神戸市障害者保健福祉計画
~ともに住み続けたくなるまちをめざして~
平成9年2月
神戸市
第7章 外出支援
障害のある人がまちの中を移動する際の利便性・快適性を高めるとともに、総合的な移動支援事業を行うことによって、自由に外出のできるまちづくりをめざします。
1.基本目標
- (都市施設整備)
- ・ 不特定多数の人が利用する公共公益的施設(都市施設)については、障害のある人をはじめ、誰もが快適に利用できる施設の整備を推進していきます。また、障害のある人が自由に移動できる環境の整備に向けた市民意識の向上を図ります。
・ すべての人が快適で安心できる生活を送れるよう、「人にやさしい福祉と安心のまちづくり」のモデル事業を推進します。
- (移動対策)
- ・ 社会参加促進の観点から、ガイドヘルパー事業やガイドヘルパーネットワーク事業、コミュニケーション確保事業の拡充を図ります。
・ また、リフト付タクシーの増車や盲導犬の貸付対象の拡大等、移動対策を充実します。
・ 自動車改造資金助成、福祉乗車証の交付等により、障害のある人の外出に伴う経済的な負担を軽減します。
2.施策体系
- 外出支援
-
- 都市施設整備
-
- 〔市施設の整備〕
-
- 庁舎・道路・公園・市営地下鉄・市バス・学校
- 〔民間施設整備促進〕
-
- 都市施設整備の推進(民間建築物の指導)
- 都市施設整備推進資金融資
- 鉄道駅舎エレベーター設置補助
- 鉄道駅舎エレベーター整備資金融資
- 市営バスにおける都市低床バスの導入等
- 人にやさしい福祉と安心のまちづくりの推進
- 市民意識の向上
- 移動対策
-
- ガイドヘルパー(知的障害者世帯への派遣)
- ガイドヘルパーネットワーク事業
- コミュニケーション確保事業
※「相談」参照 - リフト付バスの貸出
- リフト付タクシー購入費助成
- 盲導犬の貸付
- 自動車改造資金助成
- 自動車運転免許取得助成
- 福祉乗車証
- 重度心身障害者タクシー利用助成
- 運賃割引
- 税の減免(自動車税等)
3.施策展開
- 1)都市施設整備
-
- (1) 現状と課題
- 神戸市では昭和54(1979)年から「神戸市民の福祉をまもる条例に基づく都市施設の整備に関する規則」に基づき、建築事業者に対して、不特定多数の市民が利用する公共公益的施設(都市施設)を新築・増改築する場合、障害のある人をはじめ誰もが利用できるよう配慮した設計をするよう働きかけを行っています。そして、平成9(1997)年2月末までに、約2,000 件の民間建築物にこうした配慮を指導・助言してきました。また、昭和63(1988)年と平成7 (1995)年には規則改正を行い、整備対象の拡大と基準の向上を図りました。一方、既存施設の改修には「都市施設整備推進資金融資」を、駅舎のエレベーター設置には「鉄道駅舎エレベーター設置補助」(平成4(1992)年度)及び「鉄道駅舎エレベーター整備資金融資」(平成6(1994)年度)を設け、建築物・駅舎の利便性の向上のための施設整備を促しています。
また、区役所等の公共施設や市営地下鉄の駅舎にはスロープやエレベーターの設置、道路についても歩道の段差切り下げや点字ブロック(ストップライン)の敷設など、誰もが住みやすいまちづくりに力を入れてきました。
今後、障害のある人が自由に外出でき、移動しやすいまちづくりをさらに進めていくためには、各都市施設ごとの点と点の整備から、道路、歩道、鉄道といった交通手段も含めた面的なまちづくりの中で、移動制約者の配慮を進める必要があります。加えて、視覚に障害のある人や聴覚に障害のある人の利用を考慮した新しい設備の導入・整備なども研究していく必要があります。
- (2) 施策目標
-
- (ア) 公共交通機関への対応
- 鉄道駅舎へのエレベーター設置などによる移動の利便性の向上は、物理的・技術的・経済的に難しい点もありますが、今後とも民間鉄道事業者に対して、移動に制約のある人の利用に配慮した整備を行うよう要望を続けていきます。
その際、「都市施設整備推進資金融資」「鉄道駅舎エレベーター設置補助」及び「鉄道駅舎エレベーター整備資金融資」の活用を促し、整備の推進を図ります。
また、全国的な見地からも移動の利便性・快適性の向上を図るような指導・施策展開を行うよう国に対し要望します。
市バスでは、乗降しやすいよう都市低床バスの導入や乗車ステップの改良についての研究を進め、また現在建設中の地下鉄海岸線においては、西神山手線と同様に全駅にエレベーターを設置するとともに、車両内に車いす用スペースを確保します。 -
- 平成8年度末現在 平成9~13年度 鉄道駅舎エレベーター設置補助 14駅31基 19駅41基 市営地下鉄
・エレベーター
・エスカレーター
・車いす運搬機
・車両内車いすスペース29基
44基
1台
56か所板宿駅のエレベーター設置1基
地下鉄海岸線各駅(10駅)にエレベーター、エスカレーターの設置
地下鉄海岸線車両車いす用スペースの確保市営バス
・低床バス
・都市低床バス
・ワンステップバス
・リフト付バス
・優先座席
・大型方向幕
・停留所名表示器
・発進停車等案内放送装置
・立席握棒504両
144両
2両
3両
3席/1両
653両
653両
653両
240両今後、代替車両は都市低床バスを導入します。
優先座席の設定 3席/1両
今後も継続して設置
今後も継続して設置
今後も継続して設置
今後の代替車両に全て設置
- (イ) 建築物の整備
- 昭和54(1979)年に施行した「都市施設の整備に関する規則」に従って、今後も障害のある人をはじめ誰もが利用しやすいよう、民間建築物を含めた公共公益的施設の整備を進めていきます。
特に、市が建設する庁舎、道路、公園等の公共施設については率先して、障害のある人や高齢者が利用しやすい施設整備を行っていきます。
また、整備の進んでいない既存建築物の改修を誘導していくとともに、現行規則の改正等も含め、時代の変化に対応した施設整備の基準づくりを行っていきます。
既存の建築物については「都市施設整備推進資金融資制度」の活用を促すとともに、一定規模の新設の建築物についても対象となるよう検討していきます。
- (ウ) 道路の整備
- 震災によって損傷した歩道の復旧も平成8(1996)年度末で概ね終わり、一方、歩道の段差切り下げ・点字ブロック(ストップライン)の敷設などについてはほぼ整備を完了しています。
今後は、できるだけ高低差の少ない歩道の整備を進めていくほか、電線類の地中化や放置自転車・歩道上の看板などの撤去対策を推進し、肢体不自由の人や視覚に障害のある人をはじめ、誰もが通りやすい道路整備を行います。また、歩道橋のうち可能なものについては、スロープ化やエレベータの設置を検討します。
- (エ) 「人にやさしい福祉と安心のまちづくり」指針に基づき、東部新都心(区画整理事業区域)と西部副都心(新長田駅南市街地再開発事業区域)をモデル地区として、すべての人が生涯を通じて快適で安心できる生活を送れるよう、福祉と防災の両面に配慮した総合的なまちづくりを推進します。
- (オ) 市民意識の向上
- 施設の整備を進めても、それだけで全ての障害のある人が自由に移動できる環境をつくることはできません。道路上に物を置かない、困っている人を見かけたら気軽に声をかけ案内するなど、市民全体の理解と協力が基本です。引き続き、市民、事業者に対して、案内、誘導といった人的な対応も含め協力を求めていきます。
- 2)移動対策
-
- (1) 現状と課題
- 平成8(1996)年2月に神戸市市民福祉調査委員会が行った「心身障害者生活実態調査」によれば身体障害者の場合、ほとんど毎日外出する人が38.8%と多く、逆にほとんど外出しない人は12.1%で、高齢者ほど外出頻度が減少しています。
知的障害者の場合、62.7%がほとんど毎日外出しています。反対にほとんど外出しない人が10.5%で、50歳以上になると特に外出頻度が低くなります。
神戸市では、都市施設の整備とともに、自力で外出することが困難な人に対して、ガイドヘルパーの派遣や盲導犬の貸付など、障害に応じた移動対策を行っています。
今後、障害のある人の外出機会が増えるにつれて、ますます移動対策の充実が必要になってきます。
- (2) 施策目標
-
- (ア) ガイドヘルパー事業の充実
- 外出困難な重度の障害のある人が公的機関、医療機関等日常生活で必要な所へ行く場合に、ガイドヘルパーを派遣しています。今後は、社会参加促進の観点から、知的障害者世帯への派遣や利用範囲の拡大により、多様なニーズに対応できるようガイドヘルパーの育成・確保に努めます。
-
- 平成8年度末 平成9~13年度 ガイドヘルパー 250人 20人増
- (イ) ガイドヘルパーネットワーク事業
- 障害のある人が他都市にも安心して行けるようガイドセンターを設置して、45都道府県・政励指定都市(平成8(1996)年3月末現在)の間で、ガイドヘルパーの広域的利用を可能にしています。神戸を訪れた障害のある人にも、引き続きサービスの提供を行っていきます。
- (ウ) コミュニケーション確保事業
- 聴覚に障害のある人の円滑な意思疎通を図り、外出を容易にするため、手話奉仕員・要約筆記奉仕員の派遣や手話奉仕員の区窓口配置を行うなど、一層のコミュニケーション手段の確保を図っていきます。
- (エ) リフト付バス、リフト付タクシー、盲導犬の貸付
- 野外活動や社会見学、生活訓練などを行う団体に対するリフト付バスの貸出しや、タクシー事業者に対するリフト付タクシーの購入費等の助成、視覚に障害のある人に対する盲導犬の貸付と育成費の助成を行っています。
今後もリフト付バス・リフト付タクシーの増車、盲導犬の貸付対象の拡大など、障害のある人の移動手段の充実を図ります。また、自動車免許取得等の助成も続けていきます。
- (オ) 経済的な支援
- 障害のある人にとって外出をより容易なものとするため、自動車改造資金助成、自動車免許取得助成、運賃割引制度、自動車税等の減免、重度心身障害者タクシー利用助成によるタクシー利用券の交付・福祉乗車証の交付などにより、外出に伴う経済的な負担を軽減します。
第8章 住宅・災害対策
障害のある人のみならず、高齢者など身体的機能の低下した人に住みやすい住宅を供給することは、高齢化社会に入ったといわれる我が国においては不可欠なことです。そのような住宅では、障害のある人が自力で活動でき、また介護者が介護しやすい設備等の配慮が行われる必要があります。
一方、震災により失われた住宅ストックを回復し、被災市民の生活基盤の早期再建と居住の安定を図るため、「神戸市震災復興住宅整備緊急3か年計画」(平成7(1995)~9(1997)年度)及び「神戸のすまい復興プラン」に基づく取り組みを行っていますが、すまいの復興を進めていくにあたっては、障害のある人の生活再建への配慮も欠かせません。
また、住宅整備とともに、緊急時の対応もあわせて進めていく必要があります。
1.基本目標
- 〔住宅〕
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- 「神戸市震災復興住宅整備緊急3か年計画」(平成7(1995)~9(1997)年度)及び「神戸のすまい復興プラン」に基づいて、安心できるすまい・まちづくりを推進し、自力での住宅確保が困難な障害のある人等への住宅供給を重点的に行うとともに、自助自立を可能とする総合的な施策を展開します。
- 「神戸の住宅設計基準」の普及を図り、障害のある人も含めて誰もが住み続けられるように配慮された住宅の供給を促進します。
- 住宅改造費を助成・融資するほか、改造にあたっての専門的な相談を行っていきます。
- グループホームを整備し、障害のある人の自立と社会参加の拠点づくりを推進します。
- 障害のある人等が地域で孤立するのを防ぐため、生活援助員や高齢世帯支援員(仮称)を派遣します。
- 〔安全(防災)〕
-
安心して生活できるよう緊急時の対応を充実していきます。特に、震災時に備えての防災拠点、情報提供体制などを整備していきます。
- 災害時にも対応できるよう平常時から福祉活動と防災活動に一体として取り組み、災害時には、障害のある人の救護、避難誘導、避難生活の支援などの活動ができる「防災福祉コミュニティ」を育成します。
- 「ケアライン119」の設置等の緊急通報システムを整備するとともに、消防署職員が各戸訪問し、防災指導を行う「あんしんひと言作戦」を展開します。
- 災害に備えて防災拠点を整備するほか、避難所となる施設には、障害のある人の利用を考慮した設備の設置・仕様を工夫し、効率的な情報提供・安否確認が行われるよう検討します。また災害時には、精神科救護所(心のケアセンター)の設置等を行います。
2.施策体系
- 住宅
-
- 住宅
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- 災害公営住宅等の供給
- 高齢者及び障害者居室等改修資金貸付
- 住宅改修助成制度
- 「神戸の住宅設計基準」の普及
- 住宅改造専門相談窓口の設置
- 精神薄弱者グループホーム
- 精神障害者グループホーム
- 身体障害者グループホーム
- 生活援助員、★高齢世帯支援員(仮称)
- 安全(防災)
-
- 防災福祉コミュニティの育成
- ケアライン119
- 聴覚、言語障害者専用緊急ファックス
- 住宅用火災警報器、非常ベル
- あんしんひと言作戦
- 防災訓練・救助活動
- 防火等の指導・啓発
- 防災拠点の整備(食料・補装具・薬品の備蓄)
- 災害時の情報提供体制の整備・安否確認体制の整備
- 災害時の心のケア事業の実施
- 避難所となる施設の福祉的配慮、二次避難所の設置
★印は今後新しく実施する施策です。
3.施策展開
- 1)住 宅
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- (1) 現状と課題
- 平成8(1996)年2月に神戸市市民福祉調査委員会が行った「心身障害者生活実態調査」によると住居の形態は、身体障害者では多いものから「持家」が51.6%、「公的な住宅」が 20.4%、「民間の借家」が11.0%、「仮設住宅」が8.9%となっています。
一方、知的障害者では、それぞれ55.1%、16.5%、9.8%、3.9%となっています。
また、こうした住まいで困っていることは、身体障害者では「狭い」が20.9%、「階段や段差がある等のため移動が困難」が18.3%、「騒音や振動がある」が12.4%となっており、知的障害者では「狭い」が23.6%、「騒音や振動がある」が12.1%、「老朽化している」が 9.2%となっています。
福祉施策に対しては、身体障害者は「住宅改造に対する補助・市営住宅などの供給」が 23.7%、知的障害者は「グループホーム、福祉ホーム等の整備」が28.3%、「住宅改造に対する補助・市営住宅などの供給」が21.3%の希望があります。
また、精神障害者については、平成8(1996)年8月に神戸市精神保健福祉審議会・神戸市保健福祉局が行った「福祉に関するアンケート調査」より、地域社会で生活していく基盤となる住宅の確保が難しく、引き続き入院を余儀なくされている方が少なくない状況がうかがえます。
震災による住宅困窮者の中には、少なからず障害のある方がおられます。このため「神戸市震災復興住宅整備緊急3か年計画」(平成7(1995)~9(1997)年度)および「神戸のすまい復興プラン」の中で、災害公営住宅等の供給にあたっては、被災されて住宅に困窮している障害のある方などの優先的入居や家賃低減化対策を盛り込み実施してきました。
今後は地域の中で、自助的・自立的生活が可能となる住宅と支援サービスの連携も検討する必要があります。
一方、住宅の改修に対しても「住宅改修助成制度」「高齢者及び障害者居室等改修資金貸付制度」により、身体状況に応じた改修の支援を行っています。
今後、障害のある人の高齢化が進んでいくこと等を踏まえ、住宅のいわゆるバリアフリーに関する設計基準として定められた「神戸の住宅設計基準:Kobe Housing Design Standard」(略称KOHDES、平成8(1996)年6月)に基づく住宅の供給を促進していくとともに、住宅改造を促進するための支援を推進していく必要があります。
- (2) 施策目標
-
- (ア) 災害公営住宅等の供給
- 今後も、障害のある人が生活するのに配慮された住宅を供給していくとともに、住宅困窮度の高い方の優先的入居等による住まいの確保に努めていきます。また、市営住宅をグループホームとして活用することについては、慎重に検討していきます。
- (イ) 「神戸の住宅設計基準」の普及
- 先のKOHDESに基づいた住宅の供給促進を図るため、その普及・啓発に努めるとともに、民間住宅事業コンペにおいても、コンペの募集に際し障害のある人への配慮を条件づけるなどの協力を求めていきます。
- (ウ) 住宅改造への支援
- 身体状況等に即応した住宅改修を行うため、専門家による訪問相談を行うとともに、住宅改修資金助成や高齢者及び障害者居室等改修資金貸付を今後も実施していきます。
- (エ) グループホーム
- 一般企業等へ就労している障害のある人にとっては、地域での生活を支援するグループホームが自活の基盤となります。引き続き、運営費助成の対象施設を増やしていきます。一方、公営住宅のグループホーム事業への利用についても慎重に検討していきます。
-
- 平成8年度末 平成9~13年度 精神薄弱者グループホーム 11か所
定員51人8か所増
定員39人増身体障害者グループホーム - 制度の創設 精神障害者グループホーム 5か所
定員27人5か所増
定員20人増
- (オ) 住宅施策と福祉施策との連携
- 障害のある人の住宅を緊急時や医療・介護など福祉サービスを受けやすい場所に建設する一方で、近隣の福祉施設等でのサービスが受けられるようサービス提供体制の整備を図ります。
また、障害のある人や高齢者が地域で孤立するのを防ぐため、災害公営住宅のうち市営・県営のシルバーハウジングに住む高齢障害者等には生活援助員を、また一般災害公営住宅の若年障害者等や再開発系住宅も含めた公的住宅に入居する障害のある人等で見守りが必要な者に対して、高齢世帯支援員(仮称)を派遣し、コミュニティづくりの支援、入居者間の相互交流とともに閉じこもり防止や安否確認を行います。
- 2)安全(防災)
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- (1) 現状と課題
- 平常時から福祉活動と防災活動に取り組み、災害時には、障害のある人の救護・避難誘導・安否確認・避難生活の支援などの地域活動が実践できる「防災福祉コミュニティ」を育成しています。
ひとりぐらしの障害のある人が、緊急の場合に助けを求めやすいよう「ケアライン119」など非常通報システムを整備するのに加え、聴覚・言語に障害のある人が利用できるよう「緊急通報用専用ファックス」を開設しています。
また、非常事態に対応するため、「あんしんひと言作戦」等により各家庭を訪問し、住宅火災等の災害防止に努めています。
阪神・淡路大震災時に、精神科救護活動など被災者の心のケアが必要になりました。また一方で、障害のある人も利用できる避難所の整備、効果的な情報提供が求められました。
- (2) 施策目標
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- (ア) 安心して生活できる環境整備
- 障害のある人が安心して生活できるよう「防災福祉コミュニティ」の育成、「ケアライン119」「住宅用火災警報器」「非常ベル」の設置といった緊急時の対応を充実します。
また必要に応じて、防災訓練・救助活動、防火等の指導・啓発を行っていきます。 -
- 平成8年度末 平成9~13年度 防災福祉コミュニティ 26地区 20地区/年増 ケアライン119 2,600機
(稼働数)新設 300機/年
再設置100機/年住宅用火災警報器 1,800器 400器/年 非常ベル 1,200個
(稼働数)100個/年 あんしんひと言作戦 消防職員が各戸訪問し、防災指導 ※ 数字は高齢者等を含んでいます。
- (イ) 災害時の心のケア事業の実施
- 災害時における精神科救護所(心のケアセンター)の設置や地域精神保健活動の管理・調整・連携・情報伝達等の中枢機能を担うためのセンター機能について検討します。
- (ウ) 緊急時の対応
- 災害に備えて、地域に避難所を指定するだけでなく、指定された施設におけるスロープ、車いす対応型トイレ、点字ブロック等の整備を行います。また、小・中学校にはエレベーターも設置していきます。さらに、特に介護が必要な方のために、地域福祉センターを活用した2次避難所を設置します。そして、防災総合拠点などの防災拠点には食料・補装具・医療品などの備蓄も行うよう検討していきます。
また災害時には、行政、社会福祉団体、障害者団体、ボランティア団体が相互に連携しあい、安否確認、災害情報の提供などを行うよう検討していきます。
第9章 在宅福祉
障害者・特定疾患患者にとって在宅で受けることのできるサービスは、機能回復・機能維持のため治療や訓練によるリハビリテーションとともに、自立生活を支え、またその生活の質を高めていく意味から欠かせません。特に、本人や介助者の高齢化や障害の重度化の進行などにより、家庭の介護能力を超える場合も多くなってきており、こうした地域での生活を援助する施策の充実が望まれています。
1.基本目標
- (訪問型サービス)
- ホームヘルプサービスやガイドヘルパーの派遣等、身の回りの世話をするサービスを担う人材を確保するとともに、利用回数・時間などサービスの提供方法も検討していきます。
- (施設利用型サービス)
-
- 在宅障害者福祉センターや地域の福祉施設において、相談、デイサービス、昼間一時保護、ショートステイ等のサービスの充実を図ります。
- 市町村障害者生活支援事業の充実に加えて、精神障害者地域生活支援事業を実施します。
- 障害のある人の通所施設については、全市的な地域バランス、社会福祉法人の意向などを踏まえてその設置を行います。特に、精神障害者の通所授産施設については、早急にその整備を行います。
- 重複する障害のある児童のための重症心身障害児(者)通園事業を実施します。
- 地域に根づいた活動を行う小規模作業所への運営の助成を強化します。
- (福祉活動等)
- (社福)神戸市社会福祉協議会等で実施している点訳・音訳・手話通訳・要約筆記・スポーツリーダーなどの養成講座等の充実とその活動の振興を図っていきます。
また、市民が広く福祉活動等に参加できるよう、活動に関する相談・情報提供等を充実していきます。
2.施策体系
- 在宅福祉
-
- 訪問型サービス
-
- 在宅重度身体障害者訪問入浴サービス
- ホームヘルパーの派遣(★特定疾患患者への派遣)
- 24時間対応ホームヘルパーの派遣の検討
- 全身性障害者介護人派遣事業
- ガイドヘルパーの派遣 ※「外出支援」参照
- 配食サービスの検討
- 補装具の交付・修理
- 日常生活用具の給付
- ★日常生活用具の給付(特定疾患患者)
- 施設利用型サービス
-
- 在宅障害児(者)昼間一時保護
- 在宅障害児(者)短期入所(ショートステイ)
- ★在宅特定疾患患者短期入所(ショートステイ)
- 在宅重度障害者デイサービス(作業、趣味創作、入浴)
- 小規模作業所(心身障害者、精神障害者)
- 心身障害福祉センター
- 在宅障害者福祉センター
- ★重症心身障害児(者)通園事業
- 精神薄弱者通所施設(通所更生施設、通所授産施設)
※「就労」参照 - 身体障害者通所授産施設
- ★精神障害者通所授産施設
- ★精神障害者地域生活支援事業
- 市町村障害者生活支援事業
- 福祉活動等
-
- 各種ボランティア養成講座の充実
(点訳、音訳、手話通訳、要約筆記、スポーツリーダー、 - ★精神保健福祉ボランティア)
- ボランティアに関する相談・活動情報の提供・活動支援
- 市民福祉大学
- 市民福祉人材センター・各区のボランティアセンター
- ボランティア災害共済への加入促進
- 神戸市市民活動傷害等見舞金給付制度
- ふれあいのまちKOBE・愛の輪運動
※「啓発」参照 - ふれあいのまちづくりの推進
- 介護福祉士奨学金
- 各種ボランティア養成講座の充実
★印は今後新しく実施する施策です。
3.施策展開
- 1)訪問型サービスの提供
-
- (1) 現状と課題
- 平成8(1996)年2月に神戸市市民福祉調査委員会が行った「心身障害者生活実態調査」で「炊事」「掃除」「入浴」「外出・買物」といった日常生活上の動作についてみると、何らかの介助が必要な人は、その動作の種類にもよりますが、身体障害者の場合で約1~4割、知的障害者で約2~7割おられます。
またこのうち、介助者が60歳以上の方は身体障害者で38.3%、知的障害者で27.2%で、さらに、介助者がいないか何らかの理由で十分な介助を受けることができない人が、身体障害者の場合27.0%おられます。
市、(財)こうべ市民福祉振興協会や福祉活動団体等がそれぞれ、ホームヘルパー派遣や重度身体障害者の訪問入浴サービス、全身性障害者介護人派遣事業を行っていますが、今後一層の障害者世帯の高齢化、早朝・夜間のサービスの提供や対象者の拡大などにより、サービスニーズは増大すると予想され、これに対応するためには、ヘルパーとなる人材の確保が課題となります。
また、ガイドヘルパーについても知的障害者の世帯への派遣や利用範囲の拡大といったことから、その人材の確保が必要となっています。
先の「心身障害者生活実態調査」によれば、高齢化の進展や女性の社会進出により、ホームヘルパー・ガイドヘルパー・全身性障害者介護人の派遣に対するニーズは現在の利用実績より大きくなると推計されています。今後も、こうした施策を充実していく必要があります。
- (2) 施策目標
- 食事、排泄等の日常生活の身辺介護サービスは、家族の負担を軽減する意味で重要な役割を担っています。今後は、ヘルパーの養成に力を注ぐのに加え、多くの人に効率よくサービスを提供する体制づくりや24時間対応ホームヘルパーの派遣など訪問介護サービスの提供方法も検討していきます。
また、家事援助型のホームヘルプサービスは、ひとりぐらしや障害のある人のみの世帯にとって欠かせず、人材確保に努める一方で、配食などのサービスの導入も検討していきます。
さらに、知的障害者世帯に対するガイドヘルパーの派遣や特定疾患患者に対するホームヘルプサービス事業の実施に向け、取り組んでいきます。 -
- 平成8年度末 平成9~13年度 ホームヘルプサービス
(心身障害者)453世帯 387世帯増 - 一方、障害のある人の日常生活を補ったり、利便性をはかるため日常生活用具の給付、補装具の交付・修理を行います(日常生活用具の給付については、特定疾患患者に対しても行います)。
- 2)施設利用型サービスの提供
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- (1) 現状と課題
- 在宅で重度の障害のある人の生きがいを高め社会参加を促すため、創作活動、軽作業、日常生活訓練などを行う在宅重度障害者デイサービス事業を行っています。また緊急時の対応として、東部・中部の在宅障害者福祉センター等で昼間一時保護事業を実施しているほか、宿泊を伴う場合は居住型施設の協力を得て、短期入所(ショートステイ)を行っています。
在宅の障害のある人の福祉推進の拠点として、在宅障害者福祉センターを東部・中部・西部(西部は平成10(1998)年度完成)の3か所に整備しています。ここには、通所施設、デイサービス施設のほか、相談やリハビリテーション、会議室、ホールといった機能・施設が整備されています。
今後、障害のある人やその家族の高齢化が進み、家庭での介護に対するニーズが拡大していくことが予想されることから、こうした在宅での介護サービス等の充実は一層必要となります。
一方、現在まで、在宅障害者福祉センターや通所の授産施設、更生施設等多くの施設を建設してきましたが、建設に必要な用地や財源の確保が困難になっている反面、施設通所者の在所期間は年々長期化する傾向にあり、新規の受入れは難しくなっています。このような状況のなかで、今後卒業を予定している重度・重複障害児の進路を確保することは大きな課題となっています。
精神障害者については、地域における精神保健福祉活動の窓口として、区保健部が社会復帰のための相談に応じているほか、区保健部内において週1回程度の作業、交流会を行うデイ・ケアを開催しています。
しかし、精神障害者の日常生活における自立のためには、区保健部の事業以外にも夜間・休日における相談など様々なサービスの提供が求められています。
さらに、これまで市内に整備がされていない精神障害者通所授産施設についても早期の整備の検討が必要です。
- (2) 施策目標
- 今後も、心身障害福祉センターや在宅障害者福祉センター、地域の福祉施設において、相談やリハビリテーション、昼間一時保護といったサービスを充実させていくとともに、通所施設、デイサービス施設等の整備などを推進していきます。
-
- (ア) 通所施設
- コストの軽減を図るため、施設建設に対する融資・助成制度の拡充、用地の貸付などを行うとともに、市街地での建築については障害施設と老人施設の合築や公設民営方式の導入を行っていきます。また、最重度障害者の受入れを促進するため、運営費等を補助するなど支援策も行っていきます。
特に、今後その充実が急がれる精神障害者通所授産施設については、事業者の意向と利用者のニーズを踏まえ、その整備を検討します。また、障害の重度化により施設通所が困難になった通所者については、デイサービス施設への利用を促すなどの対応により、新規の受け入れ体制を図ります。
一方、医療機関と連携することにより、障害が肢体不自由と知的障害に重複し、かつ重度の障害のある児童のため、重症心身障害児(者)通園事業を実施し、その療育と指導を行います。 -
- - 平成8年度末 平成9~13年度 精神薄弱者通所更生施設 施設数 6か所 3か所増 定員数 208人 80人増 精神薄弱者通所授産施設 施設数 11か所+4分場 1か所増 定員数 612人 50人増 精神障害者通所授産施設 施設数 - 2か所増 定員数 - 40人増
- (イ) デイサービス施設・小規模作業所
- 神戸市では、小規模作業所の開設費補助や運営費助成などの積極的な支援を行っています。これらの施設は、その地域に根づいた活動と活動主体の創意工夫により弾力的な運営が期待できるため、今後もこうした助成の強化を行います。
また、デイサービス施設の整備には、市の用地や学校の空き教室など公的施設の利用により、身近な地域での利用が可能になるよう整備を進めていきます。 これまでは週2回程度の通所がほとんどでしたが、今後は、通所回数の増加や介護者負担の軽減、指導内容の充実に努めていきます。 -
- - 平成8年度末 平成9~13年度 在宅重度障害者デイサービス 施設数 23か所 7か所増 定員数 531人 179人増 小規模作業所(心身障害者) 施設数 40か所 20か所増 定員数 342人 148人増 小規模作業所(精神障害者) 施設数 12か所 10か所増 定員数 274人 146人増
- (ウ) ショートステイ
- 家族の病気や入院、冠婚葬祭などにより、介護が一時的に受けられなくなった時に利用できる専用床を確保するとともに、空きベットを利用できるよう多数の施設と契約し、受入れ体制を強化します。必要な方には、送迎も行っています。在宅の特定疾患患者についても、ショートステイ事業の実施に向け取り組んでいきます。
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- 平成8年度末 平成9~13年度 在宅障害(児)者短期入所
(ショートステイ)63床 37床増※ ※平成13年度末100床のうち専用床70床
- (エ) 精神障害者地域生活支援事業・市町村障害者生活支援事業
- 地域で生活する障害のある人の日常生活の支援、日常的な相談への対応や地域交流活動などを行う地域生活支援事業を実施します。特に精神障害者地域生活支援事業は、夕方、夜間、休日等利用度の高いと考えられる時間帯に対応できる運営体制をとります。
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- 平成8年度末 平成9~13年度 精神障害者地域生活支援事業 - 2か所増 市町村障害者生活支援事業
(心身障害者)1か所 2か所増
- 3)福祉活動等
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- (1) 現状と課題
- 多様で積極的な団体による活動は、社会参加をめざしている障害のある人にとっては社会生活を送る上で重要な支援者となっています。今後も活動者の自主性を尊重しながら、ボランティア活動についての相談や紹介、情報の提供、活動中の事故の対応などに対する支援を行っていく必要があります。
また、障害のある人・高齢者も含め、そこに住む住民が地域で互いに助け合うといった良好な地域社会の形成が望まれます。
- (2) 施策目標
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- (ア) ボランティア養成講座の充実等
- 広く市民に福祉に関する理解と関心を促すため、(社福)神戸市社会福祉協議会(以下「市社会福祉協議会」という。)の市民福祉大学で、障害者福祉をはじめとする幅広い福祉に関する講演会・セミナー・研修などを開催するとともに、福祉に関する図書・ビデオ・資料等による情報提供を行っていきます。
また、点字図書館や市社会福祉協議会、(財)神戸市障害者スポーツ協会などを中心に、点訳・音訳・手話通訳・要約筆記・スポーツリーダーなど専門性の高いボランティアの養成講座を開催していきます。これらの講座や神戸市身体障害者団体連合会に委託している各種のボランティア養成講座の充実を図るとともに、新たに市社会福祉協議会で精神保健福祉ボランティアの養成講座にも取り組んでいきます。
また、福祉関係の専門職員をめざす人のために、特に介護福祉士奨学金を貸与していきます。
- (イ) ボランティア活動振興
- 市民福祉人材センター及び各区のボランティアセンターでボランティアに関する相談、情報提供、コーディネート、活動助成を行っていくほか、ボランティア災害共済への加入促進、神戸市市民活動傷害等見舞金給付制度の活用などにより、ボランティア活動振興のための条件整備に努めます。
また、「ふれあいのまちKOBE・愛の輪運動」を推進し、市民の障害者福祉に対する理解と啓発を行うとともに、市民の関心および活動レベルに対応した各種講座やボランティア大会等を開催します。
- (ウ) ふれあいのまちづくり
- 地域活動の拠点として地域福祉センターの整備に取り組むとともに、地域福祉活動を推進する「ふれあいのまちづくり協議会」の結成を促進するなど、地域住民と行政が一体となった地域福祉の推進を図ります。
第10章 施設福祉
障害のある人にとって、その持てる能力を発揮し、自らの意思に従って社会参加していくためには、その生活が在宅によって営まれ、また地域のコミュニティ・職場等で障害のない人とともに生活・活動できる形が望ましいことはいうまでもありません。
しかしながら、障害の状態によっては入院医療の必要はないが、家庭において日常生活を営むのに支障があったり、介護する家族等がいない人がいます。こうした人に対しては、治療、訓練、作業を通じてのリハビリテーションを継続的に行いながら、一定の介護の下に生活を支援することが必要です。このため、こうした役割を果たす施設が、障害のある人の地域生活の営みを補完するために整備されてきました。
- 1.基本目標
- 施設の建設費の負担を軽減することにより運営主体を支援し、施設の整備促進を図ります。
また、居住者が快適な生活を送れるよう配慮するとともに、地域で暮らす障害のある人に対してもサービスを提供していきます。
2.施策体系
- 施設福祉
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- 〔身体障害者〕
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- 身体障害者療護施設
- 国立神戸視力障害センター
- 身体障害者授産施設(総合リハビリテーションセンター)
- 重度身体障害者授産施設
- 身体障害者グループホーム(再掲)
※「住宅」参照
- 〔精神薄弱者〕
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- 精神薄弱者入所更生施設
- 精神薄弱者入所授産施設
- 精神薄弱者グループホーム(再掲)
※「住宅」参照
- 〔精神障害者〕
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- ★精神障害者援護寮
- 精神障害者グループホーム(再掲)
※「住宅」参照
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- 施設整備の推進
- 居住者に対するサービスの充実
- 地域に根づいた運営
★は今後新しく実施する施策です。
3.施策展開
- 1)施設福祉
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- (1) 現状と課題
- 身体障害者の居住型施設として、身体障害者療護施設3か所、重度身体障害者授産施設1か所を整備しています。また、市内には県立総合リハビリテーションセンター内に2か所の居住型施設が整備されているほか、中途失明者の訓練所として国立神戸視力障害センターが整備されています。
精神障害者については、平成7(1995)年に「精神保健福祉法」が制定され、平成8(1996) 年度より市に業務移管されました。平成8(1996)年度末ではグループホームを5か所整備していますが、居住型施設は未整備であり、その整備促進については今後の課題となっています。
知的障害者については、グループホームを11か所整備しているほか、居住型施設として更生施設10か所、授産施設2か所を整備しています。
居住型施設は、24時間のサービスが必要であり、しかも、障害の重度化・重複化や高齢化に伴って医療ケアや機能訓練などの専門的知識やスポーツ、レクリエーションなど多種多様な技術を持つ人材の確保が課題となっています。また、障害のある人が安心して生活できる施設を建設・運営するためには、社会福祉法人を育てていく必要があります。
今後、希望者すべてが入所できるよう努力していくとともに、居住者一人ひとりの生活を重視し、プライバシーの確保や居住者の社会参加(外出)の促進等QOLの向上にも努めていく必要があります。
- (2) 施策目標
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- (ア) 施設整備の推進
- 障害のある人や介護者の高齢化に対応して、今後も、心身に障害のある人の居住型施設を整備していきます。そのため、居住型施設の運営主体となる社会福祉法人を今後とも育成・支援していきます。また、入院患者の社会復帰及び地域生活者の自立と社会参加を促進させるため、精神障害者援護寮を整備します。
施設の建設に必要な費用については、市の融資・助成制度の拡充や市有地の貸与など法人負担を軽減する支援策などを行います。また、人材確保等については、措置費の改善など抜本的対策を国等へ要望していくとともに、市独自の助成についても一層充実させていきます。 -
- 平成8年度末 平成9~13年度 精神薄弱者入所授産施設 2か所
定員 110人1か所増
定員 30人増精神薄弱者入所更生施設 10か所
定員 560人1か所増
50人増身体障害者療護施設 3か所
定員 150人2か所増
定員 100人増精神障害者援護寮 - 1か所増
定員 20人増
- (イ) 居住者に対するサービスの充実
- 居住型施設については、以下の点について配慮しながら運営を行います。
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- 家庭としての機能
施設は家庭に代わる生活の場であり、衣食住とともに、健康・安全で人生の楽しみを味わえるような設備面、運営面での工夫をしています。特に、プライバシー保護のための個室化を進めるなど居住者個人の生活を重視した施設の充実を図ります。 - 集団生活の場としての機能
施設はいろいろな人が共に生活しており、この共同生活から、人とのコミュニケーションや生活のルールを体験し、また地域での生活ができるような条件が何かを考える機会を提供します。
さらに、ノーマライゼーションの理念に基づき、地域社会の一員として広く地域活動に参加できるように配慮するとともに、各種の行事への参加を促すなど、外出のきっかけづくりや居住者の主体的な活動の支援に努めます。 - 治療・教育の機能
医学的な治療、心理学的・社会学的な面からの療育機能を充実していきます。また、居住者の学習意欲を高めるため、趣味創作活動や見学会などさまざまな学習の機会を提供します。
- 家庭としての機能
- (ウ) 地域に根づいた運営
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- デイサービス・ショートステイ
地域の障害のある人を対象に、デイサービス(入浴・給食サービス)・ショートステイ・相談等を行うことにより、施設の閉鎖的になりがちな面を改善し、地域の施設に対する理解と協力を得るとともに、施設の持つ機能を生かし在宅福祉サービスの拠点としての機能を併設します。
※「在宅福祉」参照 - 地域生活援助事業(グループホーム)等
地域での自立した生活を支え、一般就労などの社会参加を支援するために、地域社会にある住宅にグループホームを設置していきます。ここでは専門の職員が居住者の日常生活へのアドバイス等を行います。また、施設内の居住者が地域生活を送るための条件整備などの検討を進めます。また、公営住宅の活用を検討していきます。
※「住宅」参照 - 地域に根づいた活動
障害者施設の地域開放や運動会やバザーなどの行事への参加を通じて、地域住民との交流の場を提供し、障害のある人に対する理解を促すとともに、地域に根づいた施設運営を行います。
- デイサービス・ショートステイ
第11章 生活の質の向上
障害のある人の自立・社会参加の促進のためには、経済的な支援が必要な場合があり、そのための所得保障は、国全体で進めていかなければならない事業です。これには社会保険と公的扶助、災害補償などの制度が設けられています。神戸市としても、こうした国の制度とは別に、施策が障害のある人の実情に沿った内容となるよう可能な限りの支援を行います。
また、生活の質(QOL)を高めるという観点から、スポーツ、文化活動など生きがいを高める活動が盛んになってきました。市民の一員としてさまざまな活動に参加できるよう、いっしょに楽しめるプログラムづくりや参加しやすい条件づくりなどを工夫していきます。
1.基本目標
- (経済的支援)
- 障害のある人の所得保障が十分な内容となるよう国へ働きかけるとともに、国が必要な制度を確立するまでの過渡的な対応として、福祉の向上を図ることを目的として経済的な支援を行います。
また、駐車場やスポーツ施設などの市営施設の入場料減免、運賃割引、医療費の公費負担、施設徴収金の一部減免、無料開放日の設定など、可能な限り経済的な負担の軽減に努めます。
そのほか、生活資金等を目的によって低利または無利子で融資します。
特定疾患患者については、市営施設の入場料減免、医療費の公費負担を実施し、経済的に支援していきます。
- (スポーツ)
- (財)神戸市障害者スポーツ協会を中心に、障害者スポーツを振興します。
- (文 化)
- 障害のある人の文化活動への参加のきっかけづくりに力を入れていきます。
2.施策体系
- 生活の質の向上
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- 経済的支援
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- 障害基礎年金
- 特別障害者手当
- 福祉手当(経過措置)
- 神戸市重度障害者特別給付金
- 児童扶養手当
(※父親が障害者の場合、児童の養育費を支給) - 特別児童扶養手当
- 障害児福祉手当
- 重度心身障害者介護手当
- 神戸市重度障害者福祉年金
- 心身障害者扶養共済制度
- 税の減免
- 利用料等の減免
- 福祉乗車証
- 重度心身障害者タクシー利用助成
- 運賃割引
- 施設徴収金の一部減免
- 医療費の公費負担 ※「保健・医療」参照
- 更生資金貸付
- 生活福祉資金の貸付
- スポーツ
- 〔財団法人神戸市障害者スポーツ協会〕
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- 市民福祉スポーツセンターの運営
- スポーツ教室の開催・プログラムづくり
- スポーツ大会の開催・選手派遣
- スポーツリーダーの養成
- スポーツ団体の育成
- スポーツの普及啓発
- 障害者のスポーツに適した競技の調査研究及び開発文化
- 文化
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- 在宅障害者福祉センター(文化教室等)
- 心身障害福祉センター
- 区民センター、文化センター等
3.施策展開
- 1)経済的支援
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- (1) 現状と課題
- 所得保障は障害基礎年金が中心です。常時介護の必要な重度の障害のある人には、年金とは別に手当を支給しています。住宅改造や福祉機器の購入など、高額な支出が必要な状況を考えると、一層の施策の充実が望まれます。
神戸市としては、重度心身障害者介護手当などの給付、動物園や博物館など市営施設の入場料減免、福祉乗車証の交付、運賃割引、医療費の公費負担、施設徴収金の一部減免などの経済的支援を行っています。
そのほか、生活資金等の低利または無利子融資なども行っています。
また、特定疾患患者については、市営施設の入場料減免、医療費の公費負担を実施しています。
- (2) 施策目標
- 所得保障は、障害者施策の基本をなしており、地域による格差が生まれることは望ましくなく、全国的な規模でその均衡を図る必要があります。このため、国の事業として行われています。
神戸市としては、障害のある人の所得保障が十分な内容となるよう国へ働きかけるとともに、福祉の向上を図ることを目的として、国が必要な制度を確立するまでの過渡的な対応として経済的な支援を実施していきます。
また、市営施設の入場料減免、運賃割引等の施策、生活資金等の融資も引き続いて行い、可能な限り経済的な負担の軽減に努めます。特に、平成8(1996)年4月より県から権限委譲された精神障害者への福祉施策を確立するために、精神障害者保健福祉手帳所持者への福祉サービスに努めるとともに、特定疾患患者についても引き続き市営施設の利用料の減免を行っていきます。
- 2)スポーツ
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- (1) 現状と課題
- 神戸市ではフェスピック神戸大会の開催を契機に、さまざまな障害者スポーツの振興に努めてきました。スポーツの場として、身体障害者体育館や心身障害福祉センター(体育館)といった専門施設のほか、しあわせの村内にテニスコートやアーチェリー場、ローンボウルス場などの施設を整備し、障害のある人の利用を優先的に確保しています。
また、平成6(1994)年度には、「市民福祉スポーツセンター」を中央区三宮に開設し、市街地における障害のある人のスポーツの場を提供するとともに、障害者スポーツを推進するために平成2(1990)年度に設立された(財)神戸市障害者スポーツ協会の活動拠点となっています。
スポーツ事業としては、陸上競技大会や水泳大会などをはじめとした数多くのスポーツ大会を開催するとともに、卓球、水泳、車いすテニス、ローンボウルス等のスポーツ教室を開催してきました。市民福祉スポーツセンター開設後は、ビームライフル、体操教室等メニューを充実させ、同センターを積極的に活用した障害者スポーツの振興に努めています。
障害者スポーツの振興のためには、まず、スポーツをしようという意欲をもってもらうことが大切です。そのため、障害の重い人や高齢者に対してスーツを始めるきっかけを提供したり、どんな障害のある人でも参加できるようなプログラムの研究・開発をすることなどが必要です。またースポーツリーダーの養成や障害のある人のスポーツ団体の育成など、スポーツ活動の基盤整備も重要な課題です。
- (2) 施策目標
- スポーツ大会、スポーツ教室の内容の充実を図り、障害のある人の参加の促進に努めます。
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- (ア) プログラムづくり
- 障害のある人が気軽にスポーツに参加する機会をつくるとともに、可能性を追求し、障害の状況にかかわらず参加できるプログラムや用具を調査・研究します。
- (イ) スポーツリーダーの養成
- 障害のある人一人ひとりにあった指導ができる人材を養成するとともに、活躍の場を提供します。あわせて、ボランティアも養成していきます。
- (ウ) スポーツ団体の育成
- 継続的なスポーツ活動を行うスポーツ団体を育成・支援し、障害者スポーツ活動の基盤をつくります。
- 3)文化
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- 現状と課題
- 平成8(1996)年2月に行った「心身障害者生活実態調査」によれば、身体障害者の場合、余暇の過ごし方として「テレビ」をあげた人が非常に多く、これに続いて「読書」「買物」「ドライブ・旅行」などがありました。将来してみたいものでは「ドライブ・旅行」がトップで、これに次いで「パソコン」があげられています。知的障害者の場合、「テレビ」が最も多く、続いて「買物」「映画・音楽・美術鑑賞」「ゲーム類」、将来してみたいものでは「ドライブ・旅行」がトップで、「料理」がこれに次いでいます。障害のある人の文化活動は、年々盛んになっていく傾向にありますが、重度化、高齢化の影響もあり、余暇を過ごす上で「興味がない」「一緒にする仲間がいない」「近くに適当な施設や設備がない」といった悩みがあげられ、全体的には取り組みが進んでいない状況です。
障害のある人の文化・レクリエーション活動としては、毎年囲碁大会を開催しているほか、デイサービス施設等で創作活動を行っています。また、聴覚に障害のある女性を対象にあみもの教室などを開催しています。そのほか、区民センター、文化センター等が利用できるようスロープ・エレベーターの設置など施設の整備を行っています。
障害のある人の参加しやすい文化活動には、視覚に障害のある人へ彫刻や粘土細工など題材の紹介、聴覚に障害のある人へホワイトボードや手話を活用した料理教室などさまざまな取り組みが考えられますが、このような文化教室は、指導者と手話通訳など福祉関係のスタッフが連携する必要があります。
- (2) 施策目標
- 在宅障害者福祉センターや心身障害福祉センターで文化教室を開催するほか、区民センターや文化センターなどを利用して、文化活動への取り組みのきっかけづくりを行うとともに、活動の場の提供や仲間づくり、発表の場の提供、設備の提供など、側面からの支援を中心に、障害のある人の文化活動を促進していきます。
また、グループでの活動を続けていけるよう、移動手段の確保、介護人の派遣などの支援策についても検討します。
そのほか、旅行やキャンプなど、障害のある人の参加を目的とする市民活動に対する助成についても検討します。
主題:
神戸市障害者保健福祉計画 No.2 48頁~76頁
発行者:
神戸市保健福祉局障害相談課
発行年月:
1997年2月
文献に関する問い合わせ先:
〒650 神戸市中央区加納町6丁目5番1号
TEL (078)331-8181(代)
(078)322-5228(直)