村においてコミュニティスポーツ施設の量的・質的充実が図れるように助言指導に努めます。

2 公共スポーツ施設における障害者用施設・設備の整備について、より一層の推進を図ります。

3 福祉友愛プールの移転整備の検討を進めます。

4 県身体障害者福祉協会が委嘱している県身体障害者体育指導員の資質の向上を図るため、市町村の体育指導委員などとの連携を図ります。

5 障害者スポーツ団体の育成・支援を図るとともに、その拠点となる県レベルの障害者スポーツ協会の設置を検討します。

6 障害者に対して、スポーツ施設、指導者及びスポーツプログラム等のスポーツに関する総合的な情報提供の推進に努めます。

7 引き続き全国身体障害者スポーツ大会及び全国精神薄弱者スポーツ大会(ゆうあいピック)に選手を派遣します。

8 西暦2,000年に全国精神薄弱者スポーツ大会(ゆうあいピック)を岐阜県で開催できるよう誘致に努めます。

(2)文化活動の推進

〈現状及び課題〉

 障害者にとっての文化活動は、単に趣味として生活にうるおいを持たせるということだけでなく、自己の存在を社会にアピールするための有効な手段ともなっています。
 県では、障害者の手芸、絵画などの発表の場として、毎年9月「ふれあい福祉フェア」を開催していますが、今後一層文化活動への参加の機会が充実されるように努める必要があります。
 また、作品を鑑賞したり、音楽を聞いたりして芸術・文化に触れるという楽しみ方もあります。障害者が気軽に芸術・文化を楽しむことができるように文化施設については十分に障害者への配慮をする必要があります。
 県立博物館では、視覚障害者を対象にした触察コーナーを設け、できる限り多くの人に楽しんでもらえるよう工夫しています。
 また、各社会福祉施設において芸術・文化活動を促進し、入所・通所者の活動意欲を高めることも必要です。

〈施策の方向〉

1 「才能に障害なし」を基本コンセプトに、障害者が自ら作成した絵画等作品を社会的に活用する仲介機関「(仮)障害者アートバンク」を設置し、芸術活動への参加の機会の充実を図り、生きがいと自立を促進します。
 また、企業などへの情報提供として双方向テレビ、ハイビジョンなどのマルチメディアの活用を検討します。

2 県立の文化施設の整備については、障害者が利用しやすいように配慮するとともに、市町村などが設置する文化施設の整備にあたっても同様に配慮されるよう指導します。
 また、遠隔地や移動が困難な障害者などのためにマルチメディアを活用した芸術文化鑑賞の方法を検討します。

3 障害者の社会参加の促進及び文化施設の利用促進を図るため、文化施設における障害者用施設・設備の整備状況及び各種文化活動などについての情報提供に努めます。

第9節 国際交流

(1)国際交流活動の推進

〈現状及び課題〉

 急速に国際化が進展するなか、平成4年で終了した「国連・障害者の10年」に続き平成5年から「アジア太平洋障害者の10年」が始まり、加盟各国において障害者対策を推進するように要請されています。
 このような状況の中で岐阜県では、平成3年度より障害者福祉向上の一助として、また、将来の地域リーダーの養成の意味をこめて、障害者を欧米先進諸国に派遣し、その国の施策や施設を視察・調査するとともに障害者団体との交流や一般市民とのふれあうことを目的として「友愛の翼派遣事業」を実施しています。
 また、社会福祉施設職員を海外に派遣する事業を実施し、海外の福祉事情や施設における処遇の状況等を調査し、本県の福祉の向上に努めています。

〈施策の方向〉

1 友愛の翼派遣事業及び福祉施設職員派遣事業を今後も推進します。

2 福祉の分野における民間レベルでの交流活動に対する支援を検討していきます。

主題:
岐阜県障害者基本計画 No.1 1頁~60頁

発行者:
岐阜県民生部障害福祉課

発行年月:
平成7年3月

文献に関する問い合わせ先:
〒500 岐阜市藪田南2-1-1
岐阜県民生部障害福祉課
TEL (058)272-1111