福岡市福祉総合計画
No.2
福岡市
第4章
福祉施策の基本的方向と展開
- 高齢者福祉の推進
- 障害者福祉の推進
- 児童・母子等福祉の推進
- 地域福祉の推進
第4章 福祉施策の基本的方向と展開
第3章において,高齢者や障害者,児童・母子等の福祉,そして,地域福祉,さらには,施設整備の方策や推進体制に関して,本市の福祉の現状と課題について触れてきたが,やがて到来する21世紀の超高齢社会への対応を中心に,今後10年間において,これらの課題の解決や,また新たな福祉システムの構築を図り,可能な限り,ソフト・ハード両面にわたる社会基盤の整備を推進し,すべての市民が安心して暮らせる生きがいと安らぎのある福岡のまちづくりに努めていく。
施策の展開にあたっては,本市の5つの「福祉の理念」を基本に,
- 在宅福祉の推進
- 施設福祉の推進
- 地域福祉の推進
を柱として,保健・医療や住宅など関連分野とも連携をとりながら,施策の推進を図っていく。
I 高齢者福祉の推進
1 高齢者福祉の理念
高齢者は,永年にわたり,社会の発展に貢献してこられた人として,尊敬されるとともに,元気な高齢者,病気を有する高齢者,あるいは,心身に障害をもった高齢者など,いかなる状態であれ,等しく人間としての尊厳を保つことが保障される。
高齢者は,自らの健康の保持に努めるとともに,永年の知識と豊富な経験を有する「社会創造の担い手」として,高齢期を豊かに生きることが求められる。
また,加齢に伴う身体等の機能の変化により,心身両面に制約が生じた場合には,必要な施策が講じられ,生きがいをもって健やかで安らぎのある生活を送ることが保障される。
2 施策推進の考え方
高齢者が,それぞれの知識,経験,能力などを最大限にいかし,社会活力の維持向上に主体的に創造的な役割を果たしていくことが重要である。また,今後,人口の高齢化や長寿化に伴い,寝たきりや痴呆性の高齢者などの要介護者が増加することが予測されるため,在宅介護をはじめ,高齢者が安心して生活できる福祉システムの構築を目指す。
特に,これまで重点的に施策の拡充を図ってきた生きがい対策だけでなく,国が「高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)」で目標量を示した事業をはどめ,高齢者が住み慣れた地域で安心して在宅生活を送るために必要な,寝たきりや痴呆性の高齢者などの要援護高齢者対策を重点的に推進していく。また,在宅福祉施策の推進拠点でもある特別養護老人ホームやケアハウスなど,福祉施設の適正配置を進める。
3 施策体系と主な施策
高齢者福祉
- 健康づくり
- 健康づくりセンター(仮称)の整備
- 生きがいと社会参加
- 老人福祉センターの改築
- 老人いこいの家の整備
- シルバー人材センターの充実
- 老人クラブ活動の支援
- 要援護高齢者
- 在宅福祉
- ホームヘルプサービスの充実
- デイサービスの充実
- ショートステイの充実
- 入浴サービスの充実
- 配食サービスの支援
- 緊急通報システムの普及
- 各種相談事業の充実
- 在宅ケア支援事業の推進
- 住宅改造費の助成
- シルバーサービス事業の育成
- 施設福祉
- 特別養護老人ホームの整備
- 松涛園の改築
- ケアハウスの整備
- デイサービスセンターの整備
- 在宅福祉
- 暮らしやすいまちづくり
- 高齢者にやさいしまちづくりの推進
- 住環境の整備
4 施策展開の方向
(1) 健康づくり
〔施策展開の方向〕
高齢者が,健康な生活を送ることができるよう,健康づくりセンター(仮称)を中心に保健所,体育施設等のネットワークの整備を図り,健康づくりを支援する。
ア 健康づくりセンター(仮称)の整備
福岡市の健康づくり推進の中核的役割を果たす施設として,調査・開発,教育,研修,広報広聴機能を持った「健康づくりセンター(仮称)」の整備を進める。
イ 市民健康づくり支援システムの整備
市民の自主的な健康づくりを支援するため,健康づくりセンター(仮称)を中心に,市民が身近に各人にあった科学的で効果的な健康づくりの指導や情報を受け,継続的な健康づくりができるシステムを整備する。
(2) 生きがいと社会参加
〔施策展開の法向〕
高齢者が生きがいをもって,生き生きと生活ができるよう,就業やスポーツ・文化等のレクリエーション活動,社会奉仕活動など,社会参加や学習の機会の確保に努める。
ア 老人福祉センターの改築
高齢者の生きがいと社会参加の場として,各区に設置している老人福祉センターのうち,老朽化が進んでいる施設の建て替えを進める。改築時には,デイサービスセンターの併設を進めるなど機能の充実を図る。
イ 老人いこいの家の整備
高齢者の地域活動の充実を図るため,老人いこいの家を設置していない校区の解消を急ぐとともに,冷暖房設備の設置と老朽化施設の改築を行う。
また,施設規模の拡大など内容の充実について検討するとともに,施設の有効利用を図るため,合築・複合化等についても推進していく。
ウ シルバー人材センターの充実
高齢者の経験と能力を活用し,社会参加の促進と福祉の増進を図るため,シルバー人材センターを拡充し,市民や企業へのPRに努め,会員の増大や事業の開拓を推進し,就業機会の拡大を図る。
また,会員や依頼者の利便の向上を図るため,必要に応じ支部を展開していく。
エ 老人クラブ活動の支援
高齢者の生きがいと社会参加を増進するため,老人クラブ活動を中心とするスポーツ・文化活動や地域における社会奉仕活動,レクリエーションなど,高齢者の幅広い活動を引き続き支援していく。
オ 学習機会の確保
生涯学習の観点から,今後とも,市民センターや公民館,老人福祉センター,老人いこいの家などで実施している学習機会の充実や学習情報のネットワーク化について研究する。
(3) 在宅福祉
〔施策展開の方向〕
要援護者の在宅生活を支援するため,在宅福祉の三本柱であるホームヘルプサービス,ショートステイ,デイサービスを中心に施策の充実を図る。
さらに,福祉・保健・医療の連携を図るとともに,民間シルバーサービスを含め,総合的に福祉サービスを提供するシステムづくりを進める。
ア ホームヘルプサービスの充実
ホームヘルプサービスは,介護を要する高齢者等の在宅生活を支える基盤となるものであり,要援護者や家族に必要な家事・介護等の十分なサービスを提供するとともに,主治医や関係機関との連携を密にした,より質の高いサービスを提供できるよう充実を図っていく。
サービスの供給体制については,現在,市社会福祉協議会のホームヘルパー制度と,市民参加型の市民福祉サービス公社の制度による二つの方式をとっている。今後ともこの二方式は継続するが,急速に増大するニーズに対応するには,広範な市民の参加により,サービスを提供する市民福祉サービス公社を中心に体制の充実を図る必要がある。
市民福祉サービス公社のサービスは,常勤の専門職である(*1)調整指導員の調整の下に,一定の事前研修を修了した(*2)ホームヘルプ協力員(登録されたホームヘルパー)と,これを現場で指導援助する常勤の専門職である(*3)業務指導員との総合的な体制により,内容の充実したサービスを提供するものである。
今後,さらにこの市民福祉サービス公社の体制の充実に努め,平成13年度においては,調整指導員,業務指導員を少なくとも計約150人予定し,ホームヘルプ協力員と協働して,急速に増大し,多様化するニーズに的確に対応していく。
サービスについては,現在,平日の9時から17時(祝日,年末年始を除く。)に実施しているが,今後,高齢者のニーズに応えて,平成6年度には,日曜,祝日,年末年始,夕方の時間帯に拡大し,さらに,平成9年度を目途に,すべての時間帯において必要な場合にはサービスが提供できる体制を確保する。
また,新たに設置する区福祉センター(仮称)に市民福祉サービス公社の支部を設置し,利用者のニーズを的確に把握するとともに,保健・医療との連携を図り,きめ細かなサービスを提供していく。
(*1)調整指導員
利用者に必要なサービスの内容の調査や適切なホームヘルプ協力員の選定を行う。また,利用者に最適のサービスが行われるよう利用者とホームヘルプ協力員の間の調整を行うとともに,福祉事務所,保健所,医療機関等と連携を行う。
(*2)ホームヘルプ協力員
福祉に理解と熱意をもつ市民が事前研修を受け,市民福祉サービス公社にホームヘルパーとして登録し,利用者に家事,介護等のサービス提供を行う。
(*3)業務指導員
ホームヘルプ協力員の代替や熟練した技能が必要なサービスについてホームヘルプ協力員を実地で指導したり,直接サービスするなどホームヘルプ協力員のサポートを行う。
イ デイサービスの充実
寝たきりや痴呆性の高齢者の心身機能の維持及び家族の介護負担を軽減するため,高齢者デイサービスセンターで実施するデイサービス事業の充実を図る。
特に,痴呆性の高齢者の増加に対応するため,痴呆性高齢者のための毎日通所型施設「高齢者ふれあいホーム」を整備し,デイサービスを実施する。
ウ ショートステイの充実
介護者の病気や休養のため,一時的に家庭介護が困難となる高齢者を入所施設に短期間受け入れるショートステイ事業を充実する。このため,入所施設の整備に際しては,すべてショートステイ専用床を整備するとともに,既存施設の空きベッドの活用を図る。
また,送迎サービスの充実を図る。
エ 入浴サービスの充実
家庭での入浴が困難な高齢者に対し,移動入浴車による入浴サービスを提供する。今後,需要動向をみながら入浴回数の増加を図る。
オ 配食サービスの支援
高齢者世帯等で食事を作ることが困難な世帯に,地域福祉活動団体が実施する配食サービス事業の振興を図るため,地域福祉活動振興基金の活用による支援を行い,安否の確認や地域の活性化,連帯意識の高揚を図る。
カ 緊急通報システムの普及
ひとり暮らしの高齢者等が,家庭内で急病等の緊急事態が生じた場合の不安を解消するため,緊急通報機器の普及を図る。
また,事業の円滑な推進を図るため,地域における協力・支援体制について検討する。
キ 各種相談事業の充実
福祉事務所や保健所等の行政機関をはじめ,おとしより相談センターや地域での民生委員・児童委員等による福祉相談の充実を図り,在宅での日常生活への不安感等の解消に努める。
また,新たに設置する「市民福祉プラザ(仮称)」や「区福祉センター(仮称)」においても,相互に連携のとれた総合相談窓口を整備する。
さらに,在宅福祉サービスや施設福祉サービスについて,利用者の要望や意見等が反映されるシステムづくりを研究する。
ク 在宅ケア支援事業の推進
在宅ケア・ホットラインを中心とした在宅ケア支援事業の一層の推進を図るとともに,福祉・保健・医療の関係機関の連携を強化し,市民の福祉ニーズを的確に把握し,在宅の要介護高齢者の生活を積極的に支援するシステムづくりを進める。
ケ 住宅改造費の助成
高齢者の在宅生活を支援するため,住宅の増改築について資金の貸付の充実を図るとともに,改造費用の助成を行う。
さらに,住宅の改造等の相談に応じる専門の相談員(リフォームヘルパー)を配置する。
コ シルバーサービス事業の育成
今後の多様なニーズに対応していくためには,公的サービスと民間サービスがそれぞれに役割を分担し,また補完し合いながら,広範なサービスを提供していく必要がある。最近,民間事業者によるシルバーサービスが増えており,良質かつ安全な商品やサービスが提供されるよう,国,県など関係機関と連携をとりながら,民間事業者の健全な育成・指導に努める。
(4) 施設福祉
〔施策展開の方向〕
在宅生活が困難な高齢者の入所施設については,量的確保とともに,デイサービスやショートステイなど在宅福祉サービスの機能を併設する。また,新規施策として居住性の高いケアハウスの整備を促進する。
整備にあたっては,地域的な適正配置に配慮しながら,民間による整備を計画的に推進する。
デイサービスセンターについては,より地域に密着した整備を進め,地域的に必要な場合は単独型を整備する。
ア 特別養護老人ホームの整備
特別養護老人ホームについては,量的な確保を図るとともに,在宅福祉サービスを提供する拠点施設として,地域的バランスに配慮しながら整備を進める。
特に,徘徊等のある痴呆性の高齢者の入所に対応するため,必要に応じ,新増設の特別養護老人ホームに痴呆性老人専用床を整備するほか,高度の痴呆性高齢者に対応するため,都市圏事業として,その専用施設を整備する。
また,今後新設する施設については,一定数の個室を確保するとともに,既存の施設についても増改築時に個室化を促進し,居住性の向上を図る。
さらに,地域に根ざした施設づくりを目指すため,デイサービス,ショートステイ事業等在宅福祉の拠点機能を併設するとともに地域交流スペースの設置に努める。
イ 養護老人ホーム・救護ホーム「松涛園」の改築
老朽化している「松涛園」の建て替えを行う。また,建て替え時に個室化を図るなど居住性の向上に努める。
ウ ケアハウスの整備
ケアハウスは,食事サービスを受ける程度で自立した生活が維持できる新しい種類の軽費老人ホームで,今後,一段とニーズが高まると予想されており,特別養護老人ホームの新増設時に併設することを基本に整備を進めていく。また,老人保健施設などとの併設による整備に努める。
エ 高齢者デイサービスセンターの整備
高齢者デイサービスセンターは,地域的バランスに配慮しながら,より身近な場所に整備を進める。
そのため,特別養護老人ホームに併設するほか,老人福祉センター・市営住宅等の改築や区福祉センター(仮称)の新設時に併設するなど,併設を基本に整備する。
また,併設が不可能な地域については,単独型のデイサービスセンターを整備する。
オ 老人保健施設
老人保健施設は,病院と家庭の中間施設として,また,地域に開かれた施設として,その機能を発揮していく必要がある。福祉・保健・医療にわたる総合的なサービス提供システムの整備を進める中で,在宅ケアを支援する一つの拠点として,その計画的な整備促進に努める。
(5) 暮らしやすいまちづくり
〔施策展開の方向〕
「『福岡型福祉社会』のための環境づくり指針」に基づき,高齢者をはじめ,すべての市民が,道路や公園,公共的施設,公共交通機関などを安心して利用できるまちづくりを進めるとともに,高齢者が安心して暮らせる住宅の確保に努める。
ア 高齢者にやさしいまちづくりの推進
高齢者をはじめ,すべての市民が快適で,暮らしやすいまちづくりを推進するため,「『福岡型福祉社会』のための環境づくり指針」に基づき,公共(的)施設の整備を図っていくとともに,指針の普及,啓発に努める。
また,ゴールドプランに対応し,国が財政的支援を行う「地域福祉推進特別対策事業」を積極的に活用し,地下鉄既存駅舎のエレベーターの設置等を行い,都市環境の整備を推進していく。
イ 住環境の整備
高齢者が安心して暮らせる住宅整備に努めるとともに,市営住宅については,「福岡市シルバー市営住宅整備計画」に基づき,高齢者に配慮した施設整備を推進するとともに,在宅福祉サービス機能を有するデイサービスセンターなどとの合築複合化を推進し,福祉施策等と連携した住宅の供給を図る。
5 計画目標
重点施策 | 平成3年度末 | 平成13年度目標量 |
---|---|---|
ホームヘルプサービス | 利用者 1,004人 (障害者192人を含む) サービス時間 18,998時間/月 (同 3,766時間/月を含む) 常勤換算ヘルパー 211人 (同 42人を含む) |
利用者 3,800人 (障害者450人を含む) サービス時間 105,000時間/月 (同 17,000時間/月を含む) 常勤換算ヘルパー 1,170人 (同 190人を含む) |
デイサービス | 実施箇所 9か所 実利用者 438人 1日利用定員 135人 |
実施箇所 55か所 実利用者 2,330人 1日利用定員 1,000人 |
ショートステイ | 67床 | 450床 (うち,40床は空床利用) |
特別養護老人ホーム | 1,090床 | 2,150床 |
ケアハウス | 0人 | 930人 |
II 障害者福祉の推進
1 障害者福祉の理念
障害者の福祉は,リハビリテーションの理念とノーマライゼーションの理念とを基本としている。
リハビリテーションの理念は,単に身体の機能回復を指すものではなく,障害者は一人の人間として,その人格の尊厳性を回復する可能性を持つ存在であって,その自立は社会的発展に寄与するというものである。
また,ノーマライゼーションの理念は,障害者等の社会的不利を負い易い人々を当然に包含するのが通常の社会であり,そのあるがままの姿で他の人々と同等の権利を享受できるようにするという考え方であり,方法でもある。
これらの理念は,昭和56年の「国際障害者年」のテーマである「完全参加と平等」の根底に流れる理念であり,障害者が一人の人間として尊重され,社会を構成する一員として,可能な限り自己の能力を発揮して,社会経済活動に参加し,自立した生きがいのある生活を営むことができるように,社会環境や生活環境の整備をしていくことである。
2 施策推進の考え方
障害者福祉の理念に基づき,障害を持つ人も持たない人も共に暮らす地域社会の実現に向け,障害者が自己の能力を最大限に発揮し,就労をはじめとした社会活動に参加し,生きがいをもって生活できるよう,ハード・ソフト両面にわたる環境整備を進めていく。
施策推進に当たっては,障害の程度やそれぞれのライフステージに対応した施策の充実を基本とする。
乳幼児期については,障害児療育センターにおける療育体制の充実を図るとともに,学齢期では障害児教育と福祉の連携を強めていく。また,養護学校卒業後の対応として,通所施設を中心に雇用・福祉的就労の場の確保や社会参加の場の充実を図る。
また,近年のノーマライゼーションの理念に基づく在宅志向に対応するため,ホームヘルプサービス事業などの在宅福祉サービスの充実を図る。併せて,在宅生活を支えるための「親なき後」の施設として,緊急時の一時保護機能を併設した入所施設の整備も進めていくものとする。さらに,障害を持つ人が自由に生活,行動できるまちづくりを進めるなど,きめ細かな施策を総合的・計画的に推進していく。
3 施策体系と主な施策
障害者福祉
- 予防・療育・リハビリテーション
- 障害児の療育
- 障害児療育センター(仮称)の整備(東部,西部)
- あゆみ学園増改築
- リハビリテーション
- 地域リハビリテーションの充実
- 障害児の療育
- 教育との連携
- 心身障害児教育センター(仮称)の整備
- 雇用と就労・社会参加
- 雇用
- 重度障害者多数雇用企業の設立
- 福祉的就労の場の整備
- 身体障害者通所授産施設の整備
- 精神薄弱者通所授産施設の整備
- 就労困難な人の社会参加の場の整備
- デイサービスの充実(フレンドホームの整備)
- 福祉作業所への助成の拡充
- 精神薄弱者通所更生施設の整備
- 雇用
- 生活の援護
- 在宅福祉
- ホームヘルプサービスの充実
- ガイドヘルパー派遣の充実
- ショートステイの充実
- 入浴サービスの充実
- 配食サービスの支援
- 緊急通報システムの普及
- 精神薄弱者更生相談所の設置
- 住宅改造費助成の充実
- 施設福祉
- 身体障害者療護施設の整備
- 精神薄弱者入所更生施設の整備
- グループホームの整備
- 在宅福祉
- 暮らしやすいまちづくり
- 障害者にやさしいまちづくりの推進
- 住環境の整備
- 広報啓発の推進
- 文化,スポーツ,レクリエーション活動
- 全国障害者ボウリング大会の開催
- 視聴覚情報提供施設の整備
4 施策展開の方向
(1) 予防・療育・リハビリテーション
〔施策展開の方向〕
障害児の早期発見・早期療育の充実を図るとともに,在宅障害者のリハビリテーションを積極的に推進していくことにより,障害者の自立と社会復帰を支援する。
ア 障害児療育センター(仮称)の整備
重複障害児への総合的療育指導や学齢前の障害児への一貫した療育指導を効果的に行うため,既存の肢体不自由児通園施設と精神薄弱児通園施設を統合し,適正な施設配置についても配慮して,障害児療育センター(仮称)として整備する。
また,肢体不自由児通園施設「あゆみ学園」の増改築や療育の核である心身障害福祉センターのあり方についても併せて検討する。
イ 地域リハビリテーションの充実
福祉・保健・医療の連携のもと,家庭や身近な地域でリハビリテーションが受けられるよう,訪問リハビリテーションや通所訓練等の地域リハビリテーション活動を積極的に推進していく。また,職業リハビリテーションを含む総合的なリハビリテーションのあり方について研究するとともに,拠点機能を有する総合リハビリテーションセンターの整備を検討していく。
(2) 教育との連携
〔施策展開の方向〕
障害幼児の療育を学校教育につなぎ,卒業後の適切な進路を確保するために,福祉と教育の連携強化を図り,一貫した体制づくりに努める。
ア 心身障害児教育センター(仮称)の整備
心身障害児に対する教育全般に関して,子供と学校をつなぐ中心的指導施設としての役割を担い,就学前から学校教育終了までの間,一人ひとりの子供の障害の状態に応じた教育のあり方に関して保護者の理解を深め,子供たちの能力を高めるための学校教育活動を指導・援助する教育機関として心身障害児教育センター(仮称)を設置する。
(3) 雇用と就労・社会参加
〔施策展開の方向〕
障害者が自らの意志と責任により主体的に行動し,生きがいをもって自立した生活ができるよう,雇用の場の確保と就労の機会の拡大に努める。
ア 雇用
- (ア) 障害者雇用の促進
県及び関係機関と連携をとり,障害者の雇用促進事業の充実を図るとともに,雇用促進と安定に関する啓発を積極的に行っていく。 - (イ) 重度障害者多数雇用企業の設立
障害者の就労の機会を増やすため,第三セクター方式による重度障害者多数雇用企業等の設立について積極的に推進する。 - (ウ) 清掃委託事業の充実
公共施設の清掃を中心に委託事業を実施しているが,今後も適切な施設について清掃事業を委託していく。
イ 福祉的就労の場の整備
- (ア) 通所授産施設の整備
身体障害者通所授産施設,精神薄弱者通所授産施設の整備を行い,福祉的就労の場を拡大する。
また,精神薄弱者通所授産施設については,通所更生施設との役割分担を明確にし,障害者個々の適性・能力に応じた処遇の見直しを行う。 - (イ) 福祉訓練の充実
一般就労への結びつきを強めるため,福祉訓練実施箇所の拡充や訓練内容の多様化を図るとともに,指導体制や関連施設の充実に努める。
ウ 就労困難な人の社会参加の場の整備
- (ア) デイサービスの充実
外出や就労が困難な在宅の重度障害者の自立を図り,生きがいを高めるため,障害者フレンドホームを各区に整備するとともに,入浴,給食等サービス内容についても充実を図っていく。 - (イ) 福祉作業所の助成拡充
重度の障害者の地域における社会参加の場を確保するため,福祉作業所への助成の充実を図るとともに,認可施設への移行について指導していく。 - (ウ) 精神薄弱者通所更生施設の整備
通所授産施設での受け入れが困難な重度の精神薄弱者の生活訓練施設として,精神薄弱者通所更生施設を整備する。
(4) 生活の援護
〔施策展開の方向〕
要援護障害者が,安心して日常生活を営むことができるよう,ホームヘルプサービス事業をはじめ,各種の在宅福祉サービスを充実するとともに,在宅生活支援の役割を持つ施設の充実を図っていく。
ア 在宅福祉
- (ア) ホームヘルプサービスの充実
障害者のホームヘルプサービスについては,増大・多様化する福祉ニーズに的確に対応するため,高齢者と同様に,サービス供給体制の充実を図るとともにサービス時間帯等の拡大を図っていく。 - (イ) ガイドヘルパー派遣の充実
視覚障害者等の外出を支援するため,ガイドヘルパーの派遣を推進するとともに,全国的なガイドヘルパーネットワークに参画する。 - (ウ) 緊急一時保護(ショートステイ)の充実
一時的に家庭介護が困難となった障害者を,短期間入所施設に受け入れるショートステイ事業を充実する。このため,新設の入所施設については,すべてショートステイ専用床を整備するとともに,既存施設の空きベッドの活用を図る。
また,送迎サービスの実施について研究する。 - (エ) 入浴サービスの充実
家庭での入浴が困難な重度身体障害者に対し,移動入浴車による入浴を提供する。今後,需要動向をみながら入浴の回数増を図る。 - (オ) 配食サービスの支援
障害者世帯で食事を作ることが困難な世帯に,地域福祉団体が実施する配食サービスの振興を図るため,地域福祉活動振興基金の活用による支援を行い,安否の確認や地域の活性化,連帯意識の高揚を図る。 - (カ) 緊急通報システムの普及
重度の障害者が,家庭内で急病等の緊急事態が生じた場合の連絡手段を確保するため,緊急通報装置の普及を図る。 - (キ) 精神薄弱者更生相談所の設置
精神薄弱者に対する相談や指導援助の充実を図るため,精神薄弱者更生相談所を設置する。 - (ク) 住宅改造費の助成
障害者の在宅生活を支援するため,住宅改造についての助成充実するとともに,住宅改造等の相談に応じる専門の相談員(リフォームヘルパー)を配置する。
イ 施設福祉
- (ア) 身体障害者療護施設の整備
重度身体障害者の介護と生活の場として,身体障害者療護施設を整備する。
また,整備にあたっては,ショートステイ等の在宅福祉機能の併設や地域交流スペースの設置に努める。 - (イ) 精神薄弱者入所更生施設の整備
精神薄弱者の介護者の高齢化や「親なき後」の対応策として精神薄弱者入所更生施設を整備する。
また,整備にあたっては,ショートステイ等の在宅福祉機能の併設や地域交流スペースの設置に努める。 - (ウ) グループホームの整備
就労している障害者が,日常生活上の指導や援助を受けながら共同生活をする施設として,グループホームの整備に努める。
バックアップ施設との連携や運営上の課題については,今後研究していく。
(5) 暮らしやすいまちづくり
〔施策展開の方向〕
「『福岡型福祉社会』のための環境づくり指針」に基づき,障害者をはじめ,すべての市民が公共的建築物,公共交通機関,道路,公園などを安心して利用できるまちづくりを進める。
ア 障害者にやさしいまちづくりの推進
障害者をはじめ,すべての市民が快適で暮らしやすいまちづくりを推進するため「『福岡型福祉社会』のための環境づくり指針」に基づき,公共(的)施設の整備を図っていくとともに,指針の普及・啓発に努める。
また,ゴールドプランに対応して,国が財政的支援を行う「地域福祉推進特別対策事業」を積極的に活用し,地下鉄既存駅舎エレベーター設置や道路改良等を行い,都市環境の整備を推進していく。
イ 住環境の整備
障害者が容易に在宅生活が営めるような住宅のあり方について研究する。また,市営住宅については,需要動向等の把握に努め,障害者向け住宅の供給を行うとともに,住棟入口のスロープや階段の手すりの設置など,障害者に配慮した施設整備を推進する。
ウ 広報啓発の推進
市民の理解と協力を得て,福祉増進を図るため,12月9日の「障害者の日」を中心として,あらゆる機会をとらえ,様々な広報手段によって,啓発活動を推進していく。
(6)文化,スポーツ,レクリエーション活動
〔施策展開の方向〕
生活の質の向上,健康の維持・増進や,さらには,社会参加の一層の増進を図るため,障害者の文化,スポーツ,レクリエーション活動の振興を図る。
地域における文化等の活動の場として,「障害者フレンドホーム」や「障害者スポーツセンター」を設置するとともに「障害者スポーツ・レクリエーション振興会」を中心として,障害者の文化,スポーツ,レクリエーション活動の振興を図り,専門指導員の養成,障害者スポーツ・レクリエーション振興会の組織強化,市独自の障害者スポーツ大会の開催等に努めていく。
さらに,新たに「国連・障害者の十年」最終年記念事業として開催した「全国障害者ボウリング大会」を毎年開催していく。
また,視聴覚障害者の情報提供施設を市民福祉プラザ(仮称)内に設置する。
5 計画目標
重点施策 | 平成3年度末 | 平成13年度目標量 |
---|---|---|
障害児療育センター(仮称) | - | 2か所 120人 |
身体障害者通所授産施設 | 1か所 30人 | 2か所 60人 |
精神薄弱者通所授産施設 | 5か所 234人 | 7か所 304人 |
障害者フレンドホーム | 3か所 | 7か所 |
精神薄弱者通所更生施設 | - | 5か所 250人 |
身体障害者療護施設 | 1か所 50人 | 2か所 100人 |
精神薄弱者入所更生施設 | 4か所 220人 | 6か所 300人 |
※障害児療育センター(仮称)は,肢体不自由児通園施設と精神薄弱児通園施設の統合型で検討中
※障害者フレンドホームは,身体障害者福祉センターB型及びデイサービス機能を併せ持つ施設
III 児童・母子等福祉の推進
1 児童・母子等福祉の理念
児童は,人として尊ばれ,社会の一員として重んぜられるとともに,良い環境の中で育てられなければならない。また,次代の社会の担い手として,すべての児童が心身ともに健やかに生まれ,育成され,等しくその生活を保障され,愛護されることが求められる。
さらに,母子家庭等についても,その置かれている環境にかかわらず,児童が健やかに育成され,母子等ともに健康で文化的な生活が営めるよう努めるものとする。
2 施策推進の考え方
現在,児童を取り巻く環境は,本市の都市化・核家族化や女性の社会進出等に伴い,大きく変化してきており,家庭や地域での養育機能の低下,あるいは,少子化等種々の問題が生じてきている。
これらの変化に対応し,「児童が心身ともに健やかに生まれ,育つための環境づくり」として,家庭支援や児童の健全育成等について,幅広く取り組んでいくことが必要であ
る。今後とも児童の福祉増進を図るため,要保護児童の保護や,家庭・地域の養育機能の支援等について積極的に取り組んでいく。併せて,保育所等児童福祉施設のもつハード面・ソフト面の機能について,地域への開放を推進していく。
また,母子家庭等が安定した家庭生活を営み,児童の健やかな養育環境が確保されるよう支援していく。
3 施策体系と主な施策
児童・母子等福祉
- 児童の健全育成
- 児童の活動の場の充実
- 要援護児童
- 相談体制
- 児童相談所建て替え・機能の強化
- 家庭児童相談室の充実
- 情緒障害児対策の調査・研究
- 施設福祉
- 養護施設の改築等
- 相談体制
- 要保育児童
- 保育所の整備(新・増改築等)
- 保育内容の充実
- 要援護の母子・父子家庭
- 母子相談・家庭相談の充実
- 母子家庭等介護人派遣の充実
- 就労促進
- 経済的支援
- 母子寮の改築等
4 施策展開の方向
(1) 児童の健全育成
〔施策展開の方向〕
児童が健全な遊びの中で,健康を増進し,情操を豊かにするとともに協調性や社会性等を培うなど,社会への適応能力を身につけていけるよう,児童の活動の場の充実を図る。また,「こども21世紀夢プラン」の構想化にもあわせて,事業内容の充実を検討していく。
ア 児童の活動の場の充実
中央児童会館における各種の事業を充実させ,利用の促進を図るとともに,市民センター,公民館等関連施設との連携の基に,効率的活用を進め,児童の健全育成を図る。
また,各区に整備を予定している区福祉センター(仮称)に,児童が自由に遊べるスペースを設置し,その中で自然に児童と高齢者・障害者等との交流が図られ,その体験を通じ福祉の心がはぐくまれるような場づくり(交流機能)を検討する。
イ こども21世紀夢プラン構想
次代を担う子供たちを健やかに育てていくため,今後本市が展開していく基本的な施策について「こども21世紀夢プラン」構想を策定中であり,この構想化にあわせ,さらに事業内容の充実を検討していく。
ウ 他機関との有機的連携の強化
児童相談所,各区福祉事務所,青少年相談センター,さらには,教育関連部門等で行われている児童の健全育成対策等について,総合的・有機的に連携を強化し,相談体制の充実,家庭支援,児童が生き生きと育つための環境整備等を積極的に推進する。
(2) 要援護児童
〔施策展開の方向〕
地域社会における児童に対する教育機能や家庭の養育機能の低下等から,要援護児童や家庭内暴力,不登校,非行など問題行動を持つ児童が増加してきており,これらの児童を適切に処遇するために,相談体制の充実や施設処遇の充実を図る。
ア 相談体制の充実
児童相談所が,多様化・複雑化している児童問題について,その中核機関として適切に対応していくために,機能,組織の充実を図るとともに,老朽・狭隘化している庁舎の建て替えを行う。
また,家庭児童相談室をはじめ,各種相談機能・機関相互の連携をより一層密にし,相談体制の充実を図っていく。
さらに、増加している不登校児や情緒障害児への対策について,調査・研究を進める。
イ 養護施設の改築等
市内にある3か所の養護施設は,いずれも東区に位置している。老朽化が進んでいる施設については改築等を進める。
また,入所児童の自立育成を図るため,高年齢児のプライバシーへの配慮等の環境改善や後保護指導の充実に努めるとともに,児童が自立した生活を営むことができるよう訓練するため,ファミリーホームなどの新しい小規模の生活システムを研究していく。
さらに,乳児院や教護院,助産施設での保護や指導等を引き続き実施していくとともに,里親制度の積極的な活用を図っていく。
(3) 要保育児童
〔施策展開の方向〕
全市あるいは地域的な要保育児童の動向をみながら,保育所の新設,定員の増減等の整備を検討するとともに,多様化する保育ニーズに対応するため,保育内容の充実を図る。
ア 保育所の整備
要保育児童数の全市的,地域的な保育需要の推移をみながら,保育所の新設や増設等適正な配置,定員の確保を図っていく。
また,良好な保育環境を確保するため,老朽化の著しい園舎の大規模修繕等を計画的に進めていく。
イ 保育内容の充実
女性就労の増大や就労形態の多様化,育児休業制度の普及等による保育需要に対応するため,長時間保育※1や一時的保育※2,延長保育※3,障害児保育等の特別保育事業の内容充実や実施箇所数の拡大に努める。
さらに,保育所に蓄積された育児についてのノウハウを活用し,相談指導,育児支援等の子育て家庭を積極的に支援する地域のセンター的機能を育成していくなど,健やかに子供を産み育てる環境づくりを推進する。
(4)要援護の母子・父子家庭
〔施策展開の方向〕
相談体制の充実や介護制度の拡充,資金の貸付,母子寮の環境改善等により,社会的・経済的に不安定で様々な問題を抱えている母子・父子家庭の経済的自立と生活の安定を図る
ア 母子相談・家庭相談の充実
福祉事務所の母子相談員・家庭相談員をはじめ,各種相談機関の連携を更に強化し,相談内容の充実に努める。
イ 母子家庭等介護人派遣の充実
母子家庭等介護人派遣事業の利用促進を図るとともに,保護者が病気等で一時的に家庭で世話ができなくなった時に養護施設等で児童を預かる家庭養育支援事業などについて,需要動向等を勘案しながら実施していく。
ウ 就労促進
母子福祉センターで実施している就労促進のための各種技能習得講座の内容を,今後とも,時代に即応し充実していくとともに,職業安定所等との連携を更に密にして就労の促進に努める。
エ 経済的支援
現在実施している母子・寡婦福祉貸付資金の貸付等について,今後ともPRに努め,効果的な利用の促進を図る。
また,資金の効果的活用を図るため,母子・寡婦福祉資金制度の統合について検討する。
オ 母子寮の改築等
母子寮については,関係機関との連携を更に密にし,母子家庭の自立の促進に努める。
また,居住環境の改善とともに,世帯数の増を図るため,百道母子寮を改築する。
5 計画目標
重点施策 | 平成3年度末 | 平成13年度目標量 | |
---|---|---|---|
児童相談所の建て替え・機能強化 | 1か所設置 | 建て替え及び機能強化 | |
保育所の整備 | 19,340人(定員) | 20,200人(定員) | |
保育内容の充実 | (※1)長時間保育 | (平成4年度から2か所) | 7か所 |
(※2)一時間保育 | (平成4年度から2か所) | 14か所 | |
(※3)延長保育 | 22か所 | 50か所 |
(※1)長時間保育
保護者の残業等により,長時間の保育を必要とする児童に対し,午後10時まで保育時間の延長を行う。
(※2)一時的保育
保護者のパート就労や病気,冠婚葬祭などにより,一時的または緊急に家庭における保育が困難となる児童を対象に行う。
(※3)延長保育
保護者の就労形態の多様化,通勤時間の延長などに伴う保育時間延長の需要に対応するため,午後7時まで保育時間の延長行う。
IV 地域福祉の推進
1 地域福祉の理念
豊かな,活力ある福祉社会を創造していくためには,物質的な豊かさだけでなく,心の豊かさをはぐくみ,調和させていく必要がある。このため,行政が直接行う福祉施策を推進していくだけでなく,市民一人ひとりが,「福祉の心」を育て,福祉を身近な問題としてとらえ,地域社会を構成する市民の一人として,互いに人権を尊重しあいながら,社会に貢献し,自然に助け合うという「福祉のまちづくり」を目指し,市民と福祉団体,企業,行政が一体となって,福祉的風土の形成に努める。
2 施策推進の考え方
高齢者や障害者,児童・母子等をはじめ,すべての市民が,住み慣れた地域で,健やかで,安心して生活ができるようにするため,地域の人々の理解と自主的な参加と協力のもとに,地域社会における住民の連帯感の高揚と明るく活力ある社会の創造を図り,「福祉のまちづくり」を進めていく。
このため,市民の福祉への理解を求め,広報・啓発活動に努めるとともに,行政と民間の役割の明確化を図る。また,社会福祉協議会,市民福祉サービス公社をはじめとする民間の社会福祉活動を支援し,市民の参加による福岡型福祉を推進する。
さらに,民間福祉活動の財政的支援を行うため,「地域福祉活動振興基金」の活用を図るとともに,活動拠点として,全市的には「市民福祉プラザ(仮称)」,各区には「区福祉センター(仮称)」をそれぞれ整備する。
3 施策体系と主な施策
地域福祉
- 地域福祉活動推進団体の育成
- 市社会福祉協議会の充実
- 区社会福祉協議会の充実
- 校区社会福祉協議会の活性化
- 民生委員・児童委員の活動支援
- 地域福祉活動推進者の育成
- その他の地域福祉活動推進団体の支援
- 地域福祉のネットワーク化
- 地域福祉活動の財政的支援
- ボランティア活動振興基金の活用
- 地域福祉活動振興基金の積立・活用
- 地域福祉活動推進拠点の整備
- 市民福祉プラザ(仮称)の整備
- 区福祉センター(仮称)の整備
- 校区における拠点づくり
- 福祉教育・啓発の推進
- 福祉教育読本の活用
- 学校における福祉教育の推進
- 地域・企業における福祉啓発の推進
- 地域交流スペースの確保
- 福祉ふれあいの森(仮称)の整備推進
4 施策展開の方向
(1)地域福祉活動推進団体等の育成
〔施策展開の方向〕
行政が行う福祉サービスの充実を図るだけでなく,校区社会福祉協議会の活性化やそれを支援する区社会福祉協議会の充実など,民間福祉活動を支援していく。また,地域福祉関係人の連携を図り,そのネットワーク化を進める。
ア 市社会福祉協議会の充実
地域福祉の推進に必要な調査・研究と全市的な地域福祉の企画・調整を行う機関として,支援・育成に努める。
また,社会福祉協議会が策定している「地域福祉計画」の実施について協力していく。
イ 区社会福祉協議会の充実
区において地域の実情にあった地域福祉を進め,校区社会福祉協議会の育成・支援をより効果的に行うため,区社会福祉協議会の法人化を促進する。また,組織の充実と資金確保について支援・協力を行う。
さらに,その活動拠点として区福祉センター(仮称)を整備する。
ウ 校区社会福祉協議会の活性化
地域の特性をいかした福祉を進めるため、全小学校区に校区社会福祉協議会を設置し,その活性化を支援する。
また,その活動拠点として公民館の活用を積極的に進める。
エ 民生委員・児童委員の活動支援
地域における福祉推進の中心となる民生委員・児童委員の活動を支援するため,複雑化する福祉施策についての研修等を充実する。
オ 地域福祉活動推進者の育成
地域におけるボランティア活動を活性化するため,地域で活動している人や地域活動に関心のある人を,地域福祉の推進者として育成を図る。
カ その他の地域福祉活動推進団体の支援
ひとり暮らしの高齢者宅等を訪問し,交流を図る友愛訪問を実施している老人クラブ,地域の身体障害者や精神薄弱者の相談に応じている身体障害者相談員,精神薄弱者相談員などの活動を支援する。
キ 地域福祉のネットワーク化
地域福祉活動に従事している人々をネットワーク化し,校区社会福祉協議会等への参加を促進する。
(2)地域福祉活動の財政的支援
〔施策展開の方向〕
公的施策の充実を図るとともに,地域における自主的な活動を助成するため,「地域福祉活動振興基金」の運用利子を活用し,地域の特性に応じた各種の地域福祉活動に対し助成を行い,その育成を図る。
ア ボランティア活動振興基金の活用
ボランティア活動を振興するため,ボランティアグループの活動費の助成などに活用している「ボランティア活動振興基金」のより効果的な運用を研究していく。
イ 地域福祉活動振興基金の積立・活用
地域福祉活動の振興を図るため,配食サービスやデイサービスなど民間福祉活動団体が実施する先駆的・開拓的な在宅福祉サービスや地域福祉サービスに対し助成を行う。このため,当面,平成6年度までに「地域福祉活動振興基金」を50億円積み立てる。
(3)地域福祉活動推進拠点の整備
〔施策展開の方向〕
地域福祉活動を推進するために必要な活動拠点となる施設を,全市・校区のレベルでの整備を進める。
ア 市民福祉プラザ(仮称)の整備
地域福祉推進の中核的役割を果たす施設として,民間福祉活動の拠点,情報提供・相談,研修,交流等の機能を持った,市民福祉の総合センターである「市民福祉プラザ(仮称)」の整備を進める。
イ 区福祉センター(仮称)の整備
区における地域福祉,在宅福祉を積極的に推進していくため,区社会福祉協議会や市民福祉サービス公社区支部を中心とする区の民間団体の活動拠点や介護相談,身近なボランティアの養成・情報提供,区民の交流・研修の場などの機能をもった「区福祉センター(仮称)」の整備を進める。また,高齢者デイサービスセンターや児童が自由に遊べるスペースの併設を検討する。
ウ 校区における拠点づくり
地域福祉を進める実践団体である校区社会福祉協議会の活動拠点として,公民館を積供的に活用する。
(4)福祉教育・啓発の推進
〔施策展開の方向〕
市民の福祉意識を高揚するため,学校等における福祉教育の充実を図るとともに,地域や企業における福祉啓発について推進していく。
ア 福祉教育読本の活用
社会福祉協議会において,市内の小学5年生に配布している福祉教育読本「ともに生きる」のより一層の活用を研究する。
イ 学校における福祉教育の推進
思いやりのある人格を形成するため,また,高齢化社会についての認識を深めるため,ボランティア活動協力校の指定や学校教育の中で,体験を通した福祉学習など福祉問題の取り組みについて研究を進める。
ウ 地域・企業における福祉啓発の推進
ボランティア活動など福祉活動への参加について,市民の理解を深めるため,広報や研修・相談体制を充実するとともに,福祉情報提供の方法等について検討するなど,地域・企業に対する福祉啓発に努める。
エ 地域交流スペースの確保
地域の福祉活動の振興や市民の福祉への理解を進めるため,身近な福祉施設などに,施設の地域への開放及び地域交流スペースの確保に努める。
オ 福祉ふれあいの森(仮称)の整備推進
市民が,豊かな自然の中で,宿泊や研修,レクリエーション等を通じ,高齢者,障害者,児童等と交流することにより,心身のリフレッシュを図るとともに,福祉の心を育てるための総合福祉ゾーンとして「福祉ふれあいの森(仮称)」の整備を推進していく。
5 計画目標
重点施策 | 平成3年度末 | 平成13年度目標量 |
---|---|---|
市民福祉プラザの整備 | - | 1か所 |
区福祉センターの整備 | - | 7か所 (ただし,一部未開設) |
第5章
計画推進の方策
- 施設整備促進の方策
- 福祉マンパワーの確保・育成の方策
- 計画推進体制の強化
第5章 計画推進の方策
本計画の総合的,計画的な推進に当たっては,その目標達成に向け,福祉施設の整備促進のための民間社会福祉法人への助成強化をはじめ,福祉施設やホームヘルプサービスに従事する人々の養成や確保,さらには民間福祉団体の育成・強化を図っていかなければならない。また,行政組織についても,推進体制の充実を図っていく必要がある。
I 施設整備促進の方策
福祉施設は,国・県・市そして民間社会福祉法人(以下,「民間法人」と略す。)により設置・経営されているが,援護を必要とする人々の福祉の向上に大きな役割を果たしてきた。
本市では,高齢者や障害者,児童施設等の入所施設については,24時間のケア,弾力的な運営などを必要とすることから,民間法人を中心に整備を進めてきた。
また,通所・利用施設など一定の適正配置を必要とする施設については,市立施設を中心に整備を進めてきた。保育所については,急激な児童数の増加に対応するため,原則として民間法人による整備を進めてきた。
特に,入所施設については,在宅生活が困難になった人の生活の場として,需要に応じて,一定量の施設整備が必要である。
また,在宅生活を支える機能としても福祉施設の役割は極めて大きく,在宅福祉サービスを推進していく上でも適正配置が必要となっている。
したがって,ニーズが急増している特別養護老人ホームなど整備を急ぐ施設については,次のような援助策を実施する。
(1) 市有地の貸与
施設整備を進める上で最大の障害は,近年の地価高騰等により,用地の確保が困難なことである。
特に,広い用地を必要とする入所施設などは,市街地から離れた場所が選定される傾向にあるが,施設入所後においても近親者や知人との交流を保つとともに,在宅の高齢者や障害者などにサービスを提供するという,在宅福祉の一翼を担う重要な役割が求められており,市内全域において,需要をみながら適正配置を進めていく必要がある。
このため,「特別養護老人ホーム」及び「障害者(児)の施設」の整備計画については,適正配置上必要な場合,市街化区域内にある市有地を民間法人に貸与し,施設整備の促進を図る。
また,市有地の貸与を受けた民間法人が整備する「特別養護老人ホーム」には,今後ニーズが高まることが予測される居住性の高い施設であるケアハウスを併設することを基本とする。
(2) 施設建設費補助の強化
本市では,民間法人に対し国の補助基準に上乗せして補助を行っているが,建物については面積,建設単価ともに補助基準と実行分にかなりの差があり,民間法人の大きな負担となっている。
このため,本市が実施している補助の強化を検討する。
また,社会福祉・医療事業団の借入金の償還利子についても全額補給を行う。
(3) 施設の複合化
福祉施設の整備に当たっては,特別養護老人ホームとデイサービスセンターの場合を除き,単体施設を基本として整備を進めてきた。
しかしながら,昨今の用地確保の困難性等から,市街地における福祉施設の整備促進を図ることを目的として,他の福祉施設をはじめ,市営住宅や保健・医療関係施設,教育関係施設などとの合築・複合化について積極的に検討していく。
II 福祉マンパワーの確保・育成の方策
福祉総合計画を推進していくためには,それを支える「組織」と「人」が極めて重要であり,多様化,増大化する福祉ニーズに対応ができるよう,組織の強化や連携などを図るとともに,福祉人材の確保とその資質の向上を図っていかなければならない。
このため,福祉人材の養成や体系づけられた研修あるいは処遇の改善や社会的地位の向上などを進めていく必要がある。
(1) 体系的研修の実施
「市民福祉プラザ(仮称)」,「区福祉センター(仮称)」などで,福祉サービスに従事する人から福祉の基盤を支える市民一般に至るまでの幅広い研修を体系的に実施する。
(2) 福祉人材養成機関の誘致
福祉サービス従事者の量の確保とその質の向上を図るため,既存の大学等に対し福祉に関する学科や講座の開設や拡充を要請するとともに,福祉人材養成機関の誘致を研究する。
(3) 福祉サービス従事者の処遇改善と確保
急速な人口の高齢化等に伴う福祉ニーズの増大に対応するため,施設の直接処遇職員やホームヘルプサービスをはじめとする,福祉サービス従事者の量・質的な確保を図る必要があり,処遇改善や社会的評価の向上に努める。
III 計画推進体制の強化
福祉総合計画に掲げる福祉施策を推進していくためには,民間福祉団体の福祉活動の振興やサービスの供給団体の充実・強化,行政組織の推進体制の強化などが重要であり,それぞれの役割分担とネットワーク化を図ることが必要である。
(1) サービス供給団体の充実・強化
ア 社会福祉協議会
社会福祉協議会は,福祉を総合的に進める中で,民間福祉団体の中核となる組織である。他の団体とともに自主的,先駆的な活動を担っていくことや,他の団体に対する育成・指導的役割,また,地域福祉を進める上でのコーディネーターの役割も期待されている。市・区・校区へとつながる社協組織を基軸に,社会福祉への市民参加を図るための啓発活動,さらに,地域ボランティアの発掘と育成,必要に応じた在宅サービスへのかかわりなどの役割が求められている。
市社会福祉協議会が策定している「地域福祉計画」と連携を図り,今後,ボランティア等の協力による地域に根づいた福祉サービス活動の体系的・計画的な展開を支援していく。
イ 市民福祉サービス公社
市民福祉サービス公社は,在宅福祉サービスを実施する中核組織として,高齢者や障害者の要援護家庭に対し,家事や介護サービスを提供するとともに,相談や介護に関する講習・情報提供などを行っている。
ホームヘルプサービスの一層の充実のため,公社を核にして,サービスに関連する団体や企業等の実効性のあるネットワークづくりを推進していく。
ウ 社会福祉事業団
社会福祉事業団は,本市が設置した社会福祉施設の管理運営を,適切かつ能率的に行うことを目的に昭和48年度,社会福祉法人として設立された。
平成4年3月末現在,22の市立施設を受託し,予算規模24億円,職員約300人を擁する組織になっている。
今後とも,公的な安定性と民間の弾力性を生かして,市内の福祉施設の先駆的・指導的役割を担っていくことが期待されており,組織の充実とともに,施設の運営・療育のあり方などの研究を支援していく。
エ 民間社会福祉法人
本市の社会福祉施設の大半は,民間社会福祉法人により設置・運営されており,福祉の向上に果たす民間社会福祉法人の役割は大きく,年々変化する福祉環境に的確に対応していくため,施設職員等の研修の充実に努める。
また,民間社会福祉施設の健全かつ安定的な運営を図るため,施設運営費補助等の充実に努めていく。
オ 民間福祉活動団体
民生委員・児童委員や老人クラブ,障害者団体あるいはボランティア団体などの民間福祉活動団体が,社会福祉協議会を核として,相互に連携を図り,地域福祉活動等への取組が,より活性化するよう情報提供や交流の場の提供など活動しやすい環境づくりを進めていく。
(2) 行政組織の充実
本計画の諸施策を効果的・計画的に実施していくために,効率的な運営を図りながら,行政の推進体制の充実を図っていく。
資料
福祉総合計画の策定経過
1 計画の策定経過
年月日 | 内容 |
---|---|
平成3年8月26日 | 第1回策定委員会 「本市の福祉の現状と課題について」 |
平成3年9月6日 | 第2回策定委員会 「高齢者福祉について」 |
平成3年10月7日 | 第3回策定委員会 「障害者福祉について」 |
平成3年11月1日 | 第4回策定委員会 「児童・母子福祉について」「地域福祉の推進について」 |
平成3年12月5日 | 第5回策定委員会 「施設整備の進め方」「マンパワーの確保・育成」 「費用の負担」「福祉計画推進の基本的考え方」 |
平成4年 2月5日~7日 2月12日~14日 |
他都市調査 愛知・三重県 (特養・給食サービス・ケアハウス・リハビリセンターなど) 石川県(特養・デイサービスセンター・クアハウス・福祉サービス公社など) |
平成4年12月25日 | 第6回策定委員会 「計画(案)の検討」 |
平成5年1月22日 | 第7回策定委員会 「計画(案)の検討」 |
平成5年2月3日 | 福岡市社会福祉・児童福祉審議会に報告 |
平成5年2月8日 | 福岡市社会福祉・児童福祉審議会に報告 |
平成5年2月12日 | 福岡市議会第2委員協議会に報告 |
平成5年3月3日 | 計画決定 |
2 策定委員会委員
所属・補職 | 氏名 | ||
---|---|---|---|
学識経験者 | 福岡県立大学教授 | 植田 美佐恵 | |
福岡県立大学教授 | 鬼崎 信好 | ||
九州大学教授 | 鈴木 廣 | ||
西九州大学教授 | 清山 洋子 | ||
西南学院大学教授 | 淵上 継雄 | ||
福岡市医師会副会長 | 村山 暁 | ||
福岡市市民福祉サービス公社専務理事 | 河野 安雄 | 郷原 正實 | |
福岡市社会福祉協議会常務理事 | 牛原 安彦 | 生田 俊明 | |
福岡市社会福祉事業団事務局長 | 中島 俊夫 | 櫻井 英徳 | |
衛生局 | 管理部長 | 濱田 弘喜 | 藤田 英昭 |
保健部長 | 坂本 雅子 | ||
建築局 | 管理部長 | 向田 正己 | 陶山 修身 |
民生局 | 局長 | 尾花 剛 | |
福祉部長 | 三浦 勝 | ||
高齢者対策部長 | 林田 正統 | ||
社会部長 | 三善 康男 | 尾上 司 | |
庶務課長 | 井上 和夫 | ||
障害福祉課長 | 山浦 時男 | ||
高齢化社会対策課長 | 荒巻 輝勝 | ||
高齢者福祉課長 | 山下 宣義 | ||
児童家庭課長 | 柴藤 定夫 | 赤司 弘毅 | |
保育課長 | 徳重 義則 | 荒木 修 |
※委員氏名を2名記入している場合は,左側が平成3年場,右側が平成4年度の委員
福岡市の4つの都市像
福岡市は、まちづくりの目標として次の4つの都市像を揚げました。強い意志とたゆまぬ努力をもって、この都市像の実現をめざします。
1自律し優しさを共有する市民の都市
一人ひとりが、あたたかないたわりや支えあいの心を共有する都市をめざします。
2自然を生かす快適な生活の都市
恵まれた自然を生かし、すべての市民が安全で快適に生活できる都市をめざします。
3海と歴史を抱いた文化の都市
豊かな海と歴史を生かし、常に、多様な創造性をもち続ける都市をめざします。
4活力あるアジアの拠点都市
美しい、個性豊かな都市を基盤に、活力に満ちたアジアの拠点都市をめざします。
「福岡市基本構想」から
主題:
福岡市福祉総合計画 48頁~91頁
発行者:
福岡市民生局福祉部(福祉総合計画等担当)
発行年月:
1993年02月
文献に関する問い合わせ先:
〒810 福岡市中央区天神1丁目8番1号
TEL(092)733-5344
印刷 大野印刷株式会社