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障がい者制度改革推進会議 第32回(H23.5.23) 資料1 勝又幸子委員参考資料

勝又幸子委員 資料提出1

女性の視点からの緊急時・復興への提言

NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ

2011年3月20日

三段階に分けて考えるべき。

1) 短期的:今すぐに行うこと(救援・避難)

2) 中期的:これからおこなうこと(生活再建)

3) 長期的に行うこと(地域再建)→まだまだ先で読めません。

すぐに行うべきこと(救援・避難)

1.避難所・被災世帯において、安全・安心・快適な空間を確保し、特に女性のプライバシーを守ること。そのために

(ア)性別に配慮して避難所には次の部屋を確保する(授乳室、保育室、男女別更衣室・洗濯物干し場)

(イ)単身の女性などを対象に女性専用の部屋を設ける(見守りの体制があること)

(ウ)トイレは、男女別とし、男女トイレの比率は1:3とする。

(エ)避難所内の警備やトイレを安全な場所に設置するなど、女性や子どもを性被害から守るよう配慮する

(オ)トイレ周辺は24時間照明する

(カ)避難所で調理室や洗濯場などが生活の場として利用できるように配慮する

(キ)避難所における掲示物などに、多言語または絵文字など誰にでもわかる表現方法を使用する

2.乳幼児をかかえた母親に対する子育て支援を行い、児童虐待を防止すること

(ア)在宅・避難所を問わず妊産婦のための食べ物、健康管理の相談を開設する

(イ)妊婦検診や乳幼児健診・育児相談・支援が行われることで母親の不安を軽減させる

(ウ)保育室の開設は、保育者のストレスを減らし、虐待防止になる

3.災害時に「女性に対する暴力(DV・性被害)」が増加することを予測し、以下の対策をとること。市街地だけでなく、避難所、仮設住宅でも性被害は発生する。災害後は家庭内におけるDVの増加や保護命令の申請の増加などが海外の調査では報告されている。

(ア)避難所に男女別の相談窓口(女性のためにはクリニックや助産師によるからだ相談が望ましい)を開設する

(イ)性暴力・DVホットライン(24時間のフリーダイヤル)や面接相談を開設し、支援情報を周知する(女子トイレなどに連絡先を書いたカードを置く、ポスターを張るなど)

(ウ)避難所の運営委員会が、性暴力を毅然と阻止できるように、運営委員会に「災害時における性暴力の阻止」に関する情報提供を行う

(エ)各自治体は医療機関の中に性暴力被害者救援センター(性被害に対応できる医師や看護師が配置する、緊急避妊ピルなどを準備する)を設置、一時保護施設が通常施設以外にも用意される

(オ)避難所における女性や子どもの状況に関する調査をすみやかに実施して、実態を把握し、支援につなげる。性暴力やDVの増加に関しては、未だにその事実を疑う人も多いため、支援がスムースに行われない可能性がある。

(「被災地における性暴力」~防止と対応マニュアル2008年全米性暴力情報センター発行・ウィメンズネット・こうべ監訳をぜひ参考にしてもらいたい)

4.多様性への配慮を行う

(ア)在宅の被災者・障がい者・視聴覚障害者にも情報や物資がもれなく届くよう配慮する

(イ)災害時、その後の被災者救済において、外国籍であるかどうか、在留資格の如何を問わず、被災者として扱う(出身地によって文化が異なるので、被災者のニーズに配慮した支援をおこなう)

(ウ)性的マイノリティの被災者のニーズに配慮した支援をおこなう。

5.支援者に対するジェンダー研修を行う。

(ア)医療従事者(医師、看護師、こころのケア)とその他のボランティアに対してジェンダー研修を行う

6.上記のことが確実に実行されるために、以上のような事柄の知識をもった女性が避難所の運営委員会に加わる。男性だけの避難所運営では、上記のような視点は忘れ去られてしまう。

(ア)避難所の運営委員の中に女性が必ず参加する。

(イ)被災者の中の自治的組織(班など)が形成されるときにも、男女が班のリーダーを担うように促す。

(ウ)地元の女性団体、男女参画センターなどに登録しているNPOが避難所の運営を支援できるように、連携を図る。

7.被災地の県単位または市町村単位の自治体で、女性やマイノリティの視点から活動している団体のネットワーク作りを支援する。効果的に情報を共有して、外部支援を含めた支援活動を円滑にし、長期的な復興に女性やマイノリティの視点を取り入れる仕組みを早いうちから作っておく。

中期的:これから行うこと(生活再建)

1.各被災自治体において、生活再建(住居の確保、就業機会の確保、義捐金や被災者生活再建支援法による支援金の支給など)やより長期的な復興の施策を決定する委員会に女性が参画する。

2.仮設住宅や被災地外の公営住宅などへの入居について女性やマイノリティが不利にならないようにし、そこでの生活を安全なものとする。行政は仮設住宅でのDVや性暴力防止や発生時の相談窓口などの支援体制を施策に入れておくこと。

(ア)仮設住宅の入居審査や割り振りに関する業務担当者に女性を含める。

(イ)入居に際して、高齢者・障がい者と共に、ひとり親家庭(父子世帯・母子世帯)、妊娠中の女性や乳児のいる家庭を優先する。

(ウ)仮設住宅や公営住宅に移動した後は、特に独居者(男女とも)への支援体制を作る。

(エ)避難所と同様、安全・安心・快適な空間が確保されるよう、仮設住宅の運営委員会には、女性が参加する。

(オ)住居を失って住居の確保が困難な被災者に対して、居住の権利を保障すること。

3.被災者支援や支援金の給付は世帯単位とせず、個人を単位とすること

4.心のケアに関しては、長期的に取り組むこと

(ア)心とからだのケアなど被災女性のための相談窓口を開設し、女性の健康問題に取り組む

5.災害時に女性が仕事を失わないための施策や支援を行うこと

(イ)災害時には災害特別休暇(保育・介護のためなど)が男女ともに取得できるようにする

(ウ)災害を理由に不当に解雇された女性に対する労働相談を速やかに開設する

(エ)母子家庭や離職した女性の生活再建のため、経済支援や雇用の創出を早急におこなう

6.災害ボランティアへのジェンダー研修を行う。

(ア)今回の災害は広域で、復興に必要な時間も長くなると思われるため、大量の一般災害ボランティアが被災地を訪れることになると思われる。それらのボランティア・リーダーに対してジェンダー研修を行う。

(イ)ジェンダーや多様性に配慮した災害ボランティア活動に関するパンフレットを作成して、社会福祉協議会やボランティアセンターに周知する。

7.被災地の県単位または市町村単位の自治体で、女性やマイノリティの視点から活動している団体のネットワークを通して、女性やマイノリティの避難所での生活や生活再建状況をモニタリングするシステムを作る。

8.なお、県外への一時避難者に関しても、被災地における支援と同等の支援が必要である。

3の長期的に行うことの骨子は

1.防災・復興に関する対策を国・自治体レベルで見直し、そこに性別・年齢・障がいのあるなしを問わず、人権尊重を基本にし、意思決定に女性を参画させ、女性の視点を取り入れる仕組みを作ること

2.地域の復興計画(まちづくり)の政策策定、地域における意思決定に女性が参加する仕組みを作ること


勝又幸子委員 資料提出2

障害者基本法改正で障害のある女性の人権を高める施策を求めます

2011年5月10日
DPI女性障害者ネットワーク(代表者 南雲君江)
連絡先:千代田区神田錦町3-11-8 5F DPI日本会議気付
電話03-5282-3730 FAX03-5282-0017 dpiwomen@gmail.com

障害者基本法改正案が、4月22日に国会に提出されました。私たちDPI女性障害者ネットワークは、この改正で障害のある女性の人権を高める施策が行われるよう求めてきました。具体的には、基本法の総則に「障害のある女性」の項目を設けること、各則の各分野に、障害女性の権利擁護に必要な施策を講じる国・地方公共団体の責務を書くことです。これが改正案に盛り込まれなかったことは、たいへんに遺憾です。

障害のある女性への施策は必然

障害のある女性は、障害者差別とともに、性差別の困難をかかえています。この困難の解消には、障害者施策、女性施策の両方から取り組みが必要です。2006年12月に国連で採択された障害者権利条約は、障害のある女性の困難を複合的な差別ととらえて、第6条「障害のある女性」を設けました。また、各則の随所で障害のある女性について述べ、条約を批准する国の障害者施策において重点的な課題であることを明確にしました。また、男女共同参画施策においても、2010年に出された「第3次男女共同参画基本計画」の中で障害女性に向けた取り組みが書かれました。

日本政府が条約の批准に向けて行う制度改革、その第一歩である基本法抜本改正に、障害のある女性への施策は明記されてしかるべきでした。

推進会議「第2次意見」から「改正案」へ その後退

2010年1月から内閣府によって開催された「障がい者制度改革推進会議」は、構成員に障害当事者が入り、障害者基本法改正の検討を重ねました。推進会議は2010年末に出した「第2次意見」で、障害のある女性の複合差別に言及し、すべての人権と基本的自由を行使できるよう、総則に「障害のある女性」の項目が必要であること等を盛り込みました。私たちはこれをたいへん歓迎しました。

ところが、内閣府が2月にまとめた改正案は多くの点で「第2次意見」から後退し、障害女性への施策も入れられませんでした。これに対し、「障がい者制度改革推進会議」からも疑問と批判の声が続出しましたが、改正案はそのまま4月22日に閣議決定され、衆議院に提出されたのです。

障害者制度改革、総合福祉法、差別禁止法に求めること

現在、東日本大震災および東京電力福島第1原子力発電所事故のために、政府は多くの課題を抱えていますが、基本法改正については充分な国会審議を尽くしてください。

改正案は、障害のある女性についての項目を作らず、第10条(注1)と第14条に「性別」の文字を入れました。4月18日の「推進会議」で内閣府の法令担当者は、その理由を、現行基本法にその項目がなく、新に独立した項目を設けるに必要な議論が充分でないからと、説明しました。そして、障害のある女性への施策の重要性は、2つの条文に「性別」を明記したことで示したと言います。しかし、既存の項目がなく、議論が充分でないことに現れているのは、長年にわたる女性への施策の無さ、複合差別という観点の無さなのです。そのこと自体が問題であり、政府として反省して積極的に施策を進めることこそが、求められているのです。

同じ内閣府にある男女共同参画局では、2010年に出した「第3次男女共同参画基本計画」の中で、障害女性に向けた取り組みが書かれています(注2)。女性施策において、障害女性に対する配慮の必要が認識されているのです。障害者施策において、その認識が共有され発揮されていないことは大変に残念です。

基本法改正が成立するならば、そのもとで新たに作られる施策は、男女の格差に留意すべきです。そのため、障害にかかわる調査で性別のデータをとり、実態の把握分析をふまえて施策を立案できるようにしてください。

障害のある女性に必要なのは、教育、就業、社会参加、性と生殖など全ての分野で権利の行使ができること、多様な生き方を可能にすることです。基本法第10条と第14条の「性別に応じた施策」が、旧来の性差別にもとづく性別役割分業に囚われることのないよう、施策の策定と実施において、充分な注意が必要です。

基本法改正と並行して作業が行われている「障害者総合福祉法」、「障害者差別禁止法」の今後の検討も、以上をこころして進められるよう求めます。

注1)第10条(施策の基本方針)「障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策は、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない。」(4月22日閣議決定「障害者基本法の一部を改正する法律案新旧対照表」より)

注2)「第8分野 高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備」の「2 障害者が安心して暮らせる環境の整備」〈施策の基本的方向方〉で、「障害のある女性は、障害に加えて、女性であることで更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることに留意する必要がある。」としている。

また、〈具体的施策〉で障害者権利条約に触れ、「『男女の平等』を含む上記条約の原則を十分に踏まえるとともに、男女別の統計情報の充実についても検討する。」とある。子育てをする障害のある女性への理解と支援に対する取り組みを行うことも、書かれている。

(内閣府HP http://www.gender.go.jp/kihon-keikaku/3rd/index.html 「第8分野」より)