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快適で活力あふれる岡山づくり

第5次岡山県総合福祉計画

No.3

岡山県

4 新たな文化と人づくり

地域文化

課題と施策の方向

県民のだれもが,豊かさと快適さ,生きがいを実感できる社会をつくるためには,新たな地域文化を創造していくことが極めて重要になる。このため,地域文化に関する意識の高揚や文化活動の中心的な役割を担う多彩な視野をもった人材の育成に努め,地域文化の振興のための体制整備をすすめる。
また,国内外の優れた芸術文化に接する機会や多彩な分野における創作活動の発表・鑑賞機会の拡充に努める。さらに,国民文化祭の岡山県誘致を視野に入れて,文化団体等の組織の育成,県民文化活動の拠点となる施設の整備や利用促進,広域的なネットワークの形成に努めるほか,海外も含めた幅広い文化交流を積極的に推進する。
地域づくりにおいても,後楽園や大原美術館,備前焼をはじめとする優れた文化資源,県内各地域の歴史的な町並みや美しい自然景観,伝統芸能,文化を重んずる気風などの数多くの文化的蓄積を生かすとともに,地域の新しい文化的なシンボルを形成することにより,文化の香り高い個性的な地域づくりを推進する。また,倉敷チボリ公園などの広域的な文化交流拠点の整備をすすめ,中四国経済文化圏の中核としての役割を果たすべき岡山県にふさわしい魅力的な地域文化を創造する。
また,吉備文化以来の永い歴史と伝統に根ざした個性あふれる地域文化を高めるため,歴史的建造物をはじめとする貴重な文化財の保存活用に努めるほか,県下各地に受け継がれた伝統芸能,民俗行事,伝統工芸などの価値を見直し,現代の生活のなかで生かしながら,次代に伝えていくよう努める。さらに,埋蔵文化財については,体系的な整理,研究とともに,遺跡の整備,公開に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

魅力ある地域文化の創造

  • 文化振興体制の整備
    • 文化意識の高揚
    • 文化を担う人づくり
    • 文化情報システムの充実
    • 郷土文化財団の強化
  • 文化活動の促進
    • 鑑賞・発表機会の拡充
    • 文化活動の奨励
    • 文化交流の推進
  • 文化振興による地域づくり
    • 文化交流拠点の形成
    • 個性的なまちづくりの推進
    • 文化イベントの促進

伝統ある地域文化の継承と振興

  • 文化財の保存と活用
  • 伝統芸能等の継承
  • 埋蔵文化財の調査・研究と活用

行政の文化化の促進

  • 文化アセスメントの推進
  • 文化行政推進体制の充実

1 魅力ある地域文化の創造

(1)文化振興体制の整備
文化は,一人ひとりの主体的な取組みによって創造されるものであり,行政としては,文化を語るつどい,文化講演会,各種シンポジウム,フォーラムの開催や文化に関する広報活動を展開するほか,優れた文化活動を実践している団体等の顕彰を行うなど,県民の文化意識の高揚をはかり,県民運動としての気運を高めていく。
また,地域におけるさまざまな文化活動の中心的な役割を担う人材を育成するため,広く文化活動を側面的に支援する人材を育成する文化ボランティア講座,文化施設を活用する専門知識や企画力を育てるアートマネージメント講座など各種講習会を開催する。
さらに,県民の文化活動に対する多様なニーズに応えるため,文化施設・イベント・サークル,文化財や伝統芸能などの文化資源,文化を担う人材など,文化に関する幅広い情報の収集整理と積極的な情報提供に努める。
このほか,貴重な自然や文化財を保護・保存するとともに,伝統に根ざした個性豊かな地域文化の創造に努め,「うるおい」と「やすらぎ」のある郷土づくりをめざして活動している岡山県郷土文化財団の充実強化を促進する。

(2)文化活動の促進
県民のさまざまな文化活動の一層の活発化をはかるため,国内外の優れた舞台芸術の公演等を積極的に招致するとともに,国際交流フェスティバルなどのさまざまな交流活動を展開し,多彩な芸術文化にふれ,鑑賞する機会の充実に努める。
特に,県立美術館においては,県内の美術館等の中核的施設としての役割が果たせるよう,多様なアート空間を巡る鑑賞ルートの提案のほか,展示品の充実に努めるとともに,それらを主体とする「岡山の美術」をはじめ,国内外の芸術をいつでも鑑賞できるハイビジョンギャラリーの拡充や美術図書コーナーを整備する。
また,各種文化活動団体やグループが練習や公演,展示などを行う活動拠点を整備するとともに,地域の芸術文化団体の発表の場としての県芸術祭の開催など発表機会の拡充に努める。
県民の多様な文化活動を促進するため,文化施設の積極的な利活用を促すとともに,市町村文化協会・文化活動団体や文化施設等の県域レベルでの連携強化をはかり,広域的な文化活動や伝統文化の継承,再生等を行う。
また,多彩な分野において優れた芸術家が育つ環境づくりとして,新進気鋭の芸術家,デザイナーなどの岡山県への招へいや文化奨励賞など顕彰活動の充実に努める。
さらに,文化の交流においては,地域間,世代間,国際間,そして異なるジャンル間の幅広い交流が求められていることから,県内外はもとより,海外も含めた幅広い文化交流を推進し,新たな地域文化を創造していく。
特に,国民文化祭の誘致を視野に入れながら,県民文化祭の開催についても検討するなど,文化交流の展開に努める。

(3)文化振興による地域づくり

1 文化交流拠点の形成
瀬戸内三橋時代を目前にして,中四国経済文化圏の中核にふさわしい文化性あふれる岡山をつくるため,文化性とアミューズメント性を兼ね備えた新しいタイプの都市型公園である倉敷チボリ公園や芸術文化性の高い公園であるグリーンヒルズ津山など,魅力ある個性を備えた拠点づくりをすすめ,広域的な文化交流拠点の形成をはかる。
また,歴史的,文化的に価値の高い文化財や文書等の情報を積極的に提供する博物館,文書館や郷土の先人を顕彰する記念館の整備,県民の文化活動の拠点形成をはかるほか,市町村による地域の個性あふれる美術館などの文化拠点整備を促進することにより,県内の文化拠点の形成に努める。

2 個性的なまちづくりの推進
魅力的な地域文化を創造するためには,生活空間のなかに文化的な環境を整備することも重要であり,歴史的な建物や町並み,美しい自然景観,文化施設の整備や新しい文化的なシンボルの形成など文化の視点から取組みをすすめることが必要となる。
このため,後楽園の整備充実やその周辺の整備をはじめ,伝統的な町並みの保存整備,美しい村づくりの推進などに取り組むとともに,市町村等が行う個性的な地域づくりを促進することにより,文化の香り高い個性的なまちづくりをすすめる。
また,環境と芸術との調和を取り入れた新しい岡山の文化的資産を創造するため,クリエイティブTOWN岡山事業などうるおいとやすらぎを享受できる文化的シンボルをもった魅力あるまちづくりをすすめる。

3 文化イベントの促進
県下各地において,音楽,演劇や伝統芸能などのさまざまな文化イベントの開催により地域づくりがすすめられている。
今後,歴史的建造物や高原,湖等自然空間を活用したユニークな演出による文化イベントを開催するなど,文化事業の活発化をはかり,地域文化の振興を促進する。


2 伝統ある地域文化の継承と振興

県下に受け継がれた貴重な文化遺産の保存,活用をはかるため,各種の調査研究を総合的にすすめ,その結果をふまえ,重要なものについては,文化財として指定するなど,歴史的建造物をはじめとする郷土の貴重な文化財の保存に努める。
県立博物館や吉備路郷土館,地域の博物館,歴史民俗資料館等の機能,内容の充実をはかるとともに,施設相互の機能の連携強化に努めて,企画展示,巡回展等の公開活動を積極的に推進する。
古くから伝わる伝統芸能,民俗行事,伝統工芸などの価値を見直し,現代の生活のなかで生かすとともに,それらのうち重要なものを文化財に指定するなどして保護に努める。また,神楽など無形の文化的所産は,次代を担う地域の青少年に受け継がれていくことが重要であることから,現状での記録を行うほか,それを活用して,学校教育や公民館活動,地域活動などあらゆる場を利用して,その伝承に努める。
埋蔵文化財については,岡山県古代吉備文化財センターを拠点として,状況に応じて記録保存のための調査を行うほか,文化財に対する啓発活動や文化財担当専門職員の研修の充実に努める。発掘調査によって出土した遺物は,それぞれの時代,地域における人びとの生活・文化を物語る貴重な歴史的資料であることから,これらの各地域への返還をはかり,適切に保存,公開,活用するための収蔵庫,展示資料館の整備を促進することにより,地域住民の文化財に対する理解と関心を高める。

3 行政の文化化の促進

行政のあらゆる施策を文化的視点ですすめていくために,職員の文化的資質の向上と意識改革をはかるともに,各種事業における文化的物差しとなるよう策定されている文化アセスメントの考え方をさらに充実発展させ,県民の文化意識の高揚をはかる。
また,特色ある本県の文化行政を総合的に推進していくために,市町村との連携をはかりながら,文化行政推進体制の充実に努める。

生涯学習

課題と施策の方向

生涯学習時代といわれる今日,より充実した人生をおくるため,生涯にわたって学び続けることが,いま,すべての人に必要となってきている。
このため,生涯学習推進施策を総合的に企画,調整する推進組織の整備や機能充実に努めるとともに,学習サービスの体系化をはかる。また,系統的な学習機会を広域的視点に立って提供する生涯学習大学を開設する。さらに,学習成果の評価についての研究をすすめるとともに人材活用の場の開発をはかる。
県民の自主的な学習活動を支援する指導者を養成し,人材バンクを整備するとともに,指導者,学習機会等の必要な情報を迅速,的確に提供する情報提供システムを構築する。
さらに,県立図書館をはじめ,博物館,青少年教育施設等社会教育施設の整備充実に努めるほか,地域住民の身近な学習の場である市町村の生涯学習センター,公民館,図書館,博物館等の整備を促進する。また,学習ニーズに適切に対応するため,各施設の特色を生かしながら生涯学習関連施設間のネットワーク化を促進する。
県民の自発的な学習を促進するため,生涯学習に関する啓発活動の充実や活動の場,指導者の紹介などの情報提供を通して,個人,グループ学習の奨励援助に努める。また,交流・集会活動は学習の意欲や継続性を高めるものであり,これらの活動を促進する。
地域で実施される諸行事に個人またはグループ,団体,学校などが積極的に参加し,連帯感と郷土愛を高めながら活動することは,学校,家庭及び地域社会の連携をはかり,豊かな地域社会を形成するうえで極めて重要である。このため,地域におけるボランティア活動を促進するとともに,各種団体などの活動が活発に展開できるよう,指導者の養成,確保に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

生涯学習の基盤整備

  • 学習支援システムの整備
    • 推進組織の整備と機能充実
    • 学習サービスの体系化と生涯学習大学の開設
    • 指導者の養成と人材バンクの整備
    • 情報提供システムの構築と学習相談体制の充実
    • 学習成果の評価と活用の場の開発
  • 学習の場の整備充実
    • 図書館,博物館等の整備充実
    • 青少年教育施設の整備充実
    • 生涯学習センター,公民館,コミュニティハウス等の整備
    • 学習施設間のネットワーク化の推進

学習活動の支援

  • 自発的な学習の促進
    • 啓発活動の充実
    • 個人・グループ学習の奨励,援助
    • 交流,集会活動の促進
    • 同和教育の推進 ※参照「同和対策」
  • 学習機会の拡充
    • 各種の講座・活動等の拡充
    • 学校の教育機能,生涯学習関連施設の開放促進
    • 放送大学,企業,民間教育事業者等との連携協力
  • 社会参加活動の促進
    • 青少年・成人等団体活動の活性化
    • 団体,グループ指導者の養成・確保
    • ボランティア活動の促進
    • 学校・家庭・地域社会の連携促進

1 生涯学習の基盤整備

(1)学習支援システムの整備
生涯学習推進施策を総合的に企画,調整する推進本部を設置するとともに,生涯学習推進施策に関する重要事項を調査審議する機関として,広範な分野の代表者等で構成する生涯学習審議会を設置する。市町村の推進体制についても,生涯学習のまちづくり推進事業等を通じて整備を促進する。
人びとが多様な学習サービスのなかから必要とするものを適切に選択できるよう,さまざまな領域やレベルの学習サービスの体系化をはかる。また,生涯学習推進センターを中核に,系統的,継続的なプログラムを備えた生涯学習大学を開設する。生涯学習大学は郷土理解,ボランティア,芸術,生活と福祉,環境と現代などのコースをもつ幅広い学習内容と現地での体験学習,実技などを重視した学習方法及び各部局,各種機関,施設等で行っている講座との連携等を特徴としたユニークなものとする。
県の生涯学習推進の中核施設である生涯学習推進センターにおいて,生涯学習の振興に携わる行政職員の資質の向上をはかるとともに,幅広い分野から人材を発掘・養成し,学習者,団体等の求めに応じて紹介,派遣等を行うことのできる人材バンクを整備する。また,生涯学習,図書館,学校教育に関する大量の情報を体系的に整理蓄積し,パソコン通信等により,迅速かつ的確に市町村,学校,県民等に必要な情報を提供するシステムを構築するとともに,学習相談体制の充実をはかる。
さらに,学習で身につけた知識,技術の適切な評価の方法について検討するとともに,活用の場の開発に努める。

(2)学習の場の整備充実
県立図書館を整備するほか,市町村立図書館の設置を促進し,全県的な図書館ネットワークシステムの構築をめざす。
青少年が家庭や学校では体得できにくい各種の体験的な学習を通して,社会性,協調性のかん養などをめざす青少年教育施設や,郷土の歴史や文化への関心や理解を深める美術館,博物館等の整備充実に努めるとともに,生涯学習時代にふさわしい新県立博物館の整備についても検討をすすめる。
また,地域住民の身近な学習施設である市町村の生涯学習センター,公民館,コミュニティハウス等の整備充実を促進する。
さらに,多様化,高度化する学習ニーズに適切に対応するため,県,市町村,民間等の生涯学習関連施設の専門的機能を生かしながらそのネットワーク化をはかる。

2 学習活動の支援

(1)自発的な学習の促進
子どもから高齢者まで,県民一人ひとりがそれぞれのニーズに応じて,身近なところで,幅広い分野にわたる学習活動に自発的に取り組めるよう,各種の学習啓発資料を作成提供するとともに,マスメディアを活用した啓発活動を促進する。在宅学習など個人やグループでの学習活動を奨励,援助するため,学習相談の充実をはかるとともに,通信教育や放送大学をはじめとした各種学習情報や図書,視聴覚資料等の提供に努める。
学校週5日制の拡大が検討されるなか,異年齢の青少年で構成した文化・科学,ボランティア活動等を行う地域サークルを育成し,学校外活動の充実を支援する。
また,女性の学習ニーズの多様化,高度化に対応し,新たな時代の女性のあり方や地域づくりについて認識を深めるため,女性の生涯学習総合推進事業等の実施により学習・交流活動の活発化を促進する。
さらに,長寿社会に対応して,高齢者が生きがいのある充実した人生をおくることができるよう,体験活動や交流活動を重視した高齢者向けの事業を充実させるとともに,生涯学習大学修了者等を対象にして,生涯学習支援指導者のグループを育成し,公民館等での生涯学習事業を支援する。

(2)学習機会の拡充
生涯学習は,社会のさまざまな分野での学習機会が整備されることにより一層充実していくものである。このため,ニューメディアを活用した講座や,勤労者の学習を支援するアフターファイブ講座等の開設を促進し,県民の学習機会の充実に努める。
さらに,余裕教室を地域住民のための身近な学習活動の場として活用するなど,学校の教育機能や施設の開放を促進し,幅広い学習の機会や場の提供に努める。特に,大学,短期大学等の高等教育機関との連携を深め,公的単位の取得のための科目等履修制度の導入,公開講座の開設,リカレント教育としての社会人の受入れなど,真に地域に開かれた学校となるよう,その促進に努める。
専修学校,各種学校は,社会の変化に対応できる専門的な技術教育を行う教育機関であることから,開放講座の開設をはじめ、施設のもつ教育機能の積極的な活用を促進する。
保健福祉施設,農林業関係施設,職業能力開発施設なども,生涯学習の機関として,その活用を奨励するとともに,これらの施設がもつ教育機能の地域への開放を促進する。
そのほか,県民に多様な学習機会を提供しているカルチャーセンター等の民間教育事業者や放送大学,企業などと学習情報,資料の収集や提供,指導者の養成,確保等について,必要に応じて連携・協力し,県民の学習機会の拡充をはかる。

(3)社会参加活動の促進
活力に満ちた明るい地域社会を形成するためには,人びとが地域社会の一員であることを自覚し,地域で実施されている文化活動,清掃・美化活動,奉仕活動等に積極的に参加し,連帯感や郷土愛を高めることが大切である。 このため,人びとが地域の団体,グループに加入して,積極的にボランティア活動などへ参加できるような環境づくりに努めるとともに,各種活動の企画,立案,実践などにあたる優れたグループ指導者を養成する研修の充実に努める。

学校教育

課題と施策の方向

これからの学校教育においては,一人ひとりを大切にした教育を推進し,心豊かで創造性に富み,社会の変化に主体的に対応できる資質をもった人づくりをすすめていくことが重要である。
このため,豊かな心をもち,たくましく生きる人間の育成をめざして,人間として生きていくうえでの基礎・基本を重視し,個性を生かす教育を推進する。
そのなかで,心の教育の充実をはかるとともに,新しい学力観に立った教育の充実に努める。また,国際理解教育,情報教育,環境教育,福祉に関する教育など時代の進展に対応した教育の推進をはかる。
さらに,学校,家庭及び地域社会における教育のあり方を見直し,これらの一層の連携をはかるとともに,地域に開かれた学校運営,学校相互の連携や交流の推進等に努める。
教職員については,強い意欲と情熱をもち,幅広い教養と深い専門的知識,優れた指導力,豊かな人間性を備えた人材の確保に努める。また,教職の全期間を通じて,適切な研修が受けられるよう研修体系や研修環境の整備改善に努める。
障害児教育については,適正就学の推進に努めるとともに,障害が多様化した対象児の実態に即した教育環境の整備充実,教育内容・指導方法等の改善充実に努める。また,障害のある児童生徒の社会性を養うとともに,障害者に対する社会の正しい理解と認識を深めるため,障害児と児童生徒や地域社会の人びととの交流の機会の充実をはかる。
高等学校教育については,生徒一人ひとりの能力・適性や多様な進路希望等に対応できるよう学校選択機会の拡充,学校規模・学科配置の適正化を推進し,高等学校の個性化や特色づくりをすすめる。
学校の施設・設備については,児童生徒の学習や生活の場としてふさわしい環境づくりや,地域の学習活動を積極的に支援する観点からの施設づくりに努める。
私学については,学校運営に対する支援を行い,特色ある教育の振興をはかる。

重要施策

(重要施策の体系)

教育内容・方法の改善充実

  • 一人ひとりを大切にした教育の推進
    • 心の教育の推進
    • 基礎・基本の徹底と個性を生かす教育の推進
    • 生徒指導・進路指導の推進
    • 健康・安全教育,体力づくりの推進
    • 同和教育の推進 ※参照「同和対策」
  • 時代の進展に対応した教育の推進
    • 自己教育力の育成
    • 国際化・情報化への対応
    • 環境教育の推進

教育体制・学習環境の整備

  • 幼児教育の充実
    • 幼稚園教育の充実
  • 障害児教育の充実
    • 障害児教育の推進
    • 特殊教育諸学校の整備充実
  • 高等学校教育体制の整備
    • 選択機会の拡充
    • 個性ある学校づくり
    • 学校規模・学科配置の適正化
    • 職業教育の振興
    • 定時制・通信制教育の充実
  • 学校施設・設備の充実
    • 特色ある施設づくり
    • 情報機器の整備充実
  • 私学教育の振興
    • 私学教育の充実

指導体制の整備充実

  • 優れた人材の確保
    • 教職員の確保と適正配置
    • 創意ある学校運営の推進
  • 教職員研修の充実
    • 教職員研修体系の整備充実
    • 研修環境の整備

1 教育内容・方法の改善充実

(1)一人ひとりを大切にした教育の推進
豊かな心をもち,たくましく生きる人間の育成をはかるため,学校教育においては,教職員と一人ひとりの児童生徒との人間的なふれあいを深め,家庭や地域社会との連携のもとに,地域とかかわる学習や体験的な学習なども取り入れながら道徳教育やボランティア教育などを一層充実させ,生命を尊重する心や他人を思いやる心,人や地域に奉仕する心など,豊かな情操や道徳性のかん養に努め,心の教育の充実をはかる。
また,児童生徒一人ひとりが個性豊かで意欲に満ちた人間形成をはかっていくために,基礎的,基本的な知識や技能等を身につけさせるとともに,個性を生かす教育を推進する。このため,教育活動全般を通じて基礎的,基本的な内容を重視するとともに,一人ひとりのよさを認め,個性や能力を引き出し,伸長させるような指導方法や指導体制の工夫改善をはかる。
いじめや学校不適応等の問題については,家庭や地域社会,児童相談所等関係機関と連携を深めながら教育相談体制の整備充実をはかるなど,解決のための取組みを一層充実する。さらに,各学校において,進路指導体制を整備し,計画的,組織的及び継続的に取り組むことにより,生涯にわたって自己実現をはかっていくことができるような進路指導の充実に努める。
生活環境が変化するなかで,豊かな生活を営むためには,体力の増進と健康,安全の確保が重要である。このため,学校での体育,スポーツ活動を充実し,体力づくりを推進するとともに,生涯にわたってスポーツを実践する能力,態度の育成に努める。また,保健,安全,給食に関する指導を通して,健康な生活習慣の確立をめざした健康教育の推進に努める。
同和教育については,社会教育との連携のもとに,各学校の同和教育の課題を明確にして総合的な推進をはかる。

(2)時代の進展に対応した教育の推進
これからの教育においては,児童生徒一人ひとりが社会の変化に主体的に対応できるよう,学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力などの資質や能力の育成を重視していく必要がある。このため,児童生徒が自ら課題を見つけ,自ら考え,主体的に判断したり表現したりして,よりよく解決することができるよう,体験的な学習や問題解決的な学習等を重視していく。これらの学習により,学習の仕方を身につけたり,学習の楽しさや成就感を体得することができる教育の推進に努める。
また,学校週5日制の拡大に向けての学校運営のあり方等について実践的な研究をすすめるとともに,学校,家庭及び地域社会が連携を深め,地域の特性を生かしたスポーツ・文化活動,自然と親しむ活動,地域の伝統文化を継承する活動など,学校内外を通じての児童生徒の生活の活性化がはかられるよう,その条件整備に努める。
社会の国際化がすすむなかで,学校教育では,多様な歴史,文化,習慣等をもった諸外国の人びとと協調しながら生きていくために必要な資質の基礎を培うことが求められている。このため,国際間の相互理解の重要性を認識し,我が国固有の文化や伝統を尊重する態度を育成するとともに,他国の歴史,文化,国民性等についての理解を深めさせるほか,外国人とのコミュニケーション能力の育成に努める。そのため,教職員や児童生徒の海外における生活体験の機会拡大をはかるとともに,外国人講師の招へいや留学生との交流等を積極的にすすめる。帰国子女の受入れについても,その体制の整備をはかる。
これからの学校教育においては,高度情報化社会に生きる児童生徒に必要な資質を養うとともに,情報機器の活用による指導方法の改善をはかるなど,情報化への対応をすすめていく必要がある。このため,教職員研修の充実,学習ソフトウェアの開発,整備,ソフトウェアライブラリーセンターの設置,民間の情報処理技術者等の活用などに努める。
環境に対する人間の責任と役割を理解し,環境保全に参加する態度及び環境問題解決のための能力を育成することが学校教育の重要な課題となっている。このため,各教科等における指導内容や指導方法の充実をはかる。

2 教育体制・学習環境の整備

(1)幼児教育の充実
幼児期は,人間としての基礎的な性格が形成されていく時期でもある。
幼稚園においては,幼児の生活の実情に即した教育内容を明らかにして,幼児が興味や関心をもっていきいきと活動し,その発達を促進するための充実した場となるよう,教育環境の整備充実に努めるとともに,教職員研修の充実をはかる。
また,幼稚園教育の振興計画を策定するとともに,入園を希望するすべての3歳児,4歳児及び5歳児が幼稚園教育を受けられるよう,各市町村の実態に配慮しながら,その就園を促進する。

(2)障害児教育の充実
障害児が,障害の状態等に応じた適切な教育を受けることができるよう,適正就学の推進に努める。また,障害児や障害児教育に対する正しい理解と認識を一層深めるために,特殊教育諸学校への体験入学や心身障害児理解推進校等の指定等を行い,学校や地域社会における理解,啓発の推進に努める。
さらに,早島養護学校及び岡山市に設置する新設養護学校に肢体不自由部を併設するとともに岡山養護学校の改築を行うなど肢体不自由教育体制の整備充実をはかる。
また,障害児の義務教育終了後については,本人の能力・適性,障害の状態等に応じた多様な進路が必要であり,労働,福祉,医療等の各専門機関と連携をはかりながら,特殊教育諸学校高等部の整備充実及び進路指導の充実に努める。高等部においては,職業教育等の一層の充実に努め,生徒の多様な能力の開発や職場開拓等を積極的に行うとともに,障害児をとりまく社会環境の変化や障害の重度,重複化等に対応した後期中等教育のあり方について検討をすすめる。
さらに,障害が重度化する一方で,学習障害児などに見られるように障害が多様化しており,教育内容,指導方法の研究・開発や教職員の指導力の向上等が急務となっている。このため,教職員研修の充実,指導資料の作成,吉備高原都市に整備をすすめている総合教育研修機関における障害児教育部門の整備充実をはかる。

(3)高等学校教育体制の整備
中学校卒業者の大部分が高等学校に進学し,生徒の能力・適性,興味・関心等が多様化するなかで,高等学校教育においては,生徒一人ひとりの個性の伸長をはかるとともに,社会の変化に主体的に対応できる資質や生涯にわたって学習する意欲,態度を育成することが大きな課題となっており,一層の多様化,弾力化をすすめるとともに,学校選択機会の拡大をはかっていく必要がある。
このため,多様な講座を幅広く開設し,生徒が自分に合った教科・科目を主体的に選択し,自らの進路を切り拓くことができる単位制の総合学科や,理数科,国際系学科など時代の変化に対応した特色ある専門学科の設置をすすめる。また,自校以外での学習成果の単位認定を導入し,選択履修の機会の拡充に努めるなど,特色ある教育の展開を行う。
普通科においては,各学校の個性化・特色づくりを積極的にすすめる。また,学区制等については,県立高等学校入学者選抜制度検討委員会の報告の趣旨を尊重し,その具体的な改善方策について,今後,検討,実施する。
さらに,生徒数の減少や生徒の多様化などがすすむなかで,高等学校の一層の個性化や特色づくり,学校規模・学科配置の適正化,中高一貫教育,全日制の単位制高校など,長期的な展望に立った教育体制のあり方について検討をすすめる。
職業教育については,基礎的・基本的事項を確実に習得することに加えて,体験的な学習や問題解決的な学習が大切である。このため,実際に問題を解決する体験の機会をできる限り拡充し,主体的に学ぶ意志,態度,能力を育成するとともに,新技術等新たな内容の習得については,企業の教育機能を活用するなど地域社会との連携をはかる。また,高等教育への継続教育を視点に入れながら,専門教育の充実をはかる。
定時制・通信制高等学校については,生涯学習の観点から,社会人など入学の動機や学習歴,生活実態等が多様な生徒の受入れに対応できるよう,単位制による履修システムを一層充実させる。

(4)学校施設・設備の充実
学校施設は,これまでの教室ごとに区切られた画一的・定型的な基本構造から,ティームティーチングや合同授業等弾力的使用が可能になるようオープンシステムの導入や多目的スペースの設置など,学習方法・指導方法の多様化に対応できる施設づくりを推進する。
また,学校は児童生徒の生活の場であり,やすらぎが得られ,愛着がはぐくまれる環境づくりがのぞまれる。このため,ふれあいを育てる広場的スペースの設置,緑豊かな屋外教育環境の整備など,ゆとりとうるおいのある豊かな生活環境としての特色ある学校施設づくりをめざす。
さらに,学校施設は,地域住民の生涯学習の推進に重要な役割を果たすという観点から,運動場や体育館のみでなく特別教室等についても学校開放ができる機能を整える。このため,開放に必要なクラブハウス等を小・中学校に整備するとともに,地域の特性や学校の実態等を勘案しつつ学校施設と社会教育,文化施設,体育施設等等との複合化を推進する。
また,社会の急激な情報化の進展に適切に対応し,情報や情報手段を主体的に活用していくためには,学校教育において,情報活用能力を育成する必要がある。
このため,コンピュータ教室の整備を促進するとともに,これと並行してコンピュータ等の機器の整備充実に努める。また,マルチメディアへの対応やネットワークの構築に向けて通信機器・回線の整備充実をはかる。
なお,非常災害時における児童・生徒の安全の確保をはかるとともに,地域住民等の応急避難所としての重要な役割を果たすため,校舎等の耐震性能を確保するなど防災機能の整備に努める。
小・中学校の統合などによる通学困難な児童生徒の通学条件を改善するため,スクールバス,スクールボートの整備をすすめ,必要に応じて寄宿舎の整備に努める。

(5)私学教育の振興
私立学校は,教育の重要な役割を担っており,独自の建学の精神と教育方針のもとに,特色ある教育を行っているが,長期的な生徒減少の影響により,経営面において厳しい環境に立たされている。一方では,国際化,情報化の進展,価値観の多様化など社会の急速な変化に対応した特色ある教育の推進が従来にも増して求められている。
各私立学校が長期的な見通しのもとに,自助努力による財政基盤の強化をはかりながら,外国語,福祉,芸術,スポーツなどのコース制・学科の設置など,私学ならではの活力に満ちた特色教育を推進するよう期待するとともに,これら特色ある教育の推進,保護者負担の軽減などのため,学校運営に対する支援を行う。
また,実務的な職業教育を行う専修学校,各種学校においては,多様化,高度化する社会の学習ニーズに的確に対応し,新たな時代を担う人材を育成するとともに,生涯学習の推進にも対応できるよう,教育内容の充実と高度化を促進する。

3 指導体制の整備充実

(1)優れた人材の確保
児童生徒の意識や生活行動が多様化している今日では,教職員として優れた人材を確保することが,従来にもまして重要になっている。特に,教育者としての情熱や使命感,児童生徒に対する教育的愛情,専門的知識,幅広い教養,実践的指導力といった資質能力を有した人材が強く求められている。
このため,岡山県の教育を担う教職員として有能な人材を確保するよう,採用候補者選考方法の工夫改善や勤務条件の改善に努める。また,広く社会一般からも,優れた知識・技術をもつ人材を活用するよう努める。
さらに,教職員一人ひとりが各学校の教育目標の実現に向けて,主体的,創造的に取り組むとともに,学校が組織体として総合的な教育力を発揮できるよう指導体制の工夫改善に努める。

(2)教職員研修の充実
教職員がそれぞれの教職経験に応じて,その資質能力の向上がはかられるよう,初任者研修や教職経験者研修などの経験年数別研修,管理職研修や生徒指導講座などの職能研修,各教科や特別活動などの教科領域別研修等の充実をはかる。また,教職の全期間を通じて各教職員が必要な研修を受けられるよう,総合的な教員研修体系の確立をはかる。
さらに,吉備高原都市に総合教育研修機関の整備をすすめ,こうした研修をより一層充実強化するとともに,情報教育や障害児教育の充実,さらには,当面する教育上の諸課題についての研究開発機能の強化等をはかる。
県農業機械教育センターについては,技術革新の進展や新たなニーズに対応できるようその整備をはかる。

青少年

課題と施策の方向

近年,一部の青少年に,忍耐力と持続力の低下,社会や未来への関心の薄さ,対立,かっ藤を生じることのない消極的な人間関係を好む傾向など,自立する力と社会性の弱さがみられるようになった。
青少年のこのような傾向は,大人たちの行動の反映でもあることから,大人も自己の果たすべき役割を問い直しながら,青少年自身の力を最大限に発揮させ,真に自立し社会性を身につけた青少年を育成していかなければならない。
青少年の自立の基礎は家庭であり,家庭における教育の重要性の啓発や共感に満ちた家庭づくりの支援をすすめる。
地域社会や職場では,各種活動・行事に青少年の積極的参加を促し,青少年の自主性を育て,共に支えあう豊かな社会づくりに努める。
学校では,一人ひとりの個性を尊重し,あらゆる教育活動を通じて,調和のとれた人間形成と社会の変化に主体的に対応できる資質の育成に努める。
ボランティア活動は,青少年の自立と社会性をはぐくむうえで極めて有意義であり,年少期から活動を体験させるとともに,意識啓発や情報の提供などの支援をすすめる。
また,青少年団体・グループの組織,連携の強化や指導者の養成に努め,広域交流を促すとともに,国際理解・交流・協力活動などの機会を充実する。
非行防止活動については,家庭,地域社会,学校,職場と関係団体・機関が密接な連携をはかり,啓発活動の活発化,補導・相談体制の充実強化を推進する。
社会環境の浄化については,啓発活動の充実,青少年保護育成条例の厳正な運用,業者への自主規制の働きかけなどに努める。

重要施策

(重要施策の体系)

社会的に自立した青少年の育成

  • 自立と活力のかん養
    • 共感ある家庭づくりへの支援
    • 地域社会,職場における青少年育成活動の推進
    • 学校における生徒指導の推進
  • 社会性の伸長
    • ボランティア活動の促進
    • 団体・グループ活動の支援
    • 国際理解・交流・協力活動の促進
    • 青少年施設の整備と活用促進
  • 良好な環境づくり
    • 非行防止活動の推進
    • 社会環境の浄化促進

1 自立と活力のかん養

(1)共感ある家庭づくりへの支援
家庭は,子どもの人格の基礎が形成される場である。家族と共に考え,悩み,働き,汗を流すことによって,家庭内に信頼,包容,容認といった関係が生まれ,子どもに明日への英気や自信を与えるものであり,このような共感ある家庭づくりをすすめることが重要である。
このため,家族と共に参加する事業や(社)青少年育成県民会議が行う家庭づくり運動などを推進するとともに,各種相談事業の実施,地域や企業内での講座や研修会の開催などにより家庭教育に関する情報や学習機会を提供する。

(2)地域社会,職場における青少年育成活動の推進
個人志向の強まりや生活様式の多様化により地域社会への帰属意識や連帯意識が希薄化しており,青少年をはじめ多くの人びとの地域活動への主体的な参加を促し,連帯を深め,共に支えあう地域社会づくりをすすめる必要がある。
また,学校週5日制の拡大に伴い,青少年が地域で過ごす時間はますます増加していくことが予想され,青少年の地域でのふれあいを促進する必要がある。
このため,日常的なふれあいを通して地域の人びととの連帯を深め地域ぐるみで青少年を育成する県民運動を盛りあげるとともに,青少年が参加する地域活動を促進する。
また,企業に対しては,ボランティア活動や地域活動などへの青少年の参加や企業施設の地域への開放などについて啓発をすすめる。
職業をもたない青少年についても地域で支えることができるよう,関係機関が連携して相談などに取り組む。

(3)学校における生徒指導の推進
学校教育においては,教職員と児童生徒とが人間関係を豊かなものとし,学校の教育活動の全体を通じて児童生徒一人ひとりの自立を促し,自己実現を援助する積極的な生徒指導を推進する。
特に,いじめ等の問題行動や不登校,高校中途退学等の学校不適応問題への適切な対応をはかるため,臨床心理士や校外の関係機関の協力を得ながら学校におけるカウンセリング機能の充実と生徒指導体制の確立に努める。
また,基本的な生活習慣や道徳性を養い,自らの行動を選択し決定することのできる児童生徒の育成をはかるため,家庭や地域社会との連携を強化するとともに学校の果たすべき役割を明確にし,児童生徒一人ひとりの個性の伸長に努め,特性等に応じたきめ細かい学習,生活,進路の指導を行う。
さらに,学校行事や部活動のほか,ボランティア活動や地域活動などへの参加を促進し,自主的,体験的な学習の充実に努める。

2 社会性の伸長

(1)ボランティア活動の促進
ボランティアの活動範囲は,高齢者や障害者などに対する福祉活動をはじめ,国際交流,地域活動,自然保護など,さまざまな分野に広がりを見せている。
これらボランティア活動は,青少年の自立と社会性をはぐくむうえで極めて有意義なものであることから,社会福祉や地域づくり活動などのボランティア体験の機会を積極的に提供する必要がある。
このため,関係機関・団体との連携をすすめるとともに,青少年のボランティア活動の重要性についての啓発や情報の提供,活動技術等の研修など積極的な支援を行っていく。

(2)団体・グループ活動の支援
核家族化や少子化が進行するなかで,協調性や社会性を備えた青少年を育成するには,青少年の団体やグループでの活動を活発にするとともに,このような活動への参加を促すことが重要である。
このため,青少年の団体やグループが主体的に企画実施する活動を支援するとともに,広域での交流活動や指導者研修の充実強化を積極的に支援する。

(3)国際理解・交流・協力活動の促進
広い視野と国際感覚をもって行動できる青少年を育成するため,近隣のアジア諸国を視野におきながら,青少年の海外派遣や外国青年の受入れなど国際交流の機会を拡充するとともに,青少年を中心とした国際交流の地域活動を定着していくことが重要である。
このため,青年海外派遣事業,外国青年受入事業などについて,より一層青少年の主体的な参加と参加機会の拡充をはかる。

(4)青少年施設の整備と活用促進
青少年が主体的,自主的に交流できる場として,県内3か所の「青少年の島」の活用促進をはかる。また,その他既存の施設についても,青少年の利用しやすいよう開館時間などの利用条件について検討を促すとともに,青少年施設の種類や内容等についての情報を提供し,利用促進をはかる。
さらに,青少年の新たな交流の場づくりについても検討をすすめる。

3 良好な環境づくり

(1)非行防止活動の推進
青少年の非行等の問題行動を防止するためには,温かい心のふれあいを基本に,家庭,学校,地域社会及び職場が密接に連携し,地域ぐるみで非行防止活動を展開していくことが重要である。
このため,温かい家庭環境の確立,地域の実情に即した非行防止対策を展開するほか,問題行動をおこさせない心の教育をすすめるとともに,非行防止意識の啓発を積極的に展開する。
また,地域における街頭補導等非行防止活動を効果的に行うため,地域の補導関係機関の活動の活発化をはかっていくとともに,隣県との連携のもとに広域補導活動を強化する。
さらに,青少年育成(補導)センター未設置地域については,関係機関や団体に対してセンター設立を働きかけ,全県的,広域的な体制づくりをすすめる。
問題行動等で悩みを抱えている親や青少年に対しては,適切な助言指導が行えるよう,各種研修会の内容充実に努めるとともに,民間機関も含めた相談機関の協力体制を整え,青少年相談員等の資質向上をはかる。また,青少年自身が相談員として活動できる制度についても検討する。

(2)社会環境の浄化促進
性を享楽的に扱った書籍等のはん濫や電話を利用した異性紹介の営業などが,青少年に有害な影響を与えている。
このため,家庭,地域社会,学校,職場等あらゆる場において,県民一人ひとりの自覚を促し,県民総ぐるみによる青少年健全育成活動を展開するとともに,関係法令を厳正に運用することはもとより,青少年に有害な影響を与える営業活動に対する規制を強化するなど,社会環境の浄化に努める。

第3 安全で調和のとれた地域づくり

1 調和のとれた県土づくり

自然

課題と施策の方向

自然は人間の生存の基盤であり,豊かな心をはぐくむとともに,明日への活力の源泉である。自然の精妙な生態系を破壊し,その回復力を超えた働きかけを行うことは,自らの生存基盤を脅かすことにほかならず,自然の仕組みの微妙なバランスを保全することが緊急の課題となっている。
かけがえのない郷土の自然を,先人の知恵をも受け継ぎつつ守るとともに,自然と人間との共生を確保しながら後世に引き継いでいくことは現代に生きる我々の重要な責務といわなければならない。
このため,優れた自然や生態系の確保,生物多様性の確保等に努めるとともに,各種の規制の的確な運用,環境影響評価の実施や景観に及ぼす影響への適切な配慮,自然保護協定の締結などを通じて,自然と調和した開発指導を行う。
また,河川改修や道路整備等の公共事業においても,多様な野生生物の生息環境の保全・復元に配慮するなど自然の保護に努める。
自然公園や里山,水辺等の身近な自然については,健全な生態系を維持・回復し,自然と人間との共生が将来にわたり持続的に確保できるよう,賢明な利用をはかる。
また,将来にわたり貴重なみどりの資源を確保していくことがますます重要になっていることから,「いつでも,どこでも,だれでも」みどりの自然に接し,その恩恵を享受できるような「みどり豊かな岡山」の創造をめざす。
熱帯林の伐採,酸性雨などいわゆる地球規模の自然環境問題については,岡山県も地球環境を共有する一員であるとの認識を基にして,自然環境保全のための国際協力施策の展開をはかる。
自然保護思想の展開にあたっては,県民一人ひとりの自然に対する認識を深めることが何よりも重要であり,ボランティア活動の充実,自然保護センターの活用,自然保護教育の推進等を通じて,自然保護思想の普及啓発に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

自然と人間との共生の確保

  • 自然の保護
    • すぐれた自然・生態系の確保
    • 生物の多様性の確保と野生動植物の保護管理
    • 自然と調和した開発指導
    • 保全地域の拡大
  • 自然の賢明な利用
    • 自然公園等の利用・管理
    • みぢかな自然とのふれあいの場づくり
  • みどりの保全・復元と創造
    • 緑化推進
    • ふるさとの森づくり
    • 森林保護の多角的推進
  • 地球規模の自然環境の保全
    • 種の多様性の確保
    • 自然環境保全国際協力の推進
  • 自然保護思想の展開
    • 普及啓発活動の展開
    • 自然保護センターの機能充実
    • 自然保護教育の推進
    • 自然環境情報の整備・提供

1 自然の保護

優れた自然環境や貴重な野生動植物の生息環境,健全な生態系などを確保するため,郷土自然保護地域等の指定を行うとともに,その適正な管理に努める。
特に,野生生物は歴史的遺産ともいえるものであり,再生不可能なものであるだけに,その多様性を確保するため種の分布等の状況に関する基礎的な調査を行うとともに,絶滅のおそれのある野生生物に関する保護管理対策をはかっていく。
野生鳥獣については,狩猟の適正化に努めるとともに,農林業や住民生活との調整に配慮しながら,鳥獣保護事業計画に基づく鳥獣保護区の設定,キジ等の放鳥や食餌木の植栽を行う。また,「岡山野鳥保護のつどい」の開催等により,愛鳥及び自然保護思想の普及に努める。
自然のもつ復元能力を超えた開発による森林の伐採や自然環境の汚染等は野生生物の種や個体数の減少をもたらし,生態系にも影響を与えるものとなるため,開発にあたっては,自然との調和を基として無秩序な開発を防止するとともに,自然の確保・復元に努めるほか,改変の影響を解消,軽減するための代替措置(ミティゲーション)を積極的に推進,誘導する。特に,大規模な開発については,環境影響評価により自然環境への影響を適正に予測し,影響を受ける動植物の適切な保護・増殖など具体的な保護保全対策への誘導をはかるとともに,県,市町村,事業者の3者で自然保護協定を締結し,その厳正な運用に努める。また,河川・海岸改修や道路整備等公共事業においても,自然環境や生態系に留意し,その保全や復元に配慮するなど自然の保護に努める。
また,優れた自然・生態系や郷土の好ましい自然景観の保全をはかる必要があるところから,重要な地区については必要に応じて岡山県郷土文化財団等の協力を得ながら,土地の買取りを含めた保全措置を講ずる。

2 自然の賢明な利用

県土の11%を占める自然公園については,豊かな自然環境の保全に配慮し,賢明な利用に努める必要がある。このため,利用施設の適正な配置による秩序のある利用の促進や,自然公園指導員等のボランティアとの積極的な情報交換による監視指導体制の確立をはかる。また,国立公園,国定公園,県立自然公園や中国自然歩道をはじめ,高原や渓流などの自然景勝地,文化財等を健全なレクリエーションや自然教育の場として活用するため,ネイチャートレイル(*)等の多様な整備を行い,その健全かつ適正な利用を促進するとともに,自然公園思想の徹底をはかるほか,現行の自然公園の保護,利用計画を見直し,美しい郷土の景観,歴史的自然環境の適切な保護,管理に努める。
なお,優れた自然環境が残り,貴重な動植物が生息する毛無山については,はるか22世紀を展望し,その貴重な自然環境の保全をはかるとともに,学術研究の場,体験型の自然保護教育実践の場等として活用をはかる。
地域の身近な自然を大切にするため,渓流や河川,海岸等の整備にあたっては,うるおいとやすらぎのある水辺空間の創出をめざすとともに,道路整備においても道路周辺の景観や生態系に配慮したエコロード(環境にやさしい道路)の整備等をすすめるほか,郷土自然保護地域等の賢明な利用のための整備を推進する。
また,野生生物の視点に立脚した干潟や湿原,小川などの保全や自然の復元・創出(ビオトープづくり)をすすめるとともに,ホタル,トンボ,メダカなどふるさとの生き物の生息環境の整備を推進する。
なお,温泉については,既存の泉源との調整を行いながら,健全な利用の促進に努める。

3 みどりの保全・復元と創造

みどりは,災害の防止,水源のかん養などの重要な役割を果たしており,市町村及び関係団体との連携のもとに,県土のみどりを守り,育て,増やし,「みどり豊かな岡山」づくりを推進する。
このため,緑化月間を設定し,ふれあい森林浴や緑化コンクール等県民参加による緑化運動を展開し,緑化思想の高揚をはかることなどにより,より広範で質の高い緑化への取組みを推進する。
また,地域住民の参加のもとに身近な緑地の造成や美しい森林の整備,ふるさとの森づくり等の事業を実施するとともに,地域のシンボルとなっている巨樹,老樹の保存をすすめる。公園,広場,街路,学校,河川等の公共的な施設については,それぞれの地域の特性を生かしながら,特色のある緑化をすすめ,個性あるまちづくりの推進に資する。
さらに,緑化運動を実践するボランティアや団体,緑の少年隊などを育成するため,新たにグリーンコーディネーター(緑化運動を推進する指導者)を養成,活用する。こうした多角的な取組みをすすめるため,緑化推進団体等の育成強化に努める。

4 地球規模の自然環境の保全

地球規模の自然環境保全施策をすすめるため,森林資源等の消費の節約,希少な野生動植物の捕獲や採取の制限,飼育や栽培,販売等の自粛,加工品の購入の自粛についての広報活動を展開するとともに,自然環境保全フォーラム,渡り鳥フォーラム等を開催する。また,主要地域における標識等の外国語併記をすすめるとともに,外国人を対象とした岡山県の自然とふれあい理解を深める研修会を開催する。
なお,外国からの研修員の受入れ等をすすめるとともに,自然環境保全団体等とも連携をとりながら,地球規模の自然環境保全の国際協力事業をさらに幅広く展開するための検討を行い,その推進をはかる。

5 自然保護思想の展開

市町村,自然保護団体などとの連携をとりながら,自然をテーマにしたイベントの実施やガイドブックの作成等の広報展開,グリーンコーディネーター等の人材育成や自然保護推進員等ボランティア活動の充実を通じて自然保護思想の普及啓発活動の強化をはかる。
特に,自然保護センターについては,その機能をさらに発揮させるため,親子観察会等の自然観察会の内容を一層充実させるとともに,自然保護センターと関係の深い動植物の県内の分布や生態の調査研究など研究推進・情報提供体制の強化をはかる。あわせて,希少鳥類の保護,調査研究等の観点から行っている国の特別天然記念物であるタンチョウの飼育,増殖体制を強化する。
また,自然保護セミナー等の研修会の開催やわかりやすい学校副教材の作成等を通じて,自然保護教育の一層の推進をはかる。
自然環境に関する適時的確な情報の把握を行うため,ランドサット撮影による映像等による自然環境に関する情報のデータベース化を検討する。

* ネイチャートレイル:自然散策路

土地

課題と施策の方向

土地は県民の生活や諸活動にとって不可欠な基盤であるとともに,その価値が主として人口・産業の動向,社会資本の整備状況その他の社会的経済的条件により変動すること等公共の利害に大きく関係する特性を有していることから,長期的な視点に立って,より一層,総合的かつ計画的な土地利用を推進していく必要がある。
このため,土地神話の打破,適正な地価水準の実現,適正かつ合理的な土地利用の確保を目標として,公共の福祉の優先など土地についての基本理念の普及啓発を行うとともに,保全すべきところと開発すべきところの明確な区分のもとに計画的な土地利用をはかる。
また,都市地域にあっては,土地の有効利用の観点から,所有から利用へと誘導するとともに,各種土地利用規制制度の適切な運用により,適正かつ安全な開発を指導する。
さらに,適正な地価水準の実現のため,引き続き国土利用計画法に基づく届出制度の的確な運用をはかるとともに,地価調査など公的土地評価制度の充実に努める。
また,真に県土の発展に寄与する土地政策の立案や事業の効率的実施をすすめるため,土地関連情報の整備,充実をはかる。

重要施策

(重要施策の体系)

土地対策の推進

  • 県土の保全と有効利用
    • 土地利用計画に従った利活用の推進
    • 低未利用地の利用促進
    • 適正な開発の誘導と安全性の確保
  • 適正な地価水準の形成
    • 土地取引規制制度の的確な運用
    • 土地評価制度の充実
    • 土地関連情報の整備

1 県土の保全と有効利用

(1)土地利用計画に従った利活用の推進
自然環境の保全をはかり,豊かで安定した均衡ある県土の発展をすすめるため,国土利用岡山県計画及び土地利用基本計画を基本とした各土地利用計画に基づき,保全すべきところと開発,活用すべきところを区分し,市町村と一体となって,土地の計画的な利用をはかる。国土利用市町村計画を未策定の市町村については,すみやかな策定を指導する。
また,社会資本の整備や秩序ある土地利用の誘導をはかるため,地方公共団体等による土地の先買い制度の活用について検討する。

(2)低未利用地の利用促進
県土の効率的利用をはかるため,都市の低利用地,干拓地などの未利用地については積極的な活用を促進する。
特に,市街地中心部においては,低層建築物の集合化や駐車場,工場跡地などの有効利用により,公園,緑地等の都市空間を創出し,快適で安全な都市づくりを推進する。
また,市街地周辺部においては,地価安定のためにも,市街化区域内農地の転用により,良質・低廉な住宅地を供給するなど土地の有効かつ適正な利用をはかる。

(3)適正な開発の誘導と安全性の確保
県と市町村が連携して乱開発についての情報収集や監視体制を強化するとともに,各種土地利用規制制度や県土保全条例などの厳正な運用により,その防止に努める。特に,蒜山高原などに見られる小規模な開発行為については,乱開発防止のための市町村のきめ細かい指導体制の確立を促進する。
また,県,市町村,事業者間での自然保護協定の締結や大規模開発についての環境アセスメントの実施などにより,環境への負荷の軽減をはかる。
特に,ゴルフ場開発については,河川流域内森林面積を基準に総量規制を引き続き実施し,真に地域の発展にたながるよう誘導する。
また,阪神・淡路大震災を教訓とし,既成市街地における土地利用の高度化と低未利用地等の有効活用によりオープンスペースを確保するとともに,緑地及び水辺空間を創出するなど災害時における被害の軽減,防止を考慮した安全で安心できる土地利用を推進する。

2 適正な地価水準の形成

(1)土地取引規制制度の的確な運用
地価の適正化と有効な土地利用をはかるため,国土利用計画法に基づく土地取引届出制度の的確な運用に努める。地価監視区域の指定を解除している県南部については,引き続き地価動向や土地取引の状況等を常時的確に把握し,再上昇の恐れが見られる場合には,速やかに監視区域の再指定を行うなど,監視区域制度の機動的かつ弾力的な運用をはかるとともに,金融機関等に対しては土地関連融資の適正化を促す。

(2)土地評価制度の充実
地価評価制度は,広く一般の取引価格の指標となるとともに,国土利用計画法に基づく土地取引の届出価格の審査基準,固定資産税評価額等の基準ともなっている。このため,国の地価公示や県が実施している地価調査など公的な地価調査制度の調査ポイントの増設などを行い,土地評価制度の一層の充実に努める。

(3)土地関連情報の整備
土地に関する施策の総合的かつ効率的な実施をはかるため,土地基本調査,国土調査,地価調査及び土地取引の実態,遊休地の状況,開発の動向などの調査をすすめるとともに,土地情報を総合的に管理し,土地利用計画をはじめとする各種計画の作成,県土の開発,保全等に活用をはかる。
さらに,県土の実態の把握と有効利用をすすめるため,引き続き地籍調査を推進する。

水資源

課題と施策の方向

岡山県は瀬戸内海特有の極めて雨量の少ない地域で,また水源を主に河川に依存しているため,降水量の多寡が水利用に大きな影響を及ぼすこととなる。
限られた水資源を有効に活用するためには,長期的展望に立って,水資源開発や合理的な水利用など総合的な水資源対策を推進し,安定的な水の供給をはかっていく必要がある。
調和のとれた県土づくりにダム等による水資源開発は不可欠である。このため,長期的展望のもとに,ダムの建設事業を計画的に推進する。あわせて,水没地域住民の生活の再建や周辺の非水没地域住民の生活の安定をはかるため,生活基盤の整備,地域経済の活性化など水源地域対策を積極的に推進する。
また,水資源のかん養,確保に重要な役割をもつ森林の保全,育成に努めるとともに,水辺環境の創造や水質の保全を一層推進する。
水道については,「岡山県水道整備基本構想」及び「岡山県広域的水道整備計画」に基づき,長期的な水需給の見通しのもとに水道水源の開発をすすめるとともに,岡山県広域水道企業団が行う広域的な水道用水供給施設の整備を促進する。また,合理的かつ効率的な水利用の徹底をはかるとともに,節水意識の高揚を県民に働きかける。
工業用水は,産業活動に欠かすことのできないものであり,質量ともに安定的に供給するため,「工業用水道施設長期改良計画(リフレッシュ21)」に基づき,計画的に老朽施設等の改良整備をすすめるとともに,水源の確保に努める。
また,渇水時における水利用の調整を効率的にすすめるための体制整備をはかる。

重要施策

(重要施策の体系)

水資源の確保

  • 水資源開発
    • ダム建設の推進
    • 水源地域振興対策の推進
    • 森林の保全・育成
  • 水道広域化の推進
    • 広域的水道整備計画の推進

水利用合理化の推進

  • 節水意識の高揚
  • 生活用水利用の合理化
  • 工業用水・農業用水利用の合理化
  • 水資源の多目的利用

渇水対策の推進

1 水資源の確保

(1)水資源開発
水需要の増大や渇水・災害時に対応でき,安定的な水供給を確保するため,有効貯水容量の大きい苫田ダムの建設を強力に促進する。また,柳井原堰,千屋ダム,三室川ダム,楢井ダム,竹谷ダム,河平ダムの建設を引き続き推進するとともに,ダム開発適地の調査など新規水源開発をすすめる。
ダムの建設にあたっては,水没地区の住民の生活再建や非水没地域の生活環境,生活基盤の整備等水源地域の振興対策を強力にすすめる。
特に,苫田ダムについては,水源地域対策貨別措置法に基づく整備計画事業を中心にして,奥津町地域総合振興計画及び鏡野町三地域整備計画に基づいた整備を行い,地域の振興をはかる。
その際,計画事業の実施に伴う両町の財政負担の軽減をはかるため,県は下流受益市町等とともに財政支援を行う。また,柳井原堰についても,下流受益市町と一体となって地域の振興対策に取り組む。
森林は,「緑のダム」とも呼ばれ,水資源のかん養,確保のうえで極めて重要な役割を果たしている。
このため,造林事業を積極的に推進するとともに,新規に水源かん養保安林を指定,整備するなど,健全な森林づくりを推進する。

(2)水道広域化の推進
開発される水源を有効に活用し,また渇水時にあっても安定した水を供給するためには,水系を越えた広域的,連携的な整備をはかる必要があり,水需給の見通しをふまえて「岡山県広域的水道整備計画」に基づき,岡山県広域水道企業団による水道用水供給事業の施設整備を促進する。

2 水利用合理化の推進

(1)節水意識の高揚
節水が新たな水資源を生み出すという観点から,節水意識の一層の高揚をはかり,県民一人ひとりが,水は有限で貴重な資源であるとの認識を深めていくよう努める。また,節水機器の導入を促すとともに,漏水防止対策として老朽化した水道配水管の計画的な更新に努める。

(2)生活用水利用の合理化
水洗トイレや冷却水,自動車の洗浄,樹木への散水等の用水は,再生処理水や雨水でも十分対応できることから,処理水の再利用施設の導入をすすめ,今後建設される大規模な公的施設や団地などにおいても,設備費やコスト,衛生上の問題等を考慮しつつ,雑用水の活用を促進する。

(3)工業用水・農業用水利用の合理化
岡山県は,臨海部に用水多使用型の工場が集積しているが,基礎資源型産業を中心に水の再利用がすすんでおり,その回収率は,全国平均を大幅に上回っている。
今後は,回収率の低い中小規模の事業所を中心に水の再利用,循環利用のための設備の導入,普及を促進するとともに,海水の淡水化の研究等をすすめる。
農業用水については,円滑な水利用調整や水管理をはかるため,かんがい施設の整備やパイプライン化による用水系統の再編等,水管理の合理化を推進する。

(4)水資源の多目的利用
水を利用した快適な環境の創造や水とのふれあいを求める人びとが多くなっている。
このため,各種のオープンスペースやレクリエーションの場などに,水とのふれあいの場として多様な水辺空間を創出するとともに,治水・親水機能をもつ河川環境の整備等に努める。あわせて,公共下水道の整備,河川浄化事業の実施,石けん使用の促進等,総合的な水質保全対策を今後とも積極的にすすめる。
また,本県の恵まれた水資源を有効に活用する観点から,ダム建設にあわせたダム式や渓谷の流水を利用した水路式の小水力発電所の建設を推進するとともに,開発適地調査を実施し,新たな小水力発電の開発に努める。

3 渇水対策の推進

平成6年の異常渇水では,県民生活や社会活動に大きな影響を受け,水資源の大切さを再認識させられたところである。
このため,平素から節水に努めることはもとより,いつ渇水に見舞われても対処できる対策を講じておく必要がある。
生活用水については,平素から県民の節水意識を喚起するとともに,渇水時においては,各家庭に対するきめ細かな節水の協力を呼びかける。また,プールの自粛や大口利用者への使用の自粛要請等を行うとともに,広域的水道施設を有効に活用し,市町村間の水の相互融通をはかる。
工業用水については,水の再利用,循環利用をさらに促進するとともに,渇水時に適切な対応ができる体制づくりに取り組む。
農業用ダムやため池については,農作物の成育状況,貯水量等の調査に基づき,水源状況を的確に把握し,市町村,土地改良区,水利組合等に対して農業用施設の適切な管理指導を行うとともに,利水関係者に農業用水の反復利用や地下水開発等を周知徹底し,水資源の有効な利用をはかる。
また,栽培技術指導を各農家に徹底することにより,渇水被害の防止と軽減をはかる。
さらに,三大河川の水の相互融通に向けたシステムづくりに取り組むとともに,現在水系ごとに設置されている渇水調整協議会において,渇水時における迅速かつ円滑な調整のためのルールづくりを行うなど,各利水者間の総合調整機能の強化をはかる。また,全県的な連絡組織である県渇水連絡協議会において,参加機関が連携して中長期的に渇水対策に取り組めるよう,対策の強化に努める。

治山治水

課題と施策の方向

県民の生命と財産を豪雨,台風等による災害から守り,県民一人ひとりが安全で安心できる生活をおくることができるようにすることは,豊かな生活を実現するための基本的な条件である。
このため,河川の改修,ダムの建設,砂防設備,治山施設や急傾斜地崩壊防止施設の整備等により水害,土砂災害を防ぐとともに,海岸保全施設の整備等により高潮,海岸侵食等に対処するなど,治水施設等の整備を積極的に推進する。
また,豊かな自然環境志向が高まっているおり,森林,河川,海岸等が有する自然豊かなオープンスペースに対するニーズに積極的に応えていく必要がある。
このため河川,海岸,渓流等の整備にあたっては,生物の良好な生育環境に配慮しながら,快適さ,豊かさが実感できる,うるおいとやすらぎのある水辺空間の創出をめざして地域と一体となって取り組む。

重要施策

(重要施策の体系)

山地,渓流,農地の保全

  • 山地の保全と活用
    • 治山対策の推進
    • 松くい虫の防除
    • 森林空間の多目的活用
  • 土砂災害の防止
    • 砂防事業の実施
    • 地すべり対策
    • 急傾斜地対策
  • 農地の保全
    • ため池等の整備と湛水防除の推進

河川,海岸の保全

  • 河川の保全
    • 河川改修の推進
    • 治水ダム,多目的ダムの建設
  • 海岸の保全
    • 海岸保全施設の整備
  • 児島湖
    • 環境整備

うるおいとやすらぎのある水辺空間の創出

  • 水辺空間の整備
  • 河川,海岸の愛護,美化運動の推進

1 山地,渓流,農地の保全

(1)山地の保全と活用

1 治山対策の推進
山火事,松くい虫被害等により荒廃した森林の復旧を積極的に推進するとともに,広葉樹の植栽や森林の崩壊を防止する治山ダムの建設をすすめるなど,災害の予防を中心とした治山・治水事業を推進する。また,林野火災の多発地帯では,道路沿線に防火樹林帯を整備する。

2 松くい虫の防除
松くい虫の防除については,公益的機能の高い松林の徹底保護と被害の拡大の防止をはかるため,保安林等の重要な松林を重点に薬剤散布や伐倒駆除など各種の防除対策をすすめる。
また,被害地については,広葉樹を中心とした樹種転換や抵抗性松の植栽など,地域の実情に応じた森林の再生をはかる。さらに,森林所有者や地域住民等の意識啓発に努め,被害木の早期除去や有効活用など自主的な防除活動を促進し,被害の早期終息をはかる。

3 森林空間の多目的活用
県下の水源地域や中山間地域,県南地域で指定している「美しい森林モデル林」において,それぞれの地域にふさわしい森林の整備とビジターセンター,キャンプ場等各種施設の整備をすすめ,県民が森林に親しめる空間を創出する。
さらに,県立森林公園や龍ノ口グリーンシャワー公園等において利用者による「森と親しむ会」の結成,森林インストラクター等による自然観察会の開催などを行い,広く県民の利用促進をはかる。

(2)土砂災害の防止
砂防事業については,上流域の荒廃による土砂流出の防止,人家や公共施設の多い都市近郊での土砂災害の防止を重点目標に実施する。危険箇所が県の中央部に集中している地すべり対策については,危険度の高い箇所から対策事業をすすめる。
急傾斜地については,がけ地に近接した箇所に人家が増加しており,がけ崩れの防止施設を整備する。あわせて,危険箇所の周知,予報警報機の整備,情報伝達体制や警戒避難体制の整備など,総合的な土石流対策をはかる。
また,山地関連部分については治山事業,農地関連部分については農業基盤整備事業等を重点的,計画的に実施し,県民の生命,財産の保全に努める。
また,地域の開発に対しては,岡山県県土保全条例等の厳正な運用により,開発計画と防災計画の整合をはかるなどして,開発行為に起因する土砂災害等の未然防止に努める。

(3)農地の保全
農地は,水源かん養,土砂の流失・侵食防止など,多面的かつ公益的な機能を有している。
災害を受けやすい農地や農業用施設を守るため,危険な箇所や老朽化し,機能低下した施設の点検に努めるとともに,緊急を要するものから重点的,計画的に整備をすすめる。
特に,農業用水の安定供給と県土の保全に資するため池については,防災ため池の建設を含め,その整備を推進する。
さらに,県南地域においては,周辺の都市化の進行に伴う立地条件の変化による湛水被害を防止するため,排水機や樋門などの排水施設の整備を推進する。

2 河川,海岸の保全

(1)河川の保全
吉井川水系では,本川下流部及び支川金剛川の下流部等の改修を促進するとともに,干田川,千町川等の改修を推進する。また,本川中流部及び上流部,吉野川,宮川等の改修を促進する。
旭川水系では,本川下流部の漏水対策の促進,旭川放水路である百間川及び支川砂川の改修を促進するほか,本川中流部,備中川等の改修を促進する。 高梁川水系では,本川下流部の漏水対策を促進するとともに,本川上流部,小田川等の改修を促進する。
その他の水系については,笹ヶ瀬川,砂川,倉敷川等都市河川の改修を重点的にすすめる。
また,ダムの建設については,現在建設中の苫田ダム,柳井原堰,千屋ダム,三室川ダム,楢井ダム,竹谷ダム,河平ダムの建設を引き続き推進するとともに,ダム開発適地の調査を行う。

(2)海岸の保全
堤防,護岸などの海岸保全施設について,周囲の景観との調和にも配慮しながら,大型台風や異常潮位による高波にも十分耐えられるよう,改良整備を推進し,背後地域の安全確保に努める。

(3)児島湖
児島湖は締切後40年近く経過し,都市化の進展に伴う生活雑排水等の混入により水質の汚濁が進行している。
このため,児島湖の水質を改善し周辺農地を保全するため,湖底に堆積した底泥のしゅんせつを積極的に推進する。
あわせて,しゅんせつ土の土捨場周辺になぎさの造成をすすめる。

3 うるおいとやすらぎのある水辺空間の創出

河川,海岸,港湾等の整備にあたっては,生物の良好な成育環境に配慮しながら,美しい自然環境の保全,創出に努め,うるおいとやすらぎのある水辺環境の保全と創造に向けた事業の展開をはかる。
河川の環境整備は,吉井川,宇甘川等において実施することとし,百間川については,その高水敷の有効活用をはかるため,河川公園としての整備を推進する。
砂防環境整備については,砂川,行者川等において実施し,遊歩道,水広場などの配置により,川とのふれあい,散策・休憩の場として活用する。
海岸については,南浦,唐琴,渋川,頭島,児島七区,田坪海岸等において養浜,植栽などの整備を行い,やすらぎと憩いの場を提供するとともに,海岸線のレクリエーション利用を促進する。
こうした整備に加えて,河川や海岸の愛護団体の育成をはかるなど,県民の主体的な取組みを促しながら,河川,海岸の愛護・美化運動を積極的に推進し,地域ぐるみの環境整備に努める。

2 災害への備え

震災

課題と施策の方向

平成7年1月17日の阪神・淡路大震災を契機に,地震災害に対する懸念が高まっており,これに的確に対応できる総合的な震災対策が重要な課題となっている。
震災は事前予知が困難なことから県民一人ひとりが自らの身は自ら守るといったことを基本とした自立型防災思想の普及・徹底,危機管理体制の整備,地震に強いまちづくりなど総合的な震災対策を推進し,防災力の向上をはかる。
自立型防災活動の促進については,地域社会の安全を確保するため,県民一人ひとりが震災に対する意識を高め,正しい防災知識をもとに行動することが極めて重要であり,自立型,災害回避型ライフスタイルの普及,啓発や自主防災組織の育成,強化等をすすめる。
危機管理体制の整備については,防災体制の整備・充実,広域応援ネットワークの確立,情報収集伝達体制の強化,救助・救急体制の整備に努める。特に防災機関の体制については二重,三重のバックアップシステムの構築や,防災活動拠点の整備をすすめる。
地震に強いまちづくりについては,地震に強い都市構造の形成,建築物の安全化,ライフライン施設等の機能の確保,液状化対策などの検討をすすめ,緊急性,重要性の高いものから重点的,集中的な整備に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

震災対策

  • 自立型防災活動の促進
    • 防災意識の高揚
    • 自主防災体制の整備
  • 迅速かつ円滑な震災対策への備え
    • 防災体制の整備・充実
    • 広域応援ネットワークの確立
    • 情報収集・伝達体制の強化
    • 救助・救急医療体制の整備
  • 地震に強いまちづくり
    • 地震に強い都市構造の形成
    • 建物,まちの不燃化・耐震化の推進
    • ライフライン施設等の耐震化の推進
    • 液状化等の地盤対策の推進

1 自立型防災活動の促進

(1)防災意識の高揚
地域住民自らが,常に災害に対する備えを怠らず,日頃から自主防災の意識をもち,災害が発生した場合,冷静に対処できるよう,自立型・災害回避型ライフスタイルについてのガイドブックなどを作成し,各種研修会,防災訓練などを通じて,防災意識の高揚,啓発に努める。

(2)自主防災体制の整備
自主的な防災活動を効果的かつ組織的に行うためには,身近な防災環境の点検整備を行うとともに,近隣協力体制の確立をはかる必要があり,自治会,町内会,婦人防火クラブなどの自主組織の育成に努める。
各事業所に対しては,安全に対する社会的責務の遂行と地域防災への積極的な参加を促す。
災害時において効果的なボランティア活動が円滑に行われるようボランティアニーズの把握や受入れ窓口としての総合的な体制を整備する。
国,県,市町村,事業所,ボランティア団体,住民が一体となった総合的な地域防災体制の確立をはかるために,全員参加の防災訓練を積極的に実施する。

2 迅速かつ円滑な震災対策への備え

(1)防災体制の整備・充実
震災に備えた防災体制の整備をはかるため,地域防災計画(震災対策編)を基本にして,地域の地震被害想定に基づいた具体的な防災対策の充実をはかる。
災害に対する初動体制を確立するうえで重要な役割を果たす県,市町村等防災機関の職員について非常時の参集体制の整備をはかるとともに,職員の動員が困難な場合を想定した訓練等の実施に努める。
また,県,市町村,警察,自衛隊等防災関係機関と住民が一体となった総合的な訓練を積極的に実施し,防災機能の強化をはかるとともに,それぞれの機関の実情をふまえ,必要に応じて応急活動のためのマニュアルを作成するとともに定期的に訓練を行い,活動手順,資機材や装備の使用方法等の習熟,他の機関等との連携等についての徹底をはかる。
地震等の大規模災害の発生に際しては,県域等を越えた広域での迅速・的確な救助・救急活動が必要となる。このため,災害時は,災害対策活動の拠点として機能し,平常時には防災に関する広報・啓発,教育訓練等のコミュニティ活動の場として機能する総合的な防災拠点の整備をすすめる。

(2)広域応援ネットワークの確立
大規模な災害発生時には,他県等との相互の連携体制が重要であるため,中四国地方の各県との災害時の相互応援協定により,医療職,技術職等の職員の派遣や被災者に対する食料,生活必需物資等の提供及び応急復旧に必要
な資機材の提供についての応援ネットワークを確立し,さらに,関西地方の隣県とのネットワークづくりもすすめる。また,消防の応援について近隣市町村による協定の締結を促進するなど,消防相互応援体制の整備に努める。
自衛隊との連携については,自衛隊の災害派遣活動が円滑に行えるよう,適切な役割分担をはかるとともに相互の情報連絡体制の充実,共同の防災訓練の実施等により連携体制を強化する。

(3)情報収集・伝達体制の強化
地震による被害が県,市町村等の中枢機能に重大な影響を及ぼす事態に備え,国,県,市町村及び公共機関は,それぞれの機関との連絡が相互に迅速かつ確実に行えるよう,情報伝達ルートの多重化及び情報の収集・連絡体制の明確化などの体制確立に努める。
また,機動的な情報収集活動を行うため,必要に応じ航空機,車両など多様な情報収集手段を活用できる体制やヘリコプターテレビシステム,監視カメラ等画像情報の収集・連絡システムの整備を推進する。
あわせて平成7年に完成した防災行政通信ネットワークの有効活用をはかり,地震災害に強い防災通信体制を強化する。
県民への情報伝達にあたっては,放送事業者,通信社,新聞社等の報道機関の協力を得るとともに,掲示板,広報誌,広報車等を活用して的確な情報を提供する。

(4)救助・救急医療体制の整備
県,市町村は,救助・救急活動のために必要な車両及び応急措置の実施に必要な救急救助用資材の整備に努める。
また,避難場所,避難路をあらかじめ指定し,日頃から住民への周知徹底に努めるとともに,高齢者,障害者,外国人等災害時において行動が制約されたり情報の伝達が困難となりがちないわゆる災害弱者を適切に避難誘導するため,地域住民や自主防災組織等の協力を得ながら,適切な対策を検討実施する。
県警察広域緊急援助隊のヘリコプター及びオフロード車を活用した迅速的確な救出救助体制の整備及び交通対策を推進し,装備資機材の一層の整備に努める。
交通管理対策の推進については,緊急輸送ルート等における交通情報の収集装置の整備をはじめ,迂回ルート等の交通情報を提供するための情報板,信号機等の耐震性向上をはかるほか,緊急交通路の交通規制を実施する。
救急医療については,負傷者が多人数にのぼる場合を想定し,消防と医療機関,医療機関相互の連絡体制の整備充実に努める。
また,地域の実情に応じて,災害時における拠点医療施設を選定するとともに,応急救護用医薬品・医療資機材等の備蓄を行うなど,災害発生時における救急医療体制の整備に努める。
食料,飲料水及び生活必需品等の調達,供給については,物資の性格に応じ,集中備蓄又は避難場所の位置を勘案した分散備蓄を行う等備蓄の方法や住民による2~3日分の食料等の備蓄など総合的な検討を行い,円滑な供給が行われるように計画する。

3 地震に強いまちづくり

(1)地震に強い都市構造の形成
国,県,市町村は,避難路,避難地,延焼遮断帯,防災活動拠点ともなる幹線道路,都市公園,河川,港湾など骨格的な都市基盤施設の整備及び土地区画整理事業,市街地再開発事業等による市街地の面的な整備や公共施設の耐震化,不燃化,水面・緑地帯の計画的確保,防災に配慮した土地利用への誘導等により,地震に強い都市構造の形成に努める。

(2)建物,まちの不燃化・耐震化の推進
災害時の救援活動の拠点や避難所となる国や地方公共団体の庁舎,学校,病院等防災上重要な建築物の不燃化,耐震化をはかる。また,現行の耐震基準(昭和56年施行)以前に建築されたものについては耐震診断の実施に努め,必要に応じ改修を行う。
一般建築物についても不燃化,耐震化について広く県民の認識を深めるための普及,啓発に努める。特に,劇場,百貨店等不特定多数の者が集まる建築物で,現行の耐震基準以前のものについては,その所有者又は管理者等に対し,耐震診断,耐震補強等の実施について指導を行う。

(3)ライフライン施設等の耐震化の推進
国,県,市町村及びライフライン事業者は,上下水道,工業用水道,電気,ガス,電話等のライフライン関連施設等の耐震性の確保をはかるとともに系統多重化,拠点の分散,代替施設の整備等による代替性の確保をすすめる。
また,国,県及び市町村は,関係機関と密接な連携をとりつつ,ライフライン共同収容施設としての共同溝,電線共同溝の整備を促進する。

(4)液状化等の地盤対策の推進
国,県,市町村及び公共・公益施設の管理者は,施設の設置にあたっては,地盤改良等により液状化の発生を防止する対策や液状化が発生した場合においても施設の被害を防止する対策等を適切に実施するほか,大規模開発にあたって十分な連絡,調整をはかるものとする。
また,個人住宅等の小規模建築物についても,液状化対策に有効な対策工法等の普及をはかる。

風水害

課題と施策の方向

風水害に対しては,災害にかかる情報の迅速・正確な伝達体制の整備はもとより,家庭や職場のレベルから集落や市町村レベル,さらに広域レベルまで,住民や防災関係機関が協力して効果的な活動ができる強固な防災体制を確立しなければならない。
このため,情報連絡体制の整備をはかるとともに,河川情報センターの情報等を迅速かつ正確に把握し,的確に分析し,関係機関等へ伝達する体制を確立する。
また,県民一人ひとりの防災に対する正しい理解と的確な対応が防災活動の基礎であることから,防災講演会等により意識啓発をすすめるなど,地域に応じた防災教育や防災訓練を通じて,その意識を高める。
消防団を中心とした地域防災組織の充実など,地域における防災体制をより強固なものにするとともに,防災関係機関や市町村間相互の連絡,応援体制の充実をはかり,広域防災体制の整備に努める。
これらにあわせ,災害に際して県民生活や産業経済への影響を最小限に抑えるため,迅速な復旧対策のための体制整備をはかる。
農作物の安定した生産をはかるためには風水害対策は重要な課題であり,このため,農業気象情報を適時的確に農業者に伝えるとともに,生育予測等をもとにした農作物の栽培技術対策を策定し,生産現場での迅速かつ的確な技関指導に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

風水害に対する備え

  • 防災体制の強化
    • 情報連絡体制の整備
    • 防災意識の向上
    • 防災活動の充実強化
  • 復旧体制の強化
    • 応急復旧対策
    • 災害復活事業
  • 農林業被害対策
    • 気象情報の提供及び被害対策技術指導
    • 農地等被害対策
    • 共済・保険制度の活用

1 防災体制の強化
雨量,水位等の観測伝達システムである水防テレメータシステムについては,気象台や建設省の広域的な観測システム,将来予測システムとの有機的連携を強化し,県全体の情報ネットワーク化の研究をすすめる。
さらに,県防災行政通信ネットワークの利活用をはかるとともに,市町村防災行政無線の整備を促進し,地域住民の安全を確保する。
また,土砂災害に対しても,災害時における迅速な危機管理に資するための予警報システムの整備をすすめる。
県民一人ひとりの防災意識の向上をはかるため,防災講演会や防災パネル展等の防災啓発活動を積極的に展開するとともに,平素からマスメディアを活用し,普及啓発に努める。
重要水防区域,土砂災害危険箇所及び落石等危険箇所については,標識の設置等により現地で県民に注意を喚起することはもとより,洪水氾濫危険区域図,土砂災害危険区域図などの防災パンフレットや市町村,防災関係機関の広報紙等を通じ,広く県民への周知徹底をはかる。
市町村において,避難場所及び避難手段の確保や水防資機材の備蓄などの防災対策をすすめるとともに,自主防災活動の推進をはかるため,婦人防火クラブの育成や町内会等を中心とした自主防災組織の育成強化をはかる。
あわせて,大規模な災害に際して広域的な防災活動が展開できるよう,市町村や防災関係機関相互の情報伝達方法,応援方法の確立,資機材の備蓄状況の把握等,災害時における協力体制を整備するとともに,国,県,市町村,警察,消防,自衛隊,報道機関等関係機関と住民が一体となった防災訓練を広域規模で実施する。
さらに,災害危険箇所は,出水期前等定期的にその状況を点検・確認し,必要に応じて応急対策を施すなど,各管理者による安全管理に万全を期する。

2 復旧体制の強化
応急復旧対策を迅速に行うため,県や市町村において応援要員を派遣するとともに,水害現場における輸送,交通手段の確保や通行規制等のため,警察,自衛隊等関係機関との連絡調整を密にし,連携して応急復旧をすすめる体制を強化する。
また,災害復旧事業には優先的に資材,人員を投入できるよう,関係機関の執行体制の弾力的な運用,さらには関係機関相互の応援体制の確立に努める。

3 農林業被害対策

(1)気象情報の提供及び被害対策技術指導
農業気象情報の適時・的確な提供をすすめるほか,生育予測等をもとに農作物の栽培技術対策を樹立し,関係機関を通じて情報提供を行い,生産現場での迅速かつ的確な技術指導をはかる。

(2)農地等被害対策
被害を受けやすい農地や農業用施設を守るため,危険な箇所や老朽化し,機能の低下した施設の整備を推進するとともに,果樹について防風網等の設置を推進する。

(3)共済・保険制度の活用
暴風,大雨などの異常気象による水稲,果樹等の被害に備え,農業共済制度の普及啓発を行うとともに,共済事業への加入を促進する。
また,植林した森林については,風水害及び林野火災等を対象とした保険への加入を促進する。

コンビナート災害

課題と施策の方向

石油コンビナート地区では石油類をはじめ危険物や高圧ガスが大量に取り扱われており,事故災害の未然防止と事故発生時の拡大防止が重要な課題である。
このため,防災対策の基本となる岡山県石油コンビナート等防災計画に基づき,学識経験者の協力なども得ながら,防災行政機関,事業所が一体となって防災体制,事故防止体制の強化に努める。
県や倉敷市等の防災行政機関においては,危険物施設等に対する厳格な許認可や保安指導を行うとともに,防災体制の強化に努める。
コンビナート事業所では,安全の確保を最優先とした自主保安体制の充実をはかり,事故事例をふまえた設備の改善や高度な運転制御システムの導入等に努め,事業所自衛防災隊や共同防災隊の活動体制が常に実践的なものとなるよう見直すとともに,資機材の整備充実に努める。
また,コンビナート事業所におけるプラント単位での各種訓練,隣接事業所等と合同で行う共同防災訓練,防災関係機関が参加した総合防災訓練等を定期的に実施し,技能の向上や相互の連携強化をはかる。
コンビナートにおける事故件数は減少傾向にあるが,コンビナート内で発生した事故は,例え小さな事故であっても大災害につながるおそれがあることから,「安全はすべてに優先する」との基本理念のもとに,コンビナート事業所はもとより,防災関係機関が一体となって一層の防災対策を推進する。

重要施策

(重要施策の体系)

防災対策の推進

  • 自主保安体制の強化
  • プラントの安全対策の強化推進
  • 保安教育・防災訓練等の推進
  • 石油コンビナート等防災計画の推進

(1)自主保安体制の強化
コンビナートにおける事故件数は減少傾向にあるが,今後とも,「安全はすべてに優先する」との基本理念のもとに,プラントの特性に応じた安全対策の推進をはかる必要がある。
このため,コンビナート事業所においては,保安管理組織が常に効果的に機能し,プラントの運転管理や設備管理が適切に実施されるとともに,事業所全般の保安レベルが向上するよう自主保安体制の充実強化をはかる。

(2)プラントの安全対策の強化推進
新増設時にセーフティーアセスメントを実施し,プラントの大型化・複雑化等の対応も含め安全面に十分に配慮するほか,運転監視・制御システムの高度化や各種防災装置等の増強を行う。さらに,早期異常診断や新検査技術等,高度な設備管理技術を導入し,厳格な設備検査の実施と的確な設備の寿命予測により予防対策の充実をはかる。

(3)保安教育・防災訓練等の推進
プラント初動班や自衛防災組織の活動体制を充実強化するとともに,事故発生現場において共同防災組織や防災関係機関が一体的に活動できるよう防災体制の整備に努める。また,事業所,防災関係機関が保有する消防車両や消火薬剤等の防災資機材は,計画的に更新・増強等を行い,常に十分な機能を発揮できるよう整備する。
事故の原因究明については,必要に応じて学識経験者の協力を得て実施するとともに,その結果をふまえ,再発防止対策の徹底をはかる。
オペレーター等に対する保安教育は,段階的かつ分野ごとのきめ細かな教育を実施することが必要であり,現場での実践的な教育に加えて,シミュレータ等教育専用施設を活用した高度な教育の推進に努める。
また,防災訓練については,事業所は,プラントごとに通報伝達・応急措置訓練を実施するとともに,模擬プラント等を活用した実践的な訓練を実施するほか,防災関係機関が共同で地域住民の参加を得て総合防災訓練を実施する。

(4)石油コンビナート等防災計画の推進
阪神・淡路大震災を教訓とし,施設の耐震点検により必要な場合は耐震補強等の対策や広域防災体制の充実等,防災計画に基づく震災対策を行うとともに,定期的に内容を修正し,その推進に努める。

災害救助

課題と施策の方向

災害救助活動は,阪神・淡路大震災により,その重要性が改めて認識された。
大規模災害にも対応できるよう,県,市町村の災害救助対策を早急に確立する必要がある。
このため,公設救助隊の到着までの間の住民等による救出活動のための条件整備をはかるとともに,救助隊の迅速かつ円滑な救出・救助活動体制,傷病者搬送体制の整備に加え,大規模災害時においても傷病者に対して必要な医療サービスを継続できる体制を確保するため,医療機関の耐震化や医薬品,ライフラインの確保対策をすすめ,さらに,医療活動の総合調整を行い災害時の医療機関の活動を支援する体制を整備する。
また,迅速で安全な避難をはかるため,避難訓練の実施等により避難地や避難所設置予定場所等を地域住民等に周知徹底する。
大規模災害発生時に住民や事業所等が自ら食料,飲料水,生活必需品を確保できるよう自主防災意識の啓発に努め,また,食料や生活必需品を確保するための備蓄体制,近隣各県,市町村の広域的な応援体制を整備する。
高齢者,障害者等のいわゆる災害弱者が,情報把握や避難等を迅速,適切に行い,できる限り自立した避難生活を過ごすことができるよう,災害弱者への防災知識の普及と緊急時の連絡体制等を整備するとともに,医療と福祉とが連携して避難生活の支援を行う体制を整備する。

重要施策

(重要施策の体系)

災害救助

  • 緊急救命活動
    • 救助体制の整備
    • 災害医療体制の整備
  • 被災者の安全の確保及び緊急支援
    • 避難及び避難所の設置・運営
    • 食料・飲料水等の確保
    • 救援物資の受入れ・配分
  • 住宅応急対策
  • ボランティアの受入れ
  • 災害弱者への対応

1 緊急救命活動

(1)救助体制の整備
災害発生時において消防機関や警察等の防災機関が迅速に出動し,必要に応じて適切に自衛隊等に出動要請する体制を整備するとともに,これら救助機関相互が密接な連携のもとに活動できる体制を整備する。また,住民等により救出活動が迅速かつ適切に行われるよう,住民等の災害救助についての意識を喚起し,知識や技術の修得を支援するとともに,住民の身近な町内会等に災害救助用資機材等を整備する。

(2)災害医療体制の整備
大規模災害時には多数の傷病者の発生が予想されるが,道路の損壊や渋滞により救急搬送に支障が生じ,あるいは,医療機関自体が被災して医療サービスの提供を継続できなくなること等が考えられることから,傷病者を適切な医療機関へ迅速に搬送し,必要な医療サービスを適切に提供できる体制を整備する必要がある。
このため,医療機関の被災状況等の情報を迅速に収集・提供して,傷病者の搬送先と医療機関相互の協力調整の必要性を確認できる災害医療情報システム及び緊急搬送のためのヘリコプターの確保体制を整備する。
さらに,災害時には,消防機関,医療機関,保健所等が行う傷病者搬送及び医療協力等について,県医療本部及び地域医療本部を設置して調整を行い,医療活動を支援するとともに,緊急車両の優先通行道路を確保する。
また,災害時においても医療機関が医療サービスを提供できるよう,医療施設・設備等の耐震化やライフラインの確保対策をすすめる。医薬品等については,災害医療拠点病院において備蓄をはかるとともに,流通段階等からの調達により確保できる体制を整える。
さらに,災害医療についての医療従事者研修を行うとともに,県民に対して災害医療や応急手当についての知識の普及啓発を推進する。

2 被災者の安全の確保及び緊急支援

(1)避難及び避難所の設置・運営

1 避難
市町村において,避難計画を作成し,円滑な避難ができるように努める。特に,高齢者,障害者,乳幼児等避難時に介助を要する災害弱者の避難対策については,地域住民に対し,災害時における弱者支援についての啓発に努める。

2 避難所の設置・運営
平素から避難所設置予定施設を指定し,その周知をはかるとともに,災害発生の際の迅速な設置及び生活物資の確保体制の整備をはかる。
避難所の運営については,地区住民の参加のもとに避難所運営についてのマニュアルを作成し,避難者の自治組織を中心に運営する体制を整える。
また,避難所として使用した施設を本来の利用に復する場合の方法についてもあわせて規定しておく。

(2)食料・飲料水等の確保
住民や事業所等において食料,飲料水や生活必需品を備蓄し,非常持ち出しの準備をしておくとともに持病薬等の特別の医薬品等についての確保方法を各自で確認しておくなど,平素からの備えをしておく必要がある。そのため,住民,事業者等に対して,平素からの備えを呼びかけ,自主防災思想の普及啓発に努める。
また,震災時等において,食料及び生活必需品の円滑な調達と供給をはかるため,県,市町村において適切な備蓄を行うとともに,大手流通業者等との協力協定や近隣各県,市町村との広域的な応援協定の締結をすすめ,必要に応じて被災地域外の市町村や県外から迅速に調達できる体制を整備する。
飲料水については,供給に必要な資機材の整備をすすめるとともに,近隣の市町村や県と応急給水のための資機材等の調達や要員の応援についての協力協定を締結する。
さらに,被災状況や被災者のニーズ等を迅速に把握するとともに,食料等の供給にあたっては,特に,高齢者,乳幼児,病人等の災害弱者や医療機関に対して配慮する。

(3)救援物資の受入れ・配分
全国各地から届けられる大量の生活必需品等の救援物資を円滑に受け入れ,避難所や自宅で避難生活する被災者に確実に配付できる体制の整備に努める。

3 住宅応急対策
被災住民の生活基盤となる住宅については,仮設住宅の供給,公営住宅への一時入居を行うとともに,県内で確保できない場合に備え,広域的な協力体制を整備する。
また,被災住宅の応急修理を支援するとともに,地震災害の場合においては被災住宅等の危険度判定を行い,余震による二次被害の防止に努める。
これらの支援措置を円滑にすすめるため,関係団体等との協力体制の確立をはかる。
さらに,住宅応急支援窓口を設置して,住宅等の応急復旧に関する指導,助言等や仮設住宅等への入居のための情報提供等を行う。

4 ボランティアの受入れ
大規模な災害時には,ボランティア活動が効果的かつ円滑に行われるよう,日赤岡山県支部や社会福祉協議会等の関係機関・団体と連携を保ちながら,現場のニーズの的確な把握とボランティア申出者の受付け,あっせん,調整等を行う。
また,専門の技能や知識を有する専門ボランティアや現場において判断し,活動できるリーダーが必要となるため,災害に対応した各種のボランティアの技能や知識を生かしたボランティア活動が十分に行えるよう,医師,看護婦等専門ボランティア及び一般ボランティアの研修,養成,登録の推進に努める。

5 災害弱者への対応
災害弱者の状況を平素から把握し,それぞれの状況に対応する防災知識の普及をはかるとともに,緊急時に備えて災害弱者及びその保護者等との連絡体制,状況の確認方法等の整備,把握に努める。また,地域住民の協力,応援を得て速やかに避難できるよう,地域における自主的な防災組織の整備と住民への啓発に努める。
また,保健・医療・福祉が連携して災害弱者の避難生活の支援を行えるよう災害対策本部に災害弱者対応の専門班を設けて対応し,特に介護を要する被災者について適切な医療介護環境の整った施設へ二次避難をはかる。
社会福祉施設においては,平素から施設・設備の点検整備,防災教育・訓練の実施等防災対策の充実に努める。

3 安全なくらしのために

環境保全

課題と施策の方向

都市・生活型の公害や地球温暖化等,今日の環境問題の多くは一人ひとりの日常生活や事業者の事業活動に起因しており,こうした問題を解決するためには,社会を構成するすべてのものが環境に対するそれぞれの責任と役割を理解し,資源・エネルギーの一層の効率的利用や再生利用をすすめるなど環境への負荷の少ない社会づくりの実現に向けて自主的行動を起こしていくとともに,これらの課題に積極的に取り組み,安全で快適な環境を保全していかなければならない。
このため,環境教育などの普及啓発活動を展開するとともに,県民,民間団体,事業者が自主的に行う環境への負荷を低減する取組みを促進する。
また,開発等による環境への影響を事前に予測評価し,必要な対策を講ずる環境影響評価制度については,今後とも適切な運用を行うとともに,その充実をはかる。
現在のライフスタイルや社会経済システムを見直し,廃棄物の発生を抑制し,再生利用するなど,「循環型の社会」の形成をめざす。また,深刻化している廃棄物の処理問題については,処理施設や最終処分場の整備などを計画的にすすめる。
建設工事に伴って発生する建設副産物の多くは安全で再利用が可能な資源であり,岡山県建設副産物対策基本計画(おかやまリサイクルプラン21)に示された再利用率の目標達成に向け,関係者が一体となって建設副産物のリサイクルを推進するとともに,再利用が困難な建設副産物の適正処分の徹底をはかる。
地球規模での環境問題については,地域レベルにおける足もとからの取組みをすすめるとともに,開発途上国との技術者の相互交流の促進などにより国際環境協力を推進する。
また,省エネルギー対策の一層の推進をはかるとともに,太陽光発電などのクリーンエネルギーの導入を促進する。
公害対策については,工場,事業場に対して,規制,指導の徹底のほか,有害化学物質による汚染の未然防止施策を推進するとともに,生活排水対策をすすめる。自動車公害対策については,現状及び将来予測をふまえて,具体的かつ実情に即した対策を推進する。
景観については,身近な自然や町並みなどの景観に対する意識の高揚をはかるほか,瀬戸内海などの地域の特性を生かした景観形成を推進する。
清流の保全については,長期的な視点に立って総合的,計画的な取組みを行う。
児島湖の環境保全については,下水道の整備,生活排水対策の積極的な推進などにより水質浄化に努めるとともに,周辺地域を含めてうるおいのある環境として整備するための基本計画を策定する。
瀬戸内海の環境保全については,汚濁物質の総量規制や窒素,燐の削減により水質保全をはかるとともに,生態系の維持や水質浄化にとって貴重な機能を有する自然海浜等の保全に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

安全で快適な環境づくり

  • 環境への負荷の少ない社会づくり
    • 環境基本計画の策定,推進
    • 環境教育,啓発の推進
    • 環境保全活動の促進
    • 石けん使用推進県民運動の展開
    • 環境影響評価の充実
  • 循環型の社会づくり
    • 廃棄物の発生量の抑制,適正処理の推進
    • 廃棄物の減量化,リサイクルの推進
    • 公共関与による産業廃棄物最終処分場の建設促進
    • 建設副産物処理対策の推進
  • 地球環境の保全
    • 地球環境保全対策の推進
    • エネルギーの有効利用
    • 国際環境協力の推進
  • 生活環境の保全
    • 大気の保全
    • 水質の保全
    • 騒音,振動,悪臭の防止
    • 自動車公害対策の推進
    • 生活排水対策の推進
  • 快適な環境づくりの推進
    • 景観形成の推進
    • 清流の保全
    • 児島湖の環境保全
    • 瀬戸内海の環境保全
  • 健康被害予防対策の充実
    • 公害苦情の適切な処理
    • 公害保健対策の充実

1 環境への負荷の少ない社会づくり

(1)環境基本計画の策定,推進
環境保全施策は,従来からの排出規制などの規制措置のみならず,環境影響評価や経済的措置,環境教育・環境学習,県民,事業者等の各主体の自主的活動の促進など,広範多岐にわたっている。また,水,大気,土壌などの個別の環境媒体ごとの施策や,人の健康の保護,生活環境の保全,自然環境保全といったこれまでの枠組みを越えた,環境を総合的にとらえる施策を講ずることが必要となっている。
このため,環境保全施策を総合的かつ効果的に推進するための「環境基本計画」を策定し,多種多様な施策の有機的な連携を保ちながら,県民,事業者,行政の協働による環境保全施策を推進する。

(2)環境教育,啓発の推進
県民の環境問題への理解と認識を深め,人と環境との共生について責任ある行動を身につけていくための環境教育・環境学習を推進するとともに,環境フェアの開催や各種情報媒体を活用した普及啓発活動を展開する。
特に,次世代を担う子どもたちに対しては,学校教育やこどもエコクラブ(*)などと連携し,早い時期から環境保全意識の醸成をはかるための環境教育を推進するほか,地域における環境保全活動を推進するためのリーダー育成に努める。

(3)環境保全活動の促進
県民や民間団体が自主的に参加する地域でのリサイクル活動,生活排水浄化活動や環境美化活動などが活発に行われるよう,環境情報の提供,指導者や助言者の紹介などの支援を行うとともに,行政と住民が一体となって取り組むことのできるシステムづくりに努める。さらに,事業者自らが環境保全のための方針や計画を策定・実行して,結果を監査する環境管理システムの普及等を通じ,事業者が自主的に取り組む環境への負荷の低減のための具体的な行動を促進する。
また,県自らも,資源・エネルギーの有効利用や廃棄物の減量など,環境への負荷を低減するための取組みを率先して実行する。

(4)石けん使用推進県民運動の展開
自然や生活環境への影響が少ない洗剤として「石けん」の使用を推進するため,引き続き,石けん・クリーンネット使用実践地区の指定をはじめ,石けん販売協力店の設置,石けん使用推進キャンペーン等を実施する。また,食用廃油の有効利用等を目的とした粉石けんづくりを普及するため,粉石けん製造機の導入促進,石けん使用推進リーダーの設置等により石けん使用推進県民運動を積極的に展開する。

(5)環境影響評価の充実
各種開発事業の実施が環境に及ぼす影響について,事前に予測評価を行うことにより,環境汚染の未然防止及び自然環境の保全をはかるため,環境保全に関する環境影響評価制度の効果的運用をはかるとともに事後管理の徹底を推進する。
さらに,環境影響評価制度については,条例化によってその充実をはかる。

2 循環型の社会づくり

(1)廃棄物の発生量の抑制,適正処理の推進
県民,事業者等に対し,普及啓発や指導を行うとともに,廃棄物の不法投棄や不適正処理の防止の徹底をはかるため,県下に配置された廃棄物適正処理推進員によるパトロールの強化や各地方振興局に設置されている廃棄物適正処理のためのプロジェクトチームの活動をより一層推進する。特に産業廃棄物にあっては,事業者が産業廃棄物の流れを自ら把握・管理することのできるマニフェスト(管理伝票)システムの徹底などにより,事業者,処理業者等に対し,指導監督の強化をはかる。
また,廃棄物の適正処理体制の維持確保のため,一般廃棄物にあっては廃棄物の減量化,リサイクルを考慮することに加え,熱エネルギーの有効利用にも配慮した廃棄物処理施設等の計画的な整備と,産業廃棄物にあっても地域の環境等に配慮した処理施設の整備の促進を指導する。

(2)廃棄物の減量化,リサイクルの推進
「循環型の社会」を形成するため,廃棄物の減量化,再生利用の促進等に努める。
一般廃棄物については,県民,行政,事業者等関係者が密接な連携をはかりながら,分別収集体制の整備や住民団体等による集団回収活動,事業者による資源回収への取組みなど減量化・リサイクルの推進をはかる県民運動を展開する。
産業廃棄物については,多量排出事業者に対し,処理計画の策定について積極的な指導を行うとともに,排出された廃棄物の資源化・再生利用等に関しても,情報の収集と提供をはかる産業廃棄物情報バンク制度の効率的な運用をはかる。

(3)公共関与による産業廃棄物最終処分場の建設促進
産業廃棄物の最終処分場については,安全性確保と必要性の認識を深めるため,公共関与による処分場の建設を推進し,リサイクル,減量化施設も併設するモデル的な産業廃棄物処理施設を各地方振興局に1か所を目標に順次整備する。

(4)建設副産物処理対策の推進
建設副産物の発生抑制を考慮した工法,資材の採用をはかるとともに,処理方法に応じた分別の徹底,破砕,焼却,脱水,乾燥等による減量化を推進する。また,コンクリート塊,アスファルト・コンクリート塊,建設汚泥等の現場内利用及び他工事での活用によりリサイクルを推進する。
建設発生土の再利用については,建設発生土の需給に関する情報の活用による工事への流用を促進するとともに,情報交換体制の充実をはかるため土量情報のデータベース化の検討を行う。
また,建設発生土の受入れ地として建設残土センターの整備をすすめる。さらに,再資源化施設の活用によるリサイクル推進のため,再資源化施設に関する県独自の認定制度の確立をはかるとともに,融資制度の活用による再資源化施設の整備を促進する。
建設廃棄物のうち再資源化できないものは,最終処分場等における埋立処分を指定し,不法投棄等の防止の徹底をはかる。

3 地球環境の保全

(1)地球環境保全対策の推進
地球温暖化問題は,人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼす恐れのある重大な問題である。
県としても,地域レベルにおける責任を果たすべく,地球温暖化防止のための地域推進計画を策定し,地球温暖化の原因とされる二酸化炭素等温室効果ガスの排出量の抑制をはかるための施策を推進する。
また,成層圏のオゾン層を破壊するフロン対策としては,岡山県フロン回収等推進会議を通じて,本県の実情に応じたフロン回収システムの確立をはかるとともに,市町村等に対してフロン回収機の購入経費の一部を助成する。
さらに,工場,事業場に対しては使用,排出の抑制指導を推進する。
世界的に森林や湖沼などの生態系に大きな被害を与えている酸性雨,酸性霧については,県下における実態を把握するため,今後とも継続監視に努める。

(2)エネルギーの有効利用
石油など化石燃料の利用は,二酸化炭素や窒素酸化物,硫黄酸化物などの排出により地球環境に影響を与えており,また,埋蔵量に限りある資源の有効利用をはかる観点からも,省資源国民運動岡山県推進会議の一層の活用により,夏季,冬季を中心とした普及啓発活動や公共交通機関の利用促進等による省エネルギー運動の推進をはかる。
また,環境への負荷の少ない新しいエネルギー資源の開発,利用のため,太陽光発電やごみ発電システムなど,新エネルギーの実用化に向けて検討をすすめるとともに,水資源を有効に活用する小水力発電についても,新たな建設を推進する。

(3)国際環境協力の推進
県内に蓄積された環境保全技術・情報を開発途上国の環境の保全に活用する技術者の相互交流を促進する。このため,国際環境技術交流フォーラムを設置し,県民,企業,大学,行政の協働による相互交流体制の整備をはかる。
さらに,フォーラム内において,中国・江西省等における国際環境技術協力プロジェクトの実施について検討する。
また,地球環境問題と国際環境協力の重要性について県民の意識の高揚と啓発をはかるため,継続的に「国際環境協力市民講座」を開設する。
あわせて,国際環境自治体協議会との連携や他自治体との協力のもとに,開発途上国における森林の保全等ボランティア活動の機会を県民に提供するなど,地球環境問題への意識の高揚及び開発途上国との相互理解の促進に努める。

4 生活環境の保全

(1)大気の保全
大気環境の状況に応じた監視体制を整備し,大気汚染監視テレメータシステムによる環境大気の常時監視及び環境大気測定車等による環境測定を行うとともに,大気汚染等情報システムを整備し,大気環境に関する情報の県民への適時,適切な提供に努める。
また,工場,事業場については,発生源監視テレメータシステムによる常時監視,立入検査等による監視指導の徹底をはかる。
大気中の未規制有害物質については,健康に対する影響を未然に防止する観点から,監視体制を強化するとともに,当該有害物質の有害性や大気環境からの検出状況に応じて,工場,事業場に対する排出規制や企業の自主的取組みの支援等の排出抑制対策を推進する。

(2)水質の保全
公共用水域及び地下水の監視・測定を行い,汚濁の状況を把握するとともに,環境基準の達成・維持のため,特定事業場の立入検査を強化し,特に総量規制対象事業場に対しては,総量規制基準の遵守を徹底する。
環境基準の設定がない水域にあっては,関係市町村等の協力を得て環境基準類型あてはめを行い,利水目的にあった水質を確保することとする。
河川等の水質測定を地域住民等が自ら行うことは,水質浄化意識を向上するうえで有効な手段であることから,専門的な知識を必要とせず,だれにでも簡単にできる方法を用いた「身近な川の健康診断」を全県的に普及する。
未規制有害物質については,産業の多様化に伴い,種類,量とも増加の傾向にあることから,公共用水域及び地下水の汚染状況,事業場等の使用実態等を把握するとともに,排水処理施設の適正管理指導等排出抑制に努める。
ゴルフ場等で使用される農薬については,水質汚濁を未然に防止するためゴルフ場等の排出口及び公共用水域において調査を行うとともに,適正使用を徹底する。

(3)騒音,振動,悪臭の防止
騒音,振動,悪臭にかかる規制地域の追加指定を行って発生源対策をすすめる。
騒音の環境基準の類型指定については,これまで指定してきた都市計画法に定める用途地域に加え,用途の定まっていない地域についても市町村の意向をふまえつつ指定の拡大をはかる。
また,岡山空港周辺及び山陽新幹線沿線地域において騒音にかかる環境基準の達成状況を把握するため,継続監視に努める。

(4)自動車公害対策の推進
自動車公害の現状把握,将来予測等を行い,その結果等をふまえて,低公害車の普及など具体的かつ実施可能な施策を計画的に推進する。

(5)生活排水対策の推進
生活排水対策が特に必要な地域として,これまでに岡山市をはじめとする10市町村を生活排水対策重点地域に指定しており,関係市町村と協力しながら,「生活排水対策推進計画」にそって,生活排水処理施設の整備や生活排水対策の啓発を推進する。また,水質環境基準が保たれていない水域等を対象に必要に応じ指定の拡大をはかる。
さらに,県下全域において県,市町村が一体となって下水道を整備するほか,地域の実情に応じて農業集落排水施設,合併処理浄化槽等の生活排水処理施設の整備を促進する。また,市町村が行う生活雑排水対策事業の推進をはかる。
今後さらに生活様式の高度化がすすむなかで,良好な水質を保全するため,県民一人ひとりのライフスタイルの問題として意識の啓発をはかり,家庭での発生源対策,地域における実践活動等を推進する。

5 快適な環境づくりの推進

(1)景観形成の推進
豊かで変化に富んだ自然や歴史的遺産,町並みのたたずまいなど,岡山の優れた景観を次の世代へ引き継いでいかなければならない。
このため,県民の誇りとなる景観を有する地域を「景観モデル地区」に指定するなど,きめ細かな景観誘導を行う。
また,公共事業における指針である「公共事業等景観形成基準」の積極的な活用をはかるとともに,大規模行為の届出指導などにより,地域の特性を生かした景観形成をすすめる。
さらに,県土の主要景観を構成する瀬戸内海の景観形成のため,沿岸市町とともに,「瀬戸内海景観形成指針」の積極的な活用をはかっていく。

(2)清流の保全
県下の三大河川をはじめとする河川等の清流を将来にわたって保全していくため,「岡山県清流保全総合計画」において目標として設定した「望ましい清流像」の実現に向けて,森林など水をはぐくむ流域の保全に努めるとともに,下水道,合併処理浄化槽等の施設を整備し,生活雑排水対策を実施して,清らかで安全な水の保全に努める。
また,多自然型川づくり等により,水辺自然環境,水辺空間の保全と創造に努め,水辺を多様な動植物が生育できる環境にし,人びとが水とふれあうことができるようにする。さらに,環境教育情報の提供や県民の意識啓発を行い,住民,事業者の日常生活や事業活動のなかでの実践活動を推進する。
ダム湖の水質浄化対策推進協議会や県境河川水質保全対策連絡会議を有効に運営して水質の浄化をはかる。

(3)児島湖の環境保全
児島湖の水質を計画的に改善するため,「児島湖に係る湖沼水質保全計画」(第3期)を策定し,流域下水道の整備を着実に推進するとともに浄化用水導入事業等を実施する。さらに,「児島湖流域環境保全対策推進協議会」を中心に,児島湖に対する流域住民の関心を高め,流域内の水質浄化実践活動を強力に推進する。
また,「岡山県児島湖環境保全条例」の適正な運用をはかるとともに,水辺環境整備基本計画を策定し,児島湖を憩い親しめる湖として再生・創造していく。

(4)瀬戸内海の環境保全
瀬戸内海の環境保全については,「瀬戸内海の環境の保全に関する岡山県計画」に定められた水質汚濁防止等の各種施策を積極的に推進する。
瀬戸内海の水質汚濁を防止するため,平成7年度に策定した「第4次化学的酸素要求量に係る総量削減計画」に基づき,工場,事業場に対する規制の徹底や下水道,合併処理浄化槽等の整備による生活排水対策の推進により,汚濁負荷量の総量削減をはかる。
海域の富栄養化防止については,窒素及び燐に係る環境基準の類型あてはめを行うとともに,平成7年度に策定した「第4期燐及びその化合物に係る削減指導方針」や「第1期窒素及びその化合物に係る削減指導方針」により,燐及び窒素の削減対策を推進する。
藻場,干潟や自然海浜は,生態系の維持,水質の浄化にとって重要な役割を果たしており,この保全に努めるとともに,特に,「自然海浜保全地区条例」により指定をしている自然海浜については,条例の趣旨の徹底に努める。
なお,瀬戸内海環境保全知事・市長会議等を通じて構成メンバーである沿岸府県市との連携をはかりながら,瀬戸内海の広域的課題への取組みを推進する。

6 健康被害予防対策の充実

(1)公害苦情の適切な処理
快適な生活環境を維持し,公害紛争の未然防止をはかるため,市町村が行う苦情処理に積極的に協力し,早期解決に努めるとともに,関係機関と密接な連携をはかりつつ,公害苦情相談員,公害監視員等による迅速かつ適切な苦情処理を行う。

(2)公害保健対策の充実
公害健康被害の補償等に関する法律に基づき,公害指定疾病被認定者に対し補償給付を行うとともに,公害健康被害者の健康回復とその保持増進をはかるため,公害保健福祉事業を実施し,公害健康被害補償制度の適正な運営に努める。

*エコクラブ:小中学生の自主的な環境保全活動クラブ

消防

課題と施策の方向

安全で安心できるくらしの基盤を築くためには,火災などの災害の発生を防止し,身近な安全環境を確保するとともに,消防や救急など県民を災害から守るための機能を強化することが不可欠である。
現在,県下の消防は,14消防本部及び78市町村の消防団によって支えられているが,震災等の大規模災害が発生した場合,常備消防には限界があり,消防団や婦人防火クラブ等の自主防災組織の活用が重要な課題となる。このため,地域住民の防災意識の高揚をはかり,その協力体制のもとに,高齢者や障害者等の災害弱者を火災等から守るための防災ネットワークの確立に努めるとともに,自主防火管理体制の整備をすすめる等により,災害防止や災害時における安全確保に努める。
また,危険物や高圧ガス設備にかかる特殊災害を防止するため,設備の実態に即した合理的な事故防止対策を推進するとともに,一層の自主保安の徹底をはかる。
また,高速道路網の整備に伴い,高圧ガスや石油等の危険物質の輸送量も増加の傾向にあり,事故防止対策と災害応急対策の充実をはかる。
液化石油ガスは,便利な家庭用燃料として県下の約8割の家庭で使用されており,保安の確保は重要な課題である。このため,販売事業者の保安サービスの充実と集中監視システムの普及など保安の高度化を促進する。
これらの災害の発生を防止することとあわせて,災害から県民を守るため,地域の実情に応じた消防施設設備の充実強化や消防団の活性化をはかる。さらには,大規模災害等に備えて航空消防防災体制を整備するとともに,広域消防応援体制の確立をはかるなど,消防体制の充実強化に努める。

重要施策

(重要施策の体系)

消防体制の充実強化

  • 火災の予防
    • 予防の啓発
    • 高齢者,子ども等を守る防火安全対策の推進
    • 防火安全管理体制の推進
    • 林野火災対策の推進
  • 特殊災害の予防
    • 危険物保安対策の強化
    • 高圧ガス防災対策の強化
    • 液化石油ガス保安対策の推進
    • 火薬類保安対策の推進
  • 消防力の強化
    • 航空消防防災体制の整備充実
    • 広域消防体制の整備充実
    • 救急救助体制の整備充実
    • 消防施設設備の充実強化
    • 消防学校教育訓練の充実
    • 消防団活性化の促進

1 火災の予防

火災の発生を防止するとともに,火災発生時の早期通報,初期消火,安全避難などの一連の初期活動が円滑に行われるためには,平素から住民の防火意識の高揚をはかることが最も大切である。このため,春,秋の全国火災予防週間等において,防火パレードや巡回広報等の火災予防運動を積極的に展開するとともに,各種の講習会や研修会を通じて地域における防火意識の高揚に努める。
特に,高齢者や子ども,障害者等の災害弱者を火災等から守るため,地域住民の協力体制のもとに,市町村,消防機関及び自主防災組織等による防災ネットワークの確立や防災知識の普及に努める。また,緊急通報システム,ファクシミリによる消防機関等への緊急通信体制の一層の整備促進をはかるとともに,災害時等の情報伝達・避難誘導方策のあり方について検討をすすめるほか,火災発生や拡大を未然に防止するための防火診断を積極的に実施するなど,防火安全対策の充実に努める。
都市部においては,高層建築物の増加等から都市型災害の防止が重要であり,不特定多数の者が利用する百貨店,スーパー,ホテル,病院等については,消防用設備等の適正配置と定期点検の実施などを指導するとともに,各種講習会を実施することにより自主防火管理体制の中心となる防火管理者の養成と資質の向上をはかり,防火安全管理体制の推進に努める。
県南部の林野火災に対処するため,入山者等に対する火災予防意識の啓発を行うとともに,特に,多発期においては,セスナ機,広報車による広報宣伝や森林巡視パトロールを強化するなど予防対策を重点的に実施する。また,林野火災用資機材や防火水槽等の整備をはかり,初期消火体制の強化に努めるほか,林野火災多発地帯における道路からの出火を防止するため,道路沿線に防火樹林帯を整備する。

2 特殊災害の予防

近年ますます複雑,多様化する危険物や高圧ガス施設にかかる事故を防止するため,コンピュータやシミュレータを活用した運転管理・設備管理技術の向上等,設備の実態に即した保安管理技術の向上をはかり,安全運転機能の高度化や設備の老朽化対策を推進するとともに,認定事業所制度による自主検査制度の充実等,保安対策の強化をはかる。
また,高圧ガスや石油等の危険物質の輸送については保安講習や一斉路上点検の実施等により,安全運転や輸送基準の徹底をはかるとともに,万一の災害発生時に備えた緊急措置マニュアルや関係事業所の応援出動体制の整備,防災訓練の実施等により,輸送安全対策の強化をはかる。
家庭用液化石油ガスの事故を防止するためには,適切な消費設備を設置するとともに,正しい取扱いを周知することが必要である。そのため,保安優良事業者制度の推進等により,保安の担い手としての液化石油ガス販売事業者を指導し,消費者保安サービスの向上をはかる。
また,今後の高齢化社会の進展や独居老人の増加等にかんがみ,万一取扱いを誤っても事故にならないような安全機能を備えたガス器具や,電話回線等を通じてガス漏れ等の異常を常時監視する集中監視システム等の普及を促進し,ソフト・ハード両面にわたる安全対策を推進する。
火薬類の保安確保のため,取扱者に対する定期的な保安講習を実施し,保安意識の向上と知識・技能の向上をはかるとともに,ダイナマイト等の産業火薬については,飛石防止等の安全対策と盗難や不正流出防止等の保管管理の徹底をはかる。また,打ち上げ花火等の煙火については,打ち上げ従事者はもとより,花火大会の主催者に対する保安講習や消費場所への立入検査等を実施し,保安基準の徹底や遠隔点火等の安全技術の導入を促進し,事故防止の徹底をはかる。

3 消防力の強化

近年,災害の態様は複雑,多様化,大規模化の傾向にあり,これらに対処するための消防力の強化が急務となっている。
このため,岡山市が導入する消防ヘリコプターが県下全域において円滑に運航できるよう航空消防防災体制を整備し,災害時における情報収集,重度傷病者の緊急搬送,林野火災等に適切に対処するとともに,その運航状況を見ながら体制のあり方についても検討する。
また,小規模消防本部の再編統合や建部町,加茂川町の消防常備化を含め,地域の実情に応じた今後の常備消防体制のあり方について検討をすすめる。あわせて,「岡山県消防広域応援計画」を策定し,「岡山県下消防相互応援協定」の実効性を高めるとともに,全国の消防機関からなる「緊急消防援助隊」との整合性をはかりながら,近県との応援・受援体制の確立をはかる。
さらに,交通事故の増加傾向,高齢化の進展,疾病構造の変化等から救急救助活動は増加傾向にあるため,医療機関との連携を密にして,計画的な救急救命士の養成,高規格救急自動車の増強,ヘリコプターの活用等,救急救助体制の整備充実に努める。
消防施設設備については,地域の実情に応じた消防ポンプ自動車や耐震性貯水槽などの消防水利等の整備充実に努める。
消防学校においては,消防職員や消防団員の資質の向上をはかるため,社会情勢の変化に対応した教育訓練を実施する。特に,救急科については,国の動向をみながら標準課程の導入をすすめる。また,地域住民の自衛意識の高揚と自主防災活動の実効性を高めるため,その中心となる自主防災組織,自衛防災組織のリーダーの育成に努める。
消防団は,地域における火災の予防や風水害の防ぎょ等広範な活動を行っており,大規模災害時においては,極めて重要な役割を担っている。近年,団員数の減少や高齢化等の問題を抱えているため,住民への広報等により,青年,女性の入団を促進する。また,各種団体との連携強化,教育訓練,設備の充実等をはかるとともに,企業に対し,消防団活動への理解と協力を求める等により,その活性化に努める。


主題:
快適で活力あふれる岡山づくり
第5次岡山県総合福祉計画 No.3
162頁~245頁

発行者:
岡山県

発行年月:
平成8年4月

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