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第16回と第17回の報告 -リレー推進会議レポート5-

川﨑洋子(かわさきようこ)
NPO全国精神保健福祉会連合会理事長

第16回(7月12日)

 7月12日に開催され、有識者ヒアリング「司法へのアクセス」「虐待防止について」「児童の権利に関する条約に基づき日本から提出された報告の審査について」と「障害のある女性について」が議論された。

「司法へのアクセス」

 大石剛一郎氏から、知的障害者と冤罪事件について説明があった。冤罪の原因として、自白調書の信用性が問題とされた。知的障害者等、自分の意思を正確に表現できない人は、取調室においては、誘導的質問に従って自白してしまう傾向がある。冤罪を防ぐため、取り調べ過程の可視化、支援者を立ち会わせること、障害特性を理解し、専門的に取り調べができる人材の養成が早急な課題であると考える。

「虐待防止について」

 池原毅和氏と黒岩海映氏の説明。
池原氏は精神障害者の精神科病院における典型的な虐待として、暴行、性的いやがらせ、使役、違法な行動制限等を挙げた。問題点として、①精神科病院の閉鎖性と長期、大量の入院者、②精神医療審査会の機能不全、③患者の権利擁護者制度の不備、④行政の対応の不備、④モニタリングシステムの欠如、を指摘した。病院という閉鎖的で、患者の生活、行動が医療者に委ねられていることが問題で、虐待も外部に出てこない。医療法の精神科特例を廃止し、透明、公平なモニタリングにより、患者の権利が保障されるべきであると考える。
黒岩氏からは、学校現場における虐待防止について説明があった。実態としては、体罰とわいせつ行為に分けられる。予防の対策として、学校関係者への研修が挙げられるが、特に小中学校で起きており、学校という密室化しやすい場での実情は、把握しにくい。実態調査を行い、予防、発見の仕組みづくりが課題と思う。

「児童の権利に関する条約に基づき日本から提出された報告の審査について」

 平野祐二氏から「障害のある子どもに関する国連・子どもの権利委員会の勧告」の3回にわたる総括所見が提示された。わが国にとってはかなり厳しい所見であったと考える。苦情データの不十分、全面的インクルージョン教育促進の不十分、根深い差別の存続への懸念などがあげられ、委員会としては、あらゆる環境の効果的支援を確保するための措置をわが国に勧告した。子どもの権利が無視された事件が多く報道されている現状が、早急に改善されるように国は対策をすべきである。

「障害のある女性について」

 事前に担当室から、検討されるべき分野についての意見提出フォーマットが委員に提示され、それに基づき議論された。分野として委員から出され、検討された主なものを列記する。

  • 性と生殖に関する権利
    障害のある女性の結婚・出産・育児に関しては、いまだに反発・無理解が多い。また、その上に具体的な支援策が何も講じられていないのが現状である。障害のある女性が地域社会で生活する権利を保障する施策を早急に進めるべきである。
  • 政策決定過程への参画
    障害者政策に関連する各種審議会、委員会、検討会などでは、クオーター制を導入し、女性障害者の参画を確保する必要がある。
  • 雇用・就労
    障害種別を問わず、女性の就業者は男性に比べて、圧倒的に少ない。男女雇用機会均等法で増えてはきているが、男女の賃金格差はいまだに開きがある。この現状は調査され、改善の方策が講じられるべきである。
  • 虐待防止
    障害のある女性は、DV被害を含めた性的暴力・虐待など被害を受けやすい。障害のある女性のニーズに沿った相談支援体制が必要である。

以上が議論されたことであるが、最後に担当室から、6月29日に閣議決定された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について(第一次意見)」の資料の報告と、「障害の表記に関する作業チーム」の立ち上げの説明があった。

第17回(7月26日)

 7月26日に開催された。今回の議事は「第一次意見」に示されたインクルーシブ教育に関して、文部科学省と教育関係団体等との意見交換の形で行われた。特別支援学校、特別支援学級設置学校の校長会など関係5団体と家族の意見が出された。
「第一次意見」には、障害者権利条約に基づき、障害者にとってインクルーシブな教育制度を確保することが必要であり、障害者が差別を受けることなく、障害のない人と共に生活し、共に学ぶ教育(インクルーシブ教育)を実現することが明記された。
文部科学省は、いま、「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」が設置され審議されているので、現段階での見解は差し控えるとの説明があった。
関係団体と家族からは、終始してインクルーシブ教育に対しての反論であった。校長会からは、一人ひとりにきめ細かく対応する特別支援教育は、共生社会の形成の基礎となるもので、特別支援学校を含め、すべての学校で共生社会の実現を目指す教育をインクルーシブ教育システムと捉えている。したがって、特別支援教育とインクルーシブ教育システムとは同じ方向を向いていると説明があった。
「第一次意見」で示されたインクルーシブ教育が、関係団体の説明ではインクルーシブ教育システムと置き換えられており、議論がかみ合わない面もあり、委員から、インクルーシブ教育システムの定義を示すことが要請された。


原本書誌情報 川﨑洋子.第16回と第17回の報告(リレー推進会議レポート5).
ノーマライゼーション 障害者の福祉.2010.10,Vol.30, No.10, p.42-43.

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