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札幌市障害者福祉計画

No.3

札幌市

3 教育の充実

1.現状と課題

(1) 学校教育の充実

○ 昭和54年4月からの養護学校義務制の実施や,昭和56年の国際障害者年を契機として,障害児教育に対する市民の理解や認識が一段と深まっています。
 本市の障害児教育は,養護学校・特殊学級・通級指導教室などの教育の場の整備とともに,幼児教育,義務教育,後期中等教育など,それぞれの発達段階に応じた教育の充実に努めています。
 また,交流教育については,各学校の教育課程に位置づけ,教職員の共通理解による全校的な取り組みの中で,実施するように努めています。
 そのほか,障害児が可能な限り社会自立できるよう,作業学習,現場実習などを通じて,作業能力と社会性の向上に努めるとともに,そのための施設設備の整備を実施しています。
○ その一方で,障害児への教育に対する期待が極めて多様となっており,実態調査の「教育に関する希望」では,「普通学級,幼稚園,保育園への受け入れの拡大」「義務教育終了後の受入先の確保」「障害に合わせた教育内容の充実」などの要望があげられています。
 また,進吐の希望では,身体障害児では,「高校・大学」が最も多く,以下「養護学校」「小・中学校(普通学級)」となっていますが,知的障害児では「訓練・作業のできるところへの通所」をはじめとして,以下「養護学校」「特殊学級」「高校・大学」となっています。
○ このため,障害の種類や特性などに応じて,より効果的な教育を行うことができるよう,教育内容・方法などに関する研究・改善に努めることが重要な課題となっています。
 また,就学指導体制についても,保護者の希望を尊重しながら,幼児,児童,生徒の状況に応じた就園・就学になるよう体制の整備に努める必要があります。

特殊学級児童生徒数の推移(各年5月1日現在)
- 小学校児童数 中学校生徒数
元年

632

377

2年

621

356

3年

621

382

4年

620

409

5年

460

405

6年

456

384

(2) 社会教育の充実

○ 児童会館運営事業および留守家庭児童対策事業においては,青少年の健全育成の観点から全児童を視野に入れた対応をしており,留守家庭児童対策における障害児の受け入れにあたっては,個々の保護者の方々と相談のうえ,可能な範囲内で受け入れています。
 なお,そのほかの障害児については,大きな課題であり,今後とも引き続き研究を重ねていきます。
 児童会館の建設にあたっては,従来の玄関スロープの設置に加え,平成5年度から身障者用トイレも設置しており,障害児に配慮した設計内容にしています。
○ 市民一人ひとりが,豊かで充実した生活を送るため,社会の変化に柔軟に対応しつつ,自らの意思と選択によって,人生のあらゆる段階で学習を続けていく「生涯学習」の必要性が高まっています。
 ノーマライゼーション理念の推進を図るうえにおいても,障害のある人に対して学習機会の拡充を図るとともに,障害のない人に対しても,啓発活動やボランティア精神の育成,幼児期からの福祉教育などの施策を充実していくことが重要です。

日中の過ごし方(学校に通っている)
-

小・中学校

(普通学級)

小・中学校

(特殊学級)

小・中学校

(養護学級)

小・中学校

(盲・ろう学校)

小・中学校

(訪問学級)

高校

(養護学校)

高校

(盲・ろう学校)
高校、大学、専門学校 その他

身体障害児

(N=347)
34.9 5.8 26.2 9.2 2.9 7.8 2.3 10.7 0.3

知的障害児

(N=189)
4.2 51.9 25.4 0 1.1 15.9 1.1 0.5 0.3

資料:平成5年度札幌市心身障害者(児)者実態調査

日中の過ごし方(学校に通っていない子)
 -

施設入所

(義務教育前・中)
病院などに入院中

施設入所

(義務教育後)
通園施設 保育園 幼稚園 自宅 通所施設 その他

身体障害者

(N=347)
0.8 3.1 1.5 26.2 3.1 22.3 39.2 2.3 1.5

知的障害児

(N=189)
7.7 1.9 3.8 9.6 13.5 21.2 9.6 32.7 -

資料:平成5年度札幌市心身障害者(児)者実態調査 

2.施策の基本的方向

(1) 就学前教育の充実

○ 就学前教育においては,幼稚園での障害児の受け入れ年齢の引き下げを図るなど,早期からの教育に努めます。
○ すべての保育園において,障害児保育のニーズに対応できるようにします。

(2) 学校教育の充実

○ 義務教育については,児童生徒の実態に応じた特殊学級の適正配置,指導内容・指導方法の改善・充実,交流教育の推進などに努めるとともに,障害のある人とない人が支え合う社会をつくるため,早期から障害を理解するための教育を進めるように努めます。
○ 後期中等教育においては,職業教育・現場実習についての整備や適切な進路指導の推進に努めます。

(3) 社会教育の充実

○ 児童会館運営事業および留守家庭児童対策事業においては,障害をもつ児童への対応について,地域社会での共生を念頭におきながら,さまざまな角度から検討します。
○ 野外教育事業においては,一定レベルの介護により,障害のない人と同一行動が可能な障害児・者の参加受け入れを検討します。
○ 市民一人ひとりが,生涯にわたって主体的に学び,本当の豊かさとゆとりを実感できるよう,「生涯学習」を推進していくなかで,ノーマライゼーション理念の定着に努めます。

3.主要施策および事業

(1) 就学前教育の充実

○障害幼児教育の充実
 幼稚園での心身障害児に対する受け入れ年齢の引き下げと障害幼児の教育の一層の振興と充実に努めます。
○障害児保育の充実
 障害児保育に対し,より一層の理解と協力を得ることで,保育所の受け入れ体制を整え,保護者の利用しやすい施設にします。

(2) 学校教育の充実

○豊成養護学校の中学部および高等部の施設整備
 豊成養護学校の中学部や高等部の教育環境の一層の充実を図るため,中学部や高等部の施設整備について検討します。
○適切な進路指導の推進
 各学校においては,児童生徒が障害を克服し,社会の一員として可能な限り自立できるようにするため,地域社会や地域産業の緊密な連携による現場実習の推進,進路指導に関する校内体制の確立,進路指導の内容・方法に関する研修の充実に努めます。
 また,関係機関との連携のもとに,進路情報の計画的な収集・整理・活用を図り,進路指導体制の充実に努めます。
○交流教育の推進
 交流教育を各学校の教育課程に位置づけ,教職員の共通理解による全校的な取り組みの中で,障害のある子とない子が温かく接し,好ましい人間関係を育むよう,可能な限り活動を共にする機会を積極的に設け,一層の充実・強化を図ります。
○ボランティア教育の充実
 各学校において,近隣の公園や河川などの清掃,老人ホームや養護学校との交流など,地域に根ざしたボランティア活動を実践し,社会奉仕への芽を育てるよう,ボランティア教育を充実します。

(3) 社会教育の充実

○児童会館運営事業の充実
 青少年の健全育成の観点から全児童を視野に入れた対応をしており,障害児の会館利用を促進するため,スロープに配慮するなど,障害児にとっても利用しやすい施設整備を図ります。
 留守家庭児童対策における障害児の受け入れについては,障害の程度,種別などの問題もありますが,個々の保護者と相談のうえ,可能な範囲内で受け入れに努めます。
○野外教育の充実
 林間学校やチャレンジキャンプ,家族のための野外活動講座など各種野外活動に,一定レベルの介護により,障害のない人と同一行動が可能な障害児・者の参加受け入れについて,その条件整備に努めます。
○「生涯学習推進構想」の策定と「(仮称)生涯学習総合センター」等の施設整備
 「生涯学習推進構想」を策定し,これを基本指針として生涯学習を推進していくなかで,ノーマライゼーション理念の定着に努めます。
 また,その拠点的施設として「(仮称)生涯学習総合センター」の整備を進めるとともに,区民センターや学校,児童会館など,地域の施設を生涯学習の観点から,有効に活用する方策を検討します。

4 就労の支援

1.現状と課題

(1) 雇用環境の拡大

○ 障害者の雇用については,「障害者の雇用の促進に関する法律」に基づいて,障害者に対する職業訓練や事業主への助成,個別指導などが,国の事業として行われており,本市としては,札幌公共職業安定所および北海道障害者雇用促進協会とタイアップして,障害のある学卒予定者の技能などを紹介する求職情報誌を発行して関係機関に配付するなど,普及・啓発に努めています。
○ しかしながら,職業安定所のデータによると,平成6年10月末日現在の有効求職者数は,1,778名,そのうち知的障害者は206名という状況であり,札幌公共職業安定所および札幌東公共職業安定所管内の障害者雇用率は,平成6年6月1日現在で1. 52%という状況になっています。
○ 実態調査によると,身体障害者の仕事の形態は,多い方から,正職員,自営,臨時・パート,会社・団体の役員の順ですが,事業所の規模では「1~4人」の零細企業での雇用が高くなっています。また,仕事による年収は,「300万円まで」が最も高いものの,「200万円まで」という方も47.0%となっています。
 一方,知的障害者の仕事の形態は,「授産所・共同作業所」での就労が36.3%と最も多く,特に重度者では75.0%の高率となっています。事業所の規模では,多い方から,「10~19人」「5~9人」「20~29人」「30~49人」の順となっており,小規模のところでの雇用が多くなっています。仕事による年収は,「25万円まで」が最も多く「100万円まで」を合わせると,6割を占めています。
○ 本市では,身体障害者に対する就労支援として,身体障害者福祉協会に就職相談員を配置し,就職相談の充実を図っています。
 一方,知的障害者に対する就労支援については,精神薄弱者就職予後指導事業を「精神薄弱者職親会」に委託していますが,その他は,各高等養護学校,職業安定所,障害者職業センター,通勤寮,生活支援センターなどが,それぞれ独自に予後指導を実施している状況にあります。
 このため,今後はさらに関係機関との連携を図っていく必要があります。
 また,知的障害者の就労先では,木工,製菓,製パン,食品加工,クリーニングが大部分を占めており,やや固定化の傾向にあることから,職域の拡大や能力開発のための施策が必要です。

仕事の有無
- 仕事をしている 仕事をしていない 無回答

身体障害者

(N=2,104)
29.9% 70.0% 0.1%

知的障害者

(N=378)
54.0% 46.0% 0%

資料:平成5年度札幌市心身障害(児)者実態調査

主な就労先
- 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位

身体障害者

(N=629)

製造業

(15.7)

その他のサービス業

(15.6)

建設業

(12.1)

卸売・小売業・飲食業

(11.4)

公務

(8.6)

知的障害者

(N=204)

製造業

(36.3)

清掃業・クリーニング

(21.1)

卸売・小売業・飲食業

(8.8)

その他

(7.4)

建設業

(3.9)

資料:平成5年度札幌市心身障害(児)者実態調査

(2) 福祉的就労への支援

○ 本市では,一般就労が困難な障害者に必要な訓練と働く場を提供するため,授産施設の整備を図っています。
 また,少人数での作業や地域に根ざした活動ができる小規模授産施設については,本市が単独で開設費や運営費の助成を行っており,その数も,平成6年度では62カ所を数えています。
 また,福祉工場については,平成4年度に知的障害者,平成5年度に身体障害者の工場をそれぞれ1カ所づつ設置し,障害者の就労の場の確保を図っています。
○ しかし,授産施設では,近年,入所よりも通所を希望する傾向がみられること,重度者の利用割合が高くなっていることなどから,一般就労までの通過施設としての従来のあり方から長期にわたる継続的な福祉就労施設としての機能にウエイトが移行してきています。
 従って,訓練と福祉的就労の機能を併せもつ授産施設については,今後も地域的バランスに配慮をしながら,計画的に整備を図る必要があり,かつ,障害者のニーズに対応して障害種別間の相互利用についても推進するなど,授産施設の効果的運営に努める必要があります
○ 小規模授産施設については,法定外施設として多様な運営形態がとられていますが,障害者の在宅福祉を推進する施設として,それぞれの特性を生かしながら,より地域に密着して幅広い活動が可能となるよう支援していく必要があります。
○ 福祉工場については,企業的色彩の強い施設という性格から,生産性を高め安定的な運営ができるように授産科目の拡大を図っていくことなどが求められます。

2.施策の基本的方向

(1) 雇用環境の拡大

○ 障害者雇用の一層の促進に向け,国などの関係機関と連携しつつ,求職情報や助成制度などの周知を図るなど普及啓発に努めます。
○ 在宅障害者の生活支援と併せて,就労部門の支援を充実させ,各機関間での継続的な援助体制をつくり上げます。
○ 第三セクターを含む公的機関において,より一層雇用の拡大に努めます。
○ 障害者の能力開発については,国・道が行う能力開発訓練事業に積極的に協力します。

(2) 福祉的就労への支援

○ 法定の授産施設については,継続して計画的な整備をするとともに,施設がその役割を十分機能するように運営の充実を図ります。
○ 小規模授産施設については,より地域に密着して幅広い活動が可能となるよう支援するとともに,指導員の研修などその内容の充実を図ります。
○ 福祉工場については,継続して運営費の助成を行うとともに,職種の拡大に努めます。
○ 福祉的就労については,場の確保とともに,一般就労につなげる努力が必要とされることから,一般企業との連携や理解を深めながら,障害者の職域の拡大に努めます。

3.主要施策および事業

(1) 雇用環境の拡大

○障害者雇用の促進
 障害者の雇用の拡大に向けて,求職情報誌を関係機関に配布するなど,事業主をはじめ,多くの市民に啓発活動を実施し,障害者の雇用と就労の安定を図るため,理解と協力を求めていきます。
○就職援護措置および雇用助成措置の充実
 職場適応訓練手当の支給期間延長および報奨金の改善などを国に対して,引き続き要望していきます。
○札幌公共職業安定所の「みどりの窓口」の強化
 札幌公共職業安定所の「みどりの窓口」の就職相談体制の強化を要望していきます。
○福祉協力企業の拡充
 精神薄弱者職親会などの関係団体との連携を図りながら,企業が障害者に対する理解を一層深めるため,福祉協力企業の拡充を図ります。
○就職予後指導事業の促進
 企業に就労している知的障害者に対し,職親会,地域生活支援センターなどが,職場への定着と雇用の促進を図るため,就職後の援護指導を行います。
○札幌福祉作業所への支援
 身体障害者で作業能力がありながらも,障害のために一般企業に採用されることが困難な方に就労の場を提供し,自立更生を図っていきます。
○知的障害者の就労支援ネットワークの確立
 高等養護学校,職業安定所,障害者職業センター,施設,職親会,地域生活支援センターなどが連携を図りながら,定期的に情報交換を行うなどして,就労対策,職場開拓を図ります。

(2) 福祉的就労への支援

○授産施設・小規模授産事業の充実
 一般企業などに就労することが困難な障害者の就労・訓練施設として,授産施設の整備,充実に努めるとともに,少人数での作業や地域に根ざした活動が可能な小規模授産施設の充実を図ります。
○福祉工場への助成
 福祉工場が安定した収入を得て健全な運営を図られるよう引き続き運営費の助成を行うとともに,職種の拡大を図ります。
 また,工場で製作した製品の販路などについて,その拡大に対する支援やPRに努めます。
○福祉施設常設販売所への支援
 障害者の社会自立と施設経営の安定を図るため,小規模授産施設などで作られる製品の販売について,引き続き支援します。

5 生活環境基盤の整備

1.現状と課題

(1) 街づくりの推進

○ 障害者の自立と社会参加などの活動を促進するためには,安全で活動しやすい快適な都市環境の整備を図ることが必要不可欠です。
 本市では,高齢者や障害者など,だれもが利用しやすい公共施設や民間建築物,公共交通機関,道路,公園などの整備を進めるため,「札幌市福祉の街づくり環境整備要綱」(昭和56年制定,平成5年改正)を策定し,ノーマライゼーションの実現に向けて,市,民間が一体となって福祉の都市環境づくりに努めています。
○ しかしながら,実態調査によると,「安心して利用できる施設が少ない」「道路に自転車など障害物が多い」「利用可能な交通機関が敗ない」など,障害者が社会参加をするうえで障害となる課題が指摘されており,特に,既存建築物や公共交通機関の対応は大きな課題となっています。
 今後,都市施設の整備にあたっての利便性や快適性を高めていくためには,ハード面の整備のみならず,人々の意識自体を高齢者,障害者などが常に社会参加することを前提としたものにしていく必要があり,これには,市民相互の理解と温かい思いやりの心が育つように,各種の啓発活動を通して市民意識の高揚を図ることが必要です。
○ また「高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる建築物の整備の促進に関する法律」が公布,施行されました。
 このような状況を踏まえ,本市においては,今後「福祉の街づくり」を積極的に進めるために,新たな方向性として建築基準の明確化,義務化など内容の改善・充実を図り,さらに実効性を高めるため条例化を図る必要があります。

公園における身体障害者用トイレ設置数の推移(各年度末現在)
- 元年度 2年度 3年度 4年度 5年度
設置数 15ヶ所 18ヶ所 24ヶ所 27ヶ所 47ヶ所

外出の回数
- ほぼ毎日 週に2~3回 月に2~3回 年に数回 全く外出していない 無回答

身体障害者

(N=2,104)
34.1 26.7 20.8 8.2 5.8 4.4

知的障害者

(N=378)
46.8 11.6 19.3 13.5 3.4 5.3

身体障害者

(N=477)
78.0 11.7 6.1 1.7 0.8 1.7

知的障害者

(N=241)
80.1 10.8 7.1 1.7 0.4 0

資料:平成5年度札幌市心身障害(児)者実態調査

利用する交通機関
- 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位 利用しない

身体障害者

(N=2,104)

地下鉄

(50.7)

自家用車

(42.0)

タクシー

(39.7)

市営バス

(35.1)

市営以外のバス

(25.9)
(3.0)

知的障害者

(N=378)

地下鉄

(64.1)

市営バス

(42.6)

市営以外のバス

(33.0)

自家用車

(25.8)

JR

(18.6)
(3.2)

身体障害者

(N=477)

自家用車

(73.1)

地下鉄

(38.7)

タクシー

(32.0)

市営バス

(23.9)

市営以外のバス

(17.0)
(6.9)

知的障害者

(N=241)

自家用車

(64.2)

地下鉄

(45.0)

市営バス

(34.2)

市営以外のバス

(27.9)

タクシー

(20.8)
(6.7)

資料:平成5年度札幌市心身障害(児)者実態調査

(2) 住宅環境の整備

○ 住宅は日常生活の基盤であり,障害者が地域で安心して生活するためには,住宅の確保やその整備が必要です。
 本市では,昭和56年度から車いす使用者向け市営住宅の建設を進めており,入居する障害者の身体的特性などによる要望を取り入れて,浴槽,トイレ,洗面台,手すり,流し台などの位置や高さに配慮して施工しています。
 また,障害者のいる家庭に対して住宅の増改築などを行う場合に必要な資金を貸し付けています。
 さらに,知的障害者が地域で自立して生活するグループホーム,生活寮などについても支援しています。
○ 実態調査によると,住居に関して困っている点では,「冬期間の除雪に苦労する」「風呂やトイレが使いづらい」「家賃やローンなどの負担が大きい」が上位にあげられています。
 一方,住宅に関する希望としては,身体障害児・者では,「障害者用の設備が整った公営住宅を増やす」「住宅改造の貸付資金を充実させる」が上位を占め,また,知的障害児・者では,「グループホームを増やす」「障害者用の設備が整った公営住宅を増やす」が上位にあげられています。
 このため,今後とも車いす使用者向け市営住宅の建設の推進やグループホームの拡充を図っていく必要があります。
 また,障害者世帯の除雪についても,この推進に努めていく必要があります。

車いす用市営住宅供給数の推移(各年度末現在)
- 元年度 2年度 3年度 4年度 5年度
供給数

49

58

67

69

82

住居の種類
  第1位 第2位 第3位 第4位 第5位

身体障害者

(N=2,104)

一戸建ての持家

(52.6)

マンションなどの民間の賃貸住宅

(16.0)

市営住宅なたは道営住宅

(9.6)

マンションなどの持家

(8.0)

一戸建ての民間の賃貸住宅

(5.1)

知的障害者

(N=378)

一戸建ての持家

(44.2)

施設

(16.7)

マンションなどの民間の賃貸住宅

(12.2)

グループホームまたは生活寮

(6.6)

マンションなどの持家

(5.8)

身体障害児

(N=477)

一戸建ての持家

(42.3)

マンションなどの民間の賃貸住宅

(20.8)

マンションなどの持家

(10.1)

給与住宅

(9.2)

一戸建ての民間の賃貸住宅

(6.7)

知的障害児

(N=241)

一戸建ての持家

(35.7)

マンションなどの民間の賃貸住宅

(20.7)

市営住宅なたは道営住宅

(10.4)

マンションなどの持家

(10.0)

一戸建ての民間の賃貸住宅

(7.9)

住居に関して困っている点
 - 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位 困っている点はない

身体障害者

(N=2,104)

冬期間の除雪に苦労する

(35.4)

いざという時の避難が心配

(18.5)

階段や段差に苦労する

(17.7)

家賃やローンなどの負担が大きい

(12.8)

お風呂やトイレが使いずらい

(11.0)
(25.7)

知的障害者

(N=378)

冬期間の除雪に苦労する

(19.3)

いざという時の避難が心配

(10.6)

お風呂やトイレが使いずらい

(8.3)

家賃やローンなどの負担が大きい

(6.9)

階段や段差に苦労する

(5.3)
(41.0)

身体障害児

(N=477)

冬期間の除雪に苦労する

(22.4)

お風呂やトイレが使いずらい

(21.6)

家賃やローンなどの負担が大きい

(20.3)

階段や段差に苦労する

(17.6)

いざという時の避難が心配

(14.5)
(31.0)

知的障害児

(N=241)

家賃やローンなどの負担が大きい

(22.4)

冬期間の除雪に苦労する

(22.0)

いざという時の避難が心配

(13.3)

お風呂やトイレが使いずらい

(10.8)

家がなかなか借りられない

(6.6)
(39.0)

(3) 防災対策の充実

○ 本市では,特に,迅速,的確な避難行動が制約される重度の障害者を火災や地震などの災害から守るため,「緊急通報システム事業」「聴覚障害者用ファクシミリの設置」などの事業を実施しています。
○ 実態調査によると,「いざという時の避難が心配」「車などに危険を感じる」など,災害や交通安全面での要望がでています。
 今後も,安全で安心した生活を確立していくため,ひとり暮らしや寝たきりの障害者などを守る総合的な防災体制づくりの推進を図っていく必要があります。

2.施策の基本的方向

(1) 街づくりの推進

○ 障害者や高齢者をはじめ,誰もが暮らしやすいように福祉の街づくりを推進します。
○ 福祉の街づくり環境整備に関する条例を制定します。
○ 車両交通量の適正化と環境や移動に制約のある方に配慮し,人にやさしい交通対策を推進します。

(2) 住宅環境の整備


○ 車いす使用者向け市営住宅の建設を促進します。
○ 住宅に関する総合相談や設計ガイドブックを作成するなど,地域社会での生活を支援します。
○ 障害の特性に合わせた福祉ホームなどの整備を検討するとともに,住宅の増改築に必要な資金の貸し付けをします。

(3) 防災対策の充実

○ 火災予防体制の充実に努めます。
○ 障害者の安全確保のため,緊急時の救護体制を充実します。

3.主要施策および事業

(1) 街づくりの推進

○やさしい街づくりの推進
 障害者や高齢者など,だれもが安全で快適に暮らせるよう,建築物や公共交通機関,道路などの整備を推進します。
○福祉の街づくり環境整備条例の制定
 「福祉の街づくり環境整備要綱」をより実効性のあるものとするために,条例化を図ります。
○人にやさしい交通環境の形成
 自動車の増加による渋滞,公害,事故などが深刻化する前に車両交通量を適正水準に誘導するとともに,環境や移動に制約のある方などにも配慮した交通体系へシフトしていく必要があることから,次の三点を基本理念とする「人にやさしい交通対策」を推進します。
・交通と環境との調和
効率性優先の交通から環境と共生する交通へのシフト
・交通と人との調和
車優先から歩行者や移動に制約のある方に配慮した交通へのシフト
・交通手段相互の調和
車両交通の「円滑処理」から「適正水準誘導」への政策のシフト
○放置自転車規制区域の設定
 ますます増え続ける自転車に対応できるように,放置自転車が著しく多い地区を放置禁止区域に定める条例を制定し,障害者や高齢者など歩行者の安全の確保および都市環境機能の低下防止を図ります。
○民間施設整備に対する支援措置の導入
 「高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」に基づき,高齢者等の利用に配慮して建築物を整備する者に対し,国の施策に準じて補助などの支援措置について,国との連携を図りながら推進します。
○札幌駅北口広場の総合整備
 札幌駅北口における駅前広場,地下駐車場,地下歩道および融雪槽の整備にあたっては,駐車場に障害者専用スペースや障害者仕様エレベーター,車いす用トイレなどを設置して障害者や高齢者などの利便性を確保し,人にやさしい都市空間づくりを進めます。
○地下鉄主要駅へのファクスの設置
 電話でのコミュニケーションが不可能な方々へのサービスとして,関係機関と協議しながら,地下鉄の主要駅にファクスの設置,もしくは,携帯用ファクスが利用できる設備の整備について検討します。
○次駅表示器の導入および車内放送の自動化推進
 聴覚障害により車内放送を聞くことができない方々へのサービスとして,車両の更新時に合わせて,次駅表示器を導入するほか,車内放送の明瞭化と間違い防止のため,車内放送の自動化を図ります。
○低床式バスの導入
 足の不自由な障害者や高齢者等が利用しやすい低床式バスを,車両の更新時に合わせて低床式車両に入れ替えます。
○リフト付きバスの導入
 車いす使用者の社会参加を促進するため,リフト付きバス導入について検討します。

(2) 住宅環境の整備

○車いす使用者向け市営住宅の整備
 障害者が安全で快適に暮らせるよう,浴槽,トイレ,洗面台,手すり,流し台などの位置や高さについて,入居する障害者の特性に合わせて施工し,供給します。
○高齢者向け市営住宅の整備推進
 市営住宅は,全住戸を高齢者仕様として住戸内の段差解消,浴室・トイレの手すりなどの設置を推進するとともに,入居者の高齢化に伴い,身体機能の低下により車いすなどを必要とする場合も考えられるので,出入口のドア幅などについても検討します。
○市営住宅への優遇入居の推進
 公開抽選の際に,連続申込回数および障害の程度により優遇制度を実施していますが,障害者がより入居しやすくなるよう検討します。
○バリアフリー住宅の普及・啓発の推進
 障害者,高齢者等に配慮した住宅(バリアフリー住宅)の普及・啓発を図るため,パネル展,補助器具の展示,パンフレットの配布などを行うほか,バリアフリー住宅の普及のため,設計ガイドブックの作成やイベントによる啓発事業を推進します。
○自立生活と継続居住の支援
 障害者,高齢者が地域社会で安心して生活し,交流できる環境づくりをするため,福祉施設と住宅などとの連携システムの研究を行うとともに,介護方法,住まいづくりなどの指導,相談を行う総合窓口の設置を検討します。
○住宅整備資金の貸付
 障害児・者のための増築や改築,風呂,トイレなどの改造を促進するため,心身障害者住宅整備資金の制度により,必要な資金の貸し付けをします。
○身体障害者等世帯の除雪サービスの実施
 除雪を行うことが困難な重度身体障害者や高齢者の世帯に対して,玄関などに堆積した雪の除雪体制を図ります。
○グループホームの拡充
 知的障害者が地域生活を送るため,グループホームの拡充に努めます。
○身体障害者福祉ホームの整備
 日常生活を営むのに支障のある身体障害者のために,障害の特性に合わせた福祉ホームの検討を行います。

(3) 防災対策の充実

○火災予防の推進
 身体障害者の世帯に対して消防職員が防火訪問し,ストーブやガスこんろなどの出火防止について指導するほか,障害者の入所施設における夜間および休日の防火管理体制を検証し,火災予防の推進に努めます。
○緊急通報システム事業の推進
 一人暮らしの重度身体障害者が,急病や事故などの緊急時に消防局や近隣の協力員に通報できる緊急通報システムの推進に努めます。
○聴覚障害者用ファクシミリの設置
 聴覚障害者からの災害通報や救急要請を受け付ける専用ファクシミリを消防局内に設置し,即応体制の充実に努めます。
○発信地表示システムの導入
 119番通報で災害発生場所を聴取することが困難な事例を解消するため,通報電話の発信地が瞬時に分かるように指令システムを整備し,迅速な出動体制の確立を進めます。

6 スポーツ・レクリエーションおよび文化活動の振興

1. 現状と課題

(1) スポーツ・レクリエーションの振興

○ スポーツやレクリエーションは,障害者にとって機能回復や健康・体力の維持増進とともに,スポーツ・レクリエーションを通じて社会参加をし,市民との交流や障害者に対する理解と認識を深めるうえからも,大きな役割を果たしています。
○ 本市では,スポーツを通して体力の維持・強化などを図ることを目的として,昭和47年度から「身体障害者スポーツ大会」を開催しており,また,昭和53年度には,身体障害者福祉センターに体育館を設置しました。
 この間,卓球やゲートボールなどの教室や車いすバスケットボール,車いすテニスなど,障害者自身による各種のクラブが幅広く活動し,障害者スポーツの拠点施設として大きな役割を果たしてきています。
 また,障害のある人も利用できるよう体育館,温水プールなどの体育施設の設置や整備改善に努めているほか,学校体育施設開放事業における施設の整備にも努めています。
 さらに,全市的なスポーツ大会への参加や全国身体障害者スポーツ大会,ゆうあいピック,ろうあ者体育大会などへの参加,パラリンピックなどの国際大会への参加促進を図るなど,障害者スポーツの振興に努めています。
○ しかしながら,実態調査によると,身体障害児・者,知的障害児・者とも,スポーツへの参加意欲は決して高くありません。
 この理由として,「自由に使える施設が少ない」「目的地への交通が不便」「費用がかかる」「仲間が少ない,いない」などが上位を占めています。
○ 一方,レクリエーション活動は,障害の程度にかかわりなく,もっと気軽にみんなと一緒に身体を動かす楽しさを味わいたい人たちにとって,大きな役割を果たすものです。
 特に,これまでのスポーツの取り組みが,いわゆる「競技スポーツ」といわれるものに力点が置かれ,こうしたスポーツへの参加が困難な障害者に対して十分でない状況にありました。
○ このことから,今後は,既存の体育施設の改修,改築などに合わせて,より一層,障害者の利用に配慮した施設整備を進めるほか,障害者のスポーツ・レクリエーション活動を促進するため,障害者スポーツセンターの整備やさまざまな障害者がその障害に応じたスポーツやレクリエーションに親しめるよう,スポーツ・レクリエーションに関する指導員の養成や団体の育成,スポーツ教室の充実などの基盤整備を図る必要があります。

身体障害者スポーツ大会参加者数の推移(年度末現在)
 - 元年度 2年度 3年度 4年度 5年度 6年度
人数

170

122

280

229

253

261

(2) 文化活動の振興

○ 障害者の文化活動への自主的,主体的な取り組みは,ゆたかで潤いのある生活を実現していくうえで大きな意義があり,また,文化活動を通して社会参加を図ることは,啓発広報活動としても重要です。
○ 本市では,身体障害者福祉センターや区民センターなどで各種の教養講座を開設しているとともに,点字図書や字幕または手話付ビデオなどの貸し出し,閲覧を実施しているほか,障害者自身による文化クラブや障害者団体による文化祭などの自主事業を実施しています。
 また,障害者も利用できるような文化施設の設置に努めています。
○実態調査によると,身体障害児・者,知的障害児・者とも,今後してみたい文化活動として「旅行」「コンサート」「映画」などが上位を占めています。
 その一方,活動するうえで不便に感じることとして,「自由に使える施設が少ない」「目的地への交通が不便」「費用がかかる」などがあげられています。
○ 今後とも文化施設などでの障害者の利用や,参加に配慮するとともに,障害者自ら行う文化活動への支援や障害者だけでなく,市民とともに交流できる機会の拡大などに努める必要があります。

字幕ビデオ蔵書数、貸出数の推移(各年度末現在)
 - 元年 2年度 3年度 4年度 5年度
蔵書数

676

925

1,145

1,388

1,641

貸出数

354

744

694

401

798

録音図書蔵書、貸出数の推移(各年度末現在)
 - 元年 2年度 3年度 4年度 5年度
蔵書数

27,476

33,013

32,118

34,881

26,216

貸出数

16,974

18,209

19,366

16,239

16,733

点字図書蔵書数、貸出数の推移(各年度末現在)
 - 元年 2年度 3年度 4年度 5年度
蔵書数

16,690

15,201

15,890

16,632

14,947

貸出数

2,894

4,401

4,286

4,347

3,715

2.施策の基本的方向

(1) スポーツ・レクリエーションの振興

○ 各種スポーツ教室や体制づくりなどを通し,障害者スポーツの推進に努めます。
○ 身体障害者スポーツ大会,知的障害者スポーツ大会などの全国大会や国際大会へ選手を派遣します。
○ 障害者スポーツセンターの整備を図ります。
○ 福祉レクリエーションワーカーの養成を行い,障害者のレクリエーション活動の推進を図ります。

(2) 文化活動の振興

○ 各種文化クラブの育成,教養講座の開催など,障害者が主体的に文化,創作活動に参加することができるようにします。
○ 点字図書や録音図書,字幕付きビデオなどを整備し,文化活動へ参加できるよう支援していきます。
○ 各種の文化施設が障害者にとって利用しやすいように整備します。

3.主要施策および事業

(1) スポーツ・レクリエーションの振興

○スポーツ活動への支援
 障害者スポーツの振興とスポーツ人口の拡大のため,専門指導員による各種スポーツ教室を開催するとともに,重度障害者を対象としたスポーツ・レクリエーション教室についても開催します。
○スポーツ指導員の養成
 スポーツ指導員養成研修会への派遣を通じて,障害者スポーツの専門的知識を有する指導員の養成を進めます。
○障害者スポーツセンターの整備
 障害者のスポーツ,レクリエーション活動の拡充を図るため,既存の体育施設の改修などにあわせて,障害者がより使いやすい施設にするとともに,障害者スポーツセンターを整備します。
○障害者スポーツ振興組織の設立
 障害者スポーツの普及・促進を図り,健康で生きがいのある生活が送れるよう,スポーツ振興のための組織の設立を支援します。
○障害者スポーツ大会の開催
 記録や体力の維持向上を図るとともに,市民の理解と認識を深めるため,身体障害者や知的障害者のスポーツ大会を開催します。
○各種全国大会等への選手派遣
 スポーツを通じて社会参加を図り,競技スポーツの水準を高めるために,世界大会や全国大会へ選手を派遣します。
○各種スポーツ大会への障害者の参加
 札幌マラソン大会を始めとした障害者の参加を積極的に受け入れている各種のスポーツ大会に,障害者自らの参加を奨励します。
 また,障害者の参加について,主催者の理解と協力を呼びかけます。
○福祉レクリエーションワーカーの養成
 障害者のレクリエーション活動の振興を図るため,障害に応じた知識や技術を有する福祉レクリエーションワーカーの養成に努めます。
○レクリエーション活動の振興
 レクリエーション活動の機会の提供と援助を行うため,障害の程度に合わせたレクリエーション教室を開催するとともに,地域での自主的な活動や外出が困難な障害者に対しても支援していきます。

(2) 文化活動の振興

○点字図書,録音図書および拡大写本の製作,貸し出し,閲覧視覚障害者の文化活動を推進するため,点字図書,録音図書(朗読テープ)および拡大写本を製作し,この貸し出し,閲覧を行います。
○フィルムライブラリーの貸し出し,閲覧
 聴覚障害者の文化活動を推進するため,字幕または手話付きビデオ,カセットテープ,16mm映画フィルムの貸し出し,閲覧を行います。
○文化活動への支援
 障害者の生きがいと教養,文化の向上のため,各種の教養講座を実施するとともに,文化祭の開催にあたり,発表の場を提供するなど援助していきます。
○芸術祭,展覧会等の開催促進
 障害者自らが創作した芸術,文化作品を発表できる機会を増やすとともに,障害者の文化活動についての啓蒙,啓発に努めます。
○文化施設の整備改善
 文化施設の改修や「(仮称)音楽専用ホール」などの建設にあたっては,障害者が利用しやすいように整備を図ります。

7 広報・啓発活動の充実

1.現状と課題

(1) 広報・情報提供活動の推進

○ 障害者福祉に関して,さまざまな福祉サービスの制度が用意されていますが,その施策を知らないために利用できないという場合もあります。
 それらが有効に利用されるためには,利用者に各種サービスの情報をわかりやすく,しかも十分に伝えることが必要です。
○ 実態調査によると,市役所や区役所からの福祉情報に満足しない理由として,「必要なことを十分に知らせてくれない」が最も高くなっています。
 また,福祉情報の入手先として,「市で発行している広報誌やガイド」が,60.2%(身体障害者)となるなど,全般的に利用度が高くなっているものの,視覚障害者などで低い傾向が見られます。
 一方,知的障害者では「福祉制度をわかりやすくしてほしい」という声も高く,(20.5%),今後,障害の特性に配慮した情報提供の在り方が求められています。

福祉情報の入手先 (%)
- 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位

身体障害者

(N=2,104)

市などが発行している広報誌やガイド

(60.2)

市役所や区役所などの公共機関の窓口

(34.6)

テレビ、ラジオ、新聞

(32.5)

病院などの医療機関

(25.0)

家族、知人

(16.2)

知的障害者

(N=378)

学校、施設、職場

(36.8)

市などが発行している広報誌やガイド

(33.1)

障害者関係団体

(28.6)

市役所や区役所などの公共機関の窓口

(27.8)

家族、知人

(21.2)

身体障害児

(N=477)

市などが発行している広報誌やガイド

(56.2)

学校、施設、職場

(37.7)

家族、知人

(29.4)

市役所や区役所などの公共機関の窓口

(25.8)

病院などの医療機関

(25.2)

知的障害者

(N=241)

学校、施設、職場

(60.6)

市などが発行している広報誌やガイド

(48.5)

障害者関係団体

(42.7)

家族、知人

(29.9)

テレビ、ラジオ、新聞

(20.7)

資料:『平成5年度札幌市心身障害者(児)実態調査』

福祉情報に満足していない理由
 - 自分の知りたいことがない 自分に合った方法で知らせてくれない 内容が難しすぎて理解できない 情報がいろいろでわからない 必要なことを十分に知らせてくれない その他 無回答

身体障害者

(N=401)
25.2% 7.0% 4.2% 6.7% 44.4% 1.7% 10.7%

知的障害者

(N=76)
14.5% 2.6% 23.7% 7.9% 31.6% 2.6% 17.1%

身体障害児

(N=160)
27.5% 2.5% 2.5% 3.1% 60.6% 0.6% 3.1%

知的障害児

(N=81)
29.6% 3.7% 3.7% 54.3% 7.4% 1.2% 0%

資料:『平成5年度札幌市心身障害者(児)実態調査』

○ 本市では,「福祉ガイド」の発行や,広報誌,新聞などによる情報の提供に努めているほか,字幕スーパーによる広報番組の放送,点字広報や録音テープによる広報誌の発行など,障害特性に配慮した各種の情報提供活動を行っていますが,利用者の立場に立ち,総合的に福祉情報を提供できる体制づくりが必要になっています。
 さらに,差別・不適当用語の排除にも積極的に取り組む必要があります。

(2) 啓発活動の推進

○ 障害のある人が平等に社会参加をしていくためには,国や自治体が各種施策を実施するだけでは不十分です。
 「完全参加と平等」という理念が真に社会に定着し,就労,教育,スポーツ・文化など,すべての分野にわたって障害者の社会参加を進めるためには,社会全体が障害及び障害のある人に対して十分な理解をし,配慮をしていくことが必要です。
○ 「国連・障害者の十年」などの取り組みにより,次第に障害者への理解が深まってきているものの,実態調査では,知的障害児・者で,「障害のある人に対する市民の理解が深まっていない」と感じている人が多くなっています。
 一般市民に対する啓発活動は重要な課題であり,本市では,毎年,福祉月間を定めて,各種啓発活動を行っているほか,12月9日の「障害者の日」を中心としてさまざまなイベントを通した啓発や街頭啓発などを行っています。
 また,広報番組の放送により,啓発活動に努めているほか,子どもに対する福祉教育のため,小学校の高学年を対象とした副読本を発行して授業での活用を図っています。
 今後は,「障害者の日記念行事」などが,広く一般市民を取り込んだものとなるよう努める必要があります。
 さらに,就労や生活環境面での社会の理解不足を指摘する声も多く,引き続き啓発活動に重点を置いていく必要があります。
○ また「ノーマライゼーション」の理念が地域に浸透するためには,一人ひとりが障害者や高齢者の問題を自分自身の問題として受けとめ,積極的にかかわっていくことが何よりも必要です。
 そのような意味で,ボランティア活動は啓発活動としても重要であり,最近の市民のボランティア活動への関心の高まりからも,引き続きボランティア活動の振興に努める必要があります。
○さらに,障害者自身がボランティア活動を通じて社会参加をしていくことも,障害者問題に対する理解を深めるためには重要であり,こうした活動を支援する必要があります。

2.施策の基本的方向

(1) 広報・情報提供活動の推進

○ 「福祉ガイド」などの広報媒体を活用し,多様なサービスを市民にわかりやすく提供します。
○ 新聞,テレビ,ラジオなどはPR効果が高いことから,これらのメディアを積極的に活用し,サービスの多角的なPRに努めます。
○ 利用者の立場に立ち,総合的に福祉情報を提供できる体制の整備を図ります。
○ 視覚障害,聴覚障害,知的障害などの障害特性に配慮し,新しい広報媒体の普及・開発に応じて,積極的な活用を図ります。

(2) 啓発活動の推進

○ 障害者に対する理解を深めるとともに,権利擁護のための啓発活動を推進します。
○ 新聞やテレビなどのマスメディアを通じた広報活動により,障害者問題への理解と啓発に努めます。
○ 子供のころから障害者や障害のことを理解するために,交流教育をはじめとした福祉教育の推進に努めます。
○ 誰もが,ボランティア活動に積極的に参加できるような施策を実施します。
○ 障害者福祉に関して使用されている用語の中には,正しい理解を妨げるものもあることから,差別・不適当用語の検討を行います。

3.主要施策および事業

(1) 広報・情報提供活動の推進

○福祉ガイド等による情報の提供
 福祉サービスをより市民に周知するため,「福祉ガイド」の幅広い活用を図るほか,「広報さっぽろ」による情報の提供に努めます。また,障害の特性に配慮した情報や民間メディアを活用した情報の提供を行います。
 点字広報については,広報誌以外の各行政機関からの広報情報の提供も行い,事業の充実を図ります。
○新しい広報媒体の活用
 文字放送の普及やニューメディア開発についての調査研究を進め,障害者に有効な広報媒体を取り入れるよう努めます。
○情報提供体制の整備
 障害者が地域で自立した生活を送るために,必要な情報を総合的に提供できる体制を整えます。
○社会福祉総合センターの機能充実
 民間団体や市民の福祉活動への参加を促進するために,福祉情報の収集・提供,相談,福祉機器展示事業などを実施する社会福祉総合センターの機能充実に努めます。
○全国点字図書館通信ネットワークへの加入
 視覚障害者への情報提供の強化を図るため,電話回線とコンピュータにより,全国の点字図書館の図書目録などの情報を共有するネットワークに加入します。
○視聴覚障害者の情報提供機能の強化
(再掲 34ページを参照)

(2) 啓発活動の推進

○啓発行事の実施
 各種啓発行事のなかで障害のある人とない人の交流が深まるような内容の充実に努めます。
 また,スポーツ大会などの各種行事では,市民の参加を促進し,障害のある人とない人の交流を図ります。
事業名
・福祉月間行事
・「障害者の日」記念行事
・さっぽろふれあいフェスタでの交流
・札幌マラソン大会などのスポーツ大会
○施設の地域開放の推進
 施設における各種行事の実施にあたっては,地域住民との交流が行われるよう,開かれた施設の推進を図ります。
○広報誌等による啓発活動の推進
 市民が,障害者に対して正しい理解を持てるように,広報誌,テレビ番組などの制作にあたっては,障害者問題への理解が深まるような企画を随時取り入れます。
○福祉教育の推進
 小学校高学年を対象とした副読本や教師用の指導資料を発行し,障害や障害者に対する正しい理解を促進するように努めます。
 また,以下の事業の推進に努めます。
事業名
・交流教育の推進
・教育の場でのボランティア活動の実践
○社会教育の充実
 障害をテーマにした作文やポスターを公募するほか,教育行政と一般行政が連携を図りながら,ノーマライゼーション理念の理解を深め,社会に定着させていくための学習機会の充実を図ります。
○ボランティア研修事業の実施
 市民誰もがボランティアについて学び,社会で具体的な活動ができるような実践的な知識・技術の習得を目指し,ボランティア人口の拡大と活動の活性化を図ります。
 また,介護支援のためのボランティアについては,基礎的知識から専門的知識まで習得できるよう段階的研修を行います。
事業名
・介護支援ボランティア研修事業
・点字ボランティア養成事業
・ボランティアスクール・ボランティアビューロー
研修会の実施
○地域福祉振興基金によるボランティア活動助成 地域福祉振興基金から生じる果実を運用して,市内で活動を行うボランティア団体や会福祉法人などの行う地域福祉活動に要する経費の一部を助成します。
○用語の検討
 正しい障害者理解のために,障害者福祉に関して使用されている用語の検討を行います。
○市職員を対象とした啓発・研修活動の推進
 職員が障害者問題に対する理解を深め,その成果を実務に生かしていくことをねらいとして,研修を実施します。

策定資料

札幌市障害者施策推進協議会委員 ◎:会長

選出区分及び役職名 委員名
学職経験者 札幌市神経薄弱者職親会副会長

大黒 正芳

◎北星学園大学教授

忍 博次

札幌市社会福祉専門学校校長

加藤 享

札幌市身体障害者福祉協会会長

神田 直也

札幌市立山の手養護学校校長

古賀 徳司

グリンハイム施設長

笹渕 大歩

札幌市神経薄弱者育成会会長

佐瀬 好子

札幌市健康をまもる婦人のつどい会長

渋谷 みよ

札幌市民生委員・児童委員協議会女性部会部会長

鶴田 秀代

札幌市社会福祉協議会副会長

秦 正見

札幌あゆみの園園長

花井 忠雄

北の沢デイセンター施設長

花崎 三千子

札幌青年会議所前理事長

牧 康昌

関係行政庁 北海道立心身障害者総合相談所長

佐々木 鐵人

札幌公共職業安定所長

鹿内 正一

札幌中央労働基準監督所長

深滝 正庸

市職員 衛生局保健衛生部長(衛生局理事事務取扱)

村上 友也

民生局児童福祉総合センター所長

清水 洋

教育委員会学校教育部長

滑川 賢一

民生局障害副支部長

谷 紘子

 平成7年3月31日現在

札幌市障害者福祉計画策定委員会委員

◎:座長

[総務局] 秘書広報部長,行政情報室長

[企画調整局] 企画部長

[財政局] 財政部長

[市民局] 地域振興部長,交通環境対策部長,市民生活部長

[民生局] 社会部長,高齢化対策推進部長,保険医療部長,
◎障害福祉部長,保育部長,児童福祉総合センター所長

[衛生局] 保健衛生部参事,中央保健所長

[環境局] 緑化推進部長

[建設局] 管理部長,土木部長,道路維持部長

[建築局] 住宅部長,建築相談担当部長

[交通局] 自動車部長,高速電車部長

[消防局] 予防部長

[西区] 福祉部長

[教育委員会] 指導室長,社会教育部長,社会教育部参事,体育部長

札幌市障害者福祉計画策定経過

平成6年5月・第1回札幌市地方心身障害者対策協議会
計画の基本的方向,策定方法などの検討

平成6年6月・第1回計画策定委員会
・第1回計画策定委員会研究部会計画の基本的方向,策定方法などの説明

平成6年6月~7月・障害者福祉計画策定懇話会(6回開催)
「福祉サービス」「保健・医療」「教育」などについて障害者団体関係者,一般公募市民などとの懇談会

平成6年9月・第2回計画策定委員会研究部会(7回開催)
「福祉サービスの充実」「保健・医療の充実」など,計画の体系ごとに検討

平成6年10月~11月・第3回計画策定委員会研究部会(7回開催)
「福祉サービスの充実」「保健・医療の充実」など,計画の体系ごとに検討

平成6年12月・第2回計画策定委員会
計画全体について検討

平成7年1月・第2回札幌市障害者施策推進協議会(札幌市地方心身障害者対策協議会を改称)
計画(案)検討


主題:
札幌市障害者福祉計画 No.3 51頁~85頁

発行者:
札幌市

発行年月:
平成7年5月

文献に関する問い合わせ先:
〒060 札幌市中央区北1条西2丁目
札幌市民生局障害福祉部
TEL (011)211-2936