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第18回と第19回の報告 -リレー推進会議レポート6-

門川紳一郎(かどかわしんいちろう)
(社福)全国盲ろう者協会評議員

はじめに

 本年1月から始まった障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)は、だれもが認める通り画期的な会議だ。「我々抜きに、我々のことを決めないで!」という権利条約のスローガンである私たちの悲痛な叫びともとれる訴えに耳を傾け、障害者福祉制度を障害者の手で作っていこうといった雰囲気が感じられる。

 また、コミュニケーションと情報保障などへの「合理的配慮」は、権利条約で定義付けられていることでもあり、この推進会議が「合理的配慮」のモデル会議となることを望んでいる。

 さて、半年かけて「障害者制度改革の推進のための基本的方向」(第一次意見)をまとめることができた。第一次意見の概要によると、当面は、障害者基本法(以下、基本法)の抜本改正に向けての議論に取り組み、来年の通常国会に改正法案提出の予定となっている。本稿では、推進会議第18回と第19回の状況を、私見も含めながら報告する。

第18回(8月9日)

 第18回は、基本法の抜本改正に向けての具体的な検討が始まった。基本法は国の障害者政策の土台となるいわば理念法であり、国の障害者関連各法律はこの基本法をベースに作られる。基本法は5年ごとの見直しを義務付けており、第一次意見を元に見直し作業が本格化したわけだ。

 この日の意見交換では、抜本改正の背景を説明した「前文」をおくべきだという意見が出されたり、法律全体の構成要素を出し合った上で「総則部分の検討」を行うべきといった意見も出された。

 この日のために筆者は意見書の提出とともに、発言の時間をいただきたい旨を推進会議担当室に申し入れていた。そして当日、たった5分ではあったが発言の時間をいただき「基本法を抜本的に見直す際には、ぜひとも総則部分にコミュニケーションと情報保障に関する定義等を盛り込んでもらいたい」という申し入れを行った。

 総則部分についての意見交換のほか、二つの重要案件が取り上げられた。一つは、総合福祉部会による「合同作業チーム」の立ち上げと、もう一つは、推進会議への「合理的配慮」についての構成員からの要望の聴取だった。

第19回(9月6日)

 第19回は、前回に続いて「総則」部分において、これまでに議論されてこなかった分野、特に、「住宅」「文化・スポーツ」「障害の予防」「ユニバーサルデザイン」の四つをテーマに意見交換を行った。

 「住宅」については、「住まいを選ぶ権利」の主体が障害者本人にあることから、公営住宅の確保策と優先入居や家賃補助の制度化、民間住宅における入居拒否や近隣におけるトラブル解決策などの法的規定を目指した発言が目立った。

 「文化・スポーツ」については、障害者も一市民として「文化・スポーツ」を享受できるようハード・ソフト両面の改善を求める声が多く、障害者の「文化・スポーツ」を楽しむ権利の保障を法律上で明確にしてほしいという要望があった。

「ユニバーサルデザイン」に関しては、権利条約でも定義されていることから、基本法でも法的に義務付けるべきであるという意見が多く出された。

 「障害の予防」については、基本法からは削除すべきだという意見が複数の構成員から出されていた。「障害の予防」は、「障害者」であることを否定しているとも解釈できるもので、「障害者自身のための権利を示す法律」を目指しているので、法律上ふさわしくないという意見だ。

推進会議への提案

 推進会議は、わが国の障害者福祉制度を法的に見直していく大変重要な役割を担っている。

 筆者は視覚と聴覚という情報アクセスにはなくてはならない情報摂取器官に障害があり、そのため、指点字とよばれるコミュニケーション手段で通訳を受け、点字資料を必要とする。指点字は両手を使うため、会議中は記録を取ったり資料の確認をしたり、あるいは、ちょっとお茶でも飲みたい時は大変不便だ。また、点字の資料をその場で読むこともできない。

 そこで、一構成員として、今後の推進会議のあり方について、二つの提案をしたい。

 第一に、「一つの障害種別団体から複数の構成員を会議の正規委員として認めてほしい」ことである。現在は、筆者のほかに福島智東京大学教授が「オブザーバー」という立場で構成員として加わっている。しかし、福島オブザーバーは所用のため1年間は会議を欠席する。一人の構成員でハイピッチで進められる会議についていき、記録をまとめ、しかも、莫大な情報の処理をすることは心身共にオーバーロードしてしまう。たとえば二人体制であればお互いに協力しあって、不足を補い合ったりして4時間の会議を乗り切ることができる。

 もう一点は、推進会議で半年先まで決めるべき内容を明らかにし、議論の進め方を明確化してほしいことである。当面は、年内を目標に、第二次意見の取りまとめが行われることははっきりしている。しかし、とりまとめまでの具体的なスケジュールははっきりしていない。これまでの経験から考えると、次回会議の内容は直前の会議で初めて明かされている。もし半年先までのスケジュールが分かっていれば、それなりの準備ができるのではないかと考える。すべての障害者団体・個人の思いが国の制度改革に反映できるよう、ぜひご検討願いたい。


原本書誌情報
門川紳一郎.第18回と第19回の報告(リレー推進会議レポート6).ノーマライゼーション 障害者の福祉.2010.11,Vol.30, No.11, p.40-41.

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