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快適で活力あふれる岡山づくり

第5次岡山県総合福祉計画

No.1 岡山県

項目 内容
立案時期 平成8年4月
計画期間 平成8年度~平成12年度(5年間)

はじめに

岡山県は,これまで4次にわたる岡山県総合福祉計画を策定し,「人間尊重,福祉優先」を基本理念とし,「創造・自立・連帯」を基調に県政の推進に努めてまいりました。 この間,社会経済情勢の変化や厳しい財政状況など幾多の困難はありましたものの,西日本における本県の拠点性の高まりなど大いなる発展可能性を現実のものとするべく,交流と発展のための拠点整備や美しい環境のなかでゆとりと生きがいのある生活をおくることのできる郷土づくりに全力で取り組み,4次にわたる計画を通じて県勢発展の基盤整備の見込みをつかみ得たものと考えております。 県民のくらしの基礎を支えるとともに県土を保全する治山治水,苫田ダムをはじめとする水資源の確保,生活の利便性を高め,県内外との交流と連携,産業の発展を促進する道路網,港湾,空港の整備,また,教育,文化施設などの物的拠点施設はもとより,心豊かな日々のくらしをかたちづくるコミュニティや地域福祉の充実,安全で快適な生活を実現するための環境や景観を守る対策など,県内各地域の基本的な振興施策の位置づけができあがったところであります。 5次計画では,これまでの骨格的な枠組みに肉付けをし,中四国経済文化圏構想の具体化,高度情報化への対応をはかるとともに,国に対して地方がアイデンティティを確立し,地方分権を推進するための取組みを強力に押しすすめていくことにしております。 さらに,県民が日々のくらしのなかで快適さと豊かさを実感できる岡山の実現,県土の均衡発展構造の構築,活力ある産業の創造などに積極的に取り組み,真に豊かさの実感できる「快適で活力あふれる岡山づくり」に全力をあげてまい進してまいります。 この計画は,21世紀の新たな地平を拓くものとして今後5年間の県政の指針となるものであります。計画目標の達成に向けて,県民一人ひとりの創造力,自立心,連帯感のもとに,県,市町村はもとより,県民,民間団体,企業等すべてが協働し,それぞれの役割分担と連携のもとに積極的な取組みを行っていかなければならないと存じます。 計画策定にあたり,貴重なご意見を賜りました県議会,市町村をはじめ県民の皆様に心から感謝の意を表しますとともに,今後とも県政の推進のため,一層のお力添えをお願いする次第であります。

平成8年4月

岡山県知事 長野士郎

目次

はじめに

総論

基本計画

快適で活力あふれる岡山づくり

地域振興の方向

計画のすすめ方

総論

第1 県政推進の基本方向

1 総合福祉計画の理念

岡山県では,これまで4次にわたる総合福祉計画を通じて,県民参加のもとに,「人間尊重,福祉優先」を基本理念として,「創造・自立・連帯」を基調とする県政の推進に努め,着実に成果をあげてきた。 「人間尊重,福祉優先」の理念は,終始変わることのない県民本位の県政の基本でなくてはならない。総合福祉計画がめざしてきた福祉は,社会的に弱い立場の人たちの福祉はもとより,快適で活力あふれる岡山県のそれぞれの地域の人びとのくらしの根幹を支える広い意味での福祉を指す。 しかし,福祉の増大と安定は,常に社会的正義と自発的努力と励ましの調和のうえに立ったものでなくてはならないこともまた当然であり,これが「創造・自立・連帯」にほかならない。 我々は,このような理念のもとに,市町村と機能を分担し,協調しあい,地域住民の相互連帯と自立の意識に支えられながら,「活力ある成熟社会・おかやま」を築いていかなければならない。

2 成熟社会への道程

第1次から第4次に至る総合福祉計画を経て,いま,岡山県は第5次総合福祉計画において21世紀を切り拓く道筋を示さなければならない。そのためには,今までに達成できたこと,未だ及ばなかったことを明らかにする必要がある。

(1)第1次総合福祉計画(昭和49年~昭和55年)

 いわゆる列島改造景気のなか,経済的な尺度ですべての価値を判断しようとする風潮が支配的で,県下においても物価の高騰,乱開発による県土の荒廃が顕著であり,公害の防止が重要課題となっていた矢先,中東紛争に端を発した第一次石油危機不況により県民生活もまたその影響下に混乱した。 このときにあたり,第1次総合福祉計画では,経済優先から福祉優先への転換をめざし,「人間尊重,福祉優先」を基本理念としてスタートした。 そこでは,何よりも,人間性豊かな地域社会の原点であるコミュニティにおいて,「同一の地域に住む人びとが利害をともにし,役割を分かちあってともに生活する社会」の形成を提唱した。 また,福祉計画の策定に先立って制定していた県土保全条例に引き続き,県独自の土地利用計画及び環境影響評価指導要綱を施行するなど,乱開発から県土の自然と県民の生活を守るための取組みを推進した。 昭和52年の改訂では,緑豊かな空間を生かしながら個性と魅力に富む内陸都市圏の形成をめざす県北部,保健・福祉・文化のセンターとして人と自然のふれあう吉備高原都市に象徴される新しい発展方向をめざす県中部,広域都市圏の形成をめざす県南部とそれぞれの発展方向の基本を位置づけて,県土の均衡ある発展をはかることとした。 折からの財政的なひっ迫状況もあって,計画に掲げたハード事業は一部縮小,繰り延べのやむなきに至ったが,これらの先進的な取組みは,広く県民に支持されるところとなり,総合福祉計画の基本姿勢として今日に引き継がれている。

(2)第2次総合福祉計画(昭和56年~昭和60年)

第2次総合福祉計画においては,愛と奉仕の心をもって,相互の信頼にもとづく暖かい人間関係をもとに,「創造・自立・連帯」により福祉社会の実現をめざした。 コミュニティから地域福祉へ,そしてすすんで新しい時代を切り拓く豊かな創造性,自らのことは自らの責任において対処していく自立心,さらにお互いが支えあい,励ましあう深い連帯感をもって,高齢社会の到来に備え,県民生活の質的な向上をめざすこととしたものである。 また,第二次石油危機不況のさなかではあったが,昭和53年に着工された瀬戸大橋の完成を視野に,将来への飛躍をはかるための布石となる基礎的な事業に重点を置いた取組みをすすめ,県立美術館,新岡山空港,総合流通センターの建設に着手し,山陽自動車道の整備を促進した。 西日本の交通の要衝の地として,中四国の発展を先導するための基盤整備でもあった。

(3)第3次総合福祉計画(昭和61年~平成2年)

 第3次総合福祉計画においては,第2次総合福祉計画において整備に着手した瀬戸大橋,新岡山空港,山陽自動車道などの大型事業が一斉に開花し,結実したことを受けて,県民の総力をあげて新たな交流と発展をめざすこととした。 瀬戸内三橋時代を先取りし,中四国経済文化圏の形成に向けて本県の拠点性をさらに高め,優位性を確立するためでもある。 また,国際化,情報化,高齢化の進展などにも積極的に対応し,多少の地域差はあっても県内各地で個性的な地域づくりが進展して,第3次計画が目標とした社会福祉の充実,教育文化の向上,生活環境の整備,産業の振興などさまざまな分野で着実に成果をあげることができた。 しかし,いわゆる平成景気といわれる経済過熱状態のなかで,必ずしも心の豊かさ,生活の快適さが感じられないという側面があらわれてきた。

(4)第4次総合福祉計画(平成3年~平成7年)

 第4次総合福祉計画の策定に先立ち,21世紀初頭(2005年頃)を展望し,それに向けて特に重要と考えられる岡山県の目標,すすむべき方向等を取りまとめて,「活力ある成熟社会・おかやま」をめざす新長期ビジョンを策定した。 第4次総合福祉計画は,この新長期ビジョンをよりどころとして策定し,広域交通網の整備による西日本における拠点性の高まりなど大いなる発展可能性を生かして,新たな交流と発展の具体的な施策を展開し,真の豊かさが実感できる郷土を築くとともに,21世紀へ向けて美しい環境のなかでゆとりと生きがいのある生活をおくることのできる「活力ある成熟社会・おかやま」の実現を目標としてきた。 主要課題である長寿社会の実現に向けての施策としては,地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくり事業など,具体的な施策が住民,地域,市町村の理解と協力のもとに定着しつつある。 交流と発展のための拠点整備についても,岡山国際交流センター,倉敷スポーツ公園マスカットスタジアム,岡山県工業技術センター・テクノサポート岡山などが完成し,倉敷チボリ公園も整備がすすめられている。 さらに,平成8年度中には中国横断自動車道岡山米子線が開通するなど,中四国一体化のための交通基盤整備,その中核的役割を果たすべき岡山の拠点施設整備がいずれも概成する。

3 県政推進の基本目標

21世紀を切り拓く道筋をつけるための骨格的な事業は,県議会をはじめ,市町村の協力はもとより,広く県民の支持を得ながら,これまでの4次にわたる総合福祉計画の概成を通じて,これらの基盤整備の見込みをつかみ得たといえる。 すなわち,県土の保全としての治山治水,苫田ダムに象徴される水資源の確保,県内の高速自動車道を基幹とする道路網,港湾,空港の整備,また,教育,文化施設などの物的拠点施設はもとより,コミュニティづくりや地域福祉づくりの充実,環境対策など県内各地域の基本的な振興施策の位置づけができあがったといえよう。 第5次総合福祉計画においては, 第一に,これらの骨格的な枠組みに肉付けをして,これまでの4次にわたる計画の総括的な役割を明らかにする必要がある。 第二に,来るべき21世紀を展望して,

1 中四国経済文化圏構想の具体化 2 高度情報化への対応 3 地方分権の推進

に努力する必要がある。 さらに,地方分権の推進,高度情報化への積極的対応のために,当然に,県としても,組織及び事務の合理化による改革を強力に推進する必要がある。 第5次岡山県総合福祉計画においては,21世紀に至る岡山県づくりの総仕上げとして,「快適で活力あふれる岡山づくり」をめざす。

4 計画の目標年次

平成8年度から平成12年度までの5か年間

5 施策の体系(別記)

別記 施策体系表

快適で活力あふれる岡山づくり

  • 快適で豊かな生活づくり
    • 美しくいきいきとした郷土づくり
      • 農山漁村
      • 中山間地域
      • 都市
    • 快適なくらしのために
      • すまい
      • 下水処理
      • 地域交通
    • すこやかなくらしのために
      • 健康・医療
      • スポーツ・レクリエーション・リゾート
  • 生きがいのある社会と人づくり
    • 愛と奉仕の地域づくり
      • 家庭
      • コミュニティ
      • 地域福祉
      • ボランティア
    • すべての人が生きがいを
      • 高齢者
      • 母と子ども
      • 障害者
      • 低所得者
    • しあわせなくらしのために
      • 勤労者
      • 女性
      • 同和対策
    • 新たな文化と人づくり
      • 地域文化
      • 生涯学習
      • 学校教育
      • 青少年
  • 安全で調和のとれた地域づくり
    • 調和のとれた県土づくり
      • 自然
      • 土地
      • 水資源
      • 治山治水
    • 災害への備え
      • 震災
      • 風水害
      • コンビナート災害
      • 災害救助
    • 安全なくらしのために
      • 環境保全
      • 消防
      • 防犯
      • 交通安全
      • 消費生活
  • 活力あふれる社会の基礎づくり
    • 明日の発展のために
      • 人材養成
      • 広域交通
      • 情報・通信
    • たくましい産業づくり
      • 農林水産業
      • 商工業・流通・観光
      • 新産業
    • 交流と連携による地域の創造
      • 広域連携
      • 国際交流・協力

第2 岡山県の展望と課題

快適で活力あふれる岡山づくりに向けて,岡山県がもつ恵まれた条件や特性などの発展可能性を十分に生かし,県民一人ひとりの創造力,自立心,連帯感のもとに,県,市町村はもとより,県民,民間団体,企業等すべてが協働し,一体となって,21世紀を展望した新しい課題に果敢にチャレンジしていくことが求められている。

1 快適で豊かな県民生活の実現

我が国は,経済面では世界の最高レベルに達している。 しかし,現実の生活においては,必ずしも豊かさの実感が伴わない状況があることも否定できない。 その背景を考えてみると,人びとの行動様式が急速に変化し,一人ひとりが自分自身の生活について安定的な価値基準をもっていないことも,豊かさを味わえない原因かもしれない。 岡山県では,県民だれもが経済,文化,自然など人間生活にかかわる各般の価値を問いなおし,社会に尽くすことのしあわせや美しさを感じとるなど,いわば経済を超える新たな価値観に支えられた,豊かで多様な生活スタイルを創造し,心の面でも高い充足を得ることのできる活力ある成熟社会の実現をめざしてきた。 いま,我々は,「成熟社会」とは,表面的な豊かさばかりでなく,一人ひとりが大切にされ,安心してくらせる社会であるとの認識を共有しなければならない。また,ゆとりや楽しさばかりではなく,それを実現し,維持していくための積極性や努力の大切さを見直し,その両立のなかでこそ,真の「成熟社会」が実現されるものと考えなければならない。 いうまでもなく,豊かさや快適さ,ゆとりの実感は個人の感性と世界観に由来するところが大きいが,21世紀の活力ある成熟社会をリードする社会づくりの基本は「人間尊重,福祉優先」の理念であり,我々はその理念のもとに「経済を超える新たな価値観」を提案し,すべての県民とともに新しい生活スタイルを創造していく努力を一層積み重ねる必要がある。

(1)お互いに尊重しあう社会の形成
 岡山県では,県民一人ひとりが世代や価値観の違いを超えて,相互に認めあい,尊敬しあう社会の実現をめざして県民一体となって努力してきた。その成果は,地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくりなどによって具現化されつつあり,これからは,さらにその考えをおしすすめる必要がある。
  • 高齢者が主体性や自主性を確保しつつ,豊かさやゆとりを実感でき,生きがいをもって安心して生活できるよう,保健・医療・福祉の各施策の充実とこれらの総合的な推進をはかり,高齢者自身がさまざまな社会活動に積極的に参加し,地域社会や各世代間の交流の担い手として積極的に活躍できるよう支援する。
  • 障害者については,リハビリテーションの理念とノーマライゼーションの理念のもとに「完全参加と平等」の実現に向けて,総合的,計画的な施策を推進する。
  • 国籍や民族を問わず,歴史や文化などの違いを認めあいながら地球社会に共に生きる人間として相互理解の促進をはかるとともに,共生の意識の醸成に努める。さらに,海外の国や地域と交流をはかり,世界の人びとと友好を深める。
  • 「だれもが,いつでも,どこでも」学習でき,その成果が適切に評価され,生かされるような生涯学習社会の実現をめざす。
  • 国内外の優れた芸術文化に接する機会や多彩な分野における創作活動の発表・鑑賞機会の拡充に努める。
  • 学校教育においては,豊かな心をもち,たくましく生きる人間の育成をめざして,個性を生かす教育を推進する。
(2)快適で豊かな生活空間の形成
  • 農山漁村については,地域ぐるみで棚田などの自然景観や集落景観等を維持・保存する美しい村づくりを推進する。さらに,快適な生活環境を創り出していくため,生活排水処理施設や集落間,集落内の生活道路,あるいは地域住民の憩いの場としての農村公園などの整備をすすめる。 また,森林のもつ公益的な機能や効用を理解し,森林愛護の精神をかん養する取組みをすすめる。
  • 中山間地域については,集落の日々の生活を支える中心集落やそれを支える地域の生活中心都市を中山間地域生活圏としてとらえ,交通基盤の整備をはじめ,基礎的な都市的サービスを享受できる施設などを地域の生活中心都市において重点的に整備する方策を検討する。 都市と農山村の交流が積極的に展開されるよう,農林業の体験や自然とのふれあい体験のできる施設整備をすすめる。 また,中国地方の各県と連携して21世紀の高齢社会にふさわしい中山間地域の新たな利活用をはかる社会実験プロジェクトを検討していく。
  • 都市については,中四国の中枢的な役割を担うべき岡山県にふさわしい都市機能の集積に努め,それぞれの都市のもつ特性,地域における役割を生かした,快適で活力あふれるまちづくりをすすめる。吉備高原都市については,21世紀を志向した真のコミュニティ都市づくりをめざす。 また,環境と共生する都市づくり,安全なまちづくりをすすめ,広く県民が手軽に利用できる公園,広場の整備や水と緑を生かしたオープンスペースの創出をはかるとともに都市近郊の森や山を活用した憩いの場の整備や緑地の保全などを積極的にすすめる。
(3)快適な生活の要素としての健康づくり
 本格的な高齢社会を迎え,寝たきり老人対策等,医療・福祉分野における各種施策を充実していくことはもとより,県民一人ひとりがいつまでも積極的に社会活動を継続することのできる,活力ある成熟社会の形成をめざす。
(4)安全・安心な社会の形成
 阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件は,我々の生活を覆す潜在的な危険性をあらわにし,災害や事故,事件に対する大きな不安を呼び起こした。 この教訓に立って,本県においても自立型防災思想の普及・徹底,危機管理体制の整備,地震に強いまちづくりなど総合的な震災対策を推進し,防災力の向上をはかる。 また,環境,水や食品,消防,防犯,交通安全などの日常生活上の安全対策を推進する。
(5)地球的視野での取組み
 岡山県新長期ビジョンにおいて,グローバル岡山構想を提唱し,世界に開かれた岡山の形成に努めてきた。しかし,高速交通網と技術革新による情報化の著しい進展は,我々の予想を超えて地域と世界との距離を縮め,我々の生活が直接に世界の影響を受け,また,我々も直接に世界に影響を与える時代となっている。 このため,あらゆる施策の展開にあたって,地球的視野に立っての取組みを一層すすめ,地球市民としての協力・共生の関係をめざす。

2 均衡発展構造の構築

岡山,倉敷等県南地域に人口と産業の集中がみられるとともに,中国縦貫自動車道,中国横断自動車道岡山米子線の開通効果などから,津山等県北の中心地では人口の漸増傾向がみられるなど,岡山県全体としては地域の活力が維持されている。一方,県境の町村等においては,産業の停滞,人口減少と高齢化の進展などによって,活力が失われつつあるところも見受けられる。 県内の各地域が,それぞれの特性を発揮し,地域の資源を活用しながら,活力ある地域社会を築いていくため,全国の交通網と有機的に連携し,県内各地域間のアクセスを向上させる総合的な交通体系の整備,地域が連携して行う事業の強化,拠点施設の適正配置など,県土の均衡発展構造を構築していく。

3 活力ある産業の創造

これまで,10億人程度の先進国に限定されていた市場経済に東欧やアジアの諸国,発展途上国が参入した結果,35億人規模による世界的な大競争(メガコンペティション)の時代が始まっている。 いまや,国内の地方は,国と地域の発展を求めて生産拠点の誘致をはかろうとするアジアの各地域と直接的な競争関係にあることを認識しなければならない。 本県が,こうした厳しい地域間競争に打ち勝っていくためには,“アジアのなかで存在感のある岡山”をめざす必要がある。特に,産業分野では世界が注目し,世界が求めるきらりと輝く技術を創造する企業群を育成し,先進技術を世界に誇る岡山のイメージを確立する必要がある。

(1)新たな産業展開のための環境整備
 豊かな県民生活のベースとなるものは,たくましい産業の育成である。産業構造の変化に対応した活力あふれる農林水産業,商工業の振興をはかるとともに,次代を担う新産業の創出支援,効率的な物流体制の構築等を行うことにより,柔軟でたくましい産業づくりに行政,産業界が一体となって取り組まなければならない。
(2)流通環境等の整備
 すべての産業において,流通コストの削減が緊急の課題となっており,輸送費用の低減,在庫の合理化,配送の効率化等が強く求められている。 このような状況をふまえ,国際的にも全国的にも通用する物流基盤として整備をすすめている岡山空港,水島港,県北流通センターなどを核として流通産業の育成や誘致,集積をはかる。 観光産業については,交流圏域が飛躍的に拡大する瀬戸内三橋時代を的確に見通し,広域交通網によりもたらされる効果を最大限に生かした観光振興をはかる。
(3)魅力ある農林水産業の確立
 経営管理能力に優れた意欲ある経営体を育成するとともに,これら経営体への農地の利用集積や低コスト稲作の推進など,生産コストの削減,国際競争力の強化が求められている。地域の特性を生かして,有機無農薬農産物など高品質な農林水産物づくりをすすめるほか,新たにバイオテクノロジー研究所(仮称)の整備により,遺伝子組替えや細胞融合など最先端技術を駆使しながら,高品質な地域特産品の開発に取り組む。そして,空港や高速交通網を最大限に活用し,マーケティング戦略を推進して,自立した魅力ある農業として新しい時代の農林水産業の確立をはかる。

4 世界へ羽ばたく岡山づくり

世界的な大競争の時代においては,「国としての実力」ばかりではなく,地域が主体性を高め,継続的,自立的な発展を成し得るだけの「地域の実力」を身につけなければならない。 岡山県においては,このような観点から,世界に羽ばたく岡山づくりを強力に推進する。

(1)中四国経済文化圏の形成
 地球時代の到来と地方分権のうねりのなかで,中四国経済文化圏の形成が必然のものとなりつつある。 また,近い将来には,中四国地方がまさに網の目状に高速交通網で結ばれ,中四国一体化の条件が整うことになる。 岡山県においては,早くから中四国経済文化圏の形成を提唱し,知事及び経済団体の代表で構成する中四国サミットの開催を実現するとともに,サミットの具体的な活動として「中四国グランドデザイン」を策定して,「広域経済圏」としての実体づくりに取り組むこととしたところである。 また,関係5県共同による西日本中央連携軸構想の実現に向けて取り組んでいる。 このような中四国経済文化圏を実体あるものとするためには,県民主体の取組みを推進し,それぞれの県民がその必然性を十分理解し,中四国を一体としてとらえる意識のもとに広域的な交流,連携を活発に展開していくことが重要である。
(2)人材養成
  • 岡山県には,岡山県立大学,岡山大学など,大学13校,短期大学13校,工業高等専門学校1校があり,それぞれ特色のある高等教育がすすめられているが,今後とも,人材養成機能や研究開発機能の強化をめざして高等教育機関の整備充実をはかり,大学等における教育・研究活動の積極的な展開を通じて地域社会を支える幅広い分野の人材養成に努める。
  • 高付加価値型産業の展開を実現し,さらにダイナミックな発展をとげていくため,岡山大学地域共同研究センターなどと一体となって,産・学・官による共同研究や異業種交流などを積極的に推進するとともに,岡山県工業技術センターの研究・技術者養成機能の活用や(財)岡山県中小企業研修情報センターの研修機能の充実により,優秀な研究者や技術者の養成をはかる。 また,国等の研究機関や民間研究所の誘致により,優れた人材の導入と活躍の場づくりに取り組む。さらに,国内はもとより,広く海外からも特異な分野に秀でた優秀な人材を招へいし,県内への集積及び定着をはかる。
  • 農林水産業についても,農業大学校,中国四国酪農大学校における教育内容の充実をはかるとともに,吉備高原都市に整備をすすめているバイオテクノロジー研究所(仮称)における先端的な研究も活用しながら,豊かな創造力とたくましい実践力を備え,新品種開発や品種改良などについての高度な技術を駆使することのできる人材の養成をすすめる。
  • 地域づくり,ボランティア,芸術文化,教育,福祉,医療等の各分野の施策の充実をはかることにより,多彩な人材の発掘と養成に努める。
(3)広域交通網の整備
  • 平成8年度には中国横断自動車道岡山米子線の全線が開通し,日本海から太平洋に至る最初の南北軸が構築され,県内2か所で南北軸と東西軸の結節点が形成される。今後,こうした地理的,機能的優位性を十分生かし,岡山の魅力をさらに高める拠点づくりに取り組む。
  • 整備された交通基盤を活用して,輸入促進地域としての指定,広域物流システムの構築などの取組みをすすめる。
  • 中四国横断新幹線の建設促進については,新幹線の鉄道併用橋として建設されている瀬戸大橋の優位性を生かし,中四国の各県が連携して取り組む。
  • 県内循環高速道路網を形成する美作岡山間道路の整備を促進するとともに,地域高規格道路などの幹線道路の整備を促進する。
  • 水島港については外貿コンテナターミナル整備や船舶の大型化に対応した航路の整備等,国際物流の拠点施設として拡充整備をはかる。また,宇野港,岡山港等に,モーダルシフトに対応する内貿施設や外航クルーズなど,それぞれ地域の特性を生かした機能を整備する。
  • 岡山空港については,滑走路の延長やターミナル施設等の拡充整備をはかり,既存路線の充実や国内・国際新規路線の開設など,利便性を一層高めていく。また,広域交通網の結節点に位置する優位性を生かし,今後の航空貨物需要の増大に対応する航空貨物基地をめざして,輸入促進地域の指定を受け,貨物ターミナル施設の整備をすすめ,西日本の拠点空港をめざす。
  • 岡南飛行場を西日本の小型航空機の拠点基地として整備する。
(4)情報・通信網の整備
  • 「岡山県高度情報化基本計画」にそって総合的に情報化施策の推進にあたり,光ファイバーによる情報通信ネットワーク「岡山情報ハイウェイ」を構築するとともに,県内各地域における各種の情報通信基盤の充実に努める。
  • 情報関連産業や新産業などを育成するための産業情報ネットワークの構築をすすめ,情報化を担う高度な知識,技術をもった人材の養成,確保に努める。
  • 県民が情報やメディアを活用する能力の向上をはかるため,情報化にかかる各種の学習機会を提供していく。
(5)国際交流・連携の推進
 国際理解講座や外国語教育の充実等に努め,地球市民としての意識高揚,世界に通じる人づくりをすすめるとともに,在住外国人と共にくらす地域づくりに取り組む。また,友好交流先との一層の交流を推進し,多角的,実質的な交流活動の展開をはかる。 岡山県のもつ優れた技術などの特性を生かしながら,海外との技術協力や共同研究,開発途上国の人づくりの支援等に積極的に取り組む。 倉敷チボリ公園の建設や岡山空港の機能拡充,日本海と太平洋を結ぶ高速道路の建設等がすすめられており,これらを大いに生かしながら,“交流と連携による地域創造”に向けて,「世界に開かれ,世界と共に生きる岡山」の実現をめざす。

第3 目標年次における岡山県の姿

1 人口指標

区分 平成2年 平成7年 平成12年 平成7~12年 年平均伸び率 参考 平成17年
単位
人口 総数 千人 1,926 1,951 1,974 0.21% 2,000
0-14歳 353 316 300 ▲1.03% 316
15-64歳 1,286 1,297 1,287 ▲0.15% 1,264
65歳以上 287 338 387 2.74% 420
構成比 総数 100.0 100.0 100.0 - 100.0
0-14歳 18.3 16.2 15.2 - 15.8
15-64歳 66.8 66.5 65.2 - 63.2
65歳以上 14.9 17.3 19.6 - 21.0
世帯数 千世帯 610 659 683 0.72% 721

(注)平成7年の人口総数は国勢調査速報値,年齢階層別数値は見込値である。

岡山県の人口は,昭和60年代以降,低水準で推移しており,昭和60年から平成7年までの10年間の年平均伸び率は0.18%程度にとどまっている。 今後も自然増(出生数から死亡者数を差し引いた増加分)の大幅な増加は見込み難いが,広域交通網の整備や産業振興,都市機能の充実,生活環境の整備など,転入増,人口定着のための施策をより積極的に展開することによって社会増の一層の増加が期待できる。 これらをふまえ,岡山県の総人口は平成12年には197万4千人,平成17年には200万人になるものと見込んでいる。 年齢階層別に見ると年少人口(0~14歳)は,平成7年の31万6千人から平成12年には30万人まで低下するものの,出生数の増加に伴って平成17年では31万6千人と回復するものと見込まれる。一方,生産年齢人口(15~64歳)は平成7年の129万7千人から平成12年で128万7千人と低下していくことが見込まれる。 また,老年人口(65歳以上)は引き続き増加し,総人口に占める割合も平成12年で19.6%に達するものと見込まれる。 世帯については,平成12年に68万3千世帯に増加すると見込まれる。

2 経済指標

(1) 就業構造
区分平成2年平成7年平成12年平成7~12年 年平均伸び率参考 平成17年
単位
人口全産業千人9539709900.41%1,016
第1次868476▲1.98%64
第2次348330267▲4.15%268
第3次5195566473.08%684
構成比全産業100.0100.0100.0-100.0
第1次9.08.77.7-6.3
第2次36.534.027.0-26.4
第3次54.557.365.3-67.3
県民就業率49.549.750.2-50.9

(注)平成7年度の数値は見込値である。

県内の就業人口は,女性や高齢者の就業がすすみ,平成7年の97万人から平成12年に99万人,平成17年に101万6千人に増加するものと見込まれる。 産業別にみると,第一次産業の就業人口は,専業農家を中心とした担い手の育成や新規就農者の確保などに積極的に取り組んできたところであるが,平成7年の8万4千人,構成比8.7%から平成12年で7万6千人,構成比7.7%へと減少するものと見込まれる。 第二次産業については,生産機能の海外移転や労働生産性の向上などにより,平成7年の33万人,構成比34.0%から平成12年では26万7千人,構成比27.0%へと減少していくものと見込まれる。 第三次産業については,経済のソフト化,サービス化に伴って増加しており,今後もこの傾向が加速され,平成7年の55万6千人,構成比57.3%から平成12年では64万7千人,構成比65.3%へと増加すると見込まれる。 県民就業率は,平成12年に50.2%になるものと見込まれる。

(2) 経済規模

区分平成2年平成7年平成12年平成7~12年 年平均伸び率参考 平成17年
単位
県内 総生産全産業億円70,13178,31690,5482.95%104,664
第1次1,2991,3321,4191.27%1,563
第2次31,86536,99842,4872.80%48,344
第3次36,96739,98646,6423.13%54,757
構成比全産業100.0100.0100.0-100.0
第1次1.91.71.6-1.5
第2次45.447.246.9-46.2
第3次52.751.151.1-52.3
県民所得億円54,67457,95766,6642.84%77,093
民間最終消費支出億円38,52942,58448,3812.59%55,937
一人当たり県民所得千円2,8392,9713,3812.62%3,862

(注)平成7年度の数値は見込値である。
価格は平成5年度価格である。

国際化の進展により,人・もの・情報の国境を越える動きが加速し,岡山県においても海外との直接の結びつきが強まっており,地場企業においても国内動向のみならず海外からも大きな影響を受けるようになってきている。今後高い成長は期待できないものの,空港,港湾,山陽自動車道,中国横断自動車道などの広域交通網の整備,国際的な競争に対応するための経済構造改革の進展,新たな産業の創出支援策の展開などにより,平成7年度から平成12年度で年平均2.95%程度の成長を見込んでいる。 産業別にみると,第一次産業は,付加価値の高い農林水産業の振興を展開することにより,平成7年度から平成12年度の年平均伸び率を1.27%と見込んでいる。 第二次産業は,より一層の高付加価値化と新たな産業の創出,育成によって,平成7年度から平成12年度で年平均伸び率2.80%を見込んでいる。 第三次産業は今後特に産業関連サービス産業,情報関連サービス産業の発展が期待できることから平成7年度から平成12年度で年平均伸び率3.13%程度と順調に増加するものと見込んでいる。

基本計画

第1 快適で豊かな生活づくり

1 美しくいきいきとした郷土づくり

農山漁村

課題と施策の方向

農山漁村は,食料の安定供給,地域社会の活力の維持,国土や環境の保全等を通じて,我が国の経済社会の発展と国民生活の向上に重要な役割を担っている。 特に,森林や水田,畑,牧草地,ため池などは多種多様な動植物のせい息・生育の場として自然の生態系を守るとともに,特有の保水機能により国土の保全に大きな役割を果たしている。 しかしながら,農山漁村は生活環境の整備がすすんでおらず,若者の都市への流出,過疎や高齢化の進行など大きな課題を抱えている。 このため,地域ぐるみで棚田などの自然景観や集落景観等を維持,保存する美しい村づくりを推進する。また,近年増加してきている遊休農地の有効活用に努める。 さらに,地域のコミュニティを支え,活力を生み出している伝統文化の伝承にも努める。 都市住民との交流を推進するため,農林水産業を通じたユニークな交流体験の場として,ファーマーズ・マーケット(仮称)を県南部と県北部に整備する。 また,県民参加のもとに推進する「美しい森林づくり」においては,広葉樹を中心にそれぞれの地域に適した「モデル林」を整備するなど,県民が森林と親しめる場づくりをすすめる。 さらに,生活排水処理施設,集落間や集落内の生活道路となる集落道,あるいは地域住民の憩いの場としての農村公園など快適な生活環境の整備をすすめる。

重要施策

(重要施策の体系)

豊かで住みよいむらづくり

  • 魅力ある村づくりの推進
    • 美しい村づくりの推進
    • ふるさと文化の伝承と創造
    • 都市住民との相互交流
  • 生活環境の向上
    • 生活環境の整備

1 魅力ある村づくりの推進

(1)美しい村づくりの推進 農山漁村は,水と緑に恵まれた豊かな自然を残しており,古くから残る伝統,文化とあいまってゆとりとやすらぎに満ちた快適な生活空間を提供している。 しかし,近年の開発の進行,過疎化,高齢化等により美しい農村景観を将来にわたって維持・保存することが困難となっていることから,地域ぐるみで取り組む美しい村づくりを積極的に推進する必要がある。 このため,山間地のすばらしい農村風景を構成し,国土保全の面からも大きな役割を果たしている棚田について,営農条件の整備や周辺環境の整備をすすめ,その保存に努める。 また,農村地域に広範に存在するため池,水路等の土地改良施設を活用した水辺空間の創出を行うとともに,サンショウウオやアユモドキ等の希少動植物のせい息・生育が可能となるよう小川や水路の整備など,自然生態系の保全にも努める。 さらに,森林についても,防災機能と保健休養機能をあわせもつ快適な環境を整備する。 遊休農地については,地域の担い手への利用集積や新規就農者への提供,市民農園としての整備,農業以外への利用など多様な活用を促進する。 (2)ふるさと文化の伝承と創造 農山漁村に古くから伝承されている伝統行事や郷土料理などは,地域の人びとの連帯意識や郷土愛を育てるうえで重要な役割を果たしている。 このため,「岡山県農林漁業活力向上運動」の展開等により,祭りなどの地域伝統行事や手づくりの郷土料理,竹細工,わら細工などの地域伝統工芸の伝承グループや後継者の育成に努め,文化の香り高い魅力ある村づくりをすすめる。 さらに,地域の若者や女性によるふるさと芸能の創造,新しい特産物づくりグループやそのリーダーの育成等をすすめ,ふるさと文化の発展に努める。 (3)都市住民との相互交流 農山漁村の豊かな自然や文化などに親しみ,こころのゆとりとやすらぎに満ちた健康的な時間を共有する都市住民との交流活動は,都市と農山漁村の共生と地域の活性化に大きな役割を果たしている。 このため,都市と農村,生産者と消費者の交流を通じて,農業の大切さや農村のすばらしさを理解できるユニークな交流体験の拠点としてファーマーズ・マーケット(仮称)を県南(灘崎町)と県北(勝央町)の2か所へ整備する。 また,都市と農山漁村の交流組織や交流活動のリーダー,民話,伝統芸能,郷土料理,伝統工芸等に精通した「交流・地域文化伝承インストラクター」等の育成に努めるとともに,子どもたちを中心とした学校間の相互交流,地域資源を生かしたイベント,農林漁業体験ツアー,地域特産物の販売や農産物のオーナー制度の実施など多彩な交流事業を推進する。 さらに,自然環境と調和した農林漁家民宿,貸し農園等の農林漁業体験施設,交流促進センター,スポーツ・レクリエーション施設など都市との交流に必要な受入れ条件の整備に努めるとともに,都市へ積極的に情報発信を行い,相互交流の輪の拡大に努める。 また,都市の住民が土にふれ,物をつくる喜びが味わえる市民農園の普及をはかる。 森林を県民共通の財産としてみんなで守り育てていく必要があるため,県下の水源地域や中山間,県南地域で指定している「美しい森林モデル林」において,地域の特性を生かした森林の整備とビジターセンター,キャンプ場等各種施設の整備をすすめるとともに,都市住民などの幅広い参加を得ながら「美しい森林づくり運動」を展開する。

2 生活環境の向上

生活環境の整備は農山漁村地域での定住を促進するための基礎的な条件であり,都市部とそん色のない生活水準を実現し,若者から高齢者に至る地域住民が快適でゆとりある生活を実感できる地域づくりをすすめることが重要である。 このため,トイレの水洗化等による快適な生活の実現と農業用水の水質保全をはかる農山漁村集落排水施設の整備を推進する。 また,子どもの遊び場や地域住民の憩いの場,交流の場を確保するため,農村公園,多目的広場,集会施設等の整備を推進する。 さらに,交通の利便性向上と集落機能の維持,強化をはかるため,優れた自然環境や景観に留意しながら,集落道の整備を推進する。

中山間地域

課題と施策の方向

中山間地域は,地勢等の条件に恵まれず,過疎化と高齢化が急速にすすみ,耕作放棄地の増加や森林の荒廃,農林業の生産活動の低下といった農山村の諸機能の弱体化,さらには地域コミュニティの崩壊の危機といったさまざまな問題をもたらしている。 その一方で,心の豊かさを重視し,自然を大切にしたいという意識変化に伴い,景観,環境,県土の保全に果たす中山間地域の公益的機能や役割が再認識されている。 このため,中山間地域の集落の日々の生活を支える中心集落やそれを支える地域の生活中心都市を含む地域を中山間地域生活県としてとらえ,交通基盤の整備をはじめ基礎的な都市的サービスを享受できる施設などを地域の生活中心都市において重点的に整備する方策を検討する。 また,中山間地域の公益的機能は農林業の生産活動を通じて維持,保全をはかることが肝要であり,県民の理解を深めながら新しい営農支援制度等について検討をすすめるとともに,歴史的景観や風景等の地域資源の保存についても積極的に取り組む。さらに,都市と農山村の交流が積極的に展開されるよう,美しい村づくりをはじめ,地域の特性を生かした環境整備を積極的に行う。 また,中国地方の各県と連携して21世紀の高齢社会にふさわしい中山間地域の新たな利活用をはかる社会実験プロジェクトを検討していく。

重要施策

(重要施策の体系)

活力ある中山間地域づくり

  • 定住条件の確保整備
    • 地域の生活中心都市と中心集落の活性化
    • 生活環境の整備
    • 農林業の振興と新しい産業の導入
    • 保健・医療の確保
    • 高齢者福祉の増進
  • 県土・環境保全機能の維持・保全
    • 地域資源の維持管理
    • 中山間地域の営農支援制度の検討
  • 都市との交流の促進
    • グリーン・ツーリズムの推進
    • 中山間地域の新たな利活用

1 定住条件の確保と整備

(1)地域の生活中心都市と中心集落の活性化 現状の中山間地域,特に周辺集落においては,引き続き人口減少と高齢化が進展しているが,その主要な要因として医療や教育,買い物など日常生活に不可欠なサービスや都市的サービスが,十分享受できないことがあげられる。 これまで,中山間地域の中心集落や近辺の都市が,これらのサービスの多くを提供してきたが,過疎化の進展に伴い,その機能は年々低下する傾向にある。 今後は地域の生活中心都市が,周辺地域を支えるための生活センターとしての役割を果たすことができるよう,広域的な都市機能の充実をはかることが極めて重要である。 このため,地域の生活中心都市については,交通網や道路網の整備,商店街の活性化による都市のグレードアップ,保健,医療,福祉体制の充実,交流拠点施設の整備,伝統行事などのイベント支援等の施策を重点的に促進し,生活圏域全体の活性化をはかるとともに,周辺町村へも波及効果があるような,生活圏域内市町村が連携したプロジェクトの推進や民間活力の誘導策などについても検討していく。 周辺農山村地域については,中心集落等の居住地としての魅力を高めるため,生活環境の整備などを促進する。特に中心集落は,日常生活のにぎわいの場としての機能強化が求められていることから,商店街整備など中心地機能の強化や道路などの基盤整備を促進する。

(2)生活環境の整備 中山間地域は地形や立地条件などから集落内の生活道路,排水路や下水道などの生活環境の整備がすすんでおらず,また,生活様式の多様化に伴い生活排水による水質の汚濁などで環境の悪化を招いている。 このため,安定的に生活用水を確保する簡易水道などの給水施設の整備を推進するとともに,快適な生活の創造と農業用水の水源の汚濁防止をはかるための農業集落排水施設(農村下水道)の整備をすすめる。 また,生活圏域内にある中心集落へのアクセスや周辺集落との円滑な連絡をはかるための集落道の一層の整備に努める。 さらに,農村公園,集落防災安全施設,文化教育施設などを整備するとともに,人口流出の防止やUIターンの受け皿として,分譲宅地を造成する過疎市町村等を支援する。

(3)農林業の振興と新しい産業の導入
地理的,経済的に不利な条件下におかれている中山間地域においては,地域の気候や地形等を生かし,高品質で付加価値の高い特産物の産地化をすすめるなど,農林業の振興をはかり,地域の活性化を推進していく必要がある。 このため,有機無農薬野菜や棚田天然米等の有機無農薬農業の推進をはじめ,新高梨,ピオーネ,夏秋トマト,夏秋ナスの生産振興や気象条件を生かしたリンドウ,トルコギキョウ,ユリ等の花きの生産振興をはかる。 また,地域資源を生かしたウド,ミョウガ,スプレーギク等の新作物の導入,定着をすすめる。 さらに,先進的組織経営体の育成に努め,集落における稲作と園芸作,あるいは和牛繁殖経営等との地域に適した複合経営の確立を推進する。 また,農業機械の共同利用や共同作業,農地の総合的な利用調整などにより,生産コストの低減と生産性の向上をはかる集落営農をすすめる。 高齢者や兼業農家等の営農を含めた経営を支援するため,育苗センター,市町村農業公社,酪農ヘルパー等の農作業を請け負う農業サービス組織の育成を促進するとともに,これら組織のマネージャー,オペレーター等の人材の育成確保をはかる。 棚田に代表される中山間地域の農地は,区画が小さく,不整形で急傾斜な場合が多いため,地域特性を生かした高付加価値型・高収益型農業の展開をはかるための基盤整備をすすめるとともに,環境や景観に配慮しながら地域条件などに応じた小規模なほ場,かんがい排水施設や農道の整備などに努める。 さらに,森林資源の一層の充実と地域林業の振興をはかるため,造林の推進,林道・作業道の開設,フォワーダー等高性能林業機械の導入や流通・加工施設等の整備など,地域条件にあった総合的な基盤の整備をすすめる。 特用林産物については,高品質なしいたけの生産振興やまつたけの発生環境の整備をすすめるとともに,微生物を利用したまつたけ天然シロの活性化をはかる技術を早期に確立し,林家への普及をはかる。 中山間地域の農林業を支援するため,中山間地域経営改善施設資金など低利で長期の融資制度を充実し,金融上の支援を積極的にすすめる。 中山間地域においては,農業の振興とともに,農業以外の多様な所得機会も創出する必要がある。 このため,郷土色豊かな独自性のあるふるさと特産品づくりのための加工・販売施設の整備をすすめるほか,農山村景観等を活用した交流施設,滞在しながら農作業を体験できる農園施設等の整備を支援していく。 さらに,農村地域工業等導入促進制度に基づく工場の誘致に努めるとともに,近年研究開発がすすむ養液栽培や環境制御技術等先端技術を用いたハイテク農業の導入について積極的に検討していく。

(4)保健・医療の確保
中山間地域においては,中心的な集落まで遠いために日常的な保健・医療サービスを十分受けられない地域が広く存在している。 このため,地域保健の中心となる市町村保健センターの整備をすすめるとともに,健康増進車,骨塩量測定車の運行や保健所における健康増進クリニックの開設により,健康づくりを支援する。 また,身近な疾病を中心とした住民の医療や健康管理のニーズに対応するため,へき地中核病院による巡回診療を行う。また,救急病院,診療所の整備や機能の充実,医師の確保をすすめ,消防機関との連携により緊急時の搬送の確保に努める。

(5)高齢者福祉の増進
著しく高齢化がすすんでいる中山間地域においては,高齢者が生涯現役としていきいきと活躍し,心豊かな生きがいのある生活を安心しておくれる地域づくりをすすめる必要がある。一方,人とのふれあいが希薄になりがちなひとりぐらし老人を中心に,買い物などの日常生活の援助を必要とする状況も見られている。 このため,住み慣れた地域において,高齢者が助け合い,交流しながらくらしていけるよう,行政はもとより地域の住民や農協,婦人会,企業等のあらゆる団体が一体となって,給食や家事,送迎サービス,介護支援,定期的な訪問相談など高齢者のニーズに応じた生活支援を行う地域ぐるみの高齢者福祉のむらづくり事業をすすめる。 また,高齢者がお互いに支えあいながら自立的な生活が維持できるよう,デイサービスホームなどの施設を整備するとともに,ひとりぐらし老人の共同生活施設の整備をすすめる。 さらに,高齢者の健康の維持・増進をはかるため,保健サービスの充実や地域組織活動を支援し,高齢者自らの日常的な健康づくりをすすめる。

2 県土・環境保全機能の維持・保全

(1)地域資源の維持管理
中山間地域は,農林業の生産の場であるばかりでなく,豊かな自然と美しい景観を形成し,さらに水源のかん養,土砂の流出・侵食防止などの公益的機能も有するなど,県土,自然環境等の保全の面からも重要な役割を担っている。 しかし,これらの地域では,特に過疎化,高齢化がすすんでいるため,農地,森林などの地域資源を将来にわたって維持,保全する機能の低下が懸念される。 こうした地域資源を維持していくため,景観に配慮した生産基盤や生活環境の整備を総合的に実施するとともに,地域住民だけでなく,その恩恵を受けている都市住民の理解を得ながら,農地保有合理化法人のもつ農地の中間保有機能を利用しての管理耕作を促進し,さらに,遊休化した農地のうち特に優良な農地については,認定農業者への集積や市民農園等としての活用をはかる。 また,森林については,優良林の造成に努めるとともに林道,作業道の整備をすすめるなど,農林業生産活動を通じて県土・環境保全機能の維持,保全をはかる。

(2)中山間地域の営農支援制度の検討
欧州連合(EU)においては,条件不利地域の農業の継続を維持することにより,最低限の人口と景観の保全をはかることを目的に,農業者へ直接所得補償するデカップリング政策を実施している。 本県においても,中山間地域の人口が減少し,遊休化した農地が増大しているなかで,集落機能を維持し,農林業を継続するとともに環境の保全をはかるため,中山間地域の営農支援制度について幅広い検討をすすめる。

3 都市との交流の促進

(1)グリーン・ツーリズムの推進
中山間地域は,豊かな自然や心のやすらぎを求める都市住民等にとってかけがえのない居住空間,余暇保養空間として貴重な役割を果たしており,これらの地域特性を生かしたグリーン・ツーリズム(*)に対する関心が高まっている。 グリーン・ツーリズムはヨーロッパ諸国(イギリス,フランス,ドイツ等)で盛んであり,これら諸国の農山村地域では,農家の一部を改造したり,新たに簡易な宿泊施設を整備して都市の住民を受け入れることにより,農家の副収入を増やし,定住や地域活性化に大きな効果をあげている。 こうした事例をも参考にして,今後より一層農林業,農山村の有する多面的な機能に関する理解を深め,地域間の交流を促進するため,都市住民等の多様なニーズに対応できる条件整備を早急にはかるとともに,こうした施設間あるいは農家とのネットワークを構築し,都市に対して積極的に情報を発信していく必要がある。 このため,農山村と都市に住む人びとがともに農林業を体験し,地域文化や自然とのふれあい体験等ができる施設の整備をすすめるとともに,関係市町村が協力して,各施設間の連携や共同広報等によるネットワーク化を推進する。さらに,グリーン・ツーリズムの一層の推進をはかるため,農業,農村生活が体験できる農園付き宿泊施設を整備するファームビレッジづくりをすすめる。

(2)中山間地域の新たな利活用
中国地方の中山間地域は,険しい山間部は少ないものの,該当地域は全市町村の8割にも達し,全国に先駆けて過疎の問題が発生した地域であり,過疎化,高齢化,人口の減少がすすみ,農林業従事者の減少や高齢化,それに伴う耕作放棄地の増加が全国平均を大きく上回るなど,地域の基幹産業としての農林業の空洞化が急速に進行している。 その反面,自然との共生を重視する価値観の広がりや生活にゆとりと豊かさを求めるニーズが高まるなかにあって,水資源の供給地,県民の憩いとやすらぎの交流空間として,また,都市との近接性による都市的機能の享受と豊かな自然を背景にした新しい定住の場として,新たな発展可能性を秘めた地域であり,今後21世紀の新しいライフスタイルを実現しうる地域として大きな可能性をもっている。 これからの中山間地域については,格差解消というこれまでの観点から自然と人間との新たな共存への試みという21世紀の我が国の課題を解決するフロンティアとして認識していくことが必要である。 このため,中国地方の各県と連携して中国地方中山間地域の地域実態をふまえた調査,開発振興手法の研究などを行う「中国地方中山間地域振興研究センター(仮称)」,「中国地方中山間地域振興学会(仮称)」の設立とともに,21世紀の高齢社会にふさわしい中山間地域の新たな利活用をはかる社会実験プロジェクトとして「中山間地域振興モデル基地(仮称)」を検討していく。

*グリーン・ツーリズム:農山漁村滞在型の余暇活動

都市

課題と施策の方向

21世紀には本格的な都市型社会が到来することが予想されるなか,中四国の中枢的な役割を担うべき岡山県においては,高い都市機能を備え,住む人が快適さ,豊かさを実感でき,訪れる人を魅了する個性あふれる都市を整備することが急務となっている。 このため,適切な規制,誘導と民間活力の導入,活用に努めるとともに,計画的,総合的な都市基盤及び交通体系の整備をすすめ,都市機能の充実と都市の快適性の向上に努める。 本格的な高齢社会が到来するなかで,だれもが充実した生活を営み,快適で文化性にあふれ,かつ,積極的に社会活動に参加することができるような人にやさしいまちづくりをすすめる。 また,都市のヒートアイランド化(*1),大気汚染への対応など都市環境についても改善が求められており,環境と共生する都市づくりをすすめる。 阪神・淡路大震災を教訓に,災害に強い安全なまちづくりをすすめ,さらに,広く県民が手軽に利用できる公園,広場の整備や水と緑を生かしたオープンスペースの創出をはかるなど都市の緑化を推進する。 吉備高原都市は,21世紀を志向した保健・福祉,教育・文化,産業などの各領域にわたる西日本のセンターとして機能する真のコミュニティ都市づくりをめざし,前期計画に引き続き後期計画の積極的な推進をはかる。 個性あるまちづくり,文化的資産としてのまちづくりをすすめるために住民の主体的かつ積極的な取組みを誘導する。

重要施策

(重要施策の体系)

魅力ある都市の創造

  • 都市機能の充実
    • 地方拠点都市地域の整備
    • 市街地の整備
    • 都市交通体系の整備
  • 快適で安全なまちづくり
    • 長寿社会に対応した整備
    • 美しい都市空間の創出
    • 環境共生都市(エコシティ)の実現
    • 防災性の強化
  • 新しいまちづくりの推進
    • 吉備高原都市づくり
  • 個性豊かなまちづくり

1 都市機能の充実

(1)地方拠点都市地域の整備
地方拠点法(*2)に基づき,津山市を中心とする1市14町村を平成5年4月に「津山地方拠点都市地域」として指定するとともに,平成6年5月に基本計画を承認し,各種事業が実施されている。今後とも「心豊かな生活文化圏」の形成を基本目標に,地域の恵まれた資源・特性を生かし,商業,医療・福祉,文化施設等都市機能の充実や良好な居住環境の整備,産業の高度化と付加価値の高い企業の一層の集積,スポーツ・レクリエーション施設の整備,当該地域と県南地域とを結ぶ道路網や地域内を有機的に連絡する交通ネットワークなどの整備をすすめ,県中北部地域全体の振興と発展に努める。 また,平成7年5月には,笠岡市,井原市を中心とする2市6町を「井笠地方拠点都市地域」として指定した。今後,地元において策定する基本計画に沿って魅力ある都市づくりをすすめることにより,県西部地域全体の振興と発展に努める。

(2)市街地の整備
計画的な市街地整備をめざして土地区画整理事業などにより都市基盤整備をすすめるとともに,特に中心部においては若者などがつどい,にぎわい,魅力あふれるまちづくりにも配慮しつつ,商業,業務,文化等多様な都市機能の集積に向けて,民間活力を積極的に活用しながら,市街地再開発事業を促進する。 岡山市においては,中心市街地において,既存商店街の衰退,若年定住人口の減少等により,活力低下の懸念される地区が増加している。このことは,都市の利便性,快適性,安全性を損なうばかりでなく,地域に根づいた歴史,文化を衰退させるものであり,長期的には都市そのものの健全な発展を阻害することにもなりかねない問題である。 このため,中心市街地において,交通ターミナル機能の充実や商業・業務機能,文化・娯楽機能,コンベンション機能など高次都市機能の集積をはかるとともに,住・商複合ビル形式の質の高い住宅の整備を促進して,職・住・遊が一体となった活気に満ちた都心形成をめざす。 さらに,岡山市の豊かな水と緑を生かし,随所に緑地・緑化スペースを整備するなど,都市機能と居住が調和した,公園のなかに存在する都市づくりを目標として,新しい岡山の顔づくりをすすめる。 加えて,マルチメディア社会に対応するため,テレトピア構想,インテリジェント・シティ構想の進展をはかるとともに,光ファイバー通信ケーブルの敷設等による高度情報通信基盤の整備や高度情報通信システムの整備を促進し,「岡山情報ハイウェイ」の中心地域としての整備をすすめる。 また,大元駅周辺の市街地においては,JR宇野線の連続立体交差事業にあわせて土地区画整理事業を行い,良好な市街地の形成をはかる。 さらに,平成12年に築庭300年を迎える後楽園の整備充実に努めるとともに,出石町地区の町並みを整備し,後楽園からカルチャーゾーンへの観光客の回遊性を高めるため,にぎわいの核となる施設をはじめ,散策道やポケットパークなどの整備を岡山市及び地元住民と一体となってすすめる。 倉敷市については,新しい文化的拠点をもつ近代的な産業都市づくりをめざして,文化性とアミューズメント性を兼ね備えた新しいタイプの都市型公園である倉敷チボリ公園の建設とその周辺整備を促進する。また,倉敷駅前地区の市街地再開発事業や連続立体交差事業及び新倉敷駅南土地区画整理事業等をすすめ,商業,業務等の都市機能の集積をはかるとともに,国内外から訪れる人びととの交流を通じて国際的な視野に立った質の高い地域文化を育成するため,宿泊施設やコンベンション施設等の充実整備のほか,観光情報サービス機能の強化等を促進する。さらに,水島地区における市街地再開発事業や工業地帯で働く若者や県民等の交流拠点としての水島サロン,水島文化センターの整備活用等を促進する。 津山市では,中国地方内陸部の拠点都市にふさわしい文化,教育都市づくりをめざして,新たな高等教育,研究機関の設置等を促進するとともに,都市の骨格となる都市計画道路の整備により都市内交通の円滑化をはかるなど都市機能の強化促進に努める。また,若者などに魅力のある商業,文化施設の整備をはかるため,市街地の中心部において市街地再開発事業を促進し,音楽文化ホールや図書館など圏域の拠点施設にふさわしい施設整備をすすめて文化,交流,商業等の諸機能を強化する。 玉野市においては,海に開かれたまちづくりをめざして,3万トン級外航クルーズ船が接岸できるふ頭・ターミナルの整備を核とする,宇野港の再開発事業をすすめるとともに,港に隣接して音楽ホール,レストランなどにぎわいのある都市機能の集積を促進する。また,大型マリーナの整備等による滞在型多機能リゾート地区の形成やアクアヘルス推進事業による健康増進施設の整備を推進する。 笠岡市,井原市では,井笠地方拠点都市地域の基本計画にそって,伝統的な地場産業と先端技術が融和した活力ある井笠産業文化圏づくりをすすめるとともに,県西部地域の中核として福山圏域と一体となった都市圏の創造をめざす。 笠岡市では,駅前地区で土地区画整理事業をすすめ,にぎわいのある商業施設の立地を促進するほか,市役所五番町線など都市計画道路を整備して山陽本線で分断されたまちの一体化をはかる。 井原市については,井原線の開業に備え,高屋駅周辺の土地区画整理事業や都市計画道路の整備を促進して宅地の供給と商業機能の集積をはかり,新しいまちづくりをすすめる。 総社市においては,駅南地区の土地区画整理事業により良好な宅地の供給をはかるとともに,都市計画道路の整備を促進する。また,古代吉備文化の風情が色濃く残る吉備路を生かして,岡山の歴史,文化を楽しみながら,学び,ふれあうことのできる広域交流拠点施設の整備をすすめる。 高梁市については,地域の拠点都市として基盤整備を促進するとともに,学園都市にふさわしい都市機能の集積をはかるため,都市計画道路や下水道の整備,利便性の高い商業ゾーンの形成,駅周辺の再開発,ゆとりのある住宅団地や学生宿舎の整備等をすすめる。 新見市については,駅前地区における土地区画整理事業とあわせて市街地再開発事業を促進し,住宅の供給と商業機能の集積をはかるとともに,多様な文化活動に対応できる交流拠点の整備を促進し,広島県東部,山陰との結節点にふさわしいうるおいのある都市づくりをすすめる。 備前市では,東備地方の中核にふさわしいまちづくりをめざして,都市計画道路や総合運動公園等の都市基盤の整備を促進するほか,研究者や技術者等の人材の確保と定着をはかるための広域的な拠点施設の整備について検討をすすめる。

(3)都市交通体系の整備
都市内交通の円滑化や快適な都市生活環境の確保をはかるため,岡山市においては,万成国富線,米倉津島線など,倉敷市においては,金光船穂倉敷線などの放射・環状道路の整備をはかる。 渋滞が慢性化している岡山市街地においては,内・中・外環状道路及び放射道路の整備を促進し,円滑な交通網の整備に努める。特に,中環状線の一部である万成国富線の整備は市街地の渋滞解消に著しい効果が期待されることから,旭川橋梁等の建設をすすめ,早期完成をめざす。 また,岡山空港と岡山市街地間を結ぶ区間に導入をすすめているガイドウェイバス方式による新交通システムについて,関係機関との調整をはかりながら,早期導入に努める。 その他の都市についても,渋滞解消,交通基盤強化をはかるため,緊急度の高い路線から重点的な整備をはかり,都市内幹線道路やバイパスの整備,立体交差化などの整備をすすめる。 こうした道路網の整備とあわせて,交通渋滞の解消をはかるため,市街地における駐車場の整備を促進するとともに,駐車場案内システムの整備などにより総合的な駐車対策に努める。また,近郊の駅周辺に駐車場を整備することにより,公共交通機関への乗換えの誘導をはかるパーク・アンド・ライドシステムの導入を促進する。

2 快適で安全なまちづくり

(1)長寿社会に対応した整備
都市施設の整備にあたっては,車いすのすれ違える幅広い歩道の整備,歩車道の段差の解消,階段に代わるスロープ化等によるバリアフリー(障壁がない)のまちづくりをすすめるとともに,分かりやすい案内表示を設置する等,高齢者,障害者が行動しやすいまちづくりに努める。また,病院,劇場,集会所,展示場等多くの人びとに利用される建築物において,出入口やエレベーター等を高齢者等に利用しやすいものとするよう関係者の理解と協力を求めるとともに,新設される公共建築物については,率先してこうした措置を講じる。

(2)美しい都市空間の創出
ゆとりとうるおいのある緑豊かな都市空間の創出をはかるため,地域の実情に即した緑化を推進するためのマスタープランとなる「緑の基本計画」の策定を促進するとともに,緑化思想の高揚や街路緑化の推進,建築物のセットバックによる緑地の確保等,地域が一体となった取組みを展開し,緑あふれるまちづくりをすすめていく。 また,地域住民が手軽に歩いて利用できる近隣公園,地区公園の整備をはかるとともに,子どもからお年寄りまで広く県民が利用できる河川の高水敷を活用したスポーツ・レクリエーションの場,自然観察等の場の整備をすすめる。さらに,親水公園や親水護岸の整備などを積極的に導入し,人びとが親しめるうるおいとやすらぎのある河川づくりに努める。 都市景観を阻害する大きな要因となっている屋外広告物を規制するとともに,都市景観と調和したものとなるよう誘導する。また,電線類については,電線共同溝(C・C・BOX)の整備を推進し,地中化に努めるとともに,県民に対しても環境美化のための運動の展開を強く呼びかける。

(3)環境共生都市(エコシティ)の実現
都市づくりをすすめるなかで,自然との共生をはかり,環境への負荷を軽減し,ゆとりある都市空間を整備していくため,未利用エネルギーを活用するシステムを組み入れたビルの建設や公開空地の緑化,さらには生態系の保全をはかるための道路の透水性舗装化などをすすめる。

(4)防災性の強化
災害に強いまちづくりの方針を都市計画マスタープランに位置づけるなど,各種防災対策を総合的,計画的に実施するための計画策定をすすめる。また,土地区画整理事業,市街地再開発事業等の面的整備による防災街区の形成,建物の不燃化,耐震化を推進するとともに,避難路や避難地,延焼遮断帯となる幹線道路,公園,緑地,河川などの都市防災空間の整備に努める。さらに,道路,河川,下水道等の耐震性の向上をはかり,公共施設やライフラインの安全性,信頼性の確保に努める。特に,電線類の地中化等を積極的に推進する。 さらに,既存建築物について,その所有者に対し,耐震診断の受診と必要な耐震改修を指導し,安全性の向上をはかる。

3 新しいまちづくりの推進

吉備高原都市については,緑豊かな自然環境のなかで,自然や周辺地域とのかかわりあいを大切にしながら,あらゆる人びとが共生し,ふれあうことにより,真に人間性の回復ができるまちづくりをすすめるとともに,保健・福祉,教育・文化,産業などの西日本のセンターとして機能する,21世紀を志向した新しいコミュニティ都市の実現をめざして,前期計画に引き続き後期計画に着手している。 後期計画では,前期計画との整合性をはかりながら,快適性の高い住宅地や生産,研究開発,教育・文化,宿泊,研修,スポーツ・レクリエーション施設などの各種機能が複合的に展開する都市づくりをめざして計画的に建設を推進する。 まず,都市の研究・教育分野での拠点機能を高めるため,バイオテクノロジー研究施設,総合教育研修施設の建設をすすめるとともに,吉備高原地域テクノポリスの中核拠点として,研究産業施設の整備をはかり,次代を担う医用工学関連産業・バイオテクノロジー産業のほか,高付加価値型産業の立地に努める。 新都市への人口集積を促進するため,良好な環境を備えた住区の整備及び分譲,低層集合住宅の分譲,都市内の利便施設や義務教育施設など公益施設の整備をすすめるとともに,美しく魅力ある都市景観の形成を促進するため,電線類などの地中化をすすめ,あわせてニューメディアの導入を検討する。また,中国横断自動車道賀陽インターチェンジ(仮称)から都市内へのアクセス道や岡山市街地から都市への道路の整備をすすめる。 さらに,地域の伝統技術を生かした文化交流施設や自然空間のなかでのスポーツ・レクリエーション施設,地元雇用効果のある工場公園等の基盤整備を段階的に推進するとともに,ふれあいと交流の場づくり,にぎわいと活気のあるまちづくりに努める。 なお,これらの事業の推進にあたっては,中部高原地域の自立拠点都市として,その開発効果を周辺地域に波及させるよう配慮する。

4 個性豊かなまちづくり

地域の特性を生かした個性豊かなまちづくりをすすめるため,都市づくりの具体的なビジョンづくりを促進する。このビジョンを実現するため,自分たちのまちは自分たちでつくるといった気運を醸成する一方,地域住民が主役となって地区ごとのまちづくりを行う地区計画制度等を積極的に導入し,それぞれの地区の特性にふさわしい良好な環境の市街地整備を計画的にすすめる。 また,公共土木施設の建設にあたっては,専門家等で組織するシビックデザイン検討委員会の活用をはかることなどにより,地域の文化,伝統,特性等に配慮した質の高いデザインを積極的に導入する。さらに,質の高い建築デザイン,都市デザインを創造しようとする事業者に対し,優れた建築家やデザイナーを推薦し,これを支援するクリエイティブTOWN岡山事業を推進し,文化的資産としてのまちづくり,建物づくりを促進する。 特に,岡山国体が開催される平成17年を目標に,「21世紀の岡山の顔」として誇り得る優れた都市景観,建築文化を創造するため,国体主会場や岡山駅周辺等を中心に,こうした事業を活用した施設等の整備と,各種景観誘導施策や啓発事業を集中的に展開する総合的なプロジェクトを推進する。

*1 ヒートアイランド:冷暖房や自動車の放熱等により,都市部上空に高温の大気のかたまりが発生すること。
*2 地方拠点法:地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律

2 快適なくらしのために

すまい

課題と施策の方向

快適で豊かな生活の実現には,良質な住宅に加えて,ゆとりある生活空間の存在,すなわち水と緑に囲まれた空間などの確保や,心にやすらぎを与え,その地域の文化的アイデンティティを表現するものとなるような街並みづくり,景観づくりが必要である。 このため,長寿社会に即し,いつまでもだれもがそのまま住み続けることができるよう考慮した住宅づくりを推進するとともに,親子二世帯が住めるゆとりのある住宅の普及をはかる。 持家取得については,各種融資制度等の充実に努め,民間住宅の建設の促進をはかるとともに,公的分譲住宅の建設等を行う。宅地の確保については,無秩序な民間宅地開発を抑制し,優良かつ適正な開発を誘導するとともに,公的機関による計画的な宅地の供給をはかる。 賃貸住宅については,民間活力を積極的に導入して,ゆとりとうるおいのある良質な賃貸住宅を供給する。公営住宅については,持家,民間賃貸住宅を補完することを基本に,狭小・老朽化した既存住宅の計画的建替えを推進する。 ゆとりある生活空間については,地域の特性を生かした水と緑豊かな自然に恵まれた環境空間や美しい街並みづくりをすすめ,豊かさと快適さが実感できるすまいづくりをすすめる。

重要施策

(重要施策の体系)

長寿社会に適合したすまいづくり

  • 高齢者・障害者向け住宅の建設促進
    • 高齢者仕様による公営住宅の供給
    • ケア付き住宅の供給
    • 民間住宅への普及促進
    • 親子二世帯住宅の普及促進

持家取得の促進

  • 良質な住宅の取得促進
    • 各種融資制度の活用促進
    • 公的分譲住宅の建設
    • 民間住宅建設の促進
    • 既存住宅の改良による居住水準の向上
  • 良質な宅地の供給
    • 公的機関による宅地開発
    • 民間宅地開発の促進

賃貸住宅の供給

  • 県営住宅等公的賃貸住宅の供給
  • 民間賃貸住宅の供給促進

ゆとりある生活空間の創造

  • バリアフリー化の推進
    • 公共施設等のバリアフリー化
  • 豊かな自然環境の保全・創出
    • 自然環境との共生に配慮した公共事業の実施
  • 美しい街並みづくり
    • 景観に配慮した住環境整備
    • 市街地空間の確保
    • 良好な住環境の整備

1 長寿社会に適合したすまいづくり

公営住宅,公社住宅等公的住宅の建設に際しては,加齢による身体機能の低下等が生じた場合にもそのまま住み続けることができるよう,設計に配慮するとともに,高齢者が安心して快適な生活をおくることができるようケア付き産宅の供給促進に努める。 また,高齢者や障害者が自由に活動できる個人住宅のバリアフリー化,高齢者,障害者同居世帯住宅の建設などを促進するため,各種融資制度の充実をはかる。 さらに,親子二世帯が住めるゆとりのある住宅の普及を促進するため,モデル住宅の建設や融資制度の充実をはかる。

2 持家取得の促進

(1)良質な住宅の取得促進
岡山県住宅供給公社による積極的な宅地開発とあわせて,持家取得を促進するための利子補給制度や融資制度の積極的活用により,良質な分譲住宅の取得を促進する。さらに,良質な民間住宅の供給を促進するとともに,各種融資制度の活用による持家取得の促進に努める。特に,個人住宅建設資金融資制度の拡充により,高齢者や障害者,母子,多子世帯の持家促進に努めるとともに,過疎市町村や県境町村への若者の定住を促進する。 また,多様なライフスタイルに柔軟に対応できるよう,既存住宅の大規模な模様替えや改良等を促進するとともに,住宅の品質,性能の向上と取得者の保護に努める。

(2)良質な宅地の供給
民間宅地開発の活力を適正に誘導するとともに,市町村,県住宅供給公社等の公的機関による計画的な宅地開発をすすめ,賃貸方式も取り入れながら環境に恵まれた良好な宅地の供給に努める。 また,本県の恵まれた自然環境を生かして緑豊かでゆとりある優れた住環境と生活空間を備え,大都市からも移り住みたくなるような魅力ある住宅地の整備を積極的に促進することとし,21世紀の都市づくりをめざして建設がすすむ吉備高原都市において,そのモデル的な整備を行う。 さらに,職住近接をはかるため,土地区画整理事業の積極的導入をはかり,市街化区域の宅地化を促進するとともに,道路や公園等の公共施設の整備を行う。

3 賃貸住宅の供給

公営住宅については,持家,民間賃貸住宅を補完することを基本に,全般的な生活水準の向上にあわせ,県営西大寺団地,中庄団地をはじめ,狭小化,老朽化した既存住宅の建替え,住戸改善などを計画的に行うほか,市町村営住宅の供給,建替えなどを計画的に実施する。 民間賃貸住宅については,各種補助制度や利子補給制度の活用により,ゆとりとうるおいのある良質な賃貸住宅の供給を促進する。

4 ゆとりある生活空間の創造

(1)バリアフリー化の推進
高齢者,障害者はもとより,すべての人びとが安全かつ円滑に行動できるような生活空間づくりをめざし,道路,公園,公共建築物等公共施設のバリアフリー化をはじめ,段差の解消や手すりの設置等,身体機能が低下する後期高齢期にも対応したすまいづくりの推進をはかるとともに,高齢者向け住宅の新築等に対する融資制度の充実をはかる。

(2)豊かな自然環境の保全・創出 水と緑に恵まれた自然豊かな空間づくりをめざし,河川,海岸,渓流等の整備にあたっては,生物の良好な成育環境に配慮しながら,美しい自然環境の保全,創出に努め,容易に水辺に近付けるように工夫した護岸整備,美しく親しめるなぎさ,せせらぎづくりなどの事業を推進する。

(3)美しい街並みづくり
新しく開発される住宅団地においては,地域住民の合意と参加のもとに,建築物や塀の形態,意匠,色彩等の基準を定めた建築協定の締結を促進するとともに,住宅地についても地区計画制度等を導入し,景観に配慮したゆとりとうるおいのある住環境の整備に努める。さらに,屋外広告物を規制するとともに,都市景観と調和したものとなるよう誘導する。 また,老朽建築物が密集し,生活環境が悪化した既存市街地においては,土地区画整理事業,市街地再開発事業などの導入により,土地の高度利用をはかり,公共施設の整備をすすめるとともに,生活の拠点となる豊かな市街地空間の確保された良好な住環境の整備に努める。 空洞化のすすむ都市中心部の定住人口の確保をはかり,健全な発展を促すために,地域の合意形成に努めつつ,良質な都市型住宅の供給と日用品店舗等の生活利便施設などを含む総合的な住環境の整備を推進する。

下水処理

課題と施策の方向

生活や生産活動に伴って生じる汚水の排除やトイレの水洗化など清潔で快適な生活環境を創出し,同時に,身近に清らかな水辺空間を確保しながら,日々のくらしのなかで快適さ,豊かさが実感できる環境づくりをすすめる観点からも,下水処理施設の整備は,ますます重要な課題となっている。 特に,一般家庭から排出される生活排水は,河川,湖沼等の公共用水域や農業用排水等の水質悪化の主要な原因の一つとなっている。生活排水による水質汚濁防止をはかるためには,公共下水道,農山漁村集落排水施設,合併処理浄化槽等の下水処理施設の普及水準の大幅な向上に取り組む必要がある。 このため,地域の実情に即した下水処理施設の整備構想である「クリーンライフ100構想(全県域汚水適正処理構想)」を推進しながら,下水処理施設の大幅な整備水準の引上げに努める。 また,児島湖の水質汚濁については,流域住民の理解と協力のもと,下水処理施設の整備や浄化用水の導入,生活排水対策などを総合的に推進し,児島湖を県民が憩い親しめる湖として再生するよう努める。 一方,確実に増加する下水汚泥の処理方法の確立等に向けた取組みを行う。

重要施策

(重要施策の体系)

下水処理施設整備率の向上

  • クリーンライフ100構想の推進

下水道の整備

  • 公共下水道の整備
    • 公共下水道の整備
    • 過疎地域公共下水道代行事業の推進
  • 流域下水道の整備
    • 児島湖流域下水道の整備
    • 流域下水道施設周辺整備の促進
  • 耐震性の強化
  • 維持管理の適正化等
    • 下水汚泥処理処分方法の確立
    • 下水道施設等の多目的活用の推進

農山漁村集落排水施設の整備

  • 農山漁村下水道の普及促進

合併処理浄化槽の設置

  • 合併処理浄化槽の設置促進
  • 合併処理浄化槽の適正な維持管理

1 下水処理施設整備率の向上

下水道,農山漁村集落排水施設,合併処理浄化槽などの各種整備手法を地域の実情に即して導入し,総合的かつ効率的に下水処理施設整備がはかられるよう「クリーンライフ100構想」を策定した。この構想は各種整備手法ごとの区域を明らかにしたもので,事業未着手市町村においては事業着手のガイドラインとして,また,事業着手市町村においては合理的な事業執行に活用できるものであり,下水処理施設の整備率100%の実現をめざして本構想の推進をはかり,整備水準の大幅な引上げに努める。

2 下水道の整備

(1)公共下水道の整備
公共下水道は41市町村(平成7年度末現在)で整備がすすめられているが,それらの事業を一層促進するとともに,未着手の市町村においては下水道計画の策定を支援し,早期事業着手がはかられるよう誘導する。 また,一定の要件をみたす過疎町村においては,県が下水道の根幹的施設の建設を代行する制度の積極活用をはかり,公共下水道の整備促進に努める。

(2)流域下水道の整備
児島湖の浄化と流域内にある3市2町から排出される下水の効果的な処理をめざして推進している児島湖流域下水道事業については,平成12年度末までに,処理能力を155,000m3/日,幹線管渠延長を20.2km,処理人口を28万1千人,処理面積を5,463haに拡大する。このため,児島半島東部への幹線管渠の完成をはかるとともに高度処理技術の充実に努める。

(3)耐震性の強化
下水道施設の耐震性を高める観点から,根幹施設の2条化など,耐震性の強化について検討をすすめる。

(4)維持管理の適正化等
増大する一方の下水汚泥の処理方法の確立に向け,その基本方針を定めた「岡山県下水汚泥処理処分基本構想」をふまえ,緊急度の高い地域から,基本計画を策定するよう,関係機関の指導・調整をはかる。 また,下水汚泥の再利用促進のため,コンポストの高付加価値化の研究や建設資材に再利用する方法の研究等を行うとともに,利用者への流通ルートの確立に努めるなど,各地域での取組みを支援する。 下水道施設の多目的活用をはかるため,光ファイバーによる下水道管理用の通信網の整備や他の行政情報の通信手段としての利用について,幅広く調査・研究を行う。

3 農山漁村集落排水施設の整備

農山漁村における混住化の進行,生活水準の向上や生活様式の変化等に伴い,家庭からの生活排水によって農業用排水等の水質汚濁がすすみ,農業生産と生活環境の両面に影響を及ぼすとともに,河川等の水質悪化の一因にもなっている。 一方,農山漁村の汚水処理施設の整備は都市部に比べて遅れているが,汚水処理施設の整備は近代的な農山漁村社会の形成に不可欠であることから,農山漁村集落排水施設の整備を推進する。

4 合併処理浄化槽の設置

合併処理浄化槽は,下水道等と同等の生活排水処理施設としての役割を果たしており,生活排水による公共用水域の水質汚濁防止のため,その計画的な設置を促進する。 また,浄化槽の適正な管理を確保するため,設置者への正しい知識の普及啓発を行うとともに,浄化槽保守点検業者への指導等を強化する。

地域交通

課題と施策の方向

地域交通網は,広域交通網と相まって,中四国経済文化圏はもとより世界的な規模で展開されるさまざまな交流・連携の効果を県内各地域に幅広くすみずみまで行きわたらせ,それぞれの特性に応じて地域の活力を高め,県土の均衡ある発展に貢献するとともに,地域住民の日常生活を支える基盤として大きな役割を担っている。 このため,県南と県北,都市と農村など県下各地域を連絡する幹線道路,地域住民の生活を支え,地域の活性化に資する生活道路及び都市内交通の円滑化,都市環境の整備をはかるための街路について整備をすすめる。 あわせて,道路の緑化や沿道休憩施設の整備,周辺の景観との調和に努め,すべての人びとが安心して利用できる道路づくり,人と自然にやさしい道づくりをすすめる。また,風水害などにも強く,風光明媚な瀬戸内海を積極的に活用した安全で快適な道づくりを推進する。また,高度情報化社会への対応をも視野に入れて道路空間の有効利用をはかる。 地域交通の主要な役割を果たす鉄道については,在来鉄道の近代化を促進するとともに,鉄道新線である井原線の建設をすすめていく。 また,公共交通機関については,その維持・整備を推進していくため,利用者の増加をはかる必要があるが,環境問題の観点からも利用促進が求められている。このため,鉄道,バスの利便性を維持・向上させるとともに,駅等の交通施設の整備を促進する。 過疎地域,離島地域においては,人口の減少,自家用車の普及等に伴い,公共交通機関の利用者が減少傾向にあるが,学生や高齢者などの交通手段を確保 するため,地方バス路線,離島航路の維持に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

道路網の充実

  • 地域間連携を促進する道路の整備
    • 骨格道路の整備
    • 地域間連絡道路の整備
    • CC60,CT30構想の推進
  • 地域内道路の整備
    • 都市内交通体系の整備 ※参照「都市」
    • 生活基盤道路の整備
  • 各種施策を支援する道路の整備
    • 大型事業関連道路等の整備

道路の質的向上

  • 人と自然にやさしい道づくり
    • 歩行者・自転車のための道路整備
    • 道路の緑化,生態系に配慮した道路の整備
    • 瀬戸内沿岸道路の整備
  • 安全で快適な道づくり
    • 災害等に強い道路整備
    • 快適な道路交通環境の創出
  • 道路空間の活用
    • 電線共同溝(C・C・BOX)等の整備

地域交通網の整備

  • 鉄道の整備
    • 在来鉄道の充実強化
    • 井原線の建設
  • 公共交通機関の利用促進
    • 鉄道・バスのサービスの向上
    • 駅施設等の整備促進
    • 地方バス,離島航路の維持,地方港湾の整備

1 道路網の充実

(1)地域間連携を促進する道路の整備
地域・拠点連絡道路の骨格を形成する国道2号,国道53号,国道179号,国道180号,国道313号,国道429号,国道486号などについて,積極的に整備促進をはかる。 国道2号については,岡山市内の通過交通を円滑に処理するため,岡山バイパスの浅川~福治間の早期完成を促進する。また,玉島バイパス,笠岡バイパスの整備促進に努める。 国道53号は岡山北バイパス,津山バイパスなどの改良整備を促進するとともに,津山北バイパスの整備に着手する。 国道179号は鏡野バイパス,奥津・上斎原バイパスなどの整備を推進する。 国道180号は岡山市の外環状道路となる岡山西バイパスの建設を促進するとともに,一宮・総社バイパスの整備を促進する。 また,国道313号犬挟峠道路,国道429号倉敷・総社バイパス,国道486号川辺・尾崎バイパスなどの改良整備に努める。 さらに,地域の連携強化をはかるため,中部縦貫道,備北新線,西部総合開発基幹道などの地域間連絡道路の整備をはかる。 これらの道路整備の指標として,隣接圏域の中心都市間を60分以内で連絡する「CC60」構想や圏域の中心都市とその圏域内市町村を30分以内で連絡する「CT30」構想の実現に向けて道路整備を積極的に推進する。

(2)地域内道路の整備
通過交通の都市内への流入を抑制し,都市内交通の円滑化や快適な都市生活環境の確保をはかるため,都市計画道路万成国富線,同米倉津島線,同金光船穂倉敷線などの放射・環状道路の整備に努める。 渋滞が慢性化している岡山市街地においては,交通体系の見直し,整備を行うとともに,内・中・外環状道路及び放射道路の整備を促進し,円滑な交通網の確保に努める。特に,中環状線の一部である都市計画道路万成国富線の整備は市街地の渋滞解消に著しい効果が期待されることから,旭川橋梁部を含め早期完成に努める。 その他の都市についても,渋滞を解消し,都市基盤の強化をはかるため,都市内道路の整備や立体交差化,さらにはバイパスなどの整備に努める。 さらに,中山間地域をはじめとした農山村地域については,地域内の連携を促進するための道路を中心に整備するとともに,交通不能箇所,幅員狭小区間の解消に努め,効果の高い箇所を優先しながら,日常生活に密接に関連する市町村道の体系的な整備を促進する。

(3)各種施策を支援する道路の整備
吉備高原都市,岡山空港,倉敷チボリ公園,グリーンヒルズ津山などの大型事業に関連した道路整備について,的確な対応をはかる。 また,地方拠点都市構想を支援するため,関連道路の整備促進に努める。

2 道路の質的向上

(1)人と自然にやさしい道づくり
歩行者や自転車が安心して利用でき,環境にやさしい道づくりをめざして,幅広歩道の設置や立体横断施設,段差のない歩道の整備,透水性舗装やカラー舗装等の整備を行う。さらに,良好な生活環境の保全,形成をはかるため,幹線道路のバイパス整備などを行うとともに,遮音壁や植樹帯の設置に努める。 また,貴重な動植物の保護,道路周辺の風致や生態系に配慮した「エコロード」の整備をすすめ,既存道路ののり面についても周辺の植生と調和した植栽による再緑化をすすめる。 瀬戸内海沿岸部を東西に連絡し,瀬戸内海の多島美が眺望できる「瀬戸内沿岸道路」については,邑久町虫明地区と笠岡市大島地区の2か所のモデル地区で整備を推進するとともに,緊急度の高い箇所から逐次整備に着手する。 また,倉敷市児島地区と玉野市渋川地区を連絡する海上道路構想については,長期的な視点に立って検討する。

(2) 安全で快適な道づくり
岡山県地域防災計画において人命救助,消火・救援活動,災害復旧活動に供する道路として位置付けられた道路(啓開道路)については,地震等の災害による被害を最小限にとどめるために必要な対策を講じる。 また,山間部における落石・崩土等の対策をすすめ,危険箇所の解消に努めるほか,冬期通行止め区間の解消や除雪機械の整備,除雪体制の強化等,道路防災対策に万全を期する。さらに,トンネル内においても道路交通情報が受信できるラジオ再放送システムの活用をはかる。 安全,円滑,快適な道路交通環境を確保するため,分かりやすい道路標識の設置や道路利用者の休憩施設を備えたロードパーク等の整備をすすめ,幹線道路においては,道路情報提供の場と地域交流の場を兼ね備えた休憩施設「道の駅」の設置を推進する。また,道路の意義・重要性についての広報活動を展開し,県民の道路愛護意識の高揚をはかる。

(3)道路空間の活用
新たな都市の美観の創出や歩行者,自転車のゆとりのある通行空間の確保,電力,ガス等のライフラインの安全性,信頼性の向上等をはかるとともに幹線道路網の活用による光ファイバーネットワークの整備も考慮した電線共同溝(C・C・BOX)を中心としたライフライン共同収容施設の整備を推進する。

3 地域交通網の整備

(1)鉄道の整備
津山線については,新型車両の導入,行き違い設備の増設等による高速化を引き続き推進する。 吉備線については,沿線地域の開発に伴って,利用者の増加が見込まれることから,早期にその機能強化をはかるため,電化及び行き違い設備の増設等による近代化を促進する。 また,宇野線については,大元駅付近の連続立体交差事業を推進するとともに,行き違い区間の増強や部分複線化等を促進し,伯備線については,複線化及び新型特急車両導入による高速化を促進する。 水島臨海鉄道については,車両更新,PC枕木化等により近代化を促進する。 岡山県南地域と広島県備後地域を結ぶ井原線については,福山,倉敷,岡山とも連絡する循環ルートを視野に入れて建設を推進し,早期開業をめざすとともに,開業後においては地域に密着したサービスの提供や効率的運営をはかる。

(2)公共交通機関の利用促進
公共交通機関についてはその利用を促進するため,バスカードシステムの導入,ダイヤの改善,バス総合案内システムの整備等により,利便性の維持,向上をはかる。 また,交通施設を利用しやすいものとするため,駅,バス停留所への駐車場,駐輪場の整備等を促進する。 さらに,駅周辺の一体的な発展並びに鉄道利用者の利便性の向上をはかるため,駅の橋上化を促進する。 地方バス路線については,国の補助制度の活用等により,地域の実情にあった生活路線の維持に努める。 離島航路については,国の補助制度を活用しつつ,地域の振興計画等との整合に配慮しながら,航路の維持とともに船舶の近代化等利便性の確保に努める。 さらに,地域の産業振興を担う拠点として,東備港,牛窓港,鹿忍港,山田港,下津井港,児島港,笠岡港,北木島港において,それぞれの実情に応じた港湾機能の整備充実をはかるとともに,生活の憩いの場としての環境の整備に努める。

3 すこやかなくらしのために

健康・医療

課題と施策の方向

健康づくりを推進することは,疾病によって社会活動からリタイアすることを防ぎ,社会の活力を高め,快適で豊かな活力ある長寿社会を築くことである。 このため,それぞれの人に適した健康づくりを積極的に支援するとともに適切な医療体制の整備をすすめ,県民のニーズをふまえて,健康増進から疾病予防,治療,リハビリテーションまでの一貫した適切なサービスの提供体制及び正確な情報の提供システムの構築に努める。 あわせて,「自分の健康は自分でつくる」との自覚のもとに,健康増進意識の高揚と健康教育の充実をはかるとともに,健康づくりボランティアの育成など健康づくりの基盤形成を引き続き積極的にすすめていく。 また,総合的な健康づくりの拠点施設を県南と県北に整備するとともに,岡山県の恵まれた自然環境を生かし,楽しみながら健康増進,機能回復訓練に取り組むことができるアクアヘルス施設をモデル的に整備する。 住民の健康を守るうえで欠かすことができない水や食品等の安全性の確保に努めるとともに,動物愛護の体制づくりを推進する。 医療については,医療施設や医療従事者の地域的偏在,県中北部における救急医療体制や休日夜間の救急医療の確保,へき地における特定の診療科診療体制の整備,医学・医療の専門化,高度化,人口の高齢化,疾病構造の変化など医療をめぐる諸状況に適切に対処し,だれもが生涯を通じて身近なところで適切な質の高い医療サービスを受けることができるシステムの構築に努める。 特に,医療機関の機能に応じた役割分担と相互連携や,かかりつけ医によるプライマリケア(*1)体制,訪問看護体制などの一層の充実をすすめる。 救急医療及びへき地医療については,関係機関と一体となって地域の実情に応じた効率的な医療体制の整備充実をはかるとともに,災害時における対応も念頭において,医療情報を収集・提供する救急医療情報センター(仮称)の整備をすすめる。 また,高度医療や特殊治療のための施設整備や人材確保を推進する。

重要施策

(重要施策の体系)

健康づくりの推進

  • 生涯健康づくりの推進
    • 健康づくりの学習と実践
    • 適切な食事・運動・休養の普及
    • 心の健康づくりの推進
  • 健康づくりシステム基盤の整備
    • 総合的健康づくり拠点の整備
    • 指導者の養成と確保
    • 健康づくりボランティアの育成と確保
  • 歯の健康づくりの推進
    • 生涯自分の歯で食べる運動の展開
    • 生涯歯科ヘルスチェック(歯の健康度診断)の普及と充実
  • 感染症等対策の強化
    • 結核・感染症サーベイランス等の充実
    • 輸入伝染病対策の推進
    • 性感染症対策の推進
    • エイズストップ作戦の推進
  • がん対策の推進
    • がん予防方法の普及啓発
    • がん検診の充実
    • がん情報システムの充実
  • すこやかなくらしの基礎づくり
    • 安全な水の確保
    • 食品等の安全確保
    • 身のまわりのサービス等の衛生確保
    • 人と動物が共存できる豊かな地域社会づくり
  • 保健・医療・福祉等サービスの連携・総合化の推進

医療の充実

  • 医療体制の整備促進
    • 地域医療体制の整備
    • 救急医療体制の整備
    • へき地医療体制の整備
    • 高度・特殊医療施設の整備
    • リハビリテーション体制の整備
    • 老人医療体制の整備
    • 精神医療体制の整備
    • 臓器等移植対策の充実
  • 医療サービスの質の向上
  • 難病対策等の充実
  • 医療従事者の養成確保と資質の向上
  • 医療保険制度の安定的維持
    • 疾病予防・健康増進
    • 医療費の適正化
  • 献血運動の展開
    • 献血運動の推進
    • 血液製剤の安全確保
  • 医薬品等の安全確保と適正使用の推進
  • 薬物乱用防止対策の推進

1 健康づくりの推進

(1)生涯健康づくりの推進

1 健康づくりの学習と実践
乳幼児期から高齢期までを通じた健康づくりをすすめるには,「自分の健康は自分でつくる」との県民一人ひとりの意識の高まりと実践が大切であり,健康づくりについての正しい知識と健康的な生活の定着が不可欠である。 このため,広報紙,テレビ,ラジオ等を通じての積極的な広報活動の展開をはじめ,健康増進・栄養改善普及運動月間の活動の充実,保健所管内健康づくり推進大会の開催,リーフレットの配布などにより,健康づくりに関する正しい情報の提供を行い,一人ひとりの健康に望ましい生活習慣の定着を支援する。

2 適切な食事・運動・休養の普及
高齢者の寝たきりの原因となる主要な疾患である脳血管疾患や骨粗しょう症による骨折,全死亡に占める割合の高い心疾患やがん等成人病を中心とした慢性疾患は,一人ひとりの生活習慣に密接に関連していることから,日常生活の改善による予防が肝要となる。 とりわけ,成人病は,長い時間をかけて発病に至る「習慣病」ともいわれており,その原因は食生活,運動,喫煙,飲酒など長い間の日常生活習慣のなかに潜んでいる。 このため,健康増進車や骨塩量測定車の運行等を通じて,食事・運動・休養のバランスのとれた生活習慣を確立することの重要性を普及啓発するとともに,その実践方法の修得と定着を支援する。 また,保健所に開設する健康増進クリニックにおいては,市町村保健センターと連携しながら,健康増進中核拠点施設で開発されたノウ・ハウを活用する等により,地域住民の健康的な生活づくりの支援の充実に努める。 さらに,県民の食事,運動,休養,ストレス等の問題に関する生活習慣調査を実施し,地域住民の生活状況や健康状況を把握したうえで,県,市町村が一体となって,地域の特性に対応した健康づくり事業を推進し,生活習慣の改善をはかる。 また,地域における適切な栄養改善の推進をはかるため,市町村栄養士の確保や栄養改善協議会の育成をすすめる。

3 心の健康づくりの推進
社会構造の急激な変化や複雑化に伴い,人びとは日常生活のなかでさまざまなストレスにさらされている。過大なストレスは,ノイローゼ,適応障害,うつ状態など,心の健康を損なうのみならず,身体的にもさまざまな疾病を引き起こす原因となっている。 このため,精神保健についての正しい理解を深めるとともに,医療機関での受診の遅れの原因となっている偏見の解消をはかり,早期受診を促進する必要があり,市町村や精神保健協会と連携し,精神保健に関する普及啓発事業の推進をはかる。 また,教育機関や事業所などと連携して心の健康づくり教室を開催するなど,学校や職場における心の健康づくり運動を強力に展開する。 さらに,保健所の相談体制の充実をすすめるとともに,精神保健に関するカウンセリング機能を高め,心の問題で悩んでいる県民の支援体制の強化をはかる。

(2)健康づくりシステム基盤の整備

1 総合的健康づくり拠点の整備
県民の健康づくりを支援するため,健康増進方法の開発や実践の場の提供など総合的な健康づくりの拠点機能と保健所や市町村の健康増進施策等の支援機能をあわせもつ施設として,健康増進中核拠点施設を県南及び県北の2か所に整備する。 また,健康増進中核拠点施設との密接な連携のもとに,地域における健康づくりの拠点である保健所及び市町村保健センターとの連携システムを構築する。 さらに,心の面でのストレス管理,スポーツ障害の予防や治療,高齢者の日常動作能力の向上などの取組みにだれもが楽しみながら参加できるよう,県南部の瀬戸内海沿岸や北部の豊かな温泉地帯において,海水や温泉を利用した健康増進施設(アクアヘルス施設)の整備をすすめる。

2 指導者の養成と確保
地域保健活動をより積極的に推進し,一人ひとりの健康づくりに対する支援をさらに拡充していくため,保健所等における医師,歯科医師,保健婦,栄養士,作業療法士,健康運動指導士,精神保健相談員等健康づくり指導者の確保に努める。 さらに,身近な健康づくりの支援をはかるため,市町村における保健婦の確保や,栄養士未設置市町村における栄養士の設置を促進する。 また,健康づくり指導者の資質の向上をはかるため,高度化・多様化する保健医療ニーズに対応した研修を行うとともに,医師会,医療機関等が行う研修を支援する。

3 健康づくりボランティアの育成と確保
地域の人びとのニーズを的確に反映した効果的な健康づくりを推進するためには,その核となる健康づくりボランティアの確保やリーダーの養成及びその資質の向上をはかることが重要になる。 このため,愛育委員や栄養委員の研修の充実に努めるとともに,高齢者ヘルスボランティアの充実強化をはかる。また,心の健康づくりについても,メンタルヘルスボランティアの養成とその研修の強化に努める。 市町村における栄養教室や運動普及推進員養成講座の開催を促進する等,県と市町村が一体となって,栄養委員や運動普及推進員の育成,確保をはかる。

(3)歯の健康づくりの推進

1 生涯自分の歯で食べる運動の展開
生涯自分の歯でかみ,生きがいのある快適な人生をおくることを目標に8020運動(80歳で自分の歯を20本残す運動)が展開されているが,その達成に向けて積極的にセルフケア(自主的健康管理)に取り組む意識の高揚をはかる必要がある。 このため,市町村,学校,歯科医師会をはじめ各種団体と連携して,歯の健康フェアや各種のキャンペーンを展開するとともに,市町村における地域住民の歯の健康に関する学習指導等セルフケアの実践を支援する事業の取組みを促進する。

2 生涯歯科ヘルスチェック(歯の健康度診断)の普及と充実
乳幼児歯科健診及び幼稚園・学校歯科保健における健康学習を通して歯科ヘルスチェックがすすめられているが,成人や高齢者についても口腔内の定期的なヘルスチェックを自らすすんで行うことが必要であり,あらゆる世代における歯のセルフケア意識の普及啓発や健診体制の整備を促進する。 また,総合健診における歯周疾患検診の受診率の向上をはかり,ブラッシング指導等,受診後指導を実施する。 歯科保健サービスを受けにくい障害者や寝たきり老人の歯科保健対策の充実に取り組む。

(4)感染症等対策の強化

1 結核・感染症サーベイランス等の充実
結核,麻しん,風しん,インフルエンザなどの流行の実態把握と予測を行っている「結核・感染症サーベイランス」を活用して,保健所を中心とした情報還元システムを構築し,迅速かつ的確な感染症の情報を地域に提供することにより,効果的な予防接種の実施時期の設定や感染症予防知識の普及啓発など感染症予防対策の充実強化をはかる。 また,地域の特性,実情に応じた結核対策を徹底するため,岡山県早期結核根絶計画に基づき,結核対策特別促進事業等を展開する。

2 輸入伝染病対策の推進
国際化の進展に伴い,赤痢,コレラ等のもち込み事例が増加傾向にあり,さらに,ラッサ熱,エボラ出血熱等の国際伝染病がもち込まれるおそれもあるため,海外渡航者をはじめ,広く県民に対し,知識の普及啓発を強化するとともに,海外の最新の感染症情報を関係機関等へ提供し,海外での感染予防や国内でのまん延防止をはかる。

3 性感染症対策の推進
性病4病をはじめとした性感染症は,本人の健康問題であるだけでなく,配偶者や子どもたちへの影響が甚大である。このため,婚姻時,妊娠時の梅毒血清反応検査をはじめとする性病検査の実施の徹底を推進するとともに,あらゆる場を通じて性感染症の予防知識の普及に努める。

4 エイズストップ作戦の推進
エイズは,性感染のみでなく血液等を通じても感染することに加え,潜伏期間が長いこともあり,エイズ患者・感染者の爆発的増加が強く懸念されている。このため,普及啓発,相談検査,医療体制整備等に取り組み,総合的にエイズ対策を推進する「エイズストップ作戦」を展開しているところであるが,今後はさらに,年齢,対象に応じた啓発を工夫する等により,エイズの予防方法や感染者に対する差別・偏見の防止など正しい知識の一層の普及啓発を推進する。 また,新たな患者・感染者の発生に備え,保健所において心理的,社会的援助を行うエイズカウンセラーの養成をはかる。 さらに,エイズ医療対策の充実をはかるため,医師等医療従事者に対する各種研修事業を実施するとともに,エイズ治療の拠点病院を中心とした各医療機関の連携システムの構築をめざす。

(5)がん対策の推進

1 がん予防方法の普及啓発
「健康岡山はがん予防から」をスローガンに,健康教育や健康相談,ガン征圧強調月間の機会を活用して,早期発見・早期治療のためのがん検診の重要性や「がん予防12か条」の実践等による生活習慣の改善などの普及啓発を推進する。

2 がん検診の充実
がんの早期発見・早期治療をすすめるためには,がん検診の受診率の一層の向上が必要であり,従来からの集団検診方式に加えて,個人が医療機関に利用券を提示するなどして受診する個別検診方式や子宮がん検診と乳がん検診の同時実施を導入するなど,市町村と一体となって,受診者のニーズに応じた利用しやすい検診体制づくりを推進する。 また,肺がん及び乳がんについては,「肺がん個別検診」及び「画像診断による乳がん検診」など新たな検診方法により精度の向上をはかるとともに,肝臓がんなどの新たながん検診の導入についても検討をすすめる。

3 がん情報システムの充実
がんの発生の実態や精密検診の受診状況などに関する情報をもとに,がん予防の啓発を行い,がんによる死亡を減少させるため,医師会や市町村など関係機関と一体となってがん情報システムの充実に努める。

(6)すこやかなくらしの基礎づくり

1 安全な水の確保
すべての県民に水道水を提供することを目標として,地域の実情にあわせて上水道の拡張,簡易水道の新設,拡充等施設整備を促進するとともに,経営の合理化のため,地域の水道の統合,再編成をすすめる。 また,岡山県広域水道企業団が行う水質検査センターの整備を支援して,迅速かつ高度な水質検査を促進する。 さらに,渇水や災害時においても水道水の供給を維持できるよう,「岡山県水道整備基本構想」に基づいて安定した水源を確保するとともに,老朽管の更新や施設の耐震化,応急用飲料水供給設備の整備等をはかる。

2 食品等の安全確保
最近の食品を取り巻く環境は,製造方法の高度化や多様化,流通の著しい国際化,広域化等により大きく変化している。こうしたなかで,輸入食品の安全性の確保や残留農薬,食品添加物,食中毒等への対策を効果的にすすめ,県民に安全な食品を提供するためには,国際的な基準に対応した高度な検査と適切な監視指導,十分な情報の収集と提供が必要である。 このため,食品検査及び監視指導体制を強化するとともに,食品衛生情報をデータベースで収集・検索する「食品衛生情報ネットワーク」を整備する。 また,営業者が自らの資質や知識を高めていく必要があることから,営業者団体の育成に努め,営業者への衛生知識・技術の普及をはかる。

3 身のまわりのサービス等の衛生確保
身のまわりで日常利用するサービスやものの衛生的な状態を確保することは,県民の健やかなくらしを維持するために不可欠である。 このため,理容・美容やクリーニング,旅館・ホテル,公衆浴場など,日常生活に密着したサービスを提供する環境衛生関係営業の衛生水準の維持向上をはかることが必要であり,営業者の監視指導を強化するとともに,(財)岡山県環境衛生営業指導センターへの支援を強化し,同業組合等の育成に努め,営業者の自主的な衛生管理を促進する。また,肌着などの家庭用品の有害物質等の検査によって安全性を確保するとともに,建築物等の衛生管理については,設置者や維持管理業者の指導,啓発と自主管理の促進のための関係団体の育成に努める。 さらに,広く県民の衛生知識の普及をはかり,健康で快適なくらしづくりを応援する。

4 人と動物が共存できる豊かな地域社会づくり
犬猫等の動物は,飼養し,ふれあうことで心身をリラックスさせ,高齢者等の伴侶ともなり,子供たちには生命の尊厳を体験させることができる。 このように,動物は人びとのくらしを豊かにする良きパートナーともなっている一方で,適正な管理知識や愛護思想の欠如等からさまざまな問題 も生じている。 これからは,人間が自然のなかのひとつの生命であることを再認識し,共に生きるすべての生き物を尊重するような「人と動物が共存できる豊かな地域社会」を築いていくことが必要である。 このため,動物愛護思想の普及啓発及び人畜共通感染症の対策等の動物行政を総合的に実施する岡山県動物愛護センター(仮称)を整備する。 また,全県的に動物愛護の気運を醸成するため,動物愛護思想や適正な飼養方法の普及啓発などを行う団体を設立するとともに,住民参加による動物愛護支援組織を育成する。

(7)保健・医療・福祉等サービスの連携・総合化の推進
市町村,保健所,医療機関,福祉施設等の関係機関それぞれの機能が効果的,効率的に連携できるようなシステムの構築をはかり,健康づくり,疾病予防から治療,リハビリテーション,介護サービスに至る各種サービスの総合的な提供が可能となるような施策の展開に努める。 特に,保健・福祉の対人サービスを住民の身近なところで,主体的かつ一元的に実施する市町村においては,市町村保健センター等の保健・福祉サービスの拠点づくりをすすめるとともに,住民のニーズに応じた総合的なサービスを提供しうる体制を早急に構築しなければならない。このため,市町村における人材の確保,養成等を支援するとともに,地域保健の拠点として保健所の機能強化をはかる。 また,こうした質の高い保健・福祉サービスの提供をはかるため,保健福祉に関する調査研究や事業の評価を行う「岡山県保健福祉研究機構」の運営を支援する。 さらに,最新の情報処理技術や通信技術を積極的に導入し,県と市町村をネットワーク化する保健福祉行政情報システムの構築をすすめる。将来的には保健・医療・福祉関係機関のみならず,県民等も参画する保健・医療・福祉総合情報システムへの発展をめざす。

2 医療の充実

(1)医療体制の整備促進

1 地域医療体制の整備
県民に良質かつ適切な医療を供給するため,県保健医療計画及び地域保健医療計画に基づき,日常的疾病を対象とする一次医療,主として一般的入院医療を対象とする二次医療,高度特殊医療を行う三次医療のそれぞれの医療機関が機能の分担と相互連携の強化に努めている。 今後とも,地域医療体制の一層の充実をはかるため,開業医と開放型病院等との相互の機能分担と連携をはかる病診連携事業の推進などを通じて,医療施設の機能に応じた体系化をさらに促進する。また,身近な各種保健医療サービスを提供するかかりつけ医制度の普及,定着をはかるとともに訪問看護の充実などの在宅医療支援体制の整備をはかる。

2 救急医療体制の整備
救急医療については,地域の医療機関の協力と連携により,初期体制としての在宅当番医制,休日夜間急患センター,休日歯科診療所,救急告示施設,そして重症患者を受け入れる二次体制としての病院群輪番制,協力病院当番制,さらに24時間体制で重篤患者を受け入れる三次体制としての救命救急センター,高度救命救急センターの整備を体系的にすすめてきたところである。 今後,災害時にも対応できる救急医療情報センター(仮称)や特に県中北部における三次体制としての救命救急センターの設置,患者搬送のスピード化など,県民が等しく高度な救急医療を受けられる体制(「ライフサポート21」)の整備を推進する。 また,搬送途上等の救急患者の救命効果を向上させるため,救急救命士の確保や県民への応急措置方法についての普及をはかる。

3 へき地医療体制の整備
へき地の医療を確保するため,巡回診療やへき地診療所への医師派遣を行うへき地中核病院の充実強化をはかるとともに,特に不足している眼科,耳鼻咽喉科,歯科等の特定の診療科の確保をはかり,あわせて,へき地診療所の整備充実や,患者輸送車の整備を促進する。 また,へき地における医療従事者の確保と定着をすすめるため,診療設備の充実,研修機会の確保,宿舎の確保等生活環境の整備などに努めると ともに,大学,病院,地区医師会等との連携協力をはかる。 特に,医師の確保については,自治医科大学卒業医師の県内定着をすすめることはもとより,へき地中核病院と連携してへき地の医療機関への医師派遣や代診医の派遣等を行うシステムの構築を検討する。

4 高度・特殊医療施設の整備
治療が特に困難ながんや脳血管疾患,循環器疾患,高度小児(周産期)医療,腎疾患等にかかわる高度・特殊な医療に対処するため,大学,国立及び公的医療機関を中心に必要な体制の整備をはかるとともに,病院と診療所との連携を強化して,高度・特殊医療機器の共同利用の促進をはかる。 末期がん対策については,患者のQOL(*2)の維持,向上を支援する施設として緩和ケア病棟の整備をはかる。 また,高度先駆的医療の確保をはかるため,国立岡山病院の移転整備を促進する。

5 リハビリテーション体制の整備
高齢化の進展等に伴う脳血管疾患患者や交通事故等の後遺症患者に対するリハビリテーションの需要が増大していることから,医学的リハビリテーションを実施する施設の整備促進をはかる。 あわせて,理学療法士,作業療法士等の医療従事者の養成確保と県内定着に努める。

6 老人医療体制の整備
高齢化がすすむなかで,在院患者に占める老人慢性疾患患者の割合が高くなっており,そのなかには社会的入院も少なくないことから,保健・医療・福祉の連携強化により,病院,老人保健施設,福祉施設等施設機能の効率的な活用をはかるとともに,デイ・ケア,訪問看護をはじめとする在宅支援体制の整備,充実をはかる。 また,要介護老人や介護者の多様なニーズに対処するため,地域バランスにも配慮しながら老人保健施設の整備を促進するとともに,長期療養患者に適した療養型病床群や痴呆性老人等専門の病棟の整備を促進する。

7 精神医療体制の整備
精神障害の早期治療の促進をはかり,治療の中断を防止するため,保健所や精神保健福祉センターにおいて,精神医療に関する正しい知識の普及についての取組みの強化をはかる。 また,民間医療機関では取り組みにくい覚せい剤中毒,児童期・思春期の精神障害,アルコール依存症などに対する医療,自傷他害の恐れのある場合などの緊急時や時間外の精神科医療に対応するため,県立の精神保健関係機関が民間医療機関と連携しながら,的確にニーズに応えられる新たなシステムの構築をはかる。 さらに,都市部に集中している診療所や病院の地域的な偏在を是正するため,郡部の診療所や病院等に対して,精神科外来やデイ・ケアの設置等を指導する。

8 臓器等移植対策の充実
腎臓移植,骨髄移植,角膜移植に関する知識の普及啓発に取り組み,県民の理解を深め,提供申出者(ドナー)の登録促進に努める。 特に,腎臓移植については,公平かつ適正な移植の促進をめざしたネットワークシステムの充実をはかる。

(2)医療サービスの質の向上
医療そのものの質の向上はもとより,患者にとって快適で,便利で,効率よく治療を受けることができるという面での質の高い医療サービスが求められている。 このため,医療従事者の資質の向上に努めるとともに,病室や院内の環境などの向上に配慮した施設の整備等を促進し,医療機関が提供する医療をはじめとする各種患者サービスの質の向上に努める。また,県民への医療に関する情報提供のあり方について検討する。

(3)難病対策等の充実
まれな疾患で,原因が不明であり,効果的な治療方法が未確立の難病については,患者やその家族は,長期にわたり療養費の負担や介護の人手を要し,また,各種社会活動への参加が制限されるなど,大きな精神的,経済的負担を強いられている。 このため,潰瘍性大腸炎,パーキンソン病などの特定疾患及び内分泌疾患,悪性新生物などの小児慢性特定疾患群について,医療保険における自己負担分を全額公費負担としているところであり,引き続き,その支援に努める。 難病患者の疾患,症状,さらには療養生活のうえでのニーズ等は多様であることから,患者の各種相談に応じるため,専門医,保健婦,福祉関係者等による巡回訪問相談事業などを充実するとともに,患者・家族が安心して適切な保健・医療・福祉サービスなどの支援が得られるよう地域でのケアシステムの確立をめざす。 また,患者やその家族が療養についての悩みなどを互いに話し合う会の開催や患者・家族の組織化をすすめるとともに,家族がリハビリテーション技術や介護技術等を身につけることができるよう,在宅療養教室を開催する。さらに,難病に関する情報提供や難病患者が気軽に相談したり交流できるシステムの確立を促進する。

(4)医療従事者の養成確保と資質の向上
岡山県の人口当たりの医師及び歯科医師数はいずれも全国平均を上回っているが,地域的遍在がみられ,特にへき地勤務医師の確保が必要であることから,自治医科大学卒業医師の県内定着をはかるとともに,大学,公的病院,医師会等関係機関との連携協力のもとに,医師,歯科医師,特に眼科,耳鼻咽喉科等特定の診療科の医師の確保に努める。 また,医療の高度化,専門化及び高齢社会の進展による訪問看護をはじめとするニーズの多様化等により看護職員の需要が増大するなかで,質の高い看護の確保が求められている。 このため,看護基礎教育体制の整備や岡山県看護研修センターにおける生涯教育の充実等に努めるとともに,職場定着対策やナースセンターによる再就業の促進等,看護職員の確保対策を推進する。 県民の薬への関心の高まりや医薬分業の推進に伴い,薬剤師の確保が従来にも増して重要になっているため,特に未従業薬剤師の就業促進をはかるなど,その確保に努める。 また,医学的リハビリテーションの需要の増加に対応するため,岡山県立大学に理学療法士,作業療法士養成課程を設置するなどにより,その養成確保に努める。 さらに,大学,医師会,歯科医師会,薬剤師会,看護協会等関係団体の協力により,職種ごとの研修の充実をはかり,資質の向上に努める。

(5)医療保険制度の安定的維持

1 疾病予防・健康増進
成人病検診,健康教育,健康相談等,健康づくり施策を一層推進することにより疾病の予防,県民の健康の保持,増進に努め,医療保険制度の健全な運営をはかるよう努める。

2 医療費の適正化
人口の高齢化,疾病構造の変化,医療技術の高度化等により,医療費の増加傾向は今後も続くと考えられることから,健康に対する県民の自覚を促すとともに,保険者のレセプト点検に対する指導の充実強化や健診に対する積極的な指導等の医療費適正化対策を推進していく。

(6)献血運動の展開

1 献血運動の推進
医療技術の進歩により,輸血用血液の需要が年々増加してきている状況のなかで,県内で必要な血液製剤はすべて県民の善意の献血により確保することが求められている。このため,広く県民への献血思想の普及啓発,献血組織の育成強化,受入れ体制の整備などをすすめ,献血運動を積極的に推進する。

2 血液製剤の安全確保
献血された血液のエイズ抗体検査,C型肝炎検査等の各種検査を一層充実させるとともに,あらかじめ献血者を登録し,安全な血液を安定的に確保するため,「献血者登録制度」の周知徹底及び登録者(ドナーメイト)の確保に努める。また,医学及び医療技術の進歩に伴う需要変化に的確に対応し,あわせてより安全な輸血用血液を供給するため,配送,保管等の供給体制の整備について検討する。

(7)医薬品等の安全確保と適正使用の推進

 医薬品等の品質,有効性及び安全性の確保をはかるため,医薬品等製造(輸入販売)業者,薬局及び医薬品販売業者等に対する効果的な指導監視を実施するとともに,自主点検の実施を促進する。 また,地域住民,特に高齢者を対象として,薬の保管や使い方などについての知識の普及啓発を一層推進する。 さらに,医薬品の適正使用を推進し,医療サービスの質の向上に資するため,医師,歯科医師と薬剤師の緊密な連携のもとに,地域の実情をふまえた医薬分業の定着促進をはかる。あわせて,医療機関,薬局,医薬品販売業者等に対し,医薬品等の情報を迅速に提供するシステムの高度化や提供する情報の充実を促進する。

(8)薬物乱用防止対策の推進

 覚せい剤等の薬物乱用は,本人はもとより,家庭や周囲の人びと,社会に深刻な影響を与えるため,「岡山県覚せい剤等乱用防止対策推進本部」を中心に,薬物乱用防止の普及啓発活動を展開する。 また,関係機関との連携を密にした指導・取締りにより,覚せい剤等薬物乱用者の早期発見,再発防止をめざした保健・医療の充実及び保護に努める。

*1 プライマリケア:初期医療。疾病が発生したとき,身近な地域で行われる医療
*2 QOL:クオリティ・オブ・ライフ。生活の質スポーツ・レクリエーション・リゾート


主題:
快適で活力あふれる岡山づくり
第5次岡山県総合福祉計画 No.1
1頁~79頁

発行者:
岡山県

発行年月:
平成8年4月

文献に関する問い合わせ先:
岡山県庁
〒700-8570
岡山県岡山市内山下2-4-6
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