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障がい者制度改革推進会議

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シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議 第38回(H24.3.12) 資料1

障がい者制度改革推進会議の意義と課題に関する意見

目次

1、障がい者制度改革推進会議の存在意義について

2、障害者政策委員会に期待すること

3、その他

1、障がい者制度改革推進会議の存在意義について

【大久保委員】

○政府が、政府の機関として同会議を設け、様々な障害(機能障害)を有する当事者並びにその家族の声を政策に反映したいとした姿勢は評価したい。

○一方、同会議は、様々な障害当事者並びにその家族が一堂に会し、それぞれの置かれている状況や考え方について相互理解を深める場としての意義もあったと考える。

○同会議において、様々な障害当事者への「合理的配慮」が実践されたことは、今後の公的な会議等のモデルになると思われ、その取組みが普及することを期待したい。

○同会議の成果の一つとして、障害者基本法の改正が上げられるが、その改正内容に課題は残しつつも、確実に現行の障害者施策に反映されつつあり、同会議の果たした役割は大きいものと考える。

【大谷委員】

 推進会議の存在意義は、政府の委員会に構成員として障害当事者をその関係者を含めると過半数に及ぶ人員を迎え、各人の情報保障をし、しかもこれを全国に同時中継したことである。これは障害当事者を政府委員会の構成員とするときのモデルケースとなるであろうし、また全国中継は傍聴することが物理的に叶わぬ人たちに対する情報提供のモデルともなる。何より障害者抜きに障害者のことを決めるな、という権利条約の基本スタンスを実践したことである。今後とも政部内で障害者に係ることを審議するときには、是非この会議のあり方を踏襲していただきたい。

【大濱委員】

 サービスを利用する障害当事者が多く入る会議は今後の政府の会議の標準となるべきモデル。  なかでも、地域移行などにおいて重度障害者の問題が積み残されているため、特に長時間在宅介護のユーザーが政策過程に参画することは重要。

【尾上委員】

■「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」を体現した組織

 障害者権利条約の特別委員会で、何度も語られた「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」を体現した当事者過半数の構成や、東室長をはじめとした担当室による運営という点で、わが国における障害者政策への当事者参画に画期をなすものと、しっかりと評価され、今後の政策委員会に引き継がれるべきであると考える。
 また、これまで、ともすれば、障害本人当事者の参画の機会がつくられることが少なかった、知的障害や精神障害の分野でも、本人当事者参画を実現した点も大きな意味があると思う。(本人、家族が、それぞれ独立した意見として、尊重されることが重要)

 この推進会議の存在意義を高く評価する言説をいくつか紹介したい。
 例えば、政治学者の山口二郎氏(北海道大学教授)による『政権交代とは何だったのか』(岩波新書、2012年1月)では、政権交代による政策転換の成功事例として、以下のように、「成功例としての障害者政策」との見出しの下、次のように推進会議が紹介されている。
「もう一つの成功例は、障害者政策の転換である。…総括的な政策論議の機関として、総理大臣を本部長として、「障がい者制度改革推進本部」が設置された。…この会議は、障害者権利条約の基本精神である「私たち抜きに私たちのことを決めるな!(Nothing about us without us!)」という標語を基本理念として、法案の検討を進めた。
 この会議には、様々な障害者団体の活動家が多数集められ、委員の半分以上を占めた。…当事者主権の理念が民主党政権における障害者政策の基本とされたのである」(p121-122)

 また、昨年12 月に来日したESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)社会開発部長のナンダ・クライリクシュ氏も、講演の中で、障害者権利条約の批准に向けた優れた取り組みとして推進会議を高く評価されていた。これまでも長瀬構成員より国際人権委員会等の報告があったが、推進会議の取り組みに対し、国際的に高い評価がなされていることが伺えた。
 国際人権分野において、日本での取り組みが高く評価されることは、これまであまりなかったが、推進会議はそれだけの存在意義を有したものであったといっていい。

 ただ、一言付け加えならば、当事者過半数(並びに、知的や精神分野における本人当事者参画)の委員会は諸外国や自治体レベルでは以前から実現している事例もあることから、どのような政権になっても維持されるべき「スタンダード」といってよく、ようやく、国の組織においても、そのレベルに達したと見ておくべきである。

■手話、字幕付きの情報公開、イエローカードルール等、当事者参画による情報公開や会議運営

 推進会議は、あたかも日本での障害者の「合理的配慮の社会実験」の場のように、好事例をつくりだしてきている。
 毎回の推進会議の様子はインターネットを通じて公開されてきたが、周知の通り動画配信の際には手話と字幕が付けられている。そのことにより、聴覚に障害がある者も問題なくアクセスできる。また、知的障害を持つ委員が分かりにくい場合はイエローカードを示して再度説明を求めることができるようにする、イエローカードルールなどを取り入れてきた。
 もちろん、色々と試行錯誤をしながらであり、決して十分というわけではないが、当事者が過半数を占めることで、こうした情報公開や会議運営について工夫を凝らしてきたことは、「合理的配慮の社会実験」としても評価され、さらに、今後も継続されるとともに、色々な分野に拡大されることが重要であると考える。

 ぜひとも、推進会議で確かめられた、現在の情報公開について、政府の他の機関の情報公開のガイドラインに採り入れるべきであろう。(例えば、厚生労働省の障害保健福祉主管課長会議等も厚生労働省動画チャンネルで動画配信されるようになってきている。このこと自体は評価すべきだが、残念ながら現在のところ手話や字幕は付けられていない)

■政策決定プロセスの透明化

 障害者基本法改正に向けて、推進会議では、障害者権利条約批准を念頭においた深い議論が進められた。その途上で、推進会議の素案に対して各省庁から寄せられた意見が公表されたのも、これまでにないことである。これまで、こうした類のことはアンダーテーブルによる調整で行われてきたが、こうした各省庁の意見が明らかになったこと自体、政策決定プロセスの透明化に一石を投じたものと言えるのではないか。

【勝又委員】

  • 「障害者自立支援法違憲訴訟」和解条件の履行
  • 「政治主導」
  • 障害者権利条約の批准に向けた基礎固め(人々の意識の向上)
  • 従来の審議会形式による審議ではいれることのできなかった、障害当事者の議論への直接参加を可能にしたこと。(情報保障と情報公開を積極的におこなったことが重要だったと思う。)

【川﨑委員】

  • 障害当事者と家族が構成員の半数以上で、論議が展開されたことの意義は大きく、画期的であったと思います。
  • 情報公開により、精神障害者の家族の状況を構成員のみならず、広く全国の人たちに発信できたことは、大きな成果と考えます。
  • 反省として、論点整理が不十分だったように思います。各委員の発言を議論する時間がなく、論点を深めることができませんでした。
  • 省庁の横断的な連携がほしかったです。特に医療、雇用に関しては厚生労働省で検討会、研究会が行われていますが、この情報が全く提供されることなく会議が進められたことは、遺憾に思います。

【北野委員】

 北野は、これまで、いくつかの審議会や部会といったものに参加した経験を持ち、様々なことを学んだ。ただ、これらの審議会や部会等は、ややもすると、

  1. その担当省庁の担当者等によって、一定の方向性や結論(落とし所)があらかじめ想定されている。
  2. そのために、それに沿った議論展開が可能となるように、委員長や部会長等が決められている。
  3. 委員会や部会の委員も、その方向性や結論と異なる意見を持つ委員は若干名であり、僅かの修正で、台本どおりの結論となるといった傾向を感じることがあった。

 このことが、物事をスムーズに運ぶという点は否定しないが、2つの問題をはらむ。

  1. 一定の方向性や結論を担当省庁が仕切ることによって、わが国の制度設計をそれなりに展開できた時代は、終わっている。
  2. その修正が、想定内の部分しか反映されないのであれば、そもそもそんな審議会や部会等を開くのは時間と金の無駄である。

 では、われらが「障がい者制度改革推進会議」はどうであったのか?

  1. 第1回の時に、内閣府からの進行表と推進会議担当室長からの進行表の2種類の進行表がでてきた時には、正直この会議は空中分解するのかとひやひやしたが、ある種の緊張関係を孕みながらも、内閣府担当者と障害問題専門の民間登用者との協働チームは、見事に機能した。
  2. 38回に及ぶ会議においても、毎回のテーマについて、すべての委員が意見書を提出することができたのみならず、それらの意見は無視されることなく、会議でも議論され、その方向性や結論にも一定の影響力を持ちえた。
  3. さらに、何度かの意見書作成においても、推進会議委員による起草と担当室との連携が見事になされ、25人の委員は、それぞれの任務をもって意見書の作成に関与した。
  4. 最も緊張感を孕んだ、第2次意見書の最終まとめと承認の会議においても、担当室(長)一任とせず、内閣府と党政務官と担当室のギリギリの調整の元で、修正された意見書を改革推進会議の論議の元で承認し、その権能と責任を全うできた。

 では、これらのことは、何を意味しており、障害者政策委員会は如何にあればよいのかを2でまとめてみたい。

【佐藤委員】

1)障害当事者・家族の声を何よりも尊重して障害者施策を見直そうという視点、それを反映した委員構成となった点が意義深い。
 官僚が提出する資料・方針案にもとづき議論し、政府の既定の路線の上をいくような答申・意見に終始してきたこれまでの審議会と異なる審議が行われたことの意義は大きい。推進会議の2次にわたる「意見」は新たな視点での政策の在り方を示しており、さらに多様な背景のある55 人の構成員の思いがとりまとめられた総合福祉部会の「骨格提言」は、これからの障害者福祉のメルクマールとなるものである。

2)全ての障害者施策分野をまな板にのせて見直しの課題としたことも重要。

3)会議に参加できない全国の人々への情報公開や手話通訳などの障害者の情報保障に工夫がなされたことも重要。

【新谷委員】

 2009年12月9日の閣議で、「障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行う」ため障がい者制度改革推進本部の設置が決まり、12 月15 日の本部決定により「障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるため」障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)が設置された。推進会議の存在意義は、この設置目的に対する成果において検証する必要がある。
 推進会議の最初の成果物は第1 次意見「制度改革の基本的な方向」の取りまとめである。この第1次意見は、2010 年6 月29 日の閣議決定「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」に結実した。この閣議決定において、制度改革の基本的な方向が打ち出され、障害者基本法の改正、障害者総合福祉法(仮)の制定、障害を理由とする差別の禁止に関する法律の制定の行程が示され、検討すべき11の個別分野(その後文化・スポーツ分野追加)の課題とその検討期限が明記された。続く成果は「障害者制度改革推進のための第2次意見」の取りまとめとそれを受けた昨年7月の障害者基本法の改正である。
 障害者基本法の改正は内容において様々な評価があるが、推進会議の存在意義に関連して、「第2次意見を受けて改正法の要綱が推進会議に提出され、会議での議論を経た政府案が国会に上程、両院で審議・修正されて7月29日の法案成立となった」という改正プロセスの確認が重要である。不十分な面もあるが、当事者参加の会議体の意見を踏まえた法案の作成があり、これを立法府が審議し法律が成立するプロセスが現実化したことは大きく評価すべきである。
 この評価すべきプロセスが、僅か1年もたたないうちに障害者総合福祉法の策定過程で打ち砕かれようとしている。再掲するなら、障がい者制度改革は「障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革」を目的としているのであり、2010年6月29日の閣議決定は「応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする障害者総合福祉法の制定に向け、第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成24年常会への法案提出、25年8月までの施行を目指す。」としているのである。この閣議決定を実現すべく、推進会議のもとに設置された総合福祉部会は18回の会議ののち「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」を提出したが、その後の経過は委員各位のご承知のとおりである。
 推進会議は、会議の進め方、情報保障、情報公開など様々な先駆的試みを現実化し、また会議を超えて社会全般に制度改革の一石を投じたが、障害者総合福祉法を巡る現在の経過は、推進会議への評価を非常に厳しくするものと言わざるを得ない。

【関口委員】

 Nothing About Us Without Us を実践する場としての意義が大きかった。これまでに出してきた意見書や骨格提言の意味は重く受け止めるべきである。必ずしも全面的に受け入れられたわけではないが基本的な方向を定めるのに大きく貢献している。従って、意見書等はこれで終わりというのではなく、常に参照されるべきものとして、扱われなければならない。これほど集中して実質的な議論を行いそれが情報公開の中で情報保障を伴って行われた事の意義は計り知れないほど大きい存在意義があった。

【土本委員】

障がい者制度改革推進会議には全部で26人が参加をして はんぶんいじょうは  しょうがい当事者で 会議をやって とうじしゃしゅたいのせいどや法律 の会議でした。

それまでは せんもんかといわれている人たちがちゅうしんにはなして、きめたことで、しょうがいしゃを ぬきにやってきたのですが、障がい者制度改革推進会議にはきほんになることで私たちに関係することを決める時は、必ず私たちの意見を聞いて決めること がやってきたことです。

推進会議には担当室室長 や ぎちょうだいりの人は しょうがいしゃ当事者です。こうせいいんのしょうがいしゃで それぞれ の むずかしいところをはなす資料を てんじやパソコン ゆびてんじ、ちてきのしょうがいしゃにはふりがなの資料とわかりやすくせつめいする支援者がついて会議をやって むずかしいことばや文書にはイエローカードをだすとゆうことがゆるされました。いままではあとでせつめいするとゆうことで そのばではしなかったし、あとでせつめいをしてもらっていたのですが そのばで こたえられることがよかったこともあり、まわりのこうせいいいんの人たちにも しょうがいしゃのむずかしいことがわかったとおもいます。

障がい者制度改革推進会議のようすを みれるようにしてきたところです。
いままでは どこで会議をやって どこできめられたのかがなくなった かとおもいます。

障がい者制度改革推進会議は第38回でおわるのですが いままで 会議をやってきたことが しょうがいしゃのためにやってきたとゆうことを わすれずにしていきたいです。

障がい者制度改革推進 第一次意見 第二次意見 改正障害者基本法のわかりやすいばんをつくりあげてきました。おなじこうせいいんの人たちの協力をいただいてつくりあげて事務局の人たちには てんじやふりがなの資料をもわたしてもらいありがとうございました。その人たちが いなかったら障がい者制度改革推進会議もやっていけられなかったとおもいあります。

【中西委員】

  1. 障害者を主体に、全障害当事者がバランス良く参加した会議として画期的であり、全国の障害者計画会議構成のさいのモデルとなり、当事者参加に大きな影響を与えた。
  2. 議論の内容は動画、障害者団体による速報、ウエブでの報告、地域フォーラムなどあらゆる手段を活用して関心を持つ人たちに伝えられたため、省庁側の回答があまりにおざなりで誠意に欠けていた点など、問題点を会議外の人たちとも共有でき、改革推進のための運動をもりあげるきっかけを提供できた。
  3. 合理的配慮を当然のこととした完璧なロジのあり方およびわかりやすい版の作成は、海外にも誇れるモデルとなった。
  4. 推進会議での討議を経て国内法の整備を実施後に条約を批准するという日本の方式は、批准を優先する従来の方法を当然のこととした海外では最初理解されなかったが、批准後もたいした進展がみられない国が多いなか、有効な方法として評価された。
  5. 制度改革会議担当室長や職員の全面的支援の下、全員の熱意が実った結果として短い期間でありながら一定の成果を残せた。
  6. 委員26名が協力しあい、ちょっとした提言も互いの議論の中で深めその意図を尊重しながら、全能力を出し切って会議に参加したことは素晴らしかった。
  7. 制度改革会議が国会で承認された、法内の会議であれば、省庁ももう少し真剣に権利性の議論にのってきたのではないかと悔やまれる。

【長瀬委員】

〇政策決定過程への障害者の参加(Nothing about us without us)の実現(障害者の権利条約第4条第3項:締約国は、この条約を実施するための法令及び政策を策定し及び実施するに当たり、並びに障害のある人と関連する問題についての他の意思決定過程において、障害のある人(障害のある子どもを含む。)を代表する団体を通じて、障害のある人と緊密に協議し、かつ、障害のある人を積極的に関与させる)

〇障害者の権利条約に基づいた障害者政策全般の見直しへの貢献

〇障害者基本法改正への貢献

〇障害者の参加の前提となる情報保障などの合理的配慮の実現(手話通訳、文字通訳・筆記、磁気ループの設置、点字資料の配布、適切な休憩の確保、知的障害者の支援者、ルビ付き資料の配布、知的障害者のアクセシビリティカード利用)

〇インターネットでの動画配信(同時、録画)などの公開性確保

〇『わかりやすい第1次意見』、『わかりやすい第2次意見』、『わかりやすい障害者基本法』の作成による知的障害者向けの情報提供の努力

【久松委員】

 推進会議設置そのものが画期的でありました。障害をもつ当事者が構成員の過半数であること、情報保障の取り組みが積極的に展開されたこと、推進会議がインターネット等に公開され手話通訳、字幕が付与されたこと、国のあらゆる障害者政策について細部にわたり審議できたこと、推進会議の審議した結果が関係する省庁に大きな影響を与えたこと等です。このような審議が本来の姿であり欧米の先進国と同様に実質的な審議ができたことは大きな意義があったと思います。

【松井委員】

 同会議が、従来の審議会などとは異なり、障害当事者をはじめとする多様な関係者の意見が反映されるような構成員から構成されていたこと、また従来の縦割り行政の枠を超えた議論が行われるような仕組みとなっていたことから、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」(平成22年6月7日)、同閣議決定(平成22年6月29日)、「障害者制度改革の推進のための第二次意見」(平成22年12月17日)、第二次意見を踏まえて改正された「障害者基本法」(平成23年7月29日)および「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(平成23年8月30日)などには、国連・障害者権利条約等の趣旨にそった内容がかなりの程度反映されたと思われる。推進会議がなければそのような成果がえられなかったという意味でも、同会議の存在意義は高く評価されてしかるべきと思われる。同会議での審議の内容は、動画をはじめとするさまざまな手段で公開されたこと、また開催場所や回数はかぎられていたとはいえ、地方でもフォーラムが行われたことで、より多くの市民の関心を深め、ひいては何らかの形での制度改革への参加を促進することになったといえる。
 その一方で今後への教訓とすべきことは、推進会議で十分な議論をするための時間がかぎられていたとはいえ、検討内容のうち、かなりの部分についての検討がかならずしも十分ではなかったことから、その検討した事項の実現化にむけての道筋がつけられなかったこと、あるいはそのためのコンセンサスの形成には至らなかったことである。具体例をあげれば、総論といえる障害者基本法には推進会議でのかなりの意見が反映されたが、各論レベルの実定法にまで反映させうるような議論が深められなかったことである。それは、推進会議のもとに設置された部会が、総合福祉部会と差別禁止部会に限定されていたことにもよる。もっともそれ以外の部会を設けるだけの事務局体制をはじめとする資源が内閣府に与えられていない、という現実を考えれば、推進会議に過剰な期待をするべきではないかもしれないが。このことは、改正障害者基本法に基づき設置される「障害者政策委員会」の課題にも共通することといえよう。

【森委員】

 障害者施策の抜本的改革を目指す原動力の機関として設けられ、障害者権利条約の理念を尊重した会議・体制で、自らの責任と障害種別に偏らない協調性と公平性を重視した推進会議(合議体)の在り方は、以下の点を含め、今後の障害分野だけでなく他の分野に対しても、評価できる一つのモデルとなったと考えている。しかしながら、推進会議の法的根拠(法制化)ができなかったことは、振り返っても極めて残念と思われる。

  1. 構成員26人(オブザーバー2人)のうち、障害当事者が15人
  2. 障害者の政策決定過程への参画
  3. 障害を有する構成員への情報保障やアシスト体制の配慮(合理的配慮の実践)
  4. 全構成員参加による実質的な審議実行(論点を整理した上での論議)
  5. 推進会議の情報公開システム(一般傍聴や動画配信等)
  6. 事務局体制(民間からの登用を含め、障害分野に精通している事務局員体制等)
  7. 合議体としての存在の確認(推進会議での改正障害者基本法や総合福祉部会での骨格提言が構成員全員の総意としてまとめあげられた)

【福島オブザーバー】

 従来、「障害者基本法」に従い、内閣府に設置されていた「中央障害者施策推進協議会」は、その実質的機能において、形式化・形骸化していたといわざるをえない。
 こうした従来の「中障協」の状況を踏まえたとき、このたびの「障がい者制度改革推進会議」の設置とその意欲的な運用自体には、大きな意味がある。
 もっとも重要な意義は、障害当事者やその家族が政策立案過程に参加・参画することの可能性を現実に示した、ということであろう。
 また、その成果として、2011年8月の「障害者基本法」改正において、一部ではあるものの、当推進会議での議論の結果が反映されたこと(障害概念に「社会的障壁」が加えられたことや「発達障害」が加えられたことなど)と、当「推進会議」に設置されている「総合福祉部会」において、同月末に、障害者自立支援法廃止後の「新法」制定に向けての「骨格提言」がまとめられたことには、重要な意義がある。
 しかし、その一方で、当推進会議に期待される役割が必ずしも明確ではなく、また付与された権限はきわめて制約的なものであるため、結果的に後述の「政治的アリバイ作り」に加担してしまった側面も否めないことを明記すべきである。

2、障害者政策委員会に期待すること

【大久保委員】

○改正障害者基本法に規定された同委員会の権能により、各種の障害者施策が整合性をもって総合的かつ確実に推進されることを期待する。

○我が国が近い将来、「障害者権利条約」を批准することが想定されるなか、同委員会がそのモニタリング機関として実質的に機能することを期待する。

○同委員会の構成員については、できるかぎり様々な障害当事者並びにその家族や関係者(教育、福祉、労働など)も含め、広く参画を求めることを期待したい。

○同委員会を構成する障害当事者並びにその家族には、その当事者性を基本としながらも、政策ならびに具体的施策の議論にあたっては、様々な障害当事者並びにその家族や関係者(教育、福祉、労働など)、さらに一般市民などに配慮した広い視点を期待したい。(それが「共生社会」にとって重要だと考える。)

○同委員会が有効に機能していくためには、先ずは、政府内での連携、調整が重要と考える。特に、障害者施策に係る個別分野の検討にあたって、同委員会と各省庁の審議会等との関係が今後とも課題となることが予想される。よって、各省庁との積極的な意思疎通を図る取組みを期待したい。

○法的に位置付けられた同委員会は、時の政府による機関とは異なる性格があり、行政府のみならず、広く立法府との連携、協力にも配意することを期待したい。

【大谷委員】

 推進会議を実質的に引き継いで頂きたい。もともと推進会議の法定化として政策委員会を位置づけたのであり、前述した推進会議のあり方、当事者性は存分に引き継ぐことを前提とし、これからは、法的根拠・権限に基づきより強固にその役割を果たしていただきたい。特に調査は委員会としても、また当事者が参加しているメリットを生かし、自由に活発に、創意工夫した調査を実現していただきたい。また意見を出すだけではなくその後の調査やフォローに関わることによって意見の実効性を高めていただきたい。
 推進会議の限界は、他省庁との調整に無力であったことである。他省庁に対し意見を提起し、忌憚のない意見を交わし、他省庁が所管する事由について、意見の実効性を高めてほしいと思います。

【大濱委員】

委員会のあり方

 推進会議同様に、

  • 現にサービスを利用している障害当事者が多く参画することを期待する
  • なかでも特に長時間在宅介護のユーザーが参画すること

積み残し課題について

 障害者総合支援法

「長時間の介護部分は市町村負担を減らす」などの、市町村と都道府県・国の財政調整については、3年後までの検討課題となっているが、総務省・財務省・厚労省など複数省庁間の調整が必要な項目でもあり、障害者政策委員会で強く関与すべき。
「シームレスな介助」については、文部省(大学・学校関係)・国土交通省(道路運送法関係)・厚労省など複数省庁間の調整が必要な項目でもあり、障害者政策委員会で強く関与すべき。

 障害者福祉計画・障害者計画

 施設から地域への流れや、権利条約の理念に沿った施策となっているかについて監視が必要。  また、24時間介護など、特に常時の介護を必要とする障害者の介護施策は特に立ち遅れているため、障害者計画や障害者福祉計画で、具体的な解決を目標に立て、毎年の進捗率を監視するなど、積極的に解決に向けて関与すべき。

【尾上委員】

まず、1.で、述べた推進会議の意義を継続させていくために、

  • 当事者過半数の委員構成と運営
  • 手話、字幕付きの情報公開、イエローカードルール

等を、政策委員会においても引き継いで維持・発展させていくことが不可欠である。
 その上で、3.で述べる改正障害者基本法の積み残し課題の一つである、「障害のある女性」について精力的な検討が行えるように、障害のある女性委員を増員することが求められる。

 今後の政策委員会の開催に関連して、参考資料として送られてきた『月刊・ノーマライゼーション』のアンケート調査によると、かつての中央障害者施策推進協議会では、「政策の発展に貢献できている」という設問に否定的な意見が、肯定的な意見よりも2倍を占める結果が出ている。
 私自身は、施策推進協議会の構成員ではないので、このアンケート結果から類推するしかないが、「年に1~2回」という開催頻度、「1回あたり1時間半」という開催時間が大きな原因になっているように思われる。年1~2回、1回1~2時間程度といった形だと、委員個々の努力とは別にして、どうしてもセレモニー的な場とならざるを得ないことは容易に予想できる。
 政策委員会は、障害者権利条約・第33 条に規定されているモニタリングの役割を果たすことが求められる。このモニタリング機関としての機能を果たしうる、十分な開催頻度と一回辺りの時間が確保されるようにすべきである

 また、「機能する政策委員会」を考えると、次のようなことが実施できるような運営と体制が必要と考える。

  • 各種調査やヒアリングの実施
    ※昨年8月から施行されている改正障害者基本法では、第10条(施策の基本方針)に、「障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策は、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない」とされていることから、「障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態」をきめ細かく把握していくことが求められる。
     また、新規調査以外にも、既存の政府調査統計を含めて性別や年齢階層等から複合的に現状分析できる基礎データを整備することも、課題として残されている。
  • ワーキング等も含めて機能的に動き、検討ができる組織
  • 各地方における合議機関との連携、協力体制
  • 政策委員会の提言、勧告等を実効化させる体制
  • 事務局スタッフの大幅な増員

【勝又委員】

  • 社会保障制度審議会・障害者部会や労働政策審議会・障害者雇用分科会、との効率的な連携。
  • 上記以外の省庁の各審議会や検討会における基本法に関わる部分についての効果的介入の方法を確立し、実際によい影響を与えていくこと。
  • 人権擁護機関(国連や法務省)との効果ある連携。
  • 委員会が実施する、監視・調査研究が、政策の評価や改善に実際に影響を与えることができるように、委員会の監視・調査部門の強化。

【川﨑委員】

  • 「障害者基本法」「障害者総合福祉法」等の積み残し部分は、引き続き審議 されるべきです。
  • 省庁の横断的連携のもと、情報は共有し、論議されるようにすべきです。
  • 中央障害者施策推進協議会は年1度くらいの開催でありましたが、障害者政 策委員会は、必要に応じて開催日を増やすことが必要と考えます。

【北野委員】

  1. アメリカのNCD(全米障害者評議会)のように、一定の独立性とそれなりの事務局体制をもつこと。実際には、内閣府と担当事務室の関係はこれからも微妙であろうが、今後も内閣府が各省庁との調整することを鑑みれば、その位置づけ以上に、担当事務室の力量が問われて来よう。これまでのような、民間から招聘した常勤の室長と非常勤の数名のスタッフ体制では、とても、改正障害者基本法32条に謳われている、わが国全体の障害者に関する制度・施策の全容をモニタリングして、必要なレコメンデーション(勧告)を出し、その報告に基づいて追跡調査することは困難である。今の倍以上の各種専門スタッフを常勤で確保する必要があろう。
  2. 政策委員会のメンバー構成であるが、推進会議の創造的伝統をふまえて、その過半数は障害当事者とすべきである。たしかにこれまでの審議会や部会にも障害当事者は参加している。しかし、それが少数で、しかも担当省庁から恣意的に選ばれているとすれば、その委員会は創造性を発揮できない。女性の問題を審議するのに、その過半数が男性委員であることが失笑物であるように、障害者問題の場合も失笑物であることを忘れてはならない。さらに、現行の制度・政策に対して、創造的・現実的政策提言のできる代表を選出す べきである。
  3. 政策委員会の委員長(座長)は、政治と行政と事務局と委員会メンバーとを繋ぐ結節点の役割を担う訳であるから、その4者の推薦と了承のとれる人材が求められよう。
  4. 1でも述べたように、「一定の方向性や結論を担当省庁が仕切ることによって、わが国の制度設計をそれなりに展開できた時代は、終わっている。」つまりは、政治主導・民間主導・地方主導のそれぞれを、如何にシステム化するのかである。政治主導については、政党ごとの仕組み以外に、国会議員超党派で、「障害者制度・政策検討チーム」のようなシステムを創出し、政策委員会とのキャッチボールができるようにすべきである。つまりはアメリカのNCDのように、国の制度・政策に対して調査・勧告を政策委員会が一方的に行うだけでなく、国会議員の方も、政策委員会に、自分たちの法・政策提言に必要な調査と情報提供を求めることが可能な制度にすべきである。
  5. 地方主導については、委員に都道府県・市町村のメンバーを加える従来手法に加えて、地域モデル提案や地域活動提案を反映する仕組みが必要である。ただし、国レベルでは、その様なデータをふまえて、あくまでわが国のどこで暮らそうと一定保障される基準を示すべきであり、それに対する横出し・上乗せの権限を自治体に与えるべきであろう。
  6. 民間主導でもう1点考えられるのは、アメリカの様な、民間調査研究機関や大学研究室とのネットワークであろう。そのためにも、事務局に一定の独自裁量予算を配置すべきであり、これが無ければ、手足を縛られた状態となろう。
  7. 私は、一定の方向性や結論を担当省庁が仕切ることによって、わが国の制度設計をそれなりに展開できた時代は、終わっていると述べたが、そのことは、担当省庁の役割が終わっていることを意味しない。むしろその逆に、担当省庁の役割は増大している。わが国の制度設計が困難になってきたのは、世界一の少子高齢化とじり貧の経済成長の中で、もはや目標となる他国の制度・政策もおいそれとは見つからないし、民間の先進モデルを発見することも困難だからである。つまりは、担当省庁は、一段と知恵を絞って、民間の英知を結集し、民間に種をまき、世界レベルの情報を、民間シンクタンクを育成しながら、収集分析していかなければ、この国に、もはや展望はないのである。
     今後、国家予算と国家官僚の知恵と情報とエネルギーを如何に使うのが重要であり、今回の障害者政策委員会と関係省庁と大学を含めた民間シンクタンクとの連携は、一つのモデルケースとなろう。

【佐藤委員】

1)委員の人選

 基本法に基づく障害者政策委員会を実効性のあるものとするには改革推進会議の流れを着実に引き継ぐ人選とする必要がある。同時に「推進会議」は改正前の障害者基本法の障害者の定義をベースにしており、慢性疾患・難病分野、自閉症など発達障害分野、高次脳機能障害分野、障害児の分野、高齢障害者分野、重症心身障害・遷延性意識障害・引きこもりに関連する障害分野など、改正基本法に沿った拡充が必要とされる。推進会議も総合福祉部会も身体障害者に偏っているように思われるとの意見を複数の人から聞いた。
 あわせて、地方の意見を吸い上げる仕組み、事業者や自治体現場経験者、医療や教育に明るい人、等の面でもより拡充することが期待される。

2)また情報公開・情報保障についても同様に引き継ぐ必要がある。

3)政策委員会の議論を中間的にまとめて、それに対する意見募集を全国的に行うなど、委員以外の人々の参加の在り方を工夫すべきである。「推進会議」で行われた地方フォーラム・地方公聴会のような取り組みもさらに発展させるべきである。

4)この点では、政策委員会と地方自治体の合議機関(基本法第36条)との連携を考えるべきである。地方の合議機関から条例レベルでは解決困難な課題について政策委員会に意見を提出するなど。

5)政策委員会は調査・監視・勧告など旧・中央障害者施策推進協議会とは大きく異なる役割を担うことになるので、事務局職員体制、調査等の費用、資料室や情報処理設備、会議室などの整備が必要とされる。この会議室は30名の全体の会議とは別に事項別の担当者数名が打ち合わせをしたり、委員以外の専門家の意見を聞く等のために必要とされる。

6)「総合福祉法」については、3月1日の法案では何より障害者の権利性、及び国・自治体の義務が明確にされていないことが問題。幾つかの検討事項は規定されているが、検討の方向性が全く不明であり、権利擁護や地域移行の法定化など検討事項にも入っていない。依然として谷間の障害・疾患が残り、相談・移動やコミニュケーション支援などが裁量経費のままで地域格差が広がり、家族の収入を基盤とした利用者負担制度が継続する。「骨格提言」にそった改革が「段階的・計画的」に実施されるよう引き続き取り組む必要がある。

7)「福祉」と「差別禁止」以外の分野の改革の検討は各省庁の審議機関を中心になされているが、これらと政策委員会とがどのように連携するかを考えなければならない。たとえば、「教育」の課題は「第一次意見」の後からは、文科省の枠組みで議論されてきたために、推進会議全体の課題とはなりにくかった。

8)障害者基本法第17 条に「療育」が書き込まれた。これまで療育機関は国の施策上の計画的な整備には明確に位置づけられてこなかった。4 月からの児童福祉法改正によって市町村格差が広がる可能性があるので、国や都道府県の責任を明確にした議論がなされることを期待する。

9)活動と参加を推進するための手段(環境)としての、支援機器(福祉用具)は、医療、福祉、教育、労働、情報、交通などにまたがる横断的な性格のものであり、政策委員会の中に部会などを設けて集中的に議論すべきである。

10)行政データの公開と効果的活用

 制度改革は、憲法、障害者基本法、障害者権利条約、「基本合意」などの規定や理念をふまえつつ、同時に現実の障害者の生活状態や非障害者のそれとの比較、施策の実施状況のデータをふまえつつ行う必要がある。実際の障害者施策を通じて膨大な行政データが国と地方には存在しており、政策委員会がこれらを効果的に活用できるようにすべきである。

11)障害者基本法第10条1項に基づいて、障害者施策全体を評価し課題を示すことが出来るような総合的実態調査を実施すべきである。その際、厚労省が2011年度に行った「生活のしづらさ調査」の継続・発展によって対応するのか、国民生活基礎調査などの活用を考えるのか等を含めて検討すべきである。

【新谷委員】

 内閣府に設置される障害者政策委員会(以下政策委員会)は障害者基本法第32条の規定に従えば、障害者基本計画の作成及び実施状況の監視に関し内閣総理大臣または関係各大臣に意見を述べ、また勧告することがミッションとなっている。
 現行の障害者基本計画が平成15 年度から平成24年度までの10 年間を対象としているので、政策委員会では平成25 年度から始まる障害者基本計画に関する意見答申が最初の仕事となるが、障害者基本計画の策定と同時並行で検討すべき課題が山積している。
 喫緊の課題は、障害者自立支援法に代わる新法への対応、そして障害者差別禁止法に関する部会報告への対応である。また、2010 年6 月29 日閣議決定された12の個別分野の検討状況の検証が急がれる。政策委員会の所轄事務に関する障害者基本法第32 条の規定は、「障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行う」基本法改正趣旨を踏まえて、広く解釈すべきと考える。
 また、2 年間に亘る推進会議の実務運営を踏まえて、政策委員会の機能強化のために事務局体制には最大限の配慮を行うべきである。

【関口委員】

 モニタリングを行い、資料提供を要請し、あるいは提言が出来るので、実質的な障害者の置かれた状況の改善に寄与できるのではないかと期待している。

積み残した課題

精神障害者施策の在り方、ex.強制医療の在り方:精神の特別法を作るのか

医療基本法の特別事項として整理するのか、:特別な心の健康基本法の存否、:医療法施行規則10条3項による差別の解消の為の法令改正

○社会的入院の解消:どうやって病床削減を進めるのか

○精神障害者の人権と尊厳をいかに守るのか:あらゆるプロセスでの人権擁護システムの法制化

○基幹相談支援センターの存否:前項と関連もするが相談支援の在り方

○社会問題はどこまで精神医療化すべきか:自殺予防のために精神医療を用いることで本質は解決できるのか、早期発見による児童への抗精神病薬の処方

【土本委員】

障害者政策委員会にきたいすることは 障がい者制度改革推進会議や総合福祉部会を やってきたことを いかしながらも、やっていくことです。

障害者政策委員会にしょうがい当事者・・・、しょうがいのことがわかるのは しょうがいしゃです。

障害者基本計画にも ここが おかしい と いっていけてることが できるのか ふあんです。

が いっていかないとかわらないし、こえを あげないと こえがないとみてしまい どんどん すすんでしまい また、しょうがいしゃの こえも きかずに かってに きめられてしまいます。

せいどや法律が なかった とゆう ことにつながるのを とめる ことが できる ことが ひつようです。

私たちに関係することを決める時は必ず私たちの意見を聞いて決める こと も していきたいです。

【中西委員】

  1. すべての議論は障害者の権利条約に基づいて実施されてきたので、今後とも条約を参照しながら議論を重ねて欲しい。
  2. 達成できなかった課題も多くあるので、整理した上で議論に臨んで欲しい。特に女性障害者の問題は日本では依然としてなおざりにされているので、すべての機会に盛り込むべき項目として認識されたい。
  3. すみやかな情報公開は問題の共有のために需要であるので、現状の広報体制を継続していって欲しい。
  4. 差別禁止法の議論はともすれば法律専門家主導になりがちであるが、委員会がその議論を当事者にもわかりやすく伝える努力をしてほしい。

【長瀬委員】

〇障害者の権利条約の理念の社会全般への定着の努力

〇障害者の権利条約の障害者政策への反映

〇推進会議で実質的に開始された政策決定過程への障害者の参加の充実、深化

〇障害のある子ども・青少年自身を含む、障害のある子ども・青少年を代表する組織の参加の促進

〇行政との連携

〇他分野との接続

〇社会保障と税の一体改革との接続

【久松委員】

 法的根拠を持たない推進会議とは違って、障害者政策委員会は障害者基本法を拠り所とします。推進会議と同様の機能を発揮し、具体的な提言(意見)のみならず国の障害者政策や地方の障害者政策について改善の意見が提起でき、そのための調査・審議ができることを期待します。
 また、推進会議で充分に審議できなかった教育・司法・労働・情報アクセス・コミュニケーション保障・障害者スポーツ・文化等を継続して審議できるようお願いします。
 なお、委員の選出にあたっては推進会議と同様に障害をもつ当事者団体が過半数を占めるよう委員構成に特段の配慮を希望します。

【松井委員】

 推進会議には根拠法がなかったのに対し、障害者政策委員会は、障害者基本法に基づくものであるだけに、同委員会は推進会議以上の役割を果たしうることが期待される。
 同委員会にとくに期待したいのは、障害者施策のうち、省庁間にまたがる課題の調整と解決への取り組みである。たとえば障害者の雇用・就労にかかる審議体は、厚生労働省の労働政策審議会と社会保障審議会であるが、雇用・就労にまたがる解題を検討するために両審議会を合同で開催するということにはなっていない。したがって、新たに設置される政策委員会には、縦割り行政をこえた課題について検討しうるような仕組みの整備(具体的にはそうした課題を検討できるような部会(分科会)の設置も含む。)がなされる必要がある。
 しかし、たとえそうした仕組みができたとしても政策委員会が形骸化せず、期待される役割を着実にはたしうるためには、適切な委員構成とその委員会活動への政府の強力なサポートが不可欠であろう。
 政策委員会は、障害者計画の実施状況のモニタリングだけでなく、わが国が障害者権利条約批准後は、その国内実施状況をもモニタリングする役割も担うことからも、それらができるような資源(人員と予算など)を伴った事務局体制の整備も求められよう。
 権利条約では、「障害者に対する差別となる既存の法律、規則・・・を修正し、廃止するためのすべての適切な措置(立法を含む。)をとること」(第4条 一般的義務)が要請されているが、わが国で現在見直しがすすめられている、あるいは予定されているものは限られていることから、すべての関連法や規則などを洗いざらい見直すためにもそうした体制整備は必須である。
 なお、推進会議の第一次意見を踏まえて閣議決定された事項のうち、現在各省庁で取り組まれている事項、およびまだ手づかずの事項についてのフォローアップも政策委員会でしっかりしていただきたい。

【森委員】

  1. 障害者施策委員会の設置は、改正障害者基本法の最重要機能である。従来の中央障害者施策推進協議会を一変し、障がい者制度改革推進会議の利点を生かした、新しい障害者施策決定の規範となるよう期待している。(“Nothing about us, without us”が当たり前になるように)
  2. 総合福祉部会においては、作業部会を含めて検討する期間が短すぎ、論議する上で必要と思われた関係機関(特に、実施主体や事業者等)へのヒアリングなど、現場での生の声を聞くことができなかった。また、骨格提言を実施 するための工程表等といった具体的な立法化への検討ができなかったこと は、大きな課題であると考える。このようなことがないようなスケジュール のもとで、きちんと論議を尽くせる体制を期待したい。

【福島オブザーバー】

 従来の「中央障害者施策推進協議会」も、またこのたび設置された「障がい者制度改革推進会議」や「総合福祉部会」も、いずれも、「障害分野・関係者に言いたいことを言っていただく場を確保しました」という「政治的アリバイ作り」の場になってしまった側面は否定できない。このことは、直近の「障害者総合支援法案」策定過程の与野党、とりわけ民主党の対応の不明朗さ、不誠実さを見れば明白である。
 そこで、今後、新たに設置される「障害者政策委員会」の機能・権限の充実と強化が実質的になされることが切望される。
 第一に、運営面においては、当「推進会議」で蓄積されたさまざまなノウハウ、当事者の構成メンバーを過半数にする基本方針などのポジティブな成果を継承しつつ、第二に、たとえば、総理直属の諮問会議の性格を実質的に同「政策委員会」に持たせるなどの取り組みが望まれる。

3、その他

【尾上委員】

■継続した制度改革を推進していくための体制づくりを

 推進会議は、障害者基本法に基づく政策委員会に発展改組されていくことになるが、政策委員会の役割・機能と平行して、継続した制度改革を推進していくため当事者参画による検討をどこで行うのか、その体制づくりが、以下の二点から急務であると考える。

一つは、昨年の障害者基本法改正の中では、
・障害のある女性
・精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続の確保
が大きな積み残し課題となった。
 附則にある3年後見直しの際に、ぜひとも解決されるべき課題である。
 これらの2点について、集中した検討を行ったり、調査(障害のある女性の複合差別実態調査や、入院患者・施設入所者調査等)の作業等を、どこで行うのか、政策委員会への移行の中で、それと平行して整理していく必要がある。

 もう一つは、先日、民主党の厚労部門で了承されたと伝えられる「障害者総合支援法」に関連してである。まだ、閣議決定もなされておらず、さらに与野党協議や国会審議で最終的にどのようなものになるか予断は許さないが、制度改革に関わる重要な事項の多くが3年後見直しに委ねられたと言える。

附則一「この法律の施行後三年を目途として、障害者総合支援法第一条の二に規定する基本理念を勘案し、常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方、障害程度区分の認定を含めた支給決定の在り方、手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずる」

 つまり、パーソナルアシスタンスや移動支援、就労支援の在り方、支給決定の在り方(骨格提言では協議調整による支給決定への組み換えを求めている)、コミュニケーション支援、意志決定支援の在り方等など、いずれも、骨格提言で提起した内容の重要項目が、3年後見直しの課題として設定されている。

 制度改革に向けた検討が(少なくとも)後3年は継続されなければならないことが、このことから明らかである。
 そして、同じく同法案の附則二では、「政府は、一の検討を加えようとするときは、障害者及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとすること」とある。
 この「障害者及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置」とは、推進会議で確認されてきた、「私たち抜きに私たちのことを決めない」検討体制に他ならない。
 法案の行方はともあれ、平行して、これらの事項に対する検討体制、フォローアップ委員会のようなものが設置される必要がある。

【勝又委員】

 本部のもとで「障がい者制度改革推進会議」が作られた当初から問題にされていたことだったが、政策議論の中で役割や制度改革にどこまで影響を与えることができるかが曖昧だったことは残念だった。政治指導であったがゆえに、不安定な政治状況に翻弄された弊害は否めなかったと思う。また、ここでの議論が必ずしも全国民の問題として広く浸透することが無かったのではないか、という危惧が残った。

【川﨑委員】

  • 共生社会の真の実現に向けて、障害者政策委員会の役割を位置づけたいと考えます。特に、精神障害者への社会の偏見をなくし、正しく理解される社会の構築を目指したいと思います。

【北野委員】

 北野は、障がい者制度改革推進会議の構成員として活動できたことを、誇りに思うと共に、この2年間一緒に闘ってきた25人のメンバーと担当室のメンバーと内閣府の担当メンバーに心から感謝と拍手を送りたい。
 みんな、本当にありがとう。そして今後障害者政策委員会が、改革推進会議の作り上げた創造的伝統を受け継ぎ、さらなる発展を遂げるように、みんなで支援してゆきたいと思う。

【新谷委員】

 推進会議での情報保障体制に感謝したい。私たち中途失聴・難聴者は人の集まりへの参加で大変苦労をしてきた。このような、国レベルの会議で、パソコン要約筆記、手話通訳、磁気ループの利用に加え、記録・発言フォローのための介助者を準備いただいたには初めての経験である。推進会議の情報保障は、色々なところで話題になる。「これが求める会議の姿だ」と現実にあるものを示して説明するは非常に説得力がある。情報保障という人の生活の基盤部分に推進会議は大きな影響を及ぼしている。

【関口委員】

権利条約に則り、障害者が福祉の客体から権利の主体に変わることが必要不可欠である。これは、合理的配慮に基づく福祉の存在を否定するものではないが、それらは排除(exclusion)の反対語であるインクルージョンに則って提供されなければならないと強く思う。

【中西委員】

担当室が完璧なロードマップを用意してくれたおかげで、それぞれの専門分野の方たちとご一緒に有益な議論に参加できたことを、今感謝している。

【長瀬委員】

〇障害者の政策形成過程への参加を実現した推進会議という歴史的な取り組みに加わる機会に恵まれたことを個人的にはありがたく思うと同時に、責任を果たせかどうか不安に思う。

〇国際協力条項の新設など、提案したことが実際に改正障害者基本法に反映されたことは手ごたえを感じた。

〇『わかりやすい第1 次意見』、『わかりやすい第2 次意見』、『わかりやすい改正障害者基本法)』それぞれの作成チームへの参加は大変、勉強になった。

〇障害者の権利条約が求めていることを改正障害者基本法に十分に結び付けられなかった責任の一端を感じている。

〇制度改革のために必要な、民主党が提唱した政治主導が十分に機能しなかったことが残念だった。障害者制度改革担当大臣が現在で延べ9 人目という状態もあり、途中から「漂流感」を持ったこともあった。

〇担当室をはじめ、私たちの仕事を支えてくださった皆様、また、関心を持って応援したり、見守ったりしてくださった皆様に心より、感謝申し上げます。

【森委員】

障害者施策委員会と各省庁にある審議会等との調整をどうするのか、横断かつ柔軟な連携のもとで、確かな議論ができる体制作りの工夫を期待したい。

【山崎委員】

障害者政策の形成・実施と当事者参画―障害者政策委員会に期待するもの

はじめに

 2009年12月に障がい者制度改革推進本部(本部長:内閣総理大臣)が内閣に設置され、その下に障害当事者を中心とする障がい者制度改革推進会議(以下、「推進会議」)が置かれた。推進会議は2010年1月から2011年10月まで36回会合し、2010年6月には第一次意見を取りまとめ、また同年12月には第二次意見を取りまとめた。これらを受けて政府は障害者基本法改正法律案を閣議決定し、国会に提出した。同法律案は、衆議院で一部修正の上2011年7月に衆参両院で可決成立し、同年8月から施行された(ただし、「障害者政策委員会」等に関する規定を除く)。その後、第一次意見も踏まえ、障害者虐待防止法が同年6月に可決成立した。さらに、障害者自立支援法に代わる障害者総合福祉法(仮称)を検討するため総合福祉部会が、障害者差別禁止法を検討するため差別禁止部会が、それぞれ推進会議の下に置かれた。前者は2011年8月に障害者総合福祉法の骨格提言を公表した。  推進会議は構成員26人中(オブザーバー2人を含む)15人が、また総合福祉部会でも55人中26人が障害当事者やその家族である。このため推進会議や部会には、当事者の視点から従来の障害者政策・施策を抜本的に変えることが期待された。  本稿では、障害当事者を中心とする推進会議の成果を素材として、障害者政策の形成・実施における当事者参画の成果、限界と今後の課題について考察する。

1 政策過程と当事者参画

 推進会議や部会での障害者基本法の改正や障害者虐待防止法・障害者総合福祉法・障害者差別禁止法の制定に向けた議論は、障害者の権利をめぐる法政策形成過程の一コマである。一般に公的な政策は次頁の図のような過程で形成される。
 以下、この〔政策過程の一般的モデル〕に沿って、障害者政策の形成および実施過程における当事者参画の意義を考えてみたい。

図 政策過程の一般的モデル

政策形成

 政策問題の確認…社会における課題・争点や問題解決の必要性が認識される

 ↓

 政策課題の形成…政策問題を具体的な政策課題に特定する

 ↓

 政策(案)形成過程…政策課題を解決するための具体的な関連情報の分析を通じて、原案を作成する

 ↓

 政策決定…政策案を公式・制度的な場で審議し、決定する

 ↓

政策実施

 政策執行(実施)…決定された政策を、さまざまな行政作用を通じて現実に実施する

 ↓

 政策評価…政策執行の結果やその過程で生じた有効性・問題点を評価し、政策の変更や撤廃を考慮する

〔出所〕加茂利夫・大西仁・石田徹・伊藤恭彦『現代政治学(新版)』(有斐閣、2003年)114頁を参考に作成

2 政策課題の形成段階

 障害者制度改革という政策課題は、推進会議が発足する以前にすでに確認されていた(政策問題の確認)。2010年1月12日の推進会議初会合で、福島瑞穂内閣府特命担当大臣は、1)障害者施策の基本理念を定めた障害者基本法の抜本改正、2)障害者自立支援法に代わる障がい者総合福祉法(仮称)、3)障害者差別禁止法制の3点について、同年夏までに骨格を示すよう推進会議に要請した。
 推進会議や部会は、この3点の政策問題を具体的な政策課題に特定する検討を行った。推進会議や部会での法律の制定や改正に向けた検討は、前記〈モデル〉でいえば〔政策形成〕過程の政策課題の形成に該当する。
 従来の審議会等は、一定の意向に沿って選ばれた学識経験者や調整のうえ団体から推薦された者によって構成されていた。これに対し、推進会議や部会は、今までの各省庁の審議会や分科会のメンバーとは根本的に異なり、障害者権利条約に基づき、団体や障害種別を超えた法制度の議論を行える構成となっている。このため、推進会議等は、官僚が実質的に決めた政策を追認する場でなく、障害者が直面する現実的課題を直視しつつ、実質的議論を行える場となっている。
 では、推進会議等は実際にこの利点を生かしてきたといえるだろうか。
 推進会議においては、前記の法律改正・制定に向けて、地域生活、労働・雇用、教育、健康・医療等に関する障害者の現状、制度の不備や制度改革の方向性等々についてメンバーから膨大な資料が提出され、当事者の視点に立った良質の情報が政策過程に注入された。また、法務省、文部科学省、総務省、厚生労働省、国土交通省、外務省からの省庁ヒアリングでは、特に当事者メンバーから率直で鋭い質問が続出し、各省の政務三役や担当者がたじろぐ場面も見られた。障害当事者の直接参画によって、障害者の権利をめぐる具体的な政策課題が特定できたと評価できる。

3 政策(案)形成段階

 この段階は障がい者制度改革という政策課題を解決するため、具体的な関連情報の分析を通じて原案を作成する過程で、推進会議や部会に期待されたのはこの段階での議論である。実際に推進会議は、第一次・第二次意見を取りまとめ、この役割を果たした。重要なのは、推進会議が作成した「原案」が政府による政策決定(前記〈モデル〉政策決定)にどの程度反映されたかである。この段階で表面化した問題は、1)他省庁設置の審議会との競合と2)障害者施策をめぐる省庁の抵抗だった。
 2009年に内閣府に設置された地域主権戦略会議の方針によれば、地域における障害者関連施策の義務規定や当事者参加等の規定を一律に自治体の裁量に委ねられるとも受け取られた。その結果、障害者施策の地域間格差がさらに増大し、これまでの障害者運動により実現してきたさまざまな成果が大きく後退するのではないかとの危惧が推進会議に広がった。文部科学省の中央教育審議会に置かれた特別支援教育の在り方に関する特別委員会(特特委)は、インクルーシブ教育のあり方に関し推進会議と異なる方向を目指すのではないかとの懸念も推進会議では共有された。
 省庁の抵抗は随所に見られたが、障害者基本法の改正を例に説明しよう。推進会議の多くのメンバーは、障害者の権利主体性を改正法に盛り込むことを強く主張した。しかし、結果的には、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の「実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ」(第3条:傍線部引用者)、……あらゆる分野の活動に参加する機会などの確保を図られなければならないものとされた。「権利を有する。」と規定されれば、障害者の権利主体性を障害者基本法に定めたことになるが、権利性を明確に規定するのは「基本法」の性格になじまないなどの理由から、「権利を有することを前提としつつ」との法令文としては珍しい表現にとどまった。
 このように、推進会議が関わったのは「原案作成」の前段階にすぎず、その最終段階である内閣府と各省庁の折衝や内閣法制局による法律案の審査などの過程で、当事者の立場から示された推進会議の見解に修正が加わったといえよう。なお、「原案作成」の前段階と後段階で、推進会議での検討成果を生かすため奮闘された内閣府政策統括官(共生社会政策担当)、障がい者制度改革推進会議担当室長ならびに同室職員のみなさまに敬意を表したい。

4 障害者政策の執行(実施)と障害者政策委員会の役割

 当事者参画の下でいかに実質的な障害者政策が形成されても、それらが実際に実施されなければ意味がない。政策形成とともに政策実施が重要である。
 政府は障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を策定しなければならない。改正障害者基本法では、首相は関係行政機関の長に協議するとともに、障害者政策委員会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めるものとされた(第11条4項)。同委員会は障害者基本計画に関して調査審議し、施策の実施状況を監視する役割を担う。同委員会は首相や関係大臣に勧告し、勧告を受けてどのような施策を講じたのか報告させたりする権限を新たに持つ(第32条)。
 障害者政策委員会は現在の内閣府に置かれた中央障害者施策推進協議会を改組するものだが、障害者基本計画の策定や実施状況の監視等について格段に権能が強化された。東日本大震災で被災した障害者の経験を生かした障害者基本計画を策定し、国・自治体の防災計画の形成・実施過程に障害者の視点と意向を反映させることも、同委員会の重大な使命となろう。
 障害者政策委員会( 30 人以内)の委員は、「障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者並びに学識経験のある者のうちから」首相が任命する。「委員の構成については、同委員会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた調査審議を行うことができることとなるよう、配慮されなければならない。」(第33 条)。当事者主体の推進会議で形成された障害者政策の実施段階での監視を担う障害者政策委員会も、当事者中心で構成されるのが望ましい。

結びにかえて

 これまでの障害当事者の蓄積された思いを当事者の肉声で表現する場として、障がい者制度改革推進会議は十分に機能してきた。しかし、この声が制度改革にどの程度生かされたのかについては、厳しく評価せざるを得ない。1)各省庁の守旧的姿勢、2)これを打破する方向での政治的意思・力量の不十分さ、3)行政との折衝、立法過程でのパフォーマンス等における当事者委員を含む推進会議全構成員の技術的力量の不足、等々がその背景にあると思われる。
 しかしながら、こうした消極的評価は甘受しつつ、障害者政策の形成過程において推進会議が果たしてきた歴史的役割は十分に評価すべきである。1)当事者参画による制度改革の試み、2)短期間に集中審議し、そのため多くの時間と労力を傾注したこと、3)会議の全容を内閣府ホームページ上で動画配信したこと、4)傍聴希望者が毎回受け入れ規模を超える程だったこと、5)不慣れながら、政治・行政と果敢に渡り合い、また広く市民に問題の所在とあるべき方向性を明確に提示しつつあること、は今後のさまざまな分野での制度改革に引き継がれる貴重な経験である。
 政府政策の形成・実施過程では、複数の異質な政策案が多元的に提示されれば、より良い政策が形成され、その結果、より質の高い政策が実施されることになる。このためには、政策過程のあらゆる段階が官僚や政治に独占されず、市民参画型で、公開・透明に進行するのが理想である。
 従来の政府政策は、官僚が素案を提示し、これを官主導の審議会で多少お化粧直しし、パブリックコメントを経て決定されるのが通例であった。しかし、当事者主体の推進会議はこの慣例を打破した。「私たちのことを、私たち抜きに決めないで!」は障害者政策の形成と実施の全過程でも守られるべき大原則である。
 市民参画による障害者政策の形成を実践した推進会議の経験は、今後あらゆる分野で、政府政策の形成過程に影響を及ぼすことになろう。また2012年に設置される障害者政策委員会では、この経験が生かされるであろう。障害者政策委員会が、障害当事者による、当事者の要望を踏まえた障害者政策の実施を、障害者の視点から監視する場として機能することを期待したい。

【福島オブザーバー】

 障害者福祉制度やそれに基づく各事業は、一方では財源の裏打ちがなければ実現せず、実効を伴わない。しかし他方で、障害者関連施策のあり方についての実質的で具体的な議論がなされなければ、そもそも障害者施策実施に必要な経費の総額やその内訳の積算も明確にできない。こうした図式に、当「推進会議」や「総合福祉部会」が背負う構造的なディレンマと機能上の限界があると思われる。
 その意味で、税・保険制度を含めた社会保障制度と財政問題のあり方が不透明な中での「推進会議」や「総合福祉部会」の議論には、おのずから限界がある。とはいえ、「推進会議」、「総合福祉部会」の本来的役割は、財源問題自体を議論する場でないことも自明である。
 そもそも、障害者単独の問題の議論には限界がある。私見では、高齢者福祉や医療政策なども含めた社会保障全体の議論の枠組みの中に、障害者施策をどう位置づけていくかということがもっとも重要な課題であり、従来よりも一段、あるいは数段高い政策的・政治的レベルでの議論に障害当事者や関係者らが実質的に参画できる仕組みを作るべきである。
 そうでなければ、たとえ「障害者権利条約」が批准されても、また、「障害者差別禁止法」が制定されても、わが国の障害者の生活は本質的に充実していかないであろう。
 なぜなら、国民全体の生活のあり方の議論と分離・独立させた「障害者の生活」をめぐる議論は原理的に意味がないからである。「障害者」は、国民の一部に原義上付与された「人工的概念」であり、もともと国民全般から切り離された「障害者」という一群の人々をイメージすること自体に問題がある、と私は考える。
 以上のような問題を解消するには、財源問題の議論と障害者施策を含めた社会保障施策全般のあり方をめぐる議論の双方を、関係当事者が参画する形で接続させるしかない。しかし、現状ではこの二つの議論をつなぐ法制度的枠組みも、現実的運用上の工夫もきわめて不十分である。
 このことが今後のわが国における障害者施策の進展・充実を図るうえでの最大の課題だと考える。