音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

快適で活力あふれる岡山づくり

第5次岡山県総合福祉計画

No.2 岡山県

スポーツ・レクリエーション・リゾート

課題と施策の方向

スポーツやレクリエーション,リゾートなどの余暇活動は,人びとの明日の活力を生み出すエネルギー源として大きな役割を果たすとともに,社会的健康をつくるうえで欠かせないものとなり,スポーツ・レクリエーション・リゾートを人生の側面として,また,価値あるものとして位置づけた新たなライフスタイルをつくりあげることが強く求められている。
スポーツの振興については,県民のスポーツに対する多様なニーズに対応していくため,生涯スポーツ・競技スポーツの一層の振興をはかる。
特に,平成17年の「第60回国民体育大会」の開催に向け機運を盛り上げながら,主会場の整備,競技別会場地市町村の選定など諸準備をすすめるとともに,郷土選手の活躍を期して,計画的に本県競技スポーツの強化育成をはかる。
レクリエーションの振興については,健康の森,自然公園,遊歩道など,豊かな自然環境を最大限に活用した施設の整備をはかる。また,多様なレクリエーション機会の提供に努める。
リゾートの振興については,総合的な保養が可能な大規模リゾートのほか,自然体験や農山漁村の生活体験を重視したリゾート,都市やその近郊でのリゾートなど,利用客がそれぞれの好みに応じて選択できるよう,リゾート地域の整備を積極的に推進し,リゾートを生活の一部に取り入れたライフスタイルの定着をめざしていく。
県北部地域については,特色ある総合保養地域としての整備を促進するとともに,県下の適地に快適で個性あるリゾート拠点施設の整備をすすめる。
都市地域には,アミューズメントやスポーツ等に配慮した施設整備をすすめ,豊かな自然,景観,文化等を有する農山漁村地域においては,自然体験や農業体験など豊富なメニューを備えた農村型リゾートを整備する。

重要施策

(重要施策の体系)

県民皆スポーツの推進

  • スポーツの基礎づくり
    • 運動好きな児童生徒の育成
    • 優秀選手の早期発掘・育成
  • 生涯スポーツの振興
    • 総合型地域スポーツクラブの育成
    • 特色ある地域スポーツの普及・振興
    • 情報提供と相談事業の充実
  • 競技スポーツの振興
    • 競技力向上事業の充実
    • 競技会等の開催
    • 各種団体との連携
  • 指導者の養成と指導体制の整備
    • 指導者の養成確保と資質の向上
    • 指導者組織の確立と活用
  • 施設の整備と有効活用
    • 既存施設の活用促進
    • 地域スポーツ施設の整備
    • 広域スポーツ施設の整備

第60回国民体育大会開催準備

  • 準備体制の確立
  • 主会場の整備
  • 各種競技会場の選定と整備
  • 関連諸施設の整備
  • 啓発・広報活動の推進

県民レクリエーションの振興

  • レクリエーション環境の整備
    • 自然とふれあう環境づくり
    • レクリエーション関連施設の整備 ※参照「リゾートの振興」
  • レクリエーション活動の支援
    • レクリエーション活動の振興
    • 指導者の養成と団体の育成

リゾートの振興

  • 総合的リゾート地域の整備
  • リゾート拠点の整備
  • 受入れ体制の整備

1 県民皆スポーツの推進

(1)スポーツの基礎づくり
青少年期においては,学校における体育・スポーツ活動と地域におけるスポーツ活動とを相互に連携させながら,スポーツの基礎づくりを総合的に推進することが必要である。このため,学校においては,体育の授業はもとより,各学校の実態に応じた特色ある多彩な体育的行事や課外活動の展開をはかるとともに,地域においても,その特性に応じたスポーツ少年団活動等を積極的に推進する。さらに,部活動,クラブ活動と地域スポーツクラブとの間で指導者のネットワーク化をはかることにより,学校と地域とが一体となって運動好きな児童生徒の育成をすすめる。
また,優秀選手の発掘育成については,進学するごとに環境や指導者が変わることや各段階での短期的な結果を求められる勝利至上主義などの選手育成上の弊害を解消し,選手一人ひとりのスポーツライフ全体を考えた一貫指導を行うことが重要である。このため,指導者間の連携を強化するとともに,広域的スポーツ施設等で定期的な集中トレーニングを行うなど,一貫した選手の育成,強化をすすめる。

(2)生涯スポーツの振興
県民一人ひとりが,生涯にわたってスポーツに親しみ,心身ともに健康で活力ある生活がおくれるよう,生涯スポーツの一層の充実が求められている。
このため,幼児から高齢者まで地域住民の多様なスポーツニーズに応えることができるよう,スポーツ環境の整備に努める。特に,今後のスポーツ活動のあり方として,地域のスポーツ施設を活動拠点として,学校や他の公共施設等と連携し,有資格指導者を有し,参加者が好みに応じて多様なスポーツ種目に参加できる総合型地域スポーツクラブの育成をすすめる。
また,県下各地域において,伝統あるスポーツや自然条件を生かしたスポーツの普及奨励をすすめるとともに,「岡山国体」の競技種目別会場地の決定をふまえ,開催競技を中心とした特色ある地域スポーツの振興をはかる。
さらに,地域住民を対象としたスポーツ・レクリエーション大会や県民スポーツフェスティバルなど,「燃えろ岡山」県民運動と呼応した大会の開催や全国スポーツ・レクリエーション祭,全国レクリエーション大会等への派遣を通して生涯スポーツの地域への定着をはかる。
また,地域住民にスポーツに関するできるだけ多くのサービスを提供するため,地域スポーツセンターの整備,充実を促進し,地域住民に対するスポーツ情報提供システムとスポーツ相談事業を実施する。

(3)競技スポーツの振興
オリンピックをはじめとする国際競技会や国民体育大会などの各種全国大会で郷土選手が好成績をあげることは,県民に明るい話題と希望を与え,スポーツ意欲を向上させる。
岡山県選手の競技力向上をはかるため,競技団体が核となり,学校,地域,企業等が連携し,計画的に全国レベルの優秀指導者を招いての強化合宿や県外遠征などの選手強化事業を積極的に実施するとともに,県内の企業等に全国大会で活躍できるような選手の受け皿づくりやチームの育成についての理解や協力を要請する。
また,中四国のスポーツ交流をより活発にするとともに,各種競技団体が全国大会などの競技水準の高い競技大会を本県で開催するよう積極的に働きかける。
さらに,「岡山国体」において開催県にふさわしい成績が獲得できるよう,競技力向上対策本部を設置し,ジュニア層からの一貫した指導に取り組むなど競技力向上に努める。

(4)指導者の養成と指導体制の整備
スポーツの振興にあたっては,競技スポーツはもとより,生涯スポーツの分野においても,適切な指導,助言を行う指導者の確保が必要である。このため,スポーツ活動指導者講習会や野外活動指導者講習会,さらには,競技力向上指導者養成講習会等を開催し,指導者の養成に努めるとともに,市町村の専門職員の設置促進などにより,指導体制の確立をはかる。
また,岡山県体育協会や岡山県スポーツ振興財団等との連携をはかりながら,各種講習会を開催し,国やスポーツ団体の指導者認定制度に基づく公認指導者の養成と資質向上に努める。さらに,生涯スポーツ,競技スポーツそれぞれの専門的指導者のリーダーバンクを整備するとともに,スポーツアドバイザー派遣事業の充実をはかる。

(5)施設の整備と有効活用
地域住民がいつでも気軽にスポーツ活動ができるよう,学校体育施設の開放と既存のスポーツ施設の有効活用を促進する。なかでも,学校体育施設は身近で親しみのあるスポーツの場としての優れた機能を有しており,体育館,グラウンド,プール等の開放を一層促進し,地域住民の幅広い利用に供する。
地域スポーツ活動の活発化をはかるため,笠岡市に設置する農業体験とスポーツが楽しめる西部アグリスポーツ公園(仮称)については早期完成に努める。また,プロスポーツイベントは,「見るスポーツ」として県民に楽しみと夢を与え,スポーツに対する興味や関心を高め,スポーツのすそ野を広げる役割を担うとともに,地域の活性化をはかるうえで大きな役割を果たすものであり,マスカットスタジアムや津山陸上競技場,美作ラグビー・サッカー場,備前テニスセンター,TIサーキット・英田など各種大型スポーツ施設において国際レベルの優れたイベントが開催されるよう一層の推進をはかる。

2 第60回国民体育大会開催準備

平成17年開催の第60回国民体育大会は,岡山の恵まれた風土と吉備の国以来の歴史に培われた伝統文化を継承しつつ,21世紀に飛躍する新しい岡山を象徴する特色ある大会をめざし,県民の総力を結集する必要がある。このため,第60回国民体育大会岡山県準備委員会を拡充するとともに,国体準備室を設置するなど開催準備を積極的にすすめる。
「岡山国体」秋季大会の総合開会式等を開催する陸上競技場など,主要施設を備えた運動公園の整備をすすめる。
また,各競技大会については,県下全域のスポーツの普及,発展はもとより,地域振興の観点からも,できるだけ全県下に配置することとし,市町村の現有スポーツ施設の整備状況,スポーツ振興方策等を調査のうえ,関係市町村,競技団体等と協議し,会場地を選定する。
さらに,県民意識の高揚をはかるため,啓発・広報活動を推進する。

3 県民レクリエーションの振興

(1)レクリエーション環境の整備
人びとが自由時間を積極的に活用し,日常的にレクリエーション活動に親しむことができるようにするためには,職場や家庭の周辺に身近なレクリエーションの場を確保する必要がある。
このため,都市公園やコミュニティ・スポーツ施設(ミニ施設)の整備に努めるとともに,水や土とふれあえるよう河川敷等の親水公園やおかやまファーマーズマーケット(仮称),健康の森などの整備をすすめる。
さらに,サイクリングを通して野外レクリエーションを楽しみ,自然を生かした体力づくり,健康増進をはかる広域的施設として,大規模自転車道の整備に努める。
瀬戸内海沿岸域においては,ヨット,モーターボートなど多様化した海洋性レクリエーションの急速な増加に対処するため,すでに完成している牛窓ヨットハーバーの一層の活用に加え,中部海域に日比地区マリーナ,倉敷以西の海域には倉敷地区マリーナの整備を行う。
また,増加しているプレジャーボートに対し,海域及び水際線の安全で秩序ある利用等を推進するため,適正に係留できる施設の整備をはかっていく。

(2)レクリエーション活動の支援
レクリエーションは,多様な活動を通して,より充実した楽しさや憩いを享受し,明日への活力の創造をめざすものである。このため,県民一人ひとりが,年齢,健康度,体力等に応じて取り組めるよう,各種情報の提供に努めるとともに,日常生活のなかで実践できるよう,多様なプログラムの提供に努め,岡山県レクリエーション協会をはじめ関係団体の体制の整備と活動の拡充をはかる。さらに,レクリエーション活動に関する知識,技能やキャンプや登山など自然に親しむマナーの向上をはかるほか,関係機関,団体等の連携により各種研修会,講習会を開催して,野外活動や軽スポーツ,障害者,高齢者にかかる多様なレクリエーションの指導者の養成と資質の向上に努める。

4 リゾートの振興

(1)総合的リゾート地域の整備
県北地域は,大山隠岐国立公園をはじめ,氷ノ山後山那岐山国定公園,湯原奥津県立自然公園,備作山地県立自然公園等の自然公園を背景に,高原や森林,渓谷,湖等の美しい自然,さらには歴史の息づく古い町並みや温泉,伝統文化など,変化と魅力に富んだ特色ある地域資源に恵まれており,訪れる人びとが心身ともにリフレッシュすることのできるリゾート地として,最適の地域である。
この地域については,良好な自然環境を保全しながら,中国縦貫自動車道や中国横断自動車道等高速広域交通網を最大限に生かし,総合保養地域整備法に基づく「蒜山美作リゾート構想」をすすめ,地域資源の活用による地域産業との連携や雇用の拡大,地域イメージの向上など,本構想推進の効果が地域の隅々にまで行き渡るよう,特色ある総合保養地域として整備を促進する。

(2)リゾート拠点の整備
リゾートライフに対する人びとの多様なニーズに応えるため,自然,景観,文化等の地域特性をふまえ,県下の適地に快適で個性ある拠点施設の整備をすすめる。
倉敷チボリ公園は,新たなライフスタイルを先取りし,県民の豊かな生活を築いていく拠点として,緑と花と水辺をベースに,多目的シアター等の教養文化施設,レストラン,ショッピング施設,アミューズメント施設等を配置し,文化性とアミューズメント性を兼ね備えた新しいタイプの都市型公園として整備をはかる。そして,子どもからお年寄りまで楽しめる県民,市民の憩いの場,さらには全国,世界から人びとがつどい,ふれあう岡山県の新しい交流,文化の拠点として充実させる。
県北地域の拠点都市である津山市では,都市型リゾートの拠点としてアミューズメントと芸術文化を兼ね備えた公園であるグリーンヒルズ津山の建設をすすめる。
井笠地域については,農業とスポーツを組み合わせた地域の交流の場として西部アグリスポーツ公園(仮称)の建設をすすめるとともに,地域の特色を生かしたリゾート施設の整備を促進する。
玉野地域については,港湾機能や美しい海岸線など豊かな自然を生かしながら,マリーナや港湾施設の整備,スペイン村計画等をすすめ,海洋リゾートの形成を促すとともに,玉野・児島地域の沿岸部の開発性の高まり等を見定めながら長期的な視点に立って人工島の具体化を検討する。
高梁地域においては,吉備高原西部地域におけるリゾート振興と交流の促進をはかるための総合的な広域拠点施設「吉備ハイランド・オアシス(仮称)」の整備について具体化をすすめる。
阿新地域については,県西北部地域の活性化をはかるためスポーツ・文化施設などを核とする広域交流拠点の整備について検討をすすめる。
また,県内に数多く残っている美しい自然や農山漁村のたたずまいのなかで,低廉な料金で気軽に滞在でき,農山漁村の生活を体験しながら,地域住民とのふれあいを深めることができる農村型リゾートについても,新規地区の設定と既存地区の内容充実に努める。

(3)受入れ体制の整備
利用客が日常の生活から離れ,真のゆとりやうるおいを得ることができるように,滞在生活を演出し,利用客を楽しませるソフトの充実をはかるとともに,数日から数週間の長期滞在や繰り返しての利用への工夫を行い,利用客にとって楽しく,快適で,魅力あるリゾートの整備を促進していく必要がある。
このため,滞在しても飽きないプログラムの用意と,その演出者としての指導者の養成をすすめるとともに,利用客への気配りの行き届いた応対をはじめ,魅力的な地域の特産品や旬の味をあしらった郷土料理や多様なスポーツ・屋外活動の提供などサービスの向上を促す。
さらに,ニーズの変化に対応した目的別,対象別,用途別のきめ細かいリゾート情報の提供を行うとともに,イベントなど地域情報等の一元的掌握ができるよう,情報ネットワーク化を推進する。

第2 生きがいのある社会とひとづくり

1 愛と奉仕の地域づくり

家庭

課題と施策の方向

家庭は,コミュニティを形成する基礎的な単位として,そこにくらす家族が深い信頼で結ばれ,ふれあい,団らんを通じて,明日への活力をはぐくむ場である。
従来,都市化や企業における雇用の増大等を背景に核家族化が進展してきたが,さらに,近年の高齢化や女性の社会進出の増加等に伴うライフスタイルの変化は,家庭の形態を多様化させ,また機能を変化させることとなった。
このようななかで,これからの家庭は,家族一人ひとりの工夫と愛情により,お互いが自主的に役割を分かちあいながら,新しく個性的な形態をつくり出していかなければならない。
このため,家庭の役割や重要性について啓発を行うとともに,明るい家庭づくり県民運動の推進に努め,それぞれの価値観をもつ家族一人ひとりが家庭のなかでの役割をしっかりと認識し,家庭は家族の「協働」の場との積極的な位置づけのなかで,家族の健康づくりや育児,高齢者の生活問題への支援,家庭教育の充実など家庭と地域,関係機関が一体となった施策を推進する。
また,それぞれの家庭のもつ機能を高めあい,あるいは,補完しあうため,家庭相互の交流活動をすすめるとともに,地域におけるコミュニティ・ボランティア活動や国際交流活動などへの家族ぐるみの積極的な参加を促す。

重要施策

(重要施策の体系)

愛とやすらぎのある家庭づくり

  • 明るい家庭づくり意識の高揚
    • 県民運動の推進
  • 多様化する家庭機能への対策
    • 家族の健康づくり
    • 育児・高齢者生活の支援
    • 家庭教育の充実
    • 家族の協働意識の推進
  • 家庭の社会参加の促進

1 明るい家庭づくり意識の高揚

近年のライフスタイルの変化によって,家族の明日の活力をはぐくむ場としての家庭の機能が失われつつあると懸念する声もある。
このため,家庭の機能やあり方,家庭内で起こる種々の問題とその解決方法などについての講演会や,幅広く家庭同士が世代や地域を越えて交流する家族ふれあいのつどいを開催して,家庭のあり方を見直すための機会の提供に努めるとともに,若い世代を対象に家庭のあり方をともに考える新しい家庭づくり事業を推進する。また,「家庭の日」の普及啓発と定着をはかる。

2 多様化する家庭機能への対策

(1)家族の健康づくり
しあわせな家庭生活を支える基本は,家族の健康であり,このため,家族の健康をつくる県民運動をはじめ,健康フェスティバル,親子肥満予防教室,思春期教室の開催などへの家族ぐるみでの参加を促すとともに,家族で気楽に行えるスポーツ・レクリエーションなどの普及に努める。また,不登校,過食・拒食症,更年期や老年期に起こりがちな心の健康に関する問題などについても,気軽に相談をすることのできる体制の整備に努める。

(2)育児・高齢者生活の支援
核家族化,就労する女性の増加,価値観の多様化,近所づきあいの疎遠化など家庭を取り巻く環境も著しく変化し,家庭の子どもの養育機能や高齢者の介護機能の低下が懸念されている。
このため,子育てや高齢者介護を含む家庭のあり方に関する社会全体の関心を喚起し,家庭,地域,企業,行政が,それぞれの立場から,総合的に子育てや高齢者介護のための社会的支援策を展開していく。
家庭の育児機能の支援については,児童相談所,保健所など保健・福祉の連携をはじめとする幅広い相談体制の整備をはかるとともに,児童クラブの充実,保育サービスの充実に努める。
また,高齢者の多くは介護を要する状態になっても住み慣れた家庭や地域で,家族や友人,知人などとのふれあいのなかでくらすことをのぞんでおり,家族も在宅福祉に関するサービスや情報の提供を受けながら,可能な限り家庭で介護をしたいとのぞんでいる。
このため,ホームヘルプサービス事業,デイサービス事業,ショートステイ事業,家族介護者リフレッシュ事業など,在宅福祉サービスの大幅な拡充をすすめ,高齢者や家族介護者に対する支援を強化する。
また,地域住民が互いに助け合い,支えあう地域福祉活動等を推進し,地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくり事業の全県展開をすすめていく。
さらに,ひとりぐらし老人が同じ建物のなかで互いに助け合い共同生活できるひとりぐらし老人共同生活支援事業に取り組む。

(3)家庭教育の充実
家庭は,乳幼児期における子どもの人格形成に大きな影響を与え,また,青少年期においては,自立心を育て健全な青少年を育成していくうえで重要な役割を担っている。
このため,家庭における親の役割,責任の重要性についての啓発をすすめるとともに,子どもの成長段階で家庭が最良の養育の場となるよう,家庭教育学級の開催,ネットワーク子育てゼミナール,子育て相談事業など家庭における教育を支援する施策を市町村と一体となって展開する。

(4)家族の協働意識の推進
家庭は,最も小さなコミュニティであり,すべての社会生活の基礎は家庭における家族の包容,連携と協働の上に存在している。
経済的豊かさから心の豊かさに人びとの意識が目覚めつつある今,家庭におけるこのような連帯・協働の意識をはぐくむことが必要である。
このため,「お父さん」の家庭問題への参加意識の啓発をはかる「おおいに家庭を語る事業」を実施し,家庭は家族の協働の場であるとの意識の推進に努める。

3 家庭の社会参加の促進

家庭や地域のかかえるさまざまな課題を地域住民が協力して解決するため,地域におけるボランティア活動,生活文化・伝統芸能の伝承活動,祭りなどのイベントへの家族ぐるみの積極的な参加を促進する。
近隣とのふれあいをより深めるため,「あいさつ運動」や「愛の一声運動」等をすすめる。
また,ホームステイなど家庭での国際交流などが展開されるよう県民意識の醸成に努める。

コミュニティ

課題と施策の方向

地域住民の連帯感の希薄化をはじめ,価値観の多様化,都市化のもとで,個人や地域がかかえる課題を地域住民全体の力で自主的に解決し,さらに生活環境を向上していくためには,住民相互の主体的な協力や参加が不可欠で,その基盤となるものがコミュニティであり,近年では,地域内の活動だけではなく他の地域との交流にも取り組み,活動の輪も広がるなどコミュニティ活動は,着実に地域に根づいたものとなってきている。
しかし,住民の生活の周辺には高齢化の進展,防災,いじめ・学校不適応,ごみ処理等さまざまな問題があり,これらは地域の住民が一致協力しなければ解決できなくなっている。
こうした問題を解決するためには,高齢化対策などの施策に加えて,コミュニティ活動の一層の活発化をはかる必要があり,従来にも増したコミュニティ施策の展開が必要である。
このため,コミュニティ意識の高揚や,コミュニティリーダーの育成,コミュニティ活動の活発化,活動拠点の整備や活用の活発化をはかる。
また,住民が一体となって県内各地に点在するふるさとの趣を残す景観や伝統的な町並みを次代に継承していくよう努める。

重要施策

(重要施策の体系)

魅力と連帯意識あふれるコミュニティの創造

  • コミュニティ意識づくり
    • コミュニティ意識の高揚
  • コミュニティ活動の促進
    • コミュニティリーダーの育成
    • コミュニティ活動の活発化
    • コミュニティ活動拠点の活用の促進
  • ふるさと村・町並み保存の推進

1 コミュニティ意識づくり

住民の自発的な参加と連帯感に支えられたコミュニティの諸活動は,今日ますます重要度を増し,コミュニティに対する地域住民の関心と意欲も高まってきており,これをさらに発展させ,よりよいコミュニティづくりを行う必要がある。
このため,県,市町村との連携により,各種広報媒体を積極的に活用し,あらゆる機会を通じてコミュニティ意識の高揚に努める。
また,地域社会に深いかかわりを有している企業及び団体等もコミュニティの一員であるとの意識を啓発するとともに,コミュニティ活動への積極的な参加,協力を呼びかけるため,地域活性化参加活動事例集を作成し配布する。
さらに,コミュニティに関する情報提供や調査研究を行う岡山県コミュニティ協会の充実,強化,シンポジウムの開催などを通じて,意識の高揚をはかる。

2 コミュニティ活動の促進

(1)コミュニティリーダーの育成
地域の人びとがもっている生活上の課題や欲求を的確に把握し,その意向を地域住民の総意にまで高めるとともに,実行力と高い意識をもったコミュニティリーダーの育成がコミュニティづくりをすすめていくうえで極めて重要である。
このため,コミュニティ活動の重要な担い手として活躍している青少年,女性,壮年層はもとより,高齢者のリーダーの育成に努めるほか,コミュニティ活動のリーダーを登録,紹介する人材銀行「ふれあいリーダーバンク」の一層の充実と活用の促進をはかる。
また,地域に根ざした活動を推進するため,住民の身近な地域でのふれあい塾,地区リーダー研修フォーラムを開催する。

(2)コミュニティ活動の活発化
魅力あるコミュニティ活動を展開するためには,積極的な住民の意欲と参加による充実した活動が求められている。
このため,高齢者,障害者との交流,友愛訪問など,地域住民の連帯を深める活動はもとより,交通安全や省資源・省エネルギー,暴力追放など住民が協力して地域の課題を解決していく活動の活発化をはかる。
また,コミュニティ活動を支援するため,地域課題の解決などに取り組むための学習の場であるコミュニティカレッジの開設や地域類型の異なったコミュニティ組織同士が交流するコミュニティ縁組の推進をはかるほか,先進地との交流を通じて活動の活発化をはかるためのコミュニティふれあいバスの運行などを行う。
花いっぱい運動や生活学校運動等美しく魅力ある地域環境づくりのための取組みや生活環境問題への取組みを助長する。

(3)コミュニティ活動拠点の活用の促進
コミュニティ活動が地域で活発に展開されるためにコミュニティハウス等の整備を引き続きすすめるとともに,デイサービスホーム事業を活用した高齢者のための入浴機能の付設,空き家や遊休施設の改造など既存施設の有効利用やコミュニティハウスの改修等をはかり,地域住民が気軽に,そして多目的に利用できる施設の整備に努める。また,野外活動の拠点となるコミュニティ広場,コミュニティの森,ちびっ子広場,身近なスポーツ施設等の整備をすすめる。
また,地域社会の一員として,企業や民間団体に対して,これらが所有する運動場等施設の地域開放等について理解と協力を求める。

3 ふるさと村・町並み保存の推進

これまで,地域固有の民俗,文化等の振興をはかり,人びとの心なごむふれあいの場としてふるさと村,町並み保存地区を指定し,整備をすすめてきた。
今後においても,ふるさと村については,景観修景事業を引き続き実施するとともに,特長ある地域づくりのための特産品開発等をすすめる。
また,伝統的な町並みについても,地域住民の保存意識の高揚をはかるとともに,適地については町並み保存地区に指定し,整備をすすめる。
さらに,整備の推進とあわせて,地域に生活する人びとが郷土のよさを再確認し,特産品や伝統的行事を大切にする意識づくりを一層推進する。
ふるさと村と町並み保存地区との交流の促進をはかるため,互いに交流し,情報交換を行う場として,町並み活性化研究会の設置を促進する。

地域福祉

課題と施策の方向

すべての人は,家庭を中心として住み慣れた地域社会のなかで家族や友人などとのきずなを保ちながら,安心してくらしていけることを強くのぞんでいる。
このため,公的なサービス体制の整備に加え,介護を必要とする人とそれを支える人の相互理解をすすめ,地域の住民,団体それぞれが役割を分担し,お互いが支えあい,状況に応じてきめ細かな心のふれあう福祉サービスが提供できるよう,それぞれの特性に応じた地域福祉システムを地域自らが築いていかなければならない。
このようなシステムづくりのモデルとして平成3年度から取り組んできた地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくり事業は,地域に住む人たちがすべて一つの家族であるとの認識のもとに,相互に助け合い,支えあって地域の福祉を推進しようというもので,住民自身の自覚の高まりによって大きな成果をあげつつある。このような実績のもとに,未実施の地域においても地域福祉をより具体化したいとする意欲が高まってきていることから,今後,全県的にこの事業を展開する。
また,高齢者や障害者が,「いつでも」,「どこでも」,「気軽に」,必要とする福祉サービスを利用できるよう,在宅サービスや施設サービスの活用はもとより,地域福祉推進の担い手である福祉人材の育成強化,地域でのボランティア活動の強化に積極的に取り組む。

重要施策

(重要施策の体系)

地域で支えあう福祉システムづくり

  • 地域福祉意識の変革
  • 福祉人材の育成強化
  • 地域福祉のシステムづくり
  • 在宅福祉サービスの利用促進
  • 社会福祉施設機能の利用促進

1 地域福祉意識の変革

地域福祉は,愛と奉仕の地域づくりを基本に,すべての住民の支えあいによりつくりあげるものとの意識の定着が不可欠である。特に,疾病などにより援護が必要となる高齢者や障害者などが地域社会のなかで安心してくらしていくことができるようにするには,ニーズに応じて適切な福祉サービスを提供できるシステムを構築する必要があり,地域のすべての住民や団体が地域福祉の必要性を認識し,自ら福祉ボランティアとしての活動に積極的に参加することが求められる。
このため,県,市町村,社会福祉協議会などの密接な連携による広報活動,ボランティア協力校など学校における福祉教育等を通じて,広く県民や団体,企業等の地域福祉に対する理解の向上に努めるとともに,青少年から高齢者まであらゆる世代のボランティア活動への積極的な参加を促進する。 また,ホームヘルプサービスの拡充や社会福祉施設の地域開放などにより,地域住民の福祉サービスについての理解の向上を促進し,地域福祉が身近なものと感じられるよう意識の変革をはかる。

2 福祉人材の育成強化

核家族化の進展やこれに伴うひとりぐらし老人,高齢者世帯の増加などにより,地域ぐるみできめ細かに助け合い,支えあっていくことが求められており地域における介護力を高めることが必要となっている。
このため,社会福祉協議会などが中心となって,学生などを対象とした在宅介護体験事業などに取り組み,介護技術を修得したボランティアの養成を促進するとともに,ホームヘルパーの育成に努める。さらに,地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくり事業等による地域福祉システムの構築にあたっても,ボランティアリーダーやコーディネーターが重要であることから,民生委員等に対する研修などを通じて,その育成確保をはかる。
また,福祉人材センター等において,介護福祉士等専門職員や福祉業務従事者の研修を行い,ホームヘルプ事業など公的な福祉サービスにかかわる人材の育成強化をはかる。

3 地域福祉のシステムづくり

地域の特性に応じたきめ細かい福祉サービスを提供する地域福祉システムの拡充を一層推進していくため,地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくり事業について,その成果をふまえてマニュアルを作成し,全県的に取組みを拡大するとともに,地域住民と各種団体とが一体となって,日常生活のなかでボランティア活動への参加を促進する。さらに,そうした地域のボランティア活動と介護を必要とする人びとへの各種公的在宅福祉サービスとの連携をはかりながら,小地域単位で,個々のケースに応じた多様な福祉サービスが提供できる地域福祉システムの構築をすすめる。
また,地域福祉活動を推進する中核的組織である県や市町村の社会福祉協議会の基盤と機能の強化をはかり,地域のニーズに適切に対応できる福祉情報の提供システムの整備など,地域におけるきめ細かい福祉活動を支えるシステムづくりを促進する。
さらに,福祉人材の養成,福祉情報の集積・発信など地域福祉の拠点機能をもった新総合福祉会館の建設を推進する。

4 在宅福祉サービスの利用促進

家族や近隣の人たちとの日常的な人間関係を維持しながら家庭で安定した生活をおくるためには,ホームヘルプなどの公的なサービスをはじめ,介護,買い物,給食,送迎,洗濯などの地域ぐるみで取り組むさまざまな在宅福祉サービスを拡充することはもとより,それが十分利用されることが必要である。
このため,ショートステイ,デイサービスなどの公的福祉サービスの利便性や快適性をさらに高め,在宅介護が必要な高齢者などの利用の促進をはかる。
また,援護を必要とする人びとの多様なニーズに適切に応えるため,市町村社会福祉協議会や在宅介護経験のある地域住民のボランティアグループなどによる,多様で利用しやすい在宅福祉サービスの提供とその利用の促進に努める。

5 社会福祉施設機能の利用促進

社会福祉施設は,在宅福祉サービスの支援拠点として,その有する技術,機能を地域に開放するとともに,多様な地域ニーズに対応できるよう,施設の整備やさまざまなサービスの拡充,施設職員の養成・確保や資質の向上に努めることが求められている。また,高齢者や障害者をはじめ地域住民が,社会福祉施設のもつ介護,リハビリテーション,ショートステイなどの高度で専門的な技術や機能を積極的に利用していくことが必要である。
このため,施設の技術,機能の地域開放など地域との連携を強める取組みを支援するとともに,地域住民の積極的な利用の促進をはかる。

ボランティア

課題と施策の方向

岡山県においては,地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくり事業などを通じて地域福祉を支えるボランティア活動が促進されているが,阪神・淡路大震災を契機としてボランティア活動に対する認識が深まっている。
今後,県民一人ひとりがボランティア活動に参加し,生活のゆとりや地域社会とのかかわり等を充実させていくためには,ボランティア休暇等制度の普及やいつでも,どこでも,だれでも,気軽に,楽しくボランティア活動に参加できるよう,環境の整備が求められている。
このため,ボランティア活動に関する一層の意識の高揚をはかるとともに,ボランティア活動にだれでも参加できるよう活動プログラムを開発するなど,参加の促進をはかる。
また,各種ボランティア活動の推進者となるリーダーを育成するとともに,ボランティア活動に安心して取り組めるようボランティア保険への加入の促進やボランティアセンターの充実をはかるなどの支援に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

自立と参加によるボランティアの推進

  • ボランティア活動の促進
    • ボランティア意識の高揚
    • ボランティア活動参加の促進
  • ボランティア活動の支援
    • ボランティアリーダーの育成
    • ボランティア活動の支援

1 ボランティア活動の促進

(1)ボランティア意識の高揚
社会福祉協議会やコミュニティ組織などとの密接な連携により,広報活動等を通じて積極的にボランティアの啓発に努め,ボランティアフォーラムの開催や啓発資料の配布によりボランティア活動の促進をはかる。
特に,他人に対する思いやりの心や主体性を育てるためには,幼少期からのボランティア体験等が重要である。
このため,学校教育において,ボランティア教育を教育課程のなかに系統的に位置づけるとともに,家庭,学校,企業など,地域や職域においてボランティア活動に関心をもち,これに参加するよう積極的な意識啓発に取り組み,ボランティア意識の高揚をはかる。
ボランティア活動に活発に取り組んでいる個人,団体の活動を広報するとともに,優れたボランティア活動を顕彰する。

(2)ボランティア活動参加の促進
だれでも参加できる年齢やライフスタイル,関心度などにあった参加プログラムを開発し,より多くの参加の機会を提供するとともに,企業,団体に対し,ボランティア休暇等制度の普及をはかる。
また,ボランティア活動の推進のためには,身近な所で担い手と受け手の情報が得られるよう,ボランティアセンターをはじめ公民館,図書館等にボランティア活動に関する各種の情報を提供し,参加の促進をはかる。
また,ボランティアセンターと生涯学習センター及び国際交流センターとの連携をはかり,保健,福祉,医療,地域防災,国際交流,地域振興等多様なボランティア活動に対応するためのボランティア情報の提供を行い,活動の支援に努める。

2 ボランティア活動の支援

(1)ボランティアリーダーの育成
各種ボランティア活動を効果的に推進するためには,総合的な企画,登録,あっせん,連絡調整等を行うコーディネーターや身近なところで活動の相談にあたるアドバイザーが不可欠である。
このため,ボランティアとして活動に参加しながらリーダー的な役割ももち,活動意欲のある人に対して,ボランティア活動セミナー等を開催して,リーダーの計画的な育成に努める。

(2)ボランティア活動の支援
ボランティア活動に安心して取り組めるようボランティア保険の加入促進や活動内容にあわせたボランティア保険等の内容の充実に努める。
また,ボランティア活動が安定的,継続的に行われるよう,活動資機材の整備を支援し,拠点としてのボランティアセンターを充実するとともに相互のネットワーク化をはかり活動を支援する。
また,ボランティア活動に必要な基礎的知識や情報を掲載したボランティア必携を作成・配布し活動の支援を行うとともに,環境美化など実践促進事業をさらに推進する。

2 すべての人が生きがいを

高齢者

課題と施策の方向

岡山県では全国平均を上回る早さで高齢化がすすんでおり,平成17年には高齢化率が約21%とおおむね5人に1人が高齢者という本格的な高齢社会が到来するものと考えられる。
高齢化をめぐる課題は,単に高齢者だけのことにとどまらず,社会全体にかかわることであり,長寿が真のよろこびとなるような「活力に満ちた明るい長寿社会」の実現をめざし,人生80年時代にふさわしい総合的で新たな社会システムの構築をすすめなければならない。
このため,高齢期を安心してくらせる地域づくりを推進し,長くなった高齢期において,高齢者自身が社会活動に積極的に参加し,地域社会や各世代間の交流の担い手として活躍できるよう支援する。また,意欲と能力に応じた雇用・就業の場の確保に努める。
高齢社会にあっては,高齢になっても社会からリタイアすることなく元気で生きがいのある生活をおくり,社会活力を保っていくことが重要であり,新寝たきり老人ゼロ作戦や痴呆性老人対策,がん対策などを通じて,健康づくり,疾病の予防対策等を積極的に推進する。
また,住み慣れた家庭や地域で自立した生活をおくることができるよう,在宅福祉サービスについてその充実と地域の拠点施設の整備に努めるとともに,バリアフリー化を考慮した住宅整備などを支援し,あわせて,不自由なく外出や買い物ができるよう配慮したまちづくりをすすめる。
在宅での介護や療養に対するニーズの高まりをふまえ,民間シルバーサービスの積極的活用もはかりながら,保健・医療・福祉サービスの有機的連携により,総合的サービスの供給体制づくりを推進していく。
また,在宅での生活が困難となった高齢者のために,特別養護老人ホームや老人保健施設など保健福祉施設の一層の整備充実をはかる。

重要施策

(重要施策の体系)

総合的な長寿社会対策の推進

  • 長寿社会に対応したシステムの構築

生きがい対策と社会参加の促進

  • 生きがいづくりと社会参加の促進
    • 生きがいと社会参加のための条件整備,他世代との交流の促進
    • 老人クラブ活動の支援
  • 就業の場の確保と生活基盤の安定
    • 就業機会の拡大
    • 生活の安定

健康づくりの推進

  • 新寝たきり老人ゼロ作戦の推進
    • 予防方法の普及啓発
    • 基本健康診査の充実
    • 機能訓練,訪問指導の充実
    • 脳卒中情報システムの充実

保健医療の充実

  • 保健医療サービスの充実
  • 老人医療制度の充実

高齢期の生活を支える介護サービスの充実

  • 在宅福祉の充実
    • 在宅福祉サービスの充実
    • 民間シルバーサービスの育成
    • 地域ぐるみの在宅支援体制の確立
    • 高齢者にふさわしいすまいの整備
  • 施設福祉の充実
    • 施設の適正配置と運営の指導
  • 痴呆性老人対策の推進
    • 普及啓発
    • 家族介護者への支援
  • 人材の確保
    • 人材の養成・確保
  • 保健・医療・福祉の連携・総合化の推進

1 総合的な長寿社会対策の推進

長寿社会対策は,保健・医療・福祉をはじめ,雇用・所得保障,生涯学習・社会参加,住宅・生活環境など広範な分野にわたっている。
このため,行政はもとより,家庭,地域,団体,企業などがあらゆる分野でそれぞれの役割を果たし,高齢者が生きがいをもって安心してくらせるよう,一致協力して取り組むことによって,県及び市町村における高齢者保健福祉計画の着実な推進に努め,人生80年時代にふさわしい高齢者の保健福祉サービスを総合的かつ計画的に提供できるシステムの整備をすすめる。
また,高齢社会についての県民意識の高揚をはかるとともに,「高齢化社会対応マニュアル」や「ハートビル法(*)」などに基づく高齢者や障害者にやさしいまちづくりの実現に向けた対策,高齢者の多様な生産活動や他世代交流等を通じた生きがいづくりと社会参加の促進のための施策等もすすめ,総合的な高齢化対策を推進する。
高齢化の進展に伴い,寝たきり老人,痴呆性老人などの要介護老人の増加が見込まれるなど,介護を取り巻く環境が厳しい状況になるところから,寝たきりの予防対策及び介護対策を推進するとともに,保健福祉サービスの点検・評価を実施するなど高齢者の人権に配慮した取組みをすすめる。
さらに,地域ぐるみで高齢者を災害から守る支援体制の整備を推進する。

2 生きがい対策と社会参加の促進

(1)生きがいづくりと社会参加の促進

1 生きがいと社会参加のための条件整備,他世代との交流の促進
長寿社会においては,高齢者自身がボランティア活動やコミュニテイ活動などに積極的に参加し,かつ主体的に活躍し,豊富な人生経験,知識,技能が社会のなかで価値あるものとして受け入れられ,生かされるような仕組みづくりを推進していくことが必要である。
このため,地域社会において,高齢者が一定の役割を継続して担いながら,伝承活動,特産品の製作などを通じて,主体的に地域活動に参加できるよう,三世代交流の実施や高齢者ボランティアリーダーの養成,ふれあいリーダーバンクへの登録などをすすめる。
あわせて,高齢者の社会参加活動の事例紹介などを行い,その意義や必要性などについての普及啓発を一層推進し,社会全体の意識改革に向けた取組みをすすめる。
高齢者から子どもまですべての県民の生涯学習の拠点である生涯学習推進センターについては,他世代との交流を促進するなどの特色ある機能の充実に努める。さらに,学習ニーズに適切に対応するため,市町村の生涯学習センター等地域住民に身近な学習施設の整備充実を促進し,ネットワーク化をはかる。
また,安全で楽しい高齢者向けのスポーツ・レクリエーションの普及,各種スポーツ大会など交流活動の促進をはかるため,指導者の養成に努めるとともに,高齢者ふれあいスポーツ広場など憩いと交流の場の整備を行う。
さらに,高齢者の生きがいと健康づくりを推進する明るい長寿社会財団の活動を通じて,晴れの国メロウ岡山ねんりんピック,全国健康福祉祭へのさまざまな世代の参加をすすめる。
勤労者の職業生活から老後生活へのなだらかな移行がはかられるよう,生活設計セミナーを開催するなど,在職中から地域活動への関心を高め,その参加を促進する。

2 老人クラブ活動の支援
地域における高齢者の社会参加活動の中核的役割を担っている老人クラブが,さらに活発で幅広い活動を行うためには,加入率の向上や自主財源の確保,さらに女性を含む中核的指導者の養成などにより,その魅力を向上させることが必要である。
このため,老人クラブ活動の優良事例をリストアップし,幅広く紹介を行い,未加入者の加入を促進するとともに,シルバー基金の充実,リーダーとなる人材の養成などを行い,老人クラブ組織の強化をはかる。
また,寝たきり老人やひとりぐらし老人への友愛訪問などのボランティア活動や環境美化などの社会貢献活動をはじめ,中四国の老人クラブとの相互交流,老人クラブ大会の開催,三世代交流など社会参加活動の促進に努める。

(2)就業の場の確保と生活基盤の安定

1 就業機会の拡大
高齢社会を活力あるものとするためには,高齢者の働く意欲と能力に応じ,長年培ってきた知識,経験,技能などを生かすことができる,雇用・就業の場を確保することが極めて重要である。
このため,(社)岡山県雇用開発協会との連携により,60歳定年を基本とした65歳までの継続雇用の推進や生活圏域における雇用の創出に努めるとともに,公共職業訓練の充実,職業能力開発への援助をすすめるほか,事業主に対し高齢者向けの職場改善についての指導や啓発を行うなど高齢者の雇用・就業のための条件や環境の整備をすすめる。
また,高齢者の再就職の促進をはかるため,各種の高年齢者雇用助成金の活用をすすめるとともに,高齢者無料職業紹介所,高年齢者職業相談室などにおいて,幅広く就労あっせん,相談,情報提供を行うほか,高齢者が2人で1人分の仕事を行う高齢者ペア就職など,ニーズに応じた多様な形態による再就職を促進する。
さらに,定年退職後などにおいて高齢者が生きがいをもって社会参加できるよう,シルバー人材センター,ミニシルバー人材センターの設置をすすめるとともに,農山村地域においては,地域特産品づくりなど高齢者の技術,経験を生かした多様な生産活動を促進する。

2 生活の安定
国民年金や厚生年金をはじめとする公的年金は,老後生活における所得保障の大きな柱として重要な役割を担っている。
このため,公的年金制度を長期的に安定させていく必要があり,制度の本質的要素である「世代間扶養」の考え方について,県民の幅広い理解と同意が得られるよう,あらゆるメディアを通じて広報を行い周知,啓発をはかるとともに,相談体制の充実に努め,国民年金への加入促進をはかる。
また,それぞれの高齢者の多様化した生活やニーズに応じて老後生活をより豊かなものとするためには,公的年金制度のみならず,民間の制度との適切な組合わせによる老後所得の充実も必要であることから,企業年金や個人年金などによる自助努力の促進をはかる。

3 健康づくりの推進

(1)新寝たきり老人ゼロ作戦の推進

1 予防方法の普及啓発
生涯を通じて健康を保持・増進し,長くなった高齢期においても,いきいきと充実した生活をおくることが重要であり,寝たきりゼロをめざして,脳卒中など寝たきりの原因となる疾患の予防や適切なリハビリテーションにより「寝たきりは予防できる」ことを積極的に普及啓発していく。
また,高血圧や動脈硬化など寝たきりの原因となる疾患の予防のための健康教育や健康相談などの一層の充実をはかる。

2 基本健康診査の充実
基本健康診査は,高齢者の健康づくりと寝たきり予防対策の中心をなすものであり,今後一層の受診率向上が必要である。このため,基本健康診査とがん検診を同時に実施するいわゆる総合健康診査方式の導入や利用券方式等による医療機関での個別健診の普及を促進する等,地域の実情に即した,受診者が利用しやすい健診体制づくりを推進する。

3 機能訓練,訪問指導の充実
脳卒中の後遺症などにより心身の機能が低下しても寝たきりにならないようにするためには,住民の身近なところでのリハビリテーションが重要であり,市町村保健センターなどの実施場所の増加や送迎の体制整備などをすすめ,希望者が容易に参加できる体制づくりを推進する。
また,訪問指導については,生活の場における本人や家族のニーズの的確な把握により,一人ひとりの状況に応じた介護方法や介護機器の使い方,住宅改造の方法などの具体的な指導や支援を行い,寝たきりの予防を効果的に推進するため,その充実,強化をはかる。

4 脳卒中情報システムの充実
脳卒中患者の発症早期からの情報を把握し,退院後は市町村がその情報をもとに患者に必要なサービスを提供することにより寝たきりの予防をはかる脳卒中情報システムについて,医療機関など関係機関との連携を強化し,脳卒中患者の登録率の向上をはかるとともに,積極的な活用をはかる。

4 保健医療の充実

高齢者の在宅での療養のニーズの高まりに応えるため,保健・医療・福祉サービスを提供する機関や施設の連携により,健康づくり,疾病予防から治療,リハビリテーション,介護サービスに至るまでの一貫した体制づくりが求められている。
このため,家庭や身近な地域で必要な保健医療サービスを受けられるよう,老人保健施設や医療機関などによるリハビリテーションやデイ・ケア,訪問看護や訪問リハビリテーション,訪問診療などの拡充をはかる。
老人医療費公費負担制度については,今後とも安定的な運営をしていく必要があり,高齢者の健康や医療に対する意識啓発を推進しながら,適切な実施に努める。

5 高齢期の生活を支える介護サービスの充実

(1)在宅福祉の充実

1 在宅福祉サービスの充実
高齢者の多くは介護を要する状態になっても住み慣れた家庭や地域で,家族や友人・知人などとのふれあいのなかでくらすことをのぞんでおり,また,家族としても在宅福祉に関するサービスや情報の提供を受けながら,可能な限り家庭で介護をしたいとのぞんでいる。
このため,身近な地域での保健・医療・福祉の各施策の総合的な調整をはかりながら,高齢者一人ひとりのニーズに応じた多様なサービスを計画的に提供し,自立を支援する体制の整備を推進する。
まず,ホームヘルプサービス事業,デイサービス事業,要介護者を特別養護老人ホームなどで短期間受け入れるショートステイ事業,家族介護者が相互交流などにより心身のリフレッシュをはかる家族介護者リフレッシュ事業など,在宅福祉サービスの大幅な拡充をすすめ,高齢者や家族介護者に対する支援を強化する。
また,特殊寝台,緊急通報装置等の日常生活用具の給付などを行うとともに,介護の実習や福祉機器の展示などを通じ,介護技術や介護福祉機器の普及及び指導者の養成を行う介護実習・普及センターの設置をすすめる。
さらに,家族介護者が地域で専門的な相談ができる在宅介護支援センターや県・市町村のサービス相談センターの充実をすすめる。
在宅介護支援センター,老人デイサービスセンター,ホームヘルパーステーションなどの在宅支援施設を整備するにあたっては,地域における在宅保健福祉サービスの拠点として,家族介護者等のさまざまなニーズに総合的に対応する在宅介護支援センターを核に,種々の支援施設の一体的整備をすすめ在宅複合型施設の確保をはかる。
在宅福祉サービスの実施については,保健福祉サービスの一体的な運用をはかるとともに,高齢者の生活圏域を基盤とした24時間対応ヘルパー(巡回型)の実施やデイサービスの早朝や夕方の時間外対応など,利用者本位のサービス提供体制の整備をはかっていくことを重点として取り組んでいく。

2 民間シルバーサービスの育成
保健・医療・福祉サービスに対する多様化,高度化した需要に迅速かつ的確に対応していくためには,公的サービスに加え,民間サービスの積極的活用によるサービスの多様化,弾力化をすすめることが求められることから,民間シルバーサービスの健全な育成をはかる。

3 地域ぐるみの在宅支援体制の確立
高齢者の住み慣れた家庭や地域における生活を支えるためには,在宅保健福祉サービスの充実に努めることはもとより,地域住民が高齢者問題を自分自身のこととしてとらえ,互いに助け合い支えあう地域福祉活動等を推進し,地域ぐるみの在宅生活支援システムを確立する必要がある。
このため,地域を一つの家と考え,在宅高齢者を取り巻く地域住民をはじめさまざまな団体などが積極的に地域福祉活動に取り組み,互いに支えあう地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくり事業を全県展開していく。
また,ひとりぐらし老人が,同じ建物のなかで互いに助け合い共同生活できる場を提供し,その不安感や孤独感の解消と生活の安定をはかるひとりぐらし老人共同生活支援事業に取り組む。

4 高齢者にふさわしいすまいの整備
高齢者が家庭や地域で,使いやすく安全でゆとりをもって住むことができるように,段差の解消や手すりの設置,住宅設備の改善など,高齢者の特性に配慮したすまいづくりをすすめる。
また,高齢者向け住宅の新築,増・改築に関する各種融資・助成制度の充実をはかるとともに,住宅改良(リフォーム)ヘルパー制度の活用をすすめる。
さらに,ケアハウスや高齢者世話付き住宅(シルバーハウジング),高齢者生活福祉センターの整備をすすめるとともに,有料老人ホームの建設について適切な指導を行うなど,一人ひとりの高齢者の状況に適した多様なすまいの確保に努める。

(2)施設福祉の充実
保健福祉施設の整備にあたっては,高齢者のニーズや地域バランス,さらには,入所需要の動向などをふまえ,在宅福祉サービスとの有機的連携にも配慮しつつ,計画的整備に努める。
高齢者の心身の特性に応じて,できる限り自立した生活をおくることができるよう,特別養護老人ホームや老人保健施設の整備に引き続き努める。
また,保健福祉施設のサービスの質の向上をはかるため,特別養護老人ホームの個室化など施設環境の改善を促進する。

(3)痴呆性老人対策の推進

1 普及啓発
痴呆性老人の対策は,今後その増加が見込まれるなかで,寝たきり老人対策と並び重要な課題となっている。
このため,痴呆の予防から相談,診断,治療,介護者への支援対策までの一貫した地域ケアシステムを確立する必要があり,保健・医療・福祉の連携による各種サービスの拡大,充実をはかり,これらの施策を総合的に推進する。
脳血管性痴呆については,その誘因となる脳血管障害の発生を防止することにより相当程度予防できるため,生涯を通じての健康づくりを基本とし,若いときから高血圧や高脂血症などの成人病予防対策を推進する。また,高齢者が明るい気持ちで毎日をいきいきと過ごせるよう,生きがい対策や社会参加活動の推進をはかる。

2 家族介護者への支援
痴呆性老人をかかえる家族を支援するため,医療機関に設置されている痴呆性老人介護相談コーナーや老人性痴呆疾患センターにおける専門的な相談,在宅介護支援センターでの相談,専門相談チームの家庭への派遣などの相談機能及び体制の充実をはかる。
また,ショートステイ施設,デイサービス施設,デイ・ケア施設,痴呆性老人を毎日でも受け入れることが可能なデイサービスセンターなどの施設の整備や機能の拡充を計画的にすすめる。
さらに,痴呆性老人をかかえる家族が,互いの悩みを話し合い介護の疲れをいやし,心身をリフレッシュするための会合や,痴呆についての理解を深め,介護技術を身につけることができるような家族介護者研修会などの開催を促進するとともに,地域における介護者の会などの自主的活動を促す。

(4)人材の確保
在宅介護の支援や施設福祉の充実をはかるうえで,サービスを支える人材を確保し,その資質を向上させることが緊急の課題である。
このため,就業していない保健婦,理学療法士,作業療法士,看護婦などの福祉専門職員については,福祉人材センターへの登録等を呼びかけ,潜在的な人材の掘り起こしを行い,要員の確保に努めるとともに,専門的な知識,技能を有するボランティアの養成及びその積極的な活用に努める。
ホームヘルパーについては,市町村社会福祉協議会や特別養護老人ホームなどへ派遣を委託し,非常勤やパートのヘルパーを活用するなど弾力的な運用をすすめる。また,その養成については,県で基幹的な養成研修を行うほか,市町村による養成を支援するとともに,民間の養成機関を積極的に指定して確保をはかる。さらに,その資質の一層の向上をはかるため,介護を中心とした実践的な研修等をすすめる。
理学療法士や作業療法士など,市町村単独デは確保の困難な人材については,広域的観点から人材の派遣システムを構築していくとともに,社会福祉士,介護福祉士も含めて,その養成に積極的に努める。

(5)保健・医療・福祉の連携・総合化の推進
介護を必要とする高齢者の増加に加えて,介護期間の長期化,要介護状態の重度化,介護者の高齢化,介護費用の増大など介護に関する問題が高齢期における人びとの最大の不安要因となっており,保健・医療・福祉の各サービスの連携のもとに,高齢者及びその家族が,いつでも,どこでも,それぞれのニーズに応じて,適切な介護サービスを主体的に選択することができるシステムづくりが求められている。
このため,要介護者の状況把握,ケアプランの作成,サービスの提供などについて調整を行うケアマネジメント機能の充実をはかる必要があり,岡山県高齢者サービス総合調整推進会議や在宅介護支援センター,市町村高齢者サービス調整チームなどの機能強化に努めるとともに,ケアマネジメントを充実するための体制の整備やそのための人材養成のあり方について検討をすすめる。
また,保健・福祉サービスの点検・評価を実施することなどにより,利用者のニーズに適切に対応しうる質の高いサービスの確保に努める。

* ハートビル法:高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律

母と子ども

課題と施策の方向

近年出生率が低下し,社会全体の活力の低下が懸念されるなど大きな社会問題としてクローズアップされるようになってきた。
家庭,地域,企業,行政が,それぞれの立場から,保育,労働,住宅,教育等多方面にわたって,総合的に子育てのための社会的支援策を展開していくことが求められている。
このため,保健・福祉の連携をはじめ,教育,医療などが一体となった幅広い相談体制の整備をはかり,家庭における子どもの養育を支援する。
また,地域全体で子どもの健全育成を推進するとともに,子どもが創造性や社会性を養うことのできる場の確保に努める。
そして,保育所が地域の子育て支援の拠点として,幅広い活動を展開できるよう充実をはかる。さらに,女性の就労と子育ての両立を支援するため,育児休業,再雇用制度など雇用環境面での整備や児童クラブの充実,乳児保育,保育時間の延長など保育サービスの充実に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

子どもを健やかに生み育てる環境づくり

  • 子育てについての意識啓発の推進
    • 社会全体の関心の喚起
    • 男女共同参画意識の醸成 ※参照「女性」
  • 家庭養育機能の強化
    • 家庭養育意識の高揚 ※参照「家庭」
    • 総合的な相談支援体制の整備
  • すこやか育児対策の推進
    • 健診・事後指導体制の充実
    • 思春期保健対策の充実
    • 療育指導の充実
  • 地域における児童健全育成の推進
    • 地域活動の促進 ※参照「コミュニティ」
    • 遊びとふれあいの場の確保
  • 子育てと仕事の両立支援
    • 就労のための環境整備 ※参照「女性」「勤労者」
    • 保育サービスの充実
  • 住宅及び生活環境の整備 ※参照「すまい」「都市」
  • ゆとりある教育の実現 ※参照「学校教育」

子どもの保護と自立の促進

  • 施設養護の充実
  • 里親の開拓と委託の促進
  • 児童相談活動の充実

母子家庭等の自立の促進

  • 経済的自立の支援
  • 就業の促進と職業能力の開発
  • 相談活動の充実
  • 生活のリフレッシュ

1 子どもを健やかに生み育てる環境づくり

(1)子育てについての意識啓発の推進

1 社会全体の関心の喚起
明日の社会を担う子どもたちは,社会全体の責任で育成するという機運を醸成し,子どもを健やかに生み育てる環境づくりについて地域社会,職場などで話し合い,具体的な活動につながるよう啓発に努める必要がある。
このため,結婚,家庭,子育てに関するシンポジウム,セミナーなどを開催して,研修の機会を設けるとともに,テレビ,ラジオ等の各種広報媒体を活用して啓発活動を推進する。また,ふるさとふれあいサークル活動のより一層の活発化をはかるなど,出会いとふれあいの機会の少ない若者のための交流の場づくりに努める。

2 男女共同参画意識の醸成
育児,教育,家事,介護等の家庭生活の役割の大半を女性が担ってきたが,男女の役割や分担を見直し,男性もすすんで家事や地域活動に参画するよう意識啓発をすすめる。

(2)家庭養育機能の強化

1 家庭養育意識の高揚
家庭のもつ養育機能の低下は,不登校,非行,いじめ,児童虐待など子どもにとって深刻な問題を引き起こす要因にもなることから,講演会,シンポジウム等のキャンペーン,母親学級,育児相談等を通じて,特に乳幼児期における母と子のスキンシップの重要性や家庭における養育意識についての啓発を行う。

2 総合的な相談支援体制の整備
子育てについて,コミュニティ活動やボランティア活動等との連携により,地域全体で支えあうシステムの充実をはかるとともに,児童相談所,保健所など保健・医療・福祉,教育など幅広い分野の連携のもとに総合的な相談体制の整備に努める。また,電話相談の充実をはかる。

(3)すこやか育児対策の推進

1 健診・事後指導体制の充実
母と子の健康を守るため,職域,学校との密接な連携のもとに,妊産婦・乳幼児健康診査,1歳6か月児健康診査,3歳児健康診査,先天性代謝異常等検査,妊婦に対するB型肝炎抗原検査等を実施し,異常の早期発見と早期治療の指導を行っているところであり,今後,さらに,健診・事後指導の一層の充実をはかる。
母子保健法の改正により,平成9年度からは,乳幼児健康診査や3歳児健康診査等の基本的なサービスが市町村において実施されることとなるので,障害児や慢性疾患児の療育指導など県事業と市町村事業の有機的な連携をはかり,乳幼児の健やかな発達を支援する。

2 思春期保健対策の充実
思春期においては,性,喫煙・飲酒問題だけでなく,この時期に起こりやすい不安やストレスによる摂食障害や無理なダイエットが貧血や骨粗しょう症の原因となるなどの問題が多く,心身両面からの専門的な対応が不可欠であり,初期段階からの適切な対応がのぞまれる。
このため,学校や医療機関,児童相談所との有機的な連携のもとに,思春期保健に関する知識等の普及啓発に努めるとともに,気軽に相談できる専門窓口の設置をすすめる。

3 療育指導の充実
心身障害,慢性の腎疾患や心疾患等小児慢性特定疾患をはじめ,近年特に増加しているアトピー性皮膚炎やぜんそく等のアレルギー疾患などにより,心身の機能に障害を有し,または,将来有するおそれのある子どもの機能回復や日常生活を支援する療育相談体制の一層の充実が必要である。
このため,保健所で実施している総合療育相談や要観察児指導教室等の充実強化をはかるとともに,乳幼児健康診査,3歳児健康診査等の健診・相談から,専門的な診断に基づく治療,介護や日常生活支援までの一貫したシステムの構築をすすめる。

(4)地域における児童健全育成の推進

1 地域活動の促進
子どもにとって,地域社会は,社会性や自主性を培う重要な場であることから,地域の実情をふまえて,母親クラブ,乳幼児クラブ等の組織をさらに発展・充実させるとともに,愛育委員や児童委員,主任児童委員,児童クラブなどの関係組織,コミュニティ活動やボランティア活動と広く連携をはかりながら,地域全体で子どもの健全育成の推進をはかる。
また,児童クラブは,子育てと仕事の両立を支援するものであるとともに地域における児童健全育成の場として充実をはかる。
さらに,保育所は,乳幼児の保育を通じて家庭での養育を支援するノウハウを蓄積していることから,地域における保育所の積極的な開放とその機能の活用をすすめ,家庭の育児不安に関する相談・助言,子育てサークルの育児支援等を実施するなど,地域の子育て支援センターとしての機能の充実に努める。

2 遊びとふれあいの場の確保
子どもは本来,子ども同士の遊びやふれあいを通じて,冒険心や好奇心,社会性や創造性などを養い,その人格を形成していくものである。
このためには,身近な遊び場の確保が必要であり,空き地,神社の境内,広場の活用をはかるとともに,成長してからもその場に立てば地域の歴史や友人の顔が浮かんでくるような特色をもった遊びとふれあいの場の整備をすすめる。
また,地域における子どもの健全育成の拠点としての児童館の整備,充実をはかる。

(5)子育てと仕事の両立支援

1 就労のための環境整備
近年,女性の職場進出がすすみ,子育てと仕事の両立に対する支援が必要となっている。
このため,雇用における男女の均等な機会と待遇の確保,育児休業制度・介護休業制度の充実や労働時間短縮の推進をはじめ,再雇用制度の普及促進など男性も女性も子育てをしながら安心して働くことのできる雇用環境を整備をする。また,働く女性自身の就労に対する意識を高めるとともに,企業及び企業で働く男性の意識の啓発にも努める。
育児のための休業の後,再就職を希望する女性に対しては,再就職の促進のために情報提供,相談援助,職業能力開発等総合的な援助の推進をはかる。

2 保育サービスの充実
多様化する保育ニーズに適切に対応するため,乳幼児の心身の健全な育成に配慮しながら,地域の実情に応じた乳児保育や延長保育,一時的保育などの特別保育を計画的に推進するとともに,病気回復期の子どもについては,病院・診療所に併設した乳幼児健康支援デイサービス施設での保育を促進するなど,身近で,利用しやすい保育サービスの充実に努める。
また,保育所は,量的にはほぼ充足されていることから,今後の整備にあたっては,適正配置,適正規模に留意しながら,老朽化した施設の改築を行うとともに,育児相談,子育てサークルの支援等地域における家庭での子育ての多様なニーズに対応できるよう保育所の多機能化のための施設整備を推進する。

(6)住宅及び生活環境の整備
健やかに子どもを生み育てることができるよう,ゆとりある良質な住宅の供給や住替えを促進するため,住宅金融公庫等の各種融資制度の活用の充実をはかるとともに,母子・多子世帯の持家促進のために,個人住宅建設資金融資制度の拡充をはかる。
また,子どもの健全な成長を支えるため,遊び,自然とのふれあい,家族の交流の場となるスポーツ施設,社会教育施設等を整備する。

(7)ゆとりある教育の実現
社会の変化に対応できる心豊かな人間の育成をめざして,教育内容・方法の改善,充実,優秀な教員の確保,学校の施設・設備の整備をはかる。また,児童生徒の個性と創造性を伸長し,生涯学習社会を生きる力となる自己教育力をはぐくむ教育の実現をはかる。
さらに,高等学校の入学者選抜方法の見直し等により,生徒の希望や個性を生かせる高等学校への進学を可能にするとともに,学校週5日制の拡大を
見通しながら,真にゆとりのある学校教育の実現をはかる。

2 子どもの保護と自立の促進

1 施設養護の充実
子どもは,本来,健全な家庭環境のもとで養育されることがのぞましいが,子どもを養育する保護者がいない場合,あるいは保護者の養育にゆだねることが適当でない場合は,児童福祉施設において家庭にかわる温かい環境のなかで健やかにはぐくみ,子どもの個性や適性に応じたきめ細かい養護を行う。
また,子どものスムーズな社会的自立ができるよう,独立した家屋で家庭生活に近い体験ができるグループホームの設置をすすめる。
さらに,一日も早く家庭での健全な生活が保障されるよう,児童福祉司や児童委員などによる家庭指導を強化し,子どもにとってのぞましい家庭の環境づくりをすすめる。

2 里親の開拓と委託の促進
里親のもとで家族の一員としてくらすことが適当な子どもについては里親への委託を推進するほか,施設に入所している子どものうち家庭の事情等により帰省できない子どもを一時里親家庭であずかる一時里親事業を推進する。
里親については,広く人材を求め,研修等を実施することにより,その資質を高めたり,里子のよりよい養育のために情報交換を行う場を提供するとともに,里親制度に対する理解と協力を得るための啓発を行う。

3 児童相談活動の充実
深刻化している不登校や非行などの問題をかかえている子どもや家庭に対して,ふれあい心の友(メンタルフレンド)の訪問,集団または個別による心理療法等を取り入れた通所指導,家族療法等を実施するとともに,児童虐待に早期に対応できるよう関係機関との連携を強化するなど児童相談所活動の充実をはかる。

3 母子家庭等の自立の促進

1 経済的自立の支援
母子家庭や寡婦は,経済的に不安定な状態におかれがちであるため,無利子または低利で融資する母子寡婦福祉資金貸付制度の充実をはかるとともに,母子家庭への児童扶養手当の支給や医療費の公費負担を行うなど,母子家庭及び寡婦の経済的自立の促進をはかる。

2 就業の促進と職業能力の開発
家計を担う母子家庭の母等が就業に必要な知識や技術,資格を身につけ,より有利な条件で就業できるように,公共職業安定所や岡山県婦人職業相談センターなどの技術講習や職業訓練等の積極的な活用による職業能力の開発と就業を促進する。

3 相談活動の充実
母子家庭の母や父子家庭の父,寡婦などは,日ごろ,子どもの養育や家計及び家事などについてさまざまな不安や悩みをかかえて生活しがちであり,これらの問題に適切に対応するために,母子相談員等を配置し,母子世帯などの実情の把握と各種の相談指導にあたるとともに,日常多忙な母子家庭の母などが気軽に利用できる電話相談の充実をはかる。
また,地域の実状に即したきめ細かな相談等に対応し,母子寡婦福祉の一層の推進をはかるため,母子寡婦福祉団体の育成の強化に努める。

4 生活のリフレッシュ
母子家庭,父子家庭及び寡婦の家族等が病気になったときなどに必要な介護や保育を行う介護人の派遣や父子家庭への家事援助,ひとり親家庭の交流事業などにより,母子家庭,父子家庭,寡婦等が安心して心豊かにくらせるよう生活の支援を行う。

障害者

課題と施策の方向

障害者施策は,ライフステージのすべての段階において全人間的復権をめざすリハビリテーションの理念と,社会の一員として障害のない人と同等に生活し活動する社会をめざすノーマライゼーションの理念のもとに「完全参加と平等」の実現に向けて,総合的,計画的に推進する必要がある。
このため,啓発活動を積極的に推進し,障害者問題に対する理解の促進に努める。
また,障害の発生を予防するとともに,早期発見・早期治療等により障害を軽減し,機能回復をはかるため,適切な保健・医療・福祉サービスを提供するための各種施策を充実するとともに,リハビリテーション医療及び総合的なリハビリテーション施策の強化に努める。
障害者が主体的,自立的に社会活動に参加し,その能力が十分発揮できるよう,在宅福祉サービスや施設福祉サービスを充実するとともに,コミュニケーションの確保や福祉機器の普及を積極的にすすめる。
また,障害者の社会参加の一層の促進をはかるため,障害者を支えるボランティア活動の支援,推進に努める。
心身障害児の教育については,適正就学の推進に努めるとともに,教育環境の整備充実,教育内容や指導方法等の改善充実に努める。
社会教育においても,障害者の特性やニーズに配慮した多様な学習の場や機会の充実に努める。
また,身体障害者法定雇用率の達成指導と求職者の障害の種類,程度に応じた職業能力開発,職業指導,紹介のほか,共同作業所における福祉的就労の推進等により障害者の就職の促進をはかる。
さらに,障害者の自立と社会参加を促進していくうえで,建築物等の物理的な障壁の除去,情報収集やコミュニケーションにあたってのハンディキャップの軽減等,生活環境面における各種改善をはかる。
障害者の心身の健康の保持,増進や社会参加の促進のため,スポーツ,レクリエーション,文化活動の振興をはかる。

重要施策

(重要施策の体系)

自立と社会参加の促進

  • 福祉の心づくり
    • 福祉意識の高揚
    • 参加交流活動の促進
    • 福祉ボランティア活動の振興
  • 保健・医療の充実
    • 障害の発生予防と早期発見
    • 医療・リハビリテーション医療の充実
    • 精神保健福祉対策の推進
    • 保健・医療・福祉の連携
    • 保健・医療スタッフの養成確保
  • 福祉サービスの充実
    • 相談支援機能の充実
    • 地域生活支援の充実
    • 施設の整備・充実
    • 福祉機器の普及促進
    • 生活安定施策の充実
    • 福祉人材の養成確保
  • 教育・育成の充実
    • 療育,幼児教育の充実
    • 学校教育の充実 ※参照「学校教育」
    • 社会教育の充実
  • 就労の促進
    • 雇用・就業の促進
    • 福祉的就労の場の整備促進
    • 職業リハビリテーションの充実
  • まちづくりの推進
    • 障害者とともに生きるまちづくり
    • 住環境の整備
    • 情報提供の充実
  • スポーツ・レクリエーション・文化活動の推進
    • スポーツ・レクリエーション
    • 活動の推進
    • 文化活動の推進
    • 国際交流の推進

1 福祉の心づくり

(1)福祉意識の高揚
県民一人ひとりが互いに認めあい,だれもが社会の一員としていきいきとくらしていける社会を実現していくには,障害者についての理解を深め,偏見をなくしていくことが必要である。
このため,学校教育の場での福祉教育を推進するとともに,保健福祉大会,障害者雇用促進大会などの各種大会等を開催し,広く県民の障害者問題に対する理解の促進に努める。
また,テレビ,新聞等のマスメディアを活用した計画的な啓発活動を行うほか,障害者週間,障害者雇用促進月間等を中心に障害者関係行事の開催や,広報紙,機関紙等による広報,啓発を積極的に推進する。

(2)参加交流活動の促進
スポーツ,レクリエーション,文化活動等を通じて障害のある人と障害のない人が相互に理解・認識を深めるため,「福祉の船」,「障害者福祉展」,「身体障害者体育大会」,「ゆうあいピック」など多様な参加・交流・ふれあいの場の充実をはかる。

(3)福祉ボランティア活動の振興
一人ひとりの県民,関係団体,企業等が福祉ボランティア活動に積極的に参加し,障害者について理解を深めていくことができるよう,福祉ボランティア活動についての啓発,広報活動を行い,その理解の促進に努める。
特に,点訳・朗読,手話,要約筆記などの技能をもつ福祉ボランティアによる支援活動の一層の充実と育成に努める。
また,県民の精神保健に関する知識と理解は十分とはいえず,精神障害の早期発見・早期治療や精神障害者の社会復帰の大きな障害となっていることから,広く精神保健知識の普及をはかるため,メンタルヘルスボランティア(心の健康づくり推進員)の養成をすすめる。
さらに,障害者自身も地域で共にくらす一員であるとの認識のもとに,積極的に地域と連携したボランティア活動への参加をすすめる。

2 保健・医療の充実

(1)障害の発生予防と早期発見
障害の発生予防と早期発見のために,妊産婦に対する健康教育,健康診査等の保健対策,フェニールケトン尿症,クレチン症等の先天性代謝異常等検査,乳幼児健康診査等の母子保健対策,老人保健法に基づく健康診査・健康教育等の一層の充実をはかる。また,心の健康については,地域における精神保健相談,訪問指導,社会復帰への支援等の地域精神保健対策を一層推進するとともに,精神障害に対する偏見を除去することにより,早期受診をしやすい環境づくりに努める。
また,障害の軽減をはかるためには,保健所,精神保健福祉センター,児童相談所等関係機関の密接な連携によって,原因疾患等の早期発見から早期治療,ライフステージに対応したリハビリテーション,療育や各種の福祉施策への適切な誘導及び一貫した療育指導を行うことが必要である。このため,本人や家族に対する精神的な支援も含めた総合療育システムの確立をはかる。

(2)医療・リハビリテーション医療の充実
医療・リハビリテーション医療は,障害の除去や軽減をはかり,障害者の自立を促進するとともに,二次障害を防止するためにも極めて重要である。
このため,特に身体的特性により通院が困難な障害者が在宅で医療が受けられる体制の整備充実をはかる。
精神障害者については,社会参加が重要なリハビリテーションであることから,生活の場,仕事の場,憩える場を整備し,これを支援する。
また,医療を適切に安心して受けられるよう,重度障害者に対する医療費の公費負担を行うとともに,育成医療,更生医療,精神医療,在宅ケアの充実をはかり,あわせて補装具の交付・修理を行うなど医療サービスの充実に努める。
さらに,地域におけるリハビリテーション医療の実施体制の整備をはかるとともに,医学の進歩,疾病構造の変化等に即応して総合的なリハビリテーションを実施できる専門性の高い医療機関の拡充をはかり,これらの有機的連携による全県的なリハビリテーション医療体制の充実に努める。

(3)精神保健福祉対策の推進
精神障害者については,社会復帰施設の整備をすすめるとともに,社会復帰の促進をはかる。
また,精神障害の発病を防ぎ,心の健康の保持,増進をはかるため,保健所,精神保健福祉センターと,市町村,医療機関,社会復帰施設等各地域における関係機関との連携強化に努め,精神保健福祉の正しい知識や心の健康づくりに関する普及,啓発を行うとともに,専門相談・指導を充実し,早期受診のための環境整備の促進をはかる。
発症の初期における適切な医療や専門相談が不可欠であることから,特に思春期から青年期の精神医療体制の充実を促進する。

(4)保健・医療・福祉の連携
ホームヘルプサービスやデイサービスなどの福祉サービス,市町村保健センターなどで行われている各種保健サービス,医療機関での医療サービスの連携をはかり,障害者のニーズに適したサービスを提供できる体制を整備する必要がある。
このため,各種サービスにかかる総合的な相談指導体制の構築をはかり,原因疾患等の早期発見から早期治療,リハビリテーション医療,早期療育や各種の福祉施策への誘導が適切になされるよう努める。
また,障害者の高齢化に対応するため,保健・医療との連携をはかりながら,障害者施策及び高齢者施策を一体的かつ効果的にすすめ,身近な地域においてサービスの提供を受けることができるよう,ホームヘルプサービス事業,デイサービス事業,ショートステイ事業の相互利用をすすめる。

(5)保健・医療スタッフの養成確保
障害者のニーズが多様化するなかで,専門的技術を有する保健・医療スタッフの養成・確保及び資質の向上をはかることが重要な課題となっている。
このため,在宅ケア等の需要拡大に伴う市町村保健婦の確保に努めるとともに,リハビリテーション医療等にかかわる看護職員,理学療法士,作業療法士,医療ソーシャルワーカー,言語聴覚療法技術者,臨床心理技術者等医療専門分野の人材の確保及び研修の充実による資質の向上に努める。

3 福祉サービスの充実

(1)相談支援機能の充実
障害者が地域で安心して充実した生活をおくり,それぞれの能力や特性に応じて自己実現をはかることができるよう,相談支援機能の充実に努める。
特に精神障害者に対する相談支援については,保健所や精神保健福祉センター,精神科休日相談センターが連携しながら対応していく。
また,障害者が,一人ひとりのライフステージを通じて,主体的に最適なサービスが選択できるよう,保健・医療・福祉,教育,雇用等各分野の有機的連携のもとに,行政機関,医療機関,障害者団体等の相談支援機能の充実をはかり,障害者の相談に適切に応じるとともに,各種情報の提供に努める。
さらに,自己の意志表示の困難な状態におかれやすい障害者の権利を擁護するため,障害者人権相談コーナーの設置等,支援体制の整備に努める。

(2)地域生活支援の充実
障害者が可能な限り住み慣れた地域で普通にくらしていくためには,きめ細かな生活の支援が重要であり,多様な福祉サービスの充実が必要である。
家庭での生活を支援する在宅福祉サービスについては,特に,介護や家事援助を要する障害者の自立生活を支援するホームヘルプサービス事業,家族の介護負担を軽減するショートステイ事業等の各種の在宅介護事業の充実に努める。
また,地域での生活を支援するため,福祉的就労の場やデイサービス施設等通所型施設の整備,共同作業所,グループホームや憩いの場等の整備を推進するとともに,職親制度の普及をはかる。
さらに,身体障害者社会参加促進センターの活動や障害者が自らの体験に基づいて相談に応じるピアカウンセリング等障害者自身が主体となって行う活動への支援,コミュニケーションの確保やガイドヘルプサービス等社会参加を促進する事業の充実等に努める。
障害者自身のコミュニティ活動への参加を支援し,社会福祉施設の地域への開放や地域活動への参加などを助成する等,地域社会との交流を促進する施策を充実し,障害のある人もない人も,施設で生活する人も在宅で生活する人も,地域社会の一員として共に活動するコミュニティづくりをすすめ,
障害者の生活を地域全体で支えていく体制の整備をはかる。
また,社会福祉施設の総合的・専門的な地域生活支援機能については,在宅福祉を推進するコーディネーター,支援ワーカー,アドバイザーの配置等によって,地域拠点機能の強化をはかり,障害者のニーズを的確に把握し,障害の程度や特性に応じた適切なサービスが提供できるよう,その充実をすすめる。
さらに,吉備高原都市に障害者能力開発センター(仮称)を設置し,総合的な相談評価に基づくプロフィール(能力や特性)の把握と,個別プログラムに基づいた柔軟カリキュラムによるステップアップ訓練システム等の活用により,潜在能力や優れた感性を発見・助長するとともに,就労領域の拡大,個性的自立と社会参加の促進をはかる。

(3)施設の整備・充実
障害や生活環境の状況等により施設を利用することが必要な場合には,適時に適切な利用が可能となるよう,地域バランス等に配慮しながら施設の整備,充実に努める。
また,福祉施設については,入所者へのサービスの提供だけにとどまらず,デイサービス,ショートステイ等地域で生活する障害者やその家族を支援する機能の充実をはかり,広く地域における総合的な福祉推進の拠点としての役割を果たすとともに,ゆとりとうるおいのある環境づくりや居室の個室化,介護用リフトの設置等をすすめ,質の高いサービスの提供がはかられるよう整備を促進する。
健康の森学園では,養護学校と授産施設の一体化をはかり,基本的な生活訓練から就労に至る一貫した訓練システムにより,障害者の自立と社会参加を促進するとともに,さまざまな交流活動等により県民の啓発を推進する。
障害者のライフステージを通じた支援体制を確立していくうえで重要な拠点である岡山県総合社会福祉センターについては,先駆的実践,調査研究,研修指導等の分野において,県立機関として今後担うべき役割や備えるべき総合的専門的機能などについて検討する。

(4)福祉機器の普及促進
福祉機器は,障害者の日常生活における自立や介護にかかる負担の軽減,就労等の社会参加に不可欠なものである。そこで,障害者及び介護者のニーズを満たし,障害者の生活の質を高める観点から,福祉機器の機能の改善や新たな機器の研究開発を実施するとともに,よりよい福祉機器の普及をはかっていく必要がある。
このため,工業技術センター等において最新技術を用いた福祉機器の研究開発を推進するとともに,高齢者保健福祉事業等により民間事業者が行う研究開発を積極的に支援する。
また,障害者への福祉機器に関する情報提供を推進するために,在宅介護支援センター等を活用した展示や相談機能の充実をはかる。

(5)生活安定施策の充実
障害者の所得保障については,公的年金制度及び各種手当制度の周知徹底に努めつつ,制度の充実を国に働きかけるとともに,保護者亡き後の障害者の生活の安定を目的とした心身障害者扶養共済制度への加入促進と制度の安定化に努める。
また,障害者世帯の医療費負担を軽減するために,更生医療の給付や重度心身障害者医療費公費負担制度,精神障害者通院医療費公費負担制度を適切に運用していくとともに,経済的自立と生活の安定をはかるため,生活福祉資金制度の効果的活用を促進する。
さらに,障害者の社会参加等に要する経済的負担を軽減するために,税の減免制度やJR等の運賃・料金割引制度等についての周知徹底に努めるとともに,内容の充実を関係機関に働きかける。特に,精神障害者については手帳制度の普及に努めるとともに,各種福祉サービスの導入を関係機関に働きかける。

(6)福祉人材の養成確保
福祉についての専門的知識と障害者に対する理解を兼ね備えた職員を,行政機関,関係施設,団体等に配置することができるよう,養成・研修体制等の充実をはかるとともに,ボランティアも含めた人材の発掘,登録,あっせんのシステムの整備をすすめる。
市町村社会福祉協議会等地域の社会福祉関係職員については,それぞれの専門分野のほかに,保健・医療分野等との連携にも配慮した研修等を通じて,地域でのサービスコーディネーターとしての役割を果たせるよう資質の向上をはかる。
ホームヘルパーについては,障害者のニーズの高い入浴等の介護サービスに対応できるよう人材の養成・確保をはかる。また,視覚障害者の社会参加を促進するため,ガイドヘルパーの充実に努める。
施設職員については,障害の状態や障害者のニーズに応じたきめ細かいサービスの充実をはかるため,理学療法士等の専門スタッフの適正な配置を促進するとともに,研修等を通じて資質の向上をはかる。
ボランティアに関しては,障害者の社会参加において不可欠な手話通訳・要約筆記等の技能ボランティアの養成及び活動の積極的支援をはかる。
また,地域の身近な相談者としての身体障害者相談員及び精神薄弱者相談員,メンタルヘルスボランティア等についても,研修等を通じてその資質の向上に努める。

4 教育・育成の充実

(1)療育,幼児教育の充実
障害のある幼児について,幼児期における早期療育により障害の軽減をはかるとともに,障害児が,それぞれの個性や障害の種類,程度に応じて最も適切な療育及び教育が受けられるよう,保健所,児童相談所,学校等が連携協力して,早期から継続的な療育指導や教育相談が実施できるよう体制の整備をはかる。
また,特殊教育諸学校幼稚部教育の充実及び幼稚園における教育が可能な障害児の指導の充実に努め,幼児教育の充実をはかる。

(2)学校教育の充実
義務教育段階においては,小・中学校特殊学級や通級指導教室及び特殊教育諸学校小・中学部の整備充実に努めるとともに,適正就学の推進をはかる。
また,義務教育終了後については,進路指導の充実,特殊教育諸学校高等部の整備充実及び職業教育の充実,生徒の多様な能力の開発や職場開拓等を推進する。
障害児教育の充実をはかるためには,教育内容,指導方法の研究,開発や教職員の指導力の向上が急務であり,教職員研修の充実,指導資料の作成,総合教育研修機関障害児教育部門の整備充実をはかる。
さらに,障害のある児童生徒の社会性を養うとともに,障害者に対する社会の正しい理解と認識を深めるため,障害児,保護者,学校教職員及びボランティア希望者等を対象にした特殊教育諸学校への体験入学や,心身障害児童生徒作品展,心身障害児理解推進校の指定を行うなど,小・中学校等の児童生徒や地域の人びととの交流の機会の拡充をはかる。

(3)社会教育の充実
本格的な生涯学習時代を迎え,生涯各期における学習意欲が高まっていることや,障害者の社会参加を求める意識の高まりなどをふまえて,学習活動を積極的に支援する体制づくりを行うことが重要である。
このため,障害者が手軽に参加できる事業や,すべての人が共に活動できるような学習メニューの開発など学習機会の充実に努めるとともに,障害者の利用に配慮した社会教育施設の整備を促進する。

5 就労の促進

(1)雇用・就業の促進
障害者の社会参加を促進するためには,自営を含めその職業的自立をはかることが重要であるため,障害者雇用の促進について一層の周知,啓発をはかるとともに,事業主に対して法定雇用率制度の厳正な運用と的確な求職情報の提供を行い,雇用の場の確保に努める。
また,特に重度障害者を対象として,基本的な社会生活能力の取得から就職,職場定着に至るまでの相談・指導やボランティアの派遣等,人的支援を一貫して行う「障害者雇用支援センター」の設置などにより,職業的自立支援体制の確立を援助する。
さらに,各種の雇用関係助成金を活用して障害者に配慮した通勤条件や住宅等の職業生活環境の整備をすすめ,多様な勤務形態による雇用の促進と安定に努めるほか,生業を営むうえで必要な資金融資等の制度の活用により就業の促進をはかる。

(2)福祉的就労の場の整備促進
一般雇用に就くことが困難な障害者については,雇用対策及び福祉対策の緊密な連携のもとに,啓発と職場の開拓,雇用主ネットワークなど就労を支援するシステムづくりを行うとともに,福祉的就労の場として各種授産施設(社会就労センター),社会復帰施設,心身障害者地域福祉作業所,精神障害者共同作業所の設置を促進し,就労機会の拡大に努め,自立の促進をはかる。

(3)職業リハビリテーションの充実
障害者に対して,障害の種類,程度や特性に応じたきめ細かな職業指導,職業紹介や職業訓練を実施して就職の促進に努める。
また,就職後においては,事業主との連携のもとに職場適応定着指導を強化するなど,職業リハビリテーション措置の効果的な実施をはかる。
さらに,就職の困難な精神障害者の社会的自立と社会生活能力の向上のため,一般の事業所において行う社会適応訓練事業の一層の活用に努める。

6 まちづくりの推進

(1)障害者とともに生きるまちづくり
リハビリテーションの理念とノーマライゼーションの理念のもとに障害者自身の主体性,自立性の確保を支援していくことが重要であり,やさしいまちづくり事業等を通じて,障害者等が気軽に外出でき,安心してくらせるよう建築物や公園,道路,交通ターミナル等のバリアフリー化を総合的,計画的に推進していかなければならない。
このため,国や地方公共団体が設置する建築物,道路等については,率先して障害者等の利用に配慮した計画的な整備に努める。
平成6年9月に施行されたハートビル法(*)の円滑な運用をはかることにより,障害者等が利用しやすい建築物の整備を促進する。
また,障害者等の移動についてのハンディキャップの軽減をはかるため,幅広歩道の拡幅や段差のない歩道の整備,視覚障害者誘導用ブロックや信号機などの交通安全施設の整備,リフト付きのバスの導入の促進に努めるとともに,自動車改造費や運転免許取得費の助成制度,ガイドヘルプサービスや運賃割引等の制度の充実,普及をはかる。

(2)住環境の整備
障害者向け公営住宅については,計画的に整備をはかってきており,今後とも障害者が利用しやすい住宅の確保に努める。
また,障害者の同居する世帯が住宅を建設する際の各種融資制度の充実をはかるとともに,既設住宅の障害者対応住宅への改造にあたっては,住宅改造助成事業等の支援制度が十分に活用されるよう周知徹底をはかる。
さらに,住宅の改造が必要となった場合に,家屋の構造や障害者の身体状況に応じて適切なアドバイスを行う住宅改良(リフォーム)ヘルパー制度の活用に努める。
防犯対策及び防災対策については,障害者の特性に応じてきめ細かな対応を行う必要があり,特に災害時においては,災害情報の伝達や避難誘導が適切に行われることが重要である。このため,障害者に対して防犯・防災知識の普及をはかるとともに,地域住民やボランティア,関係機関等の連携のもとに,災害や事故が発生した場合における障害者の援助に関する意識啓発と知識の普及をはかる。
また,非常時の消防・警察への緊急連絡体制,災害時の情報伝達・避難誘導体制を構築するなど障害者に対する地域の支援体制を整備する。

(3)情報提供の充実
県及び市町村は,障害者の多様な相談に応じるとともに,障害者のニーズに即して速やかに情報提供できる体制づくりを行う。
また,岡山県視聴覚障害者福祉センターで実施している点訳奉仕員や朗読奉仕員の養成,点字図書や録音図書の作成及び貸出し,パソコン・ネットワークを活用した点字即時情報ネットワーク事業,字幕入りビデオカセットライブラリー事業等の充実に努める。また,聴覚障害者のコミュニケーションを円滑にするため,手話通訳士を(財)岡山県身体障害者福祉連合会に配置するとともに,市町村の窓口への設置の促進をはかるほか,手話奉仕員,要約筆記奉仕員を養成し,個々の聴覚障害者の要請に応じて派遣する制度の一層の普及,充実をはかる。
障害者の自立と社会参加の促進のため,公的機関だけでなく,銀行や病院など民間機関においても,窓口職員を対象とした手話講習会を開催するなど,障害者のコミュニケーションの確保,充実に努める。
また,県の施策や話題を紹介する「点字広報おかやま」,録音テープによる「広報おかやま」,(財)岡山県身体障害者福祉連合会の機関誌「はばたき」を通じて情報提供を行っているが,県政テレビ番組への手話放送,文字多重放送,音声多重放送の活用を検討するとともに,放送事業者へも働きかけて一般のテレビ番組への活用の促進をはかる。

7 スポーツ・レクリエーション・文化活動の推進

(1)スポーツ・レクリエーション活動の推進
スポーツ・レクリエーション活動は,社会参加の促進や健康増進のみならず,障害者に対する理解を促進するための啓発活動や交流の場としても重要である。
このため,岡山県身体障害者体育大会,ゆうあいピック岡山県大会を開催するほか,各種スポーツ大会の振興に努める。
また,障害の有無,種類に関係なくだれもが参加できるレクリエーション行事等の開催を支援する。
さらに,スポーツ・レクリエーション活動への障害者の参加の機会を確保するために,施設の整備や改善に努めるとともに,障害者を適切に指導できる指導員,審判員等の人材養成をはかる。

(2)文化活動の推進
文化活動は,障害者のもつ潜在能力を引き出し,伸ばすばかりでなく,充実した生活をおくるために重要である。
このため,障害者が文化活動に参加することができるよう施設の整備,改善に努めるとともに,障害者理解の啓発広報等にもつながる展覧会の開催を積極的に支援する。
また,障害者の文化活動を援助するために,障害者アートバンクの設置を検討する。

(3)国際交流の推進
国際化の時代においては,障害者問題についても,国際的視野を広め,海外との交流と相互理解をすすめていくことが必要である。
このため,海外の友好交流都市や姉妹都市等との交流やパラリンピック,車いす駅伝大会などの国内外のスポーツ大会等を通じ,外国の障害者や福祉関係職員との交流を促進する。
また,福祉関係職員の海外研修,外国職員の研修受入れを支援し,障害者問題に関する情報の収集・提供を行い,互いに障害者施策の向上をはかる。
特に,1993年からの10年は「アジア太平洋障害者の10年」であり,これら地域との交流・協力に重点をおく。

* ハートビル法:高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律

低所得者

課題と施策の方向

戦後の経済発展により,我が国は世界でも最も豊かな国の一つにまでなってきたが,高齢者,母子家庭等のなかには,なお低所得の世帯が存在している。
また,これらの人びとは,高齢や病弱等であったり,あるいは家庭内でのさまざまな悩みや問題をかかえ,地域の人びととの交流も失われがちになるなど,経済的のみならず,社会的にも弱い立場にある。
このため,さまざまな問題をかかえ援護を要する人びとからの相談に応じ,適切な助言や指導,援護を行えるよう,民生委員をはじめ福祉関係機関や団体の連携体制の整備をすすめる。
また,経済的な自立をすすめるとともに,生活意欲を助長するため,生活福祉資金など各種福祉資金を活用して,安定的な生活に必要な援助を行う。
なお,生活に困窮する人に対し最低生活を保障する生活保護制度の意義と役割は大きく,今後とも社会保障の基礎として適正な実施に取り組む。

重要施策

(重要施策の体系)

自立の助長と援護の充実

  • 援護のネットワークづくり
  • 相談活動等の推進
  • 生活福祉資金等の活用
  • 生活保護の適正実施

自立の助長と援護の充実

 低所得者の多くは,さまざまな悩みや問題をかかえており,それらを克服し自立していくためには,自らの可能性に応じて自立しようとする意欲をもつことが何より重要であり,地域において安定した生活をおくれるよう,福祉制度の活用により,必要な援護を行うとともに,自立に向けた支援を行う必要がある。
このため,行政,社会福祉協議会,民生委員等関係機関のネットワークづくりを推進し,連携をはかりながら各種の相談や問題の解決,就労あっせんなどに取り組む。
また,就労が可能な人に対しては,社会福祉事務所や公共職業安定所等関係機関と緊密に連携して一人ひとりの能力に応じた就労をあっせんする。
さらに,生活福祉資金等を活用して,自営のための資金や技能修得資金等の融資を行い,経済的自立と生活意欲を助長する。
一方,病弱や高齢等のため就労することも容易でなく,自らの努力のみでは生計の維持が困難な人に対しては,健康で文化的な最低限度の生活ができるよう,その困窮の程度に応じた生活保護を適正に実施する。

3 しあわせなくらしのために

勤労者

課題と施策の方向

我が国は,円高等による国際経済環境の変化やめざましい技術革新の進展により,産業の構造改革を迫られており,このことは雇用環境にも大きな影響を及ぼしている。また,パート,嘱託等雇用形態も多様化している。
このため,これらの情勢変化に対応し,すべての労働者が職業生活の全期間にわたって安心して働くことができ,かつ,労働者一人ひとりの個性が尊重され,その意欲と能力が十分発揮できる雇用の実現をめざして,社会的なコンセンサスの形成や円滑な労働力需給の調整に努め,雇用を促進する。
高齢者については,60歳定年の義務化に向けて定年延長を指導するとともに,65歳までの継続雇用制度の導入や多様な就業ニーズに対応した就職促進に努める。また,高齢期の雇用や就業を支援するなど雇用環境の整備をすすめる。
勤労者にとって働きがいのある職場づくりをめざして,労働条件の向上等に向けた取組みを積極的に促進するとともに,教養を高め,文化,スポーツ等の活動が楽しめる総合的福祉施設や滞在型・交流型の施設を整備するなど,勤労者が心身のリフレッシュや地域社会活動への参加等により充実した自由時間を過ごせる環境づくりを推進する。
公共職業能力開発施設を地域社会に開かれた職業能力開発の総合的センターとして位置づけ,ニーズに的確に対応した機動的な職業訓練を実施する。
伝統的な技能や工法を次代に継承していくとともに,魅力ある技能文化社会の形成に向けて意識高揚をはかる事業を展開し,技能が文化的所産として尊重され,適正に評価される社会の形成に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

豊かでゆとりある勤労者生活の実現

  • 働きがいのある職場づくり
    • 労働条件の向上
    • 労使関係の安定促進
    • 生活の安定向上
  • 自由時間の充実
    • 自由時間活動の充実
    • 施設の整備と有効活用

雇用の促進

  • 雇用情勢の変化に即応した総合的雇用対策の推進
    • 産業雇用情報の収集,提供
    • 雇用の維持・確保の支援
    • 失業なき労働移動の実現
  • 高齢者雇用の促進
    • 継続雇用の推進
    • 多様な形態による雇用就業の促進
    • 高齢期に向けた雇用就業に対する援助
  • 障害者雇用の促進
    • 法定雇用率達成指導の強化
    • 就職促進と職場適応指導の充実
  • 若年労働者等人材確保の推進
    • 新規学卒者等県内就職の促進
    • 中小企業・福祉分野等人材確保の推進
  • 女性の就業促進
    • 働く女性の福祉の向上
    • 職業生活と家庭生活の両立支援の促進
    • 再就職等に関する援助
    • パートタイム雇用の安定

生涯職業能力の開発・向上

  • 活力ある職業生活をめざした人材育成の推進
    • 公共職業訓練の充実・強化
    • 民間の自主的職業能力開発の拡充
    • 職業能力開発体制の推進
  • 技能文化をはぐくむ社会づくりの展開
    • 技能尊重気風の普及・推進
    • 職業能力評価の推進

1 豊かでゆとりある勤労者生活の実現

(1)働きがいのある職場づくり
労働時間の短縮は,勤労者の職業生活と家庭生活,地域生活との調和や多様性に富んだ生活の実現をはかるうえで重要な課題である。
このため,年間1,800総労働時間の早期実現とその定着をめざして,完全週休2日制の普及,長期連続休暇を中心とする年次有給休暇の完全取得,所定外労働時間の削減,さらには変形労働時間制や裁量労働制の導入など,労働時間の短縮に向けた勤労者と事業主の自主的な取組みを促進する。
また,高齢化や技術革新の進展等に伴い作業態様や労働環境が変化するなか,労働災害の未然防止と職業性疾病の予防のため,関係機関と連携をはかりながら,勤労者や事業主が労働安全衛生に関する認識をさらに深めるよう啓発に努める。
これらの労働条件改善の前提となる勤労者と事業主相互の理解と信頼を培うため,労使間のコミュニケーションの促進をはかるとともに,労働教育の実施や労働相談の充実,労務管理の改善を行う団体の育成指導に努める。
さらに,中小企業の勤労者が豊かで充実した生活をおくることができるよう,労働保険の適用促進や退職金制度の充実,財産形成促進制度・勤労者向け融資制度の普及,総合的な福祉事業を行う「中小企業勤労者福祉サービスセンター」の設立を促進する。

(2)自由時間の充実
勤労者が労働時間の短縮によって増加する自由時間を充実したものとして過ごせるよう,勤労者美術展など芸術・文化・スポーツ活動や自己啓発を行うことができる場を提供するとともに,ボランティア活動に対する意識の高揚に対応し,地域活動や社会活動に参加しやすい環境の整備に努める。
また,21世紀の社会を担う勤労青少年が健やかに成長していくことができるよう,関係機関と連携をはかりながら,ボランティア活動や国際交流など各種活動の機会と情報の提供を行う。
勤労者福祉の充実と勤労意欲の向上をはかるため,教養を高め,文化・スポーツなどの活動が楽しめる「勤労者総合福祉センター」を早島町に整備する。
また,邑久町大平山の「勤労者いこいの村」を充実するとともに,周辺の豊かな自然環境を生かしながら,勤労者をはじめ,すべての県民が気軽に滞在,交流し,心身のリフレッシュをはかることができる施設を整備する。
このほか,勤労者相互の親睦と友好,地域住民との交流を深めながら,学習活動やレクリエーション活動を楽しむことができるよう,勤労者体育施設や勤労青少年ホーム,さらには一時的に子どもや高齢者をあずかる勤労者家庭支援施設など,勤労者福祉施設の整備をはかる。

2 雇用の促進

(1)雇用情勢の変化に即応した総合的雇用対策の推進
情報通信技術をはじめとした技術革新や国際化の進展等による受業構造の著しい変化は,雇用環境にも大きな影響を及ぼしており,今後,企業のリストラクチャリングの一層の拡大などにより,雇用機会が減少することも懸念されるため,新技術の開発やベンチャービジネスの育成等によって,新たな雇用機会を創出することが重要となる。
このため,新分野進出や生産技術の高度化をめざす企業の人材育成,確保を支援するなど雇用の拡大をはかるほか,企業の雇用調整やリストラクチャリング等に関する最新の雇用動向を迅速,的確に把握,分析し,国の各種助成金等を有効に活用しながら,事業主の雇用維持,確保に向けた努力を支援するとともに,雇用調整を余儀なくされる労働者については,発展分野への出向,転職等による失業なき労働移動の実現に取り組む。
また,過疎地域等において,地元定住を希望する若年者等が能力を十分に発揮できる職場や,良質な労働条件を備えた雇用機会を開発するため,「地域雇用環境整備事業」を推進し,雇用の場の創出に取り組むほか,厳しい就職環境下にある新規学卒者の就職活動を支援する。

(2)高齢者雇用の促進
豊富なキャリアをもつ高齢者が,長期化する高齢期を有意義に過ごすために,高齢者の多様な就業ニーズに対応した雇用機会を確保することが必要である。
このため,60歳定年制の徹底と65歳までの継続雇用を強力に推進するとともに,各種の高年齢者雇用助成金制度を活用して,事業主の行う新たな高齢者の就業機会の確保を支援するほか,高齢者のために特に取扱い職種が拡大されている人材派遣事業を活用して,雇用の場の拡大に努める。また,「シルバー人材センター」の拡充,育成に努める。
さらに,労働者が高齢期においても希望と能力に応じて働けるような職業生活設計を支援する「岡山高齢期雇用就業支援センター」の強化に努めるほか,雇用環境の厳しさが増している中高年齢者の雇用就業機会の確保をはかるため,指導,助言や各種の支援を行う。

(3)障害者雇用の促進
障害者の雇用を促進するためには,身体障害者雇用率制度の周知をはじめとする各種の啓発活動に努めるとともに,法定雇用率未達成企業には強力に雇入れを指導するほか,的確な求職情報の提供を行うなど,雇用機会の拡大に努める。
求職者に対しては,障害の種類と程度に応じたきめ細かな職業相談・指導や職業訓練の実施,各種助成金制度の活用などにより就職の促進をはかる。
特に,重度障害者等の就職を促進するため,公共職業安定所などの雇用部門と地方公共団体等の保健・福祉部門との連携による職業リハビリテーション・ネットワークの形成や,通勤,住宅などの職業生活環境の整備をはかるほか,基本的な社会生活能力の取得から就職,職場定着に至るまでの相談・指導やボランティアの派遣等,人的支援を一貫して行うなど,職業的自立支援体制の確立を援助する。
また,就職後においても,事業主と連携しながら,職場適応・定着指導を積極的に行い,就業の継続をはかる。

(4)若年労働者等人材確保の推進
中長期的には労働力の供給に制約が見込まれるなかで,県内産業の発展と地域の活性化をはかるためには,新規学卒者を中心とした若年労働力の確保が必要である。特に,業種や規模によって雇用管理面等に大きな格差がある中小企業においては,労働力の確保と定着が大きな課題である。
このため,若年者の県内定住やUターン就職を促進するとともに,中小企業等については,労働条件,職場環境,福利厚生など雇用管理面の改善によって魅力ある職場づくりをすすめ,労働力の確保に努める。
また,高齢化の進展に伴い,今後急速に需要が増大すると見込まれる看護・介護などの福祉分野の労働力については,公共職業安定所等への人材登録を広く呼びかけるとともに,県立職業能力開発校等において介護従事者養成の訓練科を充実し,人材確保をはかる。

(5)女性の就業促進
女性の社会進出意欲が一層高まっているなかで,男女雇用機会均等法の趣旨の周知に努め,男女の平等と相互協力について理解を深めるとともに,就業に関する情報提供や職業相談を行うほか,勤労女性の能力向上や再就職に必要な知識,技能を習得するための講座等を開催する。
また,職業生活と育児や家族の介護などの家庭生活との両立を支援するため,育児・介護休業制度の周知,啓発をはかるとともに,公共職業安定所の「育児休業代替要員相談コーナー」を充実する。さらに,育児の援助を行いたい者と受けたい者の会員組織である「ファミリー・サポート・センター」の設立を促進するほか,勤労女性に関する相談に応じるための「働く女性相談コーナー」の充実に努める。
女性が主流を占めるパートタイム労働者については,雇用の安定をはかるため,事業主に対し,パートタイム労働法に基づく雇用管理改善のための指針の周知,啓発に努めるとともに,パートバンクの拡充等によりパート希望者の就職を促進する。

3 生涯職業能力の開発・向上

(1)活力ある職業生活をめざした人材育成の推進
経済社会情勢の変化に対応して,勤労者が自らの能力を発揮し,豊かで活力ある職業生活をおくるためには,内容や時間,場所などに配慮した多様な職業能力開発の機会を提供することが重要である。
このため県立職業能力開発校においては,産業社会のニーズを的確に把握しながら,雇用促進事業団との機能分担のもとに,新規学卒者など若年層を対象とした基礎的な職業訓練,離転職者や在職者等を対象とした能力再開発や技能向上の訓練を実施するほか,女性や高齢者,障害者向きの訓練科を新増設し,就業を援助する。
企業内においては,勤労者の職業能力を開発・向上させるための企業内教育訓練を計画的に実施する体制づくりを促進する。また,認定職業訓練の充実や生涯職業能力開発給付金をはじめとする民間教育訓練支援制度の周知と促進に努める。
さらに,地域の総合的能力開発センターとして県立職業能力開発校の機能充実をはかり,各種相談サービス,情報提供,訓練ニーズの把握等に取り組むほか,職業訓練指導員の派遣等により,中小企業に対する支援を行う。
また,技能人材バンクの設置等により,高度熟練技能者の技能の継承と後継者となるべき若年技能者の育成をはかる。

(2)技能文化をはぐくむ社会づくりの展開
これまで培われてきた技能を継承,発展させていくためには,社会一般の技能労働・熟練技能等に対する認識を深め,技能文化をはぐくむ社会を構築することが重要である。
このため,岡山県職業能力開発協会や岡山県技能士会連合会と連携し,各種技能競技大会の開催,優秀技能者等の表彰,技能祭や公開講座の開催等の事業を通して,技能を尊重する気風の普及をはかる。
また,勤労者がもつ技能や知識が適正に評価されることも重要であることから,職業能力評価制度の一層の浸透をはかるため,その中心となる技能検定の普及,実施職種の拡大並びに社内検定制度の普及に努める。

女性

課題と施策の方向

これからの社会は,男女の固定的な役割分担意識を是正し,男女が,社会の対等な構成員として,自らの意思によって社会のあらゆる分野の活動に参画する機会が確保され,均等に政治的,経済的,社会的及び文化的利益を享受することができ,かつ,共に責任を担う「男女共同参画社会」として築きあげられるべきものである。
このため,女性の地位向上につながるだけでなく,男女共同参画社会づくりのために極めて重要な政策・方針決定の場への女性の参画を促進するとともに,女性自らが,自己のもつ能力を高め,実力を養えるよう支援する。
また,女性のライフスタイルや意識の変化に加え,雇用機会の拡大,就業分野の多様化等にあわせ,その多様な就業ニーズに十分対応しうる職業相談体制の整備,職業能力向上のための施策の充実に努める。
あわせて,女性がもつ意欲や能力を十分発揮できるよう,雇用分野での男女の均等な機会と待遇の確保について,事業主等への啓発に努める。
女性の心と体の健康は,女性固有の妊娠,出産などと密接なかかわりをもっており,女性のそれぞれのライフステージを通じて健康を保持,増進できるよう保健医療体制の充実に努めるとともに,健康対策,体力づくりを一層推進する。

重要施策

(重要施策の体系)

男女共同参画社会の実現

  • 男女平等をめぐる意識の変革
    • 男女の固定的役割分担意識の是正
    • 学校教育の充実 ※参照「学校教育」
    • 社会教育の充実
    • 母性の尊重 ※参照「健康・医療」「母と子ども」
  • あらゆる分野への男女共同参画の推進
    • 家庭・地域社会における男女共同参画の推進
    • 政策・方針決定の場への参画促進
    • 国際交流・国際協力の推進
  • 多様な生き方を選択できる条件の整備
    • 生涯学習の推進
    • 就労における条件整備 ※参照「勤労者」
    • 農林漁業,商工業における条件整備
    • 育児期等における条件整備
  • 女性の健康づくりと福祉の向上
    • 健康づくりの推進 ※参照「健康・医療」
    • 福祉サービスの充実 ※参照「高齢者」
    • 母子家庭等の自立と生活の安定 ※参照「母と子ども」

1 男女平等をめぐる意識の変革

(1)男女の固定的役割分担意識の是正
男女の固定的役割分担意識を是正し,家庭,地域,職場などにおける制度や慣習の見直しを促進するため,県,市町村の広報紙をはじめ,マスメディアの計画的な活用やシンポジウム,セミナーの開催などにより,性,年代,地域等それぞれの対象に応じた啓発活動を推進する。

(2)学校教育の充実
学校教育においては,学校と家庭との連携を一層緊密にして,男女が相互に理解・協力し,お互いを尊重しあえる人間関係を形成する教育実践に努めるなど,男女平等意識に基づいた教育をすすめる。

(3)社会教育の充実
女性問題に関する社会教育講座,社会的視野を広げるためのより専門化した内容の講座を増やすとともに,学習が実践活動につながるよう講座内容の充実に努める。
さらに,社会教育主事や図書館司書等社会教育に携わる指導者の研修機会を充実し,男女共同参画社会を実現するための指導体制の強化をはかる。

(4)母性の尊重
女性は,妊娠,出産という重要な役割を担っており,この母性の重要性とともに,人間の尊厳にかかわる性の尊重についての認識が浸透するようあらゆる機会を通じて啓発活動の推進に努める。

2 あらゆる分野への男女共同参画の推進

(1)家庭・地域社会における男女共同参画の推進
生涯学習の重要な場でもある家庭において,家事や育児,介護等に対する男女の共同参画を促進するため,あらゆる機会,媒体を活用して啓発・広報を行うとともに,家庭のあり方について,父親の学習機会が得られるよう,家庭教育学級等の学習内容・方法の充実に努める。
また,男女がともに地域活動に参画し,それぞれの能力を生かして地域に貢献することは,快適で活力あふれる岡山づくりにつながる重要な力となることから,男女それぞれの能力を生かしたボランティア活動,コミュニティ活動等を一層促進するため,コミュニティ施設の整備,情報の提供,リーダーの養成などに努める。
さらに,女性団体相互の情報交換,交流活動やネットワークづくりなどを推進するとともに,これらの活動を促進するための拠点機能の整備をすすめる。

(2)政策・方針決定の場への参画促進
男女共同参画社会の実現のためには,審議会等の女性の比率は全体数の30%を目標とするよう努める必要があるとする岡山県婦人問題協議会からの提言が出されたところである。
県,市町村においては,行政委員会,各種審議会等への女性の登用を一層強力に推進するとともに,女性委員が皆無の審議会等の解消に努める。
また,企業,民間諸団体に対しても,企画・立案や方針決定の場への女性の登用が促進されるよう啓発指導に努め,管理職への登用をさらにすすめるよう促すとともに,女性自らが自己のもつ能力を高め,実力を養い,社会参加ができるよう支援に努める。

(3)国際交流・国際協力の推進
女性が国際的視野を広めることは,女性の社会参加をすすめるうえで有意義であり,諸外国との友好交流推進の一環としての海外研修,国際会議等への女性の参加,派遣を積極的にすすめる。
また,シンポジウムの開催等により国際協力・貢献等についての女性の意識の高揚をはかるとともに,岡山国際交流センター等を拠点として開催される国際交流事業への女性の積極的参加を促進する。

3 多様な生き方を選択できる条件の整備

(1)生涯学習の推進
女性の生涯学習への意欲の高まりはめざましく,高度化,多様化する学習ニーズに対応した専門的講座の充実,学習情報の提供に努めるとともに,女性が学習に参加しやすいよう,開催の時間・場所の工夫や託児施設の整備等をはかる。
また,生涯学習の総合的な推進のため,生涯学習関連施設間のネットワーク化をはかる。

(2)就労における条件整備
女性の就労意欲は高まっているので,多様な就業ニーズに十分対応できるよう就労のための条件整備をすすめる。

(3)農林漁業,商工業における条件整備
農山漁村地域では,家庭生活はもとより,生産活動や地域の自治活動において女性が重要な役割を果たしているにもかかわらず,それが正しく評価されないことが多い。
また,商工業において家内的な小規模事業に携わる女性についても家業の中心的労働を担っているが,その評価は十分でなく,対外的活動や経営の研修機会も少ない。
このため,生産,生活の両面を担っている女性の社会的・経済的地位の強化に資するよう,女性の果たしている役割に対する正当な認識,固定的な役割分担意識に基づく慣習等の解消に向けて啓発に努める。
また,経営体質の改善,経営の多角化,技術の高度化等に関する研修等に多くの女性が参加できるよう啓発に努める。
さらに,労働時間の適正化,労働環境の点検,正当な労働報酬,休日の取得等労働条件の改善を促す。

(4)育児期等における条件整備
子育てをしながら働く女性が増加し,就業形態も多様化してきている。
このため,子育て支援対策として,保育施設の整備,保育内容の充実や利用形態の弾力化をはかるとともに,延長保育,一時保育,障害児保育など地域の保育ニーズにそった運用の多様化をすすめる。さらに,放課後児童の健全育成のため,児童館や児童公園の整備とともに児童クラブの普及拡大に努める。

4 女性の健康づくりと福祉の向上

(1)健康づくりの推進
女性が健康で心健やかに生活し活動するため,それぞれのライフステージを通じて健康を保持・増進できるよう保健・医療体制の充実と健康対策,体力づくりを一層推進していく。
また,生涯を通じていきいきと快適に過ごすためにも,生涯スポーツ・レクリエーション活動の推進に努める。

(2)福祉サービスの充実
高齢期において健康で生きがいをもち,安心してくらせる社会づくりが重要な課題であるが,このことは男性より平均寿命が長い女性にとって大きな意味をもっており,特に介護,看護を行う家庭の負担の軽減をはかるとともに,女性に負担のかかっている介護等についても,男女が共同して担うという意識啓発に努める。

(3)母子家庭等の自立と生活の安定
母子家庭等の自立と生活の安定を促進するため,母子寡婦福祉資金貸付等による支援,住宅確保の支援施策の充実をはかるとともに,精神的支えとなる各種相談体制の整備拡充に努める。

同和対策

課題と施策の方向

同和対策については,昭和40年の同和対策審議会答申と,これを受けて昭和44年に施行された同和対策事業特別措置法等に基づき,これまで一貫して県政の重要施策として位置づけ,岡山県同和対策推進協議会の意見を尊重しながら,国,市町村等との密接な連携のもとに四半世紀にわたり各種の施策を総合的,積極的に推進してきたところである。
これら施策の推進や地区住民の自主的な努力により,同和地区の生活環境をはじめとする実態は大きく改善され,全体的には,同和地区と周辺地域との格差はほぼ是正され,生活環境をはじめとする基盤整備についてはおおむね完了段階にある。
しかしながら,同和問題についての知的理解がすすみ,差別意識も着実に解消に向かっているものの,結婚問題を中心とした差別や人権侵害も依然として生じているなど,いまだ心理的差別の解消は十分でなく,同和問題の解決が県民一人ひとりの課題であるとの認識が十分もたれているとは言い難い状況にある。
また,地区住民の社会的,経済的地位の向上をはかり,生活の安定を期すうえで,産業,就労,教育,保健衛生等の面でなお解決すべき課題もある。
このため,国の施策との連携を基本に,市町村をはじめ関係機関との緊密な連携のもとに,あらゆる人権問題についての意識の高揚をはかるなかで同和問題についての理解と認識を深めるため,啓発活動の充実と同和教育の推進に努めるとともに,地区住民の自立のため,生活の向上,安定や教育・文化の向上など真に必要な施策の適正な実施に努め,差別のない明るい社会の早急な実現をめざす。

重要施策

(重要施策の体系)

同和問題の解決

  • 人権意識の確立
    • 啓発活動の充実
    • 同和教育の推進
  • 自立へ向けての支援
    • 生活の向上,安定
    • 教育・文化の向上

1 人権意識の確立

(1)啓発活動の充実
これまでの啓発活動の取組みや国際的な人権意識の高まりのなかで,県民の同和問題についての理解や認識が高まり,着実に成果をあげているが,結婚に対する態度や人権侵害の状況などから,いまだ心理的差別の解消は十分とは言い難い状況にある。
このため,国,市町村をはじめ関係機関との適切な役割分担と連携のもとに,県民一人ひとりが同和問題をはじめとする人権問題について,自らの課題としてとらえ,正しい理解を深め,差別が社会悪であるとの認識をもって,あらゆる差別の解消に主体的に取り組むことができるよう,人権尊重の精神を備えた人づくりをめざした啓発を計画的,体系的に粘り強く実施していく必要がある。
啓発にあたっては,人権問題全体をとりあげるなかで同和問題についての理解と認識が深まるよう,憲法週間や人権週間を中心に研修会や講演会,シンポジウム等を開催するほか,マスメディアを活用した広域的な啓発活動を一層推進するとともに,指導者層の拡大とその資質や指導力の向上をはかる。
なお,研修会等の開催に際しては,幅広い層から自主的な参加が得られ,参加者自らが学習意欲を高めることができるよう,その内容,方法に創意と工夫を加えるとともに,自由な意見交換ができる環境づくりに配慮するなど,より効果的な啓発活動の推進に努める。
地域における啓発は,地域住民に密着している市町村の役割が極めて重要であることから,学校教育や社会教育との連携,自治組織等の活用をはかりながら,地域の実態や課題にきめ細かく対応した啓発が実施されるよう,啓発推進体制や活動に対して指導,援助を行う。
企業に対する啓発は,地区住民の就職の機会均等を確保するとともに,職場への定着やえせ同和行為の排除をはかるうえで重要である。このため,事業主等に対し,公正な採用・選考システムの確立と,企業内における人権尊重に向けての主体的・自主的な取組みの促進をはかり,明るく働きやすい職場づくりをすすめる。
行政に携わる職員は,同和問題の解決に主体的に取り組むという自覚に立ち,それぞれの分野で適切に対応できなければならない。このため,計画的,積極的な研修の実施に努め,その資質の向上をはかる。
なお,えせ同和行為は,県民に同和問題についての誤った意識を植えつけ,同和問題の解決を阻害するばかりでなく,これまでの啓発の効果を一挙に覆すものであることから,関係機関との密接な連携のもとに,啓発をはじめあらゆる機会を通じて,その排除に努めていく。

(2)同和教育の推進
学校教育・社会教育における同和教育を計画的,継続的に推進しているが,今後とも,同和問題をはじめとする人権問題の解決をめざして,同和教育を推進する必要がある。
推進にあたっては,同和教育の課題を明確にし,学校教育・社会教育相互の連携を深めながら,地域ぐるみの取組みとなるよう,同和教育基本方針に基づき,総合的に推進することが重要である。
学校教育では,学校における推進体制を充実するとともに,各教科・領域の特質に応じて,教育の全分野に正しく位置づけ,発達に即した指導となるよう努める。また,幼稚園から小学校,中学校,高等学校等における連携を深め,一貫した同和教育の推進をはかる。
社会教育においては,社会教育関係団体等を対象とした学習機会の確保に努めるとともに,自らの課題として,自発的な学習が展開されるよう,内容・方法に創意工夫を加え,教育・啓発活動の促進に努める。また,市町村における同和教育推進体制が充実するよう支援する。

2 自立へ向けての支援

(1)生活の向上,安定
同和問題の解決をはかるうえで,地区住民自らが自立,向上の意欲をもち,自主的な努力をし,社会のあらゆる分野に進出し,重要な役割を果たしていくことが肝要である。
しかしながら,就労状況や経済,産業,教育等の面において,依然として不安定で低位な状況や格差が見られることなど,生活の向上,安定に向けて取り組まなければならない課題もある。
このため,地区住民の生活の向上,安定をはかるうえで,職業の安定が極めて重要であることから,安定就労につながる技能や技術の習得を促進し,雇用の安定をはかるとともに,企業主等に対して就職の機会均等を働きかける。
中小企業については,経営,技術両面にわたる相談,指導等を通じて,経営の安定,強化をはかる。
また,若年齢層の地区外転出に伴う地区の高齢化が進行しているため,隣保館活動等と連携して,社会福祉,保健衛生の向上に努めるほか,高齢者が地域社会のなかで生きがいをもって過ごせるよう,老人クラブ活動の活発化等を促進する。

(2)教育・文化の向上
同和問題解決のためには,地区住民の自立・向上精神のかん養をはかることが重要である。
このため,教育集会所や隣保館等がその設置目的にそって機能を十分発揮できるよう,各種学習活動や文化活動の充実をはかるとともに,相互理解が深まるよう,地区内外の住民の交流をすすめる。
また,同和地区の児童・生徒が,将来,社会の各方面に進出し,有為な社会人として活躍できるよう,進学奨励や企業等に対する就職の機会均等の徹底等を行うことにより,進路保障に努める。


主題:
快適で活力あふれる岡山づくり
第5次岡山県総合福祉計画 No.2
80頁~161頁

発行者:
岡山県

発行年月:
平成8年4月

文献に関する問い合わせ先:
岡山県庁
〒700-8570
岡山県岡山市内山下2-4-6
TEL:086-224-2111