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障がい者制度改革推進会議 第34回(H23.8.8) 資料6

障害者総合福祉法(仮称)骨格提言素案

総合福祉部会 第16回(H23.7.26) 資料2

○はじめに

Ⅰ 総合福祉法(仮称)の骨格提言
○1.法の理念、目的、範囲
2.障害(者)の範囲
3.選択と決定(支給決定)
4.相談支援
5.権利擁護
6.支援(サービス)体系
7.利用者負担
8.報酬と人材確保
9.地域生活の資源整備
10.地域移行

○Ⅱ 新法制定までの道程

Ⅲ 関連する他の法律との関係
1.医療
2.障害児
3.労働と雇用
○4.その他

○おわりに

○その他(委員名簿等)

●は、今回(第16回総合福祉部会にて)、提案している項目。
○は、現在、準備中の項目。

Ⅰ-2 障害(者)の範囲 素案

【表題】法の対象規定

【結論】

○障害者の定義を次のように定める。

この法律において障害者とは、身体的または精神的な機能障害(慢性疾患に伴う機能障害を含む)を有する者であって、その機能障害と環境に起因する障壁との間の相互作用により、日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいう。

○障害児の定義を次のように定める。

この法律において障害児とは、前項の障害者のうち十八歳未満である者をいう。

【説明】

(障害者の定義について)

(1)「谷間」を生まない包括的規定について

これまでの国際的、国内的確認をふまえれば、支援を必要としている全ての障害者をもれなく対象とする規定を設ける方向性は、全ての関係者で共有されている。

(2)「身体的または精神的な機能障害」について

障害者権利条約1条の「身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害」や障害者基本法改正案(2011年4月22日閣議決定)の「身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害」という規定があることから、例示列挙的な規定も考えられたが、どの特定障害名を例示列挙の対象として条文に明記し、どれを「その他これに類する機能障害」に含めるか合意を得ることが難しい。また、例示数を多くするとそれ以外が実際的には除外される危険性が高まり、新たな障害が発見・認知される度に法改正作業が必要となるなど、多くの問題がある。そこで、法律上の定義は包括的なものとすることとした。

ただし「障害」又は「機能障害」では逆に抽象的・一般的すぎて漏れが生じるおそれがあり、また「障害者」=「身体障害者」との不十分な理解も一部に見られる。そこで、人の活動実態が身体活動と精神作用であることに着目し、「機能障害」とは、人の身体活動機能または精神作用機能の双方または一方が、その全部または一部において喪失し、または減弱した状態と捉えることとし、これを表す文言として、「身体的または精神的な機能障害」という文言を採用することとしたものである。このように捉えることにより、全ての「機能障害」を谷間なく拾い上げるとともに、今後新たに発見・認知される障害をも含み得る規定になると考えられる。

(3)「慢性疾患に伴う機能障害を含む」について

難病等の慢性疾患に罹患した者は、疾患に対する医療的サービスとともに、生活の支障に対する福祉的サービスの両方が必要となる場合が多い。しかし難病などで症状が変動する場合には「障害」と認定されず生活支援から除外されるのが一般的である。この現状に照らせば、「機能障害」の解釈として、「疾患」によるものを除くとする解釈が採られかねない危険がある。そこでこの文言を注意的に規定した。

(4)「環境に起因する障壁との間の相互作用」について

障害者権利条約の前文(E)項を参考に、「障害」を、障害者が他の者と平等な立場で社会に参加することが制限されていることとして捉え、そうした参加の制限が環境の障壁との相互作用で生じていることを示すものである。なおこれは参加の制限を解決するために障壁除去が重要であることを一般的に示すための説明であって、本法の支援の対象者であるか否かを確認する際に、個々の障害者について具体的に障壁や相互作用を特定する必要はない。

(5)「日常生活または社会生活に制限」について

前述のように、「障害」を障害者が社会に参加することの制限として捉える以上、「生活」とは主要な活動であるか否かを問わず、また「制限」とは多大な支障であるか否かを問わず、広く解される必要がある。本法の支援の対象者とすべきかどうかの主要な基準は、「制限」の有無よりもその「制限」を解決するための支援の必要性の有無にあることを想起すべきである。

(「障害児」の規定について)

障害児(福祉)支援は主に児童福祉法で行うが本法でも障害児への支援を行うことからこのような規定とした。

Ⅰ-3 支給決定(選択と決定)素案

【表題】支給決定のしくみ

【結論】

○支給決定のプロセスは、原則以下のとおりとする。

①総合福祉法上の支援を求める者(法定代理人も含む)は、本人が求める支援に関するサービス利用計画を策定し、市町村に申請を行う。
②市町村は、支援を求める者に「障害」があることを確認する。
③市町村は、本人が策定したサービス利用計画について、市町村の支援ガイドラインに基づき、ニーズアセスメントを行う。
④申請の内容が、支援ガイドラインの水準を超える場合又は、本人が希望する場合、市町村は、本人(支援者を含む)と協議調整を行い、その内容に従って、支給決定をする。
⑤協議調整が困難である場合、もしくは本人が希望した場合、市町村(または圏域)に設置された第三者機関としての合議機関において検討し、市町村は、その結果を受けて支給決定を行う。
⑥市町村の支給決定に不服がある場合、申請をした者は都道府県に不服申し立てできるものとする。

【説明】

現在障害者自立支援方の一次審査で用いられる障害程度区分認定調査項目の106項目は、特に知的障害、精神障害については一次判定から二次判定の変更率が4割から5割以上であり、かつ地域による格差も大きいことから、障害種別を超えた支給決定の客観的指標とするのは問題が大きい。

新たな支給決定にあたっての基本的な考え方については、①支援を必要とする障害のある本人(及び家族)の生活と意向を基本とすること、②その地域での他の者との平等を基礎として、必要な支給量が確保されること、③一定程度の標準化が諮られ、公平性、透明性があること、④申請から決定までわかりやすく、スムーズなものであること、とする。

また新たな支給決定の仕組みの前提としては、障害のある本人の自己決定支援の抜本的な強化が必要である。日常的な支援者、当事者によるピアサポート(エンパワメント事業)の充実、相談支援システムの充実などが具体的に諮られることが重要である。

さらに市町村においては、ニーズアセスメント能力の向上が諮られなければならない。市町村行政職員のOJT(研修体制)の充実が必要である。

支給決定プロセス全体について一定の共通事項をルール化し、公平性・透明性を担保する。(支給決定プロセスの指針・ガイドラインの策定)

【表題】サービス利用計画について

【結論】

○サービス利用計画とは、総合福祉法上のサービスを求める者がその求める支援について策定し、これを市町村に提出するものをいう。

【説明】

サービス利用計画とは、総合福祉法によるサービス等を利用するにあたって、市町村に提出する計画とする。本人のニーズに基づいて、福祉サービス等の利用希望を明らかにする計画となる。サービス利用計画は、本人自身が策定するか(セルフマネジメント)、もしくは本人が相談支援専門員とともに策定することもできる。サービス利用計画の提出は、総合福祉法によるサービスを利用申請する際に必須とする。

【表題】「障害」の確認について

【結論】

○市町村による法律の対象となる障害者であるか否かの確認は、「身体的または精神的な機能障害」があることを示す証明書によって行う。証明書は、障害者手帳、医師の診断書、もしくは意見書、その他、障害特性に関して専門的な知識を有する専門職の意見書を含むものとする。

【説明】

総合福祉法に基づく支援は、障害者手帳の有無にかかわらず、支援を必要とする障害者に対して提供される。機能障害を示す具体的資料としては、障害者手帳があれば、それで足りるが、まず、医師の診断書の利用が考えられる。医師の診断書は、機能障害の存在を示す資料として、公正性が担保される点で優れているが、他方で、発達障害、高次脳機能障害、難病など、医師の診断書が得にくい場合も考えられる。

医師の診断書が得られにくい場合に対処する方策としては、以下の2つがある。

①医師の診断書に限定せず、意見書でもよいものとする。
②「機能障害」の存在を判断する者を医師のみとせず、その他障害特性に関して専門的な知識を有する専門職の意見でもよいとする。

なお、具体的な専門職としては、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、発達心理士、精神保健福祉士、看護師等がある。市町村によって格差が生じないように、ICF(国際生活機能分類)の「心身機能・身体構造」を参考にしつつ機能障害の例示列記するなど、市町村・利用者(障害者)・医師その他の専門職に対して包括規定の内容を明らかにすることも検討すべきである。

【表題】支援ガイドラインについて

【結論】

○【P】国は、障害者の地域生活の権利の実現をはかるため、以下の基本的視点に基づいて、支援ガイドラインを策定するものとする。

○ガイドラインは、「地域で暮らす他の者との平等を基礎として生活することを可能とする支援の水準」を示すものである。

○ガイドラインは、障害の種類と程度で支援の種類と量を決めるのではなく、社会参加を含めた支援の必要に基づいて策定されるものとする。

○ガイドラインは、国が基本的な設定を示し、その設定を最低ラインとして、自治体ごとにガイドラインを策定することとする。

○ガイドラインは、当事者が参画し策定する。公開文書とし、適切な時期で見直す。(市町村のいわゆる「要綱」をガイドラインにしてはならない。)

【説明】

ガイドラインで示す支給水準は、権利条約に規定されている障害者の「他のものとの平等」「地域生活の実現」を基本原則にするべきである。この基本原則に基づき、障害のある人の支援の必要度を類型化し、類型ごとの標準ケアプランに基づく支給水準を示す。類型化については、長時間介護、見守り支援、複数介護、移動支援などの必要性を含めて検討するべきである。

ガイドラインは、障害のある人が住み慣れた地域で生活していくために必要な支援の必要度を明らかにし、その人の生活を支援する支援計画の作成過程において、公費により利用できる福祉サービスを明らかにすることを目的に作られるものである。市町村ガイドラインの策定は不可欠である。当事者(障害者、家族など)と行政、相談支援事業者、サービス提供事業者などの関係者の参画のもと、地域のその時点での地域生活の水準を協議しながら作成される必要があり、この策定により、当事者、行政、事業者の協働が生まれる。

ガイドライン策定にあたり様々な意見があるため、障害者団体等の意見を聴取しつつ、策定されるものとする。

しかし、地域生活をする重度障害の人が少なく、当事者の声が出にくい地域などでは、格差が広がるリスクもある。そのため、当分の間は国がガイドラインの設定指針を示し、自治体ごとにその指針内容を最低ラインとして、独自のガイドラインを策定することとする。また財政面から国基準をそのまま引用する自治体が出る可能性が高いことから、国のガイドライン指針を超えて、市町村が必要に応じた支給決定ができる財源的な保障が必要である。

またガイドラインは、現在の支給決定の際に、自治体で用いられている「要綱」等とは異なる。具体的な地域で暮らす障害者のニーズに基づいて策定されるべきものであり、その策定段階から当事者参画が諮られるべきである。

さらに、国と都道府県は、各地域のガイドラインとそれを超える支給決定の事例にかかわる情報を集約して、国の指針の見直しに反映させるとともに、その情報を自治体やその合議機関等に提供し、各地域におけるガイドライン作成・見直しや支給決定事務の参考に資するように努めなければならない。

【表題】協議調整

【結論】

○①障害者本人が希望する場合、②ガイドラインの水準を超える申請であると市町村が判断した場合に、障害者(及び支援者)と市町村による協議調整により支給決定が行われる。

【説明】

協議調整による支給決定は、障害者本人が希望する場合とガイドラインで示される水準に当てはまらない事例(類型を超える時間数などが申請された場合)について、個別の生活実態に基づいて本人と市町村間で行われる。

本人(支援者)と市町村の協議で調整がつかない場合には、第三者で構成された合議機関での検討の結果を受けて、市町村が支給決定を行う。

【表題】合議機関の設置と機能について

【結論】

○市町村は、協議調整が困難な場合、本人が希望する場合に、第三者機関として、当事者相談員、相談支援専門員、地域の社会資源や障害のある人の状況をよく知る者等を構成員とする合議機関を設置する。

○合議機関は、既定の支援ガイドラインの内容および水準にかかわらず、本人のサービス利用計画に基づき、その支援の必要性を調査するとともに、支援の内容、支給量等について判断するものとする。

○市町村は、合議機関での判断を尊重しなければならない。

【説明】

本人と市町村の協議で調整がつかない場合、もしくは本人が第三者機関での調整を要請した場合については、市町村に設置された合議機関において検討し、その結果を受けて、市町村が支給決定を行うことができることとする。

合議機関では、障害特性や障害福祉サービス等の必要性をより適切に支給決定に反映するため、本人中心支援計画(サービス利用計画案を含む)及び、個別支援計画に具体化されなかったニーズ、概況調査(介護を行う者の状況、障害のある人の生活環境等)、市町村のガイドラインによるアセスメント等を勘案し個別事例についての検討を行う。

さらに、合議機関は市町村(または圏域)に複数設置を基本とする。不服申し立てにおいて、市町村への差し戻し(再調整)請求を位置づけた場合に、その市町村(または圏域)が有する他の合議機関で再調整する方法を検討する必要がある。

【表題】不服申立について

【結論】

○市町村は、支給決定に関する異議申し立ての仕組みを整備し、都道府県は、市町村の支給決定に関する不服審査機関を設置する。

○不服申立は、手続き及び内容判断の是非について審議されるものとし、本人の出席、意見陳述及び反論の機会が与えられるものとする。

【説明】

支給決定は、一連のプロセスと協議調整に基づいた、最終的に行政処分であるが、本人がその決定に不服がある場合には、極めて簡便に不服申し立てができる仕組みが求められる。市町村や都道府県レベルの不服審査機関への手続きのハードルを低くするため、相談支援に不服審査の支援等が出来ることも求められる。

Ⅰ-4 相談支援 素案

【表題】相談支援について

【結論】

○相談支援の対象は、障害者手帳の所持にかかわらず、現に身体障害、知的障害、精神障害その他心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者、およびその可能性がある者とその家族を対象とする。

○相談には「一般相談」と「特定相談」を設ける。「一般相談」では、障害に関するあらゆる相談に対応する。「特定相談」では、本人のニーズに応じた福祉ニーズに結びつけるための相談に対応する。

【説明】

(1)相談支援事業の現状の課題

【市町村格差】

現行の自立支援法では地域生活支援事業(市町村の裁量)に位置付けられていること等により、実施については市町村による格差が大きい現状にある。

【基本的な相談支援体制の不備】

本来の相談支援事業のあり方が、本人および家族の相談の内容に応じて適切な支援を行うということついて十分な理解が定着していないために、問い合わせや情報提供といった「一般相談」をイメージした体制整備にとどまり、具体的な生活を支援するための踏み込んだ訪問相談や同行支援、継続的な支援を行うことが難しい状況にある。

【限定的な支援】

現状の相談支援の限界として、主に次の2点が挙げられる。

①各相談事業が個別制度ごとに位置づけられて実施されているために相談事業ごとの守備範囲によって、その対象や制度に合わせた個別的な対応にとどまり、その結果、限定的な支援となってしまうか、または他の相談機関に「たらいまわし」になりがちである。

②難病(難治性慢性疾患)、高次脳障害、発達障害などの手帳を所持していない谷間の障害について十分に対応できていない。
とくに、これまで手帳を所持することなく谷間におかれてきた障害の特性に応じた専門的な相談支援が必要な場合に、身近な地域での相談支援が整備されていない。

【他職種・他機関との連携調整を含む横断的な相談支援体制の不備】

社会的障壁による障害の多様化を背景に、個別制度の枠を超える横断的な課題をもった相談内容が増加している中で、障害の多様化に応じた複雑なニーズをもつ人の相談支援に十分にこたえきれない現状にある。こうした横断的な相談支援体制の不備の主な要因として、他職種・他機関の連携・調整を行う場合の制度的な枠組みがないこと、そして、これらの相談支援体制にかかわる専門職を含めた人材が大幅に不足していることなどが挙げられる。

(2)新たな相談支援の枠組み

相談支援は、福祉制度を利用する際の相談のみでなく、障害、疾病などの理由があって生活のしづらさ、困難を抱えている人びとに、福祉・医療サービス利用の如何に関わらず幅広く対応する。また当事者の抱える問題全体に対応する包括的支援の継続的なコーディネートを行う。障害のある人のニーズを明確にするとともに、その個別のニーズから、新たな地域での支援体制を築くための地域への働きかけも同時に行う。

①「一般相談」においては、相談の入り口としてその後の展開に責任を持つことが大切であり、ワンストップ相談を心がける。そのためには現在分担されている発達相談、教育相談、就労支援相談、医療相談等が統合された相談体制をつくることが望ましい。したがって、人口規模に見合った体制整備が必要であり、その整備計画については実態調査の結果にもとづき具体的に検討されるべきである。「一般相談」は公共的な立場から積極的にアウトリーチしていくことが求められることから、事業費補助が適当である。

②「特定相談」では、本人の意向、ニーズ中心の支援計画(本人中心支援計画、サービス利用計画)を本人(ないし代理人)とともに立案し、その意向・ニーズを満たすためにフォーマルサービスに限定することなく、インフォーマルサービスの利用調整と具体的な生活支援体制の構築を図る。
なお、「特定相談」は、その利用を希望する当事者と「特定相談」を提供する相談支援事業者との契約にもとづいて行われることとし、実績に応じた出来高払いとするのが適当である。

【表題】相談支援機関の設置と果たすべき機能について

【結論】

○一定の圏域ごとに、地域相談支援センター、総合相談支援センター、特定専門相談支援センターの配置を基本とし、エンパワメント支援事業所を含む多層的な相談支援体制を整備する。

○身近な地域での障害種別や課題別によらないワンストップの相談支援体制の整備充実、一定の地域における総合的な相談支援体制の拡充、広域の障害特性に応じた専門相談支援や他領域の相談支援との連携やサポート体制の整備を行う。

○身近な地域での障害当事者のエンパワメントを目的とするピアサポートや相談支援の充実をする。(エンパワメント支援事業)

○地域相談支援センター、総合相談支援センター(総称して、以下「相談支援事業所」とする)は、障害当事者の側に立って支援することから、給付の決定を行う市町村行政やサービス提供を行う事業所からの独立性が担保される必がある。

【説明】

・地域相談支援センターの規模と役割

もっとも住民の生活に身近な圏域(人口3~5万人に1ヶ所を基準とする)を単位に、都道府県が市町村と協議して一定の条件を満たした事業者に事業を委託して設置する。本人に寄り添った相談支援(アウトリーチを含む)、継続的な相談支援(一般相談)を行う。

具体的には、以下の本人および家族等への対応を想定する。

①支援を受ければ、ある程度の希望の実現やニーズの解決が想定できる人。
②生活の質の維持や社会参加に継続してサービスを利用する必要があり、また希望の表明や制度手続き、サービス調整などに一貫した支援を希望する人。
③社会資源の活用をしておらず、生活が困難な状態にあり社会参加が果たせていない人(手帳をもたない人も含む)。
④部分的にサービス等を利用しているものの、生活の立て直しを必要としている人。
⑤既存のサービス等では解決困難な生活課題を抱えている人。
⑥家族等の身近な関係のなかで問題を主体的に相談できる人がおらず、踏み込んだ支援を必要としている人(虐待を含む)。
⑦その他、相談支援を希望する人。

なお、地域相談支援センターのみの支援では困難な場合は、総合相談センターおよび特定専門相談機関に協力や助言、直接の対応を要請する。

・総合相談支援センターの規模と役割

15万~30万人の圏域を単位に、都道府県が市町村と協議して一定の条件を満たした事業者に事業を委託して設置する。

一般相談のなかで、特に複雑な相談事例について対応する。具体的には地域相談支援センターからの要請に応じて③④⑤⑥の相談者の対応にあたる他、長期に入院・入所をしている人の地域生活への移行の相談、刑務所等から出所してくる人の相談等に対応する。また地域相談支援センターへの巡回を含めた相談支援専門員のスーパービジョン、および人材育成(研修)を行う。

これらの相談支援事業所に所属する相談支援専門員は、「特定相談」として、希望する人を対象に本人中心支援計画・サービス利用計画を策定できる。

・特定専門相談支援センターの規模と役割

都道府県を単位として設置され、障害特性に応じた専門相談を担う。

具体的には、身体・知的障害者総合相談センター、精神保健福祉センター、発達障害者支援センター、視覚障害者支援センター、聴覚障害者支援センター、難病相談支援センター、地域定着支援センターなどを含み、障害種別、特性に応じた専門的な相談を実施する。

地域相談支援センター及び総合相談支援センター等への専門的助言や専門的人材の養成支援を行う。また、本人中心支援計画・サービス利用計画策定にあたっての助言を行う。

・相談支援事業所

市町村、サービス事業所からの独立性を担保するために、都道府県・政令市が指定することを基本とし、地域の実情に合わせて障害保健福祉圏域単位や市町村域の単位で障害当事者や障害福祉関係者、行政関係者が参画する運営委員会の設置などを通じて、必ず運営のチェックが実施されることを担保する。

【表題】本人(及び家族)をエンパワメントするシステムについて

【結論】

○地域におけるエンパワメント支援については、身近な地域での相談支援体制(市町村、広域圏、人口5万~30万人)に最低1ケ所以上、障害のある当事者等によるピアサポート体制(エンパワメント支援事業)を位置づける。

○エンパワメント支援事業の目的は、障害のある人たちのグループ活動、交流の場の提供、障害当事者による自立生活プログラム(ILP)、自立生活体験室、ピアカウンセリングなどを提供することで、地域の障害者のエンパワメントを促進することを目的とする。

○エンパワメント支援事業の実施主体は、当事者やその家族が過半数を占める協議体によって運営される団体とする。

○エンパワメント支援事業は、地域相談支援センターに併設することができる。

【説明】

実際に地域で生活する障害者の自己決定・自己選択を支援し、エンパワメントを支援しているのは、本人のことをよく理解する家族や支援者であるとともに、各地の自立生活センター(CIL)や知的障害の本人活動、各種の難病や精神障害等の仲間によるさまざまな当事者相互支援活動(セルフヘルプグループ)である。

問題は、一定の当事者リーダーとその活動をサポートする仕組みが存在する地域と、存在しない地域の大きな格差である。

制度改革にあたっては、当事者リーダー養成や、真に障害者をエンパワメントできる当事者組織とその活動を公的にサポートする仕組みを創出していくべきである。なお、アメリカにおいては、リハビリテーション法第7章において、自立生活センターのピアカウンセリングと権利擁護活動等が補助金化されており、また2001年度のメディケイドの改正で、精神障害者のピアサポートが予算可能プログラム化されている。

その方法については、各地の取り組みが参考となるが、今後は、当事者活動を先進的に取り組む地域をモデル指定し、その成果を検証しながら、全国的に格差を解消していくことが望まれる。

【表題】相談支援専門員の理念と役割

【結論】

相談支援専門員(仮称)に関する理念と役割を示すことが重要である。

○相談支援専門員(仮称)の基本理念は、すべての人間の尊厳を認め、いかなる状況においても自己決定を尊重し、当事者(本人および家族)との信頼関係を築き、人権と社会正義を実践の根底に置くことである。

○上記の理念に基づき、相談支援専門員は、本人の意向、ニーズを聴き取り、本人中心支援計画を策定する。
具体的には、本人のニーズを満たすために制度に基づく支援に結びつけるだけでなく、制度に基づかない支援を含む福祉に限らない教育、医療、労働、経済保障、住宅制度等々あらゆる資源の動員を図る努力をする。また資源の不足などについて、その解決に向けて活動することも重要である。

【説明】

(1)相談支援専門員の役割

  • 相談支援専門員は、相談する当事者(本人・家族など)の利益のために存在することを一義とする。そのためには福祉サービス等を決定し提供する役割から独立することを原則とする。但し、行政において相談に応じ、支給決定にかかわる職員は相談支援専門員の研修を受けた者であることが望ましい。
  • 相談支援専門員のなかにはソーシャルワークに関する理念・知識・技術をもって業務を遂行する者が必要である。加えてスーパーバイザーとしての役割や、障害者の地域生活支援システムのコーディネーターとしての役割を担う者が必要である。
  • 相談支援専門員は当事者に寄り添い、信頼関係のもと当事者の生活を成立させ、継続でき、夢・希望などを叶えることを含む個々の人生を支援する専門職である。本人によって選択される立場にあることから、相談支援専門員を選択できる体制整備も必要である。

(2)本人中心支援計画について

  • 本人中心支援計画とは、本人の希望に基づいて、相談支援事業所(地域相談支援センター、総合相談支援センター)の相談支援専門員が本人(及び支援者)とともに立案する生活設計の総合的なプランとする。本人の希望を聴き取り、その実現にむけた本人のニーズとその支援のあり方(インフォーマルな支援も含めたもの)の総合的な計画策定となる。
  • 本人中心計画の策定の目的は、本人の思いや希望を明確化していくことであり、それを本人並びに本人とかかわりのある人(支援者を含む)と共有し、実現に向けてコーディネートしていくことである。
  • 本人中心支援計画立案の対象となるのは、セルフマネジメントが難しい支援付き自己決定が必要な人である。
    なお、本人中心の支援計画の作成に参加するのは、本人と本人のことをよく理解する家族や支援者、相談支援専門員である。

(3)相談支援専門員の業務

・相談支援専門員は、具体的には以下のような業務内容を担う。

①利用者の包括的なニーズを把握する。
②依頼を受けた場合には、ニーズ中心の支援計画(本人中心支援計画/サービス利用計画)を本人とともに立案する。
③本人の地域生活のニーズを満たすために、総合的なフォーマル・インフォーマルサービスの利用、支給決定のために行政等関係機関との協議を行い調整する。
④本人とともに必要に応じてサービスを提供する者との本人参加のケア会議を開催運営し、必要に応じて複数のサービスを提供する者等との個別調整はもちろん、調整のための会議などを開き運営する。
⑤サービス資源が不足しているときは必要なサービス(社会資源)の開発につなげる。
⑥相談プロセスを通じて、利用者の権利擁護を行う。
⑦サービスの質の評価を行う、等。

【表題】相談支援専門員の研修

【結論】

○国は研修要綱を定め、都道府県において研修の企画から実施までの実務を担う者に対する指導者研修を行う。

○都道府県が実施する研修には基礎研修、フォローアップ研修、専門研修、更新研修、その他などがある。都道府県は自立支援協議会に人材育成の部会を設け、指導者研修修了者とともに企画し実施するが、研修運営などについて委託することもできる。

○研修の実施にあたっては、当事者が研修企画や講師となって研修を提供する側になること、または研修を受ける側にもなるなど、研修への当事者の参画を支援することが重要である。

【説明】

現在行われている相談支援従事者研修は、一部サービス管理者研修と一体的に行われるなど、相談支援専門員固有の役割、機能を習得する研修としては内容が不十分と言わざるを得ない。新法で求められる内容を整理し、相談支援専門員の研修体制については、研修カリキュラム内容の充実とその体制の確立が諮られる必要がある。

すべての相談支援専門員は実務経験に基づき、一定の年限ごとに実践的な研修を義務づけられる。

将来的には相談支援専門員の質を担保するうえでソーシャルワーク専門職を基礎資格とすることを目指すべきである。そのためには、現行の専門職養成課程では、その内容が不十分であり、今般の障害者制度改革の趣旨に照らし、必要な見直しが諮られるべきである。

当事者(本人および家族)との連携は、本人中心の支援を行うにあたり、重要な課題である。当事者が相談支援専門員となり、地域の相談支援体制全般において、協働することが望ましい。なお、当事者が相談支援専門員になる際には、当事者としての生活経験などを実務経験として勘案するなどを検討すべきである。

Ⅰ-5 権利擁護 素案

【表題】サービスに関する苦情解決のためのサポート

【結論】

○総合福祉法で提供されるサービスに関して苦情を解決するためには、①寄り添い型の相談支援、②サポート機関、の二つが必要である。

○寄り添い型の相談支援とは、苦情という形で問題化する以前の段階での相談であり、障害当事者とその関係者からの話を丁寧に聞きとる事前相談を基本とする支援をいう。相談支援機関には、とくに本人の意向に沿った支援をする役割が求められる。

○サポート機関については、サービスに対する苦情をかかえた本人の側に立って、権利擁護の観点から苦情解決に向けて対応する相談機関も含むサポート機関が必要である。

※苦情解決機関(社会福祉法)については、「Ⅲ関連する他の法律との関係」を参照。

【説明】

地域生活の資源整備や重点的な基盤整備があり、選べるだけの選択肢が地域に存在し、その上で苦情解決や第三者評価の仕組み作りが重要になる。基盤整備(量的な確保)が進まない中での質の確保はあり得ない。また苦情という形で問題化する以前の段階での、障害当事者とその関係者からの話をじっくり聞く、事前相談や寄り添い型の相談支援の仕組みが必要である。

上記を満たした上で、それでも改善されない、あるいは実際に起こってしまった苦情については、実態として権利を保障するための苦情解決に向けた相談機関を含むサポート機関が必要である。この対応機関においては、在宅生活において自身の意向を伝えにくい(エンパワメントされていない)障害者に関しては、第三者が本人の意向をくみ取る支援の仕組みが必要である。

【表題】入院・入所者への権利擁護制度

【結論】

○入院・入所者への権利擁護システムの創設が新たに必要である。

入院・入所者の求めに応じ、ピアサポーター等の第三者が訪問面会を行う事によって、入所者・入院者が自ら選ぶことを支える権利擁護支援が必要とされている。なお、この権利擁護制度は、障害児施設においても必要である。

【説明】

入所施設や精神科病院の入院・入所者に関しての、第三者が本人の意向をくみ取る支援の仕組みが必要である。現行法においては精神医療審査会や第三者委員制度などが、一部その役割を担っているが、本人の立場にたって、その意向をくみ取る支援をする制度ではない。障害者虐待防止法は、起こってしまった虐待事例の事後救済制度であり、事前予防的な制度ではない。これらの限界を超える為に、都道府県ないし政令指定都市単位で、入院・入所者に対して個別に権利擁護の支援を行う、第三者による施設・病院訪問である独立の権利擁護機関やオンブズパーソン制度の創設なども求められる。

このオンブズパーソン制度とは、元々スウェーデンで始まった、行政に対する苦情処理と監察を行う第三者機関制度のことであり、福祉領域でも施設での権利侵害等に対する独自の調査と改善を求める機関として機能している。

我が国の福祉分野においても、障害者・高齢者の入所施設を第三者の市民が訪問し、利用者の声を聞く中で施設処遇の改善を目的とした施設オンブズマンが各地に作られている。また、精神科病院に市民が訪問し、利用者の声をもとに処遇や療養環境の向上を目指す精神医療オンブズマンは、大阪府の制度として位置づけられた(現在の療養環境サポーター活動)。

上記の精神医療オンブズマン等を参考にした、入院・入所者への権利擁護システムの創出は、地域移行のプログラムにとっても重要である。地域移行プログラムは、障害者の意志や決定を確認し、それを実現するためのものであり、入所者・入院者が自ら選ぶことを基本としたものである。従って、入院・入所者の権利擁護システムが同時に整備されるべきである。

地域移行の過程で、本人の意志を無視したり、支援側のプランを押し付けたりしないよう、入院・入所者に対して権利擁護サポーターなどが配置されるのも有効で、そのサポーターをピアが担うこともあり得る。この場合、権利擁護サポーターの独立性が重要となる。

なお、入院・入所者へのオンブズパーソンについては、その対象は成人施設に限った話ではない。障害児は契約当事者が保護者であり、保護者の必要性から入所が判断される場合が多く、必ずしも障害児にとって最善の利益となっていない恐れがある。障害児入院・入所施設の入所にあたり、子ども自身の意見表明をふまえ、子どもの視点から最善の利益を保障できる権利擁護の仕組みが必要であり、障害児入院・入所施設におけるオンブズパーソンも制度化されるべきである。

このオンブズパーソン制度は、本年6月に成立した障害者虐待防止法第35条に規定されている「市町村と関係機関の連携」にも大きく関わる論点である。このオンブズパーソン制度を総合福祉法で創設するだけでなく、障害者虐待防止法の「関係機関」とも位置づけて、同法の三年後の見直し(附則第2条)のの中でも検討し規定する等、障害者虐待防止法との今後の緊密な連携が求められる。

【表題】モニタリング機関

※モニタリング機関については、「Ⅲ関連する他の法律との関係」を参照。

【表題】権利擁護と差別禁止の普及啓発

※権利擁護と差別禁止の普及啓発については、「Ⅲ関連する他の法律との関係」を参照。

Ⅰ-6 支援体系 素案

【表題】支援体系について

【結論】

・障害者の支援体系を以下の通り提案する。

<A.全国共通の仕組みで提供される支援>

1.就労支援
2.日中活動支援
3.居住支援
4.個別生活支援
5.コミュニケーション支援及びガイドコミュニケート支援
6.補装具・日常生活用具
7.相談支援

<B.地域の実情に応じて提供される支援>

8.市町村独自支援

  • 地域活動支援センター
  • 福祉ホーム
  • 居住サポート
  • その他

<C.支援体系を機能させるために必要な事項>

9.医療的ケアの拡充について
10.日中活動の場等における定員の緩和等について
11.日中活動の場への通所保障について
12.グループホームでの生活を支える仕組みについて
13.グループホーム等、暮らしの場の設置促進について
14.一般住宅やグループホームへの家賃補助について
15.他分野との役割分担・財源調整

*現行の施設入所支援については「地域移行」の項を参照。
*自立支援医療については「利用者負担」の項を参照。

【説明】

今後の支援体系について、障害者権利条約をふまえ障害当事者主体(自律・自己決定)のもと、地域生活が可能(施設・病院から地域自立生活への移行を含む)となるような支援体系として構築する必要がある。

また、現行の「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」といった体系は、「介護保険との整合性」を意識した制度構築の結果である。さらには、「介護給付」という名称も、そのニードと支援実態を適切に表しているとは言い難い上に、介護保険の「介護保険給付」との混同も生みかねない。また、障害程度区分は介護給付の利用に対してのみ適用しているが、障害程度区分の廃止に伴い、介護給付と訓練等給付に分ける必要性がなくなる。

「全国共通の仕組みで提供される支援」(A)については国庫負担基準を廃止し、市町村がサービス提供に要した実際の費用に対して国・都道府県が負担することとする。さらに、長時間(一日8時間を超える)介護サービスに関しては、国や都道府県の負担率をあげ、市町村負担を軽減する等の仕組みをもうけ、全国どこでも必要な支援が得られるようにする。

ただ、自立支援法に基づく地域生活支援事業のような市町村の創意工夫、裁量で可能となる支援の仕組みは、メニュー事業を中心に残しておく必要はある。しかし、大きな地域格差が出ている現状から、全ての自治体で一定水準の事業ができるような財政面を含めた新たな仕組みが必要であり、名称も地域生活支援事業ではなく「市町村独自支援」(B)とする。

図 自立支援法のサービス体系・障害者総合福祉法(仮称)における支援体系

自立支援法のサービス体系 障害者総合福祉法(仮称)における支援体系
全国共通の仕組みで提供される支援 地域の実情に応じて提供される支援
介護給付 ホームヘルプ
重度訪問介護
行動援護
重度障害者等包括支援
児童デイサービス
ショートステイ
療養介護
生活介護
施設入所支援
ケアホーム
1、就労支援
(障害者就労センター等の創設、モデル事業の実施検証を経て3年後見通し)
2、日中活動支援
(デイアクティビティセンターの創設、短期入所、日中一時支援等)
3、居住支援
(GH・CHの一本化と機能整理等)
4、個別生活支援
(パーソナルアシスタンスの創設、居宅介護【身体介護、家事援助】、移動介護【移動支援、行動援護、同行援護】)
5、コミュニケーション支援及びガイドコミュニケート支援
6、補装具・日常生活用具
7、相談支援
8、市町村独自支援
  • 地域活動支援センター
  • 福祉ホーム
  • 居住サポート
  • その他
訓練等給付 自立訓練
(機能訓練、生活訓練)
就労移行支援
就労継続支援
(A型、B型)
グループホーム
※現行の施設入所支援については「地域移行」の項を参照。
※自立支援医療については「利用者負担」項を参照。
地域生活支援事業 移動支援
地域活動支援センター
福祉ホーム
日中一時支援

<A.全国共通の仕組みで提供される支援>

1.就労支援について

【表題】就労支援の仕組みの総合福祉法における位置づけ

【結論】

○障害のある人への就労支援の仕組みとして、「障害者就労センター」と「デイアクティビティセンター」(作業活動支援部門)を創設する。

○ただし、社会的雇用等についての試行事業(パイロットスタディ)を実施し、その検証結果を踏まえて、施行後3年をめどに障害者の就労支援の仕組みを見直す。

【説明】

現行の障害者自立支援法などにより制度化されている、就労移行支援事業・就労継続支援A型及びB型事業・生産活動に取組む生活介護事業・地域活動支援センター・小規模作業所などを、新法では「障害者就労センター」と「デイアクティビティセンター(作業活動支援部門)」として再編成する。これらの対象者については、障害者本人のニーズを基本に、本人にとって最も適切なサービスを選択・決定できるよう、必要な支援を行う。なお、現行の就労移行支援事業は、障害者就業・生活支援センターなど、労働施策に統合する。

「障害者就労センター」は障害者が支援を受けながら働く場であり、そこで就労する障害者には、原則として労働法を適用する。官公需や民需の安定確保の仕組みの構築や同センターの経営基盤の強化、ならびに賃金補填の制度化などにより、そこで就労する障害者に最低賃金以上を確保する。また、同センターで就労する障害者のうち、一般就労・自営を希望する者については、ハローワークなど労働関係機関などと密接に協力・連携し、一般就労・自営への移行支援および移行後のフォローアップ支援を積極的に行う。利用期間には、期限を設けない。また、利用料の徴収はしない。

「デイアクティビティセンター(作業活動支援部門)」では、作業活動による収入から必要経費を控除した額に相当する金額を利用者に配分する。作業活動による収入を高めるため、「障害者就労センター」と同様の事業振興策の構築を行うこととし、労働者災害補償保険法にかわる保障制度の確立を検討する。就労を主目的とした場ではないため、労働法の適用はない。利用者の生活費は、基本的には障害基礎年金や障害者手当などの所得保障制度でカバーする。また、同センター(作業活動支援部門)を利用する障害者のうち、一般就労・自営、あるいは、「障害者就労センター」への移行を希望する者については、その移行支援および移行後のフォローアップ支援を積極的に行う。「障害者就労センター」同様、利用期間の期限はなく、利用料も徴収しない。

なお、就労合同作業チーム報告書で提案している「試行事業(パイロット・スタディ)」を実施し、その検証結果などを踏まえ、障害者の就労支援の仕組みを、施行後3年で見直すこととする。見直しにあたっては、障害者雇用促進法あるいはそれにかわる新法(労働法)で規定することも含め、検討する。

図 障害者就労支援の仕組みの推移等

障害者就労支援の仕組みの推移等

障害者自立支援法
  • 就労移行支援事業
  • 就労継続支援A・B型
  • 地域活動支援センター
  • 小規模作業所
総合福祉法(仮称)
  • 障害者就労センター
  • デイアクティビティセンター(作業活動支援部門)
3年後見直し
障害者就労センター
・原則として労働法を適用する
・賃金補填あり
デイアクティビティセンター(作業活動支援部門)
・労働法適用なし
・年金等との調整で所得保障

2.日中活動支援について(①デイアクティビティセンターの創設、②短期入所(ショートステイ)・日中一時支援等)

【表題】①デイアクティビティセンターについて

【結論】

○デイアクティビティセンターを創設する。

○デイアクティビティセンターでの主なサービスは、作業活動支援、文化・創作活動支援、自立支援(生活訓練・機能訓練)、社会参加支援、居場所機能などから構成される。

○医療的ケアを必要とする人等が利用できるような支援体制を整備する等、支援の質を確保するために必要な措置を講じる。

【説明】

自立支援法に基づく生活介護や自立訓練等の機能を果たす場としてデイアクティビティセンターを創設し、よりシンプルな支援体系とする。個別給付の利点を活かして、個々人の必要に応じた支援に対する支給決定に基づく個別支援計画で、多様な要望に応えられるよう、日中活動プログラムを提供する。

デイアクティビティセンターの作業活動支援部門は労働法規が適用されない働く場だが、障害者就労センターや一般就労との行き来を可能とし、障害者の就労を支える仕組みの一環にも位置付けられる。一方、障害者の社会参加のありかたの多様性を認める必要がある。就労せずとも地域の中で自尊心をもって自らの役割を果たしていける環境を確保することが重要であり、文化・創作活動、社会参加や居場所機能などについても、しっかりと日中活動支援に位置付けることが重要である。

また、支援の質を確保するため、プログラムの標準化・職員配置及び建物設備等の基準の設定を行う。なおその際、医療的ケアが必要な人や移動・コミュニケーションへの支援が必要な人の利用を想定した基準を設けることとする。また、自治体はこれらの基準等を踏まえて、同センターを計画的に整備する。

図 障害者総合福祉法(仮称)における就労支援・日中活動支援等の関係

障害者総合福祉法(仮称)における
就労支援・日中活動支援等の関係
 
一般就労・自営 ←→ 障害者就労センター
当面は障害者総合福祉法に位置付けるが、将来は障害者雇用促進法またはそれに代わる新法(労働法)で規定する。
←→ デイアクティビティセンター
  • 福祉法に位置付ける。
  • 作業活動支援、生活訓練、趣味・創作活動等を通じて社会参加活動に取組む。
  • 医療的ケアの提供等支援の質を確保する。
  適切な仕事を安定的に確保する。
*官公需優先発注の制度化。
*官公需における随意契約の促進
*雇用率制度とリンクした見なし雇用制度の導入
*民需の発注促進 など
労働法規適用(全面適用または部分適用、自営を除く)
賃金補填の制度化(当面は障害者就労センターにおいて)
  労働法規適用なし
年金等による所得保障


【表題】②日中一時支援、短期入所(ショートステイ)について

【結論】

○日中一時支援は、全国どこでも使えるようにするため、短期入所(ショートステイ)の日中利用(個別給付)に戻す。

○短期入所(ショートステイ)についても医療的ケアを必要とする人への配慮が必要である。

【説明】

現行の日中一時支援事業は地域生活支援事業の選択事業であり、助成金や報酬が少ないため受託する事業所が少なく、事業を停止する事業者がみられる。事業者がないとの理由で実施していない市町村も多いようである。全国どこでも使えるようにするために、新法の日中一時支援は従来の短期入所(ショートステイ)の日中利用のように個別給付とする。

短期入所(ショートステイ)は、社会的入院・入所を生み出さないための重要な事業である。また、短期入所(ショートステイ)についても医療的ケアを必要とする人に配慮した条件整備をする。

3.居住支援サービスについて

【表題】グループホーム・ケアホームの制度について

【結論】

○グループホームとケアホームをグルーホームに一本化する。グループホームの定員規模は家庭的な環境として4~5人の規模を原則とし、提供する支援は、住まいと基本的な日常生活上の支援とする。

【説明】

地域社会で自立生活をすすめるための共同住居(家)という原点に立った制度構築をする。グループホーム等での支援は、居住空間確保及び基本的な生活支援、家事支援、夜間支援とし、一人ひとりに必要なパーソナルな支援については個別生活支援を利用できるようにする。一人ひとりがよりその人らしさを発揮できる状況を生み出し、住民として暮らしていくことが大切である。一方、グループホーム等は「特定の生活様式を義務づけられない」ためにも、自分で自分の暮らしを選ぶ、選択肢の一つだと考える必要がある。

グルーホーム、ケアホームは実態からしてもグループホームで統一すべきである。また、定員規模は、生活の場なので家庭に近い規模にすべきであり、また、仲間と関係性のなかで視野に入る人数の限界からも、4人から5人とする。

4.個別生活支援について(①パーソナルアシスタンスの創設、②居宅介護【身体介護・家事援助】、③移動介護【移動支援・行動援護・同行援護】)

【表題】①重度訪問介護の発展的継承によるパーソナルアシスタンス制度の創設

【結論】

○パーソナルアシスタンスとは、1)利用者の主導(支援を受けての主導を含む)による、2)個別の関係性の下での、3)包括性と継続性を備えた生活支援である。

○パーソナルアシスタンス制度の創設に向けて、現行の重度訪問介護を充実発展させる。

○対象者は重度の肢体不自由者に限定せず、日常生活全般に常時の支援を要するすべての障害者が利用できるようにする。また、障害児が必要に応じてパーソナルアシスタンス制度を使えるようにする。

○重度訪問介護の利用に関する利用範囲の制限をなくし、支給量の範囲内で通勤・通学・入院時・1日の範囲を越える外出・運転介助にも利用できるようにすべきである。また、金銭管理やサービス利用の支援、見守りも含めた利用者の精神的安定のための配慮等もパーソナルアシスタンスによる支援に加える。

○パーソナルアシスタンスの資格については、従事する者の入り口を幅広く取り、OJTを基本にした研修プログラムとし、実際に障害者の介護に入った実経験時間等を評価するものとする。

【説明】

重度訪問介護を発展させ、パーソナルアシスタンス制度を創設するにあたっては、1)利用者の主導(ヘルパーや事業所ではなく利用者がイニシアティブをもつ支援)、2)個別の関係性(事業所が派遣する不特定の者が行う介護ではなく利用者の信任を得た特定の者が行う支援)、3)包括性と継続性(援助の体系によって分割・断続的に提供される介護ではなく利用者の生活と一体になって継続的に提供される支援)が確保される必要がある。

現行の障害者自立支援法における重度訪問介護の対象者は、「重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者」(第5条2)、に限定されているが、障害の社会モデルを前提とする障害者権利条約及び谷間のない制度をめざす総合福祉法(仮称)の趣旨を踏まえれば、このようなインペアメントの種別と医学モデルに基づく利用制限は見直しが必要である。「身体介護、家事援助、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援及び外出介護などが、比較的長時間にわたり、総合的かつ断続的に提供されるような支援」(2007年2月厚生労働省事務連絡)を難病/高次脳機能障害/盲ろう者等を含む「日常生活全般に常時の支援を要する」(同)すべての障害者に対して利用可能とする。

特に、重度自閉/知的障害者等で行動障害が激しい、中軽度知的/発達/精神障害であって触法行為に通じかねない行為やトラブルが絶えない等の理由で、これまで入所施設や病院からの地域移行が困難とされてきた人たちが、地域生活を継続するためには、常時の見守り支援を欠かすことはできない。また、現行制度においては重度訪問介護の対象となっていない児童についても対象とする。パーソナルアシスタンスは、利用者の主導性の下、個別の関係性の中で、個別性の強い支援に対応できるかをふまえることが求められる。そのため資格取得のための研修は、現在の重度訪問介護研修よりも従事する者の入り口を幅広く取り、OJTを基本にしたものとする必要がある。

【表題】②居宅介護(身体介護・家事援助)の改善

【結論】

○現行の居宅介護を改善した上で、個別生活支援に位置付ける。

【説明】

居宅介護(身体介護・家事援助)においても、各障害特性やニーズから来るキャンセルや待機などへの対応等、柔軟な利用ができ、評価される仕組みにすべきである。

居宅介護は、家族が同居する場合やグループホームで生活する場合、更に障害児にも利用可能とする。

【表題】③移動介護(移動支援、行動援護、同行援護)の個別給付化

【結論】

○視覚障害者・児のみならず、すべての障害者・児の移動介護を個別給付として、国の財政責任を明確にすべきである。

○障害児の通学や通園のために移動介護を利用できるようにする。

【説明】

「歩く」「動く」は「話す」「聞く」「見る」と同様、基本的権利であるため、自治体の裁量で行う支援には馴染まないため、移動介護(移動支援、行動援護、同行援護)は個別給付とし、国1/2・都道府県1/4の補助金清算という仕組みにする等、国・都道府県の財政支援を強化する。また、車を移動の手段として認める。

移動介護の対象は視覚障害児者に限定するのではなく、支援を必要とするすべての障害者が利用できるものとする。

5.コミュニケーション支援及びガイドコミュニケート支援について

【表題】コミュニケーション支援及びガイドコミュニケート支援について

【結論】

○コミュニケーション支援は、支援を必要とする障害者に対し、社会生活の中で行政や事業者が対応すべき必要な基準を設け、その費用は無料とする。

○ガイドコミュニケート支援に関しては、盲ろう者が有する希少性等の特徴から都道府県での実施とし、移動介助を併せて利用できるようにする。

【説明】

コミュニケーション支援とガイドコミュニケート支援は、「話す」「聞く」「見る」「歩く」「動く」という基本的権利の保障であり、自治体の裁量には馴染まないものでありながら、現状では自治体が個別に判断している。そのことによる自治体間格差も深刻な問題である。

これらのサービスは、障害者の地域生活支援に不可欠であり、かつ今までその権利性が十分に認められてこなかった支援類型である。

6.補装具・日常生活用具サービスについて

【表題】補装具・日常生活用具サービスについて

【結論】

○日常生活用具は補装具と同様に、個別給付とする。

【説明】

日常生活用具給付等事業は、自立支援給付である補装具との明確な定義上の違いも不明瞭であり、障害者の地域生活には不可欠である。

7.相談支援について

「相談支援」の項参照

<B.地域の実情に応じて提供される支援>

8.市町村独自支援について

【表題】市町村独自支援について

【結論】

○現在、地域生活支援事業の下で実施されているものは、できるだけ個別給付・負担金とし、自治体の裁量として残す方がよいものは、市町村独自支援として事業を残す。

○現行の地域活動支援センターと福祉ホーム、居住サポート事業は市町村独自支援として継続しつつ、その在り方についての検討を行う。

【説明】

・地域活動支援センターは様々な実態があり、個別給付に馴染む場合や相談やたまり場的な内容のものもある。従って当面は市町村独自支援に位置付けつつ、今後それらの機能を整理し、どのように制度の中で位置付けるか検討が必要である。

・現行の福祉ホームについては当面は市町村独自支援に位置付けつつ、個別給付としてグループホーム制度に一本化するのか、市町村独自支援として存続させるかを、小規模化の課題と併せて検討する必要がある。

・現行の居住サポート事業については必要な機能であるが、受託する事業者が少なく、住宅部門との連携も不十分であり、実施市町村も多くない。福祉分門だけではなく、住宅部門と連携した形の実効性のある居住サポートの仕組みが必要である。また、グループホーム等から単身生活に移行する場合も事業対象とする。同事業は、相談支援事業の付帯事業的な位置づけとなっており、住居の確保や緊急時対応など限定的な場面に限られているが、地域での安心できる暮らしを継続的にサポートする訪問型の生活支援として機能強化し、独立して運営可能な支援とする必要がある。

<C.支援(サービス)体系を機能させるために必要な事項>

9.医療的ケアの拡充について

【表題】医療的ケアの拡充について

【結論】

○日中活動支援の一つであるデイアクティビティセンターにおいて看護師を複数配置する等、濃厚な医療的ケアが必要な人でも希望すれば同センターを利用できるような支援体制を確保する。併せて重症心身障害者については、児童期から成人期にわたり、医療を含む支援体制が継続的に一貫して提供される仕組みを創設する。

○地域生活に必要な医療的ケア(吸引等の他に、カニューレ交換・導尿・摘便・呼吸器操作などを含む)が、本人や家族が行う生活支援行為として、学校、移動中など、地域生活のあらゆる場面で確保される。

○入院が必要な場合には、慣れた介護者(ヘルパー)によってサポートが得られるようにして、必要な医療を得ながら地域生活が継続できるようにする。

【説明】

最近、特に濃厚な医療的ケアを必要とする超重症児といわれる人たちが増加の傾向にあり、このため医療型の通所の場の整備が要請されている。デイアクティビティセンターは重症心身障害児・者が利用することも想定されており、その際には看護師の複数配置を必須要件とする。濃厚な医療的ケアを必要とする重症心身障害者が、18歳に達したことを理由に別体系の事業への利用変更を求められ支援者も支援の方法も変わることは、生命の危機にもつながる重大な環境の変化であることから、仮に法律体系が変わるとしても人権が守られ年齢相応の生活を送ることができるよう、一貫した支援体制が取れるようにする。

また、生活支援行為としての医療的ケアとは、本人や家族が行うことをヘルパーが本人に代わり行うということであり、よく知っている介助者が無理なく医療的ケアができる仕組みが求められる。同様の仕組みは、学校においても必要である。また、一方で入院が必要な場合には、慣れた介護者(ヘルパー)によってサポートが得られるようにして、必要な医療を得ながら、地域生活が継続できるようにする。

10.日中活動支援における定員の緩和等について

【表題】日中活動支援の定員の緩和等について

【結論】

○過疎地等の事業所が5名でも事業を展開できるようにする。

【説明】

地方に行けば行くほど人が集まらないため、5名でも事業を展開することができるようにする。現在の重症心身障害児・者通園事業B型は平成24年4月からは生活介護事業への移行も考えられるが、地方や利用者が少ない地域では、利用者が集まらないために運営が困難になる可能性があり、十分な配慮が必要である。

11.日中活動支援への通所保障について

【表題】日中活動支援への通所保障について

【結論】

○日中活動支援への移動支援(送迎)を支援内容の一環に位置付け、これに係る費用は報酬上で評価する仕組みとする。

○報酬の算定にあたっては、移動支援(送迎)の支援内容を再検討するとともに、公共交通機関等による通所者の扱いを併せて検討する。

【説明】

日中活動支援を利用するには送迎は必要である。また、医療的ケアを必要とする人の送迎には看護師の添乗も必要になる。現行の生活介護には送迎経費も含まれているとの解釈があるが、他の通所事業には送迎経費は含まれていない。新法においては、実績に応じて報酬に含まれるような制度にする必要がある。

送迎について、声かけや見守りを含めた支援として位置づけるのか、単なる移動手段として位置づけるのかという議論がある。また一方、公共交通機関等による通所の際の移動支援の利用や交通費の支給を求める意見があり、その取扱いを検討する。

12.グループホームでの生活を支える仕組みについて

【表題】グループホームでの生活を支える仕組みについて

【結論】

○グループホーム等で居宅介護等の個別生活支援を活用できるようにする。

○高齢化等により日中活動サービスに通うことが困難又はそれを必要としない人が日中をグループホームで過ごすことができるように、支援体制の確保等、必要な措置を講じる。

【説明】

新法におけるグループホームは多様な住まい方支援の一つであることから、他の在宅障害者と同様に、居宅介護等の個別支援を併給できるようにする。

今後、高齢、重度・重複障害、医療的ケアや行動障害など様々なニーズのある人たちの利用が多くなることが想定され、介助等個別支援を必要とするそれらの人たちに対して、居宅介護等を活用することで、地域での自立生活が可能となる。また、それらの人たちも利用できるようハード面での整備を推進するとともに、職員の夜間常駐、休日の日中支援、医療的ケアの実施が可能となるよう、報酬、運営基準、人員配置の見直しを図る必要がある。したがって、グループホーム等での支援をグループホーム等の機能として全てを入れ込んでしまうのではなく、最低限のものはそこに備わっていて、それ以外のパーソナルなものはオプションで多様なサービスを利用できるようにすることの方が適切と考えられる。これらの関係を整理、検討し、生活支援体制を確保することが必要である。

13.グループホーム等、暮らしの場の設置促進について

【表題】グループホーム等、暮らしの場の設置促進について

【結論】

○国庫補助でのグループホームの整備費を積極的に確保する。また、重度の障害や様々なニーズのある人への支援も想定し、安定的運営に係る報酬額が必要である。一方、建設する際の地域住民への理解促進について、事業者にのみに委ねる仕組みを見直し、行政と事業者が連携・協力する仕組みとすることが必要である。

*公営住宅や民間賃貸住宅の活用についてはを参照のこと。

【説明】

地域生活移行を促進する上で、重度の障害者が利用できるグループホーム等の住居を確保する国庫補助による整備促進が必要である。また、報酬単価が低く、人材確保や事業運営に困難があり、グループホーム、ケアホーム単独では経営が成り立たない現状があるため、積極的に整備を推進するための予算確保が必要である。また、グループホームを建設する場合、地域住民の反対が全国各地で起きており、建設を断念する場合もある。建設に当たって地域住民の理解を求めることについては、事業者に委ねるのではなく、地方自治体の責務として事業者と連携・協力して住民の理解促進を図る必要がある。

公営住宅は低家賃であり、住まいとしての重要な社会資源といえる。バリアフリー化した公営住宅を拡充して、インクルージョンの視点を配慮しつつグループホームとしての活用を促進する。

【「関連する他の法律との関係」に移すもの】

公営住宅や民間賃貸住宅の活用について

○公営住宅の障害者優先枠を拡大する。

○民間賃貸住宅の一定割合を公営住宅として借り上げる、一定規模以上の民間賃貸住宅には障害者に配慮した住宅の設置を義務付けこれに公的補助を行う等、民間賃貸住宅への入居を進めるために必要な施策を講じる。

○民間賃貸住宅におけるグループホーム設置を一層促進する。そのために、建築基準法を見直し、防火壁などの工事を必要とする等の現在の厳しい基準をなくして、グループホームを一般住居として扱うこと。

○事業者に対する税制の優遇(不動産取得税、固定資産税、都市計画税等の減額もしくは免除)を設け、住居提供者に対する経済的支援策や優遇策を講じる。

14.一般住宅やグループホームへの家賃補助について

【表題】グループホーム等への家賃補助等について

【結論】

○グループホーム利用者への家賃補助、住宅手当などによる経済的支援策が重要である。

*一般住宅に住む障害者への家賃補助、住宅手当などについては、を参照のこと。

【説明】

民間住居への入居促進のため、家賃補助や住宅手当の創設が望ましい。生活保護と同様に、障害者の基礎年金に住宅手当が上積みされることが望ましいが、住宅手当とした場合、広く国民を対象とした手当制度や生活保護制度における住宅扶助などとの関係を整理する必要もある。また、それぞれの住宅の状況を踏まえると一律に手当とするのはどうか。家賃に応じて住宅手当を支給するのが現実的であるし、社会の理解も得られやすい。

【「関連する他の法律との関係」に移すもの】

一般住宅に住む障害者への家賃補助、住宅手当などについて。

○一般住宅に住む障害者への経済的支援について、家賃補助や住宅手当の創設等を含め、関係する省庁による連携の下、検討を進める。

15.他分野との役割分担・財源調整

【表題】シームレスな支援と他分野との役割分担・財源調整

【結論】

○どんなに障害が重度であっても、地域の中で他の者と平等に学び、働き、生活し、余暇を過ごすことができるような制度とする。

【説明】

「他の者との平等」の視点からどんなに障害が重度であっても、地域の中で「他の者」と同じ生活を営み、共に育ち、学び、「他の者」と同じ職場で仕事をこなし、「他の者」と同様に余暇を過ごすことができるような制度が必要である。

その際、シームレスな支援を確保するために、障害者雇用納付金や介護保険、教育など関連分野の財源との調整をする仕組みも必要である。

Ⅰ-7 利用者負担 素案

【表題】利用者負担について

【結論】

○他の者との平等の観点から、食材費や光熱水費など誰もが支払う費用は負担をすべきであるが、障害に伴う必要な支援は無料とすべきである。その際、障害に伴う必要な支援とは、主に以下の6つの分野に整理することができる。

①相談や制度利用のための支援
②コミュニケーションのための支援
③日常生活を送るための支援や補装具の支給
④社会生活・活動を送るための支援(アクセス・移動支援を含む)
⑤労働・雇用の支援
⑥医療・リハビリテーションの支援

【説明】

(1)利用者負担の問題点

同年代の障害のない人は、食事・排泄・移動・コミュニケーションなど人として生きるための基礎的な生活行為を自らの意思でおこなえるが、身体もしくは精神面での機能の障害のある人たちは、そうした生活行為が困難になる。従って、こうした行為への支援に係って障害のある人に負担を課すことは、障害のない人との間に新たな格差と差別を生むことになる。

また、厚労省の作成した資料によると障害福祉サービス利用者のうち非課税と生活保護の低所得世帯が86.3%と約9割に上り、こうした世帯にとって、生きるために不可欠な支援への利用料は大きな負担になっている。

以上のことから、障害によって生じる社会生活上の困難を軽減する支援は、社会が責任を担うべきである。

「ある程度の負担があった方が、遠慮せずに支援を求めやすい」という意見もあるが、それはそもそも支援に対する報酬(公費)が抑えられたことが背景にあり、必要十分な支給量や報酬が得られれば、「支援をお願いしている」という遠慮は解消される。

(2)利用者負担に対する負担軽減策の効果と問題点

自立支援法実施の2006年度の段階では、福祉サービスを利用する在宅者のうち52.2%の人が課税世帯とされ、生じた応益負担の全額の負担を課せられた。その要因は、収入認定の対象に同居世帯の収入・資産が含まれたためであった。その後、負担軽減策の効果は、収入認定ならびに資産要件の基準の見直し(同居家族の除外)によってその対象が増えたが、その一方で、グループホーム・ケアホーム入居者は、個別減免が優先され、負担軽減策の対象外とされたため、在宅者との間で負担の格差が生じた。

2010年4月から自立支援給付については、非課税世帯の負担上限額はゼロ円となったため、非課税世帯の負担は大幅に軽減された。しかし課税世帯でも、月額上限37,200円の負担能力を有する人ばかりではなく、中でも障害児のいる世帯は、親が若年であることから収入が相対的に低い等の現状がある。

また自立支援医療や補装具には適用されなかったため、応益負担の問題は改善されなかった。さらに、地域生活支援事業には、非課税世帯でありながら利用料負担が課せられる現状が残されている。

(3)障害に伴う必要な支援

以上のことを踏まえ、結論に記した障害に伴う必要な支援について、具体的に説明する。

①相談や制度利用のための支援~自らの希望と最適な選択を尊重するために障害に配慮した相談支援は、公的な支援とし無料とすべきである。

②コミュニケーションのための支援~手話、点字、指点字等のほか、自閉症等の人の良好なコミュニケーションに必要なイヤーマフや会話補助用機器(パソコンや携帯電話などの電子機器を利用したコミュニケーション機器)なども、日常生活用具に含め、無料とすべきである。

③日常生活を送るための支援や補装具の支給~食事や排泄、身体機能の障害を軽減するための義肢・補装具や、障害に配慮した住宅改修工事等についても公的な支援とし、無料とすべきである。

④社会生活・活動を送るための支援(アクセス・移動支援を含む)~とくに移動支援に係る支援者の交通費・入場料等を公的に支援すべきである。

⑤労働・雇用の支援~労働・雇用に就くために必要な合理的配慮としての環境整備や人的支援、また障害に伴う必要な移動支援は無料とすべきである。

⑥医療・リハビリテーションの支援~障害認定・年金申請のための診断書作成や、障害の軽減・改善のための必要な専門医療・リハビリテーションは、一般医療制度のもとで充実と地域化を図るとともに無料とすべきである。

なお障害児入所施設を利用する場合、学校卒業後グループホーム等を利用する場合、障害基礎年金未受給(20歳未満)の場合などについても、利用者負担の軽減、家賃助成の特例等の導入を検討する。

(4)実費負担の適切な水準の確保

①通所施設等の食材費や送迎利用料

自立支援法実施当時、給食の食材費だけでなく人件費を含めて大幅な削減が実施されたため、通所施設等では多額の利用者負担が生じるという問題があった。食材費は、障害のない人と同等の立場・権利の保障という観点から利用者負担とすることは妥当だが、併せて十分な所得保障が求められる。ただし、障害が重く、咀嚼・嚥下能力等が著しく困難である場合、再調理に必要な人件費や特別な原料(とろみ剤など)に係る費用を必要とする場合があるが、これは、障害に伴う必要な支援として、利用者負担とせず公的に支援すべきである。

実費負担では、欠席した場合のキャンセル料が問題となった。給食費のキャンセル料を課している事業所は多くあり、しかも食材費だけでなく人件費も含めたキャンセル料を徴収している事業者が存在した。またインスタントラーメンのお湯代を徴収している事業者もあった。

さらに送迎利用料の徴収については、合理的配慮の考え方から送迎は障害に伴う支援であり、利用料を徴収すべきではなく、公的に支援すべきである。送迎利用料のキャンセル料を徴収している事業者がいるが、これは論外である。

こうした負担のあり方と水準が適切であるか否かを判断するための基準を設ける必要がある。

②ガイドヘルパーの交通費

ガイドヘルパー利用の際、ヘルパーの入場料や交通費などの経費を利用者本人が負担しているが、ガイドヘルパーの交通費はサービスにかかる経費として報酬単価に位置づけ、障害に伴う必要な支援として公的に保障されるべきである。

③グループホーム等の費用

グループホーム等の食費・光熱水費の利用者負担は必要となるが、家賃加え応益負担が生じてしまうことで、一般就労者や失業直後の人などで入居が必要な人が利用しにくいという問題が生じた。グループホーム等の応益負担を廃止すると同時に、実費負担の軽減策や本人に対する所得保障の充実を検討する。

【表題】自立支援医療の利用者負担について

【結論】

○自立支援医療制度の利用者負担をなくす。

○障害者総合福祉法実施以前にも低所得者の無料を実現する。

【説明】

自立支援医療の利用者負担については、医療合同作業チームでの意見は無料と応能負担とに分かれたが、福祉サービスを含む全体的な利用者負担と同様の提案とする。その理由は、現在の自立支援法の下でも軽減策によって福祉サービスに係る低所得者の利用料がほとんど無料になっているのに対し自立支援医療は負担が大きくなっていること、また自立支援医療のうち多くは精神障害者の通院公費であることから精神障害と知的・身体障害の間の格差が残されていること等が挙げられる。

なおこれは障害者の医療費を無料に、というものではなく、障害に伴う医療費の自己負担を無料に、というものである。

【「Ⅲ関連する他の法律との関係」に移すもの】

【表題】障害者の医療費公費負担制度の見直しについて

○障害者の医療費公費負担制度の見直しについては、自立支援医療制度、特定疾患治療研究事業、小児慢性特定疾患治療研究事業、高額療養費制度、都道府県の重度心身障害児者医療費助成制度などを総合的に検討する。

Ⅰ-8 報酬と人材確保 素案

【表題】報酬と人材確保の基本理念

【結論】

○障害者の基本的人権であるサービス選択権とサービス請求権を保障するために適正な事業の報酬と必要な人材を確保すべきである。

【説明】

障害関連事業の現状として、報酬制度と人材確保の課題は深刻で、事業報酬の劣悪さが人材の確保を困難にし、限界を超えている。事業所を支える中核となる人材の人件費は昇級していかなければならないが、事業種別、障害程度区分、利用定員、各種加算を組み合わせた現在の報酬基準では、ベテラン職員の雇用の維持さえ難しくなり、経営的にも疲弊し、正職員の常勤雇用率が下がり、雇用期間限定の臨時・計約・パート率を大幅に増加し支援の質の低下が著しい。

しかしながら、真に障害者の基本的人権保障を担う人権感覚溢れた人びとが障害者と共にインクルーシブな社会を構築するために、活力ある良質な人材が確保されることが障害福祉を成立させる不可欠な前提条件となる。障害福祉の報酬水準とは障害者の人権の価値評価、尊厳の水準と連動している。障害福祉を実践する人材が枯渇し自らや家族の生活の維持さえ危ぶまれるような状況であればこの国が障害者の人間としての基本的価値を蔑んでいることを意味する。

したがって、以下の事項を旨として、障害者の基本的人権であるサービス選択権とサービス請求権を保障するために適正な事業の報酬と必要な人材を確保すべきである。

【表題】事業報酬における基本的方針と水準

【結論】

○事業報酬における基本的方針は、以下のとおりである。

  • 支援の質の低下、現場を委縮させない報酬施策を実施する。
  • わかりやすい報酬制度にする。
  • 利用者に不利益をもたらさない。

○事業報酬における水準は、採算線(レベル)を利用率80%程度で設定し、安定的な障害サービスを提供するために、事業者が安定して事業経営し、従事者が安心して業務に専念出来る事業の報酬水準とする。

○なお、常勤換算方式を廃止する。

【説明】

措置から契約制度への移行に伴い、措置委託費の丸投げから、一人ひとりの要支援者への個別支援のための社会保障費の支払いの集積が報酬となる転換が図られた。その後、障害者自立支援法施行により給付抑制政策が導入され、報酬基準が切り下げられ、障害福祉の質の低下がもたらされた。それらの弊害を解消するために、一人ひとりへの支援を意識した障害福祉の基本的あり方を基本としながら、支援の質の低下、現場を委縮させない報酬施策が実施されることが、改革の方針である。

事業者にとっても複雑なシステムは不経済極まる。利用者にとっても、一般国民にとっても、わかりやすい簡潔な制度にしなければならない。

利用者負担、地域間格差等により、利用者に不合理な負担、不利益を被らせることは障害福祉の理念に反することであり、あってはならない。

現行報酬額の採算レベルは、入所施設系で利用率(実利用者/利用定員)が90~95%に設定されており、収支を黒字にするために定員超過などで凌いでいる。定員超過の恒常化による支援水準の低下を改善するため、採算ラインを80%程度と設定する。定員が一杯となれば職員の加配やベテラン職員の確保が可能となり、事業者にも利用者にも余裕が生じ、利用者の地域移行についての取り組みも可能となる。経営者にインセンティブを与え、事業展開への財源確保とモチベーションを高める。

国は経営実態調査に基づき報酬改定を行っている。しかし、多くは報酬のみが収入であり、報酬が減額されればその範囲で収支を合わせて黒字にするため、その黒字を根拠に改定されれば、報酬は際限なく引き下がる。福祉報酬は社会保障費=ナショナルミニマムであり、自助努力の貯蓄を理由に水準を引き下げてはならない。

【表題】報酬の支払い方式について

【結論】

○施設系事業報酬を「利用者個別給付報酬」(利用者への個別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費)に大別し、前者を原則日払いとし、後者を原則月払いとする。

○在宅系事業は、時間割り報酬とする。

○基本報酬だけで安定経営ができる報酬体系とする。

【説明】

報酬の日額払か月払いについて、統合した視点を持ち、建設的な議論に発展させることが肝要。

障害福祉を実践する担い手が事業を維持出来ない状況は、障害者の生活支援、人権が安定的に保障されないことを意味する。障害者の幸福追求権が保障されるためには、障害のある人の支援(事業)を選択する自由(権利)と障害関連事業における固定費(人件費を中心に)の安定的な確保を両立させることが必要である。その際、次の三点に留意すべき。

一点目は、報酬の財政規模の増額が必要条件である。現行の支出水準を固定費相当分とし、日額分が重ねられるイメージ。二点目は、契約制度は維持するとしても、市町村が障害者の支援を保障する公的責任は明確化しておくこと。三点目は、利用者負担の増加につながらないようにすること。「Aさんに就労支援が保障される」との支給決定も「個別給付決定」であり、仮に本人負担があるとしても、公から個人への費用徴収の問題とするべきで、利用者負担制度を廃止するか、少なくとも利用者負担と事業所報酬が連動する、現行の「個別給付→代理受領」の方式自体を見直し、利用と負担の連動性を断つべきである。

すなわち、個別給付制度を維持しながら、利用者負担請求業務の事業者負担も無くし、支給決定障害者の事業利用に対する事業所に対する報酬支払方式に変更するべきである。

施設系事業は、報酬を「利用者個別給付報酬」(利用者への個別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費)に大別する。(概ね、前者が2割、後者が8割程度)前者を原則日払いとする。

但し、利用率80%を上回れば全額支払い、それ以下の場合は、利用実績に応じた日割り計算で事業所に支払われる。後者を原則月払いとする。すなわち、施設利用定員による月額を定額で支払う。

但し、施設全体の6ヶ月の平均利用率を次の6ヶ月間は掛けて月額を算出する。これにより、利用しなかった分は報酬減となるので、在宅給付との併給にも抵抗は少ない。個々の利用者の利用状況に日割り(利用率)を導入するのではなく、施設全体の利用率で算定する。その適用は次の6ヶ月期に適用とする。

在宅系事業は、時間割り報酬とする。

現在の報酬は報酬本体では経営維持が困難であり、加算により初めて維持出来る。「報酬本体だけ」で求める事業水準(指定基準に定められる水準)を確保すべき。加算はあくまで、その標準的水準のオプションと位置づける。

【表題】人材確保施策における基本的視点

【結論】

○人材確保こそが障害者地域生活実現の鍵である。

○障害福祉に対する公的責任を障害者本人やその家族に転嫁してはならない。

○支援者の確保は、地域における雇用創出である。

○重層的な人的支援のネットワーク化を重視し、人材を循環させる。

【説明】

障害のある人の安定した地域生活を展開し、医療機関等からの地域移行を実質化するためには、①労働及び雇用・日中活動の場、②居住の場、③所得保障、④人的な支え、⑤医療・保険の5つの分野が一定の水準で確保される必要があり、人的な支援体制の確保は、その根幹である。人間と人間の触れ合い、パーソナルな支援こそが改革を成功させるためのキーワードであり、そのため優良な「人材」の確保が地域生活の成立条件である。

人と人の関係を基本とする人的支援策の遂行にあっては、根強い家族責任観念から、親を中心とする家族に責任が転嫁されないよう、障害福祉の「公的責任の原則」を明確にする必要がある。成人した障害者の生活まで家族が抱え込まざるを得ない現実の中で、「家族支援」も重要な施策の柱である。

本格的な人的な支援策を成功させるためには、大幅な人員増が必要である。労働政策の観点からは、社会福祉を志そうとする若者に未来を拓き、雇用創出・失業改善に役割を果たす。

地域相談支援センターやGH等、地域支援の組織は小規模であり人員にも限りがあるため、他機関との連携を求めている。支援員、看護師、ケースワーカーなど必要に応じてネットワークで本人支援を行うが、受け皿を複数用意しておくことが必要である。当事者主体と当事者の権利保障を重視し、障害者の地域生活構築のため、重層的なネットワークへの変革が必要である。

【表題】福祉従事者の賃金における基本的方針と水準

【結論】

○障害者の安定した地域生活を支える人材を確保し、また、その人材が誇りと展望をもって仕事を継続できるようにするため、国家公務員の「福祉職俸給表」と同等の年収水準が確保できるだけの事業報酬とする。

【説明】

報酬の体系と金額は、現に障害者福祉に従事する者が誇りを持って仕事に取り組み、その資質等の向上を図ることを促進するものであり、従事することを希望する者が、労働条件等の雇用環境により、断念することがない水準であることが必須である。休暇の保障、海外研修・留学等の国際交流や他事業所との国内交流等、職員のモチベーションを高める仕組みが必要である。

障害福祉報酬の総額が低すぎて、優れた理念を持ったリーダーも極めて低賃金という現状を改善し、優れた人材を高い報酬で待遇するという当たり前の姿になるため、国家公務員レベルの給与体系で末永く雇用できる制度構築をするべきである。具体的には、従事者の給与レベルは国家公務員給料表の「福祉職俸給表」による給与支給を確保出来る水準とすることを法定化する。これにより、標準的給与水準が明確になり、異動の際にも、前歴換算や評価が容易になる。共通の給料表に基づくことにより官民格差が是正できる。

福祉職給料表の導入と共に、「職員構成比想定」を設定するべきである。俸給の適用級が低いままで積算されれば、経験年数の長い従事者は継続が困難となり、若い従事者を回転させる人事となり、利用者にとって、看過しがたい。中間層を手厚くした、「職員構成比想定」を導入し、支援の質の向上、働き続けられる職場の実現、職員が将来像を描けるシステムとする。さらに、単純な経営のバランスシートで報酬水準を設定するのではなく、それぞれの職員が求める生活を維持できる賃金水準を考慮して設定することが必要である。

【表題】「人材育成」について

【結論】

○現場体験をしながらの職業訓練(OJT)を重視し、「資格」保有は支援の質の最低基準の保障と支援者の社会的評価、モチベーション維持等のためと位置づけた、研修システムとする。

○ピアカウンセラーを積極的に育成し、各種委員会における当事者委員登用率を法定化する。

【説明】

人材育成の中期計画としても、OJT重視の研修システムを基本とするべき。可能な限り間口を広く取り、多くの人材の中から適した人材を探り当てる作業が不可欠。継続的な関係性の中での人間関係が基礎にあり、支援が成り立つ。正規雇用関係の中で、長期にわたって関係性を持てることが信頼関係を障害者と作り上げる基本である。

当事者の気持ちにもっとも寄り添えるのは同じ障害をもつ当事者である。障害当事者を出来る限り相談支援研修に受講させ、優先的に相談支援に雇用し、障害福祉計画等の政策立案過程、自立支援協議会等において知的や精神障害者の委員登用率を法的義務化する。

Ⅰ-9 地域生活の資源整備 素案

【表題】地域生活を営む上で必要な社会資源の整備

【結論】

○地域社会において生活を営むことを可能にする足る様々な支援を提供する事業所及び福祉の人材等の社会資源をさらに確保すべきである。

○とくに、重度の障害者が地域で生活するための長時間介護を提供する社会資源を都市部のみならず、農村部においても重点的に整備し、事業者がないためにサービスが受けられないといった状況をなくすべきである。

○また、地域生活を支えるショートステイ・レスパイト支援、医療的ケアを提供できる事業所や人材をさらに整備育成しなければならない。

*長時間介護などにかかる財源確保についてはⅡを参照のこと。

【説明】

福祉サービスは、それを提供するマンパワーなくして成立しない。福祉サービスには様々なものがあるが、地域社会で生活を営む上で必要な支援を行う事業所と人材は、いまもって不足している。

とくに、重度障害者が地域で生活するうえで、現行の重度訪問介護などを担う事業所と人材は、全般的に不足しており、農村部にはほとんどないといった状況が存在することは、このたびの東日本大震災の被災地の状況を見ても明らかである。しかしこれでは、どこで、だれと住むかといったきわめて基本的な権利さえ実現できない。

また、障害者の地域生活を支える上で、ショートステイやレスパイト支援、医療的ケアの充実は欠かすことができない要素である。

例えば、グループホームや一般住宅で暮らす障害者が調子を崩したり、家族との関係が一時的に悪化したときなどに、生活を立て直す支援としてのショートステイがすぐ使えることは、地域生活の継続のうえで欠かすことができない。

また、障害児者が家族と同居する場合、家族ケアの観点からの障害児者家族の精神的、物理的な休養を目的としたレスパイトケアの充実も求められる。

しかしながら、必要なときにいつでも使えるショートステイやレスパイト支援を提供するサービス事業体は少なく、医療的ケアを提供できる介助者も非常に不足しているのが現状であり、これらにかかわる社会資源の拡大が急務である。

そこで、国は、必要な財源を確保したうえで、上記にかかる社会資源を早急に確保すべきである。

【表題】自立支援協議会(社会資源の有機的連携と地域福祉の向上)

【結論】

○地域における既存の社会資源を有機的に連携させ、地域全体にかかる課題を検討して地域社会の支援体制をより充実させる仕組みとして、市町村(ないし圏域)および都道府県単位で、障害者の参画を前提とした自立支援協議会を法定機関として設置する。

○自立支援協議会は、その地域における障害者施策の現状と課題を検討し、改善方策や必要な施策を講じるための具体的な協議の場とするほか、市町村又は都道府県における障害者に関する福祉計画策定に意見を述べるものとする。

○とくに、都道府県単位の自立支援協議会は、上記のほか、広域的・専門的な情報提供と助言や市町村障害者福祉計画策定の支援機能を果たすものとする。

○自立支援協議会は、必要な場合、要保護児童対策地域協議会と連携するものとする。

【説明】

現行の自立支援協議会についての評価はさまざまであるが、その地域における解決困難な課題に焦点化して関係者が議論をし、地域生活が実現可能となるための各種社会資源の連携や支援の新たな開発の役割をはたすこと、障害福祉計画へとつなげる役割を果たすことなどが期待される。

このように自立支援協議会が地域の社会資源を有機的に連携し、より良い地域づくりの核として機能するようにするためには、以上のような機能を有するものとして、法定化することが必要である。

【表題】地域生活の資源整備を重点的に進めるための障害福祉計画の役割【P】

【結論】【P】

【説明】【P】

Ⅰ-10 地域移行 素案

【表題】「地域移行」の法定化

【結論】

○「地域移行」とは、単に住まいを施設や病院から元の家庭生活に移すことではなく、障害者個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現することを意味する。障害の程度や状況、支援の量等に関わらず、すべての障害者が、地域で暮らす権利をもつことから、地域移行の対象となる。

○国は、地域移行を促進することを法に明記し、重点的な予算配分措置を伴った政策として、①地域移行プログラムの実施、②地域基盤を整備する計画の2つからなる「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)を策定することを法定化すること。

【説明】

障害者自立支援法において、平成23年度末までに、身体・知的の施設入所者の1割(13,000人)の地域移行と精神病院からの72,000人の退院促進が、地域移行政策の目標として謳われた。だがその成果は非常に乏しい。平成17年10月の身体障害者・知的障害者向けの施設入所者139,009人から平成21年10月には136,016人と、3,000人しか減っていない(達成率23%)。また平成15年度から21年度までの7ヶ年で、精神障害者地域移行支援特別対策事業を使って退院出来た人は合計で2,819人しかいない(達成率3.9%)。

本来は誰もが地域で暮らしを営む存在であり、障害者が一生を施設や病院で過ごすことは普通ではない。入所者・入院者が住みたいところを選ぶ、自分の暮らしを展開するなど、障害者本人の意志や希望、選択が尊重される支援の仕組みと選択肢を作ることが早急に必要である。これは地域で生活する家族の状況や支援不足から希望していない生活環境にある障害者についても、本来地域移行の支援対象者に含まれるべきであり、大人数の住まいを解消し、地域生活を実現できるようにすることも検討されるべきである。

地域移行の促進にあたって、地方における地域基盤整備や財政等の格差等、国と地方の財政負担構造など課題があるなかで、単に、施設の入所定員や病院の病床数の減を法定化することは、家族の不安や負担を強いる危険性と混乱を招きかねない。そこで地域移行は、地域移行プログラムを入所・入院している障害者に提供しつつ、誰もが暮らせるための地域資源と支援システムを整備する必要がある。さらに、集中的に地域移行を促進するために、「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)の策定を法定化し、総合福祉法の中で重点的な予算配分措置を伴った施策として位置づける事とする。

【表題】

「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)における地域移行プログラム

【結論】

○地域移行プログラムは、ピアサポーター(地域移行の支援をする障害者)を含む様々な支援者からの支援を受けつつ、自立生活を実際に体験するものをいう。

○入所者・入院者は、自ら体験したいプログラムを選択することからはじまる。地域移行プログラムは、一人ひとりの状況に合わせて策定されるもので、プログラムに入所者・入院者が合わせるものではない。

○ピアサポーター等は、入所者・入院者の意思や希望を聴きとりつつ、支援するノウハウをもっているため、重要な人的資源として中心的な役割を担う。

○地域移行プログラムは、さまざまな選択肢が用意される。施設・病院から外出したり、福祉サービスを体験的に利用しながら、地域生活を楽しむ体験する中で、自分の地域生活をイメージできるようにし、実施においては、施設・病院と地域支援者等の連携のもとで進められる。

○プログラムの実施では、一人ひとりのプログラムごとに、支援に必要な外部者が関わるため、市・圏域ごとに、地域移行・定着支援を行う拠点としてセンターを設置する。

○施設・病院の職員が、地域生活支援の専門職としての役割を果たせるよう移行支援プログラムを利用できるようにする。

【説明】

現行の入所者・入院者が、どのようなニーズがあって入所・入院しているのか、定期的にそのニーズを図る必要があり、社会的入所・入院の軽減を目指さなければならない。その際、施設・病院関係者だけでなく、外部者(地域支援者、ピア、地域自立支援協議会、市民などさまざまな立場の者)が参加できる仕組みを作ることは、安易な入所・入院を避けるためにも重要である。

そこで地域移行のプログラムは、障害者の意志や決定を確認し、それを実現するためのものであり、入所者・入院者が自ら選ぶことを基本としたものである。また、ステップ型のプログラムに入所者・入院者が合わせ、一定のプログラムを経なければ地域移行できないものではなく、個別に作成されたものが必要である。また地域移行・定着支援を重点化するため、市・圏域レベルに地域移行・定着支援の拠点のセンター及び人員を配置することとする。この拠点センターにおいては、安価な支援としてピアサポートをとらえるのではなく、ピアを地域移行推進のための重要な人的資源と位置づけ、ピアサポーターの育成ならびに地域移行支援活動に対する正当な報酬等の財源を確保すべきである。

このセンターが提供する体験プログラムには、まず施設・病院から外出したり、地域での生活を楽しむ体験をするなどしながら、自分の地域生活をイメージする期間も必要である。そのため地域の移動支援等の福祉サービスを利用できる仕組みが必要である。また経済的に困難な入所者・入院者にはその費用を助成する仕組みが不可欠である。

さらには現行の施設・病院の職員がその専門性を地域支援に活かしていくことも、地域移行を推進していく上で求められることになる。その際には、職員にも一定の移行プログラムが必要である。支援のあり方について、視点の転換が必要と思われるからである。このプログラムの実施も、上記の地域移行・地域定着支援センターの任務とする。

【表題】

「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)における地域基盤整備計画

【結論】

○障害者の地域移行を促進するよう、乏しい社会資源を補う計画を策定する。新たな地域における住まいの確保、日中活動、支援サービス等を重点的に提供することを、数値目標も明記するものとする。

○各自治体は、「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)に基づき、障害福祉計画等で、地域生活資源を整備する数値目標を設定し、取組むものとする。

○期限や数値目標を、地域での資源整備計画と連動させるため、入所者・入院者の実態調査を行い、それらを各自治体の障害福祉計画に盛り込むものとする。調査では、入所・入院の理由や退所・退院する際の阻害要因、施設に求める機能について、障害者本人への聴き取りを行うこと。

*地域移行を促進するための住宅確保の施策についてはⅢを参照のこと。

【説明】

退所・退院に向けた取り組みは重要だが、その具体的な期限や数値目標は、それだけでは入所者・入院者の回転ドア現象を招きかねない。期限や数値目標は、地域での資源整備計画にこそ必要であり、両者が整合性をもって連動する必要がある。

そこで、「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)を策定し、地域における障害者向けの住宅、日中活動、訪問系サービス等を新たに大規模に提供することを目標にする。なお、この際の数値目標の具体的な中身(何万人分等)については、今後行われる入院・入所者への調査の結果等に基づいて設定することとする。また、市町村の障害福祉計画はこの「10ヵ年戦略」に基づいた数値目標の設定を行うべきである。

自治体の障害福祉計画等で掲げられた地域移行者目標数値に関しては、地域支援サービス整備の目標数値とともに一定の達成義務は必要だが、施設や病院から住まいを移行しただけで終るものではないため、地域での生活実態の把握や支援状況の検証を移行後も行なうべきである。

基盤整備にあたっては、長期入所や入院を余儀なくされ、そのために住居を失うもしくは家族と疎遠になり、住む場がない人に対する住宅確保のための施策は重要であり、グループホームの整備を始め、家賃補助等の整備計画が必要である。

施設待機者は、全てが真に施設入所の必要な者とは言えない。障害福祉計画等で、単純に施設待機者数を施設設置の根拠とすることは妥当ではない。待機者は、さまざまな福祉サービス利用の待機者であるとの視点に立ち、具体的な地域基盤の整備を進めることが必要である。また再入所・再入院についても、障害者本人の問題としてのみ捉えるのではなく、地域支援の不足・不備からくるものとして検証し、再び地域移行にむけて支援を行うことが必要である。

そのためにも、入所者・入院者実態調査も重要で、なぜ入所・入院に至ったのか、入所者・入院者の希望は何か、どのような退所・退院阻害要因があるのかを、分析することを国主導で行う。全国的な把握、地域性の把握が、地域支援のあり方に関わる貴重なデータであり、地域移行に向けた取り組みの根拠となる。

【表題】施設入所について

【結論】

○国及び地方公共団体は、地域生活の社会資源の拡充をはかりつつ、施設入所者の地域生活への移行をはかるものとする。

○施設は入所者に対して、地域移行のための事業を実施し、原則として退所・退院を目標にした「個別支援計画」の策定をすること。その際、相談支援機関と連携し、利用者の意向把握と自己決定(支援付き自己決定も含む)が尊重されるようにすること。

○施設は小規模化を促進しつつ、セーフティネットとしての機能を担うこと。

【説明】

障害福祉計画では、施設の定員削減目標、地域生活への移行目標が掲げられている。しかし、施設からの地域生活への移行と定員削減が進んでいない。今まで以上に地域生活の支援体制、グループホーム等の社会資源の拡充、公営住宅等の住宅施策の充実、必要な人へのホームヘルパー等の居宅介護の充実などを充実し、施設をセーフティネットとして機能できるよう、地域生活に向けた支援を強化すべきである。継続した医療等の支援が必要となる重症心身障害児の地域移行にあたっては、保護者や家族の不安や負担を十分に受け止め、命と生活の質が保障されるよう合意を得ながら進めることが必要である。

並行して、施設の置かれている四人部屋から個室への居住環境の改善、高齢者の支援、強度行動障害などより個別的な支援が必要な人、罪を償った人が地域生活移行を前提に利用できるような支援機能の強化と地域との連携ができる機能を持つ事ができる職員体制も確保する必要がある。

また、入所待機者や入所希望者に、家族以外の地域生活支援の道筋や可能性を示し、特定の生活様式を強いられないように配慮することが肝要である。入所の長期化を避けるために、退所や退院を目標にした「個別支援計画」を策定するべきである。地域生活移行では、あくまでも利用者の意向を尊重し、支援が必要な人には情報提供し、地域移行プログラムを体験しながら意向確認ができる支援が必要である。

また、入所施設から地域生活移行をする際には、地域移行ホーム、退院支援施設等のように、同一敷地内に移行のための施設を設置するべきではない。