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場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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第38回障がい者制度改革推進会議(H24.3.12)
参考資料1

推進会議構成員・総合福祉部会構成員へのアンケート調査から

『ノーマライゼーション』2012年1月号 P26~33

はじめに

 「Nothing about Us, Without Us=私たち抜きに私たちのことを決めないで」、これは障害者権利条約(以下、権利条約)が生まれる過程で、国連の議場で幾度となく繰り返されたフレーズである。まだまだ実験的とは言え、このフレーズが日本でも実を結びつつある。2010年1月から開催されている障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)ならびにその関連部会の動きがそれである。
 本誌編集部は、本号の特集である「政策への障害当事者の参画」にちなんで推進会議ならびにこの下に置かれている総合福祉部会の構成員にアンケート調査を実施した。以下、その概要を紹介する。なお、推進会議ならびに総合福祉部会は現在も進行中であり、アンケート全体が中間的な意向であることをあらかじめお断りしておく。

1 推進会議ならびに総合福祉部会の特徴

 障がい者制度改革推進本部(本部長は内閣総理大臣)の下に設置された推進会議は、その下に設置された総合福祉部会と合わせて(もう一つの部会として差別禁止部会があるが、後発ということもあり本稿では省く)、国家行政組織法に基づく正式な審議体である。しかし、既存の審議会とはイメージを一変させるものがある。一言で言えば官僚主導からの脱却ということになろう。
 具体的な特徴点として4点をあげる。第1は、構成員のバランスが名実ともに当事者中心となっていることである。なお、ここでの当事者とは障害者本人に加えて家族を含む者とする。推進会議においては、26人(オブザーバー2人を含めて)のうち、当事者が15人(57%)で、総合福祉部会については構成員の総数55人に対して、当事者は26人(47%)となっている。
 第2は、障害を有する構成員への配慮や工夫である。「合理的配慮」の実践ととらえることができよう。聴覚障害、視覚障害、精神障害、知的障害、運動機能障害などに応じて、人的支援策を中心に個々に応じた支援が講じられている。
 第3は、肝心の審議そのものが実質的に展開されていることである。推進会議で言えば、2010年だけを見ても開催回数は29回、1回あたりの審議時間が4時間で(休憩を含めて)、同じく総合福祉部会についても1回あたりの審議時間が4時間、加えて論議の実質化の手段の一つとして分科会方式(作業部会の設置という形で)を取るなど、全体として丁寧さが目立つ。
 第4は、情報公開に力を入れていることである。審議日当日の傍聴はもとより、インターネット中継(オンデマンド方式:一定期間は自由な時間帯に見ることができる)やCSテレビによる生中継などがそれである。

グラフ1 推進会議構成員(26人)の内訳(オブザーバー2人を含む)

障害当事者(12人) 46%
家族(3人) 11%
学識経験者(7人) 27%
自治体関係者(2人) 8%
その他(2人) 8%

(注)複数回答者は、優先順位を、障害当事者、家族、学識経験者、自治体関係者、その他、として、上位を選ぶこととした。なお、無回答者については、編集部で前記に沿って分類した。

グラフ2 総合福祉部会構成員(55人)の内訳

障害当事者(16人) 29%
家族(10人) 18%
事業者(16人) 29%
学識経験者(8人) 15%
自治体関係者(3人) 5%
その他(2人) 4%

2 推進会議構成員によるアンケート結果の概要

 アンケートは昨年11月7日から12月7日にかけて実施したもので、推進会議構成員26人のうち22人(85%)から、総合福祉部会構成員55人のうち44人(80%)から回答を得た。調査は三択方式による簡易なもので(別に自由記入欄を設けている)、推進会議構成員に対しては大きく6つの観点での設問となっている。なお、推進会議構成員によるアンケート結果については、かつて同類の調査を中央障害者施策推進協議会(以下、中央協議会)に実施したことがあり(本誌2009年7月号で詳報)、一部これと比較することにする。以下、6つの観点に沿って結果を略述する。

(1)推進会議関連

 第1は、「推進会議の存在について」であるが、「重要だと思う」と回答した者が全員の22人(100%)であった。中央協議会委員のアンケートの方は、当時の中央協議会の存在について「重要だと思う」が18人(82%)、「どちらとも言えない」3人(14%)、「あまり重要とは思えない」1人(4%)となっている。さらに中央協議会委員からは、「政策の発展に貢献できている」5人(23%)、「どちらとも言えない」7人(32%)、「あまり貢献できていない」10人(45%)と、こちらの方は否定的な見解が肯定的な見解の2倍に達している。これらを合わせみれば、中央協議会の時代は、その存在を重視しながらも、実際には不満が多いことがうかがえた。
 これに対して推進会議については、他項目を合わせみると、存在の重視だけではなく、そこには審議機能面や関わり度を含めてかなり満足感が込められていると解釈できよう。
 第2は、「構成員(人数、メンバー構成など)について」で、「適当だと思う」15人(68%)、「どちらとも言えない」4人(18%)、「不十分だと思う」3人(14%)であった。付記された主な意見は、「難病や発達障害、重症心身障害分野など「障害」のバランスが弱い」、「教育や医療の分野が不十分」である。
 第3は、「機能・審議内容などについて」で、「適当だと思う」15人(68%)、「どちらとも言えない」2人(9%)、「不十分だと思う」5人(23%)であった。付記された主な意見は、「必要な部会を設けるべき」、「推進本部が推進会議に何を期待しているかをもっと明確にしたうえで双方の交流促進」、「行政担当部局とのやり取りが不十分」、「推進会議での審議内容が各省庁での政策決定プロセスとリンクすべき」などであった。
 第4は、「運営面(開催回数、1回当たりの開催時間、発言時間など)について」で、「適当だと思う」11人(50%)、「どちらとも言えない」5人(23%)、「不十分だと思う」6人(27%)であった。付記された主な意見は、「あまりにハードすぎる」、「1回当たりの会議時間が長すぎる」、「進行が早すぎる」、「意見表明が中心で、対立点を整理して議論する点が弱い」、「論点が多すぎて論議が尽くされない」などである。
 なお、中央協議会委員のアンケートでは、ほぼ全員から「1回当たりの開催時間(1時間半)が短すぎる」、「年に1回~2回という開催回数は少なすぎる」が出されていた。推進会議構成員から多く出されていた不満は、積極的な視点からくるものととらえることができよう。
 第5は、「情報保障やアシスト体制について」で、「適当だと思う」18人(82%)、「どちらとも言えない」2人(9%)、「不十分だと思う」2人(9%)であった。付記された主な意見は、「手話や字幕付きの情報公開、知的障害当事者等の実質的参画を確保するためのイエローカードルールなどは他の審議会等にも導入すべき」、「大量の資料については当日配られてもほとんど読めない」、「ふりがなだけでは不十分」などである。
 第6は、「事務局体制について」で、「適当だと思う」9人(41%)、「どちらとも言えない」3人(14%)、「不十分だと思う」9人(41%)、その他(分からない)1人(4%)であった。付記された主な意見は、「必要な部会を設けるための体制を確保すべき」、「少なくとも現在の2倍の事務局スタッフが必要」、「事務局担当者の身分が正規職員でないのは問題」、「十分な審議を行うには人的にも予算的にも極めて不十分」、「事務局体制の弱さにより会議全体のサポートが弱い」などである。

グラフ3 推進会議構成員によるアンケート「情報保障やアシスト体制について」

適当だと思う(18人) 82%
どちらとも言えない(2人) 9%
不十分だと思う(2人) 9%

(2)障害者基本法の改正関連

推進会議が「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」を取りまとめたうえで最初の具体的なテーマとなったのが、障害者基本法の改正へ向けての意見書作成であった。基本法改正に関する推進会議での審議から改正案の成立に至るまでの一連の動きを構成員がどうみているか、大別して次の2点に集約されよう。 第1点は、推進会議での審議の到達点からかけ離れてしまったことへの不満である。多くの構成員から、「推進会議の第二次意見の反映が不十分」としたうえで、具体的な意見として「関係省庁の抵抗が予想以上だった」、「法案の国会上程後の与党の対応には不満」などが述べられている。 第2点目は、内容面での旧法との比較や改正プロセス面でポジティブに評価していることである。これについての代表的な意見として、「改正に向けて、6か月余ならびに10回以上の推進会議を開催してきたことの意味は少なくない」、「改正審議が実質的だったと思う(2004年改正時は全くと言っていいほど中央協議会での審議はなかった)」、「推進会議の素案に対して各省庁から寄せられた意見が公表されたのも、これまでにないことである。これまで、こうした類のことはアンダーテーブルで行われてきたが、それが明らかになったこと自体、政策決定プロセスの透明化と言える」などがあげられる。

グラフ4 総合福祉部会構成員によるアンケート「総合福祉部会の存在について」

重要だと思う(37人) 84%
どちらとも言えない(6人) 14%
あまり重要とは言えない(0人)
回答なし(1人) 2%

3 総合福祉部会構成員によるアンケート結果の概要

 7つの観点での設問で、これに沿って結果を略述する。第1は、骨格提言の取りまとめを受けて「部会の目的は達成できたと思われますか」については、「十分に達成できた」16人(36%)、「どちらとも言えない」17人(39%)、「不十分である」11人(25%)となっている。付記された主な意見は、「当事者主体で制度づくりを行ったことの意義は大きい」、「提言までこぎつけたものの内容の精査までには至らなかった」、「知的障害児者、発達障害児者の意見が十分に反映されていない」、「発語不能の当事者への配慮がなく、知的・精神障害者に片寄っていた」、「財源確保に関する論議が不十分だった」、「総合福祉法を具体化していく行程を時間軸を伴って示すことができなかった」である。
 第2は、「総合福祉部会の存在について」で、「重要だと思う」37人(84%)、「どちらとも言えない」6人(14%)、「あまり重要とは言えない」0人、回答なし1人(2%)であった。
 第3は、「構成員(人数、メンバー構成など)について」で、「適当だと思う」12人(27%)、「どちらとも言えない」14人(32%)、「不十分だと思う」17人(39%)、その他(適当&不十分だと思う)1人(2%)であった。肯定的な回答の中にも「それぞれの顔ぶれを見ると、いずれも必要なメンバーだと思うが、さすがに55人というのは、物理的に限界」、「網羅的に各分野の人選は意味があったが、議論するためには人数が多すぎた」、「当事者参加は評価するが、人数が多すぎた」と、構成員の大半が人数の多さに懸念や不満を表している。そのうえで具体的に、「部会は15人程度とし、その下に100人程度の専門委員会を構成し、部会が専門委員会の意見を踏まえてじっくりと議論するようなシステムとすべきだったのでは」、「部会の構成については、社会福祉の専門職団体や都道府県の障害評価関係の専門家などを補強して、よりニーズ評価のあり方についての詰めた議論を行うことを可能とすべきだった」などが付されている。
 第4は、「機能・審議内容などについて」で、「適当だと思う」16人(36%)、「どちらとも言えない」11人(25%)、「不十分だと思う」17人(39%)であった。否定的な見解が肯定的な見解を上回っているが、付されたコメントから浮かび上がってくるのは前記の「構成員が多すぎる」に由来するものが多数を占めている。そのような中で、機能面に関連した記述として「法律上の組織としての位置付けを明確にすべきで、法律作成に向かうことの役割を委員間で共有すべきだった」などがあった。
 第5は、「運営面(開催回数、1回当たりの開催時間、発言時間など)について」で、「適当だと思う」11人(25%)、「どちらとも言えない」12人(27%)、「不十分だと思う」21人(48%)であった。否定的な見解が肯定的な見解の2倍近くになっているが、これも主要な要因は構成員人数の多さと見てよかろう。付記された主な意見は、「審議対象の膨大さに比べて審議時間があまりに少なすぎた」、「骨格提言の素案が7月末から8月初めにかけて初めて示され、締め切り日程との関係で部会メンバーの間での最終的な議論がほとんどできなかった」、「1回当たりの時間は限界と感じるが、開催の回数は少なすぎ十分に深められなかった」である。
 第6は、「情報保障やアシスト体制について」で、「適当だと思う」28人(64%)、「どちらとも言えない」8人(18%)、「不十分だと思う」8人(18%)であった。付記された主な意見は、「知的障害者委員への配慮の不十分さは部会員全員が反省すべき」、「従来の国の審議会などでの情報保障よりは高い水準での保障ができていたと思う。しかしなお、速いスピードでなされる議論に難聴、知的、瞬きでの発言、盲ろうなどの構成員が平等に参加できたとは思えない」などである。
 第7は、「事務局体制について」で、「適当だと思う」23人(52%)、「どちらとも言えない」13人(30%)、「不十分だと思う」7人(16%)、回答なし1人(2%)であった。付記された主な意見は、「審議の内容と幅からみて、事務局の体制が弱すぎた。担当行政部署の事務局がどの程度機能したのかは見えにくかった」、「もっと作業部会が充実すべきだったが、それにしては事務局体制が弱すぎた」、「厚労省と内閣府による統一した事務局が必要だったのでは」などである。

グラフ5 総合福祉部会構成員によるアンケート「運営面(開催回数、1回当たりの開催時間、発言内容など)について」

適当だと思う(11人) 25%
どちらとも言えない(12人) 27%
不十分だと思う(21人) 48%

4 全体を通して

 不十分さが否めない推進会議や総合福祉部会であるが、大きくみれば積極的に評価していいのではなかろうか。障害者政策への当事者参加の重要性が言われて久しいが、現実には形骸化の状態が続いていた。社会実験的な意味を有する今般の推進会議や総合福祉部会は、まだ道半ばとは言え本格的な参加・参画の実践であり、日本における障害者政策史に一つの足跡を残したとみてよかろう。
 こうした背景の一つに、権利条約の生まれる過程からの刺激があげられようが、生まれる過程だけではなく、条約文そのものに根ざしていることを掲げておきたい(権利条約第4条(一般的義務)3項)。なお、日本において審議会は全体として不評の傾向にあるが、推進会議の到達点は審議会全体のあり方にも一石を投ずることになろう。
 なお、すでに記してきたように推進会議と総合福祉部会とでは、構成員の意識や感想にかなりの開きがある。推進会議構成員が肯定的な見解が多いのと比べて、総合福祉部会構成員はそうではない。その主要な理由としては、本文中にもあるように、人数規模の多さがあげられ、否定的な見解の多くはこれに由来するものと考えられる。したがって、総合福祉部会の存在や役割そのものを本質的に否定するものではないとみてよかろう。
 また、推進会議と総合福祉部会の双方の構成員から異口同音に述べられているのが、推進会議や総合福祉部会の考え方やシステムを一過的に終わらせてはならないという意見である。そのうえで、改正障害者基本法の下で新設が予定されている「障害者政策委員会」に引き継ぐべきであるとする意見が多かったことを付しておきたい。
 なお、本アンケートは政策立案に関する審議会のあり方や全体を通しての感想などを記述方式で回答を求めている。紙幅の関係で抽出となっているが、次頁に掲載した。
 最後に、貴重なデータが得られた今般のアンケート調査であるが、回答にご協力いただいた推進会議構成員、総合福祉部会構成員にこの場を借りて謝意を表したい。

(作成:本誌編集部)

推進会議構成員によるアンケート―政策立案に関する審議会や検討委員会のあり方について(自由記述)

○ 障害当事者が今後積極的に政策への参画を進めていく必要はある。また、政府において、広くそのような機会や場を確保することが重要と考える。その場合、障害当事者もこれまでの陳情にとどまらず、広く国民の理解に留意し、見識をもって政策提言ができるようになる必要があると考える。

○ 当事者参画が当たり前になるように、本推進会議の構成および運営・情報保障等を参考にしていただきたいと思います。

○ 障害関連の政策に限らず当事者参画の視点が必要であり、特に後発分野である障害施策等は、当事者が審議会や検討委員会の定員半数以上参画することが望ましい。

○ 障害当事者が国の政策の現場に参画できることは大変意義のあることである。障害者権利条約の理念を活かし、障害者関連政策は当事者の手で作るというスタンスは今後も守り続けてほしい。一言注文をつけさせていただくなら、障害当事者が参加しやすい会議運営について、情報保障の面から、また、車いす障害者への配慮などには、当事者の意見を十分聞きながら取り組んでいただきたい。今回の推進会議が本当の意味でのスタートだと思っている。これを基点に、障害者当事者が中心メンバーとなる会議の継続を期待する。

○ 障害者権利条約の理念と内容がしっかりと反映されることが肝要。国が率先してモデルとなり、市町村まで広がることを期待したい。

○ 障害当事者参画は必要なことで、今回は評価できる。しかし、各省庁で実施されている審議会・検討会等と情報交換できなかったことは残念であり、今後は改められていくべきと考える。

○ 推進会議や総合福祉部会での政策論議(審議)は、当事者や実務関係者が多数加わって論議された点で画期的な審議会である。

○ これまでの日本における審議会は、障害分野に限らず、一般的に見てあまりに形式的でおざなりだった。官僚が作成した文書を審議会が形の上でお墨付きを与えると言うものであった(今も大半はそうなっている)。また、委員への個別的な支援や外部への情報保障という面でも十分な対応がなかった。したがって、審議会への無力感、あきらめ感、不透明感は極限に達していたように思う。
 政策というのは、「何を決めるか」も重要であるが「誰が決めるか」がより重要な場合があり、また「どのように決めたのか」というプロセスも非常に重要になってくる。その点で、これまでの推進会議の果たした役割と具体的な成果(第一次意見と第二次意見)は、日本の障害者政策史上歴史に残るのではなかろうか。
 障害分野に関わって関係省庁で審議会や検討委員会が開催されているが、推進会議の特徴や成果を踏襲すべきである。同様に自治体に置いても。

○ これまでの障害当事者の蓄積された思いを当事者の肉声で表現する場として、障がい者制度改革推進会議は十分に機能してきたと思う。しかし、この声が制度改革にどの程度生かされたのかについては、厳しく評価せざるを得ない。1.各省庁の守旧的姿勢、2.これを打破する方向での政治的意思・力量の不十分さ、3.行政との折衝、立法過程でのパフォーマンス等における当事者委員を含む推進会議前構成員の技術的力量の欠如、等々がその背景にあると思われる。
 しかしながら、こうした消極的評価は甘受しつつ、推進会議が果たしてきた歴史的役割は十分に評価すべきである。1.当事者参画による制度改革の試み、2.短期間に集中審議し、そのため多くの時間と労力を傾注したこと、3.不慣れながら、政治・行政と果敢に渡り合い、また広く市民に問題の所在とあるべき方向性を明確に提示しつつあること、は今後のさまざまな分野での制度改革に引きつがれる貴重な知見である。

○ アメリカではリハビリテーション法の504条項に基づく委員会やNCDなど、当事者過半数の委員会は、かなり以前から設けられてきた。また、国内でも、この10年くらいの間に、先進的な自治体では当事者過半数の施策推進協議会が設置するところも出てきた。そうしたことから考えると、国レベルで障害者制度改革推進会議が当事者過半数で設置されたことは遅きに失したとも言えるが、歴史に残る出来事であった。
 「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」を尊重した政策決定を進めていくために、障害者に関連するすべての審議会や検討会は、推進会議をモデルにした委員構成や運営、手話や字幕付きの情報公開などを採用するようにしてほしい。

○ 推進会議が法律的に位置付けられていなかったため、他の審議会や検討委員会の正式なモデルとならなかった。また、日本は当事者の参画を実施していると海外に誇れる事例ともならなかったことは残念である。
 従来の中央障害者施策推進協議会と比べても、推進会議によって、障害者の実質的な政策決定過程への参加の度合いは飛躍的に高まったと言える。また、推進会議での情報アクセスの確保と合理的配慮の提供は、他の審議会のモデルとなるべきである。

○ 身体の方が中心になりがちなので、知的、精神などの分野の方の意見反映がややもすると不十分のように思う。

○ 障害当事者の参画は、この推進会議の設置を機会に、前とは格段に違うレベルに進展したと思う。

総合福祉部会構成員によるアンケート―部会を通して気づいた点等(自由記述)

○ 55人では物理的には難しいと思うが、会議場の配置(座り位置や机の配置)等は発言しやすい環境となっていなかったと思う。

○ 知的障害のある人本人の考えや思いを部会として反映することは当然であるが、制度や仕組みの議論に絶えずその場に参加することが本人にとってどうなのか。ルビをふることのみをもって合理的配慮とも言えない。また、知的障害と言われる人たちは、重複障害をもつ人たちを含め、幅広いことにも留意する必要があるのでは。

○ 今回、財政についての議論が十分に行われなかったことが気がかりである。理想とする新しい制度を考える際に、実際にその制度がどのように運用されていくのか。新しい政策を作っていくにあたり、予算の問題は避けて通れない。国や厚労省に任せきりではなく、当事者サイドからも財政論について、積極的な議論が必要だと思う。

○ 本当の意味での本人(障害当事者)の声(意向、思い、希望、主体)を中心にした部会論議というのであれば、十分な情報保障やアシスト体制は当然のことであるが、まず何よりも部会員みんなが本気で分かり合えるように、分かりやすく腹を割って話しをする、本気でその人の声を受け止めようとする、ということが基盤になると思う。今までと何ら変わりない、○○団体の代表とか、○○障害の代表とかいう立場での組織主張提示の会になってしまっていたところもあり、反省する。もっと、○○障害の私、○○の親の私、○○の支援者としてずっとそばにいた私、の立場で時間をかけて論議をしていくという会議の持ち方をしたかった。重い障害の人や知的障害の人の意向、主張の本質的根本的大切さが十分に反映されていなかったところもあったように感じて、とても、もったいない。何とか、今後の反映へとつないでいきたい。

○ 55人だからこそできた、深い議論。先の障害者自立支援法の施行をめぐり、関係者間で賛否が真っ二つに分かれる、という不幸な事態が起こった。だが今回の総合福祉部会は、自立支援法の廃止を前提とし、これまで同じテーブルについて議論をすることがなかった人々が、初めて顔の見える議論を展開した。既存の社会保障審議会等ではできなかった、より多くの代表者の参加によって、これまで踏み込めなかった多くの領域に踏み込んだ議論ができた成果は大きい。

○ さまざまな困難を超えてでき上がった骨格提言の深い意味。そもそも1年半というかなりの強行軍で、55人という大人数で、取り組んだ総合福祉法の骨格提言。だがその内容は、障害者権利条約の精神を盛り込み、かつ自立支援法で論争の的になった部分を建設的に乗り越える、画期的な内容となった。これを、55人のメンバーが一人も欠けることなく、一致団結してまとめられた点は、わが国の障害者福祉政策を変える金字塔の一つとなると思われる。問題は、政府および厚生労働省、立法府がこの骨格提言の内容や方向性を真剣に受け止めるかどうか、である。予算がないという安易な逃げ道で、この骨格提言の内容を葬ってはならない。

○ 知的障害者の資料はルビをつけるだけでした。分かりやすい言葉で情報提供をしてほしいです。

○ 会議がはじまる前に打ち合わせをやってほしいです。

○ 他の障害分野についての問題点を理解する学習会等あればよいと思った。たとえば遷延性意識障害者の在宅介護の現状、精神科病院の実態、医療観察病院の治療の現場、重度心身障害児の施設内での現状、また、先進諸国の同様なケアの実際。できるだけ映像等で、理解しやすいものを使って、共通理解できる仕組みで互いに学び合う必要があるのではないか。

○ 人数と時間の制約のため、テーマに沿って議論することが不十分なことは残念です。どうしても自分の立場の主張になり、互いに議論して、新たな道を探るという「協調」型の議論になりきれなかった。現実にはさまざまな利害のぶつかりや意見の相違もあるので、それをどう乗り越えるのかという実際的議論があって良かった。

○ これまでの、障害分野のみならず、厚労省所管の審議会・検討委員会のイメージを一変させるものであり、実質的な審議を行ったという点で今後に引き継ぐべきである。

○ 各障害を配慮した会議の試みは評価できるが、ただ単にルビを入れるだけでなく、分かりやすい情報提供が今後とも必要だ。

○ 地方公聴会、当事者ヒアリングが必要。

○ 55人という大所帯、かつ、さまざまな立場の構成員からなる総合福祉部会に対して、一部に「とてもまとまらないのでは?」との見方もあった。しかし、55人の構成員の総意として骨格提言がまとめられたことは、構成員全員の良識ある判断と、「何としてもこの国の障害者制度をよくしたい」との思いがあったからだと思う。取りまとめに関わった者として、心よりお礼を申し上げます。

○ サービス提供主体である自治体関係者が僅かでありバランスが悪い。協働して良い地域社会をつくっていこうという感じではなく、対岸に位置付けて批判するような印象を受けた(国や自治体に対し)。

○ 総合福祉法という新しい法律を作るための骨格提言の作成を目指す部会なので、部会の早い段階で、もう少し体系的な議論をする時間がほしかったという感想です。

○ 分かりやすさが問われた。知的障害当事者委員2人が加わってくださったことはとても貴重だった。同時に、彼らへの配慮を最後まで十分にできなかったことを部会委員全員が反省すべきだと思う。


「推進会議構成員・総合福祉部会構成員へのアンケート調査から」(『ノーマライゼーション』2012年1月号 P26~33)は、 発行後に下記のように訂正が入っている。
「1 推進会議ならびに総合福祉部会の特徴」
「障がい者制度改革推進本部(本部長は内閣総理大臣)の下に設置された推進会議は、その下に設置された総合福祉部会と合わせて(もう一つの部会として差別禁止部会があるが、後発ということもあり本稿では省く)、国家行政組織法に基づく正式な審議体である。」
  ↓
「障がい者制度改革推進本部(本部長は内閣総理大臣)の下に設置された推進会議は、その下に設置された総合福祉部会と合わせて(もう一つの部会として差別禁止部会があるが、後発ということもあり本稿では省く)、推進本部が障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるために設置されたものである。」