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みんなが参加しともにあゆむ21世紀をめざして

山口県障害者福祉長期ビジョン

No.3

第7節
文化・スポーツ・交流
~うるおいのある人生を~

 文化・スポーツ活動に取り組んだり、さまざまな人々と交流することにより、人生をうるおいのあるものにすることができます。
 文化・スポーツ活動や交流は、障害をもつ人々の社会参加やリハビリテーションにとって重要であるだけでなく、広くノーマライゼーション理念の浸透のためにも重要なものといえます。
 これからは、障害をもつ人々がさまざまな活動の企画や運営に積極的に関わるとともに、障害の種別を越えた連帯や障害をもたない人々との交流をさらに深めていくことが求められています。

重点目標
1 文化活動の促進
2 スポーツ・レクリエーションの推進
3 交流の促進

1 文化活動の促進

現状と課題
  •  文化活動の場となる公民館などの施設や設備の整備とともに、点字図書や手話通訳の配置などが進みつつありますが、障害をもつ人がもたない人と同様の文化活動を行うためには、さらにハード・ソフトの両面にわたる条件整備を進める必要があります。
  •  本県では、障害をもつ人々が制作した絵画、写真、書道などの作品を展示し、広く一般に公開する「障害者希望芸術文化展」を、「国連・障害者の十年」の始まった昭和58年から開催しています。
     重度・重複障害者の参加や一般の人々の参加を進めていくことが今後の課題です。

障害者希望芸術文化展の出品数

年度 身体障害者の部(点) 精神薄弱者の部(点) 合計
平成元 162 49 211
176 40 216
183 68 251
193 90 283
229 107 336

(平成5年度の出品内訳)

出品内訳 身体障害者の部(%) 精神薄弱者の部(%)
手工芸 20.8 11.6
俳句・短歌 16.1
絵画・俳画 11.9
書道 11.3 3.6
写真 8.0
絵画 16.7
資料:障害福祉課

施策の方向 具体的取り組み
 文化活動への参加促進 ● 文化活動への障害者の参加を容易にするため、交通機関や文化施設の整備を図ります。
● 視聴覚障害者の情報の入手やコミュニケーション手段の確保のため、点字広報・点字図書の提供や手話通訳の派遣制度などの充実を図ります。
● 各種の催しにおいて、手話通訳者の配置や車いす使用者のスペースの確保など、障害者に配慮した運営がなされるよう、主催者などに対する啓発に努めます。
● 美術館など文化活動の場となる施設の利用を進めるため、優遇措置の拡大と普及を図ります。
 文化活動への支援 ● リハビリテーションの一環としての芸術活動である「障害者希望芸術文化展」については、重度・重複障害者もより多く参加できるよう、実施方法の工夫に努めます。
● 障害者や関係団体による文化活動への支援と活動成果の周知に努めます。

《主要事業》

事業名 事業内容 目標 所管課 事業主体
障害者の明るいくらし促進事業(再掲) 点訳・朗読・手話・要約筆記を行う奉仕員を養成し、必要な場に派遣 コミュニケーションや情報の確保 障害福祉課
障害者希望芸術文化展開催事業 ○障害者が制作した絵画・写真・書道などの芸術作品を展示し、ひろく県民に公開
○付帯行事として、バザー、福祉機器展、福祉相談、身障結婚相談などを実施
創作活動を通じた自立更生意欲の喚起 障害福祉課

《今後の研究・検討事項》

事項 内容
芸術祭の開催 障害者と一般市民の参加した演劇、コンサートなどの芸術祭やイベントヘの支援
各種催しの運営に関する啓発 障害者に配慮した運営についての主催者などに対する啓発活動

2 スポーツ・レクリエーションの推進

現状と課題
  •  近年、障害者スポーツが盛んになり、本県においても、陸上・水泳・球技・アーチェリーの県大会のほかに、西日本各地の車いす選手が参加する「西日本車いすロードレース大会」を開催しています。また、身体障害者や精神薄弱者の全国スポーツ大会※1,2には、本県からも毎年選手が参加しています。さらに、各市町村での障害者体育大会やレクリエーション大会も定着したものとなっています。しかし、参加者が固定しがちであるため、活動の拡大に向けた取り組みが必要です。
  •  風船バレーボール※3やソフトボールなど、障害者自身が企画・運営し、障害をもつ人ともたない人がともに参加するスポーツ、レクリエーション活動の動きが始まっています。  活動を支援する指導者の増員や活動の場となる施設の確保を進める必要があります。
  •  本県の身体障害者スポーツ競技団体は、車いす陸上競技、車いすバスケットボール、卓球、ソフトボールの4団体が結成されており、それぞれ活発な活動を行っています。  今後は競技スポーツの指導者や審判など専門的スタッフの育成が必要です。

身体障害者スポーツ県大会参加者の推移
身体障害者スポーツ県大会参加者の推移の図
                           資料:障害福祉課

※1 全国身体障害者スポーツ大会
通称「身障国体」。昭和40年に第1回大会が開催され、以後、国体と同一県・同一会場で開催されている。本県からは例年13人程度が出場
※2 全国精神薄弱者スポーツ大会
愛称「ゆうあいピック」。平成4年に第1回大会が開催され、本県からは例年30人あまりが出場
※3 風船バレーボール
風船を使い、バドミントンコート程度の広さで障害者と一般の混成チームで行う。電動車いす使用者等の重度障害者の参加が可能

施策の方向 具体的取り組み
 生涯スポーツやレクリエーションの推進 ● リハビリテーションの一環としての位置付けを明確にするとともに、重度・重複障害者も行うことができる種目や内容を研究し、普及します。
● 障害者に配慮したスポーツ施設などの整備改善を進めます。
 障害者の参加が可能な運営方法やルールの普及 ● 障害をもつ人ともたない人がともに参加できるような運営方法や競技ルールの研究と普及を行います。
● 各種行事の企画・運営に障害者が参画し、障害者の声が反映されるよう、啓発に努めます。
 競技スポーツの振興と競技スポーツ団体の育成 ● 競技スポーツ団体や関係者の組織化により、活動の強化を図ります。
● 身体障害者スポーツ指導員研修会等を充実させ、指導者などの専門的スタッフを育成します。

リハビリテーションと競技スポーツの分化

身体障害者スポーツは身体機能の回復・維持を図るリハビリの有効な手段として始まった。しかし、近年、ロード・レース大会などの競技会が盛んに開催され、一般の競技スポーツと同様に、記録に挑戦するスポーツとしての位置付けも確立し、両者に分化する傾向にある。

《主要事業》

事業名 事業内容 目標 所管課 事業主体
身体障害者体育振興事業 ○県体育大会(陸上大会、水泳大会、球技大会、アーチェリー大会)の開催により、障害者の体力の維持、機能回復、社会参加を促進
○身体障害者スポーツ指導員研修会の開催により、地域における身障スポーツ振興のリーダーを養成
重度・重複障害者への対応と企画・運営への障害者の参加 障害福祉課
全国身体障害者スポーツ大会派遣事業 全国大会に本県の代表選手を派遣することにより、参加選手や他の障害者の意欲を喚起し、自立更生を図るとともに、県民の障害者への理解を促進 スポーツを通じた自立更生意欲の喚起 障害福祉課
精神薄弱者スポーツ振興事業
西日本車いすロードレース大会in山口開催事業 西日本を中心とした車いす選手の参加により、ハーフマラソンの部と5kmの部の2種目の競技を実施 地域への定着と地域ぐるみの運営 障害福祉課
スポーツ、レクリエーション参加促進事業 障害者の参加によるスポーツ大会、健康増進事業、レクリエーション大会、社会見学などを各地域で実施 地域への定着と幅広い住民の参加 障害福祉課 市町村

《今後の研究・検討事項》

事項 内容
障害者スポーツ協会の設立 障害者スポーツ団体や関係者を構成員とする協会の設立による各種大会の企画・運営、調査・研究、指導者の養成など
催しの運営に関する啓発 各種行事の企画に障害者が参画したり、運営にあたって障害者への配慮がなされるよう、主催者などへの啓発活動の実施

3 交流の促進

現状と課題
  •  障害と障害者に対する社会の理解を深めるためには、交流の機会が不可欠です。障害者を含めた市民が気軽に利用し、交流できる施設の整備や機会の提供を進めていく必要があります。
  •  国際的には、「アジア・太平洋障害者の十年」(1993~2002年)が宣言され、関係各国が障害者の平等と完全参加を促進するための諸施策を実施することがうたわれています。
  •  国際化に対応して、障害者福祉施設の入所者や職員が海外研修を行ったり、障害者関係の国際的行事に障害者が自ら参加するなどの動きが始まっています。こうした国際的な交流をさらに進め、外国の人々との相互理解を促進する必要があります。

アジア・太平洋障害者の十年(1993~2002年)

 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、1992年4月に1993年から2002年までを「アジア・太平洋障害者の十年」とする決議を採択した。
 これは、社会の高齢化に伴う障害者数の増加、加盟国間の障害者福祉施策の格差の存在などを踏まえ、次の事項を盛り込んだものである。
1.各加盟国に対し、障害者に係る次の状況を論評(review)するよう要請する。
 (1)経済活動への参加を促進するための国内政策と計画の策定及び実施
 (2)障害者問題に関する国内調整委員会の設立及び強化
 (3)国際開発機関やNGO(非政府機関)による、障害者と家族への支援サービスの促進
 (4)啓発の促進と、教育・雇用・スポーツ等自立更生活動のための条件整備
2.国連の関係機関に対し、関連計画の実施状況の調査を行うよう要請する。
3.NGOに対し、その経験と専門能力の活用を要請する。
4.障害者組織に対し、障害者の潜在的能力が発揮できる条件整備を行うため、政府機関と諸外国との連携を強化するよう要請する。

施策の方向 具体的取り組み
 交流・ふれあい活動の推進 ● 種々の大会や行事の場において、障害をもつ人ともたない人の交流を促進する工夫がなされるよう、主催団体への支援や関係者の啓発に努めます。
● 地域での交流を目的として行われる文化、スポーツ、レクリエーション活動を積極的に支援し、その活動を通じた交流・ふれあいの拡大を図ります。
 国際交流の促進 ● 国際交流の先進的取り組みをさまざまな機会に広く紹介します。
● 国際スポーツ大会への参加を支援します。
● 外国からの来県者の受け入れを促進します。

《今後の研究・検討事項》

事項 内容
障害児と一般の児童・生徒の日常的交流の促進 幼少時からの相互の理解や福祉意識の醸成を図るための地域における交流会、自宅・施設の訪問などの継続的な交流活動の促進
国際交流活動の紹介や活動機会の提供 先進的事例の紹介、国際スポーツ大会の参加への助成、外国からの来県者との交流の場の設定などによる、自立更生と社会参加意欲の助長及び相互理解の促進

国際スポーツ大会

1.国際身体障害者スポーツ大会(通称パラリンピック)
 オリンピックの年にその開催地で行われる世界大会。1960年のローマオリンピック以降、現在の形になった。
2.国際ストーク・マンデビル大会
 1948年にイギリスのストーク・マンデビル病院で下肢障害者の競技大会が開催されたのを契機に、1952年以降毎年開催されている。
3.極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会(通称フェスピック)
 4年に1回パラリンピックの中間年に、アジア・南太平洋地域で開催されている。日本では、昭和50年に第1回別府大会、平成元年に第5回神戸大会を開催した。
なお、これら以外にも、障害別、種目別大会が数多く行われている。

文化・スポーツ・交流を通じたノーマライゼーションの推進
文化・スポーツ・交流を通じたノーマライゼーションの推進の図

ビジョンの推進のために

1 適切な役割分担と協働

 このビジョンの推進にあたっては、行政をはじめとして、県民、民間団体、企業などが次の考え方に基づいて、それぞれの役割と責任を認識し、相互に協力しながら推進することが必要です。

(1)行政の役割

 法律などに定められている障害者の生活の基盤を支える福祉サービスの提供をすることが必要です。
 障害者をはじめ、地域住民、民間団体、行政などによる連携をもった福祉活動を展関するための基盤づくりが必要です。
 障害者福祉に関する計画に基づき、福祉施策を着実に推進する必要があります。

《県の役割》

 市町村単独では対応が困難な広域的・専門的な障害者福祉の領域を担当し、指導的役割を果たすことが必要です。
 市町村の実施する障害者福祉に係る事業に対する助成や民間団体などの福祉活動への支援をすることが必要です。

《市町村の役割》

 地域における障害者福祉を進める主体として、地域の実情にあったきめ細かな施策を計画的、積極的に推進することが必要です。
 保健、教育、社会参加など生活全般にわたる福祉サービスについて、各分野の連携を図りながら施策を進めることが必要です。
 障害者の実態やニーズの把握に努めるとともに、障害者やその家族などが気軽に相談できる総合的相談窓口を設置することが必要です。

(2)障害者自身の主体的取り組み

 自立した人間として、生活の質(QOL)を高めるために、地域社会に積極的なかかわりをもつように努めることが必要です。
 地域社会の活動に積極的に参加することにより、地域の人々の理解と共感を得るように努めることが必要です。
 各種のサービスを積極的に利用することが必要です。

(3)個人、家庭、地域の役割

 障害者の養育や介護を行うとともに、自立への援助をすることが必要です。
 福祉の心を育てるための家庭教育を行うことが必要です。
 障害者への理解を深めるとともに、障害者を支援するネットワークづくりを進めることが必要です。

(4)民間団体、企業などの役割

 地域社会の一員として、地域において果たすべき役割を自覚し、自主的で創造的な活動を行うことが必要です。
 障害者や家族の仲間づくりを進めることにより、支援の輪を広げるとともに、障害者の社会参加を進めることが必要です。
 障害者の雇用を積極的に進めるとともに、障害者に配慮した職場環境の創出に努めることが必要です。
 各種のボランティア活動に積極的に取り組むことが必要です。

(5)協働

 21世紀にふさわしい福祉社会は、行政はもとより、個人や家庭、民間団体、企業など、地域社会を構成する主体が、その特性を発揮して、それぞれの役割と責任を果たしつつ、互いに理解と協力のもとに活動していくこと(協働)が必要です。

2 ビジョンの総合的推

 山口県障害者施策推進協議会を中心として、各施策の連携を図り、総合的な取り組みを進めていきます。
 市町村に対して、国の新長期計画やこのビジョンの趣旨を踏まえた「長期計画」の策定と関係施策の具体的実現を期待します。
 県民・民間団体・企業等に対して、広報啓発活動を通して、このビジョンについての理解と協力を期待します。
  特に、障害者団体に対しては、障害の種別や程度にこだわらず、障害者全体の福祉の向上をめざし、自立した自主的な運営ができるよう期待します。

3 マンパワーの確保

 資質の高い人間性豊かなマンパワーの養成・確保を進めていきます。
 保健・医療・福祉を中心として、専門的な職員の養成・確保に努めます。

4 ビジョンの進行管理

 このビジョンは、山口県障害者施策推進協議会において、毎年、成果や課題などの推進状況を確認し、必要に応じて新たな施策の展開を図るなど、その充実に努めながら、推進することとします。

5 国への要請

 国の計画や施策との整合性に配慮し、連携を保ちつつ、諸制度の改善と福祉推進のための財源の確保などについて、国に要請していくこととします。

国への要請事項

 山口県は、「リハビリテーション」と「ノーマライゼーション」の理念のもとに、障害者の「完全参加と平等」の目標を実現するため、新たな長期ビジョンに基づき、施策の充実を図ることとしている。
 しかし、障害者施策は広範多岐にわたっており、県だけで解決できるものではなく、国の財政措置や制度の充実を待つものが大きい。
 したがって、関係施策の総合的かつ計画的推進を図り、障害者の福祉向上を実現するため、次の事項について国へ強く要請する。

1 財源の確保等(厚生省、大蔵省、運輸省、建設省)

 「障害者対策に関する新長期計画」の実現、「障害者基本法」の成立などによる新たな施策の実現等、障害者福祉についての諸施策の体系的、総合的な推進のための財源の確保を図られたい。
 障害者や高齢者に配慮した各種施設、設備の整備など、ハード面及びソフト面での「福祉のまちづくり」に関連した補助金、融資等における財政的支援について充実を図られたい。

2 障害者福祉に係る制度の拡充(厚生省、大蔵省、運輸省、建設省)

 住民の最も身近な市町村において在宅福祉サービスと施設福祉サービスが一元的に提供されるよう、精神薄弱者福祉法等に係る措置権の移譲について検討されたい。
 身体障害者手帳の等級について、身体障害者の生活能力を的確に反映したものにするため、身体障害者福祉法施行規則に規定する障害程度等級表の改善を図られたい。
 「障害者の日」を休日と定めるなど、広く国民の障害者に対する関心と理解をさらに促進する方策を講じられたい。
 障害者が地域において自立した生活を営むことができるよう、年金・手当など、障害者に対する所得保障及び医療保障制度等を拡充されたい。
 ホームヘルパー派遣事業などの介護対策、ショートステイ、デイサービス、さらには、介護者への支援など、各種在宅福祉対策を拡充されたい。
 精神薄弱者など、判断力に援助の必要な障害者の権利擁護に関する関連法規の整備を図られたい。
 障害者が地域での生活を営むため、その利用に配慮した施設の改善や介護機能を備えた住環境の整備、居住の確保などに係る諸施策の拡充を図られたい。
 障害者の自立や社会参加を促進するための建築物、道路、交通機関などの生活環境面における各種の改善に関する諸施策の拡充を図られたい。
 「福祉のまちづくり」について全国統一的な水準を確保するため、関係法律の整備及びガイドライン、マニュアルなど、統一的基準の策定、普及を図られたい。
 コミュニケーションの確保により自立と社会参加を推進するため、手話通訳士や言語療法士を国家資格とするなど、資格制度の確立を図られたい。
 障害者施設の整備にあたって、補助基準単価の改善及び入所者の障害の重度化・高齢化にともなう最低基準の改正を図られたい。
 障害者施設の整備にあたって、入所者の生活の質の向上を図るため、快適空間や個室の確保など、ハード・ソフトの両面にわたる検討を進められたい。
 リハビリテーション医療の施策に関する指針を示すとともに、リハビリテーション医療の普及を図るため、基盤的条件の整備拡充に努められたい。
 精神障害者通院リハビリ事業、小規模作業所運営費助成事業など、社会復帰対策の拡充を図られたい。
 精神障害者が長期に利用できる施設など、社会復帰施設の多様化を図られたい。
 精神障害者の社会復帰・社会参加を促進するため、精神保健対策における市町村の責務を明確化し、その活動を支援する施策の展開を図られたい。

3 その他(大蔵省、運輸省、建設省、労働省)

 民間による「福祉のまちづくり」に係る整備に対して、税制上の優遇措置を講じられたい。
 障害者の社会参加を推進する観点から、旅客鉄道株式会社等の特急料金などの割引と道路公団等の有料道路の割引制度の拡大などの実現を図られたい。
 障害者の自立促進を図るため、重度障害者などの障害者雇用対策のさらなる強化を図られたい。


資料編

主要な障害者施策の概要

身体障害者福祉対策

 身体障害者福祉対策は、ノーマライゼーションの理念のもと、自立と社会参加の促進のため、在宅福祉サービスや施設福祉サービス等の総合的な施策を推進している。

(在宅福祉対策)

事業名 番号
障害の軽減・補完、診査・更生相談対策 更生医療の給付 (1)
訪問診査、更生相談 (2)
補装具、日常生活用具の給付等 補装具の交付、修理 (3)
日常生活用具の給付等 (4)
在宅介護対策 特別障害者手当等の支給 (5)
身体障害者ホームヘルプサービス事業 (6)
身体障害者短期入所事業 (7)
社会参加促進、在宅リハビリテーション対策等 身体障害者相談員の設置 (8)
「障害者の明るいくらし」促進事業 (9)
身体障害者社会参加促進センター運営事業 (10)
「住みよい福祉のまちづくり」事業 (11)
身体障害者デイサービス事業 (12)
身体障害者自立支援事業 (13)
在宅重度障害者通所援護事業 (14)
身体障害者通所授産施設 (15)
身体障害者福祉ホーム運営事業 (16)
身体障害者スポーツの振興 (17)
障害別福祉事業(委託事業) (18)

番号 事業の概要
(1) 身体上の障害を軽くしたり除いたりするための医療
 関節形成術、角膜移植術、穿孔閉鎖術、人工透析、ぺースメーカのうめ込み手術等
(2) 医療、生活、職業等の各種の相談、施設への紹介等
(3) 身体上の障害を補うための用具の交付、修理
 ○補装具の種類
 (視覚障害)盲人安全つえ、義眼、眼鏡、点字器
 (聴覚障害)補聴器
 (言語機能障害)人工喉頭
 (肢体不自由)義肢、装具、座位保持装置、車いす、電動車いす、歩行器等
 (ぼうこう又は直腸障害)ストマ用装具
(4) 重度障害者の日常生活がより円滑に行われるための用具の給付等
 (下肢・体幹障害)浴槽、湯沸器、便器、特殊マット、特殊寝台、特殊尿器、入浴担架、体位変換器、入浴補助用具
 (上肢障害)特殊便器、電動タイプライター、ワードプロセッサー、電動歯ブラシ
 (意志伝達)重度障害者用意志伝達装置、携帯用会話補助装置
 (視覚障害)盲人用テープレコーダー、時計、タイムスイッチ、カナタイプライター、点字タイプライター、
        電卓、電磁調理器、音声式体温計、秤、点字図書、体重計、視覚障害者用拡大読書器
 (聴覚障害)聴覚障害者用屋内信号装置、聴覚障害者用通信装置
 (呼吸器機能障害)酸素ボンベ運搬車、ネブライザー
 (腎臓機能障害)透析液加温器
 (共通)火災警報機、自動消火器、緊急通報装置
 (貸与品目)福祉電話、ファックス
 (共同利用)視覚障害者用ワードプロセッサー
(5) 在宅の重度障害者で、日常生活において常時特別の介護を要する状態にある者等に対し、特別障害者手当等を支給する。
  ●特別障害者手当(月額) 24,630円
  ●障害児福祉手当(月額) 13,390円
  ●福祉手当(経過措置分)(月額) 13,390円(平成5年4月現在)
(6) 重度の身体上の障害等のため日常生活を営むのに支障がある身体障害者の家庭を訪問して、食事、洗濯等身のまわりの世話及び外出時の付添いを行う。
(7) 重度身体障害者を介護している者が疾病等によって家庭における介護が困難な場合、施設に一時保護する。
(8) 身体障害者の更生相談に応じ、必要な指導を行うとともに、福祉事務所など関係機関の業務に対する協力 援護思想の普及を行う。
(9) 在宅障害者の社会活動への参加と自立を促進するための対策別メニュー事業
(8大事業)
1コミュニケーションの確保等 2移動 3生活訓練等 4生活環境改善
5スポーツ振興 6相談 7普及・啓発 8市町村支援
(10) 障害者が自ら積極的に企画した社会参加促進施策が効果的・効率的に推進されるよう中央と都道府県・指定都市の身体障害者福祉団体に 調整の窓口として設置し、障害者自らによる社会参加施策の推進を図る。
(11) 障害者高齢者等の住みよいまちづくりを推進するため、生活環境の改善、福祉サービスの体系的実施、市民啓発の各事業を総合的に実施する。
(12) 在宅身体障害者が通所して、創作的活動、機能訓練、社会適応訓練等を行い、その自立と社会参加を促進する。
(13) 公営住宅、身体障害者福祉ホーム等に居住する5人以上の重度の身体障害者を対象として、専任ケアグループによる安定的な介助サービスを提供する。
(14) 就労の機会が得難い在宅重度障害者等を対象に小規模な通所による軽作業等の援護事業に対する補助
(15) 雇用困難又は生活に困窮する人を対象とし 必要な訓練を行い 職業を与えて自活させる施設
(16) 身体上の障害のため家庭で日常生活を営むのに支障のある者に対し、その日常生活に適するような居室その他の設備を利用させて自立した生活を営む施設に対する運営費の補助
(17) 身体障害者の健康の維持、機能の回復、体力の向上等の効果を上げるとともに、社会生活への適応注の向上を図る。
(18) 視覚障害者福祉事業(点字・声の図書事業等)
聴覚・言語障害者福祉事業(手話通訳指導者養成研修事業等)
福祉機器開発普及等事業
全国身体障害者総合福祉センター運営事業等
(注)番号は、前ページの事業名の番号と対応している。

〔施設福祉対策〕

事業名 事業の概要








1 肢体不自由
  者更生施設
障害の程度の如何にかかわりなく相当程度の作業能力を回復しうる見込みのある人を対象とし、更生訓練を行う施設(入所期間は1年)
2 視覚障害者
  更生施設
あんま、はり、きゅう等職業についての知識技能、訓練を行う施設(入所期間2~5年)
3 聴覚・言語障害者
  更生施設
更生に必要な治療及び訓練を行う施設(入所期間1年を原則)
4 内部障害者
  更生施設
医学的管理の下に更生に必要な指導、訓練を行う施設(入所期間は1年)
5 重度身体障害者
  更生援護施設
重度の肢体不自由者を入所させ、家庭復帰に必要な日常生活能力の回復に重点をおいて各種のリハビリテーションを行う施設(入所期間おおむね5年以内)



6 身体障害者
  療護施設
身体上の著しい障害のため常時介護を必要とするが、家庭ではこれを受けることの困難な最重度の障害者を入所させ、医学的管理の下に必要な保護を行う施設
7 身体障害者
  福祉ホーム
身体上の障害のため家庭において日常生活を営むのに支障のある身体障害者が自立した生活を営む施設



8 身体障害者
  授産施設
雇用困難又は生活に困窮する人を対象とし、必要な訓練を行い、職業を与えて自活させる施設(最終的には一般事業所に就職若しくは自営等で、自活させることを目的としているので、入所期間は一定ではない)
9 重度身体障害
  者授産施設
重度の身体障害のため、ある程度の作業能力を有しながら、特別な設備と職員を準備しなければ、就業不可能な障害者を入所させ、施設内で自活させることを目的とする施設
10 身体障害者通
  所授産施設
身体障害者授産施設の一種であり、内容は8と同じであるが、利用者は通所者に限られる
11 身体障害者
  福祉工場
生産能力があっても、通勤事情等のため、一般の企業に就職することの困難な車いす障害者等のための工場





12 身体障害者福祉
  センター(A型)
身体障害者の各種の相談に応ずるとともに、健康の増進、教養の向上、スポーツ、レクリエーションなど保健・休養のための施設
13 身体障害者福祉
  センター(B型)
外出や就労の機会が得られない在宅重度障害者が通所して、創作活動、軽作業、日常生活訓練等を行うための施設
14 在宅障害者デイ
  サービス施設
創作的活動重点型の身体障害者デイサービス事業を行うための施設
15 障害者更生
  センター
障害者、家族、ボランティア等が気軽に宿泊、休養するための施設
16 点字図書館 盲人の求めに応じて点字刊行物や声の図書の閲覧貸出しを行う施設
17 点字出版施設 点字刊行物を出版する施設
18 聴覚障害者情
  報提供施設
聴覚障害への字幕(手話)入ビデオカセットの製作や貸出し等を行う施設
19 補装具製作施設 補装具の製作又は修理を行う施設
20 盲人ホーム あんま、はり、きゅう等盲人の職業生活の便宜を図るために施設を利用させ、技術の指導を行う施設
進行性筋萎縮症者の援護 進行性筋萎縮症者の治療、訓練等のため国立療養所及び社会福祉法人等医療機関に委託して行う

心身障害児(者)対策

精神薄弱者及び18歳未満の心身障害児(身体障害児及び精神薄弱児)に対しては、在宅サービス及び施設サービス両面においてさまざまな施策を行っている。

[在宅福祉対策]

心身障害児・者に対する在宅福祉対策
施策の種類 心身障害児対策 精神薄弱者対策
早期発見
早期療育
先天性代謝異常等検査
健康診査(乳児、1歳6か月児、3歳児)
育成医療の給付
通所事業
通園事業
心身障害児各種通園施設・通園事業

重症心身障害児通園モデル事業

精神薄弱者援護施設(通所)
精神薄弱者デイサービス事業(1)
  同左

在宅サービス 補装具の交付・修理
日常生活用具の給付等
心身障害児・者ホームヘルプサービス事業(2)
心身障害児・者施設地域療育事業(ショートステイ等)(3)
心身障害児・者地域療育拠点施設事業
  同左
  同左
  同左
  同左
社会参加 精神薄弱者地域生活援助事業(4)
精神薄弱者生活支援事業
精神薄弱者社会活動総合推進事業
精神薄弱者スポーツの振興
在宅精神薄弱者通所援護事業(5)
就労関連 職親制度(6)
精神薄弱者社会自立促進モデル事業
総合的サービス 相談指導(児童相談所等) 療育手帳制度(7)
  同左(福祉事務所等)

各種主要施策の概要

(1)  在宅の精神薄弱者が通所して文化的活動、機能訓練等を行い、自立を図るとともに生きがいを高める。
(2)  心身障害のため独立して日常生活を営むのに著しく支障のある心身障害児・者のいる家庭に、ホームヘルパーを派遣する。
(3)  施設機能を在宅の心身障害児・者のために活用する。(ショートステイは、保護者が家庭で介護を行うことが困難であるときに一時的に心身障害児・者を保護するもの)
(4)  地域で生活する精神薄弱者に対し日常生活上の援護を行い、地域での自立生活を援助する。グループホーム事業ともいう。
(5)  通所による援護事業(小規模作業所)に対し補助する。
(6)  事業経営者等が精神薄弱者を自己の下に預かり必要な訓練を行うことにより、精神薄弱者の自立更生を図る。
(7)  精神薄弱(児)者に対し一貫した指導・相談を行うとともに、各種の援助措置を受けやすくするため、精神薄弱(児)者に手帳を交付する。

〔施設福祉対策〕

事業名 事業概要

















精神薄弱児施設 精神薄弱の児童を入所させて、保護するとともに、独立自活に必要な知識技能を与える施設(303か所、19,069人)
自閉症児施設 自閉症を主たる症状とする児童を入所させて、保護するとともに、独立自活に必要な知識技能を与える施設(7か所、334人)
精神薄弱児通園施設 精神薄弱の児童を日々保護者のもとから通わせて、保護するとともに、独立自活に必要な知識を与える施設(215か所、7,907人)
盲児施設 盲児(強度の弱視を含む。)を入所させて、保護するとともに、独立自活に必要な指導又は援助をする施設(21か所、891人)
ろうあ児施設 ろうあ児を入所させて、保護するとともに、独立自活に必要な指導又は援助をする施設(17か所、861人)
難聴幼児通園施設 難聴(難聴に伴う言語障害を含む。)の幼児に対し、早期に聴力及び言語能力の機能訓練を実施、残存能力の開発と障害の除去を行うとともに、家庭で一貫した適切な指導訓練が行えるよう母親等に対して指導訓練の技術等について指導する施設(27か所、890人)
肢体不自由児施設 上肢、下肢又は体幹の機能障害のある児童を入所させて治療するとともに、独立自活に必要な知識・技能を与える施設(72か所、8,348人)
肢体不自由児通園施設 上肢、下肢又は体幹の機能障害のある児童を通所させて治療するとともに、独立自活に必要な知識・技能を与える施設(原則として、就学前で通園により十分療育効果が得られる児童が対象となる。)(74か所、3,120人)
肢体不自由児療護施設 上肢、下肢又は体幹の機能障害のある児童で家庭における養育が困難なものを入所させる施設(9か所、445人)
重度心身障害児施設 重度の精神薄弱及び重度の肢体不自由が重複している児童を入所させて保護するとともに、治療及び日常生活の指導をする施設(71か所、7,489人)
心身障害児総合通園センター 心身障害の相談・指導・診断・検査・判定等を行うとともに、時宜を失うことなく障害に応じた療育訓練を行う施設、複数の児童福祉施設の複合体(9か所)
心身障害児通園事業 肢体不自由児施設等を利用することが困難な地域に市町村が通園の場を設けて、心身障害児に通園の方法により指導を行い、地域社会が一体となって育成助長を図る事業
国立
療養所
進行性筋萎縮症児病床 進行性筋萎縮症児を入院させて、治療及び日常生活の指導を行う(27か所、2,500人)
重症心身障害児病床 重度の精神薄弱及び重度の肢体不自由が重複している児童を入所させて、治療及び日常生活の指導を行う(80か所、8,080人)


















精神薄弱者更生施設(入所) 精神薄弱者を入所させて、保護するとともに、その更生に必要な指導訓練を行う施設(961か所、65,353人)
精神薄弱者更生施設(通所) 精神薄弱者を通所させて、保護するとともに、その更生に必要な指導訓練を行う施設(167か所、6,374人)
精神薄弱者授産施設(入所) 精神薄弱者で雇用されることが困難な者を入所させて、自活に必要な訓練を行うとともに、職業を与えて自活させる施設(194か所、12,331人)
精神薄弱者授産施設(通所) 精神薄弱者で雇用されることが困難な者を通所させて、自活に必要な訓練を行うとともに、職業を与えて自活させる施設(476か所、17,594人)
精神薄弱者福祉ホーム 就労している精神薄弱者が、家庭環境、住宅事情等の理由により住居を求めている場合に低額な料金で入居させ、社会参加の助長を図るもの(52か所、582人)
精神薄弱者通勤寮 就労している精神薄弱者を職場に通勤させながら一定期間通所させて対人関係の調整、余暇の活用、健康管理等独立自活に必要な指導を行うもの(109か所、2,585人)
精神薄弱者自活訓練事業 精神薄弱者援護施設の入所者に地域での自立生活に必要な基本的生活の知識・技術を一定機関集中して個別的指導を行うことにより、精神薄弱者の社会参加の円滑化を図るもの
精神薄弱者福祉工場 一般企業に就労できない精神薄弱者を雇用し、社会的自立を促進するもの(11か所、375人)
在宅精神薄弱者デイサービスセンター 地域において就労が困難な在宅の精神薄弱者が通所して文化的活動、機能訓練等を行うことにより、その自立を図るとともに生きがいを高めることを目的とするもの(1か所)
(注)事業概要の欄の()内は平成4年10月1日現在の施設数及び定員。
資料:厚生省大臣官房統計情報部「社会福祉施設調査」及び厚生省児童家庭局調べ

精神保険対策
精神保険対策の図

障害者に対する主要な他制度による福祉措置  (平成5年度)

他制度による福祉措置 身体障害者 精神薄弱者 精神障害者
条件・内容 条件・内容 条件・内容
所得税の減免 所得控除
  27万円
障害者控除(本人又は配偶者、扶養親族が3~6級の障害者の場合) 障害者控除(本人又は配偶者、扶養親族が中・軽度の精神薄弱者の場合) 障害者控除(本人又は扶養親族が障害年金2~3級該当程度の精神障害者の場合)
所得控除
  35万円
特別障害者控除(上記の障害者が1~2級の重度の障害者である場合) 特別障害者控除(上記の精神薄弱者が重度の精神薄弱者である場合) 特別障害者控除(上記の障害年金1級該当程度の精神障害者である場合)
住民税の控除 所得控除
  26万円
障害者控除(3~6級) 障害者控除(中・軽度) 障害者控除(障害年金2~3級該当程度の精神障害者)
所得控除
  28万円
特別障害者控除(1~2級) 特別障害者控除(重度) 特別障害者控除(障害年金1級該当程度の精神障害者)
自動車税の減免 減免 本人又は重度身体障害者と生計を一にする者が運転し、もっぱら当該身体障害者の用に供する自動車 精神薄弱者(療育手帳A)と生計を一にする者が運転し、もっぱら当該精神薄弱者の用に供する自動車 通院医療費公費負担受給者で障害年金1級と同程度の状態にある精神障害者の通院等の用に供する自動車
自動車取得税の減免 減免 自動車税・軽自動車税が免除になる自動車を当該身体障害者が取得する場合 自動車税・軽自動車税が免除になる自動車を当該精神薄弱者の家族が取得する場合 自動車税・軽自動車税が免除になる自動車を本人又は生計を一にする者が取得する場合
JR旅客運賃割引 本人・介護人ともに5割引き 運賃減額1種(ただし本人単独の場合には区間制限101km以上) 療育手帳A
(ただし本人単独の場合には区画制限101km以上)
本人5割引き 運賃減額2種
 区間制限101km以上
療育手帳B
 区間制限101km以上
民間航路、民間バス、
市営バスの運賃割引
本人、介護人ともに5割引き 運賃減額1種 療育手帳A
本人5割引き 運賃減額2種 療育手帳B

その他、次の福祉措置があります。

 税制
 事業税の免除(あんま・はり等の医業に類する事業)、相続税の減免
 運賃割引(航空運賃、タクシー運賃)
 有料道路の通行料金の割引1
 NHK放送受信料の減免(身体障害者の一部)


障害者基本法

 第1章 総則

 (目的)

第1条 この法律は、障害者のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる活動への参加を促進することを目的とする。

 (定義)

第2条 この法律において「障害者」とは、身体障害、精神薄弱又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社全生活に相当な制限を受ける者をいう。

 (基本的理念)

第3条 すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。
2 すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。

 (国及び地方公共団体の責務)

第4条 国及び地方公共団体は、障害者の福祉を増進し、及び障害を予防する責務を有する。

 (国民の責務)

第5条 国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない。

 (自立への努力)

第6条 障害者は、その有する能力を活用することにより、進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない。
2 障害者の家庭にあっては、障害者の自立の促進に努めなければならない。

 (障害者の日)

第6条の2 国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めるため、障害者の日を設ける。
2 障害者の日は、12月9日とする。
3 国及び地方公共団体は、障害者の日の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。

 (施策の基本方針)

第7条 障害者の福祉に関する施策は、障害者の年齢並びに障害の種別及び程度に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない。

 (障害者基本計画等)

第7条の2 政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 都道府県は、障害者基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における障害者の状況等を踏まえ、当該都道府県における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「都道府県障害者計画」という。)を策定するよう努めなければならない。
3 市町村は、障害者基本計画(都道府県障害者計画が策定されているときは、障害者基本計画及び都道府県障害者計画)を基本とするとともに、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第5項の基本構想に即し、かつ、当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「市町村障害者計画」という。)を策定するよう努めなければならない。
4 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、中央障害者施策推進協議会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
5 都道府県は、都道府県障害者計画を策定するに当たっては、地方障害者施策推進協議会の意見を聴かなければならない。地方障害者施策推進協議会を設置している市町村が市町村障害者計画を策定する場合においても、同様とする。
6 政府は、障害者基本計画を策定したときは、これを国会に報告するとともに、その要旨を公表しなければならない。
7 都道府県又は市町村は、都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定したときは、その要旨を公表しなければならない。
8 第4項及び第6項の規定は障害者基本計画の変更について、第5項及び前項の規定は都道府県障害者計画又は市町村障害者計画の変更について準用する。

 (法制上の措置等)

第8条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。

 (年次報告)

第9条 政府は、毎年、国会に、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を提出しなければならない。

 第2章 障害者の福祉に関する基本的施策

 (医療)

第10条 国及び地方公共団体は、障害者が生活機能を回復し、又は取得するために必要な医療の給付を行うよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する医療の研究及び開発を促進しなければならない。

 (施設への入所、在宅障害者への支援等)

第10条の2 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢並びに障害の種別及び程度に応じ、施設への入所又はその利用により、適切な保護、医療、生活指導その他の指導、機能回復訓練その他の訓練又は授産が受けられるよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の家庭を訪問する等の方法により必要な指導若しくは訓練が行われ、又は日常生活を営むのに必要な便宜が供与されるよう必要な施策を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者の障害を補うために必要な補装具その他の福祉用具の給付を行うよう必要な施策を講じなければならない。
4 国及び地方公共団体は、前3項に規定する指導、訓練及び福祉用具の研究及び開発を促進しなければならない。

 (重度障害者の保護等)

第11条 国及び地方公共団体は、重度の障害があり、自立することの著しく困難な障害者について、終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければならない。

 (教育)

第12条 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢、能力並びに障害の種別及び程度に応じ、充分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関する調査研究及び環境の整備を促進しなければならない。

第13条 削除(旧法:訪問指導等)

 (職業指導等)

第14条 国及び地方公共団体は、障害者がその能力に応じて適当な職業に従事することができるようにするため、その障害の種別、程度等に配慮した職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者に適した職種及び職域に関する調査研究を促進しなければならない。

 (雇用の促進等)

第15条 国及び地方公共団体は、障害者の雇用を促進するため、障害者に適した職種又は職域について障害者の優先雇用の施策を講じなければならない。
2 事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の雇用のための経済的負担を軽減し、もってその雇用の促進及び継続を図るため、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他必要な施策を講じなければならない。

 (判定及び相談)

第16条 国及び地方公共団体は、障害者に関する各種の判定及び相談業務が総合的に行われ、かつ、その制度が広く利用されるよう必要な施策を講じなければならない。

 (措置後の指導助言等)

第17条 国及び地方公共団体は、障害者が障害者の福祉に関する施策に基づく各種の措置を受けた後日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるよう指導助言をする等必要な施策を講じなければならない。

 (施設の整備)

第18条 国及び地方公共団体は、第10条第2項、第10条の2第1項及び第4項、第12条並びに第14条の規定による施策を実施するために必要な施設を整備するよう必要な措置を講じなければならない。
2 前項の施設の整備に当たっては、同項の各規定による施策が有機的かつ総合的に行われるよう必要な配慮がなされなければならない。

 (専門的技術職員等の確保)

第19条 前条第1項の施設には、必要な員数の専門的技術職員、教職員その他の専門的知識又は技能を有する職員が配置されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する者その他障害者の福祉に関する業務に従事する者及び第10条の2第3項に規定する福祉用具に関する専門的技術者の養成及び訓練に努めなければならない。

 (年金等)

第20条 国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定に資するため、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講じなければならない。

 (資金の貸付け等)

第21条 国及び地方公共団体は、障害者に対し、事業の開始、就職、これらのために必要な知識技能の習得等を援助するため、必要な資金の貸付け、手当の支給その他必要な施策を講じなければならない。

 (住宅の確保)

第22条 国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定を図るため、障害者のための住宅を確保し、及び障害者の日常生活に適するような住宅の整備を促進するよう必要な施策を講じなければならない。

 (公共的施設の利用)

第22条の2 国及び地方公共団体は、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設を障害者が円滑に利用できるようにするため、当該公共的施設の構造、設備の整備等について配慮しなければならない。
2 交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該公共的施設の構造、設備の整備等について障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、事業者が設置する交通施設その他の公共的施設の構造、設備の整備等について障害者の利用の便宜を図るための適切な配慮が行われるよう必要な施策を講じなければならない。

 (情報の利用等)

第22条の3 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるようするため、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。
2 電気通信及び放送の役務の提供を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該役務の提供に当たっては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。

 (経済的負担の軽減)

第23条 国及び地方公共団体は、障害者及び障害者を扶養する者の経済的負担の軽減を図り、又は障害者の自立の促進を図るため、税制上の措置、公共的施設の利用料等の減免その他必要な施策を講じなければならない。

 (施策に対する配慮)

第24条 障害者の福祉に関する施策の策定及び実施に当たっては、障害者の父母その他障害者の養護に当たる者がその死後における障害者の生活について懸念することのないよう特に配慮がなされなければならない。

 (文化的諸条件の整備等)

第25条 国及び地方公共団体は、障害者の文化的意欲を満たし、若しくは障害者に文化的意欲を起こさせ、又は障害者が自主的かつ積極的にレクリエーションの活動をし、若しくはスポーツを行うことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する活動の助成その他必要な施策を講じなければならない。

 (国民の理解)

第26条 国及び地方公共団体は、国民が障害者について正しい理解を深めるよう必要な施策を講じなければならない。

 第3章 障害の予防に関する基本的施策

第26条の2 国及び地方公共団体は、障害の原因及び予防に関する調査研究を促進しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害の予防のため、必要な知識の普及、母子保健等の保健対策の強化、障害の原因となる傷病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなければならない。

 第4章 障害者施策推進協議会

 (中央障害者施策推進協議会)

第27条 厚生省に、中央障害者施策推進協議会(以下「中央協議会」)という。)を置く。
2 中央協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
 1 障害者基本計画に関し、第7条の2第4項に規定する事項を処理すること。
 2 障害者に関する基本的かつ総合的な施策の樹立について必要な事項を調査審議すること。
 3 障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要するものに関する基本的事項を調査審議すること。
3 中央協議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣、厚生大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。

第28条 中央協議会は、委員20人以内で組織する。
2 中央協議会の委員は、関係行政機関の職員、学識経験のある者、障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者のうちから、厚生大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。
3 中央協議会に、専門の事項を調査審議させるため、専門委員を置くことができる。
4 中央協議会の専門委員は、学識経験のある者、障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者のうちから、厚生大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。
5 中央協議会の専門委員は、当該専門の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
6 中央協議会の委員及び専門委員は、非常勤とする。

第29条 前2条に定めるもののほか、中央協議会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (地方障害者施策推進協議会)

第30条 都道府県(地方自治法第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)を含む。以下同じ。)に、地方障害者施策推進協議会を置く。
2 都道府県に置かれる地方障害者施策推進協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
 1 当該都道府県における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項を調査審議すること。
 2 当該都道府県における障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議すること。
3 都道府県に置かれる地方障害者施策推進協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。
4 市町村(指定都市を除く。)は、当該市町村における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項及び障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議させるため、条例で定めるところにより、地方障害者施策推進協議会を置くことができる。

心身障害者対策基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

                                        平成5年度11月16日 参議院厚生委員会

政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 1、障害者の「完全参加と平等」の実現に向け、政府の「障害者対策に関する新長期計画」に基づき、障害者のための施策の一層の充実を図ること。

 2、てんかん及び自閉症を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって長期にわたり生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること。

 3、精神障害が法律の対象であることを明定したことにかんがみ、精神障害者のための施策がその他の障害者のための施策と均衡を欠くことのないよう、特に社会復帰及び福祉面の施策の推進に努めること。

 4、事業者の責務を新たに定めたことにかんがみ、事業者がその責務を果たしやすいよう、必要な施策を推進すること。

 5、中央障害者施策推進協議会に障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者のうちからも委員及び専門委員を任命することと定めたことにかんがみ、地方障害者施策推進協議会においても、同様の趣旨が生かされるよう適切に指導すること。

 右決議する。


山口県障害者福祉長期ビジョン策定懇話会設置要綱

 (設置)

第1条 障害者福祉長期ビジョンを策定するに当たり、民間有識者の意見を聞くため、山口県障害者福祉長期ビジョン策定懇話会(以下「懇話会」という。)を設置する。

 (組織)

第2条 懇話会は、委員25人以内で組織する。
2 委員は、学識経験を有する者、社会福祉関係団体の代表者、その他関係団体の代表者及び関係行政機関の職員のうちから知事が委嘱する。

 (会長)

第3条 懇話会に会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 会長に事故があるときは、あらかじめ会長が指名した委員が会長の職務を代理する。

 (運営)

第4条 懇話会の会議は、会長が召集する。
2 懇話会の会議の議長は、会長をもって充てる。
3 懇話会は、必要に応じて、構成員以外の者の意見を聞くことができる。

 (庶務)

第5条 懇話会の庶務は、民生部障害福祉課において処理する。

 (その他)

第6条 この要綱に定めるもののほか、懇話会の運営その他必要な事項は、会長が定める。

附則

1 この要綱は、平成5年6月25日から施行する。
2 この要綱は、障害者福祉長期ビジョンが策定されたとき、その効力を失うものとする。

障害者福祉長期ビジョン策定懇話会委員名簿    25名

所属等 氏名
学識経験者
    2名
県議会議員(厚生委員会委員) 佐々木明美
山口女子大学名誉教授 河村 太市
福祉関係団
体代表
    10名
県社会福祉協議会副会長 安達  智
県民生委員児童委員協議会会長 山本 俊人
県福祉マンパワー財団常務理事 末■ 唯雄
県身体障害者団体連合会会長 笠井弥太郎
県精神薄弱者育成会会長 木元アヤ子
県精神薄弱者愛護協会会長 脇本 正昭
県身体障害者更生援護施設連絡協議会会長 藤本 克己
県点訳朗読友の会会長 林 トクエ
県手話サークル連絡協議会会長 綾城 明美
美東町社会福祉協議会地域福祉活動専門員 岡田 暢男
関係団体代

    8名
県医師会理事 池本 和人
県看護協会会長 藤原喜美子
県精神保健協会会長 山田 通夫
県経営者協会専務理事 藤本 裕夫
県労働者福祉協議会会長 小川 荘六
県婦人団体連絡協議会会長 河野 輝枝
県青年団体連絡協議会副会長 中野 智昭
県車いす陸上競技連盟会長 福場 輝昭
行政関係者
    5名
県市長会(下関市保健福祉部障害福祉課長) 濱岡 信彦
県町村会(平生町民生課長) 泉本 高次
県健康増進課主幹 山崎ウメ子
県中部社会福祉事務所所長 二川  守
山口障害者職業センター主任カウンセラー 阿部 一代

懇話会設置要綱第4条第3項の規定による委員名簿

所属等 氏名
関係団体代表 県精神障害者家族会連合会会長 杉山 秀茂

主題:
山口県障害者福祉長期ビジョン  127頁~終頁
みんなが参加しともにあゆむ21世紀をめざして

発行者:
山口県

発行年月:
1994年3月発行

文献に関するお問い合わせ:
山口県