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特集/障害者基本計画

(5)山梨県勝沼町障害者福祉計画

総合的な地域福祉の充実に向けて

勝沼町役場福祉課 武井一弘

 山梨県では、昭和57年「障害者対策山梨県行動計画」が策定され、県民あげての長期にわたる取り組みと障害者福祉の理念の定着が図られてきました。そして、平成5年10月には「山梨県障害者幸住条例」が制定され、さらに、これに基づく「障害者幸住計画」が平成6年3月に策定され、平成15年までの県の障害者福祉の大綱が示されました。

 勝沼町では、障害者の積極的な自立を支援し、社会への完全参加と平等を実現するため、国や県の諸計画をふまえ、第3次勝沼町長期総合計画との整合性を図りながら、この勝沼町障害者福祉計画を策定いたしました。

 勝沼町には身体障害者手帳保持者は229人、精神薄弱者は48人が登録されています(平成6年度)。障害の種類では肢体不自由が最も多く、つづいて聴覚・平衡障害、内部障害の順となっています。この計画は勝沼町が実施する障害者施策の目標であり、基本的な指針となるもので、住民や事業所のみなさんはもとより障害者のみなさんにも、それぞれの立場の中で積極的な取り組みを期待するものです。

 計画の期間は、平成7年度から16年度までの10年間とし、計画の内容については、必要に応じて見直しを行います。基本計画は、7つの体系から構成されています。以下、計画の体系図に沿って説明します。

第六 計画の体系

第6 計画の体系

1.理解と交流事業

 町では、ホームヘルパーの派遣やボランティアの育成を行っています。まだ充分とはいえませんが、これには地域の人たちの理解と支援が重要です。障害者の自立と社会参加を進めるためには、障害者が生まれ育った家庭や地域で安心して生活が送れるよう、地域住民の理解を深めながらボランティアの育成にも努めなければなりません。障害者のことについての啓発、福祉教育の推進、お互いに理解し合うための交流と触れ合いの促進、あるいは各種スポーツの振興など余暇活動の充実が大きいと思います。

2.教育・育成事業

 幼稚園・保育所・小中学校での障害児の受け入れをはじめ、障害児の特性に応じた多様な教育の展開が図られることが必要です。また、学校卒業後の社会での自立に向け、職業教育についてもその適正に応じた対応の充実が望まれます。障害児が趣味や教養を高め、社会活動に参加することにより、生活に潤いを持ち、喜びや生きがいが亨受できるための生涯学習も勧める必要があります。

3.雇用・就業対策

 障害者が働く場を得て、社会経済活動に参加し、そこに安定した生活の確立と生きがいを見いだすため、障害者の雇用・就業を促進しなければなりません。これには障害者自身が自立への自覚と意欲を高めることが大切ですが、事業主や共に働く人々の理解も欠かせない問題です。特に、重度障害者の雇用の促進に重点を置き、雇用の障害となっている要因を把握しながら、一人ひとりの障害者の特性に応じた施策を進める必要があります。一般雇用が困難な障害者も、様々なかたちで仕事を通じて社会との係わりを持つことを望んでいます。こうした障害者に対する福祉的な就労の場の確保も必要です。

4.保健・医療事業

 誰でも安心で幸せな人生を送るためには、ライフサイクルに応じた適切な保健、医療サービスの提供が必要でしょう。町では、新生児期から幼児期まで、発達段階における継続的な健康診査を行っていますが、さらなる受診の徹底と専門的、総合的な健康診査や相談を行う必要があります。保健所、児童相談所等関係機関と緊密な連携を図り、周産期または乳幼児期からの一貫した療育相談や保健医療体制を確立していくことが重要です。また、障害を軽減し自立を促進するためにリハビリテーションの充実は欠かせません。地域に密着した実施体制を充実させていく必要があります。

5.福祉サービス事業

 重度の障害者に対する在宅福祉のサポートシステムの充実を図っていくことや、既存の施設の機能を活用することも重要な課題です。入浴などのサービスを提供するデイサービス事業、一時的に家庭での介護が困難な場合利用する短期入所事業などをさらに充実させる必要があります。

6.生活環境対策

 安心して街へ出掛けて行ける生活環境の整備がなくては、障害者の社会参加も進みません。建築物における物理的な障壁の除去は、障害者の自立と社会参加を促進する上で不可欠であり、「福祉のまちづくり」は、全ての人々に適合する社会の建設という視点に立つものです。現在、公共施設や一部民間施設では、障害者の利用に配慮した改善、整備が進められていますが、さらに啓発広報の積極的な取り組みを行い、より一層の理解を深めていく必要があります。

7.推進体制整備

 障害者福祉の推進にあたっては、福祉サービスに対するニーズの増大や多様化傾向に的確に対応した福祉サービスの供給体制、つまり組織の整備とこれに係わる職員の資質の向上、人材の確保や財政面の充実が不可欠です。障害者が住み慣れた地域社会において障害を持たない人と同じような生活を送っていくためには、地域住民の積極的なボランティア活動が必要です。このため、ボランティア活動に対する理解を深めるとともに障害者自身がボランティア活動に参加する等活動層の拡大を図る必要があります。

 国際障害者年のテーマである「完全参加と平等」は、障害者福祉の目標であり、この目標に向かって、全ての人がそれぞれの立場において取り組むことが重要です。この目標を達成するためにはリハビリテーションの理念とノーマライゼーションの理念が住民の中に定着することが必要です。総合的な地域福祉の充実に向けて豊かなまちづくりを目指していきたいものです。

(たけいかずひろ)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年1月号(第16巻 通巻174号) 18頁~19頁