「生活の質」の向上に配慮

福岡県民生部障害福祉課　井上数喜

はじめに

　福岡県では、昭和五十七年に「福岡県障害者福祉長期行動計画」を策定し、これに基づき障害者施策の総合的推進に努めてきましたが、高齢化の進行や障害の重度化などの社会情勢の変化や国の「障害者対策に関する新長期計画」の策定、「障害者基本法」の改正・施行の動きに対応し、本県における総合的な障害者施策の今後なお一層の推進を図るために、平成七年三月に福岡県障害者福祉長期計画を策定しました。

１．主な策定経過

　平成五年に県の障害者対策推進本部について、本部長を副知事から知事に、本部員を全部長に改めるとともに、その下部機関である障害者対策推進幹事課会議について関係二十五課を三十七課に再編・充実し、旧体制よりも幅広い分野において障害者施策を捉えることとしました。併せて、本部長への助言機関として、民間有職者で構成する「障害者対策推進県民協議会」の委員についても増員し、建築設計、高齢者関係、難病関係などの、社会情勢の変化に対応する分野からの意見を取り入れることとしました。

　計画案については、平成五年度から六年度にかけて、障害者関係団体等からの意見聴取、六回にわたる県民協議会での審議、市町村からの意見聴取を行うとともに、県議会厚生委員会への経過報告等を経て、幹事課会議及び代表幹事課会議において検討・作成しました。

　この計画案については、知事による決裁及び障害者対策推進本部会議における承認を経て、最終決定を行い、公表に至ったものです。

２．計画の概要

◎計画の性格

①障害者基本法に定める「都道府県障害者計画」に位置づけるものであり、本県における総合的な障害者施策の推進のための指針

②広く県民の理解と認識を深め、県民の自主的・主体的な意志と積極的な行動を期待するもの

③障害者基本法に定める「市町村障害者計画」の策定及び市町村との一体的な施策の推進のための指針

◎計画の期間

　平成六年度から十五年度までの十年間。社会情勢等により必要が生じた場合は見直しを行う。

◎計画の基本的な考え方

　障害者が社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他のあらゆる分野における「完全参加と平等」の実現を基本目標とし、障害者が心豊かに充実感を持って人生を送ることができるよう「生活の質（ＱＯＬ）」の向上に配慮しつつ、次の四項目を基本的な考え方として計画の推進に努める。

①障害者及び障害に関する正しい理解の促進

②すべての人にとって住みよい社会づくりの推進

③障害者が主体性、自立性を発揮できる施策の推進

④施策の連携（行政内部及び関係団体等との相互協力・支援体制のもとでの関連施策の連携、障害者・高齢者双方のニーズに適応した施策の一体的な推進）

◎施策の体系

　障害者に関係する行政施策等を八分野に区分し、それぞれの分野ごとに重点目標とその施策の方向を示している。（大分類＝八分野、中分類＝三十四重点目標、小分類＝百七施策の方向）

Ⅰ　啓発・広報の推進

Ⅱ　雇用・就業の促進

Ⅲ　保健・医療の充実

Ⅳ　教育の充実

Ⅴ　ひとづくりの推進

Ⅵ　まちづくりの推進

Ⅶ　福祉サービスの充実

Ⅷ　社会参加の促進

◎推進体制等

①福岡県障害者対策推進本部を軸として、関係部課相互の密接な連携を図り、障害者施策の総合的かつ効果的な推進に努める。

②国及び市町村との連携と協力の下に、計画の体系的、効果的な推進に努める。特に市町村については主体的かつ積極的に障害者施策に取り組むことを期待するとともに、必要な支援と連携の強化に努める。

③障害者団体等民間諸団体、企業、マスメディアをはじめ広く県民の理解と協力により計画の総合的な推進を図る。

④障害者施策の立案及び推進に当たっては、障害者自身の意見を反映させ、そのニーズに十分配慮するよう努める。

⑤計画の期間中、各年度ごとに計画の進行管理を行う

３．本計画の特徴

　障害者施策を積極的に推進し、ノーマライゼーション社会の実現を目指す上で、障害者に関係する専門職員の養成・確保や地域社会を支えるボランティア活動の推進は極めて重要な施策分野であるため、「ひとづくりの推進」を独立の分野とした。

　社会・経済活動はもとより、文化・芸術・スポーツ・レクリエーション活動等のあらゆる分野への障害者の自らの意思による主体的・積極的な参加を促進するための取り組みが、生涯学習の機運の高まりと相まって、ますます重要視されてくると考えられるため、「社会参加の促進」を独立の分野とした。

（いのうえかずき）

（財）日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション　障害者の福祉」
1996年１月号（第16巻　通巻174号） 14頁～15頁

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