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あいち8か年福祉戦略

No.4

愛フルプラン

平成5年7月

愛知県

第5章 高齢障害者への援護

1 現状と課題

現状

  •  身体障害者の約5割が65歳以上の高齢者であり、とくにこの時期の特徴としては、脳卒中等の後遺症による障害の発生も多く、障害者自身や介護者の高齢化が問題となっています。
  •  高齢障害者の問題は、一般の高齢者対策を推進することによって解決できる問題が多くあり、家庭奉仕員(ホームヘルパー)派遣事業、デイサービス事業については、身体障害者と高齢者の施策間の相互利用が可能となっています。
  •  しかし、視覚障害者、聴覚障害者、精神薄弱者など、個々の障害に応じた高齢化への対応も検討をしなければならない時期にきています。  
    18歳以上の身体障害者及び精神薄弱者の年齢別状況
    年齢別身体障害者精神薄弱者
    人員構成比人員構成比
    18~19歳千人 16% 0.6千人 16% 9.5
    20~29歳712.75231.0
    30~39歳1365.13822.6
    40~49歳26610.03118.5
    50~59歳46717.51911.3
    60~64歳37714.2127.1
    65~69歳41215.4
    70歳以上91834.5
    合計2,663100.0168100.0
    注) 身体障害者は、平成3年11月の「全国身体障害者実態調査結果」、精神薄弱者は、平成2年9月の「全国精神薄弱児(者)福祉対策基礎調査結果」に基づく数値である。 (資料)県民生部調べ

課題

  •  今後は、一層高齢者対策との連携に努め、家庭奉仕員(ホームヘルパー)派遣事業、デイサービス事業と同様に施策の相互利用、社会資源の有効活用に努める必要があります。
  •  精神薄弱者更生施設の入所者の高齢化に対応するため、設備整備及び運営面についての検討を行う必要があります。
  •  障害種別に応じた高齢化への取組を検討する必要があります。

2 今後の目標

  •  高齢者施策との相互利用に関しては、家庭奉仕員(ホームヘルパー)派遣事業とデイサービス事業で既に実施されていますが、在宅サービスを中心として、今後とも積極的に身体障害者と高齢者施策間の相互利用を推進していきます。
  •  精神薄弱者更生施設の入所者の高齢化に対応するため、また、在宅での生活が困難になった高齢精神薄弱者の生活の場を確保するため、精神薄弱者更生施設に高齢者棟を整備するなど、設備整備面での対応を強化するとともに、施設運営における問題についても検討していきます。
  •  障害種別に応じた高齢化についての問題点・課題を実態調査等により把握・整理し、高齢障害者のための施策について調査・研究を行います。

第7部 子どもと子育てにやさしい社会をめざして

第1章 児童の健全育成

  1. 施設の充実
  2. 健全育成事業

第2章 子育てへの支援

  1. 女性の就労と子育ての両立支援
  2. 経済支援の拡充
  3. 子育て相談システム
  4. 母子保健対策の充実

第3章 保護を必要とする児童への措置

  1. 児童入所施設
  2. 相談指導体制の充実

【児童の健全育成】

 県の出生数の動向をみると、昭和50年には約11万人であったものが、平成4年には約7万人となり、この15年程の間に約4万人減少しています。
 また、一人の女性が一生の間に生む子どもの数を表した合計特殊出生率については、これまで全国平均を若干上回って推移していたものが、3年からは、全国平均とほぼ同じ数値となり、近年の少子化傾向が顕著に進行しているといえます。

県の人口動態の推移

区分 出生数
(人)
普通出生率
(人口千対)
乳児死亡率
(出産千対)
婚姻率
(人口千対)
離婚率
(人口千対)
合計特殊出生率
愛知 全国
昭和25年 87,860 25.9 59.3 8.2 0.90 3.27 3.65
昭和30年 65,322 17.3 39.8 8.2 0.73 2.00 2.37
昭和35年 73,237 17.4 30.7 9.9 0.63 1.90 2.00
昭和40年 101,924 21.2 16.0 10.9 0.69 2.23 2.14
昭和45年 116,271 21.8 12.2 11.6 0.81 2.19 2.13
昭和50年 111,528 19.0 9.2 8.9 0.92 2.02 1.91
昭和55年 87,697 14.2 7.0 6.9 1.06 1.81 1.75
昭和60年 80,186 12.5 5.4 6.4 1.21 1.82 1.76
平成2年 70,942 10.7 4.3 6.3 1.21 1.57 1.54
平成3年 70,960 10.7 4.5 6.6 1.25 1.52 1.53
平成4年 71,688 10.7 4.2 6.7 1.31 1.50 1.50

(資料)愛知県衛生年報(名古屋市を含む)
 平成4年は、平成5年6月発表厚生省人口動態統計(概数)による。
 

 そのほか、子どもを取り巻く社会環境の変化としては、都市化の進行やモータリゼーションの発達などによる戸外の遊び空間の減少、少子化や地域の人々の連帯感が薄れてきていることによる遊び仲間の減少、学習塾や習い事に時間を費やすことによる自由な遊び時間の減少などが指摘されています。
 そして、このような子どもにとっての「遊びの3間」と呼ばれる「空間」、「仲間」、「時間」の減少は、子どもの遊びを「室内」、「少人数」、「受動的」なものへと変化させ、結果として子どもの「自発性」、「主体性」、「おもいやり」、「創造力」などをそこなう恐れがあるといわれています。
 「遊びは子どものごはんです」という言葉があるように、子どもにとってバランスのとれた遊びが発達に沿って、のびのびと思う存分できるような環境整備を図っていくことは社会の変化に自発的・主体的に対応でき、心豊かな思いやりのある子どもを育てるうえで、最も重要な課題であると思われます。
 そのために、各種健全育成施設の整備や健全育成事業の積極的な実施は非常に大切なものであると考えられます。

【子育てへの支援】

 経済発展の中での労働力不足や女性の高学歴化が進む中で、パート労働をはじめとした女性の職場進出は年々増加しており、労働力人口に占める女子の割合は40%を越えています。これは、共働き家庭の増加を示しており、仕事と家事・育児の両立を必要とする人たちが増加しているといえます。それゆえ、男女で共に担う家庭づくりについての意識啓発や働く女性の多様なニーズに対応していくための体制の整備を積極的に実施していく必要があります。

県の女子労働力人口等

区分 15歳以上人口 労働力人口 労働力率 労働力人口に占める女子の割合
平成3年 2,758千人 1,474千人 53.4% 40.2%

(資料)総務庁労働力調査(名古屋市を含む)
 

 また、消費支出に占める教育関係費の割合は、総務庁の「家計調査」によると、昭和46年には、5.1%であったものが、平成3年には7.1%まで上昇しており、子育てにはお金がかかるといえます。
 そのため、子育て家庭の増加する経済的負担感については、行政としても支援する必要があります。
 一方、少子化や核家族化の進行による家族数の減少や地域の人々の連帯感が薄れていることは、子育ての知恵の伝承を困難にしたり、子ども同志の触れ合いの減少をきたし、家庭や地域の子どもの養育機能が低下してきていると指摘されています。また、今日のような育児情報過多の状況の中で、身近に相談相手がいない母親たちに、育児の不安や悩みが増加する傾向がみられます。
 それゆえ、身近なところに、気軽に子育てについての相談ができる相談体制が確立される必要があります。

子どもの養育等で悩んだ経験の有無

経験 割合
ある 71.5%
ない 28.5%

「ある」と答えたうち

悩んだ時期

時期 割合
乳幼児期 58.7%
小中学生期 62.8%
その他 14.1%

(資料)平成2年度県政モニターアンケート結果(名古屋市を含む)
 

 また、母性の尊重と保護、乳幼児の健康の保持・増進及び児童の健全な育成を基本理念とする母子保健については、児童福祉の出発点ともいえ、その充実は必要です。女性のライフスタイルの変化による高年齢出産の増加や、アレルギーや小児成人病などへの対応は今後さらに充実していく必要があります。

【保護を必要とする児童への措置】

 児童を取り巻く環境は、最近大きく変化してきています。それに伴い、家庭に恵まれず社会的保護を必要とする児童や様々な原因により非行、登校拒否等の症状を示す児童の問題がますます複雑化してきています。
 これら保護を必要とする児童に対しては、児童相談所を中心とした相談指導や入所施設での対応を行っていますが、その児童が抱える問題の複雑性から、処遇困難といわれる児童もみられ、相談・指導体制の充実を図ることが必要となっています。
 さらには、問題発生の予防や早期発見に努めていくための地域や関係機関の連携強化が求められています。

→用語解説

  • 小児成人病
     小児期のライフスタイルの改善などにより予防しうる成人病を小児成人病といい、1糖尿病、虚血性心疾患、消化器潰瘍などの成人病がすでに小児期に顕在化しているもの2動脈硬化の初期病変等がみられる潜在化した成人病3肥満児、高脂血症児、高血圧など成人病の危険因子がすでに小児期にみられるものに大別されます。

第1章 児童の健全育成

(1) 施設の充実

1 現状と課題

現状

  •  子どものための屋内型の遊び場である児童館・児童センターは、県下に207か所あり、その設置数は東京都、北海道に次いで全国第3位となっています。  
    児童館・児童センター設置状況 平成4年4月1日現在
    区分児童館児童センター合計
    61か所59か所120か所
    町村87か所-87か所
    148か所59か所207か所
    (資料)県民生部調べ
     
  •  一方、屋外型の遊び場である児童遊園は、昭和40年度から県独自の助成制度を設けて促進を図ってきたこともあり、県下に918か所あり、全国一の設置数となっています。
  •  また、大型の総合児童遊園として、愛知こどもの国(幡豆町)と海南こどもの国(十四山村)を設置しており、年間約180万人の県民から利用されています。その施設規模及び利用者数において、全国トップレベルであると同時に、県内に2つの大型総合児童遊園を有するのは、全国でも本県のみです。  
    こどもの国年度別利用状況
    年度平成2年度平成3年度平成4年度
    愛知こどもの国約804,000人約841,000人約829,000人
    海南こどもの国約911,000人約988,000人約967,000人
    (資料)県民生部調べ
     
  •  愛知青少年公園(長久手町)は、青少年の野外レクリェーション・スポーツ活動、教育訓練活動の場として、また県民の多様な余暇活動の場として年間約260万人の県民から利用されています。
     敷地の規模、施設の豊富さ(質・量)など、全国的に見て非常に高い水準にあります。  
    愛知青少年公園年度別利用状況
    平成2年度平成3年度平成4年度
    約2,525,000人約2,601,000人約2,696,000人
     
  •  さらに、21世紀を担う児童の健全育成を総合的に推進していくための中枢機関として、研究機能、人材養成機能などを備え、地域の児童館の中核施設としての役割を果たす県立児童総合センターを愛知青少年公園内に、平成8年度開所をめざして整備計画を進めています。
  •  このほか、児童の健全育成に係わる各種の施設として、都市公園、ちびっこ広場、社会教育施設としての少年自然の家、市町村独自のコミュニティー施設などがあります。

課題

  •  児童館・児童センターについては、児童が利用しやすいように、生活圏を考慮して設置するなど、今後とも計画的に整備を進めていく必要があります。
     また、老人憩いの家や公民館などの他の施設との複合化についても、検討していく必要があります。
  •  児童遊園については、遊び場が減少していることと、利用する子どもたちの行動範囲を考慮して、引き続き設置を促進していくとともに、助成内容の検討をしていく必要があります。
  •  愛知こどもの国は6年度に開園20周年、海南こどもの国は7年度に開園10周年を迎えることや、各種設備が老朽化してきていることから、時代にそった児童健全育成施設としての役割を十分に果たせるよう、計画的な改修を図る必要があります。
  •  愛知青少年公園については、開園後20余年が経過し、多様化する県民のニーズに対応した施設の整備・充実が求められています。
  •  県立児童総合センターについては、遊びの研究機能や人材養成機能を有し、地域の児童館のセンター機能を果たせるものとしていく必要があります。

2 今後の目標

  •  児童館・児童センターについては、子どもにとっての身近な遊び場であることから、最終目標として、小学校区に1か所程度の整備が必要であると考えられますが、当面は、中学校区に1か所程度の割合で計画的に設置していきます。
     なお、市町村によっては、児童館等に代わる施設の整備を進めている場合もあるため、それらを含めた総合的な遊び環境の整備計画が策定されるよう指導していきます。
     また、他の施設との複合化についても、市町村に積極的に働きかけていきます。
  •  児童遊園については、設置数が小学校区数に満たない市町村を中心に、小学校区に1か所の割合での設置をめざします。
  •  愛知こどもの国、海南こどもの国については、健全育成施設としての役割が十分果たせるよう、計画的に整備を行います。
  •  愛知青少年公園については、豊かな自然や文化施設の集積などを生かした都市近郊型の文化・スポーツ・レクリェーションの総合公園をめざし、その一環として公園中央部(センターゾーン)に水と緑のオープンスペースを生かした余暇活動の拠点施設としてアイススケート場及び温水プールの建設を平成6年11月のオープンをめざして進めていきます。
  •  県立児童総合センターを平成8年度開所をめざして建設計画を進めていきます。

3 主要施策・事業

施策 実施主体 目標水準 事業内容
平成4年度 平成12年度
児童館・児童センター 市町村 207か所 中学校区に1か所の割合で設置 屋内型児童厚生施設の整備
児童遊園 市町村 918か所 小学校区に1か所の割合で設置 設置数が小学校区に満たない市町村を中心に設置数の増加を図る
県立児童総合センター 基本設計 8年度開所 地域児童館の中核としての役割が担える機能を持つ施設をめざす

(2) 健全育成事業

1 現状と課題

現状

■地域組織活動の活性化

  •  子どもたちの地域組織活動としては、地域子ども会があります。そのクラブ数は10,395クラブで、全国一となっています。  
    地域子ども会設置状況 平成4年4月1日現在
    区分市部郡部合計
    クラブ数8,810クラブ1,585クラブ10,395クラブ
    会員数417,760人77,099人494,859人
    (資料)県民生部調べ(名古屋市を含む)
       地域の単位子ども会活動への県からの助成制度は、全国では本県のみが実施しています。
     なお、地域の単位子ども会の指導的立場にある年少リーダー(小学校5、6年生及び中学生)に対し、必要な知識と技能を修得させるための研修会を実施しており、毎年800人程度の参加があります。
  •  また、児童館を活動拠点として、養育技術の研修や交通安全活動などのさまざまなボランティア活動を行う組織として、母親クラブがあります。  
    母親クラブ設置状況 平成4年4月1日現在
    区分市部郡部合計
    クラブ数83クラブ59クラブ142クラブ
    会員数8,334人3,867人12,201人
    (資料)県民生部調べ
     
  •  一方、放課後児童(昼間に保護者のいない家庭の小学校低学年児童等)の育成・指導については、遊びを中心に健全育成活動を行う児童クラブ(国制度)、児童コミュニティークラブ(県制度)がありますが、国制度に併せて県独自の制度を実施しているなど、全国的に高い水準にあります。  
    放課後児童対策事業実施状況 平成4年4月1日現在
    区分市部郡部合計
    児童クラブ87クラブ
    (20市)
    18クラブ
    (9町村)
    105クラブ
    (29市町村)
    児童コミュニティークラブ33クラブ
    (11市)
    9クラブ
    (7町村)
    42クラブ
    (18市町村)
    (資料)県民生部調べ
     
  •  このほか、環境美化、ボランティア活動などを行う社会参加活動、ボーイスカウト・ガールスカウト活動、幼児交通安全クラブ、交通安全母の会活動、少年消防クラブなど様々な分野で地域で組織的な活動が行われています。

■健全育成事業の推進

  •  オーストラリア・ビクトリア州へ児童を子ども大使として派遣する国際競技子ども大使派遣事業や各種のモデル的・先駆的健全育成事業をのびのび子ども育成事業として行っています。
  •  一方、児童館・児童センターの活動を活発にするために、運営の助成を行っています。
  •  なお、このほかにも、児童館を中心として、子どもと高齢者とのふれあいを行う地域交流事業、豊かな自然環境の中での遊びの機会を設ける自然体験活動事業、児童健全育成の推進に当たる民間の指導者の研修を行う事業、保育所等の園庭を休日に開放する事業などを実施しています。  
    地域の健全育成事業実施状況 平成4年4月1日現在
    区分市部郡部合計
    地域交流事業6(6市)3(3町村)9(9市町村)
    自然体験活動事業2(2市)2(2町村)4(4市町村)
    民間指導者養成事業4(4市)-(-町村)4(4市町村)
    園庭開放事業3(1市)-(-町村)3(1市町村)
    (資料)県民生部調べ
     
  •  また、学校教育の一環としても、野外教育活動等の児童・生徒の健全育成を図るための多様で活発な事業を展開しています。

課題

■地域組織活動の活性化

  •  子どもの集団活動や児童の自主性を育てるという面で、今後、子ども会活動の果たす役割はますます大きくなっていくと考えられますので、その育成を図っていく必要があります。
     しかし、児童数の減少等による子ども会活動の停滞や運営の難しさなどが認められますので、その支援方法について検討していく必要があります。
  •  母親クラブについても、子育てについて気軽に話し合いができる場や、子どもと一緒に遊びを体験する機会の場を設けるなど、幅広い活動を展開していく必要があります。
     また、父親の参加についても検討する必要があるとともに、クラブ数の増加を図る必要があります。
  •  児童クラブ、児童コミュニティークラブについては、学校週5日制の実施や、女性の就労の増加等により、都市部を中心に放課後児童の増加が見込まれるため、今後、クラブ数の増や、内容の充実を図っていく必要があります。
  •  このほか、社会参加活動などの各種地域組織活動についても、それぞれの地域の実情に応じた内容を充実していく必要があります。

■健全育成事業の推進

  •  のびのび子ども育成事業については、時代にあった多様な事業を今後とも実施していく必要があります。
  •  また、市町村レベルでも、それぞれの地域の実状に応じた、柔軟で弾力的な健全育成事業の展開が望まれます。
  •  児童館・児童センターは、より活発で充実した活動を展開していく必要があり、さらに活動を支援していく必要があります。
  •  高齢者との交流事業や自然体験活動など多様な活動を推進していく必要があります。
  •  学校教育の一環としての情操教育や野外教育活動、ボランティア活動を通じた心の教育についても充実を図っていく必要があります。
     なお、児童・生徒に関わる健全育成について、学校教育にとどまらず、家庭や地域社会との役割分担の中で対応していく方法についても、長期的に研究していく必要があります。

2 今後の目標

  •  地域子ども会のより活発な活動の促進を図っていきます。
  •  児童館を有するすべての市町村に母親クラブを組織化し、その事業内容の充実及び参加者の拡大を市町村に働きかけていきます。
  •  児童クラブ・児童コミュニティークラブについては、放課後児童が多い都市部などの事業の必要性が高い地区を中心に事業の実施及びクラブ数の拡大を図るとともに、内容の充実を検討していきます。
  •  のびのび子ども育成事業については、多様な事業を実施していきます。
  •  活動が不十分な児童館については、市町村を指導していくとともに、より地域に根ざした開かれた施設となるよう、必要な支援について検討していきます。
  •  また、教育活動についても、児童・生徒の健全育成を推進していくための各種事業を充実していくとともに、学校、家庭、地域社会との役割分担の中で対応していく方法を研究していきます。

3 主要施策・事業

施策 実施主体 目標水準 事業内容
平成4年度 平成12年度
母親クラブ 市町村 142クラブ 児童館を有する全市町村での設置 未設置の市町村を中心に、クラブ数の増加を図る
児童クラブ 市町村 105クラブ 中学校区に1か所の割合で設置 未設置の市町村を中心に、クラブ数の増加を図る
児童コミュニティークラブ 市町村 42クラブ

第2章 子育てへの支援

(1) 女性の就労と子育ての両立支援

1 現状と課題

現状

  •  保育に欠ける児童を措置し、女性の就労と子育ての両立を支援する施設として保育所があります。
     平成4年4月1日現在、県が所管する保育所数は942か所、総定員107,797人で、設置数定員とも東京都についで全国第2位となっています。  
    保育所の状況 平成4年4月1日現在 単位:人

    定員措置児童数
    公立私立合計公立私立合計
    483,37524,422107,79758,61719,56478,181
    (資料)県民生部調べ
     
  •  また、多様化する保育需要に対応するための特別保育事業については、乳児保育(210か所)、延長保育(590か所)、障害児保育(300か所)となっています。
     乳児保育、延長保育、障害児保育とも、国制度に県独自の制度を併せて実施しており、その充実に努めています。
  •  このほか、保育所が地域の子育てセンター的役割を果たすための地域活動事業(237か所)、一時的保育事業(10か所)、長時間保育サービス事業(午後10時頃までの保育)(1か所)も実施しています。
  •  さらに、山間部や離島などのへき地の保育所に対しても、独自に経費の助成を行っています。
     なお、民間保育所に対しては、市町村と協力して、県独自の民間保育所運営助成制度を設け、経済約基盤の強化を図っています。県費助成額は、4年度約14億円にのぼり、全国的にトップレベルにあります。
  •  一方、企業側でも、仕事と子育ての両立を支援するという観点から、育児休業制度や企業内保育施設の整備、女性の再雇用制度等、さまざまな制度が設けられています。

課題

  •  女性の社会進出は、女性の就業意欲の向上や労働力不足もあり、今後とも増加するものと思われます。
     したがって、子どもを生み育てやすい環境づくりという観点から、働く女性を積極的に支援していく必要があります。
  •  市町村によっては、保育所定員と入所児童数に差がみられることから、地域の保育需要に見合った定員数や保育所数を設定していく必要があります。
  •  また、老朽化が著しい保育所があるので、順次改築を進めていく必要があります。
  •  一方、多様化する保育需要に的確に応えていくために、保育体制の一層の充実強化や特別保育事業の推進、時代に即した新たな保育サービスの提供などについて検討していく必要があります。
  •  乳児保育については、全市町村での0歳児の受入れ体制を促進していく必要があります。
  •  また、保母の配置基準の改善を図るとともに、乳児にとっての快適な生活環境に配慮した設備の充実が必要です。
  •  延長保育事業、長時間保育サービス事業、地域活動事業、一時保育事業についても、普及促進を図る必要があります。
  •  集団保育が可能な軽度の障害児の保育についても、充実強化を図る必要があります。
  •  外国人児童への対応についても支援していく必要があります。
  •  なお、企業としては、育児休業制度の浸透を図るとともに、女性の再雇用制度の普及、企業内保育施設の充実など女性が働きやすい環境整備について、引き続き働きかけていく必要があります。

2 今後の目標

  •  地域の保育需要を的確に把握し、保育所の定員の見直しや統廃合を積極的に進めるよう指導していきます。
  •  保育所の改築については、引き続き市町村の要望に応えていきます。
  •  保育体制の充実強化を図るため、保母の配置基準を改善していくことをめざします。
  •  乳児保育事業については、計画的に拡大を図るとともに、生活環境を考慮して、保育室の設備を充実していきます。
  •  需要に応じて実施できるように、延長保育事業、長時間保育サービス事業、地域活動事業、一時的保育事業の実施を積極的に市町村に働きかけます。
  •  障害児保育事業制度の充実に努めます。
  •  外国人児童の保育が円滑にできるように、保母研修の実施や保護者との連絡調整について支援していきます。
  •  また、育児休業法については、平成6年度まで適用が猶予されている事業所(30人以下の雇用事業所)に対する早期導入の促進に努めるとともに、育児休業制度を利用しやすい環境づくりに努めます。

3 主要施策・事業

施策 実施主体 目標水準 事業内容
平成4年度 平成12年度
乳児保育 市町村
法人
乳児受入
63市町村
乳児受入
85市町村
保育所設置全市町村の受け入れ体制の確立をめざす
延長保育事業(午後7時ごろまでの実施) 市町村
法人
7市町 42市町村 実施市町村の増加をめざす
長時間保育サービス事業(午後10時ころまでの実施) 市町村
法人
1市 5市 実施市の増加をめざす
地域活動事業 市町村
法人
29市町村 85市町村 保育所設置全市町村での実施をめざす
一時的保育事業 市町村
法人
6市 42市町村 実施市町村の増加をめざす

→用語解説

  • 育児休業制度
     子を養育する労働者が一定期間休業し、育児と雇用の継続との両立を図る制度で、平成4年4月から法が施行され、1歳未満の子を養育する男女労働者がその申し出により休業できることを保障しています。
  • ボランティア休暇制度
     企業において、一般の休職や年次有給休暇とは別に、従業員がボランティア活動に参加するにあたり休暇(休職)を認める制度で、社会福祉や海外協力などの活動を対象とする企業が多い。

(2) 経済支援の拡充

1 現状と課題

現状

  •  子育ての経済的な支援施策としては、児童手当などの各種手当、医療保険制度による給付、税制上の措置などがあります。
  •  県制度の代表的なものとして、乳児医療費公費負担制度を実施していますが、所得制限を設けず、すべての1歳未満児を対象としており、平成4年度の県費助成額では約16億円で、北海道に次いで全国第2位となっています。
  •  出産に要する費用としては、経済的に恵まれない世帯が、助産施設で入院助産を受けた場合の経費の一部を県独自で助成しています。
  •  一方、子どもの教育に必要な費用を軽減する施策として、幼稚園の授業料軽減や私立高等学校の入学納付金助成や授業料軽減事業などを実施しており、全国的にトップレベルの水準にあります。

課題

  •  乳児医療費公費負拠制度については、疾病にかかりやすい乳児の健康の確保と保護者の医療費負担の軽減を図るとともに、健やかに子どもを生み育てる環境づくりを推進するという観点から、対象年齢を拡大する時期にきていると考えられます。
  •  子どもの教育に必要な費用の軽減施策については、今後もこの水準を維持していく必要があります。
  •  保育所の保護者負担金については、3歳未満児が高くなっており、特に2人以上同時に入所させている場合の経済的負担が大きいため、将来的に支援のあり方を検討していく必要があります。

2 今後の目標

  •  乳児医療費公費負担制度について対象年齢を3歳未満児まで拡大します、
  •  子どもの教育に必要な費用の軽減施策については、今後とも充実していきます。
  •  保育料についての負担感や不公平感の解消については、応益原則を加味しながら、国の「保育問題検討会」の検討結果を踏まえて検討していきます。

3 主要施策・事業

施策 実施主体 目標水準 事業内容
平成4年度 平成12年度
乳児医療費公費負担制度 市町村 1歳未満児
所得制限無
3歳未満児 乳児が必要な医療を容易に受けられるよう医療保険における自己負担相当額を公費で支給し、乳児の健康の保持増進を図る

(3) 子育て相談システム

1 現状と課題

現状

  •  子どもに関する代表的な相談機関である児童相談所は県下に8か所あり、しつけ、性格、行動などの子育てに関する相談に応じています。
     また、各福祉事務所(県事務所を含む)に家庭児童相談室(37か所)を設置し、家庭相談員(70名)が養育上の諸問題や性格などの相談に当たっています。
     このほかにも地域の相談窓口として、保育所で乳幼児の育児相談、児童館で子育ての相談に応じる制度があります。
  •  なお、県下7教育事務所に20名の家庭教育相談員を設置し、登校拒否などの相談指導を行っています。
  •  電話による相談窓口としては、中央児童相談所内に「子ども・家庭110番」を設置し、家庭支援相談員により、児童を持つ家庭の悩みや問題に対する相談を行っています。
     また、思春期に特有な医学的問題や悩み等について、県医師会に委託して電話相談や集団指導を実施しています。
     このほか、教育委員会が実施する「こころの電話」、警察が実施する「ヤングテレホン」などさまざまな分野で電話相談窓口が設置されています。

課題

  •  児童相談所における一般的な子育て相談についても、その充実を図る必要があります。
  •  家庭児童相談室についても、より身近な相談室として、その内容を充実していく必要があります。
  •  その他のさまざまな分野の相談機関についても、その機能強化を図る必要があります。
  •  軽易な育児の悩みなどについて身近なところで気軽に相談できるような体制が必要です。
  •  相談機関の周知徹底方法や各種相談機関のネットワーク化による子育て相談システムの充実が必要となっています。

2 今後の目標

  •  保育所に、新たに「子育て支援センター」としての機能をモデル的に付与し、乳幼児を抱える母親や出産前の妊婦が気軽に訪れ、子育でなどの相談ができるようにするとともに、育児体験教室や親同士が相互に子育てを協力しあえるような体制づくりを推進していきます。
  •  相談機関の周知徹底方法や各種相談機関等のネットワーク化による子育て相談システムの充実を図ります。

3 主要施策・事業

施策 実施主体 目標水準 事業内容
平成4年度 平成12年度
保育所地域子育て支援事業 市町村 - 20か所 育児についての相談指導や子育てサークルの支援

(4) 母子保健対策の充実

1 現状と課題

現状

  •  母子保健対策としては、県下26保健所が中心となって、妊産婦や乳幼児の健康診査、訪問指導、医療機関での委託診査等を行っています。
  •  乳幼児の健康保持増進、異常の早期発見や適切な指導等を目的とした健康診査については、「母子健康診査マニュアル」の作成、3歳児健康診査への視聴覚検査の導入など、その充実と受診率の向上に努めています。
     とくに、妊婦と乳児については、それぞれ、年2回、医療機関での健康診査を公費で負担しています。
     また、保健婦による妊産婦、新生児、未熟児を対象にした家庭訪問による保健指導をしています。
  •  母子歯科保健対策としては、県下26保健所が中心となって、妊産婦や乳幼児の歯科健康診査、歯科健康教育、歯科健康相談を実施しています。
  •  このほか、B型肝炎防止のための検査や、小児悪性腫療、先天性代謝異常、心臓疾患などについての検査事業を実施し、異常の早期発見に努めています。
  •  一方、市町村では、1歳6か月児健康診査、母子手帳の交付、講習会等による保健教育、保健育児等に関する相談指導事業などを行っています。
     また、地域の実情に応じた総合的な母子保健サービスを提供するため、母子保健推進員による活動や地域組織の育成を図る母子保健地域活動事業を実施しています。
  •  このほか、思春期の児童に保育所等で乳幼児と触れ合う機会を作る保健・福祉体験活動事業、妊産婦等の正しい食生活を普及するための母子栄養健康づくり事業を実施しています。
  •  なお、医療給付制度としては未熟児養育医療や結核児童療養給付、小児慢性特定疾患医療給付制度を設け、早期医療の確保に努めています。
  •  さらに、小児保健医療体制の充実強化を図るため、県独自の施策として新生児医療システムを設けるとともに、小児医療センター整備事業を実施しています。
     さらに、21世紀に向けた小児保健医療施設の設置などについて調査検討を行っています。

課題

  •  健康診査については、内容の充実を図り、それに従事する専門医の確保に努めていく必要があります。
  •  また、食生活の変化等によるアレルギー疾患や小児成人病の増加などに対する対策の充実が必要です。
  •  異常の早期発見、早期治療、適正な指導の推進を図るため、各種検査事業や、医療給付の充実を図る必要があります。
  •  市町村における母子保健事業についても、関係機関の連携を図りながら、充実強化していく必要があります。
     とくに、地域と一体となった、母子保健施策を推進するための地域活動事業や思春期における保健・福祉体験活動事業について、普及、拡大していく必要があります。
  •  子育て情報の氾濫(はんらん)や核家族化の進行などによる、妊婦や母親の育児不安の解消を図る援助が必要です。
  •  県下全域をカバーする小児の保健医療の中核的機能とコントロールセンター機能を持つ、小児専門の総合施設の整備が必要です。

2 今後の目標

  •  妊産婦、乳幼児健康診査については、より一層健診内容の充実に努めます、
  •  小児アレルギー疾患や小児成人病への対応施策を充実していきます。
  •  各種検査事業や医療給付について、需要に見合った体制を確保していきます。
  •  市町村母子保健事業について、拡大が図られるよう、積極的に働きかけていきます。
  •  妊娠後期の妊婦を対象に育児の不安の解消とかかりつけの医師の確保を目的とした「出産前小児保健指導事業(プレネイタルビジット)」の普及促進に努めます。
  •  小児保健医療対策調査検討会議での調査検討結果を踏まえ、小児保健医療の中核となる総合的な小児保健医療施設の整備を進めます。

3 主要施策・事業

施策 実施主体 目標水準 事業内容
平成4年度 平成12年度
小児保健医療施設 基本構想 設置 小児保健医療施設の整備

→用語解説

  • 新生児医療システム
     新生児期には呼吸不全や重症黄疸などの危険が多く、心身に重大な障害を残すことも少なくありませんが、出産直後に十分な治療を行うことにより、その多くが未然に防止できます。本県では昭和55年に、産院・一般の病院、愛知県救急医療センター、自治体消防署、新生児集中強化医療施設(NICU)等を備えた高次医療機関の4者を専用電話回線で続び、「新生児医療システム」としてシステム化しました。
  • プレネイタルビジット
     妊婦等の育児不安の解消と生まれてくる子のかかりつけ医師を確保するため、出産前小児保健指導事業実施要領(平成4年5月11日付け児初第487号厚生省児童家庭局長通知)に基づき、平成4年度から、市町村特別保育事業の1つとして国庫補助対象事業に加えられた事業で、市町村が妊娠後期の妊婦を対象に、小児科医等による保健指導の機会を設ける事業です。

第3章 保護を必要とする児童への措置

(1)児童入所施設

1 現状と課題

現状

  •  家庭に恵まれず社会的に保護を必要とする児童やさまざまな原因により非行、不登校などの症状を示している児童に対する入所型の児童福祉施設は下表のとおりです。  
    県の児童福祉施設の状況 平成4年4月1日現在
    区分愛知県所管名古屋市所管合計
    か所定員
    現員
    か所
    定員
    現員
    か所定員
    現員
    乳児院269573105875174144
    養護施設1475564613769526271,5241,172
    教護院1964419620219264
    虚弱児施設3160146150334210179
    情緒障害児短期治療施設1504515031210076
    合計211,130938191,070697402,2001,635
    母子寮12世帯
    262
    世帯
    175
    3世帯
    105
    世帯
    80
    15世帯
    367
    世帯
    255
    (資料)県民生部調べ(名古屋市を含む)
     
  •  このうち、社会福祉法人立の施設は21か所あり、民間社会福祉施設運営助成制度を設けて、その充実を図っています。
  •  また、県立施設では、愛知学園(教護院)の居住棟の改築を終え、現在では、ならわ学園(情緒障害児短期治療施設)の学校棟、居住棟の改築整備を進めています、
  •  一方、養護施設等を退所した後に、児童が社会生活に十分適応できるよう継続的に指導する施設として、全国でも本県のみが制度化した退所児童支援施設の計画的な設置を進めています。  
    退所児童支援施設の設置状況
    年度か所数
    平成2養護施設2か所(光輝寮・名古屋文化キンダーホルト)
    平成3養護施設2か所(蒲生会大和荘・溢愛館)
    平成4養護施設2か所(暁学園・知多学園松藾荘)
     
  •  さらに、児童入所施設に入所している児童の福祉の増進を図るため、県独自の援助施策として、入所児童等援護費、入学祝品支給、歳末給与品、就職祝品支給、高校生入学準備金等支給、退所児童支援指導費等各種の助成を行っています。
  •  このほか、各施設の入所児童の交流を目的として海の家・山の家の開設、球技大会の開催も行っています。
  •  また、保護者のいない児童などを委託する里親制度については、委託児童に対する賠償保険加入料を県で負担しています。

課題

  •  入所児童の処遇を改善するために、民間社会福祉施設の整備などを推進していく必要があります。
  •  退所児童支援施設については、引き続き計画的な設置を進めていく必要があります。
  •  社会環境の変化に応じたよりきめ細かい対応ができるように県独自の援助制度の充実を図っていくことが必要です。
  •  入所児童のうち就学前児童については、施設内に同年代の仲間が少ないことから、同年代の集団生活を経験する機会に恵まれません。そこで、地域の児童との交流を図る必要があります。
  •  さらに、施設入所児童の学習指導にも力を入れていく必要があります。
  •  また、里親制度を活用して、年末やお盆の時期などに、家庭的な雰囲気の中での生活を体験できる機会を設けることも必要です。
     これは、里子を受託していない里親登録者にも子育てを体験する機会となる点で効果的であると思われます。
  •  なお、非行や登校拒否などさまざまな問題を持って入所してくる多くの児童の処遇に的確に対応していくために、施設における受入れ体制の充実を図っていく必要があります。
     これは、退所児童のための施設や地域の相談窓口としての機能を充実していくためにも必要です。

2 今後の目標

  •  民間社会福祉施設の整備などを推進していくための方策を研究・検討していきます。
  •  養護施設等退所児童支援施設については、引き続き計画的な設置を図り、整備の助成を実施していきます。また、施設の円滑な運営についても検討を進めていきます。
  •  入学祝品などの県独自の援助については、引き続き充実を図っていきます。
  •  入所児童が地域の児童と交流が図れるような方策について検討していきます。
  •  入所児童の学力向上のための施策を検討します。
  •  里親制度を活用し、入所児童が一時的に里親家庭で生活できるような方策について検討します。
  •  なお、様々な問題を持って入所する児童の的確な処遇のために、施設における受入れ体制の充実についても検討します。

3 主要施設・事業

施策 実施主体 目標水準 事業内容
平成4年度 平成12年度
退所児童支援施設 法人 6か所 17か所 退所児童が帰宅できる場として、全施設に計画的に設置する

(2) 相談指導体制の充実

1 現状と課題

現状

  •  保護者の病気、死亡、家出などの理由で家庭での養育が困難となった児童や、非行、不登校などにより指導を要する児童の相談については、県下8か所の児童相談所が中心になって、問題の解決に当たっています。
  •  平成4年度に児童相談所で取り扱った相談件数は表のとおりです。  
    児童相談所における相談受付件数
    区分養護保健心身障害非行育成
    (不登校)
    その他
    件数531件119件6,871件307件2,269件
    (438)
    17件10,114件
    割合5.3%1.2%67.9%3.0%22.4%
    (4.3)
    0.2%100.0%
    (資料)県民生部調べ
     
  •  養護相談では、母親の家出、傷病、離婚を理由とするものが多くなっており、施設入所措置を行ったケースが273件、里親委託したものが36件で、合わせて養護相談全体の55%に当たっています。
  •  非行や不登校の相談については、継続的に相談指導を行わなければならない場合が多く、1件当たりの相談指導回数は平均13回となっています。
  •  また、このような不適応行動を起こしている児童やその保護者に対しては、児童委員や学校などの地域関係者の協力を得てグループ指導を実施し、児童の情緒の安定や家庭養育機能の向上を図っています。
  •  とくに、年々増加する不登校児童の指導としては、メンタルフレンド(ふれあい心の友)に家庭訪問をしてもらい、子どもたちとの対話や遊びを通じて心を通わせることを目的とした事業や、キャンプ指導、家族関係改善のための家庭療法事業など多様な事業を実施しています。
  •  また、いじめ・不登校の問題の解決を図るため、いじめ・登校拒否専門の相談窓口を県独自で6か所の教育事務所に設置するとともに、登校拒否対策事業を実施する県内20市町村に対する助成や事例集の作成・配付を行う事業を県独自で実施しています。
  •  また、精神保健の面からは情緒障害対策として、精神保健センターや保健所において相談指導を行っています。
  •  小中学校における「学校ぎらい」を理由する長期欠席者数は、昭和56年から平成3年の10年間で、小学校2.3倍、中学校で2.6倍となっており、その増加が目立ちます。  
    県の小中学校における「学校ぎらい」を理由とする50日以上の長期欠席者数
    区分昭和56年度平成3年度
    小学校252人573人
    中学校1,095人2,883人
    1,347人3,456人
    (資料)文部省学校基本調査(名古屋市を含む)
     
  •  なお、このほかに、非行対策としては、非行少年の早期発見や環境浄化活動を行う少年補導員、婦人補導員を設置しています。

課題

  •  児童相談所は現在8か所設置されていますが、人口の増加及び生活圏域との整合性を考慮して、地域に即した適正配置について検討する必要があります。
  •  非行、不登校等の保護を必要とする児童に対する相談支援体制の充実のためには、その中心となる児童相談所の充実強化はもとより、学校や警察、児童委員等と連携を密にし、早期発見に努めていく必要があります。
  •  また、増え続ける不登校児童への対策として、グループ指導事業やメンタルフレンド事業などの拡充を図っていく必要があります。
  •  これらの児童問題については、その原因が、家族関係などの家庭に起因する場合が多くみられるため、保護者指導の充実や家庭教育の重要性の普及に努めていく必要があります。

2 今後の目標

  •  児童相談所については、地域に即した適正配置となるよう増設を含めて見直すとともに、併せて老朽化した建物の整備計画を進めて、地域に開かれた児童相談所となるよう、その充実強化を図ります。
     とくに、一時保護所を併設している中央児童相談所については、老朽化が著しく一時保護所の環境も悪化しているため、整備計画を進めます。
  •  グルーブ指導事業については、地域のマンパワーを活用して、グループ数の拡大等充実に努めます。また、メンタルフレンドの増員や家族療法事業の充実に努めます。
  •  地域の連携、家庭教育の重要性の普及については、新たに主任児童委員を設置して、その充実を図っていきます。

3 主要施策・事業

施策 実施主体 目標水準 事業内容
平成4年度 平成12年度
児童相談所 8か所 適正配置 児童相談所の改築及び増設を含めた適正配置を検討
メンタルフレンド事業 20人 60人 登校拒否児童への対策として計画的に人員の増加を図る
主任児童委員 - 民生委員の定数及び配置基準により算出される定数確保 児童福祉分野を中心に活動する主任児童委員の設置

→用語解説

  • メンタルフレンド
     不登校児童の兄または姉に相当する世代で、児童福祉に理解と情熱のある者を心の友(メンタルフレンド)として、児童福祉司の指導のもとに、家庭を訪問させ、指導援助を行う制度です。
  • 一時保護所
     棄児、家出児童等、現に適当な保護者がいない場合や、保護者の養育が不適当である場合等に、児童を緊急に保護したり、短期的に人所させて行動観察及び・指導を行う施設です。

主題:
あいち8か年福祉戦略 No.4 101頁~122頁
-愛フルプラン-

発行者:
愛知県民生部社会課

発行年月:
1994年7月

文献に関する問い合わせ先:
名古屋市中区三の丸3-1-2
TEL 052-961-2111