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福岡市福祉総合計画

No.1

福岡市

項目 内容
立案時期 平成5年3月
計画期間 平成4年度~平成13年度(10年間)

福祉の基本理念

1 人間として尊重される社会
 高齢者や障害者,児童などすべての市民が,人生80年という生涯を実りあるものとして生きる中で,一人の人間としての尊厳が重んじられ,一人ひとりの人生観や信条が大切にされる社会であること。

2 生きがいのもてる社会
 すべての市民が,それぞれのライフステージにおいて,社会の一構成員として自己の意思に基づき,自己の能力を最大限に発揮して主体的に社会活動に参加し,生きがいと希望をもって生活できる社会であること。

3 地域での生活が保障される社会
 ノーマライゼーションの理念のもとで,老いも若きも,障害を持つ人も持たない人も,生まれ育ち住み慣れた家庭や地域で社会活動に参加し,自己実現しながら有意義な生活を過ごすことができる社会であること。

4 相互に支え合い連帯できる社会
 若い世代と高齢者,障害を持つ人と持たない人など,世代等を超えてそれぞれの生活や立場を尊重しながら,支え合い連帯し,心豊かに生きることのできる社会であること。

5 やすらぎのあるまち“ふくおか”
 行政や民間団体,市民がそれぞれの役割と責務のもとで協働し一体となり,高齢者や障害者などすべての市民にとって,健やかで安らぎのあるまち“ふくおか”を築きあげること。

生きがいと安らぎのあるまち福岡をめざして

 今日,我が国は,人生80年という世界一の長寿社会となり,諸外国に例をみない速さで高齢化が進んでおり,21世紀初頭には国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎えようとしています。
 また,高齢化の進行に加えて,女性の社会進出や核家族化の進行など家庭環境は大きく変化しており,福祉サービスを必要とする人が普遍化するとともに,その福祉ニーズも多様化してきています。
 このため,本市では,昭和63年12月に「福岡市高齢化社会対策長期指針」を策定し,「豊かでゆとりと生きがいのある高齢化社会」の実現を目指して,市民の方々の積極的なご参加を得ながら,「市民福祉サービス公社」を軸にしたホームヘルプサービスの拡充など,福祉施策の充実に努めてまいりました。
 しかしながら,福祉をめぐる環境が一段と変化する中で,さらに質の高い福祉社会の構築を図るためには,確固たる理念を持って,高齢者,障害者,児童・母子などの各分野の福祉行政を総合的・計画的に推進していく必要があります。
 この福祉総合計画は,今後10か年の福祉施策の基本的方向と具体的な到達目標を明らかにしたものであり,その実現に向けて積極的に施策を実施してまいる所存であります。
 今後さらに保健・医療,教育,住宅,都市環境など,関連分野との連携に努め,ハード・ソフト両面にわたり一層の福祉水準の向上を図り,生きがいと安らぎのある福岡のまちづくりを進めてまいります。
 市民の皆様のより一層のご理解とご協力を賜り,福祉活動への積極的なご参加を心からお願いいたします。

平成5年3月

福岡市長 桑原 敬一

福岡市福祉総合計画 目次

はじめに

第1章 計画の概要

  1. 計画の性格
  2. 計画の範囲
  3. 計画の期間
  4. 計画の構成
  5. 計画策定の経過

第2章 基本理念と方針

  1. 基本理念
  2. 基本方針

第3章 福祉の現状と課題

  1. 高齢者福祉
  2. 障害者福祉
  3. 児童・母子等福祉
  4. 地域福祉

第4章 福祉施策の基本的方向と展開

  1. 高齢者福祉の推進
    1. 高齢者福祉の理念
    2. 施策推進の考え方
    3. 施策体系と主な施策
    4. 施策展開の方向
      • (1) 健康づくり
      • (2) 生きがいと社会参加
      • (3) 在宅福祉
      • (4) 施設福祉
      • (5) 暮らしやすいまちづくり
    5. 計画目標
  2. 障害者福祉の推進
    1. 障害者福祉の理念
    2. 施策推進の考え方
    3. 施策体系と主な施策
    4. 施策展開の方向
      • (1) 予防・療育・リハビリテーション
      • (2) 教育との連携
      • (3) 雇用と就労・社会参加
      • (4) 生活の援護(在宅福祉,施設福祉)
      • (5) 暮らしやすいまちづくり
      • (6) 文化,スポーツ,レクリエーション活動
    5. 計画目標
  3. 児童・母子等福祉の推進
    1. 児童・母子等福祉の理念
    2. 施策推進の考え方
    3. 施策体系と主な施策
    4. 施策展開の方向
      • (1) 児童の健全育成
      • (2) 要援護児童
      • (3) 要保育児童
      • (4) 要援護の母子・父子家庭
    5. 計画目標
  4. 地域福祉の推進
    1. 地域福祉の理念
    2. 施策推進の考え方
    3. 施策体系と主な施策
    4. 施策展開の方向
      • (1) 地域福祉活動推進団体等の育成
      • (2) 地域福祉活動の財政的支援
      • (3) 地域福祉活動推進拠点の整備
      • (4) 福祉教育・啓発の推進
    5. 計画目標

第5章 計画推進の方策

  1. 施設整備促進の方策
    • (1) 市有地の貸与
    • (2) 施設建設費補助の強化
    • (3) 施設の複合化
  2. 福祉マンパワーの確保・育成の方策
    • (1) 体系的研修の実施
    • (2) 福祉人材養成機関の誘致
    • (3) 福祉サービス従事者の処遇改善と確保
  3. 計画推進体制の強化
    • (1) サービス供給団体の充実・強化
    • (2) 行政組織の充実

資料

福祉総合計画の策定経過

  1. 計画の策定経過
  2. 策定委員会委員

はじめに

福祉総合計画

 人口の急速な高齢化や核家族化,少子化,あるいは,都市化の進展や市民意識の多様化など,家族や地域をめぐる環境が著しく変化する中で,市民一人ひとりが,ライフステージのそれぞれの段階,それぞれの精神的・身体的状況に応じて,きめ細かな福祉サービスを受けることができ,だれもが自立して安心して暮らせる地域社会をつくりあげていく必要がある。
 高齢化の進行による要介護者の増加や,核家族化,あるいは,女性の社会進出等による家庭・家族基盤の変化,また,都市化による地域での社会連帯意識の希薄化や,ノーマライゼーションの理念の定着による在宅生活への志向の高まりなど,福祉をめぐる社会環境の変化は,福祉ニーズの多様化や量的拡大をもたらしている。
 このため,「福祉」は,一定の限られた人のものから,市民全体のものへと移行し,行政が市民と一体となって支えていくことが求められ,今後,市民福祉の総合的かつ効果的な推進を図っていく必要がある。
 福祉総合計画は,このような状況を踏まえ,来るべき21世紀の超高齢社会を迎えるにあたり,ハード・ソフト両面にわたる福祉基盤の整備を積極的に推進するため,本市の福祉施策の基本的方向を示すとともに,主要な事業についての目標量を定めたものである。

第1章

計画の概要

  1. 計画の性格
  2. 計画の範囲
  3. 計画の期間
  4. 計画の構成
  5. 計画策定の経過

第1章 計画の概要

1 計画の性格

 この計画は,本市の基本的な指針である「第6次福岡市基本計画」の社会福祉分野における具体的な計画としての役割を担うものであり,現在までに出された福祉に関する答申や指針,報告書等を基にして,21世紀を展望した平成13年度までに講ずべき施策の方向性と達成すべき目標量を示すものである。
 この目標達成のため,市民や民間団体に対しては,市民福祉への理解と協力そして参加を求めるものであり,国に対しては,この計画推進のために必要な財政措置や制度の改善を求めていくものである。

2 計画の範囲

 この計画においては,主として福祉行政における,高齢者福祉,障害者福祉,児童・母子等福祉及び地域福祉の分野に関するものを計画の範囲とするが,保健・医療や住宅,教育,環境整備など福祉に密接に関連する分野についてもできる限り対象とする。
 今後,これらの関連する分野において,策定される計画や施策とも十分な連携と整合性を図っていくものである。

3 計画の期間

 この計画の期間は,平成4年度から平成13年度までの10か年とし,期間の中途で社会経済情勢の推移や国の施策の変化等により必要に応じ見直しを図るなど,実効性の確保を図っていく。

4 計画の構成

 第1章では,計画の概要を示すものとする。
 第2章では,本市の福祉の基本理念及び21世紀の「福岡型福祉社会」の構築へ向けて,各種施策を推進・展開していくための基本方針を示すものとする。
 第3章では,高齢者福祉をはじめ各福祉の分野ごとにその現状と課題等を示すものとする。
 第4章では,今後の事業展開の基本的方向と平成13年度までの事業目標量を示すものとする。
 第5章では,高齢者福祉など各福祉の分野に共通する施設整備や人材確保,推進体制について,その推進方策を示すものとする。

5 計画策定の経過

 この計画の策定にあたっては,民生局を中心に衛生局,建築局及び市社会福祉協議会などの福祉関係団体そして学識経験者からなる福祉総合計画策定委員会を設置した。
 同委員会において,これまでに出された福祉に関する答申や指針,報告書,実態調査あるいは市老人クラブ連合会や市身体障害者福祉協会等福祉団体の意見などを基に作成した計画素案の検討を行ったのち,市で最終案を取りまとめ,市社会福祉・児童福祉の両審議会及び市議会(第2委員会)への報告を経て,本計画を決定したものである。

第2章

基本理念と方針

  1. 基本理念
  2. 基本方針

第2章 基本理念と方針

1 基本理念

 本市は,次の理念に基づき,市民が安心して暮らせる,生きがいと安らぎのある福岡のまちづくりを目指し,この計画を推進していくものである。

(1) 人間として尊重される社会
 高齢者や障害者,児童などすべての市民が,人生80年という生涯を実りあるものとして生きる中で,一人の人間としての尊厳が重んじられ,一人ひとりの人生観や信条が大切にされる社会であること。

(2) 生きがいのもてる社会
 すべての市民が,それぞれのライフステージにおいて,社会の一構成員として自己の意思に基づき,自己の能力を最大限に発揮して主体的に社会活動に参加し,生きがいと希望をもって生活できる社会であること。

(3) 地域での生活が保障される社会
 ノーマライゼーションの理念のもとで,老いも若きも,障害を持つ人も持たない人も,生まれ育ち住み慣れた家庭や地域で社会活動に参加し,自己実現しながら有意義な生活を過ごすことができる社会であること。

(4) 相互に支え合い連帯できる社会
 若い世代と高齢者,障害を持つ人と持たない人など,世代等を超えてそれぞれの生活や立場を尊重しながら,支え合い連帯し,心豊かに生きることのできる社会であること。

(5) やすらぎのあるまち“ふくおか”
 行政や民間団体,市民がそれぞれの役割と債務のもとで協働し一体となり,高齢者や障害者などすべての市民にとって,健やかで安らぎのあるまち“ふくおか”を築きあげること。

2 基本方針

 この計画を策定するにあたっては,「福岡型福祉社会」の実現に向け,前に掲げた5つの理念の具体化を積極的に図っていくこととし,施策の展開においては,次の3つの柱を基本として,行政とともに市民が積極的に参加し,市民自らの福祉を築き,そして,はぐくんでいくものである。

(1) 在宅福祉の推進

 在宅福祉の三本柱(ホームヘルプサービス,デイサービス,ショートステイ)を中心に,保健・医療との連携を図り,十分なサービスの質と量を確保し,すべての市民が,地域で自立して,社会活動に参加し,生きがいをもち,健やかで安らぎのある生活が送れるようにしていく。

(2) 施設福祉の推進

 特別養護老人ホームをはじめ,高齢者や障害者,児童・母子等の入所・通所施設の量的な確保と質的向上を図る。また,在宅福祉を支援するための機能をさらに充実させていくとともに,新たにケアハウスの整備を進める。

(3) 地域福祉の推進

 地域福祉の推進拠点の整備を図るとともに,社会福祉協議会を中心に,地域全体で支え合う福祉の風土づくりをさらに進め,福祉を市民みんなのものにしていく。

第3章

福祉の現状と課題

  1. 高齢者福祉
  2. 障害者福祉
  3. 児童・母子等福祉
  4. 地域福祉

第3章 福祉の現状と課題

1 高齢者福祉

 本市では,昭和38年から市内の老人クラブに助成を開始し,昭和43年から老人福祉センター,昭和48年から老人いこいの家の整備を開始した。さらに,昭和58年には,福岡市シルバー人材センターを設立し,高齢者の生きがいづくりの基盤整備を図ってきた。
 また,要援護の高齢者に対する施策として,昭和47年から,特別養護老人ホームの施設整備に取り組むとともに,高齢者が介護を必要とする状態になった場合でも,住み慣れた地域で生活を維持できるように,昭和41年にホームヘルプサービスを開始し,以後,デイサービス,短期入所等の在宅福祉サービスの充実を図ってきた。さらに,これらの在宅福祉サービス対象者の所得制限を漸次撤廃し,サービスの拡充に努めてきた。
 しかしながら,人口の急速な高齢化と平均寿命の伸びは,それぞれのライフステージにおける生活の変化や援護を要する高齢者の増加などをもたらし,福祉サービスに対するニーズは増大し,多様化してきた。
 本市における平成2年(1990年)度の高齢者人口比率は9.1%で,全国平均の12.0%を下回っているが,急速に高齢化しており,平成13年(2001年)度には,高齢者人口比率は13.1%(全国平均17.5%)に達すると予測されている。
 このような状況の中で,本市においては,昭和63年12月に「福岡市高齢化社会対策長期指針」を策定し,「豊かで,ゆとりと生きがいのある高齢化社会」の創造を目指すこととした。
 国においても,平成元年度に,「高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)」を策定し,要援護対策や施設整備などの推進を提唱している。
 今後,「福岡市高齢化社会対策長期指針」の理念に基づき,寝たきりや痴呆性の高齢者などの要援護対策や特別養護老人ホームをはじめとする施設整備の促進などを,総合的かつ計画的に推進していくことが課題となっている。

○ 高齢者人口の推移(単位:千人)

区分 全国 福岡市
総人口 65歳以上
人口(a)+(b)
65歳~74歳の
人口(a)
75歳以上
人口(b)
総人口 65歳以上
人口1+2
5歳~74歳の
人口1
75歳以上の
人口2
1980
(S55)
117,060
(100.0%)
10,647
(9.1%)
6,988
(6.0%)
3,660
(3.1%)
1,089 75
(6.9%)
50
(4.6%)
25
(2.3%)
1990
(H2)
123,611
(100.0%)
14,895
(12.0%)
8,921
(7.2%)
5,973
(4.8%)
1,237 113
(9.1%)
68
(5.5%)
45
(3.6%)
2000
(H12)
127,385
(100.0%)
21,699
(17.0%)
12,957
(10.2%)
8,742
(6.9%)
1,400 179
(12.8%)
107
(7.6%)
72
(5.1%)
2001
(H13)
127,801
(100.0%)
22,415
(17.5%)
- - 1,415 185
(13.1%)
109
(7.7%)
76
(5.4%)

※ 1990年度までの人口は国勢調査による。
( )内については,総人口に占める割合
全国の推計人口は,「日本の将来推計人口(平成4年9月推計)」の中位推計値(厚生省人口問題研究所)による。また,福岡市の推計人口は,「福岡市将来フレーム予測調査」(昭和63年4月福岡市総務局企画調整部)による。

○ 在宅・入院等の状況(平成元年度福岡市高齢者実態調査)(単位:人)

区分 総計 在宅 入院 施設入所 高齢化率
65~74歳 64,470 61,760 2,420 292 -
75歳以上 41,041 35,200 4,840 1,007
105,511 96,950 7,260 1,299 8.9%

※ 推計値のため,端数が一致していない。

○ 平均寿命の推移(歳)

-
昭和30年 67.75 63.60
40年 72.92 67.74
50年 76.89 71.73
60年 80.48 74.78
平成3年 82.11 76.11

(資料) 厚生省統計情報部「平成3年簡易生命表」

(1) 健康づくり

 人生80年時代においては,市民一人ひとりが自分の健康は自分でつくるという認識を持ち,自ら努力していくことが必要となっている。
 健康づくりのためには,自分の健康状態の把握だけでなく,健康に対する認識を若年の頃から深めていく必要がある。
 本市では,保健所を中心に,健康に関する各種の相談や健康診査,指導を行っている。今後,福祉・保健・医療との連携を図りながら,健康づくりについての情報提供と指導システムの構築が課題となっている。

(2) 生きがいと社会参加

 人生80年時代の到来により,生涯生活時間が伸長し,高齢者の自由時間も増大したが,この増大した自由時間をいかに豊かに過ごすかが課題となっている。
 このため,学習機会の確保や社会参加の促進,就業機会の確保など生きがい対策の充実を図っている。本市では,老人福祉センターや老人いこいの家の設置・運営及び老人クラブやシルバー人材センターの活動を支援するなどの諸施策を進めてきている。

ア 老人福祉センター

 各区に1か所ずつ設置し,1日平均1,084人(7か所計)の利用があり,生きがいと社会参加の場として,教養の向上やレクリエーションの便宜を提供している。今後,デイサービスセンターの併設など地域の高齢者を援護する新たな機能の設置が課題となっている。
 また,老朽化の著しい施設もあり,改善が求められている。

○ 老人福祉センター利用状況(平成3年度)

教養講座・教室等 54.7%
個人利用
(入浴・趣味・娯楽等)
41.8%
団体利用 2.5%
健康相談等 1%
320,467人
(1,084人/日)

イ 老人いこいの家

 地域の高齢者に対して,相互の親睦,レクリエーションの場を提供することを目的として,公園敷地を中心に,小学校区に1か所ずつの整備を進めており,平成4年3月末現在127校区(市内141校区)に設置している。利用状況は,地域によって差があるものの,年間延べ267,000人(平成3年度実績)の利用がある。
 今後,老朽施設の建て替えや規模の拡大,設備の充実等を検討していく必要がある。
 また,地域住民との連携の場としての活用が望まれる。

ウ 就業機会の拡大

 高齢者のうち60歳代の人の多くは,何らかの仕事に就くことを希望しており,その生きがいの充実を図るためには,就業機会の拡大を図る必要がある。
 本市においては,定年退職後などにおいて,臨時的かつ短期的な就業を通じて自己の就業能力を活用し,自らの生きがいの充実や社会参加を希望する高年齢者の就業機会を増やすとともに,高年齢者の能力をいかした活力ある地域社会づくりに寄与するために,シルバー人材センターを設置している。平成4年3月末現在,市内に本部と2支部があり,会員登録者1,930人,平成3年度の延べ就業者数は,170,291人となっている。このセンターの果たす役割は,今後一層重要性を増すと考えられるため,企業や市民へのPRに努め,会員の増大や事業開拓を進めていく必要がある。

○ シルバー人材センターの状況(過去3か年)

区分 会員数(人) 延べ就業者数(人)
平成元年度 1,639 136,431
平成2年度 1,755 153,715
平成3年度 1,930 170,291

エ 学習機会の確保

 人口の急激な高齢化やライフサイクルの変化,余暇・家庭生活の変化などにより,高齢者の学習への意欲が高まってきている。現在,生涯教育の一環として,市民センターや公民館において,老人大学(院)や高齢者教室を行っているほか,老人福祉センターや老人いこいの家においても,生きがいと創造の事業や老人教室などの講座を開催している。
 今後,学習情報のネットワーク化や学習機会の拡充等が課題となっている。

オ 社会参加の促進

 高齢者が主体的,積極的に生きがいをもって人生を送ることは,高齢社会の活性化を図るためにも重要である。本市では,老人クラブを中心に,高齢者が長年培ってきた知識,経験,能力を活用したボランティア活動やスポーツ・レクリエーション活動など,社会参加の機会の拡充を図っている。

○ 老人クラブ数・会員数の推移

区分 クラブ数 会員数(人)
昭和56年度 937 53,184
昭和61年度 1,007 57,819
平成3年度 1,019 59,652

(3) 在宅福祉

 平成元年度に実施した「福岡市高齢者実態調査」では,本市のひとり暮らしの高齢者は,14,740人(在宅の高齢者の15.2%),在宅の寝たきりの高齢者は,1,010人(在宅の高齢者の1.04%)と推計している。このうち,寝たきりの高齢者は,75歳以上の後期高齢者が840人と83%を占めており,特に85歳を過ぎると,その割合が急速に高くなっている。
 また,平成3年度に実施した「高齢者健康実態調査」では,在宅の痴呆性の高齢者は,2,724人(在宅の高齢者の2.56%)で,そのうちの76.1%が何らかの問題行動のある人と推計している。今後,平均寿命が伸び,75歳以上の後期高齢者が増加することにより,援護を要する高齢者はますます増えていくと見込まれる。
 現在,本市における在宅福祉サービスとしては,ホームヘルプサービス,デイサービス,短期入所,入浴サービス,緊急通報システム,福祉電話,日常生活用具の給付など,要援護の高齢者が家庭や地域で安心して生活できるよう様々な事業が実施されている。
 また,所得制限を撤廃し,応能負担を導入することにより,利用者の範囲を広げてきた。
 このような状況の中で,昭和63年度に策定した「福岡市高齢化社会対策長期指針」において,福岡型の市民福祉システムの考え方を示し,平成2年(1990年)度に「市民福祉サービス公社」を設立した。市民福祉サービス公社は,多数の市民の参加と民間の持つ創造性,効率性をいかすもので,ホームヘルプサービスの提供機会の拡充に寄与している。今後,市民福祉サービス公社を中核として,在宅福祉支援体制をどのように充実していくかが課題となっている。
 また,在宅福祉サービスは,保健・医療との関連が極めて深く,在宅ケア・ホットラインや痴呆性老人支援ネットワークづくり,老人精神保健相談などの事業との有機的連携を図ることが必要となっている。

ア ホームヘルプサービス

 心身の障害等により,日常生活を営むことが困難な高齢者のいる家庭にホームヘルパーを派遣し,日常生活を支援している。
 ホームヘルプサービス事業は,市社会福祉協議会のホームヘルパー(週4日勤務)と市民参加型の市民福祉サービス公社とで実施している。
 なお,この事業は,核家族化などが進み,家庭内での介護が困難となっている中で重要性が高まっており,ホームヘルプサービスの質・量の確保をいかに進めていくかが課題となっている。

○ ホームヘルプサービスの利用状況(平成3年度)

区分 利用者数(人) 利用時間(時間/月)
市社会福祉協議会 467 6,033
市民福祉サービス公社 537 12,965
合計 1,004 18,998

(障害者の利用者 192人,利用時間 3,766時間/月を含む。)

イ デイサービス

 在宅の虚弱な高齢者等をデイサービスセンターに送迎し,日常動作訓練や入浴・給食等のサービスを提供することにより,高齢者の心身機能の維持向上を図るとともに,家族の身体的・精神的負担の軽減を図ることを目的としている。
 現在,特別養護老人ホームに8か所(平成4年度開設分2か所を含む。),老人福祉センターに1か所の計9か所にデイサービスセンターを設置しており,利用登録者は,計438人(平成4年3月末現在)で,施設への送迎を行い,週1~2回利用されている。
 今後,急速な需要の増加が見込まれ,多数の施設を設置することが必要であり,適正にデイサービスセンターを配置し,利用者の便に配慮していくことが課題となっている。
 特に,痴呆性の高齢者を対象とした毎日通所型デイサービスセンターは,介護する家族の負担軽減の点からも必要性が高い。

○ デイサービスの実施状況の推移(過去3か年)

区分 運営施設数 登録者数(人)
平成元年度 4 224
平成2年度 7 366
平成3年度 7 438

※ 各年度とも3月末現在の実績

ウ 短期入所

 短期入所事業には,(ア)在宅の寝たきり等の高齢者を介護している家族が一時的に家庭で介護できない場合に,高齢者が老人ホームに短期間入所し,世話を受けるショートステイ事業,(イ)介護する家族が一緒に短期間滞在し,介護技術を習得するホームケア促進事業,(ウ)夜間の介護が困難な在宅の寝たきり等の高齢者が夜間のみ一時的に世話を受けるナイトケア事業がある。
 家庭の介護機能の低下等により,ショートステイ事業の利用者が年々増加している。平成4年3月末現在,10か所67床(平成4年度開設分2か所24床を含む。別途,市外に8床ある。)の専用ベッドがあり,年間延べ7,158人の利用がある。ベッドの稼働率は,55%程度となっている。今後,きめ細かいサービスを提供するためには,送迎の充実等について検討していく必要がある。

○ ショートステイの利用状況の推移(過去3か年)

区分 専用ベッド数 延べ利用人員(人)
平成元年度 31 3,362
平成2年度 35 5,636
平成3年度 43 7,158

エ 入浴サービス

 入浴サービスは,寝たきりの在宅高齢者に対して,健康の保持を図るため,移動入浴車による訪問入浴と,施設に送迎し特殊浴槽を利用した施設入浴があり,利用者に対し,月1~2回サービスを提供している。平成元年度の「高齢者実態調査」の結果では,制度の充実を期待する人が42.0%と非常に多く,今後,民間シルバーサービスの活用・育成による入浴回数の増を図っていく必要がある。

○ 入浴サービス延べ利用者数の推移(過去3か年)

区分 訪問入浴(人) 施設入浴(人) 合計(人)
平成元年度 1,351 140 1,491
平成2年度 1,683 162 1,845
平成3年度 1,983 177 2,160

オ 配食サービス

 現在,本市においては,日常的な配食サービスを実施していないが,平成元年度の「高齢者実態調査」の結果によると,配食サービスの実施を期待する人が,36.0%いる。食事の用意,後片付けの困難な高齢者に対し,サービスの提供を検討していく必要がある。

カ 緊急通報システム

 ひとり暮らしの高齢者が,家庭内で急病や事故などの緊急事態に直面した時,押しボタン一つで近隣の協力員や消防局に電話回線を通じて通報する装置を設置し,高齢者の不安の解消と生活の安全の確保を図るもので,平成4年3月末現在,297人に設置している。

キ 福祉電話・声の訪問

 ひとり暮らしの高齢者で,定期的に安否の確認を行う必要がある人に福祉電話を貸与し,電話相談センターから毎日1回電話をし,様々な相談に応じる声の訪問を実施している(平成4年3月末現在822台貸与)。また,声の訪問については,所得税課税世帯も対象に実施している(平成4年3月末現在45件)。

ク 各種相談

 高齢者の様々な相談に応じる「おとしより相談センター」を市民福祉サービス公社内に設置している。また,福祉事務所では福祉サービスに対する相談,保健所では健康についての相談を実施し,特に痴呆性の高齢者とその家族に対しては,保健所で老人精神保健相談を実施している。
 今後,保健・医療や住宅等の分野も含めた相談体制の充実や在宅介護についての身近な相談に応じる窓口の設置などが課題となっている。

○ 「おとしより相談センター」の相談内容(平成3年度)

健康・医療・介護 49.5%
(3,945件)
生活(家庭・住宅・年金他) 15.9%
(1,264件)
制度紹介 14.0%
(1,107件)
生きがい・趣味 12.1%
(964件)
福祉機器・施設入所他 8.5%
(680件)

ケ 在宅ケア支援事業

 今後増加が予想される寝たきり等要介護の高齢者の在宅ケアを支援するため,福祉・保健・医療の連携に基づき,それぞれのサービスが総合的かつ継続的に提供できるシステムの構築が必要である。
 現在,本市では,保健所に高齢者の健康と介護の総合相談窓口として,在宅ケア・ホットラインを設置し,在宅の要介護の高齢者の生活を支援するため,福祉事務所,医療機関等関係機関との連絡調整により,高齢者一人ひとりに応じたサービスが提供できるようケースマネージメント等の事業を行っている。

コ 高齢者サービス総合調整推進事業

 高齢社会の到来に備え,増大かつ多様化する高齢者のニーズに適切に対応し,福祉・保健・医療の各施策の総合的推進を図るため,本庁内に高齢者サービス総合調整推進会議を設置し,高齢者に対する各種サービスに係る連絡調整を行っている。

サ 住宅整備資金の貸付

 高齢者と家族の良好な家族関係の維持を図り,在宅生活を容易にするため,各区の社会福祉協議会を窓口として,高齢者の居室を改造する資金を貸し付けている(平成3年度,4件 計8,000千円)。
 住宅改造の相談体制とともに貸付制度等の充実が今後の課題となっている。

(4) 施設福祉

 平成4年3月末現在,市内には,特別養護老人ホーム12か所,定員1,090人(平成4年度開設分2か所を含む。),養護老人ホーム4か所,定員367人(平成4年度開設分1か所を含む。),軽費老人ホーム2か所,定員200人,有料老人ホーム3か所,そして関連の中間施設として,老人保健施設3か所が,それぞれ設置されている。
 核家族化や介護者の高齢化,要介護者の絶対的増加といった社会情勢の変化に伴い,施設福祉サービスのニーズも複雑・多様化してきており,これまでの施設か在宅かといった画一的な施策の展開では,十分な対応ができなくなっている。
 このため,施設の量的確保や施設内容の充実だけでなく,施設相互間の連携や地域への在宅福祉サービス機能等の開放を,より一層図っていく必要がある。

○ 市内の高齢者福祉(入所)施設等の状況

区分 施設種別 施設数 定員(人)
福祉施設 特別養護老人ホーム 12 1,090
養護老人ホーム 4 367
軽費老人ホーム 2 200
その他 有料老人ホーム 3 221(室)
老人保健施設 3 540

(平成3年度整備,平成4年度開設予定分を含む。)

ア 特別養護老人ホーム

 後期高齢者人口の増加や,核家族化・高齢化などによる家庭介護機能の低下などから,寝たきりや痴呆など要介護の高齢者の増加が見込まれ,特別養護老人ホームへのニーズは一段と高まることが予測される。また,平成4年3月末現在での待機者は280人を数えており,整備を急ぐ必要がある。
 さらには,ショートステイをはじめ,在宅の要介護者に対する日常生活を支援する様々なサービス機能を付加し,施設福祉・在宅福祉サービスの中心的役割を果たす施設として,その内容の充実を図る必要がある。
 また,現在の施設配置は西・南部中心であり,市内全域への在宅福祉サービスを提供し,ネットワーク化を図るためにも,適正配置が不可欠となっている。

イ 養護老人ホーム

 ニーズはさほど高くないが,社会的自立が困難な高齢者のための生活施設として必要である。特別養護老人ホームと同様に在宅サービスの一翼を担うことが期待される。また,居室を個室化するなど入所者の処遇向上が課題となっている。

ウ 軽費老人ホーム

 所得水準の向上や,独立して生活するには不安のある高齢者の増加により,軽費老人ホームの需要が高まることが予想される。なかでも,高齢者のケアに配慮しつつ自立した生活を確保する観点から,給食などを受ける程度で,介護等についてはホームヘルプサービスなどを基本とし,車椅子利用者も入所可能な「ケアハウス」の整備が課題となっている。

エ 有料老人ホーム

 快適な居住空間と生活全般にわたるサービスが提供される有料老人ホームは,老人福祉法にいうところの老人福祉施設ではないが,経済力のある自立した高齢者が年々増加している状況の中で,高齢化社会における役割が高まってきている。
 こうした中で,有料老人ホームの経営が基本的には民間の営利企業であることから,平成3年度からは施設の適正な運営を確保するため,事前届出制を導入して指導の強化が図られている。

オ 老人保健施設

 老人保健施設は,病状がほぼ安定期にあり,治療よりもむしろ機能訓練や看護・介護を必要とする寝たきりの高齢者等を対象に,家庭復帰のための医療・生活サービスを提供する施設である。平成4年3月末現在,市内には医療法人等により3か所設置されているが,福祉・保健・医療との連携を図ることにより,在宅ケアを支援する拠点のひとつとしての機能を果たすことが必要である。

(5) 暮らしやすいまちづくり

 高齢社会においては,高齢者も社会の主体的構成員として,社会の活力を維持向上させ,自己実現を図るため,積極的,自主的に就労や社会参加をすることが求められる。
このため,社会環境の改善,都市施設の充実,住環境の整備等が必要である。また,暮らしやすいまちづくりを進めていくためには,施設などのハード面とともにすべての市民が高齢者等に対し,思いやりや優しさをもったまちづくりをしていくことが重要であり,福祉の心づくりが,暮らしやすいまちづくりをしていく上での課題となっている。

ア 福祉環境の整備

 高齢社会において,高齢者の社会活動をさらに促進するためには,自由かつ安全に移動ができるように,床の段差の解消や手すりの設置など施設の環境面に配慮するだけでなく,施設の設置場所や周辺道路,交通機関などを含む都市環境そのものを改善していく必要がある。
 このため,本市では,「『福岡型福祉社会』のための環境づくり指針」を策定し,住みやすいまちづくりを目指している。

イ 住環境の整備

 近年の市民の価値観やライフスタイルの変化に伴い,居住形態についての考え方も多様化してきている。このような居住ニーズに対応するとともに高齢者の居住の安定を図るため,高齢者に配慮した住宅整備の推進が課題となっている。本市においては,シルバーハウジング構想の具体化を図るため,ハウジングプラン推進事業での高齢者住宅のあり方の検討を進めるとともに,市営青葉住宅をシルバーモデル住宅として位置づけ,高齢者に配慮した住宅建設を進めている。
 今後とも,高齢者がゆとりある居住空間で生活できるような住環境の整備を進めていく必要がある。

2 障害者福祉

 本市における障害者福祉施策は,昭和47年の政令指定都市移行後,実質的にスタートした。
 当初は,乳幼児を中心に施策を進め,特に昭和54年の「心身障害福祉センター」及び昭和55年の「こども病院」の開所により,障害児の早期発見・早期療育体制は一応整った。
 また,昭和54年には養護学校教育の義務制に伴い,乳幼児期から学齢期までの一貫したレールがしかれ,養護学校卒業後の障害者については,通所授産施設等福祉的就労の場の整備を中心に施策を推進してきた。
 昭和56年の「国際障害者年」を契機として,障害者福祉は大きな転換をみせ,住み慣れた地域社会の中で生活していくというノーマライゼーションの考え方の広まりとともに,在宅志向は一層強まってきた。これに併せて,在宅福祉施策の充実を図り,また,社会参加の場として,利用施設の整備を進めてきた。
 本市においては,昭和59年度に「障害者スポーツセンター」を開設し,昭和62年度から「障害者フレンドホーム」の整備を進めてきた。
 また,平成2年度には,在宅介護の核となる「市民福祉サービス公社」を設立するなど,在宅福祉ニーズに対応してきた。
 さらに,本市では,障害者の実態やニーズ等を把握するため,昭和48年度から平成2年度までの間,5回にわたり「心身障害児・者実態調査」を実施してきた。
 平成2年度の実態調査の結果をみると,障害の重度化,高齢化が進み,一方では,出生率の低下にもかかわらず,重度障害児は依然として横ばい状態を示している。また,障害者の在宅志向を反映して,養護学校卒業後の社会参加の場の充実に対する要望が一段と強くなっている。それとともに,「親なき後」の生活入所施設に対するニーズも,依然として第いという結果も出ている。
 障害者の福祉施策は,乳幼児期から学齢機,成人期から高齢期の一生涯にわたり,その年齢や障害の程度などに応じて,それぞれのニーズに応えていく必要がある。また,施策推進にあたっては,国,県,市さらには障害者自身の役割分担もある。これらを踏まえ,障害者の実態やニーズに対応する施策を,総合的かつ計画的に推進していくことが課題となっている。

○ 障害者(児)数(平成2年度心身障害児・者の実態調査)(平成2年7月末現在)

区分 人数(人) 出現率
(パーミリオン)
身体障害者 20,969
(15,505)
23.0
(19.0)
身体障害児 1,327
(1,105)
4.6
(3.7)
精神薄弱者 2,315
(1,488)
2.5
(1.8)
精神薄弱児 2,120
(2,387)
7.4
(8.0)
26,731
(20,485)
22.4
(18.4)

※( )内は,前回昭和59年度の状況

○ 身体障害者の障害程度(身体障害者手帳所持者)

- 平成2年度
N=1,549
昭和59年度
N=1,150
1級 29.8 19.4
2級 20.3 22.7
3級 16.9 19.9
4級 17.8 17.2
5級 8.3 12.2
6級 6.8 8.6

(平成2年度 心身障害児・者の実態調査)

○ 身体障害者の年齢

- 平成2年度
N=1,550
昭和59年度
N=1,151
18・19歳 0.7 0.5
20代 4.8 4.8
30代 7.9 10.3
40代 13.2 14.9
50代 19.7 23.3
60代 26.6 24.0
70歳以上 27.1 22.2

(平成2年度 心身障害児・者の実態調査)

(1) 予防・療育・リハビリテーション

ア 障害児の療育

 障害児の早期発見・早期療育は,効果的な療育を図るためには極めて重要である。
 このため,心身障害福祉センターを核とし,こども病院や保健所,児童相談所等の関係機関との有機的連携のもとに,各通園施設において適切な療育を行い,障害の軽減と心身の発達を促進し,重度化を防止することに努めてきた。
 しかしながら,近年,障害児の状態は重度・重複化の傾向が進み,多種多様な対応が必要となってきており,総合的に心身の発達を促すために,療育体制の整備や適正な施設配置等が課題となっている。

○ 市内の障害児通園施設の状況

区分 施設数(か所) 定員(人)
精神薄弱児通園施設 6 220
難聴幼児通園施設 1 30
肢体不自由児通園施設 2 80

イ 成人のリハビリテーション

 昭和54年に心身障害福祉センターを開設し,中途障害者リハビリテーション部門を設けて,市内の医療機関からの紹介を中心に,急性期を過ぎた脳卒中後遺症者や中途失明者に対するリハビリテーションを実施している。
 さらに,昭和62年から身体障害者更生相談所を中心として,在宅の重度障害者に医師や理学療法士などのスタッフを派遣し,機能訓練や生活指導を行う訪問指導事業を開始し,事業の推進を図っている。
 今後,障害者の在宅生活を支えるため,訪問リハビリテーションや通所訓練等の地域リハビリテーション活動の一層の推進が重要であり,保健・医療との連携の下,職業リハビリテーションを含めた一貫したリハビリテーションサービスを提供できるシステム・拠点づくりが課題となっている。

○ 心身障害福祉センターの訓練状況(平成3年度)

区分 実訓練者数(人) 延べ訓練者数(人)
肢体不自由者 142 5,964
言語障害者 69 1,915
視覚障害者 41 1,940
合計 252 9,819

(2) 教育との連携

 昭和54年度から養護学校教育が義務制となり,教育諸条件の整備を進めてきている。
 障害児が成長,発達し,その能力,特性を最大限に伸ばしていくためには,福祉と教育の連携が必要不可欠である。
 障害幼児の療育を学校教育につなぎ,また,学校卒業後の進路を保障するためにも一貫した体制が必要である。
 特に,学校卒業後の福祉的対応が課題となっている。

(3) 雇用と就労・社会参加

 障害者が,地域や施設で社会を構成する一員として,社会との関わりをもち,生き生きとした生活,充実した人生を過ごすためには,職業的自立は中心的課題である。
 雇用問題は,基本的には国・県の施策に負うところが多く,市の役割は制度上一定の限界があり,今後ともこれらの機関と密接な連携を図っていく必要がある。
 一般雇用に向けては,授産施設や就労生活を支える通勤寮・グループホーム等の整備をはじめ,現在実施しているワープロ・パソコン講習や運転免許等の資格取得助成の条件整備,企業への啓発活動等福祉サイドからの取組をいかに実効あるものとして進めていくかが課題となっている。
 一方,直ちに一般雇用が困難な人については,授産施設,福祉訓練などの福祉的就労,デイサービスや福祉作業所など,多種多様な社会参加の機会と場を,いかにして充実させていくかが課題となっている。

ア 雇用

  • (ア) 一般雇用
     平成3年6月1日現在の福岡県の民間企業における障害者の雇用率は1.37%であるが,依然として法定雇用率の1.6%を下回っている。
     一般企業への雇用促進は,「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき,様々な施策が行われているが,雇用対策は国・県の所管であり,本市では,側面的援助として,就職促進のためのワープロ・パソコン講習事業や啓発事業等を行っている。
  • (イ) 重度障害者多数雇用企業
     一般の企業への就職が困難な重度障害者の雇用の場を確保するため,県・企業と一体となって,第三セクター方式による重度障害者多数雇用企業を平成2年度に設立した。今後とも同方式による雇用促進や,福祉工場のあり方等を検討していく必要がある。
  • (ウ) 清掃委託事業
     福祉訓練を終了した精神薄弱者が福祉団体に雇用され,その作業知識と技能をいかし,市から委託された公共施設9か所で27人(平成4年3月末現在)が清掃業務に従事している。

イ 福祉的就労

  • (ア) 通所授産施設
     通所授産施設は,養護学校の卒業生や中途障害者を対象に,職業を得て自活することを目的にした作業訓練及び身辺自立のための生活訓練を行う施設であり,授産工賃が支払われる。
     近年,養護学校卒業後の進路として,通所授産施設への希望が高く,施設が不足している状況にある。
     また,通所授産施設においては,障害程度の重度・重複化により,授産作業になじみにくい障害者が増加しており,その結果,施設在所期間が長期化している。(平成4年3月末現在,身体障害者通所授産施設1か所定員30人,精神薄弱者通所授産施設5か所定員234人〔平成4年度開設1か所を含む。〕)
  • (イ) 福祉訓練
     福祉訓練は,精神薄弱者施設で生活訓練を終えた人を対象に,施設より更に専門的な作業知識,技能の修得を行うことを目的とした事業であり,訓練手当を支払っている。
     福祉訓練は授産施設からの進路として位置づけ,公園の除草,清掃等の屋外作業訓練を行っているが,訓練生の障害程度の重度・重複化等により,一般雇用に結びつきにくい状況である。

    ○ 福祉訓練事業の状況
    区分箇所数(か所)訓練生数(人)
    昭和56年度319
    昭和61年度326
    平成3年度875
    ※ 平成3年度分には平成4年度事業開始分を含む。

ウ 就労困難な人の社会参加

  • (ア) デイサービス
     各区の障害者フレンドホームに外出や就労が困難な在宅重度障害者を送迎し,創作活動,日常生活訓練を行うことにより,その自立と生きがいを高めることを目的としている。
     在宅重度障害者の社会参加と生きがいを高める施策としての役割は大きく,障害者フレンドホームの各区への整備及びサービス内容の充実が課題となっている。

    ○ デイサービスの利用状況(平成3年度)
    箇所数(か所)登録者(人)延利用人員(人)
    3614,702
  • (イ) 福祉作業所
     福祉作業所は,就労が困難な重度障害者の社会参加の場として,また,通所授産施設の補完的な場としての役割を果たしている。
     現在11か所,約100人の利用者があり,重度障害者が大半を占めている。また,施設も一般家屋の借り上げがほとんどであり,作業・訓練環境は良好とはいえない状況にある。今後,運営費の助成充実や認可施設(授産施設分場)への移行等による処遇向上が課題となっている。
  • (ウ) 精神薄弱者通所更生施設
     近年,通所授産施設における職業指導中心の処遇が困難な重度の精神薄弱者が増加してきているため,生活指導を中心とした通所更生施設の要望が高くなってきている。
     現在,本市には未設置であるため,今後,精神薄弱者通所更生施設の整備が課題となっている。

(4) 生活の援護

ア 在宅福祉

 障害者の重度化や高齢化が進む中で,ノーマライゼーションの考え方も次第に定着し,地域における生活や在宅生活を希望する人々が増えてきている。
 本市では,家庭や地域の中で,可能な限り自立した生活を送ることができるようにすることを基本に,主に次のような施策を実施している。

  • (ア) ホームヘルプサービス
     高齢者と同様に,障害者(児)の介護又は家事のサービスを必要とする場合に,ホームヘルパーを派遣しており,障害者の在宅生活を支援する重要な施策となっている。
     障害者の重度化・高齢化等によりニーズは高まっており,制度の充実が課題となっている。

    ○ 障害者(児)のホームヘルプサービスの利用状況(平成3年度)
    区分利用者数(人)利用時間(時間/月)
    市社会福祉協議会1131,653
    市民福祉サービス公社792,113
    合計1923,766
  • (イ) ガイドヘルパー派遣
     外出困難な重度の視覚障害者や脳性まひ者等全身性障害者が,公的機関や医療機関等へ出かけるとき,付添いをする人がいないため,外出に支障がある場合にガイドヘルパーを派遣している。
     派遣条件の緩和とガイドヘルパーの育成,確保が今後の課題となっている。

    ○ ガイドヘルパーの派遣状況(平成3年度)
    区分利用件数ガイドヘルパー数
    視覚障害者2,390件
    (実人員78人)
    73人
    全身性障害者35件
    (実人員1人)
    3人
  • (ウ) 緊急一時保護(ショートステイ)
     障害児(者)を家庭で一時的に介護することが困難な場合に,施設で短期間保護する事業であり,現在,市内及び近郊の16施設で実施している。
     近年,利用者数は増加しているが,実施施設の地理的条件や一時保護専用床の不足等のため,十分に対応できないという問題がある。

    ○緊急一時保護の利用状況
    区分件数延べ利用人員(人)
    平成元年度22242
    平成2年度34372
    平成3年度73678
  • (エ) 入浴サービス
     家庭での入浴が困難な重度身体障害者に対し,移動入浴車により訪問し,入浴の機会を提供している。
     平成4年3月末現在,22人の登録者に対し,月2回サービスを提供しているが,入浴回数の増加が課題となっている。
  • (オ) 配食サービス
     食事を作ることが困難な重度の障害者にとって,食事の確保は大きな問題となっており,配食サービスの実施が課題となっている。
  • (カ) 緊急通報システム
     急病等緊急時の連絡手段の確保が困難な重度身体障害者を対象に,緊急通報装置を設置し,不安の解消と生活の安全の確保を図っている(平成4年3月末現在20人)。
  • (キ) 福祉電話・声の訪問
     外出困難な重度の身体障害者に電話を貸与し,コミュニケーションの確保を図るとともに,安否の確認や各種の相談に応じている。
     また,聴覚・言語障害者には,ファックスを貸与している。
  • (ク) 各種相談
     相談や情報提供については,福祉事務所や身体障害者更生相談所,児童相談所などで内容に応じて相談を実施しているが,今後は,さらに高度な情報化社会に対応できる効果的な情報提供をすることが課題となっている。
     また,精神薄弱者福祉法の改正により,平成5年度から精神薄弱者関係業務が県から移管されるが,これに伴い,この業務の拠点となる精神薄弱者更生相談所の設置が課題となっている。

    ○ 身体障害者更生相談所の相談内容(平成3年度)
    補装具60.8%
    (1,529件)
    更生医療17.4%
    (438件)
    施設2.7%
    (69件)
    その他19.1%
    (481件)
    2,517件
  • (ケ) 住宅改造費助成
     重度身体障害者に対し,その障害に適した住宅に改造する場合の費用の助成を行っており,その助成内容は,工事費の2/3で26万円を限度としている。
     平成2年度の心身障害児・者の実態調査では,肢体不自由者や視覚障害者を中心に約2割の人々が,浴室や便所,玄関などの住宅の改造を希望しており,助成限度額の引き上げや対象者の拡大等が課題となっている。

    ○ 身体障害者住宅改造補助の状況(平成3年度)
    件数助成総額
    223,207千円

イ 施設福祉

 障害者が施設よりも在宅を志向し,可能な限り地域社会での生活を求める傾向が強くなってきているとはいえ,障害者の重度化・高齢化が進む中で,入所施設は,常時介護を要する重度の障害者にとって,生活拠点のひとつとして重要な役割を果たしている。
 特に,平成2年度の心身障害児・者の実態調査によると,精神薄弱者の「親なき後」の安心して生活できる場としての入所施設に対する要望は80%と極めて高い。
 今後,更生施設やグループホームなど多様な形態の入所施設の整備が課題となっている。
 また,施設機能の地域開放としてショートステイやデイサービスをはじめとする在宅福祉サービスの充実が求められている。

○ 市内の障害者福祉(入所)施設の状況(平成3年度末)

区分 施設種別 施設数 定員(人)
身体障害者 身体障害者療護施設 1 50
重度身体障害者授産施設 1 80
視覚障害者更生施設 1 165
精神薄弱者 精神薄弱者更生施設 4 220
精神薄弱者通勤寮 1 27
精神薄弱者グループホーム 3 12
障害児 重症心身障害児施設 1 120
精神薄弱児施設 1 110
ろうあ児施設 1 50
盲児施設 1 60
  • (ア) 重症心身障害児施設
     重症心身障害児の療育・入所施設は市内に1か所定員120人があり,入所希望が多い。入所者の中には18歳を超えるものも多く,重症心身障害「者」施設の制度化について国へ要望している。
  • (イ) 身体障害者療護施設
     重度障害者の家庭に代わる介護と療育の場として,重度障害者の増加,家庭の介護機能の低下ともあいまって,今後ニーズの増大が見込まれる。
     現在,市内には1か所定員50人のみで,市外施設に96人措置している。
     現在の施設の地理的状況から,ショートステイなどの在宅福祉機能が十分利用されていない。
  • (ウ) 授産施設(入所)
     雇用されることが困難な人が入所し,職業を得て自活することを目的とする施設で,市内には,重度授産施設(聴覚障害者対象)1か所定員80人を設置している。
  • (エ) 精神薄弱者更生施設
     精神薄弱者更生施設は,自立に必要な日常生活上の指導・訓練を行う施設で,入所・通所の両形態があるが,現在,市内には,精神薄弱者入所更生施設4か所定員220人を設置し,常時定員を満たしている。本市からの4施設への入所は160人で,市外施設への入所は323人にものぼり,「親なき後」の生活の場として入所希望が強い。施設が西部方面に偏在しているなどの問題があり,在宅福祉を進めるためにも適正配置やショートステイ専用床の整備が課題となっている。
     また,施設運営上,入所者の重度・重複化に伴う処遇の質の向上が大きな課題となっている。
  • (オ) 精神薄弱者通勤寮,グループホーム
     就労している障害者が,一定期間日常生活上の指導を受けながら共同生活をする施設で,市内には,通勤寮1か所定員27人,グループホーム3か所定員12人を設置している。親の高齢化などで在宅生活が困難になった障害者が,引き続き地域の中で就労生活を送れるようにするため,グループホームの役割は特に大きく,今後,そのニーズは増大していくものと見込まれる。
     また,これらの施設は小規模ではあるが,入所者への24時間の対応が必要な施設であり,1人ないし数人の管理・指導体制では運営が困難なため,入所更生施設などのバックアップを必要としている。

(5) 暮らしやすいまちづくり

 障害者の地域における生活の場の確保と,社会参加を促進するためには,障害者の視点に立った都市環境の整備というハード面とともに,地域に住む人々の温かい思いやりの心を育てるソフト面の充実が一体となった,総合的なまちづくりを推進していく必要がある。

ア 指針の策定

 本市では,昭和54年度に策定した「建築物に関する福祉環境整備推進指針」により,建築物についての整備を推進してきた。その結果,国際障害者リハビリテーション協会の定めた条件を満たし,整備された284施設に国際シンボルマークを,指針の基準を満たした437施設に市のシンボルマークを,それぞれ交付している(平成3年度末現在)。
 さらに,平成4年度からは,福祉のまちづくりを総合的に推進するため,「『福岡型福祉社会』のための環境づくり指針」を策定し,建築物をはじめ,公共交通機関,道路,公園等,点から面へと一層の整備を進めていくこととしているが,市民や企業の理解と協力を求めていくことが必要である。

○ シンボルマークの交付状況(累計)

区分 市のシンボルマーク(件) 国際シンボルマーク(件) 計(件)
昭和56年度 92 61 153
昭和61年度 315 171 486
平成3年度 437 284 721

イ 住環境の整備

 障害者向け市営住宅は,東区の市営青葉住宅を含め,29戸が整備されており,今後,交通アクセスなどの条件に配慮しながら更に整備を進める必要がある。

ウ 広報啓発の推進

 昭和56年の国際障害者年を契機として,12月9日の「障害者の日」の啓発街頭キャンペーンをはじめ,「心の輪を広げる体験作文」の募集や,福岡都市圏共同事業として,「ときめきフェスタ福岡」を開催している。
 今後も,更に市民の理解と協力を得て,だれもが快適で暮らしやすいまちづくりを進めるため,広報啓発活動を積極的に推進していく必要がある。

(6) 文化,スポーツ,レクリエーション活動

 障害者の地域における文化活動やレクリエーションの場として,「障害者フレンドホーム」を南,城南,東区に順次整備している。
 また,障害者がスポーツを通じて,身体機能の回復,健康の維持増進を図るため,昭和59年に「障害者スポーツセンター」を開設するとともに,障害者のスポーツ,レクリエーション活動の振興のため,「障害者スポーツ・レクリエーション振興会」を組織している。
 毎年盛んになっていく文化,スポーツ,レクリエーション活動の振興のため,フレンドホームの整備,専門指導員の養成,スポーツ・レクリエーション振興会の組織強化とともに,精神薄弱者,重度障害者のスポーツ・レクリエーションの充実が課題となっている。
 また,視覚障害者の情報提供施設として「点字図書館」を市内に1か所設置しているが,増大する情報提供ニーズに十分対応していくためには,聴覚障害者も含めた視聴覚障害者情報提供施設の設置が必要である。

○ 障害者スポーツセンター利用者種目別内訳(%)(平成3年度)

延べ利用人員 71,258人

水泳 30.9
大会 10.2
研修 5.7
レクリエーション 5.1
トレーニング 4.6
スポーツ教室 4.5
卓球 4.4
バスケット 3.5
バレー 3.5
ダンス 2.5
盲人卓球 1.9
アーチェリー 6.1
その他 17.1
76,156人
(重複利用を含む)

○ 障害者フレンドホームの利用状況(人)(平成3年度)

区分 南フレンド 城南フレンド 東フレンド
個人利用 3,228 1,920 1,126
デイサービス 1,703 1,623 1,376
団体利用 2,425 1,544 1,995
フレンド祭 662 771 438
合計 8,018 5,858 4,935

3 児童・母子等福祉

 本市では,児童福祉推進のため,昭和47年に児童相談所を開設し,また,区役所への家庭相談員の配置等を行い,相談体制の充実を図るとともに,養護施設,乳児院,助産施設等の施設整備を進めてきた。特に,昭和40年代以降の急激な都市化の進展と女性の就労機会の増大等に伴い,要保育児童への対応を急ぎ,保育所の整備を積極的に進めてきた。現在では,全市155か所,総定員19,340人を整備しており,ほぼニーズを満たしてきている。
 また,昭和48年には,乳幼児医療費助成制度を開始し,医療費の負担軽減を図ってきた。
 一方,母子家丁等の福祉についても,相談体制の充実や母子・寡婦福祉資金貸付の推進,母子寮の整備に努めるとともに,昭和59年の母子家庭等医療費助成制度の創設や,昭和60年には,母子世帯等の自立促進を図るため,母子福祉センターを開設なるなど,総合的な取組を進めてきている。
 本市の18歳未満の児童は,平成2年の国勢調査では286,467人で,総人口に占める割合は23.2%となっており,将来的には,この割合はさらに低くなっていくものと予測される。
 また,母子・父子家庭は,社会的にも経済的にも不安定で複雑な問題を抱えており,その数は,平成3年度に実施した「母子家庭等実態調査」では,市内の母子家庭は14,180世帯(2.82%),父子家庭は2,420世帯(0.48%)と推計されている。
 今日の児童を取り巻く状況は,核家族化や少子化などの家族形態の変化により,その養育機能の低下がみられる中で,非行や登校拒否,虐待など,児童の成長・発達上様々な問題が生じてきている。また,出生数・出生率の低下など次代を担う児童が減少していくことは,将来の社会経済に大きな影響を与えるものと考えられる。
 活力ある社会を築くためには,児童を心身ともに健全に育成していくとともに,健やかな家庭を築き子どもを生み育てていく人々が,喜びや楽しみを一層感じることのできる社会づくりを目指した家庭支援策を講じていくことが課題となっている。

○ 18歳未満の児童数の推移(福岡市) (単位:人)

区分 総人口 18歳未満人口 割合
1980年
(昭和55年度)
1,088,588 294,033 27.0%
1985年
(昭和60年度)
1,160,440 300,898 25.9%
1990年
(平成2年度)
1,237,062 286,467 23.2%

※ 国勢調査による

合計特殊出生率の推移(人)

昭和30年 2.37
35年 2.00
40年 2.14
45年 2.13
50年 1.91
55年 1.75
60年 1.76
平成3年 1.53

(資料) 厚生省統計情報部「人口動態統計」

○ 世帯の家族類型(福岡市)(単位:世帯)

区分 総世帯数 内訳 世帯当りの
児童数(人)
核家族 三世代家族 単身世帯 その他
昭和55年度 397,013
(100.0%)
226,617
(57.1%)
24,197
(6.1%)
125,555
(31.6%)
20,644
(5.2%)
0.74
昭和60年度 433,348
(100.0%)
245,304
(56.6%)
24,370
(5.6%)
143,316
(33.1%)
20,358
(4.7%)
0.69
平成2年度 490,915
(100.0%)
264,123
(53.8%)
21,985
(4.5%)
177,677
(36.2%)
27,130
(5.5%)
0.58

※ 国勢調査による

(1) 児童の健全育成

 家庭は,これまで児童を保護し,安らぎやくつろぎを与えるとともに自立の場として重要な役割を果たしてきたが,核家族化や少子化等の家族形態の変化とあいまって,従来家庭がもっていた児童養育機能の低下が生じてきている。
 一方,地域社会は,遊びや地域行事などの活動を通して社会性や協調性,思いやりの心などをはぐくむ場となってきていたが,生活様式の変化や人口構造の変化,都市化の進展等により,地域共同体としての連帯感が希薄化していくとともに,自然とふれあう機会や遊び場が減少するなど,地域社会の持つ児童をはぐくむ機能も低下する傾向にある。
 このような社会環境や家庭環境の変化の中で,非行や家庭内の暴力,いじめ,登校拒否など児童問題は複雑・多様化している。
 児童の健全育成に向けて,本市では,現在,福祉部門・教育部門・青少年対策部門等関連部局において総合的に施策を推進しているが,その一層の連携を図るとともに,相談体制の充実,家庭支援,児童が生き生きと育つための環境整備などの積極的な推進が課題となっている。

ア 児童の活動の場

 児童に健全な遊びとその場を提供し,児童の健康を増進するとともに,情操を豊かにすることを目的とした利用施設として,児童館を市の中央部に1か所設置している。
利用状況は,平成3年度で,延べ52,006人(1日当り 211人)となっている。
 本市には,このほか,児童向けの施設として少年科学文化会館,児童公園等がある。また,地域に密着したコミュニティ施設である各区の市民センターや公民館等において,児童を対象にした事業の展開やスペースの整備を進めている。
 また,留守家庭児童対策についても,他都市においては広域的(平均2中学校単位)に実施されているが,本市では小学校単位で学校施設を利用した留守家庭子ども会育成事業として,独自の取組を長く続けている。
 今後は,学校週5日制への移行など子供を取り巻く環境の変化に対応するため,これらの施設や事業の一層の充実と,各施設間の連携・有効活用等により,利用の促進を図っていくことが課題である。

○ 留守家庭子ども会開設状況

区分 開設箇所数(か所) 入会児童数(人)
昭和56年度 61 2,868
昭和61年度 86 3,841
平成3年度 114 5,761

(2) 要援護児童

ア 相談機能

 現在,相談機能としては,児童相談所を中心に福祉事務所(家庭児童相談室),保健所,心身障害福祉センター,育児110番など20近い機関・団体等において,養護,健全育成,非行,心身障害等様々な問題の相談を受け,児童や保護者に対する指導や助言あるいは心理治療,施設措置等を行っている。
 児童相談所における相談状況は,特に心身障害に関する相談が多いが,最近では,現代の社会状況の変化を反映した家庭養育力の低下による養護・非行問題の深刻・複雑化が目立ってきている。
 今後,児童問題になお一層適切に対応するためには,児童相談所をはじめとする相談・指導機関,団体の機能の充実や連携が必要である。
 特に,相談機関の中心として総合調整及び専門的機能の役割を持つ児童相談所が,ますます複雑多様化,深刻化する児童問題に,個々の児童だけでなく,家族・家庭全体に対しても適切かつ十分に対応するためには,施設機能の充実のための建て替えや組織の拡充が課題となっている。

○児童相談所の相談内容(平成3年度)

心身障害 (1,403件)
養護 (287件)
非行 (252件)
育成 (134件)
全体 2,076

イ 養護施設

 家庭で養育されることが困難な児童(乳児を除く)が入所し,家庭に代わって養育を受ける施設として,市内に3か所定員300人を設置している。個々の養護問題は複雑化しているものの,数的な需要は,ほぼ横ばい状態である。いずれの施設も東区に偏在している。
 また,施設建物の老朽化や,狭隘さ,増加する高年齢児に対する職員の指導力の向上と高年齢児のプライバシーの保護,退園後のアフターケアの困難さ,そして指導職員の確保などの問題を有している。

ウ 乳児院

 家庭で養育されることが困難な乳児が入所し,養育を受ける施設で,市内に1か所定員45人を設置している。需要は,ほぼ横ばい状態にある。

(3) 要保育児童

 保育所は,保護者の就労や疾病等により,家庭において十分な保育をすることができない乳児及び幼児を,家庭の保護者に代わって保育をすることを目的とする施設で,市内に公立23か所,私立132か所(別途,へき地保育所が1か所ある。)の合計155か所を設置している。
 近年の出生率の低下により,就学前の児童数が減少する中で,保育所入所申込数も,昭和62年度の19,432人をピークとして減少傾向に転じ,平成4年度においては総定員19,340人に対し,申込数は18,733人と600人余り下回っている。しかし,今後の保育需要を予測した場合,就学前児童数に対する保育所入所申込数の割合は,女性の就業機会の増大や核家族化の進展等により,年々増加している。さらに,第2次ベビーブームの女性が,4~5年後には出産適齢期を迎えることにより,保育所入所申込数も増加傾向に転じるものと予想される。
 現在,都心部のドーナツ化現象に伴い,地域的な保育需要の増減が生じている状況にあるため,当面は,保育需要の動向に十分配慮し,地域的な未措置児の解消を図る必要がある。
 また,民間保育園の中には,老朽化しているものや,保育所用地の面積が不足している等の状況があり,これらの保育環境の改善を行うとともに,定員割れ対策など運営基盤の安定化が課題となっている。
 さらに,近年,女性就労の増大や就労形態の多様化,出生率の低下による少子化など社会経済情勢の変化を背景に,保育需要が極めて多様化してきている。
 このため,現在,昼間の一般保育のほかに,1延長保育22か所,2夜間保育1か所,3障害児保育19か所,4乳児保育138か所などを行っており,今後もこれらの特別保育事業の内容や実施保育所の増等の充実を図るとともに,長時間保育サービスや一時的保育事業の充実など,特別保育事業の拡充に努め,子育てと仕事の両立を支援していくことが必要である。
 また,家庭や地域での子育て能力を支援するため,保育所が持つ長年培った知識や技術など専門性をいかし,地域に開かれた保育所として,その関わり方が問われている。

○ 保育所申込数等の推移(単位:人)

区分 就学前児童数
(3/31現在)
保育所入所申込数
(4/1現在)
保育所定員
(4/1現在)
昭和56年度 101,484 18,799 16,536
昭和61年度 94,597 19,305 18,594
平成3年度 84,098 18,750 19,254

(4) 要援護の母子・父子家庭

 母子家庭等が,単親家庭になった原因は,平成3年度の実態調査では,母子家庭の73.6%が離婚,16.2%が死別,父子家庭では63.7%が離婚,30.8%が死別となっている。単親家庭になってからの経過年数は,5年未満が,母子家庭では42.6%,父子家庭では50.8%を占めている。
 母子家庭は,社会的にも経済的にも不安定で様々な問題を抱えており,また,父子家庭は母子家庭に比べ経済的には比較的恵まれているものの,子どもの養育・家事など日常生活に関する問題を抱えている。

○ 母子家庭等の世帯数(福岡市母子家庭等実態調査)(単位:世帯)

区分 母子家庭(世帯) 父子家庭(世帯)
昭和54年度 8,173 -
昭和61年度 13,750 2,320
平成3年度 14,180 2,420

ア 母子相談・家庭相談

 母子・父子家庭の抱える問題を解決するため,福祉事務所に母子相談員・家庭相談員を配置し,生活全般の相談・指導を行っている。

○ 母子相談(家庭児童相談室)の状況(平成3年度)

生活援護 64.0%
(5,896件)
生活一般 21.1%
(1,947件)
児童関係 10.6%
(971件)
その他 4.3%
(396件)
9,210件

イ 母子家庭等介護人派遣

 母子・父子家庭等において仕事や疾病等により,児童の養育が困難となった時など,家庭機能を補完するために,介護人派遣制度を実施しているが,これらの援助施策の充実が課題となっている。

ウ 就労促進

 母子家庭や寡婦に対して,各種の相談や生活・職業指導などを行うことを目的として母子福祉センターを市内に1か所設置(平成3年度の年間利用は1日当り52人)している。
 今後とも,時代に即応した講座を実施する等,より一層の充実を図っていくことが課題である。

○ 母子福祉センターの利用状況(平成3年度)

相談関係 57.5%
(9,324人)
講座関係 33.1%
(5,372人)
その他 9.4%
(1,532人)
16,228人
(52人/日)

エ 経済的支援

 母子家庭等には,経済的自立を促すために児童扶養手当や医療費助成のほか,母子・寡婦福祉資金などの貸付等を行っているが,資金の効果的活用を図ることが課題である。

オ 母子寮

 配偶者がいない女子とその児童が入所し,生活や就職の相談や指導を行い,自立への援助を図る施設で,市内には2か所定員90世帯がある。需要は,ほほ横ばいで推移している。現在,1か所が改築中であり,入所者に対する居住環境の改善に努めている。

4 地域福祉

 人口の急速な高齢化,家族形態の変化,地域社会の変容,市民意識の多様化等福祉を取り巻く環境が大きく変化している中で,福祉ニーズもますます増大し,かつ多様化してきている。
 さらに,21世紀の本格的な高齢社会の到来を考えると,すべての高齢者が健康で生きがいをもって,安心して過ごせる社会の実現が求められている。望ましい地域社会を形成していくためには,地域の社会・経済・文化的な背景・状況など,地域の特性をいかしながら,地域住民の協力によって,地域住民が主体的に地域福祉活動に参加することが必要である。
 本市では,民生委員・児童委員をはじめ,社会福祉施設や老人クラブ,女性団体,公民館サークル,そして企業などが社会福祉にいろいろな形で参加してきている。また,各種団体が活用している公民館も,地域福祉の活動拠点として,地域になじんできている。一方,在宅支援のネットワークづくりや新しい福祉サービスの動きも少しずつでてきている。
 そのような中で,市,区,校区とつながる社会福祉協議会は,民間社会福祉団体の核として,社会福祉の市民参加を図るための啓発活動や地域ボランティアの発掘と育成,在宅福祉サービスへのかかわりなどの役割を果たしていくことが求められている。
 昭和63年度に区社会福祉協議会が発足したが,期間が間もないこともあり,校区社会福祉協議会との連携は十分とは言えず,市・区・校区それぞれの社会福祉協議会の役割が整理される必要がある。
 また,区社会福祉協議会は,事業の推進を図る上で、法人化が課題となっており、組織等の充実強化が必要となっている。
 校区社会福祉協議会は,既にほぼ全校区に結成され,それぞれの状況に応じた独自の地域福祉活動を行っている。今後は,これら校区社会福祉協議会の活性化とその調整役であるコーディネイターの確保が重要である。
 さらに,地域福祉活動を展開していくためには,福祉活動に参加する住民の意識が問題となってくる。
 本市における市民の福祉意識については,「平成3年度市政に関する意識調査」では,福祉に少しでも関心を持っている人は70.9%あるが,若年層における関心度は低く,50代の女性の関心度が一番高くなっている。また,地域福祉活動については,町内会・自治会活動への参加が中心となっており,福祉ボランティアへの参加等は非常に低くなっている。しかしながら,機会があればボランティア活動に参加してもよいと回答した人が45%に達しており,なんらかのきっかけがあれば,ボランティア活動への参加を増やすことができると考えられる。地域福祉を充実させるために必要な施策については,地域におけるボランティア活動の場所や資金の確保が必要だと考える人が多く,今後,民間社会福祉活動の充実のための拠点としての総合的な福祉センターの設置や,資金面での支援となる基金など,行政の支援体制の充実が求められている。

○ 福祉への関心度〔性別,年代別〕

(「非常に関心がある」+「少し関心がある」)

- 全体 男性 女性
20代 48.2 46.6 49.7
30代 68.1 60.3 75.9
40代 75.4 71.2 79.6
50代 83.4 82.1 84.4
60歳以上 79.8 74.1 84.9

(平成3年度 市政に関する意識調査 福岡市市長室広聴課)

○ ボランティア活動への参加について

現在参加している 5.6
過去に参加したことがある 13.8
参加したことはないが,参加してもよい 45.0
参加したこともないし,参加するつもりもない 34.7
無回答 1.0
全体 N=1,730
(%)

(平成3年度 市政に関する意識調査 福岡市市長室広聴課)

○ 「地域福祉」を充実させるうえで必要な施策 N=1,730

地域におけるボランティア活動の場所や資金の確保 43.1
地域にボランティア活動のリーダーや参加者の養成 32.4
地域福祉活動に関する情報提供 31.9
障害者・老人と地域住民との交流 28.4
在宅の障害者・老人などへの給食配達 25.0
地域福祉活動の重要性のPR 23.9

(平成3年度 市政に関する意識調査 福岡市市長室広聴課)

(1) 地域福祉活動推進団体等

 地域福祉を推進していくためには,それに携わる人の確保ということが最大の課題となっている。
 現在,活動している団体としては,民間の地域福祉活動の推進の中心的役割を果たしている社会福祉協議会,民生委員・児童委員をはじめ友愛訪問を実施している老人クラブや地域で福祉相談に応じている身体障害者相談員,精神薄弱者相談員などがあり,その活動を支援している。
 今後,これらの活動の一層の活性化を図るため,地域の各種団体相互や公民館サークル,企業等との有機的連携を図り,そのネットワーク化を進めていくことが課題となっている。

ア 市社会福祉協議会

 地域福祉の民間推進組織としては,市・区・校区とつながる社会福祉協議会がある。
 市社会福祉協議会は,民間社会福祉の推進の中心的役割を果たしており,啓発活動,ボランティアの発掘と育成,在宅福祉サービスなどを実施し,地域福祉活動の指導的役割を果たしている。今後,より一層の推進体制の強化・充実が課題となっている。

イ 区社会福祉協議会

 区社会福祉協議会は各区に1か所ずつあり,事務局は各区福祉事務所に置かれている。各校区社会福祉協議会の結成の指導や,区の地域福祉活動充実のための事業などを実施しているが,今後,組織等を強化し,法人化するとともに,区の特性をいかした事業や校区社協に対する指導を展開していくことなどが求められている。

ウ 校区社会福祉協議会

 校区社会福祉協議会は,平成4年3月末現在141校区中132校区に結成され,結成率は93%に達している。組織は,自治会,民生委員・児童委員,老人クラブ等の代表者や公民館関係者が中心となって活動している場合が多い。
 今後,地域福祉を進めるための中核組織として,各種地域団体や福祉団体との連携を図り,活発な活動を展開していくことが期待されている。

○ 校区社会福祉協議会の結成状況

区分 結成数(a) 校区数(b) 結成率(a)/(b)
昭和56年度 37 124 29.8%
昭和61年度 98 135 72.6
平成3年度 132 141 93.6

エ 民生委員・児童委員

 民生委員・児童委員は,平成4年3月末現在1,388人(定数1,402人)おり,地域住民に対する相談活動,福祉ニーズの発見・把握,行政機関や社会福祉施設等との連絡などを通じて,地域福祉活動の担い手となっている。今後,地域の福祉ニーズの多様化,高度化が進む中で,地域住民と最も密接な関係にある民生委員・児童委員の果たす役割は大きい。

オ その他の地域福祉推進団体

 老人クラブがひとり暮らしの高齢者宅を訪問する友愛訪問などを通じて,地域福祉活動を行っている。今後,様々な団体が連携をとりながら,地域で福祉活動を行うことが望まれている。

(2) 地域福祉活動の財政的支援

 本市においては,ボランティア活動の振興を図るため,「ボランティア活動振興基金」を創設し,市民の協力のもとにボランティアセンターを中心に民間のボランティア活動を支援してきている。
 さらに,平成3年度から当面50億円を目標に「地域福祉活動振興基金」の積立てを始めた。この運用利子によって,各福祉団体が実施している地域福祉活動を支援することにより福祉団体の活性化を図るため,有効に活用する必要がある。
 このほか,地域福祉活動を支援する資金として,共同募金などがある。

(3) 地域福祉活動推進拠点

 現在,地域福祉推進の活動拠点としては,「福岡市社会福祉会館」があるが,老朽・狭隘化しており,十分な機能を果たしていくことが困難になっている。このため,現在の民間福祉活動の拠点機能のほかに,福祉情報・相談,研修など福祉活動を支援していくための機能をもった,総合福祉センターの設置が望まれている。
 また,それぞれの地域においても,活動を充実させていくためには,その活動拠点が必要となってきている。特に,区のレベルにおいては,区社会福祉協議会の法人化や市民福祉サービス公社の支部の展開など,より地域に根ざした地域福祉・在宅福祉サービスの支援が必要となっており,保健・医療の分野を含めた相互の連携を図るとともに,市民の福祉活動の拠点が必要となっている。
 さらに,地域に根ざした施設である公民館の活用や,在宅福祉の推進拠点である社会福祉施設の地域への開放などについても,今後検討していく必要がある。

(4) 福祉教育・啓発

ア 福祉教育

 福祉教育は,地域福祉を推進し,発展させるための基礎的なものである。したがって,家庭,学校,企業,地域において福祉教育に取り組み,福祉的風土をつくり上げることが必要である。
 現在,市社会福祉協議会では,小学5年生に,福祉教育読本「ともに生きる」を配布し,その感想文集を作成して,関係機関へ配布している。また,ボランティア協力校を指定し,福祉活動の充実を図っている。今後,学校の週5日制実施に伴う土曜日の活用を含め,体験を通した福祉学習の取組等の研究も望まれる。

イ 地域福祉に関する広報啓発

 地域福祉に係る広報啓発についても,市社会福祉協議会を中心に行われているが,市民への情報提供を含めた広報啓発については十分とはいえない。
 今後,行政が市民の地域福祉活動を支援するため,福祉情報を市民にいつでも提供できる方法の検討や,広報啓発の方法について,研究していく必要がある。

ウ 市民相互交流の場

 すべての市民が,高齢者や障害者等との交流の機会をもつことができ,自然に「福祉の心」をはぐくむことができる市民相互交流の場の整備が課題となっている。


主題:
福岡市福祉総合計画 1頁~47頁

発行者:
福岡市民生局福祉部(福祉総合計画等担当)

発行年月:
1993年02月

文献に関する問い合わせ先:
〒810 福岡市中央区天神1丁目8番1号
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