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快適で活力あふれる岡山づくり

第5次岡山県総合福祉計画

No.4 岡山県

防犯

課題と施策の方向

近年の犯罪は,国際化,価値観の多様化,夜型社会の進展等社会情勢の急激な変化を反映して,重要凶悪犯罪が増加しているほか,県境を越えた広域的な犯罪の多発が目立っている。
県下における犯罪の発生件数は,近年,おおむね横ばいで推移してきたが,平成6年には25,000件を突破し,少年非行も依然として多発している。また,いじめが大きな社会問題となっているほか,覚せい剤等薬物乱用事犯についても,厳しい取締りにもかかわらず,一段と市民層への広がりをみせており,予断を許さない状況にある。さらに,暴力団は,暴力団対策法の施行以降,表面的な活動を控え,一層潜在化の傾向にあり,組織の生残りをかけて企業等に対する活動を活発化している。
こうしたなかにあって,県民が安全で,安心してくらせる社会をつくるためには,まず,何よりも,ぜい弱化している地域社会の犯罪抑止機能を回復し,犯罪の発生を許さない社会環境づくりが肝要である。
このため,警察をはじめ関係機関,団体,地域安全ボランティア等が一体となり,地域に住む一人ひとりの安全意識の高揚をはかりながら地域安全対策を積極的に推進するとともに,いかなる事件事故にも的確に対応できるよう,平素から組織体制の整備をはかり,暴力団犯罪,窃盗,けん銃事犯,テロ事件等県民生活を脅かす悪質犯罪の抑止対策を強力に推進する。

重要施策

(重要施策の体系)

犯罪のない安全な社会づくり

  • 地域安全活動の推進
    • 地域安全意識の高揚
    • 職域防犯組織の整備充実
    • 地域安全ボランティアの育成
    • 高齢者等の保護対策の推進
    • 安全な環境づくりの推進
  • 犯罪抑止対策の推進
    • 暴力団総合対策の強化
    • 盗犯抑止対策の推進
    • けん銃・薬物対策の強化
    • 生活侵害事犯対策の強化
    • テロ等特殊事件対策の推進
  • 新たな情勢に対応した組織体制の整備
    • 人的基盤の確立
    • 高速道路交通警察隊の拡充
    • 新通信指令システムの整備
    • 情報管理システムの高度化
    • 科学捜査力の強化
    • 警察施設の整備

1 地域安全活動の推進

地域安全ニュース,ミニ広報紙,交番・駐在所連絡協議会等のあらゆる媒体や機会を通じて,地域住民一人ひとりの安全意識の高揚をはかり,関係機関・団体との連携のもとに自主的な地域安全活動を強力に展開する。また,職域防犯組織については,既存組織の活性化とともに新しい組織の結成を促進する。
また,地域安全活動パイロット地区を指定して,地域安全推進員を中心としたボランティア組織の結成を促進するとともに,防犯活動アドバイザーによる指導,助言やボランティアを対象とした補償制度の導入,活動の場の提供等活動基盤を整備して,地域安全ボランティアの育成に努める。
警察署・交番等のファクシミリを活用した地域安全ネットワークの整備を促進し,高齢者,障害者等に対してきめ細かい安全情報を提供するとともに,家出人・行方不明者に関する相談にも適切に対応し,保護対策を推進するほか,夜間でも女性,高齢者が安心して歩けるよう防犯灯を設置するなどの安全な居住環境づくりを推進する。

2 犯罪抑止対策の推進

暴力団の壊滅に向けて,資金源の遮断対策を中心に徹底した取締りを行うとともに,暴力追放運動推進県民大会の開催や岡山県暴力追放運動推進センターを中心とした県民総ぐるみの暴力排除活動を強力に展開する。
増加傾向にある窃盗犯のうち,半数近くを占める乗物盗や凶悪犯に発展するおそれのある侵入盗の発生を抑制するための防犯対策を推進するとともに,広域窃盗捜査班による強力な捜査を展開する。
けん銃の不法所持事犯及び覚せい剤等薬物乱用事犯は,いまや一般市民にまで拡散,まん延しているため,関係機関と連携した水際対策による密輸の摘発等徹底した取締りを展開するとともに,積極的な広報啓発活動を展開する。
また,資格取得商法や知的所有県侵害事犯等,今後も新たな手口による悪質商法事犯の多発が懸念されることから,生活安全特別捜査隊を中心とした先制かつ強力な取締りを行うとともに,被害を受けやすい高齢者,主婦等を対象にタイムリーな広報啓発活動を推進する。
近年の犯罪は,社会情勢の急激な変化を反映して重要凶悪犯罪が増加している。特に,毒ガスを使用した無差別テロ事件等新たな形態の特殊事件に対応するため,早急に捜査力の強化と装備資機材の整備をはかる。

3 新たな情勢に対応した組織体制の整備

県民生活の安全と平穏を確保するため,社会情勢や犯罪情勢の変化に的確に対応できる組織体制の整備と捜査力の強化に努める。
国際犯罪をはじめ,ますます複雑多様化する犯罪に対応するため,警察官一人ひとりの資質及び捜査能力の向上に努めるほか,地域における生活安全センターであり,警察活動の原点である交番・駐在所の不在解消等に向け,警察官の増員も含めて人的基盤を確立する。
中国横断自動車道の開通をふまえた高速道路交通警察隊の拡充をはかるほか,広域交通網の整備に伴い,犯罪の広域化,スピード化に一層拍車がかかることが予想されるため,地図情報システム,緊急配備システム,パトカー動態表示システム等を装備する新通信指令システムの整備を推進する。また,限りある捜査力を補完する捜査支援システム等情報管理システムの高度化を推進するほか,鑑識・鑑定資機材を整備し,科学捜査力の強化をはかる。
犯罪が多発傾向にある県南部の治安を維持するため,機動力強化の拠点機能の整備について検討をすすめるとともに,地域安全活動の拠点である警察署,交番・駐在所のうち,狭あい化,老朽化している施設についても計画的に整備を行う。

交通安全

課題と施策の方向

最近の交通死亡事故の特徴をみると,市民生活や経済活動の24時間化に伴う夜間事故,高齢者の死者数,自動車乗車中の死者数などが増加してきている。
このような事故増加の背景には,車を利用したレジャー志向の進展,若者を中心とした規範意識の希薄化等がある。これからの交通安全対策は,こうした交通事故の発生実態を見極めながら効果的な交通事故防止対策を総合的に推進するとともに,県民一人ひとりが交通事故を他人事と考えず,自分自身の問題であると認識するよう,平素から交通安全思想の高揚をはかることが重要である。
このため,すべての年代層に対して,あらゆる場を通して,参加・体験型の交通安全教育や各種広報媒体を利用しての啓発活動を行い,交通安全意識の高揚をはかるとともに,地域における各種交通安全団体による自主的な交通安全活動を促進していく。
また,高齢者や身体障害者等が安心して歩ける幅広歩道や段差のない横断歩道の整備をはじめ,道路交通情報提供システムの充実など,道路交通環境を整備するほか,初心運転者をはじめ高齢運転者を対象として安全運転教育の充実をはかる。運転免許センターについては,交通安全に関する生涯学習の拠点施設として,その機能の充実に努める。
さらに,交通事故発生実態に即した時間帯,路線の街頭指導活動を強化し,悪質危険な違反に重点を置いた指導取締りを展開するほか,暴走族対策を一層強化する。

重要施策

(重要施策の体系)

安全で快適な交通社会づくり

  • 交通安全意識の高揚
    • 生涯にわたる交通安全教育の推進
    • 交通安全に関する普及啓発活動の推進
    • 地域における交通安全活動の推進
  • 交通環境の整備充実
    • 交通安全施設の整備
    • 総合的交通規制の推進
    • 駐車対策の推進
    • 道路交通情報提供システムの充実
  • 運転者対策の充実
    • 運転者教育の充実
    • 運転免許センターの充実
  • 交通秩序の確立
    • 街頭指導活動の強化
    • 悪質危険な交通違反の取締り強化
    • 暴走族対策の強化

1 交通安全意識の高揚

幼児から高齢者まですべての人に対し,学校や公民館などでの交通安全教育をはじめ,それぞれが関心をもって参加できるようゲーム感覚を取り入れた交通安全教室,シミュレータや適性検査機器等を活用して,それぞれの心身の状況や道路,交通機関の利用形態に応じた各種の参加・体験型交通安全教育を,関係機関,団体との緊密な連携のもとに,組織的かつ継続的に実施する。
特に,高齢者に対しては,座学型交通安全教室に加え,体験型交通安全教育の実施,高齢者世帯の訪問指導等により,高齢者の特性をふまえた指導を行い,交通安全家族会議の開催などにより交通安全意識の高揚をはかるとともに,日常生活の場である住宅街,商店街等を中心とした交通規制を行う生活ゾーンの設定などにより事故防止をはかる。
また,若者に対しては,交通社会の一員としての強い自覚を促すため,ドライバーが200日間の無事故無違反にチャレンジする事業の実施,二輪車等の運転実技指導や交通安全キャラバン隊,レター作戦,セイフティ・ライダーズクラブの活動等を積極的に促進し,意識啓発をはかる。
テレビ・ラジオをはじめ,街頭電光ボード等の視聴覚メディア,交通安全ビデオ,ファクシミリ等を利用した各種交通事故情報を積極的に提供するとともに,交通安全県民大会や春,秋の交通安全県民運動をはじめとする各種の交通安全運動を広く県民総参加の運動として盛り上げる。
また,当事者の居住市町村内での交通事故が依然として全体の7割近くを占めていることから,その防止対策の原点は,地域に密着したものでなければならない。このため,関係機関,団体や交通警察協助員会,交通安全母の会等交釣安全ボランティアと連携した街頭指導,交通安全教室など草の根的交通安全活動を促進する。それら交通安全関係団体については,組織の運営と交通安全のための諸活動が効率的に行われるよう育成指導を強化し,その活性化を一層促進する。
一方,企業に対しては,事業主,安全運転管理者及び従業員が一致して交通安全活動の積極的展開をはかるよう働きかける。また,交通事故防止コンクールなどを実施し,事業所における交通事故防止と交通安全意識の高揚をはかる。

2 交通環境の整備充実

道路の新設改良にあたっては,歩道・自転車道と車道との分離を推進するとともに,高齢者や身体障害者等が安心して歩ける幅広歩道や段差のない横断歩道の整備,昇降機能を備えた立体横断施設を設置する。また,主要施設への誘導用歩行者標識の整備,交差点改良,道路照明施設の整備,わかりやすい道路標識の設置,歩行者の安全確保に主眼をおいたコミュニティ道路の整備や自動車利用者の休憩施設「道の駅」等の整備を行い,交通事故防止と交通の円滑化をはかる。交通需要が増加し,旅行時間が増大している幹線道路を重点に,交通管制システムの高度化をはかるほか,交通量の増大による交通事故多発交差点等への信号機の新設や高齢者,視覚障害者等の安全を考えた音響式信号機を整備する。
生活の場における安全確保のため,住宅地等を中心に生活ゾーンを設定し,面的な交通規制を推進するほか,スクールゾーン,シルバーゾーンの定着をはかる。また,公共輸送機関の利用を促進するため,パーク・アンド・ライドシステムの導入の促進,バスレーンの整備拡充を行うとともに,既存の交通規制について,安全と円滑の調和をはかりつつ見直しを行うなど総合的交通規制を推進する。
交通事故を誘発し,かつ,交通渋滞のもとになっている違法駐車対策として,駐車誘導システムの整備を推進するほか,短時間の駐車需要の多い地域における時間制限駐車規制区間の拡大,主要路線における違法駐車抑制システムの促進,さらには,都市内各地区の機能を勘案しつつ,駐車規制の見直しをはかる。
交通渋滞や各種交通障害情報,予測旅行時間情報等ドライバーのニーズに応じた交通情報を提供するため,光学式車両感知機や交通情報板の整備をはかる。
また,隣接県との交通情報交換を自動的に行う広域交通情報ネットワークシステム,利用者の問合せに対し自動的に交通情報を提供する電話・ファックス自動応答システム等の整備をはかる。
都市部において,交通事故を誘発し交通渋滞のもとになっている放置自転車や想法駐車対策として,自転車駐輪場や駐車施設の整備充実をはかる。

3 運転者対策の充実

安全運転意識を身につけ,より安全な運転行動のとれるドライバーを育成するため,指定自動車教習所の教育水準の向上,初心運転者教育の充実をはかるほか,高齢運転者を対象とした運転実技講習や運転適性診断の強化をはかる。
幼児から高齢者まで,それぞれのライフステージにあわせた交通安全に関する生涯学習の拠点施設として,運転免許センターに交通公園等を整備し,「総合交通センター」としての機能を充実する。

4 交通秩序の確立

交通警察協助員等交通安全ボランティアの協力を得て,交通事故が多発する朝・夕の要点監視や白バイ・パトカー等の機動力を生かした街頭指導活動を強化する。
また,飲酒運転,無免許運転,交差点関連違反等重大事故に結びつく悪質危険な違反や駐車違反等迷惑性の高い違反を重点に,事故の多発する時間帯,路線における継続的,集中的な取締りを強化する。
暴走族に対しては,あらゆる法令を適用して強力な取締りを行うほか,暴走族がたむろしている場所の施設管理者による締め出しや道路管理者による暴走しにくい路面への改良等を促進して「暴走をしない,させない」環境づくりに努める。

消費生活

課題と施難の方向

近年,消費者を取り巻く状況は,国際化,サービス化等社会経済環境の急速な変化に伴い,商品・サービスが市場にあふれ,また,訪問販売,通信販売などの販売方法やクレジットカードの使用など代金の支払い形態が変化し,複雑多様化している。
これに伴い,消費者が新しい商品・サービスや取引方法を熟知していないことに乗じ,特に若年者や高齢者に対する悪質な消費者トラブルが多発している。
また,規制緩和の進展に伴う商品選択の幅が拡大しており,消費者一人ひとりの的確な判断と,自己責任による行動が求められている。
このような消費者を取り巻く状況の変化に対処し,県民の消費生活の安定向上をはかっていくためには,多様な消費生活を可能にする賢い消費生活の実現をめざすとともに,商品・サービスの安全性の確保等消費者保護の充実をはかっていく必要がある。
このため,消費者意識の啓発や消費者教育の充実,消費者リーダーやボランティアの育成及びその活動を促進するとともに,消費生活センターの情報提供機能の充実,強化をはかり,市町村,消費者団体と連携しながら県民に迅速かつ適切な消費生活情報の提供に努める。
また,消費者保護の充実のため,商品・サービスの安全性や適正な取引の確保と物価の安定対策を実施するとともに,消費者被害の救済をはかるため,体制の整備に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

賢い消費生活の実現

  • 消費者意識の啓発
    • 消費者啓発・教育の充実
    • 消費生活情報提供の充実・強化
  • 消費者活動の支援
    • 消費者組織の育成・活動促進
    • 消費者リーダー・ボランティアの育成・活動促進

消費者保護の充実

  • 商品・サービスの安全性の確保
    • 検査・指導体制の強化
    • 事業者の自主規制の強化促進
  • 適正な取引の確保と物価の安定対策
    • 表示,計量,包装,景品の適正化
    • 契約の適正化
    • 価格・需給動向の調査,監視
    • 物価啓発・情報提供
  • 消費者被害の救済
    • 苦情相談処理体制の充実・強化
    • 消費者苦情処理委員会の活用
    • 製品事故原因究明体制の整備

1 賢い消費生活の実現

(1)消費者意識の啓発
豊かな消費生活を築いていくためには,消費者一人ひとりが自主的,合理的な意思決定ができる能力を養う必要があり,そのためには,さまざまな情報を迅速かつ適切に提供する必要がある。
このため,パイオネット(*)を効率的に活用できるよう,パソコン通信等を利用した市町村への消費生活情報提供システムを構築し,消費生活センターから市町村,くらしの相談員への消費生活情報提供体制の整備を行う。
また,消費者が学齢期から上手な買い物の仕方など消費生活の基礎を学習することが必要であり,小・中・高等学校での消費者教育の充実をはかるため,消費者教育啓発資料を作成,配布するとともに,各種消費生活講座等を開催する。

(2)消費者活動の支援
地域において住民自らの主体的,積極的な参加による消費者組織の育成を促進するほか,消費生活リーダーの養成・専門講座,くらしの相談員や市町村職員等の研修会を通じて,消費者活動の核となる消費者リーダーやボランティアを養成し,適切な情報を提供するなど,その活動を支援する。

2 消費者保護の充実

(1)商品・サービスの安全性の確保
多種多様な商品・サービスが市場にはん濫し,また,諸外国からの輸入商品も増加している。
このような状況のもとで,輸入食品,医薬品類似食品等のうち有害な食品や欠陥商品(製品)がもたらす生命,身体または財産に対する危害を未然に防止し,消費者が安全な商品・サービスを選択できるよう,保健所の食品検査機能の充実並びに消費生活センターの商品(製品)テスト情報提供機能を充実するなど検査指導体制を強化する。
また,商品の安全や食品の衛生に関して監視,指導を徹底するほか,事業者に対して,商品・サービスの品質,安全性,適正表示等について,自主的な基準づくりなどによる規制の強化を促進する。

(2)適正な取引の確保と物価の安定対策
消費者が商品を正しく合理的に選択できるようにするため,商品の品質,性能,取扱方法等の適正表示や適正計量,包装の適正化を行うとともに,不当な二重価格表示,虚偽誇大な広告,過大な景品付き販売などに対する監視,指導を強化する。
また,資格講座,若者を対象としたアポイントメント商法,高齢者を対象とした催眠商法,マルチまがい商法などの悪質商法が増加しているため,消費者に対して,悪質な販売手口や契約に関する情報を提供し,被害の未然防止に努めるとともに,事業者に対して,契約の適正化についての指導を徹底する。
さらに,物価の安定は,県民の生活の安定と向上のための基本的要件であり,生活関連物資の価格・需給動向の調査や監視を行うとともに,物価情報誌の発行や消費者説明会の開催などにより,物価についての関心を深めるように努める。また,公共料金についても物価に及ぼす影響を配慮して厳正に取り扱うとともに,為替相場の変動についても適切な対応を講ずるよう,国等に対して強く働きかける。

(3)消費者被害の救済
多様化,功妙化してきている悪質な消費者取引による消費者被害に迅速,的確に対処するため,消費生活センターの消費生活相談員等の資質の向上や消費生活技術顧問の充実により,苦情処理機能を一層充実するとともに,地方振興局,市町村,くらしの相談員等との連携による苦情相談処理体制を確立する。
なお,遠隔地住民や高齢者等の便宜をはかり,被害の未然防止等の啓発を行うため,消費生活相談員を派遣し,各地域で消費者相談日を開設する。
また,製造物責任法が施行されたことに伴い,製品の欠陥に起因する裁判になじまない少額被害等について救済をはかるため,消費生活センターにおける相談機能を充実するとともに,解決が困難な苦情相談等については,消費者苦情処理委員会に付託し,製品関連技術専門家の活用等により紛争処理機能を強化し,効果的なあっせん,調停をはかる。
さらに,製品の欠陥事故による被害者の立証負担を軽減するため,国,県等の試験検査機関等との密接な連携により,消費者が利用しやすい原因究明体制を整備するとともに,被害を未然に防止するため,製品危害情報等を収集・分析し,提供する。

*パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム

第4 活力あふれる社会の基礎づくり

1 明日の発展のために

人材養成

課題と施策の方向

中四国経済文化圏の中核として,快適で活力に満ちた岡山県をつくりあげるためには,経済,文化,学術などの中枢機能を高め,地域産業や地域社会を支える多様なニーズに即応した有為な人材を養成していかなければならない。
岡山県には,岡山県立大学,岡山大学など大学13校,短期大学13校,工業高等専門学校1校があり,それぞれ整備,充実がすすめられているが,今後とも,各大学等における教育・研究活動の積極的な展開を通じて地域社会を支える幅広い分野の人材養成に努める。
国際競争の激化や急激な技術革新,情報化の進展などに柔軟に対応できる技術力や研究開発力を備えた優れた人材が活躍できる研究所等の誘致を一層すすめ,人材の集積基盤を整備するとともに,共同研究や異業種交流,海外からの人材の招へいなどにより,優秀な研究者や技術者の養成と県内への誘導をすすめる。また,岡山県工業技術センターや公共職業能力開発施設を利用した技術者,技能者の養成に取り組む。
さらに,農林水産分野では,小中学生を対象とした体験学習の実施や農業大学校,中国四国酪農大学校における教育内容の充実をはかり,豊かな創造力とたくましい実践力を身につけた人材の養成をすすめる。
あわせて,コミュニティを支え,地域福祉の充実や文化の向上を推進するリーダーなど地域で活躍する多彩な人材の発掘と養成に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

21世紀の地平を拓く人材の養成

  • 高等教育機関等の拡充
    • 県立大学の整備充実
    • 岡山大学の整備充実
  • 研究開発拠点の集積
    • 研究所,母工場の誘致
    • 工業技術センターの研究体制の充実
    • バイオテクノロジー研究所の整備
    • 海外からの人材の招へい
  • 地域産業を支える人材の養成・確保
    • 産・学・官の連携強化
    • 交流機会の充実
    • 公共職業能力開発施設を利用した人材の養成
    • 農業を支える人材の養成
  • 地域社会を支える人材の養成

1 高等教育機関等の拡充

岡山県立大学・県立大学短期大学部は,平成5年4月に,時代を切り拓く有為な人材養成と学術文化の振興を目的に開学した。今後,大学においては,より高度な専門的知識を有する人材養成のための大学院,高齢化社会における保健福祉ニーズの多様化に対応できる専門的技術を有する理学療法士等の養成課程の設置をすすめるとともに,短期大学部においても,社会の要請に応えうる教育課程の検討を行うなど,教育研究体制の一層の整備充実に努め,新しい時代の要請に応え地域に役立つ人材の養成を促進する。
岡山大学については,国内及び国際社会に貢献できる人材を養成するため,科学技術の高度・多様化に対応する学部,大学院等の教育研究体制の整備充実をはじめ,産・学・官の共同研究を通じた地域社会との連携強化,生涯教育への積極的な取組み,国際交流部門の充実などの体制整備を促進する。
私立大学についても,学部,学科の新・増設,大学院,研究室の充実など人材の養成機能の向上を促進する。
さらに,工業高等専門学校の教育機能の高度化,社会の要請に即応した実践的な職業教育,専門的な技術教育機関として職業人の教育等に重要な役割を果たしている専修学校,各種学校の教育内容の充実をはかる。

2 研究開発拠点の集積

次代を担う高付加価値型産業の展開を実現するためには,基本となる高度な技術や知識を有する技術者,研究者などの受入れ基盤が必要である。
このため,岡山リサーチパークに国等の試験研究機関や民間研究所の立地を促進するほか,県内の各工業団地には,研究開発機能をもった,いわゆる母工場などの誘致に取り組み,優れた人材の受け皿づくりを推進する。
また,岡山県工業技術センター及び岡山セラミックスセンターの研究体制を充実するため,試験研究機器の整備とあわせて,国内はもとより国外からも優秀な人材を積極的に招へいする。
さらに,バイオテクノロジーの研究拠点として,吉備高原都市に岡山県バイオテクノロジー研究所(仮称)を整備し,優秀な人材の確保に努める。

3 地域産業を支える人材の養成・確保

産業の高度化をはかっていくためには,これを担う高い技術力や研究開発力を有する人材の養成・確保が重要となる。
このため,産・学・官の共同研究や交流の推進,研究会,研修会等の充実をはかるほか,岡山県工業技術センターの最新研究機器を活用したORT(*)事業や研究情報ネットワークを利用した技術情報の交換,提供などを通じて,技術習得機会の拡大をはかる。
さらに,中小企業の人材の育成をすすめるため,(財)岡山県中小企業研修情報センターによる経営者,後継者,中堅社員などを対象とした研修事業を強化する。
県立職業能力開発校においては,国や雇用促進事業団などの職業能力開発施設との機能分担のもとに,企業や勤労者の訓練ニーズに対応した多様で機動的な職業訓練を実施する。
一方,熟練技能・技術者に対する社会の認識を深め,技能や技術を大切にする気風を普及するため,技能祭や公開講座などを開催するとともに,「岡山マイスター制度」(仮称)を創設するなど技能,技術の継承と集積に取り組む。
また,農林水産業が産業として力強く発展していくためには,豊かな創造力とたくましい実践力を身につけた人材の養成が必要であることから,子どもの頃から自然に親しみ,農林水産業の魅力や大切さについての理解を深めるため,小中学生を対象とした岡山の農林水産業を紹介する社会科副読本の作成配布や農林業体験学習等を行うとともに,教師,保護者を対象とした体験研修にも積極的に取り組む。
農業高校生に対しては,就農促進アドバイザー事業や農業先進地の視察研修,就農奨学金事業などを行い,農業に対するより深い理解と就農意欲の高揚をはかることにより,将来を担う農業後継者として育成,確保するよう努める。
農業大学校,中国四国酪農大学校においては,新しい時代に対応する情報処理,先端技術や多角的経営技術など新しいカリキュラムを導入して,教育内容の充実強化をはかる。また,豪州大学生との交流を積極的にすすめ,国際感覚あふれる農業者を養成する。

4 地域社会を支える人材の養成

国際化,情報化,高齢化などに対応して,活発に交流する内外に開かれた地域づくり,ゆとりと生きがいのある長寿社会の実現,豊かさを支えるいきいきとした産業活動の展開をはかるためには,それぞれの分野や地域で活躍する人材を育成することが大切である。
このため,生活,福祉・医療,文化,スポーツ,ボランティア,国際協力,農林水産業,商工業,情報通信,個性的な地域づくりなど各分野の施策の展開により,地域社会,国際社会で活躍する多彩な人材の育成をすすめるとともに,「燃えろ岡山」県民運動等各種の県民活動の展開を促進することにより,各地域におけるリーダー等の発掘と養成に努める。

* ORT:オン・ザ・リサーチ・トレーニング。研究開発の実体験を通じた研究開発能力の養成

広域交通

課題と施策の方向

既に完成をみている中国縦貫自動車道,瀬戸大橋及び山陽自動車道に加え,平成8年度には,中国横断自動車道岡山米子線の全線開通により,日本海から瀬戸内海を経て太平洋に至る最初の南北軸が構築され,同時に,県内2か所で南北軸と東西軸の結節点が形成されることとなる。
交通結節点としての地理的,機能的優位性を生かし,国内はもとよりアジア,太平洋地域を視野に入れた国際的な交流・連携をめざして,島根,鳥取,岡山,香川,高知の5県が共同して提唱した「西日本中央連携軸構想」を推進する。
中四国横断新幹線については,その実現に向けて,重点的な取組みをはかる。
中国横断自動車道岡山米子線については,一日も早い全線開通に向けて整備促進をはかるとともに,中国横断自動車道姫路鳥取線の早期着工に努める。
また,美作岡山道路など地域高規格道路や広域道路網へのアクセス道路の整備をすすめる。
世界に羽ばたく岡山の玄関となる岡山空港については,将来の航空需要の増大や国際化の進展に対応するとともに,西日本の拠点空港をめざして整備をすすめる。滑走路の延長やターミナル施設等の拡充整備をはかるとともに,既存路線の充実や国内・国際新規路線の開設など航空利用の利便性を一層高めていく。また,航空貨物基地の整備をすすめる。さらに岡南飛行場を西日本の小型
航空機の拠点基地として整備する。
港湾については,飛躍的な増加が見込まれる対アジア貿易を念頭に水島港の外貿コンテナターミナルや船舶の大型化に対応した航路の整備等,国際物流の拠点施接として拡充整備をはかる。水島港,宇野港,岡山港にはモーダルシフト(*1)に対応する内貿施設や大型客船ふ頭など,それぞれ地域の特性を生かした機能を整備する。

重要施策

(重要施策の体系)

広域交通網の整備

  • 広域公共交通機関の整備

高速道路等の整備,活用

  • 高規格道路等の建設促進
    • 中国横断自動車道岡山米子線の建設促進
    • 中国横断自動車道姫路鳥取線の建設促進
    • 地域高規格道路の建設促進
  • 高速道路等の利活用の推進
    • IC30構想の推進
    • 関連道路の整備促進
    • エアポート60構想の推進等アクセス道路の整備

空港の拠点性の確立

  • 岡山空港の整備
    • 空港の拡張整備
    • 貨物基地の整備
  • 航空路線の充実
    • 既存路線の充実
    • 国内新規路線の開設
    • 国際新規路線の開設
  • 航空貨物の振興
    • 貨物ターミナル地区の整備
    • 航空貨物の流通促進
  • 岡南飛行場の整備
    • ゼネラルアビエーション空港としての機能充実
    • 航空関係教育施設の整備
    • 航空ふれあい施設の整備

港湾機能の充実,整備

  • 重要港湾の整備
    • 外内貿コンテナターミナルの整備
    • 輸入促進基盤の整備
    • 広域交流機能の整備
  • 港湾サービスの充実
    • ポートセールスの実施等

1 広域交通網の整備

鉄道併用橋である瀬戸大橋を活用した中四国横断新幹線の早期実現をめざした取組みを中四国一体となって強力にすすめ,中四国を網羅した広域交通ネットワークの形成をはかる。
リニア鉄道については,国土の均衡ある発展及び「一日交通圏」の拡大をはかる観点から,大阪以西の西日本地域への早期の導入をはかり,あわせて岡山県内への停車駅の設置を働きかける。

2 高速道路等の整備,活用

(1)高規格道路等の建設促進 中国横断自動車道岡山米子線は,西日本中央連携軸を構成する主要な交通路であり,中四国における岡山県の拠点性を飛躍的に高めるものであることから,平成8年度中に予定されている開通を一日でも早めるよう,整備を強力に促進する。
県東北部を通過する中国横断自動車道姫路鳥取線については,早期工事着手に努め,整備促進をはかる。
自動車専用道路またはそれと同程度の機能を有する質の高い道路である地域高規格道路については,現在,美作岡山道路,倉敷福山道路,空港津山道路,岡山環状道路及び北条湯原道路が計画路線として,また,岡山空港道路及び岡山倉敷道路が候補路線としてそれぞれ路線指定がなされており,これら路線における事業促進をはかる。

(2)高速道路等の利活用の推進
県内各地から高速道路へ30分以内で到達できる「IC30」構想の積極的な推進をはかる。
中国横断自動車道岡山米子線,同姫路鳥取線,中国縦貫自動車道など高速道路の各インターチェンジに直接アクセスする県道高梁旭線,国道484号,国道429号,県道作東大原線,国道373号,県道上福原製用線などの整備を推進するとともに,関連道路の整備をさらに促進する。
県内各地から岡山空港へ60分以内で到達できるよう「エアポート60」構想の実現をめざし,国道53号,国道180号,国道429号,県道岡山賀陽線,県道妹尾御津線,県道長野高松線などの道路整備を推進する。
また,国道30号,県道浦安豊成線,市道泉田福成線,都市計画道路岡南線など岡南飛行場へのアクセス道路については,岡南地域全体の道路計画の策定を行い,関係機関と調整をはかりながら対応していく。
港湾へのアクセスについては,陸上部における円滑な物流をはかるためのアクセス道路の整備を推進する。

3 空港の拠点性の確立

(1)岡山空港の整備
岡山空港については,国際交流の拡大や航空需要の増大に対応するため,滑走路の3,500m計画をめざすが,当面,欧米等への長距離国際線の就航が可能となるよう滑走路の3,000m化,ターミナル施設の拡充整備さらには航空貨物基地の整備をすすめる。

(2)航空路線の充実
国内路線については,陸上交通で時間を要する北陸,中部,九州地方の主要都市との間のコミューター航空の導入も含めた路線の開設をめざすとともに,空路の積極的利用を促進しながら,既存路線の増便や利用しやすいダイヤの確保等の航空輸送サービスの改善に努める。
国際路線については,韓国路線の充実や今後発展が期待される中国をはじめとするアジア・太平洋地域との新たな路線開設をめざすとともに,海外旅行需要の増大に対応して国際チャーター便の運航を促進する。
また,国際便の運航に必要なCIQ(*2)体制等の充実をはかるとともに,海外からの来訪者の受け入れ体制の整備に努める。

(3)航空貨物の振興
岡山空港については,広域交通網の結節点に位置する優位性を生かし,西日本の拠点空港として,今後増大する航空貨物需要に対応する航空貨物基地をめざして,FAZ(*3)の指定を受け,貨物ターミナル施設の整備を行うとともに,航空貨物の流通促進をはかる。

(4)岡南飛行場の整備
岡南飛行場については,ゼネラルアビエーション空港(*4)として拡張整備をはかり,防災・救急機能等多様な機能をもつ西日本における小型航空機の拠点基地をめざす。
また,操縦士,整備士を養成する教育訓練基地として優れた条件を有していることから,航空関係教育施設を整備するとともに,県民と航空のふれあい機能をもった多目的ホールや広場等の整備をはかる。

4 港湾機能の充実,整備

(1)重要港湾の整備
海上物流基盤の整備については,アジアの各港湾と直接交易のできる外貿機能を強化する。
水島港は,中四国地方東部における交通拠点性と生業の大規模集積を背景に,国際流通港湾として高いポテンシャルを有しており,玉島地区に本格的なコンテナターミナルを整備する。これにあわせて,船舶の大型化に対応した航路の整備や大型車両が安全に走行できるアクセス道路の整備,さらにはFAZ指定に向けた取組みを行い,輸入品展示施設など,背後地における輸入促進基盤の整備をすすめ,国際的な物流拠点の形成をめざす。
岡山港の機能強化をはかるため,航路のしゅんせつをすすめるとともに,正儀地区の沖合人工島に内貿ユニットロードターミナルを整備し,国内における物流拠点性を高める。
宇野港宇野地区に,3万トン級外航クルーズ船が接岸できるふ頭・ターミナルを整備するとともに,人びとがつどい憩える港湾空間を創出し,広域交流機能を整備する。

(2)港湾サービスの充実
新たな国際定期コンテナ航路の開設や内・外航クルーズ船の寄港誘致など,港湾利用促進のためのポートセールスを官民一体となって展開する港湾利用振興体制を整備するとともに,物流情報提供システムの確立をはかり,港湾利用サービスの充実に努める。

*1 モーダルシフト:トラック貨物輸送を船舶,鉄道輸送に切り替えること。
*2 CIQ:税関,出入国管理,検疫
*3 FAZ:フォーリン・アクセス・ゾーン。輸入の円滑化のため,港湾・空港及びその周辺地域において輸入に関する施設,事業,活動を集積させる輸入促進地域
*4 ゼネラルアビエーション空港:主として不定期航空運送事業などに使用される空港

情報・通信

課題と施策の方向

インターネットに代表される「ネットワーク社会」においては,産業,経済,生活のすべての面において,情報が大きな役割を果たすことが予想されるため,どの地域においても,情報を迅速かつ効率的に利用できる環境を整備していかなければならない。
本県においては,情報化施策の基本方向を明らかにした「岡山県高度情報化基本計画」を策定したところであり,今後,この基本計画にそって,総合的,一体的に情報化施策を積極的に推進する。
情報化施策を展開するうえで最も基礎的な基盤である情報通信網は,現在,電気通信事業者により県内全域にわたって一応整備されているが,県民が積極的に情報ネットワークを活用できるような状況には至っておらず,情報化によって解決が期待されている地域間格差の是正という課題に対応できていない。
このため,光ファイバーによる情報通信ネットワークを整備し,これを基幹回線とした「岡山情報ハイウェイ」を構築するとともに,県内各地域における各種の情報通信基盤の充実に努める。
このような情報通信基盤を高度に利用し,県民生活の利便性の向上と産業の高度化,活性化を促進するため,インターネットを積極的に活用するとともに,さまざまな分野においてアプリケーションソフト(*1)の開発と導入をはかる。特に,学校,公民館,病院等の公共的施設で利用できるアプリケーションソフトの開発,導入に積極的に取り組む。

重要施策

(重要施策の体系)

高度情報化施策の推進

  • 情報通信基盤の整備
    • 岡山情報ハイウェイの整備
  • 多様な分野での情報環境の整備
    • 豊かな県民生活を実現するための情報化
    • 地域産業振興のための情報化
    • 行政サービス向上のための情報化
  • 情報化を担う人材の育成

1 情報通信基盤の整備

飛躍的に進展する情報通信技術を活用し,県民サービスの向上や行政の効率化をはじめ産業や地域の振興をはかるため,情報の地域格差を是正し,あらゆる人がどこでも低廉な料金で各種情報を利用できる情報通信基盤を整備する必要がある。
このため,岡山県庁と県下の各地方振興局等に庁内LAN(*2)を整備し,それを光ファイバーで結ぶコンピュータネットワークを基幹回線として,これにCATV網や各種のLANなど地域のネットワークを接続し,県内の総合情報ネットワークとしての「岡山情報ハイウェイ」を構築していく。また,国内をはじめ世界との情報交換を含めた幅広い利用ができるよう,岡山情報ハイウェイをインターネットに接続する。
この岡山情報ハイウェイは,県内各地にアクセスポイント(接続点)を設け,県民と行政との「かけはし」として,県民が利用しやすいネットワークの構築をめざし,関係機関等との連携のもとに,実用化に向けた県民参加型の実験を行いながら整備をすすめる。

2 多様な分野での情報環境の整備

(1)豊かな県民生活を実現するための情報化
岡山情報ハイウェイを活用して,豊かで安心してくらすことができる県民生活を実現するため,各種の公共アプリケーションソフトの開発,導入に努める。
文化活動の分野では,県民の文化意識を高揚し,自主的な文化創造活動を支援するため,県内の美術館,博物館,図書館,生涯学習センター等の文化施設を拠点として,多様な文化情報を提供するシステムを整備する。また,県民の自発的な学習活動を促進・支援するため,各種の生涯学習情報を図書情報,教育情報とともに提供するシステムを開発する。
保健福祉の分野では,県民が,いつでも,どこでも的確で質の高い保健福祉サービスを安心して気軽に受けることができる地域社会を実現するため,個人の健康診断情報等のデータベース化,健康維持・増進関連の情報提供や福祉に関する人材や制度等の情報提供を行うシステムについて検討をすすめる。
また,光通信装置を装着したカーナビゲーター付車両に目的地までの的確な道路情報等の交通情報を提供する新交通管理システムについても整備をすすめる。

(2)地域産業振興のための情報化
大企業との情報格差が著しい中小企業の情報化をすすめるため,情報化推進のための金融上の優遇措置を講じるとともに,(財)岡山県中小企業研修情報センターの機能強化をすすめ,情報システムの導入,活用に関する相談機能の充実,情報化を担う人材の育成に努める。 また,県内企業が経営の革新や新規事業の展開のため必要とする最新の技術,マーケティング,製品情報などの収集のほか,企業自らも世界に向けた情報の発信を行えるようインターネットを活用した産業情報ネットワークを構築する。
このネットワークの中核施設として,ネットワークの運営や中小企業,技術,経済,産業支援情報等の作成及び発信,マルチメディアやネットワーク活用技術の研修等を行う岡山産業情報センター(仮称)をテレポート岡山内に設置し,地域企業の情報化の推進やネットワークの高度利用の普及に努める。
農林水産業分野の情報化にあたっては,農林水産物の効率的,合理的な生産及び農産物の有利販売を実現するとともに,国際競争に対応するために,農林水産業情報システムの構築が必要である。
このため,市場動向,他産地の生産状況等の情報収集,分析等の機能を強化するとともに,産地へ的確な情報を提供し,生産の安定と産地の体質強化をはかる。
また,生産技術や気象情報,生育予測等の農業改良普及センター等への情報提供を充実し,気象変動に対応した農産物の的確な栽培技術対策を推進する。
さらに,農地流動化を一層促進するため,新たに農地流動化情報システムの構築をはかるほか,畜産の振興をはかるため,経営の改善や乳用牛,和牛の改良を推進する「牛群検定システム」,「和牛改良システム」を整備するとともに養殖漁業の経営の安定化をはかるため,気象,海象の自動観測システムの導入を促進する。

(3)行政サービス向上のための情報化
必要な行政情報をいつでも簡単に入手したいという県民ニーズに応えるため,行政が蓄積している各種の統計情報や地図情報等の画像情報を一元的に提供する総合行政情報システムを整備し,積極的な情報提供に努める。
また,休日医療情報や各種イベント情報など生活に関連するさまざまな行政情報の提供については,パソコン通信やCATVなど新しいメディアを活用することにより,情報提供手段の多様化をはかるとともに,提供する情報の充実に努める。
さらに,利用者の利便性の向上をはかるため,窓口業務のネットワーク化を推進することにより,各種証明書の自動発行システムやパソコンなどを利用した公共施設等の利用予約システムの導入について検討する。
これら各種システムの整備にあたっては,音声ガイドやタッチパネル方式の採用等により,高齢者や障害者を含めてだれもが簡単に利用できるよう検討をすすめる。
また,防災行政の通信手段として整備した防災行政通信ネットワークは,電話,ファクシミリ等の通信手段として一般行政にも幅広く活用をはかっていく。
なお,ネットワークシステムのセキュリティについては,十分に検討を行い必要な措置を講じるとともに,ネットワークを通じて個人情報の漏えいや目的外利用を防止するため,個人情報の保護に十分な対策を講ずる。

3 情報化を担う人材の育成

情報化を推進していくためには,急速に進展する情報通信技術に即応できる人材の育成と地域への定着をはかることが重要である。このため,各大学の情報関連学科や情報系専門学校等において情報化を担う高度な知識,技術をもった人材の育成を行うとともに,大学や民間研究機関及び企業との連携のもとに(財)岡山県中小企業研修情報センターや岡山県工業技術センターが中心的な役割を果たしながら,高度技術者の養成に努める。
また,高度情報化社会においては,県民一人ひとりが情報メディアの操作や情報検索方法などを習得し,必要な情報を効果的に入手する能力や,各種の情報を活用していく能力が求められる。このため,県内各地でさまざまなレベルに対応した各種講習会や研修会等の開催に努める。
さらに,県民の高度情報化社会への関心を高めるため,新しい機器を展示した体験施設及び研修センター,情報受発信の機能をあわせもった情報化の拠点施設の整備について検討をすすめる。

*1 アプリケーションソフト:利用者の目的にあわせて開発されたコンピュータのソフト
*2 LAN(ローカル・エリア・ネットワーク):構内情報通信網

2 たくましい産業づくり

農林水産業

課題と施策の方向

本県の農林水産業を21世紀に向けて持続的に発展させ,将来にわたって本県の基幹産業として育成し,魅力ある産業として確立するよう努めなければならない。
一方,我が国の農林水産業を取り巻く状況は,高齢化の進行や担い手の減少に加え,ガット・ウルグァイ・ラウンド農業合意の実施などによる輸入農産物の大幅な増加,高速交通網の整備や輸送形態の高度化による産地間競争の激化など,数多くの課題を抱えている。
本県農林水産業の将来展望を切り拓いていくためには,経営能力に優れた意欲ある経営体を育成するとともに,生産コストの削減や高品質な農林水産物の生産などにより,国際競争力の強化をはかる必要がある。力強い経営体の育成については,認定農業者に対して組織的に経営,技術指導を行うとともに,低利融資や農地の利用集積を重点的にすすめる。さらに,集落営農組織や市町村農業公社など,多様な担い手を育成する。
また,一層の低コスト化を推進するため,大規模農業を促進するとともに,新技術の導入や生産方法の改善に努める。
特に,水田農業については,1区画が1ha程度の大区画ほ場の整備をすすめるとともに,「不耕起乾田直播栽培」や「湛水散播栽培」などの新技術を積極的に普及していく。
岡山県が全国に先駆けてすすめてきた有機無農薬農産物は高い評価を受けており,生産量の拡大と品質の確保をはかり,販売体制の整備を推進する。
米については,「朝日」など優良米の生産拡大をはかるとともに,酒米として人気の高い「雄町」の県中北部における安定栽培技術の確立に努める。
くだものについては,優良品種への改植や土づくりによる園地の若返り対策をすすめる。また,高品質果実の周年供給体制を確立するとともに,新品種,新技術の開発に努める。
野菜については,「岡山県野菜振興計画」を基本とし,高性能作業機械の導入によるコスト低減や安定生産に努めるとともに,広域高速流通時代に対応した流通システムを構築する。
花きについては,総合的な振興計画である「花の里づくり」計画を策定してキク,カーネーション,バラ,スイートピー,トルコギキョウなどを推進品目として,ハウス等の栽培施設,共同育苗施設,集出荷施設の整備をすすめ,産地の拡大に努める。
特用作物等については,伝統作物の復活に努めるとともに,ニューヘルシー作物や薬用作物の導入をすすめ,本県の新しい特産物に育てていく。
畜産については,受精卵移植の普及等により低コストな酪農,肉用牛,養豚等の生産振興に努めるとともに,「おかやま和牛肉」のブランド化や「おかやま黒豚」,「おかやま地どり」等を地域特産物として定着をはかる。
林業については,高性能林業機械の導入やレンタル制度を整備するとともに,木材生産から建築までの一貫供給体制の整備をすすめ,低コスト化をはかる。
さらに,まつたけやほんしめじなど野生きのこの発生環境の整備に努める。
水産業については,「つくり育てる漁業」を推進するため,漁場の整備をすすめるとともに,種苗の生産と放流に努める。さらに,大きな成果が見られている海洋牧場の新たな設置を検討する。また,ノリ養殖の協業化,カキの集出荷体制の一元化などをすすめ,低コスト化をはかる。
さらに,農林水産物の販売拡大対策としてマーケティング戦略の推進,アンテナショップによる消費者ニーズの把握,体系的な広報宣伝活動によるイメージアップなどに努める。また,農林水産業の重要性や生産の努力等について消費者の理解を深めるとともに,食料の安定供給や国土の保全など,農林水産業が担っている重要で多様な機能についての広報に努める。
農林水産業を支える基盤の整備については,低コスト生産をすすめる大区画ほ場整備をはじめ,高速交通網にアクセスする農道の整備,林業経営の効率を高め,山村地域における生活道ともなる林道網の整備,あるいはつくり育てる漁業をすすめるための魚礁や漁港の整備に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

力強い経営体の育成

  • 意欲ある経営体の育成
    • 効率的・安定的な経営体の育成
    • 担い手の確保・育成
  • 多様な担い手の育成
    • 女性
    • 高齢者
    • 集落営農組織
    • 地域農業支援組織

低コスト化の推進

  • 農地の流動化促進
  • 低コスト稲作の推進
  • 低コスト生産の推進

高品質な農林水産物の生産振興

  • おかやまの特産物づくり
    • 有機無農薬農産物の生産振興
    • 優良米の生産振興
    • くだものの生産振興
    • 野菜の生産振興
    • 花きの生産振興
    • 特用作物等の生産振興
    • 畜産物の生産振興
    • 林業の振興
    • 水産業の振興
    • 農林水産加工の推進
  • 消費拡大と流通改善
    • マーケティングと消費拡大
    • フライト等高速流通型園芸の振興
    • 多様な流通への対応

生産基盤の整備

  • 農業基盤整備
  • 林業基盤整備
  • 水産業基盤整備

先進技術の活用

  • 新技術の開発と普及
    • バイテク等の新技術の開発・普及
  • 情報システムの整備
    • 農林水産情報システムの整備

環境に配慮した農業の推進

  • 環境保全型農業の推進

農林水産団体の機能強化

  • 広域合併の推進
  • 指導体制の充実

農林水産業国際交流・協力の推進

  • 農林水産業国際交流・協力の推進

1 力強い経営体の育成

(1)意欲ある経営体の育成

1 効率的・安定的な経営体の育成
国際化に対応できる本県の農業の振興のためには,経営感覚にあふれた先進的経営体の育成が重要である。
農業を職業として選択し得る魅力とやりがいのあるものとするため,農業者の創意と工夫が発揮できる農業構造の確立をはかるとともに,21世紀をリードする本県農業の中核的な担い手として,他産業並みの労働時間と所得が実現できる効率的かつ安定的な先進的経営体を育成する。
このため,市町村と密接な連携をはかりながら,農業改良普及センター等が中心となって,先進的経営を志向する農業者に対する農業経営改善計画の作成指導,効率的,安定的な個別経営体の農業法人化指導,税務,労務など専門的な知識についてのスペシャリストによる相談会の開催,経営診断や経営セミナーの開催など濃密かつ継続的な経営,技術指導を展開し,認定農業者の確保,育成をはかる。
また,認定農業者の農業経営改善計画の着実な達成をはかるため,農用地の利用集積や低利な資金の融通,税法上の特例措置など支援対策の充実強化に努めるとともに,経営情報や技術情報の交換の場をつくるため,認定農業者や農業法人の組織化を推進する。

2 担い手の確保・育成
近年,新規青年就業者数は大幅に減少しており,本県農林漁業の活性化のためには,将来を担う意欲的なたくましい青年の確保が緊急の課題であり,そのための環境条件整備等の対策が必要となっている。
先進的経営体を担う経営感覚に優れた新規就農者の確保,育成については,農家子弟の新規学卒就農者やUターン就農者のみならず,魅力ある職業として農業を志望する意欲的な農家以外からの新規参入青年も積極的に受け入れ,農内外から幅広く優秀な人材の確保をはかる。
このため,農業を志す青年が円滑に就農し,できるだけ早期に自立できるよう,地域の農業士や就農相談員等の支援による就農相談,体験研修や技術指導等の充実をはかる。
あわせて,優良農地の取得や施設整備,資金借入れ,住宅確保等自立するための営農生活基盤づくりに対する支援事業を強化する。
特に,中山間地域においては,地域の定住条件の確保,在村青年に対する就農啓発と仲間づくり活動を推進し,担い手の確保をはかる。
さらに,県立農業大学校や中国四国酪農大学校における農業者に対する新技術,機械整備等の研修を一層充実させる。
また,林業後継者の確保,育成については,農林業高校生などに対し,林業作業現場の体験や林業研究グループとの交流,高性能林業機械を使用した実習などを実施し,林業への理解を深め,就業意欲の向上をはかる。
林業労働者を確保,育成するため,就業情報の提供や若い担い手が就労できるよう,高性能林業機械による省力化,効率化の促進,フォレスター(*1)に対する月給制の導入,新規参入者への育成研修などを実施するとともに,「ゼロ災運動」を展開するなど安全衛生の確保に努める。
漁業後継者の確保,育成については,積極的に後継者の定着をはかるため,「つくり育てる漁業」の推進による収入の安定化や,漁港を中心とした漁村の生活環境の改善,向上に努める。
若い担い手に対し,就農支援資金の貸付けなど総合的な就業支援対策の充実をはかるための,「岡山県農林漁業担い手育成財団」の体制の強化に努める。
また,林業担い手対策として,林業労働者の社会保険制度への加入の促進や高性能林業機械の整備等を推進するため,(財)岡山県林業振興基金の基盤強化に努める。

(2)多様な担い手の育成

1 女性
農山漁村地域における女性は,農林水産業の担い手として,また地域活力の維持発展の担い手としてその役割はますます増大しており,女性が能力を十分発揮し,活躍するための条件整備が必要である。
このため,女性が快適に働き,農林水産業の共同経営者として円滑に経営に参画するための月給制や休日制の導入をはじめとする,新しい家族経営のルールづくりを推進するとともに,健康に配慮した労働・作業管理のできる環境づくりをすすめる。
また,地域活性化の担い手として,農村のよさの再発見,ふるさと特産品の加工,販売,農作業の労力支援活動の推進などにより,明るい農山漁村のイメージづくりを行う。

2 高齢者
農山漁村の高齢者については,今後,高齢化がすすみ農山漁村の活力の低下が懸念される状況のなかで,地域活性化のために能力や意欲に応じて活躍でき,社会的な役割を担うとともに誇りと生きがいのもてる活動の場を創造することが大切である。
このため,豊富な知識,経験による優れた能力を生かし,特産的作目や少量多品目の産地づくりをすすめるとともに,生きがいのもてる就業機会の創出に努める。また,若い世代との交流を通じて農山漁村の伝統行事等の伝承をはかる。

3 集落営農組織
過疎化,高齢化等の進展により,担い手の減少している地域において農業を維持していくためには,地域の農業は自ら守るという主体的取組みによる,地域ぐるみの営農を積極的に推進していく必要がある。
このため,集落での話し合いをもとにした集落営農計画を樹立し,農地の総合的な利用調整や農業機械・施設の効率的利用による低コスト稲作を実現するとともに,コミュニテイ活動を活性化させる集落営農組織の積極的な育成をはかる。集落営農は,地域の実情にあわせて,共同作業方式,若物に機械作業を任せるオペレーター方式,一集落一農場方式等による取組みをすすめる。
さらに,組織活動の活発化により,部分作業から一貫作業への展開,近隣集落への面的拡大等をはかるとともに,オペレーター等集落内の営農の核となっている者を認定農業者へ,一集落一農場型組織を法人組織へ移行するなど発展的な展開を誘導する。

4 地域農業支援組織
農業従事者の高齢化や新規就農者の不足等により,農地の維持,管理が困難な地域においては,市町村農業公社等の地域農業を支援する体制の整備が不可欠である。
このため,地域の実情に即し,市町村農業公社の設立を支援し,農地の賃貸借や公社のもつ農地の中間保有機能を活用した管理耕作等により農地の維持管理に努める。あわせて,担い手の育成確保や,農産物の生産,加工,販売等地域農業の総合産業化をはかる。
また,農業団体などによる農作業等を請け負うサービス事業体を育成するため,農地情報の提供やオペレーター等人材の確保及び機械設備導入に対する支援を行う。
さらに,農林漁業者が休暇を取る場合や,突発的な事故が発生したときに,農作業や家畜の飼養管理,山林の保育管理などを行うヘルパー制度の充実をはかる。

2 低コスト化の推進

1 農地の流動化促進
農業の国際化に対応していくためには,低コスト営農により生産性を高め,効率的かつ安定的な農業経営を確立していくことが急務であり,認定農業者等の先進的経営体に農地を集積することが必要である。
このため,県,市町村,農協等関係機関が一体となって農家に対する意識改革をはかり,農地はつらつ集積事業など優良農地の集積等に対する各種助成制度等の普及啓発活動を実施する。また,農地流動化推進員による集落内での農用地の出し手,受け手の掘り起こしや,情報収集・提供活動により,農用地の利用権設定や農作業の受委託をすすめる。
農地保有合理化法人の農地の中間保有機能を活用した農地の売買,賃貸借をすすめるとともに,市町村農業公社や農協等に,認定農業者等への農地情報の提供機能を整備する。

2 低コスト稲作の推進
これからの稲作は,国際化の進展に対応できるよう,大幅な省力化とコスト低減をはかることが極めて重要である。
このため,地域の気象条件や水利慣行,ほ場の条件などに即して,「不耕起乾田直播栽培」や「湛水散播栽培」等の新技術を積極的に普及し,省力・低コスト稲作を県下に広く定着させていくことが必要である。
特に,本県が全国に先駆けて開発した超省力・低コストの革新的技術である「不耕起乾田直播栽培」は,魅力ある稲作経営を支えるものとして大規模稲作経営農家等から大きな期待が寄せられており,超低コスト稲作推進の柱として一層の拡大に努める。
また,より低コスト化を実現するためには,経営規模の拡大を促進し,農地の区画形質の改善,集団化,はん用化等,ほ場条件を総合的に整備する必要がある。特に,平野部等の広がりのある地域では,生産性の高い土地利用型農業を展開するため,大規模経営が可能となる1ha以上の大区画ほ場整備を重点的に推進するとともに,意欲ある経営体への農地の利用集積を積極的に推進する。
さらに,国際化に十分対抗しうる稲作の実現をはかるため,農業試験場において,全国に先駆け,1区画10ha規模の超大区画実証ほ場を整備し,不耕起乾田直播による超低コスト稲作の実証試験に取り組む。

3 低コスト生産の推進
国際化時代に対応し,農林水産業が産業として自立していくためには,稲作以外についても,新技術の導入や生産方法の改善等により,生産コストの低減をはかる必要がある。
このため,くだものについては,作業を容易にする樹形の改善に努めるとともに,アクリルやビニール等の低コスト温室の普及をはかる。
野菜については,ピーク時の労働力確保のための農業ヘルパーの活用や産地間協力をすすめ,自動選果機やナス接ぎ木ロボット,ダイコンの収穫・運搬機など省力化機械の導入を促進する。また,ナスの長期どり技術の開発,天敵を利用した害虫防除技術の確立をはかる。麦,大豆,葉たばこについては,団地化や規模拡大を推進するとともに,機械,施設の共同利用をすすめる。
畜産については,規模の拡大や省力化等による低コスト生産を基本に,農家に対し乳量や産肉性に優れた高能力牛の導入をすすめるとともに,受精卵移植等先端技術の活用による改良増殖の期間短縮と生産性の向上をはかる。
また,山地等を有効に利用した繁殖和牛の放牧の奨励,草地の造成整備による高品質粗飼料の生産及び飼料自給率の向上に努める。
林業については,高性能林業機械の導入と共同利用をすすめるとともに,これら機械を有効に活用するための林道,作業道を計画的に整備する。
また,木材製品の生産体制や供給体制の合理化をすすめる。
水産業については,カキ養殖について,「おかやまかきステーション(仮称)」を建設して集出荷体制を一元化するとともに,ノリ養殖についても個別に行っている作業の協業化を促進する。

3 高品質な農林水産物の生産振興

(1)おかやまの特産物づくり

1 有機無農薬農産物の生産振興
消費者の健康・本物志向や環境にやさしい農業への関心が高まるなか,有機無農薬農業はこれからの農業がすすむべき方向として大きく位置づけられている。
本県は全国に先駆けて有機無農薬農業の普及に取り組み,独自の認証制度をはじめ,先進県として高い評価を得ているが,今後も,消費者ニーズの高まりに応じ,より一層の定着,拡大に向けて推進をはかる必要がある。
このため,市町村,農業団体等と連携し,積極的に産地づくりをすすめ,新たな生産集団を育成する。
また,既存の集団においては技術交流会等を通じ,先導的な役割を担う推進リーダーの生産技術の向上をはかるとともに,土づくりやビニールハウスの導入等をすすめ,収穫期間の延長,周年供給体制の整備,生産性の向上,生産規模の拡大等に努める。
流通面では,計画生産,計画出荷による安定的な流通を基本に,市場機能の活用や取扱店の充実など効率的な流通体制の整備,充実をはかるとともに,外食産業等への販路開拓をすすめる。
また,高品質を保つための技術指導や認証制度の一層の定着に努めるとともに,県内外に向けた広報宣伝活動,消費者啓発,さらには生産者と消費者との交流をすすめ,「岡山有機無農薬農産物」のブランド化を推進する。

2 優良米の生産振興
本県の稲作は,米の生産調整の枠組みのなかで,今後とも,農業の基幹として位置づけ,新食糧法(*2)や国際化にも対応していくため,地域の特性を生かし,生産性が高く,高品質で商品性に富んだ米を生産し,消費者ニーズや酒造,米飯加工などの実需者が求めるそれぞれの用途に応じた高品質な米を,安定的に生産供給していく必要がある。
このため,生産面では,岡山の看板米である「朝日」や県の独自開発品種「吉備の華」,「おとめごころ」など食味のよい優良品種,酒造好適米として評価の高い「雄町」の作付拡大や有機無農薬米,棚田天然米,顔が見えるブランド米などの特色ある米づくりをすすめる。
特に,「雄町」については,中北部地域における現地実証を行い,安定生産技術の確立に努める。
また,地域の立地条件に応じた,不耕起乾田直播栽培や再生紙マルチ栽培など新技術の導入,有機物を活用した土づくりや排水対策の実施,乾燥調製技術の向上等をすすめるとともに,土地基盤整備,農地の利用集積による意欲ある経営体の育成や集落営農を推進し,品質のより一層の向上と生産コストの低減をはかる。
流通販売面では,消費者等実需者と生産者が信頼関係で結ばれた販売を一層強化するとともに,流通の多様化に対応し,県産米の県内消費の促進,産地精米や産地炊飯加工,品質,食味を長期間維持できるもみの貯蔵法の開発など,新たな流通販売対策にも取り組む。
これら,生産・流通販売対策を一体的に推進し,品質と食味に優れた岡山米のブランド化に努め,産地間競争の激化に十分対応できる多彩な稲作システムを確立する。

3 くだものの生産振興
本県果樹の振興にあたっては,恵まれた自然条件と長年にわたって蓄積された高度な技術を生かしながら,「うまいくだものづくり」を基本に,『くだもの王国おかやま』の一層の発展をめざして,消費者ニーズに即応した高品質な果実の周年供給体制と,整備がすすむ空港や広域高速交通網を生かした出荷体制の整備をはかる。
ももについては,白桃系,白鳳系優良品種を中心に,「岡山桃交配1号(仮称)」などの有望な新品種や優良系統による新・改植と土づくりを推進し,園地の若返りをすすめるほか,非破壊選果施設等の導入を促進し,出荷体制を総合的に整備する。
ぶどうについては,ウイルスフリー苗による計画的な更新や,大粒で味がよい,皮ごと食べられるなどの特性をもつ新品種,優良系統への計画的な新・改植を行う。露地ぶどうは,消費者し好に対応したピオーネなど大粒系優良品種の産地拡大をはかるとともに,促成や抑制栽培の作型の組合わせ等による周年供給体制の確立を推進する。温室ぶどうは,土壌改良や新・改植をすすめ,生産性と品質の向上をはかるとともに,低コスト温室等による規模拡大を推進する。
また,地域に適応した果実として,中北部地帯で新高梨,西条柿などの産地化の推進をはかるとともに,南部地帯では愛宕梨,ヤーリー,パスクラサン,いちじくなど消費者のし好に対応した特色ある果樹の産地づくりを推進し,地域特産果実として育成する。

4 野菜の生産振興
消費者ニーズの多様化や,流通の多元化,輸入野菜の増加,産地間競争の激化など野菜農業をとりまく環境はますます厳しくなっている。
このため,「岡山県野菜振興計画」を基本に,ナス,トマトなどの果菜類,レタス,ホウレンソウなどの軟弱野菜等本県の特色を生かせる品目を重点に,既存産地の生産組織の再編や選果施設の整備等のリフレッシュ対策,新品目の導入等の輸入競合対策を講じ,産地を強化するとともに,産地間の連携や新産地の育成により出荷の大型化,周年化をはかり,県内及び京阪神を中心とした県外消費地への安定供給を一層強化する。
また,土づくり,優良品種,優良種苗の安定供給,高規格施設等の整備,近年研究開発がすすむ養液栽培や環境制御技術等先進技術の導入等により,品質向上と作柄の安定に努める。
近年の労働力不足に対応し,育苗・選別作業の分業化やヘルパーの活用,産地間協力による労働力調整をすすめるとともに,ナスの接ぎ木ロボットやダイコン等の収穫・運搬機など高性能作業機械の開発導入等,一層の機械化,省力化をすすめ,コスト低減に努める。
また,腰痛防止等農業者の健康管理のため,腰掛け作業車,草取り機等の導入,改良に努める。加えて,多様化する消費者,流通ニーズに的確に対応し,高速流通網のメリットを発揮できるよう,鮮度保持施設や集配機能を備えた流通拠点を充実させる等流通体制の整備を促進し,高品質,高鮮度をセールスポイントに本県野菜の一層の生産出荷拡大に努める。

5 花きの生産振興
花きは,生活水準の向上や生活にうるおいとやすらぎを求める気運が高まるなかで,順調に消費が伸びているが,一方では,全国的に生産が拡大しており,さらには外国産花きの輸入も増加し,産地間競争が激化している。
このため,本県花きの生産振興にあたっては,「おかやま花の里づくりプラン」(第2次花き振興計画)に基づき,冬季温暖な瀬戸内から夏季冷涼な中国山地までの変化に富む,恵まれた自然条件等を生かし,多様化する消費者ニーズに即応したデルフィニウム,オリエンタル系ユリなど新品目,新品種の計画的な導入等により,積極的に新産地の育成と既存産地の拡大による花の里づくりに努め,生産振興をはかる。
特に,キク,カーネーション,バラ,スイートピー,トルコギキョウやラン等の鉢物類を中心に,生産安定と品質向上をはかるため,栽培技術水準の一層の向上に努めるほか,優良種苗確保のための共同育苗施設の整備,ハウス栽培の推進,養液栽培等の先進技術の導入をすすめる。
また,周年供給体制を確立するため,県下統一の出荷規格に基づき,産地間連携によるリレー出荷を推進するとともに,集出荷施設,鮮度保持施設等の整備に努める。

6 特用作物等の生産振興
麦,大豆は水田転作の基幹作物として重要な作物であるため,作業受委託や農地の流動化等による団地化,規模拡大を推進するとともに,機械,施設等の有効利用による生産コストの低減等に努め,高品質な麦,大豆の主産地化を推進する。
特に,黒大豆は中四国一の産地を形成しているが,より一層の産地規模の拡大をはかるため,優良種子の確保による生産の安定,加工・消費拡大対策の充実,省力機械の普及による省力化及び品質の向上対策等を推進する。
い草,茶,葉たばこ,みつまたは古くから本県を代表する特用作物であり,地域性を考慮しながら今後一層栽培面積の維持,拡大をはかるとともに,単位面積あたりの収量と品質の向上,省力化等を推進する。
近年の健康志向を背景に需要が高まっているニューヘルシー作物の一層の生産拡大に努める。特に,アマランサス,ズッキーニ,ウイングドビーン,ハトムギなど,栽培が定着してきている品目を中心に生産体制の整備をすすめるとともに,加工技術の開発や消費拡大,販路の開拓等をより積極的に推進し,新たな本県の特産物として定着をはかる。
また,近年高級和菓子の原料として白小豆が注目されているが,優良種子の安定供給,栽培技術の高度化,収穫・調製施設の整備による大幅な省力化と品質向上をはかるとともに,販路開拓等により新たな本県の特産物として育成する。
このほか,山うど,たらの芽,またたびなど地域で取り組みつつある特産品のなかから,岡山ならではのめずらしいもの,おいしいもの,将来性のあるもの等の振興に努める。

7 畜産物の生産振興
本県は京阪神地域の大消費地をひかえ,古くから牛乳及び鶏卵の生産県として位置づけられているとともに,肉畜についても高品質な畜産物の生産地として定着しており,今後積極的な生産振興と流通の合理化に努める必要がある。
このため,担い手の育成をはじめ,飼料基盤の整備,家畜改良による能力の向上,畜産ヘルパー制度の充実,畜産環境保全及び家畜衛生対策の充実,価格安定対策の強化等に努めるとともに,総合畜産センターにおいて開発・蓄積した新技術等について個別農家等への普及をはかり,積極的に生産振興対策を推進する。
また,畜産物の集出荷及び処理加工体制の整備や産地直販体制の育成に努めるとともに,畜産物の銘柄化や高品質な岡山の畜産物の消費宣伝等流通消費対策を一層推進する。
酪農については,家族労働による専業的経営の育成を基本に,公共牧場の活性化と有効活用,高能力牛の海外からの導入と受精卵移植を活用した乳用牛改良,超高能力牛飼育管理技術の確立等に努めるほか,生乳流通・検査施設の整備による高品質生乳供給体制の充実や,地域特産品の産地としてチーズの里を育成するなど牛乳,乳製品の生産及び消費の拡大を積極的に推進する。
また,平成12年に本県での開催が予定されている全日本ホルスタイン共進会に向けて推進体制を整備するとともに,農家の改良意欲の高揚と牛群能力の向上に努める。
和牛繁殖経営については,中山間地域を中心に他作物との複合経営を推進し,肥育経営については企業的な経営体を育成する。
特に,肉質を係数で評価する育種価等を活用した優良牛の改良をはじめ,肉牛価格安定対策を強化しながら,新しい肥育技術の普及による「おかやま和牛肉」の生産拡大とブランド化を積極的に推進するほか,海外輸出の拡大等幅広い消費拡大対策を展開する。
養豚については,団地化をはかるとともに繁殖肥育一貫生産の推進を通じて企業的な経営を育成するほか,肉豚価格安定対策の強化をはじめ,優良種豚の導入,人工授精体制の整備,環境保全対策の強化等に取り組む。
また,「おかやまポーク」の銘柄化や,産地直販体制の整備による「おかやま黒豚」等の消費拡大対策を推進する。
養鶏については,鶏卵,ブロイラーともに企業的経営体の育成を基本に,衛生的な飼養管理による生産性の向上に努めるほか,「おかやま地どり」の一層の銘柄化や特用鶏等の地域特産化を推進する。

8 林業の振興
津山,真庭を中心とする一帯は,豊富な森林資源を背景に古くから林業が盛んで,現在では,製材,人工乾燥等加工技術において全国でもトップクラスの技術を有し,「美作材」で代表される屈指の国産材加工地帯が形成され,県内はもとより,京阪神等大消費地にその多くが出荷されている。
しかし,安い外材製品の輸入増加や国内の厳しい産地間競争が見られることから,より生産性の高い林業の振興に努める必要がある。
このため,森林資源の一層の充実に向けた造林の推進や森林の適正な管理,木材の搬出等を目的とした林道,作業道の計画的な整備に加え,タワーヤーダ(*3)等高性能林業機械の導入やこれを流域単位で共同利用する「林業機械化センター」の整備等をすすめ,林業の活性化と低コスト林業を推進する。
林家等の林業経営体については,経営の安定をはかるため,森林施業の受託等による施業規模の拡大や特用林産物の導入等による林業経営の複合化を推進する。
造林,保育,伐出を担っている森林組合等の林業事業体については,合併や事業の協同化など経営基盤を強化し,適正な森林管理と木材の安定供給をはかる。
さらに,乾燥材などの共同生産や木材加工施設の高度化,新技術の導入をすすめるほか,木材の伐出から製材,プレカット,住宅建築に至る一貫した供給体制の整備,合理化を促進し,消費者ニーズに応じ,品質等の安定した木材製品の供給をはかる。
一方,県産材の需要を拡大するため,「県産材愛用キャンペーン」を実施し,マスメディアの活用や木工教室,間伐材等木材製品の長期展示などを通じて,広く県民に木材のよさ等の普及啓発に努めるとともに,木造住宅の建設に対する助成や大規模木造施設の建設促進,公共・公営施設の木造化など県産材の利用を推進する。
特用林産物については,まつたけやほんしめじ等野生きのこの発生環境整備の促進,高品質なしいたけの生産振興,土壌改良・水質浄化資材として見直されている木炭や高品質で有名な備中うるしの復興に努めるとともに,「きのこ名人」,「炭焼名人」などの養成をはかる。

9 水産業の振興
限られた資源を有効に活用し,「つくり育てる漁業」をより一層推進するため,漁場の整備に努めるとともに,クロダイ,ヒラメ,ガザミ,ヨシエビ等の本県の海域特性に適した魚介類の健全な種苗を生産し,放流する。
また,市場性の高いキジハタ,ナマコ等の種苗の量産化と増殖技術の開発をすすめる。
さらに,音とエサによって放流魚や天然魚を飼いつけ,保護・育成するための拠点である海洋牧場(笠岡市白石島地先)については,漁業者による管理運営体制への移行をめざすとともに,新たな海洋牧場を整備し,成果の他地区への普及をはかる。
漁業の安定生産をはかるためには,幼稚魚の保護や水産資源を管理しながらとる「資源管理型漁業」の実践が必要である。このため稚魚を捕獲しない底引網等の漁具,漁法の改良や禁止区域の設定をすすめるとともに,禁漁期間や休漁日を設定しながら,計画的な漁獲を行う。また,隣接県と連携して資源管理組織の設立をはかり,広域的な資源管理体制を確立する。
カキ養殖業については,生産の安定をはかるため,高水温に強いカキの新品種の作出等新しい生産技術の開発に努めるとともに,ノリ養殖については,クロノリのほか,風味の豊かなアオノリ養殖の普及,拡大をはかる。
内水面漁業については,産卵・育成場や稚魚の中間育成場の整備を行い,アユ,コイ等種苗の放流,資源の保護・育成や,魚の住みやすい川づくりに努める。また,アマゴ等の病害の予防や養殖技術の向上をはかる。
漁業経営の安定や合理化,また生産物の価格安定をはかるため,漁業協同組合の合併や漁協市場の統廃合により,漁獲物の集出荷体制の充実と販売ルートの拡大をすすめる。
特に,養殖業については,ノリ養殖業の協業化を促進し,経費の削減や省力化による経営の合理化を推進する。また,カキ養殖においては,「おかやまかきステーション(仮称)」を建設し,集出荷体制を一元化することにより,規格の統一,品質向上等をすすめ「岡山カキ」ブランドの定着をはかる。

10 農林水産加工の推進
おいしいもの,珍しいものに対する消費者ニーズが高まるなかで,岡山の恵まれた自然条件や,農林漁業者としての視点を生かした郷土色豊かな農林水産加工品が開発されているが,今後,より一層付加価値の高い加工食品の開発と,独自性のあるふるさと特産品づくりが求められる。
このため,生産者と試験研究機関や民間企業との連携による専門的な加工品開発や,包装,デザイン等を工夫した商品づくりを支援し,より付加価値の高い特産加工品づくりを促進する。
あわせて,加工原料が安定的に供給できる産地の育成,加工・販売施設の整備をすすめる。

(2)消費拡大と流通改善

1 マーケティングと消費拡大
近年の輸送形態の高度化や高速輸送に伴う産地間競争の激化,低価格な農林水産物の輸入量の増加,市場外取引や量販店向けの大口取引等の増加による流通構造の変化など,農林水産業を取り巻く環境は大きく変化している。
こうしたなかで,本県の農林水産業の振興をはかっていくためには,生産の振興にあわせ,流通構造の変革に対応したマーケティング戦略に基づく販路開拓が必要である。
このため,アンテナショップ等による消費者ニーズの的確な把握に努めるとともに,マーケティング戦略に基づく販路開拓のための市場対策や,広報宣伝事業等の実施等により,本県農林水産物のイメージアップを推進し,消費の拡大,「岡山ブランド」の確立をはかる。
主食である米については,関係機関,団体等と一体となって,「米を見直す運動」を積極的に推進し,家庭,学校,職場等あらゆる場での消費拡大に努める。また,朝日米など,うまい岡山米を使った「晴れの国岡山膳」の利用や純米酒の消費を奨励する。
くだもの,野菜については,県内外での宣伝フェア,物産展での展示即売・試食やアンテナショップを活用したマーケティング活動,「白桃の日」の設定などを総合的に実施することにより岡山の産品のすばらしさを広報宣伝し,消費拡大に努める。
有機無農薬農産物についても,認証制度の一層の定着をはかり,県内外に向けた広報宣伝,消費者啓発とあわせて「岡山有機無農薬農産物」のブランド化を推進する。
花きについては,生活文化の向上の面から,「花のあるくらしづくり」をキー・ワードに,フラワーフェスティバルの開催,父の日や敬老の日の街頭キャンペーンなど県内外のイベントを通じ,本県産花きの一層の消費拡大を推進する。
畜産物については,「ミルクフェアー」等による牛乳,乳製品の広報宣伝をはじめ,「おかやま和牛肉」友の会による和牛肉の消費拡大,県産牛肉海外輸出の促進,さらに「おかやま地どり」など特用鶏の直販体制の確立等幅広い消費拡大対策をすすめる。
水産物については,漁獲物の蓄養,鮮度保持施設等の整備により,新鮮な水産物の安定供給に努めるとともに,「岡山カキ」のブランドを確立し,販売力の強化をはかるため,各種物産展に参加し,岡山の水産物のよさについて広報宣伝活動を行う。
農林水産物を取り巻く環境の変化に即応できるよう,マーケティング研修の実施等を通じ,経営感覚を身につけた人材の育成に努める。

2 フライト等高速流通型園芸の振興
近年,本県では,空路の整備拡充と高速道路網の整備が急速にすすんでいることから,これら広域高速交通網の有利性を生かした,「完熟,朝どり,即日販売」などの消費者ニーズの強いももやマスカット,トマト,ピオーネ,黄ニラやスイートピーなど本県の特色が発揮できる高品質な農産物の生産を促進し,激化する産地間競争に対応していく。
また,産地間の連携による出荷量の確保や出荷期間の延長,鮮度保持施設の整備など出荷体制を総合的に整備するとともに,これら産物の販路拡大とイメージ向上に努め,岡山ブランドとしての定着をはかる。

3 多様な流通への対応
市場流通については,県内卸売市場の計画的再編整備をすすめ,集出荷能力の充実強化と経営の安定をはかる。特に,量販店等大口実需者や多様な消費者のニーズにも対応できるよう,施設の高度化や予約相対制度の積極的な活用等取引システムの改善に努める。
また,流通の仕組みや産地,産品の紹介,地域特産物の展示即売や地域商工業者との連携など,産地や消費者との交流と流通情報の拠点としての機能を整備し,地域に開かれた市場へと脱皮をはかる。さらに,市場運営への適切な指導や人材育成のための講習会の開催など,流通環境の変化に迅速かつ的確な対応ができるよう市場運営を支援し,市場機能の強化に努める。
市場外流通については,近年の良質・健康・新鮮志向といった消費者ニーズの高まりから,朝市,青空市,宅配便などが増加しており,こうした流通の多様化をふまえ,地域の生産品目の特性や生産数量に見合った流通への対応に努め,地域農業の活性化をはかる。

4 生産基盤の整備

1 農業基盤整備
平成6年10月に緊急農業農村対策本部が示した「ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策大綱」に基づき,大区画ほ場整備,かんがい排水事業などの高生産性農業基盤整備事業を重点的かつ加速的に推進するとともに,農業集落排水事業,農道整備事業などを積極的にすすめる。
特に,1ha以上の大区画ほ場整備を重点的にすすめるほか,効率的な水管理や農地のはん用化をはかるため,パイプライン化などかんがい排水施設の整備を推進する。
また,農村の活性化と農業生産物の流通の合理化をはかるため,高速自動車道や岡山空港などにアクセスする農道を重点的に整備するとともに,これら基幹的農道と一体的に機能する農道網の整備を積極的に推進する。
飼料生産基盤については,笠岡湾干拓地に粗飼料生産供給基地を引き続き整備し,良質で安価な粗飼料を供給することにより,笠岡湾干拓地やその周辺の畜産農家の農業経営の安定をはかる。

2 林業基盤の整備
優良林の造成にあたっては,河川流域を基本的な整備の単位として,下刈り,除伐,間伐等の保育作業の徹底をはかり,再生可能な森林資源の一層の整備,充実をすすめるとともに,年齢や高さが異なる樹木から構成される複層林や広葉樹林など多様な森林の造成に努める。
林道については,周辺の自然環境との調和に配慮しながら整備を行い,利用目的や緊急性を勘案しつつ,大規模林道,広域林道等の開設,改良に努める。

3 水産業基盤の整備
漁場については,本県の狭あいな海域を漁場として有効かつ高度に活用するため,大型魚礁等を広範囲に設置して漁場機能を拡大する。また,干潟,藻場は幼稚魚の発生,成育の場であり,海洋環境の保全等にも重要な役割を果たすことから,その再生拡大を積極的に推進するとともに保護区域の確保に努める。
漁港については,地域の漁業形態を勘案し,効率的な利用がはかられる施設の整備を推進するとともに,漁業経営の近代化や安定をめざした蓄養,水産加工,鮮度保持施設等の整備をはかる。
また,地域の生活に密着した緑地,広場,浮桟橋等を設置し,生活環境の改善に配慮するとともに,海洋レクリエーションと漁業との共存及び調和ある発展をはかりながら,地域社会の活性化の核となる漁港漁村の整備を推進する。

5 先進技術の活用

(1)新技術の開発と普及
優良品種の育成とその増殖,環境保全型農業などの技術開発は農林水産業の振興にとって重要な課題である。
このため,新たに整備するバイオテクノロジー研究所(仮称)を活用し,遺伝子組換えや細胞融合など最先端技術を駆使しながら,病気に強い稲や野菜,色や形状のよい花きなど,高品質な地域特産品の開発に取り組む。
また,優良牛の品種改良,野生きのこの栽培技術,木材の人工乾燥や難燃化技術,三倍体カキの量産技術などをはじめ,生産の省力化,低コスト化,特産物の高付加価値化などの一層の研究開発をすすめ,早期に普及をはかる。
さらに,自然環境の維持,保全を目的として,有機無農薬栽培技術,生物学的手法による病害虫防除技術,家畜ふん尿の効率的処理技術などの新技術の研究開発をすすめる。

(2)情報システムの整備
農林水産物の効率的,合理的な生産及び農産物の有利販売を実現するため,市場動向や他産地の生産状況等の情報を収集・分析し,産地へ的確な情報を提供するとともに,生産技術や気象情報,生育予測等の情報提供を行う農業情報システムの構築を推進する。
さらに,農地流動化を一層促進するための農地流動化情報システムや畜産経営の改善,乳用牛,和牛の改良を推進するため,子牛市場の成績や枝肉成績等の情報を伝える畜産情報システムの整備をすすめる。
さらに,ノリやカキの養殖では,気象,海象の自動観測システムを導入して養殖漁業の安定をはかる。

6 環境に配慮した農業の推進

近年,化学肥料や農薬に過度に依存する傾向があり,環境への悪影響が懸念されている。
環境保全型農業を積極的に推進するため,たい肥等有機物の土壌還元等による土づくりを基本に,病害虫発生予察による適期防除,土壌診断に基づいた合理的な施肥などを通じて農薬や化学肥料の適正使用を推進する。
また,天敵,フェロモン,拮抗植物等の環境にやさしい防除法の開発,普及に努め,自然と調和した環境に優しい農業の確立をはかる。

7 農林水産団体の機能強化

1 広域合併の推進
農林水産団体が地域農林水産業の中心的な組織としての役割を果たしていくためには,経営基盤の強化や経営指導体制の充実をはかる必要があり,営農相談の充実など組合員のニーズに配慮しながら広域合併等組織の統合をすすめる。
このため農業協同組合では「県下8圏構想」の実現をめざして,団体,県,市町村の連携のもとに強力に推進する。
また,森林組合や漁業協同組合についても広域合併等組織の統合をすすめる。

2 指導体制の充実
農産物の生産振興と農業経営の安定をはかるため,経営相談等を行う指導員を確保し,経営管理や生産技術の情報提供を行うなど,農業改良普及センターとの緊密な連携により,総合的な指導力が発揮できる体制を確立する。

8 農林水産業国際交流・協力の推進

 農林水産業分野においても海外の国や地域と積極的に交流をすすめることは,新たな国際環境に対応し得る人材の育成と農林水産業の振興をはかるうえで極めて重要である。
このため,農業大学校,中国四国酪農大学校の学生や青年農業者を海外に派遣し,国際的感覚を身につけた中核的農業者の育成をはかる。
また,平成5年度から中国・江西省と,平成7年度からインドネシア・バリ州との農業分野における交流をすすめており,共同研究や研修生の相互派遣,農業技術者の派遣など,より一層の交流,協力の促進をはかる。
さらに,アジアを中心とした他の国・地域との幅広い交流,協力にも積極的に取り組む。

*1 フォレスター:森林組合作業班員
*2 新食糧法:主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律
*3 タワーヤーダ:タワー付き自走集材機


主題:
快適で活力あふれる岡山づくり
第5次岡山県総合福祉計画 No.4
246頁~302頁

発行者:
岡山県

発行年月:
平成8年4月

文献に関する問い合わせ先:
岡山県庁
〒700-8570
岡山県岡山市内山下2-4-6
TEL:086-224-2111