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資料1

各小委員会における審議状況について
(第4~第6小委員会)

○ 第4小委員会

○ 第5小委員会

○ 第6小委員会

第4小委員会における審議状況について

第4小委員会 座長 三浦貴子 副座長 勝又幸子

はじめに

 第4小委員会においては、医療・介護(14条)、療育(17条)、相談等(23条)、障害の原因となる傷病の予防に関する基本的施策(31 条)について,現行の障害者基本計画の推進状況や障害者制度改革を踏まえた取組の進展等も踏まえつつ、新たな障害者基本計画にはどのような課題が盛り込まれるべきであるのか、幅広く議論した。この議論について、論点ごとの各委員及び専門委員の意見を整理すると、以下のようになる。今後の障害者政策委員会における新たな障害者基本計画に関する検討は、これらの議論を踏まえて行われることが期待される。なお、新計画の策定にあたり現行計画の進捗状況を検証することが肝要であるとともに、新計画に相応する施策の工程表の作成によって着実な推進が図られるべきである。

1 論点に関する重要な事項についての意見

(1)基本計画全般についての意見

○ 重点施策実施5か年計画の進捗状況についての評価をふまえ、次の基本計画をつくるべきである。

○ 現行の基本計画の重点計画の目標値の妥当性を検証する必要がある。

○ 国として、当事者のニーズがどの程度満たされているのか把握する必要がある。

○ 成人障害者については、家族介助を前提としない数値目標を盛り込んだ基本計画をつくり、各自治体を指導するべきである。

○ 国の障害者基本計画を各自治体でも反映させるべきである。

○ 総合支援法に盛り込まれなかった課題で、喫緊のものを基本計画で取り上げるべきである。

○ 専門家だけでなく多くの国民にわかりやすい議論をするべきである。

○ 政策委員会に入っていない団体の意見に配慮していただきたい。

(2)これまでの検討との関連についての意見

○ 権利条約・改正基本法及び骨格提言と基本計画の整合性をとるべきである。

○ 総合支援法の検討規定や附帯決議の具体的な検討について基本計画に書いていただきたい。

○ 骨格提言の計画的段階的実施とそのモニタリング(監視・評価)について基本計画に盛り込むべきである。

(3)障害女性の視点についての意見

○ 男女平等の視点から、サービス利用者・提供者等の男女別統計に関する基礎データが必要である。

○ 障害女性の権利擁護について取り上げる必要がある。

(4)検討するべき具体的内容等についての意見

○ ニーズ(必要)に基づく支給決定の方向性について、基本計画の検討事項に入れていただきたい。

○ 地域間格差解消のための基盤整備や財政支援の仕組み、車の両輪としての地域移行と地域整備基盤等を基本計画に盛り込むべきである。

○ 障害福祉サービスを申し込む段階で利用者が利用時間等を控える実態があり、計画と実施状況の数字に開きがある。

○ 介護保険と障害福祉サービスの利用については利用者が選べるようにするべきである。

○ 認知症は、精神障害とは別の領域にしていただきたい。

2 【14条】障害福祉サービスについて~在宅サービス等について(居宅支援、移動支援、地域移行等)/日中活動系事業及び施設サービスについて

(1)居宅支援、移動支援についての意見

○ 訪問系サービスへの財政的なバックアップ(支援)体制をつくり、地域間格差なく支援を受けられる目標値を立てていただきたい。

○ 施設入所者へも個別支援、社会生活支援(移動支援の利用等)が行えるようにする必要がある。

○ 命にかかわる長時間介護の場合は複数名の介護体制が必要なため、支給決定が1日24時間以上になることがある。こうした長時間の支給決定を行う市町村の割合を指標にするべきである。

○ パーソナルアシスタンス(個別生活支援)の創設が必要である。

○ 移動支援の個別給付化を検討事項として盛り込むべきである。

○ 訪問系サービスの計画値はデータに基づいて設定するべきである。

○ 家族支援、24 時間支援体制の必要性について検討すべき。

○ 重度障害者の長時間介護サービスについては、市町村に過度な負担が生じないように、一定時間を超える介護量を国の財源で支給する全国共通の基準をつくるべきである。

○ 重度訪問介護を希望する障害者に対して、十分な支給決定をせずに、その他のサービスの組合せをすすめる市町村があるが、こうした運用が行われないように、国が考え方を示すべきである。

○ 移動支援について、通勤、通学、入院、宿泊を伴う外出等利用者の生活ニーズに応じた支給決定ができる仕組みの検討が必要である。

○ 難病患者等居宅支援事業の実績からみると、総合支援法の対象者を広げても利用者が急増することにならないのではないか。

(2)地域移行についての意見

○ 国の目標値として、受入条件が整えば退院可能な約7万人の解消ではなく、①1年未満入院者の平均退院率の増加、②5年以上65 歳以上の退院者数の増加、③統合失調症の入院患者数15万人へ減少等が厚労省から示されたことはよかった。

○ 受入条件が整えば退院可能な社会的入院を減らすという指標をなくすべきではない。基本計画で、あるべき指標の検討が必要である。

○ 入院患者が減ると収入が維持できないため、認知症の人の精神科への入院が増えており、病床数が減らない。精神医療政策に関する病床削減の目標値を立てるとともに、削減に伴い精神科病院の経営が困難とならない政策的なバックアップ(支援)が必要である。

○ 入院患者や施設入所者へニーズ調査をして目標値を設定すべきである。

○ 精神科病院からの地域移行に当たっては、病院所在地の行政の担当者より医師の判断によるところが大きい。病床削減ではなく、病院が主体的に取組むための地域移行の目標を立て、その財政的支援をしていただきたい。

○ 施設入所支援も地域移行も大事である。安心して地域で生活できるよう、経済的負担の軽減や所得保障について基本計画に盛り込んでいいただきたい。

○ 精神障害者の地域生活に関する先進的な事例を参考にしつつ基本計画をつくるべきである。

(3)暮らしの場の支援についての意見

○ 精神科病院敷地内にグループホームやケアホームを作ることができないようにするべきである。

○ 施設や病院の敷地内に立地するグループホームやケアホームは地域居住とは呼べないこと等を基本計画に盛り込むべきである。

○ 家賃助成をグループホームやケアホーム以外のアパート等に住む障害者にも広げるべきである。

○ グループホームとケアホームは住まいなので小規模で運営できる仕組み(報酬設定等)が必要である。

○ 住まいの確保等精神障害者の地域移行に必要なサービスの数値を基本計画に盛り込むべきである。

○ 住まいの確保と医療サービスの関係について検討が必要である。

○ 常時介護や医療的ケアの必要な人が、ケアホームなどで暮せるようなハード作り(施設整備)とサービス提供体制の確保が必要である。

(4)日中活動系事業及び施設サービスについての意見

○ 事業体系を簡素化し利用者の希望に応じサービスを提供できるようにするべきである。

○ 精神障害者、重症心身障害児者が安心して利用できるよう、医療的ケアを伴う日中活動支援の場(デイアクティビティセンター)を創設するべきである。

○ 精神障害者の場合は就労しなくても地域で自尊心をもって生活できる環境の確保と、必要な医療サービスと福祉サービスがバランスよく提供できる体制が重要である。

○ 障害が重くとも希望する場合には就労系事業を利用できるようにするべきである。

○ 日常的に医療を必要とする方が短期入所を利用できる体制を構築するべきである。

○ 施設サービスの報酬体系を改善する必要がある。

○ 重度訪問介護が施設入居者にも活用できるようにする必要がある。

○ 加算がなければ運営が成り立たない現行の報酬体系の改善が必要である。

○ 入所施設は真に必要なものに限定する等施設建設を限定する表現は変えてほしい。

(5)全般についての意見

○ 意思決定支援の在り方について検討するべきである。

○ 難病等の患者・家族への支援の現状、地域生活支援事業の自治体ごとの実施状況、精神障害者の地域移行の実態等についてのデータが必要である。

○ 在宅・施設の福祉サービス従事者の労働条件の向上を盛り込むべきである。

○ 同性介護の保障及び性別役割モデルの解消を盛り込むべきである。生活支援において性別役割分業にとらわれないことを明記すべきである。

○ 障害支援区分については障害程度区分の質問項目を追加するのではなく、多様な障害のある方のニーズの把握について検討するべきである。

○ 利用者本位のサービス体系を確立すべきである。

○ 難病や長期慢性疾患患者は状態の変化に対応できる柔軟な支援計画を必要としている。

○ 国民に制度の利用状況がわかるように、厚労省のウェブサイトで制度を説明している箇所に実績の項目を設けてデータを掲載してはどうか。

3 【14 条】サービス基盤について(質の向上,人材確保・育成等)

○ 地域の医療・福祉の基盤づくり、事業(サービス)報酬の在り方、人材確保の方策について検討が必要である。

○ 報酬制度の改善によるヘルパーの労働条件の向上とそのための財源確保が必要である。

○ サービスとサービスを繋ぐインフォーマル(非公的)サービスの担い手の確保・育成も重要である。

4 【14 条】保健・医療等について~保健の増進、医療・リハビリテーションの提供について/医療・リハビリテーション、福祉用具等に関する研究開発の推進について(【31条】障害の原因となる傷病の予防等についてを含む)

(1)社会的入院及び強制入院の解消等についての意見

○ 社会的入院の解消のために、精神科病床の削減と政策的なバックアップが必要である。経営維持のために認知症の人等が入院の対象となっており、病床数削減は民間病院の経営努力だけでは限界がある。任意入院が強制入院より長期化する傾向があるので、精神科入院の実態調査をしていただきたい。

○ 精神障害者の強制入院や強制医療の廃止に向け、その代わりになるシステムの開発・研究が障害者の参加を条件として行わなければならない。

○ 精神障害者が地域移行できるよう社会資源の基盤を整備するべきであり、総合福祉部会で提言された地域基盤整備10 ヶ年戦略を実現するべきである。

○ 厚労省の身体拘束のガイドラインで、極度の不穏もしくは多動を拘束してもよい基準としているのは不適切である。

○ 統合失調症患者が退院後にどのような社会資源を使って生活しているのかについての把握が必要である。

○ 患者調査において、退院先がグループホームである患者数が分かるようにするべきである。統合失調症患者の退院先の統計に関して、グループホームを施設、と分類するのは適切ではなく、退院後の自立の実態がわかるような分類を採用すべきである。

○ 18歳以上の障害児施設入所者への対応について、施設が、障害児施設として維持・障害者施設への転換・両者の併設のいずれかを選択する際に必要となる施設整備に係る財源の裏付けを担保し、6 年間の有効期間内に移行を進めていただきたい。

○ 難病の場合は、レスパイト入院や長期にわたる入院、医療的な背景を持った施設利用等が必要である。

○ 都道府県に設置されている難病相談・支援センターの体制等の充実をはかるとともに、保健所など専門支援機関との連携を強化する必要がある。

○ 基礎自治体に難病支援センターを設置していただきたい。

(2)医療、リハビリテーションについての意見

○ 地域を支えるための地域連携型の医療体制について検討するべきである。

○ 精神障害者などの医療サービスの実施状況の検証が必要である。

○ 障害女性が妊娠から出産に至る支援を、その他の女性と同じように受けられる施策が必要である。長期の療養生活については「性別に配慮したケアが重要である」と明示すべきである。

○ 障害のある子どもについても、身近なところで医療やリハビリテーションが容易に受けられる体制が必要である。

○ 精神障害や難病については、身近なところで必要なときに医療サービスと福祉サービスを受けることができるよう、供給体制の充実を図るべきである。

○ 障害者に対する歯科医療を充実すべきである。

○ 医療やリハビリテーションに関わる人材育成の充実が必要である。

○ 急性期から亜急性期及び回復期のリハビリテーションを適切に受けられるように診療報酬や医療機関の充実を含めた制度の構築が必要である。

○ 維持期のリハビリテーションの充実と医療報酬体系の改善が必要である。

○ 中途障害者が安心してリハビリを受けるシステムが必要である。

○ リハビリテーションは医療や介護、教育、雇用、労災等の分野で行われている。これら全体の計画を検討するために必要な各分野のデータが不足している。

(3)障害の重い人の医療、リハビリテーションについての意見

○ 重い障害があり独居の場合、役所へ申請に行くことが困難なので代行を認めていただきたい。

○ 重度障害者が一時的な入院中に、重度訪問介護の利用等で日ごろから慣れたヘルパーを利用できるようにするべきである。

○ 重症児には医療とリハビリをセットで提供するべきであり、児童発達支援センター等における外来の充実や家庭への訪問が必要である。NICU の退院後に、訪問医療・訪問看護・訪問介護が連携して支援する体制が必要である。最後のセーフティネット(安全網)として入所施設がある。重症児は成人以降も同じスタンス(態勢)で支援する必要がある。

○ 口の中のたんの吸引等は研修を受ければ実施可能となったが、のどの中(咽頭)の吸引等は認められていない。これらも、医療的行為ではなく生活行為として認めるべきであり、併せて専門的な研修の整備が必要である。

○ 重度心身障害者医療を無料化する県に対し国がペナルティを課すべきではない。

○ 厚労省における介護職員等が行える医療的行為の範囲等についての検討の結論について納得がいかないので、議論をやり直していただきたい。

(4)再生医療、出生前診断等についての意見

○ 再生医療等の研究開発に期待する一方、生命倫理について十分な議論が必要である。

○ 再生医療に関する研究等の推進が期待されるが、一方で安全確保等のために強い権限による規制も重要である。

○ 再生医療について、審査機関で迅速に安全性をチェックできるよう、予算をつけて審査員を育成していただきたい。

○ 尊厳死や出生前診断の議論では重度障害者が切り捨てられないよう配慮するべきである。

○ 障害の原因の除去や早期発見・早期治療は大切であるが、それだけを強調すると、出生前診断の議論でもあるように優生思想につながる懸念がある。これからの重点課題として、日本の取り組みが遅れている二次障害についての早期の実態把握と調査研究に取り組んでいただきたい。

(5)研究、開発についての意見

○ コミュニケーション支援のための技術開発が必要である。

○ 社会的障壁の除去のために、当事者のニーズ評価を軸にした開発が必要である。

○ 必要な人に必要な機器が開発され、個人に合わせられる技術の開発が重要である。

○ 採算ベースにのらない福祉用具の開発の促進も重要である。

○ 独立行政法人国立精神・神経医療研究センターで障害発生予防を含む精神障害についての研究開発を活発にするべきである。

○ リハビリテーション(機能回復)のみならず、ハビリテーション(機能育成、維持)、発達という視点から、国立研究所で体系的に研究することが、重度重複化の予防・低減につながる。

5 【17 条】障害児支援について

(1)全般についての意見

○ 一般児童施策の中で障害児を位置づけるべきである。

○ 子どもに焦点を当てた検討・議論の場を設け、支援が必要な子どもが、障害者施策と一般子ども施策の谷間に落ちないよう配慮するべきである。

(2)本人及び家族への支援についての意見

○ 子どもとその家族が地域格差なく必要な支援サービスを使えるようにするべきである。

○ 確定診断の前から子どもが必要な支援を受けられるようにするべきである。親が福祉サービス等の情報を入手したり障害を受容するための専門家の支援が必要である。

○ 短期入所も含めて家族支援を充実するべきである。

(3)相談支援等についての意見

○ 障害の早期発見・早期療育支援等療育全般につき相談支援体制や専門的療育の充実が必要である。

○ 障害児が地域で育つ環境の整備と各種連携(ネットワーク)が重要である。

○ 子どもの年齢に応じ性別に配慮した支援が必要である。障害のある子ども、特に女子の虐待をうけるリスクが高い現状をふまえることが必要である。虐待事案の性別統計を出す等、ジェンダー視点をいかした研究調査・実態把握を進めていただきたい。

(4)検討すべき事項についての意見

○ 医療的ケアが必要な障害児とその家族が必要なサービスを利用できるようにするべきである。

○ 医療的ケアが必要な子どもも含め、特別支援学級・学校への通学支援を制度化するべきである。

○ 医療の必要な子どもが課外活動に参加できるよう、課外活動に同行する看護師の派遣等をお願いしたい。

○ 重度の子どもが地域で共に育つことを前提に、合理的配慮や必要な支援を受けられる仕組みをつくるべきである。障害のある子もない子も、学童保育や放課後等デイサービスを相互利用できるようにしてはどうか。

○ 不登校やいじめ等で精神疾患を背景にもつ学齢児がたくさんおり、対応がわからないと聞くので、精神疾患に関する教職員の研修が必要である。

○ 子どもが地域で暮らす視点が身につく支援者向けの研修が必要である。

○ 保育所等訪問支援について、保育所、幼稚園、放課後クラブ等、受入れ側の専門性も必要なので、障害への対応を研修した担当者を置くべきである。

6 【23 条】相談支援体制の構築について(成年後見制度の利用促進を含む)

(1)相談支援体制についての意見

○ 相談支援の対象を各法律に定められた対象者以外にも広げる必要がある。

○ 相談は身近なところでのワンストップサービス(一カ所で必要な相談が受けられるようなサービスの提供)にする必要がある。

○ 都道府県児童相談所の情報が市町村や相談支援センターに伝えられる必要がある。

○ 障害当事者や家族による相談支援を相談体制に位置付ける必要がある。

○ 障害者一人ひとりに対して、充分な相談支援が継続して受けられる体制と財源確保が必要である。

○ 障害者の相談支援には高い専門性が求められるが、報酬が低い等の問題があるため専門性のある人が定着しない。

○ 精神障害者の家族への支援を盛り込んでいただきたい。医療と保健と福祉が連携した地域のサービス体制として、訪問型の相談支援が必要である。障害者相談員制度に精神障害者も加えていただきたい。

○ 障害福祉の相談業務を行う人の研修事業等を通じて、医療の相談窓口とも連携を図ることができるようにするべきである。

○ 難病患者の福祉制度の利用が進むよう、難病の相談支援センターと障害者の相談支援センターの連携をはかるべきである。

○ 障害についての相談業務に携わるワーカーには人権擁護の専門知識も必要である。

○ 障害当事者、特に子ども、女性、高齢女性の声に留意するべきである。

(2)成年後見制度についての意見

○ 現行の成年後見制度は選挙権が無くなる等権利擁護の面で見直しの必要があることから、その在り方の検討を計画に盛り込むべきである。

○ 障害者基本法第23 条においては相談業務や成年後見の実施にあたって障害者の意思決定への配慮が求められることになった。現行の成年後見制度が「支援を受けた自己決定」を基礎とする制度に改善されるべきである。

○ 成年後見制度の利用促進のための体制を構築するべきである。

第5小委員会における審議状況について

第5小委員会 座長 氏田照子 副座長 後藤芳一

はじめに

 第5小委員会においては、障害者基本法の条文のうち、住宅の確保(20条)、公共的施設のバリアフリー化(21条)、情報の利用におけるバリアフリー化等(22条)に関する施策について、現行の障害者基本計画の推進状況や障害者制度改革を踏まえた取組の進展等も踏まえつつ、新たな障害者基本計画にはどのような課題が盛り込まれるべきであるのかを検討した。
 バリアフリーへの取組が国際的に認知されるようになってからすでに40 年が経過している。わが国においては、障害者白書平成7 年度版において、障害者を取り巻く4つの障壁として、「物理的障壁」、「制度的障壁」、「文化・情報面での障壁」、「意識面の障壁」があると指摘され、それらの除去がバリアフリー社会の実現につながるとされ、施策が推進されてきたところであるが、日本は欧米に比べると制度的には20 年の遅れがあると言われている。今後の新たな障害者基本計画の中に盛り込むべき課題について、専門委員も交えて本委員会でも多くの提言がなされた。
 とりわけ情報の利用におけるバリアフリー化等については、これまで多くの障害者専用の支援機器が開発されてきたが、市場が狭いために価格が高額になってしまう傾向がある問題、多様なニーズや高度化するニーズに応えるのが容易でないという問題、給付・助成の制度と運用面の問題等がある。さらに重要なことは、原理上情報バリアフリーは支援機器だけで解決できる課題ではないということである。情報の提供を行う事業者や情報通信機器の製造等を行う事業者によるユニバーサルデザインへの積極的な取組、情報ユニバーサルデザインを促す制度的枠組みの整備等がなければ情報のバリアフリー化は先に進まない。
 本委員会では、多様な障害者のニーズに対応する支援技術のさらなる開発や普及と共に、一般の情報役務事業や情報機器開発におけるユニバーサルデザインの一層の推進、さらにユニバーサルデザインと支援技術の連携に今後の展望をもつことができた。
 上記の各条文の論点に関する本小委員会の議論について,論点ごとの各委員及び専門委員の意見を整理すると、以下のように整理することができる。今後の障害者政策委員会における新たな障害者基本計画に関する検討は、これらの議論を踏まえて行われることが期待される。

1.テーマ全体を通じて共通する意見

○ 障害者基本計画でも、公共施設の利用等のあらゆる「選択」において知識と情報を持っている必要があり、そのための方策が必要。

○ 情報の利用におけるバリアフリー化は、民間事業者の役割が大きい分野であり、国は事業者の協力なしに国の責務を果たすことはできない。国としていかに事業者に対して、情報の利用におけるバリアフリー化への貢献を促すかが重要であり、それで進まなければ法制度の整備によって進める必要もある。

○ あらゆる施策に男女平等の視点を反映させ、基本計画において障害のある女性の複合差別の解消が盛り込まれるように、考えられていくようにしたい。

○ 前回の基本計画では、高齢者、障害者に配慮した情報機器、ウェブページ設計などについて日本工業規格や国際規格を策定して、それを公共調達の要件としていくことで、役務提供企業、開発企業に対してそのような規格に準拠した機器等の開発を促していくという方法論が示されていたが、それは効果があったのか検証が必要。

○ 権利条約には国の施策だけではなくて事業者の役割も書かれている。事業者の取組を促すよう、公共施設の範囲や、事業者の責任を明確に示す等によって促すことが重要。ストックの時代であり、限られた財源のもとでサービスの水準を維持するには、すでにある施設を有効活用することも重要であり、維持管理の費用を政策予算に含める必要がある。漸進的に進んでいく、PDCA(※)による改善を最初から計画に折り込んでおくという考え方も大事。

○ モニタリングの仕組みにさまざまな障害者が参加して、その障害の立場からの意見を反映してサイクルが進んでいくということが、PDCA サイクルが働くためには不可欠。障害者政策委員会と対をなす、アメリカのアクセスボードのような体制の整備が求められる。

○ この分野は、障害者権利条約の主な立脚点の一つである「社会モデル」で重要となる、環境の整備に対応するもの。公共施設や情報分野ともに、ユニバーサルデザイン(基本・共通部分)と合理的配慮を組み合わせる大きい方針を示して、網羅的に対応することが必要。

○ この分野では、共用品のように、我が国が国際的にリードしている取組もある。国内の優れた取組を集めて公表し、国内のバリアフリー対応を進めると共に、国際的に我が国の優れた取組を発信し、障害者権利条約を次の段階に進化させることに寄与することをめざしてはどうか。

※「PDCA」とは、行政計画等において Plan:戦略・計画・目標、 Do:実施・運用・記録、 Check:監視・点検・評価、 Action:改善・見直し・フィードバック、これらの項目をサイクルとしてまわすこと。

2.障害者のための住宅確保

(1)グループホームの利用の拡大

○ 一戸建て住宅をグループホームに転用する際は原則「寄宿舎」への用途変更として取り扱われ、間仕切壁の防火仕様や非常用照明装置の設置等の基準適合が求められることから、少なくない困惑をまねいている。このような問題が起きないよう基本計画をつくるときには補助制度による支援等の一定の方向性を出していくことが必要ではないか。

○ 知的障害、精神障害、発達障害等の障害者の他、視覚障害、聴覚障害等のある障害者、難病の人も含めてグループホームの利用が大きく促進されるような改善が必要。

○ 身体障害者で65 歳を過ぎた人の申請にあたっては、計画相談を前提にして、必要な場合には、グループホームの支給決定ができるようにすることが必要。

(2)民間住宅への入居の促進

○ 地域生活支援事業の日常生活用具の支給のような個人の入居者の助成とバリアフリー化のための助成が統一的に実効されるようにしていただきたい。

○ 単身障害者が民間賃貸住宅に入居する場合、保証人確保はきわめて困難なのが実態であり、それに向けた支援を組織的、法的に解決すべき。

○ 民間住宅で入居を拒否する際に人権の侵害に当たるような事例が出ている。そういうことに関する指導等についてどう考えるか。

○ 公営住宅に重点を置くのが間違いではないか。民間賃貸住宅をいかにレベルの高いものにするかの施策がない限り、障害のある方の住宅不足はいつまでも解決できない。特に個別の改造をどうやって柔軟にしていくか。または原状復帰をどのように本人に過大な負担なく行なうのかなど、いかに総合的に民間住宅のレベルを上げるかが重要。

(3)公営住宅の確保

○ 公営住宅の基本的な数値目標を立てて、まず公営住宅で確保すべき。その上で民間住宅に対してどういうサポートをするか、そこの一体的な連携をとるような施策を展開すべき。防災との問題では、公営住宅の中での障害を持っている人たちの居住の問題と地域防災計画の一体的な運用を議論する必要がある。

(4)その他

○ 例えば、障害のある学校の教員が転勤を言い渡されたが転勤先にはその住居が確保できないようなケースを住宅で考えていくのか、それとも別の柔軟な方策で考えていくのかの視点も必要ではないか。

3.公共施設及び公共交通機関等のバリアフリー化の推進

(1)公共施設のバリアフリー化

○ インクルーシブ教育との関連の他、学校施設は災害時には避難所となる地域の拠点ともいえるものであり、学校施設のバリアフリー化はきわめて重要。

○ 公共施設や事業所施設も新設又は改修のときはバリアフリー化するチャンスなので、エレベーターの設置や磁気ループ等の補聴援助システムを含めて、新設のときの基準の見直しや改修時の設計方法等について周知が必要。

○ 小規模な建築物のバリアフリー化については、地方公共団体が独自に定められる委任条例により、面積を小さくしたり、新たに対象を追加することができる。バリアフリー法に基づき、各地方公共団体が速やかに条例を策定できるような促進方策が重要。

(2)公共交通機関等のバリアフリー化

○ 駅ホームからの転落を防止するため、設置の義務化等による転落防止柵(ホームドアまたは移動柵)の普及、技術的理由等により転落防止柵の設置が困難な場合における人員配置等、ハード、ソフト両面から取組を進めることが必要。

○ 航空機のバリアフリー化について、実際の運用を含めて考えたとき、2008年7月に事前に搭乗の連絡がなかったという理由で利用を拒否する事例もあったことから、検証する必要がある。

(3)音声誘導等の情報提供の充実

○ 公共施設、公共交通機関においては、音声情報を文字化するのが基本。不特定多数が集まるところでの音声情報の文字化は正確性が求められるが、火災で建物から逃げるときの文字化などの緊急度が高いものは、粗くてもよい。いろんな媒体が普及しているので、用途に応じた機器の活用ができるよう基準等の見直しが必要。

○ 目的地に到達するために、ここにバリアがあるという情報の提供が空間では必要。音声誘導も含めて、ガイドラインをつくるべき。そういうことを伝える技術を開発していただきたい。

(4)バリアフリー全般について

○ 公共的な建築物、都市施設、公共交通機関について、防災との関係で整合性がとれるような働きかけを行っていただきたい。

○ 障害者基本計画を具体化していくときに、地方公共団体は他の計画や条例等の実行方策をなかなかとれない実情がある。学校も教育の領域だけでは扱えない問題については、横のつなぎ方をするような基本計画を地方公共団体に促すことが必要。

○ 建築物について、バリアフリー法に基づき、地方公共団体の条例において、面積要件を引き下げることができ、さらに建築物の対象の追加も可能となっている。災害時の対応はもちろんだが、住み、学び、働く場等障害のある方の生活をトータルに担保する方向も検討すべきではないか。

○ 自治体の取組ではバリアフリー基本構想を作るだけではなく、地域公共交通活性化協議会等もあり、こうした協議会でもバリアフリーの観点を積極的に導入することや、計画の提案のときに他の計画との関連性についても提案していただくことが重要。

○ バリアフリー法に基づく生活関連経路に決めた沿道の建物や商業地域で建てるものは基本構想の中でバリアフリー化を位置づけていくべき。また、中心市街地活性化法で定められた区域の中は、バリアフリー基本構想と調和が保たれるようにする等の他の法律との連動をより明確にしなければならない。本来、ユニバーサル化は既存の法律制度の中で実現できるようにすべきで、バリアフリー法だけで措置すべきではない。

4.情報の利用におけるバリアフリー化の推進

(1)情報通信機器・システムの整備・普及等

○ 日本は国際標準の中にアクセシビリティに関わる基準を積極的に提案するとともに、先手を打って日本の産業界がそれに対応することによってグローバル戦略としても優位に立てる、つまりWin-Win になれるのではないか。

○ 日本はWTO(世界貿易機関)の政府調達協定に加盟しており、政府調達にあたりアクセシビリティに関する国際規格を調達条件とすることで、アクセシビリティに配慮した機器、システム、サービスの民間への普及を促すことが期待できる。

○ 各省庁の持っている個々の制度を見るとすばらしい内容のものがあるが、現場で機能していないのが最大の問題。JIS(日本工業規格)の規格が現場で機能するような、省庁くし刺しにするような評価のあり方を考えていただく必要がある。

○ JIS 規格、「みんなの公共サイト」運用モデル、総務省行政評価局からの勧告、これが2010 年前後から出ているが、これを進めていくと言われていながらまだ緒に就いていないところもある。実際に進めていくためにどこが対応しているか公表する措置を具体的に基本計画でお願いしたい。

○ 機器の開発や支援の提供というところの最低限はナショナルミニマムを決めて、それは義務づけるという考え方。情報の分野でもミニマムは義務づけ、プラスアルファのところは進んでいる自治体を選んで補助をして実施を促すという進め方もこの分野に入れていいのではないか。

○ 音声自動認識ソフトの開発を国レベルで本格的に取り組むべき。その理由は、高性能の音声認識ソフトが開発されると、その利用範囲が放送字幕にとどまらず、利用範囲が広くなる。これからの字幕機能を付ける、音声情報の文字化のキーになる技術と思われるので、その開発について障害者基本計画に書き込む必要がある。

○ 電子書籍に関して、国際標準の流れの中でアクセシビリティの展望が開けてきている。こうした現状について、文部科学省、経済産業省、総務省の三省による懇談会以後の在り方を一度検証していただきたい。

○ 字幕放送はテキスト情報を送信している。盲ろう者も字幕放送を点字で読むことが技術的に可能である。点字携帯端末に字幕情報を送れる機器を開発してほしい。

○ 情報支援機器は、生活支援はもとより、就労支援、学習支援においてもなくてはならないものであることから、地域生活支援事業の日常生活用具給付での対応では限界があり、制度の根本的作り替えが必要である。その際、「障害及び社会的障壁による日常生活・社会生活への制限」を削減するための支援機器、支援用具という考え方を採用し、その入手、利用、研究、製品化等への公的支援の在り方について総合的に検討する必要がある。

○ 認識度の高い音声認識ソフトは非常に利用範囲が広く、音声自動認識ソフトの開発を国レベルで本格的に取組むべき。これからの字幕機能を付ける、音声情報の文字化のキーになる技術と思われるので、その開発について障害者基本計画に書き込むことが必要。

(2)国等による情報提供の充実

○ 国及び地方公共団体がインターネット上で公表している重要な資料には、画像のみのPDFファイルが依然として多くある。情報のバリアフリー化の徹底が必要。

(3)コミュニケーション支援の充実

○ コミュニケーション支援事業において視覚障害者のための代筆・代読サービスを明確に位置付けて、これの趣旨徹底を図っていただきたい。

○ 特に重度の知的障害の方や重症心身障害者のコミュニケーション支援などは、基本計画でも大きな課題になる。例えば、言語がなくても指さしで文字盤や絵カードを組み合わせてコミュニケーションができるのを音声発生で意思表示する機器を開発し、そういう機器を、例えば日常生活用具で知的障害や自閉症の人にも給付できるようにすることが必要。また、知的障害の人も含めてわかりやすいホームページやわかりやすい公文書を出すようにしていただきたい。

(4)心身障害者用低料第三種郵便について

○ 第三種郵便に関して、不正事件があった後、1つ1つの団体、みんな大変な思いをしている。コミュニケーション保障の重要性が高まってきており、その観点から考えていただきたい。

○ 第三種郵便は、障害者にとっては非常に大切なものであり、ぜひとも新しい制度を考えてそれを基本計画にも盛り込んでいただきたい。

○ 民営化されたとはいえ、郵便事業は依然、国が100%株主。最近、他の分野でも、株主の責任という考え方が注目されている。本件は、国は株主の立場として、実施を促すことがあってもよいのではないか。

(4)その他

○ 今回、情報バリアフリーということだが2時間ではとても時間が足りない。アクセシビリティ部会をつくるべき。

○ 委員の意見の中で新法をつくってはどうか、あるいは省庁横断的な取組の体制をつくってはどうか、情報アクセスの部会をつくってはどうか等、体制についての御指摘がある。体制をつくってこそ取組が進んでいくので御考慮いただきたい。

以上

第6小委員会における審議状況について

第6小委員会 座長 藤井克徳 副座長 浅倉むつ子

はじめに

 第6小委員会においては,防災及び防犯(26条)(東日本大震災からの復興に関する取組を含む。),国際協力(30条)について,現行の障害者基本計画の推進状況や障害者制度改革を踏まえた取組の進展等も踏まえつつ,どの国及びどの地域においても,また,災害による非常時であっても,障害者と障害のない者と同様の権利が確保され,地域生活が保障されるべきであるという観点から,新たな障害者基本計画にはどのような課題が盛り込まれるべきであるのか,幅広く議論した。
 上記のような本小委員会における議論について,論点ごとの各委員及び専門委員の意見を整理すると,以下のように整理することができる。今後の障害者政策委員会における新たな障害者基本計画に関する検討は,これらの議論を踏まえて行われることが期待される。

1.障害分野における国際協力の推進について

○ 2013年から始まる第3次の「アジア太平洋障害者の十年」においても,国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)への日本政府からの財政支援はこれまでの水準が保たれるべきである。市民社会との連携を確保しつつ,国際協力が展開されるべきである。

○ 現在の政府開発援助大綱は社会的弱者に障害者が含まれているが,障害分野の位置づけが明確にはない。今後見直しの際には,障害分野を明確に位置づけるべきである。 政府開発援助に関する中期政策の改定の際に,障害者を明記するべきである。

○ 国際協力の取組においても障害者権利条約という国際的な規範を踏まえ,日本政府が条約を順守する姿勢で臨むべきである。その際,教育においては,インクルーシブ教育を推進するようにすべきである。

○ 国際協力全体の基本的理念には,共生,物理的障壁の除去,インクルーシブ教育の推進,災害対策の推進等が盛り込まれるべきである。

○ これまでの国際協力においては,自力で職業訓練所等に通うことができるなど,合理的配慮が確保されずに障害者による自己努力が強いられてきた。合理的配慮が必要な重度の障害者も,支援の対象に含めるべきである。

○ 重度障害者自身が国際協力を行うことによって,地域生活をしている障害者のロールモデルになり,障害者のエンパワメントに繋がる。

○ 草の根・人間の安全保障無償資金援助は箱物を作る傾向が強いが,障害者の自立生活の保障を基本的施策に位置づけ,その実現に寄与するよう援助が行われるべきである。

○ 障害者の芸術文化活動の交流についても,国際協力として障害者基本計画に位置付けた推進が行われるべきである。

○ 他の国をリードする立場からも,日本政府として障害者権利条約の選択議定書の批准について積極的に取り組むべきである。

2.防災に関する施策について

(1)障害者基本計画での防災等の位置づけについて

○ 東日本大震災による障害者の死亡率が障害のない人の2倍以上とされていることを重く受け止め,障害者基本計画の中心に防災を据えるべきである。障害者基本計画の基本理念には,権利に基づく社会と共生を掲げるべきである。

○ 東日本大震災の体験によって,緊急時は制約が多くできる事は少ないという教訓を得た。警察や消防等の危機管理機関は福祉に精通していないことと,障害者施策関係者が救援に精通していないことで,効果的な防災の取組になりにくかった。障害者基本計画では,各施策に防災を盛り込み,発災時の対応についても障害者施策の一環として取組むよう明記すべきである。

○ 防災を各施策に盛り込んでしまうと,一般の防災と障害者の防災とで施策が二元化することになる。支援の谷間を生まないために,誰が責任をもつのか明確にすべきである。

○ 現行の障害者基本計画には,緊急時に福祉関係者が取り組む内容が含まれていないため,取り組むべきことを位置づけるべきである。

○ 発災後に自立支援協議会が支援を主導することを決めている地域があるが,どの機関が市町村での障害者にかかわる支援を担うのかを明確に設定すべきである。障害者が指定避難所の決定過程に参加し,避難できることが確認された上で,宿泊を伴う避難所開設の訓練を行うべきである。地域のネットワークを検証するために,避難訓練を行う必要がある。

○ 東日本大震災の災害支援では,事業所による障害者の囲い込みではないかと思われるものが見受けられる。障害者権利条約や障害者基本法の定める地域生活をどの地域においても実現できるように,防災でしっかりと取り組むべきである。

(2)防災において取り組むべき施策について

○ 防災については,発災前の取組から発災直後の安否確認まで,避難所での避難の期間,仮設住宅への入居までと復興期のように時間軸を設けて取り組まれるべきことを整理すべきである。これに,情報保障や移動支援等の分野別の課題と障害種別から発生する課題をそれぞれの時期区分毎に整理すべきである。

○ 障害は多様であり,細かい計画を策定しても実効性がない。そのため,発災後に障害者が援助を求めることができる機関を設定し,そこに行けば必要な情報や物資が得られ,事業者等につながることができる仕組みが構築されるべきである。

○ 福祉サービスの利用者ではなく,かつ,障害者団体とも繋がりのない障害者や震災後障害者になった人は,必要な支援が得られず,ネットワークの外に置かれているという問題がある。

○ 災害発生時から避難生活時等に行政から震災関係の情報提供を行う際に,障害の特性に応じた情報伝達やコミュニケーション支援を行える体制づくりが構築されるべきである。

○ 手話通訳者等の派遣を適切に行うためには,自治体間での相互協力体制が構築されるべきである。

○ 重度障害者の避難については,一緒に避難する家族が混乱しないように,いつ,誰が支援に来るのかを明確にすべきである。

○ 震災後は,移動支援やコミュニケーション支援のニーズが高まるが,これらの事業は地方自治体の判断に委ねられた地域生活支援事業であるため地域格差が大きく,それが震災で如実になった。通常の福祉サービスのレベルを上げる取組が必要である。

○ 障害の特性や被災者の状況に応じた被災者支援(バリアフリー化された避難所の保障,人工呼吸器利用者の電源確保,環境への適応が困難な発達障害者への配慮,事業所や医療機関への移動支援の確保,心のケアを含む施策の推進)を推進すべきである。

○ 東日本大震災のように長期間にわたる避難生活では,物資,特に消耗品の調達が命にかかわる問題になるため,行政と事業者が協働できる仕組みが確保されるべきである。

○ 福祉サービスの円滑な提供のために,機動的な制度運用が可能になるようにし,そのために人材が確保されるべきである。

○ 災害に備えてどのような事が起きるのか,シミュレーションが徹底的にされるべきである。災害時に最も支援が届きにくい人たちはどのような人たちなのか,その人たちの避難をどのように安全に行うのか,防災計画等に盛り込まれるべきである。

○ 2015年に予定されている国際防災会議においては,東日本大震災における障害者支援を踏まえ,障害が議題の一つとして扱われるべきである。

○ 豪雪地域では,防災の取組に雪害対策を含めて,取り組まれるべきである。

①要援護者名簿の作成と安否確認について

○ 市町村における災害時要援護者の避難支援の取組においては,全体計画の策定率は高いが,個別計画の策定率は低い。個別計画においては,誰が支援に向かうのかを明確にするべきである。

○ 発災直後は,警察や消防が集中的,専門的に支援に当たることになるため,障害者支援を担う福祉関係者とも情報共有をし,連携して支援すべきである。

○ 被災後の安否確認のための要援護者リストの開示について,個人情報保護法(条例を含む)は生命・身体に関わる場合は例外を許しているため,その趣旨を踏まえて被災後の安否確認が行われるべきである。

○ 個人情報保護のために要援護者名簿を開示できないという指摘がある。障害者が自分自身を守るためには,公的な機関に加えて地域の障害者団体や障害関連の事業所等いずれかの機関への登録の義務づけがなされ,安否確認の下に,必要な支援が届けられるようにすべきである。

○ 実効性のある個別計画の策定のためには,わかりやすい例示が必要である。例えば,自閉症は特定の食べ物を食べない等,こだわりがあるが,我儘だと誤解されないようにすべきである。

②避難所等での避難及び仮設住宅等について

○ 避難所以外の場で避難生活を行った人が,支援から除外されないようにすべきである。 ○ 福祉避難所で障害者の家族が一緒に避難できなかった事例があるという指摘があるが,どのような実態だったのか検証されるべきである。また,病院や施設が機能しないために亡くなった人についても,病院等の安全に対する取組が検証される必要がある。 ○ 仮設住宅の抽選に申込みをしたが,外れたため,スロープのある住宅に車いす利用者が住んでいないケースがある。みなし仮設は,住宅改修が行われているのか把握すら行われていない問題がある。 ○ 仮設住宅については,どのような配慮が必要であるか,具体的な基準が示されるべきである。今後の仮設住宅については,標準仕様をバリアフリータイプとすべきである。 ③防災対策等への障害者等の参画について ○ 障害者の参画や意見表明を確保した防災対策(少人数の障害者ニーズを把握し,ライフステージに応じた配慮が行われるように障害者の参画を進め,防災計画や避難マニュアルの策定や避難所運営の実施すること)を推進すべきである。 ○ 福祉避難所や要援護者のガイドラインは,良くできているが浸透していない。それは,守られる側の障害者参画の視点が抜け落ちているためだ。仮設住宅についても同様の問題がある。

(3)復興において取り組むべきことについて

○ 6県,43市町村で復興計画ができ,障害者についての記述があるのは5県,39市町村である。しかし,これらの計画策定の過程での障害当事者の参加・参画は極めて不十分で,改善が求められる。

○ 復興計画の進み方によって,障害者支援に空白やサービス提供の整備に遅れが出ないようにすべきである。復興計画の策定にあたり障害者の参画や意見反映がされるようにすべきである。

○ 被災した障害者の生活の支援,生活の立て直しを図るため,サービスの柔軟,機動的な提供のための制度運営や障害福祉サービス提供基盤の円滑な復旧,障害者の働く場の確保などへの重点的な取組が求められる。

○ 復興に関する取組においては,元に戻すという発想ではなく,新たに作り上げる新生として取り組まれる必要があり,住みやすい街づくりが推進されるべきである。

○ 日常生活を取り戻せる見通しが立ちにくい被災者にとっては,緩慢な喪失感が続いているため,心のケアの必要性は大きい。復興支援では,震災によるPTSDに対する取組の優先順位を上げて,取り組まれるべきである。

○ 復興期は,障害者の孤立死が起きないようにする取組も必要である。

○ 福島は県外への避難者が多いため,県内に住んでいた時の生活にできるだけ近い生活が維持できるように,福祉サービスの利用が保障されるべきである。

○ 復興の過程においては,福祉関係の事業所の建物の多くが土砂災害の危険地域に建設されていることを踏まえ,安全性が確保されるように対応されるべきである。

○ 障害者団体や支援団体が,復興に従事できるように財政的に支援されるべきである。

(4)東日本大震災の被害状況を把握するデータ収集について

○ 東日本大震災で障害者の被害が2倍以上とされている要因は何があるのか,検証されるべきである。

○ 障害者に対する災害被害の検証については,内閣府防災担当と厚生労働省とが連携しつつ,合同で検証のための委員会を設置するなどして取り組まれるべきである。

○ 発災直後から仮設等の住宅避難まで,どのような点に困ったのか障害関係団体による聞き取り調査が行われている。避難所の在り方について検証することは重要である。その際に,プラスに働いた要因についても分析をすべきである。調査にあたっては,被災者の生活を脅かす事のないようにすべきである。

○ 発災後はすべての人が困っているが,避難所から仮設住宅へと時間が経過する中で個々が必要とする支援が得られないことでそれぞれの困難が異なる。体験した困難について聞き取りをし,今後の震災で想定されるものを記録として残すべきである。

○ 男女共同参画については,男女共同参画の視点に立った復興をより一層推進するために,復興庁に男女共同参画班が組織され,復興に関するまちづくり,仕事,暮らし等について,男女共同参画の視点からの参考事例を収集し,被災地等に広く周知している。障害者についても,同様に,障害者の参画促進の視点から丁寧に事例を収集し,それらを復興における課題を把握にも活用すべきである。

○ 障害者の被害調査については,実際に支援に関与した人に聞き取り調査をすることも有効であるため取り組まれるべきである。

3.防犯に関する施策について

(1)取り組むべき施策について

○ 現行の障害者基本計画に加え,新たに考慮すべき点としては,次の3点。①ネットワーク犯罪から障害者,特に判断に支援を要する障害者を悪質な詐欺等の犯罪から守る対策の推進,②障害者自身が犯罪に巻き込まれないようにするための被害予防教育の推進,③地域における防犯施策の策定や自主防犯組織への障害者及び関係者の参画,意見反映に努めるべきである。

○ 警察等での相談の実効性を高めるために,権利擁護システムとして,障害者から相談があった場合に必ず連絡を取る事業所を定め,手話通訳者等の派遣等必要な支援者が配置されるべきである。

○ 手話ができる警察官の交番への配置は限界があるため,離れた場所においてもパソコン等を利用し画像による同時通訳が導入されるようにすべきである。

○ 緊急時の連絡手段は双方向でなければならず,FAX110番,メール110番においても双方向性が確保されるように取り組まれるべきである。

○ 障害者が犯罪被害者になる確率が高く,障害女性は特に被害者となる確率が高くなるため,障害者基本計画の防犯で障害女性について特別に取り組まれるべきである。その際に,障害女性が地域における防止策の策定において参画できるようにすべきである。

○ 犯罪に対する自衛的取組の促進に向けて,例えば,グループホーム等の共同生活の場に,行政からその観点からの支援が得られるよう工夫される必要がある。

○ 障害者が被害に逢いやすい犯罪の類型としては性的被害と詐欺があり,特に知的障害者,精神障害者に被害が多い。特別支援学校等の卒業時に,被害者にならないよう指導が行われるが,障害者自身が自分を守ることができるようにエンパワメントされることが重要である。同時に,地域社会での見守りネットワークが機能することも重要である。障害者であることを理解した上で商品等の契約を業者が行う場合には,障害者への説明責任を加重する事を検討すべきである。

○ 障害者団体が警察と連携しながら,研修をはじめとする取組を推進すべきである。

○ 警察での研修で障害者自身を講師とするよう一層取り組まれるべきである。知的障害,精神障害,発達障害者との豊かな体験をもつ警察関係者を講師に迎える研修についても,有効な研修の在り方として,推進されるべきである。

○ 機能している防犯ネットワークのモデルを示しつつ,犯罪が起きにくい社会作りのための防犯ネットワークの体制が整備されるようにすべきである。

(2)防犯に関わるデータの収集について

○ 障害者がどのような被害にあっているのか実態を示す統計データを揃えるべきであり,行方不明者の保護人数についてもその統計に含め精査されるべきである。

○ DVの相談件数等から,障害女性で性的被害を受けている人,相談したくともできない人や事件が表面化していない多くの被害が存在する。障害女性の性的被害実態を明らかにするように,対策が講じられるべきである。

○ 防災,防犯について,男女別のデータに基づいて障害者基本計画が策定されるべきで,それに基づいて施策の監視が行われるべきである。男女平等を阻害する計画の策定や施策は行われるべきではない。障害女性は性被害を受けやすいというデータがあり,それを解消するよう障害者基本計画に盛り込まれるべきである。

以上