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鹿児島県新障害者対策長期計画

NO.1

~すべての人のための平等な社会づくりをめざして~

鹿児島県

項目 内容
立案時期 平成7年3月
計画期間 平成7年度~平成16年度(10年間)

●はじめに

鹿児島県知事 土屋佳照

昭和56年の「完全参加と平等」を趣旨とする国際障害者年を契機として,県では,昭和57年7月に「鹿児島県障害者対策長期行動計画」を策定し,正しい障害者観の普及を図る啓発活動や福祉・保健医療・教育の充実,雇用の拡大等,諸施策を総合的に推進してまいりました。その結果,県民の障害者問題に対する理解も深まり,障害者の自立と社会参加が促進されるなど,本県の障害者対策は着実に進展してきたところです。
また,国際的には,「国連・障害者の十年」に続き,平成5年から「アジア太平洋障害者の十年」がスタートし,このような状況の中で,平成5年12月,「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改正され,障害者の福祉や障害の予防に関する総合的かつ計画的な施策の推進を図るため,国において障害者基本計画を策定し,都道府県や市町村においても,それぞれ障害者計画策定についての努力義務が課されました。
国では,障害者対策の一層の推進を図るため,長期的視点に立った「障害者対策に関する新長期計画」を策定しましたが,県においても,このような国の動向に対応し,本県の障害者の実態を踏まえて,今後取り組むべき課題とニーズに応えるため,ここに「鹿児島県新障害者対策長期計画」を策定いたしました。
この計画は,今後10年間にわたる障害者対策に関する基本的方策を示したものであります。市町村,関係機関・団体等と緊密な連携を図りながら,計画の積極的な推進に努めてまいりますので,県民の皆様の一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。
終わりに,計画策定に当たり,貴重な御意見を賜りました県障害者施策推進協議会,障害者関係団体並びに関係各位に対し厚くお礼を申し上げます。

平成7年3月

もくじ

1 基本的な考え方
■障害者の主体性,自立性の確立
■すべての人の参加によるすべての人のための平等な社会づくり
■障害の重度化・重複化及び障害者の高齢化への対応
■施策の連携
2 分野別施策の基本的方策
第1 啓発広報
■啓発広報の推進
■福祉教育の推進
■ボランティア活動の推進
第2 教育・育成
■心身障害児に対する教育施策の充実
■心身障害児に対する育成施策の充実
第3 雇用・就業
■障害別雇用対策の推進
■重度障害者対策の推進
■職業リハビリテーション対策の推進
第4 保健・医療
■心身障害の発生予防,早期発見及び研究の促進
■医療・リハビリテーションの充実
■精神保健対策の推進
■専門従事者の養成・確保
第5 福祉
■地域福祉の推進
■自立と社会参加の促進
■福祉サービスの充実
■生活安定のための施策の推進
■専門従事者の養成・確保及び障害者団体の活性化
第6 生活環境
■建築物の構造の改善
■住宅整備の促進
■公園施設整備の促進
■移動・交通対策の推進
■情報提供の充実
■防犯・防災対策の推進
第7 スポーツ,レクリエーション及び文化
■スポーツ,レクリエーションの振興
■文化活動の振興
第8 国際交流
3 推進体制等
資料編

1 基本的な考え方

本県では,昭和56年の国際障害者年のテーマである「完全参加と平等」の実現をめざして,昭和57年7月「鹿児島県障害者対策長期行動計画」を策定し,積極的に諸施策を推進してきました。その結果,障害者問題に対する県民の理解も深まるとともに,障害者※の社会参加と自立意欲も高まり,また,各分野における障害者施策の充実が図られてきました。
障害者が,障害を持たない人と同等に生活し,活動できる社会をめざす「ノーマライゼーション」の理念のもとに,障害者対策の一層の推進を図るため,国の「障害者対策に関する新長期計画」を基本とし,本県の障害者の状況等を踏まえ,新たな長期的視点に立った障害者対策に関する計画(新障害者対策長期計画)を策定することとしました。
新障害者対策長期計画は,次のような基本的考え方に基づき,平成7年度から10年間にわたる障害者のための施策に関する基本的方策を示すものです。

※ 障害者とは,障害者基本法により,身体障害者,精神薄弱者,精神障害者と規定されている。

■障害者の主体性,自立性の確立

基本的人権を持つ一人の人間として,障害者自身が主体性,自立性を確保し,社会活動へ積極的に参加していくことを期待するとともに,障害者がその能力を十分発揮できるような施策の推進に努めます。

■すべて人の参加によるすべての人のための平等な社会づくり

  1.  障害者が各種の社会活動を自由にできるような平等な社会をつくるためには,建物,道路等における障害の除去や,手話・点訳サービス等のコミュニケーション手段の充実,特に街づくり等を含む生活環境の改善や技術の進歩に応じた福祉機器の普及等を図ることが必要であり,このための施策の推進に努めます。
  2.  障害者の住みよい社会をつくることは,すべての人が住みよい,すべての人のための社会をつくることにほかなりません。このような観点から,平等な社会づくりに際しては,障害者を対象とした特別な措置を講ずるだけでなく,障害者の参加や利便を前提にした一般的な措置を講ずるよう努めます。
  3.  平等な社会づくりに際しては,行政はもとより,社会のすべての構成員,特に県民が障害者問題を理解し,主体的に取り組んでいく必要があります。このような全員参加による取組みを進めていくため,地域住民,企業等に対する啓発広報の充実により一層努めます。

■障害の重度化・重複化及び障害者の高齢化への対応

  1.  障害が重度であったり,重複している等のため,常時援護や保護を受けている障害者の割合は,増加する傾向にあります。これらの障害者が地域で安心して生活できるよう,その生活の質の向上に努めます。
  2.  人口構造の高齢化に伴い障害者の高齢化が進んできており,また,高齢者の中にも障害のある人が多くなっています。このような状況に即応した施策の実施に努めます。

■施策の連携

  1.  障害者対策と高齢者対策は,在宅福祉サービスの提供等の分野において重複することも多いので,障害者及び高齢者双方のニーズに応えていくために適切と認められる場合には,その施策の一体的な推進に努めます。
  2.  障害者対策は,福祉,保健医療,教育,雇用,生活環境等幅広い分野にわたるため,関連施策の連携を図るよう努めます。

2 分野別施策の基本的方策

第1 啓発広報

啓発広報の推進
福祉教育の推進
ボランティア活動の推進

現状と課題

障害者を含むすべての人々にとって住みよい平等な社会づくりを進めていくためには,県や市町村が障害者に対する各種施策を実施していくだけでなく,社会を構成するすべての人々が障害及び障害者に対して十分な理解をし,配慮していくことが必要です。
このため,啓発広報は極めて重要であり,積極的に進めていく必要があります。
これまで,障害者と県民とのふれあいや交流の場として,身体障害者作品展示会や福祉フェアなどを開催するとともに,身体障害者福祉週間,精神薄弱福祉月間における啓発広報を実施しています。
今後は,障害者に対する県民の理解を深めるため,マスメディアによる啓発広報をはじめ,障害者の日※等における啓発活動や学校教育における福祉教育を推進するとともに,県民及び障害者自身のボランティア活動を推進する必要があります。

※ 障害者の日とは,障害者基本法により,毎年12月9日と規定されている。

障害児・者の状況
平成6年3月
障害種別 人員(人)
身体障害児・者数 86,521
身体障害児者数 視覚障害 (13,843)
聴覚障害 (12,326)
言語障害 (922)
肢体不自由 (47,453)
内部障害 (11,977)
精神・薄弱児・者数 8,954
精神障害者数 15,244
(注1) 身体障害児・者は,身体障害者手帳交付者数
(注2) 精神薄弱児・者は,療育手帳交付者数
(注3) 精神障害者は,入院患者と通院医療費公費負担承認のあった者の合計数

基本的方策

障害者に対する県民の一層の理解を深めるため,次の点に留意して啓発広報の推進に努めます。

  1. 障害者は,障害のない人と違った特別の存在ではなく,障害のない人と同じ社会の構成員であること。
  2. 障害者は,一人の人間として基本的人権を有しており,障害による差別・偏見を受ける理由がないこと。
  3. 障害者は大きな可能性を有していること。
  4. 障害者の問題は,すべての人々自身の問題であること。

■啓発広報の推進

(1) マスメディア等の活用による啓発広報
 啓発広報に当たっては,新聞,テレビ,ラジオ等のマスメディアや県広報誌等各種広報媒体の活用を図るとともに,マスメディア各機関の協力を得ながら,その推進に努めます。
(2) 障害者の日等における啓発活動
 市町村,障害者団体等との連携を図りながら,「障害者の日」等における啓発活動を推進します。
ア 障害者の日,身体障害者福祉週間,精神薄弱福祉月間においては,街頭における啓発広報や身体障害者福祉大会の開催等を実施するとともに,「障害者雇用促進月間」においては,障害者自身の職業的自立意欲を喚起するなど,県民や事業主の障害者雇用に対する一層の理解の促進に努めます。
イ 精神保健普及運動※においては,「心の健康づくり県民大会」や保健所等における各種の講演会等の開催により,県民の精神障害者に対する一層の理解の促進に努めます。
ウ 障害者の住みよい街づくりのための地域ぐるみの支援活動などは,地域における障害者問題に対する理解を深める上でも重要であるので,その積極的な推進を図ります。
※ 精神保健普及運動とは,精神障害者に対する県民の理解を得るための啓発普及運動。

■福祉教育の推進

(1) 学校教育における福祉教育
 障害者についての正しい理解を深めるためには,幼児期からの福祉教育が極めて重要です。このため,児童生徒の「思いやりの心」や「助け合いの心」など福祉の心を培うため,福祉に関する副読本の配布や福祉作文コンクールの実施等により,福祉教育の推進を図ります。
また,心身障害児や特殊教育に対する理解と認識を深め,人間尊重の精神をはぐくむため,心身障害児と,幼稚園,小・中・高等学校の幼児,児童生徒との交流学習の実施及び地域社会の人々と活動をともにする機会の拡充などの諸施策を積極的に推進します。
(2) 各種講座の開催等による啓発活動
 生涯学習県民大学や市町村による各種学級・講座の充実をはじめ,国や県,特殊教育諸学校が制作した特殊教育に関するビデオの積極的活用や,映画・フイルム等のライブラリーの拡充を図るとともに,福祉事務所,更生相談所,児童総合相談センター,保健所及び精神保健センター等の福祉・保健サービスの実施機関と連携しながら,地域住民等の理解・認識を深めるような啓発活動を推進します。
また,福祉関係団体,福祉施設等との連携のもとに,福祉フェアの開催等により,障害者と県民のふれあい交流を促進します。

■ボランティア活動の推進

障害者問題に対する理解・認識を深めるために,県民が各種のボランティア活動へ積極的に参加することが重要であり,また,障害者自身がボランティア活動に参加し,社会に貢献していくことも必要です。
このため,県民のボランティア活動に対する理解を深め,その活動の促進に努めます。

  1.  ボランティア活動の拠点である県社会福祉協議会や市町村のボランティアセンターによるボランティア協力校の指定やボランティアの登録・紹介等により,ボランティアの養成と活動の促進を図ります。
  2.  学校教育においては,児童生徒のボランティア活動についての理解を深めるとともに,特殊教育諸学校や特殊学級を置く小・中学校の心身に障害のある児童生徒自身が,その能力・適性に応じて,地域のボランティア活動に参加する機会の積極的な確保に努めます。
  3.  社会教育においては,学校・地域社会・家庭をはじめ,関係機関・団体・企業等との連携を密にしながら,生涯学習の観点に立って,県民及び障害者自身のボランティア活動を推進します。
  4.  精神障害について県民の理解を深めるための研修等を実施し,ボランティアの育成を図るとともに,社会復帰学級,小規模作業所等でのボランティア活動を促進します。

第2 教育・育成

心身障害児に対する教育施策の充実

●早期教育の充実
●義務教育段階における心身障害児教育の充実
●後期中等教育段階における特殊教育の充実
●教員及び関係職員の指導力の向上
●高等教育段階における障害児・者に対する施策の充実
●学校教育終了後及び学校外における学習機会の充実
●研究の推進及び情報の提供

心身障害児に対する育成施策の充実

●地域における療育体制の整備
●福祉施設等における療育機能の強化

現状と課題

心身障害児の教育については,児童生徒の可能性を最大限に伸ばすため,一人一人の障害の状態や能力・適性等に応じて適切な教育を行うことが重要であり,また,効果的な教育を行うためには適正な就学が必要です。
このため,教育課程研究協力校の指定や重度・重複障害児の指導法の研究等を通して,指導内容・方法の改善及び教材教具の工夫に努めるとともに,適正な就学を図るため教育相談事業,各種研修会を実施しています。しかし,社会一般の障害児教育に対する理解は十分得られていない状況です。
今後は,さらに特殊教育の理解・認識を深め,適正就学が行われるような施策を推進す
るとともに,教員の専門性を高めるための研修体制の充実や施設・設備等教育条件の充実を図る必要があります。

心身障害児の育成については,心身障害を早期に発見し,早期に適切な治療,訓練を行い,児童が将来社会的に自立した生活ができるようにするため,昭和60年に児童総合相談センターを設置し,その療育指導部において障害児に関する専門的な相談・検査・診断及び療育指導を行っています。また,早期療育の場として,障害児施設,心身障害児通園事業による通園施設,心身障害児を受け入れる保育所・幼稚園等がありますが,これらは鹿児島市への集中等地域的偏在がみられます。
今後は,県内各地域において継続的な療育の場を確保するとともに,児童総合相談センターや障害児施設の機能の活用を図りながら,心身障害児の地域における療育体制の整備を進める必要があります。

盲・聾・養護学校の設置状況

(平成6年5月1日現在)

学  校 校数 児童生徒数
盲学校 1 62
聾学校 1 124
養護学校 精神薄弱 9 1,023
肢体不自由 3 322
病  弱 2 112
合  計 16 1,643

児童生徒数には訪問教育児を含む。

特殊学級等の設置状況

(平成6年5月1日現在)

区  分 設置校数 児童生徒数
特殊学級 精神薄弱 小学校 173 566
中学校 88 276
通級指導教室 情緒障害 6 45
難  聴 5 53
言語障害 13 381
合  計 285 1,321

基本的方策

教育・育成施策の推進に当たっては,心身障害児の成長の各段階において,一人一人の障害の特性等に応じて最も適切な教育・育成の場を確保するという観点から,そのために必要な諸条件の整備に努めます。
また,教育・育成施策の推進に当たっては,関係各機関が十分連携して,教育・育成施策の効果的な実施を図るよう努めます。

■心身障害児に対する教育施策の充実

心身障害児の教育については,心身に障害のある幼児および児童生徒の人間としての調和のとれた人格形成を目指すとともに,その可能性を最大限に伸ばし,可能な限り社会参加・自立する人間の育成に努めます。
学校教育においては,心身障害児がその能力・適性に応じて十分な教育が受けられるよう,心身障害児の利用に配慮した学校施設・設備の充実を図ります。
また,心身障害児ができるだけ家庭や地域で,障害の特性等に応じた適切な教育が受けられるようにするなど,必要な諸条件の整備を図ります。

(1) 早期教育の充実
 心身に障害のある幼児の教育については,その能力を最大限に引き出すことにより,将来,社会参加・自立できるようその基礎・基本を修得させることが大切であり,そのため,幼児一人一人の障害の特性等に応じた適切な教育に努めます。
ア 早期教育
 心身に障害のある幼児に対する早期教育は心身の発達を促す上で重要であることから,特殊教育諸学校幼稚部の教育の一層の充実を図るとともに,地域の幼稚園・保育所において受入れ可能な心身障害児については,その受入れの促進に努めます。
また,特殊教育諸学校※1や特殊学級※2等を置く小・中学校との連携協力等を図ることにより,幼稚園における早期教育の一層の充実を図るとともに,保育に欠ける心身障害児については,障害の特性等に応じた保育を基本とし,健常児との集団保育により心 身障害児の社会性を養うなど,障害児保育の充実に努めます。
イ 教育相談・指導体制の充実
 心身障害児に対する早期対応は極めて重要であることから,児童総合相談センター等との連携を図りながら,心身障害児を持つ保護者ができるだけ早い時期から幼児に対する理解・認識を深める機会を多くもつとともに,特殊教育諸学校,特殊学級を置く小・中学校,特殊教育センター等において教育相談や指導・療育を受けることができるよう,その体制の拡充を図ります。
また,早期対応については,教育,医療,福祉等の各分野における施策が一貫したシステムとして機能するよう,関係各機関との一層の連携協力を図るよう努めます。
※1 特殊教育諸学校とは,盲学校,聾学校及び養護学校の総称。
※2 特殊学校とは,通常の学校における指導では十分な教育効果をあげることが難かしい比較的軽度の心身に障害のある児童生徒を対象に,小・中学校において,必要に応じて特別な配慮のもとに特別な教育を行うために編成された学級。
(2) 義務教育段階における心身障害児教育の充実
ア 通常の学級に在籍する軽度の心身障害児に対する教育を推進するため,通級指導教室※1の設置及び通級による指導の充実を図ります。
イ 児童生徒一人一人の障害の状態及び特性等を的確に把握し,個々に応じた指導内容・方法の一層の充実を図ります。
ウ 心身障害児の社会とのふれあいを深め,好ましい人間関係を育てるとともに,心身に障害のない児童生徒や地域社会の心身障害児に対する正しい理解・認識を深めるために,特殊教育諸学校及び地域の実態に応じ,学校相互の連携や交流を一層進めます。
また,地域社会との連携を促進します。
エ 心身障害児に対して最も適切な教育の場を提供するため,市町村教育委員会及び各学校の就学指導委員会※2の機能的,計画的運営と就学指導に関する専門性の向上を図るなど,就学指導体制の充実を図ります。
また,心身障害児及びその保護者の不安や悩みを理解し,心の通った就学相談を推進するとともに,心身障害児一人一人の障害の特性等の変化に応じて教育措置の柔軟な対応を行うよう努めます。
※1 通級指導教室とは,小・中学校の通常の学級に在籍している心身に軽度の障害のある児童生徒に対して,各教科等の指導の大部分は通常の学級で行いつつ,心身の障害に応じた特別の指導を特別な指導の場で行う新しい特殊教育の形態。
※2 各学校の就学指導委員会とは,心身に障害があり,教育上特別な配慮が必要であると考えられる児童生徒について,適正な就学及び適切な教育の在り方を的確に判断するために調査・審議を行う校内組織。
(3) 後期中等教育段階における特殊教育の充実
ア 義務教育終了後の心身障害児の進路については,生徒一人一人の能力や特性,障害の状態に応じて,養護学校高等部への入学や各種学校,職業能力開発校,福祉施設,授産施設への入所及び就職等の進路が準備されているが,生徒の障害の重度化・重複化や社会環境の変化等に対応した多様な進路を準備するという観点から,養護学校高等部教育の充実を図ります。
また,高等学校において教育を受けることが可能な生徒については,公立・私立高等学校への受入れのための諸条件の整備に努めます。
イ 高等部における職業教育等については,心身障害児の職業的自立を推進するため,学校と地域,労働・福祉関係機関,事業所及び企業等との連携を深め,現場実習や福祉施設等での体験を重視するなど,その教育内容の一層の充実を図るとともに,進路指導,職場開拓等の充実に努めます。
(4) 教員及び関係職員の指導力の向上
ア 心身障害児に対する教育における教職員の役割の重要性にかんがみ,心身障害児の教育に対する使命感,職責感の高揚を図るとともに,教職員の指導力の向上を図るため,心身障害児の障害の重度化・重複化及びその教育の形態に応じた専門的研究・研修の一層の充実を図ります。
また,国立特殊教育総合研究所,大学,特殊教育センター等における各種の講習会や研究・研修会等への積極的な派遣・参加を推進します。
イ 心身障害児を学校全体で受け止め,全ての教職員が心身障害児を正しく理解・認識するために,望ましい校内の指導体制等を確立します。
(5) 高等教育段階における障害児・者に対する施策の充実
 障害児・者が,その能力,適性等に応じて高等教育へ進むための機会を拡充するため,受験機会の確保,入学後におけるボランティア活動等による手話通訳・点訳等の支援体制の確立と関係機関との連携協力に努めます。
(6) 学校教育終了後及び学校外における学習機会の充実
 障害児・者の学校教育終了後における学習や学校外活動を支援するために,特殊教育諸学校に生涯学習県民大学※を開設するとともに,市町村において障害者が参加しやすいような講座を開設するなど学習の場の確保に努めます。
また,障害者が地域の人々とともに地域の学習活動に参加しやすい学習環境の整備充実を促進します。
※ 生涯学習県民大学とは,県内に居住する成人を対象とした学習機会である。学校教育を終了した障害児・者も対象とするが,学習の機会の拡充という立場から養護学校において文学,絵画,書道,陶芸等の講座を開設するもの。
(7) 研究の推進及び情報の提供
 特殊教育センター及び特殊教育諸学校における特殊教育に関する調査研究の一層の推進を図ります。
また,特殊教育に関する各種の情報の蓄積と提供及びその効果的活用に努めます。

■心身障害児に対する育成施策の充実

心身障害児の育成については,可能な限り家庭に生活の基盤をおきながら療育を行うという考えに立ち,その成長段階において,心身障害児及びその家族のもつニーズに的確に対応した施策の推進を図る必要があります。このため,児童のもつ心身障害をその成長過程で最も重要な乳幼児期に早期に発見し,地域において早期に療育することを基本とし,学齢期にあっては,学校教育とともに,福祉施設等における治療,指導訓練を一層強化し,将来社会的に自立した生活ができるようにするという考え方のもとに,諸施策の総合的な推進を図ります。

(1) 地域における療育体制の整備
ア 心身障害児の早期療育については,福祉,保健,医療,教育等関係機関による障害児療育のためのネットワーク化を促進するとともに,心身に障害のある幼児と保護者が身近なところで継続的に療育指導を受けることができるよう,心身障害児通園事業※1の拡充及び小規模通園事業※2による療育の場の確保を図るなど,地域における早期療育体制の整備に努めます。
また,児童総合相談センターにおける総合的な検査,診断及び療育指導を引き続き推進するとともに,同センターの機能を活用して,障害児施設や心身障害児通園事業,障害児保育等の地域における療育の充実を図ります。
イ 施設を活用して療育等に関する相談,各種福祉サービスの提供の援助・調整を行う等,在宅の心身障害児及びその保護者に対する助言・指導体制の充実を図ります。
ウ 施設のもつ機能を,入所児だけでなく広く在宅の心身障害児が利用できるようにするため,ショートステイ※3や短期療育事業※4の拡充とその利用の促進に努めます。
※1 心身障害児通園事業とは,心身に障害のある幼児を対象に,通園の方法により,日常生活の基本的動作及び集団生活への適応訓練を行うもの。
※2 小規模通園における療育の場とは,心身障害児通園事業(国庫事業)の実施が困難な地域に,県単独で通園による小規模の療育体制を整備するもの。
※3 ショートスティとは,障害児・者を介護している保護者が,疾病等の理由により介護が困難になった場合,短期間(原則として1週間以内)保護するもの。
※4 短期療育事業とは,在宅心身障害児及びその保護者に障害児施設を一時的に利用させることにより,障害児施設のもつ療育機能を活用した療育訓練指導を行うもの。
(2) 福祉施設等における療育機能の強化
 心身障害児関係の福祉施設等において,児童の心身障害とその能力に応じた適切でより効果的な療育を行えるよう,福祉施設等に対する心身障害児の療育方法,療育実践事例等療育に関する情報提供や療育関係職員の養成研修の実施等により,福祉施設等の療育機能の強化に努めます。

第3 雇用・就業

障害別雇用対策の推進

●身体障害者対策の推進
●精神薄弱者対策の推進
●精神障害者対策の推進

重度障害者対策の推進

●重度障害者の職業的自立の促進
●一般雇用が困難な障害者に対する施策

職業リハビリテーション対策の推進

現状と課題

障害者がその適性と能力に応じて仕事に就き,社会経済活動に参加することは,障害者が社会的に自立するとともに,生きがいのある生活を送るうえで重要な意義を持っています。
障害者の雇用については,職業訓練及び職業相談,職業紹介等によりその促進を図るとともに,一般雇用が困難な障害者の就労の場としての授産施設等の整備を進めています。障害者問題に対する社会全体の意識の高まりと事業主の理解により,雇用される障害者数は着実に増加し,平成6年6月1日現在,県内民間企業における実雇用率※は1.94%となっており,法定雇用率を大きく上回っています。
しかし,まだ法定雇用率を達成していない企業もあり,また,多くの障害者が働く場を求めています
今後は,企業に対する一層の啓発と法定雇用率達成の指導を強化するとともに,職業リハビリテーションや職業紹介体制の充実等により,障害者の特性と能力に応じた就労の機会を確保していくことが必要です。また,一般雇用が困難な障害者に対しては,各種授産施設の整備を図るなど多様な就労の場を確保する必要があります。

※ 実雇用率とは,事業主に雇用されている常用労働者に占める身体障害者の雇用割合。

■求職登録に基づく就業中の者及び有効求職者の状況

就業者の状況(平成6年3月31日現在)

視覚障害者 315人
聴覚障害者 730人
上・下肢障害者 2,296人
その他の身体障害者 401人
精神薄弱者 653人

有効求職者の状況(平成6年3月31日現在)

視覚障害者 73人
聴覚障害者 128人
上・下肢障害者 563人
その他の身体障害者 161人
精神薄弱者 147人

法定雇用率

○ 民間企業 一般の民間企業 1.6%
特殊法人 1.9%
○ 国,地方公共団体 非現業的機関 2.0%
現業的機関 1.9%

民間企業の県平均実雇用率の推移(毎年6月1日現在)

平成2年 1.74%
平成3年 1.79%
平成4年 1.86%
平成5年 1.93%
平成6年 1.94%

民間企業の全国平均実雇用率の推移(毎年6月1日現在)

平成2年 1.32%
平成3年 1.32%
平成4年 1.36%
平成5年 1.41$
平成6年 1.44%

基本的方策

障害者の雇用・就業対策については,重度障害者に重点を置き,障害者が可能な限り一般雇用に就くことができるよう,障害の特性に応じたきめ細かな対策を総合的に講ずることを基本として,その雇用・就業の場の確保に向けて,積極的に施策を推進します。
障害者の雇用を進めるに当たっては,障害者自身の職業的自立への努力に加えて,事業主等の理解と協力が不可欠であるため,障害者の雇用促進についての一層の啓発広報に努めるとともに,各種雇用援護制度の活用や障害の特性等に応じた職業相談,職業紹介体制の充実及び職業訓練等の充実に努めます。特に重度障害者に対しては,きめ細かな対策を総合的に推進します。
また,一般雇用に就くことが困難な障害者については,雇用部門及び福祉部門の緊密な連携のもとに各種授産施設など多様な就労の場の確保に努めます。

■障害別雇用対策の推進

(1) 身体障害者対策の推進
ア 身体障害者の雇用対策については,身体障害者がその適性と能力に応じた職業に就くことを促進するために,求人開拓,職業指導及び職業紹介体制の充実と身体障害者雇用率制度※の適正な運用を図り,雇用率未達成企業に対する指導を強化し,障害者の雇用を促進します。
イ 一般雇用が困難な身体障害者に対しては,小規模作業所,授産施設及び福祉工場等の整備を進めることにより,就労の場の確保を図ります。
ウ コミュニケーションを図る上で困難を有する聴覚障害者等に対しては,職場におけるコミュニケーションの円滑化を図るための人的援助その他の援助措置の活用を図ります。
※ 身体障害者雇用率制度とは,障害者の雇用の促進等に関する法律において,身体障害者雇用率を設定し,国及び地方公共団体並びに民間の事業主に対して,身体障害者の雇用を義務づけている制度。なお,雇用されている精神薄弱者については,実雇用率の算定にあたり身体障害者と同様にカウントできる。
(2) 精神薄弱者対策の推進
ア 精神薄弱者に対する雇用対策については,精神薄弱者がその適性と能力に応じた職業に就くことを促進するために,求人開拓,職業指導及び職業紹介体制の充実,雇用率制度の運用等により,職域の拡大と職場における定着を図ります。
イ 一般雇用が困難な精神薄弱者に対しては,小規模作業所,授産施設及び福祉工場等の整備を進めることにより,就労の場の確保を図ります。
(3) 精神障害者対策の推進
ア 精神障害回復者等※1の雇用は,他の障害者と比べて社会一般の理解が遅れていることからその啓発を推進するとともに,関係機関等との連携のもとに,公共職業安定所におけるきめ細かな職業相談の実施体制の整備を図りながら雇用の促進に努めます。
イ 精神障害回復者等の就労能力を高め,また,就労能力に見合った就労の場を確保するため,小規模作業所・授産施設・訓練事業所及び福祉工場の整備促進を図ります。
ウ 精神障害回復者等の就労に際しては,生活面からの支援も必要であるため,相談・訪問体制の充実を図ります。
※1 精神障害回復者等とは,精神分裂病,そううつ病又はてんかんにかかっている人で症状が安定し,就労が可能な状態にあるものをいう。

■重度障害者対策の推進

(1) 重度障害者の職業的自立の促進
ア 重度障害者の雇用を促進するため,重度心身障害者雇用奨励金制度※2や各種雇用援護制度※3の積極的な活用を図るとともに,第3セクター方式※4による重度障害者雇用企業の設置促進,重度障害者多数雇用事業所※5の育成に努め,重度障害者の雇用の場の創出を図ります。
イ 重度障害者については,勤務形態において配慮することも雇用の促進に効果的であることから,事業主に対し,重度障害者である短時間労働者についての雇用率制度及び納付金制度の周知を図り,その雇用を促進します。
※2 重度心身障害者雇用奨励金制度とは,公共職業安定所の紹介により,重度障害者を常用労働者として雇用する事業主(常用労働者300人以下)に対し,奨励金の支給を行う制度。
※3 各種雇用援護制度とは,障害者を雇用する事業主に対し,雇用された障害者の賃金の一部助成や,障害者の作業を容易にするために必要な施設・設備の費用の一部助成等を行う制度。
※4 第3セクター方式による重度障害者雇用企業とは,重度障害者の雇用の場の創出を図るため,地方公共団体と民間企業との共同出資により設立された企業。
※5 重度障害者多数雇用事業所とは,重度身体障害者,精神薄弱者又は精神障害回復者等を常用労働者として10人以上雇用している事業所。
(2) 一般雇用が困難な障害者に対する施策
 一般雇用が困難な重度障害者に対しては,小規模作業所,授産施設及び福祉工場の整備を進めることにより,多様な就労の場の確保に努めます。

■職業リハビリテーション対策の推進

  1.  障害者職業センター及び福祉関係機関との連携を図りながら,障害者の特性に応じた職業リハビリテーションを実施します。
  2. また,雇用・福祉・教育部門と連携を図りながら,就職,職場定着に至るまでの相談・援助を一貫して行うような支援センター※の検討を進めます。
  3.  技術革新や多様化する訓練ニーズに対応し,障害者の能力に応じた効果的な職業訓練を実施するため,障害者職業能力開発校における電子機器科などの訓練科の見直し,訓練内容の高度化,施設・設備の充実等を図ります。
  4.  精神薄弱者については,障害者職業能力開発校において,職業的自立のために必要な職業訓練等を実施し,職業リハビリテーションの充実を図ります。
  5.  精神障害回復者等については,高等技術専門校において職業訓練等を実施し,職業リハビリテーションの充実を図ります。
  6.  障害者職業能力開発校における在職者向け職業訓練の実施,企業に対する指導員の派遣等企業の職業能力開発に対する援助の充実を図ります。
※ 支援センターとは,就職が困難な障害者の職業的自立を図るため,市町村レベルで福祉部門と雇用部門の連携を図りながら,就職・職場定着に至るまでの相談,援助を行う支援センター。

第4 保健・医療

心身障害の発生予防,早期発見及び研究の促進
医療・リハビリテーションの充実
精神保健対策の推進
専門従事者の養成・確保

現状と課題

障害の多くは,妊娠中や周産期における病気などに起因するものや乳幼児期,成人期の病気,あるいは交通事故,労働災害によるものです。心身障害の発生予防,早期発見のために妊婦及び乳幼児等に対する健康診査や保健指導,相談事業等を実施するとともに,老人保健法に基づく健康診査,健康教育等保健対策を実施しています。また,精神障害者の社会復帰を促進するため,保健所における社会復帰学級の開催や,通院患者のリハビリテーション事業を実施しています。
今後は,心身障害の発生予防,早期発見のための母子保健対策と根本的な治療法を確立するための研究を推進するとともに,障害の除去・軽減に重要な役割を果たしている医療・リハビリテーションの充実や精神障害者の社会復帰対策のより一層の推進を図る必要があります。

乳幼児健康診査の状況

(平成5年度)

区  分 対象者数(人) 受診者数(人) 受診率(%)
乳児 17,477 16,765 95.9
1歳6か月 18,102 16,928 93.5
3歳児 18,950 17,525 92.5

保健予防課資料

精神発達精密健康診査の状況

(平成5年度)

- 1歳6か月児(人) 3歳児(人)
受診者数 136 257
うち障害児数 111 200
うち障害児数 言語 83 141
精神遅滞 22 44
自閉 1 -
性格行動 2 9
視覚聴覚障害 - 2
肢体不自由 2 4
重症心身障害 1 -

児童総合相談センター資料

基本的方策

障害の原因究明のための各種研究を推進し,その成果を生かした発生予防,早期発見,早期治療,根本的治療のための各種対策の一層の充実を図ります。
また,障害を軽減し自立を促進するためには,リハビリテーションが重要な役割を果たしており,その一層の推進を図ります。
なお,障害を受けた初期の段階で,本人及び家族に対して障害の軽減に係る各種のサービスの紹介,精神的な支援等を行う相談指導体制の充実を図ります。

■心身障害の発生予防,早期発見及び研究の促進

  1.  心身障害の発生予防,早期発見のために,妊産婦に対する健康教育,健康診査等の保健対策,先天性代謝異常等検査※1,乳幼児健康診査等母子保健対策の一層の充実を図ります。
※1 先天性代謝異常等検査とは,精神薄弱等の心身障害の発生を予防するため,新生児について血液検査を行うもの。
  1.  心身障害の発生を予防するため,周産期医療体制※2の一層の充実を図ります。
※2 周産期医療体制とは,周産期死亡及び新生児死亡の低減並びに未熟児医療の充実を図るための高度な医療を行うもの。
  1.  小児期の事故予防対策や各種の疾病予防対策,交通安全等の安全対策を一層推進します。また,スポーツ事故による障害が生じることがないように,スポーツに係る安全指導に努めます。
  2.  老人保健法に基づく脳血管障害等成人病予防のための健康診査,健康教育や脳卒中情報システム※3の整備等各種の健康・保健対策の一層の充実を図ります。
※3 脳卒中情報システムとは,医療機関からの情報に基づく退院後の脳卒中患者に対し,市町村の保健婦等が機能回復訓練など必要な保健・福祉サービスを提供するもの。
  1.  地域における精神保健相談,訪問指導,心の健康づくり等の地域精神保健対策※4を一層推進します。
※4 地域精神保健対策とは,地域において住民の心の健やかさをより高め,また広くの健康に障害を持つ人のニーズに応えようとするもの。
  1.  疾患等の早期発見から早期治療・早期療育や各種の福祉施策への誘導が適切になされていくよう,障害者及び家族に対する各種サービスに係る相談指導体制や精神的な支援体制の充実,保健・医療・福祉の施策の連携を図ります。
  2.  心身障害児及び精神薄弱者の歯科健康を高めるため,地域の歯科医療機関等の協力を得ながら,歯科検診及び歯周病予防指導等の実施を図ります。
  3.  障害の発生を予防し,根本的な治療法の確立のため,特定疾患・小児慢性特定疾患治療に関する研究の促進に努めます。

■医療・リハビリテーションの充実

  1.  地域における障害者の自立を援助するため,老人保健事業に基づく機能訓練を実施していない市町村の解消に努め,機能訓練や訪問指導を活用したリハビリテーションの充実を図るとともに,障害者自身や家族等の関係者に対して合併症や日常生活における留意事項等必要な知識の普及を図ります。
  2.  疾病,負傷等で,在宅で寝たきりやこれに準ずる状態にある高齢者や重度障害者等に対し,訪問看護サービスを提供するための訪問看護ステーション※1の整備を促進します。
  3.  身体障害者及び身体障害児に対する障害の除去又は軽減を図るための更生医療※2・育成医療※3の充実を図ります。
※1 訪問看護ステーションとは,在宅の寝たきり老人等に対し,看護婦等が主治医の指示に基づき,家庭を訪問し病状観察,清拭等のサービスを提供するための拠点施設。
※2 更生医療とは,18歳以上の身体障害者の障害の除去又は軽減を図るための医療費の助成制度。
※3 育成医療とは,18歳未満の身体障害児の障害の除去又は軽減を図るための医療費の助成制度。

■精神保健対策の推進

  1.  精神障害者に対し,適切な医療の機会が提供できるよう,精神病院における医療体制の整備を図ります。
  2.  社会復帰施設(援護寮,福祉ホーム,授産施設等)の整備を促進するとともに,社会復帰施設の適切な運営を図ります。 また,社会復帰対策における市町村の役割について検討します。
  3.  県民の精神的健康の保持・増進を図り,併せて,精神障害者の社会復帰を促進するため,保健所や精神保健センターにおける精神保健相談や援助体制を充実します。また,地域での生活を支援するための地域精神保健対策を一層推進します。
  4.  ライフステージに応じた精神保健対策を推進することとし,特に人口の高齢化等を踏まえ,老人性痴呆疾患治療・療養病棟の整備を促進するとともに医療機関を老人性痴呆疾患センターとして指定し,専門医療相談,救急対応等を行う体制の整備に努めます。
※ 援護寮とは,回復途上にある精神障害者に一定期間生活の場を与えるとともに,生活の指導等を行いその自立促進を図ることを目的としている精神障害者社会復帰施設。

■専門従事者の養成・確保

保健・医療対策の推進に当たっては,専門的技術を有する質の高いマンパワーの確保が不可欠であり,その計画的育成を図っていくことが必要です。このため,理学療法士・作業療法士・看護職員等の専門従事者の養成・確保を促進します。

第5 福祉

地域福祉の推進
自立と社会参加の促進
福祉サービスの充実

●在宅福祉
●施設福祉
●福祉機器の普及

生活安定のための施策の推進

●年金・手当等の給付の促進
●諸制度の活用促進

専門従事者の養成・確保及び障害者団体の活性化

●専門従事者の養成・確保
●障害者団体の活性化

現状と課題

本県は,全国に比べて障害者の割合が高く,また障害者の数も年々増加し,その障害の程度も重度化・重複化しています。
このような状況を踏まえ,障害者の福祉の増進を図るため,在宅福祉サービスや施設整備をはじめ,障害者の自立と社会参加を促進するための機能回復・社会適応訓練や手話奉仕員の養成・派遣等の各種施策を実施しています。
今後は,県民の障害者に対する理解と協力を得ながら,行政,福祉施設,ボランティア等との連携のもとに,地域の福祉需要に的確に対応できる体制を整備するとともに,各種在宅福祉サービスの拡充,福祉施設の整備充実等それぞれの地域の状況に応じ,きめ細かな施策を進めていく必要があります。
さらに,障害者が地域社会の一員として,生きがいを持って社会参加できる環境づくりを進めていく必要があります。

福祉施設の整備状況(平成6年10月現在)

障害種別 施設種別 施設数 入所者定員 通所者定員
身体障害者更生援護施設 更生施設 2 140 10
療護施設 11 590 -
授産施設 7 190 85
精神薄弱者援護施設 更生施設 27 1,640 70
授産施設 16 530 225
福祉ホーム 1 10 -
精神障害者社会復帰施設 通所授産施設 1 - 20
福祉ホーム 5 51 -
援護寮 1 20 -

(注) 授産施設は福祉工場を含む。

■ホームヘルパーの設置状況(老人・身体障害者)
ホームヘルパーの設置状況推移図(老人・身体障害者)

基本的方策

障害者が住み慣れた家庭や地域の中で,安心して生活し社会活動へ参加することができるようにするため,在宅福祉サービス及び施設福祉サービスのより一層の充実と,障害者の自立と社会参加の促進に必要な施策の推進に努めます。

■地域福祉の推進

高齢者や障害者など援護を必要とする人々が,できるかぎり住み慣れた家庭や地域の中で安心して暮らしていけるような福祉社会づくりを進めるため,公的サービスの一層の充実や市町村域等における近隣福祉ネットワークづくり※を進め,地域住民等の参加と協力を得ながら,行政と民間が連携して,高齢者や障害者など援護を要する人々の福祉ニーズを的確に把握し,福祉サービスを適時・的確に提供できる体制の整備促進に努めます。

※ 近隣福祉ネットワークづくりとは,高齢者や障害者等要援護者を把握して,見守り,支援していくためのネットワーク活動の組織づくり。

■自立と社会参加の促進

障害者が積極的に社会活動へ参加し,その能力を十分発揮できるように,障害者の自立と社会参加を促進するための諸施策を積極的に推進します。

  1.  障害者の自立と社会参加を進めるため,機能回復訓練事業及び生活訓練・社会適応訓練事業等各種事業の充実を図るとともに,地域における障害者の自立を支援する体制の整備を推進します。 特に,視覚障害者の就労,日常生活の向上や社会参加の促進を図るため,盲導犬の給付を促進するとともに,飲食店,宿泊施設等の盲導犬に対する一層の理解の促進に努めます。
  2.  精神薄弱者に対しては,グループホーム事業の推進等地域で生活する上で必要な支援を充実することによって,その就労や自立した地域生活への援助を図ります。
  3.  在宅の精神障害者に対しては,地域精神保健対策の充実や障害者に対する家族の理解を深めるための教室の開催,地域での生活を支援するためのグループホーム※の整備促進を図ります。
  4.  障害者の自立と社会参加を促進するため,障害者に対する各種相談,機能回復・生活訓練を行うとともに,健康の増進,教養・文化の向上,スポーツ・レクリエーションのできる「障害者総合福祉センター(仮称)」の整備を進めます。
※ グループホームとは,地域の中にある住宅において,数人の障害者が一定の経済的負担を負って共同で生活し,専任の世話人により日常的生活援助が行われるものをいう。

■福祉サービスの充実

障害者が社会生活を送る上での基本的な生活ニーズに対応するため,障害に応じた各種の福祉サービスの確保に努めるとともに,障害者の障害の程度や家族の状況に応じ適切な処遇が図られるよう福祉施設の充実に努めます。

(1) 在宅福祉
ア 在宅の重度障害者の日常生活における家事や介護等の軽減を図るため,ホームヘルプサービス事業の促進に努めます。
イ 在宅障害者に対するショートステイ事業の利用促進を図ります。また,老人短期入所施設との相互利用について検討を行います。
ウ 在宅障害者に対する給食・入浴サービス,機能回復訓練等を行うデイサービス事業を促進します。また,地域の実情に応じて老人デイサービス事業との相互利用を促進します。
エ 障害を持つ高齢者を抱える家族等の介護に関する相談に応じるとともに,ニーズに応じた各種の保健・福祉サービスを受けられるようサービス実施機関等との連絡調整等を行う在宅介護支援センターの整備を促進します。
オ 障害を持つ高齢者の介護に関する知識や技術を広く県民に啓発・普及するための研修の場の整備を進めます。
カ 精神薄弱者等自己の意思表示の困難な障害者に対する人権擁護の在り方について検討を進めます。
(2) 施設福祉
ア 障害の重度化・重複化に対応して,身体障害者療護施設※1,精神薄弱者更生施設※2等福祉施設の整備を促進するとともに,リハビリテーションの充実や利用者の生活の向上を図ります。
また,生活環境への著しい不適応行動を示す,いわゆる強度行動障害児・者の行動障害の軽減を図り,これらの障害児・者の福祉を推進するため処遇体制の整備に努めます。
イ 在宅障害者の地域での生活を支援するため,授産施設等の通所施設やデイサービスセンター等の地域における利用施設の整備に努めます。
ウ 老朽施設の改築・改修や入所者の人権に配慮した居住環境の改善など既存施設の整備を促進し,障害者の生活の質の向上を図ります。
エ 精神障害者の社会復帰を促進するため,援護寮,福祉ホーム等の整備促進を図ります。
オ 施設の運営に当たっては,業務省力化設備整備,施設地域療育及び施設機能強化推進等各種事業の積極的な活用により施設機能の強化を図るとともに,施設の専門的機能の地域社会への開放を促進します。
※1 身体障害者療護施設とは,常時介護を要する身体障害者を入所させ,治療及び養護を行う施設。
※2 精神薄弱者更生施設とは,精神薄弱者を入所させ,その更生に必要な指導,訓練を行う施設。
(3) 福祉機器の普及
ア 福祉機器は,障害者の自立,社会参加の可能性を高めるとともに,介護者の介護労力の軽減につながるものであり,積極的に普及に努める必要があります。このため,相談担当職員等の研修の充実を図り,障害者のニーズに応じた補装具や日常生活用具の給付が適切に行われるよう努めます。
イ 福祉機器の普及を一層進めるため,福祉機器の展示場の整備を図るとともに,障害者,介護者に対する相談・指導体制の充実に努めます。また,市町村や身体障害者更生相談所等との連携を密にしながら,福祉機器の適切かつ迅速な情報提供に努めます。

■生活安定のための施策の推進

(1) 年金・手当等の給付の促進
ア 国民年金制度における障害基礎年金等の年金は,障害者の生活を保障し,経済的自立を図る上で大きな役割を果たしており,市町村・国民年金委員等の協力を得て,未請求者の把握に努め,診断書作成が得られにくい離島及び医療機関の少ない地区の障害認定に配慮する等障害基礎年金の受給権の確保と障害の程度に応じた適正な給付に努めます。
イ 重度の障害者を介護している家庭の経済的負担を軽減するため,特別障害者手当,障害児福祉手当等の給付制度の周知を図り,その漏給の防止等適正な給付に努めます。
ウ 重度の身体障害児・者及び精神薄弱児・者の医療に係る自己負担分の一部を助成することにより,障害者及び家族の経済的負担の軽減を図ります。
エ 保護者の相互扶助の精神に基づき保護者が死亡又は重度障害になったときに障害者に年金が支給される心身障害者扶養共済制度の加入の促進に努めます。
(2) 諸制度等の活用促進
ア 障害者世帯等の経済的自立と生活意欲を助長するため,事業開始,就職等を援助するための「生活福祉資金貸付制度」の活用を促進します。
イ 障害者に対する税制上の優遇措置や交通機関運賃割引及び点字郵便物等郵便料減免制度等の経済的負担の軽減を図るための諸制度の周知と活用促進を図ります。

■専門従事者の養成・確保及び障害者団体の活性化

(1) 専門従事者の養成・確保
ア 福祉サービスの質の向上と量的拡充を図り,障害者福祉の円滑な推進を図るためには,専門的知識や技術,豊かな人間性を備えた資質の高いマンパワーの養成確保が必要です。このため,福祉人材バンクの活用や各種修学資金貸与制度による介護福祉士※1,社会福祉士※2,理学療法士※3,作業療法士等の確保並びにホームヘルパー等の確保や資質の向上を図るための研修の充実に努めます。
イ 視覚・聴覚障害者のコミュニケーションを確保するため,点訳・朗読奉仕員,手話・要約筆記奉仕員等の養成・確保に努めるとともに,手話奉仕員に発生している頚肩腕障害※4の予防対策の実施に努めます。
ウ 身体障害者相談員等の相談員は,障害者本人及び家族の精神的な支えとなり,また,福祉サービスの活用を促進し,障害者の福祉を増進する上で重要な役割を果たしており,その活動の活性化に努めます。
(2) 障害者団体の活性化
 障害者対策を推進する上で,障害者団体の果たす役割は極めて大きいので,障害者団体が実施する各種の相談指導事業等の活性化に努めます。
※1 介護福祉士とは,社会福祉士及び介護福祉士法の登録を受け,介護福祉士の名称を用いて,日常生活に支障のある者につき,入浴,食事等介護を行い,また,介護者に介護の知識等指導を行うもの。
※2 社会福祉士とは,社会福祉士及び介護福祉士法の登録を受け,社会福祉士の名称を用いて,専門的知識,技術の指導,及び福祉の対象者に対する助言,指導その他の援助を行うもの。
※3 理学療法士とは,厚生大臣の免許を受けて,理学療法士の名称を用いて,医師の指示の下に理学療法を行うものをいう。
※4 頸肩腕障害とは,頸,肩,腕から手指に及ぶ珪痛,麻痺など神経血管症状がみられ,手話奉仕員等の職業病ともいわれている。

第6 生活環境

建築物の構造の改善
住宅整備の促進

●公営住宅の整備
●個人住宅の整備

公園施設整備の促進
移動・交通対策の推進
情報提供の充実
防犯・防災対策の推進

現状と課題

建築物,道路等における障害の除去,情報提供,コミュニケーション手段の確保等の生活環境面における各種の改善は,障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するための基礎的な条件です。
障害者や高齢者が住みやすい街づくりを進めるため,身体障害者環境整備指針(昭和57年策定,平成5年3月改訂)に基づき,県民が広く利用する建築物等について,その設置者の理解と協力を得ながら,障害者向け施設・設備の整備促進に努めてきました。
県が管理する合同庁舎・保健所・警察署等については,出入口のスロープ化や自動ドアの設置等の整備を行い,道路については,障害者の通行の安全を確保するための音響式信号機の設置,歩道の拡幅や段差切下げ,点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)の敷設を進めてきました。
障害者の自立と社会参加を一層促進するため,今後も引き続き,建築物の構造改善や住宅整備,移動・交通対策,情報提供,防犯・防災対策等の各分野において,障害者の利用しやすい生活環境の改善に努める必要があります。

※ 音響式信号機とは,視覚障害者に対し,音声により通行識別を行う信号機。

障害者用施設設備の整備状況 (%)
- 調査施設数 車いす用トイレ スロープ(段差無) 自動ドア
官公庁 229 66.4 88.2 71.2
医療機関 95 76.8 95.8 91.6
金融機関 392 6.1 90.3 93.6
旅館・ホテル 46 21.7 91.3 91.3
ショッピングセンター 44 27.3 95.3 72.7
文化施設 161 71.4 90.1 50.3
公園・運動施設 147 80.3 87.1 -
(注)平成6年3月「鹿児島ふれあいマップ」基礎データより

基本的方策

建築物・道路等の生活環境の改善は,障害者だけでなく高齢者をはじめ県民にとっても必要なものであるとの観点から県民全体の問題としてとらえ,関係者の理解と協力を得ながら一層の推進に努めます。
また,情報提供の充実やモータリゼーションの進展に伴う障害者の交通安全対策,交通手段の確保,移動支援対策については,関係機関や県民の理解と協力を得ながらその推進に努めます。

■建築物の構造の改善

建築物における障害者の利用に配慮した施設・設備の整備は,障害者の自立と社会参加を促進する上で不可欠です。このため,障害者の利用に配慮した,すべての人が住みやすい街づくりのための施策を進めます。

  1.  県が設置する施設等については,引き続き,車いす用トイレや自動ドア等の障害者向け施設・設備の改善を推進するとともに,市町村等が設置する施設等についても,その改善について協力を求めます。
  2.  不特定多数の人々が利用する建築物については,「高齢者,障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律※1」に基づき,高齢者や身体障害者等が利用しやすい建築物の整備を促進します。
  3.  障害者の住みよい街づくりを進めるため,「身体障害者環境整備指針※2」をもとに,公共性の高い建物等の設置者の理解と協力を得ながら,障害者の利用に配慮した施設・設備の整備促進に努めます。
※1 「高齢者,障害者が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」とは,ショッピングセンターや銀行など,県民が利用する建物をつくるときは,高齢者や障害者が利用しやすいものにしようとする法律。(平成6年6月制定)
※2 身体障害者環境整備指針とは,建物や道路,公園等を新たに整備したり改善を行う際に,障害者に利用しやすい設備整備を行うための整備指針。

■住宅整備の促進

障害者が地域で生活していくためには,障害者の利用に配慮された住宅が確保されることが必要であり,利便性の高い住宅は,生活の質の向上につながります。このため,障害者の利用しやすい公営住宅の整備促進を図るほか,個人住宅の障害者向け住宅改造についての融資制度や情報提供等について,その充実に努めます。

(1) 公営住宅の整備
 公営住宅については,すべての新設公営住宅におけるバリアフリー化設計※の実施により,障害者に配慮した公営住宅の整備を積極的に促進していくとともに,身体障害者の優先入居措置や単身入居措置等により,身体障害者の住宅確保対策を推進します。
(2) 個人住宅の整備
 障害者の生活の場である住宅は,障害者の特性に応じて敷居等段差の解消,車いす用トイレの設置等特別な配慮が必要です。このため,生活福祉資金貸付制度等各種制度の周知や活用を図るとともに,障害者向け住宅の整備・改善に対する情報提供や援助・助言に努めます。また,障害者の利用に配慮したモデルルームの整備を進めます。
※ バリアフリー化設計とは,住宅内の段差解消など高齢者や障害者の利用に配慮した住宅の設計。

■公園施設整備の促進

障害者が安心して利用できる緑豊かな都市公園とするため,車いす用トイレの設置やスロープ式園路の整備,点字ブロック等の整備を進めます。

■移動・交通対策の推進

障害者の社会参加を促進するためには,安全で快適に行動できる空間の確保や利用しやすい交通機関の整備が必要です。このため,道路や交通ターミナル等における障害者が利用しやすい施設設備の整備等に努めます。

  1.  交通ターミナル等においては,障害者の移動におけるハンディキャップの軽減を図るため,点字ブロックやスロープ等の障害者にも配慮した施設設備の整備を民間設置者の協力も得ながら,計画的に進めます。また,交通ターミナル等における障害者への適切な情報提供や介護体制の充実も不可欠であり,各交通事業者をはじめ県民が進んで必要な援助を行う等,社会全体の理解と協力が得られるような環境づくりを推進します。
  2.  移動手段の確保については,引き続き自動車改造等への援助を実施するとともに,障害者が利用しやすい公共交通機関の在り方について,調査・検討を進めます。
  3.  道路については,身体障害者が安全で快適に歩行できる空間の確保を図るため,幅の広い歩道等の整備や段差の切り下げ,利用しやすい立体横断施設の整備,点字ブロックの敷設,電線類の地中化や障害者の安全通行に配慮した音響式信号機等の整備を推進します。
  4.  駅周辺や市街地の歩道及び点字ブロック上に放置されている自転車や看板等は,身体障害者や高齢者だけでなくすべての人々の通行を妨げるものとなっているので,関係機関・団体及び道路管理者等の協力を得て,これらの除去を積極的に推進します。
  5.  交通安全啓発ビデオテープの作成配布により,視覚・聴覚障害者に対する交通安全教育対策を推進します。

■情報提供の充実

近年の情報社会の進展により,多くの情報が迅速に提供されるようになってきたが,障害者,特に視覚・聴覚障害者はその情報の利用に制約があります。情報の的確かつ十分な提供は,障害者の能力を生かし,自立と社会参加を促進するため,障害者に対する情報提供の充実に努めます。

  1.  放送事業者の協力を得て,文字多重放送※1,音声多重放送※2や手話挿入番組など,視覚・聴覚障害者に配慮した放送番組の一層の充実を図ります。
  2.  選挙における基本的な権利の行使ができるよう,選挙公報の点字版や政見放送のビデオテープの貸出しなど,障害者の特性に配慮した十分な情報提供が行われるよう配慮します。
  3.  視覚・聴覚障害者の社会参加を促進するため,コミュニケーション確保のための点訳・手話奉仕員等の養成や派遣及び視覚障害者に対するガイドヘルパー※3の派遣等の施策の推進に努めます。
  4.  視覚障害者のための情報提供施設である点字図書館の点字図書,録音図書の充実を図るほか,視覚障害者のニーズに応じた情報の提供に努めます。
  5.  聴覚障害者のための情報提供施設の整備を進めるとともに,字幕付きビデオテープの充実と利用の拡大に努めます。
  6.  障害者をはじめ家族やボランティア,県民に対する障害者問題についての専門的相談や技術的支援,情報提供等の機能を有する施設の整備を進めます。
※1 文字多重放送とは,テレビを利用して行われるもので,文字や図形などの情報を静止画で放送するサービスを行うもの。
※2 音声多重放送とは,テレビを利用して行われる解説放送,緊急放送などのサービスを行うもの。
※3 ガイドヘルパーとは,視覚障害者が市町村圏域で個々の用事のため,移動する場合案内する人。

■防犯・防災対策の推進

近年,住民の連帯意識の稀薄化,規範意識の低下と相まって,障害者が犯罪・事故・災害の被害に遭う危険性が高まってきていることから,障害者が地域社会で安心して生活するためには,防犯・防災対策が整備されていることが必要であり,特に,災害情報等の伝達手段や災害発生時の避難誘導体制の整備が重要です。
このため,関係機関との連携を密にしながら,防犯・防災対策の推進に努めます。

  1.  防犯対策については,訪問連絡活動及び環境診断等について関係機関との連携を密にし,犯罪や事故の発生を警戒・防止するための活動を強化するとともに,地区防犯協会やボランティア等を中心とする民間防犯組織※1に対して,その活動を積極的に支援します。
    また,交番,駐在所については,ファックスネットワーク※2やパソコンネットワーク※3に基づく障害者に対する地域安全情報の提供等,生活安全センターとしての充実強化を図ります。
  2.  防災対策については,市町村において日ごろから高齢者や障害者等いわゆる災害弱者の掌握に努め,避難指示の伝達・誘導方法について事前に定めておくよう指導するとともに,特に自力で避難できない災害弱者に対しては,地域ぐるみで安全確保を図るため,住民の防災意識の高揚,各地域における自主防災組織及び近隣福祉ネットワークづくりの育成や相互の連携,緊急通報システムの導入など避難体制の整備を促進します。
※1 民間防犯組織とは,警察署ごとに組織されている地区防犯協会が中心となって,防犯キャンペーンなどの啓発活動を行う一般住民による防犯組織。
※2 ファックスネットワークとは,交番,駐在所と障害者宅とを電話ファックスでつなぎ,地域安全情報交換等を行う。
※3 パソコンネットワークとは,警察と交番にパソコンを設置し情報交換を行うとともに,交番から障害者等に対し,電話ファックスにより安全情報等を流すもの。

第7 スポーツ,レクリエーション及び文化

スポーツ,レクリエーションの振興
文化活動の振興

現状と課題

スポーツ,レクリエーション及び文化活動は,障害者の社会参加の促進や生活を豊かにする上で極めて重要であり,特にスポーツについては,障害者の体力の向上,健康増進という観点からも大きな意義があります。身体障害者のスポーツについては,昭和38年度から県大会を実施するとともに,その翌年度から開始された全国大会への選手派遣や各種スポーツ教室の開催等を行っています。
精神薄弱者のスポーツについては,平成5年度から県大会を実施するとともに,全国大会への選手派遣を行っています。
また,福祉施設入所者のスポーツ大会,文化祭の開催や県内各地ごとのスポーツ,レクリエーション等も行われています。
さらに,障害者のスポーツ,レクリエーション及び文化活動への参加機会を確保し,その質的充実を図ることが必要です。

基本的方策

障害者の社会参加の促進や生活を豊かにするため,障害者のスポーツ,レクリエーション及び文化活動の積極的な振興を図ります。

■スポーツ,レクリエーションの振興

  1.  障害者のスポーツ,レクリエーションの振興を図るため,障害者の利用に配慮した総合的な施設の整備を進め,スポーツ,レクリエーション活動への参加機会の確保とその質的充実に努めます。
  2.  地域におけるスポーツ,レクリエーション活動を支援するとともに,スポーツ,レクリエーション指導員等の積極的な養成を図ります。
  3.  スポーツ,レクリエーション活動を行うに当たっては,障害種別や障害程度を越えた障害者間の交流や県民との交流の促進が図られるよう,その機会の確保に努めます。

■文化活動の振興

障害者の文化活動の振興を図るため,音楽,演劇,絵画,書道等の文化活動や作品展示のできる施設の整備を進め,文化活動への参加機会の確保に努めます。

第8 国際交流

現状と課題

国際化の進展に伴い,障害者福祉の分野においても国際交流が活発になってきています。諸外国の障害者との交流は,国際感覚を培うとともに障害者問題に対する視野を広め,障害者の自立と社会参加を促進する上で大きな意義を持つものであり,障害者の国際交流の推進に努める必要があります。

基本的方策

国際障害者スポーツ大会への選手派遣や青少年・女性の各種海外派遣研修等への参加を図ることにより,障害者及び障害者団体の国際交流の推進に努めます。

3 推進体制等

  1.  障害者対策は,福祉,保健・医療,教育,雇用,生活環境等広範な分野にわたっています。したがって,新障害者対策長期計画の推進に当たっては,県障害者対策推進本部を軸とし,県障害者施策推進協議会の意見を踏まえながら,市町村,関係機関・団体等との緊密な連携のもとに,総合的かつ効果的な実施を図ります。 また,障害者対策の立案及び推進に当たっては,障害者関係団体の意見を踏まえるとともに,障害者のニーズに十分配慮するよう努めます。
  2.  市町村は,住民に最も身近な行政機関として,今後その役割がますます重要になると考えられるので,関係機関・団体等との連携を図りながら,障害者対策に主体的かつ積極的に取り組むことを期待します。
  3.  民間諸団体,企業,マスメディア,障害者を含む社会のすべての構成員が,それぞれの 分野で積極的に行動し,障害者福祉の向上のために寄与することを期待します。

主題:
鹿児島県新障害者対策長期計画 No.1 1頁~57頁

発行者:
鹿児島県

発行年月:
平成7年3月

文献に関する問い合わせ先:
鹿児島県庁
〒890-8577 鹿児島市山下町14番50号
電話:099-286-2111