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ともに活動する社会をめざして

高知県障害者福祉に関する新長期計画

No.1

高知県

項目 内容
立案時期 平成5年12月
計画期間 平成5年度~平成14年度(10年間)

はじめに

障害を持つ方々が豊かさを感じる社会は、すべての人々が豊かさを感じる社会です。
本県では、昭和57年に「障害者対策に関する長期計画」を策定し、障害を持つ方々が地域で障害を持たない人と同等に生活し、活動のできる社会の実現を目指すノーマライゼーションを基本理念に、障害者の社会への完全参加と平等の目標実現に向け、計画的な障害者福祉施策を進めてきました。
その結果、障害や障害者問題に対する県民の理解の深まり、障害者の自立意欲の高まり等を背景に、障害を持つ方々の社会参加は促進されています。
しかしながら、障害を持つ方々が豊かさを感じる社会を実現するためには、引き続き障害者福祉施策を計画的、積極的に進める必要があります。
このため、本県の今後の障害者福祉施策の基本的方向と具体的取組みを明らかにした「高知県障害者福祉に関する新長期計画」を策定しました。
この計画は、前計画の基本理念と目標を引き継ぎ、より具体的な目標として「障害者の地域での自立生活の推進」及び「障害者の生活の質の向上」を掲げ、具体的な施策に取り組むことにしています。
目標実現のためには、県や市町村の取組み、県民一人ひとりの積極的な行動、障害を持つ方々の社会参加意識が大切です。
すべての県民が豊かさを感じる社会、ともに活動する社会をめざして、県民の皆様と一緒に行動したいと思います。

平成5年12月

高知県知事 橋本 大二郎

ともに活動する社会をめざして

「高知県障害者福祉に関する新長期計画」の施策体系

基本理念 目標 テーマ 部門 重点施策
ノーマライゼーション 完全参加と平等 地域での自立生活の推進



生活の質の向上
福祉のこころづくり ・啓発広報活動の推進
・福祉教育と交流の促進
保健・医療の充実 ・障害の発生予防の充実
・障害の早期発見・早期療育体制の充実
・医療・リハビリテーションの充実
・精神保健対策の充実
・保健・医療・福祉の連携
教育の充実 ・学校教育の充実
・進路の確立
・社会教育の推進
雇用・就労の促進 ・雇用の促進と安定
・職業リハビリテーションの充実
・福祉的就労の場の拡大
福祉サービスの充実 ・生活安定のための施策の充実
・地域福祉の推進
・施設福祉の充実
生きがいの創造 ・文化活動やレクリエーション等への参加促進
・スポーツの振興
やさしいまちづくり ・まちづくりの総合的推進
・住宅・生活環境の整備促進
・交通・移動対策の推進
福祉を支えるひとづくり ・マンパワーの養成・確保
・ボランティア活動の促進

目次

総論

第1節 計画のあらまし

1.計画策定の趣旨
2.計画の期間
3.計画の位置付け
4.障害者の概念
5.計画の基本的な考え方
6.計画の体系
7.計画の進め方

第2節 障害者の動向

1.身体障害者の動向
2.精神薄弱者の動向
3.精神障害者の動向
4.難病患者の動向

各論

第1章 福祉のこころづくり

・啓発広報活動の推進
・福祉教育と交流の促進

第2章 保健・医療の充実

・障害の発生予防の充実
・障害の早期発見・早期療育体制の充実
・医療・リハビリテーションの充実
・精神保健対策の充実
・保健・医療・福祉の連携

第3章 教育の充実

・学校教育の充実
・進路の確立
・社会教育の推進

第4章 雇用・就労の促進

・雇用の促進と安定
・職業リハビリテーションの充実
・福祉的就労の場の拡大

第5章 福祉サービスの充実

・生活安定のための施策の充実
・地域福祉の推進
・施設福祉の充実

第6章 生きがいの創造

・文化活動やレクリエーション等への参加促進
・スポーツの振興

第7章 やさしいまちづくり

・まちづくりの総合的推進
・住宅・生活環境の整備促進
・交通・移動対策の推進

第8章 福祉を支えるひとづくり

・マンパワーの養成・確保
・ボランティア活動の促進

資料

1.障害者福祉とボランティアについて

2.「高知県障害者福祉に関する新長期計画」関係課一覧表

総論

第1節 計画のあらまし

1.計画策定の趣旨
2.計画の期間
3.計画の位置付け
4.障害者の概念
5.計画の基本的な考え方
6.計画の体系
7.計画の進め方

第2節 障害者の動向

1.身体障害者の動向
2.精神薄弱者の動向
3.精神障害者の動向
4.難病患者の動向

すべての人がわかりあえる。
そんな豊かな社会をめざしています。

第1節 計画のあらまし

1.計画策定の趣旨

[1]背景

高知県では、昭和56年の国際障害者年のテーマである「完全参加と平等」の実現を目指して、昭和57年8月に10か年計画である「障害者対策に関する長期計画」を策定し、積極的な障害者福祉施策を進めてきました。
前計画は、「総合対策」、「保健・医療対策」、「教育の充実対策」、「雇用・就業対策」、「福祉対策」及び「生活環境の改善対策」について基本的方向を明らかにしており、この10年間それぞれの分野で総合的な施策の推進に努めてきました。

[2]実施状況

前計画の実施状況については、平成4年12月「『障害者対策に関する長期計画』の実施状況」として取りまとめたところであり、
・障害者福祉に関する各種制度の創設、充実
・障害者自身の自立、社会参加意識の高まり
・障害及び障害者問題に対する県民の理解の深まり
など、障害者福祉は着実に向上しています。

[3]今後の課題

障害者福祉は、社会の変化に伴い、より質の高い内容が求められており、そういった意味では「完全参加と平等」の実現のため、引き続き社会の変化や障害者のニーズに対応した適切な施策の推進、県民意識の高揚を図る必要があります。
また、人口の高齢化等に伴い、障害者の高齢化や障害の重度化が進んでおり、こうした新たな課題への対応も迫られています。
さらに、高知県では全国に先がけて本格的な高齢化社会を迎えようとしており、障害者施策を適切に進めることは、高齢化社会への対応にもつながり、今後の障害者福祉施策を進めるに当たっては、社会全体の問題としてとらえる必要があります。

[4]計画策定の趣旨

前計画の成果をさらに発展させ、残された課題や新たな課題に適切に対応し、前計画の目標である「完全参加と平等」の実現を目指して、引き続き障害者福祉施策を総合的、計画的に推進することを目的に「高知県障害者福祉に関する新長期計画」を策定します。

2.計画の期間

この計画の期間は、平成5年度からおおむね10年間(平成14年度まで)とし、社会情勢の変化等により必要な場合、見直しを行います。

3.計画の位置付け

[1]高知県総合計画の部門計画とし、今後の障害者福祉の基本的方向を示す県行政の指針とします。
[2]県民や民間企業等に対して広く理解を求め、障害者自身はもとより、すべての県民の自主的、主体的な行動のための目標、指針とします。
[3]国に対しては計画内容の実現のために必要な要請を行い、市町村に対しては計画と一体的な施策の推進を求めます。

4.障害者の概念

この計画における「障害者」の概念は、1975年12月9日の第30回国連総会で決議された「障害者の権利宣言」によるものとします。
障害者とは、「先天的か否かにかかわらず、身体的又は精神的能力の不全のために、通常の個人又は社会生活に必要なことを確保することが、自分自身では完全に又は部分的にできない人」を意味します。

5.計画の基本的な考え方

[1]基本理念と目標

ノーマライゼーション(障害者が家庭や地域で障害を持たない者と同等に生活し、活動できる社会づくり。)を基本理念として、障害者の「完全参加と平等」(障害者が社会の一員として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加し、それによってもたらされる利益を平等に受けること。)の実現を目標とします。

[2]基本的な考え方

計画の策定に当たっては、「完全参加と平等」の実現に向け、「障害者の地域での自立生活の推進」及び「障害者の生活の質の向上」を基本的な考え方とします。
(1)障害者の地域での自立生活の推進
各部門を通じて障害者の地域での自立生活に向けた施策展開を図り、特に地域での自立生活にとって欠かすことのできない障害者の自立意欲の向上、県民の理解促進、やさしい街づくり、雇用の促進等を積極的に推進します。
(2)障害者の生活の質の向上
社会の変化に伴い、障害者福祉はより高い目標を目指すべきであり、また、障害者の高齢化、障害の重度化に対応するためにも、障害者の生活の質の向上を図るための福祉サービスを推進します。

6.計画の体系

この計画は、障害者福祉に関する施策を
●福祉のこころづくり
●保健・医療の充実
●教育の充実
●雇用・就労の促進
●福祉サービスの充実
●生きがいの創造
●やさしいまちづくり
●福祉を支えるひとづくり
の8部門に区分し、それぞれの部門には、「重点施策」、「施策の方向」及び「具体的取組み」を掲げました。

7.計画の進め方

障害者福祉を円滑に進めるためには、行政の取組み、企業を含めた県民の理解と取組み、障害者自身の自立意欲の調和が大切です。
また、この計画を進めるに当たっては実施状況等を適宜点検し、着実に推進します。

[1]行政の取組み

県は、高知県障害者対策推進本部の総合調整のもとに、関係部局が連携して計画を推進します。
市町村は、住民に最も身近な福祉サービスの提供者として、この計画と整合を図りながら、地域の実情に即した施策を推進します。

[2]県民の役割

県民、企業等社会の構成員は、ノーマライゼーションの理念のもとに、障害者問題を特別なものとしてとらえるのではなく、「障害者が住みよい社会は、全ての人々に住みよい社会である。」と認識し、ボランティア活動、障害者雇用、やさしい街づくり等計画の推進に自主的、主体的に取り組みます。

[3]障害者の自主的な参加

障害者自身は、主体性、自立性を持って地域社会の活動等に積極的に参加するよう行動します。

第2節 障害者の動向

1.身体障害者の動向

平成5年3月31日現在、高知県の身体障害者手帳交付数は34,692人であり、前計画策定時の昭和57年度27,593人と比較すると、25.7%増加しています。
年齢別には18歳未満は3.5%減少しているが、逆に18歳以上は26.5%増加しています。

身体障害者手帳交付数

年度\区分
18歳未満 18歳以上 合計
昭和57年度 712人
(2.6%)
26,881人
(97.4%)
27,593人
(100.0%)
平成4年度 687人
(2.0%)
34,005人
(98.0%)
34,692人
(100.0%)
増加率 △3.5% 26.5% 25.7%

各年度末現在  ()内は構成比  資料:障害福祉課

障害の部位別では、肢体不自由が20,710人、59.7%を占め、次いで内部障害、視覚障害の順となっています。
昭和57年度に比較し内部障害が大きく増加しているのは、昭和59年にぼうこう、直腸機能障害、昭和61年に小腸機能障害が障害の範囲に追加されたことによるものです。

■障害部位別身体障害者手帳交付数

年度\区分
視覚 聴覚平衡 音声言語 肢体 内部 合計
昭知57年度 4,631人
(16.8%)
4,402人
(15.9%)
246人
(0.9%)
16,553人
(60.0%)
1,761人
(6.4%)
27,593 人
(100.0%)
平成4年度 4,186人
(12.1%)
3,941人
(11.4%)
361人
(1.0%)
20,710人
(59.7%)
5,494人
(15.8%)
34,692人
(100.0%)
増加率 △9.6% △10.5% 46.7% 25.1% 212.0% 25.7%

各年度末現在  ()内は構成比  資料:障害福祉課

障害の等級別では、1~2級の重度が15,784人、45.5%と最も多く、次いで3~4級の中度、5~6級の軽度の順となっています。
昭和57年度との比較では、1~2級が58.9%増加し、逆に5~6級は9.5%減少しています。

障害等級別身体障害者手帳交付数

年度\区分
1~2級
(重度)
3~4級
(中度)
5~6級
(軽度)
合計
昭和57年度 9,932人
(36.0%)
9,429人
(34.2%)
8,232人
(29.8%)
27,593人
(100.0%)
平成4年度 15,784人
(45.5%)
11,461人
(33.0%)
7,447人
(21.5%)
34,692人
(100.0%)
増加率 58.9% 21.6% △9.5% 25.7%

各年度末現在  ()内は構成比  資料:障害福祉課

年齢別には、18歳未満の児童が2.0%、一方65歳以上の高齢者が55.7%を占め、65歳以上の占める割合は年々増加しています。

年齢別身体障害者手帳交付数

年度\区分
0~17歳 18~64歳 65歳~ 合計
平成元年度 721人
(2.2%)
15,345人
(46.1%)
17,174人
(51.7%)
33,240人
(100.0%)
平成2年度 702人
(2.0%)
15,243人
(44.4%)
18,421人
(53.6%)
34,366人
(100.0%)
平成3年度 698人
(2.0%)
14,981人
(43.3%)
18,953人
(54.7%)
34,632人
(100.0%)
平成4年度 687人
(2.0%)
14,681人
(42.3%)
19,324人
(55.7%)
34,692人
(100.0%)

各年度末現在  ()内は構成比  資料:障害福祉課

2.精神薄弱者の動向

身体障害を理由に福祉サービスを受けるためには、身体障害者手帳の交付を受けることが原則として必要ですが、精神薄弱の場合、療育手帳の交付は必ずしも必要ではありません。
このため、精神薄弱者の実数把握は困難ですが、平成5年3月31日現在、高知県の療育手帳の交付数は2,909人であり、このうち80.4%、2,338人が18歳以上で18歳未満は19.6%、571人となっています。
また、前計画策定時の昭和57年度1,382人に比較し、110.5%増加しているが、これは平成3年12月から始まった療育手帳の交付を受けた精神薄弱者に対する運賃割引制度等が影響していると考えられます。

療育手帳交付者数(その1)

年度\区分
18歳未満 18歳以上 合計
昭和57年度 599人
(43.3%)
783人
(56.7%)
1,382人
(100.0%)
平成4年度 571人
(19.6%)
2,338人
(80.4%)
2,909人
(100.0%)
増加率 △4.7% 198.6% 110.5%

各年度末現在  ()内は構成比  資料:障害福祉課

療育手帳交付者数(その2)

年度\区分
重度(A) 中軽度(B) 合計
昭和57年度 861人
(62.3%)
521人
(37.7%)
1,382人
(100.0%)
平成4年度 1,516人
(52.1%)
1,393人
(47.9%)
2,909人
(100.0%)
増加率 76.1% 167.4% 110.5%

各年度末現在  ()内は構成比  資料:障害福祉課

3.精神障害者の動向

精神科医療施設に入院している精神障害者数は、平成4年6月30日現在で3,892人となっています。
昭和57年と比較すると、全体で254人、6.1%の減となっています。
入院内訳別にみると、措置入院患者が大きく減少し、措置以外の入院患者が増加しています。

精神障害者入院患者数

年度\区分
入院患者数
措置入院 指置以外の入院 合計
昭和57年度 831人 3,315人 4,146人
平成4年度 108人 3,784人 3,892人
増加率 △87.0% 14.1% △6.1%

各年6月末日  資料:医務課

4.難病患者の動向

難病患者(特定疾患対象患者)は、平成5年3月31日現在で2,092人で、対象疾患は34疾患となっています。
昭和57年度と比較すると、対象疾患の拡大等があり、226.4%の大幅な増加となっています。

難病患者数

年度\区分
疾患数 対象患者
昭和57年度 24疾患 641人
平成4年度 34疾患 2,092人
増加率 226.4%

各年度末現在  資料:健康対策課

第1章
福祉のこころづくり

障害者福祉の目標は、障害者が家庭や地域で障害を持たない者と同等に生活し、活動のできる社会づくりを目指す「ノーマライゼーション」を基本理念として、障害者の「完全参加と平等」の実現です。
このような社会は、障害者のためだけのものではなく、すべての県民にとって豊かな社会です。
そのためには、県民一人ひとりが、障害及び障害者問題について正しく理解し、豊かな心を持ち、そして行動することが大切です。

福祉のこころづくり 啓発広報活動の推進 ・障害及び障害者問題についての正しい理解の促進
・啓発広報活動に対する民間への協力要請等
福祉教育と交流の促進 ・学校教育等における福祉教育と交流の推進
・地域における福祉教育と交流の推進

互いに理解しあい、助け合える豊かな心を育んでいきたい。

啓発広報活動の推進

現状と課題

障害者が地域で自立した生活を送るためには、道路、建物、交通機関等を障害者が利用しやすいように整備するとともに、障害及び障害者問題についての県民の正しい理解が必要です。
このため、テレビ、新聞等のマスメディアや県、市町村の広報誌等による様々な啓発広報活動に取り組んでいます。
平成5年度の県民世論調査によれば、障害者福祉の目標である「完全参加と平等」という言葉を聞いたことがあると答えた者が37.5%、聞いたことがないと答えた者が62.5%となっています。
この結果を踏まえ、今後とも、様々な広報媒体、行事等を通じて、積極的な啓発広報活動に取り組み、障害及び障害者問題について県民の正しい理解を深める必要があります。
また、障害者自らも自立性、主体性を持ち、社会活動に積極的に参加し、自立意欲を高めることも大切です。

障害者福祉の目標は、障害を持つ方の社会への「完全参加と平等」の実現です。あなたは、この「完全参加と平等」という言葉を聞いたことがありますか。

〈総合〉N=936人 聞いたことがある 聞いたことがない
37.5% 62.5%

国は、毎年12月9日を「障害者の日」と定めています。あなたは12月9日が「障害者の日」ということを知っていますか。

〈総合〉N=936人 知っている 月日は知らないがあることは知っている 知らない
9.1% 36.1% 54.8%

資料:平成5年度「県民世論調査」知事公室

施策の方向 具体的取組み
1.障害及び障害者問題についての正しい理解の促進 (1)マスメディアによる啓発効果は大きく、新聞、テレビ、ラジオなどの県の広報媒体を活用した啓発広報活動を通じて県民の理解を促進します。
(2)住民に身近な市町村における啓発広報活動を推進するため、広報誌、各種行事等を活用した積極的な啓発広報活動を市町村に対し、要請、指導します。
(3)障害者の人権の尊重など、「障害者の日」(12月9日)の趣旨について広く県民の理解を得るため、効果的な啓発広報を進めます。
(4)「身体障害者福祉週間」(12月9日~12月15日)、「精神薄弱福祉月間」(9月1日~9月30日)、「障害者雇用促進月間」(9月1日~9月30日)等に関係する各種行事等を通じて県民の理解を促進します。
(5)社会教育の各種研修・講座、社会教育諸学級及びPTA活動等において、障害及び障害者問題についての理解を促進します。
(6)障害及び障害者問題に関する啓発用ビデオの制作に取り組みます。
(7)障害及び障害者問題の理解促進に関する啓発資料を提供するため、視聴覚ライブラリーの充実を図ります。
(8)啓発用パンフレット等の作成・配布、心のふれあいをテーマとした体験作文の募集、障害者の作品の展示等の様々な取組みを実施し、県民の理解を促進します。
2.啓発広報活動に対する民間への協力要請等 (1)報道機関に対して障害者のスポーツ、文化活動などの啓発広報素材を提供し、啓発広報の協力を依頼します。
(2)多くの県民が利用する公共交通機関等への啓発用ポスターの掲示、各種団体の広報誌を通じての啓発等、民間に対して啓発広報の協力を依頼します。
(3)障害者団体、福祉団体等が行う啓発広報活動に対し、市町村と連携して支援します。

福祉教育と交流の促進

現状と課題

県民一人ひとりが障害及び障害者問題に対する正しい理解を深めることは、「完全参加と平等」の実現のうえで極めて重要です。
また、高齢化社会に向け豊かな福祉社会を築くためにも、障害者や高齢者に対する思いやりの心を、幼少時から育むことが大切です。
このため、中・高校生が社会福祉施設との交流等をとおして豊かな心を育てるボランティア体験事業、心身に障害のある児童生徒と地域社会の人々との交流をとおして障害者に対する正しい理解と認識を深めるとともに心身障害児自身の経験を深める交流教育、さらに、地域住民を対象としたふれあいのまちづくり事業など地域での交流活動を実施しています。
しかしながら、障害及び障害者問題に対する県民の正しい理解については、十分とはいえず、今後とも、学校や地域での福祉教育と交流を一層充実して、ふれあい、交流をとおして自然な姿で障害や障害者に対する理解を深めることが必要です。

学校における福祉教育の状況

名称 校数
社会福祉活動推進校 243校
ボランティア体験校 10校
心身障害児交流活動地域推進研究校 2校
心身障害児理解推進校 12校

平成4年度現在
資料:厚生援護課、高校教育課、特殊教育課

施策の方向 具体的取り組み
1.学校教育等における福祉教育と交流の推進 (1)小・中学校及び高校の児童生徒の社会福祉に対する理解を高める「社会福祉活動推進育成事業」を充実し、福祉教育を推進します。
(2)高校生を対象とした「ボランティア体験事業」や「ボランティア施設・在宅訪問体験事業」を継続し、障害者や高齢者との交流や体験学習をとおして福祉教育の促進を図ります。
(3)特殊教育諸学校の児童生徒と地域の人々との互いの理解と認識を深めるため、「心身障害児交流活動地域推進研究校」等を指定し、継続的な交流活動を推進するとともに、指定校の拡充を図ります。
(4)特殊教育諸学校の児童生徒と小・中学校の児童生徒との理解と認識を深めるため、「心身障害児理解推進校」を指定し、交流教育を一層推進します。
2.地域における福祉教育と交流の推進 (1)市町村社会福祉協議会の行う「ふれあいのまちづくり事業」等地域住民を対象とする各種事業を支援し、地域における福祉教育を推進します。
(2)「生涯学習ボランティア活動総合推進事業」等青少年の豊かな心を育むための事業を推進します。
(3)障害者団体等の行う障害者と県民の交流を図る交流事業に対し、市町村と連携して支援します。
(4)地域交流ホームの整備、施設入所者と地域住民との交流事業等社会福祉施設の行う交流事業に対し、支援します。

第2章
保健・医療の充実

障害は発生を予防することが基本であり、また、早期発見・早期療育によって障害を軽減し、持てる可能性を最大限に伸ばすことができます。
そして、障害者に適切な保健・医療サービスを提供するためには、それぞれの施策を充実するとともに、保健・医療・福祉の連携のとれた一体的なサービスの提供できる体制をつくる必要があります。

保健・医療の充実 障害の発生予防の充実 ・健康づくりの推進
・母子保健対策の推進
・成人・老人保健対策の推進
・二次障害の発生予防
障害の早期発見・早期療育体制の充実 ・健康診査の充実
・療育指導の充実
医療・リハビリテーションの充実 ・医療の充実
・リハビリテーションの充実
精神保健対策の充実 ・地域精神保健医療の充実
・心の保健づくりの推進
・精神障害者の社会復帰対策の推進
・精神科救急体制の整備
・県と市町村との協力体制づくり
保健・医療・福祉の連携 ・保健・医療・福祉サービスの効果的な提供
・情報の緊密化
・サービス調整推進会議等の充実

安心して暮せる社会づくりを願っています。

障害の発生予防の充実

現状と課題

障害は発生を予防することが基本です。平成3年度の「心身障害児・者実態調査」では、身体障害の原因は「病気」が4分の3近くを占め、また、精神薄弱の発生時期は「出生前」と「出生周辺」を合わせると約3分の1になっています。
そのため、妊娠前からの健康教育を推進し、母子保健知識の普及啓発に努めるとともに、妊娠中の健康管理についての情報提供や保健指導を充実する必要があります。
また、高齢化の進むなかで、寝たきり老人の増加が予測され、この原因となる脳卒中の予防対策として、基本健康診査や健診結果に基づく生活習慣の改善指導を行うとともに、骨粗しょう症や転倒防止をテーマとした健康教育を実施しています。
さらに、機能訓練や訪問指導を行い、日常動作能力の維持回復訓練や介護指導による寝たきり防止と、自立生活の支援を図ることも重要です。
しかしながら、基本健康診査の受診率の伸び悩み、機能訓練の実施回数が少ないといった課題があり、これらの事業の実施主体である市町村と連携して、利用しやすい体制づくりを推進する必要があります。
その他、障害の発生原因となる労働災害や交通事故等の防止対策についても、一層取り組む必要があります。

身体障害者の原因

〈総合〉N=16,876人 先天性 9.1%
病気 72.4% 脳性麻痺 2.2%
脊髄性小児麻痺 2.1%
脳血管障害 13.0%
その他の脳疾患 1.2%
神経筋疾患 0.5%
脊髄疾患 1.1%
骨・関節疾患 9.3%
膠原病 3.4%
その他の疾患 39.7%
事故 15.0% 交通事故 2.4%
労働災害 4.5%
戦傷 1.3%
その他の事故 6.8%
不明 3.5%

資料:「平成3年度心身障害児・者実態調査報告書」
障害福祉課

精神薄弱の発生時期

〈総合〉N=1,198人 出生前 13.4%
出生周辺 20.0%
0~5歳 42.4%
6~10歳 6.4%
11~15歳 1.9%
16歳以上 1.0%
不明 16.9%

資料:「平成3年度心身障害児・者実態調査報告書」
障害福祉課

注:「平成3年度心身障害児・者実態調査報告書」
平成3年6月に、在宅の身体障害児・者(1~4級)及び精神薄弱児・者を対象に、本人又はその家族に対し調査を実施しました。

施策の方向 具体的な取組み
1.健康づくりの推進  機能訓練や健康教育など住民に身近な保健サービスの実施拠点である市町村保健センターの整備促進を図り、総合的な健康づくりを推進します。
2.母子保健対策の推進 (1)思春期の男女や保護者に母子保健知識の普及を行うとともに、思春期の医学的問題等についての相談を実施します。
(2)市町村と連携して、母親学級や育児学級等の機会を利用し、障害の発生予防についての知識を普及します。
(3)障害発生のおそれの高い未熟児の出生防止のため、リスクの高い妊婦への保健指導を徹底します。
3.成人・老人保健対策の推進 (1)市町村と連携して、基本健康診査の実施方法の改善による受診率の向上等を図るとともに、健診結果に基づく生活習慣改善指導を充実します。
(2)骨粗しょう症予防をテーマとした重点健康教育等の一層の普及を図ります。
(3)市町村と連携して、介護指導や日常動作能力の維持回復訓練の充実に取り組みます。
4.二次障害の発生予防  車椅子常用の身体障害者を対象に市町村が実施する「身体障害者健康診査事業」を推進して、二次障害の発生の予防に取り組みます。

障害の早期発見・早期療育体制の充実

現状と課題

障害の早期発見は、早期治療により障害の治癒、軽減に効果的であり、また、適切な時期に、発達の段階に応じた適切な療育指導を行うことにより、発達を促し、その可能性を最大限に伸ばすことができます。
現在、新生児の先天性代謝異常等検査や、乳幼児の心身の発達段階に応じた健康診査を実施していますが、制度の周知徹底による受診率の向上と健康管理体制の整備による地域間格差の解消が課題となっています。
また、より適切な療育指導を行うため、市町村、保健所、児童相談所等関係機関の一層の連携強化が必要です。

健康診査の受診状況

昭和63年度 平成元年度 平成2年度 平成3年度 平成4年度
〔1歳6ヶ月児〕 受診人数 7,462人 7,149人 6,865人 6,394人 6,287人
受診率 87.3% 86.8% 86.5% 85.5% 86.7%
〔3歳児〕 受診人数 7,721人 7,316人 7,114人 6,989人 6,376人
受診率 82.3% 83.0% 84.5% 85.0% 84.9%

資料:健康対策課

施策の方向 具体的取組み
1.健康診査の充実 (1)心身障害の早期発見・早期治療のため、「先天性代謝異常等検査」や「神経芽細胞腫検査」の周知徹底を図ります。
(2)異常の早期発見のため、妊婦や乳幼児の健康診査の受診率の向上を図ります。
(3)妊婦から乳幼児まで一貫した健康管理ができる体制づくりを推進します。
2.療育指導の充実 (1)医療機関等関係機関と連携して、保健所での療育指導の充実を図ります。
(2)訪問指導や巡回療育相談、施設を利用した地域療育事業等を通じて、地域の障害者及び保護者に対し障害児の発達段階に応じた適切な療育指導を行います。
(3)施設において障害と能力に応じた適切な療育指導が行えるよう、施設と連携して、条件整備を図ります。

医療・リハビリテーションの充実

現状と課題

医療は、患者の症状に対応して、早期かつ適切に提供される必要があり、そのことにより、予後が大きく左右されます。
このため、救急医療体制の確保と充実を図る必要があります。
また、人口の高齢化に伴う慢性疾患の増加等疾病構造の変化により、機能障害を伴う患者が増加しています。
このため、患者の症状に対応して、適切な医療を効率的に提供するため、医療の高度化・専門化に加えて、在宅医療も含めた医療施設間の機能分担と連携等、医療供給体制のシステム化を推進するとともに、保健・医療・福祉の連携による一体的なサービスの提供を図る必要があります。
リハビリテーションは、専門職員による専門的なサービスの提供が求められているとともに、機能障害の発生原因の多くを占めている脳卒中等成人病対策や寝たきり老人等の医療需要への対応等、障害に応じて一貫性をもって供給されるようなシステムづくりを検討する必要があります。

各種医療費給付状況

年度\区分
未熟児養育医療 育成医療 更生医療 特定疾患治療 小児慢性特定疾患治療
昭和63年度 112人 333人 663人 1,364人 713人
平成元年度 102人 312人 634人 1,625人 682人
平成2年度 106人 320人 671人 1,746人 742人
平成3年度 118人 294人 716人 1,748人 793人
平成4年度 99人 307人 862人 1,942人 843人

資料:障害福祉課 健康対策課

施策の方向 具体的取組み
1.医療の充実 (1)障害を残さないためにも、救急医療知識の普及に努めるとともに、高度な救急医療や救急医療情報システムの充実など、救急医療の確保と充実を図ります。
(2)患者の病状に対応して、適切な医療を効率的に提供するため、在宅医療を支える地域の開業医と中核的病院等との連携を図り、高額医療機器の共同利用、患者の紹介・後送等、医療供給体制のシステム化を推進します。
(3)腎、角膜、骨髄の提供について、県民の理解と協力を得るための普及啓発に努め、これらの臓器提供に関する情報提供体制の充実を図ります。
(4)心身障害者の歯科保健・治療について、口腔機能の正常な発達、基本的な生活習慣を確立するため早期指導を行うなど、保健と医療が一体となった体制づくりと専門又は地域の中核医療機関において歯科の総合的な診療機能の整備を促進します。また、寝たきり老人の歯科保健・治療については、施設との連携や在宅訪問治療も含めた総合的な対策について検討します。
(5)「未熟児養育医療」、身体に障害のある児童に対する「育成医療」の給付を行うとともに、身体障害者に対する「更生医療」について市町村と連携してその周知を図ります。
(6)難病に対する「特定疾患治療研究事業」や「小児慢性疾患治療研究事業」を実施するとともに、保健所等における相談機能の充実を図ります。
2.リハビリテーションの充実 (1)重度身体障害者更生援護施設等において、社会復帰に必要な各種更生訓練を実施します。
(2)市町村の実施する老人保健事業における機能訓練については、利用者送迎体制の整備や、より身近な場所での実施など、市町村と連携してその充実を図ります。
(3)地域における機能訓練の場として、市町村保健センターの整備促進を図ります。
(4)寝たきり老人等にリハビリテーション等を提供し、家庭復帰を促進するため、老人保健施設の広域的な均衡を考慮し、整備を促進します。

精神保健対策の充実

現状と課題

疾患と障害を持つ精神障害者対策は、適切な治療を受けることに併せて、精神障害者が自立した生活を送るための支援サービスを構築するなど、地域社会の中で障害を持たない者と共に生活できるような地域づくりが重要です。
そのためには、精神疾患や精神障害者に対する正しい理解を広げる啓発活動を推進するとともに、精神医療の一層の充実を図り、社会復帰、社会参加を積極的に促進する必要があります。
また、精神障害者を地域で幅広く支援するため、保健所や精神保健センターを拠点に医療機関、福祉事務所、市町村、職場、学校、地域の人々との連携と自助組織やボランティア組織の育成により、組織的、継続的な地域精神保健活動を行うことが必要です。

精神病院病類別入院患者の推移

年度\病類別
精神分裂病 痴呆症疾患 アルコール中毒 そううつ病 てんかん 精神薄弱 その他
昭和63年 2,399人 470人 385人 158人 153人 152人 372人 4,089人
平成元年 2,456人 560人 402人 169人 143人 135人 258人 4,123人
平成2年 2,376人 464人 387人 167人 155人 139人 312人 4,000人
平成3年 2,365人 465人 389人 150人 147人 148人 335人 3,999人
平成4年 2,297人 416人 373人 158人 141人 138人 369人 3,892人

各年6月30日現在
資料:医務課

施策の方向 具体的取組み
1.地域精神保健医療の充実  精神障害者の地域ケアと住民の精神保健の向上を図るため、ノーマライゼーションの理念に立って相互に関連を保ちながら、保健・医療・福祉が一体となった地域精神保健医療の充実を図ります。
2.心の健康づくりの推進
地域、職域、学校などで個別に実施している精神保健活動を調整し、ライフ・ステージに応じた心の健康づくりを推進するため、保健・医療・福祉等の連携と地域住民の自主的な活動組織の育成・支援により、組織的、継続的な精神保健活動に取り組めるシステムの確立を進めます。
3.精神障害者の社会復帰対策の推進 (1)医療機関におけるチーム医療の推進やデイケア等の外来治療、社会復帰のための相談、援助の充実を図ります。
(2)保健所において、精神相談の充実と継続的なケアの実施や社会復帰相談事業を充実します。
(3)社会適応、職場適応のための通院患者リハビリテーション事業を充実します。
(4)共同作業所、グループホームや地域生活支援の機能を持つ社会復帰施設の整備促進等を図ります。
4.精神科救急体制の整備  精神障害者の社会復帰を促進し、地域においてケアができるよう、症状の急変等に直ちに対応できる精神科救急体制の整備を進めます。
5.県と市町村との協力体制づくり  精神保健は住民の健康と福祉に関する重要な問題であり、県と市町村が一体となって対策が実施できる体制づくりを進めます。

保健・医療・福祉の連携

現状と課題

障害者福祉は、様々な分野が連携、協力しながら進めることにより、効果が十分に発揮されます。
とりわけ、保健・医療・福祉の連携を図り、「いつでも」「どこでも」安心してサービスが受けられる体制を整備していく必要があります。
身体障害者、高齢者に関する福祉サービスは、すでにその権限が市町村に移譲され、また、現在行われている地域保健の総合的な見直しの中で、母子保健事業など住民に身近で頻度の高い保健サービスについても市町村に移譲されようとしています。
こうしたことから、住民に身近な市町村において連携強化を推進し、地域住民に保健・医療・福祉の一体的なサービスを提供する体制の整備が求められています。 県においては、連携を推進するためのマンパワーの養成・研修や保健・医療・福祉に関する広域的な調整機能の強化を図る必要があります。

施策の方向 具体的取組み
1.保健・医療・福祉サービスの効果的な提供 (1)市町村において、住民の総合的なニーズに対応した保健・医療・福祉の連携のとれたサービスが提供できる体制づくりを推進します。
(2)保健・医療・福祉の連携を推進するため、これらの施設整備に当たっては、複合的な整備を促進します。
2.情報の緊密化 (1)保健・医療・福祉の各分野において、高齢者や障害者の実態やニーズに関する情報の緊密化を図ります。
(2)保健・医療・福祉に従事する職員一人ひとりが、各分野に関する情報提供等のできるよう、総合的な研修を実施します。
3.サービス調整推進会議等の充実 (1)保健所単位に設置している保健福祉サービス調整推進会議の保健・医療・福祉サービスに関する企画調整機能の充実を図ります。
(2)市町村単位に設置している高齢者サービス調整チームの効果的な活用を図ります。

第3章
教育の充実

心身障害教育の意義は、心身障害児一人ひとりの可能性を最大限に伸ばすことにあります。
そのためには、その障害の状態や能力・適性等に応じた教育の場や学習の機会を提供し、適切な教育を進めることが必要です。
また、生涯教育の観点から、社会教育においても、障害者の学習の機会を充実する必要があります。

教育の充実 学校教育の充実 ・早期教育の充実
・適正就学の推進
・教員の資質の向上
・教育成果の高揚
・条件整備
進路の確立 ・進路指導の充実
・後期中等教育の充実
・関係機関との連携強化
社会教育の推進 ・学習機会の提供

みんなが秘めている可能性。
見つけだし、そして導いてくれる。
そんな、人と場所が必要です。

学校教育の充実

現状と課題

心身に障害があるために、小学校や中学校の通常の学級における教育では十分な教育効果が得られない子供たちに対しては、一人ひとりの心身の障害の状態や能力・適性等に応じた手厚い教育が受けられる体制の確立が必要です。
心身に障害のある子供たちの望ましい成長・発達を図るためには、早期に子供の状態を正しく把握することが大切であることから、早期発見、早期治療に併せて早期教育が重要になっており、医療機関、幼稚園等との緊密な連携が必要です。
心身障害児の教育を効果的に行うためには、適正な就学が大切です。適正な就学を図るためには、市町村教育委員会や就学指導委員会の担当者等の資質の向上が大切なことから、教育相談事業、各種研修会を開催しています。しかしながら、なお社会一般の人々の心身障害教育に対する理解が十分得られない場合があり、今後、より一層の施策の充実が重要となってきます。
心身障害児の教育を進めるに当たっては、近年、児童生徒の障害が多様化の傾向にあることから、一人ひとりの障害の状態や能力・適性等に応じた指導内容・方法の改善、工夫や指導体制の充実が大切です。
そのために、学習指導要領の趣旨の徹底や教育課程研究校の指定、指導書の作成を行うなどし、指導内容・方法の改善及び教材教具の工夫に努めています。
また、教員の資質の向上を図るため、初任者研修から10か年経験者の研修や教育研究機関等へ長期派遣、文部省関係の講習会等へ派遣を行っています。
今後、教員の研修体系の見直し等を行い、より専門性を高める必要があります。
さらに、社会情勢等の変化に即して、施設・設備等の教育条件の整備・充実を図る必要があります。

県立盲・聾・養護学校の設置状況

学校 校数 学部
盲学校 1校 幼稚部、小学部、中学部、高等部
聾学校 1校 幼稚部、小学部、中学部、高等部
養護学校 精神薄弱 3校 小学部、中学部、高等部
肢体不自由 3校(2校) 小学部、中学部、高等部
病弱 1校 小学部、中学部、高等部

平成5年5月1日  ()数は分校数で内数  資料:特殊教育課

県立盲・聾・養護学校の推移

児童生徒数
昭和53年度 701人
昭和54年度 814人
昭和60年度 683人
平成元年度 660人
平成5年度 542人

資料:特殊教育課

施策の方向 具体的取組み
1.早期教育の充実 (1)盲学校、聾学校の幼稚部のより一層の整備充実を図ります。
(2)盲・聾・養護学校の教育相談機能の充実を図ります。
(3)巡回教育相談、移動教育相談の充実に努め、心身に障害のある幼児に対する早期からの適切な指導を推進します。
(4)医療機関、保健所、難聴幼児通園センター、保育所、幼稚園等との連携を図り、早期教育に総合的に取り組みます。
2.適正就学の推進 (1)市町村教育委員会就学指導担当者の資質の向上のため、研修会等を開催します。
(2)教育相談事業の推進、充実を図ります。
(3)市町村教育委員会の設置する就学指導委員会の構成と運営の適正を図るよう指導・助言するとともに、その研修会等を積極的に援助します。
(4)市町村教育委員会に対して、就学前から、就学相談事業や啓発事業を行い、保護者の理解と協力を求めるように指導、助言をします。
(5)児童生徒については、就学後においても、心身の障害の変化等に応じて適切な教育措置が講じられるよう、関係機関との連携を図ります。
3.教員の資質の向上 (1)初任者研修から10か年経験者の研修まで、教員の初期・中期研修を充実し、専門的かつ理論的、実践的な指導力の向上を図ります。
(2)文部省及び関係各課、県教育センター等と連携し、心身障害教育に関する基礎的、専門的研修会を開催し、指導力の向上を図ります。
(3)心身障害教育の当面する研究課題について専門的研修を行うため、長期・短期研修に教員を派遣します。
(4)校内研修の充実に努め、指導力の向上を図ります。
(5)教育に関する自主的、計画的な各種教育研究活動を奨励します。
4.教育成果の高揚 (1)教育課程研究校を指定し、教育課程の編成及び学習指導の方法等について研究を進めます。
(2)通級指導教室の指導内容等の充実を図ります。
(3)児童生徒の能力・適性等に即した教育課程を編成し、指導内容の充実と指導方法の改善に資するための指導書を作成します。
(4)特殊教育諸学校の校内研修等への補助を行います。
5.条件整備 (1)教職員定数改善について国に要請します。
(2)盲・聾・養護学校に教育用コンピュータ等新しい教育機器を導入し、学力の向上につなげます。
(3)校舎新築等、児童生徒の障害の実態等に即した施設・設備の改善を図ります。
(4)特殊学級及び通級指導教室の整備・充実が図られるよう、市町村教育委員会を指導・助言します。
(5)教育情報通信ネットワークシステム化を図ります。
(6)教育センターの整備充実を図ります。

進路の確立

現状と課題

盲・聾・養護学校の卒業生の進路は進学、就労、福祉施設入所・通所等となっています。
近年、障害者の雇用の促進等に関する法律の改正や福祉施設の増設等が図られているが、卒業生の進路については、在籍生徒の障害の多様化により極めて厳しい状況です。
こうした状況のもと、進路指導の充実を図るため、「進路指導主事連絡協議会」、「現場実習連絡協議会」の開催や労働、福祉等関係機関との連携を緊密にしながら理解と協力を求めてきました。
また、中学部等の卒業生の進学のため、盲・聾・養護学校には、すべて高等部を設置し、その受け入れの条件整備を行ってきました。
今後は、社会の変化に対応できる後期中等教育の充実や卒業生の進路の開拓、就労を円滑に行うために、保護者の協力のもとに、関係機関及び企業との連携をより一層積極的に進める必要があります。

国・公立盲・聾・養護学校中学部、高等部卒業生の進路状況

年度\区分
学部 進学 就業 施設 その他
平成元年度 中学部 72.6% 0% 26.0% 1.4%
高等部 9.9% 39.6% 41.6% 8.9%
平成2年度 中学部 76.2% 0% 14.3% 9.5%
高等部 11.0% 28.0% 49.1% 11.9%
平成3年度 中学部 89.8% 1.7% 8.5% 0%
高等部 10.4% 41.5% 33.0% 15.1%

資料:特殊教育課

施策の方向 具体的取組み
1.進路指導の充実 (1)生徒一人ひとりの教育成果の向上に努め、生徒の適性等を的確に把握し、それに見合った進路の開拓を図ります。
(2)現場実習等のあり方等を協議する協議会を開催します。
(3)進路指導のあり方等を研究するための施策の充実を図ります。
(4)校内進路指導体制の充実を図ります。
2.後期中等教育の充実 (1)働く意欲や作業能力を高め、実習農園の確保や作業棟の拡充等教育環境を整備します。
(2)障害の状態や能力等に適した職業教育の充実を図ります。
(3)教育課程を見直すとともに、現場実習を充実させるなど、特色ある教育内容の充実・改善を図ります。
(4)卒業生の動向等の調査を行い、その結果をフィードバックし教育課程の改善・充実を図ります。
(5)社会の変化に応じて、後期中等教育のあり方を研究します。
3.関係機関との連携強化  生徒一人ひとりの円滑な社会参加を促すため、関係諸機関との連絡・調整のための施策を推進します。

社会教育の推進

現状と課題

社会教育は、学習者の自発性、自立性に基づいて行われることが基本であり、「いつでも、どこでも、だれでも」学ぶことのできる生涯学習社会の実現を目指す取組みを進めています。
障害者にとって社会教育は、社会の変化に対応して学ぶことにより、自己の充実、生活の向上を図り、社会参加の促進につながります。
また、社会教育の場で、障害者と地域の人々が共に学ぶことは、障害及び障害者問題に対する正しい理解を深めます。
こうした社会教育を推進するためには、障害者が地域の人々と共に学び、交流することのできる環境づくりが必要です。

施策の方向 具体的取組み
1.学習機会の提供 (1)市町村と連携して、社会教育の場に障害者が積極的に参加、交流できるよう、企画、実施します。
(2)公民館、図書館等の社会教育施設にスロープ、車いす用トイレ等を設置するとともに、学習の場における意志伝達手段の確保等、障害者が学習活動に参加しやすい環境整備促進します。
(3)市町村や障害者団体等の実施する障害者に対する学習活動を支援します。
(4)障害者の学習活動を支援するボランティア活動を推進するとともに、ボランティアの養成、研修を実施します。

第4章
雇用・就労の促進

就労は、障害者にとって自立の経済的基盤となるとともに、社会参加の促進、生きがいに大きな効果があります。
障害者だれもに、その適性、能力に応じた就労の機会が提供されなければなりません。
そのためには、職業リハビリテーションの充実を図るとともに、一般雇用の促進はもちろん、福祉的就労についても促進する必要があります。

雇用・就労の促進 雇用の促進と安定 ・雇用促進を図るための啓発活動の促進
・雇用率達成指導の強化
・職業紹介・職業指導の充実
・重度障害者の雇用対策の推進
・精神薄弱者・精神障害回復者の雇用対策の推進
・職場定着指導の促進
職業リハビリテーションの充実 ・職業能力開発校の活用
・職場適応訓練制度の活用
・障害者職業センターとの連携
・関係機関との連携
福祉的就労の場の拡大 ・福祉的就労の場の拡大

何かの、誰かの役に立つことがわかれば私という人間の存在を確認できる気がします。

雇用の促進と安定

現状と課題

障害者の雇用については、近年事業主の理解と関心の高まりにより着実に改善が図られ、雇用率も全国平均を上回っています。
しかし、まだ多くの障害者が働く機会を待っており、こうした求職者の就職促進が緊急の課題となっています。
この課題を解消するため、今後もより多くの事業主の理解と協力のもと、障害者がその適性と能力に応じた職業につき、健常者とともに社会経済活動に参加し、「生きるよろこび」を見出していくことができるような社会を実現して行く必要があります。

求職登録に基づく有効求職者及び就業中の者の状況

有効求職者837人
上肢 194人
下肢 231人
精薄 117人
内部 99人
聴覚等 85人
その他 111人

(平成5年3月末) 資料:職業安定課

就業中の者 1,820人
下肢 428人
上肢 312人
聴覚等 226人
視覚 141人
精薄 522人
その他 191人

(平成5年3月末) 資料:職業安定課

施策の方向 具体的取組み
1.雇用促進を図るための啓発活動の促進 (1)障害者の雇用促進のためのパフレットを作成し、企業に配布します。
(2)障害者雇用促進月間(毎年9月)に関する各種行事をとおして、障害者の雇用の安定促進のための啓発を行います。
2.雇用率達成指導の強化 (1)雇用率未達成企業に対して、関係機関による特別及び個別指導を行います。
(2)雇用改善の進まない企業に対しては、障害者雇入れ計画作成命令、雇入れ計画、適正実施、勧告公表制度の運用基準に従い、適正な運用を図ります。
(3)民間企業に率先して障害者雇用を推進する責務を有する県・市町村等の地方公共団体の障害者雇用を促進するとともに、法定雇用率未達成機関に対しては、採用計画を作成させるなどにより実効ある雇用率達成を図ります。
3.職業紹介・職業指導の充実 (1)各公共職業安定所間の連携を図り、求人・求職者の実態を常時把握し、そのニーズに応じた情報の提供により就職の促進を図ります。
(2)求職者に合わせた特別求人開拓による就職斡旋、障害者を対象とした集団面接会等による職業紹介など積極的な職業の斡旋を行います。
(3)高知障害者職業センターとの連携を強化して、的確な相談、職業紹介を行います。
(4)特定求職者雇用開発助成金制度を始めとする各種援護措置の活用により就職の促進を図ります。
4.重度障害者の雇用対策の推進  重度障害者多数雇用事業所の育成や第3セクター方式による重度障害者雇用企業の設立を図るため、関係機関との連携を密にします。
5.精神薄弱者・精神障害回復者の雇用対策の推進  特定求職者雇用開発助成金等の助成金及び職場適応訓練、職業準備訓練等の活用により就職の促進を図ります。
6.職場定着指導の促進 (1)公共職業安定所によるきめ細かな職場定着指導を実施して、安易な離職を防止します。
(2)障害者の職場定着を高めるため、事業主が自主的に行う障害者職場定着推進チームの設置を支援して、その活動を育成します。

職業リハビリテーションの充実

現状と課題

障害の重度化や重複化、障害者の高齢化が進む中で障害者の安定した就業を促進するためには、その能力や障害の状況に対応した職業リハビリテーションを総合的かつ効果的に実施して行くことが重要です。
このため、一般の職業能力開発校、国が設置する障害者職業能力開発校への入校を促進する必要があります。
また、企業に雇用されている障害者の職業能力開発向上のため、企業における職業能力開発の支援も必要です。

障害者職業能力開発施設への入所状況

人数
平成2年度 3人
平成3年度 6人
平成4年度 4人

資料:労政訓練課

県内公共職業能力開発施設への入所状況

人数
平成2年度 1人
平成3年度 1人
平成4年度 0人

資料:労政訓練課

施策の方向 具体的取組み
1.職業能力開発校の活用  職業訓練の実施に当たっては、障害を持たない者とともに職業訓練を受けることが可能な障害者については、一般の職業能力開発校で職業訓練を実施し、それが困難な者については、障害者職業能力開発校に入所斡旋する等により能力開発を推進します。
2.職場適応訓練制度の活用  民間企業に委託して行う職場適応訓練を積極的に活用し、職場への適応能力の向上を図ります。
3.障害者職業センターとの連携  職場への適応がより困難な障害者については、障害者職業センターとの緊密な連携のもと、障害者の早期就職へ向けた職業準備訓練等を積極的に推進します。
4.関係機関との連携  障害者の自立を進めるためには、教育、福祉及び医療部門との連携及び協力のもとにきめ細かな職業リハビリテーションの措置を提供していくことが重要であり、各部門で十分な連携のもと、職業自立に向けた職業リハビリテーションを実施します。

福祉的就労の場の拡大

現状と課題

民間企業での雇用の困難な障害者にとって、福祉工場、授産施設、小規模作業所などは、所得保障を図ることに加え、仕事を通じての社会との関わりなど、障害者の地域での自立生活の推進に大きな役割を果します。
このため、平成5年4月現在、福祉工場1施設、授産施設12施設及び小規模作業所15施設が運営されており、今後とも、障害の種類や程度等に応じた就労の場の確保として、適切な整備、運営を図る必要があります。
小規模作業所については、地域の実態等に即した運営が可能なことから全国的に数が多い反面、財政基盤が弱く、法に基づく施設や分場への転換を図るなど運営強化を進める必要があります。
また、身体障害者、精神薄弱者の福祉工場についても設置を促進する必要があります。

福祉的就労の状況

施設区分
施設数 利用者数
精神薄弱者福祉工場 1個所 11人
身体障害者授産施設 7個所 185人
精神薄弱者授産施設 5個所 256人
心身障害者小規模作業所 12個所 117人
精神障害者小規模作業所 3個所 47人
合計 28個所 616人

平成5年4月1日
資料:障害福祉課、医務課

施策の方向 具体的取組み
1.福祉的就労の場の拡大 (1)身体障害者授産施設、精神薄弱者授産施設については、障害者のニーズや地域の適正配置を考慮した整備を進めるとともに、授産施設の利用を促進するため、併せて福祉ホームやグループホームの整備を促進します。
また、対象者の少ない地域においては、分場制度や混合利用制度の活用により就労の場の拡大を図ります。
(2)小規模作業所については、運営のための助成措置を行うとともに、法定施設や分場への転換を推進します。
(3)関係機関と連携して、企業等に就労の困難な障害者が生活指導、健康管理等を受けながら就労する福祉工場の整備を促進します。
(4)授産施設、小規模作業所等の産品を共同で展示、販売する店舗の設置について、関係機関と連携して検討します。

主題:
ともに活動する社会をめざして
高知県障害者福祉に関する新長期計画 No.1
1頁~49頁
発行者:
高知県
発行年月:
平成5年12月
文献に関する問い合わせ先:
〒780 高知市丸の内1丁目2-20
TEL(0888)23-9634